説明

MCM−22族モレキュラーシーブ組成物、その合成法及び炭化水素変換におけるその使用法

本開示は、モレキュラーシーブの50wt%より多くがSEMにより測定したとき結晶の直径が1μmより大きい、血小板凝集様形態(platelet aggregates morphology)をもつ結晶性MCM-22族モレキュラーシーブに関する。本開示の結晶性MCM-22属モレキュラーシーブは、放射状の晶癖の形態又は多層の小板状の形態である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本願発明は新規のMCM-22族のモレキュラーシーブ組成物、この組成物の合成法及び炭化水素を変換するためのこの組成物の使用法に関する。特に、本願発明は、SEMにより測定したとき結晶の直径が1μmより大きいモレキュラーシーブを50wt%より多く含む新規のMCM-22属(MCM-22 family)モレキュラーシーブ組成物、その合成方法及び炭化水素を変換するための組成物の使用法に関する。
【背景技術】
【0002】
本開示の背景
モレキュラーシーブは過去、天然品と合成品の両者とも種々の炭化水素の変換について触媒特性をもつことが実証されている。ある種のモレキュラーシーブ、ゼオライト、AlPO類(AlPOs)、メソ多孔性物質(mesoporous materials)はX線-回折(XRD)による解析によれば、明確な結晶性構造をもつ秩序だった多孔性構造の結晶性物質であることが判っている。この結晶性モレキュラーシーブ物質の内部には、多くの経路又は細孔により相互に連通する多くの空洞(cavity)がある。これらの空洞や細孔は特定のモレキュラーシーブ物質の内部では大きさが均一である。これらの細孔の大きさは、ある大きさより大きい分子は吸着せず、その大きさ以下の分子は吸着するようなものであるので、これらの物質は「分子のふるい(molecular sieves)」として知られるようになり、種々の工業的方法で利用されている。
【0003】
このようなモレキュラーシーブは、天然品又は合成品の両者ともに広い範囲の陽イオン含有結晶性珪酸塩を含んでいる。これらの珪酸塩は、SiO4と周期律表の13族の原子の酸化物(例.AlO4)からなる固定した三次元のフレーム構造として記述できる。正四面体が酸素原子を共有することにより交差して結合し、13族の原子(例、アルミニウム)とケイ素原子の合計の酸素原子に対する比は1:2である。13族の原子(例.アルミニウム)を含む正四面体の荷電数は、結晶内にカチオン、例えばプロトン、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオンを含むことにより中和されている。これは、13族の原子(例.アルミニウム)の種々のカチオン、例えば、H、Ca2+/2、Sr2+/2、Na+、K+、又はLi+の数に対する比が1に等しいと表わされる。
【0004】
触媒に用いられるモレキュラーシーブは天然の又は合成のモレキュラーシーブのいずれかを含む。これらのゼオライトの例は大きな細孔のゼオライト、中間的な大きさのゼオライト及び小さな細孔のゼオライトを含む。これらのゼオライトとその同形構造物(isotype)はAtlas of Zeolite Framework Types W.H.Meier、D.H.Olson及びCh.Baerlocher編、第5版、2001年に記載され、これは参照により本願に組み入れられる。大きな細孔のゼオライトは一般に少なくとも約7Åの大きさの細孔をもちLTL、VFI、MAZ、FAU、OFF、BEA及びMORのフレーム構造の種類のゼオライトを含む(ゼオライト命名IUPAC委員会)。大きな細孔のゼオライトは、マズザイト(mazzite)、オフレタイト(offretite)、ゼオライトL(zeolite L)、VPI-5、ゼオライトY、ゼオライトX、オメガ及びベータを含む。中間的な大きさの細孔ゼオライトは一般に約5Åから約7Å未満の大きさの細孔をもち、例えば、MFI、MEL、EUO、MTT、MFS、AEL、AFO、HEU、FER、MWW及びTONフレーム構造(ゼオライト命名IUPAC委員会)のゼオライトを含む。中間的な大きさの細孔のゼオライトの例はZSM-5、ZSM-11、ZSM-22、MCM-22、シリカライト(silicalite)1、シリカライト2を含む。小さな細孔のゼオライトは約3Åから約5Å未満の大きさの細孔をもち、例えばCHA、ERI、KFI、LEV、SOD及びLTAフレーム構造(ゼオライト命名IUPAC委員会)のゼオライトを含む。小さい細孔のゼオライトの例はZK-4、ZSM-2、SAPO-34、SAPO-35、ZK-14、SAPO-42、ZK-21、ZK-22、ZK-5、ZK-20、ゼオライトA、チャバザイト(chabazite)、ゼオライトT、グメリナイト(gmelinite)、ALPO-17及びクリノプチロライト(clinoptilolite)を含む。
【0005】
米国特許第4,439,409号はPSH-3と命名された物質からなる結晶性モレキュラーシーブ組成物と、ヘキサメチレンイミン、つまりMCM-56(米国特許第5,362,697号)の合成用の指向剤(directing agent)として作用する有機化合物を含む水熱反応混合物からのその合成について述べている。ヘキサメチレンイミンはまた結晶性モレキュラーシーブMCM-22(米国特許第4,954,325号)及びMCM-49(米国特許第5,236,575号)の合成に用いられることもまた記載されている。ゼオライトSSZ-25といわれる物質からなるモレキュラーシーブ組成物(米国特許第4,826,667号)はアダマンタン四級アンモニウムイオンを含む水熱反応混合物から合成される。米国特許第6,077,498号はITQ-1と命名された物質からなる結晶性モレキュラーシーブ組成物と1の又は複数の有機添加剤を含む水熱反応混合物からのその合成について述べている。
【0006】
用語「MCM-22属物質」(又は「MCM-22属の物質」又は「MCM-22属のモレキュラーシーブ」)は、本願で使用するとき、以下を含む。
(i) 共通の一次の結晶性構成単位「MWWフレーム構造の単位格子」からなるモレキュラーシーブ。単位格子とは、Atlas of Zeolite Framework Types 第5版、2001年(この全内容は、参照により組み込まれる)で記載されているように、結晶を構成するように三次元空間に原子が配列されているものである。
(ii) 共通の二次の構成単位、1個から作られるモレキュラーシーブ。当該MWWフレーム構造の単位格子の二次元配列が、「一単位格子の厚みのある単一層」を、好ましくは1個のc-単位格子の厚みをもつものを形成している。
(iii) 共通の二次の複数の構成単位から形成されるモレキュラーシーブ。「1以上の単位格子の厚みのある層」であって、2以上の単位格子の厚みのあるこの層は、MWWフレーム構造をもつ1単位格子の厚みのある単一層を少なくとも2個を重ね合わせ、充填し又は結合することにより作られる。このような二次の構成単位の重ね合わせは、規則的に、不規則に、無作為にまたはそれらのいずれかの組合せにより行われ得る。又は
(iv) MWWフレーム構造配列をもつ単位格子の規則的な又は無作為な二次元又は三次元のいずれかの組合せにより作られるモレキュラーシーブ。
【0007】
MCM-22属物質は、12.4±0.25、3.57±0.07及び3.42±0.07オングストローム(焼成されたとき又は合成された状態)にd-スペーシング極大(d-spacing maxima)を含むX線回折パターンをもつことにより特徴付けられる。MCM-22属の物質はまた、12.4±0.25、6.9±0.15、3.57±0.07及び3.42±0.07オングストローム(焼成されたとき又は合成された状態)にd-スペーシング極大を含むX線回折パターンをもつことによっても特徴付けられる。前記モレキュラーシーブを特徴付けるために使用されるX線回折データは、入射光としての銅のK-アルファダブレット(K-alpha doublet)と集光システムとしてシンチレーションカウンターと付属のコンピューターを備えた回折計を使用する標準的技術により得られる。MCM-22属物質に属する物質はMCM-22(米国特許第4,954,325号に記載)、PSH-3(米国特許第4,439,409号に記載)、SSZ-25(米国特許第4,826,667号に記載)、ERB-1(欧州特許第0293032号に記載)、ITQ-1(米国特許第6,077,498号に記載)、ITQ-2(国際公開第WO97/17290号に記載)、ITQ-30(国際公開第WO2005118476号に記載)及びMCM-36(米国特許第5,250,277号に記載)、MCM-49(米国特許第5,236,575号に記載)及びMCM-56(米国特許第5,362,697号に記載)を含む。前記特許はその全内容が参照により本願に組み入れられる。
【0008】
上記のMCM-22属のモレキュラーシーブが従来の大きな細孔のゼオライトアルキル化反応触媒、例えばモルデナイト(mordenite)と、MCM-22物質がモレキュラーシーブの10員環の内部孔系と連通していない12員環の表面の孔をもっている点で区別される。
【0009】
MWW配列であるとしてIZA-SCにより指定されたゼオライト物質は、10員環と12員環の両者の存在から生じる2つの細孔システムをもつ多層物質である。Atlas of Zeolite Framework Typesは、5の異なる名前を付された物質をこの同じ配列をもつものとして分類している。即ち、MCM-22、ERB-1、ITQ-1、PSH-3及びSSZ-25である。
【0010】
MCM-22属のモレキュラーシーブは種々の炭化水素変換法に有用であることが見出されている。MCM-22属モレキュラーシーブの例はMCM-22、MCM-49、MCM-56、ITQ-1、PSH-3、SSZ-25及びERB-1である。そのようなモレキュラーシーブは芳香族化合物のアルキル化に有用である。例えば、米国特許第6,936,744号はモノアルキル化された芳香族化合物、特にクメンを生産する方法を開示している。この方法はポリアルキル芳香族化合物と、アルキル化可能な芳香族化合物とを少なくとも一部が液体相である条件下、トランスアルキル化触媒の存在下に接触させモノアルキル芳香族化合物を生産する段階を含む。ここでトランスアルキル化触媒は少なくとも2つの異なる結晶性モレキュラーシーブの混合物を含み、各モレキュラーシーブはゼオライトベータ、ゼオライトY、モルデナイト及びd-スペーシング極大を12.4±0.25、6.9±0.15、3.57±0.07及び3.42±0.07オングストロームに含むX線回折パターンをもつ物質から選択される。
【発明の概要】
【0011】
発明が解決しようとする課題
結晶の形態、大きさ及び集合/凝集は触媒の挙動、特に触媒の活性と安定性に関して、影響を及ぼしえることが知られている。そのため、新規な結晶性モレキュラーシーブ組成物とそのような新規の結晶性モレキュラーシーブ組成物をつくる方法、特に異なる形態のモレキュラーシーブが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の要約
ある実施態様では、本開示は合成された状態において、血小板凝集様形態をもち、好ましくは当該血小板凝集様形態が放射状の晶癖の形態である、結晶性MCM-22属モレキュラーシーブに関する。
【0013】
本開示のある面では、モレキュラーシーブの板状結晶は多層状の板である。本開示の別の面では、モレキュラーシーブの板状結晶は多くのサブ結晶(sub-crystal)を含む。
【0014】
本開示のある実施態様では、SEMで測定したときモレキュラーシーブの50wt%より多くが1μmより大きい、好ましくは2μmより大きい、選択により5μmより大きい結晶の直径をもつ。
【0015】
本開示のある実施態様ではモレキュラーシーブの、50wt%より多くがSEMで測定したとき約0.04μmの厚みをもつ。
【0016】
別の実施態様では、本開示は結晶性MCM-22属のモレキュラーシーブを製造する方法に関し、この方法は以下の段階を含む。
(a) 少なくとも1のケイ素を与える物質(silicon source)、少なくとも1のアルカリ又はアルカリ土類金属元素の少なくとも1つを与える物質(source)、少なくとも1の指向剤(R)、水、及び任意に少なくとも1のアルミニウムを与える物質を併せ、以下のモルの組成をもつ混合物を生成する。
Si:Al = 10:無限
H2O:Si = 1から10000
OH:Si = 0.001から2
M+:Si = 0.001から2
R:Si = 0.001から2
ここでMはアルカリ金属でありRはシクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロヘプチルアミン、ヘキサメチレンイミン、ヘプタメチレンイミン、ホモピペラジン及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
(b) この混合物を結晶化条件で前記の所望の結晶性モレキュラーシーブを含む生成物とし、ここで結晶化条件は、100℃から250℃までの範囲の温度、約1時間から200時間の結晶化時間、及び選択により0から約60未満の範囲の撹拌速度である。
(c)このモレキュラーシーブを回収する。
加えて、本開示は炭化水素変換法に関し、以下の段階を含む。
(a )本開示の 結晶性MCM-22属のモレキュラーシーブと炭化水素原料を接触させ、変換条件下、変換生成物を生成する。
【0017】
本願発明のこれら及び他の面は以下の詳細な説明、図、及び添付した請求項から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図面の説明
【図1】は,参照例Aの合成された状態のMCM-22属モレキュラーシーブ製品のX線回折パターンを示す。
【図2】は、参照例Aの合成された状態のMCM-22属モレキュラーシーブ製品のSEM画像を示す。
【図3A】は120時間での実施例1の合成された状態のMCM-22属モレキュラーシーブ製品のX線回折パターンを示す。
【図3B】は、168時間での実施例1の合成された状態のMCM-22属モレキュラーシーブ製品のX線回折パターンを示す。
【図4】は、実施例の1の合成された状態のMCM-22属モレキュラーシーブ製品のSEM画像を示す。
【図5】は、実施例2の合成された状態のMCM-22属のモレキュラーシーブ製品のX線回折パターンを示す。
【図6A】は、実施例2の合成された状態のMCM-22属のモレキュラーシーブ製品のSEM画像を示す。
【図6B】は、実施例2の合成された状態のMCM-22属のモレキュラーシーブ製品のSEM画像を示す。
【図7】は、48時間における実施例3の合成された状態のMCM-22属のモレキュラーシーブ製品のX線回折パターンを示す。
【図8】は、実施例3の合成された状態のMCM-22属のモレキュラーシーブ製品のSEM画像を示す。
【図9】は、実施例4の合成された状態のMCM-22属のモレキュラーシーブ製品のX線回折パターンを示す。
【図10】は、実施例4の合成された状態のMCM-22属のモレキュラーシーブ製品のSEM画像を示す。
【0019】
本開示の詳細な説明
序論
本願に引用した全ての特許、特許出願、試験手順、優先権証明書、論文、刊行物、手順書及び他の文書は参照により、その開示が本願の発明と不一致がない限り、その組み入れが許容される全ての法域において全て組み入れられる。
【0020】
複数の数値の下限と数値の上限が本願に記載されているときは、いずれの下限からいずれの上限までの範囲も認められる。
【0021】
本明細書で使用される場合、用語「フレーム構造タイプ(framework type)」とは、Atlas of Zeolite Framework Types、2001年に記載されている意味で用いられる。
【0022】
本願で使用される場合、周期律表の族の番号体系は、Chemical Engineering News,63(5),27(1985)で用いられているとおりである。
【0023】
本願で用いられる場合、「放射状の晶癖(rosette habit)」は、「放射状の重なったうすい板状の結晶」からなる板状の無機化合物をいう。放射状の晶癖をもつ結晶性物質は、American Mineralogist, 66巻、1054-1062頁の図4と図5に示され、これは放射状形態をもつ鉱物の顕微鏡写真を掲載している。American Mineralogist, 66巻、1054-1062頁の全ては参照により本願に組み入れられる。本開示の図6は、放射状の形態をもつ本開示の結晶性MCM-22属のモレキュラーシーブを示している。
【0024】
用語「血小板(platelet)様」形態とは本願で使用する場合、「薄い板状結晶(thin platelike crystals)」からなる無機化合物をいう。これらの薄い板状の結晶は凝集し血小板凝集様形態をもつ無機化合物を形成することともある。板状結晶は複数の層からなることもある。本開示の図2は、血小板様形態の結晶性MCM-22属モレキュラーシーブを示している。本開示の図4,8及び10は血小板様形態及び、又は凝集した血小板様形態をもつ本開示の結晶性MCM-22属モレキュラーシーブを示す。
【0025】
MCM-22属の物質が不純物、例えば非晶性物質、MWWフレーム構造ではない形態(例.MFI、MTW)をもつ単位格子、及び、又は他の不純物(例.重金属及び、又は有機炭化水素)、を含むことがあることは、本技術分野の技術者により理解されるであろう。本開示のMCM-22属のモレキュラーシーブと共存するMCM-22属でないモレキュラーシーブの典型的な例はケニヤナイト(Kenyaite)、EU-1、ZSM-50、ZSM-12、ZSM-48、ZSM-5、フェリエライト(Ferrierite)、モルデナイト(Mordenite)、ソダライト(Sodalite)、及び、又はアナルシン(Analcine)である。本開示のMCM-22属のモレキュラーシーブと共存する非MCM-22属のモレキュラーシーブの他の例は、EUO、MTW、FER、MOR、SOD、ANA及びまたはMFIのフレーム構造タイプをもつモレキュラーシーブである。本開示のMCM-22属の物質は実質的に非MCM-22属物質を含まないことが好ましい。本願で使用されるとき、用語「実質的にMCM-22属物質を含まない」とは、本開示のMCM-22属物質が、MCM-22属物質中に小部分(50%未満)の、好ましくは20wt%未満の非MCM-22属物質(「不純物」)を含むことを意味し、ここで重量%(wt%)は不純物と純相のMCM-22属物質の合計重量に基づいている。
【0026】
MCM-22属結晶性物質は以下のモル比の組成を持っている。
X2O3:(n)YO2
ここでXは原子価3の元素であり、例えばアルミニウム、ホウ素、鉄及び、又はガリウムであり、好ましくはアルミニウムである。Yは原子価4の元素であり、例えばケイ素及び又はゲルマニウム好ましくはケイ素であり、nは少なくとも約10、通常約10から約150、より普通には約10から約60、さらにより一般的には約20から約40である。合成された状態では、この物質は通常、無水物について、nモルのYO2に対する酸化物のモル数に関し、以下のような化学式をもつ。
(0.005-1)M2O :(1-4)R:X2O3:nYO2
ここでMはアルカリ又はアルカリ土類金属であり、Rは有機化合物部分である。MとR成分は合成時にそれを加えることにより、組み入れられ、通常は、本願の技術分野の技術者に良く知られている、及び、又は以後より詳しく述べられる合成後の処理法により除去される。
【0027】
この詳細な説明全体にわたり、モレキュラーシーブ物質を記述するため一般的なキャラクタリゼーション技術が使用されたことが理解されるべきである。これらの一般的技術は以下を決定する。
(a) X線回折(XRD)によるモレキュラーシーブ物質の構造と結晶化の程度
(b) 走査電子顕微鏡(SEM)により測定されたモレキュラーシーブ物質の形態と結晶の大きさ
(c) 原子吸光度スペクトル法、及び又は誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS又はICPMS)による化学的組成
(d) ブルナウアー・エメット・テラー法(Brunauer-Emmett-Teller(BET) method)により測定された吸着能と表面積
(e) 探査的反応により測定された触媒活性と触媒の安定性
【0028】
既知のMCM-22のX線粉末回折パターン
MCM-22結晶性物質はX線回折パターンにより他の結晶性物質から識別されるであろう。
【0029】
面間の間隔、dはオングストローム単位(Å)で計算され、ラインの相対的強度I/I0(ここでバックグランドI0に対する最も強いラインの強度を100として計数される)はプロファイル調整の一般的方法(profile fitting routine)(又は二次解析アルゴリズム)により導かれる。この強度はローレンツと分極効果について修正されていない。この相対的強度はVS=非常に強い(60より大きく100まで)、S=強い(40より大きく60まで)、M=中程度(20より大きく40まで)及びW=弱い(0から20)という記号で与えられる。単一線として記載される回折データはある条件下では、例えば結晶学的変化のような違いがあるとき、解像された又は部分的に解像された複数のラインとして現れることもある複数の重複したラインからなることもあることが理解されるべきである。典型的には、結晶学的変化は、構造の変化のない、単位格子パラメーターの小さい変化及び、又は結晶の対称性の変化を含みうる。相対的強度の変化を含めこれらの小さい効果はカチオン含量、フレーム構造の組成、細孔への充填の性質と程度、及び熱的及び、又は熱水的履歴の違いの結果としても起こりうる。
回折パターンの他の変化は物質間の重要な違いを示すことがあり、これはMCM-22を類似物質、例えばMCM-49、MCM-56及びPSH-3と比較する場合に生じる。
【0030】
このX線回折パターンは、本願の結晶性組成物の全ての種類について特徴的である。ナトリウム型は、他のカチオン型と同様に面の間の間隔の小さい変動及び相対強度の変化を伴うが実質的に同一のパターンを形成する。他の小さい変化は、その熱処理(例.焼成)の程度や、Y対Xの値、例えばケイ素対アルミニウム、特定のサンプル比率により起こりうる。
【0031】
合成された状態の形態において、既知のMCM-22結晶性物質は、下記の表Iにより他の既知の結晶性物質から区別されるX線回折パターンをもつ。
【表1】

【0032】
このような合成された状態の物質の例は先に述べた米国特許第4,954,325号の実施例1の物質である。米国特許第4,954,325号の実施例1の物質は以下の表IIに与えられるX線回折パターンをもつ。
【表2】

【0033】
走査電子顕微鏡(SEM)
米国特許第4,954,325号の製造方法に従い製造されたMCM-22モレキュラーシーブのSEM画像が図2に示されている。米国特許第4,954,325号の製造法に従ったMCM-22モレキュラーシーブは、SEMで決定された、薄い比較的明瞭でない六方晶系の平板の形態と約1μm未満の平均平板直径をもつ(図2)。大部分の平板状結晶は約0.5ミクロン(μm)より小さい平均平板直径をもつ。
【0034】
本開示の結晶性MCM-22属モレキュラーシーブのSEM画像は図4,6,8及び10に示されている。結晶性MCM-22モレキュラーシーブの結晶の大部分、好ましくは51wt%より多く、好ましくは75wt%より多くは、1μm、好ましくは2μm、より好ましくは3μm、ある場合は5μmより大きい平均平板直径をもつ。加えて、大部分、好ましくは51wt%より多い、より好ましくは75wt%より多い結晶性MCM-22モレキュラーシーブの結晶は、約0.04から約0.05μmの平均の平板の厚さをもつ。
【0035】
本開示(図4,6,8及び10)の結晶性モレキュラーシーブ(焼成後)のSEM画像は、血小板様形態の凝集物を示し、この平板状結晶は多くの層又は多くの平板状サブ結晶からなっている。本開示(図6)のこの結晶性MCM-22属のモレキュラーシーブ(焼成後)はさらに放射状の晶癖の形態を示している。
【0036】
表面積と吸着取り込み
モレキュラーシーブの全表面積は、窒素(液体窒素の温度,77K)の吸着-脱離を用いてブルナウアー・エメット・テラー法(BET法)により測定できる。内部表面積はブルナウアー・エメット・テラー(BET)測定のt-プロットを用いて計算される。外部表面積はブルナウアー・エメット・テラー測定により測定された全表面積から内部表面積を差し引いて計算される。
【0037】
本開示の結晶性モレキュラーシーブ(焼成後)は、好ましくは450m2/g、より好ましくは475 m2/g 、より好ましくは500 m2/g 、より好ましくは600m2/gより大きい総表面積(BET法により測定されたときの、外部と内部の表面積の合計)により特徴付けられよう。
【発明を実施するための形態】
【0038】
水熱反応混合物の調製
合成モレキュラーシーブは、適当な酸化物を与える物質を含んだ水性水熱反応混合物(合成混合物又は合成ゲル)から調製されることが多い。有機指向剤もまた、所期の構造をもつモレキュラーシーブの生成に影響を与える目的のためこの水熱反応混合物に含まれてもよい。このような指向剤の使用は、Zeolites、第3巻、1983年10月、282-291ページに掲載されたロック(Lok)らの「モレキュラーシーブの合成における有機分子の役割」(The Role of Organic Molecules in Molecular Sieve Synthesis)と題された論文で論じられている。
【0039】
水熱反応混合物の原料が適当に互いに混合された後、水熱反応混合物は適当な結晶化条件におかれる。そのような条件は普通、水熱反応混合物をできる限り撹拌しながら加熱して昇温することを含む。ある場合にはこの水熱反応混合物を室温でエイジングすることも望ましい。
【0040】
水熱反応混合物の結晶化が終了後、結晶性生成物はこの熱水性反応混合物の残りの部分、特にその液体の部分から分離して回収する。そのような回収は結晶を濾過し、これらの結晶を水で洗浄することを含んでも良い。しかし、結晶から水熱反応混合物の望ましくない残存物のすべてを除去するために、この結晶をできるだけ酸素存在下で、高温、例えば500℃で焼成することが必要なことが多い。このような焼成処理は結晶から水を除去するばかりでなく結晶の細孔に吸収され、その中でイオン交換部位を占めているかもしれない、有機指向剤の残部を分解及び、又は酸化することに役立つ。
【0041】
本開示の結晶性モレキュラーシーブは、アルカリ又はアルカリ土類金属(M)、例えば、ナトリウム、カリウムイオン、原子価が3である元素X、例えばアルミニウム、原子価が4の元素Y、例えばケイ素、を与える物質、有機(R )指向剤(これは以後更に詳しく説明される)及び水を含む水熱反応混合物から調製されても良く、この水熱反応混合物は、酸化物のモル比に関し以下の範囲内にある。
【表3】

【0042】
最終生成物に必要な種々の元素を与える物質は、合成混合物の調製方法と同様、実用化されているもののいずれでも良く、文献記載されているもののいずれでも良い。
【0043】
Yは元素の周期律表の4-14族から選択された原子価4の元素であり、例えばケイ素及び、又はゲルマニウムであり、好ましくはケイ素である。本開示のいくつかの実施態様では、YO2を与える物質は本開示の結晶生成物を得るために約30wt%の固体のYO2を含むことが好ましい。YO2がシリカのときは、好ましくは約30wt%の固体シリカを含むシリカ源、例えば、デグサ(Degussa)によりアエロジル(Aerosil)又はウルトラジル(Ultrasil)の販売名で販売されているシリカ(約90wt%のシリカを含む、沈殿され、スプレードライされたシリカ)、シリカの水性のコロイド状懸濁液、例えばグレースデビジョン(Grace Davison)から、ルドックス(Ludox)の販売名で販売されているもの、又はHiSil(沈殿された水和を受けたSiO2であって、約87重量%のシリカ、約6%の結合していない水及び4.5%の水和により結合した水を含み、約0.02ミクロンの粒子サイズをもつ)、を含むシリカ源の使用は、容易に上記の混合物からの結晶形成をする。好ましくは、そのためYO2、例えばシリカ、を与える物質は約30wt%の固体YO2、例えばシリカを含み、より好ましくは約40wt%の固体YO2、例えばシリカを含む。ケイ素源は、またケイ酸塩、例えばアルカリ金属のケイ酸塩又はテトラアルキルオルトケイ酸でも良い。
【0044】
本開示の別の実施態様では、YO2を与える物質は原子価4の元素(Y)の酸を含む。YO2がシリカであるときは、シリカを与える物質はケイ酸でも良い。
【0045】
Xは、元素の周期律表の3-13族から選択される原子価3の元素であり、例えばアルミニウム、及び、又はホウ素、及び、又は鉄、及び、又はガリウム、好ましくはアルミニウムである。X2O3、例えばアルミニウム、を与える物資は好ましくは、硫酸アルミニウム又はアルミナの水和物である。他のアルミニウムを与える物質は、例えば、他の水溶性アルミニウム塩、アルミン酸ナトリウム、又はアルコキシド、例えばアルミニウムイソプロポキシド、又はアルミニウム金属、例えば、小片状の形状のものである。
【0046】
アルカリ金属又はアルカリ土類金属元素は、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、又はマグネシウムが有利である。アルカリ又はアルカリ土類金属元素を与える物質は、金属酸化物、金属塩化物、金属フッ化物、金属硫酸塩、金属硝酸塩または金属アルミン酸塩であることが有利である。ナトリウムを与える物質は水酸化ナトリウム又はアルミン酸ナトリウムであることが有利である。アルカリ金属はアンモニウム(NH4+)又はその等価物、例えばアルキルアンモニウムイオンにより置き換えられても良い。
【0047】
本開示のある実施態様では、M:YO2、例えばM:SiO2モル比は、低値0.001、好ましくは0.01、選択により0.1から高値2.0、好ましくは1、及び選択により0.5の範囲にある。M:YO2、例えばM:SiO2のモル比は理想的には上記の低値と上記の高値のいずれかの組み合わせを含む範囲にある。
【0048】
本開示のある実施態様では、H2O:YO2、例えば、H2O:SiO2モル比は低値1から、好ましくは5、及び選択により10から、高値10000、好ましくは5000及び選択により500の範囲にある。H2O:YO2、例えばH2O:SiO2モル比は理想的には上記の低値と上記の高値のいずれかの組み合わせを含む範囲にある。
【0049】
本開示で使用される場合、OH:YO、例えばOH:SiOのモル比は、水熱反応混合物中の酸による修正を含まない。これは、水熱反応混合物に加えられた水酸イオンの総モル数に基づいて計算される。水酸イオン(OHー-)を与える物質は、アルカリ金属酸化物、例えばLi2O、Na2O、K2O 、Rb2O、CsO、Fr2O、またはそれらの組み合わせのいずれか、アルカリ金属水酸化物、例えば、LiOH、NaOH、KOH、RbOH、CsOH、FrOH又はいずれかのそれらの組み合わせ、アルカリ土類金属水酸化物、例えば、Be(OH)2、Mg(OH)2、Ca(OH)2、Sr(OH)2、Ba(OH)2、Ra(OH)2またはいずれかのそれらの組み合わせ、3-17族から選択されたいずれかの元素の酸化物又は水酸化物及びこれらの組み合わせが有利である。
【0050】
本開示のある実施態様では、OH:YO、例えば、OH:SiOモル比は低値0.001、好ましくは0.01、及び選択により0.1から高値2.0、好ましくは1及び選択により0.5の範囲にある。OH:YO、例えば、OH:SiOモル比は理想的には上記の低値と上記の高値のいずれかの組み合わせを含む範囲にある。
【0051】
指向剤Rはシクロアルキルアミン、アザシクロアルカン、ジアザシクロアルカン、及びそれらの混合物からなる群から選択され、アルキル基は5から8個の炭素を含んでいる。Rの非限定的な例はシクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロヘプチルアミン、ヘキサメチレンイミン、ヘプタメチレンイミン、ホモピペラジン、及びそれらの組み合わせを含む。
【0052】
結晶性モレキュラーシーブの合成のコストと製品品質に影響を及ぼす因子は指向剤の量(R:YO2、例えば、R:SiO2モル比で表される)である。指向剤は一般的に多くの結晶性モレキュラーシーブの水熱反応混合物の中で最も高価な反応物である。水熱反応混合物中の指向剤の量が少ない(低いR:YO2、例えば、R:SiO2モル比)ほど、最終的に製造されるモレキュラーシーブは安価となる。
【0053】
本開示のある実施態様では、R:YO2、例えば、R:SiO2モル比は0.001、好ましくは0.05及び選択により0.1の低値から2、好ましくは0.5、さらに好ましくは0.4の範囲にある。R:YO2、例えば、R:SiO2モル比は理想的には上記の低値と上記の高値のいずれかの組み合わせを含む範囲にある。
【0054】
水熱反応混合物の原料は2以上の物質によって与えられうることが理解されるべきである。水熱反応混合物はバッチ式又は連続式で調製することができる。本開示の結晶性モレキュラーシーブの結晶の大きさと結晶化時間は使用される水熱反応混合物の性質と結晶化条件に伴い変わりうる。
【0055】
本願技術分野の技術者は、先に論じたモル比の範囲内に組成をもつ合成混合物とは、混合、添加、反応の、又はそのような混合物を与えるいずれかの方法による生成物であり、上記のモル数の範囲内にある組成をもつものであることを理解するであろう。混合、添加、反応又はそのような混合物を与えるいずれかの方法による生成物は、合成混合物が調製されたとき、個々の原料を含むことも又は含まないこともある。
混合、添加、反応又はそのような混合物を与えるいずれかの方法による生成物は、その合成混合物が混合、添加、反応又はそのような混合物を与えるいずれかの方法により調製されたとき、それぞれの原料の反応生成物を含むこともあるかもしれない。
【0056】
必要に応じ、水熱反応混合物は種結晶を含んでも良い。モレキュラーシーブ合成混合物に種結晶を加えることは、例えば製品の粒子の大きさを制御する点、有機テンプレートの必要性を除くこと、合成を加速すること、意図したフレーム構造タイプをもつ製品の割合を向上する点でしばしば有益な効果がある。本開示のある実施態様では、結晶性モレキュラーシーブ合成は、水熱反応混合物の正四面体の元素の酸化物(例、シリカ)の総重量に基づき0から約25wt%、好ましくは約1から約5wt%の種結晶の存在により容易になる。
【0057】
普通、種結晶はそれらが使用される合成法と似た合成から得られる。一般的に、いずれの形のこの結晶性物質もこの新しい相における合成を容易にする点で有用であろう。
【0058】
結晶化条件
本開示の結晶性モレキュラーシーブの結晶化は反応容器、例えばオートクレーブ中で静置した又は撹拌条件で実施されうる。結晶化の温度の全ての有益な範囲は、その使用する温度で結晶化がおこるに十分な時間、例えば約1時間から約400時間で、約100℃から約250℃である。好ましくは結晶化の温度範囲は、その使用する温度で結晶化が起こるに十分な時間、例えば約1時間から約200時間で、約140℃から約180℃である。
【0059】
本開示の水熱反応は、混合操作(agitation)なし(静置)で又は何らかの混合操作をして、例えば、撹拌や水平軸の周りで容器を回転(タンブリング、tumbling)させて実施される。混合操作の速度は0から約60RPMの範囲であり、好ましくは0から35RPM未満である。
【0060】
その後、結晶は液体から分離され、回収される。この手順は、より高温度での水熱処理(「水熱反応」)の前に、室温(〜25℃)又は、好ましくは、中程度に上昇した温度でのエージング期間を含んでも良い。後者の場合、温度を徐々に又は段階的に上げる時間を含んでも良い。
【0061】
ある実施態様では、本開示の結晶性MCN-22属モレキュラーシーブは少なくともMCM-22、MCM-49、MCM-56、MCM-22、及び又はMCM-49、及び又はMCM-56の成長途上のもの、又はMCM-22、及び又はMCM-49、及び又はMCM-56の混合相のうち少なくとも1つを含む。
【0062】
本合成のモレキュラーシーブ生成物はさらに濾過され、水で洗浄され、及び、又は乾燥される。結晶化により形成される結晶性モレキュラーシーブは回収され、さらに処理、例えば、アンモニウム塩(例.水酸化アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、又はそれらの組み合わせのいずれか)とのイオン交換、及び又は、200℃より高い温度、好ましくは少なくとも300℃、より好ましくは少なくとも400℃、最も好ましくは少なくとも500℃の温度で、酸化的雰囲気(例、空気、0kPa-aより大きい酸素分圧をもつ気体)での焼成、を受けても良い。
【0063】
触媒と吸着
モレキュラーシーブ及び又はゼオライトに関する要約は、モレキュラーシーブの製造、修飾及び特徴に関し、Molecular Sieves−Principles of Synthesis and Identificatiuon( R.Szostak, Blackie Academic & Professional, London,1998, 第2版)という本に記載されている。モレキュラーシーブに加えて、非晶質の物質、主にシリカ、ケイ酸アルミニウム、酸化アルミニウムは吸着剤と触媒担体として使用されてきた。多くの長く知られてきた成形技術、例えばスプレードライ、小球化、ペレット化、及び押出し成形が、例えば、触媒、吸着及びイオン交換で使用される細孔性物質及び他の種類の多孔性物質両者の、球状粒子、押出物、ペレット、錠剤の形状のマクロ構造を製造するため使用されてきたし、使用されている。これらの技術の要約はCatalyst Manufacture、A.B.Stiles and T.A.Koch, Marcel Dekker, New York,1995に記載されている。
【0064】
好ましい範囲まで、合成された状態の物質の元来の金属カチオンは本願技術でよく知られている技術に従い、少なくとも、一部は他のカチオンによるイオン交換により置換することができる。好ましい置換カチオンは、金属イオン、水素前駆体、例えばアンモニウムイオン及びそれらの組み合わせである。特に好ましいカチオンは、ある炭化水素変換反応の触媒活性を調整するものである。これらは水素、希土類金属、及び元素の周期律表の1-17族の好ましくは2-12族の金属を含む。
【0065】
本開示の結晶性モレキュラーシーブ、好ましくはMCM-22属モレキュラーシーブは、有機化合物の変換工程で吸着剤又は触媒として使用されるとき、一般的に、少なくとも部分的に脱水される。これは空気又は窒素のような雰囲気で、大気圧、準大気圧又は超大気圧において、例えば30分から48時間、例えば200℃から595℃の範囲の温度にまで加熱することにより行われうる。脱水の程度は48時間、乾燥窒素流(0.001kPa未満の水蒸気圧の分圧)における595℃でのモレキュラーシーブサンプルの総重量損失に比較した重量損失のパーセンテージにより測定される。
【0066】
触媒として使用されるとき、本開示の結晶性モレキュラーシーブ、好ましくはMCM-22属モレキュラーシーブは、一般に熱処理を受けいずれかの有機成分の一部の又は全てが除去される。本開示の結晶性モレキュラーシーブ、好ましくはMCM-22属モレキュラーシーブは、好ましくはタングステン、バナジウム、モリブデン、レニウム、ニッケル、コバルト、クロム、マンガン、又は白金、パラジウムのような貴金属、のような、水素添加−脱水素機能を有する水素添加成分と緊密に結合した触媒としても使用できる。そのような成分は共結晶化により、或いは、13族元素、例えばアルミニウム、がその構造中に存在する程度まで交換が行われることにより、そのような成分中に含浸されることにより又は、それらと緊密に物理的に混合されて組成物へ組み入れられる。そのような成分は、例えば白金の場合、白金金属を含むイオンを含む溶液によりケイ酸塩を処理することにより、その中またはそれへ定着させることができる。そこで、この目的に適した白金化合物は、塩化白金酸塩、塩化白金、及び白金アミン錯体を含む種々の化合物である。
【0067】
本開示の結晶性MCM-22属モレキュラーシーブは、特にその金属、水素及びアンモニウム型において、有益に熱処理により他の型へ変換されうる。この熱処理は一般的に少なくとも1分間かつ一般に1000時間より短い時間、少なくとも370℃の温度でこれらの型の一つを加熱することにより行われる。大気圧より低い圧力が熱処理のために使用できるが、大気圧が便利であり望ましい。この熱処理は約925℃までで行うことができる。この熱処理された生成物は特に、ある炭化水素変換反応の触媒において有用である。熱的に処理された生成物は、特に金属、水素、アンモニウム型では、ある有機化合物、例えば炭化水素変換反応の触媒において有用である。そのような反応の非限定的例は米国特許第4,954,325号、第4,973,784号、第4,992,611号、第4,956,514号、第4,962,250号、第4,982,033号、第4,962,257号、第4,962,256号、第4,992,606号、第4,954,663号、第4,992,615号、第4,983,276号、第4,982,040号、第4,962,239号、第4,968,402号、第5,000,839号、第5,001,296号、第4,986,894号、第5,001,295号、第5,001,283号、第5,012,033号、第5,019,670号、第5,019,665号、第5,019,664号,及び第5,013,422号に記載されたものを含む。それぞれの特許は、この触媒反応の記述に関し、参照により本願に組み入れられる。
【0068】
本願発明により調製された結晶は広い範囲の粒子サイズに成形されうる。一般的にいえば、粒子は粉末、顆粒、成形品、例えば押出物のような形でありうる。触媒が例えば押出し成形により、成形される場合、この結晶は乾燥前に、又は部分的に乾燥されて押出される。
【0069】
本開示の結晶性MCM-22属モレキュラーシーブは、吸着剤として、例えば本開示の結晶性モレキュラーシーブと異なる吸着特性をもつ蒸気相又は液体相の成分の混合物から少なくとも一成分を分離するため、使用されても良い。そのため、少なくとも一成分は、選択的に一成分を吸着する本開示の結晶性モレキュラーシーブと混合物を接触させることにより、本開示の結晶性モレキュラーシーブに関し異なる吸着特性をもつ成分の混合物からその一部分、または実質的に全てを分離することができる。
【0070】
本開示の結晶性MCM-22属モレキュラーシーブは、分離法及び炭化水素変換法を含む広範囲の製造法で触媒として有用である。本開示の結晶性MCM-22属モレキュラーシーブが、それのみにより、又は、他の結晶性触媒等の1以上の他の触媒的に活性な物質との組み合わせにより効果的に触媒される炭化水素変換プロセスの具体例は、以下を含む。
(i) 約340℃から約500℃までの温度、約101から約20200K-pa(絶対値)の圧力、約2hr-1から約2000 hr-1の毎時重量空間速度、約1/1から約20/1の芳香族炭化水素/オレフィンのモル比を、別々に又は組み合わせて含む反応条件による、芳香族炭化水素、例えばベンゼンの長鎖のオレフィン、例えばC14オレフィンによる、アルキル化を行い、その後にスルホン化され合成洗剤を与えることのできる長鎖のアルキル芳香族化合物を与えること。
(ii) 約10℃から約125℃までの温度、約101から約3030kPa-aの圧力、5hr-1から約50 hr-1の芳香族炭化水素毎時重量空間速度(WHSV)を個々に又は組み合わせて含む反応条件で、気体オレフィンにより芳香族炭化水素をアルキル化し短鎖のアルキル芳香族化合物を与えること。例えば、ベンゼンのプロピレンよるアルキル化によりクメンを与えること。
(iii) C5オレフィンを含む燃料ガスにより、約315℃から約455℃、約3000から約6000kPa-aの圧力、約0.4hr−1から約0.8 hr−1のWHSV-オレフィン、約1hr−1から約2hr−1までのWHSV-改質ガソリン及び約1.5から2.5vol/volの燃料ガス原料のガスのリサイクルを、個々に又はいずれかを組み合わせて含む反応条件で、相当量のベンゼンとトルエンを含む改質ガソリンを、アルキル化し、特にモノ及びジアルキル体を与えること。
(iv) 約160℃から約260℃の温度、約2600から約3500kPa-aの圧力を、個々に又は組み合わせて含む反応条件により、長鎖のオレフィン、例えばC14オレフィンにより芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、キシレン及びナフタレンをアルキル化し、アルキル化された芳香族潤滑剤ベースストックを与えること。
(v) 約200℃から約250℃の温度、約1500から2300kPa-aの圧力、約2hr-1から約10 hr-1の総WHSVを、個々にまたはいずれかの組み合わせで含む反応条件により、オレフィン又は等価なアルコールによりフェノールをアルキル化し長鎖のアルキルフェノールを与えること。
(vi) 約425℃から約760℃の温度、約170から約15000kPa-aの圧力を、個々に又は組み合わせて含む反応条件により軽質パラフィンをオレフィンと芳香族化合物への変換すること。
(vii) 約175℃から約375℃の温度、約800から15000kPa-aの圧力を個々に又は組み合わせて含む反応条件により軽質オレフィンをガソリン、蒸留物(distillate)及び潤滑剤の範囲の炭化水素へ変換すること。
(viii) 約260℃より高い初期沸点をもつ炭化水素流を品質改善し、上質の蒸留物とガソリンの沸点の範囲をもつ生成物とする2段階水素添加分解工程で、第1段階で、本開示のMCM-22属モレキュラーシーブを8-10族の金属の金属と組み合わせて触媒として使用し、第2段階で第1段階からの生成物流をまた8-10族の金属と組み合わせてゼオライトベータを触媒として使用して反応させ、その反応条件は、約340℃から約455℃の温度、約3000から約18000kPa-aの圧力、約176から約1760リットル/リットルの水素循環、約0.1から10 h-1の毎時液体空間速度(LHSV)である工程
(ix) 水素クラッキング/脱ロウを組み合わせた工程であって、本開示のMCM-22属モレキュラーシーブと水素添加成分を触媒として存在させ又はそのような触媒とゼオライトベータの混合物の存在下、約350℃から約400℃の温度、約10000から約11000kPa-aの圧力、約0.4から約0.6のLHSV、及び約528から約880リットル/リットルの水素循環を個々に、又はそれらを組み合わせて含む反応条件の工程。
(x) オレフィンとアルコールを反応させ混合エーテルを与える反応であって、例えばメタノールとイソブテン及び/又はイソプレンを反応させメチル-t-ブチルエーテル(MTBE)、及び/又はt-アミルメチルエーテル(TAM) を与える反応であって、約20℃から約200℃、200から約20000kPa-aの圧力、約0.1 hr-1から約200 hr-1のWHSV(時間、グラム-ゼオライト当たりのグラム-オレフィン)、約0.1/1から約5/1のオレフィンに対するアルコールの供給モル比を個々に又は組み合わせて含む変換条件を用いる反応。
(xi) 約315℃から約595℃の温度、約101から約7200kPa-aの圧力、約0(水素を添加しない)から約10までの水素/炭化水素モル比と約0.1 hr-1から約30 hr-1のWHSVを個々に又は組み合わせて含む反応条件で補助原料(co-feed)としてのC9+芳香族によるトルエンの不均化反応
(xii) 薬理学的に活性な化合物2-(4-イソブチルフェニル)プロパン酸、つまりイブプロフェンの合成であって、イソブチルベンゼンとプロピレンオキシドの反応により中間体2-(4-イソブチルフェニル)プロパノールを与えこのアルコールの酸化により対応するカルボン酸を与える合成
(xiii) ドイツ特許第DE 3,625,693号に記載された、染料の合成におけるヘテロ環をもつ繊維に反応性のある化合物とアミンの反応において酸−結合試薬としての使用であって、実際上塩を含まない反応性染料含有溶液を調製するための使用。この特許は参照より全てが組み入れられる。
(xiv) 米国特許第4,731,807号(参照により本願に全て組み入れられる)に記載されているように2,6-トルエンジイソシアネート(2,6-TDI)を異性体から分離するための吸着剤としての使用であって、2,6-TDIと2,4-TDIを含む原料混合物が、Kイオンとカチオン交換された本願のMCM-22属モレキュラーシーブと接触し2,6-TDIが吸着され、トルエンを含む溶離剤により溶離されて2,6-TDIが回収される使用方法。
(xv) 米国特許第4,721,806号(参照により全て本願に組み入れられる)に記載されているように、異性体から2,4-TDIを分離するための吸着剤としての使用であって、2,4-TDIと2,6-TDIを含む原料混合物が、Na、Ca、Li及び、又はMgイオンとカチオン交換された本願のMCM-22属のモレキュラーシーブと接触し、トルエンを含む溶離剤により溶離され、2,4-TDIが回収される使用方法。
(xvi) 約230℃から約425℃の温度、約457から約22000kPa-aの圧力を個々に、又はいずれかの組み合わせて含む条件において、メタノールからガソリンへの触媒的変換から得られる90-200℃+ボトム留分のデュレン含量を減少させる製造法であって、水素添加金属を含む本願のMCM-22属モレキュラーシーブ触媒上で水素とデュレン含有ボトム留分を接触させることを含む方法。
【0071】
ある実施態様では、本開示の結晶性MCM-22属モレキュラーシーブは、ベンゼンのアルキル化、それに続くアルキルベンゼンヒドロパーオキシド生成とこのアルキルベンゼンヒドロパーオキシドがフェノールとケトンを生成する開裂を経て、フェノールとケトンを同時に生成する製造法で使用されても良い。このような製造法では、本開示の結晶性MCM-22属モレキュラーシーブは、第1段階、つまりベンゼンのアルキル化で使用される。このような製造法の例は、ベンゼンとプロピレンがフェノールとアセトンに、ベンゼンとC4オレフィンがフェノールとメチルエチルケトン変換される製造法を含む。これは、例えば、国際出願PCT/EP2005/008557の実施例について記載されている製造法であり、ベンゼン、プロピレン及びCオレフィンがフェノール、アセトン及びメチルエチルケトンに変換され、この場合には、国際出願PCT/EP2005/008554に記載されているように、フェノールとアセトンがビス-フェノール-Aに変換され、PCT/EP2005/008551に記載されているようにベンゼンはフェノールとシクロヘキサノン、又はベンゼンとエチレンはフェノールとメチルエチルケトンへ変換される。
【0072】
本開示の結晶性MCM-22属モレキュラーシーブは、モノアルキルベンゼンへの選択性が求められるベンゼンのアルキル化反応で有用である。さらに、本開示の結晶性MCM-22属モレキュラーシーブは、国際出願PCT/EP2005/008557で記載されているように、ベンゼンと、直鎖ブテンが多いC4オレフィン原料から選択的にsec-ブチルベンゼンを製造するため特に有用である。好ましくは、本変換は、約60℃から約260℃の温度、例えば約100℃から200℃、7000kPa-aまたはそれ未満の圧力、C4アルキル化剤に基づき約0.1から50h-1の毎時重量空間速度(WHSV)の原料供給及び約1から約50の、C4アルキル化剤に対するベンゼンのモル比でベンゼンとC4オレフィン原料を同時に供給し、本願発明の触媒により実施される。
【0073】
本開示の結晶性MCM-22属モレキュラーシーブはトランスアルキル化、例えば、ポリアルキルベンゼントランスアルキレーションにも有用である。
【0074】
多くの触媒の場合、有機化学的変換法に使用される温度と他の条件に耐性のある別の物質をこの新しい結晶に組み入れることが望ましい。そのような物質は、活性及び非活性物質、合成又は天然のゼオライト又は、クレー、シリカ、及び/又はアルミナのような酸化金属のような無機物質を含む。後者は、天然物でもまたはシリカと金属酸化物の混合物を含むゼラチン状の沈殿物またはゲルの形でも良い。活性なこの新しい結晶と組み合わされた物質、即ち、これと結合された又はこの新しい結晶の合成時に存在する物質の使用により、ある有機的変換法における転換と又は触媒の選択性が変化する傾向が生じる。
反応速度を制御する他の手段を用いることなく、生成物を経済的かつ問題なく得るために、不活性な物質は、所与の製造法において転換の量を制御するために希釈剤として好適に用いられる。これらの物質は天然のクレー、例えば、ベントナイト、カオリンに組み入れられ実生産条件下で触媒の圧潰強度を向上させる。これらの物質、つまり、クレー、酸化物等は、触媒の結合剤として機能する。実生産では、触媒が粉砕され粉末状の物質になることを予防することが望ましいため、良好な圧潰強度をもつ触媒を提供することが望ましい。これらのクレーの結合剤は、普通この触媒の圧潰強度を向上させる目的のためだけに用いられてきた。
【0075】
新しい結晶に混合され得る天然のクレーは、モンモリナイト属とカオリン属を含み、これらの属は、サブベントナイト類(subbentonites)及び、ディクシー(Dixie)、マクナミー(McNamee)、ジョージア(Georgia)及びフロリダ(Florida)クレーとして一般に知られているカオリン類(kaolins)又は主要無機成分がハロイサイト(halloysite)、カオリナイト(kaolinite)、ディクタイト(dictite)、ナルサイト(narcite)又はアナウザイト(anauxite)である他の物質を含む。このようなクレーは元来の採掘されたままの状態で使用され、又は最初に焼成、酸処理又は化学的修飾を受けることもできる。本願の結晶と組成物を形成するために有用な結合剤は、無機酸化物、特にアルミナも含む。
【0076】
先に述べた物質に加え、この新しい結晶はシリカーアルミナートリア(thoria)、シリカーアルミナージルコニア、シリカーアルミナーマグネシア及びシリカーマグネシアージルコニアのような三種からなる組成物のほか、シリカーアルミナ、シリカーマグネシア、シリカージルコニア、シリカートリア、シリカーベリリア、シリカーチタニアのような多孔性のマトリックス構造の物質と組成物を形成しうる。
【0077】
細かく粉砕された結晶性モレキュラーシーブと無機酸化物のマトリックスの相対的な割合は広く変化し、重量で約1から約99パーセント、より普通には、特に組成物が粒状に作られている場合、組成物の約20から約80wt%の範囲に及ぶ。
【0078】
本願発明のこれらまた他の面は以下の例により例示されている。

【0079】
実施例では、合成した状態の物質のXRD回折パターンは、2から40度
の2θの範囲で銅Kα線を使用したブルカーD4 X線粉末回折計(Bruker D4 X-Ray Powder Diffractometer)上に記録された。
【0080】
電子顕微鏡画像は、日立S4800電界放射型走査電子顕微鏡 (HITACHI S4800 Field Emission Scanning Electron Microscope)(SEM)で得られた。結晶の大きさはSEMに示されている多くの結晶の大きさを平均して決定された。
【0081】
結晶性は、2本の主要ピーク、7.1と26(2θ)の合計の、標品(対照例)の同一のピークの合計に対する比を100倍したものと定義される。
【0082】
BETの表面積は350℃での加熱前処理を伴う標準的手順を用いて、マイクロメトリックス・トリスター 3000V 6.05A (Micrometrics TriStar 3000V 6.05A)(Micromeritics Corporation, Narcross, GA)で測定された。
【0083】
全BET表面積に対する外部表面積比は窒素吸収によるBET決定の一部として作成されたt-プロットから計算された。
【0084】
以下の実施例は好ましい実施態様を説明している。
参照例A
【0085】
本参照例では、MCM-22は米国特許第4,954,325号の方法に従い合成された。
【0086】
水熱反応混合物は、水、ヘキサメチレンイミン(HMI)(Sigma-Aldrich 会社)、シリカ(UltrasilTM、Degussa Corp.)、45wt% アルミン酸ナトリウム溶液(25.5%Al2O3、19.5%Na2O; USALCO)、及び50wt%水酸化ナトリウム溶液から調製された。この混合物は、表XIIに示すとおり以下のモル組成を持っていた。
【表4】

【0087】
本混合物は、毎分250回転(RPM)で撹拌しながら72時間オートクレーブ中で150℃で結晶化された。結晶化の後、水熱反応混合物のスラリーは濾過され、脱イオン(DI)水で洗浄され、120℃で乾燥された。合成された状態の物質は表Iと表IIに実質的に示されているようなXRDパターンを持っていた。得られたMCM-22結晶は〜23/1のSiO2/Al2O3モル比を持っていた。焼成されたMCM-22結晶は653 m2/gの表面積(530の細孔表面積と123 m2/gの外部表面積 )をもっていた。合成時の状態の生成結晶のSEMの画像は(図2)は、約200から約300Åの平均の結晶の厚みの血小板様形態を示した。この見積もった小板の平均直径は、約1μm未満であった。焼成された物質は約29.8mg/gのメシチレン吸収があり、約68mg/g/minのメシチレン吸着速度であった。焼成後、この物質は、米国特許第4,954,325号の報告されたものに一致したXRDを示した。
【0088】
実施例1−2
2種の水熱反応混合物が水とヘキサメチレンイミン(HMI)(Sigma-Aldrich 会社)、ケイ酸(Sigma-Aldrich 会社)、45w% アルミン酸ナトリウム溶液、及び50wt%水酸化ナトリウム溶液から調製された。この混合物は以下の表XIIIに示すようなモル組成をもっていた。
【表5】

【0089】
上記の混合物は、均一なペーストを得るために20分間激しく十分に撹拌された。この混合物は最初に45℃で、30rpmで24時間で熟成され、その後2リットルのオートクレーブ中で30RPMで撹拌しながら(実施例1)、及び撹拌せずに(実施例2)、168時間(実施例1)又は216時間(実施例2)かけて300°F(149℃)で結晶化された。結晶化後、実施例1と実施例2の水熱反応混合物のスラリーはろ過され、脱イオン(DI)水で洗浄され、250°F(120℃)で乾燥された。合成時の状態の物質XRDパターン(図3A:120時間の実施例1;図3B:168時間での実施例1、実施例2の図5)は純粋相のMCM-22を示した。結果として得られたMCM-22結晶(実施例1と2)は約23.2のSiO2/Al2O3モル比をもっていた。
【0090】
焼成されたMCM-22結晶(実施例1)は629m2/gの表面積をもっていた。合成時の状態の結晶(実施例1)のSEM画像(図4)は約2μmより大きい見積もり平均の小板の直径と400-500Åの厚みの血小板凝集様形態を示し、参照例Aより大きい。
【0091】
合成時の状態の結晶(実施例2)のSEM画像(図6A及び6B)は、平均結晶直径の見積もりが約5μmより大きい多層状で、400-500Åの厚みの小板放射状晶癖を示し、これは、参照例Aより大きい。
【0092】
実施例3−4
2種の水熱反応混合物は水、ヘキサメチレンイミン(HMI)(Sigma-Aldrich会社)、シリカ(UltrasilTM、Degussa Corp.)、45wt%アルミン酸ナトリウム溶液及び50wt%水酸化ナトリウム溶液から調製された。この混合物は表IXVに示すように以下のモル組成であった。
【表6】

【0093】
上記の混合物は均一なペーストを得るために20分激しい撹拌下十分に混合され均一なペーストが得られた。この混合物は最初45℃で30rpmで24時間かけて熟成され、次に2リットルのオートクレーブ中で30RPM(実施例3)で撹拌しながら及び撹拌せずに(実施例4)、168時間(実施例3)又は216時間(実施例4)かけて300°F(149℃)で結晶化された。結晶化後、実施例3と4の水熱反応混合物のスラリーはろ過され脱イオン(DI)水で洗浄され、250°F(120℃)で乾燥された。合成された状態の物質のXRDパターン(図7A:48時間での実施例3及び実施例4の図9)は純粋相のMCM-22を示した。72時間での実施例3の合成された状態の物質のXRDパターン(図7)はZSM-35不純物を含むMCM-22の配列を示した。
【0094】
合成された状態の結晶(実施例3)のSEM画像(図8)は平均の小板の直径の見積もりが約2μmより大きく400-500Åの厚みをもつ血小板凝集様形態を示し、これは参照例Aより大きい。
【0095】
合成された状態の結晶(実施例4)のSEM画像(図10)は平均の結晶の直径の見積もりが約5μmより大きい血小板凝集様形態を示し、これは参照例Aより大きい。
【0096】
実施例5
MCM-22/アルミナ触媒は、乾燥品に基づき、80重量部分の実施例1の製品が20重量部分のアルミナ(Condea SB3)と混合されて調製された。水がこの混合物に加えられ、生成した触媒は1/20”四葉型の押出し物に成形された。調製された押出し物は使用前に120℃で乾燥された。この結晶は窒素中、540℃で焼成され活性化され、続いて水性硝酸アンモニウム交換と540℃で空気中での焼成を受けた。
【0097】
実施例6(参照触媒)
触媒は、乾燥品に基づき、80重量部分の参照例Aの製品と20重量部分のアルミナ(LaRoche Versal 300)を混合して調製された。この触媒は硝酸アンモニウム中でスラリーとされ、ろ過され使用前に120℃で乾燥された。この触媒は540℃で窒素中で焼成され活性化され、続いて水性硝酸アンモニウム交換と540℃で、空気中で焼成を受けた。
【0098】
実施例7
実施例5からの触媒は、液相クメンアルキル化についてバッチ式のオートクレーブで試験された。実施例5の0.5グラムの触媒が、2つの不活性な石英の6グラムの層の間の結晶バスケットに充填された。ベンゼン(156.1グラム)とプロピレン(28.1グラム)が、次にベンゼン:プロピレン、3:1のモル比で加えられた。この反応条件は2183kPa-a(300psig)で130℃であり、反応は4時間された。オフラインGCが4時間にわたり反応のモニターに使用された。対照結晶と比較した活性と選択性は、下記の表XVに与えられている。
【表7】

【0099】
この触媒はベンゼンのアルキル化反応の活性と選択性を示した。
【0100】
本開示の分かりやすい実施態様が詳しく述べられたが、本開示の本質と範囲から離れることなく、本願技術分野の技術者にとり、種々の他の変更が明らかであり、容易に行われうることが理解されるであろう。従って、添付した請求項の技術的範囲を、本願に説明された実施例と記載に限定する意図はなく、これらの請求項が、本開示に関連する技術分野の技術者によりその均等として扱われる全ての技術的特徴を含め、本願発明に存在する新規性をもち特許性のある全ての技術的特徴を含むと解釈されることを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性MCM-22属のモレキュラーシーブであって、その合成された状態において、
前記モレキュラーシーブの50wt%より多くがSEMにより測定したとき1μmより大きい結晶の直径をもつ血小板凝集様形態であるモレキュラーシーブ。
【請求項2】
請求項1の前記結晶性MCM-22属のモレキュラーシーブであって、前記血小板凝集様形態が放射状晶癖の形態であるモレキュラーシーブ。
【請求項3】
請求項1及び請求項2の前記結晶性MCM-22属のモレキュラーシーブであって、前記モレキュラーシーブの板状結晶が多くの板状の層を含むモレキュラーシーブ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかの前記結晶性MCM-22属のモレキュラーシーブであって、前記モレキュラーシーブの前記板状結晶が多くのサブ結晶板(sub-crystal plate)を含むモレキュラーシーブ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかの前記結晶性MCM-22属のモレキュラーシーブであって、前記モレキュラーシーブの50%より多くが前記SEMで測定したとき2μmより大きい結晶の直径をもつモレキュラーシーブ。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかの前記結晶性MCM-22属のモレキュラーシーブであって、前記モレキュラーシーブの50%より多くが前記SEMで測定したとき5μmより大きい結晶の直径をもつモレキュラーシーブ。
【請求項7】
請求項1から請求項6にいずれかの前記結晶性のモレキュラーシーブであって、前記結晶性モレキュラーシーブの50%より多くが前記SEMで測定したとき約0.04μmの結晶の厚みをもつモレキュラーシーブ。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかの前記結晶性のモレキュラーシーブであって、N2BET法により測定したとき450m2/gより大きい総表面積をもつモレキュラーシーブ。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかの結晶性MCM-22属のモレキュラーシーブを生産する方法であって、
(a) 原子価が4の元素(Y)を少なくとも1つを与える少なくとも1つの物質、アルカリ金属又はアルカリ土類金属元素の少なくとも1つを与える少なくとも1つの物質、少なくとも1つの指向剤(R)、水、及び任意に原子価が3の元素(X)を少なくとも1つ与える少なくとも1つの物質を含む混合物を与える工程であって、前記混合物は以下のモル数の組成をもつものであり、
Y:X=10から無限大
:Y=1から10000
OH:Y=0.001から2
:Y=0.001から2
R:Y=0.001から2
Mはアルカリ金属でありRはシクロアルキルアミン、アザシクロアルカン、ジアザシクロアルカン及びそれらの混合物からなる群から選択され、前記アルキルアミン又はアルカンは5から8個の炭素原子を含む工程、
(b) 結晶化条件で前記混合物を所望の前記結晶性モレキュラーシーブを含む生成物を得る工程で、前記結晶化条件は、100℃から250℃までの範囲の温度、約1時間から200時間の結晶化時間、選択により0から約60RPM未満の範囲の撹拌速度である工程、及び
(c) 前記モレキュラーシーブを回収する工程を含む方法。
【請求項10】
請求項9の前記方法であって、前記原子価4の元素はケイ素である方法。
【請求項11】
請求項9又は10の前記方法であって、前記原子価3の元素はアルミニウムである方法。
【請求項12】
請求項9から11の方法のいずれかの一つの前記方法であって、前記Rはシクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロヘプチルアミン、ヘキサメチレンイミン、ヘプタメチレンイミン、ホモピペラジン及びそれらの組み合わせを含む方法。
【請求項13】
請求項9から12のいずれか一つの方法であって、前記Rはヘキサメチレンイミンである方法
【請求項14】
請求項9から13のいずれか一つの前記方法であって、前記温度が約150℃から180℃の範囲にある方法。
【請求項15】
請求項9から14のいずれか一つの前記方法であって、前記撹拌速度が30RPM未満である方法。
【請求項16】
請求項9から15のいずれか一つの前記方法であって、前記結晶性MCM-22属モレキュラーシーブは血小板凝集様形態(platelet aggregates morphology)をもち、前期結晶性MCM-22属のモレキュラーシーブの50%より多くは前記SEMで測定したときに1μmより大きい結晶の直径をもつ方法。
【請求項17】
請求項9から16のいずれか一つの前記方法であって、前記原子価4の元素を与える物質はケイ酸である方法。
【請求項18】
請求項9から16のいずれか一つの前記方法であって、前記原子価4の元素を与える物質はシリカである方法。
【請求項19】
請求項9から18のいずれか一つに記載された前記方法であって、さらにスプレードライ、小球化、ペレット化、及び、又は押出しのうち少なくとも1つにより触媒粒子を成形する段階を含む方法。
【請求項20】
炭化水素を変換する方法であって、
(a)変換生成物を生成する変換条件下、 炭化水素原料を請求項1から8のいずれか一つに記載された、又は請求項9から19のいずれか一つの前記方法により生産された、前記結晶性モレキュラーシーブと接触させ変換生成物を生成する段階を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−544567(P2009−544567A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522759(P2009−522759)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際出願番号】PCT/US2007/015056
【国際公開番号】WO2008/013644
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(599134676)エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク (301)
【Fターム(参考)】