説明

Myb29遺伝子を用いる、グルコシノレート類化合物の組成比が変化した植物体のスクリーニング方法

【課題】グルコシノレート(GSL)類化合物の組成比が変化した植物体およびそのスクリーニング方法を提供する。
【解決手段】Myb29遺伝子の発現量を測定することを含む、植物体間において、含有するグルコシノレート類化合物の同族体別組成比が異なる植物体をスクリーニングする方法、およびMyb29遺伝子の過剰発現によって得られるGSL類化合物の組成比が変化した植物体。該植物体は、アラビドプシス属サリアナ種またはブラシカ属オレラセア種に属するである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルコシノレート類化合物の組成比が変化した植物体およびそのスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グルコシノレート(GSL)類はアブラナ科植物の生産する二次代謝産物であり、研究用のモデル植物であるシロイヌナズナをはじめ、食用作物であるブロッコリー、キャベツ、ダイコン、ケール、カラシナ、ワサビなどに含まれる。GSL類は、植物内で分解酵素ミロシナーゼとは異なる細胞に蓄積されており、植物組織が破壊されると両者が接触して、イソチオシアネート(ITC)等に分解される。
【0003】
ITC類はアブラナ科野菜における辛味成分や香気成分として重要であるほか、最近の研究により、ガン細胞の発生を抑制する働きがあることわかった。特にブロッコリースプラウトに含まれるITCであるスルフォラファンは生体内のNrf2を活性化し、抗酸化や解毒作用によりガン、高血圧、加齢性疾患の予防に有効であることがわかっている(非特許文献1)。
【0004】
GSL類は、その構造によってアリファティック系GSL、インドール系GSL、およびアロマティック系GSLに大別される(図1を参照のこと)。これらはそれぞれ、メチオニン、トリプトファン、フェニルアラニンのアミノ酸を前駆体として生合成され、その前駆体の種類によって側鎖の化学構造が大きく異なっている。ガン発生を抑制しうるスルフォラファンは、GSLであるグルコラファニン(4-メチルスルフィニルブチルGSL、略称4MSB(4MSOB))より生じ、それはメチオニンを前駆体とするGSL(アリファティック系GSL)に属する。一方、トリプトファンを前駆体とするGSL(インドール系GSL)には、例えば、グルコブラシシン(インドリル-3-イルメチルGSL、略称I3M)が含まれる。
【0005】
また、GSLは腸内細菌によってITCに分解されることが知られており、例えば、動物実験においてGSL添加により解毒系酵素の誘導が確認されている(非特許文献2)。
【0006】
このような観点から、例えば、4MSBを増加させ、かつI3Mを減少させるといったように、GSLの分子種ごとに蓄積量を制御することによって、機能性の高いGSLの蓄積のみを増強させた付加価値を高めた野菜やそれを利用した食品類が望まれている。
【0007】
これまでに、トリプトファンの二次代謝産物であるインドール系GSLの合成を制御する遺伝子、およびそれを利用した形質転換体などが報告されている(特許文献1)。また、インドール系GSLの生合成にかかわる酵素遺伝子であるCYP79B2、CYP79B3、CYP83B1を正に制御する遺伝子としてATR1(Myb34)が報告されており、この遺伝子の発現が上昇する優性変異体atr1Dでは、インドール系GSLの蓄積量が増加することが示されている(非特許文献3)。さらに、アルキル/インドールグルコシノレート比の増加を測定することによって、植物集団を選択する方法が報告されている(特許文献2)。
【0008】
【特許文献1】特開2006−115813号公報
【特許文献2】特表2002−519043号公報
【非特許文献1】Keum YSら、“Mechanism of Action of Sulforaphane: Inhibition of p38 Mitogen-Activated Protein Kinase Isoforms Contributing to the Induction of Antioxidant Response Element-Mediated Heme Oxygenase-1 in Human Hepatoma HepG2 Cells.” Cancer Res (2006) 66, pp8804-8813
【非特許文献2】Cheng DLら、“In vitro digestion of sinigrin and glucotropaeolin by single strains of Bifidobacterium and identification of the digestive products.” Food Chem.Toxicol. (2004) 42, 351-357.
【非特許文献3】Celenza JLら、“The Arabidopsis ATR1 Myb Transcription Factor Controls Indolic Glucosinolate Homeostasis.” Plant Physiology, (2005) 137: 253-262.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、先行技術文献(特許文献1および非特許文献3)は、インドール系GSLの合成を制御することに関するものであって、アリファティック系GSLの蓄積量を向上させることについてはなんら開示されていない。また、特許文献2に開示される方法では、各GSLの含有量を実際に測定してスクリーニングを行っているために、多数のスクリーニング対象の中より目的の植物体をスクリーニングするには、多大な労力と時間を要する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、アリファティック系GSLの生合成にかかわる酵素遺伝子の発現のみを正に制御する遺伝子であるPMG2(Production of Methionine-derived Glucosinolate 2)(Myb29)をシロイヌナズナおよびケールより発見した。これらのMyb29遺伝子を過剰発現した形質転換シロイヌナズナでは、アリファティック系GSLの蓄積のみが特異的に増加することがわかった。これらのMyb29遺伝子を用いて、本発明を完成させるに至った。
【0011】
発明の概要
本発明は、要約すると、以下の特徴を包含する。
(1)Myb29遺伝子の発現量を測定することを含む、植物体間において、含有するグルコシノレート類化合物の同族体別組成比が異なる植物体をスクリーニングする方法。
【0012】
(2)上記植物体が、アラビドプシス属サリアナ種またはブラシカ属オレラセア種に属する、(1)に記載の方法。
【0013】
(3)上記測定が、Myb29遺伝子の発現量が増大していることを指標にする、(1)または(2)に記載の方法。
【0014】
(4)上記ブラシカ属オレラセア種に属する植物体が、ケール、キャベツ、カリフラワー、ブロッコリーまたはコールラビを含む、(2)に記載の方法。
【0015】
(5)上記同族体が、メチルスルフィニル基系化合物、ハイドロキシ基系化合物、またはインドール系化合物である、(1)に記載の方法。
【0016】
(6)上記植物体が、グルコシノレート類化合物中、メチルスルフィニル基系化合物の蓄積、および/もしくはハイドロキシ基系化合物の蓄積が増大している、並びに/または、インドール系化合物の蓄積が減少している植物体である、(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。
【0017】
(7)上記植物体のスクリーニングが、分類学上同一の属または種の植物体間で行われる、(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。
【0018】
(8)上記植物体のスクリーニングが、野生型植物体、系統選抜で得られた植物体、変異した植物体、交配選抜で得られた植物体、あるいは、注目する遺伝形質以外の遺伝的バックグラウンドについては実質的に同一である植物体の植物体間で行われる、(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。
【0019】
(9)Myb29遺伝子が、DNA、RNA、mRNA、cDNAまたはcRNAの形態で測定される、(1)に記載の方法。
【0020】
(10)上記測定が、Myb29遺伝子に特異的なプローブまたはプライマーを用いる、ハイブリダイゼーション法または定量ポリメラーゼ連鎖反応法によるものである、(1)〜(9)のいずれかに記載の方法。
【0021】
(11)上記測定が、レポーターアッセイによるものである、(1)〜(9)のいずれかに記載の方法。
【0022】
(12)上記レポーターアッセイを、Myb29遺伝子発現制御領域を含むMyb29遺伝子発現レポータープラスミドを用いて行う、(11)に記載の方法。
【0023】
(13)Myb29遺伝子が過剰発現された、それによりメチルスルフィニル基系化合物の蓄積、および/もしくはハイドロキシ基系化合物の蓄積が増大している、並びに/または、インドール系化合物の蓄積が減少していることを特徴とする植物体。
【0024】
(14)上記植物体が、アラビドプシス属サリアナ種またはブラシカ属オレラセア種に属する、(13)に記載の植物体。
【0025】
(15)上記ブラシカ属オレラセア種に属する植物体が、ケール、キャベツ、カリフラワー、ブロッコリーまたはコールラビである、(13)または(14)に記載の植物体。
【0026】
(16)上記植物体が、(1)〜(12)のいずれかに記載の方法によってスクリーニングされ取得されたものである、(13)〜(15)のいずれかに記載の植物体。
【0027】
(17)植物細胞または組織において過剰発現するようにMyb29遺伝子を導入し、植物体を再生することを含む、メチルスルフィニル基系化合物の蓄積、および/もしくはハイドロキシ基系化合物の蓄積が増大している、並びに/または、インドール系化合物の蓄積が減少していることを特徴とする植物体を作出する方法。
【0028】
(18)上記植物体が、アラビドプシス属サリアナ種またはブラシカ属オレラセア種に属する、(17)に記載の方法。
【0029】
(19)上記ブラシカ属オレラセア種に属する植物体が、ケール、キャベツ、カリフラワー、ブロッコリーまたはコールラビである、(17)または(18)に記載の方法。
【0030】
(20)上記植物体を、(1)〜(12)のいずれかに記載の方法によってスクリーニングすることをさらに含む、(17)〜(19)のいずれかに記載の方法。
【0031】
(21)(17)〜(20)のいずれかに記載の方法によって得られる、メチルスルフィニル基系化合物の蓄積、および/もしくはハイドロキシ基系化合物の蓄積が増大している、並びに/または、インドール系化合物の蓄積が減少していることを特徴とする植物体。
【0032】
定義
本明細書中で使用する用語は、以下の定義を有する。
本明細書において「Myb29」とは、R2R3型Myb遺伝子ファミリーに属する、かつGSL生合成系遺伝子と共発現する転写因子である。後述の実施例に記載するように、Myb29は、植物体のメチルスルフィニル基系化合物の蓄積、および/もしくはハイドロキシ基系化合物の蓄積の増大、並びに/または、インドール系化合物の蓄積の減少に関与する。なお、エキソン、イントロンおよびプロモーター領域を含む5’上流域の塩基配列情報は、The Arabidopsis Information Resource (TAIR: http://www.arabidopsis.org/index.jsp)より、Myb29のAGI コード At5g07690を用いて入手できる。
【0033】
本発明において、Myb29には、特に断りの無い限り、その変異体(類似体およびホモログを含む)も含む。「変異体」とは、Myb29遺伝子のヌクレオチド配列において1又は複数、好ましくは1又は数個のヌクレオチドの置換、欠失又は付加を有するもの、あるいは該ヌクレオチド配列と通常70%以上、好ましくは80%以上、85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、98%以上、99%以上の%同一性を示す変異体を意味する。
【0034】
ここで、「数個」とは、約10、9、8、7、6、5、4、3又は2個の整数を指す。また、「%同一性」は、Genbank(米国NCBI)などの配列データベースにアクセスし、BLASTやFASTAなどの核酸やタンパク質の相同性検索用アルゴリズムを用いて、ギャップを導入してまたはギャップを導入しないで、決定することができる(高木利久・金久實編、ゲノムネットのデータベース利用法(第2版)1998年、共立出版社)。
【0035】
本明細書において使用する「遺伝子」なる用語には、DNA、RNA、mRNA、cDNAまたはcRNAが含まれる。
【0036】
本明細書において「植物体」とは、通常、個体としての植物を指すが、それ以外に、植物の一部分(例えば器官、組織など)、種子、カルス、細胞、およびシュートなども含む。植物体は、アラビドプシス属サリアナ種、またはブラシカ属オレラセア種に属し、かかるブラシカ属オレラセア種には、ケール、キャベツ、カリフラワー、ブロッコリー、およびコールラビを含む。
【0037】
本明細書において、目的とする植物体は、分類学上同一の種または属の植物体間からスクリーニングされる。また、本明細書において、目的とする植物体は、野生型植物体、系統選抜で得られた植物体、変異した植物体、交配選抜で得られた植物体、または、注目する遺伝形質以外の遺伝的バックグラウンドについては実質的に同一である植物体の植物体間からスクリーニングされる。
【0038】
本明細書において「系統選抜で得られた植物体」とは、共通の祖先を持ち、遺伝子型の等しい個体群である系統について、その系統が有する性質に基づいて選択された植物体をいう。
【0039】
本明細書において「変異した植物体」とは、天然または人工的操作(例えば、遺伝子組換え、薬品処理、放射線処理などを含む)によって、遺伝的に形質の変化した植物体をいう。
【0040】
本明細書において「交配選抜で得られた植物体」とは、特定の系統を交配し得られた植物体をいう。
【0041】
本明細書において「注目する遺伝形質以外の遺伝的バックグラウンドについては実質的に同一である植物体」とは、遺伝形質的に相違の見られる植物体間において、その遺伝形質的相違のほかには、遺伝的に違いが見られない植物体をいう。
【0042】
本明細書において「グルコシノレート類化合物の同族体」とは、同一のアミノ酸を前駆体に持つGSLを意味する。したがって、同族体は、アリファティック系GSL、インドール系GSL、およびアロマティック系GSLの3種に大別される。
【0043】
本明細書において「組成比」とは、一植物体中に含有される、グルコシノレート類化合物の同族体の量を比較したときに示される割合を意味する。
【0044】
本発明において、「Myb29遺伝子発現制御領域」とは、Myb29をコードするDNA配列の5’側上流に存在し、Myb29遺伝子の転写調節に関与し得る機能性エレメント(例えば、プロモーターおよびエンハンサーなど)を含む領域を意味する。
【0045】
本明細書において「メチルスルフィニル基系化合物および/またはハイドロキシ基系化合物」とは、共にアリファティック系GSLに属する化合物である。メチルスルフィニル基系化合物には、例えば、4-メチルスルフィニルブチルGSL:4MSB(4MSOB)および5-メチルスルフィニルペンチルGSL:5MSP(5MSOP)が含まれ、ハイドロキシ基系化合物には、例えば、3-ハイドロキシプロピルGSL:3OHPおよび4-ハイドロキシブチルGSL:4OHBが含まれる。
【0046】
本明細書において「インドール系化合物」には、例えば、インドリル-3-イルメチルGSL:I3Mおよび(1-メトキシ-インドリル-3-メチルGSL):1MOI3Mが含まれる。
【発明の効果】
【0047】
Myb29遺伝子の発現量を指標としてスクリーニングを行うことによって、アリファティック系GSLの含有量が増大した植物体をスクリーニングすることができる。Myb29遺伝子を過剰発現させることによって、アリファティック系GSLの含有量が増大した植物体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
本発明は、アリファティック系GSLの蓄積量の増大に関与するMyb29遺伝子の発現量の増大に基づいて、含有するグルコシノレート類化合物の同族体別組成比が異なる植物体、具体的にはアリファティック系GSL含有量が他の植物体と比べて増大している植物体、のハイスループットなスクリーニング方法に関する。
【0049】
本発明はまた、Myb29遺伝子を過剰発現させたことによる、アリファティック系GSLの蓄積量の増大した植物体に関する。
【0050】
以下に本発明をさらに具体的に説明する。
(植物体由来の遺伝子サンプル)
植物体に由来するサンプルは、以下のようにして得ることができる。植物体由来の組織を液体窒素で凍結、粉砕し、既知の手法、例えばフェノール/クロロホルム法、グアニジウム法又はフェノール/SDS法により全RNAを得るか、又は、RNAをオリゴ(dT)セルロースカラムに通してpoly(A)+RNAを得るか(E.E. Karrerら (1991) Mol. Biol. 16: 797-805)、あるいは、poly(A)+RNAから既知の逆転写反応及び標識核酸取込みを経てラベル化cDNAを得、これらをサンプルとすることができる。
【0051】
(Myb29遺伝子発現の定量)
Myb29遺伝子の発現量を定量する方法としては、例えばハイブリダイゼーション法または定量RT-PCR法を使用することができる。
ハイブリダイゼーション法には、例えばノザンハイブリダイゼーション法、DNAチップ解析法、in situハイブリダイゼーション法、サザンハイブリダイゼーション法などを使用することができる。
【0052】
ノザンハイブリダイゼーション法は、一般にRNA配列の検出、定量のために使用される。本発明では、植物体を液体窒素で凍結、粉砕し、既知の手法、例えばグアニジウム法、フェノール/SDS法などの手法により全RNAを得るか、あるいは、RNAをオリゴ(dT)セルロースカラムに通してpoly(A)+RNAを得て、これらのRNAをノザン法のサンプルとする(E.E. Karrerら (1991) Mol. Biol. 16: 797-805)。RNAサンプルを、アガロースゲル電気泳動にかけてサイズ分離し、その後、ナイロンもしくはニトロセルロースメンブレンにRNAを転写し、Myb29のラベル化cDNA又はその断片をプローブとしてハイブリダイゼーションを行い、目的の遺伝子を検出、定量する(例えば、分子生物学実験プロトコルI(1997年), 西野・佐野共訳, 丸善株式会社)。
【0053】
DNAマイクロアレイ法では、ガラスやフィルターなどのアレイ(例えば、ナイロンフィルター、又は、ポリL-リシンコートもしくはシラン化スライドガラス)上にMyb29を含む目的遺伝子をコードするcDNA又はそのセンス鎖もしくはアンチセンス鎖、あるいはそれらの断片をプローブとして固定化する。このとき市販のアレイ機(例えば、SPBIO2000(日立ソフトエンジニアリング社製)、GMS417 Arrayer(寶酒造)など)を用いて固定化を実施してもよい。一方、植物体を液体窒素で凍結、粉砕し、上記の既知の手法によりpoly(A)+RNAを得たのち、poly(A)+RNAから逆転写反応、(例えば32P-dNTPか又は、Cy3-dUTPもしくはCy5-dUTP(アマシャムファルマシアバイオテク社製)による)ラベルの核酸取込みを経て得られたラベル化cDNAを得る。アレイ上の固定化プローブとラベル化cDNAとのハイブリダイゼーションを行い、Myb29を含む目的の遺伝子を検出、定量する(例えば、DNAマイクロアレイと最新PCR法(2000年)村松・那波監修、秀潤社)。
【0054】
さらに、DNAチップ法では、例えば約20μm×20μmの正方形の基板上に、Myb29のゲノムDNAによってコードされるmRNAから公知の手法で作製されたcDNAの断片をプローブとして固定化し、サンプルから上記と同様に作製されたラベル化cDNAとチップ上のプローブとのハイブリダイゼーションを行うことによって、Myb29遺伝子を検出、定量する(例えば、DNAマイクロアレイと最新PCR法(2000年)村松・那波監修、秀潤社)。
【0055】
上記の方法で使用されるプローブは、以下のようにして合成できる。Myb29の遺伝子配列は、NCBI、GenBank等のデータバンクにアクセスすることによって入手可能である。例えば、シロイナズナのMyb29のヌクレオチド配列は、GenBankに登録番号AF062872やNM_120851として登録されている。あるいは、以下の実施例に詳細に記載されるように、本願発明者らが単離し配列決定したMyb29遺伝子配列(図3)(配列番号2)を利用することもできる。また、ケールのMyb29のヌクレオチド配列は、本願発明者らが単離し配列決定したMyb29遺伝子配列(図6)(配列番号12)を利用することができる。これらの配列を基に、プライマーを設計することができる。なお、プライマーについては、BLASTやFASTAなどを利用したホモロジー検索によって、Myb29遺伝子に対して特異的であることを確認することが可能であり、特異的なプライマーを設計することができる。Myb29をコードするcDNAは、植物体またはその組織から全RNAを得て、これを鋳型とし、上記のように設計したMyb29特異的なプライマー(例えば、約10ヌクレオチド〜約100ヌクレオチド、好ましくは約15〜約50ヌクレオチド、さらに好ましくは約17〜約30ヌクレオチド)を用いてRT-PCRを行った後、cDNAを抽出、回収し、適当なベクターにクローニングして増幅することによって得ることができる。必要ならば、さらに5’RACE及び3’RACEを行い、cDNAの5’及び3’欠失部分を回収してもよい。決定された配列に基づいて全翻訳領域を含むプラスミドを作製し、これを鋳型として、ベクター上の特有配列に基づくプライマーを用いてPCRを行い、PCR産物をプローブとすることができる。
【0056】
プローブは、cDNA又はそのセンス鎖もしくはアンチセンス鎖の全長であってもよいし、あるいはその部分長であってもよいし、あるいは5’もしくは3’非翻訳領域のみであってもよい。DNAチップでは、約10〜約50ヌクレオチド長、好ましくは約15〜約30ヌクレオチド長、より好ましくは約20〜約25ヌクレオチド長のプローブが使用されるが、これらに限定されない。また、DNAマイクロアレイやノザンハイブリダイゼーションでは、少なくとも約10ヌクレオチド長以上から全長、好ましくは約30ヌクレオチド長以上から全長、より好ましくは約50ヌクレオチド長以上から全長である。一般に、プローブが長いほどハイブリダイゼーション効率がよくなり、感度は上がる。逆に、プローブが短いほど感度は下がるが、特異性が上がる。目的遺伝子が遺伝子ファミリーを形成しており、それらの発現状態を区別して検出するときなどは、短いプローブを選択する。固相上のプローブは、通常0.1μg〜0.5μgの溶液を用いてスポットする。
【0057】
プローブあるいはサンプルcDNA上のラベルは、アイソトープ(例えば32P、33P)又は蛍光(フルオレサミン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、FITC、Cy3、Cy5)のいずれでもよい。
【0058】
ハイブリダイゼーション条件は、中程度又は高ストリンジェントな条件、好ましくは高ストリンジェントな条件、例えば、2〜4×SSC、0.1%SDS溶液、65℃、一晩の条件である。ストリンジェントな条件とは、上記サンプルcDNAと固相化プローブとのより特異的結合を可能とする条件である。一般に、塩濃度、有機溶媒(例えば、ホルムアミド)、温度条件に応じて低、中、高程度のストリンジェンシーが決まる。特に、塩濃度を減じるか、有機溶媒濃度を増加させるか、またはハイブリダイゼーション温度を上昇させるかによってストリンジェンシー(stringency)を増加させることができる。例えば、塩濃度は、塩化ナトリウム約500 mM以下およびクエン酸三ナトリウム約50 mM以下、好ましくは塩化ナトリウム約250 mM以下およびクエン酸三ナトリウム約25 mM以下である。有機溶媒濃度は、ホルムアミド約35%以上、好ましくは約50%以上である。温度は、約30℃以上、好ましくは約37℃以上、より好ましくは約42℃以上である。他の条件としては、ハイブリダイゼーション時間、洗浄剤(例えば、SDS)の濃度、およびキャリアーDNAの存否等であり、これらの条件を組み合わせることによって、様々なストリンジェンシーを設定することができる。洗浄のためのストリンジェントな温度条件は、約25℃以上、好ましくは約42℃以上、より好ましくは約68℃以上である。また、好ましい洗浄条件は、0.1〜1×SSC、0.1〜0.2%SDS溶液、約1〜10分の条件である。
【0059】
検出は、マイクロアレイ用の検出器、例えばScanArray 4000, 5000(General Scanning 社製、USA)、GMS418 Array Scanner(寶酒造社製)、Gene Tip Scanner(日本レーザ電子社製)などを使用することができる。定量に際しては、一定量の適当なDNA又はRNA(例えばλpolyA+RNA(タカラバイオ製)からのラベル化cDNA、Lucidea Universal Score Card(アマシャムバイオサイエンス社製)など)、あるいは生体内で恒常的に発現している遺伝子、例えばアクチン遺伝子などをコントロールとし、バンド濃度を測定し、サンプル対コントロール比を求めることによって、サンプル中の目的の遺伝子の発現レベルを相対値として定量することができる。
【0060】
植物由来の遺伝子サンプル中のMyb29遺伝子の発現量を定量する別の方法として、内部標準物質を用いたRT-PCR法も使用できる(例えば、PCR法最前線(1996年)関谷、藤永編、共立出版)。使用する内部標準としては細胞骨格の構成成分であるβアクチンなどの組織によって発現量に差のないと考えられるハウスキーピング遺伝子がよく用いられる。この方法では標的mRNA量が内部標準試料に対して多いか少ないかといった相対的な結果しか得られないが、mRNAの抽出効率やcDNAの合成効率を考慮しなくてもよいという利点があるため、広く用いられている。PCRによる増幅産物は、ある範囲内では指数関数的に増加するが、それを超えると頭打ちの状態になる。そのため、RT-PCRにおける発現遺伝子の定量は、増幅産物が指数関数的に増加する範囲で行わなくてはならない。また、PCRを酵素化学的に分析し、特に標準試料を用意せずに定量的PCRを行う、カイネティクス分析法も行われている。PCR反応は、反応がプラトーに達する前には指数関数的に生成物の量が増加する。そこで、PCRのサイクル数を横軸に、反応生成物量を対数の縦軸にプロットすると、生成物量が直線的に増加する時期があるが、この直線を延長し、y軸と交差する点を求めれば、理論的には初期鋳型量を算出することができる(バイオ実験イラストレイティット3「本当に増えるPCR」(1998年)中山広樹著、秀潤社)。実際には、一つのサンプルについてのPCR反応中に、数サイクルごとに反応液をサンプリングして、PCR産物の量を定量し、グラフにプロットしていく。そうして得られたグラフの指数増加期のポイントに対して回帰分析を行い、y切片を求める。
【0061】
本発明ではまた、この原理を応用し、サンプリングせずにPCR反応中にリアルタイムでこの回帰分析を行うことのできる、リアルタイム定量PCRを使用することもできる。PCR生成物が特異的に蛍光標識される反応系で、蛍光強度を検出する装置の備わった温度サイクラー装置によりPCR反応を行うと、反応中の生成物の量をサンプリングの必要なくリアルタイムでモニターでき、その結果をコンピュータで回帰分析することができる。PCR生成物を標識する方法としては、蛍光標識したプローブを用いる方法と、2本鎖DNAに特異的に結合する試薬を用いる方法とがある。前者では、2種類の蛍光物質で標識し蛍光をクエンチング作用で抑えてあるプローブを、鋳型の二つのプライマーと相補的な配列の間にアニールさせる方法がよく知られている。プローブは、PCR反応が行われるとTaqポリメラーゼのもつ5’−3’エキソヌクレアーゼ活性により分解され、蛍光を発するようになる。その蛍光量は、PCR生成物の量を反映する。後者では、SYBR greenなどが用いられる。PCR反応物が検出限界に到達するときのサイクル数(CT)と初期鋳型量とは逆相関の関係にあることから、リアルタイム測定法ではCTを測定することによって初期鋳型量を定量している。数段階の既知量の鋳型を用いてCTを測定し検量線を作製すれば、未知試料の初期鋳型量の絶対値を算出することができる。
【0062】
RT-PCR(逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応)で使用する逆転写酵素は、例えば、M-MLV RTase、EXScript RTase(タカラバイオ社製)、AMV Reverse Transcriptase(Life Science社製)、Super Script II RT (GIBCO BRL社製)などを使用することができる。
【0063】
PCR条件は、例えば、DNAの変性を94〜95℃で5秒〜5分間、プライマーのアニーリングを50〜70℃で10秒〜1分間、伸長反応を72℃で30秒〜3分間行い、これを1サイクルとして20〜40サイクルほど行い、最後に72℃で30秒〜10分間の伸長反応を行うことができる。
【0064】
プライマーは、鋳型としてのMyb29遺伝子のセンスまたはアンチセンス鎖に相補的な配列である。プライマーのサイズは、通常、約15〜約30ヌクレオチド長、好ましくは約17〜約25ヌクレオチド長である。プライマーの例は、特に限定されないが、上記のようにMyb29遺伝子に対して特異性が確認されたものを用いるのが好ましい。
【0065】
さらに、本発明の方法は、上記Myb29遺伝子の発現量を測定することに代えて、または加えて、Myb29の量をレポーターアッセイを用いて測定することによって行うことができる。
【0066】
レポーターアッセイでは、発現制御領域の下流に容易に検出可能なレポータータンパク質をコードする遺伝子を連結し、このレポータータンパク質の発現強度から、発現制御領域により指令される遺伝子の発現量を間接的に測定することが可能である。本発明においては、Myb29遺伝子発現制御領域をコードするDNAの下流にレポーター遺伝子を機能的に連結してDNA構築物を作製する。DNA構築物は、レポーター遺伝子の発現をMyb29遺伝子とほぼ同様に制御することができるベクター、例えばプラスミド(「Myb29遺伝子発現レポータープラスミド」と称する)である。このようなレポーター遺伝子としては、例えば、ホタルルシフェラーゼ(Luc)、β−ガラクトシダーゼ(lacZ)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、アルカリホスファターゼ(AP)、ベータグルクロニダーゼ(GUS)およびグリーン蛍光タンパク質(GFP)を含む。このレポーター遺伝子は、導入された細胞においてMyb29遺伝子発現制御領域の制御下にて発現される。上記DNA構築物を、植物細胞に導入して、その後この植物細胞におけるレポーター遺伝子の活性または発現量を測定することによって、Myb29遺伝子の発現量を推定することができる。例えば、ホタルルシフェラーゼを用いた場合、ルシフェラーゼがルシフェリンとATPから酸化ルシフェリンとAMPを作る反応を触媒する際に発する波長560 nmの光をルミノメーターを用いて検出することによって、ルシフェラーゼの活性を測定できる。本発明では、上記遺伝子導入した細胞に緩衝液(100 mM Tris-酢酸(pH 7.8), 10 mM酢酸マグネシウム, 1 mM EDTA, 1 % Triton X-100, 1 mM DTT)を加え、遠心(4℃、15000 rpm, 10分間)して、上清を得る。調製した細胞抽出液10〜35μlに275μlの基質液(66μM ルシフェリン、2 mM ATPを含む上記バッファー)を加えて、ルミノメーター(ベルトールドテクノロジー社製等)を用いて測定する(村松正實・山本雅「新遺伝子工学ハンドブック」(2003)、羊土社)。また、GFPを用いた場合には、特定の励起光を上記遺伝子導入した細胞に照射し、その際に観察される蛍光強度を蛍光光度計を用いて測定することによって解析することが可能である。
【0067】
目的の植物体は、上記の方法を用いてMyb29が過剰発現している植物体をスクリーニングすることによって、メチルスルフィニル基系化合物の蓄積、および/もしくはハイドロキシ基系化合物の蓄積が増大している、並びに/または、インドール系化合物の蓄積が減少している植物を選択することができる。
【0068】
(Myb29遺伝子過剰発現植物体)
本発明はさらに、Myb29遺伝子が過剰発現された、それによりメチルスルフィニル基系化合物の蓄積、および/もしくはハイドロキシ基系化合物の蓄積が増大している、並びに/または、インドール系化合物の蓄積が減少していることを特徴とする植物体を提供する。
【0069】
植物体は、好ましくはアラビドプシス属サリアナ種またはブラシカ属オレラセア種に属するものであり、アラビドプシス属サリアナ種に属する植物体には、例えばシロイヌナズナが含まれ、ブラシカ属オレラセア種に属する植物体には、例えばケール、キャベツ、カリフラワー、ブロッコリー、コールラビなどが含まれる。
【0070】
本発明の植物体は、上記の方法によってスクリーニングされ取得されたものを含む。
あるいは、本発明の植物体は、植物細胞または組織において過剰発現するようにMyb29遺伝子を導入し、植物体を再生することを含む方法によっても作出可能である。この方法には、上記の方法によって目的の植物体をスクリーニングすることをさらに含むことができる。
【0071】
本発明によると、Myb29遺伝子を過剰発現させることによって、アリファティック系GSLの蓄積量が増大している植物体を得ることが可能である。具体的には以下の実施例にて具体的に説明されるように、上記で得られたMyb29遺伝子のcDNAが組み込まれたベクター、例えば、pBI系ベクター、pUC系ベクター、バイナリベクター、Tiプラスミドベクターなど、好ましくは、バイナリベクター、を用いて大腸菌-アグロバクテリウム法などの従来技術に従って作製することができる。ベクターにMyb29遺伝子を組み込むときには、T-DNA領域断片の右側ボーダー(RB)と左側ボーダー(LB)の間に該遺伝子を組み込むとよい。また、ベクターには、プロモーターなどの制御配列に加えて、選択マーカー、例えばハイグロマイシン耐性遺伝子などの薬剤耐性遺伝子、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼII、ジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子などを含むことができる(松橋通生ら監訳、ワトソン・組換えDNAの分子生物学第2版1994年、丸善;モデル植物の実験プロトコール改訂3版(2005年)島本・岡田・田畑監修、秀潤社)。
【0072】
形質転換は、例えば、植物体の種子を滅菌し、MS培地上で25℃にて、24時間培養し、発芽した芽生えを蓋付容器内に入れた新たなMS培地に植え替え、葉を採取し、その葉片に形質転換アグロバクテリウム培養液を加え、約1分たったら、培養液を除き、新たなMS培地で葉片を培養することを含む。その後、カルベニシリンでアグロバクテリウムを殺した後、MS培地でさらに培養する。この操作によって、カルスより植物体を得ることができる。(例えば、岩淵雅樹・志村令郎(編)「ラボマニュアル 植物遺伝子の機能解析」(1992)丸善発行)。
【0073】
遺伝子導入の方法については、上記のアグロバクテリウムを用いる代わりに、PEG(ポリエチレングリコール)法、エレクトロポレーション法、パーティクルガン法などを用いて直接的に遺伝子導入を行うことも可能である。
【0074】
上記植物体において、上記の方法を用いて、Myb29遺伝子が過剰発現されていることを指標にして、所望の植物体をスクリーニングすることができる。スクリーニングを行う時期は、カルス、再生された植物体、およびその植物体より得られた種子など、いずれの段階であっても可能である。
【実施例】
【0075】
以下に、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されないものとする。
<実施例1>シロイヌナズナMyb29遺伝子(AtMyb29)過剰発現株におけるGSL類の蓄積
(GSL生合成酵素遺伝子群を制御する転写因子の予測)
硫黄栄養欠乏条件下のシロイヌナズナのメタボロームおよびトランスクリプトームの経時変化を、それぞれフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析およびDNAマイクロアレイを用いて解析した。両データをひとつの行列に統合し、多変量解析のひとつである一括学習自己組織化マッピング法によって解析して、共蓄積・共発現している代謝物と遺伝子を調べたところ、GSL類すなわち3−メチルスルフィニルプロピルGSL:3MSP(3MSOP)、4−メチルチオブチルGSL:4MTB、7−メチルスルフィニルヘプチルGSL:7MSH(7MSOH)、8−メチルスルフィニルオクチルGSL:8MSO(8MSOO)、I3M、4−メトキシ−インドリル−3−メチルGSL:4MOI3Mが共蓄積しており、またGSL生合成酵素遺伝子群(MAM-1, MAM-L, CYP79F1, CYP79F2, CYP79B2, CYP79B3, CYP83A1, CYP83B1, SUR1, UGT74B1, AtSOT16, AtSOT17, AtSOT18)が共発現していた(Hiraiら、 J Biol Chem. 280:25590-25595 (2005))。この結果は、これらの遺伝子群を同調的に制御する転写制御因子が存在することを示唆した。そこで、これらの生合成酵素遺伝子群と共発現していたAtMyb29遺伝子(At5g07690)が当該転写制御因子をコードしていると予測した。さらに、Affymetrix社のシロイヌナズナDNAマイクロアレイATH1によるトランスクリプトームデータが登録されているAtGenExpress(http://web.uni-frankfurt.de/fb15/botanik/mcb/AFGN/atgenex.htm)のデータを利用したシロイヌナズナ共発現遺伝子探索ツールATTED-II(http://www.atted.bio.titech.ac.jp/)を用いてAtMyb29が共発現する遺伝子を調べたところ、上記GSL生合成酵素遺伝子群のうちメチオニンを前駆体とするGSL(アリファティック系GSL)の生合成にかかわる遺伝子(MAM-1, CYP79F1, CYP83A1, SUR1, AtSOT17, AtSOT18)が共発現していることがわかった。ATTED-IIではさまざまな実験条件における1388のアレイデータを利用して共発現関係(任意の2つの遺伝子間の相関係数)を計算していることから、硫黄欠乏という特定の条件下ではGSL生合成にかかわる既知の酵素遺伝子すべてが同調的に制御されているのに対し、さまざまな実験条件下で常にAtMyb29が同調的に発現するのはアリファティック系GSL生合成にかかわる酵素遺伝子のみであるということが示唆された。このことから、AtMyb29はアリファティック系GSLの生合成酵素遺伝子群を正に制御する転写因子であると予測し、PMG2と命名した。
【0076】
(PMG2 遺伝子 (AtMyb29) 過剰発現シロイヌナズナの作出)
AtMyb29cds過剰発現体作出用バイナリーベクターの構築:
AtMyb29cdsを過剰発現させた形質転換シロイヌナズナ作出用バイナリーベクターpGWB2 [35S: AtMyb29cds:NOSter] の構築は、Gateway system (Invitrogen, Carlsbad, CA, U.S.A.) を利用して行った。基本コンストラクトのバイナリーベクターpGWB2(島根大学の中川強博士より分譲、配列番号1)は、図2に示す。
【0077】
エントリークローンの作製は、pENTR Directional TOPO Cloning Kits (Invitrogen) を用い、添付のマニュアルに従って行った。シロイヌナズナCol-0のロゼット葉からRNeasy Plant Mini kit (QIAGEN) を用いて全RNAを抽出した。この全RNAよりSuperScript III First-Strand Synthesis System(Invitrogen)を用いて調製した一本鎖cDNAを鋳型とし、KOD-plus- (Toyobo, Tokyo, Japan) をDNAポリメラーゼとして用いて、AtMyb29遺伝子の開始コドンから終止コドンまでの領域(コード配列: cds) (AtMyb29cds, 1011bp) (図3)(配列番号2)(そのアミノ酸配列は配列番号3に示す)をPCRにより増幅した。なお、用いたプライマーは、pENTR Directional TOPO Cloning Kitsのマニュアルに指定された通りに設計した。すなわち、順向プライマーについては5’末端にCACC配列を付加した。また、逆向プライマーについては5’末端にGTGG配列がないことを確認した。用いたプライマーの配列は以下の通りである。
AtMyb29cds順向プライマー: 5’-CACCATGTCAAGAAAGCCATGTTG-3’(配列番号4)
AtMyb29cds逆向プライマー: 5’-TCATATGAAGTTCTTGTCGT-3’(配列番号5)
【0078】
PCR産物をアガロースゲル電気泳動に供試し、予想される長さの増幅断片を確認し、ゲル抽出した後、エントリーベクターpENTR/D-TOPOへ導入した。このプラスミドを大腸菌DH5αに形質転換した後、50 mg l-1カナマイシンを含むLB寒天培地にて形質転換クローンを選抜した。選抜後のクローンよりプラスミドの少量調製を行い、シークエンス解析により、AtMyb29cdsがエントリーベクターに導入できたことを確認した。
【0079】
pGWB2へのAtMyb29cds領域の組換えは、Gateway LR Clonase Enzyme Mix (Invitrogen, Carlsbad, CA, U.S.A.) を用いて、添付のマニュアルに従って行った。このプラスミドを大腸菌DH5αに形質転換した後、50 mg l-1カナマイシンおよび50 mg l-1ハイグロマイシンを含むLB寒天培地にて形質転換クローンを選抜した。選抜後のクローンよりプラスミドの少量調製を行い、シークエンス解析によりAtMyb29cds過剰発現体作出用バイナリーベクターが構築できたことを確認した。
【0080】
Agrobacterium tumefaciens GV3101 の形質転換は、凍結融解法 (Anら、1988, Binary vectors. In Plant Molecular Biology Manual. Edited by Gelvin, S.B. and Shilperoort, R.A. pp. 1-19. Kluwer Academic Publishers, Dordrecht.) により行った。構築したバイナリーベクター (pGWB2[35S: AtMyb29cds:NOSter]) 1μg (10μl) を、マイクロチューブ内のアグロバクテリウムコンピテントセルに加えた。マイクロチューブの蓋をして、液体窒素に1分間浸漬した後、37℃のウォーターバス中で5分間インキュベートした。その後、1 mlのLB液体培地に懸濁して、28℃、暗所下で振盪培養を行った。培養開始約2時間後に50 mg l-1 カナマイシンおよび50 mg l-1ハイグロマイシンを含むLB寒天培地に移し、28℃、暗所下で2日間培養し、形質転換クローンを選抜した。選抜後のクローンに対して、コロニーPCR法により、バイナリーベクター導入の有無を確認した。なお、コロニーPCRに用いたプライマーは以下の通りである。
attB1プライマー: 5’-ACAAGTTTGTACAAAAAAGC-3’(配列番号6)
attB2プライマー: 5’-ACCACTTTGTACAAGAAAGC-3’(配列番号7)
【0081】
AtMyb29過剰発現シロイヌナズナの作出:
上記で作製した組換えA. tumefaciensをFloral dip 法(Clough and Bent, 1998, Plant J. 16:735-743)によってシロイヌナズナに感染させ、AtMyb29cds過剰発現シロイヌナズナを作出した。
【0082】
(植物体の育成)
上記の過剰発現体と、対照となる野生型シロイヌナズナ(Col-0)を土(プロミクス:バーミキュライト=2:1を1000倍希釈ハイポネックス(チッソ:リン酸:カリ=6:10:5、(株)ハイポネックスジャパン)で湿らせ、「花と野菜の化成肥料」(チッソ12%/リン酸12%/カリ12%、株式会社東商)を加えたもの)に植えて、22℃、16時間明期/8時間暗期の光条件で栽培した。
【0083】
(種子のGSL分析)
上記で栽培した野生型およびAtMyb29遺伝子過剰発現株の種子をシードスプーン(Bio Medical Science Inc., Japan)で200粒を測りとった。この200粒あたり100 μL の抽出液(MeCN : H2O = 4:1、内部標準として0.02 mMシニグリン(2-propenylGSL)を含む)を加え、ミキサーミルMM200 (Retsch GmbH, Germany)を用いて4℃で破砕した。20,000gで10分間遠心した上清50 μLを蒸発乾固した後、200μLの水に溶解した。GSL分析は、Keurentjesら(Nature Genetics, 38:842-849)にしたがってLC-MSを用いて行った。装置はWaters Acquity UPLCTMsystem (Waters Corporation, USA)にZQMS (Micromass)を接続したものを用いた。UPLC部での分離はACQUITY UPLC HSS T3 カラム(φ2.1mm×50mm, Waters)上で30℃、流速0.38 ml/minにて行った。移動相には溶媒A(0.1% ギ酸/水)と溶媒B(0.1% ギ酸/メタノール)を用いてグラジエント溶出(0-0.1分:100% 溶媒A、2分:8% 溶媒B、3分:20% 溶媒B、5.5分:100% 溶媒B、6.5分:100% 溶媒B)を行った。質量分析部の分析条件は、ESIイオン化(ネガティブイオンモード)、キャピラリースプレー4.0kV、コーン電圧40V、ソース温度150℃、脱溶媒温度300℃、脱溶媒ガス(窒素ガス)流量600 L/hとし、GSLに特異的な[M-H]-イオンのピークをQ mass spectrometerで検出した。4MSBは、質量分析による質量/電荷比を標準化合物と比較して同定した。他のGSL分子種については、溶出時間、質量/電荷比、ミロシナーゼ酵素(Sigma-Aldrich、USA)による特異的な分解から推定した。GSL含量をシニグリン当量に換算して計算した。
【0084】
(GSLの分析結果)
上記分析の結果を図4に示す。野生型(WT)の各種GSLの6回の分析結果の平均含量を1として、AtMyb29過剰発現株各7ライン(AtMyb29OE1-7)のGSL含量を比較した。AtMyb29cds過剰発現株Myb29OE1-7の種子では、野生型に比べ顕著にGSL含量が増加していることがわかった。
【0085】
まとめると、次のことがいえる。
・上記のマイクロアレイデータから、GSL生合成系遺伝子と共発現する転写因子としてのAtMyb29の高発現形質転換体を作製した。
・形質転換体の種子において、アリファティック系でメチルスルフィニル基をもつGSL、ハイドロキシ基をもつGSLの含量が増大し、インドール系GSL含量は減少する傾向が認められた。
・これらのことから、AtMyb29は特定のGSL類同族体の合成に関与する転写因子であることがわかった。
・特定の転写因子の発現が増加・減少した変異体では、ターゲット遺伝子の発現、および形質が変化することが知られている(Plant Physiol. 135, p668-676 (2004))。
・系統間での転写因子発現量の差異により、形質が変化することが知られている(Genes Genet Syst. 80, p185-197 (2005))。
・以上のことから、系統選抜で得られる植物体間、変異株取得前後の植物体間、あるいは交配選抜で得られる植物体間で、Myb29転写因子の発現量をモニターすることにより所望の形質を評価、確認することが可能である。
・植物体のMyb29遺伝子の発現をモニターすることにより、GSL類同族体の合成量を評価、確認できること、あるいは所望するGSL類同族体の含有量および組成を持つ植物体を選抜することができる。
・ケールなどのブラシカ属作物の系統または品種間比較、交雑育種における個体間比較、突然変異育種における個体間比較において、Myb29遺伝子の高発現を指標とすることにより、アリファティック系でメチルスルフィニル基をもつGSL、ハイドロキシ基をもつGSL含量が高い、あるいはインドール系GSL含量の低い植物体を選抜することができる。
・アラビドプシス各種エコタイプの系統間比較において、Myb29遺伝子の高発現を指標とすることにより、アリファティック系でメチルスルフィニル基をもつGSL、ハイドロキシ基をもつGSL含量が高い、あるいはインドール系GSL含量の低い系統を選抜することができる。
【0086】
<実施例2>ケールMyb29(BoMyb29)遺伝子過剰発現株におけるGSL類の蓄積
(ケール完全長cDNAライブラリーの作成)
ケール(Brassica oleracea var. acephara)の花、鞘、本葉および幼植物体を材料として、完全長cDNAライブラリーを作成した。cDNAライブラリーは、Genome Res. (2000) 10:pp1617-1630の方法により作成した。取得したcDNAライブラリーのサイズは、1.3×106 pfuであった。得られたDNAライブラリー約6万クローンのインサートの5’、3’末端側の塩基配列を解読し、得られた塩基配列データをアノテーションしデータベース化した。
【0087】
(ライブラリーからのケールのAtMyb29ホモログ(BoMyb29)の抽出)
上記ライブラリーの5’と3’末端側の塩基配列をTIGRアラビトプシスNon-redundant cds データベース(ATH1.nr.cds、27919Seqence)に対してblast検索をかけた。その検索結果に基づき上記AtMyb29に塩基配列レベルで高い相同性を示すケール完全長cDNAクローンを上記データベースより抽出した。本クローンをcDNAライブラリーから単離し、インサート遺伝子を含むプラスミドを抽出し、インサート領域の塩基配列を決定した(図5)(配列番号8)。その結果、配列番号8から推測されたアミノ酸配列の長さがAtMyb29とは大きく異なることが明らかとなった。また塩基配列レベルで配列番号8とAtMyb29の間の相同性を比較したところ断続的に相同性配列が高い部分と低い部分があることを見出した。以上の結果から、配列番号8はイントロンが存在する配列であると予想し、RACE法により配列番号8に該当する遺伝子を改めて単離することとした。
【0088】
ケールからRNeasy Plant Mini Kit (QIAGEN)を用いて抽出したRNAと逆転写酵素SuperScript III First-Strand Synthesis System (Invitrogen)および3’-Full RACE Core Set (TaKaRa)に付属のOligo dT-3sites Adaptor Primerを用いてcDNAの合成を行った。配列番号8を参考に設計した3’RACE法に必要なプライマーセット(配列番号9、10および11)と3’-Full RACE Core Set (TaKaRa)を用いて、3’RACE法により目的遺伝子の単離を行った。3’RACE法は前述した3’-Full RACE Core Set (TaKaRa)の取扱説明書に準じて行った。
3’RACE用5’末端側特異的プライマー: 5’- CACCGGTAGAGAAGTAGCTCGCTA -3’(配列番号9)
nested-PCR順向プライマー: 5’-CACCGCTCGCTATGTCTTAGATCTTTCA -3’(配列番号10)
nested-PCR逆向プライマー: 5’-ACTCGCATCTACCGCAAATC -3’(配列番号11)
なお、nested-PCR順向プライマーには5’側にGatewayへの導入に必要なCACC配列を付加した。
【0089】
3’RACE法により増幅・単離したDNA断片は1415 bpであった(図6)(配列番号12) (配列番号12から推測されるアミノ酸配列は(図7)(配列番号13)に示す)。配列番号12はAtMyb29の遺伝子配列(配列番号2)に対して78.5%の相同性を示した。配列番号13はAtMyb29のアミノ酸配列(配列番号3)に対して71.4%の相同性を示した。また、配列番号12は非翻訳領域を含む配列であった。この配列をケールのAtMyb29のホモログ遺伝子候補とした。
【0090】
(シロイヌナズナでのBoMyb29遺伝子過剰発現株の作成)
pENTR/D-TOPO (Invitrogen)にBoMyb29を導入し、左記ベクターにBoMyb29が導入されたことをシーケンスにより確認した。BoMyb29をシロイヌナズナで過剰発現させる形質転換体の作出の手順は上記<実施例1>の(PMG2遺伝子(AtMyb29)過剰発現シロイヌズナの作出)および(植物体の育成)にて記載した手順と同様に行った。
【0091】
(BoMyb29形質転換体T2種子のGSL成分分析)
形質転換次世代T1個体からT2種子をバルクで採取し、それら種子を用いてグルコシノレート(GSL)成分分析を行った。種子のGSL成分分析は上記<実施例1>の(種子のGSL分析)に従い行った。
【0092】
(GSLの分析結果)
GSL成分分析の結果、BoMyb29をシロイヌナズナで過剰発現させた形質転換体のT2種子でメチオニン由来のGSL成分である4MSB、5MSP、6MSHグルコシノレートが野生型と比較して顕著に増加していることが確認された(図8)。なお、ここでWT-1とWT-2とはそれぞれ別の種子を示す。この結果は、<実施例1>にてアラビドプシスAtMyb29を過剰発現した形質転換体で見られたGSL成分の増加と同様である。以上の結果から、シロイヌナズナにおいて過剰発現されたBoMyb29遺伝子はAtMyb29と同等の機能を有する転写因子をコードしていることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、アリファティック系GSL含量が高く、および/またはインドール系GSL含量が低い植物体のハイスループットなスクリーニングを可能とし、ならびにそのような植物体を製造できるために産業上有用である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】図1は、様々なGSLの合成経路を示す。GSLは、アリファティック系GSL、インドール系GSL、およびアロマティック系GSLに大別され、それぞれ、メチオニン、トリプトファン、フェニルアラニンを前駆体として合成される。
【図2A−1】図2A−1は、バイナリーベクターpGWB2(島根大学の中川強博士より分譲)の配列を示す。
【図2A−2】図2A−2は、バイナリーベクターpGWB2(島根大学の中川強博士より分譲)の配列を示す(図2A−1の続き)。
【図2A−3】図2A−3は、バイナリーベクターpGWB2(島根大学の中川強博士より分譲)の配列を示す(図2A−2の続き)。
【図2A−4】図2A−4は、バイナリーベクターpGWB2(島根大学の中川強博士より分譲)の配列を示す(図2A−3の続き)。
【図2A−5】図2A−5は、バイナリーベクターpGWB2(島根大学の中川強博士より分譲)の配列を示す(図2A−4の続き)。
【図2B】図2Bは、バイナリーベクターpGWB2の機能性エレメントの開始部位および終結部位を示す。
【図3】図3は、AtMyb29遺伝子のコーディング領域の塩基配列を示す。
【図4】図4は、LC-MSを用いた、野生型(WT)とAtMyb29過剰発現株各7ライン(AtMyb29OE1-7)のGSL含量の比較結果を示す。野生型(WT)の各種GSLの6回の分析結果の平均含量を1として示す。
【図5−1】図5−1はケールの完全長cDNAライブラリーから取得したケールのAtMyb29ホモログ(BoMyb29)の塩基配列を示す。
【図5−2】図5−2はケールの完全長cDNAライブラリーから取得したケールのAtMyb29ホモログ(BoMyb29)の塩基配列を示す(図5−1の続き)。
【図6】図6は3’RACE法により単離し、シロイヌナズナに形質転換したケールのAtMyb29ホモログ(BoMyb29)の塩基配列を示す。
【図7】図7は図6より推測されるアミノ酸配列を示す。
【図8】図8はLC-MSを用いた野生型のバルク種子(WT)とBoMyb29をシロイヌナズナで過剰発現させたT2バルク種子(BoMyb29 OE) のGSL含量の比較結果を示す。
【配列表フリーテキスト】
【0095】
配列番号4〜7,9〜11は、合成オリゴヌクレオチド配列を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Myb29遺伝子の発現量を測定することを含む、植物体間において、含有するグルコシノレート類化合物の同族体別組成比が異なる植物体をスクリーニングする方法。
【請求項2】
前記植物体が、アラビドプシス属サリアナ種またはブラシカ属オレラセア種に属する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記測定が、Myb29遺伝子の発現量が増大していることを指標にする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ブラシカ属オレラセア種に属する植物体が、ケール、キャベツ、カリフラワー、ブロッコリーまたはコールラビを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記同族体が、メチルスルフィニル基系化合物、ハイドロキシ基系化合物、またはインドール系化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記植物体が、グルコシノレート類化合物中、メチルスルフィニル基系化合物の蓄積、および/もしくはハイドロキシ基系化合物の蓄積が増大している、並びに/または、インドール系化合物の蓄積が減少している植物体である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記植物体のスクリーニングが、分類学上同一の属または種の植物体間で行われる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記植物体のスクリーニングが、野生型植物体、系統選抜で得られた植物体、変異した植物体、交配選抜で得られた植物体、あるいは、注目する遺伝形質以外の遺伝的バックグラウンドについては実質的に同一である植物体の植物体間で行われる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
Myb29遺伝子が、DNA、RNA、mRNA、cDNAまたはcRNAの形態で測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記測定が、Myb29遺伝子に特異的なプローブまたはプライマーを用いる、ハイブリダイゼーション法または定量ポリメラーゼ連鎖反応法によるものである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記測定が、レポーターアッセイによるものである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記レポーターアッセイを、Myb29遺伝子発現制御領域を含むMyb29遺伝子発現レポータープラスミドを用いて行う、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
Myb29遺伝子が過剰発現された、それによりメチルスルフィニル基系化合物の蓄積、および/もしくはハイドロキシ基系化合物の蓄積が増大している、並びに/または、インドール系化合物の蓄積が減少していることを特徴とする植物体。
【請求項14】
前記植物体が、アラビドプシス属サリアナ種またはブラシカ属オレラセア種に属する、請求項13に記載の植物体。
【請求項15】
前記ブラシカ属オレラセア種に属する植物体が、ケール、キャベツ、カリフラワー、ブロッコリーまたはコールラビである、請求項13または14に記載の植物体。
【請求項16】
前記植物体が、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法によってスクリーニングされ取得されたものである、請求項13〜15のいずれか1項に記載の植物体。
【請求項17】
植物細胞または組織において過剰発現するようにMyb29遺伝子を導入し、植物体を再生することを含む、メチルスルフィニル基系化合物の蓄積、および/もしくはハイドロキシ基系化合物の蓄積が増大している、並びに/または、インドール系化合物の蓄積が減少していることを特徴とする植物体を作出する方法。
【請求項18】
前記植物体が、アラビドプシス属サリアナ種またはブラシカ属オレラセア種に属する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ブラシカ属オレラセア種に属する植物体が、ケール、キャベツ、カリフラワー、ブロッコリーまたはコールラビである、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記植物体を、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法によってスクリーニングすることをさらに含む、請求項17〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
請求項17〜20のいずれか1項に記載の方法によって得られる、メチルスルフィニル基系化合物の蓄積、および/もしくはハイドロキシ基系化合物の蓄積が増大している、並びに/または、インドール系化合物の蓄積が減少していることを特徴とする植物体。

【図1】
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【図2A−1】
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【図2A−2】
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【図2A−3】
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【図2A−4】
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【図2A−5】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−271961(P2008−271961A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90578(P2008−90578)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【出願人】(000253503)キリンホールディングス株式会社 (247)
【Fターム(参考)】