説明

Mo吸着剤、その製造方法、及び99Mo−99mTcジェネレータ

【課題】分散溶媒としてテトラヒドロフランを用いることがなく、安全な溶媒を用い、この溶媒を用いることでアルコキシ化反応効率が向上し、もって製造されたMo吸着剤が、Mo吸着能力が高く、しかも安定性がよく、99mTc溶出能力を向上させることができるようにする。
【解決手段】原料としてのジルコニウムのハロゲン化物とアルコールに分散溶媒としてのブチルエーテルを添加し、反応させ、アルコキシ化生成物を生成する第1工程のアルコキシ化工程と、反応生成したアルコキシ化生成物に水と更にブチルエーテルを添加して、加水分解及び脱水縮合して前駆生成物を生成する第2工程の加水分解・脱水縮合工程と、生成した前駆生成物を重合濃縮し、溶媒除去、熱処理する第3工程とを用いることによって、−O−Zr−Clの骨格構造であって、塩素の含有量が160mg(Cl)/g以上の性状を示すMo吸着剤を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Mo吸着剤、その製造方法、及び99Mo−99mTcジェネレータに関する。
【背景技術】
【0002】
99mTcはいろいろな化合物に結合した、いわゆる放射線医薬品として人体に投与し、がんなどの核医学的診断に利用されている。
【0003】
従来、99mMoから99mTcを取り出す方法として、Mo吸着剤を充填したカラムに99MoをMoO2−の形で吸着させ、食塩水を流してミルキング法によって99mTcのみを99mTcOの形で溶出するジェネレータ方式が用いられて来た。
【0004】
特許文献1には、ジルコニウムのハロゲン化物、ハロゲン化酸化ジルコニウムの少なくとも1つと炭素数が1個から6個までのアルコールを溶媒中または無溶媒で反応させる第一工程と、さらに加水分解あるいは水を配位させる第2工程と、こうして得られた前駆体を水分を含んだ酸化性あるいは非酸化性雰囲気中で加熱して架橋せしめることにより水に不溶とする第3工程とからなる99Mo−99mTcジェネレータ用Mo吸着剤の製造方法が記載されている。
【0005】
そして、この文献には、第1工程で用いるジルコニウムのハロゲン化物としてZrClが好適であること、1個から6個までのアルコールとしてメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、エチレングリコール、グリセリン、ポルビニルアルコールなどが原料となり得ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2857349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、第1工程の分散溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を用いているが、テトラヒドロフランは生体毒性があり、医療用材料の合成には不適であるという問題がある。そして、このテトラヒドロフランの使用は、アルコキシ化反応効率が悪く、製造されたMo吸着剤は、Mo吸着能力が悪く、しかも安定性に欠け、合成反応に用いた有機物の残留量が多く、99mTc溶出能力が低いという問題がある。
【0008】
また、従来のMo吸着剤製造のための合成プロセスは、第1工程(アルコキシ化反応工程)、第2工程(重合処理・溶媒除去工程)、第3工程(熱処理工程)の3工程からなるが、それぞれの工程毎に反応容器を別々として移し替えるため、原料や反応中間体(前駆体)に損失が生じたり、合成時間が長くかかるという問題がある。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みて、分散溶媒としてテドラヒドロフランを用いることがなく、安全な溶媒を用い、この溶媒を用いることでアルコキシ化反応効率が向上し、もって製造されたMo吸着剤が、Mo吸着能力が高く、しかも安定性がよく、99mTc溶出能力を向上させることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、−O−Zr−Clの骨格構造を有し、放射性同位元素である99MoをMoと共に吸着し、99Moから生成される99mTcOを溶離することのできるMo吸着剤の製造方法であって、
原料としてのジルコニウムのハロゲン化物とアルコールに分散溶媒としてのブチルエーテルを添加し、反応させ、アルコキシ化生成物を生成する第1工程のアルコキシ化工程と、
反応生成したアルコキシ化生成物に水と更にブチルエーテルを添加して、加水分解及び脱水縮合して前駆生成物を生成する第2工程の加水分解・脱水縮合工程と、
生成した前駆生成物を重合濃縮し、熱処理溶媒を除去することによって、−O−Zr−Clの骨格構造であって、
塩素の含有量が160mg(Cl)/g以上
の性状を示す反応生成物を生成する第3工程の重合・溶媒除去、熱処理工程と、
からなることを特徴とするMo吸着剤の連続製造方法を提供する。
【0011】
本発明は、また、前記連続製造方法によって製造されたMo吸着が、
Mo吸着量が230〜240mg(Mo)/g、かつ
99mTc溶出率が90〜93%
の性状を示すことを特徴とするMo吸着剤の連続製造方法を提供する。
【0012】
本発明は、また、前記残留有機物含有が0.05〜0.2%・材料硬度が500〜800gw/cm
である性状を示す反応生成物を生成することを特徴とするMo吸着剤の連続製造方法を提供する。
【0013】
本発明は、また、前記第1工程のアルコキシ化工程が、内部の圧力及び温度が制御可能であって、ガスフロー回転反応式の反応器でなされ、第2工程の加水分解、脱水縮合工程が、第1工程に連続して、該反応器でなされ、第3工程の重合・溶媒除去、熱処理工程が、第2工程に連続して、該反応器でなされることを特徴とするMo吸着剤の連続製造方法を提供する。
【0014】
本発明は、また、前記連続製造方法によって製造されたMo吸着剤が、塩素の含有量が160mg(Cl)/g以上
の性状を示すことを特徴とするMo吸着剤を提供する。
【0015】
本発明は、また、前記連続製造方法によって製造した、塩素の含有量が160mg(Cl)/g以上の性状を示すMo吸着剤が収納されたカラムを有し、前記Mo吸着剤が99Moを吸着し、99Moから99mTcを生成する手段を有し、99mTcを99mTcOの形で溶出させるミルキング手段を有することを特徴とする99Mo−99mTcジェネレータを提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、ジルコニウムのハロゲン化物に分散溶媒としてブチルエーテルを添加しているので、医療用材料の合成上の問題がなく、アルコキン化反応効率が向上し、塩素の含有量を160mg(Cl)g以上とすることができて、製造されたMo吸着剤は、Mo吸着能力が高く、もって製造されたMo吸着が、Mo吸着能力が高く、しかも安定しており、有機物の残留量が少なく、99mTc溶出能力を向上させることができる。
【0017】
更に、本発明は、上述したように内部の圧力及び温度を制御可能であって、ガスフロー回転反応式の反応器を用いて、第1工程、第2工程及び第3工程による処理を連続して行うことができるようにしているので、大量合成が可能となり、また合成時間を短縮して効率よく医療用材料として99mTcO溶出能力を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例であるPZC−BEの合成フロー図。
【図2】PZC−BEの合成方法を示す図。
【図3】従来Mo吸着剤PZCの合成フロー図。
【図4】PZCの合成方法を示す図。
【図5】PZC−BE及びPZCのMo吸着量性能を示す図。
【図6】PZC−BE及びPZCの99mTc溶出率性能を示す図。
【図7】PZC−BE及びPZCの材料硬度(材料強度)性能を示す図。
【図8】図5〜図7の性能をまとめて示す図。
【図9】99mTcジェネレータの基本構成を示す図。
【図10】PZC−BE(又はPZC)によるMo(99Mo)吸着と99mTc溶出の原理を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例を図面に用いて説明する。
【実施例】
【0020】
本発明の実施のためにMo吸着剤製造装置が用いられる。Mo吸着剤製造装置は、圧力及び温度制御、及びガスフロー回転が可能とされた反応器と、この反応器内に構成されるMo吸着剤生成手段を備える。
【0021】
図1は、本発明の実施例であるMo吸着剤の連続製造方法を示す。
【0022】
図1において、Mo吸着剤の連続製造のために、圧力及び温度制御及びガスフロー回転が可能とされた反応器が用いられる。
【0023】
この反応器で、第1工程のアルコキシ化工程、第2工程の加水分解、脱水縮合工程及び第3工程の重合、溶媒除去、熱処理工程が連続して形成される。
これらの工程によってMo吸着剤を連続して製造する合成フローの1例を示すと次のようになる。
【0024】
アルコキシ化工程は、フラスコ(SI)にジルコニウムのハロゲ化物としてのZrClとアルコールとしてイソプロピルアルコール(IPA)を入れ、装置セット(S2)を行う。
【0025】
この製造方法の第1工程で用いるジルコニウムのハロゲン化物、ハロゲン化酸化ジルコニウムは塩化物が好ましく、特にZrClが好適である。もう一方の出発原料であるアルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどの一価アルコール、エチレングリコールなどの二価アルコール、グリセリンやポリビニルアルコールなどの多価アルコールなども用いることでき、さらにベンジルアルコールやフェノールなどもMo吸着剤の原料となり得る。雰囲気ガスとしてNガスを通気し、分散溶媒としてブチルエーテル(BE)を添加する。
【0026】
このようにして試薬添加(S3)が形成される。ブチルエールの存在下、原料を混合し、50°に加温して反応処理(S4)する。反応処理に要する時間として1.5時間が想定される。この反応処理によって図2に示すようにアルコキシ化生成物が生成される。
50°処理後に、このアルコキシ化工程に引き続いて反応生成列を別の反応容器に移し代えることなく、第2工程に移行する。第2工程では、水(HO)を投入し、更にブチルエーテル(BE)を投入して、試薬の添加(S5)を行う(試薬添加)。このように、第1工程で生成されたアルコキシ生成物に試薬を反応(S6)させる。この反応は50℃に温度を保持した状態で1時間継続される。
【0027】
この工程によって、加水分解・脱水縮合工程が形成され、図2に示すように前駆生成物が生成される。
【0028】
次いで、同一反応器内で、第3工程を実施する。第3工程では、Nガスを投入し、50〜130℃の温度に段階的に昇温・保持して濃縮(S7)による重合を行う。この50〜130℃処理は3.5時間継続される。ついで減圧し、熱処理(S8)を行う。この熱処理は、160℃の温度での熱処理とされる。この160℃処理は、1時間継続され、ついで粉砕、整粒(S9)がなされる。この放冷、粉砕処理は1時間継続される。これらの処理によって、重合・溶媒除去・熱処理工程が形成され、図2に示すように、Mo吸着剤としてのPZC−BEが生成される。
【0029】
これらの第1工程から第3工程までは、合成所要時間が8時間であり、バッチ処理によって500g〜3,000gのMo吸着剤(PZC−BE)が生成される。
【0030】
合成条件比較のための、従来品PZC合成フローを図3、図4に示す。図3、図4に示す工程は次の通りである。
【0031】
〔第1工程:アルコキシ化反応〕
ZrCl+2CHCH(OH)CH−→ZrCl2(OC2+2HCl…(1)
上記は激しい反応を伴うため、従来品はTHF(テトラヒドロフランCO)をその反応を緩和させ原料(塩化ジルコニウムZrCl4、イソプロピルアルコールCHCH(OH)CH)を分散させる溶媒として使用している。このTHFは上記(1)に示す合成反応には直接係らない。THFは安定剤としてp−クレゾールやヒドロキノン(いずれも沸点200℃以上)を含むため、後段の第2〜第3工程における溶媒除去及び熱処理における不揮発物や熱分解生成物が残留してしまう難点があった。
【0032】
〔第2工程:加水分解処理・脱水縮合工程〕
ZrCl(OC2+2HO→ZrCl2(OC)OH+COH…(2)
第1工程で生成したアルコキシ生成物(ZrCl(OC)に水を反応させアルコキシ基(OC)を加水分解し、生成したアルコールや未反応の水を過熱除去しながら脱水縮合する。
【0033】
〔第3工程:熱処理工程〕
ZrCl(OC)OH→〔−ZrClx−O−〕n+COH+HO(HCl)…(3)
第2工程の生成中間体を通常150〜160℃程度で加熱することで、前駆体を架橋し分子量を増加させる。以上の処理によって、Mo吸着剤(PZC)を合成する。
本発明の実施例のMo吸着剤合成プロセスでは、従来の合成プロセスの第1工程(アルコキシ化反応工程)、第2工程(加水分解・脱水縮合工程)、第3工程(重合処理・溶媒除去工程及び熱処理工程)の3工程を1つの容器内で連続して行う。また、従来の第1工程の分散溶媒であるテトラヒドロフラン(THF)に代えてBE(ジブチルエーテル)を用いてアルコキシ化反応効率を向上させている。
【0034】
上述した第1工程、第2工程及び第3工程によって、−O−Zr−Clの骨格構造のMo吸着剤が生成される。
【0035】
このMo吸着剤は、次に示す一般式で表わされるものを含む。

【0036】
本実施例は、アルコキシ化反応効率の向上によって、塩素の含有量が160mg(Cl)/g以上とすることができることを1つの特徴としている。
【0037】
図5−図8は、本実施例PZC−BEと従来Mo吸着剤PZCとの性能比較を示す。
【0038】
図5は、双方のMo吸着剤のMo吸着量を示す。
【0039】
上述したように、塩素の含有量を多くすることができたことによって以下の効果が構成される。
【0040】
従来Mo吸着剤PZCのMo吸着量は160〜220mg(Mo)/gの範囲で安定性を欠いていたのに対して、本実施例PZC−BEは、Mo吸着量が230〜240mg(Mo)/gの範囲で安定し、従来のMo吸着剤(PZC)に比べ、Mo吸着量が高く、かつ安定している。
【0041】
図6は、双方のMo吸着剤の99mTc溶出率を示す。
【0042】
従来Mo吸着剤PZCの99mTc溶出率は73〜80%であるのに対して、本実施例PZC−BEは、90〜93%の性能を示し、従来Mo吸着剤に比べ、99mTc溶出率が高く、かつ安定している。
【0043】
図7(ハ)において、本実施例PZC−BEは、材料硬度、すなわち材料強度の測定値は、550〜860gw/cmを示す。
【0044】
図7(ニ)において、本実施例PZC−BEは、材料硬度、すなわち材料強度の測定値は、500〜870gw/cmを示す。
【0045】
これらのデータから本実施例PZC−BEは、少なくとも材料硬度の測定値は500〜870gw/cmを示す。これに対して、図7は(イ)において、従来Mo吸着剤PZCは材料硬度、すなわち材料強度の測定値は、208〜318gw/cmであった。
【0046】
また、図7(ロ)において、従来Mo吸着剤PZC(例えば、特許文献1に示す材料)は材料硬度、すなわち材料強度の測定値は、130〜245gw/cmであった。
【0047】
以上、本発明PZC−BEの材料硬度は従来のPZCに対し飛躍的に高く、材料が強固なため取扱い易いMo吸着剤であることが分かる。
【0048】
図5〜図7に示す性能をまとめて示すと、図8のようになる。
【0049】
Moとの反応基である塩素(Cl)の含有量は、化学分析により求め、Mo単位重量当りのClの含有重量(mg)で表すが、従来のMo吸着剤は、130〜140mg(Cl)/gであったが、本実施例は160mg(Cl)/gであり、安定的に高い値を示す。単位重量当りの塩素(Cl)の量が増加し、安定的に高い含有量となる。しかも、化学的結合力が増大しているため、材料硬度、すなわち材料強度が高く、Mo吸着量が高く、かつ安定した性能を示す。
【0050】
以上のように本実施例のMo吸着剤の連続製造方法は、その1例として、内部の圧力及び温度を制御可能である。ガスフロー回転反応式の反応器に、原料としてのジルコニウムのハロゲン化物にアルコール系溶媒及びブチルエーテルを添加し、反応させる第1工程のアルコキシ化工程と、
第1工程に連続して、該反応内で、反応生成したアルコキシ化生成物に水と更にブチルエーテルを添加して、加水分解及び脱水縮合する第2工程の加水分解・脱水縮合工程と、
第2工程に連続して、該反応器内で、生成した前駆生成物を重合濃縮し、溶媒除去後に熱処理することによって、−O−Zr−Clの骨格構造であって、
塩素の含有量が160mg(Cl)/g以上で、Mo吸着量が230〜240mg(Mo)/g99mTc溶出率が90〜93%
の性状を示す反応生成物を生成する第3工程の重合・溶媒除去・熱処理工程と、
から構成される。
【0051】
また、本発明により生成されたMo吸着剤(PZC−BE)は、
残留有機物含有が0.05〜0.2%
材料硬度が500〜870gw/cm
の性状を示す。一方、従来のMo吸着剤(PZC)は、残留有機物含有が1〜5%と高く、材料硬度が130〜318gw/cmと低く、医療診断に必要となる高品質の99mTcを得るための99mTcジェネレータ材料としては問題があった。
【0052】
図9は、99mTcジェネレータの基本構成を示す。
【0053】
図9において、99mTcジェネレータ50は、99Mo吸着PZC−BEカラム51、これに接続された精製用のアルミナカラム52からなり、99Mo吸着PZC−BEカラム51には生理食塩水が入った生理食塩水容器53が接続される。アルミナカラム52の出口側には99mTc溶液を入れる。
【0054】
99mTc溶液容器54が接続される。このように、99Mo吸着PZC−BEカラム51の後段に精製用のアルミナカラム52が接続されて99mTcジェネレータ50の基本構成が形成される。なお、この99mTcジェネレータの基本構成は従来のものと変わらない。
【0055】
この99mTcジェネレータ50基本構成において、99Mo吸着PZC−BEカラム51には、図2で示す生成されたMo吸着剤PZC−BEが収納される。この99Mo吸着PZC−BEカラム51には、生理食塩水容器53から生理食塩水が通液される。
【0056】
図10は、Mo吸着剤(PZC−BE)によるMo(99Mo)吸着と99mTc溶出の原理を示す。なお、この原理は従来のものと変わらない。
【0057】
図10において、原料としてのZrClとアルコール系溶媒からMo吸着剤(PZC−BE)が形成される。このMo吸着剤(PZC−BE)は、−O−Zr−O−Zr−Clの構造を有する。PZC−BEは、−O−Zr−Clの骨格構造を有し、その性状については上述の通りである。
【0058】
Mo吸着剤(PZC−BE)は、図9に示す99Mo吸着PZC−BEカラム51に収納される。このカラム51にMo(99Mo)O2−がHOと共に投入され、99MoがPZC−BEに吸着される。吸着された99Moは、次いでβ線を放出し99mTcに変換される。
【0059】
99mTcは、図9において、生理食塩水によって99mTcOとして溶出され、アルミナカラム52で精製され、99mTc溶液容器54に貯蔵される。貯蔵された99mTcOは、放射線診断のため人体に投与されることになる。
【0060】
本実施例によれば、Mo吸着剤の合成プロセスの3工程を1つの容器内で連続的に進めることが可能となったため、原料や反応中間体(前駆体)のロス(損失)が無く、工程毎に反応容器を移替える必要が無いことなどから、従来の第1工程〜第3工程の全体をスムーズに進められるため、合成時間を従来(30〜40h)の1/3程度に短縮(8〜10h)できた。しかも、従来のMo吸着剤の合成能力は1バッチ50g程度であったが、反応容器を従来の静置・回分型から圧力制御が可能なガスフロー回転型反応器に代えた結果、Mo吸着剤の合成能力を従来の10〜60倍の1バッチ500〜3,000gに増加することができた。
【0061】
本発明で合成した改良型Mo吸着剤は、Mo吸着能力が増加ししかも安定し、99mTc溶出能力が増加し安定し、しかも材料中の有機性不純物を低減でき、また材料硬度を増大できた。
【符号の説明】
【0062】
50…99mTcジェネレータ、51…99Mo吸着PZC−BEカラム、52…アルミナカラム、53…生理食塩水容器、54…99mTc溶液容器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
−O−Zr−Clの骨格構造を有し、放射性同位元素である99MoをMoと共に吸着し、99Moから生成される99mTcOを溶離することのできるMo吸着剤の製造方法であって、
原料としてのジルコニウムのハロゲン化物とアルコールに分散溶媒としてのブチルエーテルを添加し、反応させ、アルコキシ化生成物を生成する第1工程のアルコキシ化工程と、
反応生成したアルコキシ化生成物に水と更にブチルエーテルを添加して、加水分解及び脱水縮合して前駆生成物を生成する第2工程の加水分解・脱水縮合工程と、
生成した前駆生成物を重合濃縮し、溶媒除去、熱処理することによって、−O−Zr−Clの骨格構造であって、
塩素の含有量が160mg(Cl)/g以上
の性状を示す反応生成物を生成する第3工程の重合・溶媒除去、熱処理工程と、
からなることを特徴とするMo吸着剤の連続製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の連続製造方法によって製造されたMo吸着が、
Mo吸着量が230〜240mg(Mo)/g、かつ
99mTc溶出率が90〜93%
の性状を示すことを特徴とするMo吸着剤の連続製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、残留有機物含有が0.05〜0.2%・材料硬度が500〜800gw/cm
である性状を示す反応生成物を生成することを特徴とするMo吸着剤の連続製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかにおいて、第1工程のアルコキシ化工程が、内部の圧力及び温度が制御可能であって、ガスフロー回転反応式の反応器でなされ、第2工程の加水分解、脱水縮合工程が、第1工程に連続して、該反応器でなされ、第3工程の重合・溶媒除去、熱処理工程が、第2工程に連続して、該反応器でなされることを特徴とするMo吸着剤の連続製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の連続製造方法によって製造されたMo吸着剤が、塩素の含有量が160mg(Cl)/g以上
の性状を示すことを特徴とするMo吸着剤。
【請求項6】
請求項1から4のいずれかに記載の連続製造方法によって製造した、塩素の含有量が160mg(Cl)/g以上の性状を示すMo吸着剤が収納されたカラムを有し、前記Mo吸着剤が99Moを吸着し、99Moから99mTcを生成する手段を有し、99mTcを99mTcOの形で溶出させるミルキング手段を有することを特徴とする99Mo−99mTcジェネレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−223711(P2012−223711A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93998(P2011−93998)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000140627)株式会社化研 (27)
【Fターム(参考)】