説明

NC工作機械による成形加工方法

【課題】NC工作機械によるワークに対する成形加工において、プログラムが設定する座標上の原点を容易に選択し、かつ特定し得るような方法を提供すること。
【解決手段】NC工作機械によって、ワークに対する成形加工を行うに先立ち、加工前のワークにおける表面上の2点を選択し、当該2点の中心位置、又は当該ワークの表面上に位置し、かつ同一平面上にある4点を選択し、相互に隣接していない配置関係にある2点を結ぶ対角線同士の交点の位置を、プログラムが予め設定している座標の原点とし得る数値情報を、前記プログラムの作動に関与しているコンピュータに入力することによって前記課題を達成し得るNC工作機械による成形加工方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NC工作機械によって加工前段階にある既存のワークに対する所定の形状による成形加工を行う際におけるプログラムが設定する座標の原点につき、前記ワークにおける位置を特定する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
NC工作機械が備えているプログラムによって既存のワークに対する加工を行う際、プログラムは加工表面を形成するうえで基準となる座標及び当該座標の原点を設定している。
【0003】
当該原点は、既存のワークのうちの所定の空間の範囲内において選択することが可能である。
【0004】
しかしながら、従来技術においては、当該ワークが形成している表面又は内側空間の如何なる位置にプログラムによって設定された原点を特定するかにつき、格別の基準は存在せず、ましてや、当該基準が確立している訳ではない。
【0005】
このような状況を反映して、NC工作機械による成形加工に際し、当該ワークにおいて前記所定の空間の範囲内のうちの適当な位置を適当に選択して、前記原点のワークにおける位置を特定するという手法が作業現場において採用されている。
【0006】
このような場合、実際に前記のように選択された位置がワークにおいてどのような数値によって特定されるか、即ち、具体的にはワーク固有の座標において、どのような数値によって特定され得るかについては、当該ワークに即して前記選択された位置につき複雑な測定及び計算を行うことによって、前記位置に関する数値、具体的にはワーク固有の座標における三次元の数値をコンピュータに対して入力することを不可欠としていた。
【0007】
しかしながら、前記のように選択された位置は、ワークの表面ではなく内側に位置している場合が多いため、前記測定は実際には相当煩雑であり、しかも測定に基づいて特定された前記数値は、必ずしも正確ではない。
【0008】
その結果、プログラムが設定した原点とワーク内における位置に関する数値のデータと事前の選択によって想定した前記原点のワーク内における位置とが一致せず、現実の加工精度に支障を生ずるという厄介な問題を免れることができなかった。
【0009】
しかるに、従前のNC工作機械による成形加工においては、この点を基本的に解決するような基本的技術思想は存在していない。
【0010】
現に、特許文献1及び同2は、プログラムが設定した基準位置と加工部材の特定の位置とに関連する事項を開示しているが、前記一般的な基準については、何ら開示及び示唆している訳ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−110674号公報
【特許文献2】特開2008−111770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、NC工作機械によるワークに対する成形加工において、プログラムが設定する座標上の原点を容易に選択し、かつ特定し得るような方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するため、本発明の基本構成は、
(1)NC工作機械によって、ワークに対する成形加工を行うに先立ち、加工前のワークにおける表面上の2点を選択し、当該2点の中心位置をプログラムが予め設定している座標の原点とし得る数値情報を、前記プログラムの作動に関与しているコンピュータに入力するNC工作機械による成形加工方法、
(2)NC工作機械によって、ワークに対する成形加工を行うに先立ち、加工前のワークの表面上に位置し、かつ同一平面上にある4点を選択し、相互に隣接していない配置関係にある2点を結ぶ対角線同士の交点の位置をプログラムが予め設定している座標の原点とし得る数値情報を、前記プログラムの作動に関与しているコンピュータに入力するNC工作機械による成形加工方法、
からなる。
【発明の効果】
【0014】
前記基本構成(1)、(2)によって、NC工作機械による成形加工に際し、プログラムが設定した座標上の原点の加工前のワーク内における位置を当該ワークの表面の位置を基準として適宜選択することによって容易に特定することが可能となり、効率的な成形加工に資することができ、しかも基本構成(1)の2点、及び基本構成(2)の4点は、何れもワークの表面における位置にあるため、前記基本構成(1)の中心位置、及び前記基本構成(2)の交点を正確に算定することが可能であり、従来技術の場合のような実際の測定及び計算による前記原点の位置と想定によって選択した前記原点の位置とが一致しないという弊害を免れることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】前記基本構成(1)の基本原理を示す平面図である(P1,P2は、ワークの表面において選択された特定の2点による位置を示しており、Oは直線P12の中心位置を示す。)。
【図2】前記基本構成(2)の基本原理を示す平面図である(P1,P2,P3,P4は、ワークの表面において選択され、かつ同一平面上にある特定の4点の位置を示しており、Oは対角線P12及び対角線P34の交点を示しており、ワーク内の斑点模様は、P1,P2,P3,P4が同一平面であることを示す。)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
前記基本構成(1)は、図1に示すように、NC工作機械が備えているプログラムが設定した座標の原点のワーク1内における位置を、ワーク1の表面において適宜選択された2点の中心位置によって特定し、かつ当該特定に基づいてコンピュータに対し前記中心位置の数値情報を入力している。
【0017】
上記2点の位置は、既存のワーク1の表面に沿って測定を行い、かつ2点の位置の平均値を算定することによって、当該中心位置に関する数値データをコンピュータに入力することになる。
【0018】
前記数値データとしては、ワーク1による特定の1点をワーク1固有の座標における原点として、かつ三次元に基づく前記中心位置の座標における三次元のデータをコンピュータに入力すれば良い。
【0019】
このようなワーク1の表面における2点の位置、及びその中心位置の数値データは、上記のようなワーク1の表面に沿った測定だけでなく、加工前のワーク1の三次元方向の各撮影画面に基づいて、2点の位置を選択し、かつ中心位置を算定することによって、更に容易に実現することができる(この点は、三次元方向の各撮影画面という二次元方向の平面に沿ってワーク1固有の座標位置を容易に測定し、かつ中心位置を算定し得ることからも明らかである。)。
【0020】
前記基本構成(2)は、図2に示すように、ワーク1の表面上に位置し、かつ同一平面上にある4点を選択し、これらのうち、相互に隣接している配置関係ではない2点を結ぶ対角線の交点をプログラムが設定した座標の原点の位置として特定している。
【0021】
上記4点の位置の測定は、前記基本構成(1)の場合と同様に、既存のワーク1の表面に沿った測定、及びワーク1の三次元方向の各撮影画面における測定によって実現可能である。
【0022】
ワーク1の表面が平面形状である場合には、当該平面に沿って前記交点を設定することが可能であるが、当該平面に沿った交点を選択しない場合には、ワーク1の表面に位置し、かつ同一平面上にある前記4点を選択することは必ずしも容易ではない。
【0023】
このような場合には、加工前のワーク1の三次元方向の各撮影画面を使用し、特定方向の平面と交叉しているワーク1の表面上の軌跡を画面表示にした場合には、前記4点を容易に選択することができる。
【0024】
前記2本の対角線の交点については、ワーク1固有の座標のうち、特に前記対角線を形成し得る平面による二次元の座標を選択したうえで、前記各対角線の二次元方程式を設定し(具体的には、y=a1x+b1、y=a2x+b2 という2個の二次元方程式を設定し)、双方の直線の交点を求めると良い(前記各方程式の解として、(x1,y1)の座標位置を求めると良い。)。
【0025】
何れにせよ、ワーク1の表面の2点を選択して、前記基本構成(1)の中心点を特定すること、及びワーク1の表面における4点を選択して前記基本構成(2)の交点を特定することは、単純な数学上の処理を介して容易に実現でき、特にワーク1に対する三次元方向の撮影画面を使用した場合には、前記中心点又は交点の位置を容易かつ正確に特定することができる。
【0026】
その結果、本発明においては、プログラムが設定した座標における原点のワーク1内における位置を容易に選択し、かつ特定して、当該特定に基づく三次元の数値データをコンピュータに入力することが可能となる。
【0027】
以下実施例に即して説明する。
【実施例1】
【0028】
実施例1は、2点として、加工前のワーク1の各点のうち、最も遠い距離にある位置を選択することを特徴としている。
【0029】
このような最も遠い距離にある2点を選択した場合には、大抵の場合、プログラムによって設定された座標の原点の位置は、ワーク1内において概略中心位置とすることが可能であり、加工段階において、プログラムによる演算を円滑かつ効率的な状態とすることができる。
【実施例2】
【0030】
実施例2は、対角線を形成する各2点につき、最も遠い距離にある2点及び最も近い距離にある2点を選択すると共に、前記各2点が対角線上に位置していることを特徴としている。
【0031】
このように、最も遠い距離にある2点と最も近い距離にある2点による対角線を選択した場合には、実施例1の場合にも増してプログラムによって設定された座標の原点の位置は、実施例1の中心位置の場合よりも更に一層ワーク1の加工位置である場合が多く、加工段階におけるプログラムによる演算を更に円滑かつ効率的な状態とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、NC工作機械によるワークに対する成形加工に関する全分野において利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
NC工作機械によって、ワークに対する成形加工を行うに先立ち、加工前のワークにおける表面上の2点を選択し、当該2点の中心位置をプログラムが予め設定している座標の原点とし得る数値情報を、前記プログラムの作動に関与しているコンピュータに入力するNC工作機械による成形加工方法。
【請求項2】
加工前のワークの三次元方向の各撮影画面に即して、2点の位置を選択し、かつ中心位置を当該画面上の座標によって算定することを特徴とする請求項1記載のNC工作機械による成形加工方法。
【請求項3】
2点として、加工前のワークの各点のうち、最も遠い距離にある位置を選択することを特徴とする請求項1、2の何れか一項に記載のNC工作機械による成形加工方法。
【請求項4】
NC工作機械によって、ワークに対する成形加工を行うに先立ち、加工前のワークの表面上に位置し、かつ同一平面上にある4点を選択し、相互に隣接していない配置関係にある2点を結ぶ対角線同士の交点の位置をプログラムが予め設定している座標の原点とし得る数値情報を、前記プログラムの作動に関与しているコンピュータに入力するNC工作機械による成形加工方法。
【請求項5】
加工前のワークの三次元方向の各撮影画面に即して、4点の位置を選択し、かつ交点の位置を当該画面上の座標によって算定することを特徴とする請求項3記載のNC工作機械による成形加工方法。
【請求項6】
対角線を形成する各2点につき、最も遠い距離にある2点及び最も近い距離にある2点を選択すると共に、前記各2点が対角線上に位置していることを特徴とする請求項4、5の何れか一項に記載のNC工作機械による成形加工方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−79071(P2011−79071A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231082(P2009−231082)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【出願人】(000146087)株式会社松浦機械製作所 (40)
【Fターム(参考)】