説明

N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩の製造方法

【課題】 N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩の結晶多形を制御しつつ、工業的に有利なN−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩の製造法を提供することにある。
【解決手段】 N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩結晶を、所定の有機溶剤を用いた晶析工程に付す。これにより、結晶多形を制御した、N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩を製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品の中間体として有用なN−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の製造方法により得られるN−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(1):
【0003】
【化4】

【0004】
は、抗ウィルス剤等の医薬品を製造するための重要な中間化合物である(特許文献1)。
【0005】
従来、N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(1)、或いはN−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミドを得る方法としては、
(i)(2S)−2−N−カルバメート保護アミノ−2−アルキル−エタナール誘導体にシクロプロピルイソニトリルを作用させて、(3S)−3−N−カルバメート保護アミノ−2−アシロキシプロパン酸シクロプロピルアミドに変換した後、2位の水酸基を脱保護し、さらに4N−塩酸/ジオキサンを用いて脱Boc化した後、溶媒を留去して(3S)N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩を合成する方法(特許文献2)、
(ii)L−N−(tert−ブトキシカルボニル)−ノルバリン由来のアルデヒドにHCNを付加させ、次にtert−ブトキシカルボニル基の脱保護とシアノ基の加水分解を行って、3−アミノ−2−ヒドロキシ−ヘキサン酸とし、窒素上をベンジロキシカルボニル保護した後に、縮合剤を用いてシクロプロピルアミンと縮合させ、加水素分解することにより、(2S、3S)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−ヘキサン酸シクロプロピルアミドを合成する方法(特許文献3)、
等が知られている。
【特許文献1】WO02/018639
【特許文献2】WO05/058821
【特許文献3】WO05/035525
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、結晶多形はその物質の物性、例えば、安定性や形態(外観)、更には結晶固体の吸湿性や、結晶の乾燥工程における残留溶媒の残りやすさ、等にも影響を与える場合がある。そのため、物質の結晶多形を制御することは、その物質を工業的に安定的に製造する上で重要な課題である。しかしながら、上記特許文献1〜3には、取得するN−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(1)の結晶の粉末エックス線(Cu−Kα)に関する情報はもとより、結晶多形については何ら記載されていない。
【0007】
本願の目的は、上記課題を鑑み、N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(1)の結晶多形を制御して、工業的に有利なN−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(1)を得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(1)には、少なくとも4種類の結晶多形(結晶A、結晶B、結晶C、及び結晶D)が存在し、それらの結晶多形には結晶固体の吸湿性に違いがあることや、結晶の乾燥工程において、残留溶媒の残りやすさにも違いがあること等を見出した。更には、それら少なくとも4種類の結晶多形を制御する、N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(1)の製造法を見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、下記式(1):
【0010】
【化5】

【0011】
で表されるN−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩結晶を、有機溶剤を用いた晶析工程に付す事により、粉末エックス線(Cu−Kα)回折において
A)6.5°、11.9°、19.5°、23.9°、26.1°、28.0°、及び39.5°、
B)11.5°、21.3°、24.5°、及び27.6°、
C)11.9°、20.0°、21.1°、及び23.9°、
又は
D)10.7°、11.9°、23.9°、及び24.5°
の回折角(2θ±0.1)にピークを有するいずれかの結晶を得ることを特徴とする、N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(1)の製造法に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる方法によれば、結晶多形を有するN−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(1)を工業的に安定的に製造することができる。これにより、目的に応じて、結晶の安定性や吸湿性などの物性を制御したり、取り扱い性を向上させることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本来、「結晶多形」は同一の化合物で結晶構造の異なるものを指すが、本発明においては、水和物や溶媒和物といった「擬多形」と呼ばれるものも広く結晶多形としてその中に含めることとする。また、得られた結晶多形は完全な結晶体ではなく、その一部に非晶質(アモルファス)を含むことがある。その場合、粉末エックス線のピークがブロードになったり、或いは一部のピークの確認が困難であったりする場合があるが、ここでは非晶質を一部含むものも合わせて結晶性固体とし、粉末エックス線の一部のピークの確認が困難であっても、実質上同等なものについては、その結晶性固体に含まれるものとする。またこの結晶性固体を単に結晶と記述することがある。
【0014】
以下、本発明を詳述する。
【0015】
N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(1)の製造法について説明する。
【0016】
本発明にかかる方法で用いられるN−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(1):
【0017】
【化6】

【0018】
は、N−シクロプロピル−(N−保護)アミノ−α−ヒドロキシヘキサン酸アミド(2):
【0019】
【化7】

【0020】
を必要に応じて脱保護して取得しても良いし、オキサゾリンアミド誘導体(3):
【0021】
【化8】

【0022】
のオキサゾリン環を、加水分解、又は加アルコール分解して取得しても良いし、別途公知な方法で合成したものであっても良い。
【0023】
上記一般式(2)における、P及びPは、それぞれ独立して水素原子又はアミノ基の保護基を表すか、又は、一緒になってフタロイル基を表す。P及びPのうちいずれか一方がアミノ基の保護基を表す場合は、他方は水素原子を表すことが好ましい。
【0024】
アミノ基の保護基とは、反応においてアミノ基を保護する基であり、一般に使用しうる基は、プロテクティヴ・グループス・イン・オーガニックシンセシス第2版(PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS 2nd. Ed.)、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(JOHN WILEY&SONS)出版(1991年)に記載されている保護基である。上記一般式(2)において保護基として好ましいものは、例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、tert−ブチルオキシカルボニル基等のカルバメート型保護基、アセチル基、トリフルオロアセチル基、フタロイル基、ベンゾイル基等のアシル基、ベンジル基、ジベンジル基等のアルキル基、トシル基、メシル基等のスルホニル基、トリメチルシリル基等のシリル基が挙げられる。より好ましくは、カルバメート型保護基、又はアシル基であり、さらに好ましくはカルバメート型保護基である。なかでも、tert−ブチルオキシカルボニル基が好適に用いられる。
【0025】
脱保護は、例えば塩酸で処理することにより行うことができる。P,Pが塩酸で脱保護されない保護基の場合は、適宜、保護基の種類に応じて脱保護を行った後、塩酸処理することによりN−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(1)を得ることができる。P、Pがいずれも水素である場合は、塩酸で処理すればよい。
【0026】
上記一般式(3)におけるRは、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、又は置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアラルキル基を表す。
【0027】
上記置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子等のハロゲン原子が挙げられる。置換基の数は、特に限定されないが、普通0〜5個が挙げられ、好ましくは0〜3個が挙げられる。
【0028】
上記一般式(3)において、Rとして好ましいものは、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、ビニル基、アリル基、フェニル基、又はベンジル基が挙げられ、より好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基、クロロメチル基、フェニル基、又はベンジル基が挙げられ、更に好ましくはメチル基、イソプロピル基、又はフェニル基が挙げられる。
【0029】
本工程に用いるN−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(1)の絶対配置は、特に限定されないが、好ましくは(2S,3S)、又は(2R,3R)である。
【0030】
以下に、各結晶多形(結晶A、結晶B、結晶C、及び結晶D)の製造法について説明する。
【0031】
まず、結晶Bの製造法について説明する。
【0032】
結晶Bの製造方法
結晶Bは粉末エックス線(Cu−Kα)回折において、回折角(2θ±0.1)11.5°、21.3°、24.5°、及び27.6°にピークを有している。この結晶(結晶B)の乾燥体は、常温常圧下安定であり、直射日光や高温多湿を避ける等の一般的な配慮のもとでは、長期間保管しても他の結晶性形体に変化することはない。又、結晶の乾燥工程で残留溶媒を容易に除去できる利点がある。
【0033】
結晶Bは、例えば、N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(1)を、水共存下、有機溶剤に溶解、又は懸濁させ、その溶液、又はスラリー溶液から晶析することで得ることができる。
【0034】
N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(1)は、上述した方法で合成すればよい。
【0035】
本晶析方法としては、特に限定されないが、例えば、反応晶析法、冷却晶析法、濃縮晶析法、溶剤置換を用いる晶析法、貧溶剤を混合することによる晶析法、及び/又は塩析法等の一般に用いられる晶析法を、単独又は適宜組み合わせて実施する事ができる。なお、本晶析では必要に応じて種晶を添加することもできる。
【0036】
晶析に用いる有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤や、ケトン系溶剤、ニトリル系溶剤などの、アミド系以外の水と相溶性のある溶剤が挙げられる。
【0037】
アルコール系溶剤としては、特に限定されないが、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール等が挙げられる。
【0038】
ケトン系溶剤としては、特に限定されないが、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。
【0039】
ニトリル系溶剤としては、特に限定されないが、アセトニトリル、プロピオニトリル等が挙げられる。
【0040】
尚、これらの溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0041】
水を共存させる方法としては、予め有機溶剤に水を加えても良いし、N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(1)の溶液、又は懸濁液に水を添加しても良い。また、水と有機溶剤の混合比は特に制限されないが、通常、晶析溶剤の水分含量が0.1%以上であるのが好ましく、更に好ましくは1%以上、より好ましくは3%以上である。
【0042】
有機溶剤の使用量としては、特に制限されないが、N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(1)に対して、下限は通常、0.1倍重量、好ましくは0.5倍重量、より好ましくは1倍重量、さらに好ましくは3倍重量である。上限は、特に制限されないが、好ましくは100倍重量、より好ましくは30倍重量、さらに好ましくは10倍重量である。
【0043】
本晶析において、必要に応じて、補助的な溶剤を使用しても良い。補助的な溶剤とは、例えば、収率、不純物除去性、晶析液の流動性などの内、少なくとも一つを改善する目的で使用されるものである。
【0044】
補助的な溶剤としては、特に制限されないが、炭化水素系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤を挙げることができる。
【0045】
炭化水素系溶剤としては、特に限定されないが、石油エーテル、ペンタン、ネオペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、シクロヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n−ブチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、クメン、1,3,5−メシチレン等が挙げられ、好ましくはトルエン、ヘキサンである。
【0046】
エーテル系溶剤としては、特に限定されないが、t−ブチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等が挙げられる。
【0047】
エステル系溶剤としては、特に限定されないが、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等が挙げられ、好ましくは酢酸エチルである。尚、これらの補助的な溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。補助的な溶剤を使用する場合、あらかじめ有機溶剤と混合して用いてもよいが、必要に応じて、結晶が析出した後で適宜添加しても良い。
【0048】
上記有機溶剤と上記補助的な溶剤の容量比は、上記有機溶剤/補助的な溶剤の比として、30以下が好ましく、より好ましくは10以下である。
【0049】
このようにして得られるN−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(1)の結晶(結晶B)は、遠心分離、加圧分離、減圧濾過等の一般的な固液分離方法を用いて結晶を採取する事ができる。得られた結晶は、更に、必要に応じて、例えば、減圧乾燥(真空乾燥)することにより乾燥結晶として取得することができる。
【0050】
なお、後述するように、攪拌時間を長くしたり、冷却速度を遅くした場合、結晶Aが得られることとなるため、結晶Bを得る場合には、撹拌時間や冷却速度に留意する必要がある。
【0051】
次に結晶Aの製造法について説明する。
【0052】
結晶Aの製造方法
結晶Aは、粉末エックス線(Cu−Kα)回折において、回折角(2θ±0.1)6.5°、11.9°、19.5°、23.9°、26.1°、28.0°及び39.5°にピークを有している。この結晶(結晶A)の乾燥体は、常温常圧下安定であり、直射日光や高温多湿を避ける等の一般的な配慮のもとでは、長期間保管しても他の結晶性形体に変化することはない利点を有する。又、結晶Aは、吸湿性が小さく、更には結晶分離におけるろ過性に優れている。
【0053】
結晶Aは、晶析溶剤として、i)有機溶剤中に水が共存しない系(水非共存系)、ii)有機溶剤中に水が共存する系(水共存系)、いずれを用いても得ることができる。尚、ii)水共存系では、冷却晶析において攪拌時間の延長、或いは冷却速度を遅くすることにより、結晶Aを得ることができる。
【0054】
まず、i)水非共存系で結晶Aを取得する方法について説明する。
【0055】
結晶Aは、例えば、N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(1)を有機溶剤に溶解、又は懸濁させ、その溶液、又はスラリー溶液から晶析することで得ることができる。
【0056】
N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(1)は、上述した方法で合成すればよい。
【0057】
本晶析方法としては、特に限定されないが、例えば、反応晶析法、冷却晶析法、濃縮晶析法、溶剤置換を用いる晶析法、貧溶剤を混合することによる晶析法、及び/又は塩析法等の一般に用いられる晶析法を、単独又は適宜組み合わせて実施する事ができる。なお、本晶析では必要に応じて種晶を添加することもできる。
【0058】
晶析に用いる有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤や、ケトン系溶剤、ニトリル系溶剤などの、アミド系以外の水と相溶性のある溶剤が挙げられる。
【0059】
アルコール系溶剤としては、特に限定されないが、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール等が挙げられる。
【0060】
ケトン系溶剤としては、特に限定されないが、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。
【0061】
ニトリル系溶剤としては、特に限定されないが、アセトニトリル、プロピオニトリル等が挙げられる。
【0062】
尚、これらの溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0063】
有機溶剤の使用量としては、特に制限されないが、N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(1)に対して、下限は通常、0.1倍重量、好ましくは0.5倍重量、より好ましくは1倍重量、さらに好ましくは3倍重量である。上限は、好ましくは100倍重量、より好ましくは30倍重量、さらに好ましくは10倍重量である。
【0064】
本晶析においては、必要に応じて、補助的な溶剤を使用しても良い。補助的な溶剤とは、例えば、収率、不純物除去性、晶析液の流動性などの内、少なくとも一つを改善する目的で使用されるものである。
【0065】
補助的な溶剤としては、特に制限されないが、炭化水素系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤を挙げることができる。
【0066】
炭化水素系溶剤としては、特に限定されないが、石油エーテル、ペンタン、ネオペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、、シクロヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n−ブチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、クメン、1,3,5−メシチレン等が挙げられ、好ましくはトルエン、ヘキサンである。
【0067】
エーテル系溶剤としては、特に限定されないが、t−ブチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等が挙げられる。
【0068】
エステル系溶剤としては、特に限定されないが、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等が挙げられ、好ましくは酢酸エチルである。
【0069】
尚、これらの補助的な溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。補助的な溶剤を使用する場合、あらかじめ有機溶剤と混合して用いてもよいが、必要に応じて、結晶が析出した後で適宜添加しても良い。
【0070】
上記有機溶剤と上記補助的な溶剤の容量比は、上記有機溶剤/補助的な溶剤の比として、30以下が好ましく、より好ましくは10以下である。
【0071】
次にii)水共存系で結晶Aを取得する方法について説明する。
【0072】
結晶Aは、晶析溶剤としてi)で記載した有機溶剤に水を共存させても取得できる。
【0073】
水を共存させる方法としては、予め有機溶剤に水を加えても良いし、N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(1)の溶液、又は懸濁液に水を添加しても良い。また、水と有機溶剤の混合比に特に制限はないが、水分含量10%以下が好ましい。
【0074】
水共存下、結晶Aを製造するには、冷却晶析において、攪拌時間の延長、或いは冷却速度を遅くすることが有効である。
【0075】
攪拌時間に関しては、普通、0.5時間以上、好ましくは、1時間以上、更に好ましくは2時間以上、特に好ましくは4時間以上に設定することが有効である。
【0076】
冷却速度に関しては、ゆっくり冷却することで結晶Aを取得することができる。冷却速度に関して、特に制限されないが、普通、上限は10℃/以下、好ましくは5℃/以下、さらに好ましくは2℃/以下、特に好ましくは1℃/以下に保つことが有効であり、下限は0.1℃/時間以上である。
【0077】
上記のように、攪拌時間を延長するか、或いは冷却速度を遅くすることで、有機溶剤中に水を共存させても結晶Aを取得することができる。
【0078】
このように、i)、或いはii)の方法で得られるN−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(1)の結晶(結晶A)は、遠心分離、加圧分離、減圧濾過等の一般的な固液分離方法を用いて結晶を採取する事ができる。得られた結晶は、更に、必要に応じて、例えば、減圧乾燥(真空乾燥)することにより乾燥結晶として取得することができる。
【0079】
次に結晶Cの製造法について説明する。
【0080】
結晶Cの製造方法
結晶Cは粉末エックス線(Cu−Kα)回折において、回折角(2θ±0.1)11.9°、20.0°、21.1°、及び23.9°にピークを有している。この結晶(結晶C)の乾燥体は、常温常圧下安定であり、直射日光や高温多湿を避ける等の一般的な配慮のもとでは、長期間保管しても他の結晶性形体に変化することはない。また、結晶Cは、結晶粒径が小さい特徴を有する。一般に粒径が小さい結晶は、溶剤への溶解性に優れている為、製造工程における結晶溶解に際し、溶解時間の短縮に繋がり、生産性を向上させることが可能になる。
【0081】
結晶Cは、例えば、N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(1)を、アミド系溶剤に溶解、又は懸濁させ、その溶液、又はスラリー溶液から晶析することで得ることができる。
【0082】
N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(1)は、上述した方法で合成すればよい。
【0083】
本晶析方法としては、特に限定されないが、例えば、反応晶析法、冷却晶析法、濃縮晶析法、溶剤置換を用いる晶析法、貧溶剤を混合することによる晶析法、及び/又は塩析法等の一般に用いられる晶析法を、単独又は適宜組み合わせて実施する事ができる。なお、本晶析では必要に応じて種晶を添加することもできる。
【0084】
晶析に用いるアミド系溶剤としては、特に限定されないが、例えば、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、アセトアミド、ホルムアミド等が挙げられ、好ましくはジメチルアセトアミドが挙げられる。
【0085】
尚、これらアミド系溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。また、アミド系溶剤に水を共存させても良い。水を共存させる場合は、予め水を加えたアミド系溶剤を用いても良いし、N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(1)のアミド系溶剤の溶液、又は懸濁液に水を添加しても良い。また、水とアミド系溶剤の混合比に特に制限はない。
【0086】
アミド系溶剤の使用量としては、特に制限されないが、N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(1)に対して、下限は普通、0.1倍重量、好ましくは0.5倍重量、より好ましくは1倍重量、さらに好ましくは3倍重量である。上限は、特に制限されないが、好ましくは100倍重量、より好ましくは30倍重量、さらに好ましくは10倍重量である。
【0087】
本晶析において、必要に応じて、補助的な溶剤を使用しても良い。補助的な溶剤とは、例えば、収率、不純物除去性、晶析液の流動性などの内、少なくとも一つを改善する目的で使用されるものである。
【0088】
補助的な溶剤としては、特に制限されないが、例えば、炭化水素系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤が挙げられ、好ましくは、炭化水素系溶剤である。
【0089】
炭化水素系溶剤としては、特に限定されないが、石油エーテル、ペンタン、ネオペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、、シクロヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n−ブチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、クメン、1,3,5−メシチレン等が挙げられ、好ましくはトルエン、ヘキサンである。
【0090】
尚、これらの補助的な溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。補助的な溶剤を使用する場合、あらかじめ有機溶剤と混合して用いてもよいが、必要に応じて、結晶が析出した後で適宜添加しても良い。
【0091】
上記アミド系溶剤と上記補助的な溶剤の容量比は、上記アミド系溶剤/補助的な溶剤の比として、30以下が好ましく、より好ましくは10以下である。
【0092】
このようにして得られるN−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(1)の結晶(結晶C)は、遠心分離、加圧分離、減圧濾過等の一般的な固液分離方法を用いて結晶を採取する事ができる。得られた結晶は、更に、必要に応じて、例えば、減圧乾燥(真空乾燥)することにより乾燥結晶として取得することができる。
【0093】
次に結晶Dの製造法について説明する。
【0094】
結晶Dの製造方法
結晶Dは、粉末エックス線(Cu−Kα)回折において、回折角(2θ±0.1)10.7°、11.9°、23.9°、及び24.5°にピークを有している。この結晶(結晶D乾燥体)は、常温常圧下安定であり、直射日光や高温多湿を避ける等の一般的な配慮のもとでは、長期間保管しても他の結晶性形体に変化することはない。また、結晶Dは、結晶粒径が比較的小さい特徴を有する。一般に粒径が小さい結晶は、溶剤への溶解性に優れている為、製造工程における結晶溶解に際し、溶解時間の短縮に繋がり、生産性を向上させることが可能になる。
【0095】
結晶Dは、例えば、N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(1)を、水共存下、ハロゲン系溶剤に溶解、又は懸濁させ、その溶液、又はスラリー溶液から晶析することで得ることができる。
【0096】
N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(1)は、上述した方法で合成すればよい。
【0097】
本晶析方法としては、特に限定されないが、例えば、反応晶析法、冷却晶析法、濃縮晶析法、溶剤置換を用いる晶析法、貧溶剤を混合することによる晶析法、及び/又は塩析法等の一般に用いられる晶析法を、単独又は適宜組み合わせて実施する事ができる。なお、本晶析では必要に応じて種晶を添加することもできる。
【0098】
ハロゲン系溶剤としては、特に限定されないが、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等が挙げられ、好ましくは塩化メチレンである。
【0099】
尚、これらハロゲン系溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0100】
水を共存させるタイミングとしては、予め水を加えたハロゲン系溶剤を用いても良いし、N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(1)のハロゲン系溶剤の溶液に水を添加しても良い。また、水とハロゲン系溶剤の混合比に特に制限はない。
【0101】
ハロゲン系溶剤の使用量としては、特に制限されないが、N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(1)に対して、下限は普通、0.1倍重量、好ましくは0.5倍重量、より好ましくは1倍重量、さらに好ましくは3倍重量である。上限は、特に制限されないが、好ましくは100倍重量、より好ましくは30倍重量、さらに好ましくは10倍重量である。
【0102】
このようにして得られるN−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(1)の結晶(結晶D)は、遠心分離、加圧分離、減圧濾過等の一般的な固液分離方法を用いて結晶を採取する事ができる。得られた結晶は、更に、必要に応じて、例えば、減圧乾燥(真空乾燥)することにより乾燥結晶として取得することができる。
【実施例】
【0103】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明する。これらの実施例は無論本発明を何ら限定するものではない。
【0104】
(実施例1) (2S,3S)−N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(結晶A)の製造法
(2S,3S)−N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩5.05gと2−プロパノール50.00gを混合し、60℃にて1時間攪拌した。その後、10℃まで一定速度で約6時間かけて冷却した後に、結晶を濾過により分離した。晶析スラリーの流動性はよく、結晶のろ過性も良好であった(直径4cmの桐山ロート、濾紙孔径4μmで母液分離時間約30秒)。濾別した結晶を、40℃で1晩真空乾燥を行い、N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩結晶4.35gを得た。得られた結晶の粉末エックス線(Cu−Kα)回折の測定結果を図1に、NMR解析の結果を以下に示す。
【0105】
粉末エックス線(Cu−Kα)回折における主な回折角(2θ±0.1):6.5°、11.9°、19.5°、23.9°、26.1°、28.0°、39.5°
[1H−NMR(CD32SO,400MHz/ppm);0.52(2H,m)、0.63(2H,m)、0.86(3H,t)、1.25−1.50(4H,m)、2.69(1H,m)、3.39(1H,bs)、4.22(1H,bs)、6.27(1H,bs)、8.04(4H,bs)]
【0106】
(実施例2) (2S,3S)−N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(結晶A)の製造法
(2S,3S)−N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩1.00gと2−プロパノール4.00gを混合し、そこにヘキサン5.00gを加え、60℃にて1時間攪拌した。その後、0℃まで一定速度で約6時間かけて冷却した後に、結晶を濾過により分離した。晶析スラリーの流動性はよく、結晶のろ過性も良好であった。濾別した結晶を、40℃で1晩真空乾燥を行い、N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩結晶0.94gを得た。得られた結晶の粉末エックス線(Cu−Kα)回折の測定、及びNMR解析の結果、結晶Aであることを確認した。
【0107】
(実施例3) (2S,3S)−N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(結晶A)の製造法
(2S,3S)−N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩20.00g、2−プロパノール200.00g、及び水5.00gを混合し、60℃にて1時間攪拌した。その後、60℃から20℃まで12時間かけて冷却、20℃から15℃までを5時間で冷却、さらに2℃まで3時間かけて冷却した。析出した結晶を分離後(晶析スラリーの流動性はよく、結晶のろ過性も良好)、40℃で1晩真空乾燥を行い、N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩結晶16.53gを得た。得られた結晶の粉末エックス線(Cu−Kα)回折の測定、及びNMR解析の結果、結晶Aであることを確認した。
【0108】
(実施例4) (2S,3S)−N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(結晶A)の製造法
(2S,3S)−N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩1.05gを、アセトン15.00gと混合し、60℃にて1時間攪拌した。その後、10℃まで一定速度で約2時間かけて冷却した後に、結晶を濾過により分離した。晶析スラリーの流動性はよく、結晶のろ過性も良好であった。濾別した結晶を、40℃で1晩真空乾燥を行い、N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩結晶1.02gを得た。得られた結晶の粉末エックス線(Cu−Kα)回折の測定、及びNMR解析の結果、結晶Aであることを確認した。
【0109】
(実施例5) (2S,3S)−N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(結晶A)の製造法
(2S,3S)−N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩0.50gを、アセトニトリル15.26gと混合し、60℃にて1時間攪拌した。その後、10℃まで一定速度で約2時間かけて冷却した後に、結晶を濾過により分離した。晶析スラリーの流動性はよく、結晶のろ過性も良好であった。濾別した結晶を、40℃で1晩真空乾燥を行い、N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩結晶0.49gを得た。得られた結晶の粉末エックス線(Cu−Kα)回折の測定、及びNMR解析の結果、結晶Aであることを確認した。
【0110】
(実施例6) (2S,3S)−N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(結晶B)の製造法
(2S、3S)−N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩2.00g、2−プロパノール20.00g、及び水0.50gを混合し、60℃にて1時間攪拌した。その後、0℃まで一定速度で約6時間かけて冷却、結晶を濾過により分離した。濾別した結晶を、40℃で1晩真空乾燥を行い、N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩結晶1.83gを得た(2−プロパノール含量:0.02wt%)。得られた結晶の粉末エックス線(Cu−Kα)回折の測定結果を図2に、NMR解析の結果を以下に示す。
【0111】
粉末エックス線(Cu−Kα)回折における主な回折角(2θ±0.1):11.5°、21.3°、24.5°、27.6°
[1H−NMR(CD32SO,400MHz/ppm);0.53(2H,m)、0.63(2H,m)、0.86(3H,t)、1.25−1.50(4H,m)、2.69(1H,m)、3.39(1H,bs)、4.22(1H,bs)、6.27(1H,bs)、8.04(4H,bs)]
【0112】
(実施例7) (2S,3S)−N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(結晶B)の製造法
(2S,3S)−N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩1.01gを、アセトン15.00g、水0.74gと混合し、60℃にて1時間攪拌した。その後、10℃まで一定速度で約2時間かけて冷却した後に、結晶を濾過により分離した。濾別した結晶を、40℃で1晩真空乾燥を行い、N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩結晶0.97gを得た。得られた結晶の粉末エックス線(Cu−Kα)回折の測定、及びNMR解析の結果、結晶Bであることを確認した。
【0113】
(実施例8) (2S,3S)−N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(結晶B)の製造法
(2S,3S)−N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩1.01gを、アセトニトリル15.03g、水0.74gと混合し、60℃にて1時間攪拌した。その後、10℃まで一定速度で約2時間かけて冷却した後に、結晶を濾過により分離した。濾別した結晶を、40℃で1晩真空乾燥を行い、N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩結晶0.98gを得た。得られた結晶の粉末エックス線(Cu−Kα)回折の測定、及びNMR解析の結果、結晶Bであることを確認した。
【0114】
(実施例9) 結晶Aと結晶Bの吸湿測定
結晶A、及び結晶Bを各々約3g別々の容器に入れ、温度:約20℃、相対湿度:約60%の条件下、開放状態で静置した。静置後、3時間、及び17時間経過した時点でそれぞれの水分含量をカールフィッシャー水分計で測定した。
【0115】
【表1】

【0116】
(実施例10) (2S,3S)−N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(結晶C)の製造法
(2S,3S)−N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩1.03gを、ジメチルアセトアミド10.20gと混合し、60℃にて1時間攪拌した。その後、10℃まで一定速度で約2時間かけて冷却した後に、トルエン10.00gを約10分かけて滴下した。結晶を濾過により分離後(晶析スラリーの流動性はよく、結晶のろ過性も良好)、40℃で1晩真空乾燥を行い、N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩結晶0.97gを得た。この結晶をデジタルマイクロスコープで観察したところ、数μm程度の微粉末結晶であった。得られた結晶の粉末エックス線(Cu−Kα)回折の測定結果を図3に、NMR解析の結果を以下に示す。
【0117】
粉末エックス線(Cu−Kα)回折における主な回折角(2θ±0.1):11.9°、20.0°、21.1°、23.9°
[1H−NMR(CD32SO,400MHz/ppm);0.53(2H,m)、0.64(2H,m)、0.85(3H,t)、1.25−1.50(4H,m)、2.69(1H,m)、3.39(1H,bs)、4.22(1H,bs)、6.31(1H,bs)、8.10(4H,bs)]
【0118】
(実施例11) (2S,3S)−N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(結晶C)の製造法
(2S,3S)−N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩1.00gを、ジメチルアセトアミド5.00g、水0.26gと混合し、60℃にて1時間攪拌した。その後、10℃まで一定速度で約2時間かけて冷却した後に、トルエン5.00gを約10分かけて滴下した。結晶を濾過により分離して、40℃で1晩真空乾燥を行い、N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩結晶0.73gを得た。この結晶をデジタルマイクロスコープで観察したところ、数μm程度の微粉末結晶であった。得られた結晶の粉末エックス線(Cu−Kα)回折の測定、及びNMR解析の結果、結晶Cであることを確認した。
【0119】
(実施例12) (2S,3S)−N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(結晶D)の製造法
(2S,3S)−N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩1.00gを、塩化メチレン15.00g、水0.76gと混合し、40℃にて1時間攪拌した。その後、10℃まで一定速度で約2時間かけて冷却した後に、結晶を濾過により分離した。濾別した結晶を、40℃で1晩真空乾燥を行い、N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩結晶0.72gを得た。この結晶をデジタルマイクロスコープで観察したところ、10μm程度の微細な針状結晶であった。得られた結晶の粉末エックス線(Cu−Kα)回折の測定結果を図4に、NMR解析の結果を以下に示す。
【0120】
粉末エックス線(Cu−Kα)回折における主な回折角(2θ±0.1):10.7°、11.9°、23.9°、24.5°
[1H−NMR(CD32SO,400MHz/ppm);0.53(2H,m)、0.64(2H,m)、0.85(3H,t)、1.24−1.50(4H,m)、2.69(1H,m)、3.39(1H,bs)、4.22(1H,bs)、6.31(1H,bs)、8.10(4H,bs)]
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】結晶Aの代表的な粉末エックス線回折データ
【図2】結晶Bの代表的な粉末エックス線回折データ
【図3】結晶Cの代表的な粉末エックス線回折データ
【図4】結晶Dの代表的な粉末エックス線回折データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】

で表されるN−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩結晶を、有機溶剤を用いた晶析工程に付す事により、粉末エックス線(Cu−Kα)回折において
A)6.5°、11.9°、19.5°、23.9°、26.1°、28.0°、及び39.5°、
B)11.5°、21.3°、24.5°、及び27.6°、
C)11.9°、20.0°、21.1°、及び23.9°、
又は
D)10.7°、11.9°、23.9°、及び24.5°
の回折角(2θ±0.1)にピークを有するいずれかの結晶を得ることを特徴とするN−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(1)の製造法。
【請求項2】
前記晶析工程後の結晶が、粉末エックス線(Cu−Kα)回折において、回折角(2θ±0.1)6.5°、11.9°、19.5°、23.9°、26.1°、28.0°及び39.5°にピークを有する結晶Aであることを特徴とする、請求項1に記載のN−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(1)の製造法。
【請求項3】
晶析に用いる有機溶剤が、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、及びニトリル系溶剤からなる群より選択された少なくとも一種である請求項1又は2に記載の製造法。
【請求項4】
冷却速度を1.0℃/時間以上として冷却晶析を行うことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の製造法。
【請求項5】
前記晶析工程後の結晶が、粉末エックス線(Cu−Kα)回折において、回折角(2θ±0.1)11.5°、21.3°、24.5°、及び27.6°にピークを有する結晶Bであることを特徴とする、請求項1に記載のN−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(1)の製造法。
【請求項6】
水の共存下に晶析を行うことを特徴とする、請求項1又は5に記載の製造法。
【請求項7】
晶析に用いる有機溶剤が、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、及びニトリル系溶剤からなる群より選択された少なくとも一種である請求項1、5、又は6に記載の製造法。
【請求項8】
前記晶析工程後の結晶が、粉末エックス線(Cu−Kα)回折において、回折角(2θ±0.1)11.9°、20.0°、21.1°、及び23.9°にピークを有する結晶Cであることを特徴とする、請求項1に記載のN−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(1)の製造法。
【請求項9】
アミド系溶剤を用いて晶析することを特徴とする、請求項1又は8に記載の製造法。
【請求項10】
前記晶析工程後の結晶が、粉末エックス線(Cu−Kα)回折において、回折角(2θ±0.1)10.7°、11.9°、23.9°、及び24.5°にピークを有する結晶Dであることを特徴とする、請求項1に記載のN−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(1)の製造法。
【請求項11】
水共存下、ハロゲン系溶剤を用いて晶析することを特徴とする、請求項1又は10に記載の製造法。
【請求項12】
結晶化及び晶量増加は、反応晶析法、冷却晶析法、濃縮晶析法、溶剤置換を用いる晶析法、及び貧溶剤を混合することによる晶析法のうち、少なくとも一つの方法を用いて行われる、請求項1〜11のいずれかに記載の製造法。
【請求項13】
前記N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(1)が、下記一般式(2):
【化2】

(式中、P及びPは、それぞれ独立して、水素原子又はアミノ基の保護基を表すか、又は、一緒になってフタロイル基を表す。)で表されるN−シクロプロピル−3−(N−保護)アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミドを必要に応じて脱保護することにより得たものであることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の製造法。
【請求項14】
前記N−シクロプロピル−3−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸アミド塩酸塩(1)が、下記一般式(3):
【化3】

(式中、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、又は置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアラルキル基を表す。)で表されるオキサゾリンアミド誘導体を加水分解又は加アルコール分解することにより得たものであることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の製造法。
【請求項15】
及びPは、一方が水素原子、もう一方がtert−ブトキシカルボニル基である請求項13に記載の製造方法。
【請求項16】
が、メチル基、イソプロピル基、またはフェニル基である請求項14に記載の製造方法。
【請求項17】
前記式(1)で表される化合物の2位と3位の絶対配置が、(2S,3S)または、(2R,3R)である、請求項1〜16のいずれかに記載の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−51896(P2011−51896A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−330190(P2007−330190)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】