IRTA−5抗体およびその使用
本発明は、IRTA−5に高い親和性で特異的に結合する単離されたモノクローナル抗体(特に、ヒトモノクローナル抗体)を提供する。本発明の抗体をコードする核酸分子、発現ベクター、宿主細胞、および本発明の抗体を発現するための方法もまた、提供される。本発明の抗体を含む免疫複合体、二重特異性分子および薬学的組成物もまた、提供される。本発明はまた、IRTA−5を検出するための方法、および非ホジキンリンパ腫を含むB細胞の悪性腫瘍を処置するための方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、米国仮特許出願番号第60/557,741号(2004年3月29日出願)に対する優先権を主張し、この出願の内容は、その全体が本明細書によって援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
免疫受容体転座関連(Immune Receptor Translocation Associated)(IRTA)遺伝子/タンパク質(Fc受容体ホモログ(FcRH)遺伝子)は、免疫グロブリン様細胞表面受容体のファミリーの5つのメンバーからなる(非特許文献1;非特許文献2)。IRTAは、1q21染色体の再配置を含む多発性骨髄腫細胞株のブレークポイント(breakpoint)の分析によって最初に見出された(非特許文献3)。IRTA糖タンパク質は、3個から9個の間の細胞外Ig様ドメインを含む(非特許文献1、前出)。IRTAはまた、免疫受容体抑制性チロシンモチーフ(immunotyrosine inhibitory motif)(ITIM)および免疫受容体チロシン活性化様(immunotyrosine activation−like)(ITAM−like)モチーフの存在を示唆する、特定のモチーフ内に含まれる3個から5個の間のチロシン残基を含む細胞質ドメインを有することによって特徴付けられる(非特許文献1、前出;非特許文献3、前出)。
【0003】
IRTAは、末梢リンパ組織において発現され、この組織としては、リンパ節、扁桃、休止期末梢B細胞および正常な胚中心B細胞が挙げられる(非特許文献4)。IRTA1が、脾臓において低レベルで検出されたことに対して比較すると、IRTA 2、IRTA 3、IRTA 4、およびIRTA 5は、脾臓において全て高レベルで発現される。IRTA発現は、ヒト扁桃組織のB細胞区画内で分析された。IRTA 1は、辺縁帯中および上皮内のリンパ球中のリンパ濾胞の外側に発現される。IRTA2およびIRTA3は、中心細胞が豊富な明調域おける最も高い発現を伴って、胚中心の癌内で発現される。IRTA4およびIRTA5は、マントルゾーン内で最も高度に発現され、これは、ナイーブなB細胞における発現を示す(非特許文献1、前出)。
【0004】
IRTA5は、膜貫通領域中に荷電したグルタミン酸残基を有する点でIRTAの間で独特であり、このことは、IRTA5が、多くのITAM関連タンパク質の場合のように、近傍の位置にある正に荷電したアミノ酸を含むタンパク質とヘテロ二量体化することを示唆する(非特許文献1、前出)。
【0005】
IRTA遺伝子は、B細胞の非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、濾胞性リンパ腫、B細胞系のびまん性大細胞型リンパ腫、および多発性骨髄腫において高度に発現されることが示された(非特許文献4、前出)。
【非特許文献1】Millerら、「Blood」、2002年、第99巻、p.2662
【非特許文献2】Davisら、「Immunological Reviews」、2002年、第190巻、p.123
【非特許文献3】Hatzivassiliouら、「Immunity」、2001年、第14巻、p.277
【非特許文献4】Davisら、「PNAS」、2001年、第98巻、p.9772
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本発明は、IRTA−5に結合し、そして多くの望ましい性質を示す単離されたモノクローナル抗体(特に、ヒトモノクローナル抗体)を提供する。これらの性質としては、ヒトIRTA−5に対して高い親和性で結合するが、ヒトIRTA−1、ヒトIRTA−2、ヒトIRTA−3、またはヒトIRTA−4のいずれに対しても実質的な交差反応性を欠くことが挙げられる。さらに、この抗体は、B細胞に対して特異的に結合する。さらになお、本発明の抗体は、B細胞の腫瘍細胞株に結合するが、T細胞、樹状細胞、単球またはナチュラルキラー細胞に結合しないことが示された。
【0007】
本発明の好ましい実施形態において、ヒトIRTA−5は、配列番号37[Genbank登録番号AAL60250]に示されるようなアミノ酸配列を有するポリペプチドを含み;ヒトIRTA−1は、配列番号38[Genbank登録番号NP_112572]に示されるようなアミノ酸配列を有するポリペプチドを含み;ヒトIRTA−2は、配列番号39[Genbank登録番号NP_112571]に示されるようなアミノ酸配列を有するポリペプチドを含み;ヒトIRTA−3は、配列番号40[Genbank登録番号AAL59390]に示されるようなアミノ酸配列を有するポリペプチドを含み;そして/またはヒトIRTA−4は、配列番号41[Genbank登録番号AAL60249]に示されるようなアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
【0008】
1つの局面において、本発明は、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位に関連し、この抗体は:
(a)5×10−8M以下のKDでヒトIRTA−5に結合し;
(b)ヒトIRTA−1、ヒトIRTA−2、ヒトIRTA−3、およびヒトIRTA−4に実質的に結合せず;そして
(c)ヒトBリンパ球およびB細胞腫瘍株に結合するが、CD3+末梢血T細胞、CD1A+末梢血樹状細胞、CD14+末梢血単球、またはCD56+末梢血ナチュラルキラー細胞に実質的に結合しない。好ましくはこの抗体は、ヒト抗体であるが、代替的な実施形態において、この抗体は、マウス抗体、キメラ抗体またはヒト化抗体であり得る。
【0009】
より好ましい実施形態において、この抗体は、3×10−8M以下のKDでヒトIRTA−5と結合するか、1×10−9M以下のKDでヒトIRTA−5と結合するか、0.1×10−9M以下のKDでヒトIRTA−5と結合するか、0.05×10−9M以下のKDでヒトIRTA−5と結合するか、または1×10−9Mと1×10−11Mとの間のKDでヒトIRTA−5に結合する。
【0010】
別の好ましい実施形態において、このB細胞腫瘍株は、Daudi細胞株、Ramos細胞株、およびSU−DHL−4細胞株からなる群より選択される。
【0011】
別の実施形態において、本発明は、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位を提供し、この抗体は、IRTA−5への結合に関して、以下:
(a)配列番号19、配列番号20、および配列番号21からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;ならびに
(b)配列番号22、配列番号23、および配列番号24からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
を含む参照抗体と交差競合(cross−compete)する。
種々の実施形態において、この参照抗体は、以下:
(a)配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および
(b)配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
を含むか、またはこの参照抗体は、以下:
(a)配列番号20のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および
(b)配列番号23のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
を含むか、またはこの参照抗体は、以下:
(a)配列番号21のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および
(b)配列番号24のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
を含む。
【0012】
別の局面において、本発明は、ヒトVH 3−33遺伝子の産物である重鎖可変領域またはヒトVH 3−33遺伝子に由来する重鎖可変領域を含む、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位に関連し、この抗体は、IRTA−5に特異的に結合する。本発明はまた、ヒトVH DP44遺伝子、ヒトVH 3−23遺伝子もしくはヒトVH 3−7遺伝子の産物である重鎖可変領域、またはヒトVH DP44遺伝子、ヒトVH 3−23遺伝子もしくはヒトVH 3−7遺伝子に由来する重鎖可変領域を含む、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位を提供し、この抗体は、IRTA−5に特異的に結合する。本発明は、ヒトVK L6遺伝子の産物である軽鎖可変領域またはヒトVK L6遺伝子に由来する軽鎖可変領域を含む単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位を、さらになお提供し、この抗体は、IRTA−5に特異的に結合する。
【0013】
好ましい実施形態において、本発明は、以下:
(a)ヒトVH 3−33遺伝子、ヒトVH DP44遺伝子、ヒトVH 3−23遺伝子またはヒトVH 3−7遺伝子の重鎖可変領域;および
(b)ヒトVk L6の軽鎖可変領域;
を含む単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位であって、この抗体が、IRTA−5に特異的に結合する、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位を提供する。
好ましい実施形態において、この抗体は、ヒトVH 3−33遺伝子の重鎖可変領域およびヒトVK L6遺伝子の軽鎖可変領域を含む。別の好ましい実施形態において、この抗体は、ヒトVH DP44遺伝子の重鎖可変領域およびヒトVK L6遺伝子の軽鎖可変領域を含む。
【0014】
別の局面において、本発明は、以下:
CDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含む重鎖可変領域;ならびにCDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域、
を含む単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位であって、以下:
(a)この重鎖可変領域のCDR3配列が、配列番号7、配列番号8、および配列番号9のアミノ酸配列、ならびにそれらの保存的改変のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み;
(b)この軽鎖可変領域のCDR3配列が、配列番号16、配列番号17、および配列番号18のアミノ酸配列、ならびにそれらの保存的改変のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み;
(c)該抗体が、5×10−8M以下のKDでヒトIRTA−5に結合し;
(d)該抗体が、ヒトIRTA−1、ヒトIRTA−2、ヒトIRTA−3、およびヒトIRTA−4に実質的に結合せず;そして
(e)該抗体が、ヒトBリンパ球およびB細胞腫瘍株に結合するが、CD3+末梢血T細胞、CD1A+末梢血樹状細胞、CD14+末梢血単球、またはCD56+末梢血ナチュラルキラー細胞に実質的に結合しない、
単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位を提供する。
好ましくは、この重鎖可変領域のCDR2配列は、配列番号4、配列番号5、および配列番号6のアミノ酸配列、ならびにそれらの保存的改変のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み;そしてこの軽鎖可変領域のCDR2配列は、配列番号13、配列番号14、および配列番号15のアミノ酸配列、ならびにそれらの保存的改変のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。好ましくは、この重鎖可変領域のCDR1配列は、配列番号1、配列番号2、および配列番号3のアミノ酸配列、ならびにそれらの保存的改変のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み;そしてこの軽鎖可変領域のCDR1配列は、配列番号10、配列番号11、および配列番号12のアミノ酸配列、ならびにそれらの保存的改変のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0015】
好ましい実施形態において、このB細胞腫瘍株は、Daudi細胞株、Ramos細胞株、およびSU−DHL−4細胞株からなる群より選択される。
【0016】
なお別の局面において、本発明は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位であって、以下:
(a)この重鎖可変領域が、配列番号19、配列番号20、および配列番号21からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%相同であるアミノ酸配列を含み;
(b)この軽鎖可変領域が、配列番号22、配列番号23、および配列番号24からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%相同であるアミノ酸配列を含み;
(c)この抗体が、5×10−8M以下のKDでヒトIRTA−5に結合し;
(d)この抗体が、ヒトIRTA−1、ヒトIRTA−2、ヒトIRTA−3、およびヒトIRTA−4に実質的に結合せず;そして
(e)この抗体が、ヒトBリンパ球およびB細胞腫瘍株に結合するが、CD3+末梢血T細胞、CD1A+末梢血樹状細胞、CD14+末梢血単球、またはCD56+末梢血ナチュラルキラー細胞に実質的に結合しない、
単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位を提供する。
【0017】
好ましい実施形態において、本発明は、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位であって、以下:
(a)配列番号1、配列番号2、および配列番号3からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のCDR1;
(b)配列番号4、配列番号5、および配列番号6からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のCDR2;
(c)配列番号7、配列番号8、および配列番号9からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のCDR3;
(d)配列番号10、配列番号11、および配列番号12からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のCDR1;
(e)配列番号13、配列番号14、および配列番号15からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のCDR2;ならびに
(f)配列番号16、配列番号17、および配列番号18からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のCDR3;
を含み、この抗体が、IRTA−5に特異的に結合する、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位を提供する。
好ましい組み合わせは、以下:
(a)配列番号1を含む重鎖可変領域のCDR1;
(b)配列番号4を含む重鎖可変領域のCDR2;
(c)配列番号7を含む重鎖可変領域のCDR3;
(d)配列番号10を含む軽鎖可変領域のCDR1;
(e)配列番号13を含む軽鎖可変領域のCDR2;および
(f)配列番号16を含む軽鎖可変領域のCDR3、
を含む。
別の好ましい組み合わせは、以下:
(a)配列番号2を含む重鎖可変領域のCDR1;
(b)配列番号5を含む重鎖可変領域のCDR2;
(c)配列番号8を含む重鎖可変領域のCDR3;
(d)配列番号11を含む軽鎖可変領域のCDR1;
(e)配列番号14を含む軽鎖可変領域のCDR2;および
(f)配列番号17を含む軽鎖可変領域のCDR3、
を含む。
なお別の好ましい組み合わせは、以下:
(a)配列番号3を含む重鎖可変領域のCDR1;
(b)配列番号6を含む重鎖可変領域のCDR2;
(c)配列番号9を含む重鎖可変領域のCDR3;
(d)配列番号12を含む軽鎖可変領域のCDR1;
(e)配列番号15を含む軽鎖可変領域のCDR2;および
(f)配列番号18を含む軽鎖可変領域のCDR3、
を含む。
【0018】
別の好ましい実施形態において、このB細胞腫瘍株は、Daudi細胞株、Ramos細胞株、およびSU−DHL−4細胞株からなる群より選択される。
【0019】
本発明の他の好ましい抗体、またはその抗原結合部位は、以下:
(a)配列番号19、配列番号20、配列番号21、および配列番号36からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;ならびに
(b)配列番号22、配列番号23、および配列番号24からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
を含み、この抗体が、IRTA−5に特異的に結合する。
好ましい組み合わせは、以下:
(a)配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および
(b)配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
を含む。
別の好ましい組み合わせは、以下:
(a)配列番号20のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および
(b)配列番号23のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
を含む。
なお別の好ましい組み合わせは、以下:
(a)配列番号21または配列番号36のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および
(b)配列番号24のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
を含む。
【0020】
本発明の別の局面において、抗体、またはその抗原結合部位は、IRTA−5への結合に関して上記の抗体のいずれかと競合する。
【0021】
本発明の抗体は、例えば、完全長抗体(例えば、IgG1アイソタイプまたはIgG4アイソタイプの完全長抗体)であり得る。あるいは、この抗体は、抗体フラグメント(例えば、FabフラグメントまたはFab’2フラグメント)、または単鎖抗体であり得る。
【0022】
本発明はまた、本発明の抗体、またはその抗原結合部位を含む、治療因子(例えば、細胞毒または放射性同位体)に結合した免疫複合体を提供する。本発明はまた、本発明の抗体、またはその抗原結合部位を含む、第2の機能的部分に結合した二重特異性分子であって、この第2の機能的部分が、この抗体、またはその抗原結合部位と異なる結合特異性を有する、二重特異性分子を提供する。
【0023】
本発明の抗体、もしくはその抗原結合部位、または免疫複合体または二重特異性分子および薬学的に受容可能なキャリアを含有する組成物もまた、提供される。
【0024】
本発明の抗体、またはその抗原結合部位をコードする核酸分子、ならびにこのような核酸を含む発現ベクターおよびこのような発現ベクターを含む宿主細胞もまた、本発明に包含される。さらに、本発明は、ヒト免疫グロブリン重鎖の導入遺伝子およびヒト免疫グロブリン軽鎖の導入遺伝子を有するトランスジェニックマウスを提供し、このマウスは、本発明の抗体、およびこのようなマウスから調製されるハイブリドーマを発現し、このハイブリドーマは、本発明の抗体を産生する。
【0025】
なお別の局面において、本発明は、処置の必要がある被験体中のB細胞の悪性腫瘍を処置する方法を提供し、この処置は、この被験体中のB細胞の悪性腫瘍が処置されるように、本発明の抗体、またはその抗原結合部位をこの被験体に投与する工程を包含する。この疾患は、例えば、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、濾胞性リンパ腫、B細胞系のびまん性大細胞型リンパ腫、および多発性骨髄腫であり得る。
【0026】
本発明はまた、本明細書中で提供される抗IRTA−5抗体の配列に基づく「第2世代」抗IRTA−5抗体を作製するための方法を提供する。例えば、本発明は、以下:
(a)(i)配列番号1、配列番号2、および配列番号3からなる群より選択されるCDR1配列;配列番号4、配列番号5、および配列番号6からなる群より選択されるCDR2配列;ならびに配列番号7、配列番号8、および配列番号9からなる群より選択されるCDR3配列を含む重鎖可変領域の抗体の配列;または(ii)配列番号10、配列番号11、および配列番号12からなる群より選択されるCDR1配列;配列番号13、配列番号14、および配列番号15からなる群より選択されるCDR2配列、ならびに配列番号16、配列番号17、および配列番号18からなる群より選択されるCDR3配列を含む軽鎖可変領域の抗体の配列を提供する工程;
(b)重鎖可変領域の抗体の配列および/または軽鎖可変領域の抗体の配列内の少なくとも1つのアミノ酸残基を変更して、少なくとも1つの変更された抗体の配列を形成する工程;および
(c)この変更された抗体の配列をタンパク質として発現させる工程、
を包含する、抗IRTA−5抗体を調製するための方法を提供する。
【0027】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および実施例から明らかであり、この詳細な説明および実施例は、限定として解釈されるべきではない。本願全体に引用される全ての参考文献、Genbank登録事項、特許および公開特許出願の内容は、本明細書中に参照として明白に援用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
(発明の詳細な説明)
本発明は、IRTA−5に特異的に結合し、そしてIRTA−5の機能的性質を阻害する単離されたモノクローナル抗体(特に、ヒトモノクローナル抗体)に関する。特定の実施形態において、本発明の抗体は、特定の重鎖および軽鎖の生殖系列配列に由来し、そして/または特定の構造的特徴(例えば、特定のアミノ酸配列を含むCDR領域)を含む。本発明は、単離された抗体、このような抗体、このような抗体を含む免疫複合体および二重特異性分子を作製する方法ならびに本発明の抗体、免疫複合体または二重特異性分子を含む薬学的組成物を提供する。本発明はまた、IRTA−5を検出することおよびIRTA−5の発現に関連する疾患(例えば、IRTA−5を発現するB細胞の悪性腫瘍)を処置することのような、この抗体を使用する方法に関する。したがって、本発明はまた、B細胞の悪性腫瘍を処置するために(例えば、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、濾胞性リンパ腫、B細胞系のびまん性大細胞型リンパ腫、および多発性骨髄腫の処置において)本発明の抗IRTA−5抗体を使用する方法を提供する。
【0029】
本発明がさらに容易に理解され得るように、特定の用語が、最初に定義される。さらなる定義は、詳細な説明全体に示される。
【0030】
用語「免疫グロブリンスーパーファミリー受容体転座関連遺伝子(immunoglobulin superfamily translocation associated遺伝子)5」と「IRTA−5」とは、交換可能に使用され、そしてヒトIRTA−5の改変体、アイソフォームおよび種のホモログを含む。したがって、特定の場合において、本発明のヒト抗体は、ヒト以外の種由来のIRTA−5と交差反応し得る。他の場合において、この抗体は、ヒトIRTA−5に対して完全に特異的であり得、そして種に関する交差反応性または他の型の交差反応性を示し得ない。ヒトIRTA−5の完全なアミノ酸配列は、Genbank登録番号AAL60250(配列番号37)を有する。
【0031】
用語「IRTA−1」、「IRTA−2」、「IRTA−3」、および「IRTA−4」は、ヒト「IRTA−1」、ヒト「IRTA−2」、ヒト「IRTA−3」、およびヒト「IRTA−4」の改変体、アイソフォームならびに種のホモログを、それぞれ含む。ヒトIRTA−1の完全なアミノ酸配列は、Genbank登録番号NP_112572(配列番号38)を有する。ヒトIRTA−2の完全なアミノ酸配列は、Genbank登録番号NP_112571(配列番号39)を有する。ヒトIRTA−3の完全なアミノ酸配列は、Genbank登録番号AAL59390(配列番号40)を有する。ヒトIRTA−4の完全なアミノ酸配列は、Genbank登録番号AAL60249(配列番号41)を有する。
【0032】
用語「免疫応答」とは、例えば、リンパ球、抗原提示細胞、食細胞、顆粒球、および上記の細胞または肝臓によって産生される可溶性高分子(抗体、サイトカイン、および補体が挙げられる)の作用をいい、この作用は、侵入する病原体、病原体に感染された細胞もしくは組織、癌性の細胞、または自己免疫または病理学的な炎症の場合において、正常なヒト細胞もしくはヒト組織を、選択的に障害するか、選択的に破壊するか、またはヒトの身体から選択的に排除する。
【0033】
「シグナル伝達経路」とは、細胞の1つの部分から細胞の別の部分へシグナルを伝達する役割を果たす多くのシグナル伝達分子の間の生物学的関係をいう。本明細書中で使用される場合、語句「細胞表面受容体」は、例えば、シグナルおよびこのようなシグナルの細胞の原形質膜を横切る伝達を受容し得る、分子ならびに分子の複合体を包含する。本発明の「細胞表面受容体」の例は、IRTA−5受容体である。
【0034】
本明細書中で引用される場合、用語「抗体」は、完全な抗体および任意の抗原結合フラグメント(すなわち、「抗原結合部位」)、またはそれらの単鎖を包含する。「抗体」とは、ジスルフィド結合によって相互に連結した、少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖、またはその抗原結合部位を含む糖タンパク質をいう。それぞれの重鎖は、重鎖可変領域(本明細書中でVHと略される)および重鎖定常領域から構成される。この重鎖定常領域は、3つのドメイン(CH1、CH2およびCH3)から構成される。それぞれの軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書中でVLと略される)および軽鎖定常領域から構成される。この軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL)から構成される。このVH領域およびVL領域はさらに、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存性の領域によって分散され、相補性決定領域(CDR)と称される高可変性の領域に細分される。各VHおよび各VLは、以下の順序でアミノ末端からカルボシキシ末端に配列される3つのCDRおよび4つのFRから構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖の可変領域および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の上記定常領域は、免疫系の種々の細胞(例えば、効果細胞)および古典的補体系の第1成分(C1q)を含む宿主の組織または因子に対する免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0035】
本明細書中で使用される場合、抗体の用語「抗原結合部位」(または単に「抗体部分」)は、抗原(例えば、IRTA−5)に対して特異的に結合する能力を保持する、抗体の1つ以上のフラグメントをいう。抗体の抗原結合機能が、完全長抗体のフラグメントによって果たされ得ることが示されている。抗体に関する用語「抗原結合部位」に包含される結合フラグメントの例としては、(i)Fabフラグメント(VLドメイン、VHドメイン、CLドメインおよびCH1ドメインからなる一価のフラグメント);(ii)F(ab’)2フラグメント(ヒンジ領域におけるジスルフィド架橋によって連結した2つのFabフラグメントからなる二価のフラグメント);(iii)VHドメインおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の単一の腕のVLドメインおよびVHドメインからなるFvフラグメント;(v)VHドメインからなるdAbフラグメント(Wardら、(1989)Nature 341:544−546);ならびに(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。さらに、このFvフラグメントの2つのドメイン(VLおよびVH)は、別個の遺伝子によってコードされるが、これらの遺伝子は、合成リンカーによる組換え方法を使用して接続され得、このリンカーは、VL領域およびVH領域が対形成して、一価の分子を形成する単一のタンパク質鎖としてこれらのドメインが作製されることを可能にする(単鎖Fv(scFv)として公知である;例えば、Birdら、(1988)Science 242:423−426;およびHustonら、(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883を参照のこと)。このような単鎖抗体もまた、抗体に関する用語「抗原結合部位」に包含されることが意図される。これらの抗体フラグメントは、当業者にとって公知である慣習的な技術を使用して得られ、そしてこれらのフラグメントは、インタクトな抗体と同じ様式での利用のためにスクリーニングされる。
【0036】
本明細書中で使用される場合、「単離された抗体」は、異なる抗原の性質を有する他の抗体を実質的に含まない抗体をいうことが意図される(例えば、IRTA−5に特異的に結合する単離された抗体は、IRTA−5以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかし、IRTA−5に特異的に結合する単離された抗体は、他の抗原(例えば、他の種由来のIRTA−5分子)に対する交差反応性を有し得る。さらに、単離された抗体は、他の細胞内物質および/または化学物質を実質的に含まない可能性がある。
【0037】
本明細書中で使用される場合、用語「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」は、単一分子の組成物である抗体分子の調製物をいう。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対して、単一の結合特異性および結合親和性を示す。
【0038】
本明細書中で使用される場合、用語「ヒト抗体」は、フレームワーク領域およびCDR領域の両方がヒト生殖系列の免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を包含することが意図される。さらに、この抗体が定常領域を含む場合、この定常領域はまた、ヒト生殖系列の免疫グロブリン配列に由来する。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖系列の免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロのランダムな変異誘発もしくは部位特異的変異またはインビボの体細胞変異によって導入された変異)を含み得る。しかし、本明細書中で使用される場合、用語「ヒト抗体」は、別の哺乳動物種(例えば、マウス)の生殖系列に由来するCDR配列がヒトのフレームワーク配列に挿入された抗体を包含することを意図されない。
【0039】
用語「ヒトモノクローナル抗体」とは、フレームワーク領域およびCDR領域の両方がヒト生殖系列の免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する、単一の結合特異性を示す抗体をいう。1つの実施形態において、このヒトモノクローナル抗体は、不死化細胞と融合されたヒト重鎖の導入遺伝子およびヒト軽鎖の導入遺伝子を有する、非ヒトトランスジェニック動物(例えば、トランスジェニックマウス)から得られたB細胞を含むハイブリドーマによって産生される。
【0040】
本明細書中で使用される場合、用語「組換えヒト抗体」は、組換え手段によって調製されるか、発現されるか、生成されるか、または単離される全てのヒト抗体(例えば、(a)ヒト免疫グロブリン遺伝子もしくはそこから調製されるハイブリドーマ(以下にさらに記載される)についての遺伝子組換えまたは染色体組換えである動物(例えば、マウス)から単離された抗体、(b)ヒト抗体を発現するように形質転換された宿主細胞から(例えば、トランスフェクトーマ(transfectoma)から)単離された抗体、(c)組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体、および(d)他のDNA配列に対するヒト免疫グロブリン遺伝子配列のスプライシングを包含する任意の他の手段によって調製されるか、発現されるか、生成されるか、または単離される抗体)を含む。このような組換えヒト抗体は、フレームワーク領域およびCDR領域がヒト生殖系列の免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する。しかし、特定の実施形態において、このような組換えヒト抗体は、インビトロの変異誘発(または、ヒトIg配列について遺伝子組換えされた動物が使用される場合は、インビボの体細胞変異誘発)に供され得、したがってこの組換え抗体のVH領域およびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列のVH配列およびVL配列に由来ならびに関連するが、インビボにおけるヒト抗体生殖系列のレパートリー内に天然に存在し得ない配列である。
【0041】
本明細書中で使用される場合、「アイソタイプ」とは、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体のクラス(例えば、IgMまたはIgG1)をいう。
【0042】
語句「抗原を認識する抗体」および「抗原に特異的な抗体」は、本明細書中で、用語「抗原に特異的に結合する抗体」と交換可能に使用される。
【0043】
本明細書中で使用される場合、「ヒトIRTA−5に特異的に結合する」抗体は、5×10−8M以下のKD、より好ましくは3×10−8M以下のKD、およびさらになお好ましくは1×10−9M以下のKDでヒトIRTA−5に結合する抗体をいうことが意図される。
【0044】
本明細書中で使用される場合、用語「Kassoc」または「Ka」は、特定の抗体−抗原相互作用の会合速度をいうことが意図される一方で、本明細書中で使用される場合、用語「Kdis」または「Kd」は、特定の抗体−抗原相互作用の解離速度をいうことが意図される。本明細書中で使用される場合、用語「KD」は、Kaに対するKdの比(すなわち、Kd/Ka)から得られ、そしてモル濃度(M)として表される解離定数をいうことが意図される。抗体についてのKD値は、当該分野において良好に確立された方法を使用して決定され得る。抗体のKDを決定するための好ましい方法は、表面プラズモン共鳴を使用し、好ましくはバイオセンサーシステム(例えば、Biacore(登録商標)システム)を使用することによるものである。
【0045】
本明細書中で使用される場合、IgG抗体に対する用語「高親和性」は、標的抗原に対して、10−8M以下のKDを有し、より好ましくは10−9M以下のKDを有し、そしてさらになお好ましくは10−10M以下のKDを有する抗体をいう。しかし、「高親和性」結合は、他の抗体アイソタイプによって変化し得る。例えば、IgMアイソタイプについての「高親和性」結合とは、10−7M以下のKDを有し、より好ましくは10−8M以下のKDを有する抗体をいう。
【0046】
本明細書中で使用される場合、用語「被験体」は、任意のヒトまたは非ヒト動物を含む。用語「非ヒト動物」は、全ての脊椎動物(例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類などのような哺乳類および非哺乳類)を含む。
【0047】
本発明の種々の局面は、以下の小節において、さらに詳細に記載される。
【0048】
(抗IRTA−5抗体)
特定の生殖系列配列を有する抗体、同種抗体、保存的改変を有する抗体、操作され、かつ改変された抗体を含む本発明の抗体は、この抗体の特定の機能的特徴または機能的性質によって特徴付けられる。例えば、この抗体は、ヒトIRTA−5に特異的に結合する。好ましくは、本発明の抗体は、高親和性(例えば、10−8M以下のKDか、または10−9M以下のKDか、または10−10M以下のKDでさえ)でIRTA−5に結合する。本発明の抗IRTA−5抗体は、好ましくは以下:
(a)5×10−8M以下のKDでヒトIRTA−5に結合し;
(b)ヒトIRTA−1、ヒトIRTA−2、ヒトIRTA−3、およびヒトIRTA−4に実質的に結合せず;そして/または
(c)ヒトBリンパ球およびB細胞腫瘍株に結合するが、CD3+末梢血T細胞、CD1A+末梢血樹状細胞、CD14+末梢血単球、またはCD56+末梢血ナチュラルキラー細胞に実質的に結合しない、
という特性のうちの1つ以上を示す。
より好ましくは、この抗体は、3×10−8M以下のKD、または1×10−9M以下のKD、または0.1×10−9M以下のKD、または0.05×10−9M以下のKD、または1×10−9Mと1×10−11Mとの間のKDでヒトIRTA−5に結合する。
【0049】
特定の実施形態において、抗IRTA−5抗体は、実施例に記載されるような、例示される抗体2G5、5A2、7G8、1E5、7F5、4B7、または2G1の特性を有する。別の実施形態において、抗IRTA−5抗体は、IRTA−5への結合に関して、2G5、5A2、7G8、1E5、7F5、4B7、または2G1のうちの1つ以上と競合する。
【0050】
IRTA−5に対する上記抗体の結合能力を評価する標準的なアッセイは、当該分野において公知であり、このアッセイとしては、例えば、ELISA、ウェスタンブロットおよびRIAが挙げられる。適切なアッセイは、実施例において詳細に記載される。この抗体の結合動態(例えば、結合親和性)はまた、当該分野において公知である標準的なアッセイ(例えば、Biacore分析)によって評価され得る。
【0051】
本発明の抗体は、この抗体が、IRTA−5に対して約10:1より大きく、そして好ましくは約100:1より大きい、他のIRTAの1種に対する選択性を上回る選択性を有する場合に、IRTA−1、IRTA−2、IRTA−3、またはIRTA−4に対して「実質的に結合」しない。選択性は、イムノアッセイによって測定され得る。
【0052】
(モノクローナル抗体2G5、5A2、および7G8)
本発明の好ましい抗体は、実施例1および実施例2に記載されるような、単離され、そして構造的に特徴付けられたヒトモノクローナル抗体2G5、5A2、および7G8である。2G5、5A2、および7G8のVHのアミノ酸配列は、配列番号19、配列番号20、および配列番号21に、それぞれ示される。2G5、5A2、および7G8のVLのアミノ酸配列は、配列番号22、配列番号23、および配列番号24に、それぞれ示される。
【0053】
これらの抗体の各々がIRTA−5に結合し得ることを考えると、これらのVH配列およびVL配列は、「混合されかつマッチングされ(mixed and matched)」て、本発明の他の抗IRTA−5結合分子を生成し得る。このような「混合されかつマッチングされ」た抗体のIRTA−5への結合は、上に記載され、そして実施例に記載される結合アッセイ(例えば、ELISA)を使用して試験され得る。好ましくは、VH鎖およびVL鎖が、混合されかつマッチングされる場合、特定のVH/VL対形成から得たVH配列は、構造的に類似するVH配列によって置換される。同様に、好ましくは、特定のVH/VL対形成から得たVL配列は、構造的に類似するVL配列によって置換される。例えば、2G5および5A2のVH配列ならびにVL配列は、混合および対応に対して、特に従いやすい。なぜならこれらの抗体は、同じ生殖系列配列(VH 3−33およびVk L6)に由来するVH配列およびVL配列を使用し、したがってそれらは、構造的な類似性を示すからである。
【0054】
したがって、1つの局面において、本発明は、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位であって、以下:
(a)配列番号19、配列番号20、および配列番号21からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;ならびに
(b)配列番号22、配列番号23、および配列番号24からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
を含み、
この抗体が、IRTA−5(好ましくは、ヒトIRTA−5)に特異的に結合する、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位を提供する。
重鎖および軽鎖の好ましい組み合わせは、以下を含む:
(a)配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および(b)配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;または
(a)配列番号20のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および(b)配列番号23のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;または
(a)配列番号21のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および(b)配列番号24のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域。
【0055】
別の局面において、本発明は、2G5、5A2、および7G8の重鎖CDR1および軽鎖CDR1、重鎖CDR2および軽鎖CDR2ならびに重鎖CDR3および軽鎖CDR3、またはそれらの組み合わせを含む抗体を提供する。2G5、5A2、および7G8のVHのCDR1のアミノ酸配列は、配列番号1、配列番号2、および配列番号3に示される。2G5、5A2、および7G8のVHのCDR2のアミノ酸配列は、配列番号4、配列番号5、および配列番号6に示される。2G5、5A2、および7G8のVHのCDR3のアミノ酸配列は、配列番号7、配列番号8、および配列番号9に示される。2G5、5A2、および7G8のVkのCDR1のアミノ酸配列は、配列番号10、配列番号11、および配列番号12に示される。2G5、5A2、および7G8のVkのCDR2のアミノ酸配列は、配列番号13、配列番号14、および配列番号15に示される。2G5、5A2、および7G8のVkのCDR3のアミノ酸配列は、配列番号16、配列番号17、および配列番号18に示される。これらのCDR領域は、Kabatシステム(Kabat,E.A.ら、(1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S.Department of Health and Human Services、NIH公開番号91−3242)を使用して表される。
【0056】
これらの抗体の各々がIRTA−5に結合し得、そして抗原結合特異性が、主にCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域によって提供されることを考えると、上記VHのCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列ならびにVkのCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列は、「混合されかつマッチングされ」(すなわち、異なる抗体由来のCDRは、混合されかつマッチングされるが、各抗体は、VHのCDR1、CDR2、およびCDR3ならびにVkのCDR1、CDR2、およびCDR3を含まなければならない)て、本発明の他の抗IRTA−5結合分子を生成し得る。このような「混合されかつマッチングされ」た抗体のIRTA−5への結合は、上記され、そして実施例に記載される結合アッセイ(例えば、ELISA、Biacore分析)を使用して試験され得る。好ましくは、VHのCDR配列が、混合されかつマッチングされる場合、特定のVH配列由来のCDR1配列、CDR2配列および/またはCDR3配列は、構造的に類似する1つ以上のCDR配列によって置換される。同様に、VkのCDR配列が、混合されかつマッチングされる場合、特定のVk配列由来のCDR1配列、CDR2配列および/またはCDR3配列は、好ましくは構造的に類似する1つ以上のCDR配列によって置換される。例えば、2G5、5A2、および7G8のVHのCDR1は、ある程度の構造類似性を共有し、そしてそれによって混合および対応に従いやすい。新規のVH配列およびVL配列が、モノクローナル抗体(抗体2G5、5A2、および7G8)に関して本明細書中に開示されるCDR配列由来の構造的に類似する配列で、1つ以上のVHのCDR領域および/またはVLのCDR領域の配列を置換することによって生成され得る。
【0057】
したがって、別の局面において、本発明は、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位であって、以下:
(a)配列番号1、配列番号2、および配列番号3からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のCDR1;
(b)配列番号4、配列番号5、および配列番号6からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のCDR2;
(c)配列番号7、配列番号8、および配列番号9からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のCDR3;
(d)配列番号10、配列番号11、および配列番号12からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のCDR1;
(e)配列番号13、配列番号14、および配列番号15からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のCDR2;ならびに
(f)配列番号16、配列番号17、および配列番号18からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のCDR3;
を含み、この抗体が、IRTA−5(好ましくはヒトIRTA−5)に特異的に結合する、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位を提供する。
好ましい実施形態において、この抗体は、以下:
(a)配列番号1を含む重鎖可変領域のCDR1;
(b)配列番号4を含む重鎖可変領域のCDR2;
(c)配列番号7を含む重鎖可変領域のCDR3;
(d)配列番号10を含む軽鎖可変領域のCDR1;
(e)配列番号13を含む軽鎖可変領域のCDR2;および
(f)配列番号16を含む軽鎖可変領域のCDR3、
を含む。
別の好ましい実施形態において、この抗体は、以下:
(a)配列番号2を含む重鎖可変領域のCDR1;
(b)配列番号5を含む重鎖可変領域のCDR2;
(c)配列番号8を含む重鎖可変領域のCDR3;
(d)配列番号11を含む軽鎖可変領域のCDR1;
(e)配列番号14を含む軽鎖可変領域のCDR2;および
(f)配列番号17を含む軽鎖可変領域のCDR3、
を含む。
別の好ましい実施形態において、この抗体は、以下:
(a)配列番号3を含む重鎖可変領域のCDR1;
(b)配列番号6を含む重鎖可変領域のCDR2;
(c)配列番号9を含む重鎖可変領域のCDR3;
(d)配列番号12を含む軽鎖可変領域のCDR1;
(e)配列番号15を含む軽鎖可変領域のCDR2;および
(f)配列番号18を含む軽鎖可変領域のCDR3、
を含む。
【0058】
(特定の生殖系列配列を有する抗体)
特定の実施形態において、本発明の抗体は、特定の生殖系列の重鎖免疫グロブリン遺伝子由来の重鎖可変領域および/または特定の生殖系列の軽鎖免疫グロブリン遺伝子由来の軽鎖可変領域を含む。
【0059】
例えば、好ましい実施形態において、本発明は、ヒトVH 3−33遺伝子の産物である重鎖可変領域またはヒトVH 3−33遺伝子に由来する重鎖可変領域を含む、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位を提供し、この抗体は、IRTA−5に特異的に結合する。別の好ましい実施形態において、本発明は、ヒトVH DP44遺伝子、ヒトVH 3−23遺伝子もしくはヒトVH 3−7遺伝子の産物である重鎖可変領域、またはヒトVH DP44遺伝子、ヒトVH 3−23遺伝子もしくはヒトVH 3−7遺伝子に由来する重鎖可変領域を含む、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位を提供し、この抗体は、IRTA−5に特異的に結合する。なお別の好ましい実施形態において、本発明は、ヒトVK L6遺伝子の産物である軽鎖可変領域またはヒトVK L6遺伝子に由来する軽鎖可変領域を含む単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位を、さらになお提供し、この抗体は、IRTA−5に特異的に結合する。なお別の好ましい実施形態において、本発明は、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位を提供し、この抗体は:
(a)ヒトVH 3−33遺伝子、ヒトVH DP44遺伝子、ヒトVH 3−23遺伝子、もしくはヒトVH 3−7遺伝子(配列番号31、配列番号32、配列番号34および配列番号36に示されるアミノ酸配列を、それぞれコードする)の産物である重鎖可変領、またはヒトVH 3−33遺伝子、ヒトVH DP44遺伝子、ヒトVH 3−23遺伝子、もしくはヒトVH 3−7遺伝子に由来する重鎖可変領域を含み;
(b) ヒトVk L6遺伝子の産物である軽鎖可変領域またはヒトVk L6遺伝子(配列番号33に示されるアミノ酸配列をコードする)に由来する軽鎖可変領域を含み;そして
(c)IRTA−5(好ましくはヒトIRTA−5)に特異的に結合する。
【0060】
VH 3−33およびVk L6のVHならびにVKを有する抗体の例としては、2G5および5A2が、それぞれ挙げられる。VH DP44 およびVk L6のVHならびにVKを有する抗体の例としては、それぞれ、7G8が挙げられる。実施例3で議論されるように、VH DP44とVH 3−23およびVH 3−7との構造上の関連性が与えられる場合、これらのさらなる生殖系列配列のいずれかに由来するVH領域を利用する本発明の他のIRTA−5抗体が、選択され得ることが予期される。
【0061】
本明細書中で使用される場合、ヒト抗体は、上記抗体の可変領域がヒト生殖系列の免疫グロブリン遺伝子を使用するシステムから得られる場合、特定の生殖系列配列「の産物」であるか、もしくは特定の生殖系列配列「に由来する」重鎖可変領域または軽鎖可変領域を含む。このようなシステムは、ヒト免疫グロブリン遺伝子を保有するトランスジェニックマウスを目的の抗原によって免疫する工程またはファージ上に示されるヒト免疫グロブリン遺伝子のライブラリーを目的の抗原によってスクリーニングする工程を包含する。ヒト生殖系列の免疫グロブリン配列「の産物」であるか、またはヒト生殖系列の免疫グロブリン配列「に由来する」ヒト抗体は、例えば、ヒト抗体のアミノ酸配列をヒト生殖系列の免疫グロブリンのアミノ酸配列と比較し、そして配列がヒト抗体の配列に最も近い(すなわち、最も大きい同一性の%)ヒト生殖系列の免疫グロブリン配列を選択することによって同定され得る。ヒト生殖系列の免疫グロブリン配列「の産物」であるか、またはヒト生殖系列の免疫グロブリン配列「に由来する」ヒト抗体は、例えば、天然に存在する体細胞変異または部位特異的変異の意図的な導入に起因して、この生殖系列配列と比べて異なるアミノ酸を含み得る。しかし、選択されたヒト抗体は、代表的に、アミノ酸配列がヒト生殖系列の免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であり、そしてヒトを他の種の生殖系列(例えば、マウス生殖系列配列)の免疫グロブリンのアミノ酸配列と比較した場合に、ヒト抗体を同定するアミノ酸残基を含む。特定の場合において、ヒト抗体は、そのアミノ酸配列が、生殖系列の免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と少なくとも95%同一であり得るか、または少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一でさえあり得る。代表的に、特定のヒト生殖系列配列に由来するヒト抗体は、ヒト生殖系列の免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と異なる、10個以下のアミノ酸を示す。特定の場合において、このヒト抗体は、この生殖系列の免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と異なる、5個以下か、またはさらに4個以下か、3個以下か、2個以下か、もしくは1個以下のアミノ酸を示し得る。
【0062】
(同種抗体)
なお別の実施形態において、本発明の抗体は、本明細書中に記載される好ましい抗体のアミノ酸配列と同種であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、そしてこの抗体は、本発明の抗IRTA−5抗体の所望の機能的性質を保持する。
【0063】
例えば、本発明は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位を提供し、ここで:
(a)この重鎖可変領域が、配列番号19、配列番号20、および配列番号21からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%相同であるアミノ酸配列を含み;
(b)この軽鎖可変領域が、配列番号22、配列番号23、および配列番号24からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%相同であるアミノ酸配列を含み;
(c)この抗体が、5×10−8M以下のKDでヒトIRTA−5に結合し;
(d)この抗体が、ヒトIRTA−1、ヒトIRTA−2、ヒトIRTA−3、およびヒトIRTA−4に実質的に結合せず;そして
(e)この抗体が、ヒトBリンパ球およびB細胞腫瘍株に結合するが、CD3+末梢血T細胞、CD1A+末梢血樹状細胞、CD14+末梢血単球、またはCD56+末梢血ナチュラルキラー細胞に実質的に結合しない。
【0064】
種々の実施形態において、上記抗体は、例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体であり得る。
【0065】
他の実施形態において、上記VHおよび/またはVLのアミノ酸配列は、上記に示される配列と85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%相同であり得る。上記に示される配列のVH領域およびVL領域に対して高い相同性(すなわち、80%以上)を有するVH領域およびVL領域を有する抗体は、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、または配列番号30をコードする核酸分子の変異誘発(例えば、部位特異的変異誘発またはPCRを介する変異誘発)を行い、次いで本明細書中に記載される機能アッセイを使用して、保持される機能(すなわち、上記の(c)および(d)に示される機能)についてコードされる変更された抗体を試験することによって得られ得る。
【0066】
本明細書中で使用される場合、2つのアミノ酸配列の間の相同性の%は、2つの配列の間の同一性の%に相当する。これら2つの配列の間の同一性の%は、これら2つの配列の最適なアラインメントのために導入される必要があるギャップの数および各ギャップの長さに配慮した、これらの配列によって共有される同じ位置の数の関数(すなわち、相同性の%=同じ位置の数/位置の総数×100)である。配列の比較および2つの配列の間の同一性の%の決定は、以下の非限定的な例に記載されるように、数学的アルゴリズムを使用して達成され得る。
【0067】
2つのアミノ酸配列の間の同一性の%は、PAM120重み残基表、12のギャップ長ペナルティーおよび4のギャップペナルティーを使用する、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれたE.MeyersおよびW.Miller(Comput.Appl.Biosci.、4:11−17(1988))のアルゴリズムを使用して決定され得る。さらに、2つのアミノ酸配列の間の同一性の%は、Blossum 62マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれか、および16、14、12、10、8、6、または4のギャップの重み付けおよび1、2、3、4、5、または6の長さの重み付けを使用する、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comにて利用可能)のGAPプログラム中に組み込まれたNeedlemanおよびWunsch(J.Mol.Biol.48:444−453(1970))のアルゴリズムを使用して決定され得る。
【0068】
さらに、または代替的に、本発明のタンパク質配列は、例えば、関連する配列を同定するために、公的データベースに対して検索を行うための「クエリー配列」としてさらに使用され得る。このような検索は、Altschulら、(1990)J.Mol.Biol.215:403−10のXBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して行われ得る。BLASTタンパク質検索は、本発明の抗体分子と相同なアミノ酸配列を得るために、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3によって行われ得る。比較目的のためのギャップ付き(gapped)アラインメントを得るために、Gapped BLASTが、Altschulら、(1997)Nucleic Acids Res.25(17):3389−3402に記載される通りに利用され得る。BLASTプログラムおよびGapped BLASTプログラムが利用される場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)の初期設定パラメーターが、使用され得る。http://www.ncbi.nlm.nih.govを参照のこと。
【0069】
(保存的改変を有する抗体)
特定の実施形態において、本発明の抗体は、CDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含む重鎖可変領域ならびにCDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域を含み、これらのCDR配列のうちの1つ以上は、本明細書中に記載される好ましい抗体(例えば、2G5、5A2、または7G8)、またはその保存的改変に基づく特定のアミノ酸配列を含み、そしてこの抗体は、本発明の抗IRTA−5抗体の所望の機能的性質を保持する。したがって、本発明は、CDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含む重鎖可変領域ならびにCDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域を含む単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位を提供し、ここで:
(a)この重鎖可変領域のCDR3配列が、配列番号7、配列番号8、および配列番号9のアミノ酸配列、ならびにそれらの保存的改変のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み;
(b)この軽鎖可変領域のCDR3配列が、配列番号16、配列番号17、および配列番号18のアミノ酸配列、ならびにそれらの保存的改変のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み;
(c)この抗体が、5×10−8M以下のKDでヒトIRTA−5に結合し;
(d)この抗体が、ヒトIRTA−1、ヒトIRTA−2、ヒトIRTA−3、およびヒトIRTA−4に実質的に結合せず;そして
(e)この抗体が、ヒトBリンパ球およびB細胞腫瘍株に結合するが、CD3+末梢血T細胞、CD1A+末梢血樹状細胞、CD14+末梢血単球、またはCD56+末梢血ナチュラルキラー細胞に実質的に結合しない。
【0070】
好ましい実施形態において、上記重鎖可変領域のCDR2配列は、配列番号4、配列番号5、および配列番号6のアミノ酸配列、ならびにそれらの保存的改変のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み;そして上記軽鎖可変領域のCDR2配列は、配列番号13、配列番号14、および配列番号15のアミノ酸配列、ならびにそれらの保存的改変のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。別の好ましい実施形態において、上記重鎖可変領域のCDR1配列は、配列番号1、配列番号2、および配列番号3のアミノ酸配列、ならびにそれらの保存的改変のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み;そして上記軽鎖可変領域のCDR1配列は、配列番号10、配列番号11、および配列番号12のアミノ酸配列、ならびにそれらの保存的改変のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0071】
種々の実施形態において、上記抗体は、例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体であり得る。
【0072】
本明細書中で使用される場合、用語「保存的な配列改変」は、そのアミノ酸配列を含む抗体の結合特性に顕著に影響しないか、またはそれを顕著に変えないアミノ酸改変をいうことが意図される。このような保存的改変としては、アミノ酸の置換、付加および削除が挙げられる。改変は、当該分野において公知である標準的な方法(例えば、部位特異的変異誘発およびPCRを介する変異誘発)によって、本発明の抗体に導入され得る。保存的なアミノ酸の置換は、アミノ酸残基が同様の側鎖を有するアミノ酸残基によって置換されることである。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該分野において定義されている。これらのファミリーとしては、塩基性の側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性の側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷の極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β−分枝状側鎖を有するアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が挙げられる。したがって、本発明の抗体のCDR領域内の1個以上のアミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーからの他のアミノ酸残基によって置換され得、そしてこの変更された抗体は、本明細書中に記載される機能アッセイを使用して、保持される機能(すなわち、上記の(c)〜(j)に示される機能)について試験され得る。
【0073】
(本発明の抗IRTA−5抗体と同じエピトープに結合する抗体)
別の実施形態において、本発明は、本発明の抗IRTA−5モノクローナル抗体のいずれかと、同じヒトIRTA−5上のエピトープに結合する抗体(すなわち、IRTA−5に対する結合に関して、本発明のモノクローナル抗体のいずれかと相互の競合する能力を有する抗体)を提供する。7つの抗IRTA−5抗体(2G5、5A2、7G8、4B7、7F5、4B7および2G1)のエピトープマッピングは、Biacore分析(実施例4を参照のこと)によって決定され、そしてこれらの抗体は、図8に模式的に示される3つのエピトープ群に分類されることが示された。本発明は、これらのエピトープ群のいずれかの範囲に含まれる抗IRTA5抗体を包含し、このことは、上記で同定された抗体を用いる相互競合(cross−competition)研究によって決定され得る。好ましい実施形態において、相互競合研究のための参照抗体は、モノクローナル抗体2G5(配列番号19および配列番号22に示されるようなVH配列ならびにVL配列を有する)、モノクローナル抗体5A2(配列番号20および配列番号23に示されるようなVH配列ならびにVL配列を有する)、またはモノクローナル抗体7G8(配列番号21および配列番号24に示されるようなVH配列ならびにVL配列を有する)であり得る。このような相互に競合する抗体は、標準的なIRTA−5結合アッセイにおいて、2G5、5A2、または7G8と相互に競合するそれらの能力に基づいて同定され得る。例えば、BIAcore分析、ELISAアッセイまたはフローサイトメトリーは、現行の発明の抗体との相互競合を実証するために使用され得る。例えば、ヒトIRTA−5に対する2G5、5A2、または7G8の結合を阻害する試験抗体の能力は、この試験抗体がヒトIRTA−5に結合するために2G5、5A2、または7G8と競合し得ることを実証し、したがってこの試験抗体は、2G5、5A2、または7G8と同じヒトIRTA−5上のエピトープに結合する。好ましい実施形態において、2G5、5A2、または7G8と、同じヒトIRTA−5上のエピトープに結合する抗体は、ヒトモノクローナル抗体である。このようなヒトモノクローナル抗体は、実施例に記載される通りに、調製され得、そして単離され得る。
【0074】
(操作および改変された抗体)
本発明の抗体は、改変された抗体を操作するための出発物質として本明細書中に開示されるVH配列および/またはVL配列の1つ以上を有する抗体を使用して、さらに調製され得、この改変された抗体は、この出発抗体から変化した性質を有し得る。抗体は、一方または両方の可変領域(すなわち、VHおよび/またはVL)内(例えば、1つ以上のCDR領域内および/または1つ以上のフレームワーク領域内)の1個以上の残基を改変することによって操作され得る。さらに、または代替的に、抗体は、例えば、抗体の1つ以上のエフェクター機能を変更するために、1つ以上の定常領域内の残基を改変することによって操作され得る。
【0075】
実施され得る可変領域の操作の1つの型は、CDR移植である。抗体は、6個の重鎖および軽鎖の相補性決定領域(CDR)中に配置されるアミノ酸残基によって、標的抗原と優勢に相互作用する。この理由に関して、CDR内のアミノ酸配列は、個々の抗体の間において、CDRの外側の配列より多様である。なぜならCDR配列は、ほとんどの抗体−抗原相互作用を引き起こし、異なる性質を有する異なる抗体由来のフレームワーク配列上に移植された天然に存在する特定の抗体由来のCDR配列を含む発現ベクターを構築することによって、天然に存在する特定の抗体の性質を模倣する組換え抗体を発現することが可能だからである(例えば、Riechmann,L.ら、(1998)Nature 332:323−327;Jones,P.ら、(1986)Nature 321:522−525;Queen,C.ら、(1989)Proc.Natl.Acad.See.U.S.A.86:10029−10033;Winterの米国特許第5,225,539号、ならびにQueenらの米国特許第5,530,101号;同第5,585,089号;同第5,693,762号および同第6,180,370号を参照のこと)。
【0076】
したがって、本発明の別の実施形態は、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位に関連し、この単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位は、それぞれ、配列番号1、配列番号2、および配列番号3;配列番号4、配列番号5、および配列番号6;ならびに配列番号7、配列番号8、および配列番号9からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域、ならびにそれぞれ、配列番号10、配列番号11、および配列番号12;配列番号13、配列番号14、および配列番号15;ならびに配列番号16、配列番号17、および配列番号18からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0077】
このようなフレームワーク配列は、生殖系列の抗体遺伝子配列を含む、公的なDNAデータベースまたは刊行された参考文献から得られ得る。例えば、ヒトの重鎖可変領域遺伝子および軽鎖可変領域遺伝子に関する生殖系列のDNA配列は、「VBase」ヒト生殖系列配列のデータベース(インターネット上のwww.mrc−cpe.cam.ac.uk/vbaseにて利用可能)、ならびにKabat,E.A.ら、(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S.Department of Health and Human Services、NIH公開番号91−3242;Tomlinson,I.M.ら、(1992)「The Repertoire of Human Germline VH Sequences Reveals about Fifty Groupsof VH Segments with Different Hypervariable Loops」、J.Mol.Biol.227:776−798;およびCox,J.P.L.ら、(1994)「A Directory of Human Germ−line VH Segments Reveals a Strong Bias in their Usage」、Eur.J.Immunol.24:827−836(これらの各々の内容は、本明細書中に参考として明白に援用される)に見出され得る。
【0078】
本発明の抗体における使用のために好ましいフレームワーク配列は、本発明の選択された抗体に使用されるフレームワーク配列と構造的に類似する配列である(例えば、好ましい本発明のモノクローナル抗体によって使用される、VH 3−33配列(配列番号31)および/またはVH DP44配列(配列番号32)および/またはVH 3−23配列(配列番号34)および/またはVH 3−7配列(配列番号35)および/またはVk L6フレームワーク配列(配列番号33)と類似する)。VHのCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列、ならびにVKのCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列は、フレームワーク配列が由来する生殖系列の免疫グロブリン遺伝子中に見出される配列と同じ配列を有するフレームワーク領域上に移植され得るか、またはこれらのCDR配列は、この生殖系列配列と比較した場合に、1つ以上の変異を含むフレームワーク領域上に移植され得る。例えば、特定の場合において、これらの抗体の抗原結合能力を維持するか、または増強するためにフレームワーク領域の残基を変異させることは、有利であることが見出された(例えば、Queenらの米国特許第5,530,101号;同第5,585,089号;同第5,693,762号および同第6,180,370号)。
【0079】
可変領域の改変の別の型は、VHおよび/もしくはVKのCDR1領域、CDR2領域ならびに/またはCDR3領域内のアミノ酸残基を変異させ、それによって目的の抗体の1つ以上の結合する性質(例えば、親和性)を改良することである。部位特異的変異誘発またはPCRを介する変異誘発は、1つ以上の変異を導入するために行われ得、そして抗体の結合における効果、または目的とする他の機能的性質は、本明細書に記載され、そして実施例に提供されるようなインビトロアッセイまたはインビボアッセイにおいて評価され得る。好ましい保存的改変(上記で議論されるような)が、導入される。この変異は、アミノ酸の置換、付加または削除であり得るが、好ましくは置換である。さらに、代表的に、CDR領域内の1残基以下、2残基以下、3残基以下、4残基以下、または5残基以下が、変更される。
【0080】
したがって、別の実施形態において、本発明は、以下を含む重鎖可変領域を含む単離された抗IRTA−5モノクローナル抗体、またはその抗原部位を提供する:(a)配列番号1、配列番号2、および配列番号3からなる群より選択されるアミノ酸配列、あるいは配列番号1、配列番号2、および配列番号3と比較した場合に、1個、2個、3個、4個、もしくは5個のアミノ酸の置換、削除または付加を有するアミノ酸配列を含むVHのCDR1領域;(b)配列番号4、配列番号5、および配列番号6からなる群より選択されるアミノ酸配列、あるいは配列番号4、配列番号5、および配列番号6と比較した場合に、1個、2個、3個、4個、もしくは5個のアミノ酸の置換、削除または付加を有するアミノ酸配列を含むVHのCDR2領域;(c)配列番号7、配列番号8、および配列番号9からなる群より選択されるアミノ酸配列、あるいは配列番号7、配列番号8、および配列番号9と比較した場合に、1個、2個、3個、4個、もしくは5個のアミノ酸の置換、削除または付加を有するアミノ酸配列を含むVHのCDR3領域;(d)配列番号10、配列番号11、および配列番号12からなる群より選択されるアミノ酸配列、あるいは配列番号10、配列番号11、および配列番号12と比較した場合に、1個、2個、3個、4個、もしくは5個のアミノ酸の置換、削除または付加を有するアミノ酸配列を含むVKのCDR1領域;(e)配列番号13、配列番号14、および配列番号15からなる群より選択されるアミノ酸配列、あるいは配列番号13、配列番号14、および配列番号15と比較した場合に、1個、2個、3個、4個、もしくは5個のアミノ酸の置換、削除または付加を有するアミノ酸配列を含むVKのCDR2領域;ならびに(f)配列番号16、配列番号17、および配列番号18からなる群より選択されるアミノ酸配列、あるいは配列番号16、配列番号17、および配列番号18と比較した場合に、1個、2個、3個、4個、もしくは5個のアミノ酸の置換、削除または付加を有するアミノ酸配列を含むVKのCDR3領域。
【0081】
本発明の操作された抗体としては、改変が、例えば、抗体の性質を改良するためにVHおよび/またはVK内のフレームワーク残基に作製される抗体が挙げられる。代表的に、このようなフレームワークの改変は、これらの抗体の免疫原性を減少させるために行われる。例えば、1つのアプローチは、1つ以上のフレームワーク残基を対応する生殖系列配列まで「変異の修正をする(backmutate)」ことである。より具体的には、体細胞変異を受けた抗体は、抗体が由来する生殖系列配列と異なるフレームワーク残基を含み得る。このような残基は、この抗体のフレームワーク配列を、この抗体が由来する生殖系列配列と比較することによって同定され得る。例えば、2G5に関して、VHのアミノ酸残基番号4(FR1内の)は、バリンであるが、VH 3−33の生殖系列配列に対応するこの残基は、ロイシンである。このフレームワーク領域配列をこれらの生殖系列の構成に戻すために、この体細胞変異は、例えば、部位特異的変異誘発またはPCRを介する変異誘発によって、この生殖系列配列まで「バックミューテーションされ(backmutated)」得る(例えば、5A2のVHのFR1の残基番号4は、バリンからロイシンに「バックミューテーションされ」得る)。
【0082】
別の例として、7G8に関して、VHのアミノ酸残基番号1(FR1内の)は、アスパラギン酸であるが、対応するVH DP44の生殖系列配列におけるこの残基は、グルタミン酸である。このフレームワーク領域配列をこれらの生殖系列の構成に戻すために、例えば、VHの7G8の残基番号1は、アスパラギン酸からグルタミン酸に「バックミューテーションされ」得る。このような「バックミューテーションされ」た抗体もまた、本発明に包含されることが意図される。
【0083】
なお別の例として、7G8に関して、VHのアミノ酸残基番号3(FR1内の)は、ヒスチジンであるが、対応するVH DP44の生殖系列配列におけるこの残基は、グルタミンである。このフレームワーク領域配列をこれらの生殖系列の構成に戻すために、例えば、7G8のVHの残基番号3は、ヒスチジンからグルタミンに「バックミューテーションされ」得る。このような「バックミューテーションされ」た抗体もまた、本発明に包含されることが意図される。
【0084】
なお別の例として、7G8に関して、VHのアミノ酸残基番号37(FR2内の)は、イソロイシンであるが、対応するVH DP44の生殖系列配列におけるこの残基は、バリンである。このフレームワーク領域配列をこれらの生殖系列の構成に戻すために、例えば、7G8のVHの残基番号37(FR2の残基番号2)は、イソロイシンからバリンに「バックミューテーションされ」得る。このような「バックミューテーションされ」た抗体もまた、本発明に包含されることが意図される。
【0085】
なお別の例として、7G8に関して、VHのアミノ酸残基番号44(FR2内の)は、アスパラギン酸であるが、対応するVH DP44の生殖系列配列におけるこの残基は、グリシンである。このフレームワーク領域配列をこれらの生殖系列の構成に戻すために、例えば、7G8のVHの残基番号44(FR2の残基番号9)は、アスパラギン酸からグリシンに「バックミューテーションされ」得る。このような「バックミューテーションされ」た抗体もまた、本発明に包含されることが意図される。
【0086】
なお別の例として、2G5に関して、VKのアミノ酸残基番号85(FR3内の)は、ロイシンであるが、対応するVK L6の生殖系列配列におけるこの残基は、バリンである。このフレームワーク領域配列をこれらの生殖系列の構成に戻すために、例えば、2G5のVKの残基番号85(FR3の残基番号29)は、ロイシンからバリンに「バックミューテーションされ」得る。このような「バックミューテーションされ」た抗体もまた、本発明に包含されることが意図される。
【0087】
好ましい実施形態において、7G8のVH内の特定の残基は、他のヒトの生殖系列配列中の残基と同一であるかまたは類似する残基に変異される(実施例3においてさらに議論される)。例えば、本発明はまた、位置13のヒスチジンがリジンまたはグルタミンに変異し、そして位置87のメチオニンがトレオニンに変異した7G8(mut)の重鎖可変領域を提供する。7G8(mut)のVHのアミノ酸配列は、配列番号36に示される。したがって、別の実施形態において、本発明は、配列番号36のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号22、配列番号23または配列番号24(好ましくは、配列番号24)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体を提供する。
【0088】
フレームワークの改変の別の型は、このフレームワーク領域内(または、1つ以上のCDR領域内でさえ)の1個以上の残基を変異させて、T細胞エピトープを除去し、それによってこの抗体の潜在的な免疫原性を減少させる工程を包含する。このアプローチはまた、「脱免疫化(deimmunization)」と称され、そしてCarrらの米国特許公開番号第20030153043号に、さらに詳細に記載される。
【0089】
上記フレームワーク領域またはCDR領域内に作製される改変に加えてか、またはそれに代えて、本発明の抗体は、Fc領域内に改変を含むように操作され得、代表的にはこの抗体の1つ以上の機能的性質(例えば、血清半減期、補体結合、Fc受容体の結合、および/または抗体依存性細胞媒介性細胞傷害)を変更するように操作され得る。さらに、本発明の抗体は、上記の場合と同じくこの抗体の1つ以上の機能的性質を変更するために、化学的に改変されても(例えば、1つ以上の化学的部分が、この抗体に接続され得る)、抗体のグリコシル化を変更ように改変されてもよい。これらの実施形態の各々は、以下でさらに詳細に記載される。上記Fc領域中の残基の番号付けは、EU index of Kabatの番号付けである。
【0090】
1つの実施形態において、CH1のヒンジ領域は、このヒンジ領域中のシステイン残基が変更される(例えば、増加されるかまたは減少される)ように改変される。このアプローチは、Bodmerらによる米国特許第5,677,425号に、さらに記載される。CH1のヒンジ領域中のシステイン残基の数は、例えば、これらの軽鎖および重鎖の組み立てを促進するためか、またはこの抗体の安定性を増加させるか、もしくは減少させるために、変更される。
【0091】
別の実施形態において、抗体のFcヒンジ領域は、この抗体の生物学的半減期を減少させるために変異される。より具体的には、1つ以上のアミノ酸変異は、この抗体がネイティブなFc−ヒンジドメインのStaphylococcylタンパク質A(SpA)結合に対して障害されたSpA結合を有するように、このFc−ヒンジフラグメントのCH2−CH3ドメインの界面領域中に導入される。このアプローチは、Wardらの米国特許第6,165,745号に、さらに詳細に記載される。
【0092】
別の実施形態において、上記抗体は、その生物学的半減期が増加するように改変される。種々のアプローチが、可能である。例えば、以下の変異の1つ以上が、Wardの米国特許第6,277,375号に記載されるように導入される:T252L、T254S、T256F。あるいは、生物学的半減期を増加させるために、この抗体は、Prestaらの米国特許第5,869,046号および同第6,121,022号に記載されるように、IgGのFc領域のCH2ドメインの2つのループから受け継がれるサルベージ受容体結合エピトープ(salvage receptor binding epitope)を含むためにCH1またはCL領域内で変更され得る。
【0093】
なお他の実施形態において、上記Fc領域は、上記抗体の1つ以上のエフェクター機能を変更するために、少なくとも1個のアミノ酸残基を異なるアミノ酸残基で置換することによって変更される。例えば、アミノ酸残基234、235、236、237、297、318、320および322から選択される1個以上のアミノ酸は、この抗体がエフェクターリガンド対する変更された親和性を有しながらも、本発明の抗体の抗原結合能力を保持するように、異なるアミノ酸残基で置換され得る。抗体の親和性が変更されるエフェクターリガンドは、例えば、Fc受容体または補体のC成分であり得る。このアプローチは、両方ともWinterらのものである米国特許第5,624,821号および同第5,648,260号に、さらに詳細に記載される。
【0094】
別の例において、アミノ酸残基329、331および322から選択される1個以上のアミノ酸は、変更されたC1q結合および/または減少したか、もしくは消失した補体依存性細胞障害(CDC)を有するように、異なるアミノ酸残基で置換され得る。このアプローチは、Idusogieらの米国特許第6,194,551号に、さらに詳細に記載される。
【0095】
別の例において、アミノ酸の位置231と239との範囲内の1個以上のアミノ酸残基は、変更され、それによって補体を固定するこの抗体の能力を変更する。このアプローチは、BodmerらのPCT国際公開第94/29351号に、さらに詳細に記載される。
【0096】
なお別の例において、上記Fc領域は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を媒介し、そして/またはFcγ受容体に対するこの抗体の親和性を増加するこの抗体の能力を増加するために、以下の位置における1個以上のアミノ酸を改変することによって改変される:238、239、248、249、252、254、255、256、258、265、267、268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、293、294、295、296、298、301、303、305、307、309、312、315、320、322、324、326、327、329、330、331、333、334、335、337、338、340、360、373、376、378、382、388、389、398、414、416、419、430、434、435、437、438または439。このアプローチは、PrestaのPCT国際公開第00/42072号に、さらに記載される。さらに、ヒトIgG1上のFcγR1、FcγRII、FcγRIIIおよびFcRnに対する結合部位は、マッピングされそして改善された結合を有する改変体が、記載された(Shields,R.L.ら、(2001)J.Biol.Chem.276:6591−6604を参照のこと)。位置256、290、298、333、334および339における特定の変異は、FcγRIIIに対する結合を改良することを示した。さらに、以下の変異の組み合わせは、FcγRIII結合を改善することを示した:T256A/S298A、S298A/E333A、S298A/K224AおよびS298A/E333A/K334A。
【0097】
さらに別の実施形態において、グリコシル化抗体のグリコシル化が改変された。例えば、非グリコシル化(aglycoslated)抗体が作製され得る(すなわち、抗体が、グリコシル化を欠く)。グリコシル化は、例えば、抗原に対する抗体の親和性を増加するために変更され得る。このような糖質の改変は、抗体配列内の1つ以上の部位のグリコシル化を変更することによって達成され得る。例えば、1個以上のアミノ酸の置換は、1つ以上の可変領域フレームワークのグリコシル化部位の排除を生じるように行われ得、それによってこれらの部位におけるグリコシル化を排除する。このようなグリコシル化の妨害(aglycosylation)は、抗原に対する抗体の親和性を増加し得る。このようなアプローチは、Coらの米国特許第5,714,350号および同第6,350,861号に、さらに詳細に記載される。
【0098】
さらに、または代替的に、抗体は、グリコシル化の変更された型(例えば、減少した量のフコシル残基を有する低フコシル化抗体または増加した2等分のGlcNac構造を有する抗体)を有するように作製され得る。このような変更されたグリコシル化パターンは、抗体のADCC能力を増加することが実証された。このような糖質の改変は、例えば、変更されたグリコシル化機構を有する宿主細胞中でこの抗体を発現することによって達成され得る。変更されたグリコシル化機構を有する細胞は、当該分野において記載され、そして本発明の組換え抗体を発現する宿主細胞として使用され得、変更されたグリコシル化を伴う抗体を産生する。例えば、細胞株Ms704、Ms705、およびMs709は、フコシルトランスフェラーゼ遺伝子FUT8(α(1,6)フコシルトランスフェラーゼ)を欠き、その結果、Ms704細胞株、Ms705細胞株、およびMs709細胞株中で発現される抗体は、この抗体の糖質においてフコースを欠く。Ms704 FUT8−/−細胞株、Ms705 FUT8−/−細胞株、およびMs709 FUT8−/−細胞株は、2つの置換ベクターを使用する、CHO/DG44細胞中のFUT8遺伝子の標的化された破壊によって作製された(Yamaneらの米国特許公開番号第20040110704号およびYamane−Ohnukiら、(2004)Biotechnol Bioeng 87:614−22を参照のこと)。別の例として、Hanaiらの欧州特許第1,176,195号は、機能的に破壊された、フコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子を有する細胞株を記載する。このような細胞株中で発現される抗体は、α1,6結合に関連する酵素が減少するか、または排除されることによって低フコシル化を示す。Hanaiらはまた、この抗体のFc領域に結合するN−アセチルグルコサミンに対するフコースの付加に関して低い酵素活性を有するか、またはこの酵素活性を有さない細胞株(例えば、ラット骨髄腫細胞株YB2/0(ATCC CRL 1662))を記載する。PrestaのPCT国際公開第03/035835号は、Asn(297)に連結した糖質に対してフコースを結合させる能力が減少した、改変体CHO細胞株(Lec13細胞)を記載し、この細胞株もまた、宿主細胞中で発現される抗体の低フコシル化を生じる(Shields,R.L.ら、(2002)J Biol.Chem.277:26733−26740も参照のこと)。UmanaらのPCT国際公開第99/54342号は、操作された細胞株中で発現される抗体が、抗体の増加したADCC活性を生じる増加した2等分のGlcNac構造を示すような、糖タンパク質を改変するグリコシルトランスフェラーゼ(例えば、β(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII))を発現するように操作された細胞株を記載する(Umanaら、(1999)Nat.Biotech.17:176−180も参照のこと)。あるいは、抗体のフコシル残基は、フコシダーゼ酵素を使用して切断され得る。例えば、フコシダーゼ(α−L−フコシダーゼ)は、抗体からフコシル残基を除去する(Tarentino,A.L.ら、(1975)Biochem.14:5516−23)。
【0099】
本発明によって企図される本明細書中の抗体の別の改変は、ポリエチレングリコール化(pegylation)である。抗体は、例えば、抗体の生物学的(例えば、血清)半減期を増加させるためにポリエチレングリコール化され得る。抗体をポリエチレングリコール化するために、抗体、またはそのフラグメントは、代表的に、1つ以上のPEGが抗体または抗体フラグメントに結合される条件下において、ポリエチレングリコール(PEG)(例えば、反応性エステルまたはPEGのアルデヒド誘導体)と反応される。好ましくは、このポリエチレングリコール化は、反応性のPEG分子(または類似する反応性の水溶性ポリマー)を用いるアシル化反応またはアルキル化反応を介して行われる。本明細書中で使用される場合、用語「ポリエチレングリコール」は、他のタンパク質を誘導体化するために使用されるPEGの形態のいずれか(例えば、モノ(C1〜C10)アルコキシ−ポリエチレングリコールもしくはモノ(C1〜C10)アルコキシ−ポリエチレングリコールまたはモノ(C1〜C10)アルコキシ−ポリエチレングリコール−マレイミドもしくはモノ(C1〜C10)アルコキシ−ポリエチレングリコール−マレイミド)を包含することが意図される。特定の実施形態において、ポリエチレングリコール化される抗体は、グリコシル化を妨害された抗体である。タンパク質をポリエチレングリコール化するための方法は、当該分野において公知であり、そして本発明の抗体に適用され得る。例えば、Nishimuraらの欧州特許第0 154 316号およびIshikawaらの欧州特許第0 401 384号を参照のこと。
【0100】
(抗体を操作する方法)
上で議論されるように、本明細書中で開示されるVH配列およびVK配列を有する抗IRTA−5抗体は、VH配列および/またはVK配列、またはそれらに結合している定常領域を改変することにより、新規な抗IRTA−5抗体を作製するために使用され得る。したがって、本発明の別の局面において、本発明の抗IRTA−5抗体(例えば、2G5、5A2または7G8)の構造的特徴は、構造的に関連する抗IRTA−5抗体を作製するために使用され、この抗体は、本発明の抗体の少なくとも1つの機能特性(例えば、ヒトIRTA−5への結合)を保持する。例えば、2G5、5A2または7G8の1以上のCDR領域、またはこれらの変異体は、上で議論されるように、組換え的に操作されたさらなる本発明の抗IRTA−5抗体を作製するために、公知のフレームワーク領域および/または他のCDRと組換え的に結合され得る。他の型の改変としては、前の節で記載された改変が挙げられる。この操作方法についての出発物質は、本明細書中で提供される1以上のVH配列および/またはVK配列またはその1以上のCDR領域である。操作された抗体を作製するために、本明細書中で提供される1以上のVH配列および/またはVK配列、またはその1以上のCDR領域を有する抗体を、実際に調製する(すなわち、タンパク質として発現する)必要はない。むしろ、この配列に含まれる情報は、元の配列に由来する「第2世代」配列を作製するために出発物質として使用され、次いで、その「第2世代」配列が、調製され、タンパク質として発現される。
【0101】
したがって、別の実施形態において、本発明は、抗IRTA−5抗体を調製するための方法を提供し、この方法は、以下の工程:
(a)(i)配列番号1、配列番号2、および配列番号3からなる群より選択されるCDR1配列、配列番号4、配列番号5、および配列番号6からなる群より選択されるCDR2配列、ならびに/もしくは配列番号7、配列番号8、および配列番号9からなる群より選択されるCDR3配列を含む、重鎖可変領域の抗体配列;ならびに/または(ii)配列番号10、配列番号11、および配列番号12からなる群より選択されるCDR1配列、配列番号13、配列番号14、および配列番号15からなる群より選択されるCDR2配列、ならびに/もしくは配列番号16、配列番号17、および配列番号18からなる群より選択されるCDR3配列を含む軽鎖可変領域の抗体の配列を、提供する工程;
(b)上記重鎖可変領域の抗体配列および/または上記軽鎖可変領域の抗体配列内の少なくとも1つのアミノ酸残基を変更して、少なくとも1つの変更された抗体の配列を作製する工程;ならびに
(c)この変更された抗体の配列をタンパク質として発現させる工程
を包含する。
【0102】
標準的分子生物学技術が、この変更された抗体配列を調製しそして発現するために使用され得る。
【0103】
好ましくは、この変更された抗体配列によってコードされる抗体は、本明細書中で記載される抗IRTA−5抗体の機能特性のうちの1つ、いくつかまたは全てを保持する抗体であり、この機能特性としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
(i)5×10−8M以下のKDで、ヒトIRTA−5に結合する;
(ii)ヒトIRTA−1、ヒトIRTA−2、ヒトIRTA−3およびヒトIRTA−4に実質的には結合しない;および/または
(iii)ヒトBリンパ球およびB細胞腫瘍腫瘍系に結合するが、CD3+末梢血T細胞、CD1A+末梢血樹状細胞、CD14+末梢血単球またはCD56+末梢血ナチュラルキラー細胞に実質的には結合しない。
【0104】
上記の変更された抗体の機能特性は、当該分野で利用可能であり、かつ/または本明細書中で記載される、標準的アッセイを使用して評価され得、これらのアッセイは、例えば、実施例において示されるアッセイ(例えば、フローサイトメトリー、結合アッセイ)である。
【0105】
本発明の抗体を操作する方法の特定の実施形態において、変異が、抗IRTA−5抗体コード配列の全てまたは部分に沿って無作為にまたは選択的に導入され得、そして得られた改変抗IRTA−5抗体は、結合活性および/または本明細書中で記載されるような他の機能特性についてスクリーニングされ得る。変異の方法は、当該分野で記載されている。例えば、Shortによる国際公開第02/092780号は、飽和変異誘発、合成的ライゲーションアセンブリ、またはそれらの組み合わせを使用して抗体変異を作製しそしてスクリーニングする方法について記載する。あるいは、Lazarらによる国際公開第03/074679号は、コンピュータースクリーニング方法を使用して抗体の生理化学特性を最適化する方法を記載する。
【0106】
(本発明の抗体をコードする核酸分子)
本発明の別の局面は、本発明の抗体をコードする核酸分子に関する。この核酸は、全細胞(whole cell)中に存在し得るか、細胞溶解産物中に存在し得るか、または部分的精製形態もしくは実質的に純粋な形態で存在し得る。核酸は、他の細胞構成成分または他の夾雑物(例えば、他の細胞性の核酸またはタンパク質)から標準的技術により精製される場合、「単離される」か、または「実質的に純粋にされる」。この技術としては、アルカリ/SDS処理、CsClバンド形成、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動および他の当該分野で周知の技術が挙げられる。F.Ausubelら編(1987)Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing and Wiley Interscience、New Yorkを参照。本発明の核酸は、例えば、DNAまたはRNAであり得、イントロン配列を含んでも含まなくてもよい。好ましい実施形態において、上記核酸は、cDNA分子である。
【0107】
本発明の核酸は、標準的分子生物学技術を用いて得られ得る。ハイブリドーマ(例えば、上記にさらに記載されるようなヒト免疫グロブリン遺伝子を有するトランスジェニックマウスから調製されるハイブリドーマ)によって発現される抗体については、このハイブリドーマによって産生される抗体の軽鎖および重鎖をコードするcDNAは、標準的PCR増幅技術またはcDNAクローニング技術によって得られ得る。免疫グロブリン遺伝子ライブラリーから(例えば、ファージディスプレイ技術を用いて)得られる抗体については、この抗体をコードする核酸が、このライブラリーから回収される。
【0108】
本発明の好ましい核酸分子は、2G5モノクローナル抗体、5A2モノクローナル抗体または7G8モノクローナル抗体の、VH配列およびVL配列をコードする核酸分子である。2G5、5A2および7G8のVH配列をコードするDNA配列は、それぞれ配列番号25、配列番号26および配列番号27に示される。2G5、5A2および7G8のVL配列をコードするDNA配列は、それぞれ配列番号28、配列番号29および配列番号30に示される。
【0109】
VHセグメントおよびVLセグメントをコードするDNAフラグメントが一旦得られると、これらのDNA配列は、標準的組換えDNA技術により、例えば、可変領域遺伝子を、完全長抗体鎖遺伝子、Fabフラグメント遺伝子またはscFv遺伝子に変換するように、さらに操作され得る。これらの操作において、VLコードDNAフラグメントまたはVHコードDNAフラグメントは、別のタンパク質(例えば、抗体定常領域または変動可能(flexible)リンカー)をコードする別のDNAフラグメントに作動可能に連結される。用語「作動可能に連結される」は、この文脈で使用される場合、その2つのDNAフラグメントによってコードされるアミノ酸配列がインフレームを維持するように、その2つのDNAフラグメントが連結されることを意味することが意図される。
【0110】
VH領域をコードする単離されたDNAは、VHをコードするこのDNAを、重鎖定常領域(CH1、CH2およびCH3)をコードする別のDNA分子に作動可能に連結することにより、完全長の重鎖遺伝子に変換され得る。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は、当該分野で公知であり(例えば、Kabat,E.A.ら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S. Department of Health and Human Services、NIH Publication No.91−3242を参照)、そしてこれらの領域を含むDNAフラグメントは、標準的PCR増幅によって得られ得る。上記重鎖定常領域は、IgG1定常領域、IgG2定常領域、IgG3定常領域、IgG4定常領域、IgA定常領域、IgE定常領域、IgM定常領域、またはIgD定常領域であり得るが、最も好ましくは、IgG1定常領域またはIgG4定常領域である。Fabフラグメント重鎖遺伝子のために、VHをコードするDNAが、重鎖CH1定常領域のみをコードする別のDNA分子と作動可能に連結され得る。
【0111】
VL領域をコードする単離されたDNAは、VLをコードするこのDNAを、軽鎖定常領域CLをコードする別のDNA分子に作動可能に連結することにより、完全長の軽鎖遺伝子に変換され得る。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は、当該分野で公知であり(例えば、Kabat,E.A.,ら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S.Department of Health and Human Services、NIH Publication No.91−3242)、そしてこれらの領域を含むDNAフラグメントは、標準的PCR増幅によって得られ得る。上記軽鎖定常領域は、κ定常領域またはλ定常領域であり得るが、最も好ましくは、κ定常領域である。
【0112】
scFv遺伝子を作製するために、VHコードDNAフラグメントおよびVLコードDNAフラグメントが、VH配列およびVL配列が変動可能リンカーをコードする別のフラグメント(例えば、アミノ酸配列(Gly4−Ser)3をコードする)に作動可能に連結され、VLおよびVH領域がその変動可能リンカーにより連結された連続した一本鎖タンパク質として発現され得るようになる(例えば、Birdら(1988)Science 242:423−426;Hustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883;McCaffertyら(1990)Nature 348:552−554を参照)。
【0113】
(本発明のモノクローナル抗体の産生)
本発明のモノクローナル抗体(mAb)は、従来のモノクローナル抗体方法論(例えば、KohlerおよびMilstein(1975)Nature 256:495の標準的体細胞ハイブリダイゼーション技術)を含む種々の技術によって産生され得る。体細胞ハイブリダイゼーション手順が好ましいが、原則として、モノクローナル抗体を産生するための他の技術(例えば、Bリンパ球のウイルス性形質転換または他の腫瘍形成性形質転換)が、使用され得る。
【0114】
ハイブリドーマを調製するための好ましい動物系は、マウス系である。マウスにおけるハイブリドーマ産生は、非常によく確立されている手順である。免疫プロトコールおよび融合のための免疫脾細胞の単離の技術は、当該分野で公知である。融合パートナー(例えば、マウス骨髄腫細胞)および融合手順もまた、公知である。
【0115】
本発明のキメラ抗体またはヒト化抗体は、上述のように調製されたマウスモノクローナル抗体の配列に基づいて調製され得る。重鎖免疫グロブリンおよび軽鎖免疫グロブリンをコードするDNAが、標準的分子生物学技術を用いて、目的のマウスハイブリドーマから得られ得、そして非マウス(例えば、ヒト)免疫グロブリン配列を含むように操作され得る。例えば、キメラ抗体を作製するため、当該分野で公知の技術を用い、マウス可変領域をヒト定常領域に連結し得る(例えば、Cabillyらに対する米国特許第4,816,567号を参照)。ヒト化抗体を作製するために、マウスCDR領域が、当該分野で公知の方法を用いて、ヒトフレームワーク内に挿入され得る(例えば、Winterに対する米国特許第5,225,539号、およびQueenらに対する米国特許公開5,530,101号;同第5,585,089;同第5,693,762および同第6,180,370号を参照)。
【0116】
好ましい実施形態において、本発明の抗体は、ヒトモノクローナル抗体である。IRTA−5に対するそのようなヒトモノクローナル抗体は、マウス免疫系ではなくヒト免疫系の一部を保有するトランスジェニックマウスまたは染色体導入(transchromosomic)マウスを用いて産生され得る。これらのトランスジェニックマウスまたは染色体導入マウスとしては、それぞれHuMAb Mouse(登録商標)およびKM Mouse(登録商標)と本明細書中で言及されるマウスが挙げられ、そして本明細書中で集合的に「ヒトIgマウス」と呼ばれる。
【0117】
HuMAb Mouse(登録商標)(Medarex(登録商標)Inc.)は、再配列されていないヒト重鎖免疫グロブリン配列(μおよびγ)およびヒトκ軽鎖免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子小座(minilocos)を、内因性のμ鎖遺伝子座およびκ鎖遺伝子座を不活性化する標的化変異と共に含む(例えば、Lonbergら(1994)Nature 368(6474):856−859を参照)。したがって、このマウスは、マウスIgMまたはκの発現低下を示し、そして免疫に応答して、導入されたヒト重鎖導入遺伝子およびヒト軽鎖導入遺伝子がクラススイッチおよび体細胞変異を受け、高親和性ヒトIgGκモノクローナル抗体を産生する(Lonberg,N.ら(1994)前出;Lonberg,N.(1994)Handbook of Experiniental Phamacology中の総説113:49−101;Lonberg,N.およびHuszar,D.(1995)Intern.Rev.Immunol.13:65−93,ならびにHarding,F.およびLonberg,N.(1995)Ann.N.Y.Acad.Sci.764:536−546)。HuMab Mouse(登録商標)の調製および使用、ならびにこのようなマウスによって保持されるゲノム改変は、以下においてさらに記載される:Taylor,L.ら(1992)Nucleic Acids Research 20:6287−6295;Chen,J.ら(1993)International Immunology 5:647−656;Tuaillonら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:3720−3724;Choiら(1993)Nature Genetics 4:117−123;Chen,J.ら(1993)EMBO J.12:821−830;Tuaillonら(1994)J.Immunol.152:2912−2920;Taylor,L.ら(1994)International Immunology 6:579−591;およびFishwild,D.ら(1996)Nature Biotechnology 14:845−851(これら全ての内容は、本明細書中でその全体が、具体的に参考として援用される)。さらに、米国特許第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,789,650号;同第5,877,397号;同第5,661,016号;同第5,814,318号;同第5,874,299号;および同第5,770,429号(全てLonbergおよびKayに対する);米国特許第5,545,807号(Suraniらに対する);国際公開第92/03918号、同第93/12227号、同第94/25585号、同第97/13852号、同第98/24884号および同第99/45962号(全てLonbergおよびKayに対する);ならびに国際公開第01/14424号(Kormanらに対する)もまた、参照。
【0118】
別の実施形態において、本発明のヒト抗体は、導入遺伝子および導入染色体上にヒト免疫グロブリン配列を保有するマウス(たとえば、ヒト重鎖導入遺伝子およびヒト軽鎖導入染色体を保有するマウス)を使用して惹起され得る。このようなマウス(本明細書中で「KMマウスTM」と呼ばれるマウス)は、Ishidaらに対する国際公開第02/43478号に詳細に記載される。
【0119】
なおさらに、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する代替のトランスジェニック動物系が、当該分野で利用可能であり、そして本発明の抗IRTA−5抗体を惹起するために使用され得る。例えば、Xenomouse(Abgenix,Inc.)と呼ばれる代替のトランスジェニック系が、使用され得る;このようなマウスは、例えば、Kucherlapatiらに対する米国特許第5,939,598号;同第6,075,181号;同第6,114,598号;同第6,150,584号および同第6,162,963号に記載される。
【0120】
その上、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する代替の染色体導入動物系が、当該分野で利用可能であり、本発明の抗IRTA−5抗体を惹起するために使用され得る。例えば、「TCマウス」と呼ばれる、ヒト重鎖導入染色体およびヒト軽鎖導入染色体の両方を保有するマウスが、使用され得る;このマウスは、Tomizukaら(2000)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:722−727に記載される。さらに、ヒト重鎖およびヒト軽鎖の導入染色体を保有する雌ウシが、当該分野で記載されており(Kuroiwaら(2002)Nature Biotechnology 20:889−894)、そして、本発明の抗IRTA−5抗体を惹起するために使用され得る。
【0121】
本発明のヒトモノクローナル抗体はまた、ヒト免疫グロブリン遺伝子のライブラリーをスクリーニングするためのファージディスプレイ方法を使用して調製され得る。ヒト抗体を単離するためのこのようなファージディスプレイ方法は、当該分野で確立されている。例えば、米国特許第5,223,409号;同第5,403,484号;および同第5,571,698号(Ladnerらに対する);米国特許第5,427,908号および同第5,580,717号(Dowerらに対する);米国特許第5,969,108号および同第6,172,197号(McCaffertyらに対する);ならびに同第5,885,793号;同第6,521,404号;同第6,544,731号;同第6,555,313号;同第6,582,915号および同第6,593,081号(Griffithsらに対する)を参照。
【0122】
本発明のヒトモノクローナル抗体はまた、SCIDマウスを使用して調製され得、このSCIDマウス中にヒト免疫細胞が再構築されており、ヒト抗体応答が免疫の際に生成され得るようになっている。このようなマウスは、例えば、Wilsonらに対する米国特許第5,476,996号および同第5,698,767号に記載される。
【0123】
(ヒトIgマウスの免疫)
ヒトIgマウスが、本発明のヒト抗体を惹起するために使用される場合、このようなマウスは、IRTA−5抗原および/または組換えIRTA−5、またはIRTA−5融合タンパク質の精製調製物または濃縮(enriched)調製物で免疫され得る(Lonberg,N.ら(1994)Nature 368(6474)856−859:Fishwild,D.ら(1996)Nature Biotechnology 14:845−851;ならびに国際公開第98/24884号および同第01/14424号に記載される)。好ましくは、マウスは、最初の注入において6〜16週齢である。例えば、IRTA−5抗原の精製調製物または組換え調製物(5〜50μg)が、ヒトIgマウスを腹腔内免疫するために使用され得る。
【0124】
IRTA−5に対する完全なヒトモノクローナル抗体を発生させるための詳細な手順は、以下の実施例1に記載される。種々の抗原を用いた累積的な経験は、完全フロイントアジュバント中の抗原でまず腹腔内(IP)免疫され、その後、不完全フロイントアジュバント中の抗原で隔週でIP免疫される(計6回まで)場合、トランスジェニックマウスが応答することを示している。しかし、フロイント以外のアジュバントもまた、有効であることが知られている。さらに、アジュバント非存在下での全細胞(whole cell)は、高度に免疫抗原性であることが見出される。免疫応答は、免疫プロトコールの経過の間モニタリングされ得、血漿サンプルが眼窩後方(retroorbital)採血によって得られる。血漿は、ELISAによって(以下で記載するように)スクリーニングされ、そして抗IRTA−5ヒト免疫グロブリンの十分な力価を有するマウスは、融合のために使用され得る。マウスは、抗原で静脈内に屠殺および脾臓摘出の3日間前にブーストされ得る。各免疫につき2〜3回の融合を、実施する必要があり得ることが予期される。各抗原につき、6匹と24匹との間のマウスが、代表的に免疫される。通常、HCo7系統およびHCo12系統が使用される。さらに、HCo7導入遺伝子およびHCo12導入遺伝子の両方が、共に掛け合わされて、2つの異なるヒト重鎖導入遺伝子(HCo7/HCo12)を有する1匹のマウスが産生され得る。あるいは、またはさらに、KM Mouse(登録商標)系統もまた使用され得る。
【0125】
(本発明のヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの産生)
本発明のヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを産生するため、免疫されたマウスに由来する脾細胞および/またはリンパ節細胞が単離され得、そして適切な不死化細胞株(例えば、マウス骨髄腫細胞株)に融合され得る。得られたハイブリドーマは、抗原特異的抗体の産生のためにスクリーニングされ得る。例えば、得られたマウスに由来する1種の脾臓リンパ球の細胞懸濁液は、6分の1の数のP3X63−Ag8.653非分泌性マウス骨髄腫細胞(ATCC,CRL 1580)に、50% PEGを用いて融合され得る。細胞は、約2×105で平底マイクロタイタープレート中に播種され、その後、20%ウシ胎仔血清、18%「683」馴化培地、5% origen(IGEN)、4mM L−グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、5mM HEPES、0.055mM 2−メルカプトエタノール、50単位/mlペニシリン、50mg/mlストレプトマイシン、50mg/mlゲンタマイシンおよび1×HAT(Sigma;HATは融合の24時間後に添加される)を含有する選択培地中で、2週間インキュベーションされる。約2週間後、細胞は、HATがHTで置き換えられている培地中で培養され得る。次いで、個々のウェルは、ヒトモノクローナルIgM抗体およびヒトモノクローナルIgG抗体についてのELISAによってスクリーニングされ得る。一旦、広範なハイブリドーマの増殖が起こると、培地は、通常、10〜14日後に観察され得る。抗体分泌性ハイブリドーマは、再びプレートに播種され得、再びスクリーニングされ得て、なおヒトIgGに対して陽性であった場合、このモノクローナル抗体は、限界希釈により少なくとも2回サブクローニングされ得る。次いで、安定的なサブクローンは、性質決定のために組織培養培地中に少量の抗体を産生するため、インビトロで培養され得る。
【0126】
ヒトモノクローナル抗体を精製するために、選択されたハイブリドーマは、モノクローナル抗体精製のために2リットルのスピナーフラスコ中で増殖され得る。上清は濾過され得、そして濃縮された後、プロテインA−セファロースを用いたアフィニティクロマトグラフィー(Pharmacia,Piscataway,N.J.)にかけられ得る。溶出されたIgGは、ゲル電気泳動によって確認され得、そして高速液体クロマトグラフィーによって、純度を確認され得る。バッファー溶液は、PBSに交換され得、そして吸光係数1.43を用いてOD280によって濃度が決定され得る。このモノクローナル抗体は、等分されて、−80℃で保存され得る。
【0127】
(本発明のモノクローナル抗体を産生するトランスフェクトーマ(transfectoma)の産生)
本発明の抗体はまた、宿主細胞トランスフェクトーマ(transfectoma)において、例えば、当該分野で周知であるように(例えば、Morrison,S.(1985)Science 229:1202)、組換えDNA技術および遺伝子トランスフェクション方法の組み合わせを用いて、産生され得る。
【0128】
例えば、抗体またはその抗体フラグメントを発現するため、一部または完全長の軽鎖および重鎖をコードするDNAが、標準的分子生物学技術(例えば、目的の抗体を発現するハイブリドーマを用いるPCR増幅またはcDNAクローニング)によって得られ得、そしてこのDNAは、その遺伝子が転写制御配列および翻訳制御配列に作動可能に連結されるように、発現ベクター内に挿入され得る。この文脈において、用語「作動可能に連結される」は、抗体遺伝子が、ベクター内に、そのベクター内の転写制御配列および翻訳制御配列の抗体遺伝子の転写および翻訳を制御するというその意図される機能をもたらすように、ライゲーションされることを意味することを意図される。発現ベクターおよび発現制御配列は、使用される発現宿主細胞に適合性であるように選択される。抗体軽鎖遺伝子および抗体重鎖遺伝子は、別々のベクター内に挿入され得るか、またはより代表的には、両遺伝子は、同じ発現ベクター内に挿入される。抗体遺伝子は、標準的方法(例えば、抗体遺伝子フラグメントおよびベクターの相補的制限部位のライゲーション、または制限部位が存在しない場合は平滑末端ライゲーション)により、発現ベクター内に挿入される。本明細書中に記載される抗体の軽鎖可変領域および重鎖可変領域は、発現ベクター(所望のアイソタイプの重鎖定常領域および軽鎖定常領域を既にコードしている)内にこれらを挿入してVHセグメントがそのベクター内のCHセグメントに作動可能に連結され、VKセグメントがベクター内のCLセグメントに作動可能に連結されるようにすることにより、任意の抗体アイソタイプの完全長抗体遺伝子を作製するために使用され得る。さらに、または代替的に、組換え発現ベクターは、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードし得る。抗体鎖遺伝子は、シグナルペプチドがインフレームで抗体鎖遺伝子のアミノ末端に連結されるようにベクター内にクローニングされ得る。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチドまたは異種のシグナルペプチド(すなわち、非免疫グロブリンタンパク質からのシグナルペプチド)であり得る。
【0129】
抗体鎖遺伝子に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞において抗体鎖遺伝子の発現を制御する調節配列を保有する。用語「調節配列」は、プロモーター、エンハンサーおよび抗体鎖遺伝子の転写または翻訳を制御する他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことを意図する。このような調節配列は、例えば、Goeddel(Gene Expression Technology. Methods in Enzymology 185、Academic Press、San Diego,CA(1990))に記載される。発現ベクターの設計(調節配列の選択を含む)は、形質転換させる宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベルなどの要因に依存し得ることが、当業者に理解される。哺乳動物宿主細胞発現のための好ましい調節配列としては、哺乳動物細胞における高レベルのタンパク質発現を指向するウイルスエレメントが挙げられ、このウイルスエレメントは、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)由来のプロモーターならびに/またはエンハンサー、シミアンウイルス40(SV40)由来のプロモーターならびに/またはエンハンサー、アデノウイルス由来のプロモーターならびに/またはエンハンサー(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))およびポリオーマ由来のプロモーターならびに/またはエンハンサーである。あるいは、非ウイルス性調節配列(例えば、ユビキチンプロモーターまたはβグロブリンプロモーター)が使用され得る。なおさらに、調節エレメントは、異なる供給源(例えば、SV40初期プロモーターからの配列およびヒトT細胞白血病ウイルス1型の長末端反復からの配列を含むSRαプロモーター系(Takebe,Y.ら(1988)Mol.Cell.Biol.8:466−472))からの配列から構成される。
【0130】
抗体鎖遺伝子および調節配列に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞におけるベクターの複製を調節する配列(例えば、複製起点)および選択マーカー遺伝子のような、さらなる配列を保有し得る。選択マーカー遺伝子は、ベクターが中に導入されている宿主細胞の選択を容易にする(例えば、米国特許第4,399,216号、同第4,634,665号および同第5,179,017号(全てAxelらによる)を参照のこと)。例えば、代表的に、選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞に薬剤(例えば、G418、ハイグロマイシンまたはメトトレキサート)に対する耐性を付与する。好ましい選択マーカー遺伝子としては、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(dhfr宿主細胞におけるメトトレキサートでの選択/増幅において使用される)およびneo遺伝子(G418選択)が挙げられる。
【0131】
軽鎖および重鎖の発現について、重鎖および軽鎖をコードする発現ベクターは、標準的技術によって、宿主細胞内にトランスフェクトされる。用語「トランスフェクション」の種々の形態は、原核宿主生物または真核宿主生物への外来性DNAの導入のために一般に使用される広範な種々の技術(例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE−デキストラントランスフェクションなど)を包含することを意図する。原核生物宿主細胞および真核生物宿主細胞のどちらにおいても本発明の抗体を発現することは理論的に可能であるが、真核細胞(最も好ましくは哺乳動物細胞)における抗体の発現が最も好ましい。なぜなら、このような真核細胞(特に哺乳動物宿主細胞)は、原核細胞よりも、正しく折りたたまれた免疫学的に活性な抗体を構築しやすく、そして分泌しやすいからである。原核生物による抗体遺伝子の発現は、活性な抗体の高収量の産生に役に立たないことが報告されている(Boss,M.A.およびWood,C.R.(1985)Immunology Today 6:12−13)。
【0132】
本発明の組換え抗体を発現するために好ましい哺乳動物宿主細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(UrlaubおよびChasin(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216−4220に記載されるdhfr−CHO細胞を含み、これは例えば、R.J.KaufmanおよびP.A.Sharp(1982)Mol.Biol.159:601−621に記載されるようにDHFR選択マーカーと共に使用される)、NSO骨髄腫細胞、COS細胞およびSP2細胞が挙げられる。特に、NSO骨髄腫細胞と共に使用するために、別の好ましい発現系は、WO87/04462、WO89/01036およびEP338,841において開示されるGS遺伝子発現系である。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターが哺乳動物宿主細胞内に導入される場合、宿主細胞において抗体の発現を可能にするため、またはより好ましくは、宿主細胞が増殖している培養培地中への抗体の分泌を可能にするために十分な時間、宿主細胞を培養することによって、抗体は産生される。抗体は、培養培地から、標準的タンパク質精製方法を用いて回収され得る。
【0133】
(抗原に結合する抗体の性質決定)
本発明の抗体は、例えば、標準的ELISAによって、IRTA−5への結合について試験され得る。簡潔には、マイクロタイタープレートは、PBS中0.25μg/mlの精製IRTA−5によりでコートされ、次いで、PBS中5%ウシ血清アルブミンでブロックされる。抗体の希釈物(例えば、IRTA−5免疫マウス由来の血漿の希釈物)が、各ウェルに添加され、そして37℃で1〜2時間インキュベーションされる。プレートは、PBS/Tweenで洗浄され、次いで、アルカリホスファターゼと結合体化した二次試薬(例えば、ヒト抗体については、ヤギ−抗ヒトIgG Fc特異的ポリクローナル試薬)と共に、37℃で1時間インキュベーションされる。洗浄後、このプレートは、pNPP基質(1mg/ml)で発色され、そして405〜650のODで分析される。好ましくは、最高の力価を示したマウスが、融合のために使用される。
【0134】
上述のELISAアッセイはまた、IRTA−5イムノゲンに対し、陽性の反応性を示すハイブリドーマについてスクリーニングするために使用され得る。高い結合性でIRTA−5に結合するハイブリドーマは、サブクローニングされ、そしてさらに性質決定される。親細胞の反応性(ELISAによる)を保持する各ハイブリドーマからの1つのクローンは、−140℃で保存される5〜10個の細胞バンクのバイアルの作製、および、抗体精製のために選択される。
【0135】
抗IRTA−5抗体を精製するために、選択されたハイブリドーマは、モノクローナル抗体精製のために2リットルのスピナーフラスコ中で増殖され得る。上清は、濾過され得、そしてプロテインA−セファロースを用いたアフィニティクロマトグラフィー(Pharmacia,Piscataway,N.J.)の前に濃縮される。溶出されたIgGは、ゲル電気泳動および高速液体クロマトグラフィーによってチェックされ得、純度を確認され得る。バッファー溶液は、PBSに交換され得、そして吸光係数1.43を用いたOD280によって濃度が決定され得る。このモノクローナル抗体は、等分されて、−80℃で保存され得る。
【0136】
選択された抗−IRTA−5モノクローナル抗体が独特のエピトープに結合するか否かを決定するため、各抗体は、市販の試薬(Pierce,Rockford,IL)を用いてビオチン化され得る。未標識モノクローナル抗体およびビオチン化モノクローナル抗体を用いる競合研究は、IRTA−5でコートしたELISAプレートを用いて、上述のように実施され得る。ビオチン化mAb結合は、ストレプトアビジン−アルカリホスファターゼ(strep−avidin−alkaline phosphatase)プローブを用いて検出され得る。
【0137】
精製した抗体のアイソタイプを決定するために、特定のアイソタイプの抗体に対して特異的な試薬を用いるアイソタイプELISAが実施され得る。例えば、ヒトモノクローナル抗体のアイソタイプを決定するために、マイクロタイタープレートのウェルは、1μg/mlの抗ヒト免疫グロブリンで、4℃で一晩コートされ得る。1% BSAでのブロック後、このプレートは、1μg/ml以下の試験モノクローナル抗体または1μg/ml以下の精製アイソタイプコントロールと、周囲の温度で1〜2時間反応される。次いで、ウェルは、ヒトIgG1特異的アルカリホスファターゼ結合体化プローブまたはヒトIgM特異的アルカリホスファターゼ結合体化プローブのどちらかで反応され得る。プレートは、上述のように発色されそして分析される。
【0138】
抗IRTA−5ヒトIgGは、IRTA−5抗原に対する反応性について、ウェスタンブロッティングによりさらに試験され得る。簡潔には、IRTA−5が、調製され、そしてドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけられ得る。電気泳動後、分離した抗原は、ニトロセルロースメンブレンに移され、10%ウシ胎仔血清でブロックされ、そして試験されるモノクローナル抗体でプローブされる。ヒトIgG結合は、抗ヒトIgGアルカリホスファターゼを用いて検出されてBCIP/NBT基質タブレット(Sigma Chem.Co.,St.Louis,Mo.)で発色され得る。
【0139】
(免疫結合体)
別の局面において、本発明は、細胞毒、薬物(例えば免疫抑制剤)、または放射性毒物のような治療部分と結合体化した、抗IRTA−5抗体または抗IRTA−5抗体のフラグメントの特徴を有する。このような結合体は、本明細書中で、「免疫結合体」と呼ばれる。1以上の細胞毒を含む免疫結合体は、「免疫毒素」と呼ばれる。細胞毒または細胞毒性薬剤としては、細胞に有害な(例えば、細胞を殺す)任意の薬剤が挙げられる。例としては、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシンならびにこれらのアナログまたはホモログが挙げられる。また、治療剤としては、例えば、代謝拮抗物質(例えば、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパクロラムブシル(thioepa chlorambucil)、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンCおよびシス−ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前はダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、およびアントラマイシン(AMC))、および抗有糸分裂剤(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)が挙げられる。
【0140】
本発明の抗体と結合体化し得る、治療用細胞毒の他の好ましい例としては、ズオカルマイシン、カリケアミシン、メイタンシン(maytansine)およびアウリスタチン、およびこれらの誘導体が挙げられる。カリケアミシン抗体結合体の例は、市販されている(MylotargTM;Wyeth)。
【0141】
細胞毒素は、当該分野で利用可能なリンカー技術を用いて本発明の抗体と結合体化され得る。細胞毒素を抗体に結合体化させるために使用されているリンカー型の例としては、ヒドラゾン、チオエーテル、エステル、ジスルフィドおよびペプチド含有リンカーが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、リソソーム画分の中で低pHにより切断されやすいリンカー、またはプロテアーゼ(例えばカテプシン(例えば、カテプシンB、カテプシンC、カテプシンD)のように腫瘍組織において優先的に発現されるプロテアーゼ)によって切断されやすいリンカーであるように選択され得る。
【0142】
治療剤を抗体に結合体化させる細胞毒素、リンカーおよび方法の型のさらなる考察については、以下もまた参照のこと:Saito,G.ら(2003)Adv.Drug Deliv.Rev.55:199−215;Trail,P.A.ら(2003)Cancer Immunol.Immunother.52: 328−337;Payne,G.(2003)Cancer Cell 3:207−212;Allen,T.M.(2002)Nat.Rev.Cancer 2:750−763;Pastan,l.およびKreitman,R.J.(2002)Curr.Opin.Investig.Drugs 3:1089−1091;Senter,P.D.およびSpringer,C.J.(2001)Adv.Drug Deliv.Rev.53:247−264。
【0143】
本発明の抗体はまた、放射性同位体に結合体化されて、細胞毒性放射性医薬品(放射性免疫結合体(radioimmunoconjugate)とも呼ばれる)を産生し得る。診断的な使用または治療的な使用のために抗体に結合体化され得る放射性同位体の例としては、ヨウ素131、インジウム111、イッテリウム90およびルテチウム177が挙げられるが、これらに限定されない。放射性免疫結合体を調製するための方法は、当該分野において確立されている。放射性免疫結合体の例は市販されており、ZevalinTM(IDEC Pharmaceuticals)およびBexxarTM(Corixa Pharmaceuticals)が挙げられ、そして、類似の方法が、本発明の抗体を使用して放射性免疫結合体を調製するために使用され得る。
【0144】
本発明の抗体結合体は、所定の生物学的応答を修飾するために使用され得、そしてこの薬物部分は、古典的な化学治療剤に限定されるように解釈されるべきではない。例えば、この薬物部分は、所望の生物学的活性を有する、タンパク質またはポリペプチドであり得る。このようなタンパク質としては、例えば、酵素学的に活性な毒素またはその活性フラグメントが挙げられ、例えば、アブリン、リシンA、シュードモナス体外毒素、もしくはジフテリア毒素;腫瘍壊死因子もしくはインターフェロン−γのようなタンパク質;または生物学的反応修飾物質(例えば、リンホカイン、インターロイキン−1(「IL−1」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターロイキン−6(「IL−6」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM−CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G−CSF」)、または他の成長因子)である。
【0145】
治療部分を抗体に結合体化させる技術は、周知であり、例えば、以下を参照のこと:Arnonら、「Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy」、Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy、Reisfeldら(編)、pp.243−56(Alan R.Liss,Inc.1985);Hellstromら、「Antibodies For Drug Delivery」、Controlled Drug Delivery(第2版)、Robinsonら(編)、pp.623−53(Marcel Dekker, Inc.1987);Thorpe、「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review」、Monoclonal Antibodies’84:Biological And Clinical Applications、Pincheraら(編)、pp.475−506(1985);「Analysis,Results,And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy」、Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy,Baldwinら(編)、pp.303−16(Academic Press 1985)、およびThorpeら、「The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody−Toxin Conjugates」、Immunol.Rev.,62:119−58(1982)。
【0146】
(二重特異性分子)
別の局面において、本発明は、本発明の抗IRTA−5抗体またはそのフラグメントを含む、二重特異性分子を特徴とする。本発明の抗体またはその抗原結合部分は、別の機能的分子(例えば、別のペプチドまたはタンパク質)(例えば、別の抗体または受容体に対するリガンド)に誘導体化されるかまたは結合されて、少なくとも2つの異なる結合部位または標的分子に結合する二重特異性分子を産生する。本発明の抗体は、実際に、1つよりも多くの他の機能的分子に誘導体化されるか結合されて、2つよりも多くの異なる結合部位および/または標的分子に結合する多重特異性(multispecific)分子を産生し得る;このような多重特異性分子もまた、本明細書中で使用される用語「二重特異性分子」に含まれる。本発明の二重特異性分子を作製するために、本発明の抗体は、1以上の他の結合分子(例えば、別の抗体、抗体フラグメント、ペプチドまたは結合模倣物)に機能的に結合(例えば、化学結合、遺伝的融合、非共有結合またはその他の結合)されて、二重特異性分子を生じ得る。
【0147】
したがって、本発明は、IRTA−5に対する少なくとも1つの第1結合特異性、および第2の標的エピトープに対する第2の結合特異性を有する、二重特異性分子を含む。本発明の特定の実施形態において、第2の標的エピトープは、Fc受容体(例えば、ヒトFcγRI(CD64)またはヒトFcα受容体(CD89))である。したがって、本発明は、FcγR、FcαRまたはFcεRを発現するエフェクター細胞(例えば、単球、マクロファージまたは多形核細胞(PMN))と、IRTA−5を発現する標的細胞の両方に結合可能な二重特異性分子を含む。これらの二重特異性分子は、IRTA−5発現細胞をエフェクター細胞に対して標的化し、そしてFc受容体媒介性エフェクター細胞活性(例えば、IRTA−5発現細胞の食作用、抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)、サイトカイン放出、またはスーパーオキシドアニオンの産生)を引き起こす。
【0148】
二重特異性分子が多重特異性である本発明の実施形態において、この分子は、抗Fc結合特異性および抗IRTA−5結合特異性に加えて、第3の結合特異性をさらに含み得る。1つの実施形態において、第3の結合特異性は、抗増強因子(anti−enhancement factor)(EF)部分であり、例えば、細胞毒性活性に関与する表面タンパク質に結合し、それにより、標的細胞に対する免疫応答を増大させる分子である。「抗増強因子部分」は、抗体、機能的抗体フラグメント、または所定の分子(例えば、抗原または受容体)に結合するリガンドであり得、そして、それにより、Fc受容体または標的細胞抗原についての結合決定基の効果の増強をもたらす。「抗増強因子部分」は、Fc受容体または標的細胞抗原に結合し得る。あるいは、抗増強因子部分は、第1の結合特異性および第2の結合特異性が結合する実体とは異なる実体に結合し得る。例えば、抗増強因子部分は、細胞毒性T細胞に(例えば、CD2、CD3、CD8、CD28、CD4、CD40、ICAM−1、または標的細胞に対し増大した免疫応答をもたらす他の免疫細胞を介して)結合し得る。
【0149】
1つの実施形態において、本発明の二重特異性分子は、結合特異性として、少なくとも1つの抗体またはその抗体フラグメント(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvまたは一本鎖Fvが挙げられる)を含む。この抗体はまた、Ladnerらの米国特許第4,946,778号(この内容は、明白に参考として援用される)に記載されるように、軽鎖二量体もしくは重鎖二量体、またはその任意の最小のフラグメント(例えば、Fvまたは一本鎖構築物)であり得る。
【0150】
1つの実施形態において、Fcγ受容体の結合特異性は、モノクローナル抗体によって提供され、このモノクローナル抗体の結合は、ヒト免疫グロブリンG(IgG)によってブロックされない。本明細書中で使用される場合、用語「IgG受容体」とは、第1染色体上に配置されている8つのγ鎖遺伝子のいずれかをいう。これらの遺伝子は、計12の膜貫通受容体イソ型または可溶性の受容体イソ型をコードし、これらのイソ型は、3つのFcγ受容体クラスに分類される:FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)およびFcγRIII(CD16)。1つの好ましい実施形態において、このFcγ受容体は、ヒト高親和性FcγRIである。ヒトFcγRIは、72kDaの分子であり、単量体のIgGに対して高い親和性(108〜109M−1)を示す。
【0151】
特定の好ましい抗Fcγモノクローナル抗体の産生および性質決定は、Fangerらにより、国際公開第88/00052号および米国特許第4,954,617号において記載され、これらの教示は、本明細書中で参考として完全に援用される。これらの抗体は、FcγRI、FcγRIIまたはFcγRIIIのエピトープに、受容体のFcγ結合部位とは異なる部位において結合し、したがって、これらの結合は、生理学的レベルのIgGによって実質的にブロックされない。本発明において有用である特異的抗FcγRI抗体は、mAb22、mAb32、mAb44、mAb62およびmAb197である。mAb32を産生するハイブリドーマは、American Type Culture Collectionから入手可能な、ATCC受託番号HB9469である。他の実施形態において、抗Fcγ受容体抗体は、モノクローナル抗体22のヒト化形態(H22)である。H22抗体の産生および性質決定は、Graziano,R.F.ら(1995)J.Immunol 155(10):4996−5002および国際公開第94/10332号において記載される。H22産生細胞株は、American Type Culture Collectionに、HA022CL1の名称で寄託され、受託番号CRL 11177を有する。
【0152】
なお他の好ましい実施形態において、Fc受容体に対する結合特異性は、ヒトIgA受容体(例えば、Fc−α受容体(FcαRI(CD89)))に対して結合する抗体によって提供される結合は、好ましくはヒト免疫グロブリンA(IgA)によってブロックされない。用語「IgA受容体」は、第19染色体上に配置される1つのα遺伝子(FcαRI)の遺伝子産物を含むことを意図する。この遺伝子は、55〜110kDaの選択的スプライシングによる膜貫通イソ形態を数個コードすることが知られている。FcαRI(CD89)は、単球/マクロファージ、好酸顆粒球および好中顆粒球の上に構成的に発現されるが、非エフェクター細胞集団上には発現されない。FcαRIは、IgA1およびIgA2の両方に対して中程度の親和性(約5×107M−1)を有し、この親和性は、G−CSFまたはGM−CSFのようなサイトカインに対して曝される際に上昇する(Morton,H.C.ら(1996)Critical Reviews in Immunology 16:423−440)。A3、A59、A62およびA77として同定され、IgAリガンド結合ドメインの外でFcαRIに結合する4種のFcαRI特異的モノクローナル抗体は、記載されている(Monteiro,R.C.ら(1992)J.Imniunol.148:1764)。
【0153】
FcαRIおよびFcγRIは、本発明の二重特異性分子における使用のための好ましいトリガー受容体である。何故なら、FcαRIおよびFcγRIは、(1)主に免疫エフェクター細胞(例えば、単球、PMN、マクロファージおよび樹状細胞)上で発現され、(2)高レベル(例えば、1細胞あたり5,000〜100,000)で発現され、(3)細胞毒性活性(例えば、ADCC、食作用)のメディエータであり、(4)抗原(自身を標的とする自己抗原を含む)の抗原提示の増強を媒介するからである。
【0154】
ヒトモノクローナル抗体が好ましいが、本発明の二重特異性分子において使用され得る他の抗体は、マウスモノクローナル抗体、キメラモノクローナル抗体およびヒト化モノクローナル抗体である。
【0155】
本発明の二重特異性分子は、構成部分(constituent)結合特異性(例えば、抗FcR結合特異性および抗IRTA−5結合特異性)を当該分野で公知の方法を用いて結合体化することによって調製され得る。例えば、二重特異性分子の各結合特異性は、別々に産生され、次いで、互いに結合体化され得る。この結合特異性がタンパク質またはペプチドである場合、種々のカップリング剤または架橋剤が、共有結合性結合体化のために使用され得る。架橋剤の例としては、プロテインA、カルボジイミド、N−スクシンイミジル−S−アセチル−チオ酢酸(SATA),5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)、o−フェニレンジマレイミド(oPDM)、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、およびスルホスクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸塩(sulfo−SMCC)が挙げられる(例えば、Karpovskyら(1984)J.Exp.Med.160:1686;Liu,MAら(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:8648を参照)。他の方法としては、以下に記載される方法が挙げられる:Paulus(1985)Behring Ins.Mitt.第78巻、118−132;Brennanら(1985)Science 229:81−83、およびGlennieら(1987)J.Immunol.139:2367−2375。好ましい結合体化剤は、SATAおよびsulfo−SMCCであり、両方とも、Pierce Chemical Co.(Rockford,IL)から入手可能である。
【0156】
結合特異性が抗体である場合、これらは、2つの重鎖のC末端ヒンジ領域のスルフヒドリル結合を介して結合体化され得る。特に好ましい実施形態において、このヒンジ領域は、結合体化の前に奇数(好ましくは、1つ)のスルフヒドリル残基を含むように改変される。
【0157】
あるいは、両結合特異性は、同じベクターにコードされ得、そして同じ宿主細胞において発現され、そして集合される。この方法は、二重特異性分子がmAb×mAb融合タンパク質、mAb×Fab融合タンパク質、Fab×F(ab’)2融合タンパク質またはリガンド×Fab融合タンパク質である場合に、特に有用である。本発明の二重特異性分子は、1つの一本鎖抗体および1つの結合決定基を含む一本鎖分子であり得るか、または、2つの結合決定基を含む一本鎖二重特異性分子であり得る。二重特異性分子は、少なくとも2つの1本鎖分子を含み得る。二重特異性分子を調製するための方法は、例えば、米国特許第5,260,203号;同第5,455,030号;同第4,881,175号;同第5,132,405号;同第5,091,513号;同第5,476,786号;同第5,013,653号;同第5,258,498号;および同第5,482,858号において記載される。
【0158】
二重特異性分子のその特異的標的への結合は、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、FACS分析、バイオアッセイ(例えば、増殖阻害)、またはウェスタンブロットアッセイによって、確認され得る。これらのアッセイの各々は、一般に、特に目的とするタンパク質−抗体複合体の存在を、その目的の複合体に特異的な標識試薬(例えば、抗体)を使用することによって、検出する。例えば、FcR−抗体複合体は、例えば、抗体−FcR複合体を認識しかつこれに特異的に結合する酵素連結抗体または酵素連結抗体フラグメントを使用して、検出され得る。あるいは、FcR−抗体複合体は、種々の他のイムノアッセイのいずれかを使用して検出され得る。例えば、この抗体は、放射標識され得、そして、ラジオイムノアッセイ(RIA)において使用され得る(例えば、Weintraub,B.,Principles of Radioimmunoassays、Seventh Training Course on Radioligand Assay Techniques、The Endocrine Society、1986年3月を参照。これは、本明細書中で参考として援用される)。放射性同位体は、γカウンターもしくはシンチレーションカウンターの使用のような手段またはオートラジオグラフィーによって検出され得る。
【0159】
(薬学的組成物)
別の局面において、本発明は、例えば、本発明の1種のモノクローナル抗体もしくはモノクローナル抗体の組み合わせまたはこれらの抗原結合部分を含有し、薬学的に受容可能なキャリアと共に処方されているような、組成物(例えば、薬学的組成物)を提供する。このような組成物は、本発明の1種の抗体もしくは(例えば、2種以上の異なる)抗体の組み合わせ、または免疫結合体あるいは二重特異性分子を含有し得る。例えば、本発明の薬学的組成物は、標的抗原上の異なったエピトープに結合するかまたは相補的活性を有する抗体(または免疫結合体もしくは二重特異性分子)の組み合わせを含有し得る。
【0160】
本発明の薬学的組成物はまた、併用治療において、すなわち、他の薬剤と組み合わせて、投与され得る。例えば、併用治療は、少なくとも1種の他の抗炎症剤または免疫抑制剤と組み合わせて、本発明の抗IRTA−5抗体を含有し得る。併用治療において使用され得る治療剤の例は、以下の本発明の抗体の使用の節においてより詳細に記載される。
【0161】
本明細書中で使用される場合、「薬学的に受容可能なキャリア」としては、任意かつ全ての溶媒、分散媒体、コーティング剤、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが挙げられ、これらは、生理学的に適合性である。好ましくは、このキャリアは、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、非経口投与、脊髄投与または表皮投与(例えば、注射または輸液による)に適している。投与経路に依存して、活性化合物(すなわち、抗体、免疫結合体または二重特異性分子)は、この化合物を不活性化し得る酸および他の天然条件の作用からこの化合物を保護するために、物質内に覆われ得る。
【0162】
本発明の薬学的化合物は、1種以上の薬学的に受容可能な塩を含有し得る。「薬学的に受容可能な塩」とは、親化合物の所望の生物学的活性を保持し、かつ、いかなる望ましくない毒性の効果をも与えない塩をいう(例えば、Berge,S.M.ら(1977)J.Pharm.Sci.66:1−19を参照)。このような塩の例としては、酸付加塩および塩基付加塩が挙げられる。酸付加塩としては、非毒性無機酸(例えば、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸など)、ならびに非毒性有機酸(例えば、脂肪族一カルボン酸、脂肪族二カルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族スルホン酸および芳香族スルホン酸など)、に由来する酸付加塩が挙げられる。塩基付加塩としては、アルカリ土類金属(例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなど)、ならびに非毒性有機アミン(例えば、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、N−メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカインなど)に由来する塩基付加塩が挙げられる。
【0163】
また、本発明の薬学的組成物としては、薬学的に受容可能な抗酸化物質が挙げられる。薬学的に受容可能な抗酸化物質の例としては、以下が挙げられる:(1)水溶性抗酸化物質(例えば、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど);(2)油溶性抗酸化物質(例えば、アスコルビン酸パルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α−トコフェロールなど);ならびに(3)金属キレート剤(例えば、クエン酸、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸など)。
【0164】
本発明の薬学的組成物中で使用され得る適切な水性キャリアおよび非水性キャリアの例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびその適切な混合物、植物油(例えば、オリーブ油)、および注射可能な有機エステル(例えば、エチルオレエート)が挙げられる。例えば、コーティング物質(例えば、レシチン)の使用、分散の場合における所望の粒子サイズの維持、そして界面活性剤の使用により、適正な流動性が維持され得る。
【0165】
これらの組成物はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散化剤のようなアジュバントをも含有し得る。微生物の存在の防止は、滅菌手順(前出)および種々の抗細菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸など)の含有のどちらによっても、達成され得る。等張剤(例えば、糖、塩化ナトリウムなど)が、組成物中に含有されることもまた、望ましくあり得る。さらに、注射可能薬学的形態の吸収の延長は、吸収を遅延させる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)の含有によってもたらされ得る。
【0166】
薬学的に受容可能なキャリアとしては、無菌水溶液または無菌分散剤、および無菌の注射可能溶液または注射可能分散剤の即時調製のための無菌粉末、が挙げられる。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当該分野で公知である。任意の従来の媒体または薬剤が活性化合物と不適合性である範囲を除き、その媒体または薬剤の本発明の薬学的組成物における使用が企図される。補充活性化合物もまた、この組成物中に組み込まれ得る。
【0167】
治療組成物は、代表的に無菌でなければならず、かつ製造および保管の条件下で安定でなければならない。この組成物は、液剤、マイクロエマルジョン、リポソームまたは高い薬物濃度に適した他の規則正しい構造として処方され得る。このキャリアは、溶媒または分散媒体であり、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)、およびこれらの適切な混合物が挙げられる。例えば、コーティング物質(例えば、レシチン)の使用、分散剤の場合における所望の粒子サイズの維持、そして界面活性剤の使用により、適正な流動性が維持され得る。多くの場合、例えば、糖、ポリアルコール(例えば、マンニトール、ソルビトール)または塩化ナトリウムのような、等張剤を組成物中に含有することが好ましい。注射可能組成物の吸収の延長は、吸収を遅延させる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)をその組成物中に含有させることによってもたらされ得る。
【0168】
無菌注射可能溶液は、所望される場合には上で列挙した成分の1種または組み合わせと共に、活性化合物を所望の量で適切な溶媒中に組み込み、その後、精密濾過滅菌が行われることによって調製され得る。一般に、分散剤は、基礎の分散媒体および所望の(上で列挙した)他の成分を含有する無菌のビヒクル中に、活性化合物を組み込むことによって調製される。無菌注射可能溶液の調製のための無菌粉末の場合、好ましい調製の方法は、真空乾燥および凍結乾燥(freeze−drying)(凍結乾燥(lyophilization))であり、これらは、活性成分および任意のさらなる所望の成分の事前に濾過滅菌した溶液から、活性成分および任意のさらなる所望の成分の粉末を生じる。
【0169】
キャリア物質と混合されて単回投与形態を作製し得る活性成分の量は、処置される被験体および特定の投与様式に依存して変化し得る。キャリア物質と混合されて単回投与形態を作製し得る活性成分の量は、一般に、治療効果をもたらす組成物の量である。一般に、この量は、100%のうち約0.01%から約99%の活性成分の範囲にわたり、好ましくは、約0.1%から約70%、最も好ましくは約1%から約30%の範囲にわたる活性成分であり、薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせられる。
【0170】
投薬レジメンは、最適な所望される応答(例えば、治療応答)を提供するように調整される。例えば、単回のボーラスが投与されてもよく、数回に分けた用量が経時的に投与されてもよく、または治療状況の緊急事態により示されるように用量は比例的に減少され得るか、もしくは増加され得る。非経口組成物を投与単位形態で処方することは、投与の容易さおよび用量の均等性のために、特に有益である。本明細書中で使用される投与単位形態は、処置される被験体についての1回の用量に適した、物理的に別個の単位をいう。各単位は、所望の治療効果をもたらすように計算された所定の量の活性化合物を、所望の薬学的キャリアと共に含有する。本発明の投与単位形態についての詳細は、(a)活性化合物の独特の特性および達成される特定の治療効果、ならびに(b)個体における感受性の処置のためのそのような活性化合物を合成する分野における固有の限定によって指定され、そして直接これに依存する。
【0171】
抗体の投与について、用量は、宿主の体重の約0.0001mg/kgから100mg/kgまで、より普通には、0.01mg/kgから5mg/kgまでの範囲に及ぶ。例えば、用量は、0.3mg/kg体重、1mg/kg体重、3mg/kg体重、5mg/kg体重または10mg/kg体重、または1〜10mg/kgの範囲であり得る。例示的な処置レジームは、1週間に1回の投与、2週間に1回の投与、3週間に1回の投与、4週間に1回の投与、1ヶ月に1回の投与、3ヶ月に1回の投与、または3〜6ヶ月に1回の投与を伴う。本発明の抗IRTA−5抗体の好ましい投薬レジメンは、静脈内投与を介した1mg/kg体重または3mg/kg体重でありを含み、この抗体は、以下の投薬計画のうちの1つを用いて与えられる:(i)6回の投与について4週間毎、次いで、3ヶ月毎;(ii)3週間毎;(iii)1回に3mg/kg体重、その後、3週間毎に1mg/kg。
【0172】
ある方法において、異なる結合特異性を有する2種以上のモノクローナル抗体が同時に投与され、この場合の投与される各抗体の用量は示された範囲内である。抗体は、通常、複数の機会で投与される。単回投与の間の間隔は、例えば、毎週、毎月、3ヶ月毎または毎年であり得る。間隔はまた、患者における標的抗原に対する抗体の血液レベルの測定により示されるように、不規則であり得る。ある方法において、用量は、血漿抗体濃度が約1〜1000μg/mlに達するように調整され、ある方法においては約25〜300μg/mlに達するように調整される。
【0173】
あるいは、抗体は、徐放性処方物として投与され得、この場合、より少ない頻度の投与しか必要とされない。用量および頻度は、患者における抗体の半減期に依存して変化する。一般に、ヒト抗体は、最も長い半減期を示し、ヒト化抗体、キメラ抗体および非ヒト抗体と続く。投与の用量および頻度は、その処置が予防であるか治療であるかに依存して変り得る。予防的適用においては、比較的低い用量が、長期間にわたり、比較的頻繁でない間隔で投与される。ある患者群は、その人生の最後まで処置を受け続ける。治療的適用の場合、その疾患の進行が軽減するかまたは止まるまで、そして好ましくは、患者が部分的または完全な疾患の症状の改善を示すまで、比較的高用量が比較的短い間隔で、時々必要とされる。その後、患者は、予防レジメンを投与され得る。
【0174】
本発明の薬学的組成物中の活性成分の実際の投薬レベルは、患者に毒性であることなく特定の患者、組成および投与様式について所望の治療応答を達成するために有効な量の活性成分の量を得られるように、変り得る。選択された投薬レベルは、種々の薬物速度論の因子に依存し、この因子としては、使用される本発明の特定の組成物の活性、またはそのエステルの活性、その塩の活性もしくはそのアミドの活性、投与経路、投与時間、使用される特定の化合物の排出速度、処置の期間、他の薬物、使用される特定の組成物と併用して使用される化合物および/もしくは物質、処置される患者の年齢、処置される患者の性別、処置される患者の体重、処置される患者の状態、処置される患者の全身的な健康および処置される患者の以前の病歴、ならびに医療分野で周知の同様の因子が挙げられる。
【0175】
本発明の抗IRTA−5抗体の「治療的に有効な用量」は、好ましくは、疾患症状の重篤度における軽減、疾患症状のない期間の頻度および持続期間の増大、または疾患の苦痛に起因する欠陥(impairment)または障害(disability)の予防をもたらす。例えば、IRTA−5+腫瘍の処置について、「治療的に有効な用量」は、好ましくは、細胞増殖または腫瘍増殖を、未処置の患者と比較して、好ましくは少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約40%、さらにより好ましくは少なくとも約60%、なおより好ましくは少なくとも約80%阻害する。腫瘍増殖を阻害する化合物の能力は、ヒト腫瘍における効力を予測し得る動物モデル系において評価され得る。あるいは、組成物のこの特性は、化合物の阻害の能力を試験すること(例えば、医師に公知であるアッセイによる阻害のインビトロの試験)により、評価され得る。治療的に有効な用量の治療化合物は、腫瘍の大きさを縮小させ得るか、または他に、被験体における症状を改善させ得る。当業者は、被験体の大きさ、被験体の症状の重篤度、および選択した特定の組成または投与経路のような因子に基づき、この量を決定し得る。
【0176】
本発明の組成物は、当該分野で公知の種々のうちの1つ以上の方法を用い、1つ以上の投与経路を介して投与され得る。当業者に理解されるように、投与の経路および/または様式は、所望する結果に基づいて変化する。本発明の抗体の好ましい投与経路は、静脈内投与経路、筋肉内投与経路、皮内投与経路、腹腔内投与経路、皮下投与経路、脊髄投与経路または他の非経口投与経路(例えば、注射または輸液による)である。語句「非経口投与」は、本明細書中で使用される場合、腸内投与および局所投与以外の投与様式(通常、注射による投与様式)を意味し、限定されないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、関節包内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管(transtracheal)、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内(intrasternal)の注射および輸液が挙げられる。
【0177】
あるいは、本発明の抗体は、局所投与経路、表皮投与経路または粘膜投与経路のような非経口ではない経路(non−parenteral route)(例えば、鼻腔内投与経路、経口投与経路、経膣投与経路、直腸投与経路、舌下投与経路または局所投与経路)介して投与され得る。
【0178】
活性化合物は、その化合物を急速な放出から保護するキャリアと共に、例えば制御放出処方物(移植物、経皮パッチおよび微小カプセル送達系を含む)として調製され得る。生分解性かつ生物適合性のポリマー(例えば、酢酸エチレンビニル、ポリ無水物類、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル類、およびポリ乳酸)が、使用され得る。このような処方物の調製のための多くの方法は、特許されているか、または一般に当該分野で公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems、J.R.Robinson編、Marcel Dekker,Inc.,New York,1978を参照。
【0179】
治療組成物は、当該分野で公知の医療デバイスにより投与され得る。例えば、好ましい実施形態において、本発明の治療組成物は、米国特許第5,399,163号;同第5,383,851号;同第5,312,335号;同第5,064,413号;同第4,941,880号;同第4,790,824号;または同第4,596,556号において開示されるデバイスのような、針なし皮下注射デバイスによって投与され得る。本発明に有用な周知の移植物およびモジュールの例としては、以下が挙げられる:米国特許第4,487,603号(制御された速度で医薬を分散させるための、移植可能な微小注入ポンプを開示する);米国特許第4,486,194号(皮膚を通した医薬の投与のための治療デバイスを開示する);米国特許第4,447,233号(正確な注入速度で医薬を送達するための注入ポンプを開示する);米国特許第4,447,224号(連続的な薬物送達のための可変流量移植可能注入装置を開示する)米国特許第4,439,196号(多チャンバー区画を有する浸透薬物送達系を開示する);ならびに米国特許第4,475,196号(浸透薬物送達系を開示する)。これらの特許は、本明細書中で参考として援用される。多くの他のこのような移植物、送達システムおよびモジュールが、当業者に公知である。
【0180】
特定の実施形態において、本発明のヒトモノクローナル抗体は、インビボでの適正な分布を確実にするように処方され得る。例えば、血液脳関門(BBB)は、親水性の高い化合物の多くを排除する。本発明の治療化合物が(所望される場合に)BBBを横切ることを確実にするために、本発明の治療化合物は、例えば、リポソーム内に処方され得る。リポソームの製造方法については、例えば、米国特許第4,522,811号;同第5,374,548号;および同第5,399,331号を参照。リポソームは、特定の細胞または組織に選択的に輸送され、標的薬物送達を増強する、1以上の部分を含み得る(例えば、V.V.Ranade(1989)J.Clin.Pharmacol.29:685)。例示的な標的化部分(targeting moiety)は、葉酸塩またはビオチン(例えば、Lowらに対する米国特許第5,416,016号を参照);マンノシド(Umezawaら(1988)Biochem.Biophys.Res.Commun.153:1038);抗体(P.G.Bloemanら(1995)FEBS Lett.357:140;M.Owaisら(1995)Antimicrob.Agents Chemother.39:180);界面活性剤プロテインA受容体(Briscoeら(1995)Am.J.Physiol.1233:134);p120(Schreierら(1994)J.Biol.Chem.269:9090)が挙げられる。また、K.Keinanen;M.L.Laukkanen(1994)FEBS Lett.346:123;J.J.Killion;I.J.Fidler(1994)Immunomethods 4:273も参照。
【0181】
(本発明の使用および方法)
本発明の抗体(特にヒト抗体)、抗体組成物および方法は、多くのインビトロおよびインビボの診断有用性および治療有用性を有し、IRTA−5媒介性障害の診断および治療に関連する。例えば、これらの分子は、培養中の細胞、インビトロまたはエキソビボで、またはヒト被験体に(例えば、インビボで)投与され、種々の障害を処置、予防および診断し得る。本明細書中で使用される場合、用語「被験体」は、ヒトおよび非ヒト動物を含むことを意味する。非ヒト動物は、全ての脊椎動物(例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ニワトリ、両生類および爬虫類のような、哺乳動物および非哺乳動物)を含む。好ましい被験体としては、IRTA−5活性よって媒介される障害を有するヒト患者が挙げられる。異常なIRTA−5発現に関連する障害を有するヒト患者を処置するために、本方法は特に適している。IRTA−5に対する抗体が、別の薬剤と共に投与される場合、この2つは、どちらが先に投与されてもよく、または同時に投与されてもよい。
【0182】
本発明の抗体が、IRTA−1、IRTA−2、IRTA−3およびIRTA−4と比較してIRTA−5に対して特異的に結合することを考慮すれば、本発明の抗体は、細胞の表面上でのIRTA−5発現を特異的に検出するために使用され得、そしてさらに、IRTA−5を免疫親和性精製を介して精製するために使用され得る。
【0183】
さらに、種々の腫瘍細胞上でのIRTA−5の発現を考慮すれば、本発明のヒト抗体、抗体組成物および方法は、腫瘍形成性の障害(例えば、IRTA−5を発現する腫瘍細胞の存在により特徴付けられる障害であって、例えば、バーキットリンパ腫、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、皮膚T細胞リンパ腫、結節性核切れ込み小細胞型リンパ腫、リンパ性リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、レナートリンパ腫、免疫芽球性リンパ腫、T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、成人T細胞リンパ腫(T−ALL)、胚中心細胞性/中心細胞性(entroblastic/centrocytic)(cb/cc)濾胞性リンパ腫癌、B系統のびまん性大細胞型リンパ腫、血管免疫芽球性リンパ節症(AILD)様のT細胞リンパ種、HIV関連の体腔ベースのリンパ腫(HIV associated body cavity based lymphoma)、胎生期癌、鼻咽頭の未分化癌腫(例えば、シュミンケ腫瘍(Schmincke’s tumor))、キャッスルマン病、カポージ肉腫および他のB細胞リンパ腫)を有する被験体を処置するために使用され得る。
【0184】
1つの実施形態において、本発明の抗体(例えば、ヒトモノクローナル抗体、多重特異性分子および二重特異性分子ならびに組成物)は、IRTA−5のレベルまたはIRTA−5をその膜表面上に含む細胞のレベルを検出するために使用され得、このレベルは特定の疾患症状と関連し得る。あるいは、この抗体は、IRTA−5機能を阻害するかまたはブロックするために使用され得、この使用は、特定の疾患症状の予防および改善に関連し得る(従って、IRTA−5は疾患のメディエータとして関連付けられる)。これは、サンプルおよびコントロールサンプルを、抗IRTA−5抗体にその抗体とIRTA−5との間の複合体を形成させる条件下で接触させることによって達成され得る。抗体とIRTA−5との間に形成されるあらゆる複合体が検出され、そしてサンプルとコントロールとが比較される。
【0185】
別の実施形態において、本発明の抗体(例えば、ヒト抗体、多重特異性分子および二重特異性分子ならびに組成物)は、治療的使用または診断的使用に関連した結合活性について、まずインビトロで試験され得る。例えば、本発明の組成物は、以下の実施例において記載されるフローサイトメトリーアッセイを用いて試験され得る。
【0186】
本発明の抗体(例えば、ヒト抗体、多重特異性分子および二重特異性分子、免疫結合体ならびに組成物)は、IRTA−5関連疾患の治療および診断におけるさらなる有用性を有する。例えば、ヒトモノクローナル抗体、多重特異性分子または二重特異性分子ならびに免疫結合体は、インビボまたはインビトロで、IRTA−5を発現する細胞の増殖を阻害する活性、および/もしくはIRTA−5を発現する細胞を殺す活性、ヒトエフェクター細胞の存在下で、IRTA−5を発現する細胞の食作用またはADCCを媒介する活性、または、IRTA−5リガンドのIRTA−5への結合をブロックする活性という生物活性のうちの1つ以上を誘発するために使用され得る。
【0187】
特定の実施形態において、上記抗体(例えば、ヒト抗体、多重特異性分子および二重特異性分子ならびに組成物)は、インビボで、種々のIRTA−5関連疾患を処置するか、予防するかまたは診断するために使用される。IRTA−5関連疾患の例としては、とりわけ、癌、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、未分化大細胞型リンパ腫(ALCL)、皮膚T細胞リンパ腫、結節性核切れ込み小細胞型リンパ腫、リンパ性リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、レナートリンパ腫、免疫芽球性リンパ腫、T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、成人T細胞リンパ腫(T−ALL)、胚中心細胞性/中心細胞性(entroblastic/centrocytic)(cb/cc)濾胞性リンパ腫癌、B系統のびまん性大細胞リンパ腫、血管免疫芽球性リンパ節症(AILD)様のT細胞リンパ種、HIV関連の体腔ベースのリンパ腫(HIV associated body cavity based lymphoma)、胎生期癌、鼻咽頭の未分化癌腫(例えば、シュミンケ腫瘍(Schmincke’s tumor))、キャッスルマン病、カポージ肉腫および他のB細胞リンパ腫が挙げられる。
【0188】
本発明の抗体組成物(例えば、ヒトモノクローナル抗体、多重特異性分子および二重特異性分子ならびに免疫結合体)のインビボおよびインビトロの適切な投与経路は、当該分野で周知であり、当業者によって選択可能である。例えば、抗体組成物は、注射(例えば、静脈内注射または皮下注射)によって投与され得る。使用される分子の適切な用量は、被験体の年齢および体重、ならびに抗体組成物の濃度および/または処方に依存する。
【0189】
前に記載した通り、本発明のヒト抗IRTA−5抗体は、1種または他のより多くの治療剤(例えば、細胞毒性薬剤、放射性毒性薬剤または免疫抑制剤)と同時投与され得る。この抗体は、この薬剤と(免疫複合体として)連結され得るか、または、上記薬剤と別々に投与され得る。後者の場合(別々の投与の場合)、抗体は、薬剤より前、後または同時に投与され得るか、他の公知の治療(例えば、抗ガン治療(例えば、放射線照射))と同時投与され得る。このような治療剤としては、とりわけ、抗腫瘍薬剤(例えば、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、硫酸シスプラチンブレオマイシン、カルムスチン、クロラムブシルおよびシクロホスファミドヒドロキシ尿素)が挙げられ、これらは、これらのみでは、患者に対して毒性であるかまたは準毒性であるレベルでのみ、有効である。シスプラチンは、100mg用量として4週間毎に1回静脈投与され、アドリアマイシンは、60〜75mg/mlとして21日間毎に1回静脈投与される。本発明のヒト抗IRTA−5抗体またはその抗原結合フラグメントの化学治療剤との同時投与は、異なったメカニズムを介して作用する2種の抗癌剤(ヒト腫瘍細胞に対する細胞毒性効果を生じる)を提供する。このような同時投与は、薬物に対する耐性の発生に起因する問題または腫瘍細胞を抗体に対し非反応性にする腫瘍細胞の抗原性の変化に起因する問題を解決し得る。
【0190】
標的特異的エフェクター細胞(例えば、本発明の組成物(例えば、ヒト抗体、多重特異性分子および二重特異性分子)に関連するエフェクター細胞)はまた、治療剤として使用され得る。標的化のためのエフェクター細胞は、ヒト白血球(例えば、マクロファージ、好中球または単球)であり得る。他の細胞としては、好酸球、ナチュラルキラー細胞およびIgG受容体またはIgA受容体を有する他の細胞が挙げられる。所望される場合、エフェクター細胞は、処置される被験体から得られ得る。標的特異的エフェクター細胞は、生理学的に受容可能な溶液中の細胞の懸濁液として投与され得る。投与される細胞の数は、108〜109程度であり得るが、治療目的によって変化し得る。一般に、この量は、標的細胞(例えば、IRTA−5を発現する腫瘍細胞)での局在化を得るため、食作用による細胞殺傷を達成させるのに十分である。投与経路もまた、変化し得る。
【0191】
標的特異的エフェクター細胞を用いた治療は、標的細胞の除去のための他の技術と組み合わせて実施され得る。例えば、本発明の組成物(例えば、ヒト抗体、多重特異性分子および二重特異性分子)および/またはこれらの組成物を備えたエフェクター細胞を用いる抗腫瘍治療が、化学療法と組み合わせて使用され得る。さらに、組み合わせ免疫治療は、2つの異なる細胞毒性エフェクター集団を腫瘍細胞排除に指向させるために使用され得る。例えば、抗FcγRIまたは抗CD3に連結された抗IRTA−5抗体が、IgG受容体またはIgA受容体に特異的な結合剤と共に使用され得る。
【0192】
本発明の二重特異性分子および多重特異性分子は、例えば細胞表面上の受容体のキャッピングおよび除去により、FcγRまたはエフェクター細胞上のFcγRレベルを調節するためにもまた、使用され得る。抗Fc受容体の混合物もまた、この目的のために使用され得る。
【0193】
補体結合部位(例えば、補体に結合する、IgG1由来の部分、IgG2由来の部分もしくはIgG3由来の部分またはIgM由来の部分)を有する本発明の組成物(例えば、ヒト抗体、多重特異性分子および二重特異性分子ならびに免疫結合体)もまた、補体の存在下で使用され得る。1つの実施形態において、本発明の結合剤および適切なエフェクター細胞による標的細胞を含む細胞集団のエキソビボ処置は、補体または補体を含有する血清の添加により、補強され得る。本発明の結合剤で被膜された標的細胞の食作用は、補体タンパク質の結合により改善され得る。別の実施形態において、本発明の組成物(例えば、ヒト抗体、多重特異性分子および二重特異性分子)で被膜された標的細胞はまた、補体によって溶解され得る。なお別の実施形態において、本発明の組成物は、補体を活性化しない。
【0194】
本発明の組成物(例えば、ヒト抗体、多重特異性分子および二重特異性分子)はまた、補体と共に投与され得る。したがって、ヒト抗体、多重特異性分子もしくは二重特異性分子と、血清または補体とを含有する組成物は、本発明の範囲内にある。これらの組成物は、補体が上記ヒト抗体、多重特異性分子または二重特異性分子の近傍に位置するという点で、有利である。あるいは、本発明のヒト抗体、多重特異性分子または二重特異性分子と、上記血清または補体とは、別々に投与され得る。
【0195】
本発明の抗体組成物(例えば、ヒト抗体、多重特異性分子もしくは二重特異性分子または免疫結合体)および使用説明書を含むキットもまた、本発明の範囲内にある。このキットは、1種以上のさらなる試薬(例えば、免疫抑制試薬、細胞毒性薬剤または放射性毒性薬剤)、または1種以上のさらなる本発明のヒト抗体(例えば、第1のヒト抗体とは異なるIRTA−5抗原のエピトープに結合する相補的活性を有するヒト抗体)をさらに含み得る。
【0196】
したがって、本発明の抗体組成物で処置される患者は、(本発明のヒト抗体の投与の前、これと同時、または後に)ヒト抗体の治療効果を増強または亢進する別の治療剤(例えば、細胞毒性薬剤または放射性薬剤)をさらに投与され得る。
【0197】
他の実施形態において、被験体は、FcγまたはFcγ受容体の発現または活性を調節(例えば、増強または阻害)する薬剤で(例えばサイトカインで被験体を処置することにより)さらに処置され得る。多重特異性分子での処置の間の投与のために好ましいサイトカインとしては、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、インターフェロン−γ(IFN−γ)、および腫瘍壊死因子(TNF)が挙げられる。
【0198】
本発明の組成物(例えば、ヒト抗体、多重特異性分子および二重特異性分子)はまた、FcγRまたはIRTA−5を発現する細胞を標識するため、例えば、これらの細胞を標識するために使用され得る。このような使用のために、結合剤は、検出され得る分子に結合され得る。したがって、本発明は、Fc受容体(例えば、FcγRまたはIRTA−5)を発現する細胞をエキソビボまたはインビトロで位置決定するための方法を提供する。検出可能な標識は、例えば、放射性同位体、蛍光化合物、酵素または酵素補因子であり得る。
【0199】
特定の実施形態において、本発明は、サンプル中のIRTA−5抗原の存在、またはIRTA−5抗原の量を測定する方法を提供し、これらの方法は、サンプルおよびコントロールサンプルを、IRTA−5と特異的に結合するヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合部分と、その抗体またはその部分とIRTA−5との間の複合体の形成が可能な条件下で接触させる工程を包含する。次いで、複合体の形成が検出され、ここで、コントロールサンプルと比較してサンプルとの間で異なる複合体形成は、サンプル中のIRTA−5抗原の存在を示す。
【0200】
他の実施形態において、本発明は、被験体に上述のヒト抗体を投与することによって、被験体におけるIRTA−5媒介性障害(例えば、ガン、非ホジキン性リンパ腫、バーキットリンパ腫、未分化大細胞型リンパ腫(ALCL)、皮膚T細胞リンパ腫、結節性核切れ込み小細胞型リンパ腫、リンパ性リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、レナートリンパ腫、免疫芽球性リンパ腫、T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、成人T細胞リンパ腫(T−ALL)、胚中心細胞性/中心細胞性(entroblastic/centrocytic)(cb/cc)濾胞性リンパ腫癌、B系統のびまん性大細胞リンパ腫、血管免疫芽球性リンパ節症(AILD)様のT細胞リンパ種、HIV関連の体腔ベースのリンパ腫(HIV associated body cavity based lymphoma)、胎生期癌、鼻咽頭の未分化癌腫(例えば、シュミンケ腫瘍(Schmincke’s tumor))、キャッスルマン病、カポージ肉腫および他のB細胞リンパ腫)を処置するための方法を提供する。このような抗体およびその誘導体は、特定の障害に関連する、IRTA−5誘導性活性(例えば、増殖および分化)を阻害するために使用され得る。上記抗体をIRTA−5と接触させることにより(例えば、抗体を被験体に投与することにより)、IRTA−5がこのような活性を誘導する能力が阻害され、したがって、関連の障害が処置される。上記抗体組成物は、単独で投与され得るか、またはこの抗体組成物と組み合わせて作用するか、もしくは抗体組成物と相乗的に作用して作用する別の治療剤(例えば、細胞毒性薬剤または放射性毒性薬剤)と共に投与され得、IRTA−5媒介性疾患を処置または予防し得る。
【0201】
なお別の実施形態において、本発明の免疫結合体は、化合物(例えば、治療剤、標識、サイトカイン、放射性毒素、免疫抑制剤など)を上記抗体と連結することにより、このような化合物をIRTA−5細胞表面受容体を有する細胞に対して標的化するために使用され得る。したがって、本発明は、IRTA−5を発現する細胞を(例えば、放射性同位体、蛍光化合物、酵素または酵素補因子のような検出可能標識を用いて)エキソビボまたはインビボで位置決定するための方法もまた、提供する。あるいは、この免疫結合体は、IRTA−5に対して細胞毒素または放射性毒素を標的化することにより、IRTA−5細胞表面受容体を有する細胞を殺すために使用され得る。
【0202】
本発明は、以下の実施例においてさらに説明される。これらの実施例は、さらなる限定として解釈されるべきではない。全ての図面の内容および本出願を通して引用された全ての参考文献、特許および公開された特許出願は、本明細書中に、明白に参考として援用される。
【実施例】
【0203】
(実施例1:IRTA5に対するヒトモノクローナル抗体の産生)
(抗原)
異種ポリペプチドに結合したIRTA5の細胞外ドメインから構成される融合タンパク質を、標準的組換え方法によって産生し、免疫のための抗原として使用した。
【0204】
(トランスジェニックHuMab Mouse(登録商標))
IRTA5に対する完全ヒトモノクローナル抗体を、トランスジェニックHuMab Mouse(登録商標)のHco7系統由来のマウス(ヒト抗体遺伝子を発現する)を用いて調製した。このマウス系統において、内在性マウスκ軽鎖遺伝子はChenら(1993)EMBO J.12:811−820に記載されるようにホモ接合的に分裂されており、そして内在性マウス重鎖遺伝子は国際公開第01/09187号の実施例1に記載されるようにホモ接合的に分裂されている。その上さらに、このマウス系統は、Fishwildら(1996)Nature Biotechnology 14:845−851に記載されるようなヒトκ軽鎖導入遺伝子KCo5を保有し、そして米国特許第5,545,806号、同第5,625,825号および同第5,545,807号に記載されるようなヒト重鎖導入遺伝子HCo7を保有する。
【0205】
(HuMab免疫)
IRTA5に対する完全ヒトモノクローナル抗体を産生するために、HCo7 HuMab Mouse(登録商標)系統のマウスを、組換えIRTA5融合タンパク質をコードする遺伝子を含む発現ベクターでトランスフェクトした哺乳動物細胞に由来する、精製した融合タンパク質で免疫した。HuMab Mouse(登録商標)についての一般的な免疫スキームは、Lonberg,N.ら(1994)Nature 368(6474):856−859;Fishwild,D.ら(1996)Nature Biotechnology 14:845−851および国際公開第98/24884号に記載される。このマウスは、最初の抗原注入において、6〜16週齢であった。精製した組換え体IRTA5抗原調製物(5〜50μg、IRTA5融合タンパク質を発現するトランスフェクトした哺乳動物細胞から精製)を、HuMabマウスintraperitoneallymiceTMを腹腔内(IP)免疫するために使用した。
【0206】
トランスジェニックマウスを、完全フロイントアジュバント中またはRibiアジュバント中の抗原で2回IP免疫し、その後、不完全フロイントアジュバント中またはRibiアジュバント中のその抗原で3〜21日間IP免疫した(計11回までの免疫)。免疫応答を、眼窩後方の採血によってモニタリングした。血漿を、ELISAによって(以下に記載のように)スクリーニングし、そして抗IRTA5ヒト免疫グロブリンの十分な力価を有するマウスを、融合のために使用した。マウスを、屠殺および脾臓の摘出の3日間前に、抗原で静脈内にブーストした。
【0207】
(抗IRTA5抗体を産生するHuMabマウスTMの分泌)
IRTA5に結合する抗体を産生するHuMabマウスTMを選択するために、免疫したマウスからの血清を、改変ELISAによって試験した。この改変ELISAは、元来Fishwild,D.ら(1996)に記載される。簡潔には、マイクロタイタープレートを、精製組換えIRTA5融合タンパク質(PBS中1〜2μg/ml、50μl/ウェル)で、4℃で1晩インキュベートしてコートし、次いで、PBS中200μl/ウェルの5%BSAでブロックした。IRTA5免疫マウスからの血漿の希釈物を各ウェルに添加し、そして1〜2時間、周囲の温度でインキュベートした。このプレートを、次いで、PBS/Tweenで洗浄し、次いで、アルカリホスファターゼと結合体化したヤギ抗ヒトκ軽鎖ポリクローナル抗体と共に1時間、室温でインキュベートした。洗浄後、プレートをpNPP基質で発色させ、そして分光光度計によってOD415〜650で分析した。抗IRTA5抗体の最も高い力価で発色したマウスを、融合のために使用した。融合を、以下に記載するように実施し、そしてハイブリドーマ上清を、ELISAによって抗IRTA5活性について試験した。
【0208】
(IRTA5に対するヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの産生)
HuMabマウスTMから単離されたマウス脾臓細胞を、標準的プロトコールに基づき、PEGによりマウス骨髄腫細胞株と融合させた。次いで、得られたハイブリドーマを、抗原特異的抗体の産生についてスクリーニングした。免疫したマウスからの脾臓リンパ球の単個細胞浮遊液を、4分の1の数のP3X63 Ag8.6.53(ATCC CRL 1580)非分泌マウス骨髄腫細胞に50%PEG(Sigma)を用いて融合させた。細胞を、平底マイクロタイタープレート中に約1×105/ウェルでプレートし、その後、RPMI中のorigen(IGEN)、L−グルタミン、ピルビン酸ナトリウム、HEPES、ペニシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、1×HAT、およびβ−メルカプトエタノールを補充した10%ウシ胎仔血清含有選択培地中で、約2週間インキュベーションした。1〜2週間後、HATをHTで置き換えた培地中で細胞を培養した。次いで、個々のウェルを、ELISA(上述)によってヒト抗IRTA5モノクローナルIgG抗体についてスクリーニングした。一旦、広範なハイブリドーマの増殖が起こってから通常10〜14日後に培地をモニタリングした。上記抗体を分泌するハイブリドーマを、再びプレートし、再びスクリーニングし、なおヒトIgGについて陽性であった場合、抗IRTA5モノクローナル抗体を、限界希釈により少なくとも2回サブクローニングした。次いで、安定したサブクローンをインビトロで培養し、さらなる性質決定のために、組織培養培地中に少量の抗体を産生させた。
【0209】
ハイブリドーマクローン2G2、2G5、5A2、7G8、1E5、4B7、および7F5を、さらなる分析のために選択した。
【0210】
(実施例2:ヒトモノクローナル抗体5A2、ヒトモノクローナル抗体2G5およびヒトモノクローナル抗体7G8の構造的性質決定)
2G5モノクローナル抗体、5A2モノクローナル抗体および7G8モノクローナル抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域をコードするcDNA配列を、標準的PCR技術を用いてそれぞれ2G5ハイブリドーマ、5A2ハイブリドーマおよび7G8ハイブリドーマから得、標準的DNA配列決定技術を用いて配列決定した。
【0211】
2G5の重鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、図1Aならびに配列番号25および配列番号19にそれぞれ示す。
【0212】
2G5の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、図1Bならびに配列番号28および配列番号22にそれぞれ示す。
【0213】
2G5重鎖免疫グロブリン配列の、公知のヒト生殖細胞系列免疫グロブリン重鎖配列との比較は、2G5重鎖が、ヒト生殖細胞系列VH 3−33由来のVHセグメント、ヒト生殖細胞系列7−27由来のDセグメント、およびヒト生殖細胞系列JH 3b由来のJHセグメントを使用していることを実証した。2G5 VH配列と生殖細胞系列VH 3−33配列とのアラインメントを、図4に示す。CDR領域決定のKabatシステムを用いた2G5 VH配列のさらなる分析は、重鎖のCDR1領域、CDR2領域およびCD3領域の描写をもたらした。それぞれ、図1Aおよび図4ならびに配列番号1、配列番号4および配列番号7において示す。
【0214】
2G5軽鎖免疫グロブリン配列の、公知のヒト生殖細胞系列免疫グロブリン重鎖配列との比較は、2G5軽鎖は、ヒト生殖細胞系列VK L6由来のVLセグメントおよびヒト生殖細胞系列JK 2由来のJKセグメントを使用していることを実証した。2G5 VL配列と生殖細胞系列VK L6配列とのアラインメントを、図6に示す。CDR領域決定のKabatシステムを用いた2G5 VL配列のさらなる分析は、軽鎖のCDR1領域、CDR2領域およびCD3領域の描写をもたらした。それぞれ、図1Bおよび図6、ならびに配列番号10、配列番号13および配列番号16において示す。
【0215】
5A2の重鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、図2Aならびに配列番号26および配列番号20にそれぞれ示す。
【0216】
5A2の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、図2Bならびに配列番号29および配列番号23にそれぞれ示す。
【0217】
5A2重鎖免疫グロブリン配列の、公知のヒト生殖細胞系列免疫グロブリン重鎖配列との比較は、5A2重鎖は、ヒト生殖細胞系列VH 3−33由来のVHセグメント、未決定のDセグメント、およびヒト生殖細胞系列JH 4b由来のJHセグメントを使用していることを実証した。5A2 VH配列と生殖細胞系列VH 3−33配列とのアラインメントを、図4に示す。CDR領域決定のKabatシステムを用いた5A2 VH配列のさらなる分析は、重鎖のCDR1領域、CDR2領域およびCDR3領域の描写をもたらした。それぞれ、図2Aおよび図4、ならびに配列番号2、配列番号5および配列番号8において示す。
【0218】
5A2軽鎖免疫グロブリン配列の、公知のヒト生殖細胞系列免疫グロブリン軽鎖配列との比較は、5A2軽鎖は、ヒト生殖細胞系列VK L6由来のVLセグメントおよびヒト生殖細胞系列JK 1由来のJKセグメントを使用していることを実証した。5A2 VL配列と生殖細胞系列VK L6配列とのアラインメントを、図6に示す。CDR領域決定のKabatシステムを用いた5A2 VL配列のさらなる分析は、軽鎖のCDR1領域、CDR2領域およびCD3領域の描写をもたらした。それぞれ、図2Bおよび図6、ならびに配列番号11、配列番号14および配列番号17において示す。
【0219】
7G8の重鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、図3Aならびに配列番号27および配列番号21にそれぞれ示す。
【0220】
7G8の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、図3Bならびに配列番号30および配列番号24にそれぞれ示す。
【0221】
7G8重鎖免疫グロブリン配列の公知の、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン重鎖配列との比較は、7G8重鎖は、ヒト生殖細胞系列VH DP44由来のVHセグメント、未決定のDセグメント、およびヒト生殖細胞系列JH 2由来のJHセグメントを使用していることを実証した。7G8 VH配列と生殖細胞系列VH DP44配列とのアラインメントを、図5に示す。CDR領域決定のKabatシステムを用いた7G8 VH配列のさらなる分析は、重鎖のCDR1領域、CDR2領域およびCD3領域の描写をもたらした。それぞれ、図3Aおよび図5、ならびに配列番号3、配列番号6および配列番号9で示す。
【0222】
7G8軽鎖免疫グロブリン配列の、公知のヒト生殖細胞系列免疫グロブリン軽鎖配列との比較は、7G8軽鎖は、ヒト生殖細胞系列VK L6由来のVLセグメントおよびヒト生殖細胞系列JK 1由来のJKセグメントを使用していることを実証した。7G8 VL配列と生殖細胞系列VK A27配列とのアラインメントを、図6に示す。CDR領域決定のKabatシステムを用いた7G8 VL配列のさらなる分析は、軽鎖のCDR1領域、CDR2領域およびCD3領域の描写をもたらした。それぞれ、図3Bおよび図6、ならびに配列番号12、配列番号15および配列番号18において示す。
【0223】
(実施例3:mAb 7G8の変異および代替の生殖細胞系列の使用)
上の実施例2で議論したように、mAb 7G8は、HuMab Mouse(登録商標)系統のHCo7導入遺伝子に存在する、ヒトDP−44生殖細胞系列配列に由来する重鎖可変領域を利用する。DP−44は、天然のヒト免疫グロブリンレパートリーにおいて利用される生殖細胞配列ではないので、7G8のVH配列を変異させ、潜在的な免疫抗原性を低下させることは、有利であり得る。好ましくは、7G8 VH配列の1つ以上のフレームワーク残基が、構造的に関連するVH生殖細胞系列配列のうちの、天然のヒト免疫グロブリンレパートリーにおいて使用されるフレームワーク中に存在する残基において変異される。例えば、図7は、7G8 VH配列とDP44生殖細胞系列配列とのアラインメントを示し、2つの構造的に関連したヒト生殖細胞系列配列であるVH 3−23とVH 3−7とのアラインメントもまた示す。これらの配列の関連性を考慮すると、ヒトIRTA5に特異的に結合し、かつVH 3−23またはVH 3−7に由来するVH領域を使用するヒト抗体を選択し得ることを予測し得る。その上、VH 3−23配列中もしくはVH 3−7配列中の比較可能な位置の残基とは異なる7G8 VH配列内の1以上の残基を、VH 3−23中もしくはVH 3−7中に存在する残基へと変異させ得るか、またはその保存的アミノ酸置換へと変異させ得る。例えば、本明細書中で提供される7G8の好ましい変異形態は、7G8(mut)といい、図7および配列番号36に示すアミノ酸配列を有する。7G8(mut)において、アミノ酸13位のヒスチジンは、リジンまたはグルタミンのどちらかへと変異されており、そして87位のメチオニンは、トレオニンに変異されている。
【0224】
(実施例4:抗IRTA5ヒトモノクローナル抗体の結合特異性および結合速度論の性質決定)
この実施例において、抗IRTA5抗体の結合親和性、結合速度論、結合特異性および交差競合を、Biacore分析によって試験する。また、結合特異性を、フローサイトメトリーによって試験する。
【0225】
(結合親和性および結合速度論)
抗IRTA5抗体を、Biacore分析(Biacore AB,Uppsala,Sweden)により、親和性および結合速度論について性質決定した。標準的アミンカップリング化学およびBiacoreによって提供されるキットを使用して、精製組換えヒトIRTA5融合タンパク質を、CM5チップ(カルボキシメチルデキストランでコートしたチップ)に第一級アミンを介して共有結合させた。HBS EPバッファー(Biacore ABによって提供される)中に抗体を密度267nM、流速50μl/分で流動(flowing)させることにより、結合を測定した。抗原−抗体会合速度論を3分間追跡し、解離速度論を7分間追跡した。会合曲線および解離曲線を、BIAevalation software(Biacore AB)を使用して、1:1ラングミュア結合モデルに当てはめた。結合定数の推定におけるアビディティの影響を最小化するために、会合段階および解離段階に対応するデータの最初のセグメントのみを当てはめに使用した。KD値、kon値およびkoff値を、表1に示すように決定した。
【0226】
【表1】
。
【0227】
(抗IRTA5抗体のエピトープマッピング)
Biacoreを使用し、抗IRTA5 HuMAbのエピトープ分類を決定した。抗IRTA5抗体(2G5、5A2、7G8、4B7、7F5、4B7、2G1)を使用し、そのIRTA5上のエピトープをマッピングした。抗体2G5、抗体5A2および抗体7G8を、同じチップの3種の異なる表面上に各8000RUになるようにコートした。上記の7つのmAbのそれぞれの希釈物を10μg/mLで開始して作製し、IRTA5−Fc(50nM)と共に1時間インキュベートした。インキュベートした複合体を、3つ全ての表面(およびブランクの表面)の上に1.5分間、流速20μL/分で同時に注入した。1.5分間の最後の各表面からのシグナルを、適切なブランクの減算後、複合体におけるmAbの濃度に対してプロットしている。データの分析の際、この7種の抗IRTA5抗体を、3つのエピトープ群に分類した。A群は2G5、5A2および7G8を含み、B1群は7G8および1E5を含み、そしてB2群は、7F5、4B7および2G1を含む。この3つのエピトープ群の相互関係を、図8に概略的に図示する。
【0228】
(フローサイトメトリーによる結合特異性)
上記の5種のIRTAタンパク質の各々のうち1種を細胞表面上に発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株を発生させ、IRTA5 HuMAbの特異性をフローサイトメトリーにより決定するために使用した。CHO細胞を、IRTA1、IRTA2、IRTA3、IRTA4またはIRTA5の膜貫通形態をコードする完全長のcDNAを含む発現プラスミドでトランスフェクトした。さらに、トランスフェクトしたタンパク質は、エピトープに対して特異的な抗体による検出のために、N末端にエピトープタグを含んだ。上記7種の抗IRTA5 HuMAbの結合を、トランスフェクトした細胞を上記IRTA5 Abの各々(濃度10μg/ml)と共にインキュベートすることにより、評価した。細胞を洗浄し、そして結合を、FITC標識した抗ヒトIgG Abで検出した。マウス抗エピトープタグAbをポジティブコントロールとして用い、その後、標識した抗マウスIgGをポジティブコントロールとして用いた。非特異的ヒトAbおよび非特異的マウスのAbを、ネガティブコントロールとして使用した。結果を、図9に図示する。IRTA5でトランスフェクトしたCHO株に結合したが、IRTA1、IRTA2またはIRTA4を発現するCHO株に結合しなかったIRTA5 HuMAbを、染色の平均蛍光強度(MFI)によって測定した。結果として、HuMAbは、IRTA3を発現するCHO株への特異的な結合を有するとは示さなかった(データは示さず)。これらのデータは、HuMAbのIRTA5に対する特異性を実証した。
【0229】
(実施例5:IRTA5抗体の正常B細胞およびB細胞由来腫瘍株への結合)
2色の免疫蛍光およびフローサイトメトリーを使用して、IRTA5 HuMAbの末梢血B細胞への結合を実証した。CD19は、末梢血Bリンパ球を識別するために使用され得る細胞表面マーカーである。ヒト末梢血単核細胞を、ビオチン化2G5、ビオチン化7G8またはイソ型コントロールビオチン化ヒトAbと共にインキュベートした。細胞を洗浄し、そしてFITC標識ストレプトアビジンおよびフィコエリトリン標識抗CD19抗体と共にインキュベートした。細胞を洗浄し、そしてフローサイトメトリーにより分析した。結果を、図10Aに図示する。リンパ球は黒「点」として通過し、そして単球は灰色「点」として通過した。波長を、FITC(FL1)シグナル伝達およびフィコエリトリン(FL2)シグナル伝達についてスクリーニングするために選択した。CD19+B細胞は、フィコエリトリン標識抗CD19抗体に対し高いレベルの結合を示した(横軸)。2G5+細胞または7G8+細胞(縦軸)もまた主にCD19+であり、二重陽性(上段右の四分区画)に局在した。これらのデータは、IRTA5タンパク質は、HuMAb 2G5およびHuMAb 7G8の結合によって評価されたように、正常末梢血Bリンパ球の(全てではないが)大部分によって発現されることを実証した。
【0230】
2色免疫蛍光およびフローサイトメトリーをまた、末梢血T細胞、樹状細胞、単球またはナチュラルキラー(NK)細胞に対するIRTA5 HuMAbの結合について試験するためにも使用した。CD3、CD1A、CD14およびCD56は、それぞれ末梢血Tリンパ球、末梢血樹状細胞、末梢血単球および末梢血NK細胞を識別するために使用され得る細胞表面マーカーである。ビオチン化した2G5、7G8またはアイソタイプコントロール抗体およびフィコエリトリン標識マーカー抗体(CD3、CD1A、CD14およびCD56)を、上述のように、フローサイトメトリー分析に使用した。結果を図10Bに図示する。リンパ球は黒「点」として通過し、そして単球は灰色「点」として通過した。波長を、FITC(FL1)シグナル伝達およびフィコエリトリン(FL2)シグナル伝達についてスクリーニングするために選択した。IRTA5 HuMAb 2G5およびIRTA5 HuMAb 7G8は、CD3+末梢血T細胞にも、CD1A+末梢血樹状細胞にも、CD14+末梢血単球にも、CD56+末梢血NK細胞にも結合しなかった。このことは、IRTA5のB細胞特異的発現を確認した。
【0231】
IRTA5 HuMAbのB細胞腫瘍株であるDaudi(ATCC CCL−213)、Ramos(ATCC CRL−1596)、Karpas 1106P(DSMZ ACC 545)、SU−DHL−4(DSMZ ACC 495)、Granta 519(DSMZ ACC 342)およびL−540(DSMZ ACC 72)への結合を、フローサイトメトリーにより評価した。上記細胞株を、上記IRTA5 HuMAbのそれぞれまたはコントロールヒト抗体と共にインキュベートし、洗浄しそしてフィコエリトリン標識抗ヒト二次抗体により検出した。図11は、IRTA5 HuMAb 2G2のDaudi細胞およびRamos細胞に対する結合を、コントロールヒト抗体と比較して示す。残りの6種のIRTA5 HuMAbは、類似した結合パターンを示す(データは示さず)。これらのデータは、IRTA5タンパク質がB細胞起源のDaudi腫瘍細胞株およびRamos腫瘍細胞株の表面上に発現されることを示す。図12は、IRTA5 HuMAb 2G5のKarpas 1106P細胞、SU−DHL−4細胞、Granta 519細胞およびL−540細胞への結合を、アイソタイプコントロール抗体と比較して示す。このデータは、IRTA5抗体がSU−DHL−4 B細胞腫瘍株に対する増加した結合を有することを示す(染色の平均蛍光強度(MFI)によって測定)。まとめると、これらのデータは、特定のB細胞腫瘍株がIRTA5タンパク質を細胞表面上に発現することを実証する。
【0232】
(IRTA−5(配列番号37))
【0233】
【数1】
(IRTA−1(配列番号38))
【0234】
【数2】
(IRTA−2(配列番号39))
【0235】
【数3】
(IRTA−3(配列番号40))
【0236】
【数4】
(IRTA−4(配列番号41))
【0237】
【数5】
【0238】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【0239】
【図1A】図1Aは、2G5ヒトモノクローナル抗体の重鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号25)およびアミノ酸配列(配列番号19)を示す。このCDR1(配列番号1)領域、CDR2(配列番号4)領域およびCDR3(配列番号7)領域が示され、そしてこのV生殖系列の派生物、D生殖系列の派生物およびJ生殖系列の派生物が示される。
【図1B】図1Bは、2G5ヒトモノクローナル抗体の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号28)およびアミノ酸配列(配列番号22)を示す。このCDR1(配列番号10)領域、CDR2(配列番号13)領域およびCDR3(配列番号16)領域が示され、そしてこのV生殖系列の派生物およびJ生殖系列の派生物が示される。
【図2A】図2Aは、5A2ヒトモノクローナル抗体の重鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号26)およびアミノ酸配列(配列番号20)を示す。このCDR1(配列番号2)領域、CDR2(配列番号5)領域およびCDR3(配列番号8)領域が示され、そしてこのV生殖系列の派生物およびJ生殖系列の派生物が示される。
【図2B】図2Bは、5A2ヒトモノクローナル抗体の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号29)およびアミノ酸配列(配列番号23)を示す。このCDR1(配列番号11)領域、CDR2(配列番号14)領域およびCDR3 (配列番号17)領域が示され、そしてこのV生殖系列の派生物およびJ生殖系列の派生物が示される。
【図3A】図3Aは、7G8ヒトモノクローナル抗体の重鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号27)およびアミノ酸配列(配列番号21)を示す。このCDR1(配列番号3)領域、CDR2(配列番号6)領域およびCDR3(配列番号9)領域が示され、そしてこのV生殖系列の派生物およびJ生殖系列の派生物が示される。
【図3B】図3Bは、7G8ヒトモノクローナル抗体の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号30)およびアミノ酸配列(配列番号24)を示す。このCDR1(配列番号12)領域、CDR2(配列番号15)領域およびCDR3(配列番号18)領域が示され、そしてこのV生殖系列の派生物およびJ生殖系列の派生物が示される。
【図4】図4は、2G5および5A2の重鎖可変領域のアミノ酸配列と、ヒト生殖系列のVH 3−33アミノ酸配列(配列番号31)とのアラインメントを示す。
【図5】図5は、7G8の重鎖可変領域のアミノ酸配列とヒト生殖系列のVH DP44アミノ酸配列(配列番号32)とのアラインメントを示す。
【図6】図6は、2G5、5A2、および7G8の軽鎖可変領域のアミノ酸配列と、ヒト生殖系列のVk L6アミノ酸配列(配列番号33)とのアラインメントを示す。
【図7】図7は、7G8の重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号21)および7G8(mut)(配列番号36)と称される7G8の重鎖可変領域の変異形態と、ヒト生殖系列のVH DP44アミノ酸配列、VH 3−23アミノ酸配列およびVH 3−7アミノ酸配列(それぞれ、配列番号32、配列番号34および配列番号35)とのアラインメントを示す。
【図8】図8は、BIAcore分析に基づく抗IRTA−5抗体のエピトープの分類を示す。
【図9】図9は、ヒトIRTA−5に対して指向されるヒトモノクローナル抗体4B7、2G1、7F5、7G8、5A2、1E5、および2G5が、ヒトIRTA−5に特異的に結合することを実証する実験の結果を示すグラフである。
【図10A】図10Aは、ヒトIRTA−5に対して指向されるヒトモノクローナル抗体2G5および7G8が、CD19+ B細胞に結合することを実証するフローサイトメトリー実験の結果を示す。
【図10B】図10Bは、ヒトIRTA−5に対して指向されるヒトモノクローナル抗体2G5および7G8が、CD3+末梢血T細胞、CD1A+末梢血樹状細胞、CD14+末梢血単球、またはCD56+末梢血NK細胞に結合しないことを実証するフローサイトメトリー実験の結果を示す。
【図11】図11は、ヒトIRTA−5に対して指向されるヒトモノクローナル抗体2G2が、B細胞由来の腫瘍細胞株の細胞表面に特異的に結合することを実証するヒストグラムのプロットを示す。
【図12】図12は、ヒトIRTA−5に対して指向されるヒトモノクローナル抗体2G5の、B−細胞腫瘍株Karpas 1106P、SU−DHL−4、Granta 519、およびL−540に対する結合を実証するフローサイトメトリー実験の結果を示す。
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、米国仮特許出願番号第60/557,741号(2004年3月29日出願)に対する優先権を主張し、この出願の内容は、その全体が本明細書によって援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
免疫受容体転座関連(Immune Receptor Translocation Associated)(IRTA)遺伝子/タンパク質(Fc受容体ホモログ(FcRH)遺伝子)は、免疫グロブリン様細胞表面受容体のファミリーの5つのメンバーからなる(非特許文献1;非特許文献2)。IRTAは、1q21染色体の再配置を含む多発性骨髄腫細胞株のブレークポイント(breakpoint)の分析によって最初に見出された(非特許文献3)。IRTA糖タンパク質は、3個から9個の間の細胞外Ig様ドメインを含む(非特許文献1、前出)。IRTAはまた、免疫受容体抑制性チロシンモチーフ(immunotyrosine inhibitory motif)(ITIM)および免疫受容体チロシン活性化様(immunotyrosine activation−like)(ITAM−like)モチーフの存在を示唆する、特定のモチーフ内に含まれる3個から5個の間のチロシン残基を含む細胞質ドメインを有することによって特徴付けられる(非特許文献1、前出;非特許文献3、前出)。
【0003】
IRTAは、末梢リンパ組織において発現され、この組織としては、リンパ節、扁桃、休止期末梢B細胞および正常な胚中心B細胞が挙げられる(非特許文献4)。IRTA1が、脾臓において低レベルで検出されたことに対して比較すると、IRTA 2、IRTA 3、IRTA 4、およびIRTA 5は、脾臓において全て高レベルで発現される。IRTA発現は、ヒト扁桃組織のB細胞区画内で分析された。IRTA 1は、辺縁帯中および上皮内のリンパ球中のリンパ濾胞の外側に発現される。IRTA2およびIRTA3は、中心細胞が豊富な明調域おける最も高い発現を伴って、胚中心の癌内で発現される。IRTA4およびIRTA5は、マントルゾーン内で最も高度に発現され、これは、ナイーブなB細胞における発現を示す(非特許文献1、前出)。
【0004】
IRTA5は、膜貫通領域中に荷電したグルタミン酸残基を有する点でIRTAの間で独特であり、このことは、IRTA5が、多くのITAM関連タンパク質の場合のように、近傍の位置にある正に荷電したアミノ酸を含むタンパク質とヘテロ二量体化することを示唆する(非特許文献1、前出)。
【0005】
IRTA遺伝子は、B細胞の非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、濾胞性リンパ腫、B細胞系のびまん性大細胞型リンパ腫、および多発性骨髄腫において高度に発現されることが示された(非特許文献4、前出)。
【非特許文献1】Millerら、「Blood」、2002年、第99巻、p.2662
【非特許文献2】Davisら、「Immunological Reviews」、2002年、第190巻、p.123
【非特許文献3】Hatzivassiliouら、「Immunity」、2001年、第14巻、p.277
【非特許文献4】Davisら、「PNAS」、2001年、第98巻、p.9772
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本発明は、IRTA−5に結合し、そして多くの望ましい性質を示す単離されたモノクローナル抗体(特に、ヒトモノクローナル抗体)を提供する。これらの性質としては、ヒトIRTA−5に対して高い親和性で結合するが、ヒトIRTA−1、ヒトIRTA−2、ヒトIRTA−3、またはヒトIRTA−4のいずれに対しても実質的な交差反応性を欠くことが挙げられる。さらに、この抗体は、B細胞に対して特異的に結合する。さらになお、本発明の抗体は、B細胞の腫瘍細胞株に結合するが、T細胞、樹状細胞、単球またはナチュラルキラー細胞に結合しないことが示された。
【0007】
本発明の好ましい実施形態において、ヒトIRTA−5は、配列番号37[Genbank登録番号AAL60250]に示されるようなアミノ酸配列を有するポリペプチドを含み;ヒトIRTA−1は、配列番号38[Genbank登録番号NP_112572]に示されるようなアミノ酸配列を有するポリペプチドを含み;ヒトIRTA−2は、配列番号39[Genbank登録番号NP_112571]に示されるようなアミノ酸配列を有するポリペプチドを含み;ヒトIRTA−3は、配列番号40[Genbank登録番号AAL59390]に示されるようなアミノ酸配列を有するポリペプチドを含み;そして/またはヒトIRTA−4は、配列番号41[Genbank登録番号AAL60249]に示されるようなアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
【0008】
1つの局面において、本発明は、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位に関連し、この抗体は:
(a)5×10−8M以下のKDでヒトIRTA−5に結合し;
(b)ヒトIRTA−1、ヒトIRTA−2、ヒトIRTA−3、およびヒトIRTA−4に実質的に結合せず;そして
(c)ヒトBリンパ球およびB細胞腫瘍株に結合するが、CD3+末梢血T細胞、CD1A+末梢血樹状細胞、CD14+末梢血単球、またはCD56+末梢血ナチュラルキラー細胞に実質的に結合しない。好ましくはこの抗体は、ヒト抗体であるが、代替的な実施形態において、この抗体は、マウス抗体、キメラ抗体またはヒト化抗体であり得る。
【0009】
より好ましい実施形態において、この抗体は、3×10−8M以下のKDでヒトIRTA−5と結合するか、1×10−9M以下のKDでヒトIRTA−5と結合するか、0.1×10−9M以下のKDでヒトIRTA−5と結合するか、0.05×10−9M以下のKDでヒトIRTA−5と結合するか、または1×10−9Mと1×10−11Mとの間のKDでヒトIRTA−5に結合する。
【0010】
別の好ましい実施形態において、このB細胞腫瘍株は、Daudi細胞株、Ramos細胞株、およびSU−DHL−4細胞株からなる群より選択される。
【0011】
別の実施形態において、本発明は、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位を提供し、この抗体は、IRTA−5への結合に関して、以下:
(a)配列番号19、配列番号20、および配列番号21からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;ならびに
(b)配列番号22、配列番号23、および配列番号24からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
を含む参照抗体と交差競合(cross−compete)する。
種々の実施形態において、この参照抗体は、以下:
(a)配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および
(b)配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
を含むか、またはこの参照抗体は、以下:
(a)配列番号20のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および
(b)配列番号23のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
を含むか、またはこの参照抗体は、以下:
(a)配列番号21のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および
(b)配列番号24のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
を含む。
【0012】
別の局面において、本発明は、ヒトVH 3−33遺伝子の産物である重鎖可変領域またはヒトVH 3−33遺伝子に由来する重鎖可変領域を含む、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位に関連し、この抗体は、IRTA−5に特異的に結合する。本発明はまた、ヒトVH DP44遺伝子、ヒトVH 3−23遺伝子もしくはヒトVH 3−7遺伝子の産物である重鎖可変領域、またはヒトVH DP44遺伝子、ヒトVH 3−23遺伝子もしくはヒトVH 3−7遺伝子に由来する重鎖可変領域を含む、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位を提供し、この抗体は、IRTA−5に特異的に結合する。本発明は、ヒトVK L6遺伝子の産物である軽鎖可変領域またはヒトVK L6遺伝子に由来する軽鎖可変領域を含む単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位を、さらになお提供し、この抗体は、IRTA−5に特異的に結合する。
【0013】
好ましい実施形態において、本発明は、以下:
(a)ヒトVH 3−33遺伝子、ヒトVH DP44遺伝子、ヒトVH 3−23遺伝子またはヒトVH 3−7遺伝子の重鎖可変領域;および
(b)ヒトVk L6の軽鎖可変領域;
を含む単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位であって、この抗体が、IRTA−5に特異的に結合する、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位を提供する。
好ましい実施形態において、この抗体は、ヒトVH 3−33遺伝子の重鎖可変領域およびヒトVK L6遺伝子の軽鎖可変領域を含む。別の好ましい実施形態において、この抗体は、ヒトVH DP44遺伝子の重鎖可変領域およびヒトVK L6遺伝子の軽鎖可変領域を含む。
【0014】
別の局面において、本発明は、以下:
CDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含む重鎖可変領域;ならびにCDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域、
を含む単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位であって、以下:
(a)この重鎖可変領域のCDR3配列が、配列番号7、配列番号8、および配列番号9のアミノ酸配列、ならびにそれらの保存的改変のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み;
(b)この軽鎖可変領域のCDR3配列が、配列番号16、配列番号17、および配列番号18のアミノ酸配列、ならびにそれらの保存的改変のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み;
(c)該抗体が、5×10−8M以下のKDでヒトIRTA−5に結合し;
(d)該抗体が、ヒトIRTA−1、ヒトIRTA−2、ヒトIRTA−3、およびヒトIRTA−4に実質的に結合せず;そして
(e)該抗体が、ヒトBリンパ球およびB細胞腫瘍株に結合するが、CD3+末梢血T細胞、CD1A+末梢血樹状細胞、CD14+末梢血単球、またはCD56+末梢血ナチュラルキラー細胞に実質的に結合しない、
単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位を提供する。
好ましくは、この重鎖可変領域のCDR2配列は、配列番号4、配列番号5、および配列番号6のアミノ酸配列、ならびにそれらの保存的改変のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み;そしてこの軽鎖可変領域のCDR2配列は、配列番号13、配列番号14、および配列番号15のアミノ酸配列、ならびにそれらの保存的改変のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。好ましくは、この重鎖可変領域のCDR1配列は、配列番号1、配列番号2、および配列番号3のアミノ酸配列、ならびにそれらの保存的改変のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み;そしてこの軽鎖可変領域のCDR1配列は、配列番号10、配列番号11、および配列番号12のアミノ酸配列、ならびにそれらの保存的改変のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0015】
好ましい実施形態において、このB細胞腫瘍株は、Daudi細胞株、Ramos細胞株、およびSU−DHL−4細胞株からなる群より選択される。
【0016】
なお別の局面において、本発明は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位であって、以下:
(a)この重鎖可変領域が、配列番号19、配列番号20、および配列番号21からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%相同であるアミノ酸配列を含み;
(b)この軽鎖可変領域が、配列番号22、配列番号23、および配列番号24からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%相同であるアミノ酸配列を含み;
(c)この抗体が、5×10−8M以下のKDでヒトIRTA−5に結合し;
(d)この抗体が、ヒトIRTA−1、ヒトIRTA−2、ヒトIRTA−3、およびヒトIRTA−4に実質的に結合せず;そして
(e)この抗体が、ヒトBリンパ球およびB細胞腫瘍株に結合するが、CD3+末梢血T細胞、CD1A+末梢血樹状細胞、CD14+末梢血単球、またはCD56+末梢血ナチュラルキラー細胞に実質的に結合しない、
単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位を提供する。
【0017】
好ましい実施形態において、本発明は、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位であって、以下:
(a)配列番号1、配列番号2、および配列番号3からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のCDR1;
(b)配列番号4、配列番号5、および配列番号6からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のCDR2;
(c)配列番号7、配列番号8、および配列番号9からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のCDR3;
(d)配列番号10、配列番号11、および配列番号12からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のCDR1;
(e)配列番号13、配列番号14、および配列番号15からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のCDR2;ならびに
(f)配列番号16、配列番号17、および配列番号18からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のCDR3;
を含み、この抗体が、IRTA−5に特異的に結合する、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位を提供する。
好ましい組み合わせは、以下:
(a)配列番号1を含む重鎖可変領域のCDR1;
(b)配列番号4を含む重鎖可変領域のCDR2;
(c)配列番号7を含む重鎖可変領域のCDR3;
(d)配列番号10を含む軽鎖可変領域のCDR1;
(e)配列番号13を含む軽鎖可変領域のCDR2;および
(f)配列番号16を含む軽鎖可変領域のCDR3、
を含む。
別の好ましい組み合わせは、以下:
(a)配列番号2を含む重鎖可変領域のCDR1;
(b)配列番号5を含む重鎖可変領域のCDR2;
(c)配列番号8を含む重鎖可変領域のCDR3;
(d)配列番号11を含む軽鎖可変領域のCDR1;
(e)配列番号14を含む軽鎖可変領域のCDR2;および
(f)配列番号17を含む軽鎖可変領域のCDR3、
を含む。
なお別の好ましい組み合わせは、以下:
(a)配列番号3を含む重鎖可変領域のCDR1;
(b)配列番号6を含む重鎖可変領域のCDR2;
(c)配列番号9を含む重鎖可変領域のCDR3;
(d)配列番号12を含む軽鎖可変領域のCDR1;
(e)配列番号15を含む軽鎖可変領域のCDR2;および
(f)配列番号18を含む軽鎖可変領域のCDR3、
を含む。
【0018】
別の好ましい実施形態において、このB細胞腫瘍株は、Daudi細胞株、Ramos細胞株、およびSU−DHL−4細胞株からなる群より選択される。
【0019】
本発明の他の好ましい抗体、またはその抗原結合部位は、以下:
(a)配列番号19、配列番号20、配列番号21、および配列番号36からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;ならびに
(b)配列番号22、配列番号23、および配列番号24からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
を含み、この抗体が、IRTA−5に特異的に結合する。
好ましい組み合わせは、以下:
(a)配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および
(b)配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
を含む。
別の好ましい組み合わせは、以下:
(a)配列番号20のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および
(b)配列番号23のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
を含む。
なお別の好ましい組み合わせは、以下:
(a)配列番号21または配列番号36のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および
(b)配列番号24のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
を含む。
【0020】
本発明の別の局面において、抗体、またはその抗原結合部位は、IRTA−5への結合に関して上記の抗体のいずれかと競合する。
【0021】
本発明の抗体は、例えば、完全長抗体(例えば、IgG1アイソタイプまたはIgG4アイソタイプの完全長抗体)であり得る。あるいは、この抗体は、抗体フラグメント(例えば、FabフラグメントまたはFab’2フラグメント)、または単鎖抗体であり得る。
【0022】
本発明はまた、本発明の抗体、またはその抗原結合部位を含む、治療因子(例えば、細胞毒または放射性同位体)に結合した免疫複合体を提供する。本発明はまた、本発明の抗体、またはその抗原結合部位を含む、第2の機能的部分に結合した二重特異性分子であって、この第2の機能的部分が、この抗体、またはその抗原結合部位と異なる結合特異性を有する、二重特異性分子を提供する。
【0023】
本発明の抗体、もしくはその抗原結合部位、または免疫複合体または二重特異性分子および薬学的に受容可能なキャリアを含有する組成物もまた、提供される。
【0024】
本発明の抗体、またはその抗原結合部位をコードする核酸分子、ならびにこのような核酸を含む発現ベクターおよびこのような発現ベクターを含む宿主細胞もまた、本発明に包含される。さらに、本発明は、ヒト免疫グロブリン重鎖の導入遺伝子およびヒト免疫グロブリン軽鎖の導入遺伝子を有するトランスジェニックマウスを提供し、このマウスは、本発明の抗体、およびこのようなマウスから調製されるハイブリドーマを発現し、このハイブリドーマは、本発明の抗体を産生する。
【0025】
なお別の局面において、本発明は、処置の必要がある被験体中のB細胞の悪性腫瘍を処置する方法を提供し、この処置は、この被験体中のB細胞の悪性腫瘍が処置されるように、本発明の抗体、またはその抗原結合部位をこの被験体に投与する工程を包含する。この疾患は、例えば、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、濾胞性リンパ腫、B細胞系のびまん性大細胞型リンパ腫、および多発性骨髄腫であり得る。
【0026】
本発明はまた、本明細書中で提供される抗IRTA−5抗体の配列に基づく「第2世代」抗IRTA−5抗体を作製するための方法を提供する。例えば、本発明は、以下:
(a)(i)配列番号1、配列番号2、および配列番号3からなる群より選択されるCDR1配列;配列番号4、配列番号5、および配列番号6からなる群より選択されるCDR2配列;ならびに配列番号7、配列番号8、および配列番号9からなる群より選択されるCDR3配列を含む重鎖可変領域の抗体の配列;または(ii)配列番号10、配列番号11、および配列番号12からなる群より選択されるCDR1配列;配列番号13、配列番号14、および配列番号15からなる群より選択されるCDR2配列、ならびに配列番号16、配列番号17、および配列番号18からなる群より選択されるCDR3配列を含む軽鎖可変領域の抗体の配列を提供する工程;
(b)重鎖可変領域の抗体の配列および/または軽鎖可変領域の抗体の配列内の少なくとも1つのアミノ酸残基を変更して、少なくとも1つの変更された抗体の配列を形成する工程;および
(c)この変更された抗体の配列をタンパク質として発現させる工程、
を包含する、抗IRTA−5抗体を調製するための方法を提供する。
【0027】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および実施例から明らかであり、この詳細な説明および実施例は、限定として解釈されるべきではない。本願全体に引用される全ての参考文献、Genbank登録事項、特許および公開特許出願の内容は、本明細書中に参照として明白に援用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
(発明の詳細な説明)
本発明は、IRTA−5に特異的に結合し、そしてIRTA−5の機能的性質を阻害する単離されたモノクローナル抗体(特に、ヒトモノクローナル抗体)に関する。特定の実施形態において、本発明の抗体は、特定の重鎖および軽鎖の生殖系列配列に由来し、そして/または特定の構造的特徴(例えば、特定のアミノ酸配列を含むCDR領域)を含む。本発明は、単離された抗体、このような抗体、このような抗体を含む免疫複合体および二重特異性分子を作製する方法ならびに本発明の抗体、免疫複合体または二重特異性分子を含む薬学的組成物を提供する。本発明はまた、IRTA−5を検出することおよびIRTA−5の発現に関連する疾患(例えば、IRTA−5を発現するB細胞の悪性腫瘍)を処置することのような、この抗体を使用する方法に関する。したがって、本発明はまた、B細胞の悪性腫瘍を処置するために(例えば、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、濾胞性リンパ腫、B細胞系のびまん性大細胞型リンパ腫、および多発性骨髄腫の処置において)本発明の抗IRTA−5抗体を使用する方法を提供する。
【0029】
本発明がさらに容易に理解され得るように、特定の用語が、最初に定義される。さらなる定義は、詳細な説明全体に示される。
【0030】
用語「免疫グロブリンスーパーファミリー受容体転座関連遺伝子(immunoglobulin superfamily translocation associated遺伝子)5」と「IRTA−5」とは、交換可能に使用され、そしてヒトIRTA−5の改変体、アイソフォームおよび種のホモログを含む。したがって、特定の場合において、本発明のヒト抗体は、ヒト以外の種由来のIRTA−5と交差反応し得る。他の場合において、この抗体は、ヒトIRTA−5に対して完全に特異的であり得、そして種に関する交差反応性または他の型の交差反応性を示し得ない。ヒトIRTA−5の完全なアミノ酸配列は、Genbank登録番号AAL60250(配列番号37)を有する。
【0031】
用語「IRTA−1」、「IRTA−2」、「IRTA−3」、および「IRTA−4」は、ヒト「IRTA−1」、ヒト「IRTA−2」、ヒト「IRTA−3」、およびヒト「IRTA−4」の改変体、アイソフォームならびに種のホモログを、それぞれ含む。ヒトIRTA−1の完全なアミノ酸配列は、Genbank登録番号NP_112572(配列番号38)を有する。ヒトIRTA−2の完全なアミノ酸配列は、Genbank登録番号NP_112571(配列番号39)を有する。ヒトIRTA−3の完全なアミノ酸配列は、Genbank登録番号AAL59390(配列番号40)を有する。ヒトIRTA−4の完全なアミノ酸配列は、Genbank登録番号AAL60249(配列番号41)を有する。
【0032】
用語「免疫応答」とは、例えば、リンパ球、抗原提示細胞、食細胞、顆粒球、および上記の細胞または肝臓によって産生される可溶性高分子(抗体、サイトカイン、および補体が挙げられる)の作用をいい、この作用は、侵入する病原体、病原体に感染された細胞もしくは組織、癌性の細胞、または自己免疫または病理学的な炎症の場合において、正常なヒト細胞もしくはヒト組織を、選択的に障害するか、選択的に破壊するか、またはヒトの身体から選択的に排除する。
【0033】
「シグナル伝達経路」とは、細胞の1つの部分から細胞の別の部分へシグナルを伝達する役割を果たす多くのシグナル伝達分子の間の生物学的関係をいう。本明細書中で使用される場合、語句「細胞表面受容体」は、例えば、シグナルおよびこのようなシグナルの細胞の原形質膜を横切る伝達を受容し得る、分子ならびに分子の複合体を包含する。本発明の「細胞表面受容体」の例は、IRTA−5受容体である。
【0034】
本明細書中で引用される場合、用語「抗体」は、完全な抗体および任意の抗原結合フラグメント(すなわち、「抗原結合部位」)、またはそれらの単鎖を包含する。「抗体」とは、ジスルフィド結合によって相互に連結した、少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖、またはその抗原結合部位を含む糖タンパク質をいう。それぞれの重鎖は、重鎖可変領域(本明細書中でVHと略される)および重鎖定常領域から構成される。この重鎖定常領域は、3つのドメイン(CH1、CH2およびCH3)から構成される。それぞれの軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書中でVLと略される)および軽鎖定常領域から構成される。この軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL)から構成される。このVH領域およびVL領域はさらに、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存性の領域によって分散され、相補性決定領域(CDR)と称される高可変性の領域に細分される。各VHおよび各VLは、以下の順序でアミノ末端からカルボシキシ末端に配列される3つのCDRおよび4つのFRから構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖の可変領域および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の上記定常領域は、免疫系の種々の細胞(例えば、効果細胞)および古典的補体系の第1成分(C1q)を含む宿主の組織または因子に対する免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0035】
本明細書中で使用される場合、抗体の用語「抗原結合部位」(または単に「抗体部分」)は、抗原(例えば、IRTA−5)に対して特異的に結合する能力を保持する、抗体の1つ以上のフラグメントをいう。抗体の抗原結合機能が、完全長抗体のフラグメントによって果たされ得ることが示されている。抗体に関する用語「抗原結合部位」に包含される結合フラグメントの例としては、(i)Fabフラグメント(VLドメイン、VHドメイン、CLドメインおよびCH1ドメインからなる一価のフラグメント);(ii)F(ab’)2フラグメント(ヒンジ領域におけるジスルフィド架橋によって連結した2つのFabフラグメントからなる二価のフラグメント);(iii)VHドメインおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の単一の腕のVLドメインおよびVHドメインからなるFvフラグメント;(v)VHドメインからなるdAbフラグメント(Wardら、(1989)Nature 341:544−546);ならびに(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。さらに、このFvフラグメントの2つのドメイン(VLおよびVH)は、別個の遺伝子によってコードされるが、これらの遺伝子は、合成リンカーによる組換え方法を使用して接続され得、このリンカーは、VL領域およびVH領域が対形成して、一価の分子を形成する単一のタンパク質鎖としてこれらのドメインが作製されることを可能にする(単鎖Fv(scFv)として公知である;例えば、Birdら、(1988)Science 242:423−426;およびHustonら、(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883を参照のこと)。このような単鎖抗体もまた、抗体に関する用語「抗原結合部位」に包含されることが意図される。これらの抗体フラグメントは、当業者にとって公知である慣習的な技術を使用して得られ、そしてこれらのフラグメントは、インタクトな抗体と同じ様式での利用のためにスクリーニングされる。
【0036】
本明細書中で使用される場合、「単離された抗体」は、異なる抗原の性質を有する他の抗体を実質的に含まない抗体をいうことが意図される(例えば、IRTA−5に特異的に結合する単離された抗体は、IRTA−5以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかし、IRTA−5に特異的に結合する単離された抗体は、他の抗原(例えば、他の種由来のIRTA−5分子)に対する交差反応性を有し得る。さらに、単離された抗体は、他の細胞内物質および/または化学物質を実質的に含まない可能性がある。
【0037】
本明細書中で使用される場合、用語「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」は、単一分子の組成物である抗体分子の調製物をいう。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対して、単一の結合特異性および結合親和性を示す。
【0038】
本明細書中で使用される場合、用語「ヒト抗体」は、フレームワーク領域およびCDR領域の両方がヒト生殖系列の免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を包含することが意図される。さらに、この抗体が定常領域を含む場合、この定常領域はまた、ヒト生殖系列の免疫グロブリン配列に由来する。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖系列の免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロのランダムな変異誘発もしくは部位特異的変異またはインビボの体細胞変異によって導入された変異)を含み得る。しかし、本明細書中で使用される場合、用語「ヒト抗体」は、別の哺乳動物種(例えば、マウス)の生殖系列に由来するCDR配列がヒトのフレームワーク配列に挿入された抗体を包含することを意図されない。
【0039】
用語「ヒトモノクローナル抗体」とは、フレームワーク領域およびCDR領域の両方がヒト生殖系列の免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する、単一の結合特異性を示す抗体をいう。1つの実施形態において、このヒトモノクローナル抗体は、不死化細胞と融合されたヒト重鎖の導入遺伝子およびヒト軽鎖の導入遺伝子を有する、非ヒトトランスジェニック動物(例えば、トランスジェニックマウス)から得られたB細胞を含むハイブリドーマによって産生される。
【0040】
本明細書中で使用される場合、用語「組換えヒト抗体」は、組換え手段によって調製されるか、発現されるか、生成されるか、または単離される全てのヒト抗体(例えば、(a)ヒト免疫グロブリン遺伝子もしくはそこから調製されるハイブリドーマ(以下にさらに記載される)についての遺伝子組換えまたは染色体組換えである動物(例えば、マウス)から単離された抗体、(b)ヒト抗体を発現するように形質転換された宿主細胞から(例えば、トランスフェクトーマ(transfectoma)から)単離された抗体、(c)組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体、および(d)他のDNA配列に対するヒト免疫グロブリン遺伝子配列のスプライシングを包含する任意の他の手段によって調製されるか、発現されるか、生成されるか、または単離される抗体)を含む。このような組換えヒト抗体は、フレームワーク領域およびCDR領域がヒト生殖系列の免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する。しかし、特定の実施形態において、このような組換えヒト抗体は、インビトロの変異誘発(または、ヒトIg配列について遺伝子組換えされた動物が使用される場合は、インビボの体細胞変異誘発)に供され得、したがってこの組換え抗体のVH領域およびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列のVH配列およびVL配列に由来ならびに関連するが、インビボにおけるヒト抗体生殖系列のレパートリー内に天然に存在し得ない配列である。
【0041】
本明細書中で使用される場合、「アイソタイプ」とは、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体のクラス(例えば、IgMまたはIgG1)をいう。
【0042】
語句「抗原を認識する抗体」および「抗原に特異的な抗体」は、本明細書中で、用語「抗原に特異的に結合する抗体」と交換可能に使用される。
【0043】
本明細書中で使用される場合、「ヒトIRTA−5に特異的に結合する」抗体は、5×10−8M以下のKD、より好ましくは3×10−8M以下のKD、およびさらになお好ましくは1×10−9M以下のKDでヒトIRTA−5に結合する抗体をいうことが意図される。
【0044】
本明細書中で使用される場合、用語「Kassoc」または「Ka」は、特定の抗体−抗原相互作用の会合速度をいうことが意図される一方で、本明細書中で使用される場合、用語「Kdis」または「Kd」は、特定の抗体−抗原相互作用の解離速度をいうことが意図される。本明細書中で使用される場合、用語「KD」は、Kaに対するKdの比(すなわち、Kd/Ka)から得られ、そしてモル濃度(M)として表される解離定数をいうことが意図される。抗体についてのKD値は、当該分野において良好に確立された方法を使用して決定され得る。抗体のKDを決定するための好ましい方法は、表面プラズモン共鳴を使用し、好ましくはバイオセンサーシステム(例えば、Biacore(登録商標)システム)を使用することによるものである。
【0045】
本明細書中で使用される場合、IgG抗体に対する用語「高親和性」は、標的抗原に対して、10−8M以下のKDを有し、より好ましくは10−9M以下のKDを有し、そしてさらになお好ましくは10−10M以下のKDを有する抗体をいう。しかし、「高親和性」結合は、他の抗体アイソタイプによって変化し得る。例えば、IgMアイソタイプについての「高親和性」結合とは、10−7M以下のKDを有し、より好ましくは10−8M以下のKDを有する抗体をいう。
【0046】
本明細書中で使用される場合、用語「被験体」は、任意のヒトまたは非ヒト動物を含む。用語「非ヒト動物」は、全ての脊椎動物(例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類などのような哺乳類および非哺乳類)を含む。
【0047】
本発明の種々の局面は、以下の小節において、さらに詳細に記載される。
【0048】
(抗IRTA−5抗体)
特定の生殖系列配列を有する抗体、同種抗体、保存的改変を有する抗体、操作され、かつ改変された抗体を含む本発明の抗体は、この抗体の特定の機能的特徴または機能的性質によって特徴付けられる。例えば、この抗体は、ヒトIRTA−5に特異的に結合する。好ましくは、本発明の抗体は、高親和性(例えば、10−8M以下のKDか、または10−9M以下のKDか、または10−10M以下のKDでさえ)でIRTA−5に結合する。本発明の抗IRTA−5抗体は、好ましくは以下:
(a)5×10−8M以下のKDでヒトIRTA−5に結合し;
(b)ヒトIRTA−1、ヒトIRTA−2、ヒトIRTA−3、およびヒトIRTA−4に実質的に結合せず;そして/または
(c)ヒトBリンパ球およびB細胞腫瘍株に結合するが、CD3+末梢血T細胞、CD1A+末梢血樹状細胞、CD14+末梢血単球、またはCD56+末梢血ナチュラルキラー細胞に実質的に結合しない、
という特性のうちの1つ以上を示す。
より好ましくは、この抗体は、3×10−8M以下のKD、または1×10−9M以下のKD、または0.1×10−9M以下のKD、または0.05×10−9M以下のKD、または1×10−9Mと1×10−11Mとの間のKDでヒトIRTA−5に結合する。
【0049】
特定の実施形態において、抗IRTA−5抗体は、実施例に記載されるような、例示される抗体2G5、5A2、7G8、1E5、7F5、4B7、または2G1の特性を有する。別の実施形態において、抗IRTA−5抗体は、IRTA−5への結合に関して、2G5、5A2、7G8、1E5、7F5、4B7、または2G1のうちの1つ以上と競合する。
【0050】
IRTA−5に対する上記抗体の結合能力を評価する標準的なアッセイは、当該分野において公知であり、このアッセイとしては、例えば、ELISA、ウェスタンブロットおよびRIAが挙げられる。適切なアッセイは、実施例において詳細に記載される。この抗体の結合動態(例えば、結合親和性)はまた、当該分野において公知である標準的なアッセイ(例えば、Biacore分析)によって評価され得る。
【0051】
本発明の抗体は、この抗体が、IRTA−5に対して約10:1より大きく、そして好ましくは約100:1より大きい、他のIRTAの1種に対する選択性を上回る選択性を有する場合に、IRTA−1、IRTA−2、IRTA−3、またはIRTA−4に対して「実質的に結合」しない。選択性は、イムノアッセイによって測定され得る。
【0052】
(モノクローナル抗体2G5、5A2、および7G8)
本発明の好ましい抗体は、実施例1および実施例2に記載されるような、単離され、そして構造的に特徴付けられたヒトモノクローナル抗体2G5、5A2、および7G8である。2G5、5A2、および7G8のVHのアミノ酸配列は、配列番号19、配列番号20、および配列番号21に、それぞれ示される。2G5、5A2、および7G8のVLのアミノ酸配列は、配列番号22、配列番号23、および配列番号24に、それぞれ示される。
【0053】
これらの抗体の各々がIRTA−5に結合し得ることを考えると、これらのVH配列およびVL配列は、「混合されかつマッチングされ(mixed and matched)」て、本発明の他の抗IRTA−5結合分子を生成し得る。このような「混合されかつマッチングされ」た抗体のIRTA−5への結合は、上に記載され、そして実施例に記載される結合アッセイ(例えば、ELISA)を使用して試験され得る。好ましくは、VH鎖およびVL鎖が、混合されかつマッチングされる場合、特定のVH/VL対形成から得たVH配列は、構造的に類似するVH配列によって置換される。同様に、好ましくは、特定のVH/VL対形成から得たVL配列は、構造的に類似するVL配列によって置換される。例えば、2G5および5A2のVH配列ならびにVL配列は、混合および対応に対して、特に従いやすい。なぜならこれらの抗体は、同じ生殖系列配列(VH 3−33およびVk L6)に由来するVH配列およびVL配列を使用し、したがってそれらは、構造的な類似性を示すからである。
【0054】
したがって、1つの局面において、本発明は、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位であって、以下:
(a)配列番号19、配列番号20、および配列番号21からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;ならびに
(b)配列番号22、配列番号23、および配列番号24からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
を含み、
この抗体が、IRTA−5(好ましくは、ヒトIRTA−5)に特異的に結合する、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位を提供する。
重鎖および軽鎖の好ましい組み合わせは、以下を含む:
(a)配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および(b)配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;または
(a)配列番号20のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および(b)配列番号23のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;または
(a)配列番号21のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および(b)配列番号24のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域。
【0055】
別の局面において、本発明は、2G5、5A2、および7G8の重鎖CDR1および軽鎖CDR1、重鎖CDR2および軽鎖CDR2ならびに重鎖CDR3および軽鎖CDR3、またはそれらの組み合わせを含む抗体を提供する。2G5、5A2、および7G8のVHのCDR1のアミノ酸配列は、配列番号1、配列番号2、および配列番号3に示される。2G5、5A2、および7G8のVHのCDR2のアミノ酸配列は、配列番号4、配列番号5、および配列番号6に示される。2G5、5A2、および7G8のVHのCDR3のアミノ酸配列は、配列番号7、配列番号8、および配列番号9に示される。2G5、5A2、および7G8のVkのCDR1のアミノ酸配列は、配列番号10、配列番号11、および配列番号12に示される。2G5、5A2、および7G8のVkのCDR2のアミノ酸配列は、配列番号13、配列番号14、および配列番号15に示される。2G5、5A2、および7G8のVkのCDR3のアミノ酸配列は、配列番号16、配列番号17、および配列番号18に示される。これらのCDR領域は、Kabatシステム(Kabat,E.A.ら、(1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S.Department of Health and Human Services、NIH公開番号91−3242)を使用して表される。
【0056】
これらの抗体の各々がIRTA−5に結合し得、そして抗原結合特異性が、主にCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域によって提供されることを考えると、上記VHのCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列ならびにVkのCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列は、「混合されかつマッチングされ」(すなわち、異なる抗体由来のCDRは、混合されかつマッチングされるが、各抗体は、VHのCDR1、CDR2、およびCDR3ならびにVkのCDR1、CDR2、およびCDR3を含まなければならない)て、本発明の他の抗IRTA−5結合分子を生成し得る。このような「混合されかつマッチングされ」た抗体のIRTA−5への結合は、上記され、そして実施例に記載される結合アッセイ(例えば、ELISA、Biacore分析)を使用して試験され得る。好ましくは、VHのCDR配列が、混合されかつマッチングされる場合、特定のVH配列由来のCDR1配列、CDR2配列および/またはCDR3配列は、構造的に類似する1つ以上のCDR配列によって置換される。同様に、VkのCDR配列が、混合されかつマッチングされる場合、特定のVk配列由来のCDR1配列、CDR2配列および/またはCDR3配列は、好ましくは構造的に類似する1つ以上のCDR配列によって置換される。例えば、2G5、5A2、および7G8のVHのCDR1は、ある程度の構造類似性を共有し、そしてそれによって混合および対応に従いやすい。新規のVH配列およびVL配列が、モノクローナル抗体(抗体2G5、5A2、および7G8)に関して本明細書中に開示されるCDR配列由来の構造的に類似する配列で、1つ以上のVHのCDR領域および/またはVLのCDR領域の配列を置換することによって生成され得る。
【0057】
したがって、別の局面において、本発明は、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位であって、以下:
(a)配列番号1、配列番号2、および配列番号3からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のCDR1;
(b)配列番号4、配列番号5、および配列番号6からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のCDR2;
(c)配列番号7、配列番号8、および配列番号9からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のCDR3;
(d)配列番号10、配列番号11、および配列番号12からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のCDR1;
(e)配列番号13、配列番号14、および配列番号15からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のCDR2;ならびに
(f)配列番号16、配列番号17、および配列番号18からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のCDR3;
を含み、この抗体が、IRTA−5(好ましくはヒトIRTA−5)に特異的に結合する、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位を提供する。
好ましい実施形態において、この抗体は、以下:
(a)配列番号1を含む重鎖可変領域のCDR1;
(b)配列番号4を含む重鎖可変領域のCDR2;
(c)配列番号7を含む重鎖可変領域のCDR3;
(d)配列番号10を含む軽鎖可変領域のCDR1;
(e)配列番号13を含む軽鎖可変領域のCDR2;および
(f)配列番号16を含む軽鎖可変領域のCDR3、
を含む。
別の好ましい実施形態において、この抗体は、以下:
(a)配列番号2を含む重鎖可変領域のCDR1;
(b)配列番号5を含む重鎖可変領域のCDR2;
(c)配列番号8を含む重鎖可変領域のCDR3;
(d)配列番号11を含む軽鎖可変領域のCDR1;
(e)配列番号14を含む軽鎖可変領域のCDR2;および
(f)配列番号17を含む軽鎖可変領域のCDR3、
を含む。
別の好ましい実施形態において、この抗体は、以下:
(a)配列番号3を含む重鎖可変領域のCDR1;
(b)配列番号6を含む重鎖可変領域のCDR2;
(c)配列番号9を含む重鎖可変領域のCDR3;
(d)配列番号12を含む軽鎖可変領域のCDR1;
(e)配列番号15を含む軽鎖可変領域のCDR2;および
(f)配列番号18を含む軽鎖可変領域のCDR3、
を含む。
【0058】
(特定の生殖系列配列を有する抗体)
特定の実施形態において、本発明の抗体は、特定の生殖系列の重鎖免疫グロブリン遺伝子由来の重鎖可変領域および/または特定の生殖系列の軽鎖免疫グロブリン遺伝子由来の軽鎖可変領域を含む。
【0059】
例えば、好ましい実施形態において、本発明は、ヒトVH 3−33遺伝子の産物である重鎖可変領域またはヒトVH 3−33遺伝子に由来する重鎖可変領域を含む、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位を提供し、この抗体は、IRTA−5に特異的に結合する。別の好ましい実施形態において、本発明は、ヒトVH DP44遺伝子、ヒトVH 3−23遺伝子もしくはヒトVH 3−7遺伝子の産物である重鎖可変領域、またはヒトVH DP44遺伝子、ヒトVH 3−23遺伝子もしくはヒトVH 3−7遺伝子に由来する重鎖可変領域を含む、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位を提供し、この抗体は、IRTA−5に特異的に結合する。なお別の好ましい実施形態において、本発明は、ヒトVK L6遺伝子の産物である軽鎖可変領域またはヒトVK L6遺伝子に由来する軽鎖可変領域を含む単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位を、さらになお提供し、この抗体は、IRTA−5に特異的に結合する。なお別の好ましい実施形態において、本発明は、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位を提供し、この抗体は:
(a)ヒトVH 3−33遺伝子、ヒトVH DP44遺伝子、ヒトVH 3−23遺伝子、もしくはヒトVH 3−7遺伝子(配列番号31、配列番号32、配列番号34および配列番号36に示されるアミノ酸配列を、それぞれコードする)の産物である重鎖可変領、またはヒトVH 3−33遺伝子、ヒトVH DP44遺伝子、ヒトVH 3−23遺伝子、もしくはヒトVH 3−7遺伝子に由来する重鎖可変領域を含み;
(b) ヒトVk L6遺伝子の産物である軽鎖可変領域またはヒトVk L6遺伝子(配列番号33に示されるアミノ酸配列をコードする)に由来する軽鎖可変領域を含み;そして
(c)IRTA−5(好ましくはヒトIRTA−5)に特異的に結合する。
【0060】
VH 3−33およびVk L6のVHならびにVKを有する抗体の例としては、2G5および5A2が、それぞれ挙げられる。VH DP44 およびVk L6のVHならびにVKを有する抗体の例としては、それぞれ、7G8が挙げられる。実施例3で議論されるように、VH DP44とVH 3−23およびVH 3−7との構造上の関連性が与えられる場合、これらのさらなる生殖系列配列のいずれかに由来するVH領域を利用する本発明の他のIRTA−5抗体が、選択され得ることが予期される。
【0061】
本明細書中で使用される場合、ヒト抗体は、上記抗体の可変領域がヒト生殖系列の免疫グロブリン遺伝子を使用するシステムから得られる場合、特定の生殖系列配列「の産物」であるか、もしくは特定の生殖系列配列「に由来する」重鎖可変領域または軽鎖可変領域を含む。このようなシステムは、ヒト免疫グロブリン遺伝子を保有するトランスジェニックマウスを目的の抗原によって免疫する工程またはファージ上に示されるヒト免疫グロブリン遺伝子のライブラリーを目的の抗原によってスクリーニングする工程を包含する。ヒト生殖系列の免疫グロブリン配列「の産物」であるか、またはヒト生殖系列の免疫グロブリン配列「に由来する」ヒト抗体は、例えば、ヒト抗体のアミノ酸配列をヒト生殖系列の免疫グロブリンのアミノ酸配列と比較し、そして配列がヒト抗体の配列に最も近い(すなわち、最も大きい同一性の%)ヒト生殖系列の免疫グロブリン配列を選択することによって同定され得る。ヒト生殖系列の免疫グロブリン配列「の産物」であるか、またはヒト生殖系列の免疫グロブリン配列「に由来する」ヒト抗体は、例えば、天然に存在する体細胞変異または部位特異的変異の意図的な導入に起因して、この生殖系列配列と比べて異なるアミノ酸を含み得る。しかし、選択されたヒト抗体は、代表的に、アミノ酸配列がヒト生殖系列の免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であり、そしてヒトを他の種の生殖系列(例えば、マウス生殖系列配列)の免疫グロブリンのアミノ酸配列と比較した場合に、ヒト抗体を同定するアミノ酸残基を含む。特定の場合において、ヒト抗体は、そのアミノ酸配列が、生殖系列の免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と少なくとも95%同一であり得るか、または少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一でさえあり得る。代表的に、特定のヒト生殖系列配列に由来するヒト抗体は、ヒト生殖系列の免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と異なる、10個以下のアミノ酸を示す。特定の場合において、このヒト抗体は、この生殖系列の免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と異なる、5個以下か、またはさらに4個以下か、3個以下か、2個以下か、もしくは1個以下のアミノ酸を示し得る。
【0062】
(同種抗体)
なお別の実施形態において、本発明の抗体は、本明細書中に記載される好ましい抗体のアミノ酸配列と同種であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、そしてこの抗体は、本発明の抗IRTA−5抗体の所望の機能的性質を保持する。
【0063】
例えば、本発明は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位を提供し、ここで:
(a)この重鎖可変領域が、配列番号19、配列番号20、および配列番号21からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%相同であるアミノ酸配列を含み;
(b)この軽鎖可変領域が、配列番号22、配列番号23、および配列番号24からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%相同であるアミノ酸配列を含み;
(c)この抗体が、5×10−8M以下のKDでヒトIRTA−5に結合し;
(d)この抗体が、ヒトIRTA−1、ヒトIRTA−2、ヒトIRTA−3、およびヒトIRTA−4に実質的に結合せず;そして
(e)この抗体が、ヒトBリンパ球およびB細胞腫瘍株に結合するが、CD3+末梢血T細胞、CD1A+末梢血樹状細胞、CD14+末梢血単球、またはCD56+末梢血ナチュラルキラー細胞に実質的に結合しない。
【0064】
種々の実施形態において、上記抗体は、例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体であり得る。
【0065】
他の実施形態において、上記VHおよび/またはVLのアミノ酸配列は、上記に示される配列と85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%相同であり得る。上記に示される配列のVH領域およびVL領域に対して高い相同性(すなわち、80%以上)を有するVH領域およびVL領域を有する抗体は、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、または配列番号30をコードする核酸分子の変異誘発(例えば、部位特異的変異誘発またはPCRを介する変異誘発)を行い、次いで本明細書中に記載される機能アッセイを使用して、保持される機能(すなわち、上記の(c)および(d)に示される機能)についてコードされる変更された抗体を試験することによって得られ得る。
【0066】
本明細書中で使用される場合、2つのアミノ酸配列の間の相同性の%は、2つの配列の間の同一性の%に相当する。これら2つの配列の間の同一性の%は、これら2つの配列の最適なアラインメントのために導入される必要があるギャップの数および各ギャップの長さに配慮した、これらの配列によって共有される同じ位置の数の関数(すなわち、相同性の%=同じ位置の数/位置の総数×100)である。配列の比較および2つの配列の間の同一性の%の決定は、以下の非限定的な例に記載されるように、数学的アルゴリズムを使用して達成され得る。
【0067】
2つのアミノ酸配列の間の同一性の%は、PAM120重み残基表、12のギャップ長ペナルティーおよび4のギャップペナルティーを使用する、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれたE.MeyersおよびW.Miller(Comput.Appl.Biosci.、4:11−17(1988))のアルゴリズムを使用して決定され得る。さらに、2つのアミノ酸配列の間の同一性の%は、Blossum 62マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれか、および16、14、12、10、8、6、または4のギャップの重み付けおよび1、2、3、4、5、または6の長さの重み付けを使用する、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comにて利用可能)のGAPプログラム中に組み込まれたNeedlemanおよびWunsch(J.Mol.Biol.48:444−453(1970))のアルゴリズムを使用して決定され得る。
【0068】
さらに、または代替的に、本発明のタンパク質配列は、例えば、関連する配列を同定するために、公的データベースに対して検索を行うための「クエリー配列」としてさらに使用され得る。このような検索は、Altschulら、(1990)J.Mol.Biol.215:403−10のXBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して行われ得る。BLASTタンパク質検索は、本発明の抗体分子と相同なアミノ酸配列を得るために、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3によって行われ得る。比較目的のためのギャップ付き(gapped)アラインメントを得るために、Gapped BLASTが、Altschulら、(1997)Nucleic Acids Res.25(17):3389−3402に記載される通りに利用され得る。BLASTプログラムおよびGapped BLASTプログラムが利用される場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)の初期設定パラメーターが、使用され得る。http://www.ncbi.nlm.nih.govを参照のこと。
【0069】
(保存的改変を有する抗体)
特定の実施形態において、本発明の抗体は、CDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含む重鎖可変領域ならびにCDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域を含み、これらのCDR配列のうちの1つ以上は、本明細書中に記載される好ましい抗体(例えば、2G5、5A2、または7G8)、またはその保存的改変に基づく特定のアミノ酸配列を含み、そしてこの抗体は、本発明の抗IRTA−5抗体の所望の機能的性質を保持する。したがって、本発明は、CDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含む重鎖可変領域ならびにCDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域を含む単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位を提供し、ここで:
(a)この重鎖可変領域のCDR3配列が、配列番号7、配列番号8、および配列番号9のアミノ酸配列、ならびにそれらの保存的改変のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み;
(b)この軽鎖可変領域のCDR3配列が、配列番号16、配列番号17、および配列番号18のアミノ酸配列、ならびにそれらの保存的改変のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み;
(c)この抗体が、5×10−8M以下のKDでヒトIRTA−5に結合し;
(d)この抗体が、ヒトIRTA−1、ヒトIRTA−2、ヒトIRTA−3、およびヒトIRTA−4に実質的に結合せず;そして
(e)この抗体が、ヒトBリンパ球およびB細胞腫瘍株に結合するが、CD3+末梢血T細胞、CD1A+末梢血樹状細胞、CD14+末梢血単球、またはCD56+末梢血ナチュラルキラー細胞に実質的に結合しない。
【0070】
好ましい実施形態において、上記重鎖可変領域のCDR2配列は、配列番号4、配列番号5、および配列番号6のアミノ酸配列、ならびにそれらの保存的改変のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み;そして上記軽鎖可変領域のCDR2配列は、配列番号13、配列番号14、および配列番号15のアミノ酸配列、ならびにそれらの保存的改変のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。別の好ましい実施形態において、上記重鎖可変領域のCDR1配列は、配列番号1、配列番号2、および配列番号3のアミノ酸配列、ならびにそれらの保存的改変のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み;そして上記軽鎖可変領域のCDR1配列は、配列番号10、配列番号11、および配列番号12のアミノ酸配列、ならびにそれらの保存的改変のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0071】
種々の実施形態において、上記抗体は、例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体であり得る。
【0072】
本明細書中で使用される場合、用語「保存的な配列改変」は、そのアミノ酸配列を含む抗体の結合特性に顕著に影響しないか、またはそれを顕著に変えないアミノ酸改変をいうことが意図される。このような保存的改変としては、アミノ酸の置換、付加および削除が挙げられる。改変は、当該分野において公知である標準的な方法(例えば、部位特異的変異誘発およびPCRを介する変異誘発)によって、本発明の抗体に導入され得る。保存的なアミノ酸の置換は、アミノ酸残基が同様の側鎖を有するアミノ酸残基によって置換されることである。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該分野において定義されている。これらのファミリーとしては、塩基性の側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性の側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷の極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β−分枝状側鎖を有するアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が挙げられる。したがって、本発明の抗体のCDR領域内の1個以上のアミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーからの他のアミノ酸残基によって置換され得、そしてこの変更された抗体は、本明細書中に記載される機能アッセイを使用して、保持される機能(すなわち、上記の(c)〜(j)に示される機能)について試験され得る。
【0073】
(本発明の抗IRTA−5抗体と同じエピトープに結合する抗体)
別の実施形態において、本発明は、本発明の抗IRTA−5モノクローナル抗体のいずれかと、同じヒトIRTA−5上のエピトープに結合する抗体(すなわち、IRTA−5に対する結合に関して、本発明のモノクローナル抗体のいずれかと相互の競合する能力を有する抗体)を提供する。7つの抗IRTA−5抗体(2G5、5A2、7G8、4B7、7F5、4B7および2G1)のエピトープマッピングは、Biacore分析(実施例4を参照のこと)によって決定され、そしてこれらの抗体は、図8に模式的に示される3つのエピトープ群に分類されることが示された。本発明は、これらのエピトープ群のいずれかの範囲に含まれる抗IRTA5抗体を包含し、このことは、上記で同定された抗体を用いる相互競合(cross−competition)研究によって決定され得る。好ましい実施形態において、相互競合研究のための参照抗体は、モノクローナル抗体2G5(配列番号19および配列番号22に示されるようなVH配列ならびにVL配列を有する)、モノクローナル抗体5A2(配列番号20および配列番号23に示されるようなVH配列ならびにVL配列を有する)、またはモノクローナル抗体7G8(配列番号21および配列番号24に示されるようなVH配列ならびにVL配列を有する)であり得る。このような相互に競合する抗体は、標準的なIRTA−5結合アッセイにおいて、2G5、5A2、または7G8と相互に競合するそれらの能力に基づいて同定され得る。例えば、BIAcore分析、ELISAアッセイまたはフローサイトメトリーは、現行の発明の抗体との相互競合を実証するために使用され得る。例えば、ヒトIRTA−5に対する2G5、5A2、または7G8の結合を阻害する試験抗体の能力は、この試験抗体がヒトIRTA−5に結合するために2G5、5A2、または7G8と競合し得ることを実証し、したがってこの試験抗体は、2G5、5A2、または7G8と同じヒトIRTA−5上のエピトープに結合する。好ましい実施形態において、2G5、5A2、または7G8と、同じヒトIRTA−5上のエピトープに結合する抗体は、ヒトモノクローナル抗体である。このようなヒトモノクローナル抗体は、実施例に記載される通りに、調製され得、そして単離され得る。
【0074】
(操作および改変された抗体)
本発明の抗体は、改変された抗体を操作するための出発物質として本明細書中に開示されるVH配列および/またはVL配列の1つ以上を有する抗体を使用して、さらに調製され得、この改変された抗体は、この出発抗体から変化した性質を有し得る。抗体は、一方または両方の可変領域(すなわち、VHおよび/またはVL)内(例えば、1つ以上のCDR領域内および/または1つ以上のフレームワーク領域内)の1個以上の残基を改変することによって操作され得る。さらに、または代替的に、抗体は、例えば、抗体の1つ以上のエフェクター機能を変更するために、1つ以上の定常領域内の残基を改変することによって操作され得る。
【0075】
実施され得る可変領域の操作の1つの型は、CDR移植である。抗体は、6個の重鎖および軽鎖の相補性決定領域(CDR)中に配置されるアミノ酸残基によって、標的抗原と優勢に相互作用する。この理由に関して、CDR内のアミノ酸配列は、個々の抗体の間において、CDRの外側の配列より多様である。なぜならCDR配列は、ほとんどの抗体−抗原相互作用を引き起こし、異なる性質を有する異なる抗体由来のフレームワーク配列上に移植された天然に存在する特定の抗体由来のCDR配列を含む発現ベクターを構築することによって、天然に存在する特定の抗体の性質を模倣する組換え抗体を発現することが可能だからである(例えば、Riechmann,L.ら、(1998)Nature 332:323−327;Jones,P.ら、(1986)Nature 321:522−525;Queen,C.ら、(1989)Proc.Natl.Acad.See.U.S.A.86:10029−10033;Winterの米国特許第5,225,539号、ならびにQueenらの米国特許第5,530,101号;同第5,585,089号;同第5,693,762号および同第6,180,370号を参照のこと)。
【0076】
したがって、本発明の別の実施形態は、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位に関連し、この単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位は、それぞれ、配列番号1、配列番号2、および配列番号3;配列番号4、配列番号5、および配列番号6;ならびに配列番号7、配列番号8、および配列番号9からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域、ならびにそれぞれ、配列番号10、配列番号11、および配列番号12;配列番号13、配列番号14、および配列番号15;ならびに配列番号16、配列番号17、および配列番号18からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0077】
このようなフレームワーク配列は、生殖系列の抗体遺伝子配列を含む、公的なDNAデータベースまたは刊行された参考文献から得られ得る。例えば、ヒトの重鎖可変領域遺伝子および軽鎖可変領域遺伝子に関する生殖系列のDNA配列は、「VBase」ヒト生殖系列配列のデータベース(インターネット上のwww.mrc−cpe.cam.ac.uk/vbaseにて利用可能)、ならびにKabat,E.A.ら、(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S.Department of Health and Human Services、NIH公開番号91−3242;Tomlinson,I.M.ら、(1992)「The Repertoire of Human Germline VH Sequences Reveals about Fifty Groupsof VH Segments with Different Hypervariable Loops」、J.Mol.Biol.227:776−798;およびCox,J.P.L.ら、(1994)「A Directory of Human Germ−line VH Segments Reveals a Strong Bias in their Usage」、Eur.J.Immunol.24:827−836(これらの各々の内容は、本明細書中に参考として明白に援用される)に見出され得る。
【0078】
本発明の抗体における使用のために好ましいフレームワーク配列は、本発明の選択された抗体に使用されるフレームワーク配列と構造的に類似する配列である(例えば、好ましい本発明のモノクローナル抗体によって使用される、VH 3−33配列(配列番号31)および/またはVH DP44配列(配列番号32)および/またはVH 3−23配列(配列番号34)および/またはVH 3−7配列(配列番号35)および/またはVk L6フレームワーク配列(配列番号33)と類似する)。VHのCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列、ならびにVKのCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列は、フレームワーク配列が由来する生殖系列の免疫グロブリン遺伝子中に見出される配列と同じ配列を有するフレームワーク領域上に移植され得るか、またはこれらのCDR配列は、この生殖系列配列と比較した場合に、1つ以上の変異を含むフレームワーク領域上に移植され得る。例えば、特定の場合において、これらの抗体の抗原結合能力を維持するか、または増強するためにフレームワーク領域の残基を変異させることは、有利であることが見出された(例えば、Queenらの米国特許第5,530,101号;同第5,585,089号;同第5,693,762号および同第6,180,370号)。
【0079】
可変領域の改変の別の型は、VHおよび/もしくはVKのCDR1領域、CDR2領域ならびに/またはCDR3領域内のアミノ酸残基を変異させ、それによって目的の抗体の1つ以上の結合する性質(例えば、親和性)を改良することである。部位特異的変異誘発またはPCRを介する変異誘発は、1つ以上の変異を導入するために行われ得、そして抗体の結合における効果、または目的とする他の機能的性質は、本明細書に記載され、そして実施例に提供されるようなインビトロアッセイまたはインビボアッセイにおいて評価され得る。好ましい保存的改変(上記で議論されるような)が、導入される。この変異は、アミノ酸の置換、付加または削除であり得るが、好ましくは置換である。さらに、代表的に、CDR領域内の1残基以下、2残基以下、3残基以下、4残基以下、または5残基以下が、変更される。
【0080】
したがって、別の実施形態において、本発明は、以下を含む重鎖可変領域を含む単離された抗IRTA−5モノクローナル抗体、またはその抗原部位を提供する:(a)配列番号1、配列番号2、および配列番号3からなる群より選択されるアミノ酸配列、あるいは配列番号1、配列番号2、および配列番号3と比較した場合に、1個、2個、3個、4個、もしくは5個のアミノ酸の置換、削除または付加を有するアミノ酸配列を含むVHのCDR1領域;(b)配列番号4、配列番号5、および配列番号6からなる群より選択されるアミノ酸配列、あるいは配列番号4、配列番号5、および配列番号6と比較した場合に、1個、2個、3個、4個、もしくは5個のアミノ酸の置換、削除または付加を有するアミノ酸配列を含むVHのCDR2領域;(c)配列番号7、配列番号8、および配列番号9からなる群より選択されるアミノ酸配列、あるいは配列番号7、配列番号8、および配列番号9と比較した場合に、1個、2個、3個、4個、もしくは5個のアミノ酸の置換、削除または付加を有するアミノ酸配列を含むVHのCDR3領域;(d)配列番号10、配列番号11、および配列番号12からなる群より選択されるアミノ酸配列、あるいは配列番号10、配列番号11、および配列番号12と比較した場合に、1個、2個、3個、4個、もしくは5個のアミノ酸の置換、削除または付加を有するアミノ酸配列を含むVKのCDR1領域;(e)配列番号13、配列番号14、および配列番号15からなる群より選択されるアミノ酸配列、あるいは配列番号13、配列番号14、および配列番号15と比較した場合に、1個、2個、3個、4個、もしくは5個のアミノ酸の置換、削除または付加を有するアミノ酸配列を含むVKのCDR2領域;ならびに(f)配列番号16、配列番号17、および配列番号18からなる群より選択されるアミノ酸配列、あるいは配列番号16、配列番号17、および配列番号18と比較した場合に、1個、2個、3個、4個、もしくは5個のアミノ酸の置換、削除または付加を有するアミノ酸配列を含むVKのCDR3領域。
【0081】
本発明の操作された抗体としては、改変が、例えば、抗体の性質を改良するためにVHおよび/またはVK内のフレームワーク残基に作製される抗体が挙げられる。代表的に、このようなフレームワークの改変は、これらの抗体の免疫原性を減少させるために行われる。例えば、1つのアプローチは、1つ以上のフレームワーク残基を対応する生殖系列配列まで「変異の修正をする(backmutate)」ことである。より具体的には、体細胞変異を受けた抗体は、抗体が由来する生殖系列配列と異なるフレームワーク残基を含み得る。このような残基は、この抗体のフレームワーク配列を、この抗体が由来する生殖系列配列と比較することによって同定され得る。例えば、2G5に関して、VHのアミノ酸残基番号4(FR1内の)は、バリンであるが、VH 3−33の生殖系列配列に対応するこの残基は、ロイシンである。このフレームワーク領域配列をこれらの生殖系列の構成に戻すために、この体細胞変異は、例えば、部位特異的変異誘発またはPCRを介する変異誘発によって、この生殖系列配列まで「バックミューテーションされ(backmutated)」得る(例えば、5A2のVHのFR1の残基番号4は、バリンからロイシンに「バックミューテーションされ」得る)。
【0082】
別の例として、7G8に関して、VHのアミノ酸残基番号1(FR1内の)は、アスパラギン酸であるが、対応するVH DP44の生殖系列配列におけるこの残基は、グルタミン酸である。このフレームワーク領域配列をこれらの生殖系列の構成に戻すために、例えば、VHの7G8の残基番号1は、アスパラギン酸からグルタミン酸に「バックミューテーションされ」得る。このような「バックミューテーションされ」た抗体もまた、本発明に包含されることが意図される。
【0083】
なお別の例として、7G8に関して、VHのアミノ酸残基番号3(FR1内の)は、ヒスチジンであるが、対応するVH DP44の生殖系列配列におけるこの残基は、グルタミンである。このフレームワーク領域配列をこれらの生殖系列の構成に戻すために、例えば、7G8のVHの残基番号3は、ヒスチジンからグルタミンに「バックミューテーションされ」得る。このような「バックミューテーションされ」た抗体もまた、本発明に包含されることが意図される。
【0084】
なお別の例として、7G8に関して、VHのアミノ酸残基番号37(FR2内の)は、イソロイシンであるが、対応するVH DP44の生殖系列配列におけるこの残基は、バリンである。このフレームワーク領域配列をこれらの生殖系列の構成に戻すために、例えば、7G8のVHの残基番号37(FR2の残基番号2)は、イソロイシンからバリンに「バックミューテーションされ」得る。このような「バックミューテーションされ」た抗体もまた、本発明に包含されることが意図される。
【0085】
なお別の例として、7G8に関して、VHのアミノ酸残基番号44(FR2内の)は、アスパラギン酸であるが、対応するVH DP44の生殖系列配列におけるこの残基は、グリシンである。このフレームワーク領域配列をこれらの生殖系列の構成に戻すために、例えば、7G8のVHの残基番号44(FR2の残基番号9)は、アスパラギン酸からグリシンに「バックミューテーションされ」得る。このような「バックミューテーションされ」た抗体もまた、本発明に包含されることが意図される。
【0086】
なお別の例として、2G5に関して、VKのアミノ酸残基番号85(FR3内の)は、ロイシンであるが、対応するVK L6の生殖系列配列におけるこの残基は、バリンである。このフレームワーク領域配列をこれらの生殖系列の構成に戻すために、例えば、2G5のVKの残基番号85(FR3の残基番号29)は、ロイシンからバリンに「バックミューテーションされ」得る。このような「バックミューテーションされ」た抗体もまた、本発明に包含されることが意図される。
【0087】
好ましい実施形態において、7G8のVH内の特定の残基は、他のヒトの生殖系列配列中の残基と同一であるかまたは類似する残基に変異される(実施例3においてさらに議論される)。例えば、本発明はまた、位置13のヒスチジンがリジンまたはグルタミンに変異し、そして位置87のメチオニンがトレオニンに変異した7G8(mut)の重鎖可変領域を提供する。7G8(mut)のVHのアミノ酸配列は、配列番号36に示される。したがって、別の実施形態において、本発明は、配列番号36のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号22、配列番号23または配列番号24(好ましくは、配列番号24)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体を提供する。
【0088】
フレームワークの改変の別の型は、このフレームワーク領域内(または、1つ以上のCDR領域内でさえ)の1個以上の残基を変異させて、T細胞エピトープを除去し、それによってこの抗体の潜在的な免疫原性を減少させる工程を包含する。このアプローチはまた、「脱免疫化(deimmunization)」と称され、そしてCarrらの米国特許公開番号第20030153043号に、さらに詳細に記載される。
【0089】
上記フレームワーク領域またはCDR領域内に作製される改変に加えてか、またはそれに代えて、本発明の抗体は、Fc領域内に改変を含むように操作され得、代表的にはこの抗体の1つ以上の機能的性質(例えば、血清半減期、補体結合、Fc受容体の結合、および/または抗体依存性細胞媒介性細胞傷害)を変更するように操作され得る。さらに、本発明の抗体は、上記の場合と同じくこの抗体の1つ以上の機能的性質を変更するために、化学的に改変されても(例えば、1つ以上の化学的部分が、この抗体に接続され得る)、抗体のグリコシル化を変更ように改変されてもよい。これらの実施形態の各々は、以下でさらに詳細に記載される。上記Fc領域中の残基の番号付けは、EU index of Kabatの番号付けである。
【0090】
1つの実施形態において、CH1のヒンジ領域は、このヒンジ領域中のシステイン残基が変更される(例えば、増加されるかまたは減少される)ように改変される。このアプローチは、Bodmerらによる米国特許第5,677,425号に、さらに記載される。CH1のヒンジ領域中のシステイン残基の数は、例えば、これらの軽鎖および重鎖の組み立てを促進するためか、またはこの抗体の安定性を増加させるか、もしくは減少させるために、変更される。
【0091】
別の実施形態において、抗体のFcヒンジ領域は、この抗体の生物学的半減期を減少させるために変異される。より具体的には、1つ以上のアミノ酸変異は、この抗体がネイティブなFc−ヒンジドメインのStaphylococcylタンパク質A(SpA)結合に対して障害されたSpA結合を有するように、このFc−ヒンジフラグメントのCH2−CH3ドメインの界面領域中に導入される。このアプローチは、Wardらの米国特許第6,165,745号に、さらに詳細に記載される。
【0092】
別の実施形態において、上記抗体は、その生物学的半減期が増加するように改変される。種々のアプローチが、可能である。例えば、以下の変異の1つ以上が、Wardの米国特許第6,277,375号に記載されるように導入される:T252L、T254S、T256F。あるいは、生物学的半減期を増加させるために、この抗体は、Prestaらの米国特許第5,869,046号および同第6,121,022号に記載されるように、IgGのFc領域のCH2ドメインの2つのループから受け継がれるサルベージ受容体結合エピトープ(salvage receptor binding epitope)を含むためにCH1またはCL領域内で変更され得る。
【0093】
なお他の実施形態において、上記Fc領域は、上記抗体の1つ以上のエフェクター機能を変更するために、少なくとも1個のアミノ酸残基を異なるアミノ酸残基で置換することによって変更される。例えば、アミノ酸残基234、235、236、237、297、318、320および322から選択される1個以上のアミノ酸は、この抗体がエフェクターリガンド対する変更された親和性を有しながらも、本発明の抗体の抗原結合能力を保持するように、異なるアミノ酸残基で置換され得る。抗体の親和性が変更されるエフェクターリガンドは、例えば、Fc受容体または補体のC成分であり得る。このアプローチは、両方ともWinterらのものである米国特許第5,624,821号および同第5,648,260号に、さらに詳細に記載される。
【0094】
別の例において、アミノ酸残基329、331および322から選択される1個以上のアミノ酸は、変更されたC1q結合および/または減少したか、もしくは消失した補体依存性細胞障害(CDC)を有するように、異なるアミノ酸残基で置換され得る。このアプローチは、Idusogieらの米国特許第6,194,551号に、さらに詳細に記載される。
【0095】
別の例において、アミノ酸の位置231と239との範囲内の1個以上のアミノ酸残基は、変更され、それによって補体を固定するこの抗体の能力を変更する。このアプローチは、BodmerらのPCT国際公開第94/29351号に、さらに詳細に記載される。
【0096】
なお別の例において、上記Fc領域は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を媒介し、そして/またはFcγ受容体に対するこの抗体の親和性を増加するこの抗体の能力を増加するために、以下の位置における1個以上のアミノ酸を改変することによって改変される:238、239、248、249、252、254、255、256、258、265、267、268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、293、294、295、296、298、301、303、305、307、309、312、315、320、322、324、326、327、329、330、331、333、334、335、337、338、340、360、373、376、378、382、388、389、398、414、416、419、430、434、435、437、438または439。このアプローチは、PrestaのPCT国際公開第00/42072号に、さらに記載される。さらに、ヒトIgG1上のFcγR1、FcγRII、FcγRIIIおよびFcRnに対する結合部位は、マッピングされそして改善された結合を有する改変体が、記載された(Shields,R.L.ら、(2001)J.Biol.Chem.276:6591−6604を参照のこと)。位置256、290、298、333、334および339における特定の変異は、FcγRIIIに対する結合を改良することを示した。さらに、以下の変異の組み合わせは、FcγRIII結合を改善することを示した:T256A/S298A、S298A/E333A、S298A/K224AおよびS298A/E333A/K334A。
【0097】
さらに別の実施形態において、グリコシル化抗体のグリコシル化が改変された。例えば、非グリコシル化(aglycoslated)抗体が作製され得る(すなわち、抗体が、グリコシル化を欠く)。グリコシル化は、例えば、抗原に対する抗体の親和性を増加するために変更され得る。このような糖質の改変は、抗体配列内の1つ以上の部位のグリコシル化を変更することによって達成され得る。例えば、1個以上のアミノ酸の置換は、1つ以上の可変領域フレームワークのグリコシル化部位の排除を生じるように行われ得、それによってこれらの部位におけるグリコシル化を排除する。このようなグリコシル化の妨害(aglycosylation)は、抗原に対する抗体の親和性を増加し得る。このようなアプローチは、Coらの米国特許第5,714,350号および同第6,350,861号に、さらに詳細に記載される。
【0098】
さらに、または代替的に、抗体は、グリコシル化の変更された型(例えば、減少した量のフコシル残基を有する低フコシル化抗体または増加した2等分のGlcNac構造を有する抗体)を有するように作製され得る。このような変更されたグリコシル化パターンは、抗体のADCC能力を増加することが実証された。このような糖質の改変は、例えば、変更されたグリコシル化機構を有する宿主細胞中でこの抗体を発現することによって達成され得る。変更されたグリコシル化機構を有する細胞は、当該分野において記載され、そして本発明の組換え抗体を発現する宿主細胞として使用され得、変更されたグリコシル化を伴う抗体を産生する。例えば、細胞株Ms704、Ms705、およびMs709は、フコシルトランスフェラーゼ遺伝子FUT8(α(1,6)フコシルトランスフェラーゼ)を欠き、その結果、Ms704細胞株、Ms705細胞株、およびMs709細胞株中で発現される抗体は、この抗体の糖質においてフコースを欠く。Ms704 FUT8−/−細胞株、Ms705 FUT8−/−細胞株、およびMs709 FUT8−/−細胞株は、2つの置換ベクターを使用する、CHO/DG44細胞中のFUT8遺伝子の標的化された破壊によって作製された(Yamaneらの米国特許公開番号第20040110704号およびYamane−Ohnukiら、(2004)Biotechnol Bioeng 87:614−22を参照のこと)。別の例として、Hanaiらの欧州特許第1,176,195号は、機能的に破壊された、フコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子を有する細胞株を記載する。このような細胞株中で発現される抗体は、α1,6結合に関連する酵素が減少するか、または排除されることによって低フコシル化を示す。Hanaiらはまた、この抗体のFc領域に結合するN−アセチルグルコサミンに対するフコースの付加に関して低い酵素活性を有するか、またはこの酵素活性を有さない細胞株(例えば、ラット骨髄腫細胞株YB2/0(ATCC CRL 1662))を記載する。PrestaのPCT国際公開第03/035835号は、Asn(297)に連結した糖質に対してフコースを結合させる能力が減少した、改変体CHO細胞株(Lec13細胞)を記載し、この細胞株もまた、宿主細胞中で発現される抗体の低フコシル化を生じる(Shields,R.L.ら、(2002)J Biol.Chem.277:26733−26740も参照のこと)。UmanaらのPCT国際公開第99/54342号は、操作された細胞株中で発現される抗体が、抗体の増加したADCC活性を生じる増加した2等分のGlcNac構造を示すような、糖タンパク質を改変するグリコシルトランスフェラーゼ(例えば、β(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII))を発現するように操作された細胞株を記載する(Umanaら、(1999)Nat.Biotech.17:176−180も参照のこと)。あるいは、抗体のフコシル残基は、フコシダーゼ酵素を使用して切断され得る。例えば、フコシダーゼ(α−L−フコシダーゼ)は、抗体からフコシル残基を除去する(Tarentino,A.L.ら、(1975)Biochem.14:5516−23)。
【0099】
本発明によって企図される本明細書中の抗体の別の改変は、ポリエチレングリコール化(pegylation)である。抗体は、例えば、抗体の生物学的(例えば、血清)半減期を増加させるためにポリエチレングリコール化され得る。抗体をポリエチレングリコール化するために、抗体、またはそのフラグメントは、代表的に、1つ以上のPEGが抗体または抗体フラグメントに結合される条件下において、ポリエチレングリコール(PEG)(例えば、反応性エステルまたはPEGのアルデヒド誘導体)と反応される。好ましくは、このポリエチレングリコール化は、反応性のPEG分子(または類似する反応性の水溶性ポリマー)を用いるアシル化反応またはアルキル化反応を介して行われる。本明細書中で使用される場合、用語「ポリエチレングリコール」は、他のタンパク質を誘導体化するために使用されるPEGの形態のいずれか(例えば、モノ(C1〜C10)アルコキシ−ポリエチレングリコールもしくはモノ(C1〜C10)アルコキシ−ポリエチレングリコールまたはモノ(C1〜C10)アルコキシ−ポリエチレングリコール−マレイミドもしくはモノ(C1〜C10)アルコキシ−ポリエチレングリコール−マレイミド)を包含することが意図される。特定の実施形態において、ポリエチレングリコール化される抗体は、グリコシル化を妨害された抗体である。タンパク質をポリエチレングリコール化するための方法は、当該分野において公知であり、そして本発明の抗体に適用され得る。例えば、Nishimuraらの欧州特許第0 154 316号およびIshikawaらの欧州特許第0 401 384号を参照のこと。
【0100】
(抗体を操作する方法)
上で議論されるように、本明細書中で開示されるVH配列およびVK配列を有する抗IRTA−5抗体は、VH配列および/またはVK配列、またはそれらに結合している定常領域を改変することにより、新規な抗IRTA−5抗体を作製するために使用され得る。したがって、本発明の別の局面において、本発明の抗IRTA−5抗体(例えば、2G5、5A2または7G8)の構造的特徴は、構造的に関連する抗IRTA−5抗体を作製するために使用され、この抗体は、本発明の抗体の少なくとも1つの機能特性(例えば、ヒトIRTA−5への結合)を保持する。例えば、2G5、5A2または7G8の1以上のCDR領域、またはこれらの変異体は、上で議論されるように、組換え的に操作されたさらなる本発明の抗IRTA−5抗体を作製するために、公知のフレームワーク領域および/または他のCDRと組換え的に結合され得る。他の型の改変としては、前の節で記載された改変が挙げられる。この操作方法についての出発物質は、本明細書中で提供される1以上のVH配列および/またはVK配列またはその1以上のCDR領域である。操作された抗体を作製するために、本明細書中で提供される1以上のVH配列および/またはVK配列、またはその1以上のCDR領域を有する抗体を、実際に調製する(すなわち、タンパク質として発現する)必要はない。むしろ、この配列に含まれる情報は、元の配列に由来する「第2世代」配列を作製するために出発物質として使用され、次いで、その「第2世代」配列が、調製され、タンパク質として発現される。
【0101】
したがって、別の実施形態において、本発明は、抗IRTA−5抗体を調製するための方法を提供し、この方法は、以下の工程:
(a)(i)配列番号1、配列番号2、および配列番号3からなる群より選択されるCDR1配列、配列番号4、配列番号5、および配列番号6からなる群より選択されるCDR2配列、ならびに/もしくは配列番号7、配列番号8、および配列番号9からなる群より選択されるCDR3配列を含む、重鎖可変領域の抗体配列;ならびに/または(ii)配列番号10、配列番号11、および配列番号12からなる群より選択されるCDR1配列、配列番号13、配列番号14、および配列番号15からなる群より選択されるCDR2配列、ならびに/もしくは配列番号16、配列番号17、および配列番号18からなる群より選択されるCDR3配列を含む軽鎖可変領域の抗体の配列を、提供する工程;
(b)上記重鎖可変領域の抗体配列および/または上記軽鎖可変領域の抗体配列内の少なくとも1つのアミノ酸残基を変更して、少なくとも1つの変更された抗体の配列を作製する工程;ならびに
(c)この変更された抗体の配列をタンパク質として発現させる工程
を包含する。
【0102】
標準的分子生物学技術が、この変更された抗体配列を調製しそして発現するために使用され得る。
【0103】
好ましくは、この変更された抗体配列によってコードされる抗体は、本明細書中で記載される抗IRTA−5抗体の機能特性のうちの1つ、いくつかまたは全てを保持する抗体であり、この機能特性としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
(i)5×10−8M以下のKDで、ヒトIRTA−5に結合する;
(ii)ヒトIRTA−1、ヒトIRTA−2、ヒトIRTA−3およびヒトIRTA−4に実質的には結合しない;および/または
(iii)ヒトBリンパ球およびB細胞腫瘍腫瘍系に結合するが、CD3+末梢血T細胞、CD1A+末梢血樹状細胞、CD14+末梢血単球またはCD56+末梢血ナチュラルキラー細胞に実質的には結合しない。
【0104】
上記の変更された抗体の機能特性は、当該分野で利用可能であり、かつ/または本明細書中で記載される、標準的アッセイを使用して評価され得、これらのアッセイは、例えば、実施例において示されるアッセイ(例えば、フローサイトメトリー、結合アッセイ)である。
【0105】
本発明の抗体を操作する方法の特定の実施形態において、変異が、抗IRTA−5抗体コード配列の全てまたは部分に沿って無作為にまたは選択的に導入され得、そして得られた改変抗IRTA−5抗体は、結合活性および/または本明細書中で記載されるような他の機能特性についてスクリーニングされ得る。変異の方法は、当該分野で記載されている。例えば、Shortによる国際公開第02/092780号は、飽和変異誘発、合成的ライゲーションアセンブリ、またはそれらの組み合わせを使用して抗体変異を作製しそしてスクリーニングする方法について記載する。あるいは、Lazarらによる国際公開第03/074679号は、コンピュータースクリーニング方法を使用して抗体の生理化学特性を最適化する方法を記載する。
【0106】
(本発明の抗体をコードする核酸分子)
本発明の別の局面は、本発明の抗体をコードする核酸分子に関する。この核酸は、全細胞(whole cell)中に存在し得るか、細胞溶解産物中に存在し得るか、または部分的精製形態もしくは実質的に純粋な形態で存在し得る。核酸は、他の細胞構成成分または他の夾雑物(例えば、他の細胞性の核酸またはタンパク質)から標準的技術により精製される場合、「単離される」か、または「実質的に純粋にされる」。この技術としては、アルカリ/SDS処理、CsClバンド形成、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動および他の当該分野で周知の技術が挙げられる。F.Ausubelら編(1987)Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing and Wiley Interscience、New Yorkを参照。本発明の核酸は、例えば、DNAまたはRNAであり得、イントロン配列を含んでも含まなくてもよい。好ましい実施形態において、上記核酸は、cDNA分子である。
【0107】
本発明の核酸は、標準的分子生物学技術を用いて得られ得る。ハイブリドーマ(例えば、上記にさらに記載されるようなヒト免疫グロブリン遺伝子を有するトランスジェニックマウスから調製されるハイブリドーマ)によって発現される抗体については、このハイブリドーマによって産生される抗体の軽鎖および重鎖をコードするcDNAは、標準的PCR増幅技術またはcDNAクローニング技術によって得られ得る。免疫グロブリン遺伝子ライブラリーから(例えば、ファージディスプレイ技術を用いて)得られる抗体については、この抗体をコードする核酸が、このライブラリーから回収される。
【0108】
本発明の好ましい核酸分子は、2G5モノクローナル抗体、5A2モノクローナル抗体または7G8モノクローナル抗体の、VH配列およびVL配列をコードする核酸分子である。2G5、5A2および7G8のVH配列をコードするDNA配列は、それぞれ配列番号25、配列番号26および配列番号27に示される。2G5、5A2および7G8のVL配列をコードするDNA配列は、それぞれ配列番号28、配列番号29および配列番号30に示される。
【0109】
VHセグメントおよびVLセグメントをコードするDNAフラグメントが一旦得られると、これらのDNA配列は、標準的組換えDNA技術により、例えば、可変領域遺伝子を、完全長抗体鎖遺伝子、Fabフラグメント遺伝子またはscFv遺伝子に変換するように、さらに操作され得る。これらの操作において、VLコードDNAフラグメントまたはVHコードDNAフラグメントは、別のタンパク質(例えば、抗体定常領域または変動可能(flexible)リンカー)をコードする別のDNAフラグメントに作動可能に連結される。用語「作動可能に連結される」は、この文脈で使用される場合、その2つのDNAフラグメントによってコードされるアミノ酸配列がインフレームを維持するように、その2つのDNAフラグメントが連結されることを意味することが意図される。
【0110】
VH領域をコードする単離されたDNAは、VHをコードするこのDNAを、重鎖定常領域(CH1、CH2およびCH3)をコードする別のDNA分子に作動可能に連結することにより、完全長の重鎖遺伝子に変換され得る。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は、当該分野で公知であり(例えば、Kabat,E.A.ら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S. Department of Health and Human Services、NIH Publication No.91−3242を参照)、そしてこれらの領域を含むDNAフラグメントは、標準的PCR増幅によって得られ得る。上記重鎖定常領域は、IgG1定常領域、IgG2定常領域、IgG3定常領域、IgG4定常領域、IgA定常領域、IgE定常領域、IgM定常領域、またはIgD定常領域であり得るが、最も好ましくは、IgG1定常領域またはIgG4定常領域である。Fabフラグメント重鎖遺伝子のために、VHをコードするDNAが、重鎖CH1定常領域のみをコードする別のDNA分子と作動可能に連結され得る。
【0111】
VL領域をコードする単離されたDNAは、VLをコードするこのDNAを、軽鎖定常領域CLをコードする別のDNA分子に作動可能に連結することにより、完全長の軽鎖遺伝子に変換され得る。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は、当該分野で公知であり(例えば、Kabat,E.A.,ら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S.Department of Health and Human Services、NIH Publication No.91−3242)、そしてこれらの領域を含むDNAフラグメントは、標準的PCR増幅によって得られ得る。上記軽鎖定常領域は、κ定常領域またはλ定常領域であり得るが、最も好ましくは、κ定常領域である。
【0112】
scFv遺伝子を作製するために、VHコードDNAフラグメントおよびVLコードDNAフラグメントが、VH配列およびVL配列が変動可能リンカーをコードする別のフラグメント(例えば、アミノ酸配列(Gly4−Ser)3をコードする)に作動可能に連結され、VLおよびVH領域がその変動可能リンカーにより連結された連続した一本鎖タンパク質として発現され得るようになる(例えば、Birdら(1988)Science 242:423−426;Hustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883;McCaffertyら(1990)Nature 348:552−554を参照)。
【0113】
(本発明のモノクローナル抗体の産生)
本発明のモノクローナル抗体(mAb)は、従来のモノクローナル抗体方法論(例えば、KohlerおよびMilstein(1975)Nature 256:495の標準的体細胞ハイブリダイゼーション技術)を含む種々の技術によって産生され得る。体細胞ハイブリダイゼーション手順が好ましいが、原則として、モノクローナル抗体を産生するための他の技術(例えば、Bリンパ球のウイルス性形質転換または他の腫瘍形成性形質転換)が、使用され得る。
【0114】
ハイブリドーマを調製するための好ましい動物系は、マウス系である。マウスにおけるハイブリドーマ産生は、非常によく確立されている手順である。免疫プロトコールおよび融合のための免疫脾細胞の単離の技術は、当該分野で公知である。融合パートナー(例えば、マウス骨髄腫細胞)および融合手順もまた、公知である。
【0115】
本発明のキメラ抗体またはヒト化抗体は、上述のように調製されたマウスモノクローナル抗体の配列に基づいて調製され得る。重鎖免疫グロブリンおよび軽鎖免疫グロブリンをコードするDNAが、標準的分子生物学技術を用いて、目的のマウスハイブリドーマから得られ得、そして非マウス(例えば、ヒト)免疫グロブリン配列を含むように操作され得る。例えば、キメラ抗体を作製するため、当該分野で公知の技術を用い、マウス可変領域をヒト定常領域に連結し得る(例えば、Cabillyらに対する米国特許第4,816,567号を参照)。ヒト化抗体を作製するために、マウスCDR領域が、当該分野で公知の方法を用いて、ヒトフレームワーク内に挿入され得る(例えば、Winterに対する米国特許第5,225,539号、およびQueenらに対する米国特許公開5,530,101号;同第5,585,089;同第5,693,762および同第6,180,370号を参照)。
【0116】
好ましい実施形態において、本発明の抗体は、ヒトモノクローナル抗体である。IRTA−5に対するそのようなヒトモノクローナル抗体は、マウス免疫系ではなくヒト免疫系の一部を保有するトランスジェニックマウスまたは染色体導入(transchromosomic)マウスを用いて産生され得る。これらのトランスジェニックマウスまたは染色体導入マウスとしては、それぞれHuMAb Mouse(登録商標)およびKM Mouse(登録商標)と本明細書中で言及されるマウスが挙げられ、そして本明細書中で集合的に「ヒトIgマウス」と呼ばれる。
【0117】
HuMAb Mouse(登録商標)(Medarex(登録商標)Inc.)は、再配列されていないヒト重鎖免疫グロブリン配列(μおよびγ)およびヒトκ軽鎖免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子小座(minilocos)を、内因性のμ鎖遺伝子座およびκ鎖遺伝子座を不活性化する標的化変異と共に含む(例えば、Lonbergら(1994)Nature 368(6474):856−859を参照)。したがって、このマウスは、マウスIgMまたはκの発現低下を示し、そして免疫に応答して、導入されたヒト重鎖導入遺伝子およびヒト軽鎖導入遺伝子がクラススイッチおよび体細胞変異を受け、高親和性ヒトIgGκモノクローナル抗体を産生する(Lonberg,N.ら(1994)前出;Lonberg,N.(1994)Handbook of Experiniental Phamacology中の総説113:49−101;Lonberg,N.およびHuszar,D.(1995)Intern.Rev.Immunol.13:65−93,ならびにHarding,F.およびLonberg,N.(1995)Ann.N.Y.Acad.Sci.764:536−546)。HuMab Mouse(登録商標)の調製および使用、ならびにこのようなマウスによって保持されるゲノム改変は、以下においてさらに記載される:Taylor,L.ら(1992)Nucleic Acids Research 20:6287−6295;Chen,J.ら(1993)International Immunology 5:647−656;Tuaillonら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:3720−3724;Choiら(1993)Nature Genetics 4:117−123;Chen,J.ら(1993)EMBO J.12:821−830;Tuaillonら(1994)J.Immunol.152:2912−2920;Taylor,L.ら(1994)International Immunology 6:579−591;およびFishwild,D.ら(1996)Nature Biotechnology 14:845−851(これら全ての内容は、本明細書中でその全体が、具体的に参考として援用される)。さらに、米国特許第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,789,650号;同第5,877,397号;同第5,661,016号;同第5,814,318号;同第5,874,299号;および同第5,770,429号(全てLonbergおよびKayに対する);米国特許第5,545,807号(Suraniらに対する);国際公開第92/03918号、同第93/12227号、同第94/25585号、同第97/13852号、同第98/24884号および同第99/45962号(全てLonbergおよびKayに対する);ならびに国際公開第01/14424号(Kormanらに対する)もまた、参照。
【0118】
別の実施形態において、本発明のヒト抗体は、導入遺伝子および導入染色体上にヒト免疫グロブリン配列を保有するマウス(たとえば、ヒト重鎖導入遺伝子およびヒト軽鎖導入染色体を保有するマウス)を使用して惹起され得る。このようなマウス(本明細書中で「KMマウスTM」と呼ばれるマウス)は、Ishidaらに対する国際公開第02/43478号に詳細に記載される。
【0119】
なおさらに、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する代替のトランスジェニック動物系が、当該分野で利用可能であり、そして本発明の抗IRTA−5抗体を惹起するために使用され得る。例えば、Xenomouse(Abgenix,Inc.)と呼ばれる代替のトランスジェニック系が、使用され得る;このようなマウスは、例えば、Kucherlapatiらに対する米国特許第5,939,598号;同第6,075,181号;同第6,114,598号;同第6,150,584号および同第6,162,963号に記載される。
【0120】
その上、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する代替の染色体導入動物系が、当該分野で利用可能であり、本発明の抗IRTA−5抗体を惹起するために使用され得る。例えば、「TCマウス」と呼ばれる、ヒト重鎖導入染色体およびヒト軽鎖導入染色体の両方を保有するマウスが、使用され得る;このマウスは、Tomizukaら(2000)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:722−727に記載される。さらに、ヒト重鎖およびヒト軽鎖の導入染色体を保有する雌ウシが、当該分野で記載されており(Kuroiwaら(2002)Nature Biotechnology 20:889−894)、そして、本発明の抗IRTA−5抗体を惹起するために使用され得る。
【0121】
本発明のヒトモノクローナル抗体はまた、ヒト免疫グロブリン遺伝子のライブラリーをスクリーニングするためのファージディスプレイ方法を使用して調製され得る。ヒト抗体を単離するためのこのようなファージディスプレイ方法は、当該分野で確立されている。例えば、米国特許第5,223,409号;同第5,403,484号;および同第5,571,698号(Ladnerらに対する);米国特許第5,427,908号および同第5,580,717号(Dowerらに対する);米国特許第5,969,108号および同第6,172,197号(McCaffertyらに対する);ならびに同第5,885,793号;同第6,521,404号;同第6,544,731号;同第6,555,313号;同第6,582,915号および同第6,593,081号(Griffithsらに対する)を参照。
【0122】
本発明のヒトモノクローナル抗体はまた、SCIDマウスを使用して調製され得、このSCIDマウス中にヒト免疫細胞が再構築されており、ヒト抗体応答が免疫の際に生成され得るようになっている。このようなマウスは、例えば、Wilsonらに対する米国特許第5,476,996号および同第5,698,767号に記載される。
【0123】
(ヒトIgマウスの免疫)
ヒトIgマウスが、本発明のヒト抗体を惹起するために使用される場合、このようなマウスは、IRTA−5抗原および/または組換えIRTA−5、またはIRTA−5融合タンパク質の精製調製物または濃縮(enriched)調製物で免疫され得る(Lonberg,N.ら(1994)Nature 368(6474)856−859:Fishwild,D.ら(1996)Nature Biotechnology 14:845−851;ならびに国際公開第98/24884号および同第01/14424号に記載される)。好ましくは、マウスは、最初の注入において6〜16週齢である。例えば、IRTA−5抗原の精製調製物または組換え調製物(5〜50μg)が、ヒトIgマウスを腹腔内免疫するために使用され得る。
【0124】
IRTA−5に対する完全なヒトモノクローナル抗体を発生させるための詳細な手順は、以下の実施例1に記載される。種々の抗原を用いた累積的な経験は、完全フロイントアジュバント中の抗原でまず腹腔内(IP)免疫され、その後、不完全フロイントアジュバント中の抗原で隔週でIP免疫される(計6回まで)場合、トランスジェニックマウスが応答することを示している。しかし、フロイント以外のアジュバントもまた、有効であることが知られている。さらに、アジュバント非存在下での全細胞(whole cell)は、高度に免疫抗原性であることが見出される。免疫応答は、免疫プロトコールの経過の間モニタリングされ得、血漿サンプルが眼窩後方(retroorbital)採血によって得られる。血漿は、ELISAによって(以下で記載するように)スクリーニングされ、そして抗IRTA−5ヒト免疫グロブリンの十分な力価を有するマウスは、融合のために使用され得る。マウスは、抗原で静脈内に屠殺および脾臓摘出の3日間前にブーストされ得る。各免疫につき2〜3回の融合を、実施する必要があり得ることが予期される。各抗原につき、6匹と24匹との間のマウスが、代表的に免疫される。通常、HCo7系統およびHCo12系統が使用される。さらに、HCo7導入遺伝子およびHCo12導入遺伝子の両方が、共に掛け合わされて、2つの異なるヒト重鎖導入遺伝子(HCo7/HCo12)を有する1匹のマウスが産生され得る。あるいは、またはさらに、KM Mouse(登録商標)系統もまた使用され得る。
【0125】
(本発明のヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの産生)
本発明のヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを産生するため、免疫されたマウスに由来する脾細胞および/またはリンパ節細胞が単離され得、そして適切な不死化細胞株(例えば、マウス骨髄腫細胞株)に融合され得る。得られたハイブリドーマは、抗原特異的抗体の産生のためにスクリーニングされ得る。例えば、得られたマウスに由来する1種の脾臓リンパ球の細胞懸濁液は、6分の1の数のP3X63−Ag8.653非分泌性マウス骨髄腫細胞(ATCC,CRL 1580)に、50% PEGを用いて融合され得る。細胞は、約2×105で平底マイクロタイタープレート中に播種され、その後、20%ウシ胎仔血清、18%「683」馴化培地、5% origen(IGEN)、4mM L−グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、5mM HEPES、0.055mM 2−メルカプトエタノール、50単位/mlペニシリン、50mg/mlストレプトマイシン、50mg/mlゲンタマイシンおよび1×HAT(Sigma;HATは融合の24時間後に添加される)を含有する選択培地中で、2週間インキュベーションされる。約2週間後、細胞は、HATがHTで置き換えられている培地中で培養され得る。次いで、個々のウェルは、ヒトモノクローナルIgM抗体およびヒトモノクローナルIgG抗体についてのELISAによってスクリーニングされ得る。一旦、広範なハイブリドーマの増殖が起こると、培地は、通常、10〜14日後に観察され得る。抗体分泌性ハイブリドーマは、再びプレートに播種され得、再びスクリーニングされ得て、なおヒトIgGに対して陽性であった場合、このモノクローナル抗体は、限界希釈により少なくとも2回サブクローニングされ得る。次いで、安定的なサブクローンは、性質決定のために組織培養培地中に少量の抗体を産生するため、インビトロで培養され得る。
【0126】
ヒトモノクローナル抗体を精製するために、選択されたハイブリドーマは、モノクローナル抗体精製のために2リットルのスピナーフラスコ中で増殖され得る。上清は濾過され得、そして濃縮された後、プロテインA−セファロースを用いたアフィニティクロマトグラフィー(Pharmacia,Piscataway,N.J.)にかけられ得る。溶出されたIgGは、ゲル電気泳動によって確認され得、そして高速液体クロマトグラフィーによって、純度を確認され得る。バッファー溶液は、PBSに交換され得、そして吸光係数1.43を用いてOD280によって濃度が決定され得る。このモノクローナル抗体は、等分されて、−80℃で保存され得る。
【0127】
(本発明のモノクローナル抗体を産生するトランスフェクトーマ(transfectoma)の産生)
本発明の抗体はまた、宿主細胞トランスフェクトーマ(transfectoma)において、例えば、当該分野で周知であるように(例えば、Morrison,S.(1985)Science 229:1202)、組換えDNA技術および遺伝子トランスフェクション方法の組み合わせを用いて、産生され得る。
【0128】
例えば、抗体またはその抗体フラグメントを発現するため、一部または完全長の軽鎖および重鎖をコードするDNAが、標準的分子生物学技術(例えば、目的の抗体を発現するハイブリドーマを用いるPCR増幅またはcDNAクローニング)によって得られ得、そしてこのDNAは、その遺伝子が転写制御配列および翻訳制御配列に作動可能に連結されるように、発現ベクター内に挿入され得る。この文脈において、用語「作動可能に連結される」は、抗体遺伝子が、ベクター内に、そのベクター内の転写制御配列および翻訳制御配列の抗体遺伝子の転写および翻訳を制御するというその意図される機能をもたらすように、ライゲーションされることを意味することを意図される。発現ベクターおよび発現制御配列は、使用される発現宿主細胞に適合性であるように選択される。抗体軽鎖遺伝子および抗体重鎖遺伝子は、別々のベクター内に挿入され得るか、またはより代表的には、両遺伝子は、同じ発現ベクター内に挿入される。抗体遺伝子は、標準的方法(例えば、抗体遺伝子フラグメントおよびベクターの相補的制限部位のライゲーション、または制限部位が存在しない場合は平滑末端ライゲーション)により、発現ベクター内に挿入される。本明細書中に記載される抗体の軽鎖可変領域および重鎖可変領域は、発現ベクター(所望のアイソタイプの重鎖定常領域および軽鎖定常領域を既にコードしている)内にこれらを挿入してVHセグメントがそのベクター内のCHセグメントに作動可能に連結され、VKセグメントがベクター内のCLセグメントに作動可能に連結されるようにすることにより、任意の抗体アイソタイプの完全長抗体遺伝子を作製するために使用され得る。さらに、または代替的に、組換え発現ベクターは、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードし得る。抗体鎖遺伝子は、シグナルペプチドがインフレームで抗体鎖遺伝子のアミノ末端に連結されるようにベクター内にクローニングされ得る。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチドまたは異種のシグナルペプチド(すなわち、非免疫グロブリンタンパク質からのシグナルペプチド)であり得る。
【0129】
抗体鎖遺伝子に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞において抗体鎖遺伝子の発現を制御する調節配列を保有する。用語「調節配列」は、プロモーター、エンハンサーおよび抗体鎖遺伝子の転写または翻訳を制御する他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことを意図する。このような調節配列は、例えば、Goeddel(Gene Expression Technology. Methods in Enzymology 185、Academic Press、San Diego,CA(1990))に記載される。発現ベクターの設計(調節配列の選択を含む)は、形質転換させる宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベルなどの要因に依存し得ることが、当業者に理解される。哺乳動物宿主細胞発現のための好ましい調節配列としては、哺乳動物細胞における高レベルのタンパク質発現を指向するウイルスエレメントが挙げられ、このウイルスエレメントは、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)由来のプロモーターならびに/またはエンハンサー、シミアンウイルス40(SV40)由来のプロモーターならびに/またはエンハンサー、アデノウイルス由来のプロモーターならびに/またはエンハンサー(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))およびポリオーマ由来のプロモーターならびに/またはエンハンサーである。あるいは、非ウイルス性調節配列(例えば、ユビキチンプロモーターまたはβグロブリンプロモーター)が使用され得る。なおさらに、調節エレメントは、異なる供給源(例えば、SV40初期プロモーターからの配列およびヒトT細胞白血病ウイルス1型の長末端反復からの配列を含むSRαプロモーター系(Takebe,Y.ら(1988)Mol.Cell.Biol.8:466−472))からの配列から構成される。
【0130】
抗体鎖遺伝子および調節配列に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞におけるベクターの複製を調節する配列(例えば、複製起点)および選択マーカー遺伝子のような、さらなる配列を保有し得る。選択マーカー遺伝子は、ベクターが中に導入されている宿主細胞の選択を容易にする(例えば、米国特許第4,399,216号、同第4,634,665号および同第5,179,017号(全てAxelらによる)を参照のこと)。例えば、代表的に、選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞に薬剤(例えば、G418、ハイグロマイシンまたはメトトレキサート)に対する耐性を付与する。好ましい選択マーカー遺伝子としては、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(dhfr宿主細胞におけるメトトレキサートでの選択/増幅において使用される)およびneo遺伝子(G418選択)が挙げられる。
【0131】
軽鎖および重鎖の発現について、重鎖および軽鎖をコードする発現ベクターは、標準的技術によって、宿主細胞内にトランスフェクトされる。用語「トランスフェクション」の種々の形態は、原核宿主生物または真核宿主生物への外来性DNAの導入のために一般に使用される広範な種々の技術(例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE−デキストラントランスフェクションなど)を包含することを意図する。原核生物宿主細胞および真核生物宿主細胞のどちらにおいても本発明の抗体を発現することは理論的に可能であるが、真核細胞(最も好ましくは哺乳動物細胞)における抗体の発現が最も好ましい。なぜなら、このような真核細胞(特に哺乳動物宿主細胞)は、原核細胞よりも、正しく折りたたまれた免疫学的に活性な抗体を構築しやすく、そして分泌しやすいからである。原核生物による抗体遺伝子の発現は、活性な抗体の高収量の産生に役に立たないことが報告されている(Boss,M.A.およびWood,C.R.(1985)Immunology Today 6:12−13)。
【0132】
本発明の組換え抗体を発現するために好ましい哺乳動物宿主細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(UrlaubおよびChasin(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216−4220に記載されるdhfr−CHO細胞を含み、これは例えば、R.J.KaufmanおよびP.A.Sharp(1982)Mol.Biol.159:601−621に記載されるようにDHFR選択マーカーと共に使用される)、NSO骨髄腫細胞、COS細胞およびSP2細胞が挙げられる。特に、NSO骨髄腫細胞と共に使用するために、別の好ましい発現系は、WO87/04462、WO89/01036およびEP338,841において開示されるGS遺伝子発現系である。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターが哺乳動物宿主細胞内に導入される場合、宿主細胞において抗体の発現を可能にするため、またはより好ましくは、宿主細胞が増殖している培養培地中への抗体の分泌を可能にするために十分な時間、宿主細胞を培養することによって、抗体は産生される。抗体は、培養培地から、標準的タンパク質精製方法を用いて回収され得る。
【0133】
(抗原に結合する抗体の性質決定)
本発明の抗体は、例えば、標準的ELISAによって、IRTA−5への結合について試験され得る。簡潔には、マイクロタイタープレートは、PBS中0.25μg/mlの精製IRTA−5によりでコートされ、次いで、PBS中5%ウシ血清アルブミンでブロックされる。抗体の希釈物(例えば、IRTA−5免疫マウス由来の血漿の希釈物)が、各ウェルに添加され、そして37℃で1〜2時間インキュベーションされる。プレートは、PBS/Tweenで洗浄され、次いで、アルカリホスファターゼと結合体化した二次試薬(例えば、ヒト抗体については、ヤギ−抗ヒトIgG Fc特異的ポリクローナル試薬)と共に、37℃で1時間インキュベーションされる。洗浄後、このプレートは、pNPP基質(1mg/ml)で発色され、そして405〜650のODで分析される。好ましくは、最高の力価を示したマウスが、融合のために使用される。
【0134】
上述のELISAアッセイはまた、IRTA−5イムノゲンに対し、陽性の反応性を示すハイブリドーマについてスクリーニングするために使用され得る。高い結合性でIRTA−5に結合するハイブリドーマは、サブクローニングされ、そしてさらに性質決定される。親細胞の反応性(ELISAによる)を保持する各ハイブリドーマからの1つのクローンは、−140℃で保存される5〜10個の細胞バンクのバイアルの作製、および、抗体精製のために選択される。
【0135】
抗IRTA−5抗体を精製するために、選択されたハイブリドーマは、モノクローナル抗体精製のために2リットルのスピナーフラスコ中で増殖され得る。上清は、濾過され得、そしてプロテインA−セファロースを用いたアフィニティクロマトグラフィー(Pharmacia,Piscataway,N.J.)の前に濃縮される。溶出されたIgGは、ゲル電気泳動および高速液体クロマトグラフィーによってチェックされ得、純度を確認され得る。バッファー溶液は、PBSに交換され得、そして吸光係数1.43を用いたOD280によって濃度が決定され得る。このモノクローナル抗体は、等分されて、−80℃で保存され得る。
【0136】
選択された抗−IRTA−5モノクローナル抗体が独特のエピトープに結合するか否かを決定するため、各抗体は、市販の試薬(Pierce,Rockford,IL)を用いてビオチン化され得る。未標識モノクローナル抗体およびビオチン化モノクローナル抗体を用いる競合研究は、IRTA−5でコートしたELISAプレートを用いて、上述のように実施され得る。ビオチン化mAb結合は、ストレプトアビジン−アルカリホスファターゼ(strep−avidin−alkaline phosphatase)プローブを用いて検出され得る。
【0137】
精製した抗体のアイソタイプを決定するために、特定のアイソタイプの抗体に対して特異的な試薬を用いるアイソタイプELISAが実施され得る。例えば、ヒトモノクローナル抗体のアイソタイプを決定するために、マイクロタイタープレートのウェルは、1μg/mlの抗ヒト免疫グロブリンで、4℃で一晩コートされ得る。1% BSAでのブロック後、このプレートは、1μg/ml以下の試験モノクローナル抗体または1μg/ml以下の精製アイソタイプコントロールと、周囲の温度で1〜2時間反応される。次いで、ウェルは、ヒトIgG1特異的アルカリホスファターゼ結合体化プローブまたはヒトIgM特異的アルカリホスファターゼ結合体化プローブのどちらかで反応され得る。プレートは、上述のように発色されそして分析される。
【0138】
抗IRTA−5ヒトIgGは、IRTA−5抗原に対する反応性について、ウェスタンブロッティングによりさらに試験され得る。簡潔には、IRTA−5が、調製され、そしてドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけられ得る。電気泳動後、分離した抗原は、ニトロセルロースメンブレンに移され、10%ウシ胎仔血清でブロックされ、そして試験されるモノクローナル抗体でプローブされる。ヒトIgG結合は、抗ヒトIgGアルカリホスファターゼを用いて検出されてBCIP/NBT基質タブレット(Sigma Chem.Co.,St.Louis,Mo.)で発色され得る。
【0139】
(免疫結合体)
別の局面において、本発明は、細胞毒、薬物(例えば免疫抑制剤)、または放射性毒物のような治療部分と結合体化した、抗IRTA−5抗体または抗IRTA−5抗体のフラグメントの特徴を有する。このような結合体は、本明細書中で、「免疫結合体」と呼ばれる。1以上の細胞毒を含む免疫結合体は、「免疫毒素」と呼ばれる。細胞毒または細胞毒性薬剤としては、細胞に有害な(例えば、細胞を殺す)任意の薬剤が挙げられる。例としては、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシンならびにこれらのアナログまたはホモログが挙げられる。また、治療剤としては、例えば、代謝拮抗物質(例えば、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパクロラムブシル(thioepa chlorambucil)、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンCおよびシス−ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前はダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、およびアントラマイシン(AMC))、および抗有糸分裂剤(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)が挙げられる。
【0140】
本発明の抗体と結合体化し得る、治療用細胞毒の他の好ましい例としては、ズオカルマイシン、カリケアミシン、メイタンシン(maytansine)およびアウリスタチン、およびこれらの誘導体が挙げられる。カリケアミシン抗体結合体の例は、市販されている(MylotargTM;Wyeth)。
【0141】
細胞毒素は、当該分野で利用可能なリンカー技術を用いて本発明の抗体と結合体化され得る。細胞毒素を抗体に結合体化させるために使用されているリンカー型の例としては、ヒドラゾン、チオエーテル、エステル、ジスルフィドおよびペプチド含有リンカーが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、リソソーム画分の中で低pHにより切断されやすいリンカー、またはプロテアーゼ(例えばカテプシン(例えば、カテプシンB、カテプシンC、カテプシンD)のように腫瘍組織において優先的に発現されるプロテアーゼ)によって切断されやすいリンカーであるように選択され得る。
【0142】
治療剤を抗体に結合体化させる細胞毒素、リンカーおよび方法の型のさらなる考察については、以下もまた参照のこと:Saito,G.ら(2003)Adv.Drug Deliv.Rev.55:199−215;Trail,P.A.ら(2003)Cancer Immunol.Immunother.52: 328−337;Payne,G.(2003)Cancer Cell 3:207−212;Allen,T.M.(2002)Nat.Rev.Cancer 2:750−763;Pastan,l.およびKreitman,R.J.(2002)Curr.Opin.Investig.Drugs 3:1089−1091;Senter,P.D.およびSpringer,C.J.(2001)Adv.Drug Deliv.Rev.53:247−264。
【0143】
本発明の抗体はまた、放射性同位体に結合体化されて、細胞毒性放射性医薬品(放射性免疫結合体(radioimmunoconjugate)とも呼ばれる)を産生し得る。診断的な使用または治療的な使用のために抗体に結合体化され得る放射性同位体の例としては、ヨウ素131、インジウム111、イッテリウム90およびルテチウム177が挙げられるが、これらに限定されない。放射性免疫結合体を調製するための方法は、当該分野において確立されている。放射性免疫結合体の例は市販されており、ZevalinTM(IDEC Pharmaceuticals)およびBexxarTM(Corixa Pharmaceuticals)が挙げられ、そして、類似の方法が、本発明の抗体を使用して放射性免疫結合体を調製するために使用され得る。
【0144】
本発明の抗体結合体は、所定の生物学的応答を修飾するために使用され得、そしてこの薬物部分は、古典的な化学治療剤に限定されるように解釈されるべきではない。例えば、この薬物部分は、所望の生物学的活性を有する、タンパク質またはポリペプチドであり得る。このようなタンパク質としては、例えば、酵素学的に活性な毒素またはその活性フラグメントが挙げられ、例えば、アブリン、リシンA、シュードモナス体外毒素、もしくはジフテリア毒素;腫瘍壊死因子もしくはインターフェロン−γのようなタンパク質;または生物学的反応修飾物質(例えば、リンホカイン、インターロイキン−1(「IL−1」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターロイキン−6(「IL−6」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM−CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G−CSF」)、または他の成長因子)である。
【0145】
治療部分を抗体に結合体化させる技術は、周知であり、例えば、以下を参照のこと:Arnonら、「Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy」、Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy、Reisfeldら(編)、pp.243−56(Alan R.Liss,Inc.1985);Hellstromら、「Antibodies For Drug Delivery」、Controlled Drug Delivery(第2版)、Robinsonら(編)、pp.623−53(Marcel Dekker, Inc.1987);Thorpe、「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review」、Monoclonal Antibodies’84:Biological And Clinical Applications、Pincheraら(編)、pp.475−506(1985);「Analysis,Results,And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy」、Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy,Baldwinら(編)、pp.303−16(Academic Press 1985)、およびThorpeら、「The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody−Toxin Conjugates」、Immunol.Rev.,62:119−58(1982)。
【0146】
(二重特異性分子)
別の局面において、本発明は、本発明の抗IRTA−5抗体またはそのフラグメントを含む、二重特異性分子を特徴とする。本発明の抗体またはその抗原結合部分は、別の機能的分子(例えば、別のペプチドまたはタンパク質)(例えば、別の抗体または受容体に対するリガンド)に誘導体化されるかまたは結合されて、少なくとも2つの異なる結合部位または標的分子に結合する二重特異性分子を産生する。本発明の抗体は、実際に、1つよりも多くの他の機能的分子に誘導体化されるか結合されて、2つよりも多くの異なる結合部位および/または標的分子に結合する多重特異性(multispecific)分子を産生し得る;このような多重特異性分子もまた、本明細書中で使用される用語「二重特異性分子」に含まれる。本発明の二重特異性分子を作製するために、本発明の抗体は、1以上の他の結合分子(例えば、別の抗体、抗体フラグメント、ペプチドまたは結合模倣物)に機能的に結合(例えば、化学結合、遺伝的融合、非共有結合またはその他の結合)されて、二重特異性分子を生じ得る。
【0147】
したがって、本発明は、IRTA−5に対する少なくとも1つの第1結合特異性、および第2の標的エピトープに対する第2の結合特異性を有する、二重特異性分子を含む。本発明の特定の実施形態において、第2の標的エピトープは、Fc受容体(例えば、ヒトFcγRI(CD64)またはヒトFcα受容体(CD89))である。したがって、本発明は、FcγR、FcαRまたはFcεRを発現するエフェクター細胞(例えば、単球、マクロファージまたは多形核細胞(PMN))と、IRTA−5を発現する標的細胞の両方に結合可能な二重特異性分子を含む。これらの二重特異性分子は、IRTA−5発現細胞をエフェクター細胞に対して標的化し、そしてFc受容体媒介性エフェクター細胞活性(例えば、IRTA−5発現細胞の食作用、抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)、サイトカイン放出、またはスーパーオキシドアニオンの産生)を引き起こす。
【0148】
二重特異性分子が多重特異性である本発明の実施形態において、この分子は、抗Fc結合特異性および抗IRTA−5結合特異性に加えて、第3の結合特異性をさらに含み得る。1つの実施形態において、第3の結合特異性は、抗増強因子(anti−enhancement factor)(EF)部分であり、例えば、細胞毒性活性に関与する表面タンパク質に結合し、それにより、標的細胞に対する免疫応答を増大させる分子である。「抗増強因子部分」は、抗体、機能的抗体フラグメント、または所定の分子(例えば、抗原または受容体)に結合するリガンドであり得、そして、それにより、Fc受容体または標的細胞抗原についての結合決定基の効果の増強をもたらす。「抗増強因子部分」は、Fc受容体または標的細胞抗原に結合し得る。あるいは、抗増強因子部分は、第1の結合特異性および第2の結合特異性が結合する実体とは異なる実体に結合し得る。例えば、抗増強因子部分は、細胞毒性T細胞に(例えば、CD2、CD3、CD8、CD28、CD4、CD40、ICAM−1、または標的細胞に対し増大した免疫応答をもたらす他の免疫細胞を介して)結合し得る。
【0149】
1つの実施形態において、本発明の二重特異性分子は、結合特異性として、少なくとも1つの抗体またはその抗体フラグメント(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvまたは一本鎖Fvが挙げられる)を含む。この抗体はまた、Ladnerらの米国特許第4,946,778号(この内容は、明白に参考として援用される)に記載されるように、軽鎖二量体もしくは重鎖二量体、またはその任意の最小のフラグメント(例えば、Fvまたは一本鎖構築物)であり得る。
【0150】
1つの実施形態において、Fcγ受容体の結合特異性は、モノクローナル抗体によって提供され、このモノクローナル抗体の結合は、ヒト免疫グロブリンG(IgG)によってブロックされない。本明細書中で使用される場合、用語「IgG受容体」とは、第1染色体上に配置されている8つのγ鎖遺伝子のいずれかをいう。これらの遺伝子は、計12の膜貫通受容体イソ型または可溶性の受容体イソ型をコードし、これらのイソ型は、3つのFcγ受容体クラスに分類される:FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)およびFcγRIII(CD16)。1つの好ましい実施形態において、このFcγ受容体は、ヒト高親和性FcγRIである。ヒトFcγRIは、72kDaの分子であり、単量体のIgGに対して高い親和性(108〜109M−1)を示す。
【0151】
特定の好ましい抗Fcγモノクローナル抗体の産生および性質決定は、Fangerらにより、国際公開第88/00052号および米国特許第4,954,617号において記載され、これらの教示は、本明細書中で参考として完全に援用される。これらの抗体は、FcγRI、FcγRIIまたはFcγRIIIのエピトープに、受容体のFcγ結合部位とは異なる部位において結合し、したがって、これらの結合は、生理学的レベルのIgGによって実質的にブロックされない。本発明において有用である特異的抗FcγRI抗体は、mAb22、mAb32、mAb44、mAb62およびmAb197である。mAb32を産生するハイブリドーマは、American Type Culture Collectionから入手可能な、ATCC受託番号HB9469である。他の実施形態において、抗Fcγ受容体抗体は、モノクローナル抗体22のヒト化形態(H22)である。H22抗体の産生および性質決定は、Graziano,R.F.ら(1995)J.Immunol 155(10):4996−5002および国際公開第94/10332号において記載される。H22産生細胞株は、American Type Culture Collectionに、HA022CL1の名称で寄託され、受託番号CRL 11177を有する。
【0152】
なお他の好ましい実施形態において、Fc受容体に対する結合特異性は、ヒトIgA受容体(例えば、Fc−α受容体(FcαRI(CD89)))に対して結合する抗体によって提供される結合は、好ましくはヒト免疫グロブリンA(IgA)によってブロックされない。用語「IgA受容体」は、第19染色体上に配置される1つのα遺伝子(FcαRI)の遺伝子産物を含むことを意図する。この遺伝子は、55〜110kDaの選択的スプライシングによる膜貫通イソ形態を数個コードすることが知られている。FcαRI(CD89)は、単球/マクロファージ、好酸顆粒球および好中顆粒球の上に構成的に発現されるが、非エフェクター細胞集団上には発現されない。FcαRIは、IgA1およびIgA2の両方に対して中程度の親和性(約5×107M−1)を有し、この親和性は、G−CSFまたはGM−CSFのようなサイトカインに対して曝される際に上昇する(Morton,H.C.ら(1996)Critical Reviews in Immunology 16:423−440)。A3、A59、A62およびA77として同定され、IgAリガンド結合ドメインの外でFcαRIに結合する4種のFcαRI特異的モノクローナル抗体は、記載されている(Monteiro,R.C.ら(1992)J.Imniunol.148:1764)。
【0153】
FcαRIおよびFcγRIは、本発明の二重特異性分子における使用のための好ましいトリガー受容体である。何故なら、FcαRIおよびFcγRIは、(1)主に免疫エフェクター細胞(例えば、単球、PMN、マクロファージおよび樹状細胞)上で発現され、(2)高レベル(例えば、1細胞あたり5,000〜100,000)で発現され、(3)細胞毒性活性(例えば、ADCC、食作用)のメディエータであり、(4)抗原(自身を標的とする自己抗原を含む)の抗原提示の増強を媒介するからである。
【0154】
ヒトモノクローナル抗体が好ましいが、本発明の二重特異性分子において使用され得る他の抗体は、マウスモノクローナル抗体、キメラモノクローナル抗体およびヒト化モノクローナル抗体である。
【0155】
本発明の二重特異性分子は、構成部分(constituent)結合特異性(例えば、抗FcR結合特異性および抗IRTA−5結合特異性)を当該分野で公知の方法を用いて結合体化することによって調製され得る。例えば、二重特異性分子の各結合特異性は、別々に産生され、次いで、互いに結合体化され得る。この結合特異性がタンパク質またはペプチドである場合、種々のカップリング剤または架橋剤が、共有結合性結合体化のために使用され得る。架橋剤の例としては、プロテインA、カルボジイミド、N−スクシンイミジル−S−アセチル−チオ酢酸(SATA),5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)、o−フェニレンジマレイミド(oPDM)、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、およびスルホスクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸塩(sulfo−SMCC)が挙げられる(例えば、Karpovskyら(1984)J.Exp.Med.160:1686;Liu,MAら(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:8648を参照)。他の方法としては、以下に記載される方法が挙げられる:Paulus(1985)Behring Ins.Mitt.第78巻、118−132;Brennanら(1985)Science 229:81−83、およびGlennieら(1987)J.Immunol.139:2367−2375。好ましい結合体化剤は、SATAおよびsulfo−SMCCであり、両方とも、Pierce Chemical Co.(Rockford,IL)から入手可能である。
【0156】
結合特異性が抗体である場合、これらは、2つの重鎖のC末端ヒンジ領域のスルフヒドリル結合を介して結合体化され得る。特に好ましい実施形態において、このヒンジ領域は、結合体化の前に奇数(好ましくは、1つ)のスルフヒドリル残基を含むように改変される。
【0157】
あるいは、両結合特異性は、同じベクターにコードされ得、そして同じ宿主細胞において発現され、そして集合される。この方法は、二重特異性分子がmAb×mAb融合タンパク質、mAb×Fab融合タンパク質、Fab×F(ab’)2融合タンパク質またはリガンド×Fab融合タンパク質である場合に、特に有用である。本発明の二重特異性分子は、1つの一本鎖抗体および1つの結合決定基を含む一本鎖分子であり得るか、または、2つの結合決定基を含む一本鎖二重特異性分子であり得る。二重特異性分子は、少なくとも2つの1本鎖分子を含み得る。二重特異性分子を調製するための方法は、例えば、米国特許第5,260,203号;同第5,455,030号;同第4,881,175号;同第5,132,405号;同第5,091,513号;同第5,476,786号;同第5,013,653号;同第5,258,498号;および同第5,482,858号において記載される。
【0158】
二重特異性分子のその特異的標的への結合は、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、FACS分析、バイオアッセイ(例えば、増殖阻害)、またはウェスタンブロットアッセイによって、確認され得る。これらのアッセイの各々は、一般に、特に目的とするタンパク質−抗体複合体の存在を、その目的の複合体に特異的な標識試薬(例えば、抗体)を使用することによって、検出する。例えば、FcR−抗体複合体は、例えば、抗体−FcR複合体を認識しかつこれに特異的に結合する酵素連結抗体または酵素連結抗体フラグメントを使用して、検出され得る。あるいは、FcR−抗体複合体は、種々の他のイムノアッセイのいずれかを使用して検出され得る。例えば、この抗体は、放射標識され得、そして、ラジオイムノアッセイ(RIA)において使用され得る(例えば、Weintraub,B.,Principles of Radioimmunoassays、Seventh Training Course on Radioligand Assay Techniques、The Endocrine Society、1986年3月を参照。これは、本明細書中で参考として援用される)。放射性同位体は、γカウンターもしくはシンチレーションカウンターの使用のような手段またはオートラジオグラフィーによって検出され得る。
【0159】
(薬学的組成物)
別の局面において、本発明は、例えば、本発明の1種のモノクローナル抗体もしくはモノクローナル抗体の組み合わせまたはこれらの抗原結合部分を含有し、薬学的に受容可能なキャリアと共に処方されているような、組成物(例えば、薬学的組成物)を提供する。このような組成物は、本発明の1種の抗体もしくは(例えば、2種以上の異なる)抗体の組み合わせ、または免疫結合体あるいは二重特異性分子を含有し得る。例えば、本発明の薬学的組成物は、標的抗原上の異なったエピトープに結合するかまたは相補的活性を有する抗体(または免疫結合体もしくは二重特異性分子)の組み合わせを含有し得る。
【0160】
本発明の薬学的組成物はまた、併用治療において、すなわち、他の薬剤と組み合わせて、投与され得る。例えば、併用治療は、少なくとも1種の他の抗炎症剤または免疫抑制剤と組み合わせて、本発明の抗IRTA−5抗体を含有し得る。併用治療において使用され得る治療剤の例は、以下の本発明の抗体の使用の節においてより詳細に記載される。
【0161】
本明細書中で使用される場合、「薬学的に受容可能なキャリア」としては、任意かつ全ての溶媒、分散媒体、コーティング剤、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが挙げられ、これらは、生理学的に適合性である。好ましくは、このキャリアは、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、非経口投与、脊髄投与または表皮投与(例えば、注射または輸液による)に適している。投与経路に依存して、活性化合物(すなわち、抗体、免疫結合体または二重特異性分子)は、この化合物を不活性化し得る酸および他の天然条件の作用からこの化合物を保護するために、物質内に覆われ得る。
【0162】
本発明の薬学的化合物は、1種以上の薬学的に受容可能な塩を含有し得る。「薬学的に受容可能な塩」とは、親化合物の所望の生物学的活性を保持し、かつ、いかなる望ましくない毒性の効果をも与えない塩をいう(例えば、Berge,S.M.ら(1977)J.Pharm.Sci.66:1−19を参照)。このような塩の例としては、酸付加塩および塩基付加塩が挙げられる。酸付加塩としては、非毒性無機酸(例えば、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸など)、ならびに非毒性有機酸(例えば、脂肪族一カルボン酸、脂肪族二カルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族スルホン酸および芳香族スルホン酸など)、に由来する酸付加塩が挙げられる。塩基付加塩としては、アルカリ土類金属(例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなど)、ならびに非毒性有機アミン(例えば、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、N−メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカインなど)に由来する塩基付加塩が挙げられる。
【0163】
また、本発明の薬学的組成物としては、薬学的に受容可能な抗酸化物質が挙げられる。薬学的に受容可能な抗酸化物質の例としては、以下が挙げられる:(1)水溶性抗酸化物質(例えば、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど);(2)油溶性抗酸化物質(例えば、アスコルビン酸パルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α−トコフェロールなど);ならびに(3)金属キレート剤(例えば、クエン酸、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸など)。
【0164】
本発明の薬学的組成物中で使用され得る適切な水性キャリアおよび非水性キャリアの例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびその適切な混合物、植物油(例えば、オリーブ油)、および注射可能な有機エステル(例えば、エチルオレエート)が挙げられる。例えば、コーティング物質(例えば、レシチン)の使用、分散の場合における所望の粒子サイズの維持、そして界面活性剤の使用により、適正な流動性が維持され得る。
【0165】
これらの組成物はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散化剤のようなアジュバントをも含有し得る。微生物の存在の防止は、滅菌手順(前出)および種々の抗細菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸など)の含有のどちらによっても、達成され得る。等張剤(例えば、糖、塩化ナトリウムなど)が、組成物中に含有されることもまた、望ましくあり得る。さらに、注射可能薬学的形態の吸収の延長は、吸収を遅延させる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)の含有によってもたらされ得る。
【0166】
薬学的に受容可能なキャリアとしては、無菌水溶液または無菌分散剤、および無菌の注射可能溶液または注射可能分散剤の即時調製のための無菌粉末、が挙げられる。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当該分野で公知である。任意の従来の媒体または薬剤が活性化合物と不適合性である範囲を除き、その媒体または薬剤の本発明の薬学的組成物における使用が企図される。補充活性化合物もまた、この組成物中に組み込まれ得る。
【0167】
治療組成物は、代表的に無菌でなければならず、かつ製造および保管の条件下で安定でなければならない。この組成物は、液剤、マイクロエマルジョン、リポソームまたは高い薬物濃度に適した他の規則正しい構造として処方され得る。このキャリアは、溶媒または分散媒体であり、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)、およびこれらの適切な混合物が挙げられる。例えば、コーティング物質(例えば、レシチン)の使用、分散剤の場合における所望の粒子サイズの維持、そして界面活性剤の使用により、適正な流動性が維持され得る。多くの場合、例えば、糖、ポリアルコール(例えば、マンニトール、ソルビトール)または塩化ナトリウムのような、等張剤を組成物中に含有することが好ましい。注射可能組成物の吸収の延長は、吸収を遅延させる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)をその組成物中に含有させることによってもたらされ得る。
【0168】
無菌注射可能溶液は、所望される場合には上で列挙した成分の1種または組み合わせと共に、活性化合物を所望の量で適切な溶媒中に組み込み、その後、精密濾過滅菌が行われることによって調製され得る。一般に、分散剤は、基礎の分散媒体および所望の(上で列挙した)他の成分を含有する無菌のビヒクル中に、活性化合物を組み込むことによって調製される。無菌注射可能溶液の調製のための無菌粉末の場合、好ましい調製の方法は、真空乾燥および凍結乾燥(freeze−drying)(凍結乾燥(lyophilization))であり、これらは、活性成分および任意のさらなる所望の成分の事前に濾過滅菌した溶液から、活性成分および任意のさらなる所望の成分の粉末を生じる。
【0169】
キャリア物質と混合されて単回投与形態を作製し得る活性成分の量は、処置される被験体および特定の投与様式に依存して変化し得る。キャリア物質と混合されて単回投与形態を作製し得る活性成分の量は、一般に、治療効果をもたらす組成物の量である。一般に、この量は、100%のうち約0.01%から約99%の活性成分の範囲にわたり、好ましくは、約0.1%から約70%、最も好ましくは約1%から約30%の範囲にわたる活性成分であり、薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせられる。
【0170】
投薬レジメンは、最適な所望される応答(例えば、治療応答)を提供するように調整される。例えば、単回のボーラスが投与されてもよく、数回に分けた用量が経時的に投与されてもよく、または治療状況の緊急事態により示されるように用量は比例的に減少され得るか、もしくは増加され得る。非経口組成物を投与単位形態で処方することは、投与の容易さおよび用量の均等性のために、特に有益である。本明細書中で使用される投与単位形態は、処置される被験体についての1回の用量に適した、物理的に別個の単位をいう。各単位は、所望の治療効果をもたらすように計算された所定の量の活性化合物を、所望の薬学的キャリアと共に含有する。本発明の投与単位形態についての詳細は、(a)活性化合物の独特の特性および達成される特定の治療効果、ならびに(b)個体における感受性の処置のためのそのような活性化合物を合成する分野における固有の限定によって指定され、そして直接これに依存する。
【0171】
抗体の投与について、用量は、宿主の体重の約0.0001mg/kgから100mg/kgまで、より普通には、0.01mg/kgから5mg/kgまでの範囲に及ぶ。例えば、用量は、0.3mg/kg体重、1mg/kg体重、3mg/kg体重、5mg/kg体重または10mg/kg体重、または1〜10mg/kgの範囲であり得る。例示的な処置レジームは、1週間に1回の投与、2週間に1回の投与、3週間に1回の投与、4週間に1回の投与、1ヶ月に1回の投与、3ヶ月に1回の投与、または3〜6ヶ月に1回の投与を伴う。本発明の抗IRTA−5抗体の好ましい投薬レジメンは、静脈内投与を介した1mg/kg体重または3mg/kg体重でありを含み、この抗体は、以下の投薬計画のうちの1つを用いて与えられる:(i)6回の投与について4週間毎、次いで、3ヶ月毎;(ii)3週間毎;(iii)1回に3mg/kg体重、その後、3週間毎に1mg/kg。
【0172】
ある方法において、異なる結合特異性を有する2種以上のモノクローナル抗体が同時に投与され、この場合の投与される各抗体の用量は示された範囲内である。抗体は、通常、複数の機会で投与される。単回投与の間の間隔は、例えば、毎週、毎月、3ヶ月毎または毎年であり得る。間隔はまた、患者における標的抗原に対する抗体の血液レベルの測定により示されるように、不規則であり得る。ある方法において、用量は、血漿抗体濃度が約1〜1000μg/mlに達するように調整され、ある方法においては約25〜300μg/mlに達するように調整される。
【0173】
あるいは、抗体は、徐放性処方物として投与され得、この場合、より少ない頻度の投与しか必要とされない。用量および頻度は、患者における抗体の半減期に依存して変化する。一般に、ヒト抗体は、最も長い半減期を示し、ヒト化抗体、キメラ抗体および非ヒト抗体と続く。投与の用量および頻度は、その処置が予防であるか治療であるかに依存して変り得る。予防的適用においては、比較的低い用量が、長期間にわたり、比較的頻繁でない間隔で投与される。ある患者群は、その人生の最後まで処置を受け続ける。治療的適用の場合、その疾患の進行が軽減するかまたは止まるまで、そして好ましくは、患者が部分的または完全な疾患の症状の改善を示すまで、比較的高用量が比較的短い間隔で、時々必要とされる。その後、患者は、予防レジメンを投与され得る。
【0174】
本発明の薬学的組成物中の活性成分の実際の投薬レベルは、患者に毒性であることなく特定の患者、組成および投与様式について所望の治療応答を達成するために有効な量の活性成分の量を得られるように、変り得る。選択された投薬レベルは、種々の薬物速度論の因子に依存し、この因子としては、使用される本発明の特定の組成物の活性、またはそのエステルの活性、その塩の活性もしくはそのアミドの活性、投与経路、投与時間、使用される特定の化合物の排出速度、処置の期間、他の薬物、使用される特定の組成物と併用して使用される化合物および/もしくは物質、処置される患者の年齢、処置される患者の性別、処置される患者の体重、処置される患者の状態、処置される患者の全身的な健康および処置される患者の以前の病歴、ならびに医療分野で周知の同様の因子が挙げられる。
【0175】
本発明の抗IRTA−5抗体の「治療的に有効な用量」は、好ましくは、疾患症状の重篤度における軽減、疾患症状のない期間の頻度および持続期間の増大、または疾患の苦痛に起因する欠陥(impairment)または障害(disability)の予防をもたらす。例えば、IRTA−5+腫瘍の処置について、「治療的に有効な用量」は、好ましくは、細胞増殖または腫瘍増殖を、未処置の患者と比較して、好ましくは少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約40%、さらにより好ましくは少なくとも約60%、なおより好ましくは少なくとも約80%阻害する。腫瘍増殖を阻害する化合物の能力は、ヒト腫瘍における効力を予測し得る動物モデル系において評価され得る。あるいは、組成物のこの特性は、化合物の阻害の能力を試験すること(例えば、医師に公知であるアッセイによる阻害のインビトロの試験)により、評価され得る。治療的に有効な用量の治療化合物は、腫瘍の大きさを縮小させ得るか、または他に、被験体における症状を改善させ得る。当業者は、被験体の大きさ、被験体の症状の重篤度、および選択した特定の組成または投与経路のような因子に基づき、この量を決定し得る。
【0176】
本発明の組成物は、当該分野で公知の種々のうちの1つ以上の方法を用い、1つ以上の投与経路を介して投与され得る。当業者に理解されるように、投与の経路および/または様式は、所望する結果に基づいて変化する。本発明の抗体の好ましい投与経路は、静脈内投与経路、筋肉内投与経路、皮内投与経路、腹腔内投与経路、皮下投与経路、脊髄投与経路または他の非経口投与経路(例えば、注射または輸液による)である。語句「非経口投与」は、本明細書中で使用される場合、腸内投与および局所投与以外の投与様式(通常、注射による投与様式)を意味し、限定されないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、関節包内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管(transtracheal)、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内(intrasternal)の注射および輸液が挙げられる。
【0177】
あるいは、本発明の抗体は、局所投与経路、表皮投与経路または粘膜投与経路のような非経口ではない経路(non−parenteral route)(例えば、鼻腔内投与経路、経口投与経路、経膣投与経路、直腸投与経路、舌下投与経路または局所投与経路)介して投与され得る。
【0178】
活性化合物は、その化合物を急速な放出から保護するキャリアと共に、例えば制御放出処方物(移植物、経皮パッチおよび微小カプセル送達系を含む)として調製され得る。生分解性かつ生物適合性のポリマー(例えば、酢酸エチレンビニル、ポリ無水物類、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル類、およびポリ乳酸)が、使用され得る。このような処方物の調製のための多くの方法は、特許されているか、または一般に当該分野で公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems、J.R.Robinson編、Marcel Dekker,Inc.,New York,1978を参照。
【0179】
治療組成物は、当該分野で公知の医療デバイスにより投与され得る。例えば、好ましい実施形態において、本発明の治療組成物は、米国特許第5,399,163号;同第5,383,851号;同第5,312,335号;同第5,064,413号;同第4,941,880号;同第4,790,824号;または同第4,596,556号において開示されるデバイスのような、針なし皮下注射デバイスによって投与され得る。本発明に有用な周知の移植物およびモジュールの例としては、以下が挙げられる:米国特許第4,487,603号(制御された速度で医薬を分散させるための、移植可能な微小注入ポンプを開示する);米国特許第4,486,194号(皮膚を通した医薬の投与のための治療デバイスを開示する);米国特許第4,447,233号(正確な注入速度で医薬を送達するための注入ポンプを開示する);米国特許第4,447,224号(連続的な薬物送達のための可変流量移植可能注入装置を開示する)米国特許第4,439,196号(多チャンバー区画を有する浸透薬物送達系を開示する);ならびに米国特許第4,475,196号(浸透薬物送達系を開示する)。これらの特許は、本明細書中で参考として援用される。多くの他のこのような移植物、送達システムおよびモジュールが、当業者に公知である。
【0180】
特定の実施形態において、本発明のヒトモノクローナル抗体は、インビボでの適正な分布を確実にするように処方され得る。例えば、血液脳関門(BBB)は、親水性の高い化合物の多くを排除する。本発明の治療化合物が(所望される場合に)BBBを横切ることを確実にするために、本発明の治療化合物は、例えば、リポソーム内に処方され得る。リポソームの製造方法については、例えば、米国特許第4,522,811号;同第5,374,548号;および同第5,399,331号を参照。リポソームは、特定の細胞または組織に選択的に輸送され、標的薬物送達を増強する、1以上の部分を含み得る(例えば、V.V.Ranade(1989)J.Clin.Pharmacol.29:685)。例示的な標的化部分(targeting moiety)は、葉酸塩またはビオチン(例えば、Lowらに対する米国特許第5,416,016号を参照);マンノシド(Umezawaら(1988)Biochem.Biophys.Res.Commun.153:1038);抗体(P.G.Bloemanら(1995)FEBS Lett.357:140;M.Owaisら(1995)Antimicrob.Agents Chemother.39:180);界面活性剤プロテインA受容体(Briscoeら(1995)Am.J.Physiol.1233:134);p120(Schreierら(1994)J.Biol.Chem.269:9090)が挙げられる。また、K.Keinanen;M.L.Laukkanen(1994)FEBS Lett.346:123;J.J.Killion;I.J.Fidler(1994)Immunomethods 4:273も参照。
【0181】
(本発明の使用および方法)
本発明の抗体(特にヒト抗体)、抗体組成物および方法は、多くのインビトロおよびインビボの診断有用性および治療有用性を有し、IRTA−5媒介性障害の診断および治療に関連する。例えば、これらの分子は、培養中の細胞、インビトロまたはエキソビボで、またはヒト被験体に(例えば、インビボで)投与され、種々の障害を処置、予防および診断し得る。本明細書中で使用される場合、用語「被験体」は、ヒトおよび非ヒト動物を含むことを意味する。非ヒト動物は、全ての脊椎動物(例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ニワトリ、両生類および爬虫類のような、哺乳動物および非哺乳動物)を含む。好ましい被験体としては、IRTA−5活性よって媒介される障害を有するヒト患者が挙げられる。異常なIRTA−5発現に関連する障害を有するヒト患者を処置するために、本方法は特に適している。IRTA−5に対する抗体が、別の薬剤と共に投与される場合、この2つは、どちらが先に投与されてもよく、または同時に投与されてもよい。
【0182】
本発明の抗体が、IRTA−1、IRTA−2、IRTA−3およびIRTA−4と比較してIRTA−5に対して特異的に結合することを考慮すれば、本発明の抗体は、細胞の表面上でのIRTA−5発現を特異的に検出するために使用され得、そしてさらに、IRTA−5を免疫親和性精製を介して精製するために使用され得る。
【0183】
さらに、種々の腫瘍細胞上でのIRTA−5の発現を考慮すれば、本発明のヒト抗体、抗体組成物および方法は、腫瘍形成性の障害(例えば、IRTA−5を発現する腫瘍細胞の存在により特徴付けられる障害であって、例えば、バーキットリンパ腫、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、皮膚T細胞リンパ腫、結節性核切れ込み小細胞型リンパ腫、リンパ性リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、レナートリンパ腫、免疫芽球性リンパ腫、T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、成人T細胞リンパ腫(T−ALL)、胚中心細胞性/中心細胞性(entroblastic/centrocytic)(cb/cc)濾胞性リンパ腫癌、B系統のびまん性大細胞型リンパ腫、血管免疫芽球性リンパ節症(AILD)様のT細胞リンパ種、HIV関連の体腔ベースのリンパ腫(HIV associated body cavity based lymphoma)、胎生期癌、鼻咽頭の未分化癌腫(例えば、シュミンケ腫瘍(Schmincke’s tumor))、キャッスルマン病、カポージ肉腫および他のB細胞リンパ腫)を有する被験体を処置するために使用され得る。
【0184】
1つの実施形態において、本発明の抗体(例えば、ヒトモノクローナル抗体、多重特異性分子および二重特異性分子ならびに組成物)は、IRTA−5のレベルまたはIRTA−5をその膜表面上に含む細胞のレベルを検出するために使用され得、このレベルは特定の疾患症状と関連し得る。あるいは、この抗体は、IRTA−5機能を阻害するかまたはブロックするために使用され得、この使用は、特定の疾患症状の予防および改善に関連し得る(従って、IRTA−5は疾患のメディエータとして関連付けられる)。これは、サンプルおよびコントロールサンプルを、抗IRTA−5抗体にその抗体とIRTA−5との間の複合体を形成させる条件下で接触させることによって達成され得る。抗体とIRTA−5との間に形成されるあらゆる複合体が検出され、そしてサンプルとコントロールとが比較される。
【0185】
別の実施形態において、本発明の抗体(例えば、ヒト抗体、多重特異性分子および二重特異性分子ならびに組成物)は、治療的使用または診断的使用に関連した結合活性について、まずインビトロで試験され得る。例えば、本発明の組成物は、以下の実施例において記載されるフローサイトメトリーアッセイを用いて試験され得る。
【0186】
本発明の抗体(例えば、ヒト抗体、多重特異性分子および二重特異性分子、免疫結合体ならびに組成物)は、IRTA−5関連疾患の治療および診断におけるさらなる有用性を有する。例えば、ヒトモノクローナル抗体、多重特異性分子または二重特異性分子ならびに免疫結合体は、インビボまたはインビトロで、IRTA−5を発現する細胞の増殖を阻害する活性、および/もしくはIRTA−5を発現する細胞を殺す活性、ヒトエフェクター細胞の存在下で、IRTA−5を発現する細胞の食作用またはADCCを媒介する活性、または、IRTA−5リガンドのIRTA−5への結合をブロックする活性という生物活性のうちの1つ以上を誘発するために使用され得る。
【0187】
特定の実施形態において、上記抗体(例えば、ヒト抗体、多重特異性分子および二重特異性分子ならびに組成物)は、インビボで、種々のIRTA−5関連疾患を処置するか、予防するかまたは診断するために使用される。IRTA−5関連疾患の例としては、とりわけ、癌、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、未分化大細胞型リンパ腫(ALCL)、皮膚T細胞リンパ腫、結節性核切れ込み小細胞型リンパ腫、リンパ性リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、レナートリンパ腫、免疫芽球性リンパ腫、T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、成人T細胞リンパ腫(T−ALL)、胚中心細胞性/中心細胞性(entroblastic/centrocytic)(cb/cc)濾胞性リンパ腫癌、B系統のびまん性大細胞リンパ腫、血管免疫芽球性リンパ節症(AILD)様のT細胞リンパ種、HIV関連の体腔ベースのリンパ腫(HIV associated body cavity based lymphoma)、胎生期癌、鼻咽頭の未分化癌腫(例えば、シュミンケ腫瘍(Schmincke’s tumor))、キャッスルマン病、カポージ肉腫および他のB細胞リンパ腫が挙げられる。
【0188】
本発明の抗体組成物(例えば、ヒトモノクローナル抗体、多重特異性分子および二重特異性分子ならびに免疫結合体)のインビボおよびインビトロの適切な投与経路は、当該分野で周知であり、当業者によって選択可能である。例えば、抗体組成物は、注射(例えば、静脈内注射または皮下注射)によって投与され得る。使用される分子の適切な用量は、被験体の年齢および体重、ならびに抗体組成物の濃度および/または処方に依存する。
【0189】
前に記載した通り、本発明のヒト抗IRTA−5抗体は、1種または他のより多くの治療剤(例えば、細胞毒性薬剤、放射性毒性薬剤または免疫抑制剤)と同時投与され得る。この抗体は、この薬剤と(免疫複合体として)連結され得るか、または、上記薬剤と別々に投与され得る。後者の場合(別々の投与の場合)、抗体は、薬剤より前、後または同時に投与され得るか、他の公知の治療(例えば、抗ガン治療(例えば、放射線照射))と同時投与され得る。このような治療剤としては、とりわけ、抗腫瘍薬剤(例えば、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、硫酸シスプラチンブレオマイシン、カルムスチン、クロラムブシルおよびシクロホスファミドヒドロキシ尿素)が挙げられ、これらは、これらのみでは、患者に対して毒性であるかまたは準毒性であるレベルでのみ、有効である。シスプラチンは、100mg用量として4週間毎に1回静脈投与され、アドリアマイシンは、60〜75mg/mlとして21日間毎に1回静脈投与される。本発明のヒト抗IRTA−5抗体またはその抗原結合フラグメントの化学治療剤との同時投与は、異なったメカニズムを介して作用する2種の抗癌剤(ヒト腫瘍細胞に対する細胞毒性効果を生じる)を提供する。このような同時投与は、薬物に対する耐性の発生に起因する問題または腫瘍細胞を抗体に対し非反応性にする腫瘍細胞の抗原性の変化に起因する問題を解決し得る。
【0190】
標的特異的エフェクター細胞(例えば、本発明の組成物(例えば、ヒト抗体、多重特異性分子および二重特異性分子)に関連するエフェクター細胞)はまた、治療剤として使用され得る。標的化のためのエフェクター細胞は、ヒト白血球(例えば、マクロファージ、好中球または単球)であり得る。他の細胞としては、好酸球、ナチュラルキラー細胞およびIgG受容体またはIgA受容体を有する他の細胞が挙げられる。所望される場合、エフェクター細胞は、処置される被験体から得られ得る。標的特異的エフェクター細胞は、生理学的に受容可能な溶液中の細胞の懸濁液として投与され得る。投与される細胞の数は、108〜109程度であり得るが、治療目的によって変化し得る。一般に、この量は、標的細胞(例えば、IRTA−5を発現する腫瘍細胞)での局在化を得るため、食作用による細胞殺傷を達成させるのに十分である。投与経路もまた、変化し得る。
【0191】
標的特異的エフェクター細胞を用いた治療は、標的細胞の除去のための他の技術と組み合わせて実施され得る。例えば、本発明の組成物(例えば、ヒト抗体、多重特異性分子および二重特異性分子)および/またはこれらの組成物を備えたエフェクター細胞を用いる抗腫瘍治療が、化学療法と組み合わせて使用され得る。さらに、組み合わせ免疫治療は、2つの異なる細胞毒性エフェクター集団を腫瘍細胞排除に指向させるために使用され得る。例えば、抗FcγRIまたは抗CD3に連結された抗IRTA−5抗体が、IgG受容体またはIgA受容体に特異的な結合剤と共に使用され得る。
【0192】
本発明の二重特異性分子および多重特異性分子は、例えば細胞表面上の受容体のキャッピングおよび除去により、FcγRまたはエフェクター細胞上のFcγRレベルを調節するためにもまた、使用され得る。抗Fc受容体の混合物もまた、この目的のために使用され得る。
【0193】
補体結合部位(例えば、補体に結合する、IgG1由来の部分、IgG2由来の部分もしくはIgG3由来の部分またはIgM由来の部分)を有する本発明の組成物(例えば、ヒト抗体、多重特異性分子および二重特異性分子ならびに免疫結合体)もまた、補体の存在下で使用され得る。1つの実施形態において、本発明の結合剤および適切なエフェクター細胞による標的細胞を含む細胞集団のエキソビボ処置は、補体または補体を含有する血清の添加により、補強され得る。本発明の結合剤で被膜された標的細胞の食作用は、補体タンパク質の結合により改善され得る。別の実施形態において、本発明の組成物(例えば、ヒト抗体、多重特異性分子および二重特異性分子)で被膜された標的細胞はまた、補体によって溶解され得る。なお別の実施形態において、本発明の組成物は、補体を活性化しない。
【0194】
本発明の組成物(例えば、ヒト抗体、多重特異性分子および二重特異性分子)はまた、補体と共に投与され得る。したがって、ヒト抗体、多重特異性分子もしくは二重特異性分子と、血清または補体とを含有する組成物は、本発明の範囲内にある。これらの組成物は、補体が上記ヒト抗体、多重特異性分子または二重特異性分子の近傍に位置するという点で、有利である。あるいは、本発明のヒト抗体、多重特異性分子または二重特異性分子と、上記血清または補体とは、別々に投与され得る。
【0195】
本発明の抗体組成物(例えば、ヒト抗体、多重特異性分子もしくは二重特異性分子または免疫結合体)および使用説明書を含むキットもまた、本発明の範囲内にある。このキットは、1種以上のさらなる試薬(例えば、免疫抑制試薬、細胞毒性薬剤または放射性毒性薬剤)、または1種以上のさらなる本発明のヒト抗体(例えば、第1のヒト抗体とは異なるIRTA−5抗原のエピトープに結合する相補的活性を有するヒト抗体)をさらに含み得る。
【0196】
したがって、本発明の抗体組成物で処置される患者は、(本発明のヒト抗体の投与の前、これと同時、または後に)ヒト抗体の治療効果を増強または亢進する別の治療剤(例えば、細胞毒性薬剤または放射性薬剤)をさらに投与され得る。
【0197】
他の実施形態において、被験体は、FcγまたはFcγ受容体の発現または活性を調節(例えば、増強または阻害)する薬剤で(例えばサイトカインで被験体を処置することにより)さらに処置され得る。多重特異性分子での処置の間の投与のために好ましいサイトカインとしては、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、インターフェロン−γ(IFN−γ)、および腫瘍壊死因子(TNF)が挙げられる。
【0198】
本発明の組成物(例えば、ヒト抗体、多重特異性分子および二重特異性分子)はまた、FcγRまたはIRTA−5を発現する細胞を標識するため、例えば、これらの細胞を標識するために使用され得る。このような使用のために、結合剤は、検出され得る分子に結合され得る。したがって、本発明は、Fc受容体(例えば、FcγRまたはIRTA−5)を発現する細胞をエキソビボまたはインビトロで位置決定するための方法を提供する。検出可能な標識は、例えば、放射性同位体、蛍光化合物、酵素または酵素補因子であり得る。
【0199】
特定の実施形態において、本発明は、サンプル中のIRTA−5抗原の存在、またはIRTA−5抗原の量を測定する方法を提供し、これらの方法は、サンプルおよびコントロールサンプルを、IRTA−5と特異的に結合するヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合部分と、その抗体またはその部分とIRTA−5との間の複合体の形成が可能な条件下で接触させる工程を包含する。次いで、複合体の形成が検出され、ここで、コントロールサンプルと比較してサンプルとの間で異なる複合体形成は、サンプル中のIRTA−5抗原の存在を示す。
【0200】
他の実施形態において、本発明は、被験体に上述のヒト抗体を投与することによって、被験体におけるIRTA−5媒介性障害(例えば、ガン、非ホジキン性リンパ腫、バーキットリンパ腫、未分化大細胞型リンパ腫(ALCL)、皮膚T細胞リンパ腫、結節性核切れ込み小細胞型リンパ腫、リンパ性リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、レナートリンパ腫、免疫芽球性リンパ腫、T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、成人T細胞リンパ腫(T−ALL)、胚中心細胞性/中心細胞性(entroblastic/centrocytic)(cb/cc)濾胞性リンパ腫癌、B系統のびまん性大細胞リンパ腫、血管免疫芽球性リンパ節症(AILD)様のT細胞リンパ種、HIV関連の体腔ベースのリンパ腫(HIV associated body cavity based lymphoma)、胎生期癌、鼻咽頭の未分化癌腫(例えば、シュミンケ腫瘍(Schmincke’s tumor))、キャッスルマン病、カポージ肉腫および他のB細胞リンパ腫)を処置するための方法を提供する。このような抗体およびその誘導体は、特定の障害に関連する、IRTA−5誘導性活性(例えば、増殖および分化)を阻害するために使用され得る。上記抗体をIRTA−5と接触させることにより(例えば、抗体を被験体に投与することにより)、IRTA−5がこのような活性を誘導する能力が阻害され、したがって、関連の障害が処置される。上記抗体組成物は、単独で投与され得るか、またはこの抗体組成物と組み合わせて作用するか、もしくは抗体組成物と相乗的に作用して作用する別の治療剤(例えば、細胞毒性薬剤または放射性毒性薬剤)と共に投与され得、IRTA−5媒介性疾患を処置または予防し得る。
【0201】
なお別の実施形態において、本発明の免疫結合体は、化合物(例えば、治療剤、標識、サイトカイン、放射性毒素、免疫抑制剤など)を上記抗体と連結することにより、このような化合物をIRTA−5細胞表面受容体を有する細胞に対して標的化するために使用され得る。したがって、本発明は、IRTA−5を発現する細胞を(例えば、放射性同位体、蛍光化合物、酵素または酵素補因子のような検出可能標識を用いて)エキソビボまたはインビボで位置決定するための方法もまた、提供する。あるいは、この免疫結合体は、IRTA−5に対して細胞毒素または放射性毒素を標的化することにより、IRTA−5細胞表面受容体を有する細胞を殺すために使用され得る。
【0202】
本発明は、以下の実施例においてさらに説明される。これらの実施例は、さらなる限定として解釈されるべきではない。全ての図面の内容および本出願を通して引用された全ての参考文献、特許および公開された特許出願は、本明細書中に、明白に参考として援用される。
【実施例】
【0203】
(実施例1:IRTA5に対するヒトモノクローナル抗体の産生)
(抗原)
異種ポリペプチドに結合したIRTA5の細胞外ドメインから構成される融合タンパク質を、標準的組換え方法によって産生し、免疫のための抗原として使用した。
【0204】
(トランスジェニックHuMab Mouse(登録商標))
IRTA5に対する完全ヒトモノクローナル抗体を、トランスジェニックHuMab Mouse(登録商標)のHco7系統由来のマウス(ヒト抗体遺伝子を発現する)を用いて調製した。このマウス系統において、内在性マウスκ軽鎖遺伝子はChenら(1993)EMBO J.12:811−820に記載されるようにホモ接合的に分裂されており、そして内在性マウス重鎖遺伝子は国際公開第01/09187号の実施例1に記載されるようにホモ接合的に分裂されている。その上さらに、このマウス系統は、Fishwildら(1996)Nature Biotechnology 14:845−851に記載されるようなヒトκ軽鎖導入遺伝子KCo5を保有し、そして米国特許第5,545,806号、同第5,625,825号および同第5,545,807号に記載されるようなヒト重鎖導入遺伝子HCo7を保有する。
【0205】
(HuMab免疫)
IRTA5に対する完全ヒトモノクローナル抗体を産生するために、HCo7 HuMab Mouse(登録商標)系統のマウスを、組換えIRTA5融合タンパク質をコードする遺伝子を含む発現ベクターでトランスフェクトした哺乳動物細胞に由来する、精製した融合タンパク質で免疫した。HuMab Mouse(登録商標)についての一般的な免疫スキームは、Lonberg,N.ら(1994)Nature 368(6474):856−859;Fishwild,D.ら(1996)Nature Biotechnology 14:845−851および国際公開第98/24884号に記載される。このマウスは、最初の抗原注入において、6〜16週齢であった。精製した組換え体IRTA5抗原調製物(5〜50μg、IRTA5融合タンパク質を発現するトランスフェクトした哺乳動物細胞から精製)を、HuMabマウスintraperitoneallymiceTMを腹腔内(IP)免疫するために使用した。
【0206】
トランスジェニックマウスを、完全フロイントアジュバント中またはRibiアジュバント中の抗原で2回IP免疫し、その後、不完全フロイントアジュバント中またはRibiアジュバント中のその抗原で3〜21日間IP免疫した(計11回までの免疫)。免疫応答を、眼窩後方の採血によってモニタリングした。血漿を、ELISAによって(以下に記載のように)スクリーニングし、そして抗IRTA5ヒト免疫グロブリンの十分な力価を有するマウスを、融合のために使用した。マウスを、屠殺および脾臓の摘出の3日間前に、抗原で静脈内にブーストした。
【0207】
(抗IRTA5抗体を産生するHuMabマウスTMの分泌)
IRTA5に結合する抗体を産生するHuMabマウスTMを選択するために、免疫したマウスからの血清を、改変ELISAによって試験した。この改変ELISAは、元来Fishwild,D.ら(1996)に記載される。簡潔には、マイクロタイタープレートを、精製組換えIRTA5融合タンパク質(PBS中1〜2μg/ml、50μl/ウェル)で、4℃で1晩インキュベートしてコートし、次いで、PBS中200μl/ウェルの5%BSAでブロックした。IRTA5免疫マウスからの血漿の希釈物を各ウェルに添加し、そして1〜2時間、周囲の温度でインキュベートした。このプレートを、次いで、PBS/Tweenで洗浄し、次いで、アルカリホスファターゼと結合体化したヤギ抗ヒトκ軽鎖ポリクローナル抗体と共に1時間、室温でインキュベートした。洗浄後、プレートをpNPP基質で発色させ、そして分光光度計によってOD415〜650で分析した。抗IRTA5抗体の最も高い力価で発色したマウスを、融合のために使用した。融合を、以下に記載するように実施し、そしてハイブリドーマ上清を、ELISAによって抗IRTA5活性について試験した。
【0208】
(IRTA5に対するヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの産生)
HuMabマウスTMから単離されたマウス脾臓細胞を、標準的プロトコールに基づき、PEGによりマウス骨髄腫細胞株と融合させた。次いで、得られたハイブリドーマを、抗原特異的抗体の産生についてスクリーニングした。免疫したマウスからの脾臓リンパ球の単個細胞浮遊液を、4分の1の数のP3X63 Ag8.6.53(ATCC CRL 1580)非分泌マウス骨髄腫細胞に50%PEG(Sigma)を用いて融合させた。細胞を、平底マイクロタイタープレート中に約1×105/ウェルでプレートし、その後、RPMI中のorigen(IGEN)、L−グルタミン、ピルビン酸ナトリウム、HEPES、ペニシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、1×HAT、およびβ−メルカプトエタノールを補充した10%ウシ胎仔血清含有選択培地中で、約2週間インキュベーションした。1〜2週間後、HATをHTで置き換えた培地中で細胞を培養した。次いで、個々のウェルを、ELISA(上述)によってヒト抗IRTA5モノクローナルIgG抗体についてスクリーニングした。一旦、広範なハイブリドーマの増殖が起こってから通常10〜14日後に培地をモニタリングした。上記抗体を分泌するハイブリドーマを、再びプレートし、再びスクリーニングし、なおヒトIgGについて陽性であった場合、抗IRTA5モノクローナル抗体を、限界希釈により少なくとも2回サブクローニングした。次いで、安定したサブクローンをインビトロで培養し、さらなる性質決定のために、組織培養培地中に少量の抗体を産生させた。
【0209】
ハイブリドーマクローン2G2、2G5、5A2、7G8、1E5、4B7、および7F5を、さらなる分析のために選択した。
【0210】
(実施例2:ヒトモノクローナル抗体5A2、ヒトモノクローナル抗体2G5およびヒトモノクローナル抗体7G8の構造的性質決定)
2G5モノクローナル抗体、5A2モノクローナル抗体および7G8モノクローナル抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域をコードするcDNA配列を、標準的PCR技術を用いてそれぞれ2G5ハイブリドーマ、5A2ハイブリドーマおよび7G8ハイブリドーマから得、標準的DNA配列決定技術を用いて配列決定した。
【0211】
2G5の重鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、図1Aならびに配列番号25および配列番号19にそれぞれ示す。
【0212】
2G5の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、図1Bならびに配列番号28および配列番号22にそれぞれ示す。
【0213】
2G5重鎖免疫グロブリン配列の、公知のヒト生殖細胞系列免疫グロブリン重鎖配列との比較は、2G5重鎖が、ヒト生殖細胞系列VH 3−33由来のVHセグメント、ヒト生殖細胞系列7−27由来のDセグメント、およびヒト生殖細胞系列JH 3b由来のJHセグメントを使用していることを実証した。2G5 VH配列と生殖細胞系列VH 3−33配列とのアラインメントを、図4に示す。CDR領域決定のKabatシステムを用いた2G5 VH配列のさらなる分析は、重鎖のCDR1領域、CDR2領域およびCD3領域の描写をもたらした。それぞれ、図1Aおよび図4ならびに配列番号1、配列番号4および配列番号7において示す。
【0214】
2G5軽鎖免疫グロブリン配列の、公知のヒト生殖細胞系列免疫グロブリン重鎖配列との比較は、2G5軽鎖は、ヒト生殖細胞系列VK L6由来のVLセグメントおよびヒト生殖細胞系列JK 2由来のJKセグメントを使用していることを実証した。2G5 VL配列と生殖細胞系列VK L6配列とのアラインメントを、図6に示す。CDR領域決定のKabatシステムを用いた2G5 VL配列のさらなる分析は、軽鎖のCDR1領域、CDR2領域およびCD3領域の描写をもたらした。それぞれ、図1Bおよび図6、ならびに配列番号10、配列番号13および配列番号16において示す。
【0215】
5A2の重鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、図2Aならびに配列番号26および配列番号20にそれぞれ示す。
【0216】
5A2の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、図2Bならびに配列番号29および配列番号23にそれぞれ示す。
【0217】
5A2重鎖免疫グロブリン配列の、公知のヒト生殖細胞系列免疫グロブリン重鎖配列との比較は、5A2重鎖は、ヒト生殖細胞系列VH 3−33由来のVHセグメント、未決定のDセグメント、およびヒト生殖細胞系列JH 4b由来のJHセグメントを使用していることを実証した。5A2 VH配列と生殖細胞系列VH 3−33配列とのアラインメントを、図4に示す。CDR領域決定のKabatシステムを用いた5A2 VH配列のさらなる分析は、重鎖のCDR1領域、CDR2領域およびCDR3領域の描写をもたらした。それぞれ、図2Aおよび図4、ならびに配列番号2、配列番号5および配列番号8において示す。
【0218】
5A2軽鎖免疫グロブリン配列の、公知のヒト生殖細胞系列免疫グロブリン軽鎖配列との比較は、5A2軽鎖は、ヒト生殖細胞系列VK L6由来のVLセグメントおよびヒト生殖細胞系列JK 1由来のJKセグメントを使用していることを実証した。5A2 VL配列と生殖細胞系列VK L6配列とのアラインメントを、図6に示す。CDR領域決定のKabatシステムを用いた5A2 VL配列のさらなる分析は、軽鎖のCDR1領域、CDR2領域およびCD3領域の描写をもたらした。それぞれ、図2Bおよび図6、ならびに配列番号11、配列番号14および配列番号17において示す。
【0219】
7G8の重鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、図3Aならびに配列番号27および配列番号21にそれぞれ示す。
【0220】
7G8の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、図3Bならびに配列番号30および配列番号24にそれぞれ示す。
【0221】
7G8重鎖免疫グロブリン配列の公知の、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン重鎖配列との比較は、7G8重鎖は、ヒト生殖細胞系列VH DP44由来のVHセグメント、未決定のDセグメント、およびヒト生殖細胞系列JH 2由来のJHセグメントを使用していることを実証した。7G8 VH配列と生殖細胞系列VH DP44配列とのアラインメントを、図5に示す。CDR領域決定のKabatシステムを用いた7G8 VH配列のさらなる分析は、重鎖のCDR1領域、CDR2領域およびCD3領域の描写をもたらした。それぞれ、図3Aおよび図5、ならびに配列番号3、配列番号6および配列番号9で示す。
【0222】
7G8軽鎖免疫グロブリン配列の、公知のヒト生殖細胞系列免疫グロブリン軽鎖配列との比較は、7G8軽鎖は、ヒト生殖細胞系列VK L6由来のVLセグメントおよびヒト生殖細胞系列JK 1由来のJKセグメントを使用していることを実証した。7G8 VL配列と生殖細胞系列VK A27配列とのアラインメントを、図6に示す。CDR領域決定のKabatシステムを用いた7G8 VL配列のさらなる分析は、軽鎖のCDR1領域、CDR2領域およびCD3領域の描写をもたらした。それぞれ、図3Bおよび図6、ならびに配列番号12、配列番号15および配列番号18において示す。
【0223】
(実施例3:mAb 7G8の変異および代替の生殖細胞系列の使用)
上の実施例2で議論したように、mAb 7G8は、HuMab Mouse(登録商標)系統のHCo7導入遺伝子に存在する、ヒトDP−44生殖細胞系列配列に由来する重鎖可変領域を利用する。DP−44は、天然のヒト免疫グロブリンレパートリーにおいて利用される生殖細胞配列ではないので、7G8のVH配列を変異させ、潜在的な免疫抗原性を低下させることは、有利であり得る。好ましくは、7G8 VH配列の1つ以上のフレームワーク残基が、構造的に関連するVH生殖細胞系列配列のうちの、天然のヒト免疫グロブリンレパートリーにおいて使用されるフレームワーク中に存在する残基において変異される。例えば、図7は、7G8 VH配列とDP44生殖細胞系列配列とのアラインメントを示し、2つの構造的に関連したヒト生殖細胞系列配列であるVH 3−23とVH 3−7とのアラインメントもまた示す。これらの配列の関連性を考慮すると、ヒトIRTA5に特異的に結合し、かつVH 3−23またはVH 3−7に由来するVH領域を使用するヒト抗体を選択し得ることを予測し得る。その上、VH 3−23配列中もしくはVH 3−7配列中の比較可能な位置の残基とは異なる7G8 VH配列内の1以上の残基を、VH 3−23中もしくはVH 3−7中に存在する残基へと変異させ得るか、またはその保存的アミノ酸置換へと変異させ得る。例えば、本明細書中で提供される7G8の好ましい変異形態は、7G8(mut)といい、図7および配列番号36に示すアミノ酸配列を有する。7G8(mut)において、アミノ酸13位のヒスチジンは、リジンまたはグルタミンのどちらかへと変異されており、そして87位のメチオニンは、トレオニンに変異されている。
【0224】
(実施例4:抗IRTA5ヒトモノクローナル抗体の結合特異性および結合速度論の性質決定)
この実施例において、抗IRTA5抗体の結合親和性、結合速度論、結合特異性および交差競合を、Biacore分析によって試験する。また、結合特異性を、フローサイトメトリーによって試験する。
【0225】
(結合親和性および結合速度論)
抗IRTA5抗体を、Biacore分析(Biacore AB,Uppsala,Sweden)により、親和性および結合速度論について性質決定した。標準的アミンカップリング化学およびBiacoreによって提供されるキットを使用して、精製組換えヒトIRTA5融合タンパク質を、CM5チップ(カルボキシメチルデキストランでコートしたチップ)に第一級アミンを介して共有結合させた。HBS EPバッファー(Biacore ABによって提供される)中に抗体を密度267nM、流速50μl/分で流動(flowing)させることにより、結合を測定した。抗原−抗体会合速度論を3分間追跡し、解離速度論を7分間追跡した。会合曲線および解離曲線を、BIAevalation software(Biacore AB)を使用して、1:1ラングミュア結合モデルに当てはめた。結合定数の推定におけるアビディティの影響を最小化するために、会合段階および解離段階に対応するデータの最初のセグメントのみを当てはめに使用した。KD値、kon値およびkoff値を、表1に示すように決定した。
【0226】
【表1】
。
【0227】
(抗IRTA5抗体のエピトープマッピング)
Biacoreを使用し、抗IRTA5 HuMAbのエピトープ分類を決定した。抗IRTA5抗体(2G5、5A2、7G8、4B7、7F5、4B7、2G1)を使用し、そのIRTA5上のエピトープをマッピングした。抗体2G5、抗体5A2および抗体7G8を、同じチップの3種の異なる表面上に各8000RUになるようにコートした。上記の7つのmAbのそれぞれの希釈物を10μg/mLで開始して作製し、IRTA5−Fc(50nM)と共に1時間インキュベートした。インキュベートした複合体を、3つ全ての表面(およびブランクの表面)の上に1.5分間、流速20μL/分で同時に注入した。1.5分間の最後の各表面からのシグナルを、適切なブランクの減算後、複合体におけるmAbの濃度に対してプロットしている。データの分析の際、この7種の抗IRTA5抗体を、3つのエピトープ群に分類した。A群は2G5、5A2および7G8を含み、B1群は7G8および1E5を含み、そしてB2群は、7F5、4B7および2G1を含む。この3つのエピトープ群の相互関係を、図8に概略的に図示する。
【0228】
(フローサイトメトリーによる結合特異性)
上記の5種のIRTAタンパク質の各々のうち1種を細胞表面上に発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株を発生させ、IRTA5 HuMAbの特異性をフローサイトメトリーにより決定するために使用した。CHO細胞を、IRTA1、IRTA2、IRTA3、IRTA4またはIRTA5の膜貫通形態をコードする完全長のcDNAを含む発現プラスミドでトランスフェクトした。さらに、トランスフェクトしたタンパク質は、エピトープに対して特異的な抗体による検出のために、N末端にエピトープタグを含んだ。上記7種の抗IRTA5 HuMAbの結合を、トランスフェクトした細胞を上記IRTA5 Abの各々(濃度10μg/ml)と共にインキュベートすることにより、評価した。細胞を洗浄し、そして結合を、FITC標識した抗ヒトIgG Abで検出した。マウス抗エピトープタグAbをポジティブコントロールとして用い、その後、標識した抗マウスIgGをポジティブコントロールとして用いた。非特異的ヒトAbおよび非特異的マウスのAbを、ネガティブコントロールとして使用した。結果を、図9に図示する。IRTA5でトランスフェクトしたCHO株に結合したが、IRTA1、IRTA2またはIRTA4を発現するCHO株に結合しなかったIRTA5 HuMAbを、染色の平均蛍光強度(MFI)によって測定した。結果として、HuMAbは、IRTA3を発現するCHO株への特異的な結合を有するとは示さなかった(データは示さず)。これらのデータは、HuMAbのIRTA5に対する特異性を実証した。
【0229】
(実施例5:IRTA5抗体の正常B細胞およびB細胞由来腫瘍株への結合)
2色の免疫蛍光およびフローサイトメトリーを使用して、IRTA5 HuMAbの末梢血B細胞への結合を実証した。CD19は、末梢血Bリンパ球を識別するために使用され得る細胞表面マーカーである。ヒト末梢血単核細胞を、ビオチン化2G5、ビオチン化7G8またはイソ型コントロールビオチン化ヒトAbと共にインキュベートした。細胞を洗浄し、そしてFITC標識ストレプトアビジンおよびフィコエリトリン標識抗CD19抗体と共にインキュベートした。細胞を洗浄し、そしてフローサイトメトリーにより分析した。結果を、図10Aに図示する。リンパ球は黒「点」として通過し、そして単球は灰色「点」として通過した。波長を、FITC(FL1)シグナル伝達およびフィコエリトリン(FL2)シグナル伝達についてスクリーニングするために選択した。CD19+B細胞は、フィコエリトリン標識抗CD19抗体に対し高いレベルの結合を示した(横軸)。2G5+細胞または7G8+細胞(縦軸)もまた主にCD19+であり、二重陽性(上段右の四分区画)に局在した。これらのデータは、IRTA5タンパク質は、HuMAb 2G5およびHuMAb 7G8の結合によって評価されたように、正常末梢血Bリンパ球の(全てではないが)大部分によって発現されることを実証した。
【0230】
2色免疫蛍光およびフローサイトメトリーをまた、末梢血T細胞、樹状細胞、単球またはナチュラルキラー(NK)細胞に対するIRTA5 HuMAbの結合について試験するためにも使用した。CD3、CD1A、CD14およびCD56は、それぞれ末梢血Tリンパ球、末梢血樹状細胞、末梢血単球および末梢血NK細胞を識別するために使用され得る細胞表面マーカーである。ビオチン化した2G5、7G8またはアイソタイプコントロール抗体およびフィコエリトリン標識マーカー抗体(CD3、CD1A、CD14およびCD56)を、上述のように、フローサイトメトリー分析に使用した。結果を図10Bに図示する。リンパ球は黒「点」として通過し、そして単球は灰色「点」として通過した。波長を、FITC(FL1)シグナル伝達およびフィコエリトリン(FL2)シグナル伝達についてスクリーニングするために選択した。IRTA5 HuMAb 2G5およびIRTA5 HuMAb 7G8は、CD3+末梢血T細胞にも、CD1A+末梢血樹状細胞にも、CD14+末梢血単球にも、CD56+末梢血NK細胞にも結合しなかった。このことは、IRTA5のB細胞特異的発現を確認した。
【0231】
IRTA5 HuMAbのB細胞腫瘍株であるDaudi(ATCC CCL−213)、Ramos(ATCC CRL−1596)、Karpas 1106P(DSMZ ACC 545)、SU−DHL−4(DSMZ ACC 495)、Granta 519(DSMZ ACC 342)およびL−540(DSMZ ACC 72)への結合を、フローサイトメトリーにより評価した。上記細胞株を、上記IRTA5 HuMAbのそれぞれまたはコントロールヒト抗体と共にインキュベートし、洗浄しそしてフィコエリトリン標識抗ヒト二次抗体により検出した。図11は、IRTA5 HuMAb 2G2のDaudi細胞およびRamos細胞に対する結合を、コントロールヒト抗体と比較して示す。残りの6種のIRTA5 HuMAbは、類似した結合パターンを示す(データは示さず)。これらのデータは、IRTA5タンパク質がB細胞起源のDaudi腫瘍細胞株およびRamos腫瘍細胞株の表面上に発現されることを示す。図12は、IRTA5 HuMAb 2G5のKarpas 1106P細胞、SU−DHL−4細胞、Granta 519細胞およびL−540細胞への結合を、アイソタイプコントロール抗体と比較して示す。このデータは、IRTA5抗体がSU−DHL−4 B細胞腫瘍株に対する増加した結合を有することを示す(染色の平均蛍光強度(MFI)によって測定)。まとめると、これらのデータは、特定のB細胞腫瘍株がIRTA5タンパク質を細胞表面上に発現することを実証する。
【0232】
(IRTA−5(配列番号37))
【0233】
【数1】
(IRTA−1(配列番号38))
【0234】
【数2】
(IRTA−2(配列番号39))
【0235】
【数3】
(IRTA−3(配列番号40))
【0236】
【数4】
(IRTA−4(配列番号41))
【0237】
【数5】
【0238】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【0239】
【図1A】図1Aは、2G5ヒトモノクローナル抗体の重鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号25)およびアミノ酸配列(配列番号19)を示す。このCDR1(配列番号1)領域、CDR2(配列番号4)領域およびCDR3(配列番号7)領域が示され、そしてこのV生殖系列の派生物、D生殖系列の派生物およびJ生殖系列の派生物が示される。
【図1B】図1Bは、2G5ヒトモノクローナル抗体の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号28)およびアミノ酸配列(配列番号22)を示す。このCDR1(配列番号10)領域、CDR2(配列番号13)領域およびCDR3(配列番号16)領域が示され、そしてこのV生殖系列の派生物およびJ生殖系列の派生物が示される。
【図2A】図2Aは、5A2ヒトモノクローナル抗体の重鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号26)およびアミノ酸配列(配列番号20)を示す。このCDR1(配列番号2)領域、CDR2(配列番号5)領域およびCDR3(配列番号8)領域が示され、そしてこのV生殖系列の派生物およびJ生殖系列の派生物が示される。
【図2B】図2Bは、5A2ヒトモノクローナル抗体の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号29)およびアミノ酸配列(配列番号23)を示す。このCDR1(配列番号11)領域、CDR2(配列番号14)領域およびCDR3 (配列番号17)領域が示され、そしてこのV生殖系列の派生物およびJ生殖系列の派生物が示される。
【図3A】図3Aは、7G8ヒトモノクローナル抗体の重鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号27)およびアミノ酸配列(配列番号21)を示す。このCDR1(配列番号3)領域、CDR2(配列番号6)領域およびCDR3(配列番号9)領域が示され、そしてこのV生殖系列の派生物およびJ生殖系列の派生物が示される。
【図3B】図3Bは、7G8ヒトモノクローナル抗体の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号30)およびアミノ酸配列(配列番号24)を示す。このCDR1(配列番号12)領域、CDR2(配列番号15)領域およびCDR3(配列番号18)領域が示され、そしてこのV生殖系列の派生物およびJ生殖系列の派生物が示される。
【図4】図4は、2G5および5A2の重鎖可変領域のアミノ酸配列と、ヒト生殖系列のVH 3−33アミノ酸配列(配列番号31)とのアラインメントを示す。
【図5】図5は、7G8の重鎖可変領域のアミノ酸配列とヒト生殖系列のVH DP44アミノ酸配列(配列番号32)とのアラインメントを示す。
【図6】図6は、2G5、5A2、および7G8の軽鎖可変領域のアミノ酸配列と、ヒト生殖系列のVk L6アミノ酸配列(配列番号33)とのアラインメントを示す。
【図7】図7は、7G8の重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号21)および7G8(mut)(配列番号36)と称される7G8の重鎖可変領域の変異形態と、ヒト生殖系列のVH DP44アミノ酸配列、VH 3−23アミノ酸配列およびVH 3−7アミノ酸配列(それぞれ、配列番号32、配列番号34および配列番号35)とのアラインメントを示す。
【図8】図8は、BIAcore分析に基づく抗IRTA−5抗体のエピトープの分類を示す。
【図9】図9は、ヒトIRTA−5に対して指向されるヒトモノクローナル抗体4B7、2G1、7F5、7G8、5A2、1E5、および2G5が、ヒトIRTA−5に特異的に結合することを実証する実験の結果を示すグラフである。
【図10A】図10Aは、ヒトIRTA−5に対して指向されるヒトモノクローナル抗体2G5および7G8が、CD19+ B細胞に結合することを実証するフローサイトメトリー実験の結果を示す。
【図10B】図10Bは、ヒトIRTA−5に対して指向されるヒトモノクローナル抗体2G5および7G8が、CD3+末梢血T細胞、CD1A+末梢血樹状細胞、CD14+末梢血単球、またはCD56+末梢血NK細胞に結合しないことを実証するフローサイトメトリー実験の結果を示す。
【図11】図11は、ヒトIRTA−5に対して指向されるヒトモノクローナル抗体2G2が、B細胞由来の腫瘍細胞株の細胞表面に特異的に結合することを実証するヒストグラムのプロットを示す。
【図12】図12は、ヒトIRTA−5に対して指向されるヒトモノクローナル抗体2G5の、B−細胞腫瘍株Karpas 1106P、SU−DHL−4、Granta 519、およびL−540に対する結合を実証するフローサイトメトリー実験の結果を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位であって、該抗体は:
(a)5×10−8M以下のKDでヒトIRTA−5に結合し;
(b)ヒトIRTA−1、ヒトIRTA−2、ヒトIRTA−3、およびヒトIRTA−4に実質的に結合せず;そして
(c)ヒトBリンパ球およびB細胞腫瘍株に結合するが、CD3+末梢血T細胞、CD1A+末梢血樹状細胞、CD14+末梢血単球、またはCD56+末梢血ナチュラルキラー細胞に実質的に結合しない、
単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位。
【請求項2】
前記抗体が、ヒト抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記抗体が、キメラ抗体またはヒト化抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
前記抗体が、IgG1アイソタイプまたはIgG4アイソタイプの完全長抗体である、請求項2に記載の抗体。
【請求項5】
前記抗体が、抗体フラグメントまたは単鎖抗体である、請求項2に記載の抗体。
【請求項6】
前記抗体が、3×10−8M以下のKDでヒトIRTA−5に結合する、請求項2に記載の抗体。
【請求項7】
前記抗体が、1×10−9M以下のKDでヒトIRTA−5に結合する、請求項2に記載の抗体。
【請求項8】
前記抗体が、0.1×10−9M以下のKDでヒトIRTA−5に結合する、請求項2に記載の抗体。
【請求項9】
前記抗体が、0.05×10−9M以下のKDでヒトIRTA−5に結合する、請求項2に記載の抗体。
【請求項10】
前記抗体が、1×10−9Mと1×10−11Mとの間のKDでヒトIRTA−5に結合する、請求項2に記載の抗体。
【請求項11】
前記ヒトIRTA−5が、配列番号37(Genbank登録番号AAL60250)に示されるようなアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む、請求項2に記載の抗体。
【請求項12】
前記ヒトIRTA−1が、配列番号38(Genbank登録番号NP_112572)に示されるようなアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む、請求項2に記載の抗体。
【請求項13】
前記ヒトIRTA−2が、配列番号39(Genbank登録番号NP_112571)に示されるようなアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む、請求項2に記載の抗体。
【請求項14】
前記ヒトIRTA−3が、配列番号40(Genbank登録番号AAL59390)に示されるようなアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む、請求項2に記載の抗体。
【請求項15】
前記ヒトIRTA−4が、配列番号41(Genbank登録番号AAL60249)に示されるようなアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む、請求項2に記載の抗体。
【請求項16】
前記B細胞腫瘍株が、Daudi細胞株、Ramos細胞株、およびSU−DHL−4細胞株からなる群より選択される、請求項2に記載の抗体。
【請求項17】
単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位であって、該抗体が、IRTA−5への結合に関して、以下:
(a)配列番号19、配列番号20、および配列番号21からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;ならびに
(b)配列番号22、配列番号23、および配列番号24からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
を含む参照抗体と相互に競合する、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位。
【請求項18】
前記参照抗体が、以下:
(a)配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および
(b)配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
を含む、請求項17に記載の抗体。
【請求項19】
前記参照抗体が、以下:
(a)配列番号20のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および
(b)配列番号23のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
を含む、請求項17に記載の抗体。
【請求項20】
前記参照抗体が、以下:
(a)配列番号21のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および
(b)配列番号24のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
を含む、請求項17に記載の抗体。
【請求項21】
ヒトVH 3−33遺伝子の産物である重鎖可変領域またはヒトVH 3−33遺伝子に由来する重鎖可変領域を含む、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位であって、該抗体が、IRTA−5に特異的に結合する、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位。
【請求項22】
ヒトVH DP44遺伝子、ヒトVH 3−23遺伝子もしくはヒトVH 3−7遺伝子の産物である重鎖可変領域、またはヒトVH DP44遺伝子、ヒトVH 3−23遺伝子もしくはヒトVH 3−7遺伝子に由来する重鎖可変領域を含む、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位であって、該抗体が、IRTA−5に特異的に結合する、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位。
【請求項23】
ヒトVK L6遺伝子の産物である軽鎖可変領域またはヒトVK L6遺伝子に由来する軽鎖可変領域を含む単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位であって、該抗体が、IRTA−5に特異的に結合する、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位。
【請求項24】
単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位であって、以下:
(a)ヒトVH 3−33遺伝子、ヒトVH DP44遺伝子、ヒトVH 3−23遺伝子またはヒトVH 3−7遺伝子の重鎖可変領域;および
(b)ヒトVk L6の軽鎖可変領域;
を含み、該抗体が、IRTA−5に特異的に結合する、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位。
【請求項25】
前記抗体が、ヒトVH 3−33遺伝子の重鎖可変領域およびヒトVK L6遺伝子の軽鎖可変領域を含む、請求項24に記載の抗体。
【請求項26】
前記抗体が、ヒトVH DP44遺伝子の重鎖可変領域およびヒトVK L6遺伝子の軽鎖可変領域を含む、請求項24に記載の抗体。
【請求項27】
前記抗体が、ヒトVH 3−23遺伝子の重鎖可変領域およびヒトVK L6遺伝子の軽鎖可変領域を含む、請求項24に記載の抗体。
【請求項28】
前記抗体が、ヒトVH 3−7遺伝子の重鎖可変領域およびヒトVK L6遺伝子の軽鎖可変領域を含む、請求項24に記載の抗体。
【請求項29】
前記抗体が、ヒトIRTA−1、ヒトIRTA−2、ヒトIRTA−3、およびヒトIRTA−4に特異的に結合しない、請求項24に記載の抗体。
【請求項30】
前記IRTA−5が、配列番号37(Genbank登録番号AAL60250)に示されるようなアミノ酸配列を有するヒトIRTA−5ポリペプチドを含む、請求項24に記載の抗体。
【請求項31】
前記ヒトIRTA−1が、配列番号38(Genbank登録番号NP_112572)に示されるようなアミノ酸配列を有するヒトIRTA−5ポリペプチドを含む、請求項29に記載の抗体。
【請求項32】
前記ヒトIRTA−2が、配列番号39(Genbank登録番号NP_112571)に示されるようなアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む、請求項29に記載の抗体。
【請求項33】
前記ヒトIRTA−3が、配列番号40(Genbank登録番号AAL59390)に示されるようなアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む、請求項29に記載の抗体。
【請求項34】
前記ヒトIRTA−4が、配列番号41(Genbank登録番号AAL60249)に示されるようなアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む、請求項29に記載の抗体。
【請求項35】
単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位であって、以下:
CDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含む重鎖可変領域;ならびにCDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域、
を含み、以下:
(a)重鎖可変領域のCDR3配列が、配列番号7、配列番号8、および配列番号9のアミノ酸配列、ならびにそれらの保存的改変のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み;
(b)軽鎖可変領域のCDR3配列が、配列番号16、配列番号17、および配列番号18のアミノ酸配列、ならびにそれらの保存的改変のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み;
(c)該抗体が、5×10−8M以下のKDでヒトIRTA−5に結合し;
(d)該抗体が、ヒトIRTA−1、ヒトIRTA−2、ヒトIRTA−3、およびヒトIRTA−4に実質的に結合せず;そして
(e)該抗体が、ヒトBリンパ球およびB細胞腫瘍株に結合するが、CD3+末梢血T細胞、CD1A+末梢血樹状細胞、CD14+末梢血単球、またはCD56+末梢血ナチュラルキラー細胞に実質的に結合しない、
単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位。
【請求項36】
前記重鎖可変領域のCDR2配列が、配列番号4、配列番号5、および配列番号6のアミノ酸配列、ならびにそれらの保存的改変のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み;そして前記軽鎖可変領域のCDR2配列が、配列番号13、配列番号14、および配列番号15のアミノ酸配列、ならびにそれらの保存的改変のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項35に記載の抗体。
【請求項37】
前記重鎖可変領域のCDR1配列が、配列番号1、配列番号2、および配列番号3のアミノ酸配列、ならびにそれらの保存的改変のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み;そして前記軽鎖可変領域のCDR1配列が、配列番号10、配列番号11、および配列番号12のアミノ酸配列、ならびにそれらの保存的改変のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項36に記載の抗体。
【請求項38】
前記抗体が、ヒト抗体である、請求項35に記載の抗体。
【請求項39】
前記抗体が、ヒト化抗体またはキメラ抗体である、請求項35に記載の抗体。
【請求項40】
前記B細胞腫瘍株が、Daudi細胞株、Ramos細胞株、およびSU−DHL−4細胞株からなる群より選択される、請求項35に記載の抗体。
【請求項41】
重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位であって、以下:
(a)該重鎖可変領域が、配列番号19、配列番号20、および配列番号21からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%相同であるアミノ酸配列を含み;
(b)該軽鎖可変領域が、配列番号22、配列番号23、および配列番号24からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%相同であるアミノ酸配列を含み;
(c)該抗体が、5×10−8M以下のKDでヒトIRTA−5に結合し;
(d)該抗体が、ヒトIRTA−1、ヒトIRTA−2、ヒトIRTA−3、およびヒトIRTA−4に実質的に結合せず;そして
(e)該抗体が、ヒトBリンパ球およびB細胞腫瘍株に結合するが、CD3+末梢血T細胞、CD1A+末梢血樹状細胞、CD14+末梢血単球、またはCD56+末梢血ナチュラルキラー細胞に実質的に結合しない、
単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位。
【請求項42】
前記抗体が、ヒト抗体である、請求項41に記載の抗体。
【請求項43】
前記抗体が、ヒト化抗体またはキメラ抗体である、請求項41に記載の抗体。
【請求項44】
前記B細胞腫瘍株が、Daudi細胞株、Ramos細胞株、およびSU−DHL−4細胞株からなる群より選択される、請求項41に記載の抗体。
【請求項45】
単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位であって、以下:
(a)配列番号1、配列番号2、および配列番号3からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のCDR1;
(b)配列番号4、配列番号5、および配列番号6からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のCDR2;
(c)配列番号7、配列番号8、および配列番号9からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のCDR3;
(d)配列番号10、配列番号11、および配列番号12からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のCDR1;
(e)配列番号13、配列番号14、および配列番号15からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のCDR2;ならびに
(f)配列番号16、配列番号17、および配列番号18からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のCDR3;
を含み、該抗体が、IRTA−5に特異的に結合する、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位。
【請求項46】
前記抗体が、以下:
(a)配列番号1を含む重鎖可変領域のCDR1;
(b)配列番号4を含む重鎖可変領域のCDR2;
(c)配列番号7を含む重鎖可変領域のCDR3;
(d)配列番号10を含む軽鎖可変領域のCDR1;
(e)配列番号13を含む軽鎖可変領域のCDR2;および
(f)配列番号16を含む軽鎖可変領域のCDR3、
を含む、請求項45に記載の抗体。
【請求項47】
前記抗体が、以下:
(a)配列番号2を含む重鎖可変領域のCDR1;
(b)配列番号5を含む重鎖可変領域のCDR2;
(c)配列番号8を含む重鎖可変領域のCDR3;
(d)配列番号11を含む軽鎖可変領域のCDR1;
(e)配列番号14を含む軽鎖可変領域のCDR2;および
(f)配列番号17を含む軽鎖可変領域のCDR3、
を含む、請求項45に記載の抗体。
【請求項48】
前記抗体が、以下:
(a)配列番号3を含む重鎖可変領域のCDR1;
(b)配列番号6を含む重鎖可変領域のCDR2;
(c)配列番号9を含む重鎖可変領域のCDR3;
(d)配列番号12を含む軽鎖可変領域のCDR1;
(e)配列番号15を含む軽鎖可変領域のCDR2;および
(f)配列番号18を含む軽鎖可変領域のCDR3、
を含む、請求項45に記載の抗体。
【請求項49】
単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位であって、以下:
(a)配列番号19、配列番号20、配列番号21、および配列番号36からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;ならびに
(b)配列番号22、配列番号23、および配列番号24からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
を含み、該抗体が、IRTA−5に特異的に結合する、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位。
【請求項50】
前記抗体が、以下:
(a)配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および
(b)配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
を含む、請求項49に記載の抗体。
【請求項51】
前記抗体が、以下:
(a)配列番号20のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および
(b)配列番号23のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
を含む、請求項49に記載の抗体。
【請求項52】
前記抗体が、以下:
(a)配列番号21または配列番号36のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および
(b)配列番号24のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
を含む、請求項49に記載の抗体。
【請求項53】
請求項1〜52のいずれか1項に記載の抗体、またはその抗原結合部位、および薬学的に受容可能なキャリアを含有する組成物。
【請求項54】
請求項1〜52のいずれか1項に記載の抗体、またはその抗原結合部位を含む、治療因子に結合した免疫複合体。
【請求項55】
請求項54に記載の免疫複合体および薬学的に受容可能なキャリアを含有する組成物。
【請求項56】
前記治療因子が、細胞毒である、請求項54に記載の免疫複合体。
【請求項57】
請求項56に記載の免疫複合体および薬学的に受容可能なキャリアを含有する組成物。
【請求項58】
前記治療因子が、放射性同位元素である、請求項54に記載の免疫複合体。
【請求項59】
請求項58に記載の免疫複合体および薬学的に受容可能なキャリアを含有する組成物。
【請求項60】
請求項1〜52のいずれか1項に記載の抗体、または抗原結合部位を含む、第2の機能的部分に結合した二重特異性分子であって、該第2の機能的部分が、該抗体、またはその抗原結合部位と異なる結合特異性を有する、二重特異性分子。
【請求項61】
請求項60に記載の二重特異性分子、および薬学的に受容可能なキャリアを含有する組成物。
【請求項62】
請求項1〜52のいずれか1項に記載の抗体、またはその抗原結合部位をコードする単離された核酸分子。
【請求項63】
請求項62に記載の核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項64】
請求項63に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項65】
ヒト免疫グロブリン重鎖の導入遺伝子およびヒト免疫グロブリン軽鎖の導入遺伝子を有するトランスジェニックマウスであって、該マウスが、請求項1〜52のいずれか1項に記載の抗体を発現する、トランスジェニックマウス。
【請求項66】
請求項65に記載のマウスから調製されるハイブリドーマであって、該ハイブリドーマが、前記抗体を産生する、ハイブリドーマ。
【請求項67】
抗IRTA−5抗体を調製するための方法であって、以下:
(a)(i)配列番号1、配列番号2、および配列番号3からなる群より選択されるCDR1配列;配列番号4、配列番号5、および配列番号6からなる群より選択されるCDR2配列;ならびに配列番号7、配列番号8、および配列番号9からなる群より選択されるCDR3配列を含む重鎖可変領域の抗体の配列;または(ii)配列番号10、配列番号11、および配列番号12からなる群より選択されるCDR1配列;配列番号13、配列番号14、および配列番号15からなる群より選択されるCDR2配列、ならびに配列番号16、配列番号17、および配列番号18からなる群より選択されるCDR3配列を含む軽鎖可変領域の抗体の配列を提供する工程;
(b)少なくとも1つの可変領域の抗体の配列内の少なくとも1つのアミノ酸残基を変更して、少なくとも1つの変更された抗体の配列を形成する工程であって、該配列が、該重鎖可変領域の抗体の配列および該軽鎖可変領域の抗体の配列から選択される、工程;および
(c)該変更された抗体の配列をタンパク質として発現させる工程
を包含する、方法。
【請求項68】
IRTA5を発現する腫瘍細胞の増殖を阻害する方法であって、請求項1〜52のいずれか1項に記載の抗体、またはその抗原結合部位を、該腫瘍細胞の増殖を阻害するのに有効な量で該細胞と接触させる工程を包含する、方法。
【請求項1】
単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位であって、該抗体は:
(a)5×10−8M以下のKDでヒトIRTA−5に結合し;
(b)ヒトIRTA−1、ヒトIRTA−2、ヒトIRTA−3、およびヒトIRTA−4に実質的に結合せず;そして
(c)ヒトBリンパ球およびB細胞腫瘍株に結合するが、CD3+末梢血T細胞、CD1A+末梢血樹状細胞、CD14+末梢血単球、またはCD56+末梢血ナチュラルキラー細胞に実質的に結合しない、
単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位。
【請求項2】
前記抗体が、ヒト抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記抗体が、キメラ抗体またはヒト化抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
前記抗体が、IgG1アイソタイプまたはIgG4アイソタイプの完全長抗体である、請求項2に記載の抗体。
【請求項5】
前記抗体が、抗体フラグメントまたは単鎖抗体である、請求項2に記載の抗体。
【請求項6】
前記抗体が、3×10−8M以下のKDでヒトIRTA−5に結合する、請求項2に記載の抗体。
【請求項7】
前記抗体が、1×10−9M以下のKDでヒトIRTA−5に結合する、請求項2に記載の抗体。
【請求項8】
前記抗体が、0.1×10−9M以下のKDでヒトIRTA−5に結合する、請求項2に記載の抗体。
【請求項9】
前記抗体が、0.05×10−9M以下のKDでヒトIRTA−5に結合する、請求項2に記載の抗体。
【請求項10】
前記抗体が、1×10−9Mと1×10−11Mとの間のKDでヒトIRTA−5に結合する、請求項2に記載の抗体。
【請求項11】
前記ヒトIRTA−5が、配列番号37(Genbank登録番号AAL60250)に示されるようなアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む、請求項2に記載の抗体。
【請求項12】
前記ヒトIRTA−1が、配列番号38(Genbank登録番号NP_112572)に示されるようなアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む、請求項2に記載の抗体。
【請求項13】
前記ヒトIRTA−2が、配列番号39(Genbank登録番号NP_112571)に示されるようなアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む、請求項2に記載の抗体。
【請求項14】
前記ヒトIRTA−3が、配列番号40(Genbank登録番号AAL59390)に示されるようなアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む、請求項2に記載の抗体。
【請求項15】
前記ヒトIRTA−4が、配列番号41(Genbank登録番号AAL60249)に示されるようなアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む、請求項2に記載の抗体。
【請求項16】
前記B細胞腫瘍株が、Daudi細胞株、Ramos細胞株、およびSU−DHL−4細胞株からなる群より選択される、請求項2に記載の抗体。
【請求項17】
単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位であって、該抗体が、IRTA−5への結合に関して、以下:
(a)配列番号19、配列番号20、および配列番号21からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;ならびに
(b)配列番号22、配列番号23、および配列番号24からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
を含む参照抗体と相互に競合する、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位。
【請求項18】
前記参照抗体が、以下:
(a)配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および
(b)配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
を含む、請求項17に記載の抗体。
【請求項19】
前記参照抗体が、以下:
(a)配列番号20のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および
(b)配列番号23のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
を含む、請求項17に記載の抗体。
【請求項20】
前記参照抗体が、以下:
(a)配列番号21のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および
(b)配列番号24のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
を含む、請求項17に記載の抗体。
【請求項21】
ヒトVH 3−33遺伝子の産物である重鎖可変領域またはヒトVH 3−33遺伝子に由来する重鎖可変領域を含む、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位であって、該抗体が、IRTA−5に特異的に結合する、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位。
【請求項22】
ヒトVH DP44遺伝子、ヒトVH 3−23遺伝子もしくはヒトVH 3−7遺伝子の産物である重鎖可変領域、またはヒトVH DP44遺伝子、ヒトVH 3−23遺伝子もしくはヒトVH 3−7遺伝子に由来する重鎖可変領域を含む、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位であって、該抗体が、IRTA−5に特異的に結合する、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位。
【請求項23】
ヒトVK L6遺伝子の産物である軽鎖可変領域またはヒトVK L6遺伝子に由来する軽鎖可変領域を含む単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位であって、該抗体が、IRTA−5に特異的に結合する、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位。
【請求項24】
単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位であって、以下:
(a)ヒトVH 3−33遺伝子、ヒトVH DP44遺伝子、ヒトVH 3−23遺伝子またはヒトVH 3−7遺伝子の重鎖可変領域;および
(b)ヒトVk L6の軽鎖可変領域;
を含み、該抗体が、IRTA−5に特異的に結合する、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位。
【請求項25】
前記抗体が、ヒトVH 3−33遺伝子の重鎖可変領域およびヒトVK L6遺伝子の軽鎖可変領域を含む、請求項24に記載の抗体。
【請求項26】
前記抗体が、ヒトVH DP44遺伝子の重鎖可変領域およびヒトVK L6遺伝子の軽鎖可変領域を含む、請求項24に記載の抗体。
【請求項27】
前記抗体が、ヒトVH 3−23遺伝子の重鎖可変領域およびヒトVK L6遺伝子の軽鎖可変領域を含む、請求項24に記載の抗体。
【請求項28】
前記抗体が、ヒトVH 3−7遺伝子の重鎖可変領域およびヒトVK L6遺伝子の軽鎖可変領域を含む、請求項24に記載の抗体。
【請求項29】
前記抗体が、ヒトIRTA−1、ヒトIRTA−2、ヒトIRTA−3、およびヒトIRTA−4に特異的に結合しない、請求項24に記載の抗体。
【請求項30】
前記IRTA−5が、配列番号37(Genbank登録番号AAL60250)に示されるようなアミノ酸配列を有するヒトIRTA−5ポリペプチドを含む、請求項24に記載の抗体。
【請求項31】
前記ヒトIRTA−1が、配列番号38(Genbank登録番号NP_112572)に示されるようなアミノ酸配列を有するヒトIRTA−5ポリペプチドを含む、請求項29に記載の抗体。
【請求項32】
前記ヒトIRTA−2が、配列番号39(Genbank登録番号NP_112571)に示されるようなアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む、請求項29に記載の抗体。
【請求項33】
前記ヒトIRTA−3が、配列番号40(Genbank登録番号AAL59390)に示されるようなアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む、請求項29に記載の抗体。
【請求項34】
前記ヒトIRTA−4が、配列番号41(Genbank登録番号AAL60249)に示されるようなアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む、請求項29に記載の抗体。
【請求項35】
単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位であって、以下:
CDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含む重鎖可変領域;ならびにCDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域、
を含み、以下:
(a)重鎖可変領域のCDR3配列が、配列番号7、配列番号8、および配列番号9のアミノ酸配列、ならびにそれらの保存的改変のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み;
(b)軽鎖可変領域のCDR3配列が、配列番号16、配列番号17、および配列番号18のアミノ酸配列、ならびにそれらの保存的改変のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み;
(c)該抗体が、5×10−8M以下のKDでヒトIRTA−5に結合し;
(d)該抗体が、ヒトIRTA−1、ヒトIRTA−2、ヒトIRTA−3、およびヒトIRTA−4に実質的に結合せず;そして
(e)該抗体が、ヒトBリンパ球およびB細胞腫瘍株に結合するが、CD3+末梢血T細胞、CD1A+末梢血樹状細胞、CD14+末梢血単球、またはCD56+末梢血ナチュラルキラー細胞に実質的に結合しない、
単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位。
【請求項36】
前記重鎖可変領域のCDR2配列が、配列番号4、配列番号5、および配列番号6のアミノ酸配列、ならびにそれらの保存的改変のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み;そして前記軽鎖可変領域のCDR2配列が、配列番号13、配列番号14、および配列番号15のアミノ酸配列、ならびにそれらの保存的改変のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項35に記載の抗体。
【請求項37】
前記重鎖可変領域のCDR1配列が、配列番号1、配列番号2、および配列番号3のアミノ酸配列、ならびにそれらの保存的改変のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み;そして前記軽鎖可変領域のCDR1配列が、配列番号10、配列番号11、および配列番号12のアミノ酸配列、ならびにそれらの保存的改変のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項36に記載の抗体。
【請求項38】
前記抗体が、ヒト抗体である、請求項35に記載の抗体。
【請求項39】
前記抗体が、ヒト化抗体またはキメラ抗体である、請求項35に記載の抗体。
【請求項40】
前記B細胞腫瘍株が、Daudi細胞株、Ramos細胞株、およびSU−DHL−4細胞株からなる群より選択される、請求項35に記載の抗体。
【請求項41】
重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位であって、以下:
(a)該重鎖可変領域が、配列番号19、配列番号20、および配列番号21からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%相同であるアミノ酸配列を含み;
(b)該軽鎖可変領域が、配列番号22、配列番号23、および配列番号24からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%相同であるアミノ酸配列を含み;
(c)該抗体が、5×10−8M以下のKDでヒトIRTA−5に結合し;
(d)該抗体が、ヒトIRTA−1、ヒトIRTA−2、ヒトIRTA−3、およびヒトIRTA−4に実質的に結合せず;そして
(e)該抗体が、ヒトBリンパ球およびB細胞腫瘍株に結合するが、CD3+末梢血T細胞、CD1A+末梢血樹状細胞、CD14+末梢血単球、またはCD56+末梢血ナチュラルキラー細胞に実質的に結合しない、
単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位。
【請求項42】
前記抗体が、ヒト抗体である、請求項41に記載の抗体。
【請求項43】
前記抗体が、ヒト化抗体またはキメラ抗体である、請求項41に記載の抗体。
【請求項44】
前記B細胞腫瘍株が、Daudi細胞株、Ramos細胞株、およびSU−DHL−4細胞株からなる群より選択される、請求項41に記載の抗体。
【請求項45】
単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位であって、以下:
(a)配列番号1、配列番号2、および配列番号3からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のCDR1;
(b)配列番号4、配列番号5、および配列番号6からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のCDR2;
(c)配列番号7、配列番号8、および配列番号9からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のCDR3;
(d)配列番号10、配列番号11、および配列番号12からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のCDR1;
(e)配列番号13、配列番号14、および配列番号15からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のCDR2;ならびに
(f)配列番号16、配列番号17、および配列番号18からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のCDR3;
を含み、該抗体が、IRTA−5に特異的に結合する、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位。
【請求項46】
前記抗体が、以下:
(a)配列番号1を含む重鎖可変領域のCDR1;
(b)配列番号4を含む重鎖可変領域のCDR2;
(c)配列番号7を含む重鎖可変領域のCDR3;
(d)配列番号10を含む軽鎖可変領域のCDR1;
(e)配列番号13を含む軽鎖可変領域のCDR2;および
(f)配列番号16を含む軽鎖可変領域のCDR3、
を含む、請求項45に記載の抗体。
【請求項47】
前記抗体が、以下:
(a)配列番号2を含む重鎖可変領域のCDR1;
(b)配列番号5を含む重鎖可変領域のCDR2;
(c)配列番号8を含む重鎖可変領域のCDR3;
(d)配列番号11を含む軽鎖可変領域のCDR1;
(e)配列番号14を含む軽鎖可変領域のCDR2;および
(f)配列番号17を含む軽鎖可変領域のCDR3、
を含む、請求項45に記載の抗体。
【請求項48】
前記抗体が、以下:
(a)配列番号3を含む重鎖可変領域のCDR1;
(b)配列番号6を含む重鎖可変領域のCDR2;
(c)配列番号9を含む重鎖可変領域のCDR3;
(d)配列番号12を含む軽鎖可変領域のCDR1;
(e)配列番号15を含む軽鎖可変領域のCDR2;および
(f)配列番号18を含む軽鎖可変領域のCDR3、
を含む、請求項45に記載の抗体。
【請求項49】
単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位であって、以下:
(a)配列番号19、配列番号20、配列番号21、および配列番号36からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;ならびに
(b)配列番号22、配列番号23、および配列番号24からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
を含み、該抗体が、IRTA−5に特異的に結合する、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位。
【請求項50】
前記抗体が、以下:
(a)配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および
(b)配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
を含む、請求項49に記載の抗体。
【請求項51】
前記抗体が、以下:
(a)配列番号20のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および
(b)配列番号23のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
を含む、請求項49に記載の抗体。
【請求項52】
前記抗体が、以下:
(a)配列番号21または配列番号36のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および
(b)配列番号24のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
を含む、請求項49に記載の抗体。
【請求項53】
請求項1〜52のいずれか1項に記載の抗体、またはその抗原結合部位、および薬学的に受容可能なキャリアを含有する組成物。
【請求項54】
請求項1〜52のいずれか1項に記載の抗体、またはその抗原結合部位を含む、治療因子に結合した免疫複合体。
【請求項55】
請求項54に記載の免疫複合体および薬学的に受容可能なキャリアを含有する組成物。
【請求項56】
前記治療因子が、細胞毒である、請求項54に記載の免疫複合体。
【請求項57】
請求項56に記載の免疫複合体および薬学的に受容可能なキャリアを含有する組成物。
【請求項58】
前記治療因子が、放射性同位元素である、請求項54に記載の免疫複合体。
【請求項59】
請求項58に記載の免疫複合体および薬学的に受容可能なキャリアを含有する組成物。
【請求項60】
請求項1〜52のいずれか1項に記載の抗体、または抗原結合部位を含む、第2の機能的部分に結合した二重特異性分子であって、該第2の機能的部分が、該抗体、またはその抗原結合部位と異なる結合特異性を有する、二重特異性分子。
【請求項61】
請求項60に記載の二重特異性分子、および薬学的に受容可能なキャリアを含有する組成物。
【請求項62】
請求項1〜52のいずれか1項に記載の抗体、またはその抗原結合部位をコードする単離された核酸分子。
【請求項63】
請求項62に記載の核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項64】
請求項63に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項65】
ヒト免疫グロブリン重鎖の導入遺伝子およびヒト免疫グロブリン軽鎖の導入遺伝子を有するトランスジェニックマウスであって、該マウスが、請求項1〜52のいずれか1項に記載の抗体を発現する、トランスジェニックマウス。
【請求項66】
請求項65に記載のマウスから調製されるハイブリドーマであって、該ハイブリドーマが、前記抗体を産生する、ハイブリドーマ。
【請求項67】
抗IRTA−5抗体を調製するための方法であって、以下:
(a)(i)配列番号1、配列番号2、および配列番号3からなる群より選択されるCDR1配列;配列番号4、配列番号5、および配列番号6からなる群より選択されるCDR2配列;ならびに配列番号7、配列番号8、および配列番号9からなる群より選択されるCDR3配列を含む重鎖可変領域の抗体の配列;または(ii)配列番号10、配列番号11、および配列番号12からなる群より選択されるCDR1配列;配列番号13、配列番号14、および配列番号15からなる群より選択されるCDR2配列、ならびに配列番号16、配列番号17、および配列番号18からなる群より選択されるCDR3配列を含む軽鎖可変領域の抗体の配列を提供する工程;
(b)少なくとも1つの可変領域の抗体の配列内の少なくとも1つのアミノ酸残基を変更して、少なくとも1つの変更された抗体の配列を形成する工程であって、該配列が、該重鎖可変領域の抗体の配列および該軽鎖可変領域の抗体の配列から選択される、工程;および
(c)該変更された抗体の配列をタンパク質として発現させる工程
を包含する、方法。
【請求項68】
IRTA5を発現する腫瘍細胞の増殖を阻害する方法であって、請求項1〜52のいずれか1項に記載の抗体、またはその抗原結合部位を、該腫瘍細胞の増殖を阻害するのに有効な量で該細胞と接触させる工程を包含する、方法。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2007−530076(P2007−530076A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506416(P2007−506416)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【国際出願番号】PCT/US2005/010265
【国際公開番号】WO2005/097185
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(504378238)メダレックス インコーポレイテッド (20)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【国際出願番号】PCT/US2005/010265
【国際公開番号】WO2005/097185
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(504378238)メダレックス インコーポレイテッド (20)
【Fターム(参考)】
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