説明

MRIにおける造影剤濃度依存性の除去

本発明は、人体中に自然に存在しない少なくとも1つの非応答性コントラスト増強エンティティ及び非応答性コントラスト増強エンティティに取り付けられ又は混合される少なくとも1つの応答性コントラスト増強エンティティを有する造影剤の患者への投与の後に局所的な生理化学的なパラメータに関する情報を取得するためのMRI撮像方法に関する。そのような非応答性コントラスト増強エンティティを用いることにより、物理化学的パラメータの値は3つの画像のみを取得することによって得ることができ、それにより、本発明による方法は、より高速であり、動き又は流動アーチファクトに対して低感度なので、臨床的ルーチンに適用することがより容易である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴撮像(Magnetic Resonance Imaging:MRI)に関する。より詳しくは、本発明は、例えば物理化学的パラメータに感受性がある作用剤を用いて撮像し、それによって造影剤濃度依存性を除去することにより、個体の体の少なくとも一部の物理化学パラメータに関する情報を得るための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴撮像(MRI)は、医療において使用される主要な診断撮像技術の1つである。MRIは、軟部組織の詳細な画像を生成する。MRIにおいて、組織内部で見いだされる様々な化合物の特定の特性が画像を生成するために用いられ、この目的のために、体内に存在する水が最も一般的に用いられる。強力な外部磁場にさらされると、水素原子(プロトン)はこの外部磁場に整列して、正味の磁気モーメントをもたらす。RFパルスによる励起の後、この磁化は、検出されることができるRF信号を生成する。このRF信号は、磁界強度に関連する周波数によって特徴づけられる。したがって、検出された信号から画像を再構成するために必要である空間情報をエンコードするために、傾斜磁場が用いられる。
【0003】
水信号の緩和時間は、異なる組織間で僅かに異なる。これらの差は、画像中のコントラストを生成するために用いられる。加えて、コントラストは造影剤を用いて操られることができる。いくつかの造影剤は永久磁気双極子を備えており、それは近くの水プロトンの緩和プロセスに影響を与え、したがって画像コントラストの局所的な変化につながる。他の作用剤は、人間の体内には自然に存在しない種類の核(例えばフッ素)を含む。この場合には、信号は追加された作用剤のみに由来する。
【0004】
画像の臨床的情報を増加させる他の方法は、実際に磁化に寄与するプロトンの数を変えることによって信号の強さを変調することである。これを達成する方法は、Balaban他によって解説される化学交換飽和移動(Chemical Exchange Saturation Transfer:CEST)を用いることである。CEST技術によって、緩和時間T1,T2の差よりむしろ、水信号の強度を変更することによって、画像コントラストの更なる差が得られる。これは、RFパルスを用いてCEST造影剤の交換可能プロトンのプールの磁化を選択的に飽和させることによって実行される。これらのプロトンは続いて、水プロトンとの交換によって飽和を近くの水へ移動し、それによって、水信号を減少させる。水信号減少の程度は、プロトン交換速度及び交換可能プロトンの濃度に依存する。プロトン交換速度がpHのような局所的な物理化学的パラメータに依存する可能性があるので、この方法はpHマッピングを可能にする。これは、重要な更なる臨床的情報(例えば小さな腫瘍の発見)をもたらすことができる。
【0005】
MRI及びマップされる物理化学的パラメータに感受性がある造影剤を用いるpHマッピング技術(例えばCEST)の不利な点は、得られる信号がpHのような物理化学的パラメータだけでなく造影剤濃度にも依存することである。したがって、より正確にpHを決定するために、CEST作用剤の最も正確な局所的な濃度が知られていることが好ましい。
【0006】
CEST技術を用いたpHマッピングにおいて、造影剤の濃度の依存性は、2つの交換可能プロトンプール(プール1及びプール2)を持つ一つのCEST造影剤によって除去されることができることが知られている。これらのプロトンプール(プール1及びプール2)は、別々に飽和されることができるように異なる共鳴周波数を持ち、さらにpHに関するプロトン交換の異なる依存性を持つ。プール1及びプール2の両方について、on-resonance及び対称off-resonance周波数における前飽和(pre-saturation)パルスを用いて画像を連続して取得することによって、濃度依存性は除去されることができる。
【0007】
CEST造影剤濃度に関する依存性を除去するための上記の方法は、2つの異なる交換可能プロトンプールを必要とするので若干不利である。CESTに適した交換可能エンティティの種類の数が限られているので、プロトン交換について異なるpH依存性をもつ2つの適切な交換可能プロトンプールを示す単一のCEST作用剤又は2つのCEST作用剤の混合物を選択することは、実際には難しい可能性がある。最も用いられる交換可能エンティティは、アミドプロトン及び結合水である。さらに、pH依存性の差は、所望のアプリケーションにとって臨床的に重要である範囲(好ましくはpH6.5とpH 7.5との間)でなければならない。
【0008】
その上、2つの別々のCEST作用剤の場合、2つの分子が等しい生体分布を呈さなければならない。最後に、2つの異なる交換可能プロトンプールを持つと、交換可能プロトンが2つのプールに分割されなければならず最大濃度にならないので、常にCEST効果が最大になるように最適化されない。
【0009】
公開されていない共に係属中の出願番号PCT/IB2006/051237の国際出願(この文献はその全体が本明細書に参照として含まれる)にて説明されるように、造影剤の濃度依存性を除去する第2の方法は、1つの交換可能プロトンプールについて2つの飽和周波数を用いることである。この方法において、交換速度の変化、したがってpHの変化に伴う交換可能プロトンの共鳴周波数のシフトが利用される。2つの前飽和周波数は、それらの周波数において得られるCEST効果がpHについての大いに異なる依存性を持つように選択される。これらの2つのon-resonance及び対称off-resonance周波数における前飽和パルスを用いて画像を連続して取得することによって、濃度依存性は除去されることができる。
【0010】
第2の方法の不利な点は、2つの異なる飽和周波数で十分に異なるpH依存性を得るために、飽和効率において妥協しなければならないことである。あまりに大きな飽和パルス電力が用いられる場合、ある範囲のpH値にわたって両方の周波数に対して、強力な飽和が発生する可能性がある。これは、飽和パルス電力をあまり大きくすることができず、さもなければ、2つの選択された周波数における飽和効率がほぼ等しくなってpHにあまり依存しなくなり、区別できなくなることを意味する。最大未満の飽和効率の帰結は最大未満のCEST効果であるはずであり、したがって、検出可能であるためにCEST造影剤のより高い濃度が必要である。
【0011】
上記した両方の方法の更なる不利な点は、4つの画像が取得される必要があり、多大なデータ処理が必要とされることである。
【0012】
他の不利な点は、それらが両方ともCESTを用いたpHマッピングのみに適用可能であることである。
【0013】
pH依存緩和能をもつMRI造影剤を用いたpHマッピングに適用された、決定されるべきパラメータの濃度依存性の除去のための他の方法は、pHに依存しない緩和能をもつ他の造影剤の連続した注入である。造影剤が同じ薬物動態を持つと仮定することによって、局所的な濃度及び時間を通じた濃度の進展が同じであることが仮定されることができる。
【0014】
この方法の不利な点は、2回の注入が必要であることである。更なる不利な点は、両方の造影剤が同じ薬物動態を持つと仮定することが必要なことである(造影剤が異なるのでこれは異なるはずであり、これは組織中の変化に起因して時間とともに変化する可能性がある)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、患者の体の少なくとも一部のMRI画像を提供し、それによって造影剤濃度依存性を低減又は除去するための、代わりのそして好ましくは改善された方法を提供することである。上記の目的は、本発明の方法によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の態様において、造影剤の患者への投与の後のMRI撮像によって物理化学的パラメータに関する情報を得るための方法が提供される。本発明では、造影剤は、第1信号を示す少なくとも1つの非応答性コントラスト増強エンティティ及び第2信号を示す少なくとも1つの応答性コントラスト増強エンティティを有し、第1信号は第2信号と区別可能である。本方法は、
- 前記少なくとも1つの応答性コントラスト増強エンティティを含む患者の体の少なくとも一部のMR画像を取得し、
- 前記非応答性コントラスト増強エンティティからの第1信号を記録することによって較正画像を取得し、及び
- 前記MR画像及び前記較正画像から物理化学的パラメータの値を決定し、
前記較正画像は、造影剤の濃度に関するMR画像の依存性に対して物理化学的パラメータの値を補正するために用いられる。
【0017】
造影剤の濃度を決定するために非応答性コントラスト増強を用いることは、いくつかの利点を持つ。励起信号の強度は、例えばpH又は他の物質若しくは代謝物質の存在のような周囲の特性、又はMRIを用いて決定されることができる任意の他のパラメータ(例えばpO2)から独立している。
【0018】
さらに、全励起信号が非応答性コントラスト増強エンティティのみに由来するので、励起画像の観察は明確である。
【0019】
本発明による方法の主要な利点は、例えば濃度に影響されないpHマップを生成するために組み合わせられなければならない画像が少ないことである。その結果として、本発明による方法によって決定されるpHマップの信号対雑音比(SNR)が、従来技術の方法に対して改善される。
【0020】
本発明の実施の形態によれば、1つの応答性コントラスト増強エンティティのMR撮像は、放射性物質を含む非応答性コントラスト増強エンティティの核放射撮像と組み合わせられることができる。本発明の実施の形態によれば、MR画像を取得するための手段は、前飽和パルスを用いることができる。
【0021】
好ましい実施の形態によれば、MR撮像は、両方のエンティティに用いられることができる。応答性及び非応答性コントラスト増強エンティティの両方にMRIを用いる利点は、それが同じ装置で同時に実行されることができることである。
【0022】
本発明の実施の形態によれば、本方法はさらに、非応答性コントラスト増強エンティティ(例えば19F化合物)のスペクトラムを取得することを含むことができる。スペクトルデータ取得は、撮像方法よりも高い精度で濃度を提供することができる。
【0023】
本発明の他の実施の形態によれば、第1及び第2信号は強度を持つことができ、本方法はさらに、MR画像を生成するために用いられる第1信号の強度と較正画像を生成するために用いられる第2信号の強度との比を決定し、この比から物理化学的パラメータの値を得る。
【0024】
本発明の実施の形態によれば、造影剤は、デュアルモード又は多モード造影剤を有することができる。造影剤は、少なくとも1つの応答性コントラスト増強エンティティを有する非応答性コントラスト増強エンティティを含むことができる。造影剤は、少なくとも1つの応答性コントラスト増強エンティティが取り付けられ又は結合された非応答性コントラスト増強エンティティを含むことができる。
【0025】
いくつかの実施の形態によれば、前記少なくとも1つの応答性コントラスト増強エンティティは非応答性コントラスト増強エンティティに共有結合で結合されることができ、それによって1つの分子を形成する。本発明の他の実施の形態によれば、造影剤は、少なくとも1つの非応答性コントラスト増強エンティティと少なくとも1つの応答性コントラスト増強エンティティとの混合物を、それらが互いに取り付けられることなく含むことができる。
【0026】
本発明の実施の形態によれば、前記少なくとも1つの非応答性コントラスト増強エンティティは、好ましくは、水のプロトン共鳴周波数と有意に異なるMR共鳴周波数を持つことができる。前記非応答性コントラスト増強エンティティは、水の共鳴周波数と有意に異なる共鳴周波数を有するプロトン核を有することができる。最も好ましくは、前記少なくとも1つの非応答性コントラスト増強エンティティは、人体中には自然に存在しない。
【0027】
本発明の実施の形態によれば、非応答性コントラスト増強エンティティは、外来MRI活性核(すなわち人体中には自然に存在せず、MRIに用いられることに適している核)を有することができる。
【0028】
本発明の実施の形態によれば、非応答性コントラスト増強エンティティは、水素の磁気回転比に近い磁気回転比を持つことができる。水素の磁気回転比は42.6 MHz/Teslaである。好ましくは、非応答性コントラスト増強エンティティは、40.08MHz/Teslaの磁気回転比を持つフッ素含有化合物であることができる。このフッ素含有化合物は、例えば、パーフルオロカーボン核及び脂質殻を含むことができ、又はパーフルオロ化合物で満たされるポリマー殻を含むことができる。本発明の実施の形態によれば、非応答性コントラスト増強エンティティは、水の共鳴周波数と有意に異なるプロトン共鳴周波数を持つ化合物又は化合物の混合物で満たされるポリマー殻を有することができる。
【0029】
本発明の実施の形態によれば、較正画像はMRI又はMRSによって取得されることができる。
【0030】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記少なくとも1つの応答性コントラスト増強エンティティは、CEST造影剤分子であることができる。CEST造影剤が応答性コントラスト増強エンティティとして用いられる場合には、MR画像を取得するステップは、
- 前記少なくとも1つのCEST造影剤分子を含む患者の体の少なくとも一部の基準MRI画像を取得し、
- 前記少なくとも1つのCEST造影剤分子を含む患者の体の少なくとも前記一部のコントラスト増強MRI画像を取得し、及び
- 前記コントラスト増強MRI画像と前記基準MRI画像との間の比較から体の前記一部におけるCEST効果を決定する。
【0031】
患者の体の少なくとも一部の基準MRI画像を取得することは、対称off-resonance周波数におけるCEST造影剤分子の照射によって実行されることができ、患者の体の少なくとも前記一部のコントラスト増強MRI画像を取得することは、CEST造影剤分子の交換可能プロトン周波数における照射によって実行される。
【0032】
本発明の実施の形態によれば、CEST造影剤分子は少なくとも1つのCEST活性常磁性錯体を含むことができ、当該少なくとも1つのCEST活性常磁性錯体は、CESTを可能にするための少なくとも1つの交換可能エンティティを含む。常磁性錯体は、例えばYb-DOTAM派生物であることができる。
【0033】
CEST造影剤分子である応答性コントラスト増強エンティティの特定の例において、物理化学的パラメータは、(M0*-Ms)/Ms)とMF(0)の比を決定し、この比から物理化学的パラメータを得ることによって決定されることができる。
【0034】
本発明の好ましい実施の形態によれば、物理化学的パラメータは、pHであることができる。しかしながら、例えば体温、pO2又は代謝物質濃度のような他の物理化学的パラメータも、本発明の方法を用いることにより決定されることができる。
【0035】
本発明は同様に、処理装置上で実行されるときに本発明の方法を実行又は制御するコンピュータプログラム製品、及び本発明のコンピュータプログラム製品を記憶する機械可読データ記憶装置を開示する。
【0036】
本発明の第2の態様において、MR撮像のためのシステムが提供される。本発明によると、前記システムは、第1信号を示す少なくとも1つの非応答性コントラスト増強エンティティ及び第2信号を示す少なくとも1つの応答性コントラスト増強エンティティを含む造影剤とともに用いられ、第1信号は第2信号と区別可能である。前記システムは、
- 前記少なくとも1つの応答性コントラスト増強作用剤を含む患者の体の少なくとも一部のMR画像を取得するための手段、
- 前記少なくとも1つの非応答性コントラスト増強エンティティからの第1信号を記録することによって患者の体の前記一部の較正画像を取得するための手段、及び
- 前記較正画像を用いて造影剤の濃度依存性の前記物理化学的パラメータに対する効果を低減又は除去することによって、体の前記一部における物理化学的パラメータの値を決定するための手段を有する。
【0037】
本発明の実施の形態によれば、MR画像を取得するための手段は、前飽和パルスを用いることができる。
【0038】
実施の形態によれば、前記システムは、前記応答性コントラスト増強エンティティ(例えばCEST造影剤)を励起することに適した第1コイル、及び前記非応答性コントラスト増強エンティティ(例えばフッ素化合物)を励起することに適した第2コイルを有する。
【0039】
本発明の第3の態様において、造影剤が提供される。前記造影剤は、デュアル又は多モード造影剤を含むことができる。造影剤は、少なくとも1つの非応答性コントラスト増強エンティティ及び少なくとも1つの応答性コントラスト増強エンティティを含む。非応答性コントラスト増強エンティティは、例えば光学的方法(例えば蛍光撮像又は近赤外拡散光学断層撮影(DOT))、X線、PET、MRI、超音波若しくはCTスキャン又はこれらの変形若しくは派生のような診断撮像方法ための適切なコントラスト増強エンティティであることができる。応答性コントラスト増強エンティティは、達成されるコントラストが造影剤の濃度又は造影剤の周囲の物理的パラメータのレベルに依存する診断方法(例えばMRI、特にCEST MRI)に用いるのに適したコントラスト増強エンティティであることができる。
【0040】
造影剤の濃度を決定するための非応答性コントラスト増強エンティティを含んでいる造影剤を用いることは、いくつかの利点を持つ。そのような造影剤を用いることにより、励起信号の強度は、例えばpHや他の物質若しくは代謝物質の存在のような周囲の特性、又はMRIを用いて決定されることができる任意の他のパラメータ(例えばpO2)から独立している。
【0041】
さらに、全励起信号が非応答性コントラスト増強エンティティのみに由来するので、励起画像の観察は明確である。
【0042】
オプションとして、本出願は、2つの異なるCEST活性錯体のような複数の異なる常磁性CEST活性錯体が結合されるキャリア及びいずれの造影剤も応答性でない他の種類のコントラスト増強作用剤に制限されるものを除き、又は異なるCEST活性錯体(例えば異なる常磁性CEST活性錯体)の混合物に制限されたものを除き、造影剤を請求する。オプションとして、本願は、いずれの造影剤も応答性でない2つ以上のコントラスト増強作用剤の混合物を含むものを除いた造影剤を請求する。オプションとして、本出願は、PCT/IB2006/051237に開示される任意の作用剤を除いて、造影剤を請求する。
【0043】
本発明による造影剤の主要な利点は、例えば濃度から独立したpHマップを生成するために、少ない画像のみを組み合わせて用いることを可能にすることである。その結果として、例えば本発明の方法によって決定されるpHマップの信号対雑音比(SNR)は、従来技術の方法に対して改善される。
【0044】
本発明の実施の形態によれば、非応答性コントラスト増強エンティティは、水のプロトン共鳴周波数と有意に異なるMR共鳴周波数を持つことができる。非応答性コントラスト増強エンティティは、水の共鳴周波数と有意に異なる共鳴周波数を有するプロトン核を含むことができる。好ましくは、非応答性コントラスト増強エンティティは、人体中に自然に存在しない。
【0045】
本発明の実施の形態によれば、非応答性コントラスト増強エンティティは、水素の磁気回転比に近い磁気回転比を持つことができる。水素の磁気回転比は42.6MHz/Teslaである。好ましくは、非応答性コントラスト増強エンティティは、40.08 MHz/Teslaの磁気回転比を持つフッ素含有化合物であることができる。フッ素含有化合物は、例えばパーフルオロカーボン核及び脂質殻を含むことができ、又はパーフルオロ化合物で満たされるポリマー殻を含むことができる。本発明の実施の形態によれば、非応答性コントラスト増強エンティティは、水の共鳴周波数と有意に異なるプロトン共鳴周波数を持つ化合物又は化合物の混合物で満たされるポリマー殻を有することができる。
【0046】
造影剤は、少なくとも1つの応答性コントラスト増強エンティティが取り付けられた非応答性コントラスト増強エンティティを含むことができる。本発明の実施の形態によれば、少なくとも1つの応答性コントラスト増強エンティティは、非応答性コントラスト増強エンティティに共有結合で結合されることができ、これによって1つの分子を形成する。本発明の他の実施の形態によれば、造影剤は、少なくとも1つの非応答性コントラスト増強エンティティ及び少なくとも1つの応答性コントラスト増強エンティティの混合物を含むことができ、それらは互いに取り付けられていない。
【0047】
本発明の好ましい実施の形態によれば、応答性コントラスト増強エンティティは、CEST造影剤分子を含むことができる。当該CEST造影剤分子は、少なくとも1つのCEST活性常磁性錯体を含むことができ、少なくとも1つのCEST活性常磁性錯体は、CESTを可能にするための少なくとも1つの交換可能エンティティを含む。常磁性錯体は、Yb-DOTAM派生物であることができる。
【0048】
本発明の更なる態様において、本発明による造影剤を含むIV製剤は、患者の静脈に直接投与されるために提供される。
【0049】
特定の及び好ましい本発明の態様は、独立及び従属請求項と共に述べられる。従属請求項からの特徴は、適切に、及び特許請求の範囲で明示的に述べられるようにのみでなく、独立請求項の特徴及び他の従属請求項の特徴と組み合わせられることができる。
【0050】
上記の及び他の本発明の特性、特徴及び利点は、本発明の原理を一例として図示する添付の図面と共に考慮することにより、以下の詳細な説明から明らかになる。この説明は、本発明の範囲を制限することなく、単に例として示される。以下で引用される参考図は、添付の図面を参照する。異なる図において、同じ引用符号は、同じ又は類似した構成要素を指す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
本発明は、特定の実施の形態に関して及び特定の図面を参照して解説されるが、本発明はそれらには制限されず、特許請求の範囲のみによって規定される。特許請求の範囲中の任意の引用符号は、範囲を制限するものとして解釈されるべきでない。解説される図面は、単に概略であって非制限的である。図において、いくつかの構成要素のサイズは誇張される場合があり、説明の便宜上、縮尺通りに描かれていない場合がある。本明細書及び請求の範囲において「有する,含む」との用語が用いられる場合、他の構成要素又はステップを除外しない。単数形の名詞は、特に別途述べられないかぎり、その名詞が指すものが複数存在することを除外しない。
【0052】
さらに、明細書及び請求の範囲中の「第1」「第2」「第3」などの用語は、同様の要素を区別するために用いられ、必ずしも逐次的又は時間的な順序を表すものではない。そのように用いられる用語は適切な状況のもので相互に交換可能であること、及び本明細書中で説明される本発明の実施の形態は、本明細書中で説明され又は示される順序と異なるように動作することが可能であることが理解されるべきである。
【0053】
請求の範囲中に用いられる「有する,含む」との用語は、挙げられる手段に限定されるように解釈されてはならず、他の要素又はステップを除外しない。それはしたがって、明示された特徴、完全体、ステップ又はコンポーネントが参照されるように存在することを特定するように解釈されるべきであるが、一つ以上の他の特徴、完全体、ステップ若しくはコンポーネント若しくはそれらのグループの存在又は追加を妨げない。
【0054】
以下の用語は、本発明の理解を助けるためにのみ提供される。これらの定義は、当業者によって理解されるよりも小さい範囲を持つように解釈されてはならない。
【0055】
造影剤(CA):撮像される際の2つの組織間のコントラストを変えるために生体に導入される化学物質。
【0056】
造影剤ユニット:本発明による造影剤の具体例であり、この造影剤は、少なくとも1つの非応答性コントラスト増強エンティティと、この非応答性コントラストエンティティに取り付けられ、結合され又は混合される少なくとも1つの応答性コントラスト増強エンティティとを含む。
【0057】
非応答性コントラスト増強エンティティ:決定されるべき物理化学的パラメータから独立した応答又はコントラスト増強能力を有する分子又は化合物。非応答性増強エンティティの応答はそのエンティティの濃度に依存する。
【0058】
応答性コントラスト増強エンティティ:決定されるべき物理化学的パラメータに依存する応答又はコントラスト増強能力を有する分子又は化合物。これらのエンティティにとって、応答は、エンティティの濃度及び外部トリガ(例えばCESTの場合、RF照射)の両方に依存する。
【0059】
外来信号:1つのエンティティのみに由来する信号であり、本発明の一態様によれば、例えば非応答性コントラスト増強エンティティのみに由来する信号。
【0060】
化学交換飽和移動(CEST):異なる磁気共鳴周波数を示す2つの分子間の化学交換に依存する全ての飽和移動プロセスを指す。
【0061】
CEST効果:CESTによって引き起こされる、MR画像を生成するために用いられる信号の減少の程度(例えばプロトン撮像の場合、水プロトン信号の減少)。CEST効果は、1-MS/M0*として記述されることができ、MSは、交換可能エンティティ(例えば交換可能プロトン)の前飽和の際のその信号の強度であり、M0*は、off-resonance周波数において、好ましくはその信号に対して周波数スペクトラムの反対側(対称off-resonance)において照射した際のその信号の強度である。
【0062】
CEST造影剤(CA):他の物質の交換可能エンティティ(例えばプロトン)へ化学交換することができ、CEST撮像を実行するために用いられることができる少なくとも1つの交換可能エンティティ(例えばプロトン)を持つ材料。交換可能エンティティ(例えばプロトン)は、交換可能分子すなわち原子グループ(例えば水分子)に組み込まれても組み込まれなくてもよい。
【0063】
水プロトン信号:自由水のプロトンの共鳴によって引き起こされるプロトンNMRスペクトラム中の信号(周波数及び強度を持つ信号)。
【0064】
磁気共鳴撮像(MRI):医療情報を得るために対象の画像を構成するために核磁気共鳴が用いられる撮像技術。
【0065】
共鳴周波数:分子又は原子の構成要素が共鳴する(例えば核スピンが共鳴する)周波数。
【0066】
本発明は、人又は動物患者に関する情報を得るための方法及びシステムに関し、特に磁気共鳴撮像(MRI)に基づく診断方法に関する。本発明への導入として、目的が物理化学的パラメータを測定することである場合のMRI測定の結果(すなわちMRI信号)は、通常、MRI信号を得るために用いられる造影剤の濃度と同様に、測定されるべきパラメータに依存する。例えば、pHマッピングにおいて、MRI信号はpHに依存するが、MRI信号を得るために用いられる造影剤の濃度にも依存する。
【0067】
本発明は、磁気共鳴撮像(MRI)における造影剤濃度依存性を低減又は除去するための方法を提供する。好ましい本発明の態様において、造影剤濃度依存性を低減又は除去することは、すなわち造影剤の場所の物理化学的パラメータの値を決定するための"スマート撮像"又は"応答性エンティティによる撮像"(さらに参照)の一部である。
【0068】
本発明による方法は、少なくとも1つの第1コントラスト増強エンティティと、当該第1コントラスト増強エンティティに取り付けられ、結合され又は混合される少なくとも1つの第2コントラスト増強エンティティとを含む造影剤ユニットを利用する。本発明によると、少なくとも1つの第1コントラスト増強エンティティは、非応答性エンティティ(すなわち、例えば照射された際又はそれ自身の性質として、決定されるべき物理化学的パラメータから独立した応答又はコントラスト増強能力を持つエンティティ)である。例えば、非応答性コントラスト増強エンティティは、フッ素含有化合物であることができる。非応答性コントラスト増強エンティティは、例えば光学的方法(例えば蛍光撮像又は近赤外拡散光学断層撮影(DOT))、X線、PET、MRI、超音波若しくはCTスキャン又はこれらの変形若しくは派生のような診断撮像方法に用いられるのに適切なものであることができる。DOTのためのコントラスト増強作用剤の例は、インドシアニングリーン(ICG)である。PETのためのコントラスト増強作用剤の例は、放射性核種である。
【0069】
第2コントラスト増強エンティティは、応答性エンティティ(すなわち、例えば照射された際に、決定されるべき物理化学的パラメータに依存する応答又はコントラスト増強能力を持つエンティティ)である。例えば、第2コントラスト増強エンティティは、CEST活性分子であることができる。
【0070】
本発明は、pH以外の他の又は更なる物理化学的パラメータ(例えば体温、代謝物質濃度)の決定に、及びCEST以外の他の方法(例えばpH依存緩和能)に適用可能である。
【0071】
本発明によると、少なくとも1つの第1非応答性コントラスト増強エンティティは、人又は動物の体内に自然には存在せず(すなわち人又は動物の体に対して外来性であり)、好ましくは水のプロトン共鳴周波数と有意に異なるMR共鳴周波数を持つエンティティである。本発明の実施の形態によれば、非応答性コントラスト増強エンティティは、水の共鳴周波数と有意に異なる共鳴周波数を有するプロトン核を含むことができる。
【0072】
本発明の特定の実施の形態によれば、少なくとも1つの第2応答性コントラスト増強エンティティが取り付けられ、結合され又は混合される第1非応答性コントラスト増強エンティティを含む造影剤ユニットが提供され、応答性コントラスト増強エンティティはMRIによって用いられるのに適している。好ましい実施の形態によれば、造影剤は、第1非応答性コントラスト増強エンティティに取り付けられる複数の第2応答性コントラスト増強エンティティを含むことができる。しかしながら、他の実施例では、造影剤は、1つの第2応答性コントラスト増強エンティティのみを含むことができる。好ましくは、信頼できる方法のために、すなわち信頼性が高い信号を得るために、十分な造影剤が関心領域に存在することが保証されなければならない。
【0073】
少なくとも1つの第2応答性コントラスト増強エンティティが、第1非応答性コントラスト増強エンティティに取り付けられ、結合され又は混合される場合、本発明による第1非応答性コントラスト増強エンティティに用いられることができる化合物は、適切な磁気回転比を持ち、すでに述べたように人体中に自然には存在せず、水のプロトン共鳴周波数と有意に異なるMR共鳴周波数を持つ化合物を含む。原子核の磁気回転比は、MRIにおいて重要な役割を演ずる。この比は、すべての核で異なり、核が外部印加磁場のまわりで歳差運動する際の周波数を示す。本発明によって用いられるのに適した非応答性コントラスト増強エンティティ化合物は、好ましくは、水素の磁気回転比(42.6 MHz/Tesla)に近い磁気回転比を持つことができる。原子核の磁気回転比が大きいほど、原子核の励起に適した周波数で原子核を照射した際の効果が大きく、ひいては本発明の実施の形態による方法に用いられるのに良い。全てのMR検出可能な核の中で水素が最も大きな磁気回転比を持ち、フッ素が2番目に大きな磁気回転比(40.08 MHz/Tesla)を持つことが知られている。したがって、フッ素は人体中に自然に存在しないので、フッ素含有化合物は本発明による方法の実施の形態に用いるための良好な候補である。そのため、本発明の方法は、フッ素含有化合物を用いてさらに論じられる。しかしながら、これはいかなる形であれ本発明を制限せず、上に述べたような特性(例えば適切な磁気回転比を有し、体内に自然には存在しない)を有する他の適切な非応答性コントラスト増強エンティティ化合物も同様に、本発明の方法によって適用されることができることが理解されなければならない。
【0074】
上記の実施の形態の特定の例において、少なくとも1つの第2応答性コントラスト増強エンティティは、第1非応答性コントラストエンティティに共有結合することができ、これによって1つの分子を形成する。
【0075】
本発明の他の実施の形態によれば、造影剤は、第1非応答性コントラスト増強エンティティ及び第2応答性コントラスト増強エンティティ(それらは互いに取り付けられない)の混合物を含むことができる。
【0076】
本発明の実施の形態において、MR撮像は、PET、核撮像、近赤外拡散光学断層撮影(DOT)のような光学撮像、X線、超音波若しくはCTスキャン又はこれらの変形若しくは派生のような他の撮像技術と組み合わせられることができる。これらの場合の少なくともいくつかにおいて、第1非応答性コントラスト増強エンティティは、第2応答性コントラスト増強エンティティの照射のための技術と同じ又は別の技術を用いて照射されることができる。例えば、照射は超音波照射であり、第1コントラスト増強エンティティは超音波造影剤であることができる。あるいは、第1非応答性コントラスト増強エンティティは、撮像に用いられることができるそれ自身本来の信号を供給することができる。そのようなコントラストエンティティの例は、放射性物質を含むものある。放射性物質は、人体のバックグラウンド放射能に対して良好なコントラストを有する画像を提供する信号を提供することができる。組み合わせられたPET及びMRI装置の例は、"Molecular magnetic resonance imaging", by Hengerer and Grimm, Biomedical Imaging and intervention Journal, 2006; 2(2): e8中に記載されている。
【0077】
したがって、1つの可能な実施例は、1つの応答性コントラスト増強エンティティのMR撮像を、放射性物質を含む非応答性コントラスト増強エンティティの核照射撮像と組み合わせることである。これらの目的のために用いられることができる造影剤の例は、例えば、応答性コントラスト増強エンティティを代表し、非応答性コントラスト増強エンティティを形成する少量の同様の放射性金属錯体に混合され又は取り付けられる、CEST金属錯体を含むことができる。例えば、核撮像とMR撮像の組み合わせのために、Yb-DOTAM派生物は、第1非応答性コントラスト増強エンティティとして用いられることができる放射性金属錯体と合成されるわずかな(例えば1/1000の)DOTAMと共に、第2応答性コントラスト増強エンティティとして用いられることができる。これの利点は、小さな粒子が用いられることができることであり、それはスマート撮像にとって重要である。
【0078】
しかしながら、明確な量の応答性コントラスト増強エンティティ及び核撮像エンティティ(すなわち非応答性コントラスト増強エンティティ)を組み込む大きな粒子を用いることも可能である。これの利点は、非応答性及び応答性コントラスト増強エンティティ間の比がより適切に定められることである。例えば、Yb-DOTAM脂質及び99Tc-DOTA(M)脂質を有するリポソーム又は乳剤粒子が、この目的のために用いられることができる。
【0079】
以下において、本発明は、単に本発明の一例として、両方のエンティティのMR撮像に関して主に説明される。応答性及び非応答性コントラスト増強エンティティの両方にMRIを用いる利点は、同じ装置において同時に実行されることができることである。同様に、本発明は、少なくとも1つの第2応答性コントラスト増強エンティティが取り付けられた第1非応答性コントラスト増強エンティティを含む造影剤によって、さらに説明される。これはいかなる形であれ本発明を制限せず、他の適切な第1非応答性及び第2応答性コントラスト増強エンティティを含む他の造影剤又は第1非応答性コントラスト増強エンティティと第2応答性コントラスト増強エンティティとの混合物を含む造影剤も、本発明によって用いられることができることが理解されるべきである。さらに、本発明はpHマッピングの例によって説明され、すなわち物理化学的パラメータはpHである。本発明は同様に、体温、代謝物質濃度、他の物質若しくは代謝物質の存在のような他の物理化学的パラメータ、又はMRIを用いて決定されることができる任意の他のパラメータ(例えばpO2)に適用されることができることが理解されるべきである。
【0080】
本発明による方法は、第1ステップにおいて、少なくとも1つの第1非応答性コントラスト増強エンティティ及び少なくとも1つの第2コントラスト増強エンティティを含む造影剤を患者の人体に投与する。示される例において、造影剤は、MRIに適する少なくとも1つの応答性コントラスト増強エンティティが取り付けられた1つの非応答性コントラスト増強エンティティを含む。すでに述べたように、第1非応答性コントラスト増強エンティティは、好ましくは、適切な方法でそれに取り付けられた少なくとも1つの応答性コントラスト増強エンティティを持つフッ素含有化合物であることができ、当該応答性コントラスト増強エンティティは、MRIに用いられることに適している。
【0081】
適切な周波数(すなわち非応答性コントラスト増強エンティティを励起することに適した周波数)の電磁放射によって非応答性コントラスト増強エンティティ(例えばフッ素含有化合物)に照射することによって、非応答性コントラスト増強エンティティ(例えばフッ素含有化合物)は、励起信号(フッ素化合物の場合にはフッ素即ち19F信号)を生成する。
【0082】
非応答性コントラスト増強エンティティ(例えばフッ素含有化合物)は人体中に自然に存在しないので、励起信号(例えばフッ素即ち19F信号)が、この非応答性コントラスト増強エンティティ(例えばフッ素含有化合物)のみに由来し、したがって非応答性コントラスト増強エンティティ(例えばフッ素含有化合物)の濃度の直接的な測度であることが安全に仮定されることができる。いくつの応答性コントラスト増強エンティティが非応答性コントラスト増強エンティティ(例えばフッ素含有化合物)に取り付けられているかが既知であるので、励起信号(例えばフッ素即ち19F信号)は同様に応答性コントラスト増強エンティティの濃度の直接的な測度である。
【0083】
造影剤の濃度を決定するために上に述べたような非応答性コントラスト増強エンティティ(例えばフッ素含有化合物)を用いることは、いくつかの利点を持つ。励起信号(例えばフッ素即ち19F信号)の強度は、例えばpHや他の物質若しくは代謝物質の存在のような周囲の特性、又はMRIを用いて決定されることができる任意の他のパラメータ(例えばpO2)から独立している。従来のMRIにおいて知られている信号強度におけるT1及びT2効果(緩和時間)は、従来のMRIにおいて知られているようなプロトン密度マップに類似した非応答性コントラスト増強エンティティ密度マップ(例えばフッ素密度マップ)を取得することによって、除去されることができる。さらに、全励起信号(例えばフッ素即ち19F信号)が非応答性コントラスト増強エンティティ(例えばフッ素含有化合物)のみに由来するので、励起画像(例えばフッ素即ち19F画像)の読影は明確である。更なる説明において、励起画像は、この画像が造影剤の濃度を決定するために用いられ、そして測定されるべきパラメータの造影剤濃度依存性を除去するために用いられるので、較正画像と呼ばれる。さらに、19F化合物のスペクトラムを取得することが可能である。スペクトルデータ取得は、撮像方法より高い精度による濃度を提供することができる。また、撮像データは、より正確に19F化合物を同定するためにスペクトル情報によって増強されることができる。
【0084】
本発明の好ましい実施の形態によれば、応答性コントラスト増強エンティティは、化学交換飽和移動即ちCEST造影剤であることができる。以下において、本発明の方法は、応答性コントラスト増強エンティティがCEST造影剤分子である場合について、さらに詳細に説明される。しかしながら、これはいかなる形であれ本発明を制限せず、本方法は、CEST造影剤分子以外の応答性コントラスト増強エンティティによって適用されることもできることが理解されるべきである。本発明によって用いられることができるCEST以外のMRI方法の例は、例えば、pH依存緩和能であることができる。この好ましい実施の形態によれば、CESTは、例えばpHマッピングに用いられることができる。本発明による方法を用いることにより、pHマッピング中のCEST造影剤分子の濃度依存性は、上で述べたような非応答性コントラスト増強エンティティ(例えばフッ素含有化合物)からの信号を用いることにより、低減又は除去されることができる。以下において、本発明による方法は、フッ素含有化合物、より詳しくは19Fフッ素含有化合物を用いて説明される。これはいかなる形であれ本発明を制限せず、他の非応答性コントラスト増強エンティティが本発明の実施の形態によって用いられることができることが再度理解されるべきである。
【0085】
本発明の好ましい実施形態による方法は、一般に、応答性コントラスト増強エンティティ(例えばCEST造影剤分子)が非応答性コントラスト増強エンティティ(例えばフッ素含有化合物)に取り付けられる特定の構造に依存する。これはいくつかの態様で実行されることができる。例えば、応答性コントラスト増強エンティティ(例えばCEST造影剤分子)は、非応答性コントラスト増強エンティティ(例えばフッ素含有化合物)に共有結合されることができ、それによって非応答性コントラスト増強エンティティ(例えばフッ素)及びMRIに必要とされるプロトンを1つの分子中に組み込む。他の実施の形態によれば、造影剤は非応答性コントラスト増強エンティティと応答性コントラスト増強エンティティとの混合物を含むことができる。
【0086】
したがって、この本発明の好ましい実施形態によれば、少なくとも1つのCEST造影剤分子は、非応答性コントラスト増強エンティティ(例えばフッ素含有化合物)に取り付けられることができる。これは、例えば非応答性コントラスト増強エンティティ(例えばフッ素)及びCESTのために必要とされる交換可能プロトンを1つの分子中に共有結合で組み込むことによって、実行されることができる。しかしながら、フッ素含有化合物の特定の例において、及び十分な励起信号(例えばフッ素即ち19F信号)得るために、いくつかのフッ素原子が存在する図1に図示されるような構造がより適している。この構造において、応答性コントラスト増強エンティティ1(この示された例ではCEST造影剤分子)は、非応答性コントラスト増強エンティティ2(例えばフッ素含有化合物)に取り付けられる。示された例において、フッ素含有化合物は、フッ素含有コア3、及び例えばリン脂質殻のような脂質殻であることができる殻4を含むことができる。オプションとして、脂質殻は、ターゲット結合部位5を備えていることができる。結合部位5の例は抗体である。
【0087】
本発明の実施の形態によれば、フッ素含有コア3は、例えば、例えば、パーフルオロオクチルブロマイド(PFOB)、パーフルオロクラウンエーテル(PFCE)又は他の適切なパーフルオロ化合物でできているパーフルオロカーボンコアであることができる。フッ素含有化合物2は、フッ素含有粒子であることができる。更なる説明において、フッ素含有化合物2は、フッ素含有粒子2と呼ばれる。これらのフッ素含有粒子2のサイズは、一般にナノメートルの範囲であることができ、好ましくは50nmから500nmの間であることができる。また、これは単に例であって、これはまた他のコントラストエンティティに適用することが理解されるべきである。
【0088】
本発明の他の実施の形態によれば、フッ素含有粒子2はリン脂質の代わりにポリマーからできている殻4を含むことができ、そしてこのポリマー殻4は、例えばパーフルオロ化合物で満たされることができる。本発明の他の実施の形態によれば、ポリマー殻4は、水の共鳴周波数と有意に異なるプロトン共鳴周波数を持つ化合物又は化合物の混合物で満たされることができる。
【0089】
CEST造影剤として有用であるために、ポリマー殻4は交換可能エンティティ(例えば交換可能プロトン)を含まなければならず、又はCEST活性分子がポリマー殻4に取り付けられなければならない。したがって、本発明のこれらの実施の形態によれば、非応答性コントラストエンティティ2はパーフルオロ化合物によって形成され、応答性コントラスト増強エンティティ1(示された例ではCEST造影剤分子)が、ポリマー殻内に含まれ又はポリマー殻に取り付けられる。ポリマー殻は、例えばポリ-(乳酸))、ポリ-(グリコール酸)ポリ-カプロラクトン(caprolacton)、ポリ-(アルキルシアノアシル)若しくはポリ-(アミノ酸)及びそれらのコポリマーからなる生分解性高分子殻であることができる。
【0090】
上に述べたように50nmから500nmの間のサイズを持つことができる任意のこれらのフッ素含有粒子2の殻4に、示された例では約10,000個の応答性コントラスト増強エンティティ1(例えばCEST造影剤分子)が、十分な信号を得るために取り付けられることができる。脂質殻を有しているフッ素含有粒子2の場合、これは、応答性コントラスト増強エンティティ1(例えば図2に示されるようなCEST造影剤分子)を、殻4を形成する脂質混合物に加えることによって実行されることができる。脂質は、疎水性アシル鎖をパーフルオロカーボンコア3に向け、極性の頭部基を外側の水相に向けて、疎水性パーフルオロ乳剤エマルションのまわりに単一層を形成することによって、疎水性パーフルオロエマルション溶滴を水の中で安定させる。本発明によって用いられることに適している脂質混合物の例は、例えば、60%レシチン、20%コレステロール及び20%脂肪親和性 CEST造影剤分子の混合物であることができる。これは単に例であって、他の組成物及び/又は他の濃度を持つ混合物も用いられることができることが理解されるべきである。
【0091】
本発明の好ましい実施形態によれば、CEST活性部分はリン脂質の極性の頭部基に共有結合で取り付けられるので、それは殻4から水相の中へ突き出て、CEST測定を実行するために必要である水との最適なプロトン交換を可能にする。
【0092】
図2は、本発明の方法によって用いられることができるCEST造影剤分子1の例を示す。他の既知のCEST造影剤分子が用いられることもできることが理解されるべきである。
【0093】
本発明では、任意の適切なCEST造影剤分子が用いられることができる。例えば、キレートリガンドに取り付けられる常磁性イオンを有するCEST活性常磁性錯体が用いられることができる。常磁性イオンは、例えばランタニドイオン又は遷移金属イオンのような任意の他の常磁性イオンであることができる。キレートリガンドは、DOTAM又はDOTAM派生物(例えばすべてのアミド基において1つのアミドプロトンが例えばCOO-、COOEt、PO32-などによって置換されたDOTAM)であることができる。そして常磁性錯体は、例えばYb-DOTAM錯体であることができる。図2中のR基は、例えば、C、(CH2)nCONHCH2CH2、CH2(OCH2CH2)n又はCH2(OCH2CH2)nCONHCH2CH2であることができる。
【0094】
CESTの代わりに例えばpH依存緩和能を有する応答性コントラスト増強エンティティがpHを決定するために用いられる場合には、他の適切な非応答性コントラスト増強エンティティと同様にフッ素も、応答性造影剤によって引き起こされる濃度依存性を除去するために用いられることができる。応答性コントラスト増強エンティティがこの場合にはリン脂質に取り付けられることができるpH依存緩和能を有する常磁性錯体であることを除いて、構造は上記したものと非常に類似している。常磁性イオンは例えばGdであることができ、キレートリガンドは例えばDOTA4Amp又はその派生物であることができる。
【0095】
非応答性コントラスト増強エンティティ粒子(例えば図1に図示したようなフッ素含有粒子2)は、非応答性コントラスト増強エンティティ(例えばフッ素即ち19F)の明確なサイズひいては明確な量、及び非応答性コントラスト増強エンティティ粒子(例えばフッ素含有粒子2)に取り付けられる応答性コントラスト増強エンティティ(示された例ではCEST造影剤分子1)の数によって、特徴づけられることができる。応答性コントラスト増強エンティティ(示された例ではCEST造影剤分子1)が取り付けられた非応答性コントラスト増強エンティティ粒子(例えばフッ素含有粒子2)は、例えばエマルションの形で人体に与えられることができる。明確なサイズの非応答性コントラスト増強エンティティ粒子(例えばフッ素含有粒子2)を得るために、エマルションは通常乳化機中で処理されることができ、すなわち、非常に高い圧力の下で衝突させるためにエマルションストリームが生成され、それによってエマルション溶滴のサイズを変更する。好ましくは、非応答性コントラスト増強エンティティ粒子(例えばフッ素含有粒子2)は、非常に低い濃度で、すなわちナノモル(10-9 M)範囲又はさらにピコモル(10-12 M)範囲でエマルション中に存在する。非応答性コントラスト増強エンティティ粒子2のサイズにしたがって、エマルションの投与後の患者体内の特定の関心位置におけるフッ素化合物の局所的な濃度は、なおミリモル(10-3 M)の範囲であることができる。体へのエマルション投与の後の患者体内に存在する非応答性コントラストエンティティ2(例えばフッ素)のこの高い含有量は、高速なデータ取得を可能にする。パーフルオロカーボン化合物が水に溶解しないので、エマルションは非常に安定していることに留意すべきである。
【0096】
完成した造影剤は、患者の体に対してその患者の静脈に直接投与される静脈内(IV)組成物の形で提供される。
【0097】
非応答性コントラスト増強エンティティ2(例えばフッ素含有化合物)の濃度の定量化は、示される例において、非応答性コントラスト増強エンティティ粒子(例えばフッ素含有粒子2)のコア3から生じる励起信号(例えばフッ素即ち19F信号)のMR撮像又はMR分光によって実行されることができる。本発明によれば、非応答性コントラスト増強エンティティ2(例えばフッ素含有化合物)は人体内に自然に存在しないので、非応答性コントラスト増強エンティティ2に由来する励起信号(フッ素含有化合物の場合にはフッ素即ち19F信号)は、体の中で自然に発生しない。そのため、励起信号(例えばフッ素即ち19F信号)は、非応答性コントラスト増強エンティティ粒子(例えばフッ素含有粒子2)の量に固有の痕跡である。励起信号(例えばフッ素即ち19F信号)から、非応答性コントラスト増強エンティティ2(例えばフッ素含有化合物。図1の特定の場合においてはパーフルオロ化合物)の濃度が決定されることができる。非応答性コントラスト増強エンティティ粒子(例えばフッ素含有粒子2)の大きさ及び粒子2あたりの応答性コントラスト増強エンティティ1(例えばCEST造影剤分子)の数の両方は、実験又は測定を実行する前に明確に定められ、応答性コントラスト増強エンティティ1(例えばCEST造影剤分子)の濃度の決定を可能する。この濃度が分かると、例えばpHに依存するCEST効果から、実際のpHが導出されることができる。
【0098】
応答性コントラスト増強エンティティ即ちCEST造影剤分子である造影剤分子1の特定の場合において、測定自体は、造影剤すなわち非応答性コントラスト増強エンティティ粒子(例えばフッ素含有粒子2)を有するエマルションをそれに取り付けられるCEST造影剤分子1と共に患者に提供した後に、CEST造影剤分子の存在に起因する水プロトン信号強度の変化を決定する第1ステップを有する。これは、2つの異なる画像(すなわち第1のいわゆる1H画像(交換可能アミドプロトン周波数に対応している周波数における、応答性コントラスト増強エンティティ(示された例ではCEST造影剤分子1)が取り付けられた非応答性コントラスト増強エンティティ2の照射によって取得されることができる画像)、及び第2のいわゆる制御又は参照1 H画像(対称off-resonance周波数において、応答性コントラスト増強エンティティ(示された例ではCEST造影剤分子1)が取り付けられた非応答性コントラスト増強エンティティ2に照射することによって取得されることができる画像であり、MRIにおいて一般的に知られている画像))を取得することによって、実行されることができる。「対称」との用語は、この場合には、バルク水プロトン信号に関して対称であることを意味する。測定される信号がプロトンに由来しているので、画像は1H画像と呼ばれる。示された例において、第1の1H画像と第2の制御又は参照1H画像との間の信号強度の差は、CEST効果に起因する。
【0099】
この差の幅は、造影剤分子1の濃度(示される例ではCEST造影剤分子の濃度)と測定されるパラメータ(本発明の好ましい実施の形態ではpH)との両方に依存する。示される例において、正しいpHマップを得るために、CEST造影剤の濃度が分からなければならない。この目的ために、用いられる非応答性コントラスト増強エンティティ2によって決まる適切な周波数の放射によって、応答性コントラスト増強エンティティ(例えばCEST造影剤分子1)が取り付けられた非応答性コントラスト増強エンティティ(例えばフッ素含有化合物)に照射することによって、第3の励起信号画像(例えばフッ素即ち19F画像(MF))が取得されることができる。例えば、3Tの磁界の強さにおいて、本発明の実施の形態によるフッ素含有化合物に照射するために適切な周波数は122MHzである。
【0100】
すでに上記したように、本発明の他の実施の形態において、他の技術が非応答性コントラスト増強エンティティから信号を取得するために用いられることができる。例えば、非応答性コントラスト増強エンティティは、超音波によって照射されることができ、又はそれ自体が放射することができ、例えば核放射(放射能)信号を提供する。
【0101】
CEST造影剤分子1が応答性コントラスト増強エンティティである特定の場合において、CESTに起因する水信号の減少は、

によって記述されることができる。ここで、MS及びM0*はそれぞれon-resonance及び対称off-resonance照射に対する水信号の強さ、kCAは単一交換部位速度定数、[CA]は造影剤濃度、nexは造影剤ユニットあたりの化学交換部位(通常は交換可能なプロトン)の総数、そしてT1Wは水プロトンの縦緩和時間定数である。本発明の実施例によれば、造影剤は、少なくとも1つの応答性コントラスト増強エンティティ(特定の例ではCEST造影剤分子1)が取り付けられた非応答性コントラスト増強エンティティ粒子(例えば一つ以上のフッ素原子を含むフッ素含有粒子2)によって形成される。この関係は、修正されたブロッホ方程式から得られ、CEST造影剤分子1の交換可能プロトンがRFパルスによって完全に飽和しなければならない条件

の下で有効である。
【0102】
フッ素含有化合物の特定の場合に対して、以下がフッ素即ち19F信号にあてはまる。

ここで、kcalは、測定された信号の強さMF(0)をフッ素原子の濃度[F]に関係づける較正係数である。この較正係数は撮像又は分光走査法に依存し、正確に較正されることができる。さらに、kcalは、T1(スピン-格子緩和時間)、T2(横平面の緩和時間)、TR(RFパルスの繰返し時間)、TE(エコー時間)の関数である。
【0103】
所与の造影剤に対して、粒径、及び示される例では1つの粒子2中のフッ素原子の数が分かっているので、式は、

のように記述されることができる。ここで、nFは、単位造影剤(ナノ粒子)あたりのフッ素原子の数である。19F画像又はスペクトラムは一般に、信号ロスを最小限にするために、最も短い可能なTEで記録される。その場合、式は第1近似で、

と記述されることができる。式(2)と結合されて、これは、

となる。ここで造影剤の濃度は除去される。正しいpHマップを取得するために、T1Wが他のデータから取得されることができ、水素画像がいわゆるプロトン密度マップである場合、プロトン密度撮像においてはコントラストが水素分子の数のみによって決定され、T1又はT2のいずれにも依存しないので、このパラメータ項は無視されることができる。
【0104】
既存の方法と比較して、本発明による方法の主要な利点は、例えば濃度から独立したpHマップを生成するために組み合わせられなければならない画像がより少ないことである。その結果として、本発明による方法によって決定されるpHマップの信号対雑音比(SNR)は、従来技術の方法に対して改善される。本発明による方法において、(M+2000-M-2000)及び非応答性コントラストエンティティからの信号画像(例えばフッ素即ち19F画像)による較正のみが必要とされ、すなわち、従来技術方法における4つの画像の代わりに、3つの画像のみが必要とされる。したがって、本発明による方法は、より高速であり、動き又は流動アーチファクト対して低感度であるので、臨床的ルーチンに適用することがより容易である。
【0105】
例えば、出願番号PCT/IB2006/051237の国際出願において述べられる方法は、以下の式によって濃度を除去する。

【0106】
この方法では、5つの連続した演算ステップが用いられなければならない(すなわち減算、割算、減算、割算そして再度割算)(式7参照)。各々のステップは、2の平方根倍で雑音を増加させる。本発明による方法では、3つの連続した演算ステップのみが必要である(すわわち、減算、割算そして再度割り算)(式 (6)を参照)。
【0107】
最後に、非応答性コントラスト増強エンティティ(例えば19F)が非本来の即ち外来性のマーカーである事実が、本方法に高度な特異性を与える。それは、動き又は流動によって引き起こされる画像アーチファクトがCEST効果として誤解されるリスクを排除する。
【0108】
図3は、本発明の実施の形態による装置の断面図を概略的に示す。模式図の中央に、本発明による造影剤が位置する特定の位置12をもつ人体11が示される。図の下部及び上部に、4つの異なる構成要素の断面図が示される。図の最下部及び最上部に示される構成要素13は、典型的なMRIシステムの磁石である。磁石13の隣の第2の構成要素14は、典型的なMRIシステムの傾斜磁場コイルである。傾斜磁場コイル14の隣の第3の構成要素15は、典型的なMRIシステムの高周波コイルである。この高周波コイル15は、高周波波(例えば16及び17)を放射し、受け取るように適応され、高周波波16及び17は応答性コントラスト増強エンティティを励起することに適しており、したがってCEST造影剤の場合には、1H周波数において動作することに適している。ここでは体11の最も近くに示される第4の構成要素18は、高周波波(例えば19、20及び21)を放射し、受け取るように適応され、高周波波19、20及び21は、非応答性コントラスト増強エンティティを励起することに適しており、したがって、非応答性造影剤がフッ素含有化合物からなる場合には、19F周波数で動作することに適している。模式図の右に、傾斜磁場コイル14、高周波コイル15及びマルチチャネル高周波コイル18に接続されるコントローラ22が示される。矢印16は高周波コイル15から特定の位置12に放射される高周波波を示し、矢印17は特定の位置12から戻って来る修正された信号を示す。一旦この信号17が高周波コイル15によって受け取られると、それはコントローラ22に送られ、そこでそれは上記した本発明の方法によって分析される。コントローラ22は、例えば一つ以上のワークステーション若しくはパーソナルコンピュータを有する計算機として構成されることができ、又は専用の処理エンジンであることができる。
【0109】
さらに、本発明は、計算機上で実行されるときに本発明による任意の方法の機能を提供するコンピュータプログラム製品を含む。さらに、本発明は、機械可読形式でコンピュータ製品を記憶し、計算機上で実行されるときに少なくとも一つの本発明の方法を実行するデータキャリア(例えばCD-ROM又はディスケット)を含む。今日では、そのようなソフトウェアは、ダウンロードのためにインターネット又は社内イントラネット上でしばしば提供され、したがって本発明は、本発明によるコンピュータ製品を、ローカルエリアネットワーク又は広域ネットワーク上で送信することを含む。計算機は、マイクロプロセッサ及びFPGAの一つを含むことができる。
【0110】
好ましい実施の形態、特定の構造及び構成が材料と同様に本明細書において本発明の装置について議論されたが、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、形態及び詳細における様々な変更及び修正がなされることができることが理解されるべきである。
【0111】
例えば、pHマッピングは、CEST造影剤の代わりに、pHに依存する緩和能を有する造影剤によって実行されることもできる。また、この場合には、信号は造影剤の濃度と同様にpHに依存し、それは除去するのが難しい。
【0112】
他方では、CESTはまた、pH以外の他のパラメータ(例えば体温、pO2又は代謝物質濃度)のマッピングのために用いられることができる。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明の実施の形態による造影剤を示す図。
【図2】本発明の実施の形態によって用いられることができる応答性コントラスト増強エンティティの例を示す図。
【図3】本発明の実施の形態によるシステムの概略図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
造影剤の患者への投与後のMRI撮像により物理化学的パラメータに関する情報を取得する方法であって、前記造影剤は、第1信号を示す少なくとも一つの非応答性コントラスト増強エンティティ及び第2信号を示す少なくとも一つの応答性コントラスト増強エンティティを有し、第1信号は第2信号から区別可能であり、当該方法は、
前記少なくとも一つの応答性コントラスト増強エンティティを含む患者の体の少なくとも一部のMR画像を取得し、
前記非応答性コントラスト増強エンティティから第1信号を記録することにより較正画像を取得し、
前記MR画像及び前記較正画像から前記物理化学的パラメータの値を決定し、
前記較正画像は、前記造影剤の濃度に関する前記MR画像の依存性について、前記物理化学的パラメータの前記値を補正するために用いられる、方法。
【請求項2】
前記較正画像の取得が、
前記較正画像から前記非応答性コントラスト増強エンティティの濃度を決定し、
前記物理化学的パラメータの造影剤濃度依存性の低減又は除去のために前記決定された濃度を用いることを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記MR画像を生成するために用いられる第1信号強度と前記較正画像を生成するために用いられる第2信号の強度の比を決定し、この比から前記物理化学的パラメータの値を導出する、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記造影剤が、前記少なくとも一つの応答性コントラスト増強エンティティが取り付けられた前記非応答性コントラスト増強エンティティを有する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも一つの応答性コントラスト増強エンティティが前記非応答性コントラスト増強エンティティに共有結合している請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記造影剤が、少なくとも一つの非応答性コントラスト増強エンティティと少なくとも一つの応答性コントラスト増強エンティティとの混合物を含む、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも一つの非応答性コントラスト増強エンティティが、水のプロトン共鳴周波数と有意に異なるMR共鳴周波数をもつ、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記応答性コントラスト増強エンティティが、RFパルスに応答し、pH、濃度、温度又はそれらの組み合わせの任意の変化に応答する、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも一つの非応答性コントラスト増強エンティティが、人体に対して外来性である、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも一つの応答性コントラスト増強エンティティがCEST造影剤分子である請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
MR画像を取得するステップが、
少なくとも一つの前記CEST造影剤分子を含む患者の体の少なくとも一部の基準MRI画像を取得するステップ、
少なくとも一つの前記CEST造成剤分子を含む患者の体の少なくとも前記一部のコントラスト増強MRI画像を取得するステップ、及び
前記コントラスト増強MRI画像と前記基準MRI画像との比較から、体の前記一部におけるCEST効果を決定するステップ、
を含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記非応答性コントラスト増強エンティティが外来性MRI活性核を有する請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記非応答性コントラスト増強エンティティが、水素の磁気回転比に近い磁気回転比を持つ、請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記非応答性コントラスト増強エンティティが、フッ素含有化合物である、請求項12又は請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記フッ素含有化合物が、パーフルオロカーボンコア及び脂質殻を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記フッ素含有化合物が、パーフルオロ化合物で満たされたポリマー殻を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記非応答性コントラスト増強エンティティが、水の共鳴周波数とは有意に異なるプロトン共鳴周波数を持つ化合物又は化合物の混合物で満たされたポリマー殻を有する、請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
患者の体の少なくとも一部の基準MRI画像を取得するステップが、対象off-resonance周波数における前記CEST造影剤分子の照射によって実行され、患者の体の少なくとも前記一部のコントラスト増強MRI画像の取得が、前記CEST造成剤分子の交換可能プロトン周波数における照射によって実行される、請求項10から請求項17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記CEST造影剤分子が、少なくとも一つのCEST活性常磁性錯体を有し、前記少なくとも一つのCEST活性常磁性錯体が、CESTを可能にするための少なくとも一つの交換可能エンティティを有する、請求項10から請求項18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記常磁性錯体がYb-DOTAM派生物である請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記物理化学的パラメータがpHである請求項1から請求項20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
計算機で実行される際に請求項1から請求項21のいずれか一項に記載の方法を実行又は制御するコンピュータプログラム。
【請求項23】
請求項22に記載のコンピュータプログラムを記憶する機械可読データ記憶装置。
【請求項24】
造影剤と共に用いられるMRI撮像システムであって、前記造影剤は、第1信号を示す少なくとも一つの非応答性コントラスト増強エンティティ及び第2信号を示す少なくとも一つの応答性コントラスト増強エンティティを有し、第1信号は第2信号から区別可能であり、当該システムは、
前記少なくとも一つの応答性コントラスト増強エンティティを含む患者の体の少なくとも一部のMR画像を取得する手段、
前記少なくとも1つの非応答性コントラスト増強エンティティからの第1信号を記録することにより患者の体の前記一部の較正画像を取得する手段、及び
前記較正画像を用いて、前記造影剤の濃度依存性の物理化学的パラメータへの影響を低減又は除去することにより、体の前記一部における前記物理化学的パラメータの値を決定する手段、を有するシステム。
【請求項25】
前記MR画像を取得する手段が前飽和パルスを用いる請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記応答性コントラスト増強エンティティを励起するのに適した第1送信機、及び前記非応答性コントラスト増強エンティティを励起するのに適した第2送信機を有する、請求項24又は請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
少なくとも一つの非応答性コントラスト増強エンティティ及び少なくとも一つの応答性コントラスト増強エンティティを有する造影剤。
【請求項28】
前記非応答性コントラスト増強エンティティが、水のプロトン共鳴周波数とは有意に異なるMR共鳴周波数を持つ、請求項27に記載の造影剤。
【請求項29】
前記非応答性コントラスト増強エンティティが人体に対して外来性である、請求項27又は請求項28に記載の造影剤。
【請求項30】
前記非応答性コントラスト増強エンティティが、前記少なくとも一つの応答性コントラスト増強エンティティに取り付けられ又は結合される、請求項27から請求項29のいずれか一項に記載の造影剤。
【請求項31】
前記少なくとも一つの応答性コントラスト増強エンティティが、前記非応答性コントラスト増強エンティティに共有結合される、請求項30に記載の造影剤。
【請求項32】
少なくとも一つの非応答性コントラスト増強エンティティと少なくとも一つの応答性コントラスト増強エンティティとの混合物を有する、請求項27から請求項29のいずれか一項に記載の造影剤。
【請求項33】
前記応答性コントラスト増強エンティティがCEST造影剤分子を含む請求項27から請求項32のいずれか一項に記載の造影剤。
【請求項34】
前記CEST造影剤分子が、少なくとも一つのCEST活性常磁性錯体を含み、前記少なくとも一つのCEST活性常磁性錯体が、CESTを可能にするための少なくとも一つの交換可能エンティティを含む、請求項33に記載の造影剤。
【請求項35】
前記非応答性コントラスト増強エンティティがフッ素含有化合物である、請求項27から請求項34のいずれか一項に記載の造影剤。
【請求項36】
請求項27から請求項35のいずれか一項に記載の造影剤を含むIV製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−539464(P2009−539464A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513836(P2009−513836)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【国際出願番号】PCT/IB2007/052179
【国際公開番号】WO2007/141767
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】