説明

N−非置換又はN−置換アジリジンの合成方法

本発明は、式(III)のN−非置換又はN−置換アジリジンの製造方法に関し、この場合、この方法は、式(I)のオレフィン[R〜Rは互いに独立して水素、1〜16個の炭素原子を有する直鎖又は分枝のアルキル基、1〜4個の炭素原子を有するヒドロキシアルキル基、5〜7個の炭素原子を有するシクロアルキル基、ベンジル基及びフェニル基、この場合、このフェニル基は、それぞれフェニル基のo−、m−又はp−位で、メトキシ−、ヒドロキシ−、クロロ−又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基によって置換されていてもよい、を示し、かつ、式中、基R又はRは基R又はRと一緒になって閉環して5〜12員環を形成してもよいか、あるいは、基R及びRは閉環して5〜12員環を形成してもよい]を、ヨウ素又は臭素の存在下で、アンモニア又は式RNHの第1級アミンと反応させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N−非置換又はN−置換アジリジンの製造方法に関する。
【0002】
N−非置換アジリジン及びN−置換アジリジンは、高い反応性を有し、かつ、例えばポリマー及び複素環式化合物を製造するのに役立つ、重要な有機中間生成物である。
【0003】
アジリジン(CN)は、大工業的には、エチレンと空気又は酸素とをエポキシ化することによってエチレンオキシドにし、アンモニアを用いて開環することでモノ−、ジ−及びトリエタノールアミンから成る混合物にし、この混合物からエタノールアミンを分離し、エタノールアミンを硫酸でエステル化することにより、β−アミノエチル硫酸にし、かつその環化によりアジリジンを製造する。この際、1モルのアジリジン当たり、2モルの水酸化ナトリウムを使用し、これから1モノの硫酸ナトリウムが生じる(H. J. Arpe, Industrielle Organische Chemie、第6版、2007、Wiley-VCH-Verlag、第158頁〜第160頁及び第172頁〜第174頁)。同様の方法において、置換アジリジンも使用することができる。
【0004】
この方法の欠点は、多工程であること及び化学量論量の塩生成である。
【0005】
窒素がp−トルエンスルホニル基で置換されたアジリジンを、オレフィンとクロルアミンT(p−トルエンスルホンアミド及び次亜塩素酸ナトリウムから得られる)、炭酸カリウム、二酸化珪素及び触媒量のヨウ素とを反応させることによって製造することが知られている(S. Minakata et al., Angew. Chem. int. Ed. 2004、43、第79頁〜第81頁)。
【0006】
これに関する欠点は、アジリジン窒素が、多段階の合成において製造可能なクロルアミンTによってもたらされ、したがって化学量論量のクロルアミンTが必要とされることである。これは、N−置換アジリジンのみが使用可能であり、かつ化学量論量の塩化ナトリウムが生じることを意味する。
【0007】
さらに、窒素がp−トルエンスルホニル基によって置換されたアジリジンを、オレフィンとp−トルエンスルホンアミドを反応させ、かつその場で(in situ)、次亜塩素酸tert.−ブチル及びヨウ化ナトリウムから製造された次亜ヨウ素酸tert.−ブチルに合成することが知られている(S. Minakata et al., Chem. Commun. 2006、第3337頁〜第3339頁及びJP-A-2007 055958)。
【0008】
この方法は、クロルアミンTで記載した方法と同様の欠点を有する。
【0009】
したがって、本発明の課題は、技術水準の欠点を解消し、かつN−非置換及びN−置換アジリジンをオレフィンから、可能な限り少ない反応段階で、可能な限り塩生成を生じないか又はわずかにのみ生じながら製造する方法を見出すことである。
【0010】
本発明によれば、アジリジン窒素を、アンモニア又は第1級アミンによりもたらすことが、本質的に有利であることが明らかになった。
【0011】
したがって、式II
【化1】

のN−非置換アジリジンを製造する方法が見出され、この場合、この方法は、式I
【化2】

[式中、R〜Rは互いに独立して水素、1〜16個の炭素原子を有する直鎖又は分枝のアルキル基、1〜4個の炭素原子を有するヒドロキシアルキル基、5〜7個の炭素原子を有するシクロアルキル基、ベンジル基及びフェニル基、この場合、フェニル基は、それぞれフェニル基のo−、m−又はp−位でメトキシ−、ヒドロキシ−、クロロ又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基によって置換されていてもよい、を示し、かつ、基R又はRは基R又はRと一緒になって閉環して5〜12員環を形成してもよいか、あるいは、基R及びRは閉環して5〜12員環を形成してもよい]のオレフィンを、ヨウ素又は臭素の存在下でアンモニアと反応させる。
【0012】
さらに、式IIのN−非置換アジリジンを製造する方法が見出され、この場合、この方法は、式Iのオレフィンを、ヨウ化物及び酸化剤、この場合、この酸化剤は、ヨウ化物をヨウ素に酸化することができるものである、の存在下で、アンモニアと一緒に反応させる。
【0013】
さらに、式IIのN−非置換アジリジンを製造する方法が見出され、この場合、この方法は、式Iのオレフィンを、臭化物及び酸化剤、この場合、この酸化剤は、臭化物を臭素に酸化することができるものである、の存在下で、アンモニアと一緒に反応させる。
【0014】
さらに、式III
【化3】

のN−置換アジリジンの製造方法が見出され、この場合、この方法は、式I
【化4】

[式中、R〜Rは互いに独立して水素であり、かつ、R〜Rは互いに独立して1〜16個の炭素原子を有する直鎖又は分枝のアルキル基、1〜4個の炭素原子を有するヒドロキシアルキル基、5〜7個の炭素原子を有するシクロアルキル基、ベンジル基及びフェニル基、この場合、このフェニル基は、それぞれフェニル基のo−、m−又はp−位でメトキシ−、ヒドロキシ−、クロロ−又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基によって置換されていてもよい、を示し、かつ、基R又はRは基R又はRと一緒になって閉環して5〜12員環を形成してもよいか、あるいは、基R及びRは閉環して5〜12員環を形成してもよい]のオレフィンを、ヨウ素又は臭素の存在下で、式RNHの第1級アミンと反応させ、その際、反応混合物中の第1級アミン(RNH)の濃度は1.1モル又はそれを下回る(≦1.1M)。
【0015】
さらに、式IIIのアジリジンを製造する方法が見出され、この場合、この方法は、式Iのオレフィンを、ヨウ化物及び酸化剤、この場合、この酸化剤は、ヨウ化物をヨウ素に酸化することができるものである、の存在下で、式RNHの第1級アミンと反応させ、その際、反応混合物中の第1級アミン(RNH)の濃度は1.1モル又はそれを下回る(≦1.1M)。
【0016】
さらに、式IIIのアジリジンを製造する方法が見出され、この場合、この方法は、式Iのオレフィンを、臭化物及び酸化剤、この場合、この酸化剤は、臭化物を臭素に酸化することができるものである、の存在下で、式RNHの第1級アミンと反応させ、その際、反応混合物中の第1級アミン(RNH)の濃度は1.1モル又はそれを下回る(≦1.1M)。
【0017】
式IIのN−非置換アジリジンを製造する方法において、反応混合物中のアンモニアの濃度は、反応開始時において好ましくは1.2モル又はそれを上回り(≧1.2M)、特に1.25モル又はそれを上回り(≧1.25M)、例えば1.2M以上15モルまでの範囲、特に1.2M以上2モルまでの範囲である。
【0018】
式IIIのN−置換アジリジンを製造する方法において、反応混合物中の第1級アミン(RNH)の濃度は、好ましくは1.0モル又はそれを下回る(≦1.0M)。反応混合物中の第1級アミン(RNH)の濃度は、反応開始時において、好ましくは0.5モルを上回り(>0.5M)、特に好ましくは0.7モルを上回り(>0.7M)、とりわけ好ましくは0.8モルを上回る(>0.8M)。
【0019】
本発明によれば、専ら式IIIのN−置換アジリジンを製造する方法が、反応混合物中の第1級アミン(RNH)の最初の濃度を、上記範囲(>0.5〜≦1.1M、特に>0.8〜≦1.1M)に調整する場合には、特に収率及び選択率に関して特に有利に進行することが見出された。
【0020】
本発明による反応は、例えば、オレフィンとしてのスチレン及びアンモニア(及び溶剤としての水)を使用する場合には、以下の反応式により示すことができる:
【化5】

【0021】
ヨウ化物及び酸化剤を用いての方法の好ましい実施態様は、例えばオレフィンとしてのスチレン、アンモニア、溶剤としての水、ヨウ化物としてのヨウ化アンモニアウム及び酸化剤としての次亜塩素酸ナトリウムを使用する場合には、以下の反応式によって示すことができる:
【化6】

【0022】
アンモニアの代わりに第1級アミン(RNH)を使用する場合もこれに相当する。
【0023】
式Iのオレフィンにおいて、基R〜Rの例は以下のとおりである:
H、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、3−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル。
【0024】
適したオレフィンIに関する例は、エチレン、プロピレン、i−ブテン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、シクロペンテン、メチレンシクロペンタン、シクロヘキセン、メチレンシクロヘキサン、3−ヘキセン、2−メチル−1−ヘプテン、1−オクテン、シクロオクテン、2−オクテン、1−ドデセン、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、2−ブテン−1−オール、2−ブテン−1,4−ジオール。
【0025】
アンモニアは、好ましくは水性溶液として使用され、この場合、これは、好ましくは0.1〜30質量%のアンモニアを含有することができる。本発明による反応は、さらに反応条件下でアンモニアを遊離することができる化合物の存在下で実施することができる。
【0026】
第1級アミン(RNH)中の基Rに関する例は以下のとおりである:
メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、シクロペンチル、シクロヘキシル。
【0027】
特に好ましい第1級アミン(RNH)は、メチルアミン及びエチルアミンである。
【0028】
第1級アミン(RNH)は、好ましくは水性溶液として使用する。溶剤は、飽和溶解度まで第1級アミンを含有することができる。本発明による反応は、さらに反応条件下で第1級アミンを遊離することができる化合物の存在下で実施することができる。
【0029】
方法の一つの実施形態において、ヨウ素及び/又はヨウ化物を使用することができる。ヨウ素及びヨウ化物の代わりに、臭素及び臭化物を使用することもできる。これに関して、ヨウ素及びヨウ化物は臭素及び臭化物よりも好ましい。
【0030】
ヨウ化物及び臭化物として、アルカリ金属ヨウ化物、アルカリ土類金属ヨウ化物、ヨウ化アンモニウム及びテトラアルキルヨウ化アンモニウム又はアルカリ金属臭化物、アルカリ土類金属臭化物、臭化アンモニウム及びテトラアルキル臭化アンモニウムであり、その際、アルキル基は、アルキルアンモニウムハロゲン化物中で好ましくは、それぞれ及び互いに独立して1〜5個の炭素原子を含有し、かつN−ハロゲンイミドが適している。このようなハロゲン化物のための例は:ヨウ化アンモニウム、臭化アンモニウム、N−ブロモ−スクシンイミド、N−ヨード−スクシンイミド、ヨウ化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化マグネシウム、臭化マグネシウム、テトラメチルアンモニウムヨージド、テトラメチルアンモニウムブロミド;特に好ましくはヨウ化アンモニウム及び臭化アンモニウムである。さらに、ヨウ化物の代わりに、ヨウ化物と元素ヨウ素から成る混合物並びに臭化物の代わりに元素臭素及び臭化物から成る混合物を使用することも可能である。
【0031】
ヨウ化物及びヨウ素から成る混合物の場合には、ヨウ化物とヨウ素とのモル比は1:0.01〜0.01:1である。臭化物及び臭素に関しても同様のモル比があてはまる。
【0032】
本発明による方法において使用された酸化剤は、ヨウ化物からヨウ素ないしは臭化物から臭素に酸化することができるものである。適しているのは、例えば酸素、例えば空気の形で、過酸化水素、例えば水性溶液の形で、アルキルヒドロペルオキシド、例えばクメンヒドロペルオキシド、tert.−ブチルヒドロペルオキシド、シクロヘキシルヒドロペルオキシド、メチルフェニルヒドロペルオキシド、アントラキノンエンドペルオキシド、次亜塩素酸、アルカリ金属次亜塩素酸塩及びアルカリ土類金属次亜塩素酸塩、次亜塩素酸tert.−ブチル、次亜臭素酸ter.−ブチル、次亜ヨウ素酸tert.−ブチル及び一酸化二窒素である。
【0033】
ヨウ化物又は臭化物を電気化学的に、ヨウ素又は臭素に酸化することも可能である。
【0034】
溶剤として好ましくは水を使用し、水中でアンモニア又は第1級アミン、ヨウ化物又は臭化物及び複数種の酸化剤は十分に溶解する。さらにヨウ素は水中で極めてわずかな量のみ溶解するが、しかしながらヨウ化物の存在下では容易に溶解する。
【0035】
しかしながらさらに、水及び反応条件下において不活性の有機溶剤を使用することが有利であってもよい。これに関して、良好な水溶解性及びやや良好な水溶解性を有する溶剤も可能である。良好な水溶解性の溶剤に関しては、例えばエーテル、例えばテトラヒドロフラン及びジオキサンが挙げられ、やや溶解性の溶剤に関しては、脂肪族、脂環式及び芳香族炭化水素、例えばn−ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン及びトルエンが挙げられる。
【0036】
わずかな水溶解性を有する溶剤の使用は、一般には、有機相と水相との間の改善された分離及びそれに伴う反応混合物の容易な後処理を導く。
【0037】
オレフィン(I)とアンモニアとヨウ化物、ヨウ素又はヨウ化物+ヨウ素とのモル比は、好ましくは1:1〜100:0.001〜1.5、特に好ましくは1:1〜90:0.01〜1.3、とりわけ好ましくは1:1〜80:0.1〜1.1である。オレフィンとアンモニアと臭化物、臭素又は臭化物+臭素との比に関しても同様のモル比があてはまる。
【0038】
オレフィン(I)と第1級アミン(RNH)とヨウ化物、ヨウ素又はヨウ化物+ヨウ素とのモル比は、好ましくは1:1〜100:0.001〜1.5、特に好ましくは1:1〜90:0.01〜1.3、とりわけ好ましくは1:1〜80:0.1〜1.1である。オレフィンと第1級アミン(RNH)と臭化物、臭素又は臭化物+臭素との比に関しても同様のモル比があてはまる。
【0039】
ヨウ化物又はヨウ素と酸化剤とのモル比は、好ましくは1:1〜10、特に好ましくは1:1〜4、とりわけ好ましくは1:1〜3である。
【0040】
オレフィン(I)と酸化剤とのモル比は、好ましくは1:1〜5、特に好ましくは1:1〜3であり、とりわけ好ましくは1:2である。
【0041】
反応バッチは、好ましくは30〜90質量%の水及び1〜30質量%の有機溶剤、特に好ましくは70〜80質量%の水及び2〜20質量%の有機溶剤を含有する。
【0042】
好ましい方法において、反応バッチに表面活性物質を添加し、この場合、これは、アジリジン収率の顕著な増加に作用するものである。
【0043】
表面活性物質としては、本質的にUllmanns Encyclopedia of Industrial Chemistry, 第6版、第35巻、見出し"surfactants"、第293頁〜第368頁に挙げられたすべての物質群が適している。
【0044】
これに関して、アニオン、カチオン、ノニオン、両性及びアニオン/カチオンの表面活性物質(界面活性剤)が挙げられる。
【0045】
これに関して好ましい表面活性物質はノニオン界面活性剤、例えばポリアルキレングリコールアルキルエーテル(例えばBrij(R))である。これは、親油性部分が脂肪族アルコールから成り、親水性部分が短鎖ポリアルキレングリコール、好ましくはポリエチレングリコールから成るコポリマーを示す。脂肪族アルコールとして、好ましくはラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸又はオレイン酸由来のアルコールを使用する。適したノニオン界面活性剤の他の例は:
Tritone(R)(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールのエトキシレート)、
Lutensole(R)(エトキシ化脂肪族アルコール、アルキルフェノール又は脂肪族アミン)
Tweene(R)(ソルビタンエステルのポリオキシエチレン誘導体、例えばポリエトキシソルビタンラウレート)。
【0046】
表面活性物質の量は、好ましくは、それぞれ全反応混合物に対して0.01〜10質量%、特に好ましくは0.5〜5質量%、とりわけ好ましくは1〜2質量%である。
【0047】
表面活性物質の代わりにか又はこれに追加して、ゼオライト及び/又は他の有孔の無機材料の存在下で実施することができる。ここにおいても同様に、アジリジン収率の顕著な増加を観察することができる。
【0048】
ゼオライトとして、原則的に、すべての天然に生じるもの及び合成的に製造されたゼオライト、すなわちA、X、Y及びL型のゼオライトが適しており、この場合、これらは、孔幅及びSiO:Alとの比(モジュラス)において異なるものである。好ましくは、SiOから構成されたゼオライト、例えばシリカライト及び高いSiO含量を有するゼイライト、すなわち高モジュラスのもの、例えばZSM−5−ゼオライト(モジュラス約30)及び合成モルデライト(モジュラス約10)である。
【0049】
ゼオライト及び/又は他の有孔の無機材料の量は、好ましくは、それぞれ全反応混合物に対して1〜20質量%、特に好ましくは1〜10質量%、とりわけ好ましくは1〜5質量%である。
【0050】
アジリジンの製造は、好ましくは0〜300℃、特に好ましくは10〜250℃、とりわけ好ましくは20〜200℃、例えば好ましくは20〜50℃の範囲で実施する。
【0051】
好ましくは1〜300bar、特に好ましくは1〜250bar、とりわけ好ましくは1〜150bar、例えば好ましくは1〜10barの範囲で実施する。
【0052】
本発明による反応は、一工程で、二工程で又は二以上の工程で、液相中で実施することができる。
【0053】
一工程の方法の場合には、反応対であるオレフィン、アンモニア又は第1級アミン、ハロゲン及び/又はハロゲン化物を、酸化剤の存在下で、溶剤としての水中で、かつ場合によっては付加的に有機溶剤、表面活性物質及び/又は懸濁されたか又は固定されたゼオライトの存在下で、反応容器中で、上記反応条件下で、例えば0.1〜30時間に亘って混合する。反応は、断続的又は連続的に実施されることができる。一般に、反応後に、反応搬出物の液体の水相と液体の有機相への分離を実施する。
【0054】
液体の有機相は、形成されたアジリジン及び場合によっては未反応のオレフィン、表面活性物質及び有機溶剤を含有する。
【0055】
液体の水相は、ハロゲン及びハロゲン化物、アンモニア又は第1級アミン及び場合によっては表面活性物質を含有する。これは、合成工程に返送することができる。
【0056】
有機相の後処理は、公知方法で、例えば蒸留によって実施することができる。未反応オレフィン、有機溶剤及び表面活性物質を、合成工程中に返送することができる。
【0057】
本発明による方法の有利な変法において、アジリジン製造の際に生じるヨウ化物又は臭化物を引き続いて酸化し、かつ合成工程中に返送する。
【0058】
二工程の方法の場合には、第1工程では、反応対であるオレフィン、アンモニア又は第1級アミン及びハロゲン(すなわち、臭素又はヨウ素)を、酸化剤を添加物ことなしに、溶剤としての水中及び場合によっては付加的な有機溶剤、表面活性物質及び/又は懸濁されたか又は固定された無機触媒、すなわち、上記に示されたゼオライト及び/又は他の有孔の無機材料の存在下で、反応容器中で、上記反応条件下で、例えば0.1〜30時間に亘って混合する。反応は、断続的又は連続的に実施することができる。反応後にこの相を分離する。有機相は、一工程の方法で記載したようにして後処理をおこなう。
【0059】
水相は、第2工程で酸化剤、例えば上記に示す酸化剤を用いて処理するか又は電気化学的に酸化する。この際、ヨウ化物又は臭化物をヨウ素又は臭素に酸化する。ハロゲンを含有する水相は、その後に合成工程中に返送する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明によるスチレンとアンモニア(NH)との反応における、最初のアンモニア濃度への2−フェニル−アジリジンの収率の依拠を示す図
【0061】

反応搬出物の組成及びアジリジンの収率及び選択率は、ガスクロマトグラフィーにより測定する。Brij 35(R)はポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテルの商標である。
【0062】
Triton(R)X-100は、ノニオン界面活性剤を示し、この場合、これは、4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールのエトキシレートから構成される。Lutensole(R)は、エトキシ化脂肪族アルコール、アルキルフェノール又は脂肪族アミンをベースとするノニオン界面活性剤である。Tweene(R)は、ソルビタンエステルのポリオキシエチレン誘導体、例えばポリエトキシソルビタンラウレート(Tween(R)20)、ポリエトキシソルビタンパルミテート(Tween(R)40)及びポリエトキシソルビタンオレエート(Tween(R)80)である。
【0063】
例1
Brij 35(R)(90mg)及び0.5mmolのヨウ素(127mg)を、25質量%濃度の水性アンモニア溶液5mlに添加する。この反応を、0.5mmolのスチレン(57μl)を添加することにより開始する(したがってBrj 35の割合は2質量%であり、ヨウ素及びスチレンのモル濃度はそれぞれ0.1Mである)。室温で2時間に亘っての反応時間の後に、反応混合物をジエチルエーテルで抽出する。2−フェニルアジリジンの収率は65%である(選択率>99%)。
【0064】
同条件下での反応を24時間に亘って実施する場合には、収率は81%に達する(選択率99%)。
【0065】
例2
Brij 35(R)(180mg)及び0.5mmolのヨウ素(127mg)を、25質量%濃度の水性アンモニア溶液5mlに添加する。この反応を、0.49mmolのα−メチルスチレン(65μl)を添加することによって開始する(したがって、Brj 35の割合は4質量%であり、ヨウ素及びα−メチルスチレンのモル濃度はそれぞれ0.1Mである)。室温で2時間に亘っての反応時間の後に、反応混合物をジエチルエーテルで抽出する。2−メチル−2−フェニルアジリジンの収率は76%である(選択率>99%)。
【0066】
例3
a)Brij 35(R)(180mg)及び0.5mmolのヨウ素(127mg)を、25質量%濃度の水性アンモニア溶液5mlに添加する。この反応を、0.5mmolのp−クロロスチレン(60μl)を添加することによって開始する(したがって、Brj 35の割合は4質量%であり、ヨウ素及びp−クロロスチレンのモル濃度はそれぞれ0.1Mである)。室温で2時間に亘っての反応時間の後に、反応混合物をジエチルエーテルで抽出する。2−(p−クロロフェニル)アジリジンの収率は60%(選択率>99%)に達する。
b)例3a)と同条件下で、β−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン及びm−クロロスチレンを、相当するアジリジンに変換する。以下の収率が得られる:1−フェニル−2−メチルアジリジン30%、2−(p−メチルフェニル)アジリジン60%、2−(p−メトキシフェニル)アジリジン56%、2−(m−クロロフェニル)アジリジン61%。
c)例3a)と同条件下で、スチレンを、一連の電荷をもたない表面活性物質(4質量%)の存在下で反応させる。2−フェニルアジリジンの収率は、以下の表面活性物質に括弧書きで示す。Triton X-100(45%)、Lutensole, AT25(49%)、FB AT80 (50%)、XL 140(51%)、Tween 20(49%)、40(51%)、80(49%)。
d)例3c)で、表面活性物質の不在下で実施した場合には、1%の2−フェニルアジリジンが観察される。
【0067】
例4
a)例3c)において、表面活性物質の代わりにシリカライト(5.5質量%)の存在下で実施する場合には、2−フェニルアジリジンの収率は35%である。
【0068】
b)例4a)において、シリカライトの代わりにMCM−41(5.5質量%)を使用する場合には、収率は35%である。
【0069】
例5
Brij 35(R)(180mg)及び0.5mmolのヨウ素(127mg)を、25質量%濃度の水性アンモニア溶液5mlに添加する。この反応を、0.46mmolの2−メチル−1−ヘプテン(78μl)を添加することにより開始する(したがってBrj 35の割合は4質量%であり、ヨウ素のモル濃度は0.1Mであり、かつ2−メチル−1−ヘプテンのモル濃度は0.9Mである)。70℃で2時間に亘っての反応時間の後に、反応混合物を、ジエチルエーテルを用いて抽出する。2−メチル−2−ペンチルアジリジンの収率は1%である(選択率>98%)。
【0070】
例6
Brij 35(R)(180mg)、ヨウ化アンモニウム(73mg)及び0.5mmolのスチレン(57μl)を、25質量%濃度の水性アンモニア溶液5mlに添加する。この反応は、10〜13質量%の水性次亜塩素酸ナトリウム溶液(400μl)の少量ずつの添加によって開始し、その際、それぞれ40μlを5分ごとに添加する。室温で2時間に亘っての反応時間の後に、反応混合物をジエチルエーテルで抽出する。2−フェニルアジリジンの収率は74%である(選択率>98%)。
【0071】
例7
Brij 35(R)(180mg)、ヨウ化アンモニウム(73mg)及び0.46mmolの2−メチル−1−ヘプテン(78μl)を、25質量%濃度の水性アンモニア溶液5mlに添加する。この反応は、10〜13質量%の水性次亜塩素酸ナトリウム溶液(1ml)の少量ずつの添加により開始する。次亜塩素酸ナトリウム溶液は、200μlの部分量を5分ごとに添加する。室温で2時間に亘っての反応時間の後に、反応混合物をジエチルエーテルで抽出する。2−メチル−2−ペンチルアジリジンの収率は1%である。
【0072】
例8(比較例)
Brij 35(R)(180mg)及び0.5mmolのスチレン(57μl)を、25質量%濃度の水性アンモニア溶液5mlに添加する。この反応は、10〜13質量%の水性次亜塩素酸ナトリウム溶液(1ml)の少量ずつの添加により開始し、その際、それぞれ200μlを5分ごとに添加する。室温で2時間に亘っての反応時間の後に、反応混合物を、ジエチルエーテルで抽出する。2−フェニルアジリジンの収率は<1%である。
【0073】
例9
Brij 35(R)(180mg)、ヨウ化アンモニウム(50モル%、37mg)及び0.5mmolのスチレン(57μl)を、25質量%濃度の水性アンモニア溶液5mlに添加する。反応は、10〜13質量%の水性次亜塩素酸ナトリウム溶液(400μl)の少量ずつの添加により開始する。室温で2時間に亘っての反応時間の後に、反応混合物をジエチルエーテルで抽出する。2−フェニルアジリジンの収率は60%である。
【0074】
例10
Brij 35(R)(180mg)、ヨウ化アンモニウム(29mg)及び0.5mmolのスチレン(57μl)を、1.3モルの水性アンモニア溶液5mlに添加する。この反応は、10〜13質量%濃度の水性次亜塩素酸ナトリウム溶液(400μl)の少量ずつの添加により開始し、その際、それぞれ40μlを5分ごとに添加する。室温で2時間に亘っての反応時間の後に、反応混合物をジエチルエーテルで抽出する。2−フェニルアジリジンの収率は90%である(選択率99%)。
【0075】
例11
Brij 35(R)(180mg)、ヨウ化アンモニウム(29mg)及び0.5mmolの置換されたスチレン誘導体(量は以下参照)を、1.3モルの水性アンモニア溶液5mlに添加する。この反応は、10〜13質量%濃度の水性次亜塩素酸ナトリウム溶液(400μl)の少量ずつの添加により開始し、その際、それぞれ40μlを5分ごとに添加する。室温で2時間に亘っての反応時間の後に、反応混合物をジエチルエーテルで抽出する。一置換された2−フェニルアジリジンの収率は以下のとおりである:
74% p−クロロスチレン(60μl)からの2−(p−クロロフェニル)−アジリジン(選択率99%)、
92% α−メチルスチレン(65μl)からの2−メチル−2−フェニル−アジリジン(選択率99%)、
56% β−メチルスチレン(65μl)からの2−メチル−3−フェニル−アジリジン(選択率98%)
【0076】
例12
Brij 35(R)(90mg)及び0.5mmolのヨウ素(127mg)を、1モルの水性メチルアミン溶液5mlに添加する。この反応を、0.5mmolのスチレン(57μl)を添加することにより開始する。室温で2時間に亘っての反応時間の後に、反応混合物をジエチルエーテルで抽出する。1−メチル−2−フェニルアジリジンの収率は43%である(選択率84%)。
【0077】
同条件下での反応を5時間に亘って実施する場合には、収率は64%に達する(選択率86%)。
【0078】
例13
Brij 35(R)(90mg)及び0.5mmolのヨウ素(127mg)を、0.6モルの水性エチルアミン溶液5mlに添加する。この反応を、0.5mmolのスチレン(57μl)を添加することにより開始する。室温で2時間に亘っての反応時間の後に、反応混合物をジエチルエーテルで抽出する。1−エチル−2−フェニルアジリジンの収率は28%である(選択率93%)。
【0079】
例14
Brij 35(R)(90mg)及び0.5mmolのヨウ素(127mg)を、1モルの水性メチルアミン溶液5mlに添加する。この反応を、0.5mmolのp−クロロスチレン(60μl)を添加することにより開始する。室温で2時間に亘っての反応時間の後に、反応混合物をジエチルエーテルで抽出する。1−メチル−2−(p−クロロフェニル)−アジリジンの収率は39%である(選択率93%)。
【0080】
例15
Brij 35(R)(90mg)及び0.2mmolのヨウ素(254mg)を、1モルの水性メチルアミン溶液5mlに添加する。この反応を、0.5mmolのスチレン(57μl)を添加することにより開始する。室温で2時間に亘っての反応時間の後に、反応混合物をジエチルエーテルで抽出する。1−メチル−2−フェニルアジリジンの収率は68%である(選択率83%)。
【0081】
例16
Brij 35(R)(90mg)及び0.1mmolのヨウ素(127mg)を、1モルの水性メチルアミン溶液5mlに添加する。この反応を、0.48mmolの2−メチル−1−ヘプテン(57μl)を添加することにより開始する。室温で2時間に亘っての反応時間の後に、反応混合物をジエチルエーテルで抽出する。1−メチル−2−フェニルアジリジンの収率は3%である(選択率83%)。
【0082】
例17
Brij 35(R)(90mg)、ヨウ化アンモニウム(73mg)及び0.5mmolのスチレン(57μl)を、1モルの水性メチルアミン溶液5mlに添加する。この反応は、10〜13質量%の水性次亜塩素酸ナトリウム溶液(400μl)の少量ずつの添加によって開始し、その際、それぞれ40μlを5分ごとに添加する。室温で2時間に亘っての反応時間の後に、反応混合物をジエチルエーテルで抽出する。1−メチル−2−フェニルアジリジンの収率は39%である(選択率95%)。
【0083】
例18
Brij 35(R)(90mg)、ヨウ化アンモニウム(73mg)及び0.5mmolのスチレン(57μl)を、1モルの水性メチルアミン溶液5mlに添加する。この反応は、10〜13質量%の水性次亜塩素酸ナトリウム溶液(1ml)の少量ずつの添加により開始し、その際、それぞれ100μlを5分ごとに添加する。室温で2時間に亘っての反応時間の後に、反応混合物をジエチルエーテルで抽出する。1−メチル−2−フェニルアジリジンの収率は73%である(選択率97%)。
【0084】
例19
Brij 35(R)(90mg)、ヨウ化アンモニウム(73mg)及び0.5mmolのスチレン(57μl)を、0.5モルの水性メチルアミン溶液5mlに添加する。この反応は、10〜13質量%濃度の水性次亜塩素酸ナトリウム溶液(1ml)の少量ずつの添加により開始し、その際、それぞれ100μlを5分ごとに添加する。室温で2時間に亘っての反応時間の後に、反応混合物をジエチルエーテルで抽出する。1−メチル−2−フェニルアジリジンの収率は52%である(選択率95%)。
【0085】
例20
Brij 35(R)(90mg)、ヨウ化アンモニウム(73mg)及び0.5mmolのスチレン(57μl)を、0.6モルの水性エチルアミン溶液5mlに添加する。この反応は、10〜13質量%濃度の水性次亜塩素酸ナトリウム溶液(1ml)の少量ずつの添加により開始し、その際、それぞれ100μlを5分ごとに添加する。室温で2時間に亘っての反応時間の後に、反応混合物をジエチルエーテルで抽出する。1−エチル−2−フェニルアジリジンの収率は55%である(選択率96%)。
【0086】
以下、図1は、例示的に、本発明によるスチレンとアンモニア(NH)との反応に関して、最初のアンモニア濃度への2−フェニル−アジリジンの収率の依拠を示す。試験条件は例6に相当するが、この際、種々のNH濃度により異なる。これにより、好ましいアンモニア濃度の範囲が≧1.2〜15モルであることが明らかとなった。
【0087】
これとは対照的に、第1級アミン(RNH)を用いての本発明による反応の場合において、第1級アミン濃度の見出された好ましい範囲は、驚くべきことに>0.5〜≦1.1モルであった。これについて例6及び19を比較した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式II
【化1】

のN−非置換アジリジンの製造方法において、式I
【化2】

[式中、R〜Rは互いに独立して水素、1〜16個の炭素原子を有する直鎖又は分枝のアルキル基、1〜4個の炭素原子を有するヒドロキシアルキル基、5〜7個の炭素原子を有するシクロアルキル基、ベンジル基及びフェニル基、この場合、このフェニル基は、それぞれフェニル基のo−、m−又はp−位でメトキシ基、ヒドロキシ基、クロロ基又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基によって置換されていてもよい、を示し、かつ、基R又はRは基R又はRと一緒になって閉環して5〜12員環を形成してもよいか、あるいは、基R及びRは閉環して5〜12員環を形成してもよい]のオレフィンを、ヨウ素又は臭素の存在下で、アンモニアと反応させることを特徴とする、式IIのN−非置換アジリジンの製造方法。
【請求項2】
式I(式中、請求項1に記載したとおり)のオレフィンを、ヨウ化物及び酸化剤、この場合、この酸化剤は、ヨウ化物をヨウ素に酸化することができるものである、の存在下でアンモニアと反応させることを特徴とする、式II(式中、請求項1に記載したとおり)のアジリジンの製造方法。
【請求項3】
式I(式中、請求項1に記載したとおり)のオレフィンを、臭化物及び酸化剤、この場合、この酸化剤は、臭化物を臭素に酸化することができるものである、の存在下でアンモニアと反応させることを特徴とする、式II(式中、請求項1に記載したとおり)のアジリジンの製造方法。
【請求項4】
反応開始時における反応混合物中のアンモニアの濃度が、1.2モル又はそれを上回る(≧1.2M)、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
式III
【化3】

のN−置換アジリジンの製造方法において、式I
【化4】

[式中、R〜Rは互いに独立して水素であり、かつ、R〜Rは互いに独立して1〜16個の炭素原子を有する直鎖又は分枝のアルキル基、1〜4個の炭素原子を有するヒドロキシアルキル基、5〜7個の炭素原子を有するシクロアルキル基、ベンジル基及びフェニル基、この場合、このフェニル基は、それぞれフェニル基のo−、m−又はp−位で、メトキシ基、ヒドロキシ基、クロロ基又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基によって置換されていてもよい、を示し、かつ、基R又はRは基R又はRと一緒になって閉環して5〜12員環を形成してもよいか、あるいは、基R及びRは閉環して5〜12員環を形成してもよい]のオレフィンを、ヨウ素又は臭素の存在下で、式RNHの第1級アミンと反応させ、その際、反応混合物中の第1級アミン(RNH)の濃度は、1.1モル又はそれを下回る(≦1.1M)ことを特徴とする、式IIIのN−置換アジリジンの製造方法。
【請求項6】
式III(式中、請求項5に記載したとおり)のアジリジンの製造方法において、式I(式中、請求項5に記載したとおり)のオレフィンを、ヨウ化物及び酸化剤、この場合、この酸化剤は、ヨウ化物をヨウ素に酸化することができるものである、の存在下で、式RNHの第1級アミンと反応させ、その際、反応混合物中の第1級アミン(RNH)の濃度は、1.1モル又はそれを下回る(≦1.1M)ことを特徴とする、式III(式中、請求項5に記載したとおり)のアジリジンの製造方法。
【請求項7】
式III(式中、請求項5に記載したとおり)のアジリジンの製造方法において、式I(式中、請求項5に記載したとおり)のオレフィンを、臭化物及び酸化剤、この場合、この酸化剤は、臭化物を臭素に酸化することができるものである、の存在下で、式RNHの第1級アミンと反応させ、その際、反応混合物中の第1級アミン(RNH)の濃度は1.1モル又はそれを下回る(≦1.1M)ことを特徴とする、式III(式中、請求項5に記載したとおり)のアジリジンの製造方法。
【請求項8】
反応開始時における反応混合物中の第1級アミン(RNH)の濃度が、0.5モルを上回る(>0.5M)、請求項5から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ヨウ化物として、アルカリ金属ヨウ化物、アルカリ土類金属ヨウ化物、ヨウ化アンモニウム、テトラアルキルアンモニウムヨージド又はこれらヨウ化物の(2種又はそれ以上の)混合物を使用する、請求項2、4、6又は8に記載の方法。
【請求項10】
臭化物として、アルカリ金属臭化物、アルカリ土類金属臭化物、臭化アンモニウム、テトラアルキルアンモニウムブロミド又はこれら臭化物の(2種又はそれ以上の)混合物を使用する、請求項3、4、7又は8に記載の方法。
【請求項11】
ヨウ化物を、ヨウ化物とヨウ素とから成る混合物として使用する、請求項2、4、6、8又は9に記載の方法。
【請求項12】
臭化物を、臭化物と臭素とから成る混合物として使用する、請求項3、4、7、8又は10に記載の方法。
【請求項13】
酸化剤として、酸素、過酸化水素、クメンヒドロペルオキシド、メチルフェニルヒドロペルオキシド、アントラキノンエンドペルオキシド、次亜塩素酸、次亜塩素酸tert.−ブチル、次亜臭素酸tert.−ブチル、次亜ヨウ素酸tert.−ブチル、一酸化二窒素、アルカリ金属次亜塩素酸塩又はアルカリ土類金属次亜塩素酸塩を使用する、請求項2、3、4、6から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
酸化剤としてアノードを使用する(電気化学的酸化)、請求項2、3、4、6から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
水の存在下で反応を実施する、請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
水及び有機溶剤の存在下で反応を実施する、請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
有機溶剤としてエーテル又は脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素又は芳香族炭化水素を使用する、請求項1から16までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
アジリジンの製造を、表面活性物質の存在下で実施する、請求項1から17までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
アジリジンの製造を、ノニオン表面活性物質の存在下で実施する、請求項1から18までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
ノニオン表面活性物質としてポリアルキレングリコールアルキルエーテル又はエトキシ化脂肪族アルコール、エトキシ化アルキルフェノール又はエトキシ化脂肪族アミンを使用する、請求項1から19までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
アジリジンの製造を、ゼオライトの存在下で実施する、請求項1から20までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
オレフィン(I)とアンモニアとハロゲン化物、ハロゲン又はハロゲン化物+ハロゲンとのモル比が、1:1〜100:0.001〜1.5であるか、あるいは、オレフィン(I)と第1級アミン(RNH)とハロゲン化物、ハロゲン又はハロゲン化物+ハロゲンとのモル比が、1:1〜100:0.001〜1.5である、請求項1から21までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
アジリジンの製造を、0℃〜300℃の温度で実施する、請求項1から22までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
アジリジンの製造を、1〜300barの絶対圧で実施する、請求項1から23までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
アジリジンの製造を、2個の部分工程で実施し、その際、第1の部分工程中で、オレフィン(I)とアンモニア又は第1級アミン(RNH)との反応をヨウ素又は臭素の存在下で実施し、かつ第2の部分工程中で、第1の部分工程中で形成されたハロゲン化物をさらに相当するハロゲンに酸化し、かつ第1の部分工程に返送する、請求項1、4、5、8、15から24までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
エチレンをアンモニア又はモノメチルアミン又はモノエチルアミンと反応させる、アジリジン又はN−メチル−アジリジン又はN−エチル−アジリジンを製造するための、請求項1から25までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
プロピレンをアンモニア又はモノメチルアミン又はモノエチルアミンと反応させる、2−メチル−アジリジン又は1,2−ジメチル−アジリジン又は1−エチル−2−メチル−アジリジンを製造するための、請求項1から25までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
イソブテンをアンモニア又はモノメチルアミン又はモノエチルアミンと反応させる、2,2−ジメチルアジリジン又は1,2,2−トリメチル−アジリジン又は1−エチル−2,2−ジメチル−アジリジンを製造するための、請求項1から25までのいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−530864(P2010−530864A)
【公表日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512676(P2010−512676)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【国際出願番号】PCT/EP2008/057702
【国際公開番号】WO2008/155355
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】