説明

LED照明用異方性光拡散フィルム及びそれを用いたLED照明

【課題】LED光源から発せられる光を拡散させることができ、照度ムラの少ないLED照明用異方性光拡散フィルム、及びそれを用いたLED照明を提供する。
【解決手段】(A)環状オレフィン系樹脂70〜90重量%及びポリエチレン樹脂10〜30重量%を含む樹脂組成物から形成される層を有するLED照明用異方性光拡散フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED照明の光を拡散させることができる異方性光拡散フィルム、及び該異方性光拡散フィルムを用いたLED照明に関する。
【背景技術】
【0002】
LED照明は小型、小電力、長寿命が可能であり、また、チラツキや発熱も少ないことから、近年蛍光灯や白熱電球に代わる照明器具として注目されている。LED照明から発せられる光は、LED照明の直下では蛍光灯よりも照度が大きいが、光の拡散が蛍光灯よりもはるかに乏しく、照度ムラが発生するという問題があった。
【0003】
ところで、これまでに液晶表示パネルのバックライトデバイスから発光する光を拡散させるために、光拡散性シートを設けることが従来より知られているが(例えば、特許文献1及び2参照)、LED照明のような照度ムラが生じる照明器具に対して、広範囲に均一な照度をもたらすような照明として改善させるためのシートやフィルムについては、未だ改善の余地を残しているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−31774号公報
【特許文献2】特開平10−111402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、LED光源から発せられる光を拡散させることができ、照度ムラの少ないLED照明用異方性光拡散フィルム、及びそれを用いたLED照明を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、環状オレフィン系樹脂及びポリエチレン樹脂を、特定の含有割合で含む樹脂組成物から形成されるフィルムが、LED光源から発せられる光を拡散させることを見出し、さらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、斯かる知見に基づき完成されたものである。
【0008】
項1.(A)環状オレフィン系樹脂60〜90重量%及び
ポリエチレン樹脂10〜40重量%を含む樹脂組成物から形成される層
を有するLED照明用異方性光拡散フィルム。
【0009】
項2.さらに、
(B)環状オレフィン系樹脂を含む樹脂組成物から形成される層を有し、
A層とB層が積層されてなる項1に記載のLED照明用異方性光拡散フィルム。
【0010】
項3.A層/B層/A層又はA層/B層の順で積層されてなる項2に記載のLED照明用異方性光拡散フィルム。
【0011】
項4.A層の合計の厚さが5〜300μmである項1〜3のいずれかに記載のLED照明用異方性光拡散フィルム。
【0012】
項5.B層の合計の厚さが5〜3000μmである項2〜4のいずれかに記載のLED照明用異方性光拡散フィルム。
【0013】
項6.項1〜5のいずれかに記載のLED照明用異方性光拡散フィルムを有するLED照明。
【0014】
項7.LED照明用異方性光拡散フィルムとLED照明の光源との距離が0.5cm以上である項6に記載のLED照明。
【0015】
以下、本発明のLED照明用異方性光拡散フィルムについて、詳細に説明する。
【0016】
本発明のLED照明用異方性光拡散フィルムは、環状オレフィン系樹脂及びポリエチレン樹脂を含む樹脂組成物から形成される。
【0017】
環状オレフィン系樹脂とは、具体的には、(a)エチレンまたはプロピレンと環状オレフィン(例えば、ノルボルネン及びその誘導体、又はテトラシクロドデセン及びその誘導体等)とのランダム共重合体、(b)該環状オレフィンの開環重合体又はα−オレフィンとの共重合体、(c)前記(b)の重合体の水素添加物、(d)不飽和カルボン酸及びその誘導体等による前記(a)〜(c)のグラフト変性物等である。該環状オレフィン系樹脂の比重は、好ましくは1.00〜1.06であり、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)法により測定される数平均分子量は好ましくは1000〜100万のものである。
【0018】
また、該環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度は、好ましくは50〜130℃、より好ましくは65〜100℃である。50℃未満では、フィルム表面の耐熱性が低下し、熱がかかると表面が粘着するようになる。一方、130℃を超えると成形が難しくなる。
【0019】
環状オレフィン系樹脂の含有割合は、60〜90重量%であり、70〜90重量%程度が好ましく、75〜90重量%程度がより好ましく、80〜85重量%程度がさらに好ましい。環状オレフィン系樹脂の含有割合が60重量%未満であると、フィルムの全光線透過率が低下し、LED光源からの光の損失が大きくなる傾向がある。一方、環状オレフィン系樹脂の含有割合が90重量%を超えると、異方向への光拡散機能が発現しにくくなる傾向がある。なお、環状オレフィン系樹脂の含有割合は、後述するように単層で用いる場合は、フィルムを形成する場合の樹脂組成物中全体に対する含有割合を表し、多層構造を有する場合には、A層を形成する樹脂組成物中全体に対する含有割合を表す。
【0020】
ポリエチレン樹脂としては、分枝鎖状、直鎖状のもの、及び高密度、低密度のものが挙げられるが、光学異方性発現の点から分岐状低密度ポリエチレン又は直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。
【0021】
ポリエチレン樹脂の密度としては、0.88〜0.96g/cm程度が好ましく、0.88〜0.92g/cm程度がより好ましく、さらに、0.88〜0.91g/cm程度が好ましい。ポリエチレン樹脂の密度を上記範囲に設定することによって、良好な光学異方性を発現させることができる。
【0022】
樹脂ポリエチレンのJIS K7210に準拠した温度230℃、荷重21.18Nで測定したMFR(メルトフローレート)としては、1〜10g/10分程度が好ましく、2〜10g/10分程度がより好ましい。
【0023】
ポリエチレン樹脂の含有割合は、10〜40重量%であり、20〜40重量%程度が好ましく、25〜35重量%程度がより好ましい。ポリエチレン樹脂が10重量%未満であると、異方向への光拡散機能が発現しにくくなる傾向がある。また、ポリエチレン樹脂が40重量%を超えても、異方向への光拡散機能が発現しにくくなる傾向がある。なお、ポリエチレン樹脂の含有割合は、後述するように単層で用いる場合は、フィルムを形成する場合の樹脂組成物中全体に対する含有割合を表し、多層構造を有する場合には、A層を形成する樹脂組成物中全体に対する含有割合を表す。
【0024】
また、前記樹脂成分を含む樹脂組成物において、前記樹脂成分以外の成分、例えば、帯電防止剤、耐熱安定剤、耐候剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤等の任意成分を20重量%以下で含有していてもよい。
【0025】
本発明のLED照明用異方性光拡散フィルムにおいて、前記環状オレフィン系樹脂及びポリエチレン樹脂を含む樹脂組成物から形成される層(A層)を単層として用いる場合の厚さは、フィルム自体の強度を向上させることができる点、LED照明光源からの光を充分に拡散させることができ、照度のムラを抑制できる点等から、5μm程度以上が好ましく、50μm程度以上がより好ましく、100μm程度以上がさらに好ましい。また、LED照明光源からの光を透過し、照度が低下しにくい等の点から、厚さは、300μm程度以下が好ましく、250μm程度以下がより好ましく、200μm程度以下がさらに好ましい。
【0026】
本発明のLED照明用異方性光拡散フィルムは、前記樹脂組成物から形成される層(A層)を単層として用いてもよく、また、異方性光拡散フィルムの強度を向上させる観点等から、ポリエチレン樹脂を含む樹脂組成物から形成されるB層との多層構造を有していてもよい。なお、B層に用いられるポリエチレン樹脂としては、前記A層に用いられるポリエチレン樹脂と同じものが挙げられる。
【0027】
また、B層として形成される樹脂組成物において、前記樹脂成分以外の成分、例えば、帯電防止剤、耐熱安定剤、耐候剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤等の任意成分を20重量%以下で含有していてもよい。
【0028】
LED照明用異方性光拡散フィルムがA層及びB層の多層構造を有する場合の具体例としては、A層とB層が積層された2層構造、又はA層/B層/A層若しくはB層/A層/B層の順で積層されてなる構造を有する3層構造等が挙げられる。
【0029】
多層構造におけるA層の合計の厚さは、フィルム自体の強度を充分に付与でき、異方性拡散機能を十分に発現できるという観点から、5μm程度以上が好ましく、50μm程度以上がより好ましく、100μm程度以上がさらに好ましい。また、光透過性において優れるという点から、A層の合計の厚さは、300μm程度以下が好ましく、250μm程度以下がより好ましく、200μm程度以下がさらに好ましい。
【0030】
B層の合計の厚さは、フィルム自体の強度を充分に付与できるという観点から、5μm程度以上が好ましく、50μm程度以上がより好ましく、100μm程度以上がさらに好ましい。また、フィルム成形巻取り性において優れるという点から、B層の合計の厚さは、3000μm程度以下が好ましく、1000μm程度以下がより好ましく、500μm程度以下がさらに好ましい。
【0031】
A層とB層との厚さの比率としては、A層:B層の比率で、10:5〜10:100が好ましく、10:5〜10:40がより好ましく、10:10〜10:20がさらに好ましい。
【0032】
なお、A層/B層/A層又はB層/A層/B層の順に積層されてなる3層構造を有する場合には、各層構成の2つのA層又はB層の厚さは、同じでも、異なっていてもよいが、強度を充分に保つことができる点、異方性機能を充分に付与できるという点から、同じ厚さにすることが好ましい。
【0033】
本発明のLED照明用異方性光拡散フィルムの総厚さは、フィルム自体の強度を十分に付与できる点から、50μm程度以上が好ましく、100μm程度以上がより好ましく、150μm程度以上がさらに好ましい。また、総厚さは、フィルム成形巻き取り性に優れるという点から、3000μm程度以下が好ましく、1000μm程度以下がより好ましく、500μm程度以下がさらに好ましい。
【0034】
本発明のLED照明用異方性光拡散フィルムは、例えばA層、又はA層及びB層の各層の樹脂組成物をそれぞれドライブレンドし、各組成物をA層単層、A層/B層、A層/B層/A層、又はB層/A層/B層等の所望の順序になるように押出機に供給し、バレル温度180〜250℃程度でTダイスより押出し、冷却水が循環するチルロール上に共押出せしめフラット状の単層又は多層フィルムとして得ることができる。
【0035】
得られたフィルムは、フィルムのダイス樹脂流れ方向(MD方向)及びダイス樹脂流れに対して垂直方向(TD方向)の光線透過率が異なるため、光を拡散する異方性を有するフィルムとなり、特にLED照明の光源からの光をTD方向に拡散することができ、照明ムラを低減させることが可能となる。
【0036】
また本発明は、前記LED照明用異方性光拡散フィルムを有するLED照明にも関する。
【0037】
前記LED照明の一実施形態の模式図を図1に示す。LED光源を有するLED照明1から発光される光2は、LED照明用異方性光拡散フィルム3を設けない場合には、点発光である。この点発光の光をつなげて面発光とする場合には、点発光の連なる方向とTD方向とが平行になるように、LED照明用異方性光拡散フィルム3を設けることによって、LED照明の光源からの光をTD方向に拡散することができ、フィルムを介した光源2から発光される光4を、面光源とすることができる。
【0038】
LED光源とLED照明用異方性光拡散フィルムとの距離は、LED光源から発せられる光の強度にもよるが、LED光源から発せられる光を充分に拡散させることができる点、照明ムラを抑制できる点、光を異方向へ拡散することができる点等から、1cm程度以上が好ましく、5cm程度以上がより好ましく、10cm程度以上がさらに好ましい。また、LED光源とLED照明用異方性光拡散フィルムとの距離は、特に限定されるものではないが、光の透過率が低下しない程度の距離であればよく、例えば、50cm程度以下が好ましい。
【0039】
また、図1に示すようなLED照明を複数列に並べることによって、広範囲に照明することのできるLED照明とすることも可能である。
【発明の効果】
【0040】
本発明のLED照明用異方性光拡散フィルムは、光を異方拡散させることができるため、LED照明における照度のムラを改善させることができる。そのため、LED照明に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】LED照明用異方性光拡散フィルムを有するLED照明の一実施形態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0042】
以下に実施例及び比較例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0043】
下記の実施例及び比較例で使用した原料樹脂を下記に示す。
【0044】
環状オレフィン系樹脂:(TOPAS ADVANCED POLYMERS GmbH製の環状オレフィン系樹脂(TOPAS(8007F)))
PE樹脂:(株式会社プライムポリマー製のポリエチレン樹脂(エボリューSP0510))
実施例1〜3及び比較例1〜2
表1に記載のA層となるように、表1に示す成分及び組成で配合して得られる樹脂組成物を、180〜250℃に調整された押出機に投入し、250℃のTダイスにより押し出し、80℃の冷却水が循環するチルロール上に共押出しせしめて、フラット状の単層フィルムを得た。
【0045】
実施例4〜5及び比較例3
層構成がB層/A層/B層となるように、表2に示す成分及び組成で配合して、各層を構成する樹脂組成物を、180〜250℃に調整されたそれぞれの押出機に投入しA層/B層/A層の順序になるように、250℃のTダイスにより押し出し、積層し、80℃の冷却水が循環するチルロール上に共押出しせしめて、フラット状の3層フィルムを得た。
【0046】
実施例6〜7及び比較例4
層構成がA層/B層となるように、表3に示す成分及び組成で配合して、各層を構成する樹脂組成物を、180〜250℃に調整されたそれぞれの押出機に投入しA層/B層/A層の順序になるように、250℃のTダイスにより押し出し、積層し、80℃の冷却水が循環するチルロール上に共押出しせしめて、フラット状の2層フィルムを得た。
【0047】
物性評価
前記実施例1〜7及び比較例1〜4に記載の単層、2層フィルム、及び3層フィルムについて、下記の特性をそれぞれ評価した。その結果を表1〜3に示す。
【0048】
[MD方向及びTD方向の全光線透過量]
ヘイズメーターにより、得られたフィルムのダイス樹脂流れ方向(MD方向)及びダイス樹脂流れに対して垂直方向(TD方向)(MD方向のフィルムに対してフィルムを90度回転して測定)の光線透過率を測定し、さらにその差を算出した。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

【符号の説明】
【0052】
1 LED照明
2 LED光源から発光される光
3 LED照明用異方性光拡散フィルム
4 LED光源から発光される光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)環状オレフィン系樹脂60〜90重量%及び
ポリエチレン樹脂10〜40重量%を含む樹脂組成物から形成される層
を有するLED照明用異方性光拡散フィルム。
【請求項2】
さらに、
(B)環状オレフィン系樹脂を含む樹脂組成物から形成される層を有し、
A層とB層が積層されてなる請求項1に記載のLED照明用異方性光拡散フィルム。
【請求項3】
A層/B層/A層又はA層/B層の順で積層されてなる請求項2に記載のLED照明用異方性光拡散フィルム。
【請求項4】
A層の合計の厚さが5〜300μmである請求項1〜3のいずれかに記載のLED照明用異方性光拡散フィルム。
【請求項5】
B層の合計の厚さが5〜3000μmである請求項2〜4のいずれかに記載のLED照明用異方性光拡散フィルム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のLED照明用異方性光拡散フィルムを有するLED照明。
【請求項7】
LED照明用異方性光拡散フィルムとLED照明の光源との距離が0.5cm以上である請求項6に記載のLED照明。

【図1】
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【公開番号】特開2012−48978(P2012−48978A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190017(P2010−190017)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】