説明

N,N−置換−1,3−プロパンジアミンの製造方法

本発明は、a)(−50)〜100℃の間の温度及び0.01〜300barの間の圧力で第二級アミンとアクロレインとを反応させることと、b)40〜400℃の温度及び1〜400barの圧力にて、水素化触媒の存在下で、ステップa)において得られた反応混合物と水素及びアンモニアとを反応させることによるN,N−置換−1,3−プロパンジアミンの製造方法に関する。本発明は、ステップa)においてアクロレインに対する第二級アミンのモル比が2:1以上であることと、ステップb)において使用される水素化触媒がコバルトを含有することとを特徴とする。好ましい一実施形態において、再生可能な原料に基づくグリセリンから得られるアクロレインが使用される。また、本発明は、軟石鹸及び他の洗剤、凝集剤、ポリマー及び櫛形ポリマーのための電荷材料としての再生可能な原料に基づくN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン(DMAPA)の使用にも関する。別の好ましい一実施形態において、ステップb)は、水の存在下で行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はN,N−置換1,3−プロパンジアミンの製造方法に関する。
【0002】
N,N−置換1,3−プロパンジアミンは、典型的には第二級アミンとアクリロニトリルとを反応させ、続いてニトリル基をアミンに水素化することにより得られる。例えば、工業的に重要なN、N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン(DMAPA)は、ジメチルアミン及びアクリロニトリルに基づいて製造される。アクリロニトリル出発材料は、典型的には、SOHIOプロセス(プロペンとアンモニア及び元素酸素との触媒的制御合成)により得られる。これは、副生成物としてアセトニトリル及びシアン化水素を伴い、水を除去したアクリロニトリルを形成する。元来かなりのエネルギー消費量により形成される複合体分子構造がエネルギー消費のみで低分子量物質に再構築され得ることから、再生可能原料からのプロペン等の汎用化学製品へのアクセスは、一般に不経済である。しかし再生可能原料から商業的に入手可能な低分子量汎用化学製品がアクロレインであり、そのアクロレインは、グリセロールを脱水することにより製造される。次に、グリセロールは、脂肪酸(脂肪の加水分解)又は脂肪酸メチルエステル(バイオディーゼル)への油脂の転化において、典型的には副生成物として得られる。
【0003】
第二級脂肪族アミンとアクロレインとの反応は、最初にMannich et al.(C.Mannich,K.Handke and K.Roth,Chem.Ber.,69,2112(1936))に記載された。狭い圧力及び温度範囲内での、脱水剤の存在下における、又は不水溶性溶媒中におけるジメチルアミンとアクロレインとの反応によりN,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロペンジアミンが得られたが、それは、更に、酸化白金上における水素及び溶媒としてのシクロヘキサンとの触媒還元により更なる段階において対応するN,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミンに転化された。前記開示によれば、形成する生成物が容易に加水分解し得ることから、前記反応中に形成する水は反応混合物から除去されなければならない。Mannich et al.により記載される反応によって得られるN,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミンの一部は、ポリウレタンの製造における触媒として使用される。
【0004】
第一級脂肪族又は脂環式アミンとアクロレインとを反応させてN,N’−置換1,3−プロペンジアミンを得る方法は、US2,565,488及び相当するDE−B−866647において同様に開示されている。前記開示によれば、前記反応において形成する水の量は反応混合物中に残る。しかし、前記反応が脱水剤(乾燥剤)の存在下で行われる場合、N,N’−置換1,3−プロペンジアミンのより高い収率が達成される。N,N’−置換1,3−プロペンジアミンが水素と飽和して、その結果、例えばN,N’−置換1,3−プロパンジアミンを得ることができることが述べられる。また、N,N’−置換1,3−プロペンジアミンは、水素化の前の更なる反応ステップにおいて他の置換基を含むアミンとアミノ基転移され得ることも述べられる。
【0005】
DE−A1−4232424は、(−20)〜70℃の温度及び0.10〜100barの圧力で2−アルケナールと第一級アミン又は第二級アミンとを反応させることによりN,N’−置換不飽和アミン又はN,N,N’,N’−置換不飽和アミンを製造するための方法であって、反応水を除去することなく前記反応を行うことよる方法に関する。更に、前記開示は、しかるに20〜150℃の温度での他の第一級又は第二級アミンとのその反応により得られる不飽和アミンのアミノ交換について記載する。DE−A1−4232424において得られる不飽和アミンは、前記開示に従って、例えば水素化触媒として活性炭素上で担持されるパラジウムを使用して1〜350barの圧力及び0〜150℃の温度で水素により水素化され得る。
【0006】
Finch et al.(H.D.Finch,E.A.Peterson and S.A.Ballard,J.Am.Chem.Soc.,74,2016(1952))は、アクロレイン又はメタクロレインと第一級アミン又は第二級アミンとの反応について記載している。しかるに得られたN,N’−置換1,3−プロペンジアミン又はN,N,N’,N’−置換1,3−プロペンジアミンは、前記開示に従って、続く段階において、対応する飽和N,N’−置換又はN,N,N’,N’−置換1,3−プロパンジアミンに水素化され、又は他のアミンと共に加熱され、その結果アミン交換が起きる。アミン交換及び水素化はまた、ラネー(Raney)(登録商標)ニッケル触媒の存在下で同時に実施することも可能であることが述べられる。例えば、N−イソプロピル−1,3−プロパンジアミンは、2つの段階、即ちアクロレインとイソプロピルアミンとの最初の反応を含む第1段階、及び過剰なアミン及び溶媒の除去の後のラネー(登録商標)ニッケルの存在下でのアンモニアとの得られた反応混合物の第2段階水素化において得られた。前記反応において使用されるアクロレインに対するN−イソプロピル−1,3−プロパンジアミンの収率は、68%未満だった。
【0007】
本発明の課題は、アクロレインからN,N−置換1,3−プロパンジアミンを製造するための方法を提供することにあり、意図は、先行技術と比較して、使用されるアクロレインに基づいて、より高い選択性を達成することであった。更に詳しくは、中間体として形成するN,N,N’,N’−置換1,3−プロペンジアミンの水素化において形成し得る3−メチルピペリジンやN,N,N’,N’−置換1,3−プロパンジアミン等の副生成物の形成を減少させることが本発明の目的であった。中間体として得られるN,N,N’,N’−置換1,3−プロペンジアミンが、N,N−置換1,3−プロパンジアミンへの更なる転化の前に単離、又は精製される必要のない方法を提供することが更なる目的であった。従って、意図は、技術的に単純な方法で実現され得る取り扱いが容易な方法を達成することである。更に詳しくは、再生可能原料に基づいて得られ得る原材料が使用されるDMAPAの新しい製造経路を提供することが本発明の目的であった。
【0008】
本発明によれば、前記目的は、
a)(−50)〜100℃の温度及び0.01〜300barの圧力で第二級アミンとアクロレインとを反応させることと、
b)40〜400℃の温度及び1〜400barの圧力にて水素化触媒の存在下で段階a)において得られる反応混合物と水素及びアンモニアとを反応させることと
によるN,N−置換1,3−プロパンジアミンの製造方法であって、段階a)におけるアクロレインに対する第二級アミンのモル比が2:1以上であり、且つ段階b)において使用される水素化触媒がコバルトを含む、方法により達成される。
【0009】
本発明による方法の第1段階a)において、アクロレインを第二級アミンと反応させる。
【0010】
前記反応において使用されるアクロレインは、典型的には、プロペンを酸化させることにより、又はグリセロールを脱水することにより得られる。
【0011】
典型的には、アクロレインは、プロペンを酸化させることにより得られる。プロペン酸化によるアクロレイン製造の概要は、例えば、Ullmann(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,Acrolein and Methacrolein, Chapter3.1"Acrolein by Propene Oxidation",Wiley−VCH−Verlag,Electronic Edition,2007)に見られる。
【0012】
好ましい一実施形態において、グリセロールを脱水することにより得られたアクロレインが使用される。グリセロールを脱水することによるアクロレインの製造は、例えば、WO−A2−2006087083、EP−B1−598228、WO−A1−2007090990、US5,079,266、US2,558,520において、又はChai et al.(S.H.Chai,H.P.Wang,Y.Lang,B.Q.Xu,Journal of Catalysis,250(2),342−349(2007))により開示されている。
【0013】
グリセロールは、典型的には、脂肪酸(脂肪の加水分解)又は脂肪酸メチルエステル(バイオディーゼル)への油脂の転化における副生成物として得られる。油脂からのグリセロールの製造は、例えば、Ullmann(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,Glycerol,Chapter4.1"Glycerol from Fat and Oils",Wiley−VCH−Verlag,Electronic Edition,2007)に記載されている。
【0014】
また、グリセロールは、プロペンの石油化学出発材料から続けて製造することもできる。プロペンからのグリセロールの合成の概要は、同様に、Ullmann(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,"Glycerol",Chapter4.1"Synthesis from Propene",Wiley−VCH−Verlag,Electronic Edition,2007)に示される。
【0015】
本発明による方法のために、グリセロールが得られた製造経路は一般に重要でない。植物、動物又は石油化学に基づくグリセロールは、本発明による方法のための出発材料として適切である。
【0016】
非常に特に好ましい一実施形態において、再生可能原料に基づくグリセロール、例えば脂肪の加水分解又はバイオディーゼルの製造からの副生成物として得られたグリセロールは、アクロレインの製造における出発材料として使用される。この特定の実施形態は、DMAPA等の工業的に重要なアミンが再生可能資源から得られるという効果を有する。かかる生成物の製造における再生可能資源の使用は、典型的に使用される石油化学資源の保全に寄与することができる。
【0017】
本発明による方法において、少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%、及びより好ましくは少なくとも99%のアクロレイン含有率を有するアクロレインを使用することが好ましい。
【0018】
本発明による方法において使用される更なる原材料は、第二級アミンである。
【0019】
使用される第二級アミンは、脂肪族、脂環式又は環状第二級アミンであってよい。
【0020】
使用される環状第二級アミンは、例えば、ピロリジン、イミダゾール、ピペリジン、モルホリン又はピペラジンであってよい。
【0021】
式(I)
【化1】

[式中、R1及びR2基は、それぞれ以下のように定義される:
1及びR2は、同一又は各々独立して1又は3〜20個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝状又は環状炭化水素基であり、前記炭化水素基は一価不飽和又は多価不飽和であってよい]の第二級アミンを使用することが好ましい。
【0022】
例えば、R1及び/又はR2は、以下のように定義され得る:
1〜C6−アルキル:例えば、メチル、エチル、n−プロピル、1−メチルエチル、n−ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、n−ヘキシル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル又は1−エチル−3−メチルプロピル;
1〜C12−アルキル:例えば、既に規定された通りのC1〜C6−アルキル、更に、ヘプチル、2−メチルヘキシル、3−メチルヘキシル、2,2−ジメチルペンチル、2,3−ジメチルペンチル、2,4−ジメチルペンチル、3,3−ジメチルペンチル、2,2−ジメチル−3−メチルブチル、オクチル、2−メチルヘプチル、3−メチルヘプチル、4−メチルヘプチル、2,2−ジメチルヘキシル、2,3−ジメチルヘキシル、2,4−ジメチルヘキシル、3,3−ジメチルヘキシル、2,2−ジメチル−3−メチルペンチル、2−メチル−3,3−ジメチルペンチル、2,3,4−トリメチルペンチル及び2,2,3,3−テトラメチルブチル、1−ノニル、1−デシル、1−ウンデシル又は1−ドデシル;
1〜C20−アルキル:例えば、既に規定された通りのC1〜C12−アルキル、更に、1−トリデシル、1−テトラデシル、1−ペンタデシル、1−ヘキサデシル、1−ヘプタデシル、1−オクタデシル、ノナデシル又はエイコシル;
3〜C8−シクロアルキル:例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロオクチル;
3〜C12−シクロアルキル:既に規定された通りのC3〜C8−シクロアルキル、更に、シクロドデシル;
2〜C6−アルケニル:例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル又はヘキセニル;
2〜C20−アルケニル:例えば、既に規定された通りのC2〜C6−アルケニル、更に、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル又はデセニル;
3〜C6−シクロアルケニル:例えば、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル又はシクロヘキセニル;
アリール:6〜14個の環原子を有する単環式〜三環式芳香族炭素環、例えば、フェニル、ナフチル又はアントラセニル;
ヘテロアリール:例えば、チエニル、フリル、ピラゾリル、イミダゾリル、チアゾリル及びオキサゾリル;又は
7〜C12−アラルキル、例えば、フェニルメチル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチル、1−フェニルプロピル、2−フェニルプロピル又は3−フェニルプロピル。
【0023】
1及びR2基は、場合により置換可能であり、置換基は、広範囲に可変である。
【0024】
1及びR2は、好ましくは、同一又は各々独立して、1又は3〜20個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝状炭化水素基であり、炭化水素基は飽和している。
【0025】
その置換基R1及び/又はR2が不飽和結合を含む式(I)の第二級アミンが使用される場合、これらの置換基の水素化も生じ得る。前記方法における第二級アミンとしてジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、イソプロピルエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−s−ブチルアミン又はジシクロヘキシルアミンを使用することが好ましい。前記反応において、ジメチルアミン又はジエチルアミンの使用が特に好ましく、とりわけジメチルアミンが好ましい。
【0026】
本発明によれば、第二級アミンに対するアクロレインのモル比は、2:1以上である。一般に、アクロレインに対する第二級アミンのモル比は、2:1〜50:1、好ましくは2:1〜10:1、より好ましくは2:1〜5:1の範囲内である。
【0027】
アクロレインと第二級アミンとの反応は、触媒なしで、又は、触媒の存在下で行うことができる。
【0028】
有用な触媒としては、例えばEP−A1−449089(2頁、第2欄、11〜20行目)及びTanabe et al.(K.Tanabe,Studies in Surface Science and Catalysis,Vol.51,1989,p.1ff)による論文に記載される通りの固体ブレンステッド酸又はルイス酸が、例えば挙げられる。
【0029】
ここでの例としては、酸性金属酸化物触媒、例えば、酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム及び二酸化ケイ素が挙げられる。アンモニウムイオンを担持する無機又は有機イオン交換剤、例えば、ゼオライトや、スチレン及びジビニルベンゼンのスルホン化コポリマー(例えば、LanxessのLewatit(登録商標)ブランド、Rohm & HaasのAmberlite(登録商標)ブランド)、又はシロキサンに基づくイオン交換剤(例えば、DegussaのDeloxan(登録商標)ブランド)もまた有用である。
【0030】
アクロレインは、溶媒、例えば、エーテル、例えば、メチルtert−ブチルエーテル、エチルtert−ブチルエーテル若しくはテトラヒドロフラン(THF);アルコール、例えば、メタノール、エタノール若しくはイソプロパノール;炭化水素、例えば、ヘキサン、ヘプタン若しくはラフィネートカット;芳香族化合物、例えば、トルエン;アミド、例えば、ジメチルホルムアミド若しくはジメチルアセトアミド、又はラクタム、例えば、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、N−メチルカプロラクタム若しくはN−エチルカプロラクタムの存在下で第二級アミンと反応することができる。有用な溶媒としては、上記の溶媒の適切な混合物も挙げられる。THFは、好ましい溶媒である。溶媒は、各場合において反応混合物の総質量に対して、5〜95質量%、好ましくは20〜70%、より好ましくは30〜60%の比率で使用可能であり、反応混合物の総質量は、前記方法において使用される出発材料及び溶媒の質量の合計から構成される。
【0031】
溶媒を添加せずにアクロレインと第二級アミンとの反応を行うことが好ましい。
【0032】
アクロレインは、(−50)〜100℃、好ましくは(−20)〜70℃、より好ましくは(−10)〜40℃の温度、及び0.01〜300bar、好ましくは0.1〜200bar、より好ましくは1〜200bar、最も好ましくは標準圧力(大気圧)の圧力で第二級アミンと反応する。ジメチルアミン等のガスの第二級アミンの場合、前記反応は、好ましくは5〜400bar、より好ましくは10〜300bar、とりわけ15〜200barの圧力で行われる。
【0033】
アクロレインと第二級アミンとの反応は、バッチ式で、又は、連続的に実施され得る。
【0034】
アクロレインと第二級アミンとのバッチ式反応は、例えば、攪拌式オートクレーブ、気泡塔又は循環反応器、例えばジェットループ反応器において行うことができる。
【0035】
アクロレインと第二級アミンとのバッチ式反応において、典型的には、第二級アミン又は第二級アミンと触媒と適切な場合溶媒との懸濁液が最初に反応器に投入される。高転化率及び高選択性を確保するため、第二級アミンと触媒との懸濁液は、典型的には、例えばオートクレーブ中におけるタービン撹拌機によって十分にアクロレインと混合される。
【0036】
懸濁された触媒材料は、通例の手法(沈降、遠心分離、濾滓濾過、十字流濾過)を用いて再度導入され、除去され得る。触媒は、1回又は2回以上使用され得る。アクロレインと第二級アミンとの反応が触媒の存在下で行われる場合、触媒濃度は、各場合において第二級アミン及び触媒から成る懸濁液の総質量に対して、有利には0.1〜50質量%、好ましくは0.5〜40質量%、より好ましくは1〜30質量%、とりわけ5〜20質量%である。
【0037】
平均触媒粒径は、有利には0.001〜1mmの範囲内、好ましくは0.005〜0.5mmの範囲内、とりわけ0.01〜0.25mmである。
【0038】
アクロレインと第二級アミンとの反応は、典型的には圧力容器又は圧力容器カスケードにおいて、好ましくは連続的に行われる。
【0039】
アクロレイン及び第二級アミンは、触媒が固定床の形態で配置される管式反応器を通過させることが好ましい。
【0040】
一般に、アクロレイン及び第二級アミンは、圧力容器に導入される前に又は圧力容器の中で十分に混合される。前記混合は、例えば、静的ミキサを使用する導入の前に行われる。
【0041】
圧力容器において、内部要素又は混合要素を導入することもでき、それは、アクロレイン及び第二級アミンの混合を改善する。混合は、適切な場合、設置された撹拌機によって、又は反応混合物のポンピングによる循環によって行うこともできる。アクロレインと第二級アミンとの連続的反応において、触媒1kg及び1時間当たり0.01〜10kg、好ましくは0.05〜7kg、より好ましくは0.1〜5kgのアクロレインの触媒毎時空間速度を確立することが好ましい。
【0042】
段階a)において得られた反応混合物は、N,N,N’,N’−置換1,3−プロペンジアミンを含む。
【0043】
段階a)において得られた反応混合物は、例えば蒸留又は精留によってN,N,N’,N’−置換1,3−プロペンジアミンを濃縮するため段階b)における使用の前に処理される。
【0044】
しかし、段階a)において得られた反応混合物は、好ましくは、段階b)における使用の前に、更なる精製又は処理なしで使用される。
【0045】
段階b)においては、段階a)において得られた反応混合物を水素化触媒の存在下で水素及びアンモニアと反応させる。
【0046】
水素は、本発明による方法において使用される。
【0047】
水素は、一般に技術的に純粋な形態で使用される。また、水素は、水素を含むガスの形態においても、即ち他の不活性ガス、例えば、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン又は二酸化炭素との混合物においても使用され得る。使用される、水素を含むガスは、これらのガスが、使用される水素化触媒についてのいずれの触媒毒(例えばCO)も含まない場合、及びそのことを仮定するならば、例えば、改質オフガス、精油所ガス等であってよい。しかし、前記方法において、純粋な水素又は本質的に純粋な水素、例えば、99質量%超の水素、好ましくは99.9質量%超の水素、より好ましくは、99.99質量%超の水素、とりわけ99.999質量%超の水素の含有率を有する水素を使用することが好ましい。
【0048】
アンモニアもまた、本発明による方法において使用される。使用されるアンモニアは、従来商業的に入手可能なアンモニア、例えば、98質量%超のアンモニア、好ましくは99質量%超のアンモニア、好ましくは99.5質量%超、とりわけ99.9質量%超のアンモニアの含有率を有するアンモニアであってよい。
【0049】
段階a)において使用されるアクロレインに対する段階b)において使用されるアンモニアのモル比は、好ましくは1:1〜1000:1、好ましくは2:1〜100:1、より好ましくは4:1〜50:1である。
【0050】
特定の一実施形態において、段階b)は、水の存在下で行われる。水の量は、好ましくは、段階a)において使用されたアクロレインに対する水のモル比が、0.01:1〜100:1の範囲内、好ましくは0.1:1〜50:1の範囲内、より好ましくは0.5:1〜10:1の範囲内、及び最も好ましくは1:1〜5:1の範囲内であるように選択される。
【0051】
水及び段階a)において得られた反応混合物は、共に、例えば予備混合反応物流として、又は別々に段階b)に添加され得る。別々に添加する場合、水及び段階a)において得られた反応混合物は、同時に、異なる時点で、又は連続的に段階b)に添加され得る。水の存在が段階a)に悪影響を及ぼさないことから、水の添加は、段階a)の実施前に実際に行い、既に段階a)において存在することも可能である。しかし、好ましくは、水は、段階b)の開始前まで添加されない。
【0052】
本発明による方法は、コバルトを含む水素化触媒の存在下で行われる。
【0053】
水素化触媒は、前記方法において金属形態で使用され得る。
【0054】
コバルト(Co)は、水素化触媒として、金属形態、例えば金属メッシュ又は金属グリッドの形態で使用され得る。
【0055】
好ましい一実施形態において、金属形態のCoは、本発明による方法において水素化触媒としてラネーのスポンジ触媒又は骨格触媒の形態で使用される。
【0056】
ラネーコバルト水素化触媒は、典型的には、アルミニウムを浸出させ、且つ金属コバルトスポンジを生じさせる濃縮水酸化ナトリウム溶液でアルミニウムコバルト合金を処理することにより製造される。ラネー水素化触媒の製造は、例えば、Handbook of Heterogeneous Catalysis(M.S.Wainright in G.Ertl,H.Knoezinger,J.Weitkamp(eds.),Handbook of Heterogeneous Catalysis,Vol.1,Wiley−VCH,Weinheim,Germany1997,page64ff.)に記載されている。かかる触媒は、例えば、Graceのラネー(登録商標)触媒として、又は、Johnson MattheyのSponge Metal(登録商標)触媒として入手可能である。
【0057】
金属形態で前記方法において使用された、使用水素化触媒における全金属原子の合計に対するコバルト原子のモル比は、好ましくは50モル%以上、より好ましくは75モル%、更により好ましくは90モル%以上、とりわけ好ましくは99モル%以上である。
【0058】
金属形態で使用される水素化触媒の組成物は、原子吸光分析(AAS)、原子発光分析(AES)、X線蛍光分析(RFA)又はICP−OES(誘導結合プラズマ発光分析)により測定され得る。
【0059】
また、本発明による方法において使用可能な水素化触媒は、いわゆる触媒前駆体を還元することによっても製造され得る。
【0060】
前記触媒前駆体は、1種以上の触媒活性成分を含む活性材料と場合によりキャリア材料とを含む。
【0061】
前記触媒活性成分は、元素の周期律表(2007年6月22日のIUPACバージョンの周期律表)の8族及び/又は9族及び/又は10族及び/又は11族の金属の酸素化合物、例えばそれらの金属酸化物又は水酸化物(適切な例である場合)、例えばCoO、NiO、Mn34、CuO、RuO(OH)x及び/又はそれらの混合酸化物である。
【0062】
本発明によれば、水素化触媒の触媒前駆体は、例えば、CoOの形態で、及び/又は、コバルトの混合酸化物、例えばLiCoO2の形態で、触媒活性成分としてコバルトの酸素化合物を含む。水素化触媒の触媒前駆体は、好ましくは、触媒活性成分としてCoOを含む。
【0063】
コバルトの酸素化合物の他に、水素化触媒の触媒前駆体は、更に触媒活性成分を含んでよい。
【0064】
以下で明示される組成物は、一般にか焼及び/又は別の熱処理であるその最終熱処理の後、且つ水素によるその還元の前の触媒前駆体の組成物に基づく。
【0065】
活性材料の質量は、担体材料の質量と触媒活性成分の質量との合計であり、即ち、担体材料は活性材料の一部を形成すると考えられる。
【0066】
使用される触媒活性成分中に存在する全金属原子の合計に対するコバルト原子のモル比は、好ましくは10モル%以上、より好ましくは30モル%以上、更により好ましくは50モル%以上、とりわけ90モル%以上である。
【0067】
触媒活性成分の原子組成は、原子吸光分析(AAS)、原子発光分析(AES)、X線蛍光分析(RFA)又はICP−OES(誘導結合プラズマ発光分析)により測定され得る。
【0068】
触媒前駆体の総質量に対する活性材料の比率は、典型的には70質量%以上、好ましくは80〜100質量%、より好ましくは90〜99質量%、とりわけ92〜98質量%である。
【0069】
触媒前駆体は、前記活性材料の他に、更なる成分、例えば、成形剤、例えば黒鉛、ステアリン酸、リン酸又は更なる加工助剤を含んでよい。
【0070】
触媒前駆体は、更なる成分として、前記活性材料の他に、周期律表の1〜14族から選択される1種以上のドーピング元素(酸化状態0)又はそれらの無機化合物若しくは有機化合物を更に含んでよい。かかる元素又はそれらの化合物の例は:
遷移金属、例えばMn又はマンガン酸化物、Re又はレニウム酸化物、Cr又はクロム酸化物、Mo又はモリブデン酸化物、W又はタングステン酸化物、Ta又はタンタル酸化物、Nb又はニオブ酸化物又はシュウ酸ニオブ、V又はバナジウム酸化物又はバナジルピロホスフェート、亜鉛又は亜鉛酸化物、ランタニド、例えばCe若しくはCeO2又はPr若しくはPr23、アルカリ金属酸化物、例えばK2O、アルカリ金属炭酸塩、例えばNa2CO3及びK2CO3、アルカリ土類金属酸化物、例えばSrO、アルカリ土類金属炭酸塩、例えばMgCO3、CaCO3、BaCO3、無水リン酸及び酸化ホウ素(B23)である。
【0071】
好ましい一実施形態において、触媒前駆体の活性材料は、いかなる担体材料も含まない。
【0072】
かかる触媒前駆体は、例えば、
特許出願PCT/EP2007/052013に開示され、且つ、水素による還元の前に、a)コバルト及びb)アルカリ金属の群、アルカリ土類金属の群、希土類の群の内の1種以上の元素若しくは亜鉛又はそれらの混合物を含む触媒であって、元素a)及びb)がそれらの混合酸化物、例えばLiCoO2の形態で少なくとも部分的に存在する、触媒、又は
EP−A−0636409に開示され、且つ、その触媒活性材料が、水素による還元の前に、CoOとして算出される55〜98質量%のCo、H3PO4として算出される0.2〜15質量%のリン、MnO2として算出される0.2〜15質量%のマンガン、及びM2O(M=アルカリ金属)として算出される0.2〜15質量%のアルカリ金属を含む、触媒、又は
EP−A−0742045に開示され、且つ、その触媒活性材料が、水素による還元の前に、CoOとして算出される55〜98質量%のCo、H3PO4として算出される0.2〜15質量%のリン、MnO2として算出される0.2〜15質量%のマンガン、及びM2O(M=アルカリ金属)として算出される0.05〜5質量%のアルカリ金属を含む、触媒
である。
【0073】
LiCoO2等のコバルトの混合酸化物を含み、且つ好ましくはいずれの担体材料も含まない触媒前駆体は、コバルトの対応する化合物と、アルカリ金属群の内の化合物、アルカリ土類金属群の化合物、希土類の群からの化合物、又は亜鉛の化合物の内の1種以上、例えば硝酸塩、炭酸塩、水酸化物、酸化物、酢酸塩、シュウ酸塩又はクエン酸塩との熱処理により一般に製造され得る。熱処理は、例えば、上述の化合物の共融解又はか焼であると理解され得る。硝酸塩、炭酸塩、水酸化物、酸化物等の上述の化合物の熱処理は、空気の下で実施され得る。好ましい一実施形態において、とりわけ炭酸塩の熱処理は、不活性のガス雰囲気下で実施される。適切な不活性ガスの例としては、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン、クリプトンや、言及された不活性ガスの混合物が挙げられる。窒素が優先して適切である。
【0074】
LiCoO2の製造方法は、例えば、Antolini[E.Antolini,Solid State lonics,159−171(2004)]及びFenton et al.[W.M.Fenton,P.A.Huppert,Sheet Metal Industries,25(1948),2255−2259]に記載されている。
【0075】
使用される触媒前駆体は、好ましくはいずれの担体材料も含まないが、LiCoO2であってもよく、それは電池をリサイクルすることにより得られる。使用済みの電池からリチウムコバルタイトをリサイクル、又は回収する方法は、例えば、CN−A−1594109から導き出され得る。電池を機械的に開けること、及び濃厚NaOHによるアルミニウム成分の浸出により、LiCoO2を多く含むフィルターケーキが提供され得る。
【0076】
更なる好ましい一実施形態において、活性材料は、−触媒活性成分に加えて−、担体材料を含む。
【0077】
使用される担体材料は、好ましくは、炭素、例えば、黒鉛、カーボンブラック及び/又は活性炭素、酸化アルミニウム(γ、δ、θ、α、κ、χ、又はそれらの混合物)、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、ゼオライト、アルミノケイ酸塩等、及びこれらの担体材料の混合物である。
【0078】
活性材料における担体材料の比率は、選択される製造方法に従い広範囲に亘って変化し得る。
【0079】
含浸により製造される触媒前駆体の場合、活性材料中における担体材料の比率は、一般に50質量%超、好ましくは75質量%超、及びより好ましくは85質量%超である。沈殿反応、例えば共沈又は沈殿による適用により製造される触媒前駆体の場合、活性材料中における担体材料の比率は、一般に10〜90質量%の範囲内、好ましくは15〜80質量%の範囲内、及びより好ましくは20〜70質量%の範囲内である。
【0080】
沈殿反応によって得られる好ましい触媒前駆体は、例えば、
EP−A−963975に開示され、且つその触媒活性材料が、水素による還元の前に、22〜40質量%のZrO2、CuOとして算出される1〜30質量%の銅の酸素化合物、NiOとして算出される15〜50質量%のニッケルの酸素化合物(ここでNi:Cuモル比は1超である)、CoOとして算出される15〜50質量%のコバルトの酸素化合物、それぞれAl23及びMnO2として算出される0〜10質量%のアルミニウム及び/又はマンガンの酸素化合物を含み、モリブデンの酸素化合物を含まない、触媒、例えば、loc.cit.、17頁に開示され、且つZrO2として算出される33質量%のZrの組成物、NiOとして算出される28質量%のNi、CuOとして算出される11質量%のCu、CoOとして算出される28質量%のCoを有する触媒A;
EP−A2−1106600に開示され、且つその触媒活性材料が、水素による還元の前に、ZrO2として算出される22〜45質量%のジルコニウムの酸素化合物、CuOとして算出される1〜30質量%の銅の酸素化合物、NiOとして算出される5〜50質量%のニッケルの酸素化合物(ここで銅に対するニッケルのモル比は1超である)、CoOとして算出される5〜50質量%のコバルトの酸素化合物、MoO3として算出される0〜5質量%のモリブデンの酸素化合物、及びそれぞれAl23及びMnO2として算出される0〜10質量%のアルミニウム及び/又はマンガンの酸素化合物を含む、触媒;
WO−A−03/076386に開示され、且つその触媒活性材料が、水素による還元の前に、ZrO2として算出される22〜40質量%のジルコニウムの酸素化合物、CuOとして算出される1〜30質量%の銅の酸素化合物、NiOとして算出される15〜50質量%のニッケルの酸素化合物(ここで銅に対するニッケルのモル比は1超である)、CoOとして算出される15〜50質量%のコバルトの酸素化合物、及びアルカリ金属酸化物として算出される1質量%未満のアルカリ金属を含む、触媒;
EP−A−1852182に開示され、且つZnO担体上にコバルトを含み、以下の粒度分布:粒子の10%未満が1μm未満の粒径を有する、粒子の70〜99%が1〜5μmの粒径を有する、及び粒子の20%未満が5μm超の粒径を有する、を有する触媒
である。
【0081】
いずれの担体材料も含まない触媒前駆体、更に担体材料を含む触媒前駆体は、公知の方法、例えば、沈殿、沈殿による適用、又は含浸により製造され得る。
【0082】
好ましい一実施形態において、担体材料の含浸により製造される触媒前駆体(含浸触媒前駆体)は、本発明による方法において使用される。
【0083】
含浸において使用される担体材料は、例えば、粉末又は成形体、例えば押出物、錠剤、球体又はリングの形態で使用され得る。流動床反応器に適切な担体材料は、好ましくは、噴霧乾燥によって得られる。
【0084】
有用な担体材料としては、例えば、炭素、例えば黒鉛、カーボンブラック及び/又は活性炭素、酸化アルミニウム(γ、δ、θ、α、κ、χ、又はそれらの混合物)、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、ゼオライト、アルミノケイ酸塩、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0085】
上述の担体材料は、例えば1つ以上の含浸段階において金属塩溶液を適用することにより、通例の方法(A.B.Stiles,Catalyst Manufacture−Laboratory and Commercial Preparations,Marcel Dekker,New York,1983)によって含浸され得る。有用な金属塩としては、一般に、水溶性金属塩、例えば当該触媒活性成分又はドーピング元素の硝酸塩、酢酸塩又は塩化物、例えば硝酸コバルト又は塩化コバルトが挙げられる。その後、含浸担体材料は、一般に乾燥され、適切な場合、か焼される。
【0086】
含浸は、担体材料を、その吸水率能力に従って含浸溶液により最高で飽和にまで湿らせるいわゆる「初期湿気法」によっても実施され得る。しかし、飽和は、上澄液においても実施され得る。
【0087】
多段階の含浸方法の場合、適切には個々の含浸ステップの間に乾燥及び、適切な場合、か焼を行う。相対的に大量の金属塩と担体材料が接触する場合、有利には多段階の含浸が用いられる。
【0088】
複数の金属成分を担体材料に適用するため、含浸は、全ての金属塩と同時に、又は連続した個々の金属塩の任意の順序で実施され得る。
【0089】
別の好ましい一実施形態において、触媒前駆体は、それらの成分の全ての共沈によって製造される。このために、適切な活性成分の可溶化合物、ドーピング元素、及び、適切な場合、液体中の担体材料の可溶化合物が、沈殿が完了するまで撹拌しながら高温条件下で沈殿剤と混合される。
【0090】
使用される液体は、一般に水である。
【0091】
活性成分の有用な可溶化合物としては、典型的には、元素の周期律表(2007年6月22日のIUPACバージョンの周期律表)の8族及び/又は9族及び/又は10族及び/又は11族の金属、とりわけCoの対応する金属塩、例えば硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩又は塩化物が挙げられる。
【0092】
使用される担体材料の水溶性化合物は、一般にTi、Al、Zr、Si等の水溶性化合物、例えばこれらの元素の水溶性硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩又は塩化物である。
【0093】
使用されるドーピング元素の水溶性化合物は、一般にドーピング元素の水溶性化合物、例えばこれらの元素の水溶性硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩又は塩化物である。
【0094】
また、触媒前駆体は、沈殿による適用によっても製造され得る。
【0095】
沈殿による適用は、難溶又は不溶な担体材料を液体に懸濁し、次いで対応する金属酸化物の可溶化合物、例えば可溶金属塩を添加し、次いでそれを、沈殿剤を添加することにより懸濁担体上に沈殿させる製造方法を意味すると理解される(例えば、EP−A2−1106600、4頁、及びA.B.Stiles,Catalyst Manufacture,Marcel Dekker,Inc.,1983,page15に記載される)。
【0096】
難溶の及び不溶な担体材料の例としては、炭素化合物、例えば、黒鉛、カーボンブラック及び/又は活性炭素、酸化アルミニウム(γ、δ、θ、α、κ、χ、又はそれらの混合物)、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、ゼオライト、アルミノケイ酸塩、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0097】
担体材料は、一般に粉末又は破砕片の形態で存在する。
【0098】
担体材料が懸濁される、使用される液体は、典型的には水である。
【0099】
有用な可溶化合物としては、活性成分又はドーピング元素の前記可溶化合物が挙げられる。
【0100】
沈殿反応において、使用される可溶金属塩の種類は、一般に重要ではない。この手法における主な因子が塩の水溶性であることから、1つの基準は、これらの比較的高く濃縮された塩溶液の製造に必須な良好な水溶性である。個々の成分の塩の選択において、望ましくない沈殿反応を引き起こすことによるにせよ、又は錯体化によって沈殿を複雑にする、若しくは防止することによるにせよ、もちろん崩壊につながらないそれらのアニオンを有する塩のみが選択されることは明らかであると考えられる。
【0101】
典型的には、沈殿反応において、可溶化合物は、沈殿剤を添加することにより難溶又は不溶な塩基性塩として沈殿する。
【0102】
使用される沈殿剤は、好ましくは水性アルカリ、とりわけ鉱物塩基、例えばアルカリ金属塩基である。沈殿剤の例は、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム又は水酸化カリウムである。
【0103】
また、使用される沈殿剤は、アンモニウム塩、例えば、ハロゲン化アンモニウム、炭酸アンモニウム、水酸化アンモニウム又はカルボン酸アンモニウムであり得る。
【0104】
沈殿反応は、例えば、20〜100℃、特に30〜90℃、とりわけ50〜70℃の温度で実施され得る。
【0105】
沈殿反応において得られた沈殿物は、一般に化学的に不均質であり、且つ一般に酸化物の混合物、酸化物の水和物、水酸化物、炭酸塩及び/又は使用される金属の炭酸水素塩を含む。沈殿物を熟成する場合、即ち沈殿物を、適切な場合、高温条件下で、又は空気を通しながら沈殿の後で特定の時間静置する場合、沈殿物の濾過性のために好ましいことが見出され得る。
【0106】
これらの沈殿方法により得られる沈殿物は、典型的には、その沈殿物を洗浄、乾燥、か焼、及び調節することにより加工される。
【0107】
洗浄後、沈殿物を、一般に80〜200℃、好ましくは100〜150℃で乾燥し、次いでか焼する。
【0108】
か焼は、一般に、300〜800℃、好ましくは400〜600℃、とりわけ450〜550℃の温度で実施される。
【0109】
か焼後、沈殿反応によって得られた触媒前駆体は、典型的には調節される。
【0110】
調節は、例えば、沈殿触媒を粉砕により特定の粒径に調整することによって実施され得る。
【0111】
粉砕後、沈殿反応によって得られた触媒前駆体は、成形助剤、例えば黒鉛又はステアリン酸と混合され、更に成形体に加工され得る。
【0112】
成形のための一般的方法は、例えば、Ullmann[Ullmann’s Encyclopedia Electronic Release2000,chapter:"Catalysis and Catalysts",pages28−32]及びErtl et al.[Ertl,Knoezinger,Weitkamp,Handbook of Heterogeneous Catalysis,VCH Weinheim,1997,pages98ff.]に記載されている。
【0113】
引用文献に記載されるように、成形方法は、任意の三次元形状、例えば円形、角形、細長形等、例えば押出物、錠剤、顆粒、球体、シリンダ又はペレットの形態の成形体を得るために使用され得る。成形のための一般的方法は、例えば、押出、錠剤化、即ち機械プレス又はペレット化、即ち循環及び/又は回転運動による圧縮である。
【0114】
調節又は成形の後、一般に熱処理が行われる。熱処理における温度は、典型的にはか焼における温度に相当する。
【0115】
沈殿反応によって得られた触媒前駆体は、それらの酸素化合物の混合物の形態の、とりわけ酸化物、混合酸化物及び/又は水酸化物として触媒活性成分を含む。しかるに製造される触媒前駆体は、このように保存され得る。
【0116】
段階b)における水素化触媒としてのそれらの使用の前に、含浸又は沈殿により上記のように得られた触媒前駆体は、一般に、か焼又は調節の後の水素による処理によって予備還元される。
【0117】
予備還元のために、触媒前駆体は、一般に、12〜20時間、150〜200℃で最初に窒素−水素雰囲気に曝露され、次いで、更に最高約24時間、200〜400℃で水素雰囲気中において処理される。この予備還元によって、触媒前駆体中に存在する酸素含有金属化合物の一部は、対応する金属に還元され、その結果、それらは、水素化触媒の活性形態で異なる種類の酸素化合物と共に存在する。
【0118】
好ましい一実施形態において、触媒前駆体の予備還元は、段階b)が続いて実施される同じ反応器内で中行われる。
【0119】
しかるに形成された水素化触媒は、予備還元の後、不活性ガス、例えば窒素の下で、又は不活性液体、例えばアルコール、水、若しくは水素化触媒が使用される特定の反応の生成物の下で操作及び保存することができる。予備還元後、水素化触媒を、酸素含有ガス流、例えば空気又は窒素との空気混合物で不動態化すること、即ち保護酸化膜を付与することも可能である。
【0120】
不活性物質の下での触媒前駆体の予備還元により得られた水素化触媒の貯蔵、又は水素化触媒の不動態化は、触媒の単純で且つ安全な操作及び貯蔵を可能にする。適切な場合、次いで水素化触媒は、実際の反応の開始前に不活性液体から取り除かなければならず、又は不動態化層は、例えば水素若しくは水素を含むガスで処理することにより除去されなければならない。
【0121】
水素化触媒は、段階b)において使用される前に、不活性液体又は不動態化層から取り除かれ得る。これは、例えば、水素又は水素を含むガスによる水素化触媒の処理によって行われる。水素又は水素を含むガスによる水素化触媒の処理も行われた同じ反応器中における水素化触媒の処理の直後に段階b)を行うことが好ましい。
【0122】
しかし、触媒前駆体はまた、予備還元のない方法においても使用され得るが、その場合、その触媒前駆体は、一般にin situで水素化触媒を形成する段階b)において行われる水素化の条件下で反応器中に存在する水素で還元される。
【0123】
段階b)(水素化段階)の実施は、バッチ式で、又は好ましくは連続的に実施され得る。
【0124】
段階b)の実施は、液相において、又は気相において実施され得る。液相において段階b)を実施することが好ましい。
【0125】
段階a)において得られた反応混合物を、溶媒の存在下で水素及びアンモニアと反応させることができるが、例えば、エーテル、例えば、メチルtert−ブチルエーテル、エチルtert−ブチルエーテル若しくはテトラヒドロフラン(THF);アルコール、例えば、メタノール、エタノール若しくはイソプロパノール;炭化水素、例えば、ヘキサン、ヘプタン若しくはラフィネートカット;芳香族化合物、例えば、トルエン;アミド、例えば、ジメチルホルムアミド若しくはジメチルアセトアミド、又はラクタム、例えば、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、N−メチルカプロラクタム若しくはN−エチルカプロラクタムにおける、事前に段階a)において既に使用された溶媒を使用することが好ましい。また、有用な溶媒としては、上記の溶媒の適切な混合物も挙げられる。溶媒は、各場合において段階a)からの反応混合物と溶媒との総質量に対して5〜95質量%、好ましくは20〜70%、より好ましくは30〜60%の比率で使用され得る。
【0126】
溶媒を添加することなくアクロレインと第二級アミンとの反応を実施することが好ましい。
【0127】
水素化段階(段階b)のバッチ式の実施は、例えば、攪拌式オートクレーブ、気泡塔又は循環反応器、例えばジェットループ反応器において実施され得る。
【0128】
水素化段階のバッチ式の実施において、典型的には、段階a)からの反応混合物と、触媒と、適切な場合、溶媒との懸濁液が最初に反応器に投入される。高転化率及び高選択性を確保するため、段階a)からの反応混合物とアンモニアを有する触媒との懸濁液は、典型的には、例えばオートクレーブ中におけるタービン撹拌機によって十分に混合される。懸濁された触媒材料は、通例の手法(沈降、遠心分離、濾滓濾過、十字流濾過)を用いて再度導入され、除去され得る。触媒は、1回又は2回以上使用され得る。
【0129】
触媒濃度は、各場合において段階a)からの反応混合物と触媒とから成る懸濁液の総質量に対して、有利には0.1〜50質量%、好ましくは0.5〜40質量%、より好ましくは1〜30質量%、とりわけ5〜20質量%である。
【0130】
平均触媒粒径は、有利には0.001〜1mmの範囲内、好ましくは0.005〜0.5mmの範囲内、とりわけ0.01〜0.25mmである。
【0131】
段階b)におけるバッチ式実施の場合、圧力は、一般に1〜400bar、好ましくは10〜300bar、より好ましくは20〜250barである。温度は、一般に40〜400℃、好ましくは50〜200℃、より好ましくは60〜150℃、とりわけ60〜120℃である。
【0132】
水素化段階は、典型的には圧力容器又は圧力容器カスケードにおいて、好ましくは連続的に行われる。
【0133】
液相中の段階b)における連続的実施の場合、水素及びアンモニアを含む段階a)からの反応混合物は、好ましくは固定床反応器内に存在する触媒上を好ましくは通される。トリクル方式及び液相方式の両方が可能である。
【0134】
液相中の段階b)における連続的実施の場合、圧力は、一般に1〜400bar、好ましくは10〜300bar、より好ましくは20〜250barである。温度は、一般に、40〜400℃、好ましくは50〜200℃、より好ましくは60〜150℃、とりわけ60〜120℃である。
【0135】
気相中の段階b)における連続的実施の場合、段階a)からの反応混合物は、水素の存在下で、蒸発のために十分に大きな規模で選択されるガス流においてアンモニアと共に触媒上を通される。
【0136】
気相中の段階b)における実施の場合、圧力は、一般に、0.1〜400bar、好ましくは1〜100bar、より好ましくは1〜50barである。温度は、一般に、40〜400℃、好ましくは50〜200℃、より好ましくは60〜150℃、とりわけ60〜120℃である。
【0137】
段階b)における連続的実施の場合、触媒毎時空間速度は、触媒1リットル(床体積)及び1時間当たり、一般に0.05〜20kg、好ましくは0.1〜15kg、より好ましくは0.2〜10kgの範囲の段階a)からの反応混合物である。
【0138】
段階b)において得られた反応混合物は、N,N−置換1,3−プロペンジアミンを含む。
【0139】
更なる使用又は更なる加工の前に、段階b)において得られた反応混合物は、例えば蒸留又は精留によってN,N−置換1,3−プロパンジアミンを濃縮するために処理され得る。
【0140】
非転化反応物、例えば、第二級アミン、水素又はアンモニアは、前記方法にリサイクルされ得る。
【0141】
本発明により製造されるDMAPAは、工業的製造のための、例えば潤滑用石鹸(Schmierseife)及び他の洗剤の重要な中間体を構成する。DMAPAは、凝集剤の製造のための出発材料として更に役立ち、それ自体錆止め性を有すると言われている。また、それは、建設産業における添加剤として使用される櫛形ポリマー、及び抗菌性を有する他のポリマーの製造にも役立つ。従って、本発明はまた、上述の使用分野における本発明により入手可能なDMAPAの使用にも関する。
【0142】
本発明の一効果は、アクロレインからN,N−置換1,3−プロパンジアミンを製造するための方法の提供であって、先行技術と比較して、使用されるアクロレインに基づくより高い選択性が達成される方法の提供にある。更に、中間体として形成されるN,N,N’,N’−置換1,3−プロペンジアミンの水素化において得られる3−メチルピペリジンやN,N,N’,N’−置換1,3−プロパンジアミン等の副生成物の形成を減少させることができる。中間体として得られるN,N,N’,N’−置換1,3−プロペンジアミンは、N,N−置換1,3−プロパンジアミンへの更なる転化の前に単離される必要がないか又は精製される必要がないという理由で、前記方法は、操作が容易であり、且つ工業的に実施可能である。本発明は、再生可能な原料に基づいて得られる原材料を使用するDMAPAのための新規な製造経路を提供する。
【0143】
以下の実施例により詳細に本発明を示す。
【0144】
実施例1
最初に270mLのオートクレーブに67.6gのジメチルアミン(1.5モル)を投入し、60分間に亘って冷却(4℃)しながら16.8gのアクロレイン(0.3モル)をポンプ輸送した。混合物を15分間撹拌した。試料を採取し、ガスクロマトグラフィーにより分析した。次いで、このオートクレーブの内容物を、事前に100℃に加熱され、且つ最初に51.0gのNH3(3.0モル)及び10.8gの水(0.6モル)における1.8gのRa−Co(THF洗浄)が既に投入された270mLの高圧オートクレーブ内に水素の注入によって接続線により移した。第2のオートクレーブの温度を100℃に保ち、水素を60barに注入した。次いで、水素化を2時間実施し、水素を添加することによって圧力を維持した。2時間後、試料を採取し、ガスクロマトグラフィーにより分析した。クロマトグラムは、アクロレイン及び中間体として生じたエナミンの完全な転化を示し、91.4%のDMAPA収率を示した。ジメチルアミノプロパノール(DMAPOL)収率(GC面積%で測定)は0.4%だった。化合物の収率を、面積百分率(a%)としてガスクロマトグラフィーによって決定した。
【0145】
実施例2
最初に270mLのオートクレーブに67.6gのジメチルアミン(1.5モル)を投入し、60分間に亘って冷却(4℃)しながら16.8gのアクロレイン(0.3モル)をポンプ輸送した。混合物を15分間撹拌した。試料を採取し、ガスクロマトグラフィーにより分析した。次いで、このオートクレーブの内容物を、最初に51.0gのNH3(3.0モル)及び10.8gの水(0.6モル)における1.8gのRa−Co(THF洗浄)が既に投入された270mLの高圧オートクレーブ内に水素の注入によって接続線により移した。第2のオートクレーブを80℃に加熱し、水素を60barに注入した。次いで、水素化を2時間実施し、水素を添加することによって圧力を維持した。2時間後、試料を採取し、ガスクロマトグラフィーにより分析した。クロマトグラムは、アクロレイン及び中間体として生じたエナミンの完全な転化を示し、80.3%のDMAPA収率を示した。ジメチルアミノプロパノール(DMAPOL)収率は13.9%だった。化合物の収率を、面積百分率(a%)としてガスクロマトグラフィーによって決定した。
【0146】
実施例3
最初に270mLのオートクレーブに、30gのTHFにおける33.8gのジメチルアミン(0.75モル)を投入し、60分間に亘って冷却(4℃)しながら、30gのTHFに溶解した16.8gのアクロレイン(0.3モル)をポンプ輸送した。混合物を15分間撹拌した。試料を採取し、ガスクロマトグラフィーにより分析した。次いで、このオートクレーブの内容物を、最初に25.5gのNH3(1.5モル)における1.8gのRa−Co(THF洗浄)が既に投入された270mLの高圧オートクレーブ内に水素の注入によって接続線により移した。第2のオートクレーブを80℃に加熱し、水素を60barに注入した。次いで、水素化を2時間実施し、水素を添加することによって圧力を維持した。6時間後、試料を採取し、ガスクロマトグラフィーにより分析した。クロマトグラムは、アクロレイン及び中間体として生じたエナミンの完全な転化を示し、88.7%のDMAPA収率を示した。ジメチルアミノプロパノール(DMAPOL)収率は0.8%だった。化合物の収率を、面積百分率(a%)としてガスクロマトグラフィーによって決定した。
【0147】
実施例4
最初に270mLのオートクレーブに67.6gのジメチルアミン(1.5モル)を投入し、60分間に亘って冷却(4℃)しながら16.8gのアクロレイン(0.3モル)をポンプ輸送した。混合物を15分間撹拌した。試料を採取し、ガスクロマトグラフィーにより分析した。次いで、このオートクレーブの内容物を、事前に120℃に加熱され、且つ最初に51.0gのNH3(3.0モル)及び10.8gの水(0.6モル)における1.8gのRa−Co(THF洗浄)が既に投入された270mLの高圧オートクレーブ内に水素の注入によって接続線により移した。第2のオートクレーブの温度を120℃に保ち、水素を100barに注入した。次いで、水素化を2時間実施し、水素を添加することによって圧力を維持した。3時間後、試料を採取し、ガスクロマトグラフィーにより分析した。クロマトグラムは、アクロレイン及び中間体として生じたエナミンの完全な転化を示し、87.8%のDMAPA収率を示した。ジメチルアミノプロパノール(DMAPOL)収率は0.8%だった。化合物の収率を、面積百分率(a%)としてガスクロマトグラフィーによって決定した。
【0148】
実施例5
最初に270mLのオートクレーブに67.6gのジメチルアミン(1.5モル)を投入し、60分間に亘って冷却(4℃)しながら16.8gのアクロレイン(0.3モル)をポンプ輸送した。混合物を15分間撹拌した。試料を採取し、ガスクロマトグラフィーにより分析した。次いで、このオートクレーブの内容物を、最初に51.0gのNH3(3.0モル)及び10.8gの水(0.6モル)における1.8gのRa−Co(THF洗浄)が既に投入された270mLの高圧オートクレーブ内に水素の注入によって接続線により移した。第2のオートクレーブを60℃に加熱し、水素を60barに注入した。次いで、水素化を2時間実施し、水素を添加することによって圧力を維持した。3時間後、試料を採取し、ガスクロマトグラフィーにより分析した。クロマトグラムは、アクロレイン及び中間体として生じたエナミンの完全な転化を示し、58.2%のDMAPA収率を示した。ジメチルアミノプロパノール(DMAPOL)収率は33.8%だった。化合物の収率を、面積百分率(a%)としてガスクロマトグラフィーによって決定した。
【0149】
実施例6
最初に270mLのオートクレーブに67.6gのジメチルアミン(1.5モル)を投入し、60分間に亘って冷却(4℃)しながら16.8gのアクロレイン(0.3モル)をポンプ輸送した。混合物を15分間撹拌した。試料を採取し、ガスクロマトグラフィーにより分析した。次いで、このオートクレーブの内容物を、最初に51.0gのNH3(3.0モル)における1.8gのRa−Co(THF洗浄)が既に投入された270mLの高圧オートクレーブ内に水素の注入によって接続線により移した。第2のオートクレーブを60℃に加熱し、水素を60barに注入した。次いで、水素化を2時間実施し、水素を添加することによって圧力を維持した。3時間後、試料を採取し、ガスクロマトグラフィーにより分析した。クロマトグラムは、アクロレイン及び中間体として生じたエナミンの完全な転化を示し、50.4%のDMAPA収率を示した。ジメチルアミノプロパノール(DMAPOL)収率は29.1%だった。化合物の収率を、面積百分率(a%)としてガスクロマトグラフィーによって決定した。
【0150】
実施例7
最初に100mLのフラスコに、18.25gの無水ジエチルアミン(0.25モル)を投入し、冷却(4℃)しながら10gのTHFと10gのTHFにおける5.6gのアクロレイン(0.1モル)とを滴下した。160mLの高圧オートクレーブ内に混合物を投入し;0.6gの(登録商標)Ra−Co(THF洗浄)を添加し、オートクレーブを閉じ、次いで8.5gのアンモニア(0.5モル)を添加した。オートクレーブを80℃に加熱し、所望の反応温度に達した際、H2を60barまで注入した。6時間後、ガスクロマトグラフィー分析により、87%の所望のN,N−ジエチル−1,3−プロパンジアミン生成物の形成が見られた。3−メチルピペリジンは見られなかった。
【0151】
比較例7a:
ラネーコバルトの代わりに同量のラネーニッケルを使用する場合、それ以外は実施例7と同じ実験条件の下で、N,N−ジエチル−1,3−プロパンジアミンについて81.3%の選択性が見られる。
【0152】
比較例7b:
実験条件は、実施例7の条件に相当したが、反応において18.25gの無水ジエチルアミン(0.25モル)の代わりに9.2gの無水ジエチルアミン(0.125モル)を使用する点ののみ異なった。試料のガスクロマトグラフィー分析により、52GC面積%の所望のN,N−ジエチル−1,3−プロパンジアミン生成物が形成されたことが見出された。更に、8GC面積%の3−メチルピペリジンが見られた。
【0153】
実施例8:
最初に270mLのオートクレーブに33.8gのジメチルアミン(0.75モル)を投入し、60分間に亘って冷却(4℃)しながら30gのTHFと30gのTHFにおける16.8gのアクロレイン(0.3モル)とをポンプ輸送した。混合物を15分間撹拌した。試料を採取し、ガスクロマトグラフィーにより分析した。次いで、このオートクレーブの内容物を、最初に25.5gのNH3(1.5モル)における1.8gのRa−Co(THF洗浄)が既に投入された270mLの高圧オートクレーブ内に水素の注入によって接続線により移した。第2のオートクレーブを80℃に加熱し、水素を60barに注入した。次いで、水素化を3時間実施し、水素を添加することによって圧力を維持した。3時間後、試料を採取し、ガスクロマトグラフィーにより分析した。クロマトグラムは、アクロレイン及び中間体として生じたエナミンの完全な転化を示し、88.3%のDMAPAについての選択性を示した。
【0154】
比較例8a:
ラネーコバルトの代わりに同量のラネーニッケルを使用する場合、それ以外は実施例2と同じ実験条件の下で、DMAPAについて57.5%の選択性が見出される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)(−50)〜100℃の温度及び0.01〜300barの圧力で第二級アミンとアクロレインとを反応させることと、
b)40〜400℃の温度及び1〜400barの圧力にて水素化触媒の存在下で段階a)において得られる反応混合物と水素及びアンモニアとを反応させることと
によるN,N−置換1,3−プロパンジアミンの製造方法であって、段階a)におけるアクロレインに対する第二級アミンのモル比が2:1以上であり、且つ段階b)において使用される水素化触媒がコバルトを含む、前記方法。
【請求項2】
段階b)が、水の存在下で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
使用されるアクロレインに対する水のモル比が0.5:1〜10:1の範囲内である、請求項1及び2の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項4】
段階b)が、50〜200℃の温度及び20〜250barの圧力で実施される、請求項1から3までの少なくとも一項に記載の方法。
【請求項5】
段階a)において使用される前記アクロレインに対する、段階b)において使用される前記アンモニアのモル比が、2:1〜100:1である、請求項1から4までの少なくとも一項に記載の方法。
【請求項6】
前記水素化触媒が金属形態で存在する、請求項1から5までの少なくとも一項に記載の方法。
【請求項7】
金属形態で前記方法において使用された、前記使用水素化触媒における全金属原子の合計に対するコバルト原子のモル比が、50モル%以上である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
金属形態の前記水素化触媒が、ラネーのスポンジ触媒又は骨格触媒である、請求項6及び7の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項9】
前記水素化触媒が、元素の周期律表の8族及び/又は9族及び/又は10族及び/又は11族の酸素化合物の形態の1種以上の触媒活性成分を含む触媒前駆体を還元することにより得られる、請求項1から5までの少なくとも一項に記載の方法。
【請求項10】
使用される前記触媒活性成分中に存在する全金属原子の合計に対するコバルト原子のモル比が、30モル%以上である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
段階a)において得られた前記反応混合物が、段階b)における使用の前に、更なる精製又は処理なしで使用される、請求項1から10までの少なくとも一項に記載の方法。
【請求項12】
ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジヘキシルアミン及びジシクロヘキシルアミンから成る群から選択される第二級アミンが使用される、請求項1から11までの少なくとも一項に記載の方法。
【請求項13】
使用される前記第二級アミンが、ジメチルアミン及び/又はジエチルアミンである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記グリセロールが、再生可能原料に基づくグリセロールである、前記請求項1から13までの少なくとも一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項14に従って得られるN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン(DMAPA)。
【請求項16】
潤滑用石鹸並びに他の洗剤、凝集剤、ポリマー及び櫛形ポリマーのための原材料としての、請求項15に従って得られるN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン(DMAPA)の使用。

【公表番号】特表2011−520830(P2011−520830A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508883(P2011−508883)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【国際出願番号】PCT/EP2009/055655
【国際公開番号】WO2009/138377
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】