説明

LOC用リードフレームおよびそれを利用した半導体装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、リードフレームおよびそれを利用した半導体装置に係り、特に、LOC構造の半導体装置に最適なLOC用リードフレームおよびそれを利用した半導体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】高密度実装が可能なLOC(Lead On Chip)構造等の半導体装置に用いられるリードフレームとして、その片面または両面に熱可塑性や熱硬化性の接着層が塗布された高耐熱絶縁フィルムを貼着し、この高耐熱絶縁フィルム(通常、ポリイミド系フィルム)に半導体チップを加熱及び加圧して搭載する方式のリードフレームがある。
【0003】高耐熱絶縁フィルムをリードフレームに貼り付けるには、従来、金型による打ち抜き貼り付け方法が用いられてきた。この方法は、リール状に巻かれたフィルムを金型で所定の形に打ち抜き、これをリードフレームに加熱及び加圧して貼り付けるものである。しかし、この方法によると、両面接着剤付きポリイミドフィルムを用いているため、■テープの価格が高い、■ポリイミドフィルムの吸湿量が大きいため、パッケージの信頼性が不十分、■テープが厚いためにパッケージの薄型化が困難、等の問題がある。
【0004】このような不具合を解消するため、リードフレーム上の半導体素子を搭載すべき部分に接着剤のみを塗布し、この接着剤によって半導体素子とリードフレームを接合(接着)する方法が提案されている(例えば、特開平4−75355号公報)。接着剤を塗布する方法として、一般には、X−Yロボットとディスペンサとを組み合わせた装置を使用し、リードフレーム上の半導体素子を搭載すべき部分(例えば、インナーリードの先端部)にワニス状の接着剤(例えば、接着性の樹脂を溶媒で溶いたもの)が塗布される。特に、リードの先端部に接着剤を塗布する場合、ニードル(又はノズル)を移動させながら接着剤をニードルからリードフレームの所定部分に空気圧によって吐出する点塗布方式が用いられる。この方法は、必要量をリードフレーム上に塗布するのみであるため、材料に余りが発生せず、かつ高価な金型も必要としないので、製造コストを低減できるという利点がある。
【0005】ところで、接着剤塗布型のLOC用リードフレームの量産化が進むにつれて、リードフレームはエッチングによるリードフレームからプレスによるリードフレームへと移行している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来のLOC用リードフレームによると、エッチングリードフレームの場合、表、裏いずれの面に接着剤を塗布しても、接着剤の塗布状況に差は見られない。ところが、量産に適しているプレスリードフレームでは、パンチ側表面とダイ側表面ではリードフレーム表面の平坦度やバリ発生状況が異なり、それに伴って接着剤を塗布した場合の塗布状況が著しく異なる。特に、接着剤の厚さ、厚さの均一性、リードフレームのバリ発生状況の違いによる絶縁性の確保等は重要な課題である。そして、この接着剤の塗布状況によって、半導体素子がリードフレームに固定される状態は、著しく影響を受けることになる。しかし、プレスリードフレームの接着剤の塗布面を指定することは行われておらず、バリ面に接着剤層4が設けられることは避けられなかった。
【0007】そこで本発明は、プレス加工によるリードに接着剤を塗布しても、搭載される半導体素子に絶縁に関する影響を与えることのないLOC用リードフレームおよびそれを利用した半導体装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、本発明は、プレス加工で作られることによりだれ面とばり面を有したインナーリードの所定位置に接着剤層を形成し、この接着剤層を介して半導体素子を前記インナーリードに固定するLOC用リードフレームにおいて、前記接着剤層は、前記インナーリードの前記だれ面に設けることを特徴とするLOC用リードフレームにしている。
【0009】この構成によれば、バリが発生しておらず、中心部が膨出した形状のだれ面に接着剤層を設けたことにより、リード面が半導体素子に接触することがなくなるので、十分な絶縁性を確保することができる。本発明は、上記の目的を達成するため、更に、プレス加工で作られることによりだれ面とばり面を有したインナーリードの所定位置に形成された接着剤層によって半導体素子を前記インナーリードに固定する半導体装置において、前記半導体素子は前記だれ面に形成された前記接着剤層によって前記インナーリードと固定されていることを特徴とする半導体装置を提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について図面を基に説明する。図1は本発明によるLOC用リードフレームの1枚のリードを示す断面図である。プレスリードフレームのインナーリード1は、図2に示すように、プレス加工の際、片面の端部には丸みを持つだれ部2が形成され、他面の端部にはバリ3が生じた形状を有している。プレス加工はパンチとダイを用いて行われ、図2の上面がパンチ側の面(以下、「だれ面」という)であり、下面がダイ側の面である。パンチ側の面は材料が引き込まれるためにだれ込みが生じ、ダイ側の面には材料が最後に破断する際の破断部の一部が残るためにバリ3が発生する。このダイ側の面は、一般にバリ面と呼ばれる。このバリは、打ち抜き条件にもよるが、数十μmの大きさになることもある。
【0011】接着剤塗布型のLOC用リードフレームにおいては、塗布される接着剤の厚みは20μm程度であり、この厚み以上にしようとすれば、接着剤の粘度を高くしたり、塗布回数を増やす必要があり、実用的ではない。図3はインナーリード1のだれ面に接着剤を塗布して接着剤層4を形成した状況を示す断面図である。この状況では、接着剤層4の厚みをバリ3の高さが越えている。このようにバリ3が生じている面に設けられた接着剤層4に半導体素子5を固定した場合、バリ3の高さが接着剤層4の厚み以下であれば問題ない。しかし、バリ3の高さが接着剤層4の厚み以上であれば、図4に示すように半導体素子5の下面に接触し、半導体素子5とリードフレームの絶縁性を確保できなくなる恐れがある。
【0012】そこで、本発明では、図1に示すように、だれ面に接着剤層4を塗布している。だれ面は、中央部が端部に比べて盛り上がっている。このため、図1の状態の接着剤層4上に半導体素子5を固定しても、図5に示すように、半導体素子5の下面はリードフレームの表面に接触することはなく、絶縁状態が確実に確保される。
【0013】
【実施例】次に、本発明の実施例について説明する。42ピンのTSOP(Thin Small Outline Package)のLOC用リードフレームをプレス加工で製作した後、表面にAgめっきを行った。このリードフレームのインナーリードの先端には、プレス加工の際、最大高さ25μmのバリがダイ側の面(バリ面)に発生した。このLOC用リードフレームの先端に、ディスペンサを用いて熱可塑性の接着剤を塗布し、接着剤層を形成した。この塗布後に乾燥処理を行った。
【0014】LOC用リードフレームは、だれ面に接着剤を塗布したものと、バリ面に接着剤を塗布したものの2種類を製作し、いずれの塗膜も20μmの厚さにした。各々のLOC用リードフレームについて、図5に示したように、半導体素子を接着剤層に接着固定し、半導体装置を構成した。この接着は、400℃に加熱されたステージに半導体素子を載置し、この上方に接着剤層の形成されたリードフレームを位置合わせし、420℃の加熱ツールでプレスすることにより実施した。なお、加熱ツールに加える荷重は、4kgにした。
【0015】この接着後の半導体素子のインナーリード下の表面を観察した。更に、半導体素子の電気特性を調査した。その結果は表1の如くであった。
【0016】
【表1】


【0017】表1から明らかなように、だれ面に接着剤を塗布したリードフレームを使用した場合、半導体素子の表面にクラックは発生せず、電気特性も良好であった。一方、バリ面に接着剤を塗布したリードフレームの場合、半導体素子の表面にクラックが見られ、電気特性に異常の見られるものが発生した。この様に、プレスリードフレームを使用した接着剤塗布型のLOC用リードフレームの場合、だれ面を接着剤塗布面にすることで、半導体素子にダメージを与えることなく半導体素子をリードフレームに搭載できることが確かめられた。
【0018】
【発明の効果】以上より明らかな如く、本発明によれば、プレス加工により作られたインナーリードの所定位置に設けられる接着剤層をインナーリードのだれ面に設けるようにしたので、リード面と半導体素子の接触は生ぜず、リード面と半導体素子の絶縁を確保することができる。この結果、半導体素子のリードフレームへの実装効率が向上し、パッケージの信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるLOC用リードフレームの1枚のリードを示す断面図である。
【図2】プレスリードフレームのインナーリード部を示す断面図である。
【図3】インナーリードのだれ面に接着剤を塗布して接着剤層を形成した状況を示す断面図である。
【図4】リードのバリ面のバリ高さが接着剤層の厚み以上である時の短絡発生を示す断面図である。
【図5】本発明によるLOC用リードフレームに半導体素子を搭載した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 インナーリード
2 だれ部
3 バリ
4 接着剤層
5 半導体素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】プレス加工で作られることによりだれ面とばり面を有したインナーリードの所定位置に接着剤層を形成し、この接着剤層を介して半導体素子を前記インナーリードに固定するLOC用リードフレームにおいて、前記接着剤層は、前記インナーリードの前記だれ面に設けることを特徴とするLOC用リードフレーム。
【請求項2】プレス加工で作られることによりだれ面とばり面を有したインナーリードの所定位置に形成された接着剤層によって半導体素子を前記インナーリードに固定する半導体装置において、前記半導体素子は前記だれ面に形成された前記接着剤層によって前記インナーリードと固定されていることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【特許番号】特許第3261987号(P3261987)
【登録日】平成13年12月21日(2001.12.21)
【発行日】平成14年3月4日(2002.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−194522
【出願日】平成8年7月24日(1996.7.24)
【公開番号】特開平10−41324
【公開日】平成10年2月13日(1998.2.13)
【審査請求日】平成12年10月6日(2000.10.6)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【参考文献】
【文献】特開 昭55−4985(JP,A)
【文献】特開 平6−37221(JP,A)
【文献】特開 平7−202107(JP,A)
【文献】実開 昭64−29829(JP,U)