説明

LH特性を有する伝送線路及び結合器

【課題】広い伝送帯域を有し、且つ、サイズの小さなLH伝送線路と結合器を提供する。
【解決手段】LH特性を有する伝送線路は、互いに離れて配置され、一端において接続された2以上のフィンガーを含む第1のフィンガーセットと、互いに離れて配置され、一端において接続された2以上のフィンガーを含むと共に、前記第1のフィンガーセットから所定の間隔だけ離れて実質的に平行に配置された第2のフィンガーセットと、を備えるキャパシターと、一端が前記第2のフィンガーセットと接続され、他端が接地面に接続されたインダクターを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は伝送線路及び結合器に係り、さらに詳しくは、 左手系(Left−Hand
ed:LH)伝送線路、LH伝送線路を用いた結合器及びこれを実現するためのキャパシターとインダクターに関する。
【背景技術】
【0002】
メタマテリアル(metamaterial)とは、自然において一般的に見られない特殊な電磁気的な特性を有するように人工的に設計された物質または電磁気的な構造を意味するものであり、一般に、この技術分野及びこの明細書において、メタマテリアルとは、誘電率と透磁率が両方とも負数である物質またはこのような電磁気的な構造を意味する。
【0003】
このような物質は、2つの負数パラメータを有するという意味で、ダブルネガティブ(Double Negative;DGN)物質とも呼ばれる。また、メタマテリアルは負の誘電率及び透磁率により負の反射係数を有し、これにより、NRI(Negative Refractive Index)物質とも呼ばれる。メタマテリアルは、1967年にソ連の物理学者のベセラゴ(V.Veselago)により最初に研究され始めたものの、それから30余年が過ぎた最近になって具体的な実現方法に取り組んでその応用が試みられている。
【0004】
上述のような特性により、メタマテリアル内における電磁気波は、フレミング右手の法則に従うことなく、フレミング左手の法則に従って伝達される。すなわち、電磁気波の位相伝播方向(位相速度方法)とエネルギー伝播方向(群速度方向)が反対となって、メタマテリアルを通過する信号は負の位相遅延を有することになる。この理由から、メタマテリアルを左手系材料(Left−Handed Material:LHM)とも呼ぶ。さらに、メタマテリアルにおいては、β(位相定数)とω(周波数)との関係が非線形的であるだけではなく、その特性曲線が座標平面の左半面にも存在するという特性を示す。このような非線形特性により、メタマテリアルにおいては周波数による位相差が小さくて広帯域回路が実現可能であり、位相変化が伝送線路の長さに比例しないことから、小型の回路を実現することができる。
【0005】
メタマテリアルを実現する方法は絶えず研究されてきており、その一つとして、LH伝送線路を利用する方法が知られている。
【0006】
図1は、従来の伝送線路及びLH伝送線路の等価回路を示す図である。従来の伝送線路の等価回路は、図1の(a)に示すように、直列インダクターLRと並列キャパシターCRで表わされる。これに対し、メタマテリアル伝送線路、すなわち、LH伝送線路は、図1の(b)に示すように、直列のキャパシターCLと並列のインダクターLLで表わされ、このような伝送線路を実現することにより、上述した電磁気的な特性を有するメタマテリアルを実現することが可能になることが知られている。
【0007】
従来、上記のLH伝送線路は図2に示す伝送線路により実現され、このような実現はItohらの特許に開示されている(例えば、下記の特許文献1参照)。伝送線路はFR4基板などの公知の基板を用いて実現可能である。具体的に、伝送線路は、誘電体400の一方の面上に導体を印刷、蒸着またはエッチングして形成されるインターデジタル(interdigital)キャパシター100及びスタブインダクター200、さらに、その対向面に導体を印刷、蒸着またはエッチングして形成される接地面300を含む。
【0008】
図1の(b)に示すLH伝送線路の直列キャパシターCLは、インターデジタルキャパ
シター100により実現される。インターデジタルキャパシター100は、誘電体を挟んで導体を多層に配置することにより形成される従来のマルチレイヤーキャパシターに比べて、素子の小型化を達成し、且つ、伝送線路に含め易いように実現されたものであり、2つのフィンガーセット110、120が互いに離れると共に、交互に配置されてフィンガー同士の電磁気的な結合によるキャパシタンスを有する。各セットのフィンガー110または120は一端において互いに電気的に接続されて、多数のフィンガー間のキャパシタンス、例えば、フィンガー110aとフィンガー120aとの間のキャパシタンス及びフィンガー110bとフィンガー120bとの間のキャパシタンスが並列合成されてさらに大きなキャパシタンスを有するようにする。
【0009】
一方、LH伝送線路の並列インダクターLLは、短絡スタブ(short stub)
であるスタブインダクター200により実現される。スタブインダクター200は長く延びた導体であり、一端がビア孔210を介して接地面300に接続される。スタブインダクター200は、通常の導体において固有に現れるインダクタンスを用いたものであり、主としてその長さによりインダクタンスが決定される。これにより、大体図1の(b)に示すような伝送線路が実現され、これを一つのセルとして用いて多数のセルを縦続(cascade)接続することにより、所望の長さの伝送線路を実現することができる。但し、各導体における不可避なキャパシタンスとインダクタンスにより、正確にはRH伝送線路とLH伝送線路が混合された電気的な特性を示す。
【0010】
このような従来のLH伝送線路において、各構成素子の構造的な限界が伝送線路の性能の向上に制約となる。先ず、インターデジタルキャパシター100は、マルチレイヤキャパシターに比べてキャパシタンスが小さいという欠点がある。これは、互いに向かい合って電磁気的に結合する導体の面積がインターデジタルキャパシター100においてさらに小さいからである。また、それぞれのフィンガーが精密に交差するように形成されなければならないため、その製造及び加工工程が極めて難しい。これに対し、マルチレイヤキャパシターを利用する場合には、キャパシタンスの調整が導体間の間隔と導体面積の調整によってしかなされないため、設計の自由度が低いという不都合がある結果、LH伝送線路に一般的に使用するには不向きである。例えば、Kaoによる下記の特許文献2及びWuによる下記の特許文献3に積層インターデジタルキャパシターが開示されているが、これは、マルチレイヤキャパシターの構成と同じ構成を有するため設計の自由度が低く、且つ、構造が複雑であるため製造コストも高い。
【0011】
一方、スタブインダクター200は、インダクタンスが導体の長さにより決定されるため、インダクタンスを増大させるためには導体の長さが増大されなければならず、これにより、インダクター200が肥大化するという不都合がある。また、信号の波長がスタブインダクター200の長さの2倍となる場合、スタブインダクター200はλ/2共振器として作動して、周波数応答において遮断周波数が現れてしまうだけではなく、インピーダンス特性上、波長の1/4未満の長さにおいてしかインダクターとして動作することができない。このため、スタブインダクター200を広い周波数帯域において使用することは不可能である。
【0012】
このようなインターデジタルキャパシター100とスタブインダクター200の限界により、従来のLH伝送線路は伝送帯域の拡大と小型化を図る上で多くの制約を受ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許出願11/092,143号
【特許文献2】米国特許出願10/904,825号
【特許文献3】米国特許出願11/234,276号
【特許文献4】韓国特許出願第2006−79326号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、インターデジタルキャパシターの高い設計自由度を維持しながらも、キャパシタンスを増大させる一方で、製造を容易にするところにある。
【0015】
また、本発明は、小型に製造可能であり、遮断周波数を有さないインダクターを提供することを目的とする。
【0016】
究極的に、本発明は、広い伝送帯域を有し、且つ、サイズの小さなLH伝送線路及びこれを用いた結合器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述した目的を達成するために、本発明の一実施態様によれば、互いに離れて配置され、一端において接続された2以上のフィンガーを含む第1のフィンガーセットと、互いに離れて配置され、一端において接続された2以上のフィンガーを含むと共に、前記第1のフィンガーセットから所定の間隔だけ離れて実質的に平行に配置された第2のフィンガーセットと、を備えるキャパシターが提供される。
【0018】
好ましくは、キャパシターは、前記第1のフィンガーセットと前記第2のフィンガーセットとの間に介在された誘電体をさらに備える。
【0019】
また、前記第1のフィンガーセットのフィンガーの幅が前記第2のフィンガーセットのフィンガー間の間隔よりも大きく、それにより、前記第1のフィンガーセットのフィンガーが前記第2のフィンガーセットのフィンガーと少なくとも一部において重なり合うことが好ましい。
【0020】
本発明の他の実施態様によれば、一端が伝送線路に接続され、他端が接地面に接続され、実質的に螺旋状を有するように前記伝送線路の内側に形成されたインダクターが提供される。
【0021】
前記インダクターは誘電体上に形成され、前記他端はビア孔を介して前記接地面に接続されることが好ましい。
【0022】
本発明のさらに他の実施態様によれば、互いに離れて配置され、一端において接続された2以上のフィンガーを含む第1のフィンガーセットと、互いに離れて配置され、一端において接続された2以上のフィンガーを含むと共に、前記第1のフィンガーセットから所定の間隔だけ離れて実質的に平行に配置された第2のフィンガーセットと、を備えるキャパシター、及び一端が前記第2のフィンガーセットと接続され、他端が接地面に接続されたインダクターを含むLH特性を有する伝送線路が提供される。
【0023】
好ましくは、前記キャパシターは、前記第1のフィンガーセットと前記第2のフィンガーセットとの間に介在された誘電体をさらに備える。
【0024】
また、前記第1のフィンガーセットのフィンガーの幅が前記第2のフィンガーセットのフィンガー間の間隔よりも大きく、これにより、前記第1のフィンガーセットのフィンガーが前記第2のフィンガーセットのフィンガーと少なくとも一部において重なり合うことが好ましい。
【0025】
一方、前記インダクターは前記第2のフィンガーセットと伝送線路を介して接続され、前記インダクターは一端が前記伝送線路に接続され、他端が接地面に接続され、実質的に螺旋状を有するように前記伝送線路の内側に形成されることが好ましい。
【0026】
さらに、前記インダクターは誘電体上に形成され、前記インダクターの他端はビア孔を介して前記接地面に接続されることも好ましい。
【0027】
本発明のさらに他の実施態様によれば、前記LH特性を有する伝送線路を含む結合器が提供される。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、インターデジタルキャパシターの高い設計自由度を維持しながらも、キャパシタンスを増大させる一方で、製造を容易にすることができる。
【0029】
さらに、本発明によれば、小型に製造可能であり、しかも、遮断周波数を有さないインダクターが得られると共に、究極的には広い伝送帯域を有し、且つ、サイズの小さなLH伝送線路及びこれを用いて小型化が図れると共に結合度が向上した結合器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】従来の伝送線路及びLH伝送線路の等価回路を示す図である。
【図2】実際に実現された従来のLH伝送線路を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態によるインターデジタルキャパシターの斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態によるインターデジタルキャパシターの上面図である。
【図5】本発明の他の実施形態によるインダクターの斜視図である。
【図6】本発明の他の実施形態によるLH伝送線路の斜視図である。
【図7】本発明の一実現例によるLH伝送線路のS21パラメータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付図面に基づき、本発明の具体的な実施形態を説明する。この明細書において、インダクター、キャパシター、LH伝送線路などの名称はその素子または構成要素においいて優れた電気的な特性を示すように定められたものであり、各素子または構成要素が純水にインダクター、キャパシター、LH伝送線路などとしてのみ動作するということを意味することはない。
【0032】
図3は、本発明の一実施形態によるインターデジタルキャパシター1の斜視図である。この実施形態のインターデジタルキャパシター1は、互いに離れて実質的に平行に配置された2セットのフィンガー10、20を備える。フィンガーセット10、20は互いに離れるように配置され、一端において互いに接続されたフィンガー12、14及びフィンガー22、24をそれぞれ含む。以下、図示のもののうち一部のフィンガーだけを指示して説明を行うが、本発明はこれに何等制限されるものではなく、図示または説明されたもの以外のいかなる数のフィンガーに対しても以下の説明が適用可能である。
【0033】
フィンガーセット10、20は、電気的に接続されないように離れて配置され、製造の便宜及び構造の安定性のために、これらの間に誘電体(図示せず)が配置されていてもよい。特に、一般的に、平板キャパシターのキャパシタンスは誘電率に比例するため、高い誘電率の誘電体をフィンガーセット10、20の間に差し込むことによりキャパシタンスを増大させることができる。フィンガー12、14及びフィンガー22、24はそれぞれ伝送線路32及び30に共通して接続されて、これらの間のキャパシタンスが並列合成できるようにする。なお、これらが接続された伝送線路30、32はキャパシターの端子を構成して電流がこれらを介して出入りする。
【0034】
フィンガー12、14とフィンガー22、24は実質的に同じ長さを有するように形成されて重なり合うように配置されることが好ましい。フィンガーの配置は、図4を参照して説明する。図4を参照するに、フィンガー12、14とフィンガー22、24は互いに交差するように配置されると共に、少なくともその外周部において重なり合うように配置可能である。すなわち、フィンガーの幅、例えば、フィンガー22の幅がフィンガー間の間隔、例えば、フィンガー12とフィンガー14との間の間隔よりも大きくなるように形成されて、フィンガー22はその外周部においてフィンガー12及び14と重なり合うことができる。このようにフィンガーセット10及び20が平行に配置されると共に、所定の領域において重なり合うことにより、従来のインターデジタルキャパシターに比べて導体の重なり合う面積が増大され、その結果、キャパシタンスが増大される。
【0035】
また、2つのフィンガーセット10、20が異なる層に形成されるため、フィンガー間の交互配置を精度よく実現する必要がなく、従来のインターデジタルキャパシターに比べて製造の難度及びコストが減少する。
【0036】
これと同時に、既存のインターデジタルキャパシターのように2以上のフィンガーを含むフィンガーセット10、22によりキャパシターを構成することにより、キャパシターの設計自由度を高めることができる。具体的に、フィンガー間の間隔、フィンガーセット10、22間の間隔、各フィンガーの長さ、各フィンガーセット10、20が含むフィンガーの数、誘電体の誘電率などを変化させることにより、キャパシター1のキャパシタンスを変化させることができ、これは、単にキャパシタンスが導体のサイズ、導体間の間隔、及び誘電体の誘電率だけで決定される従来のマルチレイヤキャパシターに比べて高い自由度を許容する。
【0037】
次に、図5に基づき、本発明の他の実施形態によるインダクターを説明する。この実施形態のインダクター2は、伝送線路である導体30の内側に形成された開口部内に実質的に螺旋状を有するように配置されたストリップ導体40を含む。導体30及びストリップ導体40は誘電体50の表面に印刷、蒸着またはエッチングなどにより形成可能である。なお、誘電体50の対向面には接地面60が形成されていてもよい。ストリップ導体40は、一端42が導体30に接続され、他端44はビア孔52を介して接地面60に接続される。
【0038】
ストリップ導体40は導体が固有に有するインダクタンスによりインダクターとして動作する。しかしながら、ストリップ導体40は、従来のスタブインダクターとは異なり、実質的に螺旋状を有するように形成されるため、狭い面積内においてもそれを長尺状に形成することができる結果、大きなインダクタンスを有することができる。これにより、インダクターの小型化を図ることができる。
【0039】
螺旋状を有するストリップ導体40において、実質的に平行に離れて配置されたストリップ導体40の各部分の間においてキャパシタンスが発生することになる。しかしながら、これは実質的に全体のストリップ導体40によるインダクタンスに比べて無視できる程度に小さく、結果的に、インダクター2はインダクター素子として動作する。このように、基本的に伝送線路の構成を有して分布定数回路(distributed circuit)として動作するスタブインダクターに比べて、この実施形態のインダクター2はキャパシタンスとそれよりも優勢なインダクタンスがいずれも存在する集中定数素子(discrete circuit component)またはラムプドインダクター(lumped inductor)として動作するため、その共振周波数は内部のインダクタンス及びキャパシタンスにより決定されるだけであり、λ/2共振器として動作することはない。また、波長の1/4未満の長さを有する場合に限ってインダクターとして動作可能な従来のスタブインダクターとは異なり、インダクターとして動作可能な波長の範囲に制限がない。このため、インダクターのサイズに比例する遮断周波数を有さず、広い帯域においてインダクターとして動作することができる。
【0040】
また、この実施形態のインダクター2は伝送線路30内側の開口部内に形成されるため、インダクター2が占める回路空間を極力抑えることができ、特に、インターデジタルキャパシターと接続して形成する場合、キャパシターとインダクター2を容易に接続することができる。
【0041】
図6に基づき、本発明のインターデジタルキャパシター1及びインダクター2を用いた本発明の他の実施形態によるLH伝送線路3を説明する。この実施形態において、インターデジタルキャパシター1とインダクター2はそれぞれ図3及び図5に基づく説明と同様なものを使用し、同じ構成要素には同じ参照符号を付するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0042】
この実施形態のLH伝送線路3はインターデジタルキャパシター1とインダクター2を備え、キャパシター1とインダクター2は伝送線路30により接続される。すなわち、伝送線路30の一方の側はキャパシター1のフィンガーセット20に接続され、他方の側はインダクター2のストリップ導体40と接続される共に、延長してLH伝送線路の第2のポートとして機能する。LH伝送線路の第1のポートはキャパシター1のフィンガーセット10に接続された伝送線路32である。
【0043】
このような構成により、LH伝送線路3の第1のポート32と第2のポート30との間にインターデジタルキャパシター1が接続され、第2のポート30と接地面との間にインダクター2が接続されるため、直列キャパシターと並列インダクターとから構成されるLH伝送線路3が得られる。なお、LH伝送線路3を1つのセルとして用い、2以上を縦続接続することにより所望の長さの伝送線路を得ることができる。
【0044】
この実施形態のLH伝送線路3は設計自由度が高く、且つ、キャパシタンスが大きなインターデジタルキャパシター1と、小型化が可能であり、且つ、遮断周波数を有さないインダクター2を備えるため、従来のLH伝送線路に比べて帯域幅を拡張することができるとともに、伝送線路の小型化を図ることができる。また、伝送線路30の内側に形成されたインダクターを用いることにより、インターデジタルキャパシター1のフィンガーセット20をそのまま延長してインダクターと接続することが可能であるため、伝送線路3の製造が極めて単純になる。
【0045】
この実施形態のLH伝送線路を実際に実現して性能を測定した。なお、従来のLH伝送線路を製作して比較例として用いた。
【0046】
実現例のLH伝送線路において、インターデジタルキャパシターの各フィンガーの長さは6mm、フィンガーの幅は0.2mm、そしてフィンガー間の間隔は0.1mmであり、各セット当たりに8個のフィンガーを使用した。また、フィンガーセット間の離間距離は0.1mmとし、フィンガー間には誘電率1の誘電体を介在させた。インダクターのストリップ導体の幅は0.1mmであり、ストリップ導体の螺旋間の間隔は0.1mmであり、そして、インダクターの全体のサイズ、すなわち、ストリップ導体の伝送線路接続部から螺旋の最外郭部までの距離は1.9mmであった。
【0047】
比較例のLH伝送線路において、インターデジタルキャパシターの各フィンガーの長さは6mmであり、各セットが5個のフィンガーを含むようにした。スタブインダクターは長さ10mm、幅1mmに形成した。
【0048】
実現例と比較例において、いずれも誘電率4の基板を用いて伝送線路を実現し、6個のキャパシターと5個のインダクターを含む伝送線路のサイズは、実現例が48×2.4mmであり、比較例が37×12.2mmであった。
【0049】
図7は、本発明の一実現例によるLH伝送線路のS21パラメータを示す図である。図7の(a)は、比較例のS21パラメータを示し、(b)は実現例のS21パラメータを示している。これらパラメータは300kHz〜6GHzの範囲において測定された。図示の如く、比較例のS21パラメータは−3dBmを基準として1GHzと4GHzにおいて遮断周波数を有するのに対し、実現例のS21パラメータは0.5GHzと4.4GHzにおいて遮断周波数を有する。このため、比較例に比べて帯域幅が900MHz、約30%拡張された。すなわち、本発明の実現例によれば、比較例に比べて伝送線路の実現面積を約75%減少させると共に、帯域幅を約30%拡張することができるということを確認した。
【0050】
本発明の他の実施形態によれば、LH伝送線路の並列インダクターとして、伝送線路とは別個の層に形成されたインダクター、またはヘリカル状に形成されたインダクターを使用することも可能である。これらインダクターに関しては、本願出願人の韓国特許出願第2006−79326号に開示されており、前記出願に開示された内容はここで詳細に説明しなくても本願出願に取り込まれる。
【0051】
本発明の他の実施形態によれば、上述した本発明のLH伝送線路を用いた結合器が提供される。この実施形態の結合器は、本発明のLH伝送線路の1対を平行に配置して4個のポートを有するように構成される。第1の伝送線路の入力ポートと出力ポートはそれぞれ結合器の入力ポート(input port)及び通過ポート(through port)として使用され、第2の伝送線路の入力ポートは結合出力ポート(coupled out port)として使用される。第2の伝送線路の出力ポートは隔離ポート(isolation port)であり、入出力に使用されることはない。
【0052】
この実施形態の結合器は、本発明のLH伝送線路を使用することにより小型に製造可能であり、しかも、広帯域特性を有する。加えて、従来のLH伝送線路を用いた結合器に比べて高い結合度を示す。
【0053】
実施形態の実現例と比較例における説明の同様にして、6個のキャパシター及び5個のインダクターを含む従来のLH伝送線路と本発明のLH伝送線路をそれぞれ1対ずつ用いて結合器を実現し、それぞれの結合器の結合度を比較した。但し、各伝送線路は0.2mmの間隔にて配置し、キャパシターのフィンガー間の間隔は0.08mmとし、インダクターにおいてそのサイズは1.85mmとし、ストリップ導体間隔は0.15mmとした。その結果、それぞれ−6dBと−3dBの結合度を示して、この実施形態による結合器が3dBの結合度の向上をもたらすことを確認した。
【0054】
以上、本発明を具体的な実施形態と結び付けて説明したが、これは単なる例示に過ぎず、本発明は説明された実施形態に制限されない。当業者は容易に各構成要素をその均等物に置き換えたり、各構成要素の形成方法を変更することができ、このような置換や変更により本発明の範囲を逸脱するものではない。よって、本発明は以上の説明により制限されてはならず、本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等物によってのみ決定さるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに離れて配置され、一端において接続された2以上のフィンガーを含む第1のフィンガーセットと、互いに離れて配置され、一端において接続された2以上のフィンガーを含むと共に、前記第1のフィンガーセットから所定の間隔だけ離れて実質的に平行に配置された第2のフィンガーセットと、を備えるキャパシターと、
一端が前記第2のフィンガーセットと接続され、他端が接地面に接続されたインダクターを含むLH特性を有する伝送線路。
【請求項2】
前記キャパシターは、前記第1のフィンガーセットと前記第2のフィンガーセットとの間に介在された誘電体をさらに備える、請求項1に記載のLH特性を有する伝送線路。
【請求項3】
前記第1のフィンガーセットのフィンガーの幅が前記第2のフィンガーセットのフィンガー間の間隔よりも大きく、これにより、前記第1のフィンガーセットのフィンガーが前記第2のフィンガーセットのフィンガーと少なくとも一部において重なり合う、請求項1に記載のLH特性を有する伝送線路。
【請求項4】
前記インダクターは前記第2のフィンガーセットと伝送線路を介して接続され、
前記インダクターは一端が前記伝送線路に接続され、他端が接地面に接続され、実質的に螺旋状を有するように前記伝送線路の内側に形成された、請求項1に記載のLH特性を有する伝送線路。
【請求項5】
前記インダクターは誘電体上に形成され、前記インダクターの他端はビア孔を介して前記接地面に接続される、請求項4に記載のLH特性を有する伝送線路。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のLH特性を有する伝送線路を含む結合器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−78138(P2011−78138A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6752(P2011−6752)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【分割の表示】特願2009−533258(P2009−533258)の分割
【原出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(507248424)イーエムダブリュ カンパニー リミテッド (41)
【Fターム(参考)】