説明

LEDモジュール及び発光装置及びLEDモジュールの製造方法

【課題】色の違うLEDの混光により所望の白色とするモジュールを使用する照明器具において、壁面においたときの色ムラを抑制する。
【解決手段】LEDモジュール230は、8個のLEDと、これらLEDが実装される基板232とを備える。8個のLEDは、4個のLEDが基板外側234に配置され、残りの4個のLEDが基板内側233に配置される。8個のLEDは、各LEDの発する光の合成光が目標色度範囲120に属する。また、8個のLEDは、単体での発光色が目標色度範囲120に属さない複数のLEDを、少なくとも含む。基板外側234に配置された4個のLEDの各LEDは、発光色の色度が、類似する色度の範囲として色度図上で定められた「所定の範囲」に属する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発光ダイオード(LED)を使用した発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LEDは、チップと蛍光体にばらつきがあるために、同様に生産しても異なる色温度や光強度を持つ。そのため、生産したLEDを、色温度や光束によってランク分けする。照明器具を生産する場合には、器具同士均一な色温度や光束を持つことが望ましい。通常このランク分けは、色のばらつきの少ない器具を生産するのに対しては不十分であり、このランクからさらに所望の色温度や光束となるよう分別すると、生産コストがかかるという課題があった。
【0003】
しかし、照明器具として所望の白色光を得るためには、その白色の色温度をもつLEDを使用せずとも、補色関係にあるLED同士の光を混合することにより、人の目にほぼその白色に見える光を作り出すことが可能である(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開号公報2008−147563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
所望の色温度を持ったLEDだけでなく、補色関係にある他の色温度を持つLEDも使用して、全面的に均一な色温度を作り出した場合、合成光としては所望の白色を得ることはできる。しかし、照明器具として見ると、壁際などにおいた場合、合成光となる前の元のLEDの光が壁に映りこんでしまうことがある。この発明に係る発光装置は、そのような問題を解決するためのものであり、LEDを用いたダウンライトやスポットライト型の器具において、色ムラを抑制するようなLEDの配列についてのものである。色の違うLEDの混光により、所望の白色とするモジュールにおいて、壁面においたときの色ムラを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明のLEDモジュールは、
複数のLEDであって各LEDの発する光の合成光が所定の目標色度範囲に属する複数のLEDと、前記複数のLEDが実装される基板とを備えたLEDモジュールにおいて、
前記基板に実装される前記複数のLEDは、
単体での発光色が前記目標色度範囲に属さない複数のLEDを、少なくとも含むと共に、
前記基板に実装される前記複数のLEDは、
全部のLEDが前記基板の周縁寄りである基板外側に配置され、あるいは一部の複数のLEDが前記基板外側に配置されて残りの他のLEDが前記基板外側よりも基板の中央領域寄りである基板内側に配置され、
前記基板外側に配置された前記複数のLEDの各LEDは、
発光色の色度が、類似する色度の範囲として色度図上で定められた所定の範囲に属することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
必要なLEDのみを選別して利用するのではなく、購入したLEDの色度範囲の中で、所望の白色LED光を得るために、合成光が所望の白色となるような補色関係にあるLEDを組み合わせて均一な色温度をもつLEDモジュールを生産する場合に、この発明の発光装置によれば、以下の効果がある。すなわち、発光色の異なるLED(補色関係の利用)を用いる際には照明色に色ムラが起きる可能性がある。例えば壁面では照明器具の色ムラが表れる場合もある。しかし本発明では、色ムラを抑制するLED配列とするので、照明器具としての照射光の色ムラを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態1における生産されたLEDのランク付けを示す図。
【図2】実施の形態1における色ランクの説明図。
【図3】実施の形態1における照明器具200の外観を示す図。
【図4】実施の形態1における円形LEDモジュールのLED配置例を表す図(図3のX方向矢視)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1〜図4を参照して実施の形態1の照明器具200(発光装置)を説明する。
図1は、生産されたLEDのランク付けを示す図である。図1は、CIE1931色度図に、購入したLEDの色度分布の範囲を示す購入色度範囲100、目標色度範囲120(後述する)に相当するマクアダム楕円3step101、目標色度範囲120の中心色度(目標色度座標103)に対するマクアダム楕円5step102、目標色度座標103及び黒体軌跡が記載されている。
図2は、LEDの色ランクを説明するための図である。図2は図1にさらに、目標色度範囲120を記載すると共に、購入色度範囲100(つまり、購入したLED)を、1〜6の行とa〜dの列とによって、a1〜a6、b1〜b6、c1〜c6、d1〜d6のように、合計で24区分にランク分けしている。
図3は、照明器具200の外観を示す図である。図3に示すように照明器具200は、円筒型の、例えばダウンライト、あるいは、スポットライトである。図3では照明器具200内部に内蔵されたLEDモジュール230を破線で示した。
図4は、図3のX方向矢視を示す図であり、LEDモジュール230(光源部)を示す。なお、LEDモジュール230はさらに、リフレクタを備えてもよいが、図4ではリフレクタは備えていない場合を示した。
【0010】
LEDモジュール230に実装するLEDの組合せを説明する。まず、購入したLEDの範囲で、LEDモジュール230の1個1個が所望の白色となるようにするための、LEDの組合せ(実施の形態1における混色方法)について説明する。
【0011】
(LEDのランク分け)
生産されたLEDは、図1のようなCIE1931色度図の色度座標を用いて色温度における「ランク分け」をされる。この「ランク分け」は、LEDを、後述する「a1〜a6、b1〜b6、c1〜c6、d1〜d6の24区分」のいずれかに分類することである。例えば、図1の破線の四角形で表される購入色度範囲100のような範囲でランク分けされる。このようなランク分けされた色度範囲では、例えば四角形の右上(購入色度範囲100A)と左下(購入色度範囲100B)のLEDとの色を比較すると、違いがある。右上は黄色味がつよく、左下はピンク味がつよく感じられる。一般には、マクアダムの楕円で表される3倍の面積のマクアダム楕円3step101、あるいは5倍の面積のマクアダム楕円5step102内に色度座標がおさまっていれば、人間の目には同じ色と感じられる。そのため、黒体軌跡上の所望の白色LEDの目標色度座標103を中心として、マクアダム楕円の3stepと同等の面積となるよう四角形をつくり、目標色度範囲120(図2)とする。
【0012】
実施の形態1の冒頭で述べたように、図2は色ランクを説明するための図であり、生産されたLED(あるいは購入されたLED)は、「a1〜a6、b1〜b6、c1〜c6、d1〜d6」の24区分のうちの該当する区分に分類される。
【0013】
(ランクに基づく組合せ)
次に、各ランクに分類したLEDを、「たすきがけ」のように組合せて、その組のLEDどうしの混色による色度が、目標色度範囲120内に入るようにする。「たすきがけ」とは、図2の目標色度座標103に対して、「点対称」の位置にあるLEDどうしを組合わせることである。例えば、「a1とd6」あるいは「d2とa5」のランクに属するLEDどうしの合成色は、目標色度範囲120内の色度になる。このように組み合わせたLEDは、2個の合成色が目標色度範囲120に属する。また、図2に示すように、b3、c3、b4、c4のランクについては、そのLED単一で、目標色度範囲120に属する。
【0014】
(LEDモジュール230に実装されるLED)
「このような組合せ」で構成されるLEDモジュール230において、黒体軌跡の上側は黄色味がつよく、下側はピンク味がつよいという特徴がある。「このような組合せ」とは、本実施の形態1では、以下の(1)あるいは(2)の場合を想定する。対象となるLEDモジュール230は、図4に示すように8個のLEDを使用する8灯モジュールとする。8個のLEDの合成光の色度は、目標色度範囲120に属する。
(1)8個のLEDのうち、その色度が目標色度範囲120に属するLEDが一つもない場合である。つまり、8個のLED全部が、「購入色度範囲100、かつ、目標色度範囲120以外」の場合である。この場合、LED8個の合成色の色度が、目標色度範囲120に属する。例えば、a1、d6が各2個、及びa6、d1が各2個のような場合である。
(2)8個のLEDのうち、「購入色度範囲100、かつ、目標色度範囲120以外」のLEDが複数個(合成光が目標色度範囲120に属する)あり、さらに、目標色度範囲120に属するLEDが1個以上ある場合である。
(3)実施の形態1では、8個のLED全部が目標色度範囲120に属する場合は対象外とする。
【0015】
(LEDモジュール230)
図4を参照して、LEDモジュール230を具体的に説明する。
【0016】
<LED配置>
LEDモジュール230は、8個(複数)のLEDと、8個のLEDが実装される基板232とを備えている。基板232に実装される8個のLEDは、4個のLED(一部の複数のLED)が基板232の周縁232A寄りである基板外側234に配置され、残りの4個のLEDが基板外側234よりも基板の中央領域寄りである基板内側233に配置されている。なお、図4では基板内側233に4個のLEDを配置したが、8個全部のLEDが基板外側234に配置されても構わない。
【0017】
<全LEDの合成色>
図4の8個のLEDは、各LEDの発する光の合成光が目標色度範囲120(図2)に属する。また、8個のLEDは、単体での発光色が目標色度範囲120に属さない複数のLEDを、少なくとも含む。つまり、LEDモジュール230は、混色法により、モジュール発光色が目標色度範囲120に属することが前提である。「少なくとも」であるので、8個全部のLEDが、目標色度範囲120に属さない場合でも構わないが、最低4個のLEDは、その色度が下記の「所定の範囲」に属するものとする。
【0018】
<基板外側234のLED>
基板外側234に配置された4個のLED231−1〜231−4の各LEDは、発光色の色度が、類似する色度の範囲として色度図上で定められた「所定の範囲」に属する。
【0019】
(「所定の範囲」の例)
上記(1)あるいは(2)のような組合せで構成されるLEDモジュール230においては、図2のa1〜d3(黒体軌跡の上側の12ランク)は黄色味がつよく、a4〜d6(黒体軌跡の下側12ランク)がピンク味が強い。照明器具を設置する場合、壁側などにうつりこんだ色ムラが問題となるのは、円形のLEDモジュール230内で外側に配置されるLEDの色にばらつきが原因である。このため、外側になるべく同じ色味のLEDをおくように配列することが好ましい。図4では、a1〜d3である「黒体軌跡の上側の12ランク」(「所定の範囲」の一例)を基板外側234に置くようにする。あるいはa4〜d6である「黒体軌跡の下側の12ランク」(「所定の範囲」の別の例)を基板外側234に置くようにする。
【0020】
図4のように、8灯並べた円形のモジュールの場合、外側の4灯が同じ色味となるように並べることにより、壁側のうつりこみが同じ色の光となるので、混色によって目標色度範囲120に属する色度を得るLEDモジュールにおいても、色ムラが抑制できる。
【0021】
(単一使用できるLEDについて)
また、単一で使用できるLED(目標色度範囲120に属するLED(所属LED))の数が外側のLED灯数以上の組合せの場合、外側に単一で使用できるLEDを置く。単一で使用できるLEDは、そのままで照明として好ましい色あいであるため、壁側にうつりこむ光も好ましい色合いとなる。この場合、「目標色度範囲120」は上記の「所定の範囲」のさらに別の例である。
【0022】
(LEDモジュール230の製造方法)
以上ではLEDモジュール230を説明したが、LEDモジュール230は、以下の様なLEDモジュール製造方法として把握することも可能である。
(a)すなわち、LEDモジュール230は、各LEDの発する光の合成光が目標色度範囲120に属する8個のLEDと、これらLEDが実装される基板232とを備える。
LEDモジュール230では、基板232に実装される8個のLEDは、8個全部のLEDが基板232の周縁232A寄りである基板外側234に配置され、あるいは複数のLEDが基板外側234に配置されて残りの他のLEDが基板外側234よりも基板232の中央領域寄りである基板内側233に配置される。
(b)このようなLEDモジュール230を対象として、以下の、LED選択工程(1)と、実装工程(2)とを備えたLEDモジュール製造方法としての把握が可能である。
(1.LED選択工程)
LED選択工程は、基板232に実装される8個のLEDとして、単体での発光色が目標色度範囲120に属さない複数のLEDを、少なくとも含と共に、基板外側234に配置される個数(この例では4個)のLEDであって各LEDの発光色の色度が、類似する色度の範囲として色度図上で定められた「所定の範囲」に属するLEDとを含む、複数のLEDを選択する工程である。
(2.実装工程)
実装工程は、色度図上で定められた「所定の範囲」に属するLEDを基板外側234に実装すると共に、LED選択工程によって選択されたLEDの中に基板外側234に実装されるLED以外のLEDがある場合(基板外側に8個のLEDを配置するのではなく、外側に4個、内側に4個配置するような場合)には、そのLEDを基板内側233に実装する工程である。
【0023】
(照明器具間のばらつき防止)
なお、照明器具間の色ばらつきを抑えるために、a1〜d3(黒体軌跡の上側の12ランク)またはa4〜d6の(黒体軌跡の下側12ランク)どちらかがLEDモジュール230の基板外側234に来ると決め、LED生産分布において数の多い方としてもよい。
つまり、上記のLEDモジュール製造方法において、LEDの生産分布により、色度図上で定められた「所定の範囲」を、色度図における黒体軌跡の上側の範囲と、色度図における黒体軌跡の下側の範囲とのいずれかの範囲とすることで、照明器具間の色ばらつきを抑えることができる。
【0024】
以上の実施の形態1のLEDモジュール230、あるいはLEDモジュール製造方法によれば、色の違うLEDの混光により所望の白色とするLEDモジュールを組み込む照明器具(ダウンライト、スポットライト等)を壁面においたときの、色ムラを抑制することができる。
【符号の説明】
【0025】
100 購入色度範囲、101 マクアダム楕円3step、102 マクアダム楕円5step、103 目標色度座標、120 目標色度範囲、200 照明器具、230 LEDモジュール、231 内側LED、231−1,231−2,231−3,231−4 外側LED、232 基板、232A 周縁、233 基板内側、234 基板外側。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のLEDであって各LEDの発する光の合成光が所定の目標色度範囲に属する複数のLEDと、前記複数のLEDが実装される基板とを備えたLEDモジュールにおいて、
前記基板に実装される前記複数のLEDは、
単体での発光色が前記目標色度範囲に属さない複数のLEDを、少なくとも含むと共に、
前記基板に実装される前記複数のLEDは、
全部のLEDが前記基板の周縁寄りである基板外側に配置され、あるいは一部の複数のLEDが前記基板外側に配置されて残りの他のLEDが前記基板外側よりも基板の中央領域寄りである基板内側に配置され、
前記基板外側に配置された前記複数のLEDの各LEDは、
発光色の色度が、類似する色度の範囲として色度図上で定められた所定の範囲に属することを特徴とするLEDモジュール。
【請求項2】
色度図上で定められた前記所定の範囲は、
色度図における黒体軌跡の上側の範囲と、色度図における黒体軌跡の下側の範囲とのいずれかの範囲であることを特徴とする請求項1記載のLEDモジュール。
【請求項3】
前記基板に実装される前記複数のLEDは、
単体での発光色が前記目標色度範囲に属する所属LEDを、前記基板外側に配置されるLEDの個数以上含み、
前記基板外側に配置された前記複数のLEDは、いずれも、
前記所属LEDであることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のLEDモジュール。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のLEDモジュールを備えた発光装置。
【請求項5】
複数のLEDであって各LEDの発する光の合成光が所定の目標色度範囲に属する複数のLEDと、前記複数のLEDが実装される基板とを備え、前記基板に実装される前記複数のLEDは、全部のLEDが前記基板の周縁寄りである基板外側に配置され、あるいは一部の複数のLEDが前記基板外側に配置されて残りの他のLEDが前記基板外側よりも基板の中央領域寄りである基板内側に配置されるLEDモジュールの製造方法において、
前記基板に実装される前記複数のLEDとして、単体での発光色が前記目標色度範囲に属さない複数のLEDを、少なくとも含と共に、前記基板外側に配置される個数のLEDであって各LEDの発光色の色度が、類似する色度の範囲として色度図上で定められた所定の範囲に属するLEDとを含む、複数のLEDを選択するLED選択工程と、
前記色度図上で定められた前記所定の範囲に属するLEDを前記基板外側に実装すると共に、前記LED選択工程によって選択されたLEDの中に前記基板外側に実装されるLED以外のLEDがある場合には、前記基板外側に実装されるLED以外のLEDを前記基板内側に実装する実装工程と
を備えたことを特徴とするLEDモジュールの製造方法。
【請求項6】
前記LED選択工程は、
色度図における黒体軌跡の上側の範囲と、色度図における黒体軌跡の下側の範囲とのいずれかの範囲が、色度図上で定められた前記所定の範囲として、設定されていることを特徴とする請求項5記載のLEDモジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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