説明

NC工作機械

【課題】消費電力の削減を図りながら油圧アクチュエータをより応答性良く作動させる。
【解決手段】工作機械は、クロスレール6と、このクロスレール6を駆動してその動作を行わせるW軸サーボモータ24と、クロスレール6を支持しその動作に応じて動作するバランスシリンダ27と、ポンプ30及びこれを駆動する電気式のポンプモータ32を含む油圧回路28と、W軸サーボモータ24の動作を制御するためのNCプログラムを記憶する記憶手段と、NCプログラムの内容を読み取り、W軸サーボモータ24によるクロスレール6の駆動状態に応じてバランスシリンダ27に供給すべき作動油の必要供給量を演算し、当該供給量に対応したポンプ回転数を決定する回転数演算手段と、インバータ等を含むポンプモータ回転数制御手段とを有する。ポンプモータ回転数制御手段は、回転数演算手段により決定された回転数に基づきポンプモータ32の回転数を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NCプログラムに従って機械加工を行う中ぐり盤等の工作機械において、特に、油圧アクチュエータを備えたNC工作機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記のような工作機械として、例えば特許文献1に記載されるような門型工作機械がある。この工作機械は、左右一対のコラムと、これらコラムの間に設置されるテーブルと、両コラムに沿って上下方向に移動可能に設けられるクロスレールと、このクロスレールに横行可能に設けられる加工ヘッドと、前記クロスレールを駆動する駆動機構とを備える。加工ヘッドは、これに装着された工具を回転駆動するモータを含み、このモータにより工具が回転駆動されながら、前記クロスレールと共に昇降駆動させることによりワークテーブル上に固定されたワークを加工する。前記クロスレールの駆動機構は、上下に延びる送りねじ軸と、この送りねじ軸を駆動する電気モータとを含むいわゆる送りねじ機構により構成されるが、この送りねじ機構のねじ軸にクロスレールの荷重が全て作用することは、ねじ軸の円滑な作動が妨げられてクロスレールの作動に支障が出るおそれがあるため、好ましくない。
【0003】
そこで、このような不都合を回避すべく、この工作機械には、さらにバランスシリンダ装置が組込まれている。このバランスシリンダ装置は、クロスレールの両端をそれぞれ支持するための油圧シリンダ(油圧アクチュエータ)からなるバランスシリンダと、これらバランスシリンダに作動油を供給するための油圧回路等からなり、クロスレールの荷重を各バランスシリンダで支持することにより、ねじ軸の荷重負担を軽減する。さらに、このバランスシリンダ装置は、各バランスシリンダのシリンダ室内の油圧を検出するセンサと、その検出値が一定になるように油圧回路内のリリーフ弁等の弁操作を行うことにより作動油の流量をフィードバック制御するコントローラとを備え、その制御によりクロスレールはその作動状態に左右されることなく一定の力で支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−114749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バランスシリンダ装置は、油圧回路内のポンプを定格流量(回転数)で運転しておき(以下、単に定格運転という)、弁操作により作動油の流量調整を行うのが一般的である。従って、従来は、最も流量を要するクロスレールの作動状態、具体的には、クロスレールの早送り上昇時に上記一定の油圧が得られる容量のポンプを選定し、ポンプを常時定格運転した上でリリーフ弁等の弁操作により作動油の圧力を制御することが行われている。しかし、ワークの加工中にクロスレールを早送りで上昇させる期間は限定的であり、必要流量が少ないにも拘わらず定格運転し続けるのはエネルギー効率が悪い。
【0006】
本発明は、上記のような事情に鑑みて成されたものであり、NC工作機械において、エネルギー効率を向上させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の解決手段として、インバータによりポンプモータを可変速運転することによりポンプの吐出量(ポンプ流量)を変更可能とし、各バランスシリンダのシリンダ室内の油圧をセンサにより検出しながらその検出値が一定になるようにポンプ流量を変更することが考えられる。
【0008】
しかし、シリンダ室内の油圧を検出してから作動油の流量を制御する場合には、応答遅れの問題がある。例えばクロスレールを停止状態から早送り上昇させるような場合には、クロスレールの上昇に伴いシリンダ室内の油圧が低下し、この油圧低下の検知に基づいて作動油の流量が変更されるために当該流量の変更に著しい応答遅れが生じる。従来のようにポンプを常時定格運転した上でリリーフ弁等の弁操作により流量を変更する場合には、応答遅れは小さいが、上記のようにインバータによりクロスレールの停止中に例えばポンプの回転数が定格回転数よりも十分に低い回転数まで下げられていると、その停止状態からクロスレールを上昇させる時にポンプの回転数の上昇に著しい応答遅れが生じてバランスシリンダ装置の機能に支障をもたらすおそれがある。
【0009】
本発明は、このような応答遅れによる不都合を回避しながら効率の良い運転をすることが可能なNC工作機械を提供する。すなわち、本発明に係るNC工作機械は、特定の動作を行う作動部材を含む作動機構を備えたNC工作機械であって、前記作動部材を駆動してその動作を行わせる電気アクチュエータと、前記作動部材を支持し、かつ、この作動部材の動作に応じて動作する油圧アクチュエータと、油圧源であるポンプ及びこのポンプを駆動する電気式のポンプモータを含み、前記作動部材を支持するための油圧を前記油圧アクチュエータに供給する油圧供給回路と、前記電気アクチュエータの動作を制御するためのNCプログラムを記憶する記憶手段と、前記NCプログラムの内容を読み取り、その内容に基づき、前記電気アクチュエータによる前記作動部材の駆動状態に応じて前記油圧アクチュエータに供給すべき作動油の必要供給量を演算するとともにその必要供給量に対応した前記ポンプの回転数を決定する回転数決定手段と、前記ポンプモータの回転数を制御するポンプモータ回転数制御手段とを備え、このポンプモータ回転数制御手段が、前記回転数決定手段により決定された回転数に基づいて前記ポンプモータの回転数を変化させるものである。
【0010】
このNC工作機械によれば、作動部材の駆動状態に応じた回転数でポンプモータ回転数制御手段がポンプモータを駆動するので、ポンプを常時定格運転するといった無駄な運転を無くしてポンプ(ポンプモータ)を効率的に駆動することができる。しかも、回転数決定手段が作動部材を駆動するための電気アクチュエータのNCプログラムを読み取り、その内容に基づいてポンプの回転数を決定し、この決定された回転数に基づいてポンプモータ回転数制御手段がポンプモータの回転数を変更するので、作動部材の駆動状態の変化に先行してポンプモータの回転数を変更することが可能となる。そのため、油圧回路内の油圧をセンサで検出しながらその検出値が一定になるようにポンプ流量(ポンプの回転数)を変更する場合のような応答遅れといった不都合を伴うことがなく、油圧アクチュエータにより作動部材をその駆動状態に応じて適切に支持することが可能となる。
【0011】
本発明に係るNC工作機械は、例えば門型の工作機械として好適である。具体的には、前記作動部材は、水平方向に延び、工具を駆動するための主軸を含む主軸装置を支持するクロスレールであり、前記作動機構は、前記クロスレールに加え、このクロスレールの両端部をそれぞれ上下方向に案内しながら支持する一対のコラムと、前記電気アクチュエータが生成する駆動力によって前記クロスレールを昇降させる昇降送り機構とを含み、前記油圧アクチュエータは、前記クロスレールの両端部を支持しながらその昇降に応じて伸縮するように当該両端部にそれぞれ連結されるバランスシリンダであり、前記回転数決定手段は、前記クロスレールの移動方向及び同速度に対応した前記NCプログラムの内容を読み取り、その内容に基づき、作動油の前記必要供給量を演算するものである。
【0012】
このNC工作機械では、クロスレールの移動方向及び同速度に応じて作動油の必要供給量が演算され、当該必要供給量の作動油が油圧アクチュエータに供給されるようにポンプの回転数が変更される。そして、このようなポンプの回転数がクロスレールの駆動状態の変化に先行して行われることにより、応答遅れを伴うことなく、油圧アクチュエータによってクロスレールを適切に支持することが可能となる。
【0013】
なお、上記のようなNC工作機械において、前記ポンプモータ回転数制御手段は、前記回転数決定手段により決定された決定回転数が現在のポンプ回転数以下でかつ当該現在のポンプ回転数が前記決定回転数を基準として予め定められた範囲内にあるときには、前記現在のポンプ回転数が維持されるように前記ポンプモータの回転数を制御するものであるのが好適である。
【0014】
この構成によれば、ポンプの回転数が変更されることによる弊害、例えばポンプの回転数が短時間に頻繁に変更されることにより油圧アクチュエータへの作動油の供給量が不安定になるといった不都合を回避することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、油圧アクチュエータに油圧を供給するポンプの回転数を作動部材の駆動状態に応じて変更するので、ポンプを常時定格運転するといった無駄を無くしてエネルギー効率を向上させることができる。また、作動部材を駆動するための電気アクチュエータのNCプログラムの内容を読み取り、これに基づいてポンプの回転数を変更するので、ポンプの回転数を作動部材の駆動状態の変化に先行して変更することが可能であり、従って、油圧アクチュエータにより作動部材をその駆動状態の変化に応じて適切に支持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るNC工作機械の一実施形態を示す全体構成図である。
【図2】NC工作機械の制御装置の構成を示すブロック図である。
【図3】制御装置による油圧制御の一例を示すフローチャートである。
【図4】制御装置による油圧制御の一例を示すフローチャートである。
【図5】ポンプ回転数を決定するための回転数決定線図であって回転数の決定例の一例を示す図である。
【図6】ポンプ回転数を決定するための回転数決定線図であって回転数の決定例の一例を示す図である。
【図7】ポンプ回転数を決定するための回転数決定線図であって回転数の決定例の一例を示す図である。
【図8】制御装置による油圧制御の変形例を説明するためのフローチャートである。
【図9】制御装置による油圧制御の変形例を示すフローチャートである。
【図10】NC工作機械の変形例を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。
【0018】
図1は、本発明に係るNC工作機械を示す全体構成図である。このNC工作機械(以下、単に工作機械という)は、切削工具を回転させながら当該切削工具をワークに対して相対移動させることにより、ワークの切削加工を行うものである。
【0019】
同図に示すように、この工作機械は、ベッド2と、テーブル4と、クロスレール6と、クロスレール6の支持駆動装置と、左右一対のコラム8と、主軸装置10と、主軸装置10の駆動装置40と、制御装置12等とを備えている。
【0020】
ベッド2は、所定の設置面上に設置されている。このベッド2の上面にはワークを保持するための前記テーブル4が支持されている。テーブル4は、ベッド2に対して同図の紙面と直交する方向(X軸方向とする)に移動可能に支持されており、図外の駆動手段により駆動されることによりワークをX軸方向にスライドさせるようになっている。
【0021】
前記コラム8は、ベッド2の両側に立設されている。上記クロスレール6(作動部材)は、テーブル4の移動方向と直交して水平方向(図1の左右方向:Y軸方向という)に延びる姿勢で、前記コラム8に支持されている、詳しくは、その長手方向の両端部がそれぞれコラム8に沿って昇降するように支持されている。
【0022】
クロスレール6の支持駆動装置は、クロスレール6を支持しながら昇降させるもので、クロスレール駆動装置22とバランス装置26とを含む。なお、以下の説明では、クロスレール6の移動(昇降)方向をW軸方向という。
【0023】
クロスレール駆動装置22は、クロスレール6をW軸方向に送る昇降送り機構であり、一対のボールねじ軸23とこれらを駆動するW軸サーボモータ24(本発明の電気アクチュエータ)とを含む。ボールねじ軸23は、W軸方向に延び、かつそれぞれクロスレールの長手方向両端部に設けられる図外のナット部材に螺合挿入されており、W軸サーボモータ24は、これらボールねじ軸23を回転駆動することにより上記クロスレール6をコラム8に沿ってW軸方向に移動させる。
【0024】
バランス装置26は、前記クロスレール6をその昇降に拘わらず下から支持することにより当該クロスレール6の荷重によるボールねじ軸23の負担を軽減するものである。このバランス装置26は、油圧シリンダ(本発明の油圧アクチュエータに相当する)からなる一対のバランスシリンダ27と、これらバランスシリンダ27に対して所定圧の作動油を供給するための油圧回路28(本発明の油圧供給回路に相当する)とを含む。
【0025】
各バランスシリンダ27は、クロスレール6の長手方向両端部に配置されており、シリンダ本体と、このシリンダ本体内に装填されるピストンと、このピストンから下方に延びるロットとを有し、シリンダ本体がコラム8の側面に固定されるとともに、ロットの上端部がクロスレール6の下面に固定されている。このバランスシリンダ27は、油圧回路28から供給される油圧によりクロスレール6のW軸方向の荷重を支持しながら、当該クロスレール6の昇降に応じて伸縮し、これによりボールねじ軸23によるクロスレール6の荷重負担を軽減する。
【0026】
油圧回路28は、作動油を貯溜するタンク29と、油圧源であるポンプ30と、このポンプ30を駆動する電気式のポンプモータ32と、作動油をそれぞれバランスシリンダ27に供給するための油路34、36と、各油路34、36の途中にそれぞれ設けられるバランス回路34a、36aとを含む。各バランス回路34a、36aは、クロスレール6の荷重とバランスシリンダ27の油圧とをバランスさせるためのもので、リリーフ付減圧弁(バランサ弁)とこれに直列に接続されるパイロットチェック弁等を含む。リリーフ付減圧弁は、バランスシリンダ27側の油圧が所定圧力となるようにポンプ30からの作動油の圧力を調整する減圧弁として機能するとともに、クロスレール6の下降時には、バランスシリンダ27側の圧力を前記所定圧力に保持するリリーフ弁として機能するものである。前記パイロットチェック弁は、前記リリーフ付減圧弁とバランスシリンダ27との間に設けられており、クロスレール6の上昇時には、リリーフ付減圧弁からバランスシリンダ27側へ一方向にのみ作動油を通過させながら、クロスレール6の下降時にはその逆流を許容するものである。つまり、各バランス回路34a、36aは、ポンプ30からの作動油を、その圧力をリリーフ付減圧弁で所定圧力に調整しながらパイロットチェック弁を通じてバランスシリンダ27に供給し、クロスレール6の下降に伴いバランスシリンダ27側の油圧が前記所定圧力を超えると、パイロットチェック弁が作動油の逆流を許容する状態に切り替わるとともにバランスシリンダ27側の油圧が前記所定圧力となるようにリリーフ付減圧弁及び図外のドレン油路を通じて作動油をタンク29に戻す。これによりバランスシリンダ27内の油圧が一定に保たれるようになっている。
【0027】
なお、前記ポンプ30及び前記ポンプモータ32の回転数は可変であり、その回転数は後述のようにインバータ67(図2参照)を介して制御装置12により制御される。
【0028】
上記主軸装置10は、クロスレール6の長手方向の中間部に支持される切削工具(図示せず)を着脱可能に保持しながら回転させるものである。この主軸装置10は、具体的には、上記クロスレール6に沿ってY軸方向に移動可能に設けられており、主軸装置10の上記駆動装置40により同方向に移送される。
【0029】
この駆動装置40は、クロスレール6に固定されて前記主軸装置10をY軸方向に案内するガイド部(図示省略)と、Y軸方向に延びて主軸装置10の図外のナット部材に螺合挿入されるボールねじ軸41と、このボールねじ軸41を駆動することにより主軸装置10を上記ガイド部材に沿ってY軸方向に移動させるY軸サーボモータ42とを含む。
【0030】
上記主軸装置10は、ラムヘッド44と、このラムヘッド44を上下方向に移動可能に支持するサドル45と、ラムヘッド44の支持駆動装置とを含んでおり、サドル45が上記駆動装置40のガイド部に装着されることにより上記クロスレール6に移動可能に設けられている。なお、以下の説明では、サドル45が移動する方向をZ軸方向という。
【0031】
前記ラムヘッド44(作動部材)は、主軸44a及びこれを駆動する主軸モータを備える。主軸44aの下端部は、前記切削工具が装着される工具装着部を構成する。この主軸44aは、テーブル4の上面に対して垂直となるようにラムヘッド44に支持されている。前記主軸モータは、前記主軸44a及びその工具装着部に装着された切削工具(図示せず)を一体に回転させる。
【0032】
ラムヘッド44の支持駆動装置は、ラムヘッド駆動装置46とバランス装置50とを含む。ラムヘッド駆動装置46は、ラムヘッド44をZ軸方向に駆動するもので、サドル45に固定され、ラムヘッド44をZ軸方向に案内するガイド部(図示省略)と、Z軸方向に延び、かつラムヘッド44の図外のナット部材に螺合挿入されるボールねじ軸47と、このボールねじ軸47を駆動することによりラムヘッド44を上記ガイド部材に沿ってZ軸方向に移動させるZ軸サーボモータ48(本発明の電気アクチュエータに相当する)とを含む。
【0033】
バランス装置50は、ラムヘッド44を支持することによりその荷重を負担するものでる。このバランス装置50は、油圧シリンダ(本発明の油圧アクチュエータに相当する)からなる一対のバランスシリンダ51と、これらに所定圧の作動油を供給するための油圧回路とを含む。各バランスシリンダ51は、ラムヘッド44のY軸方向両側に配置されており、シリンダ本体と、このシリンダ本体内に装填されるピストンと、このピストンから下方に延びるロットとを有し、シリンダ本体がサドル45に固定されるとともに、ロットの下端部がラムヘッド44のフランジ部に固定されている。このバランスシリンダ51は、油圧回路から供給される油圧によりラムヘッド44のZ軸方向の荷重を支持しながら、当該ラムヘッド44の昇降に応じて伸縮し、これによりボールねじ軸47によるラムヘッド44の荷重負担を軽減する。
【0034】
このバランス装置50の上記油圧回路は、同図に示すように、クロスレール6の前記バランス装置26の油圧回路28と共通である。すなわち、前記油圧回路28には、その油路として各バランスシリンダ51に作動油を供給するための油路38が含まれており、この油路38を通じて各バランスシリンダ51に作動油が供給される。なお、油路38にはラムヘッド44の荷重とバランスシリンダ51の油圧とをバランスさせるためのバランス回路38aが介設されている。このバランス回路38aは、上述したバランス回路34a、36aと同一の構成であり、従ってここではその説明を省略する。
【0035】
上記制御装置12は、工作機械の各部の制御を行うものであり、図2に示すように、その機能構成として数値制御部60、記憶手段61、軸モータ制御部62及びポンプモータ制御部64を含んでいる。
【0036】
記憶手段61は、前記クロスレール駆動装置22及びラム駆動装置46等の駆動を数値制御するためのNCプログラムが記憶されており、数値制御部60は、この記憶手段61に記憶されているNCプログラムに従って各駆動装置22、40、46等を作動させるための軸作動指令信号を作成して軸モータ制御部62に出力する。
【0037】
軸モータ制御部62は、当該各駆動装置22、40、46の各サーボモータ24、42、48を制御するものである。この軸モータ制御部62には、サーボモータ24、42、48の各ドライバ68a〜68cが接続されており、軸モータ制御部62は、前記数値制御部60から入力される軸作動指令信号に基づき当該ドライバ68a〜68cを介して各サーボモータ24、42、48の駆動を制御する。
【0038】
ポンプモータ制御部64は、上記ポンプモータ32の駆動を制御するもので、回転数演算手段66とインバータ67とを含む。回転数演算手段66は、ポンプ30の目標回転数に対応するポンプモータ32の駆動周波数を演算し、その周波数を指令周波数として上記インバータ67に入力する。前記インバータ67は、その入力された指令周波数で前記ポンプモータ32を回転させるように当該ポンプモータ32に電流を流す。このように、この工作機械では、ポンプモータ制御部64が前記ポンプモータ32の回転数を変化させ、これによりポンプ流量(ポンプ30の吐出量)を変更する。
【0039】
回転数演算手段66(本発明の回転数決定手段に相当する)は、クロスレール6及びラムヘッド44を駆動するためのNCプログラムに従ってポンプ流量、すなわちバランスシリンダ27、51に供給すべき作動油の必要供給量を演算するとともに、そのポンプ流量に見合ったポンプ30の目標回転数を演算する。具体的には、この回転数演算手段66には、数値制御部60から軸モータ制御部62への軸動作指令信号が分配入力されており、回転数演算手段66は、この軸動作指令信号のうちクロスレール6及びラムヘッド44を駆動するための軸動作指令の内容(NCプログラムの内容)、つまり、W軸サーボモータ24及びZ軸サーボモータ48に対する指令内容を読取り、その内容に基づき、W軸サーボモータ24によるクロスレール6の駆動状態およびバランスシリンダ51によるラムヘッド44の駆動状態に応じた作動油のポンプ流量を演算し、その流量に見合ったポンプ30の目標回転数を演算する。
【0040】
なお、当実施形態では、上記ポンプモータ制御部64及びインバータ67が本発明のポンプモータ回転数制御手段に相当しており、従って、当実施形態では、ポンプモータ回転数制御手段が回転数決定手段(回転数演算手段66)としての機能を兼ね備えた構成となっている。
【0041】
次に、この制御装置12のポンプモータ制御部64による油圧回路28のポンプ流量制御について、図5〜図7を参照しつつ図3及び図4のフローチャートに従って説明する。
【0042】
この制御が開始されると、ポンプモータ制御部64は油圧がONか否か、すなわちポンプモータ32が後記下限回転数RMIN以上で駆動しているか否かを判断する(ステップS1)。ここで、駆動していないと判断した場合には、インバータ67に与える指令周波数として現在設定されている指令周波数をクリアした後、後述するステップS25に移行する(ステップS2)。なお、ポンプモータ制御部64は、ポンプモータ32に内蔵される図外のエンコーダからの入力信号に基づいて当該ステップS1の判断を行う。
【0043】
ステップS1でYESと判断した場合には、ポンプモータ制御部64は、前回求めたポンプ流量値をクリアした後(ステップS3)、数値制御部60から分配入力される軸作動指令信号に基づきZ軸(ラムヘッド44)の駆動内容を読み取る(ステップS5)。具体的には、Z軸サーボモータ48の移動方向及び同速度を読み取り、その内容に基づき、Z軸サーボモータ48によるラムヘッド44の駆動状態に応じてバランスシリンダ51に供給すべき作動油の必要供給量(ポンプ流量)を演算する。当例では、ラムヘッド44が上昇駆動されるか否かを判断し(ステップS7)、ここで、ラムヘッド44が上昇駆動されると判断した場合には、ポンプモータ制御部64(回転数演算手段66)は、ラムヘッド44の移動速度に基づいて必要なポンプ流量を演算する(ステップS9)。すなわち、前記移動速度で上昇するラムヘッド44の荷重をバランスシリンダ51により支障なく支持するために必要なポンプ流量を演算する。なお、ステップS7でNOと判断した場合には、ステップS11に移行する。
【0044】
さらに、ポンプモータ制御部64は、前記軸作動指令信号に基づきW軸(クロスレール6)の駆動内容を読み取る(ステップS11)、具体的には、W軸サーボモータ24の移動方向及び同速度を読み取り、その内容に基づき、W軸サーボモータ24によるクロスレール6の駆動状態に応じたバランスシリンダ27に供給すべき作動油の必要供給量(ポンプ流量)を演算する。当例では、クロスレール6が上昇駆動されるか否かを判断し(ステップS13)、ここで、クロスレール6が上昇駆動されると判断した場合には、ポンプモータ制御部64(回転数演算手段66)は、クロスレール6の移動速度に基づいて必要なポンプ流量を演算する(ステップS15)。すなわち、前記移動速度で上昇するクロスレール6の荷重をバランスシリンダ27により支障なく支持するために必要なポンプ流量を演算する。なお、ステップS13でNOと判断した場合には、ステップS17に移行する。
【0045】
ステップS9,S15のポンプ流量は、(計算式) バランスシリンダ27(51)のシリンダ内断面積(mm)×クロスレール6(ラムヘッド44)の移動速度(mm/sec)×シリンダ数、に基づいて求められる。
【0046】
次に、ポンプモータ制御部64は、ステップS9、S15の結果に基づき総ポンプ流量を演算し、この総ポンプ流量に基づいてポンプ30の目標回転数を決定する(ステップS17)。なお、両ステップS9、S15でポンプ流量が求められていない場合(ステップS7,S13で共にNOの場合)には、ポンプモータ制御部64は、総ポンプ流量を「0」として目標回転数を決定する。
【0047】
ここで、ポンプモータ制御部64の回転数演算手段66は、例えば図5に示すような回転数決定線図に基づいて目標回転数を決定する。この線図は、総ポンプ流量とその流量に対応したポンプ30の回転数との関係を定めたものである。
【0048】
この線図において、加速用回転数決定直線は、ポンプ30の回転数を現在の回転数よりも上げる必要がある場合にその目標回転数を決定するための線であり、他方、減速用回転数決定直線は、ポンプ30の回転数を現在の回転数よりも下げる必要がある場合にその目標回転数を決定するための線である。なお、減速用回転数決定直線は、総ポンプ流量が同じ値であっても加速用回転数決定直線よりも一定の割合だけポンプ回転数が高くなるように総ポンプ流量と目標回転数との関係が定められている。
【0049】
ポンプモータ制御部64は、この回転数決定線図と総ポンプ流量とに基づいて目標回転数を決定する。具体的には、図5に示すように、総ポンプ流量Qと加速用回転数決定直線とに基づき加速用目標回転数Rを求め、さらに総ポンプ流量Qと減速用回転数決定直線とに基づき減速用目標回転数Rを求める。
【0050】
次に、ポンプモータ制御部64は、現在の目標回転数Rと加速用目標回転数Rとを比較し、上記総ポンプ流量Qとの関係で現在の目標回転数Rが加速用目標回転数Rよりも低いか否かを判断する(ステップS19)。ここで低いと判断した場合には、ポンプモータ制御部64は、ステップS17で求めた加速用目標回転数Rを目標回転数として決定した後、ステップS25に移行する(ステップS35)。例えば、図5に示すように、現在の目標回転数Rが加速用目標回転数Rよりも低い場合には、総ポンプ流量Qとの関係でポンプ流量が不足しているため、ポンプ流量を増加させるべく加速用目標回転数Rを目標回転数とする。
【0051】
ステップS19でNOと判断した場合(現在の目標回転数Rが加速用目標回転数R以上と判断した場合)には、ポンプモータ制御部64は、総ポンプ流量Qとの関係で現在の目標回転数Rが減速用目標回転数Rよりも高いか否かを判断する(ステップS21)。ここで高いと判断した場合には、ポンプモータ制御部64は、ステップS17で求めた減速用目標回転数Rを目標回転数として決定した後、ステップS25に移行する(ステップS23)。例えば、図6に示すように、現在の目標回転数Rが減速用目標回転数Rよりも高い場合には、総ポンプ流量Qとの関係でポンプ流量が多すぎるため、ポンプ流量を抑えるべく減速用目標回転数Rを目標回転とする。
【0052】
ステップS21でNOと判断した場合、つまり、現在の目標回転数Rが加速用目標回転数R以上で、かつ減速用目標回転数R以下の場合には、ポンプモータ制御部64は、現在の目標回転数Rを目標回転数として決定した後、ステップS25に移行する(ステップS37)。例えば、図7に示すように、現在の目標回転数Rが加速用目標回転数R以上でかつ減速用目標回転数R以下の場合には、上記総ポンプ流量Qとの関係で必要なポンプ流量は充足されており、また、過剰と言えるほどポンプ流量も多くないため、この場合には、現在のポンプ30の回転数を維持すべく現在の目標回転数Rを仮目標回転数として決定する。すなわち、図5に示す回転数決定線図において加速用回転数決定直線と減速用回転数決定直線との間は不感帯域とされ、ポンプモータ制御部64は、上記総ポンプ流量Qとの関係で現在の目標回転数Rがこの不感帯域にある場合(加速用目標回転数R以上でかつ減速用目標回転数R以下の場合)には、上記の通り、総ポンプ流量Qとの関係で必要なポンプ流量は充足されており、また、過剰と言えるほどポンプ流量も多いとも言えないため、後述するように、ポンプ流量の安定化の観点から現在の目標回転数Rを目標回転数として決定する。
【0053】
ステップS23、S35、S37の何れかの処理で目標回転数を決定すると、ポンプモータ制御部64は、当該目標回転数が予め設定された範囲内か、すなわち図5〜図7に示す下限回転数RMIN以上であってかつ上限回転数RMAX以下か否かを判断する(ステップS25)。ここで、下限回転数RMINは、例えばバランスシリンダ27、51を正常に機能させることが可能なポンプ流量の下限値であり、上限回転数RMAXはポンプ30に過剰な負荷を与えることなく安定的にポンプ流量を維持することが可能な上限値である。
【0054】
なお、ポンプモータ制御部64は、ステップS2の処理で指令周波数をクリアした場合には、目標回転数を「0」と仮定してステップS25の判断を行う。従ってこの場合には、ポンプモータ制御部64は常にNOと判断する。
【0055】
ポンプモータ制御部64は、ステップS25において目標回転数が上記範囲内にないと判断した場合には、目標回転数を下限回転数RMIN又は上限回転数RMAXに変更した後、ステップS29に移行する(ステップS27)。具体的には、目標回転数が下限回転数RMIN未満である場合には目標標回転数を下限回転数RMINに変更し、また、目標回転数が上限回転数RMAXを超えている場合には目標標回転数を下限回転数RMINに変更する。なお、ステップS25において、目標回転数が上記範囲内にあると判断した場合には、ポンプモータ制御部64は、ステップS27の処理をスキップしてステップS29に移行する。
【0056】
そして、ポンプモータ制御部64は、目標回転数に見合ったポンプモータ32の駆動周波数を演算するとともに、当該周波数を指令周波数として前記インバータ67に与え(ステップS29)、その後、当該指令周波数を設定指令周波数として更新した上で(ステップS31)、ステップS3にリターンする。こうして以降、ステップS2〜ステップS37の処理が繰り返し実行されることにより、クロスレール6及びラムヘッド44の駆動状態に応じてポンプ30の回転数がポンプモータ制御部64により制御されることによりポンプ流量が変更されることとなる。
【0057】
以上のような本実施形態に係る工作機械では、クロスレール6のバランス装置26に関し、上記のようにインバータ67がポンプモータ32の回転数を変えることによりポンプの吐出量(ポンプ流量)を変更可能とし、さらに、その回転数はクロスレール6の駆動状態に応じて必要なポンプ流量に見合った回転数に決定される。そのため、ポンプ30を常時定格回転数で運転するといった無駄な運転を無くしてポンプ30(ポンプモータ32)を効率的に駆動することができる。従って、ポンプを常時定格運転した上でリリーフ弁等の弁操作により作動油の流量を制御する従来の工作機械の構成に場合に比べると、ポンプ30の駆動に要する消費電力を効果的に削減することができ、大きな節電効果を得ることができる。また、ポンプを常時定格運転する場合に比べてポンプ駆動による騒音を低減することもできる。
【0058】
しかも、この工作機械では、数値制御部60から軸モータ制御部62への軸動作指令信号をポンプモータ制御部64に分配入力してこの軸動作指令信号の内容(NCプログラムの内容)を読み取り、その内容に基づいてポンプ30の回転数を決定し、この決定された回転数に基づいてポンプモータ32の回転数を変更するので、当該回転数の応答遅れが小さい。例えば、油圧回路内の油圧をセンサで検出しながらその検出値が一定になるようにポンプ流量(ポンプの回転数)を変更する場合には、実際のクロスレール6の駆動状態の変化とこれに伴う油圧の変化との間の時間的なずれが大きいため、著しい応答遅れを避けることができないが、上記のように、軸動作指令信号の内容(NCプログラムの内容)を読み取り、その内容に基づいてポンプモータ32の回転数を変更する場合には、クロスレール6の駆動状態の変化に先行してポンプモータ32の回転数を変更することが可能となる。つまり、クロスレール6の上昇開始前に事前にポンプ流量を変更することが可能となる。従って、バランスシリンダ27はクロスレール6の駆動状態に応じて応答性良く伸縮しながら当該クロスレール6を適切に支持することが可能となる。
【0059】
また、この工作機械は、クロスレール6のバランス装置26に加えて、ラムヘッド44の荷重を支持するためのバランス装置50を備えており、これらバランス装置26、50が共通の油圧回路28を有するが、この工作機械では、上記の通りクロスレール6のみならずラムヘッド44についてもその駆動内容を前記軸動作指令信号から読取り、クロスレール6及びラムヘッド44の双方の駆動内容に見合ったトータル的なポンプ流量(総ポンプ流量Q)を求めてポンプ30(ポンプモータ32)の駆動を制御する。そのため、ラムヘッド44についても前記クロスレール6の場合と同様に、応答遅れを伴うことなく、バランスシリンダ51によりラムヘッド44をその駆動状態に応じて適切に支持することが可能となる。従って、クロスレール6とラムヘッド44とが同じタイミングで、若しくは異なるタイミングで停止状態から上昇を開始するような場合でも、クロスレール6及びラムヘッド44の何れについてもそれらの荷重を確実にバランスシリンダ27、51により支持することができる。
【0060】
また、この工作機械では、総ポンプ流量Qとポンプ30の目標回転数との関係を定めた回転数決定線図(図5参照)に基づいてポンプ30の目標回転数を決定するが、上記のように総ポンプ流量Qとの関係で現在の目標回転数Rが上記不感帯域にある場合、つまり、現在の目標回転数Rが加速用目標回転数R以上で、かつ減速用目標回転数R以下の範囲内にある場合には、目標回転数を変更することなく現在の目標回転数Rを維持するようにしているため(図4のステップS37、図7)、クロスレール6等の駆動内容に応じてポンプ流量を変更することによる弊害、例えばポンプ30の回転数が頻繁に変更されてポンプ流量が不安定化するという不都合を回避することができる。すなわち、ポンプ30の目標回転数を決定する場合、上記回転数決定線図のうち加速用回転数決定直線のみを用い、当該直線と総ポンプ流量Qとに基づき目標回転数を決定し、その決定した目標回転数で常にポンプ30を駆動することも考えられる。しかし、この場合には、決定した目標回転数と現在の目標回転数Rとに少しでも差があると、その都度ポンプ回転数を変更する必要があり、短時間の間に何度も回転数が変更される結果、ポンプ流量が不安定となってバランスシリンダ27等の作動に支障が出ることが考えられる。これに対して、上記のような不感帯域を設定しておき、総ポンプ流量Qとの関係で現在の目標回転数Rが上記不感帯域内にある場合に現在の目標回転数Rを維持するようにすれば、短時間の間に何度もポンプ30の回転数が変更されるといった不都合を回避しながら必要なポンプ流量を確保することができる。従って、クロスレール6等の駆動内容に応じてポンプ流量を変更する一方で、ポンプ流量が不安定化するといった弊害を回避することができる。
【0061】
ところで、以上説明したNC工作機械は、本発明に係るNC工作機械の実施形態の一例であって、その具体的な構成は本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0062】
例えば、上記実施形態の工作機械は、クロスレール6及びラムヘッド44の荷重をそれぞれ支持するためのバランスシリンダ27、51が共通の油圧回路28に繋がれたものであるが、さらにこれらバランスシリンダ27、51以外の油圧アクチュエータがこの油圧回路28に繋がれることにより当該油圧アクチュエータが作動するように構成されるものであってもよい。例えば、主軸44aに対して工具を自動交換するための自動工具交換装置(ATC)等、油圧シリンダにより作動する一乃至複数の付帯装置を工作機械が備える場合には、当該付帯装置の油圧シリンダが前記油圧回路28に繋がれている構成であってもよい。この場合には、前記付帯装置を制御するために数値制御部60が動作指令信号をポンプモータ制御部64に分配入力し、これによりポンプモータ制御部64が当該付帯装置の駆動内容を読み取って、その内容に応じてポンプ30を駆動制御すればよい。具体的には、図3のステップS15、S17の処理の間に、例えば図8に示すようなステップS161、S162の処理が追加されればよい。すなわち、ポンプモータ制御部64の回転数演算手段66は、数値制御部60から出力される動作指令信号(NCプログラムの内容)を読み取ることにより、前記付帯装置の油圧シリンダのうち作動させるものがあるか否かを判断し(ステップS161)、ここでYESと判断した場合には、当該付帯装置の油圧シリンダを支障なく作動させるために必要なポンプ流量を演算した後(ステップS162)、ステップ17に移行する。この構成によれば、ポンプモータ制御部64は、クロスレール6及びラムヘッド44に加え、さらに付帯装置の駆動内容からポンプ流量(総ポンプ流量Q)を求めてポンプ30の駆動を制御する。そのため、自動工具交換装置(ATC)等の付帯装置の油圧シリンダについても上記油圧回路28を共通化して適切に作動させることが可能となる。そしてこの場合も、ポンプモータ制御部64が、付帯装置を制御するための動作指令信号からその駆動内容を先取り的に読み取り、その駆動内容を考慮してポンプ流量を変更するため、付帯装置の作動開始時点から必要流量の作動油を適切に当該付帯装置の油圧シリンダに供給することが可能であり、これにより応答遅れを伴うことなく当該付帯装置を良好に作動させることが可能となる。
【0063】
また、上記実施形態では、ポンプ30の目標回転数を決定するに際して、総ポンプ流量Qとの関係で現在の目標回転数Rが上記不感帯域にある場合には、現在の目標回転数Rを目標回転数とすることによりポンプ流量が頻繁に変更されることを回避してポンプ流量の安定化を図っているが、同様の目的を達成するために、例えば図9のフローチャートに示すように油圧回路28のポンプ流量を制御するようにしてもよい。
【0064】
この図に示す制御(フローチャート)は、図4の制御(フローチャート)を基礎として、そのステップS21とステップS23との間にステップS221〜S224の処理が、またステップS35、S37とステップS25との間にステップS38の処理が追加されたものである。従って、以下の説明では、これら追加された処理(ステップS221〜S224及びステップS38)について主に説明することにする。
【0065】
同図に示すように、ポンプモータ制御部64は、ステップS21の判断でNOと判断した場合(現在の目標回転数Rが減速用目標回転数Rよりも高いと判断した場合;図6参照)には、所定の減速開始タイマ、すなわちポンプ回転数を下げる(ポンプモータ32を減速させる)までの猶予時間を経時するタイマがオンされているか否かを判断する(ステップS221)。ここで、NOと判断した場合には、ポンプモータ制御部64は、減速開始タイマをオンした後(ステップSS222)、ステップS223に移行する。他方、ステップS221でYESと判断した場合には、ポンプモータ制御部64は、ステップS222の処理をスキップしてステップS223に移行する。
【0066】
次いで、ポンプモータ制御部64は、減速開始タイマがカウントアップしたか否かを判断し(ステップS223)、カウントアップしていると判断した場合にはそのままステップS25に移行し、カウントアップしていないと判断した場合には、現在の目標回転数Rを目標回転数として決定した後、ステップS25に移行する(ステップS224)。
【0067】
また、ポンプモータ制御部64は、ステップS35及びステップS37の処理を経由した場合には、前記減速開始タイマをクリアした後、ステップS25に移行する。
【0068】
すなわち、上記実施形態の制御(図3,図4のフローチャートに基づく制御)では、総ポンプ流量Qとの関係で現在の目標回転数Rが減速用目標回転数Rよりも高いと判断した場合には(ステップS21でYES)、ポンプモータ制御部64は、直ちにポンプ回転数を下げるべく(ポンプモータ32を減速すべく)ステップS17で求めた減速用目標回転数Rを目標回転数として決定するが、図9の例では、ポンプモータ制御部64は、減速開始タイマがカウントアップしている場合(ステップS223でYES)にだけ減速用目標回転数Rを目標回転数として決定し、減速開始タイマがカウントアップしていない場合(ステップS223でNO)には現在の目標回転数Rを目標回転数として決定する。つまり、この図9の例では、ポンプ流量が多すぎるためにポンプ回転数を下げる必要がある場合でも、直ぐには目標回転数を変更せずに現在の目標回転数Rを維持しておき、ステップS21でYESと判断する状態(現在の目標回転数Rが減速用目標回転数Rよりも高い状態)が減速開始タイマのカウントアップまで継続した場合に限りステップS17で求めた減速用目標回転数Rを目標回転数として決定し、これによりポンプ回転数を下げるようにしている。従って、減速開始タイマがカウントアップするまでに、ポンプ流量を増加させるべく加速用目標回転数Rを目標回転数とした場合や(ステップS35)、現在の目標回転数Rが上記不感帯域にあるために現在の目標回転数Rを目標標回転数とした場合には(ステップS37)、ステップS38で減速開始タイマをクリアする。
【0069】
このような図9のフローチャートに示す制御によれば、ポンプ回転数を下げた直後にポンプ回転数を上げたり、またポンプ回転数の上げ下げが短時間に繰り返えされるといった現象を抑制することが可能となる。従って、ポンプ流量が短時間に頻繁に変更されることを回避してポンプ流量の安定化を図ることが可能となる。
【0070】
なお、上記実施形態では、主軸装置10が搭載されるクロスレール6が一対のコラム8に沿ってW軸方向に移動するいわゆる門型工作機械についての本発明の適用例について説明したが、本発明はこのような門型工作機械に限定されるものではなく、図10に示すような工作機械についても適用可能である。
【0071】
この図に示す工作機械は、固定テーブル70と、一本のコラム72と、主軸ヘッド74を備えるサドル76と、このサドル76の支持駆動装置とを備えている。サドルの支持駆動装置は、サドル駆動装置80とバランス装置84とを含む。サドル駆動装置80は、コラム72に固定され、前記サドル76をW軸方向(上下方向)に案内するガイド部(図示省略)と、サドル76の図外のナット部材に螺合挿入されるボールねじ軸812と、これを駆動するW軸サーボモータ82とを含み、当該W軸サーボモータ82によるボールねじ軸81の駆動に伴いサドル76をW軸方向に移動させる。一方、バランス装置84は、油圧シリンダからなる一対のバランスシリンダ86と、これらに所定圧の圧油を供給するための油圧回路とを含む。各バランスシリンダ86は、サドルの両側に配置されており、それぞれ下端部がサドル76の側面に固定されるとともに上端部がコラム72に固定されている。これによりサドル76のW軸方向の荷重を各バランスシリンダ86により支持する。
【0072】
このような工作機械においても、各バランスシリンダ86に作動油を供給するための油圧回路に、電動式ポンプモータにより作動するポンプを組み込み、インバータを介して前記ポンプモータを可変速運転することによりポンプ流量を変更可能に構成した上で、そのポンプ流量をサドル76の駆動内容に基づいて制御するようにすれば、上記実施形態と同様の作用効果を享受することが可能となる。すなわち、ポンプを駆動するための消費電力を削減しながらバランス装置84(バランスシリンダ86)を応答性良く作動させることができる。
【符号の説明】
【0073】
2 ベッド
4 テーブル
6 クロスレール
8 コラム
10 主軸装置
12 制御装置
22 クロスレール駆動装置
26 バランス装置
27 バランスシリンダ
28 油圧回路
30 油圧ポンプ
32 ポンプモータ
46 ラムヘッド駆動装置
50 バランス装置
51 バランスシリンダ
60 数値制御部
61 記憶手段
62 軸モータ制御部
64 ポンプモータ制御部
66 回転数演算手段
67 インバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の動作を行う作動部材を含む作動機構を備えたNC工作機械であって、
前記作動部材を駆動してその動作を行わせる電気アクチュエータと、
前記作動部材を支持し、かつ、この作動部材の動作に応じて動作する油圧アクチュエータと、
油圧源であるポンプ及びこのポンプを駆動する電気式のポンプモータを含み、前記作動部材を支持するための油圧を前記油圧アクチュエータに供給する油圧供給回路と、
前記電気アクチュエータの動作を制御するためのNCプログラムを記憶する記憶手段と、
前記NCプログラムの内容を読み取り、その内容に基づき、前記電気アクチュエータによる前記作動部材の駆動状態に応じて前記油圧アクチュエータに供給すべき作動油の必要供給量を演算するとともにその必要供給量に対応した前記ポンプの回転数を決定する回転数決定手段と、
前記ポンプモータの回転数を制御するポンプモータ回転数制御手段とを備え、
このポンプモータ回転数制御手段は、前記回転数決定手段により決定された回転数に基づいて前記ポンプモータの回転数を変化させることを特徴とするNC工作機械。
【請求項2】
請求項1に記載のNC工作機械において、
前記作動部材は、水平方向に延び、工具を駆動するための主軸を含む主軸装置を支持するクロスレールであり、
前記作動機構は、前記クロスレールに加え、このクロスレールの両端部をそれぞれ上下方向に案内しながら支持する一対のコラムと、前記電気アクチュエータが生成する駆動力によって前記クロスレールを昇降させる昇降送り機構とを含み、
前記油圧アクチュエータは、前記クロスレールの両端部を支持しながらその昇降に応じて伸縮するように当該両端部にそれぞれ連結されるバランスシリンダであり、
前記回転数決定手段は、前記クロスレールの移動方向及び同速度に対応した前記NCプログラムの内容を読み取り、その内容に基づき、作動油の前記必要供給量を演算することを特徴とするNC工作機械。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のNC工作機械において、
前記ポンプモータ回転数制御手段は、前記回転数決定手段により決定された決定回転数が現在のポンプ回転数以下でかつ当該現在のポンプ回転数が前記決定回転数を基準として予め定められた範囲内にあるときには、前記現在のポンプ回転数が維持されるように前記ポンプモータの回転数を制御することを特徴とするNC工作機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−56007(P2012−56007A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200945(P2010−200945)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2010年4月1日 株式会社大河出版「ツールエンジニア」 第51巻/第4号/通巻627号に発表
【出願人】(000191180)新日本工機株式会社 (51)
【Fターム(参考)】