説明

IPS方式用カラーフィルタ基板及びIPS方式の液晶表示装置

【課題】本発明の目的は、透明導電膜を使用せずに、IPS方式の液晶表示装置用カラーフィルタ基板に帯電防止機能を付与することである。
【解決手段】透明基板1上に、導電性を有するブラックマトリックス2と着色画素3を設け、その表面を透明絶縁層4で被覆し、ブラックマトリックス2の一部が透明絶縁層4の外部に露出したことを特徴とするIPS方式用カラーフィルタ基板であって、ブラックマトリックス2が、金属からなるかもしくは導電性カーボンブラックを含有することを特徴とするIPS方式用カラーフィルタ基板である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示装置用に使用するカラーフィルタ基板に係わり、特には、帯電防止性を付与したカラーフィルタ基板に関する。
【背景技術】
【0002】
着色した感光性樹脂あるいは非感光性樹脂を用いてフォトリソグラフィ法やインクジェット法のパターン形成技術を適用して形成されたカラーフィルタは、250℃以上の耐熱性を有し、耐光性、高精細、透過性等に優れており、昨今では大小様々の液晶表示装置に使用されている。
【0003】
しかしながら、フォトリソグラフィ法やその他の方法とも、透明基板上に樹脂組成物でカラーフィルタ膜を形成するが、この場合、工程を高湿度コントロールできないため、工程上で静電気帯電する。特に、基板サイズが大きくなるにしたがって帯電しやすくなり、はなはだしい時は、温度制御板の上でガラスが密着して、搬送不良を起こすことがある。
【0004】
また、軽量化のために薄いガラス基板を使用するのが望ましいが、薄すぎると工程中にワレが発生しやすくなり、ガラス基板のたわみも増える結果、露光時のアライメント精度が低下するという問題がある。
【0005】
また、搬送に問題がないとしても、帯電した基板を用いてセル組みしたパネルの品位は、その静電気帯電によって、セルギャップ制御用スペーサービーズが偏在しやすく、表示ムラ欠陥を誘発し、不良品となる割合が高い。
【0006】
また、静電気帯電は異物付着を増大させ、この点でも歩留まりを低下させる。はなはだしい場合には、対向側であるアクティブマトリックス基板のトランジスタを劣化させることもある。表示ムラ欠陥の防止や工程上での良好な搬送性を維持するために、帯電防止や除電といった処理がカラーフィルタや液晶表示装置の製造上、非常に重要である。
【0007】
液晶表示装置における通常の液晶配向モードはツイストネマチック配向であるが、これとは異なるモードに基板面に平行に電圧を印加して液晶を基板面と平行な面内で回転させる横電界駆動方式(IPS方式)がある。このIPS方式は視野角が広くできる特徴があるが、カラーフィルタ側に電極を設けず、TFTなどの駆動素子が形成された基板側にのみ電極が置かれるために、カラーフィルタ基板側から外部電界が侵入して表示に悪影響を与えやすい問題がある。
【0008】
IPS方式のカラーフィルタ基板に対する帯電防止機能の付与については、カラーフィルタ基板の裏面側に透明導電膜を形成する技術が開示されている(特許文献1)。この技術は、裏面に透明導電膜を形成しているので表示に影響を与えずに有害な外部電界を遮断することができる。ガラス基板上に直接透明導電膜を形成できることから、カラーフィルタ基板裏面に貼る偏光フィルムなどに透明導電膜を形成するのに比べて、基板温度を高くできたり、下地層からの脱ガスがないという利点がある。類似技術としては、透明導電膜を形成したフィルムを貼り付けるものがある(特許文献2)。
【0009】
しかしながら、ガラス基板の一方の面に透明導電膜を形成するには、カラーフィルタが形成される側の面を搬送面にする必要があるため、搬送と透明導電膜加工に起因する汚れやキズがつきやすいという問題がある。工程的にもガラス基板の表裏を反転機構が必要となり、多額の設備投資と余分なスペースが必要なり、場合によっては実施不可能となるこ
とがある。また、透明導電膜は光透過率が高いといってもガラス基板全面で透過率が数%低下するという不利益が避けられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10−293207号公報
【特許文献2】特開平7−318878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで本発明の目的は、透明導電膜を使用せずに、IPS方式の液晶表示装置用カラーフィルタ基板に帯電防止機能を付与することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を達成するため請求項1に記載の発明は、透明基板上に、導電性を有するブラックマトリックスと着色画素とを設け、その表面を透明絶縁層で被覆し、ブラックマトリックスの一部が透明絶縁層の外部に露出したことを特徴とするIPS方式用カラーフィルタ基板としたものである。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、前記ブラックマトリックスが金属からなるか、もしくは導電性カーボンブラックを含有する樹脂型ブラックマトリックスであることを特徴とする請求項1に記載のIPS方式用カラーフィルタ基板としたものである。
【0014】
また、請求項3に記載の発明は、前記カラーフィルタ基板を用いたことを特徴とするIPS方式の液晶表示装置としたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、既存の装置を使用し新たな設備投資をせずにカラーフィルタ基板に帯電防止機能、除電気能を付与することができる。
そうして得られるカラーフィルタ基板は、カラーフィルタ形成時には、カラーフィルタ形成面が搬送装置に触れたりすることがないので、加工面にキズがついたり汚染されることがなく、且つ静電気の帯電もないのでカラーフィルタ基板の製造歩留まりの向上が可能となる。
加えてセル組み工程時においても静電気の帯電が少ないため薄膜トランジスタの劣化が低減されるとともに液晶パネルでの表示ムラ欠陥の低減が実現できる。
また、裏面に導電膜のような膜が形成されていないため裏面加工の自由度が増すという効果がある。特に、カラーフィルタ等の形成時は工程上のトラブル発生が少ない十分な厚みのガラス基板が使用が可能である。その後、裏面のエッチングを行って薄板化し、軽くて位置精度の高いカラーフィルタ基板の製造ができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)〜(e)は本発明になるカラーフィルタ基板の製造工程の概略を説明する工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を図1(a)〜(e)を参照して説明する。
【0018】
透明基板1上に着色画素3(カラーフィルタ)やブラックマトリックス2を形成する方法として顔料分散法を使用できる。顔料分散法は、有機顔料などの色材を分散した着色感光性樹脂の塗布層を定法のフォトリソグラフィ法によってパターニングすることにより複
数の着色層(黒色、赤色、緑色、青色など)を画素形状に形成する方法である。ブラックマトリックス2や複数の着色画素3の入色順を特に限定するものでないが、アライメントの都合からブラックマトリックス2のパターン形成後に着色画素3を順次形成する。顔料分散法以外ではインクジェット法も適用が可能である。
【0019】
ブラックマトリックス2の厚さは1〜3μm、幅は5〜150μmの範囲で、また、赤色画素・緑色画素・青色画素の膜厚(厚さ)は1.3〜3.5μmの範囲である(着色感光性樹脂の組成や塗布方法で大きく左右される。)。典型的には、ブラックマトリックスの膜厚が1.5μm、赤色層の厚みが1.8μm程度、緑色層の厚みが1.5μm程度、青色層の厚みが1.2μm程度、透明絶縁層4の厚みが1.5μm程度である。
【0020】
また、着色画素のサイズを24μm×54μm、縦横のピッチを93μmに設定すると、画素中のブラックマトリックスの占有率は約45%となるが、この場合ではブラックマトリックスの導電率は、0.0863Ω・cm程度あることが望ましい。ブラックマトリックスの膜厚を1.1μm程度以上にすることで前記導電率が達成できる。
【0021】
金属をブラックマトリックスとする場合の金属膜としては、単層膜でも、あるいは、低反射特性が向上された酸化金属/金属の2層膜でも、あるいはさらに、低反射特性が改善された、酸化金属/金属/酸化金属などの3層膜でも良い。金属としては、クロム、ニッケルなどが好ましく用いられる。これらの金属膜は、フォトレジストと酸性エッチング液を用いたエッチングによりパターニングが可能である。
【0022】
まず、図1に示すように、例えばガラス等の透明基板1を用意する(図1(a))。搬送時のトラブルやたわみによる露光誤差の発生しない程度の厚みの透明基板を使用する。ガラス以外の基板としては、シリコン基板、ポリカーボネート基板、ポリエステル基板、芳香族ポリアミド基板、ポリアミドイミド基板、ポリイミド基板、Al基板、GaAs基板等の表面が平坦な基板などを用いてもよい。
【0023】
色材に導電性を有するカーボンブラックを用いたブラックマトリックス形成用のアルカリ現像型黒色樹脂組成物を調製し、例えばスリットコート法で塗布した後、必要に応じて加熱、たとえば100℃で3分間加熱して溶剤などの揮発成分を乾燥させる(プリベーク)。次いで、所定のマスクを用い、光源として超高圧水銀ランプ等を用いて露光した後、例えば炭酸ナトリウム水溶液等でアルカリ現像し、水洗乾燥後、例えば230℃で1時間ベークしてブラックマトリックス2を形成する(図1(b))。
【0024】
着色樹脂組成物の塗布方法としては、例えばスプレーコート法、スピンコート法、ロールコート法、及びスリットコート法等の公知の方法を使用することができる。
【0025】
露光に用いられる活性光の光源としては、波長300〜450nmの光を用いることができ、例えば、上記した超高圧水銀ランプに加えて、水銀蒸気アーク、カーボンアーク、キセノンアーク等から照射される光を用いることができる。
【0026】
また、現像に際しては、アルカリ現像液として炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等の水溶液が使用でき、ジメチルベンジルアミン、トリエタノールアミン等の有機アルカリを用いることもできる。また、現像液には、消泡剤や界面活性剤を添加することもできる。
【0027】
形成されたブラックマトリックス2の厚みに依存する光学濃度(OD値)は3.0〜6.0の範囲で使用することが好ましい。3.0より小さい場合では、液晶ディスプレイのブラックマトリックスに用いた場合に、十分な表示コントラストを得ることができず、バックライトの光が漏れる。また6.0より大きい場合では十分な遮光性は得られるが、顔
料濃度が高くなりパターンを形成する際、形状がオーバーハングしやすくなる。
尚、厚みに依存するとは、単位の厚み(1μm)当たりに還元しないその厚さの光学濃度という意味である。
【0028】
次いで、ブラックマトリックス2が形成された透明基板1上に、赤色感光性組成物を、スプレーコート、スピンコート、スリットコート又はロールコート等の塗布方法により、乾燥膜厚が所望の膜厚となるように塗布する。必要により乾燥されたこの赤色感光性樹脂層に、所定のパターンを有するフォトマスクを介して、光源として例えば超高圧水銀ランプを用いて活性エネルギー線を露光する。
【0029】
その後、未露光部を、アルカリ現像液、例えば2、5%炭酸ナトリウム水溶液で現像後、よく水洗し、さらに水洗乾燥する。このようにして、図1に示すように、ブラックマトリックス2が形成された透明基板1上に、パターン加工された赤色の着色画素を得る。この現像液には必要に応じて消泡剤や界面活性剤を添加することができる。現像後、例えば230℃で60分間加熱処理を行い、本硬化(ポストベーク)する。これを所望の色数の画素部が形成されるまで繰り返して着色層のパターン加工を行うことにより、例えば緑色感光性組成物を用いてパターン加工された緑色着色層を、青色感光性組成物を用いてパターン加工された青色着色層を得る。このようにして、透明基板1上に所定のパターンで配列した着色画素3、例えば赤色着色画素、緑色着色画素、及び青色着色画素と、隣接する各着色層間を遮光するブラックマトリッスク2とを有するカラーフィルタ層を得ることができる(図1(c))。
【0030】
次に、着色画素3上に着色画素3間の凹凸を緩和するとともに、液晶中に顔料が溶出するのを防止する透明絶縁層4を塗布するか、あるいは、スパッタリング法により二酸化ケイ素皮膜を形成する(図1(d))。これにより導電性のブラックマトリックス2を備えるカラーフィルタ基板を得ることができる。
【0031】
本発明においては、さらに裏面に透明導電膜が形成されていないので裏面のガラスエッチングによりガラス基板の薄板化が可能である。カラーフィルタの上に保護フィルムを貼り付け、ガラスエッチング用のフッ化水素酸溶液に投入すれば裏面だけエッチングができる。保護フィルムを剥がせば薄板化、軽量化されたカラーフィルタ基板が得られる。
【0032】
ガラス基板端部5では、上面視の図である図1(e)に示すように、導電性のブラックマトリックスの端が空気中に露出し、透明絶縁層4で被覆されないようにしておくことが必要である。この露出したブラックマトリックス2の端を接地して帯電を防止する。
【符号の説明】
【0033】
1・・・ 透明基板
2・・・ 導電性ブラックマトリックス
3・・・ 着色画素
4・・・ 透明絶縁層
5・・・ ガラス基板端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上に、導電性を有するブラックマトリックスと着色画素とを設け、その表面を透明絶縁層で被覆し、ブラックマトリックスの一部が透明絶縁層の外部に露出したことを特徴とするIPS方式用カラーフィルタ基板。
【請求項2】
前記ブラックマトリックスが金属からなるか、もしくは導電性カーボンブラックを含有する樹脂型ブラックマトリックスであることを特徴とする請求項1に記載のIPS方式用カラーフィルタ基板。
【請求項3】
前記カラーフィルタ基板を用いたことを特徴とするIPS方式の液晶表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−88640(P2012−88640A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237253(P2010−237253)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】