説明

N−ベンジルアミド誘導体およびそれを含有する医薬組成物

【課題】神経因性疼痛やリウマチ性関節炎等の種々の病態に起因する疼痛や炎症に対する治療薬として有用な化合物の提供
【解決手段】下記化合物(I)[式中、R1は、メトキシ、OHまたはH、R2は、H、アルキル、アルキルカルボニルまたはアリールカルボニル、Dは、式(A)〜(C){各式中、R3は、アルキル、アルケニル、アルキニルおよびアルケニルアルキニルから選ばれる炭化水素基を示し、該基は、置換されていてもよいC3〜8シクロアルキル;置換されていてもよいアリール}を示す]で表されるN−ベンジルアミド誘導体またはその生理的に許容される塩。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は疼痛および炎症の治療薬として有用なN−ベンジルアミド誘導体およびそれを含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、鎮痛薬としてはモルヒネ等の麻薬性鎮痛薬とNSAIDs(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs)等の非麻薬性鎮痛薬が主として用いられている。しかしながら、麻薬性鎮痛薬は、耐性、依存性あるいはその他の重篤な副作用の発現のため使用が厳しく制限されている。また、NSAIDsも激痛には有効ではないうえに、長期投与で上部消化管障害や肝障害が高率で発生するなど問題を有している。それゆえ、より鎮痛効果が高く副作用の少ない鎮痛薬が切望されている。さらに、糖尿病性神経障害痛、帯状疱疹後神経痛、三叉神経痛、HIV−多発性神経障害痛のような神経因性疼痛(ニューロパシックペイン)に対しては未だ満足度の高い鎮痛薬は見いだされておらず、それらに有効な治療薬の開発も期待されている。
【0003】
カプサイシン;(E)−8−メチル−N−バニリル−6−ノネンアミドはトウガラシ属植物の果汁に含まれており、香辛料として使用されるだけでなく、鎮痛作用や抗炎症作用を有していることが知られている。また、カプサイシンの幾何異性体であるシバミド;(Z)−8−メチル−N−バニリル−6−ノネンアミドも鎮痛作用を有することが知られている。カプサイシンは、一次求心性感覚神経(主にC線維:カプサイシン感受性神経)に存在する特殊な受容体に特異的に作用することによって、鎮痛作用や抗炎症作用を発現するが、強烈な刺激性(痛み)を有することもよく知られている。近年、この受容体がクローニングされ、バニロイド受容体サブタイプ1(VR1)と名づけられた[非特許文献1]。その後、本受容体はTRP(transient receptor potential)スーパーファミリーのTRPVに分類され、TRPV1と呼ばれている[非特許文献2]。
【0004】
TRPV1はそのアミノ酸配列から6回膜貫通領域を有するCa2+透過性の高いカチオンチャンネルであると考えられており、カプサイシン様化合物だけではなく、熱や酸等の刺激によっても活性化され、種々の病態での痛みに関与する可能性が示唆されている。カプサイシンが一次求心性感覚神経上のTRPV1に作用すると、そのカチオンチャンネルが開口し、膜が脱分極されサブスタンスP等の神経ペプチドの遊離等が起こり、痛みが惹起される。このような痛み刺激物質であるカプサイシンが、糖尿病性神経障害やリウマチ性関節炎等の痛みの治療に実際に用いられているのは、カプサイシンによる持続的なTRPV1カチオンチャンネル開口の結果として、感覚神経が痛み刺激に対して不応答になる(脱感作)ためと理解されている[非特許文献3]。
【0005】
そこで、カプサイシン様化合物(TRPV1アゴニスト)が、既存の鎮痛薬とは全く異なる薬効機序(カプサイシン感受性感覚神経の脱感作)に基づいて鎮痛効果を発現できると考えられ、既存の鎮痛薬が十分に奏効しない神経因性疼痛をはじめリウマチ性関節炎や変形性関節炎等種々の病態に起因する疼痛に対する治療薬としてその有効性が大いに期待されている。
【0006】
米国ではカプサイシンがクリームの形態で鎮痛薬として販売されている。しかし、このクリームは、初期刺激痛が強いという問題がある。従って、特に、神経因性疼痛やリウマチ性関節炎や変形性関節炎等の種々の病態に起因する疼痛に対する治療薬として、カプサイシン様の薬効機序を有し、十分な鎮痛効果とともに刺激性の弱い化合物の開発が望まれている。
【0007】
また、カプサイシン様の薬効機序を有する化合物は、一次求心性感覚神経(C線維)の関与する病態であるそう痒症、アレルギー性及び非アレルギー性の鼻炎、過活動膀胱、脳卒中、過敏性腸症候群、喘息・慢性閉塞性肺疾患のような呼吸器疾患、皮膚炎、粘膜炎、胃・十二指腸潰瘍及び炎症性腸症候群の治療薬としても有用であると考えられている。
【0008】
さらに、カプサイシンはアドレナリンの分泌を促進して抗肥満作用を示すことが報告されていることから[非特許文献4]、カプサイシン様の薬効機序を有する化合物は肥満の治療薬としても有用であると考えられている。また、糖尿病ラットをカプサイシンで処置することによって、インスリン抵抗性を改善することが報告されていることから[非特許文献5]、糖尿病治療薬としても有用であると考えられる。
【0009】
非特許文献6には、下記化合物:
【0010】
【化1】

【0011】
が開示されている。しかしながら、後記式(I)で表される本発明の化合物とは、本発明の化合物がアミドの炭素原子にシクロヘキシル又は3−シクロヘキセニル基が結合することが必須であるのに対し、該化合物は該位置に必須構造として1−シクロヘキセニル基が結合している点で化学構造が異なる。
【0012】
また、非特許文献7には、
【0013】
【化2】

【0014】
で表される化合物が記載されている。しかしながら、両該化合物と、後記式(I)で表される本発明の化合物とは、本発明の化合物がアミドの炭素原子にシクロヘキシル又は3−シクロヘキセニル基が結合することが必須であるのに対し、該化合物は該位置に必須構造としてフェニル基またはシクロオクチル基が結合している点で化学構造が異なる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Nature, 389, 816 (1997)
【非特許文献2】Annu. Rev. Neurosci., 24, 487 (2001)
【非特許文献3】Pharmacol. Rev., 51, 159 (1999)
【非特許文献4】Pharmacol. Rev., 38, 179 (1986)
【非特許文献5】Eur .J .Endocrinol., 153, 963, (2005)
【非特許文献6】J. Med. Chem., 45, 3739 (2002)
【非特許文献7】J. Med. Chem., 36, 2595 (1993)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の課題は、神経因性疼痛やリウマチ性関節炎や変形性関節炎等の種々の病態に起因する疼痛や炎症に対する治療薬または予防薬として有用な、十分な鎮痛作用を有するとともに刺激性の低い化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、鋭意研究を続けた結果、N−ベンジルアミド化合物のアミドの炭素原子に、特定の置換基を有するシクロヘキシル基または3−シクロヘキセニル基を結合させた誘導体、即ち、下記式(I)で表される化合物が、強い鎮痛作用を有するが、刺激性は低いことを見いだし、本発明を完成した。即ち、本発明は、以下の発明を提供するものである。
【0018】
[1] 下記式(I):
【0019】
【化3】

【0020】
[式中、
1は、メトキシ基、水酸基または水素原子を示し、
2は、水素原子、C1〜4アルキル基、C1〜4アルキルカルボニル基またはアリールカルボニル基を示し、および
Dは、下記式(A)、(B)または(C)で表される基:
【0021】
【化4】

【0022】
{各式中、R3は、C1〜10アルキル基、C2〜10アルケニル基、C2〜10アルキニル基およびC4〜10アルケニルアルキニル基からなる群から選ばれる直鎖または分岐鎖の炭化水素基を示し、該炭化水素基は、
(1)フッ素原子、水酸基およびC1〜6アルキル基からなる群から選ばれる同一又は異なる1個〜5個の置換基で置換されていてもよい、C3〜8シクロアルキル基;
(2)フッ素原子、水酸基、1個〜5個のフッ素原子で置換され得るC1〜6アルキル基、1個〜5個のフッ素原子で置換され得るC1〜6アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、C1〜4アルキルオキシカルボニル基、C1〜4アルキルカルボニルオキシ基、カルボキシル基およびメチレンジオキシ基からなる群から選ばれる同一又は異なる1個〜5個の置換基で置換されていてもよい、アリール基;
(3)フッ素原子および
(4)水酸基
からなる群から選ばれる同一又は異なる1個〜5個の置換基で置換されていてもよく、
式(A)および式(B)におけるR3は、炭素原子を少なくとも4個含み、式(C)におけるR3は、炭素原子を少なくとも3個含む}を示す]
で表されるN−ベンジルアミド誘導体またはその生理的に許容される塩。
【0023】
[2] 式(I)において、R1が、メトキシ基、水酸基または水素原子を示し、
2が、水素原子、C1〜4アルキル基、C1〜4アルキルカルボニル基またはアリールカルボニル基を示し、および
Dが、下記式(A)、(B)または(C)で表される基:
【0024】
【化5】

【0025】
{各式中、R3は、C1〜10アルキル基およびC2〜10アルケニル基からなる群から選ばれる直鎖または分岐鎖の炭化水素基を示し、該炭化水素基は、
(1)フッ素原子、水酸基およびC1〜6アルキル基からなる群から選ばれる同一又は異なる1個〜5個の置換基で置換されていてもよい、C3〜8シクロアルキル基;
(2)フッ素原子、水酸基、1個〜5個のフッ素原子で置換され得るC1〜6アルキル基、1個〜5個のフッ素原子で置換され得るC1〜6アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、C1〜4アルキルオキシカルボニル基、C1〜4アルキルカルボニルオキシ基、カルボキシル基およびメチレンジオキシ基からなる群から選ばれる同一又は異なる1個〜5個の置換基で置換されていてもよい、アリール基;
(3)フッ素原子および
(4)水酸基
からなる群から選ばれる同一又は異なる1個〜5個の置換基で置換されていてもよく、
式(A)および式(B)におけるR3は、炭素原子を少なくとも4個含み、式(C)におけるR3は、炭素原子を少なくとも3個含む}を示す、上記[1]記載のN−ベンジルアミド誘導体またはその生理的に許容される塩。
【0026】
[3] 式(I)において、R1が、メトキシ基、水酸基または水素原子を示し、
2が、水素原子、C1〜4アルキル基、C1〜4アルキルカルボニル基またはアリールカルボニル基を示し、および
Dが、下記式(A)、(B)または(C)で表される基:
【0027】
【化6】

【0028】
{各式中、R3は、C1〜10アルキル基およびC2〜10アルケニル基からなる群から選ばれる直鎖または分岐鎖の炭化水素基を示し、該炭化水素基は、
(1)フッ素原子、水酸基およびC1〜6アルキル基からなる群から選ばれる同一又は異なる1個〜5個の置換基で置換されていてもよい、C3〜8シクロアルキル基;
(3)フッ素原子および
(4)水酸基
からなる群から選ばれる同一又は異なる1個〜5個の置換基で置換されていてもよく、
式(A)および式(B)におけるR3は、炭素原子を少なくとも4個含み、式(C)におけるR3は、炭素原子を少なくとも3個含む}を示す、上記[1]記載のN−ベンジルアミド誘導体またはその生理的に許容される塩。
【0029】
[4] 式(I)において、式(A)および式(B)におけるR3が、炭素原子を4個〜10個含み、式(C)におけるR3が炭素原子を3個〜9個含む、上記[1]記載のN−ベンジルアミド誘導体またはその生理的に許容される塩。
【0030】
[5] 式(I)において、式(A)および式(B)におけるR3が、炭素原子を4個〜8個含み、式(C)におけるR3が、炭素原子を3個〜7個含む、上記[1]記載のN−ベンジルアミド誘導体またはその生理的に許容される塩。
【0031】
[6] 式(I)において、R1が、メトキシ基、水酸基または水素原子を示し、
2が、水素原子、C1〜4アルキル基、C1〜4アルキルカルボニル基またはアリールカルボニル基を示し、および
Dが、下記式(A)、(B)または(C)で表される基:
【0032】
【化7】

【0033】
{各式中、R3は、直鎖または分岐鎖のC1〜10アルキル基を示し、該アルキル基は、
(1)フッ素原子、水酸基およびC1〜6アルキル基からなる群から選ばれる同一又は異なる1個〜5個の置換基で置換されていてもよい、C3〜8シクロアルキル基;および
(3)フッ素原子
からなる群から選ばれる同一又は異なる1個〜5個の置換基で置換されていてもよく、
式(A)および式(B)におけるR3は、炭素原子を少なくとも4個含み、式(C)におけるR3は、炭素原子を少なくとも3個含む}を示す、上記[1]記載のN−ベンジルアミド誘導体またはその生理的に許容される塩。
【0034】
[7] 式(I)において、R1が、メトキシ基、水酸基または水素原子を示し、
2が、水素原子、C1〜4アルキル基、C1〜4アルキルカルボニル基またはアリールカルボニル基を示し、および
Dが、下記式(A)、(B)または(C)で表される基:
【0035】
【化8】

【0036】
{各式中、R3は、直鎖または分岐鎖のC1〜10アルキル基を示し、該アルキル基は、
(1)フッ素原子、水酸基およびC1〜6アルキル基からなる群から選ばれる同一又は異なる1個〜5個の置換基で置換されていてもよい、C3〜8シクロアルキル基で置換されていてもよく、
式(A)および式(B)におけるR3は、炭素原子を少なくとも4個含み、式(C)におけるR3は、炭素原子を少なくとも3個含む}を示す、上記[1]記載のN−ベンジルアミド誘導体またはその生理的に許容される塩。
【0037】
[8] 式(I)において、R1がメトキシ基または水酸基を示す、上記[1]記載のN−ベンジルアミド誘導体またはその生理的に許容される塩。
【0038】
[9] 式(I)において、R2が水素原子を示す、上記[1]記載のN−ベンジルアミド誘導体またはその生理的に許容される塩。
【0039】
[10] 式(I)において、R1がメトキシ基を示し、R2が水素原子を示す、上記[1]記載のN−ベンジルアミド誘導体またはその生理的に許容される塩。
【0040】
[11] Dが式(A)で表される、上記[1]〜[10]のいずれかに記載のN−ベンジルアミド誘導体またはその生理的に許容される塩。
【0041】
[12] Dが式(B)で表される、上記[1]〜[10]のいずれかに記載のN−ベンジルアミド誘導体またはその生理的に許容される塩。
【0042】
[13] Dが式(C)で表される、上記[1]〜[10]のいずれかに記載のN−ベンジルアミド誘導体またはその生理的に許容される塩。
【0043】
[14] 式(I)で表される化合物が、
トランス−N−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)−4−ペンチルシクロヘキサンカルボキサミド
トランス−N−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)−4−(4−メチルペンチル)シクロヘキサンカルボキサミド
シス−4−ヘキシル−N−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)シクロヘキサンカルボキサミド
トランス−4−(2−シクロプロピルエチル)−N−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)シクロヘキサンカルボキサミド
トランス−N−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)−4−(3−メチルブチル)シクロヘキサンカルボキサミドおよび
N−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)−4−ペンチリデンシクロヘキサンカルボキサミド
からなる群から選択される化合物である、上記[1]記載のN−ベンジルアミド誘導体またはその生理的に許容される塩。
【0044】
[15] 活性成分として上記[1]〜[14]のいずれかに記載のN−ベンジルアミド誘導体またはその生理的に許容される塩を含有する医薬組成物。
【0045】
[16]: 上記[1]〜[14]のいずれかに記載の化合物またはその生理的に許容される塩を有効成分とする疼痛および/または炎症の治療剤または予防剤。
[17]: 上記[1]〜[14]のいずれかに記載の化合物またはその生理的に許容される塩を有効成分とする鎮痛薬または抗炎症薬。
[18]: 上記[1]〜[14]のいずれかに記載の化合物またはその生理的に許容される塩と、麻薬性鎮痛薬、神経因性疼痛治療薬、非ステロイド性抗炎症薬、ステロイド性抗炎症薬、抗うつ薬、抗てんかん薬、抗攣縮薬、麻酔薬、抗不整脈薬、局所麻酔薬及び抗不安薬からなる群より選択される少なくとも1種の他の薬剤とを備える医薬。
[19]: 活性成分として上記[18]記載の医薬を含有する医薬組成物。
[20]: 上記[18]記載の医薬を有効成分として含有する、疼痛および/または炎症の治療剤または予防剤。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、強力な鎮痛作用を有し、しかも刺激性が弱い化合物を提供できるので、鎮痛薬および抗炎症薬、例えば、既存の鎮痛薬が十分に奏効しない神経因性疼痛、炎症性疼痛、筋骨格性疼痛、内臓性疼痛、骨性疼痛、癌性疼痛、およびそれらの組み合わせの疼痛および/または炎症の治療剤または予防剤を提供することができる。疼痛および/または炎症の病態として、例えば、糖尿病性神経障害痛、帯状疱疹後神経痛、三叉神経痛、HIV−多発性神経障害痛、術後疼痛、中枢性および末梢性ニューロパシー、神経障害性の腰背部痛をはじめとする様々なタイプの神経因性疼痛、リウマチ性関節症、変形性関節症、腰背部痛、線維筋痛症、非典型的胸痛、ヘルペス神経痛、幻肢痛、骨盤痛、筋膜顔面痛、腹痛、頸痛、中枢性疼痛、歯痛、オピオイド耐性痛、内臓性疼痛、手術疼痛、骨損傷痛、狭心症痛、および治療を必要とする様々な疼痛・炎症が挙げられる。
さらには、本発明によれば、偏頭痛または群発性頭痛、そう痒症、アレルギー性または非アレルギー性の鼻炎、過活動膀胱、脳卒中、過敏性腸症候群、喘息・慢性閉塞性肺疾患のような呼吸器疾患、皮膚炎、粘膜炎、胃・十二指腸潰瘍、炎症性腸症候群および糖尿病、肥満症の治療剤または予防剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の式(I)で表される化合物について、さらに説明する。
【0048】
前記一般式(I)の化合物は、優れた鎮痛作用を有するという特徴を有している。更に、刺激性が弱いという特徴を有している。このような本発明の式(I)で表される化合物の優れた性質の発現には、
【0049】
【化9】

【0050】
で表される部分構造、即ち、4位の位置に特定の基((A)における「R3」、(B)における「R3」または(C)における「=CH−R3」)が結合してなるシクロヘキサン環または3−シクロヘキセン環からなる部分構造が大きく寄与している。言い換えれば、本発明の式(I)で表される化合物の化学構造上の特徴は、上記特定部分構造を有するという点と、該特定部分構造部と残余の構造との結合にある。
【0051】
式(I)で表される化合物の生理的に許容される塩とは、構造中に酸付加塩を形成しうる基を有する式(I)の化合物の生理的に許容される酸付加塩、または構造中に塩基との塩を形成しうる基を有する式(I)の化合物の生理的に許容される塩基との塩を意味する。酸付加塩の具体例としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酢酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩等の有機酸塩、およびグルタミン酸塩、アスパラギン酸塩等のアミノ酸塩が挙げられる。塩基との塩の具体例としては、ナトリウム塩、カリウム塩またはカルシウム塩のようなアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、ピリジン塩、トリエチルアミン塩のような有機塩基との塩、およびリジン、アルギニン等のアミノ酸との塩が挙げられる。
【0052】
式(I)の化合物およびその塩は、水和物および/または溶媒和物の形で存在することもあるので、これらの水和物および/または溶媒和物もまた本発明の化合物に包含される。即ち、「本発明の化合物」には、上記式(I)で表されるN−ベンジルアミド誘導体およびそれらの生理的に許容される塩に加えて、これらの水和物および/または溶媒和物が含まれる。
【0053】
また、式(I)の化合物は、1個または場合によりそれ以上の不斉炭素原子を有する場合があり、また幾何異性や軸性キラリティを生じることがあるので、数種の立体異性体として存在しうることがある。本発明においては、これらの立体異性体、それらの混合物およびラセミ体は本発明の式(I)で表される化合物に包含される。
【0054】
本明細書における用語について以下に説明する。
【0055】
「アルキル基」とは、直鎖状または分枝鎖状の飽和炭化水素基を意味し、例えば、「C1〜4アルキル基」、「C1〜6アルキル基」または「C1〜10アルキル基」とは炭素原子数が1〜4、1〜6または1〜10の基を意味する。その具体例としては、「C1〜4アルキル基」としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等が、「C1〜6アルキル基」としては、前記に加えて、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル等が、「C1〜10アルキル基」としては、前記に加えて、オクチル、ノニル、デシル等が挙げられる。該アルキル基は直鎖状であってもよい。また、分枝鎖状であってもよい。
【0056】
「アルケニル基」とは、二重結合を少なくとも1個有する直鎖状または分枝鎖状の不飽和の炭化水素基を意味し、例えば「C2〜10アルケニル基」とは二重結合を少なくとも1個有する、炭素原子数が2〜10の不飽和の炭化水素基を意味する。その具体例としては、例えば、ビニル、アリル、1−プロペニル、イソプロペニル、1−、2−若しくは3−ブテニル、1,3−ブタジエニル、2−、3−若しくは4−ペンテニル、2−メチル−2−ブテニル、3−メチル−1−ブテニル、3−メチル−2−ブテニル、4−メチル−1−ペンテニル、3,3−ジメチル−1−ブテニル、5−ヘキセニル、3−オクテニル等が挙げられる。該アルケニル基は直鎖状であってもよい。また、分枝鎖状であってもよい。また、該アルケニル基が含有する二重結合の数は、1個であってもよい。また、二個であってもよい。
【0057】
「C2〜10アルキニル基」とは、三重結合を少なくとも1個有する、炭素原子数が2〜10の不飽和の炭化水素基であって、直鎖状または分枝鎖状の基を意味する。その具体例としては、例えばエチニル、1−若しくは2−プロピニル、1−、2−若しくは3−ブチニル、1−メチル−2−プロピニル、3−ヘキシニル等が挙げられる。
【0058】
「C4〜10アルケニルアルキニル基」とは、二重結合と三重結合を位置、順序に関係なく、各々少なくとも1個有する、炭素原子数が4〜10の不飽和の炭化水素基であって直鎖状または分枝鎖状の基を意味する。その具体例としては、2−ペンテン−4−イニル、3−ペンテン−1−イニル、3,6,8−デカトリエン−1−イニル等が挙げられる。
【0059】
「C3〜8シクロアルキル基」とは、炭素原子数が3〜8の単環式飽和炭化水素基を意味する。その具体例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等が挙げられる。
【0060】
「アリール基」とは、フェニルまたはナフチルを意味し、フェニルが好ましい。同様に「アリールカルボニル基」とは、フェニルカルボニルまたはナフチルカルボニルを意味する。
【0061】
「C1〜6アルコキシ基」とは、直鎖状または分枝鎖状の炭素原子数が1〜6のアルコキシ基を意味する。具体的には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0062】
「フッ素原子で置換されたアルキル基」としては、上記アルキル基の1個または2個以上(例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個)の水素原子がフッ素原子で置換されたものをいう。具体的には、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、3,3,3−トリフルオロプロピル、4−フルオロブチル、4,4,4−トリフルオロブチル、5,5,5−トリフルオロペンチル、6,6,6−トリフルオロヘキシル等が挙げられる。フッ素原子で置換された以下の各置換基:アルケニル基、アルキニル基、アルケニルアルキニル基、シクロアルキル基、アリール基も同様である。
【0063】
また、「フッ素原子で置換されたC1〜6アルコキシ基」とは、上記C1〜6アルコキシ基の1個または2個以上(例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個)の水素原子がフッ素原子で置換されたものをいう。具体的には、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、2,2,2−トリフルオロエトキシ、ペンタフルオロエトキシ、3,3,3−トリフルオロプロポキシ、4,4,4−トリフルオロブトキシ等が挙げられる。
【0064】
また、水酸基で置換されたアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルケニルアルキニル基、シクロアルキル基、アリール基も、同様であり、各基の1個または2個以上(例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個)の水素原子が水酸基で置換されたものをいう。その他の置換される各置換基の具体例も同様に例示できる。なお、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルケニルアルキニル基、シクロアルキル基、アリール基の水素原子が複数の置換基で置換される場合、それら置換基は同一であってもよく、また異なっていてもよい。これら具体例は、上記の例示を含め種々の置換基を適宜組み合わせたものが例示できる。
【0065】
炭素原子数を規定したアルキルを含む複合基の具体例としては、該当部分に各基についての前述の具体例を当てはめたものを挙げることができる。なお、「C1〜4アルキルカルボニル」における炭素原子数は直後に続く基または部分のみを修飾する。したがって、上記の場合、C1〜4はアルキルのみを修飾するので、「C1アルキルカルボニル」とはアセチルに該当する。例えば、「C1〜4アルキルオキシカルボニル基」の具体例としては、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル等が挙げられる。「C1〜4アルキルカルボニル基」の具体例としては、アセチル、エチルカルボニル、プロピルカルボニル、イソプロピルカルボニル、ブチルカルボニル、イソブチルカルボニル、tert−ブチルカルボニル等が挙げられる。また、「C1〜4アルキルカルボニルオキシ基」の具体例としては、アセチルオキシ、エチルカルボニルオキシ、プロピルカルボニルオキシ、イソプロピルカルボニルオキシ、ブチルカルボニルオキシ、イソブチルカルボニルオキシ、tert−ブチルカルボニルオキシ等が挙げられる。
【0066】
本発明の化合物(I)における各基は、以下のものが例示できる。
【0067】
1は、メトキシ基、水酸基または水素原子を示し、好ましくは、メトキシ基または水酸基である。R2は、水素原子、C1〜4アルキル基、C1〜4アルキルカルボニル基またはアリールカルボニル基を示し、好ましくは、水素原子である。
【0068】
Dは、下記式(A)、(B)または(C):
【0069】
【化10】

【0070】
で表され、式(A)及び式(B)における各R3は、置換基を含め全体で炭素原子を少なくとも4個含む。具体的には4個〜10個含み、好ましくは4個〜8個(より好ましくは4個〜7個、更に好ましくは5個〜7個)含む。また、式(C)におけるR3は、置換基を含め全体で炭素原子を少なくとも3個含む。具体的には3個〜9個含み、好ましくは3個〜7個含む。
【0071】
3は、置換されていてもよい、C1〜10アルキル基、C2〜10アルケニル基、C2〜10アルキニル基およびC4〜10アルケニルアルキニル基からなる群から選ばれる直鎖または分岐鎖の炭化水素基を示す。好ましくは、置換されていてもよい、C1〜10アルキル基(より好ましくは、C1〜7アルキル基)及びC2〜10アルケニル基(より好ましくは、C2〜7アルケニル基)からなる群から選ばれる直鎖または分岐鎖の炭化水素基、より好ましくは置換されていてもよい直鎖または分岐鎖のC1〜10アルキル基、更に好ましくは、置換されていてもよい直鎖または分岐鎖のC1〜7アルキル基を示す。
【0072】
該炭化水素基の置換基としては、置換されていてもよいC3〜8シクロアルキル基、置換されていてもよいアリール基、フッ素原子または水酸基が挙げられ、好ましくは、置換されていてもよいC3〜8シクロアルキル基、フッ素原子または水酸基、より好ましくは置換されていてもよいC3〜8シクロアルキル基またはフッ素原子、更に好ましくは、置換されていてもよいC3〜8シクロアルキル基である。該炭化水素基は、1個〜5個の同一または異なる上記置換基で置換されていてもよい。
【0073】
該シクロアルキル基の置換基としては、フッ素原子、水酸基およびC1〜6アルキル基からなる群から選ばれ、該シクロアルキル基は1個〜5個の同一又は異なる該置換基で置換されていてもよい。
【0074】
該アリール基の置換基としては、フッ素原子、水酸基、1個〜5個のフッ素原子で置換されることのあるC1〜6アルキル基、1個〜5個のフッ素原子で置換されることのあるC1〜6アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、C1〜4アルキルオキシカルボニル基、C1〜4アルキルカルボニルオキシ基、カルボキシル基およびメチレンジオキシ基からなる群から選ばれ、該アリール基は1個〜5個の同一又は異なる該置換基で置換されていてもよい。
【0075】
式(I)の化合物に含まれる化合物の具体例として、後記実施例の化合物に加えて、その生理的に許容される塩またはその水和物若しくは溶媒和物が挙げられる。
【0076】
なお、本明細書において記載の簡略化のために、次のような略号を用いることもある。
【0077】
Me:メチル基、Et:エチル基、t−:tert−、n−:ノルマル、Ms:メタンスルホニル基、Boc:tert−ブトキシカルボニル基、Ph:フェニル基、Tr:トリフェニルメチル基、THF:テトラヒドロフラン、DMF:N,N−ジメチルホルムアミド、DME:ジメトキシエタン、TFA:トリフルオロ酢酸、P−:保護基
【0078】
本発明化合物の製造方法
式(I)で表される化合物またはその生理的に許容される塩は、新規化合物であり、例えば、以下に述べる方法、後述する実施例または公知の方法に準じた方法によって製造することができる。
下記の製造方法で用いられる化合物は、反応に支障を来たさない範囲において、式(I)で表される化合物と同様な塩を形成していてもよい。
【0079】
また、下記各反応において、出発物質の構造中に反応に関与する可能性のある官能基、例えば、アミノ基、カルボキシル基、水酸基、カルボニル基等を含む場合には、これらの基に一般的に用いられるような保護基を導入することによって保護しておいてもよく、また、その場合には適宜保護基を除去することにより目的化合物を得ることができる。下記の各製法における各基の定義中の官能基については、特に規定しないが、必要に応じて保護するものとする。
【0080】
アミノ基の保護基としては、例えばアルキルカルボニル(例えば、アセチル、プロピオニル等)、ホルミル、フェニルカルボニル、アルキルオキシカルボニル(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル等)、フェニルオキシカルボニル、アラルキルオキシカルボニル(例えば、ベンジルオキシカルボニル等)、トリフェニルメチル、フタロイル、トルエンスルホニル、ベンジル等が用いられる。
【0081】
カルボキシル基の保護基としては、例えばアルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert−ブチル等)、置換メチル(例えば、メトキシメチル、メトキシエトキシメチル、ベンジルオキシメチル、ベンジル、ジフェニルメチル、p-メトキシベンジル、トリフェニルメチル等)、アリル、メチルチオエチル、テトラヒドロピラニル、フェニル、シリル(例えば、トリメチルシリル、tert−ブチルジメチルシリル等)等が用いられる。
【0082】
水酸基の保護基としては、例えば、メチル、tert−ブチル、アリル、置換メチル(メトキシメチル、メトキシエトキシメチル等)、エトキシエチル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、トリフェニルメチル、アラルキル(例えば、ベンジル等)、アルキルカルボニル(例えば、アセチル、プロピオニル等)、ホルミル、ベンゾイル、アラルキルオキシカルボニル(例えば、ベンジルオキシカルボニル等)、シリル等が用いられる。
【0083】
カルボニル基の保護は、カルボニル基をアサイクリックケタール(ジメチルケタールやジエチルケタール等)やサイクリックケタール(1,3−ジオキソランや1,3−ジオキサン等)に変換させることによって行う。
【0084】
製法A
本発明の化合物は、下記式(II)の化合物と下記式(III)の化合物との縮合反応によって製造することかできる。
【0085】
【化11】

【0086】
(式中、R1、R2およびDは上記[1]に記載の定義と同じ)
式(II)の化合物と式(III)の化合物の反応は、アミド形成反応に通常用いられる反応条件下で行うことができる。式(III)の化合物を、カルボキシル基における反応性誘導体に変換させた後に、式(II)の化合物と反応させてもよい。
【0087】
式(III)のカルボキシル基における反応性誘導体としては、例えば低級アルキルエステル(特にメチルエステル)、活性エステル、酸無水物、酸ハライド(特に酸クロリド)を挙げることができる。活性エステルの具体例としては、例えば、p−ニトロフェニルエステル、N−ヒドロキシコハク酸イミドエステル、ペンタフルオロフェニルエステルが挙げられる。酸無水物の具体例としては、例えば、クロロ炭酸エチル、クロロ炭酸イソブチル、イソ吉草酸、ピバリン酸との混合酸無水物が挙げられる。
【0088】
式(III)の化合物自体を用いる場合には、本反応は通常、縮合剤の存在下に行われる。縮合剤の具体例としては、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N’−カルボニルジイミダゾール、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウム
ヘキサフルオロホスファート等が挙げられる。これらの縮合剤は単独で、または、これら縮合剤と、N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール等のペプチド合成試薬とを組み合わせて用いることができる。
【0089】
式(III)の化合物またはその反応性誘導体と式(II)の化合物との反応は、溶媒中または無溶媒下に行われる。使用する溶媒は、原料化合物の種類等に従って選択されるべきであるが、例えばトルエン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、DME、塩化メチレン、クロロホルム、酢酸エチル、アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。これらの溶媒はそれぞれ単独で、或いは2種以上の混合溶媒として用いられる。なお、式(II)の化合物は、塩酸塩等の酸付加塩の形で使用し、反応系中で遊離塩基を生成させてもよい。
【0090】
本反応は通常塩基の存在下で行われる。塩基の具体例としては、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウムのような無機塩基、或いは、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、N−メチルモルホリン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジンのような有機塩基が挙げられる。反応温度は用いる原料化合物の種類等により異なるが、通常、約−30℃〜約150℃、好ましくは約−10℃〜約70℃である。
【0091】
上記式(II)の化合物は、公知化合物であるか、または公知の化合物の製法に準じて製造することができる。例えば、Monatsh. Chem., 77, 54(1947)、Tetrahedron Lett., 43, 4281(2002)、J.Org. Chem., 54, 3477 (1989) 等に記載の方法、あるいはこれらに準じた方法に従って製造することができる。
【0092】
また、上記式(III)の化合物も、公知化合物であるか、または公知の化合物の製法に準じて製造することができる。以下にその代表的な製造方法を例示する。
【0093】
式(III)の化合物の製法(1)
【0094】
【化12】

【0095】
(式中、nは、0〜3の整数を意味し、R31は、上記[1]に記載のRの定義と同じであって、−(CH−CH=CH−R31は、炭素原子を少なくとも4個含む。R31-1は、置換されていてもよいアルキル基を示し、−(CH−CH−CH−R31-1は、炭素原子を少なくとも4個含む。)
上記式(III−1−1)の化合物は、例えば、式(IV)の化合物と、対応するトリフェニルホスホニウムハライド化合物(Org. React., 14, 270 (1965))またはホスホン酸ジエステル化合物(Chem.Rev., 74, 87 (1974))とを、塩基(ブチルリチウムやカリウム−t−ブトキシド等)の存在下、THFやDMF等の溶媒中、−80℃〜50℃で反応(Wittig反応またはHorner−Emmons反応)させ、次に保護基(P)を脱離させることによって製造できる。Wittig反応では専らZ体が、Horner−Emmons反応では専らE体が得られるが、特にそれに限定されない。
【0096】
また、E体である上記式(III−1−2)の化合物は、Synlett, 26 (1998); Tetrahedron, 58, 4425 (2002)等に記載の方法に従って製造することができる。具体的には、まず、式(IV)の化合物と、対応する5位にスルホニル基を有する1−フェニル−1H−テトラゾール化合物とを塩基(ヘキサメチルジシラザンカリウム等)の存在下、DMEやTHF等の溶媒中、−70℃〜50℃で反応させ、次に保護基(P)を脱離させることによって製造できる。
【0097】
また、R31が置換されていてもよいアルケニル基またはアルキル基である式(III−1−2)の化合物を接触還元等によって還元することにより、式(III−1−3)の化合物を製造することができる。
【0098】
上記式(IV)の化合物は、市販されているか、自体公知の方法、或いは、これに準じた方法により製造することができる。
【0099】
式(III)の化合物の製法(2)
が置換されていてもよいアルキル基である場合には、下記の方法によって製造することができる。
【0100】
【化13】

【0101】
(式中、R32は、フッ素原子、水酸基、又はアルキル基で置換されていてもよいシクロアルキル基;フッ素原子;または水酸基で置換されていてもよいアルキル基を示し、炭素原子を少なくとも2個含む。)
上記式(V)の化合物から上記式(VI)の化合物を製造する方法は、例えば、上記式(III)の化合物の製法(1)の方法と同様にして実施することができる。その後、式(VI)を例えば加圧下や酸の存在下等で接触還元することによって、式(III−2)の化合物を得ることができる。
【0102】
上記式(V)の化合物は、市販されているか、自体公知の方法、或いは、これに準じた方法により製造することができる。
【0103】
式(III)の化合物の製法(3)
【0104】
【化14】

【0105】
(式中、R33は、上記[1]に記載のRの定義と同じ。)
化合物(VII)から化合物(III−3)への製造は、例えば、J. Org. Chem., 49,
3904 (1984) に記載の方法に従って付加反応を行った後、脱水、脱保護することによって実施することができる。具体的には、反応に関与する官能基(例えば、水酸基)を保護した後、化合物(VII)に、対応する有機セリウム化合物(R33−CeCl2等)を用いてR33基を付加した後、脱水と脱保護することによって実施することができる。
【0106】
出発物質である式(VII)の化合物は、公知の方法により製造することができる。
【0107】
式(III)の化合物の製法(4)
【0108】
【化15】

【0109】
(式中、R34は、上記[1]に記載のRの定義と同じ。)
上記式(VII)の化合物から上記式(III−4)の化合物を製造する方法は、例えば、上記式(III)の化合物の製法(1)の方法と同様にして実施することができる。製法B
上記式(III)の化合物の製法(3)で得られる式(VIII)の化合物を用いて、本発明の化合物(I’)を製造することもできる。
【0110】
【化16】

【0111】
(式中、R1およびR2は上記[1]に記載の定義と同じであり、R33は、上記[1]に記載のRの定義と同じ。)
具体的には、式(VIII)の化合物の保護基を脱保護し、製法Aの方法と同様にして、式(X)の化合物を製造する。その後、脱水することによって、上記化合物(I’)を得ることができる。
【0112】
製法C
一般式(I)の化合物のD基が、アルケニル基等の不飽和結合を有する場合には、還元処理を行うことによって、D基がアルキル基等の不飽和結合を有さない基である式(I)の化合物を製造することができる。
【0113】
製法D
一般式(I)の化合物のR2が、水素原子である場合には、アシル化処理を行うことによって、R2がC1〜4アルキルカルボニル基またはアリールカルボニル基である式(I)の化合物を製造することができる。
【0114】
上記製法により得られる式(I)の化合物は、クロマトグラフィー、再結晶、再沈殿等の常法に従って単離および精製することができる。また、光学異性体については、不斉中心を持つ出発原料を用いる等の不斉合成から誘導するか、キラルカラムの使用あるいは分別再結晶等の光学分割をしても誘導できる。シス体、トランス体等の幾何異性体は、合成上誘導することも可能であり、カラムを用いて分離することができる。式(I)の化合物は、構造式中に存在する官能基の種類、原料化合物の選定、反応処理条件により、塩の形で得られる場合もあるが、常法に従って式(I)の化合物に変換することができる。一方、例えば、構造式中に酸付加塩を形成しうる基を有する式(I)の化合物は、常法に従って各種の酸と処理することにより酸付加塩に導くことができる。
【0115】
本発明の化合物並びにその生理的に許容される塩類およびその水和物若しくは溶媒和物は、強力な鎮痛作用を有し、しかも刺激性が弱いので、経口投与だけでなく非経口、例えば経皮投与、局所投与、経鼻投与、膀胱内注射投与でも有効である。従って、本発明の化合物は、鎮痛薬および抗炎症薬として、例えば、既存の鎮痛薬が十分に奏効しない神経因性疼痛、炎症性疼痛、筋骨格性疼痛、内臓性疼痛、骨性疼痛、癌性疼痛、およびそれらの組み合わせの疼痛および/または炎症の治療剤または予防剤として有用である。疼痛および/または炎症の病態として、例えば、糖尿病性神経障害痛、帯状疱疹後神経痛、三叉神経痛、HIV−多発性神経障害痛、術後疼痛、中枢性および末梢性ニューロパシー、神経障害性の腰背部痛をはじめとする様々なタイプの神経因性疼痛、リウマチ性関節症、変形性関節症、腰背部痛、線維筋痛症、非典型的胸痛、ヘルペス神経痛、幻肢痛、骨盤痛、筋膜顔面痛、腹痛、頸痛、中枢性疼痛、歯痛、オピオイド耐性痛、内臓性疼痛、手術疼痛、骨損傷痛、狭心症痛、および治療を必要とする様々な疼痛・炎症の治療剤または予防剤として有用である。さらには、偏頭痛または群発性頭痛、そう痒症、アレルギー性または非アレルギー性の鼻炎、過活動膀胱、脳卒中、過敏性腸症候群、喘息・慢性閉塞性肺疾患のような呼吸器疾患、皮膚炎、粘膜炎、胃・十二指腸潰瘍、炎症性腸症候群および糖尿病、肥満症の予防および/または治療薬としても有用である。
【0116】
「神経因性疼痛」は、末梢または中枢神経系に対する損傷またはこれにおける病理学的変化によって引き起こされる慢性疼痛であり、神経因性疼痛に関連し得るかまたは神経因性疼痛についての基礎を形成し得る。神経性疼痛としては、例えば、以下が挙げられる:糖尿病性神経障害痛、帯状疱疹後神経痛、三叉神経痛、切断の外傷後疼痛(末梢性および/または中枢性感作(例えば、幻肢痛)を生じさせる損傷による神経損傷原因)、神経障害性の腰背部痛、癌、化学傷害、毒素、他の大手術、外傷性傷害圧迫に起因する末梢神経損傷、腰背部または頚部の神経根障害痛、線維筋痛症、舌咽神経痛、反射性交感神経性ジストロフィー、カウザルギア、視床症候群、神経根裂離、反射性交感神経性ジストロフィーもしくは開胸後疼痛、栄養失調、またはウイルスもしくは細菌感染(例えば、帯状ヘルペスもしくはヒト免疫不全ウイルス(HIV)−多発性神経障害痛)、あるいはそれらの組み合わせ、転移性浸潤、有痛脂肪症、上記以外の様々な中枢性および末梢性ニューロパシー、または視床状態に関連する中枢性疼痛状態、およびそれらの組み合わせに続発する状態もまた、神経因性疼痛の定義に含まれる。
【0117】
本発明の化合物の投与経路としては、経口投与或いは非経口投与が可能であり、非経口投与の一つである経皮投与が好ましい。本発明の化合物の投与量は、化合物の種類、投与形態、投与方法、患者の症状・年齢等により異なるが、通常0.005〜150mg/kg/日、好ましくは0.05〜20mg/kg/日であり、1回または数回に分けて投与することができる。
【0118】
本発明の化合物は、他の薬剤と組み合わせて医薬を構成することもできる。これにより相加的・相乗的な薬理効果を得ることができる。例えば、本発明の化合物は、例えば、麻薬性鎮痛薬、神経因性疼痛治療薬、非ステロイド性抗炎症薬、ステロイド性抗炎症薬、抗うつ薬、抗てんかん薬、抗攣縮薬、麻酔薬、抗不整脈薬、局所麻酔薬および抗不安薬からなる群より選択される少なくとも1種の他の薬剤と組み合わせた医薬として用いられ得る。これらの中でも、麻薬性鎮痛薬、神経因性疼痛治療薬、非ステロイド性抗炎症薬、抗てんかん薬、抗不整脈薬および局所麻酔薬からなる群より選択される少なくとも1種の他の薬剤が好ましい。
【0119】
麻薬性鎮痛薬の具体例としては、モルヒネ、コデイン、オキシコドン、ペチジン、フェンタニール、ペンタゾシン、トラマドール、ブトルファノールおよびブプレノルフィン等がある。神経因性疼痛治療薬の具体例としては、様々なタイプのものが例示でき、たとえば、プレガバリン、ガバペンチン、カルバマゼピン、リドカイン、デュロキセチンおよびメキシレチン等が挙げられる。非ステロイド性抗炎症薬の具体例としては、アセチルサリチル酸、イブプロフェン、ロキソプロフェンナトリウム、ジクロフェナクナトリウム、アセトアミノフェン、エトドラク、メロキシカム、セレコキシブおよびロフェコキシブ等がある。ステロイド性抗炎症薬の具体例としては、メチルプレゾニドロン、プレゾニドロンおよびデキサメサゾン等がある。抗うつ薬の具体例としては、アミトリプチリン、ノルトリプチリン、アモキサピン、パロキセチン、フルボキサミン、ミルナシプランおよびデュロキセチン等がある。抗てんかん薬の具体例としては、カルバマゼピン、ラモトリジン、ガバペンチンおよびプレガバリン等がある。抗攣縮薬の具体例としては、バクロフェン等がある。麻酔薬の具体例としては、メピバカイン、ブピバカイン、テトラカイン、ジブカインおよび塩酸ケタミン等がある。抗不整脈薬および局所麻酔薬の具体例としては、リドカイン、プロカイン、メキシレチンおよびフレカイニド等がある。抗不安薬の具体例としては、ジアゼパムおよびエチゾラム等がある。
【0120】
本発明の化合物と組み合わせる他の薬剤は、これらの中でも、モルヒネ、コデイン、フェンタニール、ペンタゾシン、カルバマゼピン、ラモトリジン、プレギャバリン、ガバペンチン、リドカイン、ロキソプロフェンナトリウム、ジクロフェナクナトリウム、アセトアミノフェン、エトドラク、メロキシカム、セレコキシブおよびロフェコキシブからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0121】
本発明の化合物と上述の他の薬剤との組み合わせから構成される医薬は、特に、鎮痛薬および抗炎症薬として、例えば、既存の鎮痛薬が十分に奏効しない神経因性疼痛、炎症性疼痛、筋骨格性疼痛、内臓性疼痛、骨性疼痛、癌性疼痛、およびそれらの組み合わせの疼痛および/または炎症の治療剤または予防剤として、提供することができる。疼痛および/または炎症の病態として、例えば、糖尿病性神経障害痛、帯状疱疹後神経痛、三叉神経痛、HIV−多発性神経障害痛、術後疼痛、中枢性および末梢性ニューロパシー、神経障害性の腰背部痛をはじめとする様々なタイプの神経因性疼痛、リウマチ性関節症、変形性関節症、腰背部痛、線維筋痛症、非典型的胸痛、ヘルペス神経痛、幻肢痛、骨盤痛、筋膜顔面痛、腹痛、頸痛、中枢性疼痛、歯痛、オピオイド耐性痛、内臓性疼痛、手術疼痛、骨損傷痛、狭心症痛、および治療を必要とする様々な疼痛および炎症が挙げられる。本発明の医薬の化合物と他の薬剤との組み合わせから構成される医薬は、これら病態の疼痛および/または炎症の治療剤または予防剤として提供することができる。
【0122】
本発明の化合物又はこれと上記他の薬剤との組み合わせからなる医薬は、通常、医薬用担体と混合して調製した医薬組成物の形で投与される。具体例としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、細粒剤、液剤、舌下剤、および懸濁剤などの経口剤、軟膏剤、坐剤(直腸内投与剤)、膀胱内注入剤、貼付剤(テープ剤、経皮パッチ製剤、湿布剤等)、ローション剤、乳液剤、クリーム剤、ゼリー剤、ゲル剤、外用散剤、吸入剤、および点鼻剤等などの外用剤、皮内注射剤、皮下注射剤または腹腔内、関節腔内等の体腔内注射剤等などの注射剤、点滴剤が挙げられる。これらの医薬組成物は常法に従って調製される。すなわち、式(I)で表される化合物又はその生理的に許容される塩を含有する医薬組成物は、賦形剤、結合剤、滑沢剤、安定剤、崩壊剤、基剤、緩衝剤、溶解補助剤、等張化剤、溶解補助剤、pH調節剤、界面活性剤、乳化剤、懸濁化剤、分散剤、沈殿防止剤、増粘剤、粘度調節剤、ゲル化剤、無痛化剤、保存剤、可塑剤、吸収促進剤、老化防止剤、保湿剤、防腐剤、香料等の医薬用担体を含有することができ、2種以上の医薬用担体添加物を適宜選択して用いることもできる。
【0123】
医薬用担体としては、医薬分野において常用され、かつ本発明の化合物と反応しない物質が用いられる。医薬用担体の具体例としては、乳糖、トウモロコシデンプン、白糖、マンニトール、硫酸カルシウム、結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、変性デンプン、カルメロースカルシウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ゼラチン、アラビアゴム、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポビドン、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、硬化油、カルナウバロウ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マクロゴール、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレート、酸化チタン、リン酸カルシウム、オリーブ油、精製ラノリン、スクワラン、シリコーンオイル、ヒマシ油、大豆油、綿実油、流動パラフィン、白色ワセリン、黄色ワセリン、パラフィン、ラウリル酸、ミリスチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セチルアルコール、ミツロウ、サラシミツロウ等、コレステロールエステル、エチレングリコールモノエステル、プロピレングリコールモノエステル、モノステアリン酸グリセリン、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、エタノール、ソルビトース液、水、親水軟膏、バニシングクリーム、吸水軟膏、コールドクリーム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリイソブチレン、酢酸ビニル共重合体、アクリル系共重合体、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、フタル酸ジエチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、アセチル化モノグリセリド、ジエチレングリコール、ドデシルピロリドン、尿素、ラウリル酸エチル、エイゾン、カオリン、ベントナイト、酸化亜鉛、アガロース、カラギーナン、アルギン酸またはその塩、トラガント、アカシアゴム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、デキストリン、ポリビニルアルコール、ラウリン酸カリウム、パルミチン酸カリウム、ミリスチン酸カリウム等、ラウリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム、ヒマシ油硫酸化物(ロート油)、Span(ステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン等)、Tween(ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80、ポリソルベート85、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(いわゆるHCO)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ポロキサマー(いわゆるプルロニック)、レシチン(ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリンなどレシチンから単離された精製リン脂質をも含む)またはその水素添加物をはじめとする誘導体、フロン系ガス(フロン−11、フロン−12、フロン−21、フロン−22、フロン−113、フロン−114、フロン−123、フロン−142c、フロン−134a、フロン−227、フロン−C318、1,1,1,2−テトラフルオロエタンなど)、代替フロンガス(HFA−227、HFA−134aなど)、プロパン、イソブタン、ブタン、ジエチルエーテル、窒素ガス、炭酸ガス、塩化ベンザルコニウム、パラベン、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、濃グリセリン、塩化ベンザルコニウム、パラベン、ステアリン酸の塩、デンプン、およびセルロース等が挙げられる。
【0124】
医薬組成物中における本発明の化合物の含有量はその剤形に応じて異なるが、通常、全組成物中0.0025〜20重量%である。これらの医薬組成物はまた、治療上有効な他の物質を含有していてもよい。
【0125】
本発明の化合物と上述の他の薬剤との組み合わせを採用した医薬は、本発明の化合物と共に上記他の薬剤を含有する単体の医薬組成物を構成できる。あるいは、本発明の化合物を含有する第一の医薬組成物と、上記他の薬剤を含有する第二の医薬組成物とが別々に提供され、これらが一定時間かけて別々に、または同時に投与されてもよい。より具体的には、これらの有効成分を一緒に含有する単一の製剤(配合剤)であってもよいし、これらの有効成分の各々を別々に製剤化した複数の製剤であってもよい。別々に製剤化した場合、それらの製剤を別々にまたは同時に投与することができる。また、別々に製剤化した場合、それらの製剤を使用時に希釈剤などを用いて混合し、同時に投与することができる。
【0126】
これら医薬において、薬剤の配合比は、患者の年齢、性別、および体重、症状、投与時間、剤形、投与方法、薬剤の組み合わせなどにより、適宜選択することができる。医薬の投与経路としては、経口投与及び非経口投与が可能である。
【実施例】
【0127】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。化合物の同定は、NMRスペクトル(300MHz又は400MHz)等によって行った。なお、異性体の割合やシス体、トランス体の割合はHPLCの面積比によって計算した。
【0128】
実施例1
トランス−4−ブチル−N−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル) シクロヘキサンカルボキサミドの製造:
【0129】
【化17】

【0130】
室温にて4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジルアミン塩酸塩(520mg)、トランス−4−ブチルシクロヘキサンカルボン酸(500mg)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(550mg)およびトリエチルアミン(290mg)を酢酸エチル(10ml)中で混合し撹拌した。12時間後、反応液に水(10ml)を加えて分液し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下で留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=100/0から0/100のグラジエント)で精製して目的物を240mg得た。
1H-NMR (CDCl3, δ) :0.80-1.00 (5H, m), 1.10-1.33 (7H, m), 1.38-1.55 (2H, m), 1.77-1.96 (4H, m), 1.98-2.10 (1H, m), 3.87 (3H, s), 4.34 (2H, d), 5.63 (1H, s), 5.67 (1H, brs), 6.75 (1H, dd), 6.79 (1H, d), 6.86 (1H, d).
【0131】
実施例2
トランス−N−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)−4−ペンチルシクロヘキサンカルボキサミドの製造:
【0132】
【化18】

【0133】
室温にて4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジルアミン塩酸塩(1.00g)、トランス−4−ペンチルシクロヘキサンカルボン酸(1.05g)および1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(1.10g)を酢酸エチル(20ml)中で混合し撹拌した。12時間後、反応液に水(10ml)を加えて分液し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下で留去した。得られた粗結晶をヘキサン/酢酸エチル=2/1の溶液(10ml)より再結晶し、目的物を570mg得た。
1H-NMR (CDCl3, δ) :0.84-0.95 (5H, m), 1.12-1.33 (9H, m), 1.40-1.53 (2H, m), 1.78-1.95 (4H, m), 1.98-2.08 (1H, m), 3.88 (3H, s), 4.35 (2H, d), 5.55-5.70 (2H, m), 6.75 (1H, dd), 6.79 (1H, d), 6.86 (1H, d).
【0134】
実施例3
シス−N−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)−4−ペンチルシクロヘキサンカルボキサミドの製造:
【0135】
【化19】

【0136】
(1)アルゴン雰囲気下、ブチルトリフェニルホスホニウムブロミド(7.00g)のテトラヒドロフラン(50ml)溶液に、室温でカリウムt−ブトキシド(1.95g)を加えて撹拌した。30分後、4−ホルミル安息香酸メチル(2.00g)のテトラヒドロフラン溶液(20ml)を滴下して加えさらに撹拌した。10時間後、反応液に水(30ml)を加えて酢酸エチル(100ml)で2回抽出した。溶媒を減圧下で留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=100/0から0/100のグラジエント)で精製して4−(1−ペンテニル)安息香酸メチルを2.40g得た。
(2)上記(1)の生成物(2.40g)をエタノール(20ml)に溶解し、室温にて2mol/l水酸化ナトリウム水溶液(10ml)を加えて40℃で撹拌した。30分後、エタノールを減圧下で留去し、残渣に2mol/l塩酸(10.5ml)を加えて酸性として析出した結晶を濾取、水で洗浄し4−(1−ペンテニル)安息香酸を2.20g得た。
(3)上記(2)の生成物(2.20g)を酢酸(20ml)に溶解し、酸化白金(200mg)を加え、室温下、3気圧にて接触水素添加を行った。2時間後、触媒をろ去し、母液に水(50ml)を加えて酢酸エチル(100ml)で抽出した。有機層を水(50ml)で2回洗浄し、溶媒を減圧下で留去して4−(1−ペンチル)シクロヘキサンカルボン酸を2.10g得た。(シス/トランスの混合物)
(4)室温にて、上記(3)の生成物(1.00g)、4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジルアミン塩酸塩(960mg)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(1.05g)およびトリエチルアミン(581mg)を酢酸エチル(20ml)中で混合し撹拌した。10時間後、反応液に水(10ml)を加えて分液し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下で留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=100/0から0/100のグラジエント)で精製した。得られた粗結晶をヘキサン/酢酸エチル=2/1の溶液(10ml)より再結晶し目的物を315mg得た。
1H-NMR (CDCl3, δ) :0.88 (3H, t), 1.20-1.35 (9H, m), 1.40-1.65 (6H, m), 1.75-1.90 (2H, m), 2.20-2.32 (1H, m), 3.88 (3H, s), 4.36 (2H, d), 5.62 (1H, d), 5.73 (1H, brs), 6.76 (1H, dd), 6.80 (1H, d), 6.86 (1H, d).
【0137】
実施例4
シス−N−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)−4−(4−メチルペンチル)シクロヘキサンカルボキサミドの製造:
【0138】
【化20】

【0139】
(1)アルゴン雰囲気下、4−ホルミル安息香酸メチル(2.00g)、(3−メチルブチル)トリフェニルホスホニウムブロミド(5.10g)および1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカン−5−エン(1.70g)をテトラヒドロフラン(50ml)中で混合し加熱還流させた。15時間後、反応液を室温に戻し、水(30ml)を加えて酢酸エチル(100ml)で抽出した。溶媒を減圧下で留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=100/0から0/100のグラジエント)で精製して4−(4−メチル−1−ペンテニル)安息香酸メチルを1.65g得た。
(2)上記(1)の生成物(1.65g)をメタノール(20ml)に溶解し、室温にて2mol/l水酸化ナトリウム水溶液(10ml)を加えて撹拌した。10時間後、メタノールを減圧下で留去し、残渣に2mol/l塩酸(10.5ml)を加えて酸性とした後に酢酸エチル(50ml)で抽出し、溶媒を減圧下で留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=100/0から0/100のグラジエント)で精製して4−(4−メチル−1−ペンテニル)安息香酸を1.50g得た。
(3)上記(2)の生成物(1.50g)を酢酸(20ml)に溶解し、酸化白金(200mg)を加え、室温下、4気圧にて接触水素添加を行った。10時間後、触媒をろ去し、母液に水(100ml)を加えて酢酸エチル(100ml)で抽出した。有機層を水(50ml)、飽和食塩水(50ml)の順に洗浄し、溶媒を減圧下で留去して4−(4−メチルペンチル)シクロヘキサンカルボン酸を1.20g得た。(シス/トランスの混合物)
(4)室温にて、上記(3)の生成物(500mg)、4−ベンジルオキシ−3−メトキシベンジルアミン塩酸塩(660mg)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(500mg)およびトリエチルアミン(290mg)を酢酸エチル(10ml)中で混合し撹拌した。10時間後、反応液に水(10ml)を加えて分液し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下で留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=100/0から0/100のグラジエント)で精製してN−(4−ベンジルオキシ−3−メトキシベンジル)−4−(4−メチルペンチル)シクロヘキサンカルボキサミドを740mg得た。(シス/トランスの混合物)
(5)上記(4)の生成物(740mg)をエタノール(10ml)に溶解し、10%パラジウム炭素(100mg)を加えて、室温にて接触水素添加を行った。1時間後、触媒をろ去し、溶媒を減圧下で留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=100/0から0/100のグラジエント)で精製して目的物を140mg得た。
1H-NMR (CDCl3, δ) :0.86 (6H, d), 1.10-1.33 (6H, m), 1.38-1.70 (8H, m), 1.75-1.92 (2H, m), 2.22-2.32 (1H, m), 3.87 (3H, s), 4.36 (2H, d), 5.61 (1H, brs), 5.73 (1H, brs), 6.75 (1H, dd), 6.80 (1H, d), 6.86 (1H, d).
【0140】
実施例5
トランス−N−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)−4−(4−メチルペンチル)シクロヘキサンカルボキサミドの製造:
【0141】
【化21】

【0142】
実施例4の(5)において同時に上記の目的物を分離精製し40mg得た。
1H-NMR (CDCl3, δ) :0.86 (6H, d), 0.82-0.98 (2H, m), 1.08-1.35 (7H, m), 1.40-1.57 (3H, m), 1.78-1.96 (4H, m), 1.98-2.10 (1H, m), 3.88 (3H, s), 4.35 (2H, d), 5.57 (1H, s), 5.63 (1H, brs), 6.75 (1H, dd), 6.79 (1H, d), 6.86 (1H, d).
【0143】
実施例6
シス−4−ヘキシル−N−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)シクロヘキサンカルボキサミドの製造:
【0144】
【化22】

【0145】
(1)アルゴン雰囲気下、4−ホルミル安息香酸メチル(1.00g)、ペンチルトリフェニルホスホニウムブロミド(2.50g)および1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカン−5−エン(850mg)をテトラヒドロフラン(50ml)中で混合し加熱還流させた。15時間後、反応液を室温に戻し、水(30ml)を加えて酢酸エチル(100ml)で抽出した。溶媒を減圧下で留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=100/0から0/100のグラジエント)で精製して4−(1−ヘキセニル)安息香酸メチルを1.20g得た。
(2)上記(1)の生成物(1.20g)をメタノール(20ml)に溶解し、室温にて2mol/l水酸化ナトリウム水溶液(10ml)を加えて撹拌した。10時間後、メタノールを減圧下で留去し、残渣に2mol/l塩酸(10.5ml)を加えて酸性とした後に酢酸エチル(50ml)で抽出し、溶媒を減圧下で留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=100/0から0/100のグラジエント)で精製して4−(1−ヘキセニル)安息香酸を900mg得た。
(3)上記(2)の生成物(900mg)を酢酸(10ml)に溶解し、酸化白金(100mg)を加え、室温下、4気圧にて接触水素添加を行った。10時間後、触媒をろ去し、母液に水(50ml)を加えて酢酸エチル(50ml)で抽出した。有機層を水(50ml)、飽和食塩水(50ml)の順に洗浄し、溶媒を減圧下で留去して4−ヘキシルシクロヘキサンカルボン酸を740mg得た。(シス/トランスの混合物)
(4)室温にて、上記(3)の生成物(500mg)、4−ベンジルオキシ−3−メトキシベンジルアミン塩酸塩(660mg)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(500mg)およびトリエチルアミン(472mg)を酢酸エチル(10ml)中で混合し撹拌した。10時間後、反応液に水(10ml)を加えて分液し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下で留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=100/0から0/100のグラジエント)で精製してN−(4−ベンジルオキシ−3−メトキシベンジル)−4−ヘキシルシクロヘキサンカルボキサミドを165mg得た。(シス/トランスの混合物)
(5)上記(4)の生成物(165mg)をエタノール(5ml)に溶解し、10%パラジウム炭素(20mg)を加えて、室温にて接触水素添加を行った。1時間後、触媒をろ去し、溶媒を減圧下で留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=100/0から0/100のグラジエント)で精製して目的物を45mg得た。
1H-NMR (CDCl3, δ) :0.88 (3H, t), 1.15-1.70 (17H, m), 1.75-1.90 (2H, m), 2.20-2.32 (1H, m), 3.88 (3H, s), 4.37 (2H, d), 5.57 (1H, s), 5.70 (1H, brs), 6.73-6.83
(2H, m), 6.86 (1H, d).
【0146】
実施例7
トランス−4−ヘキシル−N−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)シクロヘキサンカルボキサミドの製造:
【0147】
【化23】

【0148】
実施例6の(5)において同時に上記の目的物を分離精製し9mg得た。
1H-NMR (CDCl3, δ) :0.88 (3H, t), 0.80-1.00 (2H, m), 1.10-1.70 (15H, m), 1.75-2.20 (5H, m), 3.88 (3H, s), 4.35 (2H, d), 5.58 (1H, s), 5.64 (1H, brs), 6.72-6.82
(2H, m), 6.86 (1H, d).
【0149】
実施例8
シス−4−(2−シクロプロピルエチル)−N−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)シクロヘキサンカルボキサミドの製造:
【0150】
【化24】

【0151】
(1)アルゴン雰囲気下、4−ホルミル安息香酸メチル(1.00g)、シクロプロピルメチルトリフェニルホスホニウムブロミド(2.40g)および1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカン−5−エン(850mg)をテトラヒドロフラン(50ml)中で混合し加熱還流させた。15時間後、反応液を室温に戻し、水(30ml)を加えて酢酸エチル(100ml)で抽出した。溶媒を減圧下で留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=100/0から0/100のグラジエント)で精製して4−(2−シクロプロピルビニル)安息香酸メチルを750mg得た。
(2)上記(1)の生成物(750mg)をメタノール(10ml)に溶解し、室温にて2mol/l水酸化ナトリウム水溶液(10ml)を加えて撹拌した。10時間後、メタノールを減圧下で留去し、残渣に2mol/l塩酸(10.5ml)を加えて酸性とした後に酢酸エチル(50ml)で抽出し、溶媒を減圧下で留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=100/0から0/100のグラジエント)で精製して4−(2−シクロプロピルビニル)安息香酸を420mg得た。(3)上記(2)の生成物(420mg)を酢酸(10ml)に溶解し、酸化白金(100mg)を加え、室温下、4気圧にて接触水素添加を行った。10時間後、触媒をろ去し、母液に水(50ml)を加えて酢酸エチル(50ml)で抽出した。有機層を水(50ml)で洗浄し、溶媒を減圧下で留去して4−(2−シクロプロピルエチル)シクロヘキサンカルボン酸を420mg得た。(シス/トランスの混合物)
(4)室温にて、上記(3)の生成物(1.30g)、4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジルアミン塩酸塩(1.25g)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(1.30g)およびトリエチルアミン(726mg)をクロロホルム(20ml)中で混合し撹拌した。10時間後、反応液に水(10ml)を加えて分液し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下で留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=100/0から0/100のグラジエント)で精製して目的物を425mg得た。
1H-NMR (CDCl3, δ) :0.86 (4H, d), 1.08-1.70 (12H, m), 1.75-1.90 (2H, m), 2.20-2.32 (1H, m), 3.87 (3H, s), 4.36 (2H, d), 5.61 (1H, s), 5.73 (1H, brs), 6.73-6.82
(2H, m), 6.86 (1H, d).
【0152】
実施例9
トランス−4−(2−シクロプロピルエチル)−N−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)シクロヘキサンカルボキサミドの製造:
【0153】
【化25】

【0154】
実施例8の(4)において同時に上記の目的物を分離精製し160mg得た。
1H-NMR (CDCl3, δ) :0.86 (3H, t), 0.84-0.94 (2H, m), 1.10-1.65 (8H, m), 1.75-1.95 (4H, m), 1.97-2.10 (1H, m), 3.87 (3H, s), 4.35 (2H, d), 5.58 (1H, s), 5.64 (1H, brs), 6.75 (1H, dd), 6.79 (1H, d), 6.86 (1H, d).
【0155】
実施例10
シス−N−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)−4−(3−メチルブチル)シクロヘキサンカルボキサミドの製造:
【0156】
【化26】

【0157】
(1)アルゴン雰囲気下、4−ホルミル安息香酸メチル(1.00g)、(2−メチルプロピル)トリフェニルホスホニウムブロミド(2.40g)および1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカン−5−エン(850mg)をテトラヒドロフラン(50ml)中で混合し加熱還流させた。15時間後、反応液を室温に戻し、水(30ml)を加えて酢酸エチル(100ml)で抽出した。溶媒を減圧下で留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=100/0から0/100のグラジエント)で精製して4−(3−メチル−1−ブテニル)安息香酸メチルを510mg得た。
(2)上記(1)の生成物(510mg)をメタノール(10ml)に溶解し、室温にて2mol/l水酸化ナトリウム水溶液(5ml)を加えて撹拌した。10時間後、メタノールを減圧下で留去し、残渣に2mol/l塩酸(5.5ml)を加えて酸性とした後に酢酸エチル(25ml)で抽出し、溶媒を減圧下で留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=100/0から0/100のグラジエント)で精製して4−(3−メチル−1−ブテニル)安息香酸を325mg得た。
(3)上記(2)の生成物(325mg)を酢酸(10ml)に溶解し、酸化白金(50mg)を加え、室温下、4気圧にて接触水素添加を行った。10時間後、触媒をろ去し、母液に水(50ml)を加えて酢酸エチル(100ml)で抽出した。有機層を水(50ml)、飽和食塩水(50ml)の順に洗浄し、溶媒を減圧下で留去して4−(3−メチルブチル)シクロヘキサンカルボン酸を335mg得た。(シス/トランスの混合物)(4)室温にて、上記(3)の生成物(335mg)、4−ベンジルオキシ−3−メトキシベンジルアミン塩酸塩(470mg)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(350mg)およびトリエチルアミン(363mg)を酢酸エチル(10ml)中で混合し撹拌した。10時間後、反応液に水(10ml)を加えて分液し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下で留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=100/0から0/100のグラジエント)で精製してN−(4−ベンジルオキシ−3−メトキシベンジル)−4−(3−メチルブチル)シクロヘキサンカルボキサミドを210mg得た。(シス/トランスの混合物)
(5)上記(4)の生成物(210mg)をエタノール(10ml)に溶解し、10%パラジウム炭素(20mg)を加えて、室温にて接触水素添加を行った。1時間後、触媒をろ去し、溶媒を減圧下で留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=100/0から0/100のグラジエント)で精製して目的物を35mg得た。
1H-NMR (CDCl3, δ) :0.87 (6H, d), 1.10-1.18 (2H, m), 1.25-1.33 (2H, m), 1.40-1.65 (8H, m), 1.75-1.90 (2H, m), 2.22-2.32 (1H, m), 3.88 (3H, s), 4.37 (2H, d), 5.61 (1H, s), 5.73 (1H, brs), 6.73-6.85 (2H, m), 6.86 (1H, d).
【0158】
実施例11
トランス−N−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)−4−(3−メチルブチル)シクロヘキサンカルボキサミドの製造:
【0159】
【化27】

【0160】
実施例10の(5)において上記の目的物を分離精製し20mg得た。
1H-NMR (CDCl3, δ) :0.85 (6H, d), 0.83-0.98 (2H, m), 1.10-1.35 (5H, m), 1.40-1.65 (3H, m), 1.78-1.96 (4H, m), 1.98-2.10 (1H, m), 3.88 (3H, s), 4.35 (2H, d), 5.57 (1H, s), 5.64 (1H, brs), 6.76 (1H, dd), 6.79 (1H, d), 6.86 (1H, d).
【0161】
実施例12
4−ブチル−N−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)シクロヘキサ−3−エン−1−カルボキサミドの製造:
【0162】
【化28】

【0163】
(1)アルゴン雰囲気下、無水塩化セリウム(2.70g)を無水テトラヒドロフラン(20ml)に懸濁させ、室温にて撹拌した。1時間後、この懸濁液を−78℃に冷却し、2.6mol/l n−ブチルリチウムヘキサン溶液(2.80ml)をゆっくり滴下して撹拌した。さらに1時間後4−オキソ−シクロヘキサンカルボン酸エチル(1.00g)の無水テトラヒドロフラン溶液(10ml)を加えて撹拌した。さらに3時間後、反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液(5ml)を加えた後、不溶物をろ去し、クロロホルムで洗浄した。母液に水(50ml)を加えて、クロロホルム(100ml)で抽出し、溶媒を減圧下で留去した。得られた残渣をメタノール(10ml)に溶かし、2mol/l水酸化ナトリウム水溶液(5ml)を加えて撹拌した。10時間後、メタノールを減圧下で留去し、残渣に2mol/l塩酸(5.0ml)を加えて中和した後にクロロホルム(25ml)で抽出し、溶媒を減圧下で留去し4−ブチル−4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸を(500mg)得た。
(2)室温にて、上記(1)の生成物(500mg)、4−ベンジルオキシ−3−メトキシベンジルアミン塩酸塩(500mg)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(500mg)およびトリエチルアミン(269mg)を酢酸エチル(10ml)中で混合し撹拌した。10時間後、反応液に水(10ml)を加えて分液し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下で留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=100/0から0/100のグラジエント)で精製して4−ブチル−4−ヒドロキシ−N−(4−ベンジルオキシ−3−メトキシベンジル)シクロヘキサンカルボキサミドを100mg得た。
(3)上記(2)の化合物(100mg)およびp−トルエンスルホン酸一水和物(60mg)をトルエン(10ml)中で混合し加熱還流させた。1時間後、反応液を室温に戻した後、水(10ml)を加えて分液し、溶媒を減圧下で留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=100/0から0/100のグラジエント)で精製して目的物を20mg得た。
1H-NMR (CDCl3, δ) :0.88 (3H, t), 1.20-1.40 (4H, m), 1.68-1.85 (1H, m), 1.88-2.10 (5H, m), 2.20-2.40 (3H, m), 3.88 (3H, s), 4.37 (2H, d), 5.39 (1H, s), 5.59 (1H, s), 5.75 (1H, brs), 6.75 (1H, dd), 6.80 (1H, d), 6.86 (1H, d).
【0164】
実施例13
N−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)−4−ペンチリデンシクロヘキサンカルボキサミドの製造:
【0165】
【化29】

【0166】
(1)0℃、窒素雰囲気下、ペンチルトリフェニルホスホニウムブロミド(7.50g)のテトラヒドロフラン(50ml)溶液に、カリウムt−ブトキシド(2.10g)を加えて撹拌した。1時間後、4−オキソシクロヘキサンカルボン酸(2.00g)のテトラヒドロフラン溶液(20ml)を滴下して加えた後、反応液を室温に戻して撹拌した。3時間後、反応液に水(30ml)を加えて酢酸エチル(100ml)で抽出し、溶媒を減圧下で留去した。残渣をヘキサンに懸濁させ、40℃で撹拌した。20分後、不溶物をろ去し、溶媒を減圧下で留去した。得られた残渣をメタノール(20ml)に溶かし、2mol/l水酸化ナトリウム水溶液(10ml)を加えて40℃で撹拌した。20分後、メタノールを減圧下で留去し、残渣に2mol/l塩酸(10.5ml)を加えて酸性とした後にクロロホルム(50ml)で2回抽出し、溶媒を減圧下で留去し4−ペンチリデンシクロヘキサンカルボン酸を400mg得た。
(2)室温にて、上記(1)の生成物(400mg)、4−ベンジルオキシ−3−メトキシベンジルアミン塩酸塩(400mg)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(425mg)およびトリエチルアミン(436mg)を酢酸エチル(10ml)中で混合し撹拌した。10時間後、反応液に水(10ml)を加えて分液し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下で留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=100/0から0/100のグラジエント)で精製して目的物を200mg得た。
1H-NMR (CDCl3, δ) :0.88 (3H, t), 1.23-1.37 (4H, m), 1.40-1.60 (1H, m), 1.65-1.83 (1H, m), 1.90-2.11 (5H, m), 2.20-2.33 (2H, m), 2.60-2.70 (1H, m), 3.87 (3H, s), 4.35 (2H, d), 5.13 (1H, t), 5.62 (1H, d), 5.69 (1H, brs), 6.75 (1H, dd), 6.79 (1H, d), 6.86 (1H, d).
【0167】
試験例
以下に、本発明の代表的化合物の薬理試験結果を示し、本発明の化合物についての薬理作用を説明するが、本発明はこれらの試験例に限定されるものではない。
【0168】
試験例1:足底熱刺激疼痛試験(Plantar test)
本試験は本発明の化合物を投与することによって、侵害熱刺激に対する逃避潜時がどの程度延長されるかを指標に、鎮痛効果を測定するものであり、Hargreaves等の方法[Pain, 32, 77-88 (1988)]やField等の方法[J. Pharmacol. Exp. Ther.,282,1242-1246 (1997)]に準じて実施した。
【0169】
具体的には、Std:Wistar系雄性ラット(一群4匹,体重170〜220g)を用い、plantar test用機器(Model 7370、Ugo Basile社)を使用し、熱源として赤外線ビームを用いた。ラットを測定用ケージ(床がガラスになっているアクリル箱)に入れ、馴化させた後、赤外線ビームをガラスの床越しに下方から右後肢足底部に照射して、逃避行動を起こすまでの潜時を約5分間隔で三回測定した。尚、赤外線ビームの強度は,試験化合物投与前の値が約10秒となるように設定した。また、足の熱傷を避けるためにカットオフ時間(cut-off time)は25秒とした。それらの測定値から平均値を求め、試験化合物投与前値とした。
【0170】
その翌日に、試験化合物(本発明の化合物およびカプサイシン(シグマ社、米国))を含む溶液または溶媒対照50μlを右足底皮下にマイクロシリンジを使用して注入(足底皮下投与(intraplantar injection):i.pl.投与)した。試験化合物は、10%Tween 80(シグマ社、米国)および10%エタノールを含有する生理食塩液に0.03%(W/V)の濃度になるように溶解させた。溶媒対照には、10%Tween 80および10%エタノールを含有する生理食塩液のみを用いた。試験化合物あるいは溶媒対照を投与した4時間後に上記と同様の試験を実施して投与後値を求めた。鎮痛効果は下記の数式で算出される相対的鎮痛効力(percent maximum possible effect)(%MPE)を指標とした。
%MPE=[(試験化合物投与後値−試験化合物投与前値)/(25*−試験化合物投与前値)]×100
*:カットオフ時間
結果を以下の表1に示す。
【0171】
【表1】

【0172】
表1に示すように、本発明の化合物の多くはi.pl.投与でカプサイシンと同等またはそれ以上の強い鎮痛作用を示した。
【0173】
試験例2:刺激性の検討(アイワイピング(eye-wiping)試験)
本試験は本発明の化合物が、どの程度の刺激性を有するかを検討するものであり、Jancso等の方法[Acta. Physiol. Acad. Sci. Hung.,19, 113-131(1961)]およびSzallasi等の方法[Brit. J. Pharmacol.,119, 283-290(1996)]に準じて実施した。具体的には、5%Tween 80および5%エタノールを含有する生理食塩液に、各濃度(10または30μg/ml)になるように本発明の化合物を溶解させ、得られた溶液をStd:ddy系雄性マウス(一群5匹,体重20〜30g)の眼へ一滴滴下し,前肢での防御的拭い取り動作(protective wiping behavior)の回数を一分毎に投与後5分まで数えた。試験終了後、各分毎の回数の平均値を求め,最大回数を代表値とした。また、溶媒対照として5%Tween 80および5%エタノールを含有する生理食塩液を用い、同様の試験を行った。結果を表2に示す。
【0174】
【表2】

【0175】
表2に示すように、10μg/mlの濃度のカプサイシンを滴下することによって、激しい拭い取り動作が観察された。一方、表2に挙げた化合物は、いずれも30μg/mlの濃度であっても拭い取り動作の回数は、少なく、刺激性が弱いことがわかった。
【0176】
試験例3 皮膚感作性試験(局所リンパ節増殖試験)
本試験は本発明の化合物を投与することによって、アレルギー性接触皮膚炎を惹起する可能性があるかどうかを試験するものである。即ち、BrdU(bromodeoxyuridine)を用いたLLNA(Local Lymph Node Assay,局所リンパ節増殖試験)により、本発明の化合物の皮膚感作性を検討した。
【0177】
具体的には、Sudaらの方法(Suda, A. et al.: Local lymph node assay with non-radioisotope alternative endpoints. J. Toxicol. Sci., 27(3):205-218, 2002)に準じて試験した。即ち、本発明の化合物をDMF(N, N-dimethylformamide)に溶解して1および3%溶液とし、9週齢のCBA/JN系雌マウスの両耳介に3日間連続塗布(1日目〜3日目)(25μl/片耳、1日に一回塗布)した。陽性対照物質としてDNCB(dinitrochlorobenzene,強感作性物質)およびHCA(α-hexyl-cinnamaldehyde,弱感作性物質)を用いた。最終塗布終了後(3日目)にペントバルビタール麻酔下で200mg/mLのBrdU 100μlを入れたALZET Osmotic Pump(放出速度 0.5 μl/時間)を腹側皮下に埋め込み、BrdUを持続暴露させた。本発明化合物を、塗布を始めた日から9日目に頚椎脱臼により動物を安楽死させて両耳下リンパ節を採取して重量を測定した後、PBS中でリンパ節を破砕して単細胞浮遊液を作製し、細胞数を血液検査装置ADVIA(Bayer社)で測定した。次に、BrdU Flow Kit(BD Biosciences社)を用いてFITC標識抗BrdU抗体で細胞を免疫蛍光染色し、フローサイトメータFACS Calibur(Becton Dickinson社)によりBrdU陽性細胞率を測定・解析した後、BrdU陽性細胞率をリンパ節細胞数に乗じてBrdU陽性細胞数を算出した。また、各パラメータについて被験物質群の平均値を媒体対照群の平均値で除し、刺激指数(Stimulation Index,SI)を求めた。皮膚感作性の有無については、原則としてBrdU陽性細胞数のSIが2以上の場合に感作性ありと判定した。
【0178】
この結果、本発明の化合物のうち、実施例2の化合物は皮膚感作性が低いことが認められた。
【産業上の利用可能性】
【0179】
本発明の化合物及びその生理的に許容される塩類は、強力な鎮痛作用を有し、しかもカプサイシンよりも刺激性が弱く、鎮痛薬及び抗炎症薬として、また、既存の鎮痛薬が十分に奏効しない糖尿病性神経障害痛、帯状疱疹後神経痛、三叉神経痛、HIV−多発性神経障害痛等をはじめとする様々なタイプの神経因性疼痛やリウマチ性関節炎や変形性関節炎に起因する疼痛の治療薬として有用である。さらに、これらは偏頭痛や群発性頭痛、そう痒症、アレルギー性及び非アレルギー性の鼻炎、過活動膀胱、脳卒中、過敏性腸症候群、喘息・慢性閉塞性肺疾患のような呼吸器疾患、皮膚炎、粘膜炎、胃・十二指腸潰瘍、炎症性腸症候群及び糖尿病、肥満症の予防及び/又は治療薬としても有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I):
【化1】


[式中、
1は、メトキシ基、水酸基または水素原子を示し、
2は、水素原子、C1〜4アルキル基、C1〜4アルキルカルボニル基またはアリールカルボニル基を示し、および
Dは、下記式(A)、(B)または(C)で表される基:
【化2】


{各式中、R3は、C1〜10アルキル基、C2〜10アルケニル基、C2〜10アルキニル基およびC4〜10アルケニルアルキニル基からなる群から選ばれる直鎖または分岐鎖の炭化水素基を示し、該炭化水素基は、
(1)フッ素原子、水酸基およびC1〜6アルキル基からなる群から選ばれる同一又は異なる1個〜5個の置換基で置換されていてもよい、C3〜8シクロアルキル基;
(2)フッ素原子、水酸基、1個〜5個のフッ素原子で置換され得るC1〜6アルキル基、1個〜5個のフッ素原子で置換され得るC1〜6アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、C1〜4アルキルオキシカルボニル基、C1〜4アルキルカルボニルオキシ基、カルボキシル基およびメチレンジオキシ基からなる群から選ばれる同一又は異なる1個〜5個の置換基で置換されていてもよい、アリール基;
(3)フッ素原子および
(4)水酸基
からなる群から選ばれる同一又は異なる1個〜5個の置換基で置換されていてもよく、
式(A)および式(B)におけるR3は、炭素原子を少なくとも4個含み、式(C)におけるR3は、炭素原子を少なくとも3個含む}を示す]
で表されるN−ベンジルアミド誘導体またはその生理的に許容される塩。
【請求項2】
式(I)において、R1が、メトキシ基、水酸基または水素原子を示し、
2が、水素原子、C1〜4アルキル基、C1〜4アルキルカルボニル基またはアリールカルボニル基を示し、および
Dが、下記式(A)、(B)または(C)で表される基:
【化3】

{各式中、R3は、C1〜10アルキル基およびC2〜10アルケニル基からなる群から選ばれる直鎖または分岐鎖の炭化水素基を示し、該炭化水素基は、
(1)フッ素原子、水酸基およびC1〜6アルキル基からなる群から選ばれる同一又は異なる1個〜5個の置換基で置換されていてもよい、C3〜8シクロアルキル基;
(2)フッ素原子、水酸基、1個〜5個のフッ素原子で置換され得るC1〜6アルキル基、1個〜5個のフッ素原子で置換され得るC1〜6アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、C1〜4アルキルオキシカルボニル基、C1〜4アルキルカルボニルオキシ基、カルボキシル基およびメチレンジオキシ基からなる群から選ばれる同一又は異なる1個〜5個の置換基で置換されていてもよい、アリール基;
(3)フッ素原子および
(4)水酸基
からなる群から選ばれる同一又は異なる1個〜5個の置換基で置換されていてもよく、
式(A)および式(B)におけるR3は、炭素原子を少なくとも4個含み、式(C)におけるR3は、炭素原子を少なくとも3個含む}を示す、請求項1記載のN−ベンジルアミド誘導体またはその生理的に許容される塩。
【請求項3】
式(I)において、R1が、メトキシ基、水酸基または水素原子を示し、
2が、水素原子、C1〜4アルキル基、C1〜4アルキルカルボニル基またはアリールカルボニル基を示し、および
Dが、下記式(A)、(B)または(C)で表される基:
【化4】


{各式中、R3は、C1〜10アルキル基およびC2〜10アルケニル基からなる群から選ばれる直鎖または分岐鎖の炭化水素基を示し、該炭化水素基は、
(1)フッ素原子、水酸基およびC1〜6アルキル基からなる群から選ばれる同一又は異なる1個〜5個の置換基で置換されていてもよい、C3〜8シクロアルキル基;
(3)フッ素原子および
(4)水酸基
からなる群から選ばれる同一又は異なる1個〜5個の置換基で置換されていてもよく、
式(A)および式(B)におけるR3は、炭素原子を少なくとも4個含み、式(C)におけるR3は、炭素原子を少なくとも3個含む}を示す、請求項1記載のN−ベンジルアミド誘導体またはその生理的に許容される塩。
【請求項4】
式(I)において、式(A)および式(B)におけるR3が、炭素原子を4個〜10個含み、式(C)におけるR3が炭素原子を3個〜9個含む、請求項1記載のN−ベンジルアミド誘導体またはその生理的に許容される塩。
【請求項5】
式(I)において、式(A)および式(B)におけるR3が、炭素原子を4個〜8個含み、式(C)におけるR3が、炭素原子を3個〜7個含む、請求項1記載のN−ベンジルアミド誘導体またはその生理的に許容される塩。
【請求項6】
式(I)において、R1が、メトキシ基、水酸基または水素原子を示し、
2が、水素原子、C1〜4アルキル基、C1〜4アルキルカルボニル基またはアリールカルボニル基を示し、および
Dが、下記式(A)、(B)または(C)で表される基:
【化5】

{各式中、R3は、直鎖または分岐鎖のC1〜10アルキル基を示し、該アルキル基は、
(1)フッ素原子、水酸基およびC1〜6アルキル基からなる群から選ばれる同一又は異なる1個〜5個の置換基で置換されていてもよい、C3〜8シクロアルキル基;および
(3)フッ素原子
からなる群から選ばれる同一又は異なる1個〜5個の置換基で置換されていてもよく、
式(A)および式(B)におけるR3は、炭素原子を少なくとも4個含み、式(C)におけるR3は、炭素原子を少なくとも3個含む}を示す、請求項1記載のN−ベンジルアミド誘導体またはその生理的に許容される塩。
【請求項7】
式(I)において、R1が、メトキシ基、水酸基または水素原子を示し、
2が、水素原子、C1〜4アルキル基、C1〜4アルキルカルボニル基またはアリールカルボニル基を示し、および
Dが、下記式(A)、(B)または(C)で表される基:
【化6】

{各式中、R3は、直鎖または分岐鎖のC1〜10アルキル基を示し、該アルキル基は、
(1)フッ素原子、水酸基およびC1〜6アルキル基からなる群から選ばれる同一又は異なる1個〜5個の置換基で置換されていてもよい、C3〜8シクロアルキル基で置換されていてもよく、
式(A)および式(B)におけるR3は、炭素原子を少なくとも4個含み、式(C)におけるR3は、炭素原子を少なくとも3個含む}を示す、請求項1記載のN−ベンジルアミド誘導体またはその生理的に許容される塩。
【請求項8】
式(I)において、R1がメトキシ基または水酸基を示す、請求項1記載のN−ベンジルアミド誘導体またはその生理的に許容される塩。
【請求項9】
式(I)において、R2が水素原子を示す、請求項1記載のN−ベンジルアミド誘導体またはその生理的に許容される塩。
【請求項10】
式(I)において、R1がメトキシ基を示し、R2が水素原子を示す、請求項1記載のN−ベンジルアミド誘導体またはその生理的に許容される塩。
【請求項11】
Dが式(A)で表される、請求項1〜10のいずれかに記載のN−ベンジルアミド誘導体またはその生理的に許容される塩。
【請求項12】
Dが式(B)で表される、請求項1〜10のいずれかに記載のN−ベンジルアミド誘導体またはその生理的に許容される塩。
【請求項13】
Dが式(C)で表される、請求項1〜10のいずれかに記載のN−ベンジルアミド誘導体またはその生理的に許容される塩。
【請求項14】
式(I)で表される化合物が、
トランス−N−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)−4−ペンチルシクロヘキサンカルボキサミド
トランス−N−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)−4−(4−メチルペンチル)シクロヘキサンカルボキサミド
シス−4−ヘキシル−N−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)シクロヘキサンカルボキサミド
トランス−4−(2−シクロプロピルエチル)−N−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)シクロヘキサンカルボキサミド
トランス−N−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)−4−(3−メチルブチル)シクロヘキサンカルボキサミドおよび
N−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)−4−ペンチリデンシクロヘキサンカルボキサミド
からなる群から選択される化合物である、請求項1記載のN−ベンジルアミド誘導体またはその生理的に許容される塩。
【請求項15】
活性成分として請求項1〜14のいずれかに記載のN−ベンジルアミド誘導体またはその生理的に許容される塩を含有する医薬組成物。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれかに記載のN−ベンジルアミド誘導体またはその生理的に許容される塩を有効成分とする疼痛および/または炎症の治療剤または予防剤。

【公開番号】特開2011−102266(P2011−102266A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257819(P2009−257819)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000002912)大日本住友製薬株式会社 (332)
【Fターム(参考)】