説明

LED灯具用光学レンズ

【課題】LEDの光の利用効率を高めるとともに、配光ロスを低く抑えることができるLED灯具用光学レンズを提供すること。
【解決手段】LED光源2からの放射光Lを所望の角度範囲に配光するためのLED灯具用光学レンズ1において、前記LED光源2から放射される半値角内の放射光Lを左右方向にα、上方向にβの角度方向にそれぞれ屈折させて出射させるレンズカット7,8を出射面6の中央部に配置する。例えば、前記αを80°、前記βを40°にそれぞれ設定する。このようにLED光源2から放射される半値角内の光度の高い放射光Lを左右方向及び上方向にそれぞれ屈折させて出射させるレンズカット7,8を光学レンズ1の出射面6の中央部に配置すれば、LEDの光束を有効に利用することができ、光の利用効率が高められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED(発光ダイオード)を光源とするLED灯具に用いられる光学レンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
LED(Light Emitting Device )は高輝度で省電力、高寿命等の特徴を有することから、近年、車両用灯具の光源として使用されつつある。
【0003】
ところで、LEDを光源として使用する車両用灯具には、LED光源からの放射光を所望の角度範囲に配光して配光規格を満足させるための配光制御用の光学レンズが設けられているが、このような光学レンズの一例を図6〜図10に基づいて以下に説明する。
【0004】
即ち、図6は従来のLED灯具用光学レンズを入射面側から見た斜視図、図7は同LED灯具用光学レンズを出射面側から見た斜視図、図8は同LED灯具用光学レンズの正面図、図9は図8のC−C線断面図、図10は図8のD−D線断面図であり、図示のLED灯具用光学レンズ101は、透明樹脂によって薄型円形に成形されており、LED光源(図9及び図10参照)102の前方にその中心が光軸Xに一致するよう配置されている。
【0005】
LED灯具用光学レンズ101の入射面103においては、図6、図9及び図10に示すように、その中央部にLED光源102に向かって凸の円弧曲面を成す中央入射面104が形成され、該中央入射面104の周囲にはリング状を成す複数のプリズム105が同心的に形成されている。
【0006】
又、LED灯具用光学レンズ101の出射面106においては、図7〜図10に示すように、外周縁の左右及び上下に4分割されたレンズカット107,108が形成されている。ここで、左右に形成されたレンズカット107は、図9に示すように、LED光源102から放射される半値角外の放射光Lを左右方向に角度α(光軸Xからの角度であって、図示例では80°)だけ屈折させて出射させ、上下に形成されたレンズカット108は、図10に示すように、LED光源102から放射される半値角外の放射光Lを上方向に角度β(光軸Xからの角度であって、図示例で40°)だけ屈折させて出射させており、これによって当該光学レンズ101が使用される車両用灯具に対して適用される配光規格を満たすようにしている。
【0007】
尚、特許文献1には、入射面に凸レンズ状の中央入射面とその周囲に放射状に配された多角形の複数のプリズムを形成し、出射面に入射面に形成された中央入射面に対応するトロイダル面とプリズムに対応する周囲出射面を形成することによって光利用効率を高めた灯具用光学レンズが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−165484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図6〜図10に示した従来の LED灯具用光学レンズ101にあっては、出射面106の外周縁の左右及び上下にそれぞれ形成されたレンズカット107,108は、何れも半値角外の光度の低い放射光Lを左右及び上方向に屈折させて配光制御を行うものであるため、LEDの光束を有効に利用することができず、光の利用効率が低いという問題があった。又、レンズカット107,108は光学レンズ101の外周縁に沿って形成されているため、カットの範囲が広く、配光ロスが大きくなるという問題があった。
【0010】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的とする処は、LEDの光の利用効率を高めるとともに、配光ロスを低く抑えることができるLED灯具用光学レンズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、LED光源からの放射光を所望の角度範囲に配光するためのLED灯具用光学レンズにおいて、前記LED光源から放射される半値角内の放射光を左右方向にα、上方向にβの角度方向にそれぞれ屈折させて出射させるレンズカットを出射面の中央部に配置したことを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記αを80°、前記βを40°にそれぞれ設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、LED光源から放射される半値角内の光度の高い放射光を左右方向及び上方向にそれぞれ屈折させて出射させるレンズカットを光学レンズの出射面の中央部に配置したため、LEDの光束を有効に利用することができ、光の利用効率が高められる。又、レンズカットは形成される範囲が光学レンズの中央部に集約されるため、カットによる配光ロスが低く抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るLED灯具用光学レンズを入射面側から見た斜視図である。
【図2】本発明に係るLED灯具用光学レンズを出射面側から見た斜視図である。
【図3】本発明に係るLED灯具用光学レンズの正面図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】図3のB−B線断面図である。
【図6】従来のLED灯具用光学レンズを入射面側から見た斜視図である。
【図7】従来のLED灯具用光学レンズを出射面側から見た斜視図である。
【図8】従来のLED灯具用光学レンズの正面図である。
【図9】図8のC−C線断面図である。
【図10】図8のD−D線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は本発明に係るLED灯具用光学レンズを入射面側から見た斜視図、図2は同LED灯具用光学レンズを出射面側から見た斜視図、図3は同LED灯具用光学レンズの正面図、図4は図3のA−A線断面図、図4は図3のB−B線断面図である。
【0017】
本実施の形態に係るLED灯具用光学レンズ(以下、単に「光学レンズ」と略称する)1は、不図示の車両用灯具に使用されるものであって、透明樹脂によって薄型円形に成形されており、LED光源2(図4及び図5参照)の前方にその中心が光軸Xに一致するよう配置されている。尚、本実施の形態に係る光学レンズ1を備える車両用灯具に対しては、配光範囲が左右方向に角度80°、上方向に40°規定されている欧州配光規格が適用されるものとする。
【0018】
本実施の形態に係る光学レンズ1の入射面3においては、図1、図4及び図5に示すように、その中央部にLED光源2に向かって凸の円弧曲面を成す中央入射面4が形成され、該中央入射面4の周囲にはリング状を成す複数のプリズム5が同心的に形成されている。
【0019】
又、光学レンズ1の出射面6においては、図2〜図5に示すように、入射面3に形成された前記中央入射面4に対応する中央部には左右及び上下に4分割されたレンズカット7,8がそれぞれ形成されている。ここで、左右に形成されたレンズカット7は、図4に示すように、LED光源2から放射される半値角内の放射光Lを左右方向に角度α(光軸Xからの角度であって、図示例では80°)だけ屈折させて出射させ、上下に形成されレンズズカット8は、図5に示すように、LED光源2から放射される半値角内の放射光Lを上方向に角度β(光軸Xからの角度であって、図示例で40°)だけ屈折させて出射させ、当該光学レンズ1を備えた車両用灯具に対して適用される欧州配光規格を満足するようにしている。
【0020】
以上において、本実施の形態に係る光学レンズ1によれば、LED光源2から放射される半値角内の光度の高い放射光Lを左右方向に角度α(=80°)、上方向に角度β(=40°)だけそれぞれ屈折させて出射させるレンズカット7,8を光学レンズ1の出射面6の中央部に配置したため、LEDの光束を有効に利用することができ、光の利用効率が高められ、当該光学レンズ1を備える車両用灯具の視認性が高められるという効果が得られる。
【0021】
又、本実施の形態に係る光学レンズ1においては、レンズカット7,8が出射面6の中央部に集約的に形成されるため、そのサイズが小さく抑えられ、カットによる配光ロスが低く抑えられるという効果も得られる。
【0022】
尚、以上の実施の形態では、本発明を車両用灯具に使用されるLED灯具用光学レンズに対して適用した形態について説明したが、本発明は、車両用灯具以外の他の任意の灯具に使用される光学レンズに対しても同様に適用可能であることは勿論である。又、光学レンズの出射面に形成されたレンズカットによる光の左右及び上方向の屈折方向α,βの値は任意に設定されるものである。
【符号の説明】
【0023】
1 LED灯具用光学レンズ
2 LED光源
3 光学レンズの入射面
4 光学レンズの中央入射面
5 光学レンズのプリズム
6 光学レンズの出射面
7,8 光学レンズのレンズカット
L 放射光
X 光軸
α 光の左右方向の屈折角
β 光の上方向の屈折角


【特許請求の範囲】
【請求項1】
LED光源からの放射光を所望の角度範囲に配光するためのLED灯具用光学レンズにおいて、
前記LED光源から放射される半値角内の放射光を左右方向にα、上方向にβの角度方向にそれぞれ屈折させて出射させるレンズカットを出射面の中央部に配置したことを特徴とするLED灯具用光学レンズ。
【請求項2】
前記αを80°、前記βを40°にそれぞれ設定したことを特徴とする請求項1記載のLED灯具用光学レンズ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−69250(P2012−69250A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210350(P2010−210350)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】