説明

MEMS可変キャパシタの製造方法

面外可変オーバーラップ式MEMSキャパシタを製造する方法は、互いの上部に積層した、第1層(41)、第2層(42)および第3層(43)を備えた基板(40)を用意することと、単一のエッチングマスク(50)を用いて、第3層(43)を通り、第2層(42)を通り、第1層(41)に至る複数の第1溝(70)をエッチングすることとを含む。複数の第1溝(70)をエッチングすることは、第3層(43)にある複数の第1フィンガー(51)および第1層(41)にある複数の第2フィンガー(52)を規定する。単一のマスクを使用することによって、プロセスは自己整合される。該方法は、複数の第1溝(70)が設けられた第1領域において、第2層(42)を除去することをさらに含み、これにより複数の第1フィンガー(51)と複数の第2フィンガー(52)との間にスペースまたはギャップを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギーハーベスタ(harvester)、詳細には、静電気エネルギーハーベスタの分野に関する。特に本発明は、MEMS(微小電気機械システム)可変キャパシタおよびこうしたMEMS可変キャパシタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
将来の無線センサネックワークが、典型的には、数cmの空間を占めるセンサノードを備えるようになる。これらのセンサノードに電力を供給するための電池の小型化は、技術的な制約および蓄積密度の損失に直面する。定期的な時間間隔、例えば、月ごとに電池を交換または再充電することは、極めて高価になり、例えば、分散システムや埋め込みシステムでは不可能なことでもある。廃棄した環境エネルギーの回復をベースとしたエネルギースカベンジャ(scavenger)は、可能性のある電池の代替品である。幾つかのスカベンジャ概念は、光エネルギー(太陽電池を使用)、熱エネルギー(熱電発電機)、圧力エネルギー、または運動エネルギーの変換をベースとして提案されている。
【0003】
運動エネルギースカベンジャは、機械的運動の形態(例えば、振動またはランダム変位の形態)を電気エネルギーに変換する。運動エネルギーから電気エネルギーへの変換では、例えば、圧電機構、静電機構または電磁機構をベースとした種々の変換機構を採用できる。圧電スカベンジャは、機械的な応力が印加された場合に電荷を発生する活性材料を使用する。静電スカベンジャは、電気絶縁された帯電キャパシタ板の間の相対運動を利用して、エネルギーを発生する。電磁スカベンジャは、電磁誘導のファラデーの法則をベースとして、磁場勾配と導体との間の相対運動から電気エネルギーを発生する。
【0004】
静電エネルギー変換が、機械的振動によって駆動される可変静電容量構造をベースとして、最大静電容量と最小静電容量との間で振動する。外部振動から生ずる地震質量(seismic mass)の運動が、静電容量の変化に転換され、そして、キャパシタでの電荷の変化に転換される。これにより、負荷回路を通る電流が生じて、運動エネルギーから電気エネルギーへの変換が行われる。微細加工された静電スカベンジャにおいて、電気絶縁されたキャパシタ板の間の相対運動は、固定電極と可動電極(即ち、固定電極に対して相対的に移動可能)を設けることによって得られる。しばしば、可動電極および固定電極は、平行な複数の浅いキャパシタ板を備え、フィンガー(finger)と称される。両方の電極のフィンガーは、相互に入り込んでもよく、そうでなくてもよい。地震質量を可動電極に取り付けてもよい。
【0005】
固定電極および可動電極は、同じ面に配置してもよい(面内(in-plane))。キャパシタ板間の相対運動は、フィンガーのオーバーラップ面積を変化させること(面内可変オーバーラップ式キャパシタ)、またはフィンガー間の間隙を変化させること(面内間隙閉鎖式キャパシタ)を含んでもよい。代替として、可動電極および固定電極は、異なる面に配置してもよく(面外(out-of-plane))、電極間の間隔または間隙を備える。キャパシタ板の間の相対運動は、2つの大きな板の間の間隙を変化させること(面外間隙閉鎖式キャパシタ)、または複数のフィンガー間のオーバーラップを変化させること(面外可変オーバーラップ式キャパシタ)を含んでもよい。
【0006】
面外可変オーバーラップの手法は、面内オーバーラップの手法と比べて、地震質量のより大きな変位および、より大きな静電容量変化を可能にし、間隙閉鎖式キャパシタと比べて、引き込み現象(pull-in effect)に対する感受性が低くなる。面外可変オーバーラップ式キャパシタの固定電極および可動電極は、並列接続された複数の平行板キャパシタを形成する。
【0007】
先行技術のシステムにおいて、こうした面外可変オーバーラップ構造は、少なくとも2つの基板をベースとして製造され、例えば、文献(G. Altena et al. in "Electrostatic energy scavengers for wireless autonomous sensor nodes", Smart Systems Integration 2007, proceedings of the 1st European Conference and Exhibition on Integration Issues of Miniaturized Systems - MEMS, MOEMS, ICs and Electronic Components, pages 359-366, March 2007)で報告されている。
【0008】
図1は、こうした先行技術の面外可変オーバーラップ式キャパシタ構造の断面を示す。この構造は、第1基板10、例えば、ガラス基板または他の適切な基板の上に形成された複数の固定フィンガー11を含む固定電極を備える。それは、可動電極をさらに備え、可動電極に物理的に取り付けられた複数の可動フィンガー21および地震質量22を含む。可動フィンガー21および地震質量22は、第2基板20、例えば、シリコン基板または他の適切な基板から製作される。キャパシタの可動電極は、例えば、質量22およびサスペンション(図1では不図示)とともに微細加工されたバルクである。
【0009】
第1基板10および第2基板20は、接着剤31、例えば、感光性BCB層を用いて互いに接着接合される。しばしば第3基板が追加され(図1では不図示)、第1基板10が接合された側とは反対側で第2基板20と接合される。この第3基板は、MEMS構造を、可能ならば、ダンピング損失を低減するために真空に包装するために使用できる。第3構造は、電極またはエレクトレットを用いて、キャパシタを分極させる手段としても使用できる。こうした先行技術の面外可変オーバーラップ式キャパシタの製造が比較的複雑であり、少なくとも2つの基板10,20と、少なくとも4つのパターニングステップ(基板当たり2つ)と、第1基板10上の固定フィンガー11と第2基板20上の可動フィンガー21との間の良好なアライメントでのウエハ接合ステップとを必要とする。キャパシタの固定電極と可動電極との間の間隙32のサイズは、接着剤31の厚さを調整することによって、1マイクロメータ以下に制御可能である。例えば、高さ分布(topography)を有する基板に接着剤をスピンコートすることから由来する等、接着層での厚さ不均一性の場合、間隙32での変動が生じることがある。キャパシタの性能は、ウエハ接合作業のアライメントの精度、主に回転アライメントの精度に依存するであろう。さらに、歩留まりは、ウエハ接合後での接合欠陥の量に依存する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、面外可変オーバーラップ式MEMSキャパシタ構造を製造する方法を提供することであり、該方法は先行技術より複雑でない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、本発明に係る方法によって達成される。
【0012】
本発明に係る方法が、単一基板をベースとして、先行技術の方法と比べて、少ない処理ステップ、例えば、少ないパターニングステップで、面外可変MEMSキャパシタの製造を可能にする。本発明の実施形態において、ウエハ接合ステップの必要性が回避され、先行技術の方法と比べて、より良好な信頼性および、より高い歩留まりをもたらす。本発明の実施形態に係る方法が、固定電極の固定フィンガーと可動電極の可動フィンガーとの間の正確なアライメント(「セルフアライメント」)を可能にし、固定電極と可動電極との間の良好に制御された間隙をもたらす。
【0013】
本発明の実施形態に係る面外可変オーバーラップ式MEMSキャパシタの製造方法は、互いの上部に積層した、第1層、第2層および第3層を備えた基板を用意することと、単一のエッチングマスクを用いて、第3層を通り、第2層を通り、第1層に至る複数の第1溝をエッチングすることとを含む。複数の第1溝をエッチングすることは、第3層にある複数の第1フィンガーおよび第1層にある複数の第2フィンガーを規定する。
【0014】
該方法は、複数の第1溝が設けられた第1領域において、第2層を除去することをさらに含んでもよく、これにより複数の第1フィンガーと複数の第2フィンガーとの間にスペースまたはギャップ、例えば、エアまたはガスギャップを形成する。エアギャップは、真空状態でもよく、あるいはガスで充填してもよい。第1領域は、基板の層の面に対して平行な面内にある2次元エリアとして定義され、その2次元エリアは、第1溝が設けられる基板の場所を覆う。
【0015】
該方法は、複数の第1溝が設けられた第1領域を包囲する第2領域において、第1層を通る第2溝をエッチングすることをさらに含んでもよく、これにより複数の第2フィンガーと接続された地震質量を規定する。第2領域についても基板の層の面に対して平行な面内にある2次元エリアであり、第2領域は第1領域より小さくない。
【0016】
該方法は、地震質量と第3層との間の領域において、第2層を除去することをさらに含んでもよく、これにより地震質量および複数の第2フィンガーを基板の残部から切り離し、地震質量および複数の第2フィンガーが、例えば、外部振動に応答して固定フィンガーに対して移動可能になる。
【0017】
第1層の厚さは、例えば、100マイクロメータ〜1000マイクロメータの範囲、200マイクロメータ〜800マイクロメータの範囲、または500マイクロメータ〜700マイクロメータの範囲にすることができる。
【0018】
第2層の厚さは、例えば、1マイクロメータ〜5マイクロメータの範囲、または1マイクロメータ〜3マイクロメータの範囲、例えば、2マイクロメータを含む範囲にすることができる。
【0019】
第3層の厚さは、例えば、10マイクロメータ〜100マイクロメータの範囲、10マイクロメータ〜50マイクロメータの範囲、10マイクロメータ〜30マイクロメータの範囲、例えば、20マイクロメータにすることができる。
【0020】
基板は、例えば、SOI基板でもよく、第1層はSOI基板のハンドリング層であり、第2層はSOI基板の埋め込み酸化物層であり、第3層はSOI基板のデバイス層である。
【0021】
本発明の実施形態に係る方法が、エネルギースカベンジャデバイスの製造プロセス、または、センサ、例えば、加速度センサの製造プロセスにおいて好都合に使用できる。
【0022】
発明とみなされる主題は、本文書の終わりにある請求項の欄において詳しく指摘し、明確に請求している。添付図面とともに読んだ場合、本発明は、構成、動作方法に関して、その特徴および利点とともに、下記の詳細な説明の参照によって最もよく理解されるであろう。
【0023】
本発明および、先行技術に対して達成される利点を要約する目的で、本発明の一定の目的および利点を上述している。当然ながら、こうした目的または利点の全てが本発明のいずれか特定の実施形態に従って必ず達成されるわけではないことは理解すべきである。こうして、例えば、本発明が、ここで教示したような1つの利点または複数の利点を達成または最適化するような方法で、ここで教示または提示したような他の目的または利点を必ずしも達成することなく、具体化または実施できることは、当業者は認識するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】先行技術の面外可変オーバーラップ式キャパシタ構造の断面を示す。
【図2a】本発明の実施形態に係る製造プロセスを示す。
【図2b】本発明の実施形態に係る製造プロセスを示す。
【図2c】本発明の実施形態に係る製造プロセスを示す。
【図2d】本発明の実施形態に係る製造プロセスを示す。
【図2e】本発明の実施形態に係る製造プロセスを示す。
【図2f】本発明の実施形態に係る製造プロセスを示す。
【図2g】本発明の実施形態に係る製造プロセスを示す。
【図3】本発明の実施形態に係る方法を示すフローチャートである。
【0025】
異なる図面において、同じ参照符号は、同じまたは類似の要素を参照している。請求項中の参照符号の何れもが、範囲を限定するものと解釈すべきでない。
【発明を実施するための形態】
【0026】
ここで開示した方法およびデバイスは、特定の実施形態に関して一定の図面を参照しながら説明しているが、本発明はこれによって限定されず、請求項によってのみ限定される。ここで記載した図面は、概略的に過ぎず、限定的なものでない。図面において、幾つかの要素のサイズは強調していることがあり、説明目的のため、スケールどおりに描いていない。寸法および相対寸法は、本発明の実際の実施品と対応していない。
【0027】
さらに、説明および請求項での用語「第1」「第2」などは、類似の要素を区別するために使用しており、必ずしも時間的または空間的な順番をランキングや他の方法で記述するためではない。ここで使用した用語は、適切な状況下で交換可能であり、ここで本発明の実施形態は、ここで説明したり図示したものとは別の順番で動作可能であると理解すべきである。
【0028】
さらに、説明および請求項での用語「上(top)」、「下(bottom)」、「の上に(over)」、「の下に(under)」等は、説明目的で使用しており、必ずしも相対的な位置を記述するためのものでない。こうして用いた用語は、適切な状況下で交換可能であって、ここで説明した本発明の実施形態がここで説明または図示した以外の他の向きで動作可能であると理解すべきである。
【0029】
用語「備える、含む(comprising)」は、それ以降に列挙された手段に限定されるものと解釈すべきでなく、他の要素またはステップを除外していない。記述した特徴、整数、ステップまたは構成要素の存在を、参照したように特定するように解釈する必要があるが、1つ又はそれ以上の他の特徴、整数、ステップまたは構成要素、あるいはこれらのグループの存在または追加を除外していない。こうして表現「手段A,Bを備えるデバイス」の範囲は、構成要素A,Bのみから成るデバイスに限定すべきでない。それは、本発明に関して、デバイスの関連する構成要素だけがAおよびBであることを意味する。
【0030】
本明細書を通じて「一実施形態」または「実施形態」への参照は、実施形態との関連で記載した特定の特徴、構造または特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。本明細書を通じていろいろな場所での「一実施形態」または「実施形態」の語句の出現は、必ずしも全て同じ実施形態を参照していないが、そうこともある。さらに、1つ又はそれ以上の実施形態において、本発明から当業者にとって明らかなように、特定の特徴、構造または特性は、いずれか適切な方法で組み合わせてもよい。
【0031】
同様に、本発明の例示の実施形態の説明において、本発明を合理化し、本発明の1つ又はそれ以上の種々の態様の理解を支援する目的で、単一の実施形態、図面、または説明において、いろいろな特徴が一緒にグループ化していることがあると理解すべきである。しかしながら、この発明の方法は、請求項の発明が、各請求項で明示的に記載したものより多くの特徴を必要とするという意図を反映していると解釈すべきでない。むしろ下記の請求項が反映しているように、発明の態様は、単一の前述した実施形態の全ての特徴より少ない場合がある。こうして詳細な説明に追従する請求項は、この詳細な説明の中に明示的に組み込まれており、各請求項は、本発明の別々の実施形態として自立している。
【0032】
さらに、ここで説明した幾つかの実施形態が、他の実施形態に含まれる幾つかの他でない特徴を含むとともに、当業者によって理解されるように、異なる実施形態の特徴の組合せが本発明の範囲内にあって、異なる実施形態を構成することを意味する。例えば、下記の請求項において、請求した実施形態の何れも、何れの組合せで使用可能である。
【0033】
ここで提供した説明において、多数の具体的な詳細を説明している。しかしながら、本発明の実施形態は、これらの具体的な詳細なしで実施してもよいことは理解されよう。別の例では、この説明の理解を曖昧にしないために、周知の方法、構造および技法は詳細には示していない。
【0034】
開示した方法およびデバイスは、本発明の幾つかの実施形態の詳細な説明によって説明している。本発明の他の実施形態が、本発明の技術的教示から逸脱することなく、当業者の知識に従って構成できることは明らかであり、本発明は、添付の請求項の用語によってのみ限定される。
【0035】
本発明の目的は、面外可変オーバーラップ式MEMSキャパシタ構造を製造する方法を提供することであり、該方法は、先行技術の方法よりも複雑でなく、必要とされる処理ステップが少なくなり(より少ないパターニングステップ及び/又はより少ないリソグラフステップ)、例えば、ウエハ接合など、歩留まり減少ステップの必要性が回避される。従って、本発明の製造方法は、先行技術の方法と比べて、より安価になり、より高い歩留まりを有することが可能になる。
【0036】
この目的は、図3に概略的に図示するように、本発明の実施形態に係る面外可変オーバーラップ式キャパシタ構造を製造することによって達成されるものであり、少なくとも3つの層、即ち、互いの上部に積層した第1層、第2層または中間層、および第3層を備えた単一基板、例えば、SOI(シリコン・オン・インシュレータ)基板からスタートする(ステップ30)。層スタックの第1層は、可動電極および地震質量を形成するために用いられ、層スタックの第2層または中間層の厚さは、可動電極と固定電極との間の間隙を規定しており、層スタックの第3層は、可動電極を形成するために用いられる。
【0037】
本発明の実施形態に係る方法は、単一マスクを用いて、第3層および第2層を通って第1層に至る溝をエッチングすることを含み(ステップ31)、第3層の第1フィンガー組および第1層の第2フィンガー組をセルフアライメント法で形成している。本発明の実施形態によれば、固定電極は、互いに平行に配列した複数の固定フィンガー、例えば、矩形状フィンガーを含んでもよい。可動電極は、互いに平行に配列した複数の可動フィンガー、例えば、矩形状フィンガーを含んでもよい。
【0038】
特定の実施形態において、固定フィンガーの数および位置は、可動フィンガーの数および位置に対応している。可動フィンガー(および可動フィンガーに取り付けられた地震質量)は、例えば、外部振動に応答して、固定フィンガーに対して相対移動可能である。フィンガーの平行配列の代わりに、本発明の代替の実施形態において、他の構成、例えば、フィンガーが放射状に位置決めされ(車輪のスポークと同様)、固定フィンガーに対する可動フィンガーの相対運動が回転であるような構成が可能である。一般に、フィンガーの配向は、可動電極の運動方向に対して実質的に垂直である。
【0039】
本発明の実施形態に係る方法において、少なくとも3つの層を含む基板および、第1フィンガー組および第2フィンガー組を規定するための単一マスクの使用に起因して、ウエハ接合ステップの必要性が回避され、先行技術の方法と比べて、より良好な信頼性および高い歩留まりをもたらす。
【0040】
本発明の実施形態に係る方法が、固定電極の複数の固定フィンガーと可動電極の複数の可動フィンガーとの間で正確なアライメント(「セルフアライメント」)を可能にする。複数の固定フィンガーと複数の可動フィンガーとの間のアライメントが、単一のエッチングマスクを用いて、第3層および第2層を完全に通過し、部分的に第1層に達する、基板内の複数の第1溝の異方性エッチングによってフィンガーを形成することによって、得られる。こうして複数の固定フィンガーおよび複数の可動フィンガーは「自己整合」され、製造プロセス自体が固定フィンガーと可動フィンガーとの間のアライメントを生じさせることを意味し、特定のアライメントステップの必要性が回避される。
【0041】
本発明の実施形態において、単一基板、例えば、SOI基板での第2中間層の厚さおよび厚さ均一性を制御することによって、固定電極と可動電極との間の間隙について良好な制御が得られる。さらに説明したように、固定電極と可動電極との間のエリアにおける第2中間層を除去することにより、間隙が形成される(ステップ32)。例えば、キャパシタ構造を形成するためにSOI(シリコン・オン・インシュレータ)基板を使用した場合、中間層は、SOI基板の埋め込み酸化物(BOX)層で形成してもよい。BOX層は、ハンドル層(第1層)またはデバイス層(第3層)のいずれかの上に成長した熱シリコン酸化物層からなり、基板エリア全体で極めて制御された均一な厚さを有する。
【0042】
本発明の実施形態において、固定電極と可動電極との間の間隙は、例えば、エアギャップまたは真空ギャップにできる。しかしながら、間隙中の材料が適切な電気的特性を有し、可動電極の所望の運動を可能にするものであれば、他の材料、例えば、ガスまたは液体などで間隙を充填してもよい。真空の使用は、摩擦および空気またはガスの圧縮に起因したエネルギー損失を低減できる。
【0043】
本発明は、面外可変オーバーラップ式キャパシタ構造を製造するために、SOIウエハまたは基板を使用した例示の実施形態についてさらに説明する。SOI基板を使用した場合、ハンドリング層は、可動電極および地震質量を形成するための第1層として用いられ、埋め込み絶縁層、例えば、シリコン酸化物層は、固定電極と可動電極との間の間隙を規定するための第2層として用いられ、デバイス層(本実施形態では、シリコン層)は、固定電極を形成するための第3層として用いられる。
【0044】
SOI以外の基板も、本発明の実施形態に係る面外可変キャパシタを製造するために使用できる。本発明の実施形態において、互いの上部に積層された少なくとも3つの層を含む何れか適切な基板が使用できる。第2層または中間層は、例えば、等方性エッチングによって、他の層に対して選択的に除去可能な層である。第2層は、絶縁層でもよい。第1層および第3層は、導電性であってもよく、中間層に対して選択的な方法でほぼ直線的な側壁でパターン形成、例えば、エッチングできる。
【0045】
例えば、本発明の実施形態において、中間層は、ポリマー、例えば、BCB(ベンゾシクロブテン)またはSU−8などを含んでもよい。例えば、ポリマー層、例えば、スピンコートしたポリマー層を用いて、高さ分布無しの第1層および高さ分布無しの第2層を接合することによって、基板が形成できる。第2層および第3層での高さ分布が無いために、ポリマー層の良好な厚さ制御が得られる。ポリマー層は、第1層及び/又は第3層のエッチングの際にエッチング停止層として機能でき、例えば、OまたはO/CFエッチングによって、切り離しのために容易に除去できる。
【0046】
一例として、本発明の実施形態において、第1および第3導電層は、ドライエッチングによってパターン形成可能な半導体材料を含んでもよく、あるいは、例えば、レーザアブレーションによってパターン形成可能な金属を含んでもよい。本発明の特定の実施形態において、単結晶シリコンが第1層および第3層の材料として好ましい。それは、クリープ(creep)および疲労に対して鈍感で、極めて信頼性が高く、長寿命である高いQの共振器を実現できるためである。
【0047】
この層をパターン形成するために用いるエッチングプロセスに関連した制約を考慮すると、第1層の厚さは、可能な限り大きいことが好ましい。第1層が厚いほど、所定のキャパシタ面積について地震質量を大きくできる。例えば、第1層の厚さは、例えば、100マイクロメータ〜1000マイクロメータの範囲、例えば、200マイクロメータ〜800マイクロメータの範囲、例えば、500マイクロメータ〜700マイクロメータの範囲にすることができる。しかしながら、本発明はこれに限定されない。
【0048】
第3層の厚さは、例えば、10マイクロメータ〜100マイクロメータの範囲、例えば、10マイクロメータ〜50マイクロメータの範囲、例えば、10マイクロメータ〜30マイクロメータの範囲、例えば、20マイクロメータにすることができる。しかしながら、本発明はこれに限定されない。第3層の厚さは、処理特性に応じて、例えば、この層をパターン形成するために使用されるエッチングプロセスの信頼性に応じて、選択してもよい。
【0049】
中間層は、可動電極が固定電極に付着するリスクを増加させることなく、機械エネルギーと電気エネルギーとの間の良好なエネルギー結合を提供するのに充分に薄いことが好ましい。例えば、第2層または中間層の厚さは、1マイクロメータ〜5マイクロメータの範囲、例えば、1マイクロメータ〜3マイクロメータの範囲、例えば、2マイクロメータにすることができる。しかしながら、本発明はこれに限定されない。
【0050】
面外可変オーバーラップ式キャパシタ構造を製造するための本発明の実施形態に係る方法が、例えば、エネルギーハーベスタまたはスカベンジャ装置のための製造プロセスの一部として使用可能である。MEMS可変キャパシタは、例えば、RFデバイスでの同調およびスイッチング、そして、センシング応用や例えば、加速度計など、他の応用においても使用可能である。
【0051】
本発明の一実施形態に係る製造方法を図2(a)〜図2(g)に示す。図示した方法は、SOIウエハの使用と、単一のエッチングマスクを用いた、SOIウエハのデバイス層(第3層)を通り、埋め込み酸化物層(第2層)を通り、部分的にハンドリング層(第1層)に至る第1溝のDRIE(深堀り反応性イオンエッチング)エッチングとをベースにしており、そして、切り離しエッチングが続く。
【0052】
各々が可変キャパシタの1つの電極を備えている2つの別個の基板を使用する先行技術の手法とは反対に、本発明の実施形態の方法では、単一のSOI(シリコン・オン・インシュレータ)基板を使用しており、電極の一方(例えば、質量を備えた可動電極)がSOI基板のハンドリング層(第1層)に製作され、他方の電極(好ましくは、固定電極)がSOI基板のデバイス層(第3層)に製作されている。SOI基板を使用することによって、2つの電極は単一のリソグラフステップを用いて製作可能であり、こうして両方の電極のフィンガーを互いに自己整合させて、ウエハ接合の必要性を排除している。フィンガーを含む2つのキャパシタ板の間の必要な垂直分離(「ギャップ」とも称される)が、切り離した機械構造を生成するために、フィンガー間で局所的に除去される埋め込み酸化物層により、例えば、エッチングによって設けられる。
【0053】
図2(a)に示すように、本発明の実施形態の方法は、薄い埋め込み絶縁層、例えば、酸化物層42を備えた厚い半導体(例えば、シリコン)のハンドリング層41と、埋め込み酸化物層42の上部にある薄い半導体(例えば、シリコン)のデバイス層43とを備えたSOI基板40を用いてスタートする。ハンドリング層41の厚さは、例えば、625マイクロメータのオーダーでもよく、絶縁層42の厚さは、例えば、2マイクロメータにでき、デバイス層43は、例えば、20マイクロメータの厚さにできる。
【0054】
図2(b)は、SOI基板40のデバイス層43において、複数の第1フィンガー51、例えば、固定フィンガーを含む第1電極、例えば、固定電極の形成を示す。第1電極の形成は、第1マスク50、例えば、リソグラフマスクをデバイス層43の上に形成することと、異方性エッチングステップを行って、デバイス層に深い急斜面の溝を生成することとを含む。例えば、デバイス層43を通って、絶縁層、例えば、酸化物層42に達するまで、DRIE(ドライ反応性イオンエッチング)ステップを行ってもよい。DRIEエッチングを使用することが特に有利である。これにより、デバイス層43を通るほぼ直線的な側壁を持つ複数の溝を形成することが可能になるためである。
【0055】
エッチングの際、絶縁層、例えば、シリコン酸化物層42は、エッチング停止層として機能する。DRIEエッチングステップでは、一実施形態において、「ボッシュプロセス(Bosch process)」、即ち、標準的で略等方性のプラズマエッチングステップ(例えば、SF/Oプラズマを用いる)およびパッシベーション層、例えば、ポリマーの堆積ステップ(例えば、Cプラズマを用いる)を交互に繰り返すプロセスが使用できる。代替として、例えば、連続SF/Oプラズマを用いて低温(例えば、-110℃)での低温(cryogenic)エッチングプロセスが使用可能である。
【0056】
次のステップにおいて、図2(c)に示すように、同じ第1マスク50を用いて、埋め込み絶縁層、例えば、酸化物層42を、既に形成した溝において除去する。絶縁層42の除去は、エッチングによって行うことかできる。このエッチングステップは、SOI基板40のハンドリング層41に達するまで、例えば、例えば、CHFプラズマを用いたRIE(反応性イオンエッチング)ステップにすることができる。ハンドリング層41は、RIEエッチングのためのエッチング停止層として機能する。
【0057】
その後、再び同じ第1マスク50を用いて、図2(d)に示すように、ハンドリング層41は、既に形成した溝の底部において、数マイクロメータ、例えば、10マイクロメータの深さまで部分的に除去される。ハンドリング層41の部分除去は、エッチングによって行ってもよい。このエッチングステップは、例えば、DRIEエッチングステップにできる。溝の底部におけるハンドリング層41材料の部分除去は、複数の第2フィンガー52、例えば、可動フィンガーを含む第2電極、例えば、可動電極を規定するために行われる。DRIEエッチングステップでは、標準的で略等方性のプラズマエッチングステップ(例えば、SF/Oプラズマを用いる)およびパッシベーション層、例えば、ポリマーの堆積ステップ(例えば、Cプラズマを用いる)を交互に繰り返す「ボッシュプロセス」が使用できる。代替として、例えば、連続SF/Oプラズマを用いて低温(例えば、−110℃)での低温エッチングプロセスが使用可能である。
【0058】
図2(d)に示すように、これにより、デバイス層43を通り、埋め込み絶縁層、例えば、酸化物層42を通って、ハンドリング層43に至る複数の第1溝70が得られる。このステップの後、第1マスク50は、いずれか適切な方法で、例えば、Oプラズマエッチングによって除去可能である。しかしながら、第1マスク50は、プロセスのより後の段階で除去することも可能である。
【0059】
本発明の実施形態に係る方法は、SOI基板40の裏面、即ち、複数の第1溝70が存在する面とは反対にあるSOI基板40の面からハンドリング層41を通って、第2溝80をエッチングすることをさらに含む。ハンドリング層41を通るエッチングが、基板40の裏面に配置した第2マスク60を用いて、例えば、DRIEエッチング(例えば、ボッシュプロセスを用いて、または低温エッチングにより)行うことができる。第2マスク60、例えば、SiOマスクは、既設することができるが、製造プロセスの初めに(例えば、第1マスク50を設ける前に)設ける必要はない。ハンドリング層41を通るエッチングステップは、埋め込み絶縁層、例えば、シリコン酸化物層42に到達するまで続行し、地震質量53(図2(e))、サスペンション要素(不図示)およびアンカーポイント(不図示)を規定する。アンカーポイントおよびサスペンション要素が、地震質量53をハンドリング層41に柔軟に接続するために設けられる。
【0060】
SOI基板40の裏面にある第2マスク60は、第2溝がハンドリング層41を通ってエッチングされる場所が、複数の第1溝70が存在するエリアを少なくとも覆うエリアに及ぶようにしている。第2マスク60と、複数の第1溝70(複数のフィンガー51,52を規定)が配置されるエリアとの間のアライメントが、例えば、裏側顕微鏡を備えたマスクアライナーを用いて行うことができる。このアライメントの精度要求は低い。主な要求は、基板表面に対して平行な面内で、複数の第1溝70によってカバーされるエリアは、質量53によってカバーされるエリアの範囲内である点である。
【0061】
次に、図2(f)に示すように、第1切り離しステップが行われ、埋め込み絶縁層、例えば、シリコン酸化物層42は、複数の第1フィンガー51と複数の第2フィンガー52との間の領域において除去される。切り離しステップは、例えば、基板の前面(即ち、複数の第1フィンガー51の面)に供給される気相HFを用いて、埋め込み絶縁層42を除去することを含んでもよい。複数の第1フィンガー51と複数の第2フィンガー52との間の領域における埋め込み絶縁層、例えば、二酸化シリコン層の除去は、固定電極と可動電極との間にギャップまたはスペースの形成をもたらす。
【0062】
最後に、第2切り離しステップが行われ(図2(g))、埋め込み絶縁層、例えば、シリコン酸化物層42は、地震質量53とデバイス層43との間の領域でさらに除去され、これにより地震質量53および第2可動電極を切り離し、その結果、地震質量および可動電極は、固定電極に対して移動可能になる。第2切り離しステップは、基板の裏面に供給される気相HFを用いて行うことができる。
【0063】
代替の実施形態では、2つの切り離しステップの順序は反対でもよく、即ち、最初に第2切り離しステップを行って、次に第1切り離しステップを行ってもよい。両方の切り離しステップを行った後、地震質量53は、サスペンション要素(不図示)を用いてハンドリング層41と接続されている。第1切り離しステップおよび第2切り離しステップにおいて気相HFを用いることの利点は、湿式プロセスで起こり得る固着問題が回避される点である。
【0064】
図2(a)〜図2(g)に示すように、本発明の実施形態に係る、面外可変オーバーラップ式MEMSキャパシタ構造の製造方法は、1つのウエハおよび2つのリソグラフステップ(基板の各面で1つ)を要するのみである。このことは、2つの基板を使用し、ウエハ接合を用いて互いに貼り付けて、4つのリソグラフステップ(基板当たり2つ)を用いる先行技術の方法と比べて、利点である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
面外可変オーバーラップ式MEMSキャパシタを製造する方法であって、
互いの上部に積層した、第1層(41)、第2層(42)および第3層(43)を備えた基板(40)を用意することと、
単一のエッチングマスク(50)を用いて、第3層(43)を通り、第2層(42)を通り、第1層(41)に至る複数の第1溝(70)をエッチングすることと、を含む方法。
【請求項2】
複数の第1溝(70)をエッチングすることは、第3層(43)にある複数の第1フィンガー(51)および第1層(41)にある複数の第2フィンガー(52)を規定するようにした請求項1記載の方法。
【請求項3】
複数の第1溝(70)が設けられた領域において、第2層(42)を除去することをさらに含み、これにより複数の第1フィンガー(51)と複数の第2フィンガー(52)との間にギャップを形成するようにした請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
複数の第1溝(70)が設けられた領域を包囲する領域において、第1層(41)を通る第2溝(80)をエッチングすることをさらに含み、これにより複数の第2フィンガー(52)と接続された地震質量(53)を規定するようにした請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
地震質量(53)と第3層(43)との間の領域において、第2層(42)を除去することをさらに含み、これにより地震質量(53)および複数の第2フィンガー(52)を基板の残部から切り離すようにした請求項4記載の方法。
【請求項6】
第1層(41)の厚さは、100マイクロメータ〜1000マイクロメータの範囲である請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
第2層(42)の厚さは、1マイクロメータ〜5マイクロメータの範囲である請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
第3層(43)の厚さは、10マイクロメータ〜100マイクロメータの範囲である請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
基板は、SOI基板である請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
エネルギースカベンジャデバイスの製造方法、またはセンサの製造方法において実施される請求項1〜9のいずれかに記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2(a)】
image rotate

【図2(b)】
image rotate

【図2(c)】
image rotate

【図2(d)】
image rotate

【図2(e)】
image rotate

【図2(f)】
image rotate

【図2(g)】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2012−532470(P2012−532470A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518906(P2012−518906)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059362
【国際公開番号】WO2011/003803
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(591060898)アイメック (302)
【氏名又は名称原語表記】IMEC
【出願人】(508223789)
【氏名又は名称原語表記】Stichting IMEC Nederland
【出願人】(599098493)カトリーケ・ウニフェルジテイト・ルーベン・カー・イュー・ルーベン・アール・アンド・ディ (83)
【氏名又は名称原語表記】Katholieke Universiteit Leuven,K.U.Leuven R&D
【Fターム(参考)】