説明

IgA及びIgMを媒介する腎臓症を診断するための方法及び組成物

【要 約】
本発明は、哺乳動物におけるIgA又はIgM腎臓病症、例えば、IgA腎症、アレルギー性紫斑病及びIgM腎症を診断するための非侵襲的方法を特徴とする。本発明はさらにこれらの病症の診断中に使用される組成物及びキットを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は腎臓症を診断するための方法、及びこのような病気の診断において使用される組成物及びキットに関する。
【背景技術】
【0002】
IgA腎症(IgAN、ベルジェ(Berger's)病)は、腎糸球体におけるメサンギウムにIgA1が沈着することを特徴とし、世界でもっとも普遍的な糸球体腎炎である。IgAの沈着は、一般的に20代又は30代において自然に発生し、免疫複合体であると考えられる。抗原は未知であるが、IgA自体が抗原であるかもしれない。この病気の罹患率はアメリカ及びヨーロッパで高いが、アジアでもっとも高い。日本における発症率は恐らく腎生検のすべての40−50%であろう。経年持続又は間欠性の顕微鏡的血尿及びタンパク尿の検出がこの病気の臨床特徴であり、なお患者の50%以上は高血圧に至っている。これまでに考えられていたような良性の病気ではなく、約15−40%の患者が最終的に腎不全になってしまう。実際にIgA腎症は原発性腎糸球体疾患により最終的に腎臓移植になった患者における末期腎不全の主因である。
【0003】
アレルギー性紫斑病(HSP)は他のIgA1を媒介する感染後の血管炎でもあり、年齢2−11歳の児童においてもっとも普通であり、腎の損傷がIgANに類似する。罹患率は14歳以下では22/100,000であり、4〜6歳のグループにおいて70/100,000である。HSPがIgANと類似しているため、近年、IgANが腎に限定されたHSPであるという観点も認められた(SmithとFeehally、Springer Semin. Immunopathol. 24:477−493、2003)。
【0004】
IgM腎症(IgMN)はネフローゼ症候群を誘発し、IgMのメサンギウムに沈着することを特徴とする。この沈着が循環でのIgMの集合又は免疫複合体からのものと推測され、IgANと類似している。IgMNは児童からの発見が一般的であり、IgMNの臨床特徴が微小変化型疾患(MCD)と非常に類似し、その中で、ネフローゼ症候群が主な臨床症状であるが、IgMNによる高血圧の発症率はMCDより高い。
【0005】
本発明以前、これらの病気の診断は腎組織検体を採取することにより病理学のための検査として腎生検が行われていた。腎臓病理医が腎組織に対して免疫蛍光染色を行う。これには連続的に抗ヒトIgA抗体を適用することが必要であり、次に蛍光染料に接合された二次抗体により現像を行い、IgAN及びHSPを診断するためにIgAに基づく抗体−抗原複合体の位置を特定する。IgMNの診断において、同様な操作を応用してもよいが、使用される抗体がヒトIgMと特異的に結合する。共存であるIgGより高レベルの腎糸球体IgAを検出し、変化しながら存在する補体組成があれば、IgA腎症の診断が可能である。IgMNについても同じく、腎糸球体におけるIgMの沈着で該疾患を定義する。
【0006】
一般的に、生検は、腎臓の位置が超音波又はCAT走査で特定された、腹臥位の患者に対して行われる。局所麻酔の状態で皮膚に小切開を作成する。適当な息こらえプロトコルを利用して、生検針により1〜1.5cm×2mm程度の検体を採取し、次に、針を抜く。患者は病院において12〜24時間仰臥位で横たわって、出血、痛み、動・静脈瘻、尿路感染、及びまれな死亡を含む合併症を検出するためにモニタリングされる。
【0007】
出血が腎生検においてもっとも普通の合併症である。生検の前に患者に対して凝血能力を検査しても、患者の多くが短時的な顕微鏡的血尿を経験する。まれに、出血は輸血又は手術が必要になるほど重い。経皮腎生検における出血の0.1−0.4%は手術によりコントロールする必要があり、すべての針生検に対し、約0.06%(6/10,000)が腎の摘出により出血を止める必要があるものと推定される。
【0008】
痛みはもっともよくある問題であり、短時間である。12時間以上続く痛みは生検の約4%に発生する。血の塊によるいずれかの尿管のつまり、又は皮膜下の血腫が発生する場合に、大きな又は長く続く痛みが発生するおそれがある。
2本の血管の間の動・静脈瘻は生検針による隣接する動脈及び静脈の壁の損傷によって生じる。このような瘻はまれであり、一般的に1〜2年内に自発的に閉塞される。
死亡は腎生検の約0.1%に発生する。
【0009】
腎生検がすべての患者に対して適当であるわけではない。禁忌としては救済策のない出血、小腎、医学的にコントロールできない重症高血圧、多発性のう胞腎又は腎腫瘍、水腎症(尿流の閉塞による腎の損害)、腎臓又は周辺の組織の活動性感染、患者の協力不能、及び生まれつきの単一腎を含む。経皮生検の代用方法は開放性手術生検及び経頸静脈腎生検である。
【0010】
そのため、より安全で、より信頼でき、より侵襲の少ない、IgA腎症、HSP及びIgM腎症を診断するための方法が希望される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段及びその効果】
【0011】
本発明は、哺乳動物(例えば、ヒト)のIgA又はIgM腎臓症を診断するための方法であることを特徴とし、前記方法は、哺乳動物にIgA又はIgMと特異的に結合する化合物を投与し(例えば静脈内)、前記哺乳動物の腎臓における前記化合物を検出することを含む前記哺乳動物のIgA或いはIgM腎臓症を診断するための方法であって、前記腎臓症のない哺乳動物の腎臓における前記化合物量に対する前記哺乳動物の前記腎臓における前記化合物量の増加が前記哺乳動物における前記IgA又はIgM腎臓症の診断に寄与する。
【0012】
化合物としては、ペプチド(例えば、ヒトFcαR1(SEQ ID NO:2)、ヒトFcα/μ受容体(SEQ ID NO:6)、ポリIg受容体(SEQ ID NO:7)、Sir22(SEQ ID NO:3)、連鎖球菌IgA結合ペプチド(Sap、SEQ ID NO:4)、修飾したZ−ドメインタンパク質(SEQ ID NO:12)及び YDWIPSSAW(SEQ ID NO:9)、又はこれらのペプチドのIgA又はIgMと結合する断片)。ペプチドはN末端キャップ、C末端キャップ、D−アミノ酸、アミノ酸代用物、擬態ペプチド配列又はスペーサーの修飾を含んでよい。化合物は抗体、又は抗体のIgA又はIgMとの結合断片(例えば、抗ヒトIgA又は抗ヒトIgM)を含んでよい。化合物は量子ドットを含んでよい。化合物は放射性標識(例えば、99mTc、111In、66Ga、67Ga、68Ga、86Y、90Y、201Tl、55Co、60Cu、61Cu、62Cu、64Cu、67Cu、82Rb、185/187Re、及び186/188Re)に接続される。接続は、N3S、N2S2、PnAO、HYNIC、[M(CO)3(H2O)3]+、PADA、DTPA、DOTA、ヒスチジン、トリペプチド(例えば、Lys−Gly−Cys、Cys−Gly−Cys及びGly−Gly−Cys)及びテトラペプチド(例えば、Gly−Ala−Gly−Gly又はCys−Gly−Cys−Gly)を含む二官能性キレート剤により行ってよく、化合物は常磁性物質(例えば、ガドリニウム)に接続される。検出は画像化技術(SPECT、PET、平面走査及びMRI)により行ってよい。
【0013】
更なる実施の形態において、化合物はガラクトース及び結合対の第一構成部分(例えば、ストレプトアビジン)を含む。化合物の投与はさらにガラクトース−フィコールの投与を含んでよい。次に、検出は、哺乳動物に結合対の第二構成部分(例えば、ビオチン)とガラクトースに接合した放射性標識(例えば、99mTc、111In、66Ga、67Ga、68Ga、86Y、90Y、201Tl、55Co、60Cu、61Cu、62Cu、64Cu、67Cu、82Rb、185/187Re、又は186/188Re標識)化合物を投与し(例えば、ヒト血清アルブミン)、次に哺乳動物の腎における当該放射性標識化合物を検出することで行う。
【0014】
本発明の第二の態様は、IgA又はIgMと結合する化合物、二官能性キレート剤、及び薬学的に受容可能な担体における検出可能標識を含む組成物において、前記IgA又はIgMと結合する化合物が前記二官能性キレート剤により前記検出可能標識に接続される。化合物は、ペプチド(例えば、ヒトFcαR1(SEQ ID NO:2)、ヒトFcα/μ受容体(SEQ ID NO:6)、ポリIg受容体(SEQ ID NO:7)、Sir22(SEQ ID NO:3)、連鎖球菌IgA結合性ペプチド(Sap、SEQ ID NO:4)、修飾した Z−ドメインタンパク質(SEQ ID NO:12)及び YDWIPSSAW(SEQ ID NO:9)、又はこれらのペプチドのいずれかのIgA又はIgMと結合する断片)を含んでよい。ペプチドはN末端キャップ、C末端キャップ、D−アミノ酸、アミノ酸代用物、擬態ペプチド配列又はスペーサーの修飾を含んでよい。当該化合物は抗体(例えば、抗ヒトIgA又は抗ヒトIgM)、又は抗体のIgA又はIgMと結合する断片を含んでよい。二官能性キレート剤はN3S、N2S2、PnAO、HYNIC、[M(CO)3(H2O)3]+、PADA、DTPA、DOTA、ヒスチジン、トリペプチド(例えば、Lys−Gly−Cys、Cys−Gly−Cys又はGly−Gly−Cys)又はテトラペプチド(例えば、Gly−Ala−Gly−Gly又はCys−Gly−Cys−Gly)がよい。
【0015】
第三の態様において、本発明によればIgA又はIgMと結合する化合物、二官能性キレート剤、薬学的に受容可能な担体における検出可能標識、及び哺乳動物におけるIgA又はIgM腎臓症の検出ための使用説明を含むキットを提供する。当該化合物はガラクトース及び結合対の第一構成部分(例えば、ストレプトアビジン)を含み、また、検出可能標識は放射性標識ペプチド(例えば、ヒト血清アルブミン)を含み、当該放射性標識(例えば、99mTc、111In、66Ga、67Ga、68Ga、86Y、90Y、201Tl、55Co、60Cu、61Cu、62Cu、64Cu、67Cu、82Rb、185/187Re、又は186/188Re)ペプチドはガラクトース及び結合対の第二構成部分(例えば、ビオチン)を含む。
【0016】
「IgA又はIgM腎臓症」は腎においてIgA又はIgMの沈着による腎臓病症を表す。これらの病症は例えば、IgA腎症、アレルギー性紫斑病及びIgM腎症を含む。
【0017】
「特異的に結合する」ことは例えば、生物検体における化合物、例えばIgA又はIgM等の化合物を認識、結合し、基本的に当該検体における化合物、例えば検体に自然に含まれるその外の化合物を認識、結合しないということを意味する。一つの例において、IgA1(SEQ ID NO:1)に特異的に結合する抗体はIgA1に存在し、IgA2に存在しない13アミノ酸区域を認識する。化合物と注目する化合物、例えば、IgAとの結合が検体におけるほかの成分との結合より少なくとも5倍、10倍、25倍、50倍、100倍又は1000倍強いことが好ましい。
【0018】
「N末端キャップ」はペプチド又はタンパク質アミノ末端に対するいずれかの化学修飾という意味を表す。本発明においては、ペプチド又はタンパク質にN末端キャップを添加することで、キャップのないタンパク質よりペプチド又はタンパク質の生体内分解性を低減させることが望ましい。N末端キャップの例ではアセト化及びペプチド環化を含む。
「C末端キャップ」はペプチド又はタンパク質のカルボキシル基末端に対するいずれかの化学修飾という意味を表す。本発明においては、ペプチド又はタンパク質にC末端キャップを添加することで、キャップのないタンパク質より、ペプチド又はタンパク質の生体内分解性を低減させることが望ましい。C末端キャップの例では、C末端のアミド化、還元及びペプチド環化を含む。
【0019】
「擬態ペプチド」は、生物分子を認識できる能力を含むペプチドの特徴を擬態する分子という意味を表す。本発明においては、擬態ペプチドをペプチド又はタンパク質に挿入させることで、エンドペプチダーゼ及びエクソペプチダーゼによる生体内分解を防止する。
【0020】
「スペーサー」は、内部又はN又はC末端においてペプチド配列におけるアミノ酸の代わりに挿入される低分子という意味を表す。スペーサーの例ではアミノヘキサン酸を含む。擬態ペプチドと同様に、本発明においてスペーサーがペプチド分解の防止に用いられる。
【0021】
「アミノ酸代用物」は、アミノ酸の代わりにペプチド又はタンパク質に置かれるいずれかの化合物という意味を表す。アミノ酸代用物の例としては、スペーサー、擬態ペプチド、イミド酸、及びメチル化アミド及び/又は側鎖ニトロメチルを有するアミノ酸が挙げられる。
【0022】
「断片」はより大きいペプチド又はポリヌクレオチドのいずれかの部分における少なくとも4、5、6、8、10、15、20又は25アミノ酸又はヌクレオチドを含む鎖という意味を表す。
「ペプチド」は、長さ又は翻訳後修飾にかかわらず、アミノ酸又はその類似物のいずれかの鎖(例えば、グリコシル化又はリン酸化)という意味を表す。
「量子ドット」は、蛍光半導体ナノ結晶という意味を表す。量子ドットを製造する材料の例ではCdS、CdSe、CdTe、CdHgTe/ZnS、InP、InAs及びPbSeを含む。
本発明の他の特徴及び利点は下述の具体的な説明、図面及び請求の範囲により自明である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、放射線走査で腎糸球体に基づく腎臓病、例えば、IgA腎症(IgAN)、アレルギー性紫斑病(HSP)及びIgM腎症(IgMN)を持っている患者を同定する。IgANは腎皮質の腎糸球体中にIgA1免疫グロブリン(SEQ ID NO:1)が時間依存的(年)に沈着することを特徴とする。HSPとIgANとの関係が密接であり、同じパターンのIgA1の沈着及び腎損傷を有する。IgMNは在糸球体におけるメサンギウム中にIgMが沈着することを特徴とする。IgA1又はIgMの沈着による腎臓病を持っている患者を同定するために、腎に対して閉じた針生検を行う必要があり、これは病理学検査のための組織核を発生し、中等危険度と痛みを持つ操作である。本発明により、IgA1又はIgMの沈着は放射線の画像化により診断され、腎皮質におけるIgA1又はIgMの沈着の検出は注入、標識されたIgA又はIgM結合分子を用いて行われる。
【0024】
腎を生検することで腎臓症を診断する時の、 IgAN、HSP及びIgMNを診断する重要な標準はIgA又はIgMが沈着する唯一の部位である糸球体にIgA1又はIgMの沈着が顕著に存在することである。正常人及びIgAN、IgMではない腎臓症を有する人はその糸球体に顕著量のIgA1又はIgMが存在しないため、本発明では腎皮質におけるIgA又はIgMのためのマクロ、非侵襲性検出方法を提案する。また、本発明は走査により2つの腎に関する完全な腎皮質の情報を提供するので、針生検方法における固有的サンプリング誤差を減少させる利点がある(Sund等、Nephrol. Dial. Transplant. 14:2445−2454、1999)。
【0025】
本発明はIgA1をターゲットとする複数種のIgA特異性ペプチド、ペプチドを標識できる利用可能な放射性同位体、及び該標識に用いられる接続物を特徴とする。一つの実施の形態において、放射性核素により標識されるIgA結合ペプチド又はタンパク質は、腎におけるIgA沈着物を検出するための診断放射性医薬品として用いられる。注入した放射標識されたIgA結合ペプチドは全身でのIgAと結合する。健康な腎の腎糸球体におけるIgAの沈着は非常に少ないため、IgANを持つ患者の腎糸球体にあるIgA沈着物により腎糸球体が存在する腎皮質からは高濃度の放射線が発生する。この放射線は各々核画像化技術により検出が行われるため、IgANの診断に用いられる。腎臓症の診断に対してヒト由来の抗体、又はヒト化抗体、又はヒトIgA1に対する特異性を有する動物単クローン抗体はIgAに結合する化合物とすることに適し、腎糸球体におけるIgA1沈着物の検出にも用いられる。
IgM腎症を含むその他のタイプの腎症についても診断を同様に行う。例えば、IgA結合タンパク質又は抗体の代わりに、抗ヒトIgM抗体又はその断片を使用し、IgMはIgM腎症において検出される。
【0026】
IgAの構造
ヒト免疫グロブリンA(IgA)の合成はその他の免疫グロブリン類の合計を超える(Rifai等、J. Exp. Med. 191:2171−2181、2000)。34 mg IgG及び7.9 mg IgMと異なり、毎日66 mg IgA/kg体重を生成すると推測される。IgA1(SEQ ID NO:1)及びIgA2と二つイソタイプのIgAが存在する。粘膜面(例えば、腸管、呼吸管、生殖管)に局所B細胞から合成されたIgA1とIgA2が存在する。しかし、血液において骨髓、リンパ及び脾におけるB細胞から生成されたIgA1は支配的である(Donadio及びGrande、N. Engl. J. Med. 347:738−748、2002)。
IgA1(SEQ ID NO:1)とIgA2のサブクラスの主な違いはIgA2ヒンジ領域において13アミノ酸がないことである。IgA1におけるこの領域では複数のO−グリコシル化されたセリンとスレオニンアミノ酸残基を含む。IgA2においてこの領域がないことはIgA2にO−結合型オリゴ糖がないことを説明する(図1)。
【0027】
IgMの構造
IgM(SEQ ID NO:15)はBリンパ細胞表面に単量体として見られるが、しかし、循環では形質細胞から分泌された後に主に五量体として存在する。IgM五量体は分子量が〜850−1,000 kDaであり、単量体がそれぞれ〜180 kDaである。IgMは〜10%の総血清のIgを示し、一次体液性応答時に合成された第一抗体イソタイプである。
成人における血漿IgMの通常レベルは約1 mg/mlであり、半減期は約5日である。これは半減期が25日で12 mg/mlのIgGのレベル、及び半減期が6日で1.8mg/mlのIgAと異なる。
【0028】
IgMタンパク質の約12重量%は炭水化物からなる。IgMのμ重鎖が4つのCHドメインからなる(μ及びε(IgE)重鎖のみはぞれぞれ4つの一定の重い領域ドメイン−CH1、CH2、CH3及びCH4を含有するが、γ(IgG)、α(IgA)及びδ(IgD)がそれぞれ3つの一定の重い領域ドメインを含有する。)
五量体において、同じ抗原結合部位が10個存在するため、IgMは優れた凝集抗体である。また、IgMは補体を活化する点でも効率的である。IgM単量体が鎖間のジスルフィド結合及びJ鎖で接続して五量体を形成し、前記J鎖はIgMに付着される2つの単量体であり、五量体を閉鎖させ、外見上環状の構造となる15 kDaペプチドである。(J鎖はIgA単量体を接続して二量体を形成する。)
【0029】
診断組成物
本文に用いられる診断放射性医薬品の組成は、(1)ヒトIgA又はIgMと特異的に結合する化合物、ペプチド又はタンパク質、及び(2)薬学的に受容可能な担体において、放射線の画像化技術(例えば、SPECT)による検出可能な、化合物、ペプチド、又はタンパク質にキレートされる化合物(例えば、放射性同位体)を含む。試薬は(1)と(2)とをキレートするための二官能性キレート剤(BFCA)を含むことが好ましい。
任意のIgA結合又はIgM結合化合物、タンパク質、又はペプチドも生物分子として診断に用いられるが、候補物はヒトIgA又はIgMに対する高度特異性及び親和性と、IgAを媒介する疾患についてのIgA1とIgA2を分ける能力と、免疫原性がより小さい小分子と、発現又は化学合成しやすいヒト由来のタンパク質と、発現、化学合成しやすいことと、生成、修飾しやすいことと、アシアロ糖タンパク受容体(ASGPR)の除去に用いられるガラクトースを含み、適当にグリコシル化されていることとを含む条件の何項か又はすべてに合うことが望ましく、これにより尿細管における滞留が最小限まで減らされる。
【0030】
IgAとIgM結合化合物/ペプチド
IgAとIgM結合タンパク質又はペプチドは、細胞上の天然ヒトIgA結合受容体、IgAとIgMを認識する受容体、細菌IgA結合タンパク質及びその誘導物としてのペプチド、抗ヒトIgA又はIgM抗体及びそれより小さい誘導物(例えば、Fab)、及び例えば、ファージディスプレイ法により発見されたIgA及びIgM特異性ペプチドを含んでよい。
【0031】
IgA特異性受容体
IgA特異性受容体の本来の機能としては、炎症細胞及び仲介物を炎症部位(CD89、SEQ ID NO:2)に動員すること、及びIgAの分布、例えばIgAが分泌物に入ること(pIgR、SEQ ID NO:7)を含む。
ヒトFcαR1(CD89、SEQ ID NO:2、図2参照)は2つの細胞外Ig様ドメイン(206アミノ酸)、膜貫通領域(19アミノ酸)及び細胞質尾部(31アミノ酸)を含む膜糖タンパク質である。膜貫通領域において、陽電性アルギニン残基はCD 89とFcRγ鎖を結合するのに必要である。細胞内シグナル伝達モチーフのないその他のFc受容体と同様に、FcRγ鎖との連合を経由しFcαRシグナルが細胞内に伝達される。FcRγ鎖は10 kDa程度のホモ二量体シグナル伝達単位である。CD89と結合して、γ鎖上の細胞内の免疫受容体チロシンに基づく活性化モチーフ(ITAM)がリン酸化され、細胞内のシグナル伝達経路下流を活性化させる。FcαR1は単量体、二量体としてのIgA1とIgA2と結合する。白血球のトランスフェクション研究により、FcαR1がIgGと結合しないことが分かった。FcαR1は好中球、単球、マクロファージ及び好酸球を含む骨髄性細胞のみで発現される。FcαR1は循環からIgA抗原複合体の除去に役割を果たすことが提案される(Mattu等、J. Bio. Chem. 273:2260−2272、1998、Leung等、J. Am. Soc. Nephrol. 11:241−249、2000、Westerhuis、Pathogenetic Aspects of IgA−Nephropathy 2001、第1章、第IV節:IgA receptors and IgAN、2001、PrintParters、Ipskamp、Enschede)。
【0032】
組み換えCD89(SEQ ID NO:5)における206アミノ酸の可溶部分はすでに幾つかの研究室での発現に成功し、この可溶性受容体はIgA検出用ペプチドとしてIgANを診断するための潜在能力を有する。可溶性CD89がIgANを悪化させるおそれがある議論の報告(Pierre Launay等、J. Exp. Med. 191:1999−2009)があったが、その高特異性と親和性のため、該断片はIgAと結合するのに好ましい。該タンパク質はグリコシル化され、アシアロ糖タンパク受容体(ASGPR)によるその除去を早くするとされる。それによって循環中の未結合配位子によるバックグラウンドノイズを最小限に減らし、且つ腎分解システムによる放射性核種の除去を最小限まで減らし、これもバックグラウンドノイズを減少する。より好ましくは、IgAと結合する活性を保持するペプチドのより小さい断片を使用する。
【0033】
特異性結合IgA及びIgMの受容体
ヒトFcα/μ受容体(Fcα/μR、SEQ ID NO:6)は中等から高度の親和性でIgA及びIgMを結合する。Fcα/μRは、多数のBリンパ細胞及びマクロファージ上に構成的に発現される(Sakamoto等、Eur. J. Immunol. 31:1310−1316、2001、Shibuya等、Nat. Immunol. 1 :441−446、2000)。
【0034】
ポリIg受容体(pIgR、SEQ ID NO:7)は分泌上皮細胞の側底面上に位置する内在性膜組成である。それはポリIg、主に二量体IgA及び五量体IgMの上皮貫通輸送を媒介する。pIgRは腸管、気管支、唾液腺、尿細管及び子宮を含む大部分のヒトの分泌上皮に位置し、ポリ免疫グロブリンにおけるJ鎖と結合する。IgAとの結合により、タンパク質が上皮細胞を通して粘膜固有層から腸管(又はその他のIgA分泌部位)に移転して粘膜を浴びる無細胞の流体になる。分泌型IgA(sIgA)は微生物と毒素を中和し、必要としてしない抗原の粘膜壁への通過を阻止する(Mattu等、J. Bio. Chem. 273:2260−2272、1998;Leung等、J. Am. Soc. Nephrol. 11:241−249、2000)。
【0035】
近年、メサンギウム細胞で発現されたトランスフェリン受容体を含むその他のIgA受容体も提案された(CD71、SEQ ID NO:8)(Haddad等、J. Am. Soc. Nephrol. 14:327−337、2003)。このタンパク質のIgA1沈着病症における作用は未知であるが、本発明に用いられる。
【0036】
細菌IgA結合ペプチド
ヒトIgA−Fcと結合する細菌表面タンパク質はAグループ連鎖球菌(化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes))及びBグループ連鎖球菌(ストレプトコッカス アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)、Sandin等、J. Immunol. 169:1357−1364、2002;Pleass等、J. Biol. Chem. 276:8197−8204、2001;Johnsson等、J. Biol. Chem. 274:14521−14524、1999;Stenbere等、J. Biol. Chem. 269:13458−13464、1994)に記載されている。化膿性連鎖球菌のIgA結合タンパク質はMタンパク質ファミリーメンバーであり、前記Mタンパク質ファミリーは重要な毒性因子としての二量体タンパク質の異種ファミリーである。すべてのMタンパク質はヒト血漿タンパクの一種又は多種と結合し、全ての化膿性連鎖球菌株における約50%がIgA−Fcと結合するMタンパクを発現する。MタンパクがIgAとの結合を促進する構造特徴を有し、例えば、幾つかの場合に、七つの重複パターンによりIgAにおける特異性部位と結合する巻き螺旋二量体を形成する。Sandin等から(J. Immunol. 2002、169:1357−1364)詳しく研究されたタンパク質Sir22(Mタンパクファミリーに属するため、タンパク質M22とも言われる。SEQ ID NO:3)は、十分にIgAと結合する一連の29アミノ酸を有する構造となる。29個残基IgA結合領域を含み、ヒトIgAと特異的に結合する50個残基合成ペプチド(SEQ ID NO:4)が設計されている。連鎖球菌IgA結合ペプチド又はSap(SEQ ID NO:4)と名づけた50量体は、分離したIgA結合ドメインの特性を有し、そのIgAにおける結合部位がFc領域に位置することは既知であり、ヒトCD89と結合する部位と同一である。SapはSir22のアミノ酸35−83の同族体であり、Sir22に存在しないC末端システイン残基を含むように設計された。Sapペプチドの二量体化が起こるようにシステインを導入し、このプロセスはCuCl2を加えたインキュベーションにより強化される。Lindahl等が行ったIgAと結合するテストにより、Sap二量体化がIgAとの結合に必要であると判明した。固形担体に固着されたSapペプチドはヒト血清由来の全てIgAイソタイプ、単量体及び重合体を消耗しきることが確認され、Sapクロマトグラフィーカラムからの溶出物はIgAしか含まない。そのため、二量体化SapはIgANの診断に好ましいIgA結合ペプチドを代表し、IgA結合特異性と見かけ上の高親和性を有する。また、Sapは、ペプチド固相合成(SPPS)方法により合成され、残基がまだ樹脂の固相にある時に、本領域の標準方法によりN又はC末端に二官能性キレート剤が添加される(BFCA、詳細は下述参照)。Sap類似物が小さいのであり(単量体については約5.5 kDaであり、二量体化した場合には11 kDaである)、これによって抗原性が最小限まで減らされる。
【0037】
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)タンパク A(SPA、SEQ ID NO:10)においては、Igと結合するドメインを五つ見付けることができる。SPAは免疫グロブリンのFc領域と強く結合する。Zドメイン(SEQ ID NO:11)はSPAにおけるこれら5つの同種ドメインの一つに由来する(Bドメイン、SEQ ID NO:13)58個のアミノ酸残基の組換えタンパク質である。Zドメインは最初にBドメインにおけるアミノ酸を少量変えることにより形成され、Bドメインは、IgGを含む樹脂による組換えタンパク質の親和性精製に用いられる遺伝子融合のパートナーとしての安定性を増強させる。ファージディスプレー技術を使用し、スウェーデンカロリンスカ研究所(Karolinska Institute)の研究者らはIgGと結合するZドメインを親和体IgA1又は修飾したZドメイン(SEQ ID NO:12)と呼ばれるIgAと結合するペプチドに改造した。(Graille等、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 97:5399−5404、2000;、Wahlberg等、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 100:3185−3190、2003;Ronnmark等、Eur. J. Biochem. 269:2647−2655、2002;Braisted及びWells、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 93:5688−5692、1996)。このペプチドは高度特異性及び親和性でヒトIgA1及びIgA2と結合する。これらの修飾のため、元のIgGと結合する親和性が完全に無くなってしまう。IgAにおける結合部位がFc領域にあると考えられる。それがヒトIgAとの結合を考えると、このペプチドはIgANの診断にも好ましい。
【0038】
抗ヒトIgA又はIgM抗体あるいはその抗原結合断片
多クローン又は単クローン抗ヒトIgA又はIgM抗体は、IgA又はIgM腎臓症の診断にも用いられる。これらの抗体は免疫した動物を含む多くの由来から得られ、或いは、動物/ヒトキメラタンパク質又はヒト化キメラタンパク質又はヒト由来タンパク質として作られる。これらはすべて本領域において既知のタンパク質注入法を行うための及び/又は診断剤を製造するための策略である。これらの抗体の完全分子及びAgと結合する断片はいずれも本発明の診断方法及び組成物に用いられる。しかし、好ましい試薬はヒト由来の単クローン抗体であり、また、IgAN又はHSPの場合に、IgA1とIgA2を認識するものが好ましい。そして、全長の抗体より優先である抗体タンパク質サブユニットはIgA又はIgM認識特異性を保有することが好ましい(Reff等、Canc. Control 9:152−166、2002、GormanとClark、Semin. Immunol. 2:457−66、1990;Antibodies as Medicines 2000 by Biotech Analytics)。
【0039】
好ましい実施の形態において、抗ヒトIgA1又は抗ヒトIgMの小抗体断片(例えば、ヒト由来の断片、ヒト化キメラ断片、キメラ断片、及び動物由来の断片)が用いられる。抗原結合活性を保有する抗体断片として、一価Fab、Fv又はscFv、あるいは二価F(ab)'2又は双重抗体である。(下図4における概念図参照(HudsonとSouriau、Nat. Med. 9:129−134、2003)。Fc領域を分子から削除することが好ましい。
【0040】
一つの具体例において、抗ヒトIgA1抗体がヒンジ領域におけるエピトープへ向けられているのは、前記のように、この領域がIgA1に独特なためである。このヒト由来の抗ヒトIgA1ヒンジ領域Fabは、ファージディスプレー技術で、例えばCambridge Antibody Technology(Cambridge、UK)のような販売者から開発された大型バクテリオファージ抗体ライブラリーにて容易に作られる。この技術は遺伝子を修飾するように早く近づける面で一般的な単クローン抗体を生成する方法より良いという利点がある。
その他の例としては、本領域の標準方法(例えば、本文に記載の方法)により作られた抗IgM単クローン抗体がIgMNの診断に用いられる。これらの抗体は独特なμ鎖ヒンジ配列をターゲット抗原として用いて(PLPVIAELPPKVSVFVPPRDGFFGNP、SEQ ID NO:17)作られ、前記ヒンジ配列は定常領域におけるCH1とCH2ドメインを架橋させる。また、IgM特異性抗体はIgMタンパク質の分離された完全なFc領域に対して作られ、このFcは高温でトリプシン切断により発生される(Plaut及びTomasi、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、65:318−322、1970)。
【0041】
IgM結合化合物
ファージディスプレー技術により、高親和性で鼠類IgMと結合するペプチドYDWIPSSAW(SEQ ID NO:9)が同定された。このペプチドはリウマチ因子(RF、主に抗IgG自己免疫抗体類としてのIgM類)から誘導されるIgG−コートラテックスビーズの凝集を抑制し、その他の免疫グロブリンとの結合能力がないことが示された(Pati M. Glee等、J Immunol、1999、163:826−833)。
【0042】
新規IgA又はIgM結合化合物の同定
本発明の方法と組成物は新規IgA結合又はIgM結合化合物を採用してよく、前記化合物が例えば、ファージディスプレー技術により同定される。ファージディスプレーは組み合わせスクリーニング技術であり、遺伝子銀行からの同義遺伝子を用いて所望のターゲットと互いに作用するタンパク質を開発、特徴づけてよい(George P. Smith、Science 228:1335、1985)。これらの遺伝子がDNA組換え技術により発生される必要な多様性を示すため、ファージごとに独特でランダムなペプチドを示す。これらの遺伝子が前に存在した遺伝子の代わりにファージに挿入されることでファージライブラリーを作成する。作成しておくライブラリーは付属キットによって容易に入手できる(例えば、Novagen T7Select)。Novagen のT7システムはcDNAライブラリーにおいて、好ましい溶菌性ファージディスプレー(J. Imm. Meth. 231 :39、Nature Biotech. 19:1193)であるが、その他のファージ、例えば、外殻タンパクpIII及びpVIIIとのN末端融合に基づく非溶菌性M13細菌繊維状ファージを使用してよい。次いで修飾したファージがその外殻上の挿入されたDNAによりコードするタンパク質を発現する。M13の場合に、pIIIディスプレーはより低い抗体価(1−5/ウイルス体)を有するので高親和性化合物を見付けることに用いられるが、pVIIIは高い抗体価(〜200/ウイルス体)を有するので親和性が非常に低い結合化合物を見付けることに用いられる。ファージディスプレーサービスはDyax Corp. of Cambridge、Mass.を含む会社から入手でき、前記会社はヒト抗体、タンパク質、構造ペプチド、及び線状ペプチドの4種類ファージライブラリーを提供する。全体のファージライブラリーからのファージはターゲットタンパク(例えば、IgAのα鎖又はIgMのμ鎖)と共にインキュベートされる。次いでIgA又はIgMに対する高親和性及び特異性を有するペプチドをディスプレーするバクテリオファージが選択される。これらのペプチドをコードするポリヌクレオチド配列が同定されて、配列決定され、その他のペプチドはさらなる分析のために製造される。次いで最も高い親和性、特異性及びその他の性質、例えば免疫原性のタンパク質が、本発明の方法又は組成物に用いられる最終候補物として選択される。ファージディスプレー遺伝子銀行又はライブラリーに数百万の関連遺伝子を含むので、本発明の診断方法及び組成物に有用なIgA又はIgMと結合する化合物の同定に用いられる。
【0043】
ポリペプチド発現
一般的に、本発明に用いられるポリペプチドは、いかなる標準技術で発生されてもよく、例えば、適合な発現媒介物うちの全部又は一部のポリペプチドコードポリヌクレオチド分子又はその断片で適合な宿主細胞を転換することにより発生できる。
【0044】
分子生物学分野の当業者は、広い範囲の多様な発現システムのうちのいずれも組み換えポリペプチドを提供することに用いられると理解すべきである。使用した正確な宿主細胞は、本発明の要旨ではない。本発明に用いられるポリペプチドは、原核宿主(例えば、大腸菌)又は真核生物宿主(例えば、サッカロマイセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)、Sf21細胞のような昆虫細胞、或いはNIH 3T3、ヒーラ又は好ましくはCOS細胞のような哺乳類細胞)から発生してもよい。これらの細胞は広い範囲の源(例えば、American Type Culture Collection,Rockland,Md.;また、例えば、Current Protocols in Molecular Biology,Eds. Ausubel等,John Wiley and Sons参照)から得られる。転換又はトランスフェクション方法及び発現媒介物の選択は選んだ宿主システムに依存する。転換とトランスフェクション方法は、例えば、Ausubel等(同上)に説明され、発現媒介物は、例えばCloning Vectors:A Laboratory Manual(Pouwels,P. H.等,1985,Supp. 1987)から提供するものから選ばれてもよい。
【0045】
ポリペプチドの製造に用いられる一つの具体な細菌発現システムは大腸菌pET発現システム(Novagen,Inc.,Madison,Wis.)である。該発現システムにより、ポリペプチドをコードするDNAは、発現できるように設計した方向でpET担体に挿入される。このようなポリペプチドをコードする遺伝子がT7調節シグナルによりコントロールされるため、該ポリペプチドの発現は宿主細胞のうちのT7 RNAポリメラーゼの発現を誘導して達成される。これは、一般的にIPTGの誘導に応じてT7 RNAポリメラーゼを発現する宿主株を用いて達成される。一旦発生すると、組み換えポリペプチドは、その後本分野で周知の標準方法、例えば、本文に記載の方法により分離される。
【0046】
ポリペプチド製造に用いられるもう一つの細菌発現システムは、pGEX発現システム(Pharmacia)である。このシステムは、融合タンパク質としての遺伝子又は遺伝子断片を高いレベルで発現し、且つ機能遺伝子生成物を早く精製、回収するように設計したGST遺伝子融合システムを使用する。注目するポリペプチドは日本住血吸虫(Schistosoma japonicum)由来のグルタチオンSタンパク質転移酵素のカルボキシル基末端と融合し,且つGlutathione Sepharose 4Bを使用した親和性クロマトグラフィー法により、細菌溶解物から容易に精製される。融合タンパク質は、穏和な条件下でグルタチオンによる溶出により回収することができる。融合タンパク質からグルタチオンS転移酵素ドメインの切断は、このドメイン上流の部位特異的プロテアーゼの認識部位が存在することにより促進される。例えば、pGEX-2Tプラスミドで発現するポリペプチドはトロンビンにより切断され、pGEX-3Xで発現するものは因子Xaにより切断される。
【0047】
組み換えポリペプチドは、一旦発現されると、例えば、親和性クロマトグラフィー法により分離される。一例として、本発明に用いられるポリペプチドに対して発生する抗体(例えば、本文の記載のように発生するもの)は、カラムと附着でき、且つ組み換えポリペプチドの分離に用いられる。親和性クロマトグラフィー法の前に、ポリペプチド接着細胞の融解と分画は、標準方法により行うことができる(例えば、上述したAusubel等参照)。
【0048】
一旦分離されると、必要に応じて、組み換えポリペプチドは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによりさらに精製(例えば、Fisher,Laboratory Techniques In Biochemistry And Molecular Biology,eds.,Work and Burdon,Elsevier,1980参照)されてもよい。
【0049】
本発明に用いるポリペプチド、特別に短ペプチド断片は、化学合成により生成してもよい(例えば、Solid Phase Peptide Synthesis,2版,1984 The Pierce Chemical Co.,Rockford,I11.に記載の方法を利用する)。
これらのポリペプチド発現と精製についての一般的な技術は、有用なペプチド断片又は類似体を製造、分離することに用いられてもよい(本文の記載)。
短ペプチド、例えば50ポリマー連鎖球菌IgA結合性ペプチド(Sap)と58ポリマー修飾のZドメインは化学合成されてもよい。
【0050】
抗体発生
抗体を発生するために、いかなる標準技術を使用してもよい。例えば、IgA1、IgM、又はその断片のコード配列(例えば、IgA1ヒンジ領域、アミノ酸217-241)は、グルタチオンS転移酵素(GST)とのC末端融合として化学合成又は発現を行うことができる(SmithとJohnson、Gene 67:31-40、1988)。融合タンパク質はグルタチオン-セファローズビーズ上で精製され、グルタチオンにより溶出され、(工学的な切断部位で)トロンビンで切断され、予防接種のマウス又はウサギに必要な程度まで精製される。初めの予防接種はフロイント完全アジュバント又は類似のアジュバントを使用して行われ、後の予防接種は、フロイント不完全アジュバントを使用して行われる。抗体力価は、トロンビンから切断されたGST融合タンパク質ポリペプチド断片を使用して、ELISA又はウエスタンブロットと免疫沈降分析により監視される。免疫血清はCNBr-セファロース-架橋ポリペプチドを使用してアフィニティー精製される。抗血清の特異性は無関係のGSTタンパク質のパネルを使用して測定される。
【0051】
GST融合タンパク質の代用物又は付加免疫原として、IgA又はIgMの比較的特有な免疫原性領域に対応するペプチドが発生され、且つ該ペプチドは導入したC末端リシンによりキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)と架橋される。これらのペプチドにおけるいずれの抗血清についても、BSAと接合するペプチド上で同様にアフィニティー精製され、ペプチド接合物のELISAとウエスタンブロットを使用し、GST融合タンパク質として発現したポリペプチドのウエスタンブロットと免疫沈降を使用することにより、特異度をテストする。
【0052】
あるいは、IgA又はIgMと特異的に結合したモノクローナル抗体は、標準ハイブリドーマ技術により製造される(例えば、Kohler等、Nature 256:495,1975;Kohler等、Eur. J. Immunol. 6:511,1976;Kohler等、Eur. J. Immunol. 6:292,1976;Hammerling等、Monoclonal Antibodies and T Cell Hybridomas、Elsevier,N. Y.,1981;Ausubel等参照し、上述した通り)。一旦発生されると、モノクローナル抗体は同様にウエスタンブロット又は免疫沈降分析(上述したAusubel等による方法)により特異性がテストされる。特異的にIgA、特にIgA1イソタイプ、又はIgMを認識する抗体は、本発明に有用であると認められる。あるいは、モノクローナル抗体は、IgA又はIgMとファージディスプレイライブラリーを使用して製造することができる(Vaughan等、Nat. Biotechnol. 14:309-314,1996)。
【0053】
好ましくは、抗体はIgA又はIgM断片を用いて産出され、前記断片は一般的に保存領域以外(例えば、IgA2にないがIgA1に存在する13アミノ酸の領域、図1参照)に位置し、又はIgMヒンジ領域における独特の配列で存在し、SEQ ID NO:14を参照、例えば、高周波の帯電残基の基準から見ると抗原であるかもしれない。具体例として、このような断片は標準PCR技術により生成され、且つpGEX発現担体内にクローニングされる(上述した通りAusubel等)。融合タンパク質は大腸菌で発現され、且つAusubel等(上述した)に記載されたようにグルタチオンアガロースアフィニティマトリックスを使用して精製される。抗血清の低親和性又は特異性の潜在的な問題を最小に減らすために、1種のポリペプチドごとに2種又は3種のこのような融合物を発生し、1種の融合物ごとに少なくとも2羽のウサギに注入させる。抗血清は好ましくは少なくとも3回のブースタ注射を含む連続注入により発生される。
IgA1に対して生成された抗体はIgANとHSPを診断することに用いられ、抗体IgMはIgMNを診断することに用いられる。
【0054】
ペプチドの修飾
循環に入れたペプチドが血漿において速く分解されるため、本発明の方法と組成物に用いられるペプチドを修飾することが望ましい。そのため、生物活性と結合特異性を減らさずにその半減期を延長する修飾が必要になる。例えば、テトラデカペプチドソマトスタチンは人の血漿における半減期はたった3分間で、短すぎるため、癌診断において放射性薬物として使用することができない。このため、人の循環において90分間の半減期を有するその類似体としてのオクトレオチド(LangerとBeck-Sickinger、Curr. Med. Chem. Anti-Canc. Agents 1:71-93、2001)が開発されている。ペプチドエクソペプチダーゼを経る分解に抵抗するため、ペプチドはN及び/又はC末端にキャップしてよい。これは例えば、N末端のアセチル化、C末端のアミド化又は還元、及びNからCまでの環化を含む。これらの方法は本分野の標準である。エンドペプチダーゼに対する感受性を減らすため、ペプチドがDアミノ酸、アミノ酸の代用物、又は擬態ペプチド配列とスペーサーを導入することにより修飾される。安定性を改善するその他の方法はペプチド鎖の修飾、イミド基によるアミノ基の置換、アミド窒素のメチル基化、及び天然アミノ酸配列の短縮を含む。なお、これらの方法は本分野の標準である。
【0055】
放射性金属
以上のように、診断剤はさらに例えば、放射性金属のような放射性標識など、検出可能な標識を含む。各種放射性金属はシンチグラフィーに用いられ、且つその用途はシンチグラフィー類型、試行の診断、及び同位体のコストと有用性によって変化する。同位体の選択において重要な決定要因はシンチグラフィー類型及び必要な放射性崩壊である。SPECTがγ放射体を使用し、PETが陽電子放出体を使用するため、SPECTとPETは異なる同位体を使用する。同位体は4種の異なる方式により発生することができ、これは、そのコストに影響する。発生器に発生したものは長い半減期を持つ放射性同位体から比較的短い半減期の同位体へ転変するためである。これは、それらが実際に小型病院においても用いられ、且つそれらのコストはより低いのである。その他の放射性金属の値段はより高く、その原因はそれらが原子炉、サイクロトロンと線形加速器に発生されることにあり、かつこれが小型病院及び遠隔地にある病院での使用を制限する可能性がある。診断について、使用する放射性金属部分はターゲットとの結合を達成する必要な時間により指定される。IgA結合性ペプチドの場合に、4〜80時間の長い半減期を持つことが好ましいかもしれない。
【0056】
準安定テクネチウム-99m(99mTc)は85%の走査に用いられ、米国だけで毎年約7百万である。99mTcの特性は画像診断に対して非常に理想的であり、140 keVのγ放射は今のγカメラの理想的な範囲内であり、且つ6時間の半減期の長さは標識放射性薬物を合成し、品質管理を行い、患者内に注入し、且つ画像化することができるほど長いのである。しかし、この半減期は患者に最低限度のリスクで十分高い剤量を付与することができるほど短く、且つ使用する濃度レベル(< 10-6 M)で発生したγ放射も99Tcのソフトβ崩壊も危険ではない。99mTcは99Mo/99mTc発生器においてその親核種99Mo(t1/266時間)から低コストで容易に得られる。
【0057】
γ放射のインジウム -111(111In)はモノクローナル抗体とペプチドを標識することに広く用いられる。FDAにより認可された臨床用の第一種ペプチド放射性薬物は111In標識ソマトスタチン類似体OctreoScana(Mallinckrodt,St. Loius,Mo)である。この同位体はその化学と半減期(67.9時間)のため、標識した免疫グロブリンに対して理想であり、画像化は初めの注射後の数日で行う。111Inはサイクロトロンでカドミウム-111から発生し、このため、99mTcよりそれを得ることが困難である。イオン交換と溶剤抽出は一般的にインジウム -111と親カドミウムを分離するための方法である。しかしながら、放射性IgA結合性ペプチドの標識の目的として、99mTcより長い半減期を有する111InはIgA結合性ペプチドに、IgAが腎臓で沈着するまでにより多くの時間を提供し、且つ循環の標識IgAを除去するためのより多くの時間を提供する。
【0058】
ガリウム-67(67Ga)はサイクロトロンで亜鉛-68(68Zn)から発生され、且つそれは1953年に製造された、初めて人に用いられた核種である。分離技術は溶剤抽出とイオン交換、又は両者を含んでよい。67Gaの半減期は78時間を超え、且つそのエネルギー崩壊の特徴はγシンチグラフィー又はPET画像化に適合する。
【0059】
銅の放射性核種は60Cu、61Cu、62Cu和64Cuを含む診断エピトープの選択を提供する。陽電子を放出する64Cuはサイクロトロンで発生される。64Cuはタンパク質とペプチドを標識するための長い血中クリアランスを有する試剤が好ましく、前記長い血中クリアランスはIgA結合タンパク質の有利な特性であるかもしれない。64Cuは12.7時間の半減期を有する。
【0060】
下表1と2は、診断用途に用いられる多くのγと陽電子を放出する放射性金属、その崩壊特徴、半減期及び発生方法(AndersonとWelch、Chem. Rev. 99:2219-2234、1999)を示す。これら放射性金属のうちのいずれも本文記載の方法と組成物に用いられる。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

表2. 陽電子を放出する放射性核種

【0063】
BFCA
放射性薬物において、二官能性キレート剤は生物分子と放射性金属の架橋に用いられる。用いられるBFCAが多く存在し、いずれも本発明に用いられる。具体例では、99mTcが従来臨床用途の85%診断走査に用いられる金属(LangerとBeck-Sickinger、Curr. Med. Chem. Anti-Canc. Agents 1:71-93、2001)であるため、99mTcと結合するBFCAが最も広く用いられる。これらのBFCAは熱力学的安定性、解離についての動力学不活性、及びTc酸化状態を安定させる機能を有する複合体を形成する。トリアミドチオールN3S、ジアミドジチオールN2S2、プロピレンアミンオキシム(PnAO)とヒドラジノニコチン酸(HYNIC)を含む99mTcに用いられる各種BFCAが開発されている。ある構造を図5に示す。新規方法は薬理作用団を標識するためのTc/Re(I)前体である有機金属の種類[M(CO)3(H2O)3]+(M = 99Tc、99mTc、185/187Re、186/188Re)を使用する。短い反応時間後、高い放射化学純度で得られるカチオン種は酸化状態の維持、血清中の安定性、及び生物学配位子と安定複合体の形成を含む利点がある。ヒスチジンとPADA(ピコリルアミン-N,N-二酢酸、図6)は適合なBFCAであると同定された。ヒスチジンはニューロテンシン誘導体を放射標識し、PADAは99mTcを含有するボンベシンと神経ペプチドY誘導体を標識する。
【0064】
インジウム -111のために選択したBFCAはジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)であり、各種ペプチドはDTPAにより標識された(図7)。111Inについて、第二種の最も広く用いられるキレート剤はテトラアザサイクロドデカンテトラ酢酸(DOTA)(図7)であり、これも治療の放射性核種イットリウム-90(90Y)を複合することに用いられる。
例えば、Lys-Gly-Cys、Cys-Gly-Cys、Gly-Gly-Cys及びGly-Ala-Gly-Glyのようなトリペプチドとテトラペプチドは、BFCA(LangerとBeck-Sickinger、Curr. Med. Chem. Anti-Canc. Agents 1:71-93、2001)として使用してよい。例えば、99mTcは既に血管活性腸管ペプチド(VIP)及びその類似体TP3654の標識に用いられ、前記類似体TP3654はVIPのC末端上にキレートアミノ酸配列GAGGを持っている(Thakur等、J. Nucl. Med.,41:107、2000)。その他の報告において、N末端Ac-Cys-Gly-Cys-Gly(CGCG)を経由しα-メラニン細胞刺激ホルモン(MSH)にキレート作用する99mTc標識は、ペプチドに基づく放射線診断用の有望な候補物(Chen等、Nucl. Med. Biol. 26:687-693、1999)となる。
【0065】
非放射性標識
放射性標識化合物以外に、常磁性体と量子ドット(qdot)技術も本発明の方法と組成物に用いられる。常磁性体とIgA又はIgM結合化合物とを架橋することはMRIによって画像化することを可能にし、量子ドットは蛍光画像化することを可能にする。
【0066】
常磁性体
本発明において放射性を必要としない画像化技術(例えば、MRI)を使用すれば、非放射性標識は上述した放射性金属の代わりに用いられる。例えば、常磁性体(例えば、ガドリニウム)は本分野の標準方法によりIgA結合タンパク質と接合してよい。化合物が哺乳類内に注入され且つMRIにより画像化される場合、常磁性体が沈下した箇所における磁性特性には差異がある。これらの差異は腎臓の腎糸球体におけるIgA又はIgMの沈着を同定するために用いられ、このため、IgA又はIgM腎臓症の診断に用いられる。
【0067】
量子ドット
量子ドット(qdot )は各種材料からなる蛍光半導体ナノ結晶であり、前記材料は例えば、CdS、CdSe、CdTe、CdHgTe/ZnS、InP、InAs及びPbSeである。所謂「励起子ボーア半径」(数ナノメートル)より小さいナノ結晶について、エネルギー準位が量子化であり、値は直接に結晶のサイズと関係がある( 量子閉じ込め効果という)。このため、それらは一般的に使用された蛍光団と違う際立った特徴を有する。量子ドットの一つの利点はその大きさと形状が合成の持続時間、温度と配位子分子により正確にコントロールされることにある。組成と大きさに依存しているため、量子ドットの吸収と放射特性もコントロールされる。
【0068】
量子ドット核は、水溶液に溶解でき且つ細胞毒性Cd2+又はSe2-イオンが量子ドット核から放出されるのを防止するように、ポリマー塗装材料により包まれる。量子ドットに機能を増やすため、最外層は、特異機能性を付与する(例えば、IgA又はIgM結合)接合化合物(例えば、抗体と生物活性ペプチド)を含んでよい。肝臓と骨髄中の蓄積を減らすことが望ましければ、塗層に高分子量ポリエチレングリコール(PEG)分子を添加してよい。
【0069】
一つの実施の形態において、量子ドットは単独で画像化目的に用いられる。抗体(例えば、抗IgA又は抗IgM抗体)又は結合化合物(例えば、IgA又はIgM結合化合物)に標識された量子ドットは量子ドットを特異性分子にターゲットすることに用いられる。このような量子ドットは哺乳類に注入され、且つGao等(Nat. Biotech. 22:969-976、2004)に記述されたような蛍光技術を使用して画像化することができる。
他の実施の形態において、量子ドットは放射性標識化合物(例えば、本文に記載された放射性金属)又は常磁性体(例えば、ガドリニウム)と架橋される。これらの量子ドットは哺乳類に注入され、且つ適合な画像化技術(例えば、MRI、SPECT、PET又は平面走査)により可視化される。
【0070】
診断組成物の調製
本発明の組成物と方法に用いられる化合物は任意の適合な量で任意の適合な担体物質に含まれ、一般的に組成物の合計重量1−95重量%の量で存在する。組成物は腸管外(例えば、静脈内)投与経路に適する剤型で提供することが好ましい。診断組成物は慣用の薬学実践(例えば、Remington、The Science and Practice of Pharmacy(20版)、ed. A.R. Gennaro、Lippincott Williams & Wilkins、2000及びEncyclopedia of Pharmaceutical Technology,eds. J. SwarbrickとJ. C. Boylan、1988-1999、Marcel Dekker、New Yorkを参照する)により調製される。
【0071】
腸管外組成物
診断組成物は剤型、製剤、或いは適合な転送装置又は慣用無毒性の薬学的に受容可能な担体と佐剤を含む埋植剤で、注入、輸液又は植込み(静脈内等)により腸管外に投与される。このような組成物の調製と製造は薬学製造分野の当業者に知られている。
組成物は溶液、懸濁液、乳状液、輸液装置、又は植込み用の転送装置の形式であり、又は使用前に水又はその他の適合な媒介物により再構成される乾燥粉末を呈する。診断化合物のほかに、組成物は適合な腸管外的に受容可能な担体及び/又は賦形剤を含んでよい。また、組成物は懸濁剤、可溶化剤、安定剤、pH調整剤、張力調整剤、及び/又は分散剤を含んでよい。
【0072】
以上のように、本発明による診断組成物は滅菌注射に適する形式でよい。この組成物を製造するため、診断化合物を腸管外的に受容可能な液体媒介物中に溶解又は懸濁させる。使用できる受容可能な媒介物と溶媒は水、適量の塩酸、水酸化ナトリウム又は適合な緩衝液を添加して適合なpHまで調整した水、1,3-ブタンジオール、リンガー溶液、デキストロース溶液、及び等張塩化ナトリウム溶液を含む。水製剤はさらに一種又は多種の防腐剤(例えば、メチル基、エチル基又はパラオキシ安息香酸n-プロピル)を含んでよい。そのうちの化合物の一つが水に少量溶解し又は微溶する場合に、溶解増強剤又は可溶化剤を添加し、又は溶媒は10-60%w/wのプロピレングリコール等を含んでよい。
【0073】
化合物の剤量
主治医が最終的にIgA又はIgM腎臓症を診断するための一種又は多種化合物の適合な量を決定するが、一般的に1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10 mCiの放射性標識化合物は薬学的に受容可能な担体中で静脈内に投与される。剤量は使用する画像化技術(例えば、SPECT)に必要な剤量及び化合物の除去と吸収の特徴を含む点に基づいて考慮して決定される。放射性剤量の測定は放射量が公開された器官ごとの最大輻射を超えないようにするためである。
【0074】
画像化技術
任意の標準画像化技術は本発明に使用してよいが、シンチグラフィーは最も好ましい方法である。当業者は特定の放射写真試剤に対してどんなスキャナーを使用するかが分かる。
【0075】
シンチグラフィー
シンチグラフィーは放射性同位体を使用して各種疾病を診断、治療することに関する。それは、神経学、心臓病学、腫瘍学、内分泌学、リンパシステム、尿機能、胃腸病学、肺病学及びその他の分野に応用される。一般的に、放射性同位体は特異性化合物と化学結合され、それから静脈内に注射される。異なる放射性同位体は異なるシンチグラフィー方法に用いられ、3種の一般的な方法はSPECT、PETと平面走査(AndersonとWelch、Chem. Rev. 99:2219-2234、1999、LangerとBeck-Sickinger、Curr. Med. Chem. Anti-Canc. Agents 1:71-93、2001)である。
【0076】
SPECT(単光子放射型コンピュータ断層撮影法)はγ線の核画像化技術を使用する。同位体を注射した後、γカメラを回転して患者周囲360度の画像を収集し、あるエネルギーの光子のみを選択する。身体の各種レベルからの画像は3D画像を形成するように加工して組み換えられる。
【0077】
PET(陽電子放射断層撮影)は放射性同位体を使用する核画像化技術であり、前記放射性同位体は陽電子の放射により崩壊されることで、逆方向の2種光子を放出する。360度スキャナーでこれらの光子を検測するが、対になる光子のみを処理する。PET走査により吸収された輻射は平均で5 mSvであるが、身体のCT走査により吸収された輻射は6−16 mSvであるため、 PET走査の安全性は身体のCTより高い。
平面スキャナーは、第一代目のシンチレーション検出装置であり、今まで、多くの診断法に用いられる。これらは常用で二次元画像を発生する。
【0078】
MRI
シンチグラフィー法のほかに、核磁気共鳴画像(MRI)も本発明の方法に使用してよい。MRIは強磁場を使用して患者身体の三次元断層撮影画像を生成し、放射性を必要としない。
【0079】
放射線の最適化
さらに本発明の診断方法を最適化させるために、尿細管滞留を減らし、且つプレターゲッティング戦略を使用してよい。
【0080】
放射性キレートの尿細管滞留
約60 kDaより小さい放射標識ペプチド、タンパク質又はその断片は腎糸球体でろ過され、且つ尿細管に入る(LangerとBeck-Sickinger、Curr. Med. Chem. Anti-Canc. Agents 1 :71-93、2001、Thakur等、J. Nucl. Med.,41:107、2000)。生理条件下で、近位細管細胞は量的にこれらのペプチドを再吸収し、次に前記ペプチドにリソソーム分解を実施する。この再吸収は細胞中の放射性金属キレートを捕まえ、腎髄質に放射標識を高く滞留させ、腎髄質区の特定の比較的高い放射を検測するシンチグラフィー法感受性を減らす。しかしながら、IgAN中で、IgAが腎皮質に位置する腎糸球体中に沈着し、腎放射性金属の滞留と関連干渉の問題を最小まで減らせる。IgA又はIgM腎臓症の診断において依然として尿細管の滞留を減らすことが望まれるが、これは更なる親油性の分子を使用することで達成できる。これらの分子はペプチド中に高含有量の親油性アミノ酸を有し、又は分子上に添加した脂肪酸アシル部分を有する。一つの例において、この親油性修飾はRC-160中に見られ、前記RC-160は親油性を増加したが腎排せつの傾向を減らしたソマトスタチン類似体(P. DasguptaとR. Mukherjee、Br J Pharmacol(2000)129、101-109)である。第二の例はステアリル -Nle17-VIP、28ポリマー血管活性腸管ペプチドVIPの親油性類似体である。(Gozes等、J. Pharmacol. Exper. Therap. 273(1995)161-167)。親油性修飾は腎臓ではなく肝臓を通す代謝性分解を促進することができる。放射性金属の尿細管中の蓄積を減らす別の方法は、腎糸球体を通すろ過を回避するように、放射標識試剤の大きさを増加させる(LangerとBeck-Sickinger、Curr. Med. Chem. Anti-Canc. Agents 1:71-93、2001)。第三の方法は、診断剤を投与した後、経口又は注入用塩基性アミノ酸(例えば、リジン)又はその誘導体を投与することで、タンパク質とペプチドの尿細管細胞の摂取を抑制し、一過性タンパク尿を誘導する(Behr等、Eur. J. Nucl. Med. 25:201-212、1998)。
【0081】
プレターゲッティング戦略
プレターゲッティング転送は、一般的に腫瘍放射免疫シンチグラフィー法(RIS)と放射免疫治療法(RIT)に用いられる(AndersonとWelch、Chem. Rev. 99:2219-2234、1999;LangerとBeck-Sickinger,Curr. Med. Chem. Anti-Canc. Agents 1:71-93、2001;Chang等、MoI. Canc. Ther. 1:553-563、2002;Rossi等、Clin. Canc. Res. 9:3886s-3896s、2003)。結合濃度が最も高い時、プレターゲッティングは循環中の未結合放射標識分子を減らし、又は除去する。最も広く用いられるシステムはビオチン-ストレプトアビジン(SA)対である。一般的に、まず放射性標識されないmAb-SAを注入する。循環中の抗体の除去が緩やかであるため、結合しない抗体は放射性標識ビオチンを転送する前に除去されなければならない。このため、第一回注射後1−2日目では、mAb-SAと相互作用するガラクトシル化除去剤を注入する。この試剤は任意の循環mAb-SAを速く除去するが、結合mAb-SAを除去することができない。また、1−10時間後、放射標識のビオチン-BFCAを注入する。このため、放射性キレートのみを循環抗体ではなく結合部位まで転送させる。その他の可能な戦略は、ビオチン-ストレプトアビジン以外の結合対を使用する類似方法を含み、又は2ステップのみを必要とする例えば以下のとおりのシステムを含む。
【0082】
二段法
血管内のIgA又はIgM放射性バックグラウンドを減らすため、二段法を使用してよい。この方法では、まず抗IgA1抗体又は抗IgM抗体を調製し、制限タンパク分解により前記抗体からFabドメインが得られる。次に、このFabをストレプトアビジン(SA)とガラクトース(Gal)を含むように修飾する。ストレプトアビジンをビオチン配位子として加え、循環Fab-IgA1又はFab-IgM複合体の除去を促進するようにGalを加える。SA-Gal-Fabの肝臓ASGPR(アシアロ糖タンパク受容体)による除去はIgA又はIgMとの結合より速いため、適合な拮抗阻害剤、例えば、ASGPR機能を有効に抑制するガラクトース合成ポリマーであるガラクトース-フィコールが注入される(Rifai等、J. Exp. Med. 191:2171-2181、2000)。ガラクトース-フィコールを注入すると同時に、又はすぐそれに続き、プレターゲッティングのためにSA-Gal-Fab抗IgA1又はSA-Gal-Fab抗IgMを患者内に注入し、循環IgA1及び腎皮質に沈着したIgA1とを結合し、又は循環IgM及び腎皮質に沈着したIgMと結合する。24−48時間で、ガラクトース-フィコールの作用が終わった時、循環SA-Gal-Fab-IgA1又はSA-Gal-Fab-IgM複合体は肝臓ASGPRにより循環から除去される。しかしながら、腎糸球体に固定されたSA-Gal-Fab-IgA1又はSA-Gal-Fab-IgM複合体は依然として存在し、且つ画像化に用いられる。
【0083】
第一回目の注入後約1又は2日目で、バックグラウンドの血管SA-Gal-Fab-IgA1又はSA-Gal-Fab-IgM複合体が十分に除去され、その後、放射標識の(99mTc又は111In)ビオチン-HSA-Gal(ガラクトースと接合したビオチン化のヒト血清アルブミン)を注入し、腎臓中のSA-Gal-Fab-IgA1又はSA-Gal-Fab-IgM複合体と結合させる。さらに4−24時間経過後、未結合の(フリー)放射標識のビオチン-HSA-Galが肝臓ASGPRにより循環から除去されることで、腎皮質中のノイズに対するターゲットの比を増加させる。また、アルブミンの大きさ(66kDa)は放射性複合物が糸球体からろ過される可能性をなくすことで、放射性キレートの腎臓近位細管細胞中の沈降による関連したバックグラウンド輻射を減らす。この設計の他の利点はストレプトアビジンが4つのビオチン化配位子分子を結合した四量体(MW:4 x 13 kDa=52 kDa)であることである。腎皮質に暴露した1モル当たりのストレプトアビジンが4モルの放射性ビオチン-HSA-Galと結合するので、画像信号は増加する。
【0084】
この方法を実施するため、抗ヒトIgA1抗体又は抗ヒトIgM抗体及びそのFab断片が、IgA又はIgM腎臓症を診断するために産出される。マウス又はキメラ化モノクローナル抗ヒトIgA1のヒンジ領域又は抗ヒトIgM抗体は、例えば本文に記載の慣用方法により産出される。次に、Fab断片は例えば、パパイン分解のような任意の標準技術により得られ、その後、例えば、ゲルろ過クロマトグラフィーと抗原親和性クロマトグラフィー法により精製される。
【0085】
ガラクトース分子をFabに接合させるため、シアノメチル-2,3,4,6-テトラ-I-アセチル-1-チオ-β-D-ガラクトピラノシド(C-4141;Sigma)を0.1 Mメタノールに溶解させ、且つ0.1体積のナトリウムメトキシド(メタノールナトリウム誘導体、J.T. Baker Chemical Co.,Phillipsburg,NJ)と混合する。室温下で48時間後、この混合物を4℃で数週間貯蔵する。接合物を、1.0 mg/ml Fabを含む0.25 Mホウ酸ナトリウム緩衝液pH 8.5に入れる。室温下で2時間後、サンプルをリン酸緩衝生理食塩水に透析する。抗体の抗原結合機能は接合により変わらない(Ong等、Canc. Res. 51:1619-1626、1991)。
【0086】
ストレプトアビジン(SA;MW:〜52 kDa)をビオチン(244 Da)と特異性結合させる。これは細菌ストレプトミセス属ビオチンタンパク質から得られ、三次元構造及び非常に高い親和性(Kd=10-15M)でビオチンを結合する能力の点について、ニワトリ卵白アビジンとの類似性を有する。これは4つまでのビオチン分子と結合する四量体タンパク質(4x13 kDa)である。アビジンと違って、ストレプトアビジンはグリコシル化されておらず、且つ電荷が実質上中性であるが、アビジン(pI〜10.5)は中性pHで塩基性である。このため、ストレプトアビジンは顕著に少ない非特異性結合を有するので、バックグラウンドがより少なく、タンパク質の相互作用が望ましくないバックグラウンドの原因となるかもしれない場所へ適用するための好ましい試剤として、アビジンの代わりに用いられる。
【0087】
SAとGal-Fabを接合させるため、Gal-Fabはスクシンイミジル4-(N-マレイミド-メチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)を用いてSA(Genzyme,Cambridge,Mass)に化学接合される。過剰なSMCCは3:1のモル比で5%DMSOを含む硼酸ナトリウムpH8でSAに供給される。30分間後、SMCC-SAはSephadex G-25(Amersham Pharmacia)ゲルろ過により脱塩される。Gal-FabはDTTにより還元され、ゲルろ過により脱塩され、PBSに5 mg/ml総タンパク質濃度で1:1モル比でSMCC-SAと混合する。反応は、サイズ排除HPLCにより監視され、十分な接合物を形成した後、約50分間で、反応は未反応のチオールを再酸化するように、テトラチオン酸ナトリウムを5 mMまで添加して終止する。接合物はQ SepharoseクロマトグラフィーによりフリーSAと分離される。接合物は0.05 M炭酸ナトリウム、0.5 M塩化ナトリウム、pH 11において平衡した固定化イミド基ビオチン(Pierce)を用いる親和性クロマトグラフィー法により、未接合のGal-Fabと分離され、0.05 M酢酸ナトリウム/0.5 M塩化ナトリウムでpH 4で溶出する。約80%の接合物は1:1比率のSA/抗体からなるが、残る分は主に2:1又はより高い比率である(Axworthy等、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 97:1802-1807,2000)。
【0088】
HSA(人血清アルブミン)は584個のアミノ酸を含むモノポリペプチド鎖タンパク質(66 kDa)であり、血液中に最も豊富なタンパク質であり、血漿中でタンパク質の約60%占める。HASは例外なく肝臓に発生し、多数のその他の血漿タンパク質と違って、炭水化物を含まない。HASは約19日の半減期を有する。HSAの主な機能は血管中の膠質浸透圧を維持し、酸/塩基の代謝の維持に寄与し、及び内在物質と薬物を輸送することである。薬学賦形剤の品質の面で、高度精製、無病毒の組み換え人アルブミンは市販から入手できる(例えば、GTC Biotherapeutics)。
【0089】
ビオチン-HSA-Galを製造するため、HASは0.5 M硼酸ナトリウム(pH 8.5)の5%DMSO中で3倍過剰なN-ヒドロキシスクシンイミド-LC-ビオチン(Pierce)と配合される。約4時間後、この溶液200倍過剰な新たに調製した純品2-イミド-2-メトキシエチル-1-チオ-β-D-ガラクトピラノシドに加える。混合物は室温で8時間攪拌され、透析ろ過によりPBSで精製される。最終材料は例えばSAの2-(4’-ヒドロキシフェニルアゾ)-安息香酸(HABA)により置換され測定された1.6モルビオチン/モルHASと例えば比色アントロン測定法(Axworthy等、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 97:1802-1807、2000)により測定された30−40モルチオガラクトース/モルHSAを含む。
【0090】
ビオチン-HSA-ガラクトース上に二官能性キレート剤(BFCA)DOTA(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸)を接合させるために、DOTAのCOOH基はカルボジイミド試剤により活性化される。簡単に言うと、DOTAを80℃で無水DMSOに溶解し、溶液をアルゴンで冷却する。攪拌しているDOTA溶液に、DMSOに溶解したN-ヒドロキシ-2,5-ピロリジンジオン溶液を順次滴下し、その後DMSOに溶解したN,N-ジシクロヘキシルカルボジイミドを順次滴下する。DOTA:N-ヒドロキシ-2,5-ピロリジンジオン:N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミドのモル比は1:1.4:0.8である。反応混合物を一晩攪拌し、その後副産物としてのジシクロヘキシル尿素を分離するようにろ過する。0.1 M燐酸塩緩衝液(pH8.0)に溶解したビオチン-HSA-Gal中に十分な容量のDOTA活性化エステル溶液を加えることにより、DOTAとビオチン-HSA-Galの間は50:1のモル比で接合を行う。一晩反応した後、接合は逆相カラムにより、UV検出器と検波器に接続されたFPLCシステムで精製する。0.1%トリフルオロ酢酸水溶液(溶媒A)とメタノール(溶媒B)を使用して直線勾配方法を適用する。溶出剤は4 ml/分間の流速で転送され、37mlで0%溶媒Aから100%溶媒Bまでである。UV曲線において、DOTAを含むビオチン-HSA-Gal接合物に対応する2つのピークが観測される。DOTAを含むビオチン-HSA-Gal接合物の保持容量は未接合のビオチン-HSA-Galの保持容量と異なる。使用した統合の画分コレクターは化合物ごとに回收し、必要な時にMALDI-TOF(マトリックス支援レーザー脱離/電離飛行時間)質量分析法によりさらに分析される(Bussolati等、Canc. Res. 61:4393-4397、2001)。
【0091】
放射標識と接合するために、例えば、Mallinckrodt,Inc.(St. Louis,MO)から担体を添加しないインジウム -111-塩化物(111InCl3)を入手する。DOTA-ビオチン-HSA-ガラクトース接合物を0.2M酢酸アンモニウム緩衝液(無金属、pH 7)に溶解させ、その後100℃で約20 MBq 111In/1 nmol接合物の比率で111InCl3と30分間培養する。放射標識接合物の純度は高速薄層クロマトグラフィー(ITLC)により評価される。ITLCシステムはITLC-SG(シリカゲル)担体(Gelman Sciences,Ann Arbor,MI)と移動相として4 mM EDTA(pH 4.0)とを使用する。ペプチド結合活性は最初のままであり、前に未複合の放射性金属は、溶媒先端においてEDTA複合物として移動する。放射性標識効率は一般的に97%より大きく、決定的に111InCl3の化学純度(金属陽イオン)に依存する(Smith-Jones等、Endocrinology 140:5136-5148、1999)。
【0092】
ガラクトース-フィコールは以下のように容易に合成される。シアノメチル1-チオ-β-Dガラクトピラノシドを約1.0mmol/10 mlの比率でメタノールに溶解させ、メタノールに0.5 mlの0.5 Mナトリウムメトキシドを添加する。ふたのきつく閉まったガラス管状瓶に入れて室温で48時間攪拌した後、窒素流によりメタノールが蒸発、乾燥される。乾燥した残基に100 ml BBS(0.16 M 塩化ナトリウム-0.2 M 硼酸ナトリウム、pH 8.0)に溶解したPharmacia又はその他の製品からの1gのフィコール70又はフィコール400を加え、その後室温で24時間攪拌し、その後反応は10 ml 1.0 N酢酸を加えることにより停止される。反応混合物は徹底的に蒸留水に透析される(PlotzとRifai、Biochemistry 1982,21,301-308;Lee等、Biochemistry 1976,15,3956-3963)。
【0093】
本発明の化合物の投与は静脈内でよい。一つの例では、30−60秒間を経って2.0 mCi 111Inを静脈内から患者に注入する。以下のように、注入後24−48時間で画像が得られるが、しかしながら、必要な時、或いは診断方法に用いられる具体的な化合物の除去又は保留特徴に基づいて、投与と画像化の間の時間を変化させてよい。
【0094】
何種かの市販から入手できるSPECTスキャナーのうちのいずれもこの方法に用いられる(例えば、GE MyoSIGHT、General Electric Company)。当業者は特定の放射性金属又は同位体に対してどのような設定が使用できるか分かる(例えば、コリメータ、ウィンドウサイズ、とエネルギー)。一つの例では、111Inについて、中間的エネルギーコリメータを使用し、15−20%の対称ウィンドウを173と247 keV(111Inの光ピーク)に設定する。他の例では、99mTcに対して低いエネルギーコリメータを使用するが、20%の対称ウィンドウを140 keVに設定する。撮られる画像の数は走査システムの能力、及び必要な画像品質に依存する。一般的に、360度移動、64エフを有するカメラを使用し、64 x 64マトリックス設定の画像が得られる。より高い画像質量を必要すると、128 x 128又は256 x 256マトリックス設定の画像を撮る。走査は30−60分間行ってもよく、この間に患者は完全な静止を保持しなければならない。必要な時に最適な画像を撮るため、その他の患者準備(例えば、経口水和、便通薬、及びかん腸)を行う。
【0095】
画像は患者腎臓における放射能の量を測定するために用いられる。この放射能の量をIgA腎臓症又はHSPを有していないと認められる患者の腎臓における放射能と比べ、腎臓中に検出された放射能の増加がIgA腎臓症又はHSPの診断に寄与する。
同様に、抗人IgAの代わりに抗人IgMが使用された場合、IgM腎臓症を有していないと認められる患者の腎臓中の放射能に対して、画像により測定された放射能の量の増加はIgM腎臓症の診断に寄与する。
【0096】
その他の実施の形態
本明細書に記載のあらゆる出版物、2005年8月3日に提出した米国仮出願60/705,282を含む特許出願、及び特許は引用により本文に合併される。
本発明の範囲と要旨を逸脱せず、記載された本発明の方法とシステムの各種変更と変形は当業者にとって容易に想到できるものである。本発明は具体的に必要な実施の形態と合わせて述べたが、請求する本発明はこれらの具体的な実施の形態に不適当に限られることがない。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】図1は二量体のIgA1(SEQ ID NO:1)、そのヒンジ領域(SEQ ID NO:14)及びO−ポリサッカリド部位(Thr225、Thr228、Ser230、Ser232、Thr236)の図である。
【図2】図2はIgAのFc受容体(FcαR1/CD89、SEQ ID NO:2)の構造及び特徴の図である。細胞外ドメイン1、3(EC−1及びEC−2)、γ鎖連合対及びそのシグナル伝達(ITAM)モチーフを示す。また、CD 89の特徴、その細胞分布及びその既知機能が纏められる。(Westerhuis、Pathogenetic Aspects of IgA−Nephropathy 2001 PrintPartners Ipskamp,Enschede)
【図3】図3は、連鎖球菌Sir22(M22、SEQ ID NO:3)タンパク質及びこのタンパク質由来のSapペプチド(SEQ ID NO:4)配列の図である。Sapペプチドは29個の残基であるIgA結合領域(水平矢印で「IgA」を示す)及びこの領域の両側のそれぞれ10個の残基を含む。それに、Sapはその二量化を促進するsir22に存在しないC末端システイン残基を含む。Sir22におけるC4BP(ヒト補体制御因子)、IgA及びIgGとの結合部位を含む領域が示される。C4BP結合領域は超可変ドメインである。(「C4BP」及び「IgG」という名前の下における水平矢印はC4BP及びIgGと結合する相応領域を示す。該三つの結合領域ごとに配列重複が存在する)。保存したC反復領域の位置をも示す。Sir22のC末端は細菌細胞壁におけるペプチドグリカンと共有結合する。
【図4】図4は、完全なIg、Fab、Fv断片、単体V(着色された楕円形、ドットは抗原の結合する部位を示す)及びCドメイン(着色しない部分)の図である。工学的な組換え抗体はscFv単量体、二量体(二重抗体)、三量体(三重抗体)及び四量体(四重抗体)を示し、接続物は黒い線で示される。ミニ抗体は2つのCドメインで接続された2つのscFvモジュールを示す。またFab二量体(粘着性ポリペプチド又はタンパク質ドメインにて接合)及びFab三量体(化学接合)を示す。色は二重特異性scFv二量体(二重抗体)、Fab二量体及び三量体の違う特異性を示す。
【図5】図5は99mTcの二官能性キレート剤(BFCA)の構造の図である。トリアミドチオアルコール(Triamidethiols )(N3S)、ジアミドジチオアルコール(diamidedithiols)(N2S2)、プロピルアミノオキシド(PnAO)及びヒドラジンニコチン酸(HYNIC)を示す。
【図6】図6はピコリルアミン−N,N−アセト酢酸(PADA)及びそのTcとの複合物の構造の図である。PADA及び水和イオン[Tc(CO)3(H2O)3]+と反応した複合体を示す。
【図7】図7は111InのBFCAの構造の図である。ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)及びテトラアザシクロドデカンテトラ酢酸(DOTA)を示す。
【図8−1】図8はアミノ酸及び核酸配列であり、IgA1 C領域(SEQ ID NO:1)、CD89(SEQ ID NO:2)、Sir22(SEQ ID NO:3)、Sap(SEQ ID NO:4)、可溶性CD89(SEQ ID NO:5)、ヒトFcα/μR(SEQ ID NO:6)、pIgR(SEQ ID NO:7)、CD71(SEQ ID NO:8)、IgM結合ペプチド(SEQ ID NO:9)、ブドウ球菌タンパクA(SEQ ID NO:10)、Z−ドメイン(SEQ ID NO:11)、修飾したZ−ドメイン(SEQ ID NO:12)、B−ドメイン(SEQ ID NO:13)、IgA1ヒンジ領域(SEQ ID NO:14)、IgM μ鎖のアミノ酸配列(SEQ ID NO:15)、IgM μ鎖の核酸配列(SEQ ID NO:16)及びIgMヒンジ配列(SEQ ID NO:17)を含む。
【図8−2】
【図8−3】
【図8−4】
【図8−5】

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)哺乳動物にIgA又はIgMと特異的に結合する化合物を投与し、
(b)前記哺乳動物の腎臓における前記化合物を検出することを含む前記哺乳動物のIgA又はIgM腎臓症を診断するための方法であって、
前記腎臓症のない哺乳動物の腎臓における前記化合物量に対する前記哺乳動物の前記腎臓における前記化合物量の増加が前記哺乳動物における前記IgA又はIgM腎臓症の診断に寄与することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記哺乳動物がヒトである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記投与が静脈内である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記化合物がペプチドを含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ペプチドがヒトFcαR1(SEQ ID NO:2)、ヒトFcα/μ受容体(SEQ ID NO:6)、ポリIg受容体(SEQ ID NO:7)、Sir22(SEQ ID NO:3)、連鎖球菌IgA結合性ペプチド(Sap;SEQ ID NO:4)、修飾したZ-ドメインタンパク質(SEQ ID NO:12)及び YDWIPSSAW(SEQ ID NO:9)、或いはそのIgA又はIgMと結合する断片からなる群より選択される請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ペプチドがN末端キャップ、C末端キャップ、D-アミノ酸、アミノ酸の代用物、擬態ペプチド配列、及びスペーサーからなる群より選択される修飾を含む請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記化合物が抗体、或いはそのIgA又はIgMと結合する断片を含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記抗体が抗ヒトIgA、又はそのIgAと結合する断片である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記抗体が抗ヒトIgM、又はそのIgMと結合する断片である請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記化合物が量子ドットを含む請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記化合物が放射性標識に接続される請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記標識が99mTc、111In、66Ga、67Ga、68Ga、86Y、90Y、201Tl、55Co、60Cu、61Cu、62Cu、64Cu、67Cu、82Rb、185/187Re、及び186/188Reからなる群より選択される請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記化合物が二官能性キレート剤により前記放射性標識に接続される請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記二官能性キレート剤がN3S、N2S2、PnAO、HYNIC、[M(CO)3(H2O)3]+、PADA、DTPA、DOTA、ヒスチジン、トリペプチド、及びテトラペプチドからなる群より選択される請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記トリペプチドがLys-Gly-Cys、Cys-Gly-Cys又はGly-Gly-Cysである請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記テトラペプチドがGly-Ala-Gly-Gly又はCys-Gly-Cys-Glyである請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記化合物が常磁性物質に接続される請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記常磁性物質がガドリニウムである請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記検出が画像化技術により行われる請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記画像化技術がSPECT、PET、平面走査、及びMRIからなる群より選択される請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記化合物がさらにガラクトース、及び結合対の第一構成部分を含む請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記結合対の第一構成部分がストレプトアビジンである請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記投与がさらにガラクトース-フィコールの投与を含む請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記検出が前記哺乳動物に(a)結合対の第二構成部分及び(b)ガラクトースと接合する放射性標識化合物を投与し、次に前記哺乳動物の前記腎臓における前記放射性標識化合物を検出することにより行われる請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記放射性標識化合物が99mTc、111In、66Ga、67Ga、68Ga、86Y、90Y、201Tl、55Co、60Cu、61Cu、62Cu、64Cu、67Cu、82Rb、185/187Re、及び186/188Reからなる群より選択される同位体で標識される請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記放射性標識化合物がヒト血清アルブミンである請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記結合対の第二構成部分がビオチンである請求項24に記載の方法。
【請求項28】
(a)IgA又はIgMと結合する化合物、
(b)二官能性キレート剤、及び
(c)薬学的に受容可能な担体における検出可能標識
を含む組成物であって、前記IgA又はIgMと結合する化合物が前記二官能性キレート剤により前記検出可能標識に接続されることを特徴とする組成物。
【請求項29】
前記化合物がペプチドを含む請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記ペプチドがヒトFcαR1(SEQ ID NO:2)、ヒトFcα/μ受容体(SEQ ID NO:6)、ポリIg受容体(SEQ ID NO:7)、Sir22(SEQ ID NO:3)、連鎖球菌IgA結合性ペプチド(Sap;SEQ ID NO:4)、修飾したZ-ドメインタンパク質(SEQ ID NO:12)、及び YDWIPSSAW(SEQ ID NO:9)、或いはそのIgA又はIgMと結合する断片からなる群より選択される請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記ペプチドがN末端キャップ、C末端キャップ、D-アミノ酸、アミノ酸の代用物、擬態ペプチド配列、及びスペーサーからなる群より選択される修飾を含む請求項29に記載の組成物。
【請求項32】
前記化合物が抗体、或いはそのIgA又はIgMと結合する断片を含む請求項28に記載の組成物。
【請求項33】
前記抗体が抗ヒトIgA、又はそのIgAと結合する断片である請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
前記抗体が抗ヒトIgM、又はそのIgMと結合する断片である請求項32に記載の組成物。
【請求項35】
前記二官能性キレート剤がN3S、N2S2、PnAO、HYNIC、[M(CO)3(H2O)3]+、PADA、DTPA、DOTA、ヒスチジン、トリペプチド、及びテトラペプチドからなる群より選択される請求項28に記載の組成物。
【請求項36】
前記トリペプチドがLys-Gly-Cys、Cys-Gly-Cys、又はGly-Gly-Cysである請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
前記テトラペプチドがGly-Ala-Gly-Gly又はCys-Gly-Cys-Glyである請求項35に記載の組成物。
【請求項38】
前記検出可能標識が放射性標識である請求項28に記載の組成物。
【請求項39】
前記放射性標識が99mTc、111In、66Ga、67Ga、68Ga、86Y、90Y、201Tl、55Co、60Cu、61Cu、62Cu、64Cu、67Cu、82Rb、185/187Re、及び186/188Reからなる群より選択される請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
(a)IgA又はIgMと結合する化合物、
(b)二官能性キレート剤、及び
(c)薬学的に受容可能な担体における検出可能標識、
(d)哺乳動物におけるIgA又はIgM腎臓症の検出をするための使用説明
を含むキット。
【請求項41】
前記化合物がさらにガラクトース及び結合対の第一構成部分を含み、且つ前記検出可能標識が放射性標識ペプチドを含み、前記放射性標識ペプチドがガラクトース及び結合対の第二構成部分を含む請求項40に記載のキット。
【請求項42】
前記放射性標識が99mTc、111In、66Ga、67Ga、68Ga、86Y、90Y、201Tl、55Co、60Cu、61Cu、62Cu、64Cu、67Cu、82Rb、185/187Re、及び186/188Reからなる群より選択される請求項41に記載のキット。
【請求項43】
前記結合対の第一構成部分がストレプトアビジンであり、かつ前記結合対の第二構成部分がビオチンである請求項41に記載のキット。
【請求項44】
前記放射性標識ペプチドがヒト血清アルブミンである請求項41に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図8−3】
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【図8−4】
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【図8−5】
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【公表番号】特表2009−503115(P2009−503115A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−525254(P2008−525254)
【出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際出願番号】PCT/US2006/030583
【国際公開番号】WO2007/019376
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(508034473)アールキュー バイオサイエンス インク (1)
【氏名又は名称原語表記】RQ BIOSCIENCE,INC.
【出願人】(504311419)タフツ メディカル センター インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】