説明

NDフィルタ及びこれを用いた光量絞り装置

安価で且つ耐久性に優れた薄膜型のNDフィルタを提供する。 光吸収膜3,5と誘電体膜2,4,6を透明基板1上に積層したNDフィルタ0において、光吸収膜3.5の組成が、金属の単体成分1〜30重量%及び該金
属の飽和酸化物成分50重量%以上で、他の残余成分が該金属の低級酸化物を含む該金属の化合物から構成されている。光吸収膜3,5の金属原料は、Ti,Cr,Ni,NiCr,NiFe及びNiTiから選択される。又、誘電体膜2,4,6はSiO又はAlを用いる。光吸収膜3,5及び誘電体膜2,4,6を所定の膜厚及び所定の順番で積層して反射防止機能を付与する。或いは基板1の裏側に反射防止層を形成しても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はNDフィルタに関する。ND(ニュートラルデンシティー)フィルタは、光量絞り用として可視域全般に亘り均一に透過光量を減衰させる目的で使用するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりカメラやビデオなどの撮像系において、被写体輝度が高過ぎる時は絞りを最小径に絞っても(開口径を最小にしても)感光面へ所定量以上の光量が入射してしまう場合がある。この為、撮像系の一部にNDフィルタを装着して感光面への入射光量を規制することがしばしば行われている。この場合、NDフィルタの分光特性は単に入射光量を減少させるということから、可視領域全般に亘り均一な透過率を有していることが必要となっている。カメラやビデオなどの撮像系においては、可視域全般に亘り均一に光量を減衰させる目的で以前からプラスチックフィルムベースのNDフィルタが用いられてきた。
【0003】
近年では光学特性及び耐久性に優れた薄膜積層型のNDフィルタが利用される様になってきており、特許文献1〜特許文献3に記載されている。
【特許文献1】特開昭52−113236号公報
【特許文献2】特開平07−063915号公報
【特許文献3】特開2003−043211号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、金属薄膜(Ti,Niなど)と誘電体膜(MgF)の交互層からなるNDフィルタが提案されている。すなわち特許文献1では光吸収膜として金属膜を利用している。この為光吸収膜の消衰係数が大きく、NDフィルタを作成する為の金属膜の膜厚が非常に薄くなり、膜厚制御が困難である。又、光吸収膜の膜厚が薄くなると、光学多層膜の設計上反射防止効果を得ることが困難となる。
【0005】
特許文献2は、二種類以上のTi金属酸化膜(消衰係数k:1.0〜3.0)と誘電体膜(Al,SiO,MgF)との交互層からなるNDフィルタを提案している。特許文献2においては、二種類以上のTi金属酸化膜からなる吸収膜の出発材料として、Tiの低級酸化物(TiO,Ti,Ti,Tiなど)を利用している。しかしながらこの原材料自体が不安定であり、吸収膜の中に低級酸化物などの不安定な物質が多く含まれる場合には、光学特性の経時変化が発生する。又1.0〜3.0の範囲の消衰係数kを得る為には150℃以上の高温で成膜する必要があるが、基材にプラスチックフィルムを用いた場合に基板のダメージが大きいという問題がある。更に、低級酸化物自体の原材料価格が高いという問題もある。
【0006】
特許文献3は、光吸収膜と誘電体膜を透明基板上に積層した薄膜型NDフィルタを開示している。光吸収膜は、金属材料を原料として蒸着により成膜されたものであり、酸素を含む混合ガスを成膜時に導入し、真空度を一定に維持した状態で生成した金属材料の酸化物を含有している。しかしながら、光吸収膜に含まれる金属材料の酸化物の組成は必ずしも明らかにされていない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した従来の技術の課題に鑑み、本発明は、安価で且つ耐久性に優れた薄膜型のNDフィルタを提供することを目的とする。係る目的を達成する為に以下の手段を講じた。即ち、光吸収膜と誘電体膜を透明基板上に積層したNDフィルタにおいて、前記光吸収膜の組成が、金属の単体成分1〜30重量%及び該金属の飽和酸化物成分50重量%以上で、他の残余成分が該金属の低級酸化物を含む該金属の化合物から構成されていることを特徴とする。
好ましくは、前記光吸収膜の金属原料は、Ti,Cr,Ni,NiCr,NiFe及びNiTiから選択される。又、前記誘電体膜はSiO又はAlを用いる。好ましくは、前記光吸収膜及び誘電体膜を所定の膜厚及び所定の順番で積層して反射防止機能を付与する。或いは、前記光吸収膜と誘電体膜を積層した透明基板の面とは異なる面に反射防止層を設けても良い。この場合、前記反射防止層は、光吸収膜もしくは誘電体膜の単層で形成できる。或いは前記反射防止層は、光吸収膜及び誘電体膜の複数層から形成できる。或いは前記反射防止層は、可視光領域において透明な熱硬化性の樹脂或いは光硬化性の樹脂を用いて、単層或いは複数層で形成できる。かかるNDフィルタは光量絞り装置に用いられる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、金属単体を含む飽和酸化物を主成分とした光吸収膜を作成し、この吸収膜と誘電体膜の積層構造によりNDフィルタを作成している。すなわち金属の単体成分及びその飽和酸化物成分を主とし、金属の低級酸化物を含む残余成分を極力抑えることで、特性的及び経時的に安定したNDフィルタを得ている。例えば出発材料として金属膜を用い、例えば基板温度を100℃にて反応性ガス(O,O+N,O+Arなど)を適当量加えることで、成膜過程において金属の飽和酸化物を導入することができる。成膜条件を適切に設定することで、金属の低級酸化物を含む残余成分の割合を抑えることができる。本NDフィルタは、金属の単体成分に加え飽和酸化物成分を大きな割合で含む為、光吸収膜の厚みが金属単体の光吸収膜に比べると大きくできる。これにより、NDフィルタの光学膜設計が容易になるとともに、製造プロセスの制御も容易となり、更に信頼性も改善できる。
以上の発明により、金属膜のみで構成したNDフィルタと比較して、飽和酸化物を含む分吸収膜の膜厚が厚くなることで、膜厚制御が容易となり、光学特性の高い再現性が得られる様になった。又、吸収膜中の低級酸化物など不安定な成分が少ない為、NDフィルタの信頼性が上がるとともに、低温でも成膜条件の調整を行うことで、ND特性を得る為に最適な光吸収膜を形成することができる。更に出発材料が安価な金属であることから、低コストでNDフィルタを作成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
[図1]本発明に係るNDフィルタの実施形態の層構成を示す模式的な断面図である。
[図2]本発明に係るNDフィルタの作成に用いる真空蒸着装置を示す模式的なブロック図である。
[図3]本発明に係るNDフィルタの成膜条件を示す表図である。
[図4]本発明に係るNDフィルタに含まれる光吸収膜の組成を示すXPSスペクトル図である。
[図5]本発明に係るNDフィルタに含まれる光吸収膜の組成を示す表図である。
[図6]本発明に係るNDフィルタに含まれる光吸収膜の元素組成を示す表図である。
[図7]本発明に係るNDフィルタの光学特性を示すグラフである。
[図8]本発明に係るNDフィルタをカメラ用光量絞り装置に適用した例を示す模式図である。
[図9]本発明に係るNDフィルタの他の実施形態の層構成を示す模式的な断面図である。
[図10]本発明に係るNDフィルタの別の実施形態の層構成を示す模式的な断面図である。
[図11]本発明に係るNDフィルタをカメラ用光量絞り装置に適用した他の例を示す模式的な分解斜視図である。
【符号の説明】
【0010】
0・・・NDフィルタ、1・・・透明基板、2・・・誘電体膜、3・・・光吸収膜、4・・・誘電体膜、5・・・光吸収膜、6・・・誘電体膜、7・・・反射防止層
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明に係る薄膜型NDフィルタの一実施形態の構成を示す模式的な断面図である。図示する様に、本NDフィルタ0は、光吸収膜3,5と誘電体膜2,4,6を透明基板1上に積層した薄膜型となっている。特徴事項として、光吸収膜3,5の組成が、金属の単体成分1〜30重量%及び該金属の飽和酸化物成分50重量%以上で、他の残余成分が該金属の低級酸化物を含む該金属の化合物から構成されている。係る光吸収膜3,5は、金属材料を原料とした反応性の物理気相成長(PVD)により形成可能である。光吸収膜3,5の金属原料としては、Ti,Cr,Niなどの他、NiCr,NiFe及びNiTiなどの合金から選択できる。一方、誘電体膜2,4,6としてはSiO又はAlを用いることができる。光吸収膜3,5及び誘電体膜2,4,6を所定の膜厚及び所定の順番で積層してNDフィルタに反射防止機能を付与することもできる。係る構成を有する薄膜型NDフィルタは光量絞り装置に用いられる。
【0012】
引続き図1を参照して、NDフィルタ0の具体的な膜構成を説明する。まず、透明基板1は厚みが0.1mmのPET(ポリエチレンテレフタレート)からなる。但し、本発明はこれに限られるものではなくPET以外のポリエステルフィルムやポリカーボネートフィルムを用いることができる。光量絞り用としてはPETなどポリエステルフィルムやポリカーボネートフィルムが好ましいが、特に用途を限定しなければ透明基板1として使用波長領域において透明であるガラスやプラスチックを適宜使うことができる。透明基板1の上に形成された第一の誘電体膜2はSiOからなり、その物理膜厚は59nmである。その上に成膜された第一の光吸収膜3は、金属Tiとその飽和酸化物TiOを主成分とし、その他の残余成分として低級酸化物Ti,TiOなどや金属化合物TiNなどの副生成物を含有している。第一の光吸収膜3の物理膜厚は28nmである。その上に成膜された第二の誘電体膜4はSiOからなり、その物理膜厚は51nmである。その上に成膜された第二の光吸収膜5は、同じく金属Tiとその飽和酸化物TiOを主成分とし、その他の残余成分として低級酸化物Ti,TiOや金属化合物TiNを含んでいる。第二の光吸収膜5の物理膜厚は25nmである。その上に成膜された第三の誘電体膜6はSiOからなりその物理膜厚は78nmである。尚、係る積層構成は例示であって本発明の範囲を限定するものではない。光学薄膜の場合、通常使用波長において透明なセラミックス材料を誘電体膜として表現している。光の干渉効果が現われる厚さ(波長の数倍程度)の誘電体膜を積層することで、入射する光線の光学特性(反射量、透過量、偏光、位相など)を自由に調節することができる。本実施形態では、図1に示す層構成とすることで、NDフィルタに反射防止機能を付与している。一方光吸収膜は、使用波長領域において文字通り光を吸収する働きがあり、可視域では通常金属を用いる。本発明では、特に金属にその飽和酸化物を導入することで光学特性及び物理特性を改善している。
【0013】
図1に示したNDフィルタは例えば真空蒸着により形成できる。図2は、図1に示したNDフィルタの作成に使用する真空蒸着装置の一例を示す模式的なブロック図である。図示する様に、本装置は真空チャンバ11を主体に構成されており、その上には膜厚モニタ12と膜厚制御器13が取り付けられている。チャンバ11内には処理対象となる基板を支持固定する基板ホルダ14と、膜厚測定用基板15、と蒸着源16とが組み込まれている。膜厚モニタ12は光源と分光器と受光器とを備えている。分光器から出射した光は膜厚測定用基板15に入射し、これから反射した光が受光器に入射し、その出力が膜厚制御器13に送られる。この様に、膜厚をリアルタイムでモニタすることにより、基板上に所望の厚みの光吸収膜や誘電体膜を成膜する様にしている。
【0014】
チャンバ11には真空計ゲージ部17、真空計制御部18、ガス導入ユニット19及び排気ユニット20が接続している。本実施例では、チャンバ11内の真空度を一定に保つ為に、APC方式を採用している。具体的には、真空計ゲージ部17及び真空計制御部18を介してフィードバックをかけ、ガス導入ユニット19を制御して、チャンバ11内に導入される混合ガスの量を調整している。但し、本発明はこれに限られるものではなく、導入量をニードルバルブにて一定に調整する方式を採用してもよい。
【0015】
図3は、図2に示した真空蒸着装置を用いて、図1に示したNDフィルタを作成する場合の成膜条件を表わした表図である。図示する様に、基板温度は100℃としている。又、チャンバの到達真空度は1×10−3Paに設定している。ここで、光吸収膜3,5を成膜する為に、原料としてTiを用い、蒸着速度は0.5〜1.0nm/secに設定している。Tiを蒸着する際に導入する反応性ガスとして、本実施例では窒素と酸素を4:1で混合した空気を用いている。但し、本発明はこれに限られるものではなく、一般には酸素を50%以下の割合で含有する混合ガスが用いられる。例えば、OとNの混合ガスに代えてOとArの混合ガスを用いることができる。尚、酸素を含有した混合ガスを導入した場合の蒸着真空度は、3〜4×10−3Paに設定した。但し、本発明はこれに限られるものではなく、一般に1×10−3Pa〜1×10−2Paの間で一定に維持すれば良好な光学特性並びに物理特性を有し且つ金属とその飽和酸化物を主成分とし残余の低級酸化物の割合を抑制した光吸収膜を成膜することができる。次に、誘電体膜2,4,6を成膜する場合には、蒸着源としてSiOを用い、蒸着速度は0.5〜1.0nm/secに設定している。SiOを成膜する場合には特に反応性のガスを導入していない。本実施例では真空蒸着を用いて光吸収膜を形成している。これに代え、他のPVD成膜方法として、イオンプレーティング法、イオンアシスト法、スパッタ法など緻密な膜が形成できる手法を利用してもよい。
【0016】
図4は、図3に示した条件で反応性PVDにより成膜された光吸収膜の組成の分析結果を示すグラフである。この分析はX線光電子分光分析装置(XPS,ESCA)を用いた。高真空中で吸収膜表面に特定エネルギーの軟X線を照射すると、光電効果により試料から電子が放出される。これをアナライザーに導き、電子の運動エネルギーで分けてスペクトルとして検出する。図4はこのスペクトルを表わしている。光電子は深い領域からも放出されるが、試料表面に到達するまでに非弾性散乱により運動エネルギーを失う為、ピークとしては検出されず、スペクトルのバックグラウンドとなる。非弾性散乱せずに試料表面から脱出した数nmの深さ領域の光電子のみが図示の様にピークとして検出され、分析に用いられる。図4のスペクトルの横軸は電子の結合エネルギーで表示される。結合エネルギーは照射した軟X線のエネルギーから光電子の運動エネルギーを引いた差として求められる。各種原子の内殻電子は固有の結合エネルギーを持っているので、検出された電子の結合エネルギーから元素の種類、シグナル強度から元素の比率を調べることができる。図4のスペクトルは、原子の2p内殻電子の結合エネルギーを検出した結果である。更に、各種元素の化学結合状態が異なると結合エネルギーが僅かに変化し、区別されて検出される。これにより、金属とその酸化状態の定量が可能となる。図示のスペクトルでは、金属Tiのピークが454.1eVに観測され、その飽和酸化物TiOのピークが458.5eVに観測され、低級酸化物Tiのピークが456.3eVに観測され、別の低級酸化物TiOのピークが455.2eVに観測されている。尚、TiOとTiNのピークはほぼ等しい点に現われる為、455.2eVのピークには、TiOの他TiNも含まれているものと思われる。
【0017】
図5は、図4に示した分析結果に基づいて算出した、光吸収膜の組成を表わす表図である。比率を見ると、金属Tiが5%、TiO/TiNが5%、Tiが10%、TiOが80%であった。図3に示した条件にて成膜した光吸収膜の組成は、図5の表図に示した様に、飽和酸化物TiOを主成分としてTi金属単体を含み、更に残余成分として低級酸化物が混在したものとなっている。尚、吸収膜内に窒素が検出されたことから、TiNも存在しているものと思われる。係る組成を有する光吸収膜の消衰係数は0.5〜1.0程度であった。
【0018】
図6は光吸収膜表面の元素比率の分析結果であり、同じくXPSにより得られたものである。図示の表図によれば、光吸収膜の元素比率は、Oが53.8%、Tiが27.5%、Nが2.8%であった。その他Cが16.5%含まれているが、これは光吸収膜の表面に残された有機溶剤や汚れなど有機物の残差と思われる。
【0019】
図7は、図3に示した成膜条件で、図1に示した積層構造を作成した場合における、NDフィルタの光学特性を示すグラフである。横軸に可視域の波長を取り、縦軸には反射率及び透過率の尺度を表わす光量(%)を取ってある。グラフから明らかな様に、本NDフィルタは可視域においてニュートラルな透過特性を示し、表面の反射率も低く抑えられたNDフィルタを作成することができた。更に本NDフィルタを環境試験に投入したところ、非常に良好な耐久性を示すことが分かった。場合によっては、光吸収膜に含まれる低級酸化物など不安定な成分を安定化させる為、酸素雰囲気中で加熱処理などを行ってもよい。
【0020】
図8は、本NDフィルタをカメラ用光量絞り装置に適用した一例を示す模式図である。一対に形成された内の一枚を示した絞り羽根100の凹部には、NDフィルタ105が接着剤106又は熱溶着などにより固設されている。絞り羽根100は駆動部103により、枢支ピン104の周りを回動して、開口部101を開閉する様に構成されている。
【0021】
図9は本発明にかかるNDフィルタの他の実施形態の層構成を示す模式的な断面図である。理解を容易にするため、図1に示した先の実施形態と対応する部分には対応する参照番号を付してある。図示するように、PETからなる透明基板1の表側となる一面には誘電体膜2,4,6と光吸収膜3,5を交互に重ねた積層が形成されている。この透明基板1の裏側となる他の面には反射防止層7が形成されている。この反射防止層7は、NDフィルタ0が組み込まれる光学系により発生するゴーストやフレアを抑制する目的で、NDフィルタ0の積層面とは異なる基板面上に形成されたものである。この反射防止層7は、光吸収膜もしくは誘電体膜の単層で形成することで、NDフィルタの積層面とは異なる面における光反射低減が可能となる。
【0022】
図10は本発明にかかるNDフィルタの更に別の実施形態の層構成を示す模式的な断面図である。理解を容易にするため、図9に示した先の実施形態と対応する部分には対応する参照番号を付してある。この実施形態も透明基板1の裏面に反射防止層7が形成されている。特徴事項として、この反射防止層7を光吸収膜7a及び誘電体膜7bの複数層から形成することで、より大きな反射低減の効果を得ることが可能となる。誘電体膜7bの原料は本発明のNDフィルタに用いた原料だけでなく、他の原料(例:SiO、MgF)を用いることも可能である。また光吸収膜7aの原料も本発明のNDフィルタに用いた原料だけでなく、他の原料〔例:Ta,ZrO,TiO,TiO(1≦x≦2),Nb,CeO、ZnS〕を用いることも可能である。更には、これらの原料を2種類以上混合することで反射防止層7を形成しても良い。
【0023】
また反射防止層7は、可視光領域において透明な熱硬化性樹脂或いは光硬化性樹脂を用いて、単層或いは複数層で形成することも可能である。但し、NDフィルタが搭載される光学系によりゴーストやフレアが出にくい場合は反射防止層7を必ずしも設ける必要が無いことは言うまでもない。
【0024】
図11は本発明にかかるNDフィルタをカメラ用光量絞り装置に適用した他の例を示す模式的な分解斜視図である。図示するように、カメラ用光量絞り装置は、基本的に地板201とフィルタ羽根202とカバー板203とで構成されている。これらの部品はピン207を用いて組み立てられる。地板201は撮影光の規制をする円形の開口204を有している。カバー板203は地板201より大きな直径の開口205を有している。地板201とカバー板203の間に構成された羽根室にはフィルタ羽根202が配置されている。フィルタ羽根202は本発明によるNDフィルタで作成されていて、外形は通常用いられる絞り羽根と同じ形状をしている。このフィルタ羽根202は地板203に設けられた図示しない回転軸に回動可能に支持され、駆動部206により開口204,205を覆う位置と退避する位置との間で往復動作するように構成されている。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光吸収膜と誘電体膜を透明基板上に積層したNDフィルタにおいて、
前記光吸収膜の組成が、金属の単体成分1〜30重量%及び該金属の飽和酸化物成分50重量%以上で、他の残余成分が該金属の低級酸化物を含む該金属の化合物から構成されていることを特徴とするNDフィルタ。
【請求項2】
前記光吸収膜の金属原料は、Ti,Cr,Ni,NiCr,NiFe及びNiTiから選択されることを特徴とする請求項1記載のNDフィルタ。
【請求項3】
前記誘電体膜はSiO又はAlを用いることを特徴とする請求項1又は2記載のNDフィルタ。
【請求項4】
前記光吸収膜及び誘電体膜を所定の膜厚及び所定の順番で積層して反射防止機能を付与したことを特徴とする請求項1,2又は3記載のNDフィルタ。
【請求項5】
前記光吸収膜と誘電体膜を積層した透明基板の面とは異なる面に反射防止層を設けたことを特徴とする請求項1乃至4記載のNDフィルタ。
【請求項6】
前記反射防止層は、光吸収膜もしくは誘電体膜の単層で形成されていることを特徴とする請求項1乃至5記載のNDフィルタ。
【請求項7】
前記反射防止層は、光吸収膜及び誘電体膜の複数層から形成されていることを特徴とする請求項1乃至5記載のNDフィルタ。
【請求項8】
前記反射防止層は、可視光領域において透明な熱硬化性の樹脂或いは光硬化性の樹脂を用いて、単層或いは複数層で形成することを特徴とする請求項1乃至5記載のNDフィルタ。
【請求項9】
請求項1乃至8記載のNDフィルタを用いた光量絞り装置。

【国際公開番号】WO2005/047940
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【発行日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515444(P2005−515444)
【国際出願番号】PCT/JP2004/016755
【国際出願日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】