説明

MPEGデータの送受信方法

【課題】MPEGデータに対するサーバ側の間引き処理およびクライアント側の受信処理を簡易にして、データ欠落にも再生画像への影響を軽減できる。
【解決手段】クライアントは、サーバから間引き処理したMPEGデータのIピクチャを受信したときに(S11)該Iピクチャを受信データバッファに格納し(S13)、かつ該Iピクチャに続くBピクチャおよびPピクチャが受信される場合に(S15)それらを前記受信データバッファに格納し(S13)、グループにデータ欠落がある場合には受信データバッファリングを中断して次のIピクチャ受信に戻り(S15)、前記受信データバッファに格納されたピクチャを再生する(S16)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端末からのMPEGデータをサーバが受信してクライアントに配信するネットワークシステムに係り、特にMPEGデータの間引きや伝送データ欠落に対応した送受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のネットワークシステムの例を図5に示す。複数の端末T1〜T4、サーバS、及び、複数のクライアントC1〜C4で構成されるネットワーク網において、端末からの、MPEGデータをパケット化して伝送回線に載せ、このパケット群をサーバSが順次受信し、少なくとも1つのクライアントに配信する。
【0003】
ここで、端末とサーバ間、サーバとクライアント間のネットワーク帯域は様々で、介在する回線や中継機器の伝送速度による制限、及び、端末やクライアントのデータ帯域制限により、例えば、高帯域(1Gbps〜100Mbps)から低帯域(32kbps〜128kbps)までのデータが混在する。
【0004】
例えば、図6に示すように、端末T→サーバSの経路では高帯域回線(100Mbps)でデータを伝送し、サーバS→クライアントC1の経路では低帯域回線(64Kbps)でデータを伝送し、サーバS→クライアントC2の経路では高帯域回線でデータを伝送する。
【0005】
このようなネットワークシステムにおいて、端末TとサーバS間およびサーバSとクライアントC2間では帯域が同等であるため、端末TからのMPEGデータは過不足なくクライアントC2に送信することができる。一方、サーバSとクライアントC1間では低帯域であるため、サーバSが受信したMPEGデータをクライアントC1へそのまま送信すると、サーバSの送信バッファでオーバフローをすることになる。したがって、サーバSでは受信したMPEGデータを間引きして送信する仕組みが必要となる。
【0006】
サーバS内の送信バッファにバッファリングされるMPEG画像データ列は、「I,B,B,P,B,B,I,B,B,P,B,B,I,B,B,P,…」のようになる。ここで、Iピクチャはフレーム内データのみで圧縮したもの(JPEGデータに相当)、Pピクチャは時間的に前のIもしくはPからの変化分(差分データ)、Bピクチャは前後両方の再生画像からの予測したもの(差分データ)である。
【0007】
このMPEGデータから、無作為に間引きすると、Iピクチャ(JPEG相当)がなくなり、Pピクチャ、Bピクチャのみの差分データで構成されたデータ列を送信する可能性が生じ、このデータ列を受信したクライアントでは乱れた画像表示になる。
【0008】
MPEG画像の間引き方法として、画像間予測の参照画像とならない画像の符号列(Bピクチャの符号列)の間引き率を制御することにより、再生画像の動きのスムーズさが損なわれるのを最小限に抑え、符号転送レートを少なくするものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−268574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1のように、Bピクチャの間引き率を制御する方法では、間引き率が高くなるほど、MPEG画像の動きへの影響が大きくなる。また、動画像の動きアクティビティ情報を分離するなど、複雑な画像処理を必要とする。
【0011】
また、ネットワーク伝送において、データ欠落が発生した場合、無作為に間引きしたのと同じに、画像が乱れてしまう。
【0012】
本発明の目的は、サーバ側の間引き処理およびクライアント側の受信処理を簡易にして、データ欠落にも再生画像への影響を軽減できるMPEGデータの送受信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前記の課題を解決するため、以下の方法を特徴とする。
【0014】
(1)サーバが受信する高帯域のMPEGデータを間引き処理し、このMPEGデータを低帯域で受信するクライアントで再生するMPEGデータの送受信方法であって、前記クライアントは、前記サーバから間引き処理したMPEGデータのIピクチャを受信したときに該Iピクチャを受信データバッファに格納し、かつ該Iピクチャに続くBピクチャおよびPピクチャが受信される場合にそれらを前記受信データバッファに格納し、前記受信データバッファに格納されたピクチャを再生する手順を有することを特徴とする。
【0015】
(2)サーバが受信するMPEGデータをクライアントに送信し、このMPEGデータをクライアントで受信して再生するMPEGデータの送受信方法であって、前記クライアントは、前記サーバから受信したMPEGデータのIピクチャを受信したときに該Iピクチャを受信データバッファに格納し、かつ該Iピクチャに続くBピクチャおよびPピクチャが受信される場合にそれらを前記受信データバッファに格納し、前記受信データバッファに格納されたピクチャを再生する手順を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、クライアント側は、Iピクチャを受信データバッファに格納し、かつ該Iピクチャに続くBピクチャおよびPピクチャが受信される場合にそれらを受信データバッファに順次格納して再生するため、Iピクチャが欠落しない限り、最小限のIピクチャ(JPEG相当)の再生ができる。また、クライアント側の受信処理は欠落ピクチャから次のIピクチャの直前のピクチャまでの削除が自動的になされ、しかもJPEG相当のIピクチャの欠落がないため、再生画像への影響を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態1を示すサーバの送信処理フローチャート。
【図2】グループ単位に間引いた例。
【図3】本発明の実施形態2を示すクライアントの受信処理フローチャート。
【図4】受信データのバッファリングの例。
【図5】ネットワークシステムの例。
【図6】高帯域と低帯域データの送受信の例。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施形態1)
図1は、サーバによる送信処理フローチャートであり、この送信における間引き処理はサーバを構成するコンピュータ資源とこれを利用したソフトウェア構成で実現される。
【0019】
サーバは、端末からMPEGデータのパケットを受信したときに、これを復号してクライアント別に受信バッファに順次保存する受信バッファリング処理を行う(S1)。
【0020】
次に、受信バッファリング処理とは非同期で、受信バッファに保存されたMPEGデータをグルーピングする(S2)。このグルーピング処理は、Iピクチャから次のIピクチャの直前のデータまでを1つのグループとしてまとめる。
【0021】
次に、グループ単位の間引きを行う(S3)。この間引き処理は、グループ単位を間引き対象とし、伝送回線の帯域幅に応じて間引くグループ数を決定し、伝送帯域が低くなるほど間引きグループ数を多くする。
【0022】
グループ単位で間引きされたMPEGデータを送信バッファに順次保存する送信バッファリング処理を行う(S4)。送信バッファに保存されたMPEGデータを符号化して宛先クライアントに送信処理する(S5)。
【0023】
上記の処理S2、S3の具体的な処理例を図2に示す。グルーピング処理(S2)は、Iピクチャから次のIピクチャの直前のデータまでを1つのグループとしてまとめるため、先頭データがIピクチャになるグループ1〜11のようにまとめられる。グループ間引き処理(S3)は、3グループ中から2グループを間引く場合を示し、間引き結果はグループ1,グループ4,グループ7,グループ10,…のような送信データ列になる。
【0024】
以上のとおり、本実施形態によれば、MPEGデータの間引き処理には、Iピクチャから次のIピクチャの直前のデータまでを1つのグループとしてまとめるグルーピング処理と、そのグループ単位の間引き処理という簡易な処理で済み、しかもJPEG相当のIピクチャの欠落がないため、クライアントでの再生画像への影響を軽減できる。
【0025】
(実施形態2)
図3は、クライアントによるMPEGデータの受信処理フローチャートであり、この受信処理はクライアントを構成するコンピュータ資源とこれを利用したソフトウェア構成で実現される。
【0026】
クライアントは、サーバから伝送されてきたMPEGデータのパケットを受信し、これを復号して順次取り込む(S11)。この受信はピクチャ単位(I、P、B)で行う。
【0027】
次に、受信したピクチャがIピクチャか否かをチェックする(S12)。Iピクチャでなければ次のピクチャの受信処理に戻る(S11)。
【0028】
受信ピクチャがIピクチャのとき、このピクチャを受信データバッファに格納し(S13)、このピクチャに続く次のピクチャを取り込み(S14)、このピクチャが前回のピクチャの続きか否かをチェックする(S15)。このチェックで前回のピクチャの続きでない場合は次のピクチャの受信処理に戻る(S11)。続きのピクチャの場合は当該ピクチャを受信データバッファに格納する(S13)。
【0029】
処理S15におけるチェックは、MPEGデータのヘッダ情報にもつシーケンス番号で行い、グループのピクチャの欠落はシーケンス番号が連続しているか否かで判断することができる。
【0030】
したがって、受信データバッファには、図4にバッファリングの例を示すように、Iピクチャから次のIピクチャの直前のピクチャまでが順次格納され、グループにデータ欠落がある場合(サーバ側での間引きや伝送路でのデータ欠落が発生した場合)には受信データバッファリングを中断して次のIピクチャ受信に戻り、データ欠落ピクチャから次のIピクチャの直前のピクチャまでは削除した受信データを得ることができる。
【0031】
受信データバッファに格納されたMPEGデータは、それらを連続させた画像として再生処理する(S16)。
【0032】
以上のとおり、本実施形態によれば、受信したMPEGデータがサーバによりグループ単位で間引き処理されたもの、または無作為に間引き処理されたもの、もしくは伝送路でデータ欠落した場合には、Iピクチャが欠落しない限り、最小限のIピクチャ(JPEG相当)の再生ができる。また、この受信処理は欠落ピクチャから次のIピクチャの直前のピクチャまでの削除が自動的になされ、しかもJPEG相当のIピクチャの欠落がないため、再生画像への影響を軽減できる。
【符号の説明】
【0033】
S サーバ
T、T1〜T4 端末
C1〜C4 クライアント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバが受信する高帯域のMPEGデータを間引き処理し、このMPEGデータを低帯域で受信するクライアントで再生するMPEGデータの送受信方法であって、
前記クライアントは、前記サーバから間引き処理したMPEGデータのIピクチャを受信したときに該Iピクチャを受信データバッファに格納し、かつ該Iピクチャに続くBピクチャおよびPピクチャが受信される場合にそれらを前記受信データバッファに格納し、グループにデータ欠落がある場合には受信データバッファリングを中断して次のIピクチャ受信に戻り、前記受信データバッファに格納されたピクチャを再生する手順を有することを特徴とするMPEGデータの送受信方法。
【請求項2】
サーバが受信するMPEGデータをクライアントに送信し、このMPEGデータをクライアントで受信して再生するMPEGデータの送受信方法であって、
前記クライアントは、前記サーバから受信したMPEGデータのIピクチャを受信したときに該Iピクチャを受信データバッファに格納し、かつ該Iピクチャに続くBピクチャおよびPピクチャが受信される場合にそれらを前記受信データバッファに格納し、グループにデータ欠落がある場合には受信データバッファリングを中断して次のIピクチャ受信に戻り、前記受信データバッファに格納されたピクチャを再生する手順を有することを特徴とするMPEGデータの送受信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−253822(P2012−253822A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−209366(P2012−209366)
【出願日】平成24年9月24日(2012.9.24)
【分割の表示】特願2007−228463(P2007−228463)の分割
【原出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】