説明

IT機器室の空調システム

【課題】 熱負荷に対して十分な給気量を確保することができ、IT機器室内を歩行する際にも快適性をもたせることが可能なIT機器室の空調システムを提供する。
【解決手段】 IT機器室10に複数のラック20を背面20bが対向するように配置し、背面20bが対向するラック20同士の背面20bの左右両端側を仕切壁22を介して連結し、仕切壁22とラック20の背面20bとによって包囲され少なくともIT機器室10の天井裏9の排気通路に開口する第1の空間24を、暖気Hcが流れるホットアイルHに形成し、IT機器室10におけるラック20の前面20a側が接する第2の空間25を、ホットアイルHと区画され空調機26、28によって開放空間から冷気Caが供給されるコールドアイルCに形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子機器類を収納する複数のラックが配置されるIT機器室の空調システムに関し、とくに十分な給気量を確保することにより熱負荷の増大に対応することが可能なIT機器室の空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器類を収納する複数のラックが配置されるデータセンタなどにおいては、ラックからの発熱対策が重要課題であり、室内を効率的に冷却するための空調システムが採用されている。
【0003】
データセンタにおける空調システムの一例として、通路の床面に設けられた孔から上方に向けて冷却用空気を供給する空調システムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、冷気が供給される空間の上部開口を天面部材で覆い、冷気が供給される空間の気密性を高めた空調システムが知られている(例えば、特許文献2参照。)。さらに、暖気が排出されるラックの背面側に大風量を送風できるファンを設け、発熱量に応じて適切な量の冷気を供給する空調システムも知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【0004】
データセンタなどにおけるIT機器室の空調システムにおいては、熱負荷の増大、熱汚染の防止の観点から、IT機器室内を冷気が流れるコールドアイルと暖気が流れるホットアイルに区画する潮流がある。IT機器室内をコールドアイルとホットアイルを区画する空調システムにおいては、サーバなどの電子機器類から生じる暖気と空調機から供給される冷気の混合が抑制され、IT機器室内の冷却性能を高めることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−64303号公報
【特許文献2】特開2009−79890号公報
【特許文献3】特開2009−140421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の空調システムにおいては、IT機器室におけるコールドアイルが限られた領域のため、冷気を供給する給気口を配置する場所が制約され、熱負荷に対して十分な給気量を確保することが困難であるという問題がある。そのため、熱負荷の増大に対しては、給気量の確保が不十分となり、IT機器室の冷却性能を高めることが難しいという問題がある。
【0007】
特許文献1の空調システムでは、冷気を床面に設けられた孔から室内に供給しているので、床面側から冷気が供給できない建物構造の空調には適用できず、十分な給気量を確保することが難しい。また、特許文献2の空調システムでは、冷気が供給される空間を密閉しているので、発熱量が多い場合は室内を歩行する際には、ラックからの暖気によって異様な暑さを感じ、不快感が生じるという問題がある。特許文献3の空調システムでは、通路側に暖気が吹き出されるので、特許文献2と同様な問題がある。
【0008】
そこでこの発明は、熱負荷に対して十分な給気量を確保することができ、IT機器室内を歩行する際にも快適性をもたせることが可能なIT機器室の空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、背面から暖気を排出する複数のラックが配置されるIT機器室の空調システムであって、前記IT機器室に前記複数のラックを前記背面が対向するように配置し、前記背面が対向するラック同士の前記背面の左右両端側を仕切壁を介して連結し、前記仕切壁と前記ラックの前記背面とによって包囲され少なくとも前記IT機器室の天井裏の排気通路に開口する第1の空間を、前記暖気が流れるホットアイルに形成し、前記IT機器室における前記ラックの前面側が接する第2の空間を、前記ホットアイルと区画され空調機によって開放空間から冷気が供給されるコールドアイルに形成したことを特徴とするIT機器室の空調システムである。
【0010】
この発明によれば、ラックの背面からの暖気は第1の空間によって形成されるホットアイルを経由して天井裏の排気通路に排出され、第2の空間によって形成されるコールドアイルには開放空間から冷気が空調機によって供給される。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のIT機器室の空調システムにおいて、前記第1の空間における少なくとも前記天井裏の排気通路の開口部には、前記暖気の風量調整のための風量調整部材が設けられていることを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のIT機器室の空調システムにおいて、前記コールドアイルの温度を計測する温度センサを前記IT機器室の天井面側に設け、該温度センサにより計測された温度を前記空調機による冷気の給気量の制御の指標とすることを特徴としている。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のIT機器室の空調システムにおいて、前記天井裏に前記コールドアイルに開口する給気口を取り付け、前記給気口に前記天井裏に設けられ前記コールドアイルに前記冷気を供給する給気ダクトを接続したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、IT機器室のホットアイルは、仕切壁とラックの背面とによって包囲される第1の空間のみとなるので、IT機器室における冷気の給気位置の制約が緩和され、給気位置の配置の自由度を高めることができ、冷気の吹き出し位置を任意の位置に配置することができる。これにより、IT機器室への冷気の給気量を増加することができ、ラックの熱負荷の増大に対応することが可能となる。
【0015】
また、第IT機器室内を歩行する歩行者は、十分な冷気が供給されるコールドアイルを歩行することになるので、従来技術のように歩行者が異様な暑さを感じることはなく、歩行者に快適性をもたらすことができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、第1の空間における少なくとも天井裏の排気通路の開口部には、暖気の風量調整のための風量調整部材を設けるようにしているので、第1の空間から天井裏の排気通路へ排出される暖気の風量を空調機の送風能力に見合った風量に調整することができる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、温度センサにより計測された冷気の温度を空調機による冷気の給気量の制御の指標としているので、計測値と給気温度との関係を一定に保つことができ、IT機器室内の温度を適正に保つことができる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、第2の空間と接する天井面にコールドアイルに開口する給気口を形成し、天井裏に給気口を介してコールドアイルに冷気を供給する給気ダクトを設けたので、コールドアイルには、IT機器室の側面方向からと給気口からの双方から冷気を供給することができ、ラックの熱負荷の増大に対応することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態1に係わるIT機器室の空調システムの平面図である。
【図2】図1のIT機器室の空調システムの断面図である。
【図3】図1のIT機器室の空調システムにおける第1の空間の近傍を示す拡大平面図である。
【図4】図3のA−A線に沿う断面図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係わるIT機器室の空調システムの断面図である。
【図6】本発明の実施の形態3に係わるIT機器室の空調システムの断面図である。
【図7】本発明の実施の形態4に係わるIT機器室の空調システムの斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態5に係わるIT機器室の空調システムが適用されるIT機器室の平面図である。
【図9】図8の空調システムの変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
つぎに、この発明の実施の形態について図面を用いて詳しく説明する。
【0021】
(実施の形態1)
図1ないし図4は、この発明の実施の形態1を示している。図1において、IT機器室の空調システム1は、例えばデータセンタのIT機器室10の空調に用いられている。図2に示すように、IT機器室10は、床構造材2と天井スラブ3との間に位置しており、周囲が側壁4、5によって包囲されている。床構造材2の上方には、グレーチング6が設けられている。グレーチング6は、金属部材からなる格子状の床部材であり、通気性を有している。床下構造材2とグレーチング6との間は、冷気Caが流れる床下空間7に形成されている。天井スラブ3の下方には、水平方向に延びる天井板8が設けられている。天井スラブ3と天井板8との間は、排気通路としての天井裏9に形成されている。IT機器室10は、グレーチング6と天井板8によって床下空間7と天井裏9に区画されている。
【0022】
IT機器室10には、電子機器類21を収納する複数のラック20が配置されている。図3に示すように、ラック20は、冷気Caを吸込む前面20aと、暖気Haを排出する背面20bを有している。IT機器室10の複数のラック20は、図1に示すように背面20bが対向するように配置されている。図4に示すように、一方のラック20の背面20bと他方のラック20の背面20bとの距離は、長さLに設定されている。背面20bが対向するラック20同士は、背面20bの左右両端側が仕切壁22を介して連結されている。すなわち、背面20bが対向するラック20同士は、2つの仕切壁22を介して連結されている。2つの仕切壁22は、ラック20の高さと同一に設定されている。
【0023】
図3に示すように、一方の仕切壁22は、一端部22aが一方のラック20の背面20bに連結されており、他端部22bが他方のラック20の背面20bに連結されている。同様に、他方の仕切壁22は、一端部22aが一方のラック20の背面20bに連結されており、他端部22bが他方のラック20の背面20bに連結されている。仕切壁22は、背面20bの左右両端側を連結するものであればよく、端部22a、22bをラック20の背面20bそのものでなく、ラック20の左側面20cまたは右側面20dに連結する構成としてもよい。仕切壁22は、ラック20内の電子機器類21の点検や修理のために、ラック20に対して取り外し可能な構造とする。また、仕切壁22をラック20に固定する場合は、仕切壁22に点検や修理のためのドアを設けてもよい。
【0024】
対向する一方のラック20と他方のラック20との間は、2つの仕切壁22によって区画された第1の空間24に形成されている。すなわち、第1の空間24は、2つの背面20bと2つの仕切壁22によって四方が包囲された空間に形成されている。図4に示すように、第1の空間24の下端は、床板部材6bによって閉止されている。これにより、後述するホットアイルHには、床下空間7からの冷気Caの侵入が阻止されている。すなわち、床面側におけるホットアイルHを除く領域からは、上方に向けてラック20の空気吸込方向と直交する方向に冷気Caが供給されるようになっている。
【0025】
天井板8は、ラック20の上面20fと接している。第1の空間24の上端は、天井板8の開口部8aを介して排気通路としての天井裏9に開口している。第1の空間24は、2つのラック20の背面20bから排出される暖気Haが流れるホットアイルHに形成されている。2つのラック20の背面20bから排出される暖気Haは、第1の空間24によって形成されたホットアイルHを経由して、排気通路としての天井裏9に流れるようになっている。この暖気Haの流れは、後述する空調機26、28の電動ファン26bにより形成されるが、天井裏9に補助ファン(図示略)を設け、この補助ファンの暖気Haの吐出口を空調機26、28の吸込口に向けることにより、上述の暖気Haの流れを形成する構成としてもよい。
【0026】
天井板8の開口部8aには、暖気Haの風量調整のための風量調整部材8bが設けられている。風量調整部材8bは、流路抵抗を増大させるための部材であり、多孔板から構成されている。風量調整部材8bは、電子機器類21であるサーバの稼動が100パーセントであることを基準として、必要風速から開口率(排気域の平面面積中の開口面積/排気域の平面面積)が設定されている。
【0027】
IT機器室10におけるラック20の前面20a側が接する第2の空間25は、第1の空間24によって形成されたホットアイルHと区画されている。第2の空間25は、空調機26、28によって冷気Caが供給されるコールドアイルCに形成されている。空調機26、28は、CRAC(Computer Room Air Conditioning)と呼ばれる精密空調機から構成されている。図2に示すように、空調機26は熱交換用のコイル26aと電動ファン26bを有している。
【0028】
空調機26は、IT機器室10の側壁4の近傍に配置されている。空調機26は、天井板8を貫通し天井裏9内まで延びる空気導入口26cを有している。空調機26は、IT機器室10内の天井裏9の暖気Haを取り込み、これらの空気を冷却した冷気Caを側壁4側から床下空間7およびグレーチング6を介してIT機器室10のコールドアイルCおよびホットアイルHに供給する機能を有している。空調機28は、IT機器室10の側壁5の近傍に配置されている。空調機28は、天井板8を貫通し天井裏9内まで延びる空気導入口28cを有している。空調機28は、IT機器室10内の天井裏9の暖気Haを取り込み、これらの空気を冷却した冷気Caを側壁5側から床下空間7およびグレーチング6を介してIT機器室10のコールドアイルCおよびホットアイルHに供給する機能を有している。
【0029】
つぎに、実施の形態1における作用について説明する。
【0030】
IT機器室10の複数のラック20に収納されているサーバなどの電子機器類21は、常時稼動しており、ラック20の背面20bからは電子機器類21の発熱によって暖気Haが排出されている。ラック20からの暖気Haは、第1の空間24によって形成されたホットアイルHにのみ排出され、この暖気Haは天井板8の開口部8aを経て排気通路としての天井裏9に排出される。ここで、開口部8aには、暖気Haの風量調整のための風量調整部材8bが設けられているので、第1の空間24から天井裏9の排気通路へ排出される暖気Haの風量を空調機26、28の送風能力に見合った風量に調整することができる。
【0031】
空調機26、28に取り入れたIT機器室10内の空気は、冷気空調機26、28によって冷却され、この冷気Caは床下空間7およびグレーチング6を介してIT機器室10に供給される。空調機26、28からIT機器室10に供給された冷気Caは、ラック20で形成される島状の区画と区画の間、および廊下に供給され、かつコールドアイルCに供給される。
【0032】
このように、IT機器室10のホットアイルHは、仕切壁22とラック20の背面20bとによって包囲される第1の空間24のみとなるので、IT機器室10における冷気Caの給気位置の制約が緩和され、給気位置の配置の自由度を高めることができる。すなわち、第1の空間24を形成することにより、IT機器室10の大半をコールドアイルCとすることができるので、従来の空調システムに比べて冷気Caの吹き出し位置の自由度を高めることができる。そのため、冷気Caの吹き出し位置を任意の位置に配置することができる。これにより、IT機器室10への冷気Caの給気量を増加することができ、ラック20の熱負荷の増大に対応することが可能となる。ここでは、ラック20間に形成されたホットアイルH以外の空間が開放空間として形成されている。開放空間には、上記床下空間7からの給気に別方向からの給気を加えること、または床下空間7からの給気に替えて別方向からの給気をすること、天井等からのダクトを介して給気をすること等、適宜実施形態の修正は可能である。
【0033】
また、給気位置の配置の自由度が高まることで、局所的に冷気Caの給気量が不足する領域は周辺に供給される冷気Caによってカバーすることができ、局所的に冷気Caが過剰となる領域は周辺に冷気Caを拡散できるので、空調システムの融通性を高めることができる。
【0034】
そして、第IT機器室10内を歩行する歩行者は、十分な冷気Caが供給されるコールドアイルCを歩行することになるので、従来技術のように歩行者が異様な暑さを感じることはなく、歩行者に快適性をもたらすことができる。
【0035】
さらに、コールドアイルCに供給される冷気Caは、第1の空間24から排出される暖気Haと混合することがないので、IT機器室10内の冷気Caの気流分布を気にする必要がなく、IT機器室10の空調システム1の設計が容易となる。
【0036】
(実施の形態2)
図5は、この発明の実施の形態2を示している。実施の形態2が実施の形態1と異なるところは、コールドアイルCの冷気Caの温度計測の有無であり、その他の部分は実施の形態1に準ずるので、準ずる部分に実施の形態1と同一の符号を付すことにより、準じる部分の説明を省略する。後述する他の実施の形態についても同様とする。
【0037】
図5に示すように、IT機器室10の天井板8には、コールドアイルCの冷気Caの温度を計測する2つの温度センサ30が設けられている。一方の温度センサ30は、IT機器室10の側壁4寄りに設けられており、他方の温度センサ30は、IT機器室10の側壁5寄りに設けられている。一方の温度センサ30は、配線30aを介して空調機26に接続されている。他方の温度センサ30は、配線30bを介して空調機28に接続されている。温度センサ30によって計測されたコールドアイルCの温度は、空調機26、28による冷気Caの給気量の制御の指標とされている。つまり、空調機26〜29は、温度センサ30による測定値TIndと給気温度TSupとの関係が、TInd=TSup+Cとなるように、IT機器室10の空調制御を行う。ここで、Cは加算値であり、Cはゼロであってもよい。
【0038】
このように構成された実施の形態2においては、温度センサ30によって計測された温度に基づき空調機26、28を制御しているので、測定値TIndと給気温度TSupとの関係を一定に保つことができ、IT機器室10内のコールドアイルCにおける所定の場所の温度を設定値に対して適正に保つことができる。また、複数の位置に温度センサ30を設けることにより、最も発熱の大きなホットアイルHに合わせて冷気Caを供給でき、IT機器室10の効率的な空調を行うことが可能となる。
【0039】
(実施の形態3)
図6は、この発明の実施の形態3を示している。図6に示すように、天井裏9側にはIT機器室10のコールドアイルCに開口する複数の給気口32aが取付けられている。各給気口32aは、コールドアイルCに冷気を供給する給気ダクト32に接続されている。給気ダクト32は、天井裏9に配置されており、水平方向に延びている。給気ダクト32の上流端は、空調機29に接続されている。空調機29は、第1の空間24によって形成されるホットアイルHからの暖気Haを取り込むようになっており、空調機29に取り込まれた暖気Haは冷却されたのち、冷気Caとなって給気ダクト32を介してコールドアイルCに供給される。給気ダクト32および給気口32aは、外面が断熱材によって覆われており、結露の発生が防止されている。
【0040】
コールドアイルCに供給された冷気Caは、ラック20を冷却したのち暖気Haとなり、IT機器室10に設けられた風量調整部材33を介して空調機28に取り込まれるようになっている。空調機28に取り込まれ暖気Haは、冷却された後、冷気Caとなって床下空間7およびグレーチング6を介してコールドアイルCに供給される。冷気Caは、ラック20の吸込口に面した床面側からの供給のみでなく、廊下にも供給され、ラック20の左側面20cおよび右側面20d側にも供給される。IT機器室10に設けられた風量調整部材33は、実施の形態1における風量調整部材8bと同様に多孔板から構成されている。
【0041】
このように構成された実施の形態3においては、コールドアイルCには、床側と天井側からの双方から冷気Caを供給することができ、ラック20の熱負荷の増大に対応することが可能となる。また、風量調整部材33を設けることにより、IT機器室10から空調機28、29へ向かう暖Haの風量を調整することができ、風量調整部材33を通過する暖気Haの風量を空調機28、29の送風能力に見合った風量に調整することができる。
【0042】
(実施の形態4)
図7は、この発明の実施の形態4を示している。図7に示すように、IT機器室10には、背面20bが対向するように複数のラック20が配置されている。IT機器室10内の側壁4側には、空調機26、27が所定の間隔をおいて2組配置されている。空調機26は床側に位置しており、空調機27は空調機26の直上に位置している。同様に、IT機器室10内の側壁5側には、空調機28、29が所定の間隔をおいて2組配置されている。空調機28は床側に位置しており、空調機29は空調機26の直上に位置している。IT機器室10の床側の大部分には、グレーチング6が敷設されており、空調機26、28からの冷気Caがグレーチング6を介してIT機器室10内に供給されるようになっている。すなわち、グレーチング6の下方からの冷気Caは、IT機器室10内の2列のラックで形成される島状区画の間や廊下に供給される。
【0043】
一方の空調機26、27と他方の空調機28、29との間には、背面20bが対向するように複数のラック20が配置されている。図7に示すように、左側のラック20と左側のラック20は、中央のグレーチング6を隔てて配置されている。ラック20の上面は、ラック20の背面20b側に位置するホットアイルHからの暖気Haを天井裏9に流す開口部を除き、天井板8と接している。図8に示すように、IT機器室10の中央に位置するコールドアイルCは、左右両側に位置するホットアイルHと区画されており、コールドアイルCにおけるグレーチング6は、歩行者が歩行可能な通路に形成されている。
【0044】
天井裏9には水平方向に延びる2つの給気ダクト35が設けられている。一方の給気ダクト35の上流端は、空調機27に接続されている。他方の給気ダクト35の上流端は、空調機29に接続されている。天井板8には、コールドアイルCに冷気Caを供給する2つの給気口35aが取付けられている。一方の給気口35aは、左側のラック20と中央のラック20との間に位置する天井板8に取付けられており、他方の給気口35aは、右側のラック20と中央のラック20との間に位置する天井板8に取付けられている。給気ダクト35および給気口35aは、外面が断熱材によって覆われており、結露の発生が防止されている。グレーチング6および給気口35aが設けられるコールドアイルCは、歩行者が通過可能な通路となっており、この通路の長手方向の両端は開放されている。
【0045】
このように構成された実施の形態4においては、左側のラック20群と右側のラック20群の間に位置するコールドアイルCには、床側のグレーチング6と天井板8側の給気口35aの双方から冷気Caを供給することができ、ラック20の熱負荷の増大に対応することが可能となる。
【0046】
(実施の形態5)
図8および図9は、この発明の実施の形態5を示しており、図9は図8の変形例を示している。図9に示すように、IT機器室10内には、背面20bが対向するようにラック20が配置されている。背面20bと背面20bとの間に位置するホットアイルHの長手方向の端部は、仕切壁としてのドア22Dによって閉塞されている。ドア22Dには、開閉用のノブ22fが取付けられている。ホットアイルH内には、ドア22Dを開けることにより進入可能となっている。
【0047】
ホットアイルHの上端部には、リターンダクト50の第1のダクト50aが接続されている。第1のダクト50aは、天井板8を貫通して天井裏に達している。第1のダクト50aは、天井裏に沿って空調機27側に延びている。第1のダクト50aの下流側は、空調機27の上面に取付けられた第2のダクト50bに接続されている。対向するラック20から第1の空間24に排出された暖気Haは、リターンダクト50の第1のダクト50aおよび第2のダクト50bを介して空調機27に取り込まれるようになっている。空調機27に取り込まれた暖気Haは、冷却された後、冷気CaとなってIT機器室内に供給される。空調機27の下方に位置する空調機26は、IT機器室10内からの空気を冷却し、冷気Caを床下空間7およびグレーチング6を介してIT機器室10内のコールドアイルC(IT機器室10内の開放空間)に供給している。
【0048】
図8の空調システム1においても、ホットアイルHからの暖気Haは、図9のリターンダクト50と同様のリターンダクト(図示略)を介して空調機27、29に取り込まれるようになっている。空調機27、29に取り込まれた暖気Haは、冷却された後、冷気CaとなってIT機器室10内に供給される。空調機27、29の下方に位置する空調機26、28は、IT機器室10内からの空気を冷却し、冷気Caを床下空間からグレーチング6を介してIT機器室10内のコールドアイルC(IT機器室10内の開放空間)に供給している。
【0049】
このように構成された実施の形態5においては、図8および図9に示すように、第1の空間24によって形成されたホットアイルHからの暖気Haは、リターンダクトを介して空調機26、27に向かって流れ、空調機26側と空調機27側に分流される。空調機26側に流れた暖気Haは、冷却されて冷気Caとなり、グレーチング6を介してIT機器室10内のコールドアイルCに供給される。また、空調機27側に流れた暖気Haは、冷却されて冷気Caとなり、側方からIT機器室10内のコールドアイルCに供給される。したがって、IT機器室への冷気Caの給気量を増加することができ、熱負荷の増大に対応することが可能となる。
【0050】
以上、この発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、空調機26〜29は、冷気Caの給気量を可変とすることが可能となっているが、空調機26〜29による冷気Caの給気量を可変とせず、給気ダクト35および床下空間7に開度が自動調整できるダンパーを設けることにより、冷気Caの流量を調整する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 空調システム
4 側壁
5 側壁
6 グレーチング
7 床下空間
8 天井板
8a 開口部
8b 風量調整部材
9 天井裏
10 IT機器室
20 ラック
20a 前面
20b 背面
21 電子機器類
22 仕切壁
22D ドア(仕切壁)
24 第1の空間
25 第2の空間
26〜29 空調機
30 温度センサ
32 給気ダクト
32a 給気口
C コールドアイル
H ホットアイル
Ca 冷気
Ha 暖気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背面から暖気を排出する複数のラックが配置されるIT機器室の空調システムであって、前記IT機器室に前記複数のラックを前記背面が対向するように配置し、前記背面が対向するラック同士の前記背面の左右両端側を仕切壁を介して連結し、前記仕切壁と前記ラックの前記背面とによって包囲され少なくとも前記IT機器室の天井裏の排気通路に開口する第1の空間を、前記暖気が流れるホットアイルに形成し、前記IT機器室における前記ラックの前面側が接する第2の空間を、前記ホットアイルと区画され空調機によって開放空間から冷気が供給されるコールドアイルに形成したことを特徴とするIT機器室の空調システム。
【請求項2】
前記第1の空間における少なくとも前記天井裏の排気通路の開口部には、前記暖気の風量調整のための風量調整部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のIT機器室の空調システム。
【請求項3】
前記コールドアイルの温度を計測する温度センサを前記IT機器室の天井面側に設け、該温度センサにより計測された温度を前記空調機による冷気の給気量の制御の指標とすることを特徴とする請求項1または2に記載のIT機器室の空調システム。
【請求項4】
前記天井裏に前記コールドアイルに開口する給気口を取り付け、前記給気口に前記天井裏に設けられ前記コールドアイルに前記冷気を供給する給気ダクトを接続したことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のIT機器室の空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−149585(P2011−149585A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9640(P2010−9640)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(000169499)高砂熱学工業株式会社 (287)
【Fターム(参考)】