説明

LED式標識灯および標識灯システム

【課題】調整可能な光度比率範囲内での電球式標識灯との色調の違いを少なくできるLED式標識灯を提供する。
【解決手段】電球式標識灯11aの光度を所定の光度比率に調整する標識灯システム10に、電球式標識灯11aに代えて用いられるLED式標識灯11bである。LED式標識灯11bは、外部に照射する光を発生するLED素子25を有する。LED式標識灯11bは、調整可能な光度比率範囲の中間値の光度で外部に照射する光の色調が、同じ光度比率範囲の中間値の光度で電球式標識灯11aが外部に照射する光の色調に合わせて設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、LED素子を用いたLED式標識灯、およびこのLED式標識灯を用いた標識灯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
空港においては、滑走路、誘導路および走行路などに複数の標識灯が設置され、これら標識灯を点灯制御して航空機を誘導する標識灯システムが用いられている。
【0003】
この標識灯システムでは、定電流制御装置からの交流定電流電源を複数の絶縁トランスを介して各絶縁トランスに接続されている複数の標識灯に供給している。滑走路などに設置されている白色の光を照射する誘導灯の光度は、航空局が定める航空灯火電気施設業務処理規程にあるように、光度比率が複数段階に設定されていて、滑走路の長さや時間帯などに応じて、あるいは気象条件などに応じて、所定の光度比率に調整している。定電流制御装置において光度比率に応じて出力電流を切り換えることにより、誘導灯の光度が入力電流に応じた光度に調整される。
【0004】
現在、滑走路などに設置されている白色の光を照射する標識灯は、光源として電球を用いた電球式標識灯が多く用いられている。この電球式標識灯は、電球を用いるために、電流を変えて光度を調整すると、電球が発生する光の色調が変化しやすい特性を有している。すなわち、電流を多くして高い光度に調整した場合には色調が白くなるが、逆に、電流を少なくして低い光度に調整した場合には赤み帯びた暖色系の色調となる。
【0005】
昨今、光源としてLED素子を用いたLED式標識灯が提案されているが、例えば、誘導路などの比較的低い光度で緑色などの色付きの光を照射するLED式標識灯がほとんどである。
【0006】
空港に複数存在する誘導路などの場合には、使用を制限することにより、既設の複数の電球式標識灯からLED式標識灯へ入れ替える工事を一度に進めることも可能である。しかし、空港によっては1つしか存在しない滑走路などの場合には、既設の複数の電球式標識灯をLED式標識灯に一度に入れ替えることは、滑走路などの使用を制限する時間的な制約があるために困難であるし、費用的にも困難な場合がある。
【0007】
よって、滑走路などにLED式標識灯を導入する場合、既設の複数の電球式標識灯をLED式標識灯に順次入れ替えていくことになる。そのため、全ての入れ替えが完了するまでの期間、同じ滑走路などに電球式標識灯とLED式標識灯とが混在する状況が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−65724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
LED式標識灯の場合、電流を変えて光度を調整しても、色調の変化は電球式標識灯ほど大きくない。
【0010】
そのため、同じ滑走路などに電球式標識灯とLED式標識灯とが混在している状況では、光度比率を調整した場合に、電球式標識灯とLED式標識灯とで色調の違いが発生することになり、航空機の誘導には問題がないが、その色調の違いが大きいのは好ましくない。
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、調整可能な光度比率範囲内での電球式標識灯との色調の違いを少なくできるLED式標識灯、およびこのLED式標識灯を用いた標識灯システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
実施形態のLED式標識灯は、電球式標識灯の光度を所定の光度比率に調整する標識灯システムに、電球式標識灯に代えて用いられるLED式標識灯である。LED式標識灯は、外部に照射する光を発生するLED素子を有する。LED式標識灯は、調整可能な光度比率範囲の中間値の光度で外部に照射する光の色調が、同じ光度比率範囲の中間値の光度で電球式標識灯が外部に照射する光の色調に合わせて設定されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、調整可能な光度比率範囲内での電球式標識灯との色調の違いを少なくできるLED式標識灯を提供することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一実施形態を示すLED式標識灯および標識灯システムの回路図である。
【図2】同上LED式標識灯および標識灯システムの設置状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の標識灯システム10は、例えば空港の滑走路などに設置される複数の標識灯11を点灯制御する航空標識灯システムである。この標識灯システム10では、交流定電流電源を供給する定電流制御装置12にゴム被覆絶縁トランスなどの複数の絶縁トランス13が接続され、これら各絶縁トランス13の二次側に標識灯11がそれぞれ接続されている。
【0017】
図2には、標識灯11を滑走路15の中心線灯として用いた標識灯システム10の例を示す。滑走路15の路面には滑走路15に沿って所定の間隔で複数の標識灯11が埋め込み設置され、滑走路15の脇には絶縁トランス13がそれぞれ収納される複数のハンドホール16が設置されている。そして、定電流制御装置12と各ハンドホール16内の絶縁トランス13とが地中に埋設されるケーブル17で接続され、各ハンドホール16内の絶縁トランス13の二次側と各標識灯11とが地中に埋設されるケーブル18で接続されている。
【0018】
そして、定電流制御装置12からの交流定電流電源が絶縁トランス13を通じて標識灯11に供給され、標識灯11の光源が点灯し、この光源が発生する白色の光がレンズなどを通じて標識灯11の照射窓19から滑走路15に沿った方向へ向けて外部に照射される。定電流制御装置12は光度比率に応じて出力電流を切り換え、これにより標識灯11の光度が電流値に応じた光度に調整される。
【0019】
また、図1に示すように、標識灯11には、例えばハロゲン電球などの電球21およびこの電球21を点灯させる点灯回路22を有する電球式標識灯11aと、LED光源23およびこのLED光源23を点灯させる点灯回路24を有するLED式標識灯11bとがある。
【0020】
LED式標識灯11bのLED光源23は、例えば青色光を発生する複数のLED素子25と、これらLED素子25が発生する青色光で励起されて黄色光ないし橙色光を発生する黄色系の蛍光体とを有し、青色光と黄色光ないし橙色光とが混ざり合って白色の光を発生する。
【0021】
また、定電流制御装置12は、電球式標識灯11aの点灯制御用に構成されている既設のもので、電球式標識灯11aが外部に照射する光の光度比率に応じて出力電流を切り換えるように構成されている。
【0022】
光度比率は、航空局が定める航空灯火電気施設業務処理規程にあるように、滑走路15の長さや時間帯などに応じて、あるいは気象条件などに応じて、複数段階の光度比率が予め設定されている。例えば、100%、25%、5%、1%、0.2%の5段階の光度比率が設定されている。これら光度比率は調光レベルを示すもので、100%が全光点灯、0%が消灯である。
【0023】
空港の滑走路15において実際に使用される光度比率は、調整可能な光度比率範囲のうち、最高の100%または最小の0.2%の光度比率とする頻度は比較的少なく、光度比率範囲の中間値の25%、5%、1%の光度比率とする頻度が多く、特に5段階のうちの真ん中の中間値である3段階目の5%の光度比率とする頻度(点灯時間)が最も多い状況にある。
【0024】
そして、電球式標識灯11aは、電球21を用いるために、電流を変えて光度を調整すると、色調が変化しやすい特性を有している。すなわち、電流を多くして高い光度に調整した場合には色調が白くなるが、逆に、電流を少なくして低い光度に調整した場合には赤み帯びた暖色系の色調となる。
【0025】
一方、LED式標識灯11bの場合、電流を変えて光度を調整しても、色調の変化は電球式標識灯11aほど大きくない特性を有している。
【0026】
そこで、LED式標識灯11bは、調整可能な光度比率範囲の中で空港の滑走路15において実際に使用される頻度の高い光度比率であって、調整可能な光度比率範囲の中間値の光度で外部に照射する光の色調が、同じ光度比率範囲の中間値の光度で電球式標識灯11aが外部に照射する光の色調に合わせて設定されている。この色調に合わせて設定されているとは、色調が一致していてもよいし、色調が一致していなくても色調が近ければよい。
【0027】
空港の滑走路15において実際に使用される頻度の高い光度比率は5%の光度比率であるため、LED式標識灯11bが5%の光度比率の光度で外部に照射する光の色調が、電球式標識灯11aが5%の光度比率の光度で外部に照射する光の色調に最も近くなるように設定されている。
【0028】
すなわち、光度比率を変化させた光度でLED式標識灯11bが外部に照射する光の色調と電球式標識灯11aが外部に照射する光の色調とを比べた場合に、5%の光度比率の光度で両者の色調が最も近くなるように設定されている。
【0029】
LED式標識灯11bが外部に照射する光の色調を設定するには、LED光源23に用いられる蛍光体の配合によって色調を任意に設定することができるため、5%の光度比率の光度で、電球式標識灯11aが外部に照射する光の色調に最も近くなる蛍光体の配合としたLED光源23を選択すればよい。なお、フィルタなどの他の光学手段を用いて色調を設定してもよい。
【0030】
そして、図2に示すように、滑走路15にLED式標識灯11bを導入する場合、既設の電球式標識灯11aをLED式標識灯11bに順次入れ替えていく。そのため、全ての入れ替えが完了するまでの期間、同じ滑走路15に電球式標識灯11aとLED式標識灯11bとが混在する。
【0031】
図1に示すように、定電流制御装置12は光度比率に応じて出力電流を切り換え、これにより電球式標識灯11aおよびLED式標識灯11bの光度が電流値に応じた光度に調整される。
【0032】
このとき、空港の滑走路15において実際に使用される頻度の高い光度比率は、光度比率範囲の中間値である5%の光度比率であるが、LED式標識灯11bが5%の光度比率の光度で外部に照射する光の色調が、電球式標識灯11aが5%の光度比率の光度で外部に照射する光の色調に最も近くなるように設定されているため、5%の光度比率における色調の違いを最も少なくできる。
【0033】
さらに、光度比率範囲の中間値である5%の光度比率で色調を合わせていることにより、5%の光度比率以外の光度比率に調整した場合にも、電球式標識灯11aとLED式標識灯11bとの色調の違いを少なくすることができる。
【0034】
このように、滑走路15に既設の電球式標識灯11aをLED式標識灯11bに順次入れ替えるために、同じ滑走路15に電球式標識灯11aとLED式標識灯11bとが混在する状況が発生しても、調整可能な光度比率範囲内での電球式標識灯11aとLED式標識灯11bとの色調の違いを少なくすることができる。
【0035】
しかも、空港の滑走路15において実際に使用される頻度の高い光度比率であって、光度比率範囲の中間値である5%の光度比率において、LED式標識灯11bの色調を電球式標識灯11aの色調に合わせることにより、光度比率範囲の中間値である5%の光度比率のときはもちろん、それ以外の光度比率に調整したときにも、色調の違いを少なくすることができる。
【0036】
なお、滑走路15の中心線灯に限らず、滑走路15と滑走路15の脇との接地帯灯についてもLED式標識灯11bを適用できる。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0038】
10 標識灯システム
11a 電球式標識灯
11b LED式標識灯
12 定電流制御装置
13 絶縁トランス
25 LED素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電球式標識灯の光度を所定の光度比率に調整する標識灯システムに、電球式標識灯に代えて用いられるLED式標識灯において、
外部に照射する光を発生するLED素子を有し、調整可能な光度比率範囲の中間値の光度で外部に照射する光の色調が、同じ光度比率範囲の中間値の光度で電球式標識灯が外部に照射する光の色調に合わせて設定されている
ことを特徴とするLED式標識灯。
【請求項2】
光度比率に従って出力電流を切り換える定電流制御装置と;
定電流制御装置に絶縁トランスを介して接続される請求項1記載のLED式標識灯と;
を具備していることを特徴とする標識灯システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−61866(P2013−61866A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200805(P2011−200805)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】