説明

MEMS振動子およびMEMS振動子からの出力信号電流の増強方法

【課題】出力共振信号電流が増大する振動子およびその振動子の製作方法を提供する。
【解決手段】振動子が、2つの容量結合した電極(1、2)から成る。一方の電極を、p型ドープ半導体材料で作成し、他方の電極をn型ドープ半導体材料で作成する。本発明はまた、振動子からの出力信号電流を増強するために、このようなドーピングの特定選択を使用する方法を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本アプリケーションは振動子の分野に関し、特にMEMS(微小電気機械システム)振動子の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
微小電気機械システム(MEMS)は、例えば高周波(RF)アプリケーション等のための、低コスト、低電力構成部品を実現するためのもっとも有望な技術の1つである。MEMSデバイスのマイクロメータのスケールと集積化の実現性は、従来の高周波システムにおいて受動素子が占有する大きな領域の問題を軽減するのに有用である。
【0003】
このような状況において、いわゆるMEMS振動子が開発されており、これは容量結合された2つの半導体電極(シリコン、ポリシリコン等で作成される)を含む。電気信号を電極に印加すると、振動子はその共振周波数で共振信号を発生する。電気信号により、例えば電極の1つである電極配置の一部の機械的振動が生じ、その機械的共振周波数で発振が開始される。これにより電極配置の電気容量が変化し、システムは電気共振信号を発生する。
【0004】
通常、半導体アプリケーションでは、電極(例えばシリコン電極またはポリシリコン電極)の材料は極性を持ち、この極性は、電極をドープするドーピング材料(p型またはn型)で決まる。p型ドーピング材料の例としては、ホウ素(B)が挙げられ、n型ドーピング材料としてはヒ素(As)およびリン(P)が挙げられる。公知の容量結合されたMEMS振動子は、同じ材料でドープした2つの半導体電極から成る。図1は、そのような従来技術のMEMS振動子を概略的に図示したもので、2つの電極1A、2Aから成り、両電極ともp型ドーピング材料でドープされ、DCバイアス電圧VPに接続している。
【0005】
【特許文献1】米国特許第6238946号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
MEMS振動子を使用する際に頻繁に直面する問題は、出力共振信号電流が非常に弱いことで、通常ナノアンペアのオーダーである。これは、振動子自体が小さいという事実による。さらに、機械的エネルギーから電気的エネルギーへの変換効率があまり良くないことにもよる。従って、出力共振信号電流を増大させ、MEMS振動子を多くの実用的用途でより有用なものにする必要がある。しばしばこの問題に対して、直列運動抵抗を減少させる試みがなされてきた。しかし、必ずしも適切または最適ではなく、および/または必ずしも出力電流のレベルを十分または最適なものにするものではない。従って、代替のおよび/または補足的な解決方法が必要であると考えられる。
【0007】
特許文献1は、特定の電極に関してある効果を得るために、電極のドーピングが選択されることがあり、電極が同じではないドーピングを有することになるデバイスを開示している。例えば、特許文献1で開示しているものの一例では、「n型」ドープシリコンをある層に使用して、P型ドープシリコン基板に対して隔離させ(接合静電容量を用いて)、別の電極をイオン注入でドープし、振動子の弾性定数を変えることによって振動子構造の固有周波数を変更する。B(p型)、AS(n型)およびP(n型)等のドーパント置換原子を注入するなど、異なる別の方法もある。ビーム電極のドーピングの種類は全く重要ではなく、問題は、イオンがどのようにシリコンの局部接着および振動子の弾性定数に影響するか言うことだけである。事実、特許文献1では、この種の材料(n型およびp型両方の材料を含む)を取り込んで、振動子のバンドパス周波数特性を変更することを開示し、またn型材料でもp型材料でもない炭素またはゲルマニウムを利用することを示唆している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様は、振動子、特に微小電気機械システム(MEMS)振動子に関し、該振動子は2つの容量結合した電極から成り、各電極は半導体材料で作成される。電極は、下にあるシリコン層から前記電極を隔離する誘電体層(例えば、二酸化ケイ素層)の上に配置される。一方の電極はp型ドープ半導体材料で作成し、他方の電極はn型ドープ半導体材料で作成する。よって、出力信号電流を下記に説明するように、増加することができる。
【0009】
MEMS振動子の半導体電極間の単位当たりの電荷は、下記のように算出できる。

(ここで、C0は2つの電極間の静電容量、VPは2つの電極間のDCバイアス電圧、VFBはフラットバンド電圧、Φfはフェルミ準位、ΦABは図1のように配置された2つの半導体電極間のビルトインポテンシャル)
【0010】
従来型の配置では、両電極は同じ方法でドープされた材料から構成され(すなわち、図1に示すように、p型とp型、またはn型とn型の半導体材料)、ビルトインポテンシャルΦABは下記の通りである。

(ここで、Egは半導体のエネルギーバンドギャップ、Naは底面側(基準)半導体電極のドーピング密度、kはボルツマン定数、Tは温度、niは半導体の固有密度、)
そして、電極の電荷は下記の通り。

【0011】
しかし、電極が異なる方法でドープされた材料で作成される場合(例えば、それぞれp型、n型の半導体材料で)、ビルトインポテンシャルΦABは下記のようになる。

【0012】
そして、電極の電荷は下記のようになる。

【0013】
上記の式から、電極の電荷の差、すなわちq1とq2の差が求められる。

【0014】
このようにして、一方の電極をp型半導体材料で作成し、他方の電極をn型半導体材料で作成した振動子は、両電極が同じ方法でドープされた従来技術の振動子より、多くの電荷を蓄積できることが分かる。
【0015】
共振周波数で、インピーダンスRXを有する容量型のMEMS振動子ついて検討する。該振動子は、下記のように算出できる出力信号電力を生成する。

ここで、A0=LWは振動子重複領域(下記図3を参照)、d0は2つの電極間を離間させる間隙、δC/δxは単位変位当たりの振動子容量の変化、Xは振動振幅、ω0=2πf0は角振動周波数、ε0は誘電率である。
【0016】
振動子の静電容量は下記の通りである。

よって、

【0017】
共振出力信号は電荷に比例する。したがって、静電結合型の振動子の半導体電極は、p型半導体電極とn型半導体電極から構成され、同じ方法でドープされた2つの半導体電極を有する振動子よりも大きな出力信号電流を生成する。
【0018】
したがって、振動子特性が向上し、振動子は、例えば無線通信デバイスで使用される集積回路等の高周波アプリケーションに、より好ましく利用できるように形成される。さらに、本発明は、特別な製造工程を追加することや、従来の製造プロセスを実質的に変更することを必要とはしない。言いかえれば、標準の半導体製造プロセスが利用できるということである。よって、本発明は、既存の技術で、追加のコストもなく、直接実施できる。
【0019】
電極は、電気信号を振動子に印加すると少なくとも一方の電極が共振周波数で振動できるように、配置可能である。
【0020】
材料は、各電極がドープシリコンまたはポリシリコンで作成されるように選択できる(ポリシリコンの利用可能性は、本発明を実用的に多数実現するためには重要であると考えられる)。
【0021】
一方の電極を、ホウ素(B)等のp型ドーピング材料でドープし、他方の電極を、ヒ素(As)および/またはリン(P)等のn型ドーピング材料でドープすることが可能である。
【0022】
前記電極の第2電極は、少なくとも1つのビーム部を含むことが可能で、該ビーム部が前記電極の第1電極の少なくとも一部の上に、前記電極の前記第1電極の前記一部にほぼ平行に延びて、振動領域を画成する。この振動子は、いわゆるMEMSマイクロフラップ振動子に相当し得る。振動領域は、長さ(L)および幅(W)を有することが可能で、ほぼ正方形または長方形である。
【0023】
電極の第2電極は、支持(アンカー)部を含むことが可能で、ビーム部が前記支持部から延び、ビーム部が第1電極からビーム部の主要面に対して垂直方向に変位している。ビーム部は固定端部と可動端部を有し、固定端部の周囲で、例えば支持部が取り付けられた地点の周囲で、振動または揺動するように配置可能である。
【0024】
1つの単一のビーム部の代わりに、第2電極は、複数のビーム部、例えば平行に配置されるほぼ等しい複数のビーム部を含むことが可能である。
【0025】
電極は、誘電体材料の帯片で、例えば第1電極および第2電極の支持部の一部を収容する平面において隔離することができる。
【0026】
振動子は、標準CMOSプロセス、例えばバルクCMOSプロセスにより製作可能で、多くのアプリケーションに対して、例えばSOI(シリコン・オン・インシュレータ)ウェハよりも工業向けで安価であり得る。また、振動子製作のためのバルクCMOSプロセスは、とりわけ、振動子を標準バルクCMOS集積回路に直接集積できるので、有利である。
【0027】
本発明の別の態様は、無線通信デバイスで使用される集積回路等の高周波(RF)アプリケーション用の集積回路に関する。該回路は、本発明の第1の態様に係わる少なくとも1つの振動子を含有する複数の回路素子を含む。
【0028】
さらなる本発明の態様は、振動子の製作において、各電極が半導体材料で作成される、2つの容量結合した電極(1、2)から成る振動子からの出力信号電流を増強または増加するために、2つの容量結合した電極に2つの異なる種類のドーピングを使用する方法に関する。
【0029】
該方法は、
一方の前記電極に対してp型ドープ半導体材料を選択し、他方の前記電極に対してn型ドープ半導体材料を選択する工程と、
選択したp型ドープ半導体材料を一方の電極に対して使用し、選択したn型ドープ半導体材料を他方の電極に対して使用して、振動子を製作する工程と、から成る。
【0030】
振動子に関連して述べてきたことはまた、該方法にも必要な変更を加えて適用できる。
例えば、
−振動子は、電気信号を振動子に印加すると共振周波数で振動するように配置される、1つの電極を有する微小電気機械システム(MEMS)振動子であり得る。
−電極に使用する材料が、ドープしたシリコンおよび/またはポリシリコンを含み得る。
−ホウ素(B)でドープした材料を一方の電極に対して選択可能で、ヒ素(As)および/またはリン(P)でドープした材料を他方の電極に対して選択可能である。
【0031】
該方法は、少なくとも一方の電極を、電気信号を振動子に印加すると、共振周波数で振動できるように配置する工程を含むことができる。
【0032】
前記電極の第2電極は、少なくとも1つのビーム部を含むように製作することが可能で、該ビーム部が前記電極の第1電極の少なくとも一部の上に、前記電極の前記第1電極の前記一部にほぼ平行に延びて、長さと幅を有し得る振動領域を画成する。
【0033】
前記電極の第2電極は、支持部を含むように製作することが可能で、前記少なくとも1つのビーム部が前記支持部から延び、前記少なくとも1つのビーム部が第1電極からビーム部の主要面に対して垂直方向に変位している。
【0034】
前記少なくとも1つのビーム部は、平行に配置される複数のビーム部(210)を含むように製作することができる。
【0035】
電極は、誘電体材料の帯片で隔離されるように製作することができる。
【0036】
電極は、下にあるシリコン層から前記電極を隔離する誘電体層の上に製作することができる。これは、振動子構造が完全にシリコン基板から隔離され、また従来技術で使用されることがあるpn接合のみによる隔離ではないということである。そのようなpn接合は基板に寄生容量を生じさせ、振動子の性能を低減させる。前記誘電体層は二酸化ケイ素層であり得る。
【0037】
振動子は、標準CMOSプロセス、例えば上述のバルクCMOSプロセスを用いて製作できる。
【0038】
本発明の別の態様は、複数の回路素子を製作する工程を含む、前記回路素子の少なくとも1つが上述した振動子である、高周波アプリケーション用の集積回路の制作方法に関する。
【発明の効果】
【0039】
本発明は、振動子、特に微小電気機械システム(MEMS)振動子に関し、出力信号電流を増加する効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
説明を完全にし、本発明をより良く理解するために、図面1式を備えた。図面は説明に不可欠な部分であり、本発明の好ましい実施形態を図解している。実施形態は、本発明の範囲を制限するものではなく、本発明をどのように実施できるかの例に過ぎないと解釈すべきである。
【0041】
図2は、本発明の基本の実施形態を概略的に説明したもので、すなわち、容量結合したMEMS振動子の2つの電極1および2であり、電極1は、n型ドーピング材料(例えばAsまたはP)でドープした半導体材料(例えばシリコンまたはポリシリコン)で作成し、一方、他方の電極2はB等のp型ドーピング材料でドープしたシリコンまたはポリシリコンから成る。DCバイアス電圧源VPが描かれているが、これは反転させても良い。
【0042】
図3および4は、1つの可能な電極構成の説明図である。第1電極1および第2電極2を、第1電極の平面にある誘電体材料の帯片3(例えば酸化ケイ素帯片)によって隔離するように配置する。上記で概説したように、一方の電極はn型でドープされ、他方の電極はp型でドープされる。図示した振動子は、いわゆるマイクロフラップ振動子であり、第2電極2は、ビーム部21を含む。該ビーム部は支持部22から、第1電極の表面の少なくとも一部の上に延び、ビーム部が(図4に矢印で概略的に図示するように)振動するようになっている。支持部22の反対側の端部には、ベース部23がビーム部21の方向とは反対の方向に延びる。
【0043】
電極は、それぞれ典型的にはシリコンまたはポリシリコンで作成し、(p型ドープ電極の場合は)ホウ素(B)でドープし、また、(n型ドープ電極の場合は)ヒ素(As)またはリン(P)でドープする。電極が重なる領域、すなわちビーム部21が下にある電極1に重なる領域は、固有MEMS振動領域で、幅Wおよび長さLを有する。電気信号を電極に印加すると、振動子はその共振周波数で共振信号を発生する。電気信号により、ビーム部21の機械的振動が生じ、ビーム部21はその機械的共振周波数で垂直に発振を開始する。これにより電極配置の電気容量が変化し、システムは電気共振信号を発生する。2つの電極のドーピングの極性が異なるため、同じ条件下で作動する従来の振動子と比較して、増大した出力電流が得られる。
【0044】
図5は、本発明の一実施形態にしたがって振動子を製造する1つの可能な方法を概略的に説明している。基本的に作製プロセスは標準バルクCMOS技術に基づき、振動子を集積回路に集積するのに適している。
【0045】
図5(a)は第1工程後に得られる構造を示す。第1工程では基板ウェハを準備し、第1シリコン層501(例えば、pまたはn型のドープシリコン)を構成し、その上に第1の絶縁層または誘電体層(例えば二酸化ケイ素(SiO2)の層で、フィールド酸化層としても公知である)を熱酸化により堆積する。誘電体層502の厚さは、典型的には10000Å程度である。
【0046】
図5(b)では、第1ポリシリコン層503をCVD(化学気相成長)法によって第1誘電体層502の一部の上に堆積する。この第1ポリシリコン層は、ポリシリコン層の抵抗率を減少させるために、熱拡散またはイオン注入により、(例えば、ボロン(B)を用いたp型ドーピング、またはヒ素(As)またはリン(P)を用いたn型ドーピングを用いて)ドープされる。その後、ウェハはドーピングの均一性を維持するように熱アニールされる。この第1ポリシリコン層503の厚さは、典型的には5000Å程度である(しかし、この層の幅は本振動子の作製プロセスでは重要ではない。この場合、第1ポリシリコン層が第1電極を構成するが、振動させることは意図しておらず、そのためその寸法は特には関係がないからである)。
【0047】
図5(c)において、第2誘電体(例えば二酸化ケイ素(SiO2)等)層504が、後に続くポリシリコン層から第1ポリシリコン層503を絶縁するために、熱酸化により追加される。また、第2誘電体層504は振動子の全体的な支持体または「アンカー」部としての役割をする。第2誘電体層504の厚さは、振動子の垂直に重なり合う部分間に設けられる間隙に依存する。典型的には第2誘電体層504は500nm未満の厚さを有することができる。
【0048】
図5(d)において、第2ポリシリコン層505が、第2誘電体層504の一部の上にCVD法により堆積される。この第2ポリシリコン層505は、ポリシリコン層の抵抗率を減少させるために、熱拡散またはイオン注入により、(例えば、ボロン(B)を用いたp型ドーピング、またはヒ素(As)またはリン(P)を用いたn型ドーピングを用いて)ドープされる。
【0049】
本発明の原則に従うと、この第2ポリシリコン層のドーピングは、第1ポリシリコン層の種類に依存する。第1ポリシリコン層(503)をp型ドーピングでドープするなら、第2ポリシリコン層はn型ドーピングでドープするが、逆もまた同様である。すなわち、一方のポリシリコン層はAsまたはPでドープ可能であり、他方はBでドープ可能である。
【0050】
それから、ウェハはドーピングの均一性を維持するように熱アニールされる。この第2ポリシリコン層505の厚さは、振動子の所望の特性に従って選択される(この層の厚さは、振動子の特性に強く影響する重要なパラメータである)。典型的には第2ポリシリコン層は、500nmから2000nmの間の厚さを有する(しかし、厚いポリシリコン層は製造がより難しい場合があり、標準CMOS製造プロセスとは互換性がない)。
【0051】
次の工程、いわゆる「ポストプロセス」工程では、犠牲層(すなわち、第2誘電体層504の一部)を取り除き、支持部に連結する部分を除いたビーム部(第2ポリシリコン層505の一部に相当する)を自由にさせることにより振動子を作動できるようにする。支持部もまた第2ポリシリコン層505により構成されている。ポストプロセスリリースエッチングはフッ化水素酸リリース溶液(この溶液は、典型的にはシリコン酸化犠牲層を除去するために用いられる)を用いて行われる。エッチング時間は、除去される第2誘電体層504の長さに依存する。このプロセスの結果は、図5(e)に見ることができる。
【0052】
図6は、高周波アプリケーションの集積回路、すなわちアンテナ600に接続されたトランシーバモジュール示す。トランシーバモジュールは、複数のバンドパスフィルタ601、中間周波数バンドパスフィルタ602、Rx/Tx(受信/送信)スイッチ603、低雑音増幅器604、電力増幅器605、中間周波数増幅器606、局部発振器607、周波数変換ミキサ608、ベースバンドブロック609から成る。この回路構成は、この種のアプリケーションでは従来型のものである。しかし、本発明にしたがうと、1つ以上のバンドパスフィルタ(601、602)と局部発振器は本発明の振動子に基づくことが可能であり、他の要素、任意にはアンテナ600も含む回路に集積されている。
【0053】
図7は、本発明の代替実施形態に係わるMEMS振動子を概略的に説明している。図3および4の実施形態においては単一のビーム部21が、平行に配置される2個(図7(a))および3個(図7(b))のビーム部210に置き換わっている。複数のビーム部を平行に配置すると、特に全てのビーム部がほぼまたは全く同じ形状の場合、さらに出力信号を増大させることができる。
【0054】
本明細書において、用語「から成る」およびその派生語(「含む」等)は除外の意味で理解すべきではなく、すなわちこれらの用語は、記載および定義されたものがさらなる要素、工程等を含む可能性を除外するような解釈をすべきではい。
【0055】
一方、本発明は、ここに記載した特定の実施形態に限定されないことは明らかであり、特許請求の範囲で定義した本発明の全般的な範囲内で、当業者が想到し得る任意の変形(例えば、材料、寸法、構成要素、構成等の選択に関して)を、包含する。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、MEMSデバイスのマイクロメータのスケールと集積化の実現に関し、高周波システムにおいて受動素子が占有する大きな領域の問題を軽減するのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】従来技術のMEMS振動子の断面の概略図。
【図2】本発明の一実施形態に係わるMEMS振動子の断面の概略図。
【図3】本発明の一実施形態に係わるMEMS振動子の上面図。
【図4】図3のMEMS振動子の断面図。
【図5】製造プロセスの異なる工程における振動子の断面の概略説明図。
【図6】本発明に係わる振動子を含む、高周波アプリケーションの回路の概略説明図。
【図7】本発明の代替実施形態に係わるMEMS振動子の上面図。
【符号の説明】
【0058】
1、2・・・・・電極
3・・・・・・・帯片
21、210・・ビーム部
22・・・・・・支持部
23・・・・・・ベース部
501・・・・・第1シリコン層
502・・・・・第1誘電体層
503・・・・・第1ポリシリコン層
504・・・・・第2誘電体層
505・・・・・第2ポリシリコン層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動子の製作において、各電極が半導体材料で作成される、2つの容量結合した電極(1、2)から成る振動子からの出力信号電流を増強するために、前記2つの容量結合した電極に2つの異なる種類のドーピングを使用する方法であって、
一方の前記電極に対してp型ドープ半導体材料を選択し、他方の前記電極に対してn型ドープ半導体材料を選択する工程と、
選択したp型ドープ半導体材料を一方の電極に対して使用し、選択したn型ドープ半導体材料を他方の電極に対して使用して、振動子を製作する工程と、から成ることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記振動子は、電気信号を振動子に印加すると共振周波数で振動するように配置される、少なくとも1つの電極(2)を有する微小電気機械システム(MEMS)振動子であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
電極が、ドープしたシリコンで作成されることを特徴とする、請求項1および2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
電極が、ドープしたポリシリコンで作成されることを特徴とする、請求項1および2のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
ホウ素(B)でドープした材料を一方の電極に対して選択し、ヒ素(As)および/またはリン(P)でドープした材料を他方の電極に対して選択することを特徴とする、先行請求項いずれかに記載の方法。
【請求項6】
少なくとも一方の電極(2)を、電気信号を振動子に印加すると、共振周波数で振動できるように配置する工程を含むことを特徴とする、先行請求項いずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記電極の第2電極(2)が、少なくとも1つのビーム部(21、210)を含むように製作され、該ビーム部が前記電極の第1電極(1)の少なくとも一部の上に、前記電極の前記第1電極(1)の前記一部にほぼ平行に延びて、振動領域を画成することを特徴とする、先行請求項いずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記振動領域が、長さ(L)および幅(W)を有することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記電極の前記第2電極(2)が、支持部(22)を含むように製作され、前記少なくとも1つのビーム部(21、210)が前記支持部から延び、前記少なくとも1つのビーム部が第1電極からビーム部の主要面に対して垂直方向に変位していることを特徴とする、請求項7および8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つのビーム部が、平行に配置される複数のビーム部(210)を含むように製作されることを特徴とする、請求項7から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
電極が、誘電体材料の帯片(3)で隔離されるように製作されることを特徴とする、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
電極(1、2;503、505)が、下にあるシリコン層(501)から前記電極を隔離する誘電体層(502)の上に製作されることを特徴とする、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記誘電体層(502)が二酸化ケイ素層であることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
振動子が、標準CMOSプロセスを用いて製作されることを特徴とする、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記標準CMOSプロセスが、バルクCMOSプロセスであることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
複数の回路素子(601−609)を製作する工程を含む、前記回路素子の少なくとも1つが先行請求項のいずれかに係わる振動子であることを特徴とする、高周波アプリケーション用の集積回路の制作方法。
【請求項17】
各電極が半導体材料で作成される、2つの容量結合した電極(1、2)から成る振動子であって、
一方の電極をp型ドープ半導体材料で作成し、他方の電極をn型ドープ半導体材料で作成し、
電極(1、2;503、505)が、下にあるシリコン層(501)から前記電極を隔離する誘電体層(502)の上に製作されることを特徴とする、振動子。
【請求項18】
前記誘電体層(502)が二酸化ケイ素層であることを特徴とする、請求項17に記載の振動子。
【請求項19】
少なくとも1つの電極(2)は、電気信号を振動子に印加すると、共振周波数で振動できるように配置されることを特徴とする、請求項17に記載の振動子。
【請求項20】
前記振動子が、微小電気機械システム(MEMS)振動子であることを特徴とする、請求項17から19のいずれかに記載の振動子。
【請求項21】
各電極が、ドープしたシリコンで作成されることを特徴とする、請求項17から20のいずれかに記載の振動子。
【請求項22】
各電極が、ドープしたポリシリコンで作成されることを特徴とする、請求項17から20のいずれかに記載の振動子。
【請求項23】
一方の電極をホウ素(B)でドープし、他方の電極をヒ素(As)またはリン(P)でドープすることを特徴とする、請求項17から22のいずれかに記載の振動子。
【請求項24】
前記電極の第2電極(2)が、少なくとも1つのビーム部(21、210)を含み、該ビーム部が前記電極の第1電極(1)の少なくとも一部の上に、前記電極の前記第1電極(1)の前記一部にほぼ平行に延びて、振動領域を画成することを特徴とする、請求項17から23のいずれかに記載の振動子。
【請求項25】
前記振動領域が、長さ(L)および幅(W)を有することを特徴とする、請求項24に記載の振動子。
【請求項26】
前記電極の前記第2電極(2)が、支持部(22)を含み、前記少なくとも1つのビーム部(21、210)が前記支持部から延び、前記少なくとも1つのビーム部が第1電極からビーム部の主要面に対して垂直方向に変位していることを特徴とする、請求項24および25のいずれかに記載の振動子。
【請求項27】
前記少なくとも1つのビーム部が、平行に配置される複数のビーム部(210)を含むことを特徴とする、請求項24から26のいずれかに記載の振動子。
【請求項28】
電極が、誘電体材料の帯片(3)で隔離されることを特徴とする、請求項17から27のいずれかに記載の振動子。
【請求項29】
標準CMOSプロセスで製作されることを特徴とする、請求項17から28のいずれかに記載の振動子。
【請求項30】
前記標準CMOSプロセスが、バルクCMOSプロセスであることを特徴とする、請求項29に記載の振動子。
【請求項31】
請求項17から30のいずれかに係わる少なくとも1つの振動子を含有する複数の回路素子(601−609)を含むことを特徴とする、高周波アプリケーション用の集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−116700(P2007−116700A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−283475(P2006−283475)
【出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】