説明

IgEに結合する薬剤

【要約書】
本発明は、ヒトおよび動物におけるIgE活性化に関連する症状の治療のための方法および物質、そしてその活性化を調節できる薬剤に広く関係する。本発明の薬剤は、ダニ由来のIGBPMAポリペプチドを含むか、またはそれに関係する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
IgEに結合する薬剤
発明の分野
本発明は、ヒトおよび動物におけるIgE活性化に関連する症状の治療のための方法および物質、並びにその活性化を調節可能な薬剤に広く関係する。
【0002】
発明の背景
IgEは、アレルギー反応に関与する抗体のクラスである。これらの反応は、無害な抗原に応答してIgE抗体を生産した(アレルゲン感作)個体が、続いて同じアレルゲンに遭遇したときに生じる。アレルゲンは、曝露された組織においてIgE結合性肥満細胞の活性化を引き起こし、アレルギーを特徴づける一連の応答を導く。
【0003】
IgEは、I型過敏症反応に関連する免疫グロブリンであり、それには喘息、アレルギー性鼻炎(‘花粉熱’)、アレルギー性結膜炎、じんましん、およびその他のアレルギーが含まれる。この抗体の過剰発現は、軽い花粉熱から命に関わる症状、例えば重度の喘息、ピーナッツアレルギーおよびペニシリンなどの薬物に対するアナフィラキシー反応など、にまで及ぶ、相当量のヒトの疾患に関与する。IgEの活性化は、皮膚、眼、鼻および気管支樹における、肥満細胞などの細胞の応答を引き起こす。
【0004】
IgE活性化の望まれない効果に対抗することを目的とする近年のアプローチには、抗IgEワクチンおよび抗IgEモノクローナル抗体が含まれる。前者の多くは実験的なものである。抗IgEモノクローナル抗体によるアプローチは、より成功してきたが、現在、市場にはたった一つの例しかない(オマリズマブ、ブランド名Xolair(商標登録))。
【0005】
したがって、IgE調節因子の新規供給源は本技術分野に対する貢献をもたらすことになると、見られる。
発明の開示
本発明者は、免疫グロブリン結合活性について、ダニ(Rhipicephalus appendiculatus)唾液腺抽出物および唾液を解析し、そして驚くべきことに、ダニ唾液腺および唾液がIgE結合活性を有することを見いだした。
【0006】
宿主のIgG、IgMおよびIgEは、宿主の抗ダニ応答において、何らかの形で関与することが知られていた(Allen, Khalil & Graham, 1979; Beaudouin et al., 1997; Christe, Rutti & Brossard, 1999; Fivaz, 1990; Matsuda et al., 1990; Mitchell, Brown & Askenase, 1982; Ushio et a/., 1993; Brown & Askenase, 1985; Worms, Askenase & Brown, 1988)。宿主の免疫グロブリンは、餌の血とともにダニによって摂取され、そのうちのいくらかは、生物活性を保持したまま血リンパに移動すると考えられた(Ackerman et al., 1981 ; Chinzei & Minoura, 1987; Tracey Patte, Kemp & Johnston, 1987; Wang & Nuttall, 1994)。したがって、以前にその種のダニに曝された宿主をダニが餌とした場合、ダニ抗原に対して特異的な抗体がダニの血体腔に入る可能性がある。
【0007】
この潜在的な驚異に対抗するために、R. appendiculatusは、その唾液分泌を介して、これらの免疫グロブリンを宿主中へ排出して戻すことができると考えられている(Wang & Nuttall, 1994)。加えて、IgGに結合するタンパク質がダニにおいて見いだされている(Wang & Nuttall, 1995 aおよびb; Wang & Nuttall, 1999; WO95/27056)。これらのIgG結合タンパク質には、IGBPMA、IGBPMBおよびIGBPMCが含まれる。
【0008】
予想外に、本発明者は、本明細書において開示されるIgE結合活性がタンパク質IGBPMAによって提供されることを見いだした。
ダニ侵入に対する抗IgE応答が文献において議論されたことがなかったという理由で、これは驚くべきことである。実際、宿主の応答におけるIgEの役割はいくぶん不明確である。例えば、イヌ血清IgEレベルは、Rhipicephalus sanguineus侵入後に、顕著に上昇するが、ダニ抗唾液腺IgE量における変化は全く検出されなかった。著者らはこれを、他の無関係な抗原に対するIgE生産のために有益な免疫環境の、非特異的誘導として説明した(Szabo, Aoki et al. 2003)。IgE生産は、ロバにおけるAmblyomma cajennense侵入によっても誘導された(Szabo, Castagnolli et al. 2004)。Boophilus microplusによる度重なる侵入の後、ダニ感受性種の畜牛は、ダニ唾液腺抗原に対するIgG抗体レベルを減少させたが、ダニ唾液腺抗原に対するIgEレベルを上昇させた。これは、ダニ唾液成分が、ダニ感受性畜牛において、IgG応答を抑制したが、IgE応答を誘導したことを示す(Kashino, Resende et al. 2005)。著者らは、IgE抗体は防御性ではないと結論づけた。これはまた、Ixodes ricinusinfestations侵入が、マウスにおける全IgEの段階的な増加を伴ってTh2応答を極性化するという観察に一致する(Christe, Rutti et al. 1999; Christe, Rutti et al. 2000)。
【0009】
IgG結合タンパク質の痕跡、ダニ唾液腺におけるヒスタミン結合タンパク質の存在、およびIgE結合タンパク質の報告がないことの組み合わせは、本開示に先行する文献において一般的に持たれている見方が、ダニ侵入に対する宿主IgE応答は防御性のものではなく、そしてIgE抗体はダニ侵入を調節する役割を持たないであろう、というものであったことを意味する。
【0010】
ダニが実際にはIgE結合性分子を生産するという事実は、それ故に非常に予想外であった。本開示に照らすと、餌場中へのIgE結合活性(おそらく可溶性IgE受容体の形で)のダニによる注入は、肥満細胞および好塩基球などのエフェクター細胞の局所的IgE媒介活性化を抑制することができ、そのことはそれらの細胞の表面にある受容体の架橋を通して生じるように見える(Brossard & Wikel, 1997; Brown, Worms & Askenase, 1983; Matsuda et al., 1990; Szabo & Bechara, 1999; Ushio et al., 1993; Kinet, 1999)。これはダニの吸血を促進し得る。
【0011】
いずれの寄生生物もIgE結合活性を生産するという文献は、たった2報しかなかった。齧歯類Ig(IgG、IgMおよびIgE)のFc部位に対する受容体活性は、マウス寄生生物Trypanosoma musculi において検出され(Vincendeau & Daeron, 1989)、そして宿主IgEに対する非Fab結合活性は、マウス線虫寄生虫Heligmosomoides polygyrusについて報告された(Enriquez, Boggavarapu & Bradley Dunlop, 1992)。代替機構が、Leishmania chagasiにおいて検出され、そこでは、その原生生物がBリンパ球およびマクロファージのIgE低親和性受容体(CD23)の発現を阻害する(Noben, Wilson & Lynch, 1994)。
【0012】
したがって、発明者はIgE結合分子の新規供給源を提供する。彼らは、IGBPMAのIgE結合活性をさらに調査し、そしてマウス抗喘息モデルにおいて効果を有することを示した。これは、本タンパク質がアレルギー性症状などのIgE活性化に関連する症状の新規治療のための基礎を成し得ることを示唆する。その他のダニ由来タンパク質の結果に基づくと、免疫原性もまた低いようである(例えば、Evolutec Group plc.UK由来のEV131、WO9744451参照)。
【0013】
さまざまな側面で、本発明は、例えばIgE活性化に関連する症状の治療において、哺乳類においてIgEに結合し、それによりIgEの作用を調節し、そしてIgEの病理学的効果を調節するための、とりわけIGBPMAの、並びにその他のIGBPMAに関わるポリペプチドおよび薬剤の、新しい医療用途に広く関係する。
【0014】
本発明のこれらおよびその他の側面は、これからさらに詳しく議論される。
医療上の用途
したがって、一面において、本発明が提供するのは、
(i)図1に示されるアミノ酸配列、
(ii) 図1に示されるアミノ酸配列の変異体であって、その中の少なくとも200、250、275、300、310の連続するアミノ酸と、少なくとも50、60、70、80、90、95または99%の同一性を共有する変異体、または
(iii) 図1に示されるアミノ酸配列の断片であって、その中に示される少なくとも150、200、250、275、300、310の連続するアミノ酸を有する断片
を含み、それぞれの場合において、IgE分子に結合可能なポリペプチドの、IgE活性化に関連する症状の治療のための医薬の製造における使用である。
【0015】
好ましくは、前記変異体は、図1に示される全長アミノ酸配列に対して特定水準の同一性を共有する。
本発明のポリペプチドは、IgEに結合可能であり、そして具体的にはIgEの定常領域上の一またはそれ以上の結合部位に対して結合可能であり(例えば、上で論じられたエフェクター細胞のIgE媒介活性化の抑制のため)すなわち、その結合は単に、IgEの可変領域に対する抗原の結合ではない。
【0016】
好ましくは、IgEに対する結合は、IgGに対する結合と比べて同等か、またはそれより強い。
結合活性は、当業者に知られるいずれかの方法を使用して確かめることができ、それは例えば以下の(例えばBIAcore装置の使用するSPL、またはIgEアフィニティクロマトグラフィを含む)方法である。結合親和性をスクリーニングするために使用されるIgE分子は、例えばヒト、ラット、マウス、ウサギまたはその他のIgEを生産する動物のいずれかから、得ることができる。活性をスクリーニングするために使用されるIgE分子の断片は、Fcおよび/またはF(ab’)2領域の全てまたは一部を含む(ただし単にIgE可変領域からなるものではない)。
【0017】
本明細書において使用される場合、“IgEに関連する症状”という用語には、アレルギー性症状が含まれる。そのようなアレルギー性症状は、ある抗原に応答するIgEの生産が関与していてもよい。そのようなアレルギー性疾患は、例えば、I型過敏症反応であってもよい。I型過敏症反応には、喘息、湿疹、アレルギー性鼻炎、鼻漏、結膜炎、胃腸炎、じんましん、またはアナフィラキシー反応が含まれる。
【0018】
別の側面において発明が提供するのは、
(i)図1に示されるヌクレオチド配列、
(ii)図1に示されるコードヌクレオチド配列の変異体であって、その中の少なくとも600、750、825、900、930の連続するヌクレオチドと、少なくとも50、60、70、80、90、95または99%の同一性を共有する変異体、
(iii)図1に示されるヌクレオチド配列の断片であって、その中に示される少なくとも450、600、750、825、900、930の連続するヌクレオチドを有する断片
を含む、上記のポリペプチドをコードする核酸分子の、IgE活性化に関連する症状の治療のための医薬の製造における使用である。
【0019】
好ましくは、前記変異体は、図1に示される全長ヌクレオチド配列に対して特定水準の同一性を共有する。
変異体に関係する本発明の態様は、これからさらに詳しく議論される。
【0020】
変異体
本発明の変異体IGBPMA分子(ポリペプチドおよびヌクレオチド)は以下のものであってもよい:
(i)例えば外部寄生生物、例えば本明細書において記載のようなダニまたは節足動物寄生虫のその他の種などから入手できる、新規で天然に存在する相同なIGBP分子。また含まれるのは、R. appendiculatus IGBPMAの天然の生物学的変異体(例えば、対立遺伝子変異または地理的変異)である。IGBP分子の好ましい供給源は、外寄生生物および特に、ただしこれらには限定されないが、吸血昆虫、およびダニ目の寄生虫、例えばサシバエ(biting fly)、ウシダニ(cattle tick)およびコダニ(mite)である。前記節足動物寄生虫の典型としては、例えばBoophilus、Amblyomma、Argas、Rhipicephalus、Hyalomma、Ornithodorus、Dermacentor、Ixodesの種のダニ;ハエ、特にハエウジ症のハエ、吸血ハエおよびサシバエ、例えばOestrus ovis、Gasterophilus spp、Chrysomyia spp、Calliphora spp、Hypodermaspp、Dermatobia spp、Cochliomyla spp、Stomoxys calcitrans、Hydrotaea irritans、Simulium spp、Lyperosia irritans、Haematobiaspp、Tabanus spp、Phlebotomus sppおよびGlossina sppなど、シラミ、例えばHaematopinus eurysternus、Linognathus vituli、Solenopotes capillatus、Linoanathus ovillusおよびMenacanthus spp;コダニ、例えばNotoedres spp、Demodex spp、Sarcoptesspp、Chorioptes spp、Psoreraates spp、Dermanyssus spp、Ornithonyssusspp、Otodectes sppおよびNotoedres sppなど;ノミ、例えばCtenocephalides canisおよびC. felis;ヒツジシラミバエ(ked)、例えばMelophagus ovinus、並びにClimex sppなどの虫が挙げられる。
【0021】
(ii)人工IGBPMA分子誘導体であって、本開示に照らして当業者が調製可能であるもの。前記誘導体は、例えば、部位特異的変異生成またはランダム変異生成によって、または直接合成によって調製することができる。好ましくは、変異体核酸は(例えば)本明細書に示される配列の全体または一部を有する元の核酸から、直接的にまたは間接的に(例えば、一またはそれ以上の増幅または複製工程を経て)作製される。
【0022】
特に含まれるのは、本明細書中の配列の一部に対応する、特徴的な部分または断片(しかしながら生産されるもの)のみが含まれる切断型変異体である−例えば、IgEに結合可能なポリペプチドの機能性部分。
【0023】
また含まれるのは、分子の両端で、非天然の連続する配列によって伸長された分子であり、すなわち本発明のポリペプチドは、付加アミノ酸、付加ドメインを含んでもよく、または付加ドメインまたは他の分子と結合されてもよい。ポリペプチドに結合される付加アミノ酸、ドメイン、または分子は、例えばポリペプチドの精製を補助する際の付加的な機能を提供し得る。ポリペプチドの精製を補助することができる付加ドメインの例は、6-ヒスチジンタグおよびグルタチオンSトランスフェラーゼタグである。ポリペプチドは、例えば生物活性標識、放射性標識、酵素標識、または蛍光標識などであってもよい標識などの、ペプチドまたは他のタンパク質と融合される、融合タンパク質であってよい。
【0024】
本明細書において使用する場合‘変異体’核酸という用語は、これらのあり得るもの全てを包含する。ポリペプチドまたはタンパク質を指す文脈で使用される場合、それは変異体核酸にコードされる発現産物、およびその逆を示す。
【0025】
変異体に関わる本発明のいくつかの側面は、これからさらに詳しく議論される。
二つのアミノ酸配列または二つの核酸配列のパーセント同一性は、目視による検査および数学的計算により測定可能であり、または、より好ましくは、その比較はコンピュータプログラムを使用して配列情報を比較することによってなされる。例として、好ましいコンピュータプログラムは、Genetics Computer Group (GCG; Madison, Wis.)Wisconsin package version 10.0 program、 ‘GAP’ (Devereux et al., 1984, Nucl. Acids Res. 12: 387)である。‘GAP’プログラムのための好ましい初期設定パラメータには、(1)ヌクレオチドのための単項比較マトリックス(unary comparison matrix)(同一性に対して1および非同一性に対して0の値を含む)のGCG実行、およびSchwartzとDayhoff編集の Atlas of Polypeptide Sequence and Structure, National Biomedical Research Foundation, pp. 353-358, 1979によって記載されたようなGribskovとBurgess, Nucl. Acids Res. 14:6745, 1986の加重アミノ酸比較マトリックス、またはその他の同等な比較マトリックス;(2)アミノ酸配列について、各ギャップに対して30のペナルティおよび各ギャップ中の各記号に対して1の追加ペナルティ、または核酸配列について、各ギャップに対して50のペナルティおよび各ギャップ中の各記号に対して3の追加ペナルティ;(3)最後のギャップに対してペナルティなし;および(4)長いギャップに対して最大ペナルティなし、が含まれる。
【0026】
誘導体の生産
誘導体は、本明細書に開示のいずれかの配列を修飾することによって生産することができる。
【0027】
本発明のポリペプチドは、切断型断片、例えばN末端26アミノ酸切断型、であってもよい。そのような断片は、単離型、すなわち他のアミノ酸若しくはポリペプチドの一部または他のアミノ酸若しくはタンパク質との融合ではないもので提供されてもよく、または部分または領域を形成するより大きいポリペプチドの内部に含まれていてもよい。より大きいポリペプチドの内部に含まれている場合、本発明のその断片は、最も好ましくは、一または二つの非天然の連続する配列が融合された、単一の連続した領域を形成する。加えて、いくつかの断片が、単一のより大きいポリペプチドの内部に含まれていてもよい。
【0028】
核酸配列の変化は、多くの理由で望ましいであろう。例えば、核酸の変化は、制限酵素サイトを導入または除去することができ、またはコドン使用頻度を変えることができる。あるいは、配列の変化は、核酸中への一またはそれ以上のヌクレオチドの一またはそれ以上の付加、挿入、欠失または置換により、誘導体を生産することができ、コードされるポリペプチドの一またはそれ以上のアミノ酸の付加、挿入、欠失または置換を導く。
【0029】
そのような変化は、例えばコードされるポリペプチド中の切断部位;コードされるポリペプチド中のグリコシル化、リポイル化などのためのモチーフなどの、翻訳後修飾のために必要な部位を修飾することができる。リーダー配列またはその他の標的化配列(例えば膜局在配列またはゴルジ局在配列)が、発現後の局在を決定するために、発現されるタンパク質に付加されてもよい。
【0030】
その他の望ましい変異は、コードされるポリペプチドの活性(例えば特異性)または安定性を変化させるための、ランダムまたは部位特異的変異誘発であってよい。変化は、保存的変化、すなわち、例えばイソロイシン、バリン、ロイシンまたはメチオニンなどの一つの疎水性残基を他のものへ置換すること、または、一つの極性残基を他のものへ置換することによるもの、例えばアルギニンをリジン、グルタミン酸をアスパラギン酸、またはグルタミンをアスパラギンなど、でもよい。当業者においてよく知られているように、保存的置換によるポリペプチドの一次構造変化は、配列に挿入されたアミノ酸の側鎖が、置換され取り除かれたアミノ酸の側鎖と同様の結合および接触を形成可能であるため、そのペプチドの活性を顕著には変化することはない。これは、ペプチドの立体構造決定において重要な領域中の置換であっても、同様である。同様に含まれるのは、非保存的置換を有する変異体である。当業者においてよく知られているように、ペプチドの立体構造決定において重要でないようなペプチドの領域の置換は、そのペプチドの三次元構造を大きくは変化させないので、その活性に大きな影響を与える可能性はない。ペプチドの立体構造または活性の決定において重要な領域においては、そのような変化は、ポリペプチドに対して有利な特性を与えることができる。実際、上記のような変化は、ペプチドに対して、例えば安定性や特異性を変化させるといった若干有利な特性を与えることができる。
【0031】
本発明の変異体および/またはホモログはまた、IGBPMAの化学的修飾によっても作製することができる。ポリペプチドの化学修飾のための方法は、当該技術分野においてよく知られている。
【0032】
本発明のポリペプチドを、適切なベクターおよび宿主生物を使用する、該ポリペプチドをコードする核酸の発現によって得ることができる。適切なベクターおよび宿主の例は、当該技術分野においてよく知られている(例えばSambrook, J. et al. (1989) in: Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd ed.), Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York参照)。
【0033】
本発明のポリペプチド、および特に断片はまた、例えば専ら固相合成法によるもの、部分的に固相合成法によるもの、フラグメント縮合によるもの、または古典的な溶液カップリング(solution coupling)によるものなどの、いずれかの適切な方法による化学的合成を使用しても作製することができる。従来の液相ペプチド合成において、ペプチド鎖を、構成アミノ酸が所望の配列中の成長するペプチド鎖に付加される、一連のカップリング反応によって調製することができる。そのような多くの方法は、当業者において今や一般的である。
【0034】
本発明の変異体および/またはホモログを、分子生物学的手法を使用して、IGBPMAをコードする核酸の修飾によって、または本発明のさらなる変異体またはホモログをコードする核酸の修飾によって、作製することもできる。分子生物学的手法は、当該技術分野においてよく知られている。
【0035】
したがって、本発明が提供するのは、IgE調節性ポリペプチドを生産する方法であって、
(i)IGBPMAまたはその変異体であるポリペプチド、またはそれらをコードする核酸を提供する工程、
(ii)ポリペプチドの配列、またはそれをコードする核酸の配列を修飾する工程、および
(iii)修飾ポリペプチド(核酸が修飾される場合は、修飾核酸の発現産物)のIgE結合特性をアッセイする工程
を含む、前記方法である。
【0036】
本明細書の以下において簡略化のため、IGBPMAおよび変異体ポリペプチドは、“IGBPMAポリペプチド”と呼ぶこととする。
ホモログの同定
IGBPMAポリペプチドに対する抗体を使用して、本明細書において具体的に例示したものと構造的類似性を有するIgE結合性化合物をスクリーニングすることができる。適切な方法は、当業者においてよく知られている。
【0037】
ひとたび結合活性が同定されれば、不均一な混合物からポリペプチドを精製する方法は、当該技術分野においてよく知られている(例えば、選択的沈殿、タンパク質分解、既知分子量カットオフフィルタを用いた限外濾過、イオン交換クロマトグラフィ、ゲル濾過など)。典型的手順は、“Protein Purification - principles and practice” Pub. Springer-Verlag, New York lnc (1982)、およびHarris & Angal (1989)による“Protein purification methods - a practical approach” Pub. O. U. P. UK、またはそこにおける参考文献に詳しく説明される。タンパク質精製のために適切と考えられるさらなる方法は、in “Methods in Enzymology Vol 182 - Guide to Protein Purification” Ed. M P Deutscher, Pub. Academic Press Incにおいて開示される。
【0038】
IGPBMA配列(AF001868)は、やがて利用可能になるであろう相同配列などの相同配列、および本明細書において記載のように活性の試験が可能な発現産物を見つけるために、データベース(例えばESTまたはSTSのもの)検索において使用することができる。
【0039】
あるいは、ホモログを、標準的なサザンブロッティングの手法によって提供することができる。例えば、DNAを細胞から抽出し、そして異なる制限酵素によって消化することができる。次いで制限酵素断片を、変性およびニトロセルロースフィルタへの転移の前に、アガロースゲル上での電気泳動によって分離することができる。標識プローブを、フィルタ上のDNA断片にハイブリダイズさせることができ、そして結合が測定される。プロービングのためのDNAを細胞由来のRNA調製物から調製することができる。プロービングは、いわゆる‘核酸チップ’(総説としてMarshall & Hodgson (1998) Nature Biotechnology 16: 27-31参照)と呼ばれる手段によって行われてもよく、または行われなくてもよい。
【0040】
IgE分子に結合可能なポリペプチドをコードする核酸をスクリーニングすることができる、核酸分子のライブラリが作製可能である。そのようなライブラリは、IGBPMAをコードする核酸分子を使用して作製可能である。IGBPMA核酸分子配列は、例えばランダムPCR突然変異誘発、または遺伝子シャフリングの手法によって突然変異させることができる。結果として得られる変異核酸分子を、ベクター中に連結することができる。適切な宿主において核酸分子を発現することによって、ポリペプチドのライブラリも作製可能である。
【0041】
本発明におけるヌクレオチド変異体は、好ましくは‘ハイブリダイジング配列’であり、それらは非ストリンジェント条件下(6×SSC/50%ホルムアミド、室温)で結合するものであり、そして低ストリンジェント条件下(2×SSC、室温または2×SSC、42℃)またはより好ましくは例えば2×SSC、65℃といったより高いストリンジェント条件下で洗浄されるものである(ここでSSC = 0.15 M NaCl、0.015 M クエン酸ナトリウム、pH 7.2)。
【0042】
あるいは、核酸増幅反応、特にポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用することができる(“PCR protocols; A Guide to Methods and Applications”, Eds. Innis et al, Academic Press, New York, (1990)参照)。得られる配列を、GCGパッケージ中のBESTFITを使用することによって、GenBankヌクレオチド配列中のIGBPMA参照配列(AF001868)と比較することができる。
【0043】
本明細書の実施例において、IGBPMA参照配列(GenBank, AF001868)のnt-648のサイレント変異(T-C)を含む変異体配列が開示される。
本明細書の以下において議論されるように、本発明はまた、IGBPMA模倣体、またはIGBPMA-IgE相互作用に基づいて同定されるその他の薬剤を提供する。
【0044】
文脈がその他の場合を求めない場合、本明細書の以下の開示において、上記のポリペプチド、ポリヌクレオチド、いずれかの変異体、模倣体または本発明の他の薬剤のいずれかは、‘本発明の治療剤’と呼んでよく、そしてそのような治療剤に関する本開示は、これらのものそれぞれを個々に適用する。全ての場合において、好ましい本発明の治療剤は、前記の側面としてのポリペプチドまたはポリヌクレオチド(いずれかの変異体または断片を含む)であり、そして特にIGBPMAポリペプチド(その変異体または断片を含む)である。
【0045】
そのような治療剤全ては、IgE活性化に関連する症状の治療における使用のために開示される。同じようにそれらの使用の方法が開示される(そのような治療のための医薬の調製におけるそれらの使用に加えて)。
【0046】
その様な治療剤全ては、IgE活性化に関連する症状の治療における有効性について、ヒト被験者または被験動物における、安全性および/または毒性を試験可能でもあり、そして、以下に記載のように、IgE活性化に関連する症状の治療のために、一またはそれ以上の担体、希釈剤または剤とともに製剤化することができる。
【0047】
したがって、一側面において本発明が提供するのは、IgE活性化に関連する症状の治療のための医薬の製造における、本発明の治療剤の使用である。
本発明がまた提供するのは、例えば、ヒトや動物において、本発明の治療剤の治療上有効量を投与することを含む、IgE活性化に関連する症状を治療するための方法である。
【0048】
本発明の治療剤はまた、例えば吸引副腎皮質ステロイド、抗IgE抗体(例えばオマリズマブ)などの、IgE活性化に関連する症状の治療において既に使用されている医薬品と併用しても投与することができる。
【0049】
構造-機能研究による調節因子模倣体の同定
IGBPMAは、IgE結合特性を共有する機能的模倣体の供給源となり得る。そのような模倣体の同定および使用は、本発明のさらなる側面を形成する。
【0050】
IGBPMA模倣体は、IGBPMAアミノ酸配列の活性部位を含んでいなくてもよく、実際、全くペプチドでなくてもよいが、IgE結合の本質的な生物学的活性を保持し得る。非ポリペプチド“低分子”は、多くのin vivoでの治療上の用途において、しばしば好ましい。
【0051】
そのような模倣体の例には、IGBPMAポリペプチド、またはそのIgE結合部位の、三次元構造に似せてモデリングされる化学的化合物が含まれる。
IGBPMA上のIgE結合部位は、当業者においてよく知られた方法によって、または下記の方法を使用することによって、同定可能である。
【0052】
既知の薬剤的に活性な化合物に対する模倣体の設計は、“リード”化合物に基づいた医薬品の開発に対する、認められたアプローチである。
既知の標的特性を有する化合物から模倣体を設計する際に、一般的に取られるいくつかの工程がある。第一に、標的特性を決定する際に決定的および/または重要な化合物の特定部分を決定する。ペプチドの場合、これは、例えば各残基を順番に置換することによって、ペプチド中のアミノ酸残基を系統的に変化させることによって行うことができる。ペプチドのアラニンスキャンは、そのようなペプチドモチーフを絞り込むために、一般的に使用される。化合物の活性領域を成すこれらの部分または残基(この場合はIgE結合部位)は、その化合物の“ファーマコフォア”として知られる。
【0053】
ひとたびファーマコフォアが見つかれば、ファーマコフォアの構造は、さまざまな情報源、例えば分光技術、X線回折データおよびNMR、からのデータを使用して、その物理的特性、例えば立体化学、結合、大きさおよび/または電荷、に従ってモデリングされる。
【0054】
三次元構造を、例えば“Three-Dimensional Solution Structure of alpha-Conotoxin MII, an alpha3beta2 Neuronal Nicotinic Acetylcholine Receptor-Targeted Ligand”, Shon, et al. (1997) Biochemistry, vol. 36(50): 15693-15700によって例示されるような、当業者においてよく知られた方法によって決定することができる。
【0055】
コンピュータ分析、類似性マッピング(similarity mapping)(原子間の結合ではなく、ファーマコフォアの電荷および/または体積をモデリングする)およびその他の技術を、このモデリング工程において使用することができる。
【0056】
このアプローチの変形において、リガンド(すなわちIGBPMAポリペプチド)およびその結合パートナー(IgEの全体または一部)の三次元構造が、モデリングされる。このモデリングは、リガンドおよび/または結合パートナーが結合に際してコンフォメーションを変化させる場合に、特に有用であり、模倣体の設計において、そのモデルを、これ考慮したものにできる。
【0057】
鋳型分子が、ファーマコフォアに類似する化学基に接ぎ合わされ得るように、次いで選択される。鋳型分子およびそれに接ぎ合わされる化学基は、模倣体合成が簡単であり、薬理学的に許容され得て、そして生体内で分解しないが一方でリード化合物の生物学的活性を維持するように、都合よく選択することができる。あるいは、模倣体がペプチドを基礎としている場合、さらなる安定性が、ペプチドを環化することによって達成され、硬さを増すことができる。模倣体およびこのアプローチによって見い出される模倣体を、次いで、それらが標的特性を有するかどうか、または標的特性をどの程度まで示すかを見るために、スクリーニングすることができる。さらなる最適化または修飾を、次いで、in vivoまたは臨床試験のための一またはそれ以上の最終模倣体(final mimetics)に到達するために実行することができる。
【0058】
したがって、本発明は、IgE結合因子または調節因子を提供(設計および/または生産)する方法であって、
(i)上述のIGBPMAポリペプチドを提供する工程、
(ii)前記ポリペプチドに関わる立体構造情報および電荷情報(例えば、IgEの化学基と相互作用するポリペプチドの化学基の情報)を援用して、前記ポリペプチドの三次元モデルを作成する工程;および
(iii)前記立体構造情報および電荷情報に基づいて(例えば、ポリペプチドの(ii)において同定される化学基の相対的空間位置の同定、およびその空間位置中のいくつかまたは全ての化学基を含む分子模倣体の設計によって)、IgE結合薬剤を提供する工程
を含む、前記方法を提供する。
【0059】
前記方法は、例えばSPLおよび/またはIgEアフィニティクロマトグラフィを使用して、分子模倣体のIgE分子に結合する能力に関して分子模倣体を合成し、そして試験をすることが含まれてもよい。IgE分子に対して、IGBPMAポリペプチドの結合親和性と同等またはより大きな結合親和性を有する分子模倣体を、上述の方法において使用するための分子模倣体として選択することができる。
【0060】
代替IgE調節因子の同定
新規薬物の同定を導く薬学研究は、リード化合物が見つかる前と見つかった後の両方における、非常に多くの数の候補物質のスクリーニングを含む可能性があるということが、よく知られている。これは、薬学研究を非常に費用がかかり時間を必要とするものにする、一つの要因である。スクリーニング工程において助けとなる手段は、考慮に値する商業的重要性および実用性を持つことができる。
【0061】
本発明は、さらなる側面において、IgEに結合するかまたはIgEを調節するさらなる物質のスクリーニングの方法、同等の反応条件下での、検出可能なIGBPMAポリペプチドのIgE上にあるポリペプチドの関連するまたは個別の結合部位(IgEまたはその定常領域の全体または一部によって一般に提供されるもの)に対する結合を、試験化合物の存在下および非存在下で比較することを一般に含む方法を提供する。IGBPMAポリペプチドを使用して、競合フォーマット(competitive format)または置換フォーマット(displacement format)のどちらかにおける物質のスクリーニングをすることができる。
【0062】
したがって、本発明のさらなる側面において、本明細書において提供されるIGBPMAポリペプチドは、IgE結合に関するその活性または機能への影響、阻害、調節、または模倣をする物質をスクリーニングする方法において使用される。
【0063】
例となる方法には:
(i)IGBPMAポリペプチドおよびIgE上のIGBPMAポリペプチドの結合部位および推定IgE調節薬剤を寄せ集める工程;そして
(ii)例えばSPLまたはIgEアフィニティクロマトグラフィを使用して、IgE上の結合部位に対するIGBPMAポリペプチドの結合親和性を観察または測定する工程(ここで、SPLを使用して結合親和性を観察または測定する場合、ポリペプチドまたはIgE分子はセンサーチップ上に固定化されてもよい);
(iii)IgE上の結合部位に対するIGBPMAポリペプチドの結合親和性が、前記候補薬剤の非存在下でのIgE分子に対するポリペプチドの結合親和性と比較して、前記薬剤の存在下で
減少するかどうかを評価する工程;
が含まれる。
【0064】
IgE分子に対するIGBPMAポリペプチドの親和性を減少させる薬剤を、例えばSPLまたはIgEアフィニティクロマトグラフィを使用して、薬剤のIgE分子に結合する能力についてさらに試験してもよい。IgE分子に対する薬剤の結合親和性は、IgEに対するIGBPMAからなるポリペプチドの結合親和性と比較されてもよい。
【0065】
IgE分子に結合するまたはIgE分子を調節する薬剤を同定する別の方法には、
(i)推定薬剤を、IgE分子と接触させる工程;そして
(ii)IGBPMAポリペプチドの存在下および非存在下で、IgE分子に対する薬剤の結合親和性を観察し、または測定する工程(ここで、IgE分子に対する薬剤の結合親和性は、例えばSPLまたはIgEアフィニティクロマトグラフィを使用して、観察、または測定されてもよい);
(iii)前記推定薬剤の結合親和性が、IGBPMAからなるポリペプチドなどのポリペプチドのIgE分子に対する結合親和性と、同等またはより大きいかどうかを評価する工程;
が含まれる。
【0066】
この側面および他の側面において、前記物質(推定IgE調節因子)が、例えば当該技術分野において現在よく知られているような、コンビナトリアルライブラリーの産物として、提供されてもよい(例えばNewton (1997) Expert Opinion Therapeutic Patents, 7(10): 1183-1194参照)。
【0067】
したがって、置換フォーマットにおいて、本発明は、サンプル中の推定IgE調節因子の存在または量を検出するための方法であって:
(a)IgE上の結合部位に固定化された、検出可能な(例えば標識された)IGBPMAまたはその変異体ポリペプチドを含む複合体に対して、サンプルを曝露する工程、
(b)いずれかの置換されたIGBPMAまたは変異体ポリペプチドを検出する工程
を含む、前記方法を提供する。
【0068】
競合フォーマットにおいて、アッセイの全ての構成部分が同時に寄せ集められ、そして、推定IgE結合因子の存在下で、IGBPMAまたは変異体ポリペプチドの結合の減少が測定される。一態様において、IgE上の結合部位に対するIGBPMAまたは変異体ポリペプチドの結合定数Kdは、放射性標識化ペプチドが量を増やしながらIgE上の結合部位に対して添加され、そしてそれぞれの濃度における結合した標識化物質の量が測定される、飽和結合法(saturation binding method)によって測定される。平衡における全リガンドの関数として結合リガンドの濃度を表す適切な結合方程式は、Bmax(結合部位の濃度)およびKd(結合部位を半飽和させるために必要なリガンドのおよその濃度)を計算するために、データに当てはめられる。
【0069】
結合の可逆性は、平衡条件下で、それぞれの結合部位への結合およびそれぞれの結合部位からの解離を自由に行う、リガンドの特徴である。特定の化合物の結合の可逆性は、標識化化合物の平衡結合が達成された後、非標識化化合物によって置換される標識化化合物の能力によって、示される。
【0070】
IGBPMAに関するIgE結合部位に対する試験化合物の結合定数を測定するために、IGBPMAまたはその変異体の標準濃度の存在下で、IgE調製物上の結合部位へ、試験化合物が濃度を増やしながら、添加される。IgE調製物は次いで速やかに濾過され、洗われ、そして結合した放射性標識についてアッセイする。試験化合物の結合定数(Ki)は、コンピュータによって当てはめられる競合結合曲線から決定される。
【0071】
原則的に、本発明の方法は、当該技術分野においてよく知られているもののようなハイスループットスクリーニング法に、同じようにまたは追加的に採用されてもよく、そしてその方法は結合パートナーに基づく(例えばWO 200016231 (Navicyte); WO 200014540 (Tibotec); DE 19840545 (Jerini Biotools); WO 200012755 (Higher Council for Scientific Research); WO 200012705 (Pausch MH; Wess J); WO 200011216 (Bristol-Myers Squibb); US 6027873 (Genencor Intl.); DE 19835071 (Carl Zeiss; F Hoffman-La Roche); WO 200003805 (CombiChem); WO 200002899 (Biocept); WO 200002045 (Euroscreen); US 6007690 (Aclara Biosciences)参照)。
【0072】
本発明のいずれかの治療剤のさらなる最適化は、前記治療剤と、(i)IgE上の治療剤の結合部位(IgEまたはその定常領域の全体または一部によって一般に提供される);(ii)IgE活性化に関連する症状において、IgEまたはその定常領域の全体または一部が病理的に相互作用するようなIgE受容体、との併用を含んでもよい。前記相互作用が調節される程度、そして特に阻害される程度が、次いで評価される。前記工程は、治療剤の構造が変えられ、または近い構造的アナログまたは変異体が提供される点で反復性であり、そしてこれは再試験されてもよい。
【0073】
例えばIGBPMAの結合親和性と同程度またはより大きい親和性を伴ってIgEに結合するような、上述の同定された薬剤は、先行する側面において記載のIgE活性化に関連する症状の治療の方法において使用するための薬剤として、選択され、そして製造されてもよい。
【0074】
治療組成物および投与の様式
本発明における治療剤は、本明細書中に記載の方法において使用するための医薬組成物中に処方され得る。
【0075】
これらの組成物は、上記物質のうちの一つに加えて、薬学的に許容される賦形剤、担体、緩衝液、安定化剤または当業者によく知られているその他の物質を含んでもよい。そのような物質は、無毒性でなければならず、活性成分の有効性を干渉してはならない。担体またはその他の物質の正確な性質は、例えば、経口、静注、皮膚または皮下、筋肉内、腹腔内経路のような、投与の経路に依存し得る−例となる製剤はWO95/27065で議論される。
【0076】
本出願において特に興味あるのは、例えば経鼻吸引法といった吸引製剤であり、当該技術分野において知られている方法に従う。そのような治療剤は、IgE活性化に関連する症状の治療において使用するために、特に採用される。
【0077】
吸引において適切なポリペプチド組成物は、当該技術分野においてよく知られている−例えばUS6,632,456; WO96/32096; WO91/16038参照。そのような肺用薬物送達組成物は、患者による薬物分散剤の吸引によって送達されるよう設計され、それにより薬物分散剤内の活性薬物が肺に到達できる。肺に送達される特定の薬物は、肺胞領域を通って、簡単に血液循環内に吸収される。
【0078】
肺用薬物送達は、様々なタイプの液体噴霧器、エアロゾルベースの定量吸引器(MDI)、および乾燥粉末拡散器を含む、異なるアプローチによって、それ自体達成され得る。乾燥粉末拡散器は、特にタンパク質およびポリペプチドといった乾燥粉末として簡単に製剤化し得る薬物の送達のために、有望である。好ましい粒径は、0.5〜10 μmの範囲内であり得る。
【0079】
乾燥粉末薬物の肺送達のために、特に有望なアプローチは、加圧ガスの供給源を提供するためのハンドポンプを伴う携帯機器を利用する。加圧ガスは、例えばベンチュリノズルといった粉末拡散器を通って急激に放出され、そして散布粉末は患者の吸引のために利用可能となる。
【0080】
したがって、本発明は、例えば粒径0.5〜10 μm、より好ましくは7 μm未満、そしてさらに好ましくは5 μm未満の乾燥粉末の形態の、吸引可能な形態で、本発明の治療剤(特にIGBPMAまたはその変異体ポリペプチド)を含む、組成物を提供する。
【0081】
吸引による投与のために適した本発明の医薬組成物は、噴霧として医薬組成物を投与できる吸引器とともに、キットの中に含まれていてもよい。したがって、本発明はまた、本発明の治療剤および治療剤を必要とする患者への吸引によって治療剤を送達するための送達手段を含むキットを提供する。送達手段は、当該技術分野において知られているいずれのものでもよい−例えば、液体噴霧器;エアロゾルベースの定量吸引器(MDI)、または乾燥粉末拡散器。送達手段には、典型的には、治療剤を保持するための容器、加圧ガスの供給源(シリンダーまたはポンプ)および鼻腔内にそれを送達するためのノズルまたはその他の出口が含まれる。
【0082】
医薬組成物にはまた、例えばオマリズマブといったIgE活性化に関連する症状の治療のために適切な、その他の医薬品も含まれる。
本発明の治療剤の投与は、“予防有効量”または“治療有効量”(場合によっては、予防は治療とみなすことができるが)であることが好ましく、これは個々に対する利益を示すために適している。実際の投与量、並びに投与の速さおよび時間経過は、治療さているものの性質および重症度に依存し得る。例えば用量の決定などの、治療の処方は、一般開業医およびその他の医師の責任の範疇にあり、そして、治療される疾患、各患者の症状、送達の場所、投与の方法、および開業医に知られているその他の要素が典型的には考慮される。前述の技術および手順の例は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th edition, Osol, A. (ed), 1980中に見い出すことができる。本発明の核酸ベースの治療剤は、当該技術分野においてよく知られているような従来の遺伝子治療ベクターとともに使用してもよい(WO0159142参照)。
【0083】
生産のための方法
IgE活性化に関連する症状の治療において利用するために適合される治療剤の生産のための方法は、本発明のさらなる側面を形成する。
【0084】
加えて、そのような組成物が組み換えによって生産されるポリペプチドを含む場合、それらは内毒素を実質的に含まないことが好ましい。これは、例えばポリミキシンアガロースカラムを使用して、達成され得る。
【0085】
本発明はこれから、以下の限定的ではない図および実施例への言及とともにさらに述べられる。本発明の他の態様は、これらに照らし合わせて、当業者が気づくであろう。
本明細書に引用の全参考文献の開示は、本発明を実行するために当業者によって使用され得る故に、ここにおいて特に本明細書における相互参照として援用される。
【0086】
表および図
表1:三つの分析物:メスSGED6、オスSGED6、およびメス唾液D7についての相対結合活性(RBA)の推定を示す。
【0087】
図1:IGBP-MAのアミノ酸配列およびDNA配列。
図2:ドーパミン刺激によって誘導されたダニ唾液分泌。
A.DA刺激後のオス(三角)およびメス(四角)の唾液分泌。X軸は、部分的に給餌されたメスおよび十分に給餌されたオスおよびメスの体重(mg)の平均値を表す。Y軸は、それぞれのダニによって分泌された唾液の平均体積(μl)を表す。エラーバーはSEM(n = 12〜40)を表す。
【0088】
B.ダニ唾液中のタンパク質濃度。カラムは、オスおよびメス唾液中の全タンパク質濃度(mg/l)の平均をそれぞれ示す。エラーバーは、タンパク質濃度の範囲を示す。オスおよびメスの唾液の2回分および8回分がそれぞれ使用された。
【0089】
図3:部分的に給餌された(6日目)メス唾液腺抽出物中の免疫グロブリン結合活性。線A〜Eは、IgG、IgE、Fc、F(ab’)2に対する結合、およびベースラインをそれぞれ表す。白および黒の矢印は、分析物注入の開始点および終点をそれぞれ表示する。分析物注入の終了後、フローセルはTBSで洗浄された。
【0090】
図4:部分的に給餌された(6日目)オス唾液腺抽出物中の免疫グロブリン結合活性。線A〜Eは、IgG、IgE、Fc、F(ab’)2に対する結合、およびベースラインをそれぞれ表す。白および黒の矢印は、分析物注入の開始点および終点をそれぞれ表示する。分析物注入の終了後、フローセルはTBSで洗浄された。
【0091】
図5:部分的に給餌された(7日目)ドーパミン刺激メス唾液中の免疫グロブリン結合活性。線A〜Eは、IgG、IgE、Fc、F(ab’)2に対する結合、およびベースラインをそれぞれ表す。白および黒の矢印は、分析物注入の開始点および終点をそれぞれ表示する。分析物注入の終了後、フローセルはTBSで洗浄された。
【0092】
図6:オスSEGD6中のIGBPMAがモルモットIgGおよびラットIgEに結合する。
A:タンパク質ゲル(SDS-PAGE、非還元条件)は、オスダニSGED6中の全タンパク質プロフィールを示し、そしてIGBPMA(矢印による表示)が、IgGおよびIgEの両方に結合した主要なタンパク質であった。
【0093】
レーン1:分子量(MW)マーカー(Mark-12, Invitrogen)
レーン2および8:ローディング前のダニオスSGED6
レーン3:タンパク質-L-IgG(モルモット)カラムを通過するダニオスSGED6(サンプルは濃縮された)
レーン7および9:タンパク質-L-IgE(ラット)カラムを通過するダニオスSGED6(サンプルは濃縮された)
レーン4:モルモットIgG
レーン5および6:タンパク質-L-IgG(モルモット)カラムの溶出画分1および2
レーン10:ラットIgE
レーン11および12:タンパク質-L-IgE(ラット)カラムの溶出画分1および2
B.抗IGBP血清によるウェスタンブロッティング
レーン1:オスSGED6の全タンパク質。バンドは上からIGBPMA、-MB、-MC
レーン2:タンパク質-L-IgEカラムの溶出液。
【0094】
図7:rIGBPMA発現のスクリーニング
A.タンパク質ゲル(SDS-PAGE、還元条件)
B.抗IGBP血清によるウェスタンブロッティング
レーン1〜12:rIGBPMA発現を誘導した各クローンの全E.coli細胞溶解物。レーン3中に表されるクローン(No. F6)が、後の全ての実験のために選択された。
【0095】
レーン13:オスダニSGED6
レーン14:MWマーカー。
図8:タンパク質ゲル(SDS-PAGE、還元条件)はリフォールディング後の精製可溶性rIGBPMAを示す
レーン1:MWマーカー
レーン2:rIGBPMA発現の誘導後のE.coli(クローン No. F6)の不溶性画分(6 M 尿素抽出物)中の全タンパク質
レーン3:TBS中の精製可溶性rIGBPMA、矢印はrIGBPMAを示す。
【0096】
図9:可溶性rIGBPMAはヒトおよびラットIgEに結合する
アフィニティカラム(タンパク質-L-IgE)および対照カラム(タンパク質-Lのみ)由来サンプルのタンパク質ゲル(SDS-PAGE、非還元条件)
A.ヒトIgE
レーン3〜7:アフィニティ(タンパク質-L-IgE)カラム
レーン8〜12:対照(タンパク質-Lのみ)カラム
レーン1:ヒトIgE
レーン2:精製rIGBPMA(矢印の表示)
レーン3および8:ローディングされたrIGBPMA
レーン4および9:溶出前の最後の洗浄画分
レーン5および10:1回目溶出画分
レーン6および11:2回目溶出画分
レーン7および12:3回目溶出画分
M:MWマーカー
B.ラットIgE
レーン1〜5:対照(タンパク質-L)カラム
レーン6〜10:アフィニティ(タンパク質-L-IgE)カラム
レーン1および6:カラム上にローディングされたBSA(点線の矢印)を伴う精製rIGBPMA(実線の矢印)
レーン2および7:溶出前の最後の洗浄画分
レーン3および8:1回目溶出画分
レーン4および9:2回目溶出画分
レーン5および10:3回目溶出画分。
【0097】
図10:Fc断片に結合するrIGBPMAのBIAcore 2000検出
矢印1が開始を示し、矢印2がrIGBPMA注入の完了を示す
曲線A:約4000 RUの固定化されたFc(ヒト)断片を加えたフローセル4
曲線B:約5000 RUの固定化されたBSAを加えたフローセル2
曲線C:約5000 RUの固定化されたF(ab)2(ウサギ)断片を加えたフローセル3
曲線D:リガンドを固定化していないブランクとしてのフローセル1。
【0098】
図11:BALB/cマウスのアレルギー性喘息に対するrIGBPMAの影響。
図12:IgEおよびIgGに対するrIGBPMAの結合の比較
曲線A:IgE
曲線B:IgG
曲線C:BSA。
【実施例】
【0099】
実施例
材料および方法
ダニおよびモルモット
R. appendiculatusの当研究室のコロニーは、ダニで処理されたことのないDunkin Hartlyモルモットの刈られた背中を全齢に給餌することによって、維持される(Jones et al., 1988)。十分に給餌される(engorgement)メスは、遅い給餌段階を経て、次いで給餌のおよそ6日目に速い給餌段階に切り替わり、その間、メスは餌の血全体の約90%を吸う(結果は示さず)。交配およびそれに続くオス-メス共給餌(male-female co-feeding)が、メス給餌のおよそ5日目に起こる(Wang, Henbest & Nuttall, 1999)。Ig結合実験において使用された全てのダニは、脱皮後3ヶ月を超えた成虫であった。成虫の20ペアが、唾液腺解剖のために6日間、および唾液収集のために7日間、3匹のモルモットのそれぞれを給餌された。
【0100】
ダニ唾液腺抽出物および唾液の調製
実施例1において、部分的に給餌された成虫ダニは、それらの宿主から引き剥がされ、水道水で3回すすがれ、次いで唾液腺のために解剖された。唾液腺抽出物(SGE)は、Tris-HCl緩衝生理食塩水(TBS: 50 mM Tris, 150 mM NaCl, 20 mM CaCl2, 20 mM MgCl2,および0.5 % Triton-X100, pH 7.0)中で、50匹のダニの対を成す腺から調製され、そして以前の記載のように保存した(Wang & Nuttall, 1995b)。オスSGEおよびメスSGEは、Bio-Radタンパク質アッセイキット(Bio-Rad)を使用して測定した場合、タンパク質濃度がそれぞれ1 mg/mlおよび2 mg/mlになるまで希釈された。
【0101】
ダニ唾液を収集するために、ドーパミン(DA)塩酸塩(Sigma)が、ダニ唾液分泌を刺激するように、1.2% NaClに5 mg/mlとなるように溶解された。ダニは、ハミルトンシリンジに装着された30gシリンジ針を使用し、カメラ−ストーマル襞(camera-stomal fold)(口器と盾板の間の関節を覆う膜)を通して、DA(10 mgのダニ重量あたり約1μl)を注入された。本方法は、以前に記載のものの一つ(Kaufman, 1978)から修正されたものである。注入後、ダニは、両面粘着テープ上に背側を下にして乗せられ、そして5μlまたは10μl毛細管が、口肢(palp)をばらばらに広げるように、および毛細管内に鋏角および口円錐が入るように、口器を覆って取り付けられた。緊密に(しかし、きつすぎずに)口器を覆って取り付けるために、毛細管は、ブンゼンバーナーの真上で少し引き伸ばされ、ダイヤモンドペンシル(diamond pencil)を用いて選んだ点で切断し、そして熱加工された。
【0102】
Ig結合実験において、9匹のメスダニ(7日間給餌)の分泌唾液が、25μlの蒸留水の入った1.5 mlマイクロ遠心チューブの中に貯められ、そして氷上に置かれた;この初期量の水は、唾液の損失を最小化するような毛管のすすぎを可能にするために加えられた。唾液サンプルは、使用まで-70℃で保存され、使用の際にサンプルは、タンパク質濃度が測定され、そして5μlのTBSを加えることによって0.1 mg/ml(タンパク質濃度)に希釈された(唾液サンプルのpH、およびイオン強度は測定されなかった)。
【0103】
実施例2において、メスとともに6日間給餌された成虫オスダニは、それらの宿主から引き剥がされ、水道水で3回すすがれ、次いで唾液腺のために解剖された。唾液腺抽出物(SGE)は、アフィニティクロマトグラフに使用される前に、約200μlのTris-HCl緩衝生理食塩水(TBS: 50 mM Tris, 150 mM NaCl, 20 mM CaCl2, 20 mM MgCl2,および0.5 % Triton-X100, pH 7.0)中で、30匹のダニの対を成す腺から調製された(Wang and Nuttall, 1995b)。
【0104】
BIAcoreチップ上への免疫グロブリンの固定化
精製免疫グロブリン(モルモット IgG, Sigma; ラット組み換えIgE, Serotech; ヒトIgG Fc, ICN; およびウサギIgG F(ab’)2, ICN)は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS; 20 mMリン酸, 130 mM NaCl, pH 7.2)中に1 mg/mlとなるように溶解された。BIAcore(商標登録)2000(BIAcore AB)の内蔵表面調製ウィザードが、カップリングpH 4.5(10 mM酢酸)での標準アミンカップリング化学(BIAcore(商標登録)2000 Instrument HandbookおよびBIAapplication Handbook中に記載されるように)を使用する、10,000レゾナンスユニット(RU)の標的レベルで、センサーチップCM5(カルボキシメチルデキストランでコーティングされたBIAcore ABチップ)上に免疫グロブリンを固定化するために使用された。CM5チップのデキストラン層は、平らなバイオセンサー表面から離れた親水性環境を提供することによって、タンパク質相互作用を測定するために伝導性である。センサーチップ中の4つのフローセルのそれぞれの上に:(A)モルモットIgG、(B)ラットIgE、(C)ヒトFc断片、または(D)ウサギF(ab’)2断片が固定化された。フローセルは、100μlのグリシン緩衝生理食塩水(GBS, 100 mMグリシン, 150 mM NaCl, pH 2.6)で一度洗浄され、次いで5μl/minの流速で100μlのTBSによって洗浄され、そして使用前に4℃で一晩保存された。
【0105】
免疫グロブリン結合活性のBIAcore2000検出
全ての実験は室温(25℃)で行われた。全てのフローセルに、100μlのダニSGE(メスまたはオス)または50μlのメス唾液を、5μl/minの流速で注入した。各実験の後、フローセルを25μl GBS(pH 2.6、上記参照)で洗浄して、結合したダニの物質(分析物)を取り除き、そしてフローセル表面上に遊離免疫グロブリンを再生させ、その後、次のサンプルが試験される前に、200μl TBS(pH 7.0、上記参照)で洗浄された。
【0106】
タンパク質-Lアフィニティクロマトグラフを使用するIg結合タンパク質の単離
タンパク質-L結合アガロース(Sigma)が、0.1 mlカラムを作るために使用された。100マイクロリットルのモルモットIgG(Sigma, TBS中1 mg/ml)またはラットIgE(1 mg/ml, Serotech)が、カラム上でプレインキュベートされた。カラムは、カラム体積の10倍を超える量のTBSを使用して洗浄された。200μlのオスダニSGE(D6)は、カラム上にローディングされ、28℃で1時間、蠕動ポンプによって再循環された。カラムは、1 mlのTBSで5回洗浄され、次いで0.1 mlのGBS(100 mMグリシン, 150 mM NaCl, pH 2.6)で3回溶出された。溶出液中のタンパク質は、20%(W/V)の終濃度のトリクロロ酢酸(TCA)中で沈殿され、冷アセトンで洗浄され、SDSサンプルバッファー(非還元, Invitrogen)中に再溶解され、2分間煮沸され、そしてSDS-PAGE(10%トリシン, プレキャストゲル系, Invitrogen)によって試験された。結果のゲルは、以前の記載にあるように、クマシーブリリアントブルーで染色されるか、またはウェスタンブロッティングのためにニトロセルロース上に移された(Wang and Nuttall, 1995a)。
【0107】
IGBPMAのRT-PCR増幅、クローニングおよびシークエンシング
30匹の6日給餌オスダニの全RNAは、Qiagen RNA抽出キットを使用して0.1 mlの水の中に抽出された。全長IGBPMAコーディング配列は、プライマー(IGBPMA-1, nt 7-39 nt, AF001868; およびIGBPMA-R1, nt 917-945の逆向き鎖かつ相補鎖, AF001868, 5'AGTGCGGCCGCTCCCTTGACGTTACCGGACTTGAGGTCTA3')を使用する、RT-PCRによって増幅された。RT-PCR産物は、pGEM-Tベクター(Promega)中にクローニングされ、そしてABIの技術によって両方向から全ての配列が読まれた。得られた配列は、GCGパッケージ中のBESTFITを使用してGenBankのIGBPMA参照配列(AF001868)と比較された。
【0108】
組み換えIGBPMAの発現
プライマー(IGBPMA-R1およびIGBPMA-F1, 5'AGTTCTAGACATATGAAATACGAAGTGTACACAGGGCGCGGGGT3', nt 76-104, AF001868)を使用して、全ての配列が読まれた新しいクローン由来の配列をコードする、5’末端短縮IGBPMA(ダニSGE中に検出されたIGBPMAの成熟型)を増幅した。PCR産物は、C末端6-Hisタグの融合を伴うインフレームで、pET23ベクター(Novagen)中にクローニングされ、そしてBL21(DE3)E.coli宿主細胞に形質転換するために使用された。12のクローンの全細胞可溶化物は、SDS-PAGEとその後に続く抗IGBPMA血清によるウェスタンブロッティングによって、誘導後のrIGBPMA発現が試験された(Wang and Nuttall, 1995a)。大量生産において、シングルコロニー(Clone No F6)が、200 rpmの振盪速度で、37℃で一晩、100 ml液体LB培地(Ampr)中で培養された。一晩培養された培地は、1000 mlの事前に温められた新しい液体LB培地(Ampr)に添加され、そして一晩培養された培地と同じ条件下で、OD6000.4〜0.6まで4時間育てられた。組み換えIGBPMA(rIGBPMA)の発現は、37℃、200 rpmで、終濃度0.4 mMのIPTGを添加して7時間培養することによって誘導された。
【0109】
rIGBPMAのリフォールディングおよび精製
HisBindキット(Novagen)および推奨法(Novagen)が、rIGBPMAの精製のために使用された。BugBuster solution(Novagen)を使用した抽出後、500 ml培養液由来の不溶性rIGBPMAは、6 M尿素を含む16 ml HisBind Bufferによって抽出され、そして1 ml Ni2+充填HisBindカラム上に固定化され、そして6 M尿素を含む10×1 mlのHisBind Washing Bufferで洗浄された。rIGBPMAのリフォールディングは、室温で少なくとも10×1 mlのHisBind washing Bufferで尿素を洗い流すことによって、HisBindカラム中で実行された。rIGBPMAの可溶性画分は、3×1 mlのHisBind Elution Bufferで溶出された。溶出液は、50μlに濃縮され(Vivaspin 6, VivaScience)、次いでTBS中に5 mlに希釈され、そしてバッファー条件を変えるために前記工程を3回繰り返し、次いで-70℃で保存された。
【0110】
アフィニティクロマトグラフィを使用して測定されたrIGBPMAの免疫グロブリン結合活性の測定
rIGBPMAは、解凍後に、13000 rpm 10分間遠心され、そして上清のIg結合活性が試験された。IgG結合活性は、以前の記載のようにヒト-IgG結合アガロース(Sigma)を使用して測定された(Wang and Nuttall, 1995a)。ヒト-IgE(Serotech)およびラット-IgE(Serotech)に対する結合活性は、前述のようにタンパク質-Lアフィニティカラムを使用して測定された。Sepharose-6B(Sigma)およびIgE無しのタンパク質-Lアガロースは、それぞれIgGおよびIgE系に対する対照カラムとして使用された。高濃度(10 mg/ml)ストック由来のウシ血清アルブミン(BSA)は、タンパク質-L-IgEカラム上にローディングされる前に、精製可溶性rIGPBPAに添加され、rIGBPMAのカラム特異性を確認した。アフィニティカラムからの溶出液は、前述のようにSDS-PAGEによって試験された。非特異的結合/凝集を取り除くために、rIGBPMA上清は、タンパク質-L-IgEアフィニティカラム上にローディングされる前に、短いSepharose-6B(Sigma)カラムを通され、次いでタンパク質-Lカラムに通された。
【0111】
BIAcore2000によるrIGBPMAのFc結合活性の測定
方法は前述の通りであるが、5,000レゾナンスユニット(RU)の標的レベルが使用された。センサーチップ中の4つのフローセルのそれぞれの上に:セル1, ブランク; セル2, BSA(〜5000 RU); セル3, ウサギF(ab’)2断片(〜5000 RU); およびセル4, ヒトFc断片(〜4000 RU)が固定化された。フローセルは、使用の前に、30μlの20 mM HClで1回洗浄され、それに続いて少なくとも100μlのTBSで洗浄された。30μlのrIGBPMA(TBS中に1 mg/ml)が、10μl/minの流速で、1-2-3-4の順番で全てのフローセルにわたって流れに注入された。
【0112】
実施例1−ダニ唾液腺抽出物および唾液におけるIgE結合活性
30分の収集期間にわたって、メスによって分泌される唾液の体積は、約75 mgの閾値まで体重に比例し、その閾値以上ではダニ一匹あたり約10μlに維持された(図2A)。オス由来の唾液体積はメスの10分の1〜100分の1であったが、オス唾液のタンパク質濃度は、メスのものと比べて顕著に大きかった(図2B)。
【0113】
3つのダニサンプル(メスSGED6、オスSGED6、およびメス唾液D7)は、CM5チップの別々のフローセル中に固定化された4つのリガンドに対する結合をスクリーニングするための、比較分析物として使用された(図3〜5)。ベースライン(E)は、それぞれのダニサンプルがリガンド固定化フローセルを通って灌流される前の、ゼロ読み取り値を示す。各曲線の上昇部分は、チップ表面上の高分子の変化を示す(固定化リガンドに対する分析物の結合を含む)。TBSによる非特異的に結合したサンプル物質の洗浄の後(図3〜5中の黒い矢印で表示される)、ベースラインより上にある各軌跡の最後の部分は、リガンドに対する分析物の特異的結合として解釈される。線の高さ(最終読み取り値)は、結合した解析物の量に直接相関する。第一の実験において、メスSGED6は、IgG、IgEおよびFcに結合するがFabには結合しないことを示した(図3)。Fabに対する結合の明らかな欠如は、観察されたIgG、IgEおおよびFcに対する結合が特異的なものであること、そしてそれが解析物の凝集または沈殿によるものではないことを、表す。バイオセンサーチップの再生後、オスSGED6で行われた第二の実験は、全ての4つのリガンドと結合することを明らかにした(図4)。チップのさらなる再生後、メス唾液D7を使用した第三の実験は、全ての4つのリガンドと結合することを示した(図5)。SGEサンプルの曲線の形(図3および4)と比較して、唾液の曲線の形(図5)によって表される結合反応速度の明らかな違いは、相対的に低い唾液のタンパク質濃度(0.1 ml/mg、材料と方法参照)、および/またはSGEサンプルと比べて唾液のバッファー条件が異なること(解析物のpHおよびイオン強度が未知であった)に依るであろう。
【0114】
表1は、3つの解析物、すなわちメスSGED6、オスSGED6、およびメス唾液D7に関する、相対結合活性(RBA)の推定を示す。それぞれの相対分子量に比例する、それぞれのフローセルに固定化された各リガンドのレスポンスユニット(RU1)(BIAcore(商標登録)2000ウィザードを使用して測定される)は、相対モル量(RMA)を決定するためにIgGと比較された。各分析物に関するレスポンスユニットは、実験的に測定された(図3〜5)。量的比較が、次いで、各リガンドにおける各分析物のRBAから構成された。タンパク質含量に関して標準化されたIgGに結合する相対的な程度は:メス唾液D7>オスSGED6>メスSGED6(RBA/mgタンパク質、表1)であった。全てのサンプルにおいて、IgEに対する結合は、IgGに対する結合よりも相対的に強かった(RBAIgE/RBAIgG≒ 1.2, 表1)。
【0115】
定量解析は、メスSGED6はF(ab’)2に結合しないが、一方でFc構成要素に対するメスSGED6の結合(RBAFc= 1.1)は、IgGの結合(RBAIgG = 1.0)と同等であったことを、確認した(表1)。メスSGED6と対照的に、オスSGED6およびメス唾液D7はともに、F(ab’)2構成要素と結合し、そのFcおよびF(ab’)2に対する結合は、どちらの場合でも同じ強さであった(RBAFc/RBAF(ab’)2≒ 1.1, 表1)。オスSGED6において、IgG結合は、FcおよびF(ab’)2結合の総計よりもわずかに少なかった(RBAFc+F(ab’)2= 4.6と比較されるRBAFc = 2.7,表1)。メス唾液D7の検出されたIgG結合活性(RBAFc = 19.4, 表1)は、FcおよびF(ab’)2結合の合計活性(RABFc+F(ab’)2 = 15.7, 表1)に近かった。
【0116】
実施例2−アフィニティクロマトグラフィによって測定されるrIGBPMAの免疫グロブリン結合活性
29 kDのタンパク質が、オスSGED6から、タンパク質-L-IgG(モルモット)アフィニティカラムおよびタンパク質-L-IgE(ラット)アフィニティカラムによって主要バンドとして単離された(図6A)。主要バンドは、ウェスタンブロッティングにおいて、IGBPMAに対して産生された抗血清によって認められた(図6B)。他のダニIgG結合タンパク質(すなわちIGBPMBおよびIGBPMC)は、IgEアフィニティカラムの溶出液中では検出されなかった。
【0117】
IgE結合タンパク質単離に使用された、同一コホートの給餌6日目オスダニからの全RNA抽出物に由来するIGBPMAの新しいクローンのシークエンシングは、IGBPMA参照配列(GenBank, AF001868)のnt-648における一つのサイレント変異(T-C)のみを明らかにした。
【0118】
N末端26アミノ酸切断型rIGBPMAは、3つのBL21(DE3)クローン中で豊富に発現された(図7)。rIGBPMAは、His-Bindカラム(Novagen)を使用する精製のために使うことができる、C末端Hisタグ(6)を含む。しかし、rIGBPMAは、変性剤である尿素無しでは細胞溶解物中で不溶性であった。6 Mの尿素を含むHis-Bind Binding Buffer(Novagen)を使用して、rIGBPMAを可溶化し、His-Bindカラム(Novagen)上に変性タンパク質を固定化し、それにより、6 Mの尿素を含むHis-Bind Washing Buffer(Novagen)を使用して非結合性E.coliタンパク質を洗い流すことによって、rIGBPMAが細胞溶解物から単離できた。変性rIGBPMAの画分は、尿素無しのHis-Bind Washing Bufferで洗うことによって尿素がHis-Bindカラムから取り除かれた際、可溶型にリフォールディングされ得た。rIGBPMAの可溶型は、変性剤無しの標準His-Bind Elution Buffer(Novagen)によって溶出され、そしてそれは高い精製度を有した(図8)。収率は、誘導培地1リットルあたり5〜10 mgのrIGBPMAであった。
【0119】
His-Bindカラムから精製された可溶性rIGBPMAは、ヒトIgGアガロース(Sigma)およびタンパク質-L-IgE(ヒト、図9A;またはラット、図9B)アフィニティカラムをそれぞれ使用することで、IgG(ヒト)(結果は示されず)およびIgG(ヒト、図9A;およびラット、図9B)に対する結合活性を含んだ。リフォールディングされたrIGBPMAはまた、いくつかの条件下で、対照カラム(図9A、タンパク質-Lアガロース、Sigma)中で、凝集した(おそらく非天然型に由来)。しかし、アフィニティカラム由来のrIGBPMAのバンドは、対照カラムのバンドよりかなり強く、これはアフィニティカラムにおけるIg分子に対する結合活性を示す。アフィニティ系へのBSA(対照タンパク質として)の添加は、溶出液中でのBSA検出をもたらさず(図9B)、これはrIGBPMA-IgG(E)結合活性が本物であることを示す。同条件下でSepharose-6Bカラム次いでタンパク質-Lアガロースカラムに通すことによって、タンパク質-L-IgE(ラット)アフィニティ系にローディングされる前にrIGBPMA凝集体が取り除かれた場合、対照カラム(タンパク質-Lカラム)中の非特異的結合(図9A)は、検出不能まで減少したが、一方でラットIgEに対するrIGBPMA結合活性は、タンパク質-L-IgEカラム中で検出可能のままであった(図9B)。
【0120】
BIAcore 2000を使用して、免疫グロブリンに対するrIGBPMA結合活性が、Fab断片ではなくFc断片に対する結合親和性に依ることが示された(図10)。F(ab)2断片は、rIGPMAに対して(図10、曲線C)BSAの場合(図10、曲線B)と同レベルの非特異的結合を示した。Fc断片に対する結合(図10、曲線A)は、その非特異的結合より二倍強かった。rIGBPMAの凝集もまた、ブランクのフローセル中で起こった(図10、曲線D)。Fc結合活性は、なぜrIGBPMAがIgGおよびIgE分子の両方と結合するのかを説明し、そしてrIGBPMAは二つのIgのクラス間で保存されている領域に結合するであろうことを示唆する。この場合、rIGBPMAは、これらのIg分子の受容体結合部位には結合しないであろう。したがって、血清中の遊離免疫グロブリンに加えて、rIGBPMAは、細胞表面上のIgGおよびIgEの結合型に対しても結合し得る。哺乳類IgGおよびIgEは、鳥類IgYと同様の共通祖先から進化したと推測され、そして他の哺乳類免疫グロブリンと進化的に相違する。
【0121】
実施例3−BALB/cマウスにおける活性
ダニ唾液腺に由来する組み換えタンパク質(rIGBPMA, GenBank受入番号AF001868)は、前述のようにE.coli中で生産された。rIGBPMA精製中の全工程において内毒素を含まない水を使用することによって、精製rIGBPMA中の内毒素レベルを約50 EU/mgまで減らすことができる。そのようなrIGBPMAが従来法(例えばCouillin et al. "Arthropod-Derived Histamine-Binding Protein Prevents Murine Allergic Asthma" The Journal of Immunology, 2004, 173: 3281-3286参照)によってrIGBPMAのBALB/cマウスにおけるアレルギー性喘息に対する効果を試験された際、rIGBPMAは、マウス一匹あたり50μgおよび10μgの低用量で、オボアルブミン(OVA)感作(免疫化)マウスにおける、メタコリンに対するアレルギー性気道過敏症(AHR)を抑制した(図11参照)。
【0122】
高用量(動物一匹あたり250μg)では、しかし、rIGBPMAはAHRの後期に比べてAHRの初期での抑制が少なかった。これは、AHRを誘導する細菌性リポ多糖(LPS)(内毒素)の存在に依るであろう。
【0123】
実施例4−rIGBPMAはIgGよりIgEにより強く結合する
精製ヒトIgE(Serotech)、モルモットIgG(Sigma)、およびBSA(Sigma)は、カップリングpH 4.5(10 mM酢酸)での標準アミンカップリング化学(BIAcore(商標登録)2000 Instrument HandbookおよびBIAapplication Handbook中に記載されるように)を使用する、5,000レゾナンスユニット(RU)の標的レベルで、BIAcore(商標登録)2000(BIAcore AB)の表面調製ウィザードによって、センサーチップCM5(カルボキシメチルデキストランでコーティングされたBIAcore ABチップ)上に固定化された。センサーチップ中の4つのフローセルのそれぞれの上に:セル1、ブランク;セル2、BSA(4810 RU);セル3、IgG(5004 RU);およびセル4、IgE(5780 RU)が固定化された。フローセルは、使用の前に30μlの20 mM HClで一回洗浄され、それに続いて100μlのTBSで洗浄された。50μlのrIGBPMA(TBS, 50 mM Tris, 20 mM CaCl2, 20 mM MgCl2, 100 mM NaCl, pH 7.0中に1 mg/ml)が、5μl/minの流速で、全てのフローセルにわたって、流れに注入された。
【0124】
以前に検出されたように、rIGBPMAはBSAに対して非特異的に結合した(図12)。しかし、このバックグラウンドを上まわって、rIGBPMAは、IgGとより強く、そしてIgEと最も強く結合した(図12)。IgEは、IgGよりも多くチップ上に固定化されていたが(IgE, 5780 RU; IgG, 5004 RU)、IgEは、IgG(〜180 RU)に対して二倍よりも高い結合シグナル(〜430 RU)を有した。これは、rIGBPMAがIgGよりもIgEに強く結合することを示した。
【0125】
【表1】

【表2−1】

【表2−2】

【表2−3】

【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】図1:IGBP-MAのアミノ酸配列およびDNA配列。
【図2】図2:ドーパミン刺激によって誘導されたダニ唾液分泌。
【図3】図3:部分的に給餌された(6日目)メス唾液腺抽出物中の免疫グロブリン結合活性。
【図4】図4:部分的に給餌された(6日目)オス唾液腺抽出物中の免疫グロブリン結合活性。
【図5】図5:部分的に給餌された(7日目)ドーパミン刺激メス唾液中の免疫グロブリン結合活性。
【図6】図6:オスSEGD6中のIGBPMAがモルモットIgGおよびラットIgEに結合する。
【図7】図7:rIGBPMA発現のスクリーニング。
【図8】図8:タンパク質ゲル(SDS-PAGE、還元条件)はリフォールディング後の精製可溶性rIGBPMAを示す。
【図9】図9:可溶性rIGBPMAはヒトおよびラットIgEに結合する。
【図10】図10:Fc断片に結合するrIGBPMAのBIAcore 2000検出。
【図11】図11:BALB/cマウスのアレルギー性喘息に対するrIGBPMAの影響。
【図12】図12:IgEおよびIgGに対するrIGBPMAの結合の比較。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)図1に示されるIGBPMAアミノ酸配列、
(ii)図1に示されるアミノ酸配列の変異体であって、その中の少なくとも200、250、275、300、310の連続するアミノ酸と、少なくとも50、60、70、80、90、95または99%の同一性を共有する変異体、または
(iii)図1に示されるアミノ酸配列の断片であって、その中に示される少なくとも150、200、250、275、300、310の連続するアミノ酸を有する断片
を含み、それぞれの場合において、IgE分子に結合可能なポリペプチドである薬剤の、IgE活性化に関連する症状の治療のための医薬の製造における使用。
【請求項2】
変異体が、図1に示される全長IGBPMAアミノ酸配列と特定水準の同一性を共有する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
変異体が、外部寄生生物から得られる相同免疫グロブリン結合タンパク質である、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
変異体が、人工誘導体である、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
変異体が、切断型変異体である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
変異体が、一方または両方の末端で、非天然の連続する配列によって伸長された、請求項4に記載の使用。
【請求項7】
変異体が、化学修飾された、請求項4に記載の使用。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする核酸である薬剤の、IgE活性化に関連する症状の治療のための医薬の製造における使用。
【請求項9】
核酸が
(i)図1に示されるIGBPMAヌクレオチド配列、
(ii)図1に示されるコードヌクレオチド配列の変異体であって、その中の少なくとも600、750、825、900、930の連続するヌクレオチドと、少なくとも50、60、70、80、90、95または99%の同一性を共有する変異体、
(iii)図1に示されるヌクレオチド配列の断片であって、その中に示される少なくとも450、600、750、825、900、930の連続するヌクレオチドを有する断片
を含む、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記変異体が、図1に示される全長IGBPMAヌクレオチド配列と特定水準の同一性を共有する、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
IgE結合ポリペプチドまたは調節ポリペプチドである薬剤を生産する方法であって、
(i)図1に示されるIGBPMAであるポリペプチド、または外部寄生生物から得られる相同免疫グロブリン結合タンパク質、またはそれらをコードする核酸を提供する工程、
(ii)ポリペプチドの配列、またはそれをコードする核酸を修飾する工程、
(iii)前記修飾ポリペプチドのIgE結合特性、または前記修飾核酸の発現産物であるポリペプチドのIgE結合特性を解析する工程
を含む、前記方法。
【請求項12】
IgE結合因子または調節因子である薬剤を提供する方法であって:
(i)請求項1〜6のいずれか一項のポリペプチドを提供する工程、
(ii)前記ポリペプチドに関わる立体構造情報および電荷情報を取り込んだ、前記ポリペプチドの三次元モデルを作成する工程、
(iii)前記立体構造情報および電荷情報に基づくIgE結合因子または調節因子を提供する工程
を含む、前記方法。
【請求項13】
薬剤を合成する工程およびIgE分子に結合するその薬剤の能力を確認する工程をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
IgE結合因子または調節因子である薬剤をスクリーニングする方法であって、同等の反応条件下での、請求項1〜7のいずれか一項の検出可能なポリペプチドの、IgEまたはその定常領域の全体または一部によって提供される、IgE上にあるポリペプチドの結合部位に対する結合を、推定薬剤の存在下および非存在下で比較する工程、および前記結合を変化させる薬剤を選択する工程を含む、前記方法。
【請求項15】
(i)ポリペプチドとIgE上の結合部位とを寄せ集める工程;そして
(ii)IgE上の結合部位に対するポリペプチドの結合親和性を観察し、または測定する工程、
(iii)推定薬剤の非存在下でのIgE上の結合部位に対するポリペプチドの結合親和性と比較して、推定薬剤の存在下でのIgE上の結合部位に対するポリペプチドの結合親和性が減少するかどうかを評価する工程
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
(i)推定薬剤を、IgE上の結合部位と接触させる工程;そして
(ii)ポリペプチドの存在下および非存在下で、IgE上の結合部位に対する推定薬剤の結合親和性を観察し、または測定する工程、
(iii)推定薬剤の結合親和性が、IgE上の結合部位に対するポリペプチドの結合親和性と同等か、またはそれより大きいかどうかを評価する工程
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
サンプル中の推定IgE結合因子の存在または量を検出する方法であって:
(a) IgEまたはその定常領域の全体または一部によって提供される、IgE上の結合部位に固定化された請求項1〜7のいずれか一項の検出可能なポリペプチドを含む複合体に対してサンプルを曝露する工程、
(b)前記ポリペプチドのいずれかの置換を検出する工程
を含む、前記方法。
【請求項18】
請求項11〜16のいずれか一項の方法によって生産または提供される薬剤の、IgE活性化に関連する症状の治療のため医薬の製造における使用。
【請求項19】
治療または医薬が、前記薬剤と併用し、IgE活性化に関連する症状の治療において使用するための追加の薬剤をさらに含む、請求項1〜10および18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
治療上の有効量の、請求項1〜10のいずれか一項の薬剤、または請求項11〜16のいずれか一項方法によって生産または提供される薬剤を投与すること含む、IgE活性化に関連する症状の治療の方法。
【請求項21】
IgE活性化に関連する症状がアレルギー性症状である、請求項1〜10または18〜20のいずれか一項に記載の使用または方法。
【請求項22】
請求項1〜10のいずれか一項の薬剤、または請求項11〜16のいずれか一項の方法によって生産または提供される薬剤を含む、吸引可能な形態の組成物。
【請求項23】
薬剤が、粒径0.5〜10μmの乾燥粉末の形態である、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
請求項22または請求項23に記載の組成物、および同様のものを必要とする患者に対して吸引により薬剤を送達するのための送達手段を含む、キット。
【請求項25】
送達手段が、液体噴霧器;エアロゾルベースの定量吸引器;または乾燥粉末拡散器から選択される、請求項24に記載のキット。
【請求項26】
IgE活性化に関連する病気の治療において使用するために適合化された治療薬を生産するのための方法であって、実質的に内毒素を含まず、組み換えによって生産される、請求項1〜6のいずれか一項のポリペプチドである薬剤を生産することを含む、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2009−519213(P2009−519213A)
【公表日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−538390(P2008−538390)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際出願番号】PCT/GB2006/003986
【国際公開番号】WO2007/051975
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(508133271)
【Fターム(参考)】