説明

LiFePO4−炭素合成物を製造するための方法

本発明は、一般式(I)
1a2b3conf (I)
(但し、M1、M2、M3、O、N、F、a、b、c、o、n及びfが、以下の意味を有する:
1が、少なくとも1種のアルカリ金属であり、
2が、酸化状態が+2の、少なくとも1種の遷移金属であり、
3が、S、Se、P、As、Si、Ge及び/又はBから選ばれる、少なくとも1種の非−金属であり、
Oが、酸素であり、
Nが、窒素であり、
Fが、フッ素であり、
aが、0.8〜4.2であり、
bが、0.8〜1.9であり、
cが、0.8〜2.2であり、
oが、1.0〜8.4であり、
nが、0〜2.0であり、及び
fが、0〜2.0であり、
a、b、c、o、n及びfが、一般式(I)に従う化合物の電気的中性を守るように選ばれる)
に従う少なくとも1種の化合物、及び
炭素を含む粒子を製造するための方法であって、以下の工程:
(A)M1を含む少なくとも1種の化合物、酸化状態が少なくとも部分的に+2よりも高いM2を含む少なくとも1種の化合物、任意にM3を含む少なくとも1種の化合物、存在する場合には、Nを含む少なくとも1種の化合物、及び/又は存在する場合には、Fを含む少なくとも1種の化合物、炭素前駆体として、分子量Mが少なくとも50000g/molのグルコースを含む少なくとも1種の多糖、及び少なくとも1種の還元剤を含む、基本的に水性の混合物を準備する工程、
(B)固体粒子を得るために、工程(A)で供給された混合物を乾燥させる工程、
(C)工程(B)で得られた固体粒子を、300〜950℃の温度でか焼する工程、
を含む粒子を製造するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の金属、例えばリチウム、第2の金属、例えば鉄、及び少なくとも1種のアニオン、例えばフォスフェイト−アニオンを含む少なくとも1種の化合物、及び炭素を含む粒子を製造するための方法、該方法によって製造可能な粒子、及びこれらの粒子をリチウムイオン電池のカソードの製造のために使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LiFePO4及び任意に炭素を含む粒子を製造するための方法は、従来技術から既に公知である。
【0003】
特許文献1(US2003/0082454A1)には、Li2CO3又はLiOH・H2O、Fe(CH3CO22及びNH42PO4・H2Oを混合することによってLiFePO4を製造するための方法が記載されている。固体混合物は、NH3、H2O及びCO2を除去するために300〜350℃でか焼される。次に混合物は、アルゴン下に、800℃で24時間、更に処理される。この文献は更に、LI224、LiH2PO4及びFe(C24)・2H2Oを含むミルされた混合物をか焼することにより、LiFePO4ベースの材料を製造する方法を記載している。
【0004】
特許文献2(US6962666B2)には、3質量%のポリプロピレン−粉、Fe3(PO42・8H2O及びLi3PO4を含むミルした混合物をアルゴン下にか焼することによって炭素含有被覆物を含むLiFePO4を製造するための方法が開示されている。混合物は、アルゴン下に300℃で3時間か焼され、Fe3(PO42・8H2Oが脱水され、そして次に7時間、700℃でか焼される。プロピレン粉は、Fe3(PO42・8H2O中のFe(III)を、LiFePO4中のFe(II)に還元し、及び同時に炭素を生成する還元剤である。
【0005】
特許文献3(US6702961B2)には、FePO4、Li2CO3及び炭素から成るミルされた混合物をペレット化し、次に不活性雰囲気内で、700℃で8時間か焼することによってLiFePO4を製造する方法が開示されている。
【0006】
特許文献4(CN1547273)の要約には、Li2CO3、FeC24・2H2O及び(NH42HPO4の混合物をミルし、次にタブレット化し、炭素を加えてマイクロ波照射下にか焼することによってLiFePO4を製造する方法が開示されている。
【0007】
特許文献5(DE102005015613A1)には、FeSO4・7H2O、H3PO4及びLiOH・H2Oの、基本的に水性の混合物を、窒素下に160℃で10時間、水温処理することによって、LiFePO4を得ることができることが開示されている。
【0008】
特許文献6(DE102005012640A1)には、Li3PO4及びLi2SO4と一緒に沈澱したFe3(PO42・8H2Oを、160℃で10時間、水温処理することによってLiFePO4を得ることができることが開示されている。
【0009】
特許文献7(WO2006/057146A2)には、FeO、P25及びLiOHを含む混合物をアルゴン下に1100℃で溶解させ、次にミル(粉化)することによってLiFePO4を得ることができることが開示されている。
【0010】
特許文献8(US2004/0013943)には、電極又は電池のための活性材料を製造するための方法が開示されており、この方法では、炭素含有還元剤が、アルカリ金属、及び遷移金属含有化合物を含む混合物に加えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】US2003/0082454A1
【特許文献2】US6962666B2
【特許文献3】US6702961B2
【特許文献4】CN1547273
【特許文献5】DE102005015613A1
【特許文献6】DE102005012640A1
【特許文献7】WO2006/057146A2
【特許文献8】US2004/0013943
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
LiFePO4及び炭素を含む粒子を製造するための従来技術に従う方法は、か焼工程を還元雰囲気中で行う必要があるという短所を有している。炭素は、高い反応温度でのみ還元剤として作用するので、高いか焼温度が必要であり、これは結晶粒が大きく、そして粒子のサイズの分布が広い材料をもたらす。他の短所は、これらの公知の方法から得られた固体化合物は、コンパクト化した(詰まった)バルク密度及びなお改良が可能な電気化学的特性を示すことである。
【0013】
本発明の目的は、好ましくはリチウム、鉄、及びフォスフェイトアニオンを含む少なくとも1種の化合物、及び炭素を含み、高いタップ密度と有利な電気化学的特性を有する粒子を製造するための方法を提供することにある。更に、本発明の目的は、容易に、及び僅かな反応段階で行うことができる、上記粒子を製造するための方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、一般式(I)
1a2b3conf (I)
(但し、M1、M2、M3、O、N、F、a、b、c、o、n及びfが、以下の意味を有する:
1が、少なくとも1種のアルカリ金属であり、
2が、酸化状態が+2の、少なくとも1種の遷移金属であり、
3が、S、Se、P、As、Si、Ge及び/又はBから選ばれる、少なくとも1種の非−金属であり、
Oが、酸素であり、
Nが、窒素であり、
Fが、フッ素であり、
aが、0.8〜4.2であり、
bが、0.8〜1.9であり、
cが、0.8〜2.2であり、
oが、1.0〜8.4であり、
nが、0〜2.0であり、及び
fが、0〜2.0であり、
a、b、c、o、n及びfが、式(I)に従う化合物の電気的中性を守るように選ばれる)
に従う少なくとも1種の化合物、及び
炭素を含む粒子を製造するための第1の方法であって、少なくとも以下の工程:
(A)M1を含む少なくとも1種の化合物、酸化状態が少なくとも部分的に+2よりも高いM2を含む少なくとも1種の化合物、任意にM3を含む少なくとも1種の化合物、存在する場合には、Nを含む少なくとも1種の化合物、及び/又は存在する場合には、Fを含む少なくとも1種の化合物、炭素前駆体として、分子量Mが少なくとも50000g/molのグルコースを含む少なくとも1種の多糖、及び少なくとも1種の還元剤を含む、基本的に水性の混合物を準備する工程、
(B)固体粒子を得るために、工程(A)で供給された混合物を乾燥させる工程、
(C)工程(B)で得られた固体粒子を、300〜950℃の温度でか焼する工程、
を含む粒子を製造するための第1の方法によって達成される。
【0015】
更に、この目的は、上記に定義された一般式(I)に従う、少なくとも1種の化合物、及び炭素を含む粒子を製造するための第2の方法であって、少なくとも以下の工程:
(D)前記一般式(I)に従う少なくとも1種の化合物を、炭素前駆体として分子量Mが少なくとも50000g/molのグルコースを含む少なくとも1種の多糖の水溶液と混合する工程、
(E)固体粒子を得るために、工程(A)で提供された混合物を乾燥させる工程、及び
(F)工程(E)で得られた固体粒子を300〜950℃の温度でか焼する工程、
を含む粒子を製造するための第2の方法によって達成される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に従う第1の方法では、一般式(I)に従う少なくとも1種の化合物、及び炭素を含む粒子が、一般式(I)のM1−、M2−、及びM3−含有前駆体、及び特定の多糖から、還元によって製造される。本発明に従う第2の方法では、一般式(I)に従う少なくとも1種の化合物、及び炭素を含む粒子が、一般式(I)の化合物、及び特定の多糖を混合することによって製造される。
【0017】
少なくとも工程(A)〜(C)を含む第1の工程を以下に説明する:
本発明に従う第1の方法によって製造される粒子は、一般式(I)、
1a2b3conf (I)
(但し、M1、M2、M3、O、N、F、a、b、c、o、n及びfが、以下の意味を有する:
1が、少なくとも1種のアルカリ金属であり、
2が、少なくとも1種の遷移金属であり、
3が、S、Se、P、As、Si、Ge及び/又はBから選ばれる、少なくとも1種の非−金属であり、
Oが、酸素であり、
Nが、窒素であり、
Fが、フッ素であり、
aが、0.8〜4.2であり、
bが、0.8〜1.9であり、
cが、0.8〜2.2であり、
oが、1.0〜8.4であり、
nが、0〜2.0であり、及び
fが、0〜2.0であり、
a、b、c、o、n及びfが、式(I)に従う化合物の電気的中性を守るように選ばれる)
の少なくとも1種の化合物を含む。一般式(I)で、M1とM2が金属であり、及びM3が上記群から選ばれる非−金属である。酸素(O)の存在に基づき、一般式(I)に従う化合物は、好ましくはサルフェート、フォスフェイト、ヒ酸塩、シリケート、ジャーミネート及び/又はホウ酸塩である。
【0018】
1は、少なくとも1種のアルカリ金属、例えばLi、Na、K、Rb、Cs、及びこれらの混合物から成る群から選ばれるもの、好ましくはLi、Na及び/又はK、特に好ましくはLiである。
【0019】
2は、少なくとも1種の遷移金属、例えばFe、Mn、Ni、Co及びこれらの混合物から成る群から選ばれるもの、好ましくは、Fe、Mn、Ni及び/又はCo、特に好ましくはFeである。
【0020】
3は、S、Se、P、As、Si、Ge及び/又はBから選ばれる、好ましくはP、Si、Sから成る群から選ばれる、少なくとも1種の非−金属である。酸素(O)の存在に基づき、一般式(I)に従う化合物は、極めて好ましくは、サルフェート、フォスフェイト、ヒ酸塩、シリケート、ジャーミネート及び/又はホウ酸塩である。
【0021】
本方法の好ましい実施の形態では、一般式(I)中で、M1、M2、M3、O、a、b、c、o、n及びfが、以下の意味を有する:
1が、Li、及び任意に少なくとも1種の更なるアルカリ金属であり、
2が、Fe、Mn、Ni及び/又はCo、及び任意に少なくとも1種の更なる遷移金属であり、
3、P及び任意に、Si及び/又はSから選ばれる、少なくとも1種の更なる非−金属であり、
Oが、酸素であり、
aが、0.8〜1.9、特に好ましくは0.9〜1.1、例えば1.0であり、
bが、0.8〜1.9、特に好ましくは0.9〜1.1、例えば1.0であり、
cが、0.8〜1.9、特に好ましくは0.9〜1.1、例えば1.0であり、
oが、3.0〜5.0、特に好ましくは3.5〜4.5、例えば4.0であり、及び
n、fが、0である。
【0022】
この好ましい実施の形態中で、n及びfは0であり、このことは、一般式(I)に従う化合物中に、窒素(N)及びフッ素(F)が存在しないことを意味する。
【0023】
例えば、極めて好ましい実施の形態では、(Feの酸化状態が+2である一般式(I)LiFePO4の、電荷が中性の化合物を得るために)M1はLi、M2はFe、M3はPであり、そして更なるアルカリ金属、更なる遷移金属、及びSi及び/又はSから選ばれる更なる非金属が存在しない。従って、極めて好ましい実施の形態では、一般式(I)に従う化合物は、LiFePO4である。
【0024】
更なる好ましい実施の形態では、(Mnの酸化状態が+2である一般式(I)LiMnPO4の、電荷が中性の化合物を得るために)M1はLi、M2はMn、M3はPであり、そして更なるアルカリ金属、更なる遷移金属、及びSi及び/又はSから選ばれる更なる非金属が存在しない。従って、好ましい更なる実施の形態では、一般式(I)に従う化合物は、LiMnPO4である。
【0025】
従って、一般式(I)に従う更なる好ましい化合物(I)は、LiNiPO4及びLiCoPO4である。
【0026】
更なる好ましい実施の形態では、例えばLiであるM1に加え、少なくとも1種の更なるアルカリ金属、例えばNaが、M1と少なくとも1種の更なるアルカリ金属の合計に対して10モル%以下の量で存在する。
【0027】
更なる好ましい実施の形態では、例えばFeであるM2に加え、少なくとも1種の更なる遷移金属、例えばMnが、M2と少なくとも1種の更なる遷移金属の合計に対して30モル%以下の量で存在する。
【0028】
好ましい他の実施の形態では、例えばPであるM3に加え、Si及び/又はSから選ばれる、少なくとも1種の更なる非−金属が、M3と少なくとも1種の更なる非金属の合計に対して10モル%以下の量で存在する。
【0029】
本発明に従って製造される粒子は、更に炭素を含む。通常、本発明に従う粒子の中に、非粒子の状態(nonparticular form)で存在する。好ましい実施の形態では、炭素は、本発明に従う粒子の表面に主として存在し、特に好ましくは、炭素は(表面において)粒子の直径の20%以下、好ましくは10%以下の厚さの層中に存在する。好ましい実施の形態では、粒子中に存在する炭素の80%以下、特に好ましくは90%以下、例えば95%以下の炭素が、粒子の表面において上述した層内に存在する。
【0030】
本発明に従う方法によって製造される粒子中に、炭素は0.5〜10質量%の量、好ましくは1〜6質量%の量、及び特に好ましくは3〜5質量%の量で存在する。
【0031】
以下に工程(A)、(B)及び(C)を詳細に説明する:
【0032】
工程(A):
工程(A)は、
(A)M1を含む少なくとも1種の化合物、酸化状態が少なくとも部分的に+2よりも高いM2を含む少なくとも1種の化合物、任意にM3を含む少なくとも1種の化合物、存在する場合には、Nを含む少なくとも1種の化合物、及び/又は存在する場合には、Fを含む少なくとも1種の化合物、炭素前駆体として、分子量Mが少なくとも50000g/molのグルコースを含む少なくとも1種の多糖、及び少なくとも1種の還元剤を含む、基本的に水性の混合物を準備する工程、
を含む。
【0033】
本発明に従う方法の工程(A)で提供されるこの混合物は、基本的に水性、例えば基本的に水溶液、水性の分散物、又はスラリーである。
【0034】
通常、本方法の工程(A)での混合物に導入することができる(この技術分野の当業者にとって公知の)全てのM1−、M2−、及びM3−含有化合物を本発明に従う方法に使用することができる。
【0035】
1がLiである、好ましい実施の形態では、工程(A)でのリチウム−含有化合物は、好ましくはリチウムヒドロキシドLiOH、リチウムヒドロキシド−ハイドレートLiOH・H2O、リチウムアセテートLiOAc、リチウムカーボネートLi2CO3、リチウムフォスフェイト、例えばLiH2PO4、Li2HPO4、Li3PO4、LiH2PO3、Li2HPO3、Li3PO3、LiH2PO2、及びこれらの混合物から成る群から選ばれる。極めて好ましい実施の形態では、リチウムヒドロキシドLiOH、及び/又はリチウムヒドロキシド−ハイドレートLiOH・H2O、及び/又はリチウムカーボネートLi2CO3がリチウム含有化合物として、本発明に従う方法の工程(A)で使用される。特に好ましい2種のリチウム−含有化合物は、リチウムヒドロキシドLiOH、及びリチウムヒドロキシド−ハイドレートLiOH・H2Oである。
【0036】
少なくとも1種のM1−、好ましくはリチウム−、含有化合物が、本発明に従う方法の工程(A)での混合物に、それぞれ全反応混合物に対して、通常0.04〜4モルM1/L、好ましくは0.1〜2.0モルM1/L、特に好ましくは0.2〜1.5モルM1/Lの濃度で加えられる。
【0037】
更なるM1−含有化合物は、存在する場合、好ましくは、水酸化ナトリウムNaOH、水酸化ナトリウム−ハイドレートNaOH・H2O、ナトリウムアセテートNaOAc、ナトリウムカーボネートNa2CO3、及びこれらの混合物から成る群から選ばれる。極めて好ましい実施の形態では、水酸化ナトリウムNaOH及び/又は水酸化ナトリウム−ハイドレートNaOH・H2O、及び/又はナトリウムカーボネートNa2CO3が、本発明に従う方法の工程(A)で、ナトリウム−含有化合物として使用される。特に好ましい2種のナトリウム−含有化合物は、水酸化ナトリウムNaOH、及び水酸化ナトリウム−ハイドレートNaOH・H2Oである。
【0038】
2がFeである、好ましい実施の形態では、鉄−(III)−オキシドヒドロキシドFeOOHが、M2−含有化合物として使用される。FeOOHは、好ましくは、α−FeOOH、β−FeOOH、γ−FeOOH、及びこれらの混合物から成る群から選ばれる。好ましいものは、鉄−(III)−オキシドヒドロキシド(FeOOH)の、α−、及びγ−変性である。α−FeOOHが特に好ましい。
【0039】
好ましい実施の形態では、FeOOHは、針状の形状で存在し、これは特に好ましくは、長さの厚さに対する割合が、>1.5、好ましくは>2、特に好ましくは>5である。
【0040】
FeOOH、好ましくは針状の形状のFeOOHを使用することの有利性は、好ましくは少なくとも1種のリチウム−含有化合物、及び少なくとも1種のリン含有化合物を含む混合物中に、非常に短い拡散通路が存在し、これにより一般式(I)に従う化合物を、非常に均一に、及び単一相中に得ることができることである。Fe(III)−カチオンは、結晶中の適所に達するために、リチウムとリン原子の間を非常に容易に動くことができ、これは異なるFe−含有化合物が使用された場合には、容易なことではない。
【0041】
2がMnである、更なる実施の形態では、好ましくはMn34、NH4MnPO4・H2O、Mn23、MnO2、又はこれらの化合物の2種以上の混合物がM2−含有化合物(特に好ましくはMn34)として使用される。更に、Mn−、Ni、Co−及び/又はFe−塩の混合したヒドロキシド、オキシド、及びカーボネートを、M2−含有化合物として使用することができる。これらの混合した化合物は、それぞれの塩、好ましくはそれぞれのサルフェートを沈澱させることによって得ることが好ましい。
【0042】
少なくとも1種のM2−、好ましくは鉄−含有化合物が、本発明に従う方法の工程(A)での混合物に、(それぞれ全反応混合物に対して)通常、0.04〜4.0モルM2/L、好ましくは0.1〜2.0モルM2/L、特に好ましくは0.2〜1.5モルM2/Lの濃度で加えられる。
【0043】
存在する場合、更なるM2−含有化合物は、好ましくは、ヒドロキシド、アセテート、オキシド、カーボネート、ハロゲニド、例えばフルオリド、クロリド、ブロミド、アイオダイド、ニトレート、及びこれらの混合物から選ばれる、必要とされるカチオン及びアニオンを有する化合物から選ばれる。極めて好ましい実施の形態では、少なくとも1種のM2−含有化合物のアニオンは、アセテート、オキシド、ヒドロキシド、カーボネート、ニトレート、又はこれらの混合物である。
【0044】
3がPである、好ましい実施の形態では、好ましい前駆体は、酸化状態が+5の少なくとも1個のリン原子を含む。これらの化合物は、好ましくは、H3PO4、(NH4)H2PO4、(NH42HPO4、(NH43HPO4、Li3PO4、LiH2PO4、Li2HPO4、及びこれらの混合物から成る群から選ばれる。H3PO4が特に好ましい。
【0045】
少なくとも1種のM3−含有化合物、好ましくは酸化状態が+5の少なくとも1個のリン原子を含む化合物が、本発明に従う方法の工程(A)での混合物に、(それぞれ全反応混合物に対して)通常、0.04〜4.0モルM3/L、好ましくは0.1〜2.0モルM3/L、特に好ましくは0.2〜1.5モルM3/Lの濃度で加えられる。
【0046】
更なるM3−含有化合物は、存在する場合、好ましくは、H2SO4、(NH4)HSO4、(NH42HSO4、LiHSO4、Li2SO4、微細に粉砕されたSiO2、例えばゾルの状態のもの、H4SiO4、Li−シリケート、及びこれらの混合物から選ばれる。
【0047】
通常、M1−、M2−、及び/又はM3−含有化合物は、これらが式(I)内に存在する量で、基本的に水性の混合物に加えられる。この技術分野の当業者は、必要とされる量を計算する方法を知っている。
【0048】
本発明に従う方法の工程(A)で提供される、基本的に水性の混合物は更に、炭素前駆体として、分子量Mが少なくとも50000g/モルのグルコースを含む少なくとも1種のポリサッカリドを含む。
【0049】
通常、上述した特徴を満たす全ての適切な多糖を、本発明に従う方法の工程(A)で使用することができる。好ましくは、本発明に従う方法で使用される多糖は、分子量Mが、少なくとも80000g/モル、特に好ましくは少なくとも150000g/モルである。
【0050】
極めて好ましい実施の形態では、少なくとも1種の多糖(polysaccharide)は、アミロペクチンである。
【0051】
アミロペクチンは、モル質量が通常、200.000〜1.000.000g/モルで、約1.200〜6.200D−グルコースモノマー(これは、アルファ−1,4−位に、相互にグリコシド結合している)に相当する。約25モノマーの距離で、(一つの)アルファ−1,6−グリコシド結合が存在する。
【0052】
本発明に従う方法で炭素前駆体として使用することが好ましいアミロペクチンは通常、少なくとも95%の純度、好ましくは少なくとも96%の純度、特に好ましくは少なくとも98%の純度で使用される。
【0053】
アミロペクチンは、この技術分野の当業者にとって公知の全ての方法によって得ることができ、例えば植物、例えばポテト、好ましくはamflora(登録商標)ポテトから抽出することによって得ることができる。好ましい実施の形態では、本発明に従う方法で使用されるアミロペクチンは、遺伝子組み換えが行なわれている植物、好ましくはポテトから得ることができる。
【0054】
本発明は更に、少なくとも1種の単−及び/又は二糖が、工程(A)に追加的に加えられる、本発明に従う方法に関する。
【0055】
本発明に従う方法の更なる実施の形態では、本発明に従う方法の工程(A)で、分子量Mが少なくとも50000g/モルのグルコースを含む少なくとも1種の多糖が、少なくとも1種の単−及び/又は二糖と組み合わせて、炭素前駆体として加えられる。通常、この技術分野の当業者にとって公知の全ての単−及び/又は二糖を、この実施の形態に使用することができる。上述した少なくとも1種の多糖は通常、少なくとも1種の単−及び/又は二糖との混合物中に、(それぞれ少なくとも1種の多糖及び少なくとも1種の単−及び/又は二糖の全混合物に対して)25〜95質量%、好ましくは30〜90質量%、最も好ましくは40〜85質量%の量で存在する。
【0056】
少なくとも1種の単−及び/又は二糖は通常、(それぞれ少なくとも1種の多糖及び少なくとも1種の単−及び/又は二糖の全混合物に対して)5〜75質量%、好ましくは10〜70質量%、最も好ましくは15〜60質量%の量で存在する。少なくとも1種の多糖及び少なくとも1種の単−及び/又は二糖の量の合計は、それぞれ100質量%である。
【0057】
本発明に従えば、少なくとも1種の多糖及び少なくとも1種の単−及び/又は二糖の混合物が使用された場合、適切なタップ密度の粒子を得るために、少なくとも1種の多糖は、全混合物に対して、少なくとも25質量%の量で存在しなければならない。
【0058】
本発明の方法の工程(A)で任意に加えることができる、適切な単−及び/又は二糖は、サッカロース、乳糖(ラクトース)、及びこれらの混合物から成る群から選ばれることが好ましい。
【0059】
本発明に従う方法の工程(A)で提供される混合物は更に、少なくとも1種の還元剤を含む。好ましい実施の形態では、本発明に従う方法の工程(A)で加えられる少なくとも1種の還元剤は、水溶性である。本発明に従えば、「水溶性」は、基本的に水性の混合物に加えられる還元剤の少なくとも50%が溶解されることを意味する。
【0060】
本発明に従う方法の更なる好ましい実施の形態では、少なくとも1種の還元剤はカーボンフリーである(炭素を含まない)。本発明に従えば、「カーボンフリー」は、酸化状態が0の炭素原子が還元剤中に存在しないことを意味する。カーボンフリーな還元剤の有利性は、還元を低い温度、例えば300〜350℃で行うことができることで、これに対して還元剤としての原子状態の炭素は、600℃以上の温度が必要になる。これらの低い温度は、ナノ−結晶性材料を得ることを可能にする。ナノ−結晶性材料は、(還元剤として炭素が使用された場合に必要とされる)高い温度では得ることができない。
【0061】
本発明に従う方法の好ましい実施の形態では、少なくとも1種の還元剤は、ヒドラジン又はこれらの誘導体、ヒドロキシルアミン又はこれらの誘導体、還元糖、アルコール、アスコルビン酸、及び酸化が容易な二重結合を含む化合物、酸化状態が+3のリン原子を含む化合物、及びこれらの混合物から成る群から選ばれる。
【0062】
好ましい実施の形態では、カーボンフリーであり、及び本発明に従う方法の工程(A)で加えられる少なくとも1種の還元剤は、好ましくは、ヒドラジン又はその誘導体、ヒドロキシルアミン又はその誘導体から成る群から選ばれる。ヒドラジンの誘導体の例は、ヒドラジン−ハイドレート、ヒドラジン−サルフェート、ヒドラジン−ジヒドロクロリド等である。ヒドロキシルアミンの誘導体の例は、ヒドロキシルアミン−ヒドロクロリドである。特に好ましいカーボンフリーな還元剤は、ヒドラジン、ヒドラジン−ハイドレート、ヒドロキシルアミン、又はこれらの混合物である。
【0063】
本発明の特に好ましい実施の形態では、本発明に従う方法の工程(A)で加えられる、少なくとも1種の還元剤は、(本発明に従う工程の間、酸化状態が+5の少なくとも1個のリン原子を含む、少なくとも1種の化合物に酸化される)少なくとも1種の還元剤である。(酸化状態が+5の少なくとも1個のリン原子を含む、少なくとも1種の化合物に酸化される)少なくとも1種の還元剤の使用は、この還元剤の酸化生成物がPO43-−アニオンを発生させるという有利性を有する(PO43-−アニオンは、M3がPの場合に、一般式(I)のPO43-−含有化合物を得るために必要とされる)。従って、本願発明の極めて好ましい実施の形態では、M3がPの場合、(本発明に従う工程の間、酸化状態が+5の少なくとも1個のリン原子を含む、少なくとも1種の化合物に酸化される)少なくとも1種の還元剤が使用される。この好ましい実施の形態では、本発明に従う方法の工程(A)で加えられる還元剤と、少なくとも1種のM3−含有化合物とは、少なくとも部分的に同一である。
【0064】
好ましい実施の形態では、酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む少なくとも1種の化合物に酸化される少なくとも1種の還元剤は、カーボンフリーである。本発明に従えば、「カーボンフリー」は、リン−含有還元剤中に炭素原子が存在しないことを意味する。カーボンフリー還元剤の有利性については上述した。
【0065】
好ましい実施の形態では、酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む少なくとも1種の化合物に酸化される、少なくとも1種の還元剤は、H3PO3、(NH4)H2PO3、(NH42HPO3、H3PO2、(NH4)H2PO2、LiH2PO3、Li2HPO3、LiH2PO2、及びこれらの混合物から成る群から選ばれる。特に好ましい実施の形態では、H3PO3、(NH4)H2PO3、(NH42HPO3が使用され、極めて好ましい還元剤は、H3PO3である。
【0066】
酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む少なくとも1種の化合物に酸化される、少なくとも1種の還元剤は、本発明に従う方法の工程(A)で、(それぞれ全反応混合物に対して)通常、0.04〜2.0モルP/L、好ましくは0.1〜1.3モルP/L、特に好ましくは0.15〜1.0モルP/L、例えば0.7モルP/Lの濃度で混合物中に加えられる。
【0067】
本発明に従う方法で使用される還元剤は、好ましくはPO43-に酸化される。酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む少なくとも1種の化合物に酸化される、少なくとも1種の還元剤が反応混合物中に、好ましくは少なくとも等モル量で、特に好ましくは等モル量で加えられた場合、(M3がPである場合には)酸化生成物としてPO43-が、一般式(I)の化合物のフォスフェイトアニオンPO43-を完結させるのに十分に多い量で得られる。この好ましい場合では、追加的なM3−含有化合物を加える必要がなく、特に酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個有する化合物を加える必要がない。
【0068】
本発明の他の好ましい実施の形態では、工程(A)で提供される混合物は、(酸化状態が+5の少なくとも1個のリン原子を含む、少なくとも1種の化合物に酸化される、少なくとも1種の還元剤に加え、)M3−含有化合物として、酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む少なくとも1種の化合物を含む。本発明のこの好ましい実施の形態では、酸化状態が+5の少なくとも1個のリン原子を含む、少なくとも1種の化合物に酸化される、少なくとも1種の還元剤と、M3−含有化合物としての、酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む少なくとも1種の化合物との組合せが、本発明に従う方法の工程(A)で、反応混合物中に加えられる。本発明に従う方法のこの実施の形態で、酸化生成物(oxidizing product)として得られるPO43-は、一般式(I)の化合物のフォスフェイト−アニオンを完結させるのに十分な量で存在する必要がない。この理由は、この実施の形態では、酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む少なくとも1種の化合物もM3−含有化合物として加えられるからである。酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む、少なくとも1種のこの化合物は、一般式(I)の化合物中に組み込まれるべきPO43-の第2の供給源となるものである。
【0069】
工程(A)でM3−含有化合物として任意に加えられる、酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む、好ましい化合物は、H3PO4、(NH4)H2PO4、(NH42HPO4、(NH43HPO4、Li3PO4、LiH2PO4、Li2HPO4及びこれらの混合物から成る群から選ばれる。特に好ましいものは、H3PO4、(NH4)H2PO4、(NH42HPO4、及びこれらの混合物で、極めて好ましくはH3PO4である。
【0070】
酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む少なくとも1種の化合物は、本発明に従う方法の工程(A)で、混合物中に、(それぞれ全反応混合物に対して)通常0.04〜2.0モルP/L、好ましくは0.1〜1.3モルP/L、特に好ましくは0.15〜1.0モルP/Lの濃度で加えられる。
【0071】
本発明に従う方法で、官能基(functionality)を2個有する化合物(例えば、リチウム−カチオン及びPO43-又はPO33-−アニオンを含む化合物)が使用される場合、反応混合物中に導入される化合物の量は、必要な成分の全てが、一般式(I)に従う化合物を得るのに適切な量で、反応混合物中に存在するように調節される。この技術分野の当業者は、これらの量の計算方法を知っている。
【0072】
少なくとも1種の還元剤は、本発明に従う方法の工程(A)での混合物に、好ましくは0.01〜1.0モル/モルM2(好ましくはFe)の濃度で加えられる。
【0073】
極めて好ましい実施の形態では、M1含有化合物として少なくとも1種のリチウム−含有化合物、M2−含有化合物としてFeOOH、任意にM3−含有化合物として酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む、少なくとも1種の化合物、及び酸化状態が+5に酸化されるリン原子を少なくとも1個含む、少なくとも1種の還元剤が、好ましくは基本的に水性の混合物中に、一般式(I)に従う化学量論が得られるように調整された量で加えられる。この技術分野の当業者は、必要な量の計算方法を知っている。本発明の他の好ましい実施の形態では、少なくとも1種のM1−、好ましくはリチウム−、含有化合物は、一般式(I)に従う化学量論的な量よりも≧1質量%、好ましくは≧2質量%、例えば2〜5質量%高い量で加えられる。
【0074】
本発明に従う方法の工程(A)で提供される混合物は、基本的に水性である。本願において、「基本的に」(“essentially”)は、(本発明に従う方法の工程(A)で、基本的に水性の混合物を提供するために使用される)溶媒の50質量%を超える量、好ましくは65質量%を超える量、特に好ましくは80質量%を超える量が水であるという意味を有する。
【0075】
水に加え、水と混和性の更なる溶媒が存在可能である。これらの溶媒の例は、1〜10個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、例えばn−プロパノール、又はイソ−プロパノール、ブタノール、例えばn−ブタノール、イソ−ブタノールである。本発明に従えば、アルコールは、水に溶解可能な還元剤として、及び/又は追加的な溶媒として加えることができる。
【0076】
極めて好ましい実施の形態では、本発明に従う方法の工程(A)で使用される溶媒は(如何なる追加的な溶媒も有しない)水である。溶媒、好ましくは水は、本発明に従う方法の工程(A)で得られる混合物がスラリー、分散物又は好ましくは溶液であるような量で加えられる。
【0077】
工程(A)で、異なる成分が溶媒又は溶媒の混合物に加えられる順序は、決っていない。好ましい実施の形態では、M1−含有化合物が最初に溶媒に加えられ、M2−含有化合物が第2の成分として加えられる。少なくとも1種の還元剤、及び少なくとも1種のM3−含有化合物が後に加えられ、そして次に少なくとも1種の多糖が加えられる。
【0078】
本発明の好ましい実施の形態では、本発明に従う方法の工程(A)から得られた混合物は、M1−含有化合物として少なくとも1種のリチウム−含有化合物、M2−含有化合物としてFeOOH、酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む、少なくとも1種の化合物、M3−含有化合物として好ましくはH3PO4、及び少なくとも1種の水溶性還元剤、好ましくはH3PO3、及びアミロペクチンの、基本的に水性の溶液、又は分散物である。
【0079】
工程(A)は、この技術分野の当業者にとって公知の適切な反応器内で行うことができる。工程(A)は、連続的に、又非連続的に行うことができる。
【0080】
本発明に従う方法の工程(A)が行われる温度は、10〜120℃、好ましくは60〜100℃、特に好ましくは40〜95℃である。100℃を超える温度が使用される場合、基本的に水性の反応混合物は、(水の沸点のために)耐圧反応器内に存在しなければならない。混合物の均質性を増すために、混合は、温度を上昇させて及び任意に(ultrathuraxを使用して)せん断力を与えて行われる。
【0081】
好ましい実施の形態では、混合物は工程(A)で、0.05〜80時間、特に好ましくは0.5〜20時間、攪拌される。攪拌の終わりの混合物のpH−値は、通常、pH11未満、好ましくはpH10未満、例えばpH2.0〜8.0である。
【0082】
本発明に従う方法の工程(A)は、空気下、又は不活性雰囲気下で行うことができる。不活性ガスの例は、窒素、希ガス、例えばヘリウム又はアルゴンである。好ましい実施の形態では、工程(A)は、窒素雰囲気下に行なわれる。
【0083】
Fe2+に還元されるFe3+であることが好ましい、大半のM2−前駆体の還元は、通常、本発明に従う方法の工程(B)及び/又は工程(C)、好ましくは工程(C)で行われる。工程(A)で、混合物に還元剤を加えた直後に還元を開始させることも可能である。基本的に水性の混合物が、更に、上昇した温度、40〜100℃、好ましくは60〜95℃に加熱された後に、還元を開始させることも可能である。
【0084】
工程(B):
本発明に従う方法の工程(B)は、
(B)固体粒子を得るために、工程(A)で提供された混合物を乾燥させる工程、
を含む。
【0085】
工程(B)で、工程(A)から得られた基本的に水性の混合物が、固体化合物に変換される。本発明に従う方法の工程(A)で供給される混合物の乾燥は、この技術分野の当業者にとって公知の全ての方法、及び上述した成分の基本的に水性の混合物の水の除去に適している全ての方法で行うことができる。
【0086】
工程(A)からの混合物を工程(B)で乾燥させるための好ましい方法は、スプレー乾燥、凍結乾燥、又はこれらの混合物である。本発明に従えば、工程(B)での乾燥は、スプレー乾燥のみ、凍結乾燥のみ、又はスプレー乾燥と凍結乾燥の組合せで、(両方の順番で)行うことができる。本発明に従う方法の工程(B)は、好ましくはスプレー乾燥で行われる。工程(B)でのスプレー乾燥で、一般式(I)の少なくとも1種の化合物、好ましくはLiFePO4、及び炭素を含む粒子(該粒子の表面で、炭素が層内に存在することが好ましい)が得られる。
【0087】
通常、スプレー乾燥は、工程(A)で得られた混合物を(微細な滴が得られる)1つ以上の狭いノズルに通し、熱い空気、又は窒素、又は空気、窒素、純酸素、アルゴン、ヘリウム、水素の混合物、好ましくは熱い空気又は熱い窒素、又は空気及び窒素及び任意に酸素の熱い混合物、特に好ましくは熱い空気の流れによって滴を乾燥させることによって行われる。この替わりに、スプレーは回転ディスクによって行うこともできる。好ましい実施の形態では、熱い空気又は窒素の流れは、100〜500℃、特に好ましくは110〜350℃の温度で使用される。スプレー乾燥は、通常、中間的な工程を行うことなく、工程(A)の混合物を使用して直接的に行なわれる。
【0088】
スプレー乾燥によって、通常、平均径が<0.5mm、例えば15〜300μm、好ましくは20〜200μm、特に好ましくは30〜150μmの球状の塊が得られる。平均径が3〜50μmの比較的小さい球状の塊を得るために、工程(B)の好ましい実施の形態では、希釈された溶液を使用することができ、及びこれらの希釈された溶液のスプレー乾燥は、高圧ノズルを使用して行うことができる。溶液の希釈を増すために、通常、追加的な水が加えられる。
【0089】
第2の実施の形態では、本発明の方法の工程(B)は、凍結乾燥によって行うことができる。従ってスプレーされた混合物は、例えば液体窒素内に吹き付けられる。これから得られた球状の粒子、及び塊は、低い温度で真空内で乾燥させることができる。
【0090】
乾燥工程(B)は、乾燥固体を得るために行われる。好ましい実施の形態では、本発明に従う方法の工程(B)での乾燥は、固体内に存在する水の量が50質量%未満、好ましくは35質量%未満、特に好ましくは25質量%未満の固体を得るために行われる。
【0091】
工程(B)の後、直径が3〜300μm、好ましくは6〜200μm、極めて好ましくは6〜150μm、特に好ましくは8〜40μmの球状の粒子で存在することが好ましい、所望の固体が存在する。
【0092】
工程(C):
本発明に従う方法の工程(C)は、
(C)工程(B)から得られた固体粒子を、300〜950℃でか焼する工程、
を含む。
【0093】
本発明に従う方法の工程(C)は、480〜900℃のか焼温度、特に好ましくは490〜850℃のか焼温度、例えば650〜750℃のか焼温度で行われることが好ましい。
【0094】
850℃を超えるか焼温度、例えば950℃が使用された場合、本発明に従う方法によって得られる粒子の少なくとも一部は、少なくとも部分的に望ましくない一次粒子に分解する。従って、好ましい実施の形態では、850℃を超えるか焼温度は避けるべきである。
【0095】
か焼は、通常、不活性雰囲気下に行なわれる。不活性ガスの例は、窒素、微小量の酸素を含む工業用窒素、又は希ガス、例えばヘリウム、及び/又はアルゴンである。好ましい実施の形態では、本発明に従う方法の工程(C)で窒素が使用される。
【0096】
本発明に従う方法の有利な点の一つは、か焼を不活性雰囲気下で行なうことができ、従来技術に従うガス状還元雰囲気下で工程(C)を行う必要がないことである。このことに基づいて、本発明に従う方法は、時間と費用をより節約した態様で行うことができる。還元剤、例えば水素を使用しないので、爆発性のガス状混合物の存在を回避することができる。か焼工程で使用される窒素が酸素をより多い量で含んでいる場合、還元ガス、例えばCO又は水素を酸素含有窒素に加えることができる。
【0097】
本発明に従う方法の工程(C)は、0.1〜8時間、好ましくは0.5〜3時間の時間行われる。工程(C)の好ましい実施の形態では、か焼温度は、0.1〜2時間、極めて好ましくは0.5〜1.5時間、維持され、そして終わりに温度は室温にまで低下される。
【0098】
好ましい実施の形態では、工程(C)から得られた生成物は、基本的に、直径が3〜300μm、好ましくは6〜200μm、極めて好ましくは10〜150μmの粒子から成る。
【0099】
か焼温度は、一般式(I)に従う少なくとも1種の化合物と炭素を含む粒子の表面に相当な影響を与える。か焼の間の低い温度は、通常、高い比表面積をもたらす。か焼の間の高い温度は、通常、低い比表面積をもたらす。
【0100】
本発明に従う方法の工程(C)から得られた粒子は、通常、0.01〜50m2/gのBET比表面積、好ましくは0.1〜40m2/gのBET比表面積を有する。本発明は更に、本発明に従う方法によって得ることができる、上述した粒子に関する。これらの粒子は、上述した特性を有する。
【0101】
本発明に従う方法の工程(C)は、連続的に又は非連続的に行うことができる。好ましい実施の形態では、本発明に従う方法は、連続的に行なわれる。工程(C)のための適切な装置は、この技術分野の当業者にとって公知である。非連続的、又は連続的なか焼のための一例は、回転炉である。連続的なか焼の場合、回転炉内の滞留時間は、炉の傾斜と回転速度に基づく。この技術分野の当業者は、回転炉内で適切な滞留時間を調整する方法を知っている。好ましい実施の形態では、本発明に従う方法の工程(C)でか焼される固体は、か焼の間、例えば流動床反応器内、又は回転炉内で動作される。か焼の間、個体は攪拌することもできる。回転炉は異なる温度領域を含むことができる。例えば、第1の領域では、スプレー乾燥した粉を乾燥する(drain)ために、温度は低い温度に調節される。これに対し、他の領域では、より高いか焼温度が存在する。粉を加熱する速度は、異なる領域の温度と(炉内で粉が動かされる)速度に依存する。
【0102】
本発明に従う方法の工程(C)は、通常、好ましくは所望の生成物への完全な変換を得るのに適切な圧力で行なわれる。好ましい実施の形態では、工程(C)は、酸素が外側から反応器に浸入することを防止するために、大気圧よりも僅かに高い圧力で行われる。この僅かに増加した大気圧は、この工程でか焼される固体化合物の上を流れる、少なくとも1種の不活性ガスによってなされることが好ましい。
【0103】
本発明に従う第2の方法は、上記に定義された一般式(I)に従う、少なくとも1種の化合物、及び炭素を含む粒子を製造するために行われる方法であって、以下の工程:
(D)上記に定義した一般式(I)に従う少なくとも1種の化合物を、炭素前駆体として分子量Mが少なくとも50000g/molのグルコースを含む少なくとも1種の多糖の水溶液と混合する工程、
(E)固体粒子を得るために、工程(A)で提供された混合物を乾燥させる工程、及び
(F)工程(E)で得られた固体粒子を300〜950℃の温度でか焼する工程、
を含む粒子を製造するために行われる方法である。
【0104】
本発明に従う第2の方法は、上述した一般式(I)に従う少なくとも1種の化合物及び炭素を含む粒子をもたらす。通常、本発明に従う第2の方法による粒子中に、炭素は非粒子状の形態(nonparticular form)で存在する。好ましい実施の形態では、炭素は、本発明に従う粒子の表面に主として存在する。特に好ましい炭素は、表面において、粒子の直径の20%以下、好ましくは10%以下の厚さを有する層内に存在する。好ましい実施の形態では、80%以下、好ましくは90%以下、例えば95%以下の(粒子中に存在する)炭素が、粒子の表面において、上述した層内に存在する。
【0105】
本発明に従う第2の方法によって製造される粒子内には、炭素は、0.5〜10質量%、好ましくは1〜6質量%、特に好ましくは3〜5質量%の量で存在する。
【0106】
特定的には、本発明に従う第2の方法によって製造される粒子は、一般式(I)
1a2b3conf (I)
(但し、M1、M2、M3、O、N、F、a、b、c、o、n及びfが、以下の意味を有する:
1が、少なくとも1種のアルカリ金属であり、
2が、少なくとも1種の遷移金属であり、
3が、S、Se、P、As、Si、Ge及び/又はBから選ばれる、少なくとも1種の非−金属であり、
Oが、酸素であり、
Nが、窒素であり、
Fが、フッ素であり、
aが、0.8〜4.2であり、
bが、0.1〜1.9であり、
cが、0.8〜2.2であり、
oが、1.0〜8.4であり、
nが、0〜2.0であり、及び
fが、0〜2.0であり、
a、b、c、o、n及びfが、一般式(I)に従う化合物の電気的中性を守るように選ばれる)
に従う少なくとも1種の化合物を含む。
【0107】
一般式(I)中で、M1とM2は金属、及びM3は上述した群から選ばれる非金属である。酸素(O)の存在に加え、一般式(I)に従う化合物は、好ましくはサルフェート、フォスフェイト、ヒ酸塩、シリケート、ジャーミネイト及び/又はボレートである。
【0108】
1は、少なくとも1種のアルカリ金属、例えばLi、Na、K、Rb、Cs及びこれらの混合物から成る群から選ばれるもの、好ましくはLi、Na及び/又はKである。
【0109】
2は、少なくとも1種の遷移金属、例えばFe、Mn、K、Ni、Co及びこれらの混合物から成る群から選ばれるもの、好ましくはFe、Mn、Ni及び/又はCoである。
【0110】
3は、S、Se、P、As、Si、Ge及び/又はBから選ばれる、好ましくはP、Si、Sから成る群から選ばれる、少なくとも1種の非−金属である。
【0111】
本方法の好ましい実施の形態では、一般式(I)中で、M1、M2、M3、O、a、b、c、o、n及びfが、以下の意味:
1が、Li、及び任意に少なくとも1種の更なるアルカリ金属であり、
2が、Fe、Mn、Ni及び/又はCo、及び任意に少なくとも1種の更なる遷移金属であり、
3が、P及び任意に、Si及び/又はSから選ばれる、少なくとも1種の更なる非−金属であり、
Oが、酸素であり、
aが、0.8〜1.9、特に好ましくは0.9〜1.1、例えば1.0であり、
bが、0.8〜1.9、特に好ましくは0.9〜1.1、例えば1.0であり、
cが、0.8〜1.9、特に好ましくは0.9〜1.1、例えば1.0であり、
oが、3.0〜5.0、特に好ましくは3.5〜4.5、例えば4.0であり、及び
n、fが、0である、
を有する。
【0112】
この好ましい実施の形態では、n及びfが0であり、これは一般式(I)に従う化合物中に窒素(N)及びフッ素(F)が存在しないことを意味する。
【0113】
例えば、極めて好ましい実施の形態では、(一般式(I)の中性に荷電された化合物、例えばFeが+2の酸化状態であるLiFePO4を有するために)M1がLiであり、M2がFe、Mn、Ni及び/又はCoであり、M3が、Pであり、及び少なくとも1種の更なるアルカリ金属、少なくとも1種の更なる遷移金属、及びSi及び/又はSから選ばれる、少なくとも1種の更なる−金属が存在しない。従って、極めて好ましい実施の形態では、一般式(I)に従う化合物はLiFePO4である。
【0114】
更なる好ましい実施の形態では、M1例えばLiに加え、少なくとも1種の更なるアルカリ金属、例えばNaが、M1及び少なくとも1種の更なるアルカリ金属の合計に対して10モル%以下の量で存在する。他の好ましい実施の液体では、M2(例えばFe)に加え、少なくとも1種の更なる遷移金属、例えばMnが、M2と少なくとも1種の更なる遷移金属の合計に対して、30モル%以下の量で存在する。他の好ましい実施の形態では、M3(例えばP)に加え、Si及び/又はSから選ばれる、少なくとも1種の更なる非金属が、M3と少なくとも1種の更なる非金属の合計に対して10モル%以下の量で存在する。
【0115】
非常に好ましい実施の形態では、本発明に従う第2の方法で、一般式(I)に従う化合物はLiFePO4又はLiMnPO4である。
【0116】
工程(D):
本発明に従う第2の方法の工程(D)は、
(D)上記に定義した一般式(I)に従う少なくとも1種の化合物を、炭素前駆体として分子量Mが少なくとも50000g/molのグルコースを含む少なくとも1種の多糖の水溶液と混合する工程、
を含む。
【0117】
本発明に従うこの方法の工程(D)で使用される、一般式(I)に従う少なくとも1種の化合物は、この技術分野の当業者にとって公知の如何なる方法によってでも得ることができる。特に、工程(D)で使用される固体粒子が、それぞれのカチオン及びPO43-アニオン又はその前駆体を含む反応によって(任意に少なくとも1種の還元剤の存在下に)得られる。
【0118】
工程(D)での混合は、この技術分野の当業者にとって公知の、適切な如何なる方法によってでも、例えば攪拌タンク内で行うことができる。好ましい実施の形態では、工程(D)は、上述した工程(A)に従って行われる。
【0119】
好ましい実施の形態では、一般式(I)に従う少なくとも1種の化合物の、基本的に水性の溶液、分散物、又はスラリーが製造され、そして炭素前駆体としての、分子量Mが少なくとも50000g/モルのグルコースを含む少なくとも1種の多糖の水溶液と混合される。
【0120】
工程(E):
本発明に従う第2の方法の工程(E)は、
固体粒子を得るために、工程(D)で得られた混合物を乾燥させる工程、
を含む。
【0121】
工程(E)は、当業者にとって公知の、適切な如何なる方法によってでも、例えばスプレー乾燥によって行うことができる。好ましい実施の形態では、工程(E)は、上述した工程(B)に従い行われる。
【0122】
工程(F):
本発明の第2の方法の工程(F)は、
(F)工程(E)で得られた固体粒子を300〜950℃の温度でか焼する工程、
を含む。
【0123】
工程(F)は、この技術分野の当業者にとって公知の、適切な如何なる方法によってでも行うことができる。好ましい実施の形態では、工程(F)は、上述した工程(C)に従い行われる。
【0124】
本発明に従って製造される粒子から製造することができる電極の組成に依存して、及び得られるリチウム−イオン電池の所望の電気化学的特性に依存して、本発明に従い、工程(B)又は(E)が、工程(D)又は(F)の前に(塊をより小さく破壊し、そして必要とされるサイズを有するより緻密な粒子、又は一次粒子にするために)機械的に処理されるならば、及び/又は工程(C)又は(F) から得られた固体化合物が、工程(D)又は(F)の後に機械的に処理されるならば、これらのことが有利であって良い。適切なミルは、この技術分野の当業者にとって公知である。例は、摩耗が非常に少ないジェットミルで、これは、窒素及び/又は空気の使用下に行うことが好ましい。か焼された生成物をミルするために、(例えばビードミルを使用することによる)湿潤ミル法が有利であっても良い。更に適切な装置は、圧縮機及び/又はローリングである。
【0125】
本発明は更に、本発明に従う方法によって製造可能な、好ましくは形態が球状の粒子に関する。
【0126】
形態が球状であることが好ましいこれらの粒子は、上述したように、直径及び気孔率等について特徴を有する。これらの粒子は、好ましくは結晶性の一次粒子を有し、該一次粒子は、基本的に、LiFeO4と炭素の結晶構造を示す。結晶性を検知する分析方法は、当業者にとって公知である(例えばXRD)。本発明に従う材料の代表的な有用容量は、それぞれ34A/kgで、通常、120〜160Ah/kg、好ましくは130〜158Ah/kg、極めて好ましくは132〜155Ah/kgである。
【0127】
本発明に従う材料の代表的なタップ密度は、0.81〜1.30g/cm3、好ましくは0.82〜1.10g/cm3、最も好ましくは0.83〜1.05g/cm3である。
【0128】
本発明に従う方法によって製造可能な、一般式(I)に従う組成を有するこれらの粒子は、従来技術に従い製造された化合物と比較して、改良された結晶性を示す。更に、得られた粒子のサイズの分布は、従来技術と比較して狭い。得られた粒子の結晶性は改良されており、そして得られた固体は成分の分布が改良されている。更に、本発明は、800℃という通常使用される高いか焼温度を低減可能とし、そして更に、炭素を含む、一般式(I)例えばリチウム−鉄−フォスフェイトの単相化合物を製造可能とする(炭素は、粒子の表面近傍に存在する層中に存在することが好ましい)。か焼温度の低減は、通常、より微細に分割(粉化)され、晶子のサイズ分布が非常に狭い材料をもたらす(該材料は、Li−イオン電池の充電と放電で、改良されたLi−イオン拡散性を示す)。Li−イオン拡散性を改良することによって、粉特性、及び追加的にLi−イオン電池の容量を増すことができる。
【0129】
本発明は更に、上記に定義した一般式(I)に従う、少なくとも1種の化合物、及び炭素を含む粒子(炭素は、非粒子状の状態で粒子内に存在し、及び粒子の表面に存在する)に関する。
【0130】
好ましくは、表面で、粒子の直径の20%以下、好ましくは10%以下の厚さの層内に炭素が存在する。好ましい実施の形態では、粒子内に存在する80%以下、特に好ましくは90%以下、例えば95%以下の炭素が、粒子の表面において、上述した層中に存在する。
【0131】
本発明に従う粒子は、リチウム−イオン電池又は電気化学電池のカソードを製造するために使用するのに特に適切である。従って、本発明は、本発明に従う方法によって得ることができる/製造することができる粒子を、リチウム−イオン電池、又は電気化学電池を製造するために使用する方法にも関する。
【0132】
本発明は更に、本発明に従う方法によって得ることができる/製造することができる少なくとも1種の粒子を含む、リチウム−イオン電池のためのカソードに関する。上述したカソードを得るために、本発明に従う粒子は、例えばWO2004/082047に記載された、少なくとも1種の導電性材料と混合される。
【0133】
本発明は、上述した粒子を含む、リチウム−イオン電池のためのカソードにも関する。
【0134】
本発明に従う粒子、及び上述した少なくとも1種の導電性材料を使用したカソードを製造するために、好ましい実施の形態では、以下のバインダーが使用される:
ポリエチレンオキシド(PEO)、セルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル−メチルメタクリレート、スチレン−ブタジエン−コポリマー、テトラフルオロエチレン−ヘクフルオロプロピレン−コポリマー、ポリビニリデンフルオリド−ヘキサフルオロプロピレン−コポリマー(PVdF−HFP)、ペルフルオロアルキル−ビニルエーテル−コポリマー、ビニリデンフルオリド−クロロトリフルオロエチレン−コポリマー、エチレン−クロロフルオロエチレン−コポリマー、エチレン−アクリル酸−コポリマー(ナトリウムイオンを含む、及び含まない)、エチレン−メタクリル酸(ナトリウムイオンを含む、及び含まない)、ポリアミド及びポリイソブテン。
【0135】
バインダーは通常、各場合において、全カソード材料に対して、1〜10質量%、好ましくは2〜8質量%、特に好ましくは3〜7質量%の量で加えられる。
【0136】
以下に実施例を使用して、本発明を更に説明する。
【0137】
実施例:
比較例1:炭素前駆体としてのサッカロース
LiOH+FeOOH+H3PO3+H3PO4+サッカロースからのLiFePO4
外部から加熱可能な10L−ガラス−反応器内に、6000mLの水を90℃でN2流下に配置した。N2流カバーを更なる処理の間、維持した。攪拌下に、174.97gのLiOH・H2O(57.49%LiOH、4.2モルLi、Chemetall GmbH、36679 Langenheim)を加え、そして溶解させた。363.23gのα−FeOOH(61.5%Fe、4.0モルFe、CATHAY PIGMENTS(USA)Inc.,4901 Evans Ave.,Valparaiso,IN46383,USA)を加え、黄色の懸濁物が得られた。次に、167.34g(2Mol)のH3PO3(98%、Fa.Acros Organics,2440Geel/Belgium)及び230.58gのH3PO4(85%、2MolP、Fa.Bernd Kraft,47167Duisburg)をゆっくりと加えた。この黄色の懸濁物に、115.41gのサッカロースを加えた。次に、得られた懸濁物を2時間、90℃で攪拌した。懸濁物のpHは、5.7であった。
【0138】
次に、この懸濁物を、スプレー乾燥機(タイプMinor MM,Niro,Danmark)(入口温度=330℃、出口温度=103〜108℃)内で、窒素下にスプレー乾燥させた。
【0139】
次にスプレー乾燥から得られた粉を、実験室回転炉(BASF SE)内の、連続的に回転する(7rpm)1L−石英ガラスバブルに、流れる窒素(15NL/h)下に加え、そして300〜750℃に1時間で加熱し、そしてこの温度で、1時間維持した。次にか焼した粉を流れるN2下に、室温に冷却した。
【0140】
比較例2:炭素前駆体としてのサッカロース
LiOH+FeOOH+H3PO3+H3PO4+サッカロースからのLiFePO4
外部から加熱可能な10L−ガラス−反応器内に、6000mLの水を90℃でN2流下に配置した。N2流カバーを更なる処理の間、維持した。攪拌下に、174.97gのLiOH・H2O(57.49%LiOH、4.2モルLi、Chemetall GmbH、36679 Langenheim)を加え、そして溶解させた。363.22gのα−FeOOH(61.5%Fe、4.0モルFe、CATHAY PIGMENTS(USA)Inc.,4901 Evans Ave.,Valparaiso,IN46383,USA)を加え、黄色の懸濁物が得られた。次に、167.34g(2Mol)のH3PO3(98%、Fa.Acros Organics,2440Geel/Belgium)及び230.58gのH3PO4(85%、2MolP、Fa.Bernd Kraft,47167Duisburg)をゆっくりと加えた。この黄色の懸濁物に、180.33gのサッカロースを加えた。次に、得られた懸濁物を2時間、90℃で攪拌した。懸濁物のpHは、5.7であった。
【0141】
次に、この懸濁物を、スプレー乾燥機(タイプMinor MM,Niro,Danmark)(入口温度=330℃、出口温度=103〜108℃)内で、窒素下にスプレー乾燥させた。
【0142】
次にスプレー乾燥から得られた粉を、実験室回転炉(BASF SE)内の、連続的に回転スル(7rpm)1L−石英ガラスバブルに、流れる窒素(15NL/h)下に加え、そして300〜750℃に1時間で加熱し、そしてこの温度で、1時間維持した。次にか焼した粉を流れるN2下に、室温に冷却した。
【0143】
比較例3:炭素前駆体としてのラクトース
LiOH+FeOOH+H3PO3+H3PO4+ラクトースからのLiFePO4
外部から加熱可能な10L−ガラス−反応器内に、6000mLの水を90℃でN2流下に配置した。N2流カバーを更なる処理の間、維持した。攪拌下に、177.72gのLiOH・H2O(56.6%LiOH、4.2モルLi、Chemetall GmbH、36679 Langenheim)を加え、そして溶解させた。354.58gのα−FeOOH(63%Fe、4.0モルFe、CATHAY PIGMENTS(USA)Inc.,4901 Evans Ave.,Valparaiso,IN46383,USA)を加え、黄色の懸濁物が得られた。次に、165.49g(2Mol)のH3PO3(99.1%、Fa.Acros Organics,2440Geel/Belgium)及び230.58gのH3PO4(85%、2MolP、Fa.Bernd Kraft,47167Duisburg)をゆっくりと加えた。この黄色の懸濁物に、136.85gのラクトースを加えた。次に、得られた懸濁物を2時間、90℃で攪拌した。懸濁物のpHは、5.4であった。
【0144】
次に、この懸濁物を、スプレー乾燥機(タイプMinor MM,Niro,Danmark)(入口温度=330℃、出口温度=103〜108℃)内で、窒素下にスプレー乾燥させた。
【0145】
次にスプレー乾燥から得られた粉を、実験室回転炉(BASF SE)内の、連続的に回転する(7rpm)1L−石英ガラスバブルに、流れる窒素(15NL/h)下に加え、そして700〜850℃に1時間で加熱し、そしてこの温度で、1時間維持した。次にか焼した粉を流れるN2下に、室温に冷却した。
【0146】
実施例1:30質量%のアミロペクチン及び70質量%のサッカロース
LiOH+FeOOH+H3PO3+H3PO4+アミロペクチン+サッカロースからのLiFePO4
外部から加熱可能な10L−ガラス−反応器内に、6000mLの水を90℃でN2流下に配置した。N2流カバーを更なる処理の間、維持した。攪拌下に、177.72gのLiOH・H2O(56.6%LiOH、4.2モルLi、Chemetall GmbH、36679 Langenheim)を加え、そして溶解させた。354.58gのα−FeOOH(63%Fe、4.0モルFe、CATHAY PIGMENTS(USA)Inc.,4901 Evans Ave.,Valparaiso,IN46383,USA)を加え、黄色の懸濁物が得られた。次に、165.49g(2Mol)のH3PO3(98%、Fa.Acros Organics,2440Geel/Belgium)及び230.58gのH3PO4(85%、2MolP、Fa.Bernd Kraft,47167Duisburg)をゆっくりと加えた。この黄色の懸濁物に、230.58gのアミロペクチン(Prevalent EH92−527−1、BASF SE)、及び106.80gのサックロースを加えた。次に、得られた懸濁物を2時間、90℃で攪拌した。懸濁物のpHは、5.4であった。
【0147】
次に、この懸濁物を、スプレー乾燥機(タイプMinor MM,Niro,Danmark)(入口温度=330℃、出口温度=103〜108℃)内で、窒素下にスプレー乾燥させた。
【0148】
次にスプレー乾燥から得られた粉を、実験室回転炉(BASF SE)内の、連続的に回転する(7rpm)1L−石英ガラスバブルに、流れる窒素(15NL/h)下に加え、そして700〜850℃に1時間で加熱し、そしてこの温度で、1時間維持した。次にか焼した粉を流れるN2下に、室温に冷却した。
【0149】
実施例2:50質量%のアミロペクチン及び50質量%のサッカロース
LiOH+FeOOH+H3PO3+H3PO4+アミロペクチン+サッカロースからのLiFePO4
外部から加熱可能な10L−ガラス−反応器内に、6000mLの水を90℃でN2流下に配置した。N2流カバーを更なる処理の間、維持した。攪拌下に、168.18gのLiOH・H2O(58.1%LiOH、4.08モルLi、Chemetall GmbH、36679 Langenheim)を加え、そして溶解させた。354.58gのα−FeOOH(63%Fe、4.0モルFe、CATHAY PIGMENTS(USA)Inc.,4901 Evans Ave.,Valparaiso,IN46383,USA)を加え、黄色の懸濁物が得られた。次に、165.49g(2Mol)のH3PO3(98%、Fa.Acros Organics,2440Geel/Belgium)及び230.58gのH3PO4(85%、2MolP、Fa.Bernd Kraft,47167Duisburg)をゆっくりと加えた。この黄色の懸濁物に、70.00gのアミロペクチン(Prevalent EH92−527−1、BASF SE)、及び65.00gのサックロースを加えた。次に、得られた懸濁物を2時間、90℃で攪拌した。懸濁物のpHは、5.4であった。
【0150】
次に、この懸濁物を、スプレー乾燥機(タイプMinor MM,Niro,Danmark)(入口温度=330℃、出口温度=103〜108℃)内で、窒素下にスプレー乾燥させた。
【0151】
次にスプレー乾燥から得られた粉を、実験室回転炉(BASF SE)内の、連続的に回転する(7rpm)1L−石英ガラスバブルに、流れる窒素(15NL/h)下に加え、そして700〜850℃に1時間で加熱し、そしてこの温度で、1時間維持した。次にか焼した粉を流れるN2下に、室温に冷却した。
【0152】
実施例3:80質量%のアミロペクチン及び20質量%のサッカロース
LiOH+FeOOH+H3PO3+H3PO4+アミロペクチン+サッカロースからのLiFePO4
外部から加熱可能な10L−ガラス−反応器内に、6000mLの水を90℃でN2流下に配置した。N2流カバーを更なる処理の間、維持した。攪拌下に、168.18gのLiOH・H2O(58.1%LiOH、4.08モルLi、Chemetall GmbH、36679 Langenheim)を加え、そして溶解させた。354.58gのα−FeOOH(63%Fe、4.0モルFe、CATHAY PIGMENTS(USA)Inc.,4901 Evans Ave.,Valparaiso,IN46383,USA)を加え、黄色の懸濁物が得られた。次に、165.49g(2Mol)のH3PO3(98%、Fa.Acros Organics,2440Geel/Belgium)及び230.58gのH3PO4(85%、2MolP、Fa.Bernd Kraft,47167Duisburg)をゆっくりと加えた。この黄色の懸濁物に、112.00gのアミロペクチン(Prevalent EH92−527−1、BASF SE)、及び51.20gのサックロースを加えた。次に、得られた懸濁物を2時間、90℃で攪拌した。懸濁物のpHは、5.4であった。
【0153】
次に、この懸濁物を、スプレー乾燥機(タイプMinor MM,Niro,Danmark)(入口温度=330℃、出口温度=103〜108℃)内で、窒素下にスプレー乾燥させた。
【0154】
次にスプレー乾燥から得られた粉を、実験室回転炉(BASF SE)内の、連続的に回転する(7rpm)1L−石英ガラスバブルに、流れる窒素(15NL/h)下に加え、そして700〜850℃に1時間で加熱し、そしてこの温度で、1時間維持した。次にか焼した粉を流れるN2下に、室温に冷却した。
【0155】
実施例4:100質量%のアミロペクチン
LiOH+FeOOH+H3PO3+H3PO4+アミロペクチンからのLiFePO4
外部から加熱可能な10L−ガラス−反応器内に、6000mLの水を90℃でN2流下に配置した。N2流カバーを更なる処理の間、維持した。攪拌下に、174.97gのLiOH・H2O(57.49%LiOH、4.2モルLi、Chemetall GmbH、36679 Langenheim)を加え、そして溶解させた。363.23gのα−FeOOH(61.5%Fe、4.0モルFe、CATHAY PIGMENTS(USA)Inc.,4901 Evans Ave.,Valparaiso,IN46383,USA)を加え、黄色の懸濁物が得られた。次に、167.34g(2Mol)のH3PO3(98%、Fa.Acros Organics,2440Geel/Belgium)及び230.58gのH3PO4(85%、2MolP、Fa.Bernd Kraft,47167Duisburg)をゆっくりと加えた。この黄色の懸濁物に、180.33gのアミロペクチン(Prevalent EH92−527−1、BASF SE)を加えた。次に、得られた懸濁物を2時間、90℃で攪拌した。懸濁物のpHは、5.6であった。
【0156】
次に、この黄色物を、スプレー乾燥機(タイプMinor MM,Niro,Danmark)(入口温度=330℃、出口温度=103〜108℃)内で、窒素下にスプレー乾燥させた。
【0157】
次にスプレー乾燥から得られた粉を、実験室回転炉(BASF SE)内の、連続的に回転する(7rpm)1L−石英ガラスバブルに、流れる窒素(15NL/h)下に加え、そして300〜750℃に1時間で加熱し、そしてこの温度で、1時間維持し、次に流れるN2下に、室温に冷却した。
【0158】
上述した実施例及び比較例から得られた材料を、存在する炭素量、タップ密度、及び容量について分析した。炭素、タップ密度、及び容量を、当業者にとって公知の方法で、取得した。結果を表1に示す。
【0159】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
1a2b3conf (I)
(但し、M1、M2、M3、O、N、F、a、b、c、o、n及びfが、以下の意味を有する:
1が、少なくとも1種のアルカリ金属であり、
2が、酸化状態が+2の、少なくとも1種の遷移金属であり、
3が、S、Se、P、As、Si、Ge及び/又はBから選ばれる、少なくとも1種の非−金属であり、
Oが、酸素であり、
Nが、窒素であり、
Fが、フッ素であり、
aが、0.8〜4.2であり、
bが、0.8〜1.9であり、
cが、0.8〜2.2であり、
oが、1.0〜8.4であり、
nが、0〜2.0であり、及び
fが、0〜2.0であり、
a、b、c、o、n及びfが、一般式(I)に従う化合物の電気的中性を守るように選ばれる)
に従う少なくとも1種の化合物、及び
炭素を含む粒子を製造するための方法であって、少なくとも以下の工程:
(A)M1を含む少なくとも1種の化合物、酸化状態が少なくとも部分的に+2よりも高いM2を含む少なくとも1種の化合物、任意にM3を含む少なくとも1種の化合物、存在する場合には、Nを含む少なくとも1種の化合物、及び/又は存在する場合には、Fを含む少なくとも1種の化合物、炭素前駆体として、分子量Mが少なくとも50000g/molのグルコースを含む少なくとも1種の多糖、及び少なくとも1種の還元剤を含む、基本的に水性の混合物を準備する工程、
(B)固体粒子を得るために、工程(A)で供給された混合物を乾燥させる工程、
(C)工程(B)で得られた固体粒子を、300〜950℃の温度でか焼する工程、
を含む粒子を製造するための方法。
【請求項2】
請求項1に定義された一般式(I)に従う、少なくとも1種の化合物、及び炭素を含む粒子を製造するための方法であって、少なくとも以下の工程:
(D)前記一般式(I)に従う少なくとも1種の化合物を、炭素前駆体として分子量Mが少なくとも50000g/molのグルコースを含む少なくとも1種の多糖の水溶液と混合する工程、
(E)固体粒子を得るために、工程(A)で提供された混合物を乾燥させる工程、及び
(F)工程(E)で得られた固体粒子を300〜950℃の温度でか焼する工程、
を含む粒子を製造するための方法。
【請求項3】
一般式(I)中で、M1、M2、M3、O、a、b、c、及びoが、以下の意味:
1が、Li、及び任意に少なくとも1種の更なるアルカリ金属であり、
2が、Fe、Mn、Ni及び/又はCo、及び任意に少なくとも1種の更なる遷移金属であり、
3が、P及び任意に、Si及び/又はSから選ばれる、少なくとも1種の更なる非−金属であり、
Oが、酸素であり、
aが、0.8〜1.9であり、
bが、0.8〜1.9であり、
cが、0.8〜1.9であり、
oが、3.0〜5.0であり、及び
n、fが、0である、
を有することを特徴とする請求項1又は2の何れかに記載の方法。
【請求項4】
一般式(I)に従う化合物が、LiFePO4であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1種の還元剤が、水溶性であることを特徴とする請求項1、3又は4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1種の還元剤が、ヒドラジン又はこの誘導体、ヒドロキシルアミン、又はこの誘導体、還元糖、アルコール、アスコルビン酸、及び酸化が容易な二重結合を含む化合物、酸化状態が+3のリン原子を含む化合物、及びこれらの混合物から成る群から選ばれることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程(B)での乾燥が、スプレー−乾燥によって行われることを特徴とする請求項1又は3〜6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1種の単−及び/又は二糖が、工程(A)に追加的に加えられることを特徴とする請求項1又は3〜7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか1項に記載の方法によって得ることができる粒子。
【請求項10】
請求項1に定義された一般式(I)に従う、少なくとも1種の化合物、及び炭素を含み、該炭素が、粒子中に非−粒子状の状態で、及び粒子の表面に存在することを特徴とする粒子。
【請求項11】
リチウム−イオン電池、又は電気化学電池のカソードを製造するために、請求項9又は10の何れかに記載の粒子を使用する方法。
【請求項12】
請求項9又は10の何れかに記載の少なくとも1種の粒子を含む、リチウム−イオン電池用のカソード。

【公表番号】特表2012−530672(P2012−530672A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516703(P2012−516703)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【国際出願番号】PCT/EP2010/058868
【国際公開番号】WO2010/149681
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】