MCL−1安定性に応答するユビキチン特異的プロテアーゼおよびその使用
癌処置用薬剤のスクリーニング手段としての、USP13、USP26、USP38、USP42またはUSP46からなる群から選択されるポリペプチドの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌処置用薬剤のスクリーニング手段としての、USP13、USP26、USP38、USP42またはUSP46からなる群から選択されるポリペプチドの使用に関する。
【0002】
そもそも分化している骨髄系細胞中に同定された骨髄細胞白血病−1(Mcl−1)は、抗アポトーシスBcl−2ファミリーメンバー(Bcl−2、Bcl−XL、Bcl−W、A1)に属する。Mcl−1は、様々な死の刺激、特にDNA損傷により誘導されるアポトーシスの初期の段階で作用し、主要な生存因子としての役割を果たす。より正確には、Mcl−1は、ミトコンドリアからのシトクロムCの放出を導く事象のカスケードに干渉することにより細胞の生存を促進するが、短い半減期のタンパク質である。Mcl−1を制御する過程は、このように、癌のような病理学的状態において決定的に重要である。
【0003】
Mcl−1の分解はプロテアソーム阻害剤により阻止でき、アポトーシスにおけるユビキチン−プロテアソーム経路への役割を示唆する。
【0004】
ユビキチン−仲介性の分解は、E1−活性化酵素、E2−結合酵素、および基質特異性を決定するE3ユビキチンリガーゼを含む一連の酵素反応を介してユビキチン部分でタンパク質がタグ付けされる、固く制御された過程である。タンパク質は、その後、プロテアソームにより分解される。逆の過程も起こり、ユビキチン鎖の除去、つまり脱ユビキチン化に至る。この後者の反応は、部分的に、ユビキチン特異的プロテアーゼ(USP)と呼ばれる酵素により実施され、通常状態の基質の回復となる。
【0005】
ユビキチン特異的プロテアーゼ(USP)は、脱ユビキチン化酵素(DUB)の巨大なファミリーに属する。ヒトゲノムは、プロテアーゼのスーパーファミリーに属する約95の推定上の脱ユビキチン化酵素(DUB)をコードする。これらの酵素は、5つのサブファミリーに分割され、それらの中で最もよく知られたサブクラスは、USP(ユビキチン特異的プロテアーゼ)およびUCH(ユビキチンC−末端ヒドラーゼ)である。60のヒトUSPタンパク質は、システインプロテアーゼであり、その触媒ドメインは、「システインボックス」および「ヒスチジンボックス」を含む。USPの主な機能は、特異的なタンパク質基質からのユビキチンの除去である。
【0006】
プロテアソーム阻害剤での臨床上の成功は、E3またはUSPのようなユビキチン−プロテアソーム経路の他のステップを調節することが、治療上より特異的でより効率的に成功するであろうという概念を強化する。
【0007】
Mcl−1のポリ−ユビキチン化に必要で十分な、Mule/ARF−BP1/UreB1と命名されたE3リガーゼの同定も、出版物に報告された。興味深いことに、Muleの発現のダウンレギュレーションは、Mcl−1の安定化および蓄積を生じ、細胞が、遺伝毒性の薬剤による致死に対し、より抵抗性となるように導く。
【0008】
本発明に開示される結果は、Mcl−1に特異的なUSPが存在し、それ故アポトーシスを制御する細胞性Mcl−1の安定化に作用するであろうことを示唆する。これらのUSPの阻害は、プロテアソームによるMcl−1の分解の増加を導き、アポトーシスの開始を促進するであろう。この観察は、小分子化合物でMcl−1制御USPタンパク質を阻害することにより、Mcl−1を標的とする新規の方法を提供する。
【0009】
本発明の第一の目的は、
癌処置用薬剤のスクリーニング手段としての、
a)USP13、USP26、USP38、USP42またはUSP46からなるポリペプチド;
b)ポリペプチドUSP13、USP26、USP38、USP42またはUSP46の、脱ユビキチン化活性を示す機能的フラグメント;
c)USP13、USP26、USP38、USP42またはUSP46からなり、脱ユビキチン化活性を示すポリペプチドと85%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド;
からなる群から選択されるポリペプチドの使用である。
【0010】
本発明に開示されるMcl−1制御USPは、USP13(GI:4507848)、USP26(GI:13994267)、USP38(GI:31559774)、USP42(GI:79750943)、USP46(GI:31377708)であり、
前駆融合タンパク質の一部分としてのユビキチンにつながるペプチド結合を切断して、フリーのユビキチン部分を遊離させるか、またはタンパク質にユビキチンを結合させる(翻訳後)結合を切断できる。
【0011】
特定の態様では、本発明は、癌処置用薬剤のスクリーニング手段としての、USP46、その機能的フラグメント、またはその実質的に相同な配列の使用を提供する。
【0012】
USP46は、UCHドメイン、脱ユビキチン化機能に関与する触媒ドメインを含む未知の機能の小さな366アミノ酸長のタンパク質である。USP46は、ヒト組織に広く分布することおよびインビトロで活性であることが発見された。近年、隣接遺伝子としてUSP46を含むクロモソーム4q12上のアンプリコンが、神経膠芽腫において記載された。USP46遺伝子増幅は、いくつかの神経膠芽腫および神経膠芽腫細胞培養物中に検出された。USP46配列分析は、タンパク質配列で88%の同一性および核酸配列で76%の同一性を示す、ヒトパラログUSP12=UBH1(NP_872294)を同定した。さらに、USP46およびUSP12の触媒ドメインは、タンパク質配列で100%の同一性を示す。生物化学アッセイは、ヒトUBH1と98.3%のアミノ酸同一性を有するマウスUBH1が脱ユビキチン化酵素活性を示すことを明らかにした。
【0013】
「機能的フラグメント」は、ユビキチンとのペプチド結合を加水分解する能力のような一つ以上のタンパク質の生物学的活性を保持するか、または例えば、触媒部位、USPの特徴、システインもしくはヒスチジンユビキチン認識部位を含むドメイン、ユビキチン結合部位、またはプロテアーゼの他の機能を実施するために重要な部位のようなドメインまたはモチーフを含む。
【0014】
用語「相同性」および「実質的に相同」は、配列に関して本明細書において使用される時、配列が、その対応する参照配列と比較される時、実質的に同じ構造および機能を有することを意味する。参照配列中のある部位が同じアミノ酸で占有される時、その分子はその部位で相同である(つまり、その部位で同一性がある)。実質的に相同な配列と参照配列間の相同性のパーセンテージは、望ましくは少なくとも85%、より望ましくは少なくとも88%、好ましくは少なくとも95%、さらにもっと好ましくは、少なくとも99%である。
【0015】
本発明の第二の面で、USP13、USP26、USP38、USP42またはUSP46、その機能的なフラグメントまたは実質的に相同な配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換される細胞の使用が提供される。その細胞は、癌処置用薬剤のスクリーニング手段としてのポリペプチドを発現する。
【0016】
表現「スクリーニング手段」は、本明細書において使用される時、スクリーニングに使用される手段、特にスクリーニングに使用されるポリペプチドまたはポリペプチドを発現する細胞を意味する。
【0017】
本明細書において使用される時、表現「癌処置用薬剤」は、癌を患う患者の治癒用の薬物だけでなく、癌の進行を阻害する薬物も含む。「癌の処置」は、癌の予防的または好ましくは治療的(対症的、治癒的、症状−緩和的、症状−減少的、疾患もしくは症状抑制的、進行遅延的を含むが限定されない)処置を意味する。
【0018】
用語「癌」は、好ましくは次に記載するものを含むが、肉腫(例えば、ユーイング肉腫、カポジ肉腫もしくは隆起性皮膚線維肉腫のような軟部肉腫)のような固形癌(良性もしくは特に悪性型を含む)、消化管間質腫瘍(GIST)、セミノーマ、カルチノイド、肥満細胞癌、肺小細胞癌もしくは肺大細胞癌のような肺癌、小細胞気管支癌のような気管支癌、セミノーマ、未分化胚細胞腫、精巣上皮内腫瘍、メラノーマ、乳癌、神経芽細胞腫、甲状腺乳頭癌/濾胞性甲状腺癌、悪性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、多発性内分泌腫瘍症2型(MEN2)、褐色細胞腫、例えば甲状腺髄様癌、副甲状腺過形成/副甲状腺腫のような甲状腺癌、乳癌、結腸癌、結腸直腸腺腫、卵巣癌、前立腺癌、神経膠芽腫、脳腫瘍、前立腺癌(腺癌および骨転移も含む)、悪性神経膠腫(未分化星状細胞腫/神経膠芽腫)、膵臓癌、悪性胸膜中皮腫、血管芽細胞腫、血管腫、腎臓、肝臓、副腎、膀胱、胃(特に胃腫瘍)、直腸、膣、子宮頸部、子宮内膜の癌、多発性骨髄腫、頭頸部癌、例えば頭頸部の扁平上皮癌、例えば乳癌、悪性腎硬化症の場合、新形成、特に上皮系形質の新形成など;またはさらに他の過形成もしくは増殖性疾患に限定されない、様々な増殖性疾患を意味する。
【0019】
「形質転換された細胞」は、本明細書において使用される時、任意の方法、例えば、エレクトロポレーション、カルシウムリン酸沈殿、マイクロインジェクション、形質転換、ウイルス感染などによって細胞に導入された異種DNAを含む原核または真核細胞を意味する。
【0020】
「ベクター」は、異種核酸を挿入でき、その後、適切な宿主細胞に導入できる核酸分子である。ベクターは好ましくは一つ以上の複製起点と、組み換えDNAを挿入できる一つ以上の部位を有する。一般的なベクターはプラスミド、ウイルスゲノムおよび人工的なクロモソームを含む。
【0021】
本発明の第三の面は、USP13、USP26、USP38、USP42もしくはUSP46、その機能的フラグメントもしくは実質的に相同な配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された細胞またはその細胞膜を試験される化合物と接触させ、そしてMcl−1が安定化されているかどうかを分析することを必要とする癌処置用薬剤のスクリーニングのための方法を含む。
【0022】
1つの好ましい面では、本発明のスクリーニング方法において、癌処置用薬剤はMcl−1を不安定化させる薬剤である。別の面では、癌処置用薬剤は、本発明のUSPの触媒活性の阻害剤である。好ましくは、本発明のスクリーニング方法において、癌処置用薬剤は、USP13、USP26、USP38、USP42もしくはUSP46、その機能的フラグメントまたは実質的に相同な配列からなるポリペプチドの阻害剤である。
【0023】
本明細書において使用される時、「安定化」および「不安定化」はMcl−1の半減期アッセイに関係する。
【0024】
別の好ましい面は、USP13、USP26、USP38、USP42もしくはUSP46、その機能的フラグメントもしくは実質的に相同な配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された細胞またはその細胞膜を試験される化合物と接触させ、そしてユビキチン化の割合を分析することを必要とする癌処置用薬剤のスクリーニングのための方法を提供する。
【0025】
好ましくは癌処置用薬剤は、ユビキチン化基質つまりユビキチン化Mcl−1の増加を誘導するUSPの阻害剤である。
【0026】
薬剤スクリーニングアッセイにおける細胞ベースのシステムはユビキチン特異的プロテアーゼを発現する天然または組み換え宿主細胞を含みうる。
【0027】
ユビキチン特異的プロテアーゼを調節する同定された薬剤は、ユビキチン化基質に対するアフィニティーを増加または減少させることができ、USPに対する既知の結合分子への結合の割合を上昇または減少させることができ、ユビキチンプロテアーゼに対する既知の結合分子と競合または置換することができる。
【0028】
しかしながら別の面では、本発明は、本発明のポリペプチドUSP13、USP26、USP38、USP42またはUSP46の活性を減少させる薬剤の有効量を、それを必要としている患者に投与することを含む癌処置のための方法に向けられる。
【0029】
別の面は、本発明において開示されたポリペプチド、例えば、USP13、USP26、USP38、USP42またはUSP46の活性を減少させる薬剤および癌に対して活性な薬剤の有効量を、それを必要としている患者に投与することを含む癌処置のための方法に向けられる。
【0030】
「活性を減少させる薬剤」は、本明細書において使用される時、ユビキチン特異的プロテアーゼの触媒/脱ユビキチン化活性、またはユビキチン特異的プロテアーゼと通常ユビキチン特異的プロテアーゼと相互作用する標的分子との間の相互作用を阻害する能力を有する化合物を意味しうる。標的はユビキチンまたはユビキチン化基質でありうる。
【0031】
本明細書において使用される時、表現「癌に対して活性な薬剤」は、アロマターゼ阻害剤;抗エストロゲン剤;トポイソメラーゼI阻害剤;トポイソメラーゼII阻害剤;微小管活性剤;アルキル化剤;ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤;細胞分化過程を誘導する化合物;シクロオキシゲナーゼ阻害剤;MMP阻害剤;mTOR阻害剤;抗悪性腫瘍性代謝拮抗剤、プラチン化合物;タンパク質または脂質リン酸化酵素活性を標的とする/減少させる化合物およびさらに抗血管新生化合物;タンパク質または脂質ホスファターゼ活性を標的とする、減少させるまたは阻害する化合物;ゴナドレリンアゴニスト;抗アンドロゲン剤;メチオニンアミノペプチダーゼ阻害剤;ビスホスホネート;生物学的応答調節物質;抗増殖性抗体;ヘパラナーゼ阻害剤;Ras発癌性アイソフォームの阻害剤;テロメラーゼ阻害剤;プロテアソーム阻害剤;血液系腫瘍の処置に使用される薬剤;Flt−3の活性を標的とする、減少させるまたは阻害する化合物;Hsp90阻害剤;およびテモゾロミドを含むが限定されない抗増殖性薬剤に関する。
【0032】
特定の態様において、癌に対して活性な薬剤は、Mcl−1およびA1、抗アポトーシスBcl−2ファミリーのメンバーに対して低いアフィニティーを有し、そして高いMcl−1内在性レベルを有する細胞に限定的な細胞毒性効果を示しうるABT737である。
【0033】
最終的に、小分子化合物でUSP46を阻害することは、Mcl−1標的化を促進することができ、Bcl−2/Bcl−XL阻害剤に対する感受性をもたらすことができる。
【0034】
本発明は、さらに、HCT116、HeLa、PC−3、H196およびH1703細胞系おのおのに対応する、結腸癌、子宮頸癌、前立腺癌および肺癌の細胞系などの異なる細胞系において、USP46のサイレンシングに続くABT−737の感作を同定した。
【0035】
しかしながら別の面では、本発明は、本発明において開示されたポリペプチド、例えば、USP13、USP26、USP38、USP42またはUSP46の活性を減少させる薬剤の有効量を、それを必要としている患者に投与することを含む癌の進行の遅延のための方法に向けられる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1.1】HCT116細胞における、シクロヘキシミド処理のt=0、30分または1時間でのUSPサイレンシングに続くMcl−1調節の模式的表示である。Mcl−1の増加および減少はおのおの青および緑で示され、siRNA毒性は灰色で示される。色の欠如は効果の欠如に対応する。確認実験のために選択されたUSPは、緑で強調される(USP5、USP13、USP19、USP21、USP22、USP26、USP28、USP38、USP42およびUSP46)。USPのペアを標的とするために設計されたsiRNAは、表の右側に示される。
【図1.2】HCT116細胞における、シクロヘキシミド処理のt=0、30分または1時間でのUSPサイレンシングに続くMcl−1調節の模式的表示である。Mcl−1の増加および減少はおのおの青および緑で示され、siRNA毒性は灰色で示される。色の欠如は効果の欠如に対応する。確認実験のために選択されたUSPは、緑で強調される(USP5、USP13、USP19、USP21、USP22、USP26、USP28、USP38、USP42およびUSP46)。USPのペアを標的とするために設計されたsiRNAは、表の右側に示される。
【図1.3】HCT116細胞における、シクロヘキシミド処理のt=0、30分または1時間でのUSPサイレンシングに続くMcl−1調節の模式的表示である。Mcl−1の増加および減少はおのおの青および緑で示され、siRNA毒性は灰色で示される。色の欠如は効果の欠如に対応する。確認実験のために選択されたUSPは、緑で強調される(USP5、USP13、USP19、USP21、USP22、USP26、USP28、USP38、USP42およびUSP46)。USPのペアを標的とするために設計されたsiRNAは、表の右側に示される。
【図2】HCT116細胞におけるUSP13スクリーニング HCT116細胞において、Luc(ルシフェラーゼ、ネガティブコントロール)、Mcl−1(ポジティブコントロール)またはUSP13(siRNA13v1、siRNA13v2、siRNA13v3)を標的とする様々なsiRNAの存在下、内在性Mcl−1の発現を明らかにするウエスタンブロット(抗Mcl−1)。より弱い曝露もBに示される。抗stat3抗体はローディングコントロールとして使用された。タイムコースは、分析の前に細胞がタンパク質合成阻害剤(シクロヘキシミド)に曝露された時間に対応する。
【図3】HCT116細胞におけるUSP26スクリーニング HCT116細胞において、Luc(ルシフェラーゼ、ネガティブコントロール)、Mcl−1(ポジティブコントロール)またはUSP26(siRNA26v1、siRNA26v2、siRNA26v3)を標的とする様々なsiRNAの存在下、内在性Mcl−1の発現を明らかにするウエスタンブロット(抗Mcl−1)。抗stat3抗体はローディングコントロールとして使用された。タイムコースは、分析の前に細胞がタンパク質合成阻害剤(シクロヘキシミド)に曝露された時間に対応する。
【図4】HCT116細胞におけるUSP38スクリーニング HCT116細胞において、Luc(ルシフェラーゼ、ネガティブコントロール)、Mcl−1(ポジティブコントロール)またはUSP38(siRNA38v1、siRNA38v2、siRNA38v3)を標的とする様々なsiRNAの存在下、内在性Mcl−1の発現を明らかにするウエスタンブロット(抗Mcl−1)。抗stat3抗体はローディングコントロールとして使用された。タイムコースは、分析の前に細胞がタンパク質合成阻害剤(シクロヘキシミド)に曝露された時間に対応する。
【図5】HCT116細胞におけるUSP42スクリーニング HCT116細胞において、Luc(ルシフェラーゼ、ネガティブコントロール)、Mcl−1(ポジティブコントロール)またはUSP42(siRNA42v1、siRNA42v2、siRNA42v3)を標的とする様々なsiRNAの存在下、内在性Mcl−1の発現を明らかにするウエスタンブロット(抗Mcl−1)。抗stat3抗体はローディングコントロールとして使用された。タイムコースは、分析の前に細胞がタンパク質合成阻害剤(シクロヘキシミド)に曝露された時間に対応する。
【図6】HCT116細胞におけるUSP46スクリーニングHCT116細胞において、Luc(ルシフェラーゼ、ネガティブコントロール)、Mcl−1(ポジティブコントロール)またはUSP46(siRNA46v1、siRNA46v2、siRNA46v3)を標的とする様々なsiRNAの存在下、内在性Mcl−1の発現を明らかにするウエスタンブロット(抗Mcl−1)。抗stat3抗体はローディングコントロールとして使用された。タイムコースは、分析の前に細胞がタンパク質合成阻害剤(シクロヘキシミド)に曝露された時間に対応する。
【図7】PC3細胞におけるフェノタイプ/サイレンシング相関性研究 Mcl−1内在性レベルが、ルシフェラーゼ、Mcl−1またはUSP46を標的とするいくつかのsiRNA存在下、PC3細胞において決定された(A)。抗アクチン抗体はローディングコントロールとして使用された。Mcl−1(B)およびUSP46(C)mRNAレベルは、ルシフェラーゼ(Luc、ネガティブコントロール)、Mcl−1またはUSP46を標的とするsiRNAのPC3トランスフェクション後、定量的RT−PCRによって決定された。結果は、四つの値の平均+/−標準偏差として示される。
【図8】H196細胞におけるフェノタイプ/サイレンシング相関性研究 Mcl−1内在性レベルが、ルシフェラーゼ、Mcl−1またはUSP46を標的とするいくつかのsiRNA存在下、H196細胞において決定された(A)。抗アクチン抗体はローディングコントロールとして使用された。Mcl−1(B)およびUSP46(C)mRNAレベルは、ルシフェラーゼ(Luc、ネガティブコントロール)、Mcl−1またはUSP46を標的とするsiRNAのPC3トランスフェクション後、定量的RT−PCRによって決定された。結果は、四つの値の平均+/−標準偏差として示される。
【図9】H1703細胞におけるフェノタイプ/サイレンシング相関性研究 Mcl−1内在性レベルが、ルシフェラーゼ、Mcl−1またはUSP46を標的とするいくつかのsiRNA存在下、H1703細胞において決定された(A)。抗アクチン抗体はローディングコントロールとして使用された。Mcl−1(B)およびUSP46(C)mRNAレベルは、ルシフェラーゼ(Luc、ネガティブコントロール)、Mcl−1またはUSP46を標的とするsiRNAのPC3トランスフェクション後、定量的RT−PCRによって決定された。結果は、四つの値の平均+/−標準偏差として示される。
【図10】HEK293細胞におけるフェノタイプ/サイレンシング相関性研究 Mcl−1内在性レベルが、ルシフェラーゼ、Mcl−1またはUSP46を標的とするいくつかのsiRNA存在下、HEK293細胞において決定された(A)。抗アクチン抗体はローディングコントロールとして使用された。Mcl−1(B)およびUSP46(C)mRNAレベルは、ルシフェラーゼ(Luc、ネガティブコントロール)、Mcl−1またはUSP46を標的とするsiRNAのPC3トランスフェクション後、定量的RT−PCRによって決定された。結果は、四つの値の平均+/−標準偏差として示される。
【図11】Hela細胞におけるフェノタイプ/サイレンシング相関性研究 Mcl−1内在性レベルが、ルシフェラーゼ、Mcl−1またはUSP46を標的とするいくつかのsiRNA存在下、H196細胞において決定された(A)。抗アクチン抗体はローディングコントロールとして使用された。Mcl−1(B)およびUSP46(C)mRNAレベルは、ルシフェラーゼ(Luc、ネガティブコントロール)、Mcl−1またはUSP46を標的とするsiRNAのPC3トランスフェクション後、定量的RT−PCRによって決定された。結果は、四つの値の平均+/−標準偏差として示される。
【図12】HeLa細胞のABT−737への感作に対するUSP46サイレンシングの影響 カスパーゼ3アッセイが、ルシフェラーゼ(luc、ネガティブコントロール)、mcl−1またはUSP−46を標的とするsiRNAをトランスフェクションされ、DMSO(ネガティブコントロール)またはABT−737(3〜10μM)で6時間処理されたHeLa細胞におけるカスパーゼ3活性をモニターするために使用された。細胞ライセートがカスパーゼ活性について試験された(A)。結果は、三つの値の平均+/−標準偏差として示され、二回の独立した実験の代表値である。Mcl−1内在性レベルおよび断片化されたPARPも、ルシフェラーゼ、Mcl−1またはUSP46を標的とするsiRNAの存在下決定された(B)。抗−stat3抗体がローディングコントロールとして使用された。
【図13】luc、mcl−1、USP46v1、USP46v4またはUSP46プールのsiRNAをトランスフェクションされたHeLa癌細胞のフローサイトメトリー。細胞サイクルはsiRNAトランスフェクション後72時間、ABT−737処理(3μM)後18時間に決定された。
【図14】siRNAトランスフェクション後72時間およびABT−737処理後24時間に決定されたHeLa細胞におけるABT−737誘導subG1移行。subG1(<2N)の細胞のパーセンテージは、2つの値の平均+/−標準偏差である(A)。内在性Mcl−1レベルもルシフェラーゼ、Mcl−1またはUSP46を標的とするsiRNAの存在下決定された。抗Stat3抗体は、ローディングコントロールとして使用された(B)。
【図15】E.coliから精製された野生型および触媒に関する変異体(C44A)のGST−USP46タンパク質の脱ユビキチン化活性。野生型および触媒に関する変異体のUSP46タンパク質の酵素活性はインビトロで様々な酵素濃度および固定されたインキュベーション時間(90分)で、基質としてUbAMC(400nM)を用いて評価された(A)。野生型および触媒に関する変異体のUSP46タンパク質の固定された濃度の酵素(400nM)および基質(800nM)での酵素活性の速度論的アッセイ(B)。すべての結果は三つの値の平均+/−標準偏差で記載される。
【0037】
実施例
1 材料および方法
1.1 siRNA設計および合成
ホスホルアミダイドを用いて化学的に合成された19−merのsiRNAはプロリゴより購入された。siRNAは、Tuschlおよび同僚により記載されたように(Elbashir et al. (2001). Duplexes of 21-nucleotide RNAs mediate RNA interference in cultured mammalian cells. Nature 411, 494-8)、熱力学的な特徴に対する特別な注意と共に設計された(Khvorova et al. (2003). Functional siRNAs and miRNAs exhibit strand bias. Cell 115, 209-16)。siRNA特異性の研究に捧げられる手段は、インハウスで開発された。短く言えば、NCBI NRおよびESTデータベースがBLASTアルゴリズムによりそれぞれsiRNAおよび標的遺伝子と共に必要とされた。無関係なNRまたはESTエントリーと完全に(19/19)または部分的に(18/19ヌクレオチド)マッチするsiRNAは退けられた。
【0038】
1.2 細胞培養およびトランスフェクション
ヒト結腸癌HCT116細胞は、10%FBSを含むマッコイ5A培地中に維持された。培地には、100ユニット/mlペニシリンおよび0.1mg/mlストレプトマイシンが添加され、細胞系は5%CO2を含む加湿された大気中37℃でインキュベーションされた。
【0039】
スクリーニングのために、指示された量のsiRNA(40pmol、最終72nM)をOpti−MEM(Invitrogen)中、2μlのオリゴフェクタミン(Invitrogen)と複合体化させ、細胞を蒔く前に24穴プレートに添加した。150000のHCT116細胞が次に蒔かれた。Opti−MEMは、トランスフェクション後、5時間で適当な培地と交換された。トランスフェクションの72時間後および回収の前、細胞は30分間もしくは1時間シクロへキシミド(30μg/ml)で処理された、もしくは処理されなかったか、または90分間MG132(30μM)で処理された。
【0040】
1.3 細胞ライセートの調製およびウエスタンブロット分析
細胞は、一度、冷却されたPBS中洗浄され、トリプシン処理により回収された。浮遊しトリプシン処理された細胞は貯蔵され、遠心分離により回収された。細胞ペレットは、溶解バッファー(1×プロテアーゼ阻害剤混合物を含む2%SDS、Sigma)中、再懸濁され、10分間100℃に置かれ、5秒間超音波処理された。タンパク質は、製造者の説明書に従いビシンコニン酸(Sigma−Aldrich)を用いて定量化された。ライセートはSDS−ポリアクリルアミド(10%)ゲル電気泳動(SDS−PAGE)により分離され、ニトロセルロース膜にトランスファーされ、Mcl−1ウサギポリクローナル抗体(sc−819;SantaCruz)、Stat3ウサギポリクローナル抗体(9132;Cell Signaling)、アクチンマウスモノクローナル抗体(A4700;Sigma)、またはGAPDHマウスモノクローナル抗体(Ab8245;AbCam)で探索された。HRP結合抗ラビット抗体(7074;Cell Signaling)およびHRP結合抗マウス抗体(115−035−003;Jackson ImmunoResearch)は二次抗体として使用された。シグナルは、製造者の説明書に従い、ECL試薬(Amersham)を用いて検出された。
【0041】
1.4 細胞培養、トランスフェクションおよび薬理学的処理
使用されたすべての細胞系は、それぞれの培地に維持された。すべての培地は100ユニット/mlのペニシリンおよび0.1mg/mlのストレプトマイシンが添加され、細胞系は5%CO2を含む加湿された大気中37℃でインキュベーションされた。siRNAのトランスフェクションのために、siRNA(40pmol、最終72nM)はOpti−MEM(Invitrogen)中2μlのオリゴフェクタミン(Invitrogen)と複合体化され、細胞を蒔く前に24穴プレートに添加された。すべての条件においてOpti−MEMは、トランスフェクション後5時間で適当な培地で置換された。Hiperfect(Qiagen)が使用された時、siRNA(40pmol、最終72nM)は、Opti−MEM(Invitrogen)中、3μlのHiperfect(Qiagen)と複合体化され、細胞を蒔いた後、24穴プレートに添加された。トランスフェクションの48時間または72時間後および回収の前、細胞は、指示された時点に指示された濃度でABT737で処理された、またはされなかった。
【0042】
H1703細胞のようなトランスフェクションが困難な細胞は、AMAXA方式を用いてトランスフェクションされた。細胞は、最初に、特別なキュベット中、興味のあるsiRNAの存在下懸濁される。使用される細胞系に従って規定された電気パルスが、次に、Nucleofector装置中送達された。Nucleofectorでトランスフェクションされた細胞は、次に、製造者の説明書に従って、24穴または6穴プレートに蒔かれ、上記記載の様にABT737で処理された。
【0043】
1.5 脱ユビキチン化アッセイ
脱ユビキチン化酵素活性は、基質としてユビキチン−AMCまたはUb−AMC(ユビキチン−7−アミド−4−メチルクマリン、Boston Biochem、U−550)を用い、かつて記載されたように(Dang et al. (1998) Kinetic and mechanistic studies on the hydrolysis of ubiquitin C-terminal 7-amido-4-methylcoumarin by deubiquitinating enzymes. Biochemistry. 37(7):1868-79)、蛍光定量的なアッセイでモニターされた。ユビキチンのC−末端から放出されたAMCは、増強された蛍光を示し、それは蛍光リーダーでモニターできる。酵素および基質の両方が、実行の度、USP46反応バッファー(50mM Tris−HCl[pH8.4]、0.5mM EDTA、0.05mg/ml BSA、5mM DTT)中、新しく調製された。USP46およびUb−AMCの反応混合物は、室温で2時間インキュベーションされ、反応は10μlの酢酸(最終濃度250mM)を添加することによって停止された。蛍光発光強度はPHERAstar(BMG Labtech)機器で測定され、クマリンフィルターセット(λex=360nm、λem=460nm)を使用した。
【0044】
2. 結果
2.1 HTC116細胞におけるUSPスクリーニング
Mcl−1脱ユビキチン化、従ってMcl−1の安定化に関連するユビキチン特異的プロテアーゼを同定するために、全USPファミリーがHCT116癌細胞におけるMcl−1の半減期についてRNA干渉によりスクリーニングされた。スクリーニングされた60個のUSPタンパク質のうち、10個のUSP(USP5、USP13、USP19、USP21、USP22、USP26、USP28、USP38、USP42およびUSP46)は所望のフェノタイプ、つまり、実質的なMcl−1の減少を有して同定された(特定の時点において、3個のsiRNAのうち少なくとも2個が50%より多いMcl−1の減少を示した。)。USPサイレンシングおよびシクロヘキシミド処理後の、Mcl−1調節の模式的表示が図1に示される。
【0045】
2.2 選択されたUSPに関する確認実験
一次スクリーニングで得られた結果を確認するために、独立した実験が10個の選択されたUSPについて実施された。データは一次スクリーニングの結果の10個のUSPのうち5個のUSP(USP13、USP26、USP38、USP42およびUSP46)について確認された。確認実験のウエスタンブロットの結果は図2から図6に示される。これらの結果は、シクロヘキシミド処理後(異なるタイミングでのLuc siRNAを比較)およびMcl−1サイレンシング後、内在性Mcl−1の有意な減少が観察されたことを明らかにした。興味深いことに、これらのタンパク質中、3個の異なるUSPは、3個のうち2個のsiRNAで、Mcl−1の定常状態レベルに有意な効果を有することが示された:USP13、USP42およびUSP46。
【0046】
それ故、HCT116細胞におけるMcl−1の半減期に関するRNA干渉による60個のヒトUSPのスクリーニングから、Mcl−1安定化について5個のUSP(USP13、USP26、USP38、USP42およびUSP46)の関与が確認された。すべてのこれらのタンパク質は、触媒活性に必須なアミノ酸を含み、それ故、機能的な脱ユビキチン化活性を示唆する。実際、USP42、USP46およびUSP38はかつてインビトロで活性であることが示された。
【0047】
2.3 PC3、H196、H1703、HEK293およびHeLa細胞におけるMcl−1 mRNAおよびタンパク質レベルに対するUSP46サイレンシングの効果
PC3、H196、H1703、HEK293およびHeLa細胞における内在性Mcl−1タンパク質レベルに対するMcl−1 siRNAの効果がモニターされ、Mcl−1レベルの強力な減少が示され、これらの細胞系における非常によいトランスフェクション効率を示唆した(おのおの図7から図10)。その意味で、内在性Mcl−1タンパク質レベルは、USP46サイレンシング後評価された。PC3、H196、H1703、HEK293およびHeLa細胞において、独立したUSP46 siRNAによるMcl−1タンパク質レベルの有意な減少が観察される(USP46v3、USP46v4および活性USP46 siRNAのプール)(おのおの図7から図11)。
【0048】
内在性Mcl−1 mRNAレベルは、次に、PC3、H196、H1703、HEK293およびHeLa細胞において、USP46によるMcl−1レベルの転写調節を除外するために、定量的PCRによって決定された。USP46サイレンシング後のMcl−1 mRNAレベルに有意な減少は観察されず(おのおの図7から図11)、PC3、H196、H1703、HEK293およびHeLa細胞におけるUSP46仲介Mcl−1調節が転写後の事象であることを示す。最後に、コントロールとして、USP46を標的とするすべての試験されたsiRNAはUSP46 mRNAレベルに影響を与えた:
PC3細胞において>68%の減少
H196細胞において>62%の減少
H1703細胞において>46%の減少
HEK293細胞において>90%の減少
HeLa細胞において>80%の減少が確認される(おのおの図7から図11)。
【0049】
これらの結果は、USP46が、PC3、H196、H1703、HEK293およびHeLa細胞系において、Mcl−1安定化に関わることを示し、従って、HCT116細胞での先の発見を確認する。
【0050】
2.4 ABT−737誘導HeLa細胞死に対するMcl−1およびUSP46サイレンシングの効果
このアッセイは、ABT−737仲介アポトーシスに対するHeLa細胞の感作に対するUSP46 siRNAの効果を評価するために使用された。我々のポジティブコントロール、Mcl−1 siRNAは、カスパーゼ3活性の2.7倍の上昇により示されるように、ABT−737仲介アポトーシスに対して細胞を感作した(図12A)。興味深いことに、USP46v1およびUSP46v4 siRNAは、ABT−737処理後、カスパーゼ3活性の有意な上昇となった(3μM ABT−737でv1:1.5倍;v4:2倍誘導)(図12A)。重要なことに、Mcl−1ノックダウンのレベルと緊密に相関した、ABT−737により仲介されるカスパーゼ3活性の誘導が観察される(図12B)。同じ条件でのPARP切断もモニターされ、Mcl−1 siRNAで切断されたPARPバンドの増加、およびUSP46 siRNAで切断されたPARPバンドの中程度の増加が観測され、それ故、カスパーゼの結果を確認した(図12B)。
【0051】
HeLa細胞におけるABT−737誘導アポトーシスに対する細胞の感作へのUSP46 siRNAの影響を確認するために、主にアポトーシスを反映するsubG1期の細胞の数が定量された。Mcl−1 siRNAと同様に、非処理HeLa癌細胞において、USP46 siRNAはアポトーシスを誘導した(図13Aおよび図14A)。実際、Luc処理細胞は21.4±0.6%のsubG1細胞を示し、一方、Mcl−1処理細胞(46.2±2.2%)、USP46v1処理細胞(34±4%)、USP46v4処理細胞(29.3±0.3%)およびUSP46プール処理細胞(40±11%)は、より多い量のsubG1細胞を示した(図13Aおよび14A)。Luc処理細胞において、ABT−737(3μM)存在下、subG1細胞の少しの増加が観察された(35%±6.6%のsubG1細胞)(図13Aおよび図14A)。対照的に、細胞がABT−737存在下Mcl−1 siRNAで処理された時、subG1細胞の強力な増加が示された(63%±2%のsubG1細胞)(図13Aおよび14A)。興味深いことに、USP46v1、USP46v4、および活性USP46 siRNAのプールも、コントロールsiRNAのトランスフェクションされた細胞と比較した時、ABT−737処理されたsubG1細胞の顕著な増加を誘導した(v1:60.7%±5.4%;v4:51.3%±1.2% プール:62.4%±0.1%のsubG1細胞)(図13Aおよび14A)。ABT−737の存在下、Mcl−1ノックダウンのレベルと緊密に相関したsubG1誘導の程度が観察される(図13B)。
【0052】
結論として、Mcl−1サイレンシングと同様に、USP46サイレンシングは非処理HeLa癌細胞においてMcl−1レベルを減少させアポトーシスを誘導し、ABT−737誘導細胞死にHeLa細胞を感作する。興味深いことに、ABT−737感作におけるこれらの違いは常にMcl−1レベルのサイレンシング効果と相関していた:USP46 siRNAトランスフェクション後、よりMcl−1が減少すれば、よりUSP46仲介感作が観察される。USP46サイレンシングは、カスパーゼ3アッセイ、PARP切断およびsubG1分析により評価された時、ネガティブコントロール(Luc siRNA)とポジティブコントロール(Mcl−1サイレンシング)の中間レベルで、細胞をABT−737に対して有意に感作することが示された。まとめると、これらの結果は、HeLa子宮頸癌細胞において、Mcl−1調節に対するUSP46の関与を確認する。同様の発見がHCT116、PC3、H1703およびH196細胞においても観察された。
【0053】
2.5 インビトロでのUSP46のタンパク質分解活性
インビトロで野生型および変異体両方の精製されたタンパク質の脱ユビキチン化活性が比較される。野生型および変異の酵素の両方は、Ub−AMCアッセイを用いて容量依存的反応において試験された(図15)。興味深いことに、野生型USP46タンパク質は、Ub−AMCを容量依存的に加水分解した。対照的に、触媒的に不活性な変異体の容量依存的効果が観察され、それ故、変異GST−USP46と共精製された脱ユビキチン化活性がないことが示唆される(図15A)。これらの発見を確認するために、GST−USP46の反応速度論的実験が実施される。酵素および基質の固定された濃度において、野生型USP46タンパク質でUb−AMC加水分解の時間依存的増加が観測されるが、変異型では観察されない(図15B)。まとめると、これらの結果は、正しいシグナル/バックグラウンド割合を伴う特異的なUSP46仲介脱ユビキチン化活性の同定を確認する。
【図1−1】
【図1−2】
【図1−3】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌処置用薬剤のスクリーニング手段としての、USP13、USP26、USP38、USP42またはUSP46からなる群から選択されるポリペプチドの使用に関する。
【0002】
そもそも分化している骨髄系細胞中に同定された骨髄細胞白血病−1(Mcl−1)は、抗アポトーシスBcl−2ファミリーメンバー(Bcl−2、Bcl−XL、Bcl−W、A1)に属する。Mcl−1は、様々な死の刺激、特にDNA損傷により誘導されるアポトーシスの初期の段階で作用し、主要な生存因子としての役割を果たす。より正確には、Mcl−1は、ミトコンドリアからのシトクロムCの放出を導く事象のカスケードに干渉することにより細胞の生存を促進するが、短い半減期のタンパク質である。Mcl−1を制御する過程は、このように、癌のような病理学的状態において決定的に重要である。
【0003】
Mcl−1の分解はプロテアソーム阻害剤により阻止でき、アポトーシスにおけるユビキチン−プロテアソーム経路への役割を示唆する。
【0004】
ユビキチン−仲介性の分解は、E1−活性化酵素、E2−結合酵素、および基質特異性を決定するE3ユビキチンリガーゼを含む一連の酵素反応を介してユビキチン部分でタンパク質がタグ付けされる、固く制御された過程である。タンパク質は、その後、プロテアソームにより分解される。逆の過程も起こり、ユビキチン鎖の除去、つまり脱ユビキチン化に至る。この後者の反応は、部分的に、ユビキチン特異的プロテアーゼ(USP)と呼ばれる酵素により実施され、通常状態の基質の回復となる。
【0005】
ユビキチン特異的プロテアーゼ(USP)は、脱ユビキチン化酵素(DUB)の巨大なファミリーに属する。ヒトゲノムは、プロテアーゼのスーパーファミリーに属する約95の推定上の脱ユビキチン化酵素(DUB)をコードする。これらの酵素は、5つのサブファミリーに分割され、それらの中で最もよく知られたサブクラスは、USP(ユビキチン特異的プロテアーゼ)およびUCH(ユビキチンC−末端ヒドラーゼ)である。60のヒトUSPタンパク質は、システインプロテアーゼであり、その触媒ドメインは、「システインボックス」および「ヒスチジンボックス」を含む。USPの主な機能は、特異的なタンパク質基質からのユビキチンの除去である。
【0006】
プロテアソーム阻害剤での臨床上の成功は、E3またはUSPのようなユビキチン−プロテアソーム経路の他のステップを調節することが、治療上より特異的でより効率的に成功するであろうという概念を強化する。
【0007】
Mcl−1のポリ−ユビキチン化に必要で十分な、Mule/ARF−BP1/UreB1と命名されたE3リガーゼの同定も、出版物に報告された。興味深いことに、Muleの発現のダウンレギュレーションは、Mcl−1の安定化および蓄積を生じ、細胞が、遺伝毒性の薬剤による致死に対し、より抵抗性となるように導く。
【0008】
本発明に開示される結果は、Mcl−1に特異的なUSPが存在し、それ故アポトーシスを制御する細胞性Mcl−1の安定化に作用するであろうことを示唆する。これらのUSPの阻害は、プロテアソームによるMcl−1の分解の増加を導き、アポトーシスの開始を促進するであろう。この観察は、小分子化合物でMcl−1制御USPタンパク質を阻害することにより、Mcl−1を標的とする新規の方法を提供する。
【0009】
本発明の第一の目的は、
癌処置用薬剤のスクリーニング手段としての、
a)USP13、USP26、USP38、USP42またはUSP46からなるポリペプチド;
b)ポリペプチドUSP13、USP26、USP38、USP42またはUSP46の、脱ユビキチン化活性を示す機能的フラグメント;
c)USP13、USP26、USP38、USP42またはUSP46からなり、脱ユビキチン化活性を示すポリペプチドと85%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド;
からなる群から選択されるポリペプチドの使用である。
【0010】
本発明に開示されるMcl−1制御USPは、USP13(GI:4507848)、USP26(GI:13994267)、USP38(GI:31559774)、USP42(GI:79750943)、USP46(GI:31377708)であり、
前駆融合タンパク質の一部分としてのユビキチンにつながるペプチド結合を切断して、フリーのユビキチン部分を遊離させるか、またはタンパク質にユビキチンを結合させる(翻訳後)結合を切断できる。
【0011】
特定の態様では、本発明は、癌処置用薬剤のスクリーニング手段としての、USP46、その機能的フラグメント、またはその実質的に相同な配列の使用を提供する。
【0012】
USP46は、UCHドメイン、脱ユビキチン化機能に関与する触媒ドメインを含む未知の機能の小さな366アミノ酸長のタンパク質である。USP46は、ヒト組織に広く分布することおよびインビトロで活性であることが発見された。近年、隣接遺伝子としてUSP46を含むクロモソーム4q12上のアンプリコンが、神経膠芽腫において記載された。USP46遺伝子増幅は、いくつかの神経膠芽腫および神経膠芽腫細胞培養物中に検出された。USP46配列分析は、タンパク質配列で88%の同一性および核酸配列で76%の同一性を示す、ヒトパラログUSP12=UBH1(NP_872294)を同定した。さらに、USP46およびUSP12の触媒ドメインは、タンパク質配列で100%の同一性を示す。生物化学アッセイは、ヒトUBH1と98.3%のアミノ酸同一性を有するマウスUBH1が脱ユビキチン化酵素活性を示すことを明らかにした。
【0013】
「機能的フラグメント」は、ユビキチンとのペプチド結合を加水分解する能力のような一つ以上のタンパク質の生物学的活性を保持するか、または例えば、触媒部位、USPの特徴、システインもしくはヒスチジンユビキチン認識部位を含むドメイン、ユビキチン結合部位、またはプロテアーゼの他の機能を実施するために重要な部位のようなドメインまたはモチーフを含む。
【0014】
用語「相同性」および「実質的に相同」は、配列に関して本明細書において使用される時、配列が、その対応する参照配列と比較される時、実質的に同じ構造および機能を有することを意味する。参照配列中のある部位が同じアミノ酸で占有される時、その分子はその部位で相同である(つまり、その部位で同一性がある)。実質的に相同な配列と参照配列間の相同性のパーセンテージは、望ましくは少なくとも85%、より望ましくは少なくとも88%、好ましくは少なくとも95%、さらにもっと好ましくは、少なくとも99%である。
【0015】
本発明の第二の面で、USP13、USP26、USP38、USP42またはUSP46、その機能的なフラグメントまたは実質的に相同な配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換される細胞の使用が提供される。その細胞は、癌処置用薬剤のスクリーニング手段としてのポリペプチドを発現する。
【0016】
表現「スクリーニング手段」は、本明細書において使用される時、スクリーニングに使用される手段、特にスクリーニングに使用されるポリペプチドまたはポリペプチドを発現する細胞を意味する。
【0017】
本明細書において使用される時、表現「癌処置用薬剤」は、癌を患う患者の治癒用の薬物だけでなく、癌の進行を阻害する薬物も含む。「癌の処置」は、癌の予防的または好ましくは治療的(対症的、治癒的、症状−緩和的、症状−減少的、疾患もしくは症状抑制的、進行遅延的を含むが限定されない)処置を意味する。
【0018】
用語「癌」は、好ましくは次に記載するものを含むが、肉腫(例えば、ユーイング肉腫、カポジ肉腫もしくは隆起性皮膚線維肉腫のような軟部肉腫)のような固形癌(良性もしくは特に悪性型を含む)、消化管間質腫瘍(GIST)、セミノーマ、カルチノイド、肥満細胞癌、肺小細胞癌もしくは肺大細胞癌のような肺癌、小細胞気管支癌のような気管支癌、セミノーマ、未分化胚細胞腫、精巣上皮内腫瘍、メラノーマ、乳癌、神経芽細胞腫、甲状腺乳頭癌/濾胞性甲状腺癌、悪性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、多発性内分泌腫瘍症2型(MEN2)、褐色細胞腫、例えば甲状腺髄様癌、副甲状腺過形成/副甲状腺腫のような甲状腺癌、乳癌、結腸癌、結腸直腸腺腫、卵巣癌、前立腺癌、神経膠芽腫、脳腫瘍、前立腺癌(腺癌および骨転移も含む)、悪性神経膠腫(未分化星状細胞腫/神経膠芽腫)、膵臓癌、悪性胸膜中皮腫、血管芽細胞腫、血管腫、腎臓、肝臓、副腎、膀胱、胃(特に胃腫瘍)、直腸、膣、子宮頸部、子宮内膜の癌、多発性骨髄腫、頭頸部癌、例えば頭頸部の扁平上皮癌、例えば乳癌、悪性腎硬化症の場合、新形成、特に上皮系形質の新形成など;またはさらに他の過形成もしくは増殖性疾患に限定されない、様々な増殖性疾患を意味する。
【0019】
「形質転換された細胞」は、本明細書において使用される時、任意の方法、例えば、エレクトロポレーション、カルシウムリン酸沈殿、マイクロインジェクション、形質転換、ウイルス感染などによって細胞に導入された異種DNAを含む原核または真核細胞を意味する。
【0020】
「ベクター」は、異種核酸を挿入でき、その後、適切な宿主細胞に導入できる核酸分子である。ベクターは好ましくは一つ以上の複製起点と、組み換えDNAを挿入できる一つ以上の部位を有する。一般的なベクターはプラスミド、ウイルスゲノムおよび人工的なクロモソームを含む。
【0021】
本発明の第三の面は、USP13、USP26、USP38、USP42もしくはUSP46、その機能的フラグメントもしくは実質的に相同な配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された細胞またはその細胞膜を試験される化合物と接触させ、そしてMcl−1が安定化されているかどうかを分析することを必要とする癌処置用薬剤のスクリーニングのための方法を含む。
【0022】
1つの好ましい面では、本発明のスクリーニング方法において、癌処置用薬剤はMcl−1を不安定化させる薬剤である。別の面では、癌処置用薬剤は、本発明のUSPの触媒活性の阻害剤である。好ましくは、本発明のスクリーニング方法において、癌処置用薬剤は、USP13、USP26、USP38、USP42もしくはUSP46、その機能的フラグメントまたは実質的に相同な配列からなるポリペプチドの阻害剤である。
【0023】
本明細書において使用される時、「安定化」および「不安定化」はMcl−1の半減期アッセイに関係する。
【0024】
別の好ましい面は、USP13、USP26、USP38、USP42もしくはUSP46、その機能的フラグメントもしくは実質的に相同な配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された細胞またはその細胞膜を試験される化合物と接触させ、そしてユビキチン化の割合を分析することを必要とする癌処置用薬剤のスクリーニングのための方法を提供する。
【0025】
好ましくは癌処置用薬剤は、ユビキチン化基質つまりユビキチン化Mcl−1の増加を誘導するUSPの阻害剤である。
【0026】
薬剤スクリーニングアッセイにおける細胞ベースのシステムはユビキチン特異的プロテアーゼを発現する天然または組み換え宿主細胞を含みうる。
【0027】
ユビキチン特異的プロテアーゼを調節する同定された薬剤は、ユビキチン化基質に対するアフィニティーを増加または減少させることができ、USPに対する既知の結合分子への結合の割合を上昇または減少させることができ、ユビキチンプロテアーゼに対する既知の結合分子と競合または置換することができる。
【0028】
しかしながら別の面では、本発明は、本発明のポリペプチドUSP13、USP26、USP38、USP42またはUSP46の活性を減少させる薬剤の有効量を、それを必要としている患者に投与することを含む癌処置のための方法に向けられる。
【0029】
別の面は、本発明において開示されたポリペプチド、例えば、USP13、USP26、USP38、USP42またはUSP46の活性を減少させる薬剤および癌に対して活性な薬剤の有効量を、それを必要としている患者に投与することを含む癌処置のための方法に向けられる。
【0030】
「活性を減少させる薬剤」は、本明細書において使用される時、ユビキチン特異的プロテアーゼの触媒/脱ユビキチン化活性、またはユビキチン特異的プロテアーゼと通常ユビキチン特異的プロテアーゼと相互作用する標的分子との間の相互作用を阻害する能力を有する化合物を意味しうる。標的はユビキチンまたはユビキチン化基質でありうる。
【0031】
本明細書において使用される時、表現「癌に対して活性な薬剤」は、アロマターゼ阻害剤;抗エストロゲン剤;トポイソメラーゼI阻害剤;トポイソメラーゼII阻害剤;微小管活性剤;アルキル化剤;ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤;細胞分化過程を誘導する化合物;シクロオキシゲナーゼ阻害剤;MMP阻害剤;mTOR阻害剤;抗悪性腫瘍性代謝拮抗剤、プラチン化合物;タンパク質または脂質リン酸化酵素活性を標的とする/減少させる化合物およびさらに抗血管新生化合物;タンパク質または脂質ホスファターゼ活性を標的とする、減少させるまたは阻害する化合物;ゴナドレリンアゴニスト;抗アンドロゲン剤;メチオニンアミノペプチダーゼ阻害剤;ビスホスホネート;生物学的応答調節物質;抗増殖性抗体;ヘパラナーゼ阻害剤;Ras発癌性アイソフォームの阻害剤;テロメラーゼ阻害剤;プロテアソーム阻害剤;血液系腫瘍の処置に使用される薬剤;Flt−3の活性を標的とする、減少させるまたは阻害する化合物;Hsp90阻害剤;およびテモゾロミドを含むが限定されない抗増殖性薬剤に関する。
【0032】
特定の態様において、癌に対して活性な薬剤は、Mcl−1およびA1、抗アポトーシスBcl−2ファミリーのメンバーに対して低いアフィニティーを有し、そして高いMcl−1内在性レベルを有する細胞に限定的な細胞毒性効果を示しうるABT737である。
【0033】
最終的に、小分子化合物でUSP46を阻害することは、Mcl−1標的化を促進することができ、Bcl−2/Bcl−XL阻害剤に対する感受性をもたらすことができる。
【0034】
本発明は、さらに、HCT116、HeLa、PC−3、H196およびH1703細胞系おのおのに対応する、結腸癌、子宮頸癌、前立腺癌および肺癌の細胞系などの異なる細胞系において、USP46のサイレンシングに続くABT−737の感作を同定した。
【0035】
しかしながら別の面では、本発明は、本発明において開示されたポリペプチド、例えば、USP13、USP26、USP38、USP42またはUSP46の活性を減少させる薬剤の有効量を、それを必要としている患者に投与することを含む癌の進行の遅延のための方法に向けられる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1.1】HCT116細胞における、シクロヘキシミド処理のt=0、30分または1時間でのUSPサイレンシングに続くMcl−1調節の模式的表示である。Mcl−1の増加および減少はおのおの青および緑で示され、siRNA毒性は灰色で示される。色の欠如は効果の欠如に対応する。確認実験のために選択されたUSPは、緑で強調される(USP5、USP13、USP19、USP21、USP22、USP26、USP28、USP38、USP42およびUSP46)。USPのペアを標的とするために設計されたsiRNAは、表の右側に示される。
【図1.2】HCT116細胞における、シクロヘキシミド処理のt=0、30分または1時間でのUSPサイレンシングに続くMcl−1調節の模式的表示である。Mcl−1の増加および減少はおのおの青および緑で示され、siRNA毒性は灰色で示される。色の欠如は効果の欠如に対応する。確認実験のために選択されたUSPは、緑で強調される(USP5、USP13、USP19、USP21、USP22、USP26、USP28、USP38、USP42およびUSP46)。USPのペアを標的とするために設計されたsiRNAは、表の右側に示される。
【図1.3】HCT116細胞における、シクロヘキシミド処理のt=0、30分または1時間でのUSPサイレンシングに続くMcl−1調節の模式的表示である。Mcl−1の増加および減少はおのおの青および緑で示され、siRNA毒性は灰色で示される。色の欠如は効果の欠如に対応する。確認実験のために選択されたUSPは、緑で強調される(USP5、USP13、USP19、USP21、USP22、USP26、USP28、USP38、USP42およびUSP46)。USPのペアを標的とするために設計されたsiRNAは、表の右側に示される。
【図2】HCT116細胞におけるUSP13スクリーニング HCT116細胞において、Luc(ルシフェラーゼ、ネガティブコントロール)、Mcl−1(ポジティブコントロール)またはUSP13(siRNA13v1、siRNA13v2、siRNA13v3)を標的とする様々なsiRNAの存在下、内在性Mcl−1の発現を明らかにするウエスタンブロット(抗Mcl−1)。より弱い曝露もBに示される。抗stat3抗体はローディングコントロールとして使用された。タイムコースは、分析の前に細胞がタンパク質合成阻害剤(シクロヘキシミド)に曝露された時間に対応する。
【図3】HCT116細胞におけるUSP26スクリーニング HCT116細胞において、Luc(ルシフェラーゼ、ネガティブコントロール)、Mcl−1(ポジティブコントロール)またはUSP26(siRNA26v1、siRNA26v2、siRNA26v3)を標的とする様々なsiRNAの存在下、内在性Mcl−1の発現を明らかにするウエスタンブロット(抗Mcl−1)。抗stat3抗体はローディングコントロールとして使用された。タイムコースは、分析の前に細胞がタンパク質合成阻害剤(シクロヘキシミド)に曝露された時間に対応する。
【図4】HCT116細胞におけるUSP38スクリーニング HCT116細胞において、Luc(ルシフェラーゼ、ネガティブコントロール)、Mcl−1(ポジティブコントロール)またはUSP38(siRNA38v1、siRNA38v2、siRNA38v3)を標的とする様々なsiRNAの存在下、内在性Mcl−1の発現を明らかにするウエスタンブロット(抗Mcl−1)。抗stat3抗体はローディングコントロールとして使用された。タイムコースは、分析の前に細胞がタンパク質合成阻害剤(シクロヘキシミド)に曝露された時間に対応する。
【図5】HCT116細胞におけるUSP42スクリーニング HCT116細胞において、Luc(ルシフェラーゼ、ネガティブコントロール)、Mcl−1(ポジティブコントロール)またはUSP42(siRNA42v1、siRNA42v2、siRNA42v3)を標的とする様々なsiRNAの存在下、内在性Mcl−1の発現を明らかにするウエスタンブロット(抗Mcl−1)。抗stat3抗体はローディングコントロールとして使用された。タイムコースは、分析の前に細胞がタンパク質合成阻害剤(シクロヘキシミド)に曝露された時間に対応する。
【図6】HCT116細胞におけるUSP46スクリーニングHCT116細胞において、Luc(ルシフェラーゼ、ネガティブコントロール)、Mcl−1(ポジティブコントロール)またはUSP46(siRNA46v1、siRNA46v2、siRNA46v3)を標的とする様々なsiRNAの存在下、内在性Mcl−1の発現を明らかにするウエスタンブロット(抗Mcl−1)。抗stat3抗体はローディングコントロールとして使用された。タイムコースは、分析の前に細胞がタンパク質合成阻害剤(シクロヘキシミド)に曝露された時間に対応する。
【図7】PC3細胞におけるフェノタイプ/サイレンシング相関性研究 Mcl−1内在性レベルが、ルシフェラーゼ、Mcl−1またはUSP46を標的とするいくつかのsiRNA存在下、PC3細胞において決定された(A)。抗アクチン抗体はローディングコントロールとして使用された。Mcl−1(B)およびUSP46(C)mRNAレベルは、ルシフェラーゼ(Luc、ネガティブコントロール)、Mcl−1またはUSP46を標的とするsiRNAのPC3トランスフェクション後、定量的RT−PCRによって決定された。結果は、四つの値の平均+/−標準偏差として示される。
【図8】H196細胞におけるフェノタイプ/サイレンシング相関性研究 Mcl−1内在性レベルが、ルシフェラーゼ、Mcl−1またはUSP46を標的とするいくつかのsiRNA存在下、H196細胞において決定された(A)。抗アクチン抗体はローディングコントロールとして使用された。Mcl−1(B)およびUSP46(C)mRNAレベルは、ルシフェラーゼ(Luc、ネガティブコントロール)、Mcl−1またはUSP46を標的とするsiRNAのPC3トランスフェクション後、定量的RT−PCRによって決定された。結果は、四つの値の平均+/−標準偏差として示される。
【図9】H1703細胞におけるフェノタイプ/サイレンシング相関性研究 Mcl−1内在性レベルが、ルシフェラーゼ、Mcl−1またはUSP46を標的とするいくつかのsiRNA存在下、H1703細胞において決定された(A)。抗アクチン抗体はローディングコントロールとして使用された。Mcl−1(B)およびUSP46(C)mRNAレベルは、ルシフェラーゼ(Luc、ネガティブコントロール)、Mcl−1またはUSP46を標的とするsiRNAのPC3トランスフェクション後、定量的RT−PCRによって決定された。結果は、四つの値の平均+/−標準偏差として示される。
【図10】HEK293細胞におけるフェノタイプ/サイレンシング相関性研究 Mcl−1内在性レベルが、ルシフェラーゼ、Mcl−1またはUSP46を標的とするいくつかのsiRNA存在下、HEK293細胞において決定された(A)。抗アクチン抗体はローディングコントロールとして使用された。Mcl−1(B)およびUSP46(C)mRNAレベルは、ルシフェラーゼ(Luc、ネガティブコントロール)、Mcl−1またはUSP46を標的とするsiRNAのPC3トランスフェクション後、定量的RT−PCRによって決定された。結果は、四つの値の平均+/−標準偏差として示される。
【図11】Hela細胞におけるフェノタイプ/サイレンシング相関性研究 Mcl−1内在性レベルが、ルシフェラーゼ、Mcl−1またはUSP46を標的とするいくつかのsiRNA存在下、H196細胞において決定された(A)。抗アクチン抗体はローディングコントロールとして使用された。Mcl−1(B)およびUSP46(C)mRNAレベルは、ルシフェラーゼ(Luc、ネガティブコントロール)、Mcl−1またはUSP46を標的とするsiRNAのPC3トランスフェクション後、定量的RT−PCRによって決定された。結果は、四つの値の平均+/−標準偏差として示される。
【図12】HeLa細胞のABT−737への感作に対するUSP46サイレンシングの影響 カスパーゼ3アッセイが、ルシフェラーゼ(luc、ネガティブコントロール)、mcl−1またはUSP−46を標的とするsiRNAをトランスフェクションされ、DMSO(ネガティブコントロール)またはABT−737(3〜10μM)で6時間処理されたHeLa細胞におけるカスパーゼ3活性をモニターするために使用された。細胞ライセートがカスパーゼ活性について試験された(A)。結果は、三つの値の平均+/−標準偏差として示され、二回の独立した実験の代表値である。Mcl−1内在性レベルおよび断片化されたPARPも、ルシフェラーゼ、Mcl−1またはUSP46を標的とするsiRNAの存在下決定された(B)。抗−stat3抗体がローディングコントロールとして使用された。
【図13】luc、mcl−1、USP46v1、USP46v4またはUSP46プールのsiRNAをトランスフェクションされたHeLa癌細胞のフローサイトメトリー。細胞サイクルはsiRNAトランスフェクション後72時間、ABT−737処理(3μM)後18時間に決定された。
【図14】siRNAトランスフェクション後72時間およびABT−737処理後24時間に決定されたHeLa細胞におけるABT−737誘導subG1移行。subG1(<2N)の細胞のパーセンテージは、2つの値の平均+/−標準偏差である(A)。内在性Mcl−1レベルもルシフェラーゼ、Mcl−1またはUSP46を標的とするsiRNAの存在下決定された。抗Stat3抗体は、ローディングコントロールとして使用された(B)。
【図15】E.coliから精製された野生型および触媒に関する変異体(C44A)のGST−USP46タンパク質の脱ユビキチン化活性。野生型および触媒に関する変異体のUSP46タンパク質の酵素活性はインビトロで様々な酵素濃度および固定されたインキュベーション時間(90分)で、基質としてUbAMC(400nM)を用いて評価された(A)。野生型および触媒に関する変異体のUSP46タンパク質の固定された濃度の酵素(400nM)および基質(800nM)での酵素活性の速度論的アッセイ(B)。すべての結果は三つの値の平均+/−標準偏差で記載される。
【0037】
実施例
1 材料および方法
1.1 siRNA設計および合成
ホスホルアミダイドを用いて化学的に合成された19−merのsiRNAはプロリゴより購入された。siRNAは、Tuschlおよび同僚により記載されたように(Elbashir et al. (2001). Duplexes of 21-nucleotide RNAs mediate RNA interference in cultured mammalian cells. Nature 411, 494-8)、熱力学的な特徴に対する特別な注意と共に設計された(Khvorova et al. (2003). Functional siRNAs and miRNAs exhibit strand bias. Cell 115, 209-16)。siRNA特異性の研究に捧げられる手段は、インハウスで開発された。短く言えば、NCBI NRおよびESTデータベースがBLASTアルゴリズムによりそれぞれsiRNAおよび標的遺伝子と共に必要とされた。無関係なNRまたはESTエントリーと完全に(19/19)または部分的に(18/19ヌクレオチド)マッチするsiRNAは退けられた。
【0038】
1.2 細胞培養およびトランスフェクション
ヒト結腸癌HCT116細胞は、10%FBSを含むマッコイ5A培地中に維持された。培地には、100ユニット/mlペニシリンおよび0.1mg/mlストレプトマイシンが添加され、細胞系は5%CO2を含む加湿された大気中37℃でインキュベーションされた。
【0039】
スクリーニングのために、指示された量のsiRNA(40pmol、最終72nM)をOpti−MEM(Invitrogen)中、2μlのオリゴフェクタミン(Invitrogen)と複合体化させ、細胞を蒔く前に24穴プレートに添加した。150000のHCT116細胞が次に蒔かれた。Opti−MEMは、トランスフェクション後、5時間で適当な培地と交換された。トランスフェクションの72時間後および回収の前、細胞は30分間もしくは1時間シクロへキシミド(30μg/ml)で処理された、もしくは処理されなかったか、または90分間MG132(30μM)で処理された。
【0040】
1.3 細胞ライセートの調製およびウエスタンブロット分析
細胞は、一度、冷却されたPBS中洗浄され、トリプシン処理により回収された。浮遊しトリプシン処理された細胞は貯蔵され、遠心分離により回収された。細胞ペレットは、溶解バッファー(1×プロテアーゼ阻害剤混合物を含む2%SDS、Sigma)中、再懸濁され、10分間100℃に置かれ、5秒間超音波処理された。タンパク質は、製造者の説明書に従いビシンコニン酸(Sigma−Aldrich)を用いて定量化された。ライセートはSDS−ポリアクリルアミド(10%)ゲル電気泳動(SDS−PAGE)により分離され、ニトロセルロース膜にトランスファーされ、Mcl−1ウサギポリクローナル抗体(sc−819;SantaCruz)、Stat3ウサギポリクローナル抗体(9132;Cell Signaling)、アクチンマウスモノクローナル抗体(A4700;Sigma)、またはGAPDHマウスモノクローナル抗体(Ab8245;AbCam)で探索された。HRP結合抗ラビット抗体(7074;Cell Signaling)およびHRP結合抗マウス抗体(115−035−003;Jackson ImmunoResearch)は二次抗体として使用された。シグナルは、製造者の説明書に従い、ECL試薬(Amersham)を用いて検出された。
【0041】
1.4 細胞培養、トランスフェクションおよび薬理学的処理
使用されたすべての細胞系は、それぞれの培地に維持された。すべての培地は100ユニット/mlのペニシリンおよび0.1mg/mlのストレプトマイシンが添加され、細胞系は5%CO2を含む加湿された大気中37℃でインキュベーションされた。siRNAのトランスフェクションのために、siRNA(40pmol、最終72nM)はOpti−MEM(Invitrogen)中2μlのオリゴフェクタミン(Invitrogen)と複合体化され、細胞を蒔く前に24穴プレートに添加された。すべての条件においてOpti−MEMは、トランスフェクション後5時間で適当な培地で置換された。Hiperfect(Qiagen)が使用された時、siRNA(40pmol、最終72nM)は、Opti−MEM(Invitrogen)中、3μlのHiperfect(Qiagen)と複合体化され、細胞を蒔いた後、24穴プレートに添加された。トランスフェクションの48時間または72時間後および回収の前、細胞は、指示された時点に指示された濃度でABT737で処理された、またはされなかった。
【0042】
H1703細胞のようなトランスフェクションが困難な細胞は、AMAXA方式を用いてトランスフェクションされた。細胞は、最初に、特別なキュベット中、興味のあるsiRNAの存在下懸濁される。使用される細胞系に従って規定された電気パルスが、次に、Nucleofector装置中送達された。Nucleofectorでトランスフェクションされた細胞は、次に、製造者の説明書に従って、24穴または6穴プレートに蒔かれ、上記記載の様にABT737で処理された。
【0043】
1.5 脱ユビキチン化アッセイ
脱ユビキチン化酵素活性は、基質としてユビキチン−AMCまたはUb−AMC(ユビキチン−7−アミド−4−メチルクマリン、Boston Biochem、U−550)を用い、かつて記載されたように(Dang et al. (1998) Kinetic and mechanistic studies on the hydrolysis of ubiquitin C-terminal 7-amido-4-methylcoumarin by deubiquitinating enzymes. Biochemistry. 37(7):1868-79)、蛍光定量的なアッセイでモニターされた。ユビキチンのC−末端から放出されたAMCは、増強された蛍光を示し、それは蛍光リーダーでモニターできる。酵素および基質の両方が、実行の度、USP46反応バッファー(50mM Tris−HCl[pH8.4]、0.5mM EDTA、0.05mg/ml BSA、5mM DTT)中、新しく調製された。USP46およびUb−AMCの反応混合物は、室温で2時間インキュベーションされ、反応は10μlの酢酸(最終濃度250mM)を添加することによって停止された。蛍光発光強度はPHERAstar(BMG Labtech)機器で測定され、クマリンフィルターセット(λex=360nm、λem=460nm)を使用した。
【0044】
2. 結果
2.1 HTC116細胞におけるUSPスクリーニング
Mcl−1脱ユビキチン化、従ってMcl−1の安定化に関連するユビキチン特異的プロテアーゼを同定するために、全USPファミリーがHCT116癌細胞におけるMcl−1の半減期についてRNA干渉によりスクリーニングされた。スクリーニングされた60個のUSPタンパク質のうち、10個のUSP(USP5、USP13、USP19、USP21、USP22、USP26、USP28、USP38、USP42およびUSP46)は所望のフェノタイプ、つまり、実質的なMcl−1の減少を有して同定された(特定の時点において、3個のsiRNAのうち少なくとも2個が50%より多いMcl−1の減少を示した。)。USPサイレンシングおよびシクロヘキシミド処理後の、Mcl−1調節の模式的表示が図1に示される。
【0045】
2.2 選択されたUSPに関する確認実験
一次スクリーニングで得られた結果を確認するために、独立した実験が10個の選択されたUSPについて実施された。データは一次スクリーニングの結果の10個のUSPのうち5個のUSP(USP13、USP26、USP38、USP42およびUSP46)について確認された。確認実験のウエスタンブロットの結果は図2から図6に示される。これらの結果は、シクロヘキシミド処理後(異なるタイミングでのLuc siRNAを比較)およびMcl−1サイレンシング後、内在性Mcl−1の有意な減少が観察されたことを明らかにした。興味深いことに、これらのタンパク質中、3個の異なるUSPは、3個のうち2個のsiRNAで、Mcl−1の定常状態レベルに有意な効果を有することが示された:USP13、USP42およびUSP46。
【0046】
それ故、HCT116細胞におけるMcl−1の半減期に関するRNA干渉による60個のヒトUSPのスクリーニングから、Mcl−1安定化について5個のUSP(USP13、USP26、USP38、USP42およびUSP46)の関与が確認された。すべてのこれらのタンパク質は、触媒活性に必須なアミノ酸を含み、それ故、機能的な脱ユビキチン化活性を示唆する。実際、USP42、USP46およびUSP38はかつてインビトロで活性であることが示された。
【0047】
2.3 PC3、H196、H1703、HEK293およびHeLa細胞におけるMcl−1 mRNAおよびタンパク質レベルに対するUSP46サイレンシングの効果
PC3、H196、H1703、HEK293およびHeLa細胞における内在性Mcl−1タンパク質レベルに対するMcl−1 siRNAの効果がモニターされ、Mcl−1レベルの強力な減少が示され、これらの細胞系における非常によいトランスフェクション効率を示唆した(おのおの図7から図10)。その意味で、内在性Mcl−1タンパク質レベルは、USP46サイレンシング後評価された。PC3、H196、H1703、HEK293およびHeLa細胞において、独立したUSP46 siRNAによるMcl−1タンパク質レベルの有意な減少が観察される(USP46v3、USP46v4および活性USP46 siRNAのプール)(おのおの図7から図11)。
【0048】
内在性Mcl−1 mRNAレベルは、次に、PC3、H196、H1703、HEK293およびHeLa細胞において、USP46によるMcl−1レベルの転写調節を除外するために、定量的PCRによって決定された。USP46サイレンシング後のMcl−1 mRNAレベルに有意な減少は観察されず(おのおの図7から図11)、PC3、H196、H1703、HEK293およびHeLa細胞におけるUSP46仲介Mcl−1調節が転写後の事象であることを示す。最後に、コントロールとして、USP46を標的とするすべての試験されたsiRNAはUSP46 mRNAレベルに影響を与えた:
PC3細胞において>68%の減少
H196細胞において>62%の減少
H1703細胞において>46%の減少
HEK293細胞において>90%の減少
HeLa細胞において>80%の減少が確認される(おのおの図7から図11)。
【0049】
これらの結果は、USP46が、PC3、H196、H1703、HEK293およびHeLa細胞系において、Mcl−1安定化に関わることを示し、従って、HCT116細胞での先の発見を確認する。
【0050】
2.4 ABT−737誘導HeLa細胞死に対するMcl−1およびUSP46サイレンシングの効果
このアッセイは、ABT−737仲介アポトーシスに対するHeLa細胞の感作に対するUSP46 siRNAの効果を評価するために使用された。我々のポジティブコントロール、Mcl−1 siRNAは、カスパーゼ3活性の2.7倍の上昇により示されるように、ABT−737仲介アポトーシスに対して細胞を感作した(図12A)。興味深いことに、USP46v1およびUSP46v4 siRNAは、ABT−737処理後、カスパーゼ3活性の有意な上昇となった(3μM ABT−737でv1:1.5倍;v4:2倍誘導)(図12A)。重要なことに、Mcl−1ノックダウンのレベルと緊密に相関した、ABT−737により仲介されるカスパーゼ3活性の誘導が観察される(図12B)。同じ条件でのPARP切断もモニターされ、Mcl−1 siRNAで切断されたPARPバンドの増加、およびUSP46 siRNAで切断されたPARPバンドの中程度の増加が観測され、それ故、カスパーゼの結果を確認した(図12B)。
【0051】
HeLa細胞におけるABT−737誘導アポトーシスに対する細胞の感作へのUSP46 siRNAの影響を確認するために、主にアポトーシスを反映するsubG1期の細胞の数が定量された。Mcl−1 siRNAと同様に、非処理HeLa癌細胞において、USP46 siRNAはアポトーシスを誘導した(図13Aおよび図14A)。実際、Luc処理細胞は21.4±0.6%のsubG1細胞を示し、一方、Mcl−1処理細胞(46.2±2.2%)、USP46v1処理細胞(34±4%)、USP46v4処理細胞(29.3±0.3%)およびUSP46プール処理細胞(40±11%)は、より多い量のsubG1細胞を示した(図13Aおよび14A)。Luc処理細胞において、ABT−737(3μM)存在下、subG1細胞の少しの増加が観察された(35%±6.6%のsubG1細胞)(図13Aおよび図14A)。対照的に、細胞がABT−737存在下Mcl−1 siRNAで処理された時、subG1細胞の強力な増加が示された(63%±2%のsubG1細胞)(図13Aおよび14A)。興味深いことに、USP46v1、USP46v4、および活性USP46 siRNAのプールも、コントロールsiRNAのトランスフェクションされた細胞と比較した時、ABT−737処理されたsubG1細胞の顕著な増加を誘導した(v1:60.7%±5.4%;v4:51.3%±1.2% プール:62.4%±0.1%のsubG1細胞)(図13Aおよび14A)。ABT−737の存在下、Mcl−1ノックダウンのレベルと緊密に相関したsubG1誘導の程度が観察される(図13B)。
【0052】
結論として、Mcl−1サイレンシングと同様に、USP46サイレンシングは非処理HeLa癌細胞においてMcl−1レベルを減少させアポトーシスを誘導し、ABT−737誘導細胞死にHeLa細胞を感作する。興味深いことに、ABT−737感作におけるこれらの違いは常にMcl−1レベルのサイレンシング効果と相関していた:USP46 siRNAトランスフェクション後、よりMcl−1が減少すれば、よりUSP46仲介感作が観察される。USP46サイレンシングは、カスパーゼ3アッセイ、PARP切断およびsubG1分析により評価された時、ネガティブコントロール(Luc siRNA)とポジティブコントロール(Mcl−1サイレンシング)の中間レベルで、細胞をABT−737に対して有意に感作することが示された。まとめると、これらの結果は、HeLa子宮頸癌細胞において、Mcl−1調節に対するUSP46の関与を確認する。同様の発見がHCT116、PC3、H1703およびH196細胞においても観察された。
【0053】
2.5 インビトロでのUSP46のタンパク質分解活性
インビトロで野生型および変異体両方の精製されたタンパク質の脱ユビキチン化活性が比較される。野生型および変異の酵素の両方は、Ub−AMCアッセイを用いて容量依存的反応において試験された(図15)。興味深いことに、野生型USP46タンパク質は、Ub−AMCを容量依存的に加水分解した。対照的に、触媒的に不活性な変異体の容量依存的効果が観察され、それ故、変異GST−USP46と共精製された脱ユビキチン化活性がないことが示唆される(図15A)。これらの発見を確認するために、GST−USP46の反応速度論的実験が実施される。酵素および基質の固定された濃度において、野生型USP46タンパク質でUb−AMC加水分解の時間依存的増加が観測されるが、変異型では観察されない(図15B)。まとめると、これらの結果は、正しいシグナル/バックグラウンド割合を伴う特異的なUSP46仲介脱ユビキチン化活性の同定を確認する。
【図1−1】
【図1−2】
【図1−3】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌処置用薬剤のスクリーニング手段としての、
a)USP13、USP26、USP38、USP42またはUSP46からなるポリペプチド;
b)ポリペプチドUSP13、USP26、USP38、USP42またはUSP46の、脱ユビキチン化活性を示す機能的フラグメント;
c)USP13、USP26、USP38、USP42またはUSP46からなり、脱ユビキチン化活性を示すポリペプチドと84%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド
からなる群から選択されるポリペプチドの使用。
【請求項2】
癌処置用薬剤のスクリーニング手段としての、ポリペプチドUSP46またはその機能的フラグメントもしくは実質的に相同な配列の請求項1記載の使用。
【請求項3】
癌処置用薬剤のスクリーニング手段としての、請求項1記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換され、そしてそのポリペプチドを発現する細胞の使用。
【請求項4】
a)請求項3記載の細胞またはその細胞膜を、試験される化合物と接触させ;そして
b)Mcl−1が安定化されているかどうか分析する
工程を含む癌処置用薬剤のスクリーニング方法。
【請求項5】
癌処置用薬剤がMcl−1の脱安定化剤である請求項4記載のスクリーニング方法。
【請求項6】
a)請求項3記載の細胞またはその細胞膜を、試験される化合物と接触させ;そして
b)ユビキチン化の割合を分析する
工程を含む癌処置用薬剤のスクリーニング方法。
【請求項7】
請求項1記載のポリペプチドの活性を減少させる薬剤の有効量を、それを必要としている患者に投与することを含む癌処置のための方法。
【請求項8】
請求項1記載のポリペプチドの活性を減少させる薬剤および癌に対して活性な薬剤の有効量を、それを必要としている患者に投与することを含む癌処置のための方法。
【請求項9】
請求項1記載のポリペプチドの活性を減少させる薬剤の有効量を、それを必要としている患者に投与することを含む癌の進行を遅延させる方法。
【請求項1】
癌処置用薬剤のスクリーニング手段としての、
a)USP13、USP26、USP38、USP42またはUSP46からなるポリペプチド;
b)ポリペプチドUSP13、USP26、USP38、USP42またはUSP46の、脱ユビキチン化活性を示す機能的フラグメント;
c)USP13、USP26、USP38、USP42またはUSP46からなり、脱ユビキチン化活性を示すポリペプチドと84%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド
からなる群から選択されるポリペプチドの使用。
【請求項2】
癌処置用薬剤のスクリーニング手段としての、ポリペプチドUSP46またはその機能的フラグメントもしくは実質的に相同な配列の請求項1記載の使用。
【請求項3】
癌処置用薬剤のスクリーニング手段としての、請求項1記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換され、そしてそのポリペプチドを発現する細胞の使用。
【請求項4】
a)請求項3記載の細胞またはその細胞膜を、試験される化合物と接触させ;そして
b)Mcl−1が安定化されているかどうか分析する
工程を含む癌処置用薬剤のスクリーニング方法。
【請求項5】
癌処置用薬剤がMcl−1の脱安定化剤である請求項4記載のスクリーニング方法。
【請求項6】
a)請求項3記載の細胞またはその細胞膜を、試験される化合物と接触させ;そして
b)ユビキチン化の割合を分析する
工程を含む癌処置用薬剤のスクリーニング方法。
【請求項7】
請求項1記載のポリペプチドの活性を減少させる薬剤の有効量を、それを必要としている患者に投与することを含む癌処置のための方法。
【請求項8】
請求項1記載のポリペプチドの活性を減少させる薬剤および癌に対して活性な薬剤の有効量を、それを必要としている患者に投与することを含む癌処置のための方法。
【請求項9】
請求項1記載のポリペプチドの活性を減少させる薬剤の有効量を、それを必要としている患者に投与することを含む癌の進行を遅延させる方法。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2012−507277(P2012−507277A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533852(P2011−533852)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際出願番号】PCT/IB2009/007458
【国際公開番号】WO2010/049816
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(500287019)レ ラボラトワール セルヴィエ (166)
【出願人】(503047685)
【氏名又は名称原語表記】HYBRIGENICS
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際出願番号】PCT/IB2009/007458
【国際公開番号】WO2010/049816
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(500287019)レ ラボラトワール セルヴィエ (166)
【出願人】(503047685)
【氏名又は名称原語表記】HYBRIGENICS
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]