説明

O−アセチル化糖アミノ酸

【課題】 糖ペプチドライブラリーの構築のための出発物質として有用な化合物を提供する。
【解決手段】 下記式(I):
【化1】


(式中、
Pは、1〜20個のアミノ酸残基を有するペプチド鎖であって、ここで糖残基は該ペプチド鎖中のSer又はThr残基の側鎖とO−グリコシド結合し;
X、Y及びZは、互いに独立して、水素、アセチル基、アセチル保護されていてもよい糖残基又はアセチル保護されていてもよい2〜15糖の糖鎖である。)
で表される化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は糖ペプチドのライブラリー合成に有用な糖アミノ酸に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のゲノム研究の発展により、核酸とタンパク質に関する研究は急速に発展した。タンパク質が実際に機能するためには正しくフォールディングし、特定の部位へ輸送される必要があるが、これに糖鎖が深く関わっていることが近年報告され、その詳細な機構の解明が期待されている。さらに、特定の部位に配置されたタンパク質が様々な相互作用を利用して機能する場面においても、多くの場合、糖鎖との相互作用は避けて通ることのできない重要な情報伝達経路である。
【0003】
このようにポストゲノム分野において糖鎖はきわめて重要な役割を果たしているにもかかわらず、その詳細な機能の解明はあまり進んでいない。その主な理由として糖鎖はタンパク質などとの複合体として機能していることが多く、さらに特定のタンパク質に特定の糖鎖が修飾されるわけではなく、加齢、病変などに伴いその糖鎖構造は多様に変化することがあげられる。また、特定のタンパク質上の糖鎖構造の変化を測定する技術に関してもまだ有力なものは開発されていない。均一な糖タンパク質を単離することは一般的にきわめて困難であり、これらの諸問題を克服するため糖タンパク質又はその部分構造である糖ペプチドの迅速かつ効率的な調製法の開発が重要である。
【0004】
この問題に対応し、さらに生体機能の制御の道具として応用するため、これまで糖ペプチド合成法の開発研究が精力的に行われてきた。しかしながら、糖ペプチド合成の原料となる糖アミノ酸の調製が難しいことに加え、これまでに開発された糖アミノ酸はそれぞれ保護基とそれに伴う脱保護条件が異なるため、糖ペプチドライブラリー作成には不向きであった。
【0005】
近年、Kunzらによりシアル酸を有する糖ペプチド合成法が報告された。しかしながら、この方法ではシアル酸を含有させるので、そのエステル部位の脱保護に比較的強い塩基性を必要とするという問題点がある。
【0006】
また、中原らよりベンジル系保護基に統一された糖アミノ酸を用いる戦略が報告されているが、糖アミノ酸の調製に必要な操作数が数段階多くなること、脱保護に酸性条件が必要であることなどから、ライブラリー調製の観点からするとより大量に糖アミノ酸が調製可能な実用的な方法が必要であると思われる。
【0007】
プロテオームの次世代を担うと期待されているグライコプロテオームを強力に推し進めるためには、ペプチド結合形成反応から脱保護まで統一された操作により複数の糖鎖を有する糖ペプチドのライブラリー合成が可能となる合成法及びそのための原料が鍵技術のひとつとなると予想されるが、この目的にかなう技術はいまだ開発されていない。
【0008】
【特許文献1】特開平10−306099号公報
【特許文献2】特開平11−113593号公報
【特許文献3】特開平11−505225号公報
【特許文献4】米国特許第5369017号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2003/83235号明細書
【非特許文献1】Kunz et al., Synlett, 13, 2052-2056 (2003)
【非特許文献2】Y. Nakahara et al.,Tetrahedron, 59, 8415-8427 (2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これまで開発された糖ペプチド合成法では特定の糖ペプチド構造のみにその合成対象を絞っていたため、その保護基戦略は対象構造ごとに最適化されてきた。
【0010】
本発明では、パターン化された繰り返し操作により様々な糖残基構造を有する糖ペプチドライブラリーの構築のための出発物質として有用な化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、糖水酸基の保護基としてアセチル基のみを用いた糖アミノ酸を出発物質として用いると、均一の反応条件で様々なコア構造の糖ペプチドを容易に調製できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
即ち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)下記式(I):
【化1】

(式中、
Pは、1〜20個のアミノ酸残基を有するペプチド鎖であって、ここで糖残基は該ペプチド鎖中のSer又はThr残基の側鎖とO−グリコシド結合し;
X、Y及びZは、互いに独立して、水素、アセチル基、アセチル保護されていてもよい糖残基又はアセチル保護されていてもよい2〜15糖の糖鎖である。)
で表される化合物。
【0013】
(2)下記式(II):
【化2】

(式中、
X、Y及びZは、上記定義のとおりであり;
は、水素又はメチルであり;
は、OH、カルボキシル基の保護基又はカルボキシル基の活性化基であり;
は、アミノ基の保護基である。)
で表される前記(1)記載の化合物。
【0014】
(3)式(I)において、X及びZは完全にアセチル化された糖残基であり;YはHであり;RはOHであり;RはFmoc基である前記(1)又は(2)記載の化合物。
【0015】
(4)式(I)において、X及びZが、互いに独立して、下記式:
【化3】

からなる群より選択される糖残基である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の化合物。
【0016】
(5)下記式:
【化4】

からなる群より選択される前記(1)記載の化合物。
【0017】
(6)前記(1)〜(5)のいずれかに記載の化合物を用いて糖鎖及び/又はペプチド鎖の伸長反応を行なうことを含む糖ペプチドの製造方法。
【発明の効果】
【0018】
従来の糖ペプチド合成では脱保護の条件が複雑であったため、多検体の並列調製に不向きであったが、本発明の化合物では糖残基の水酸基の保護基がアセチル基に統一されているので、本発明の化合物を出発物質として用いれば脱保護条件を統一することができ、煩雑な保護・脱保護工程は必要がなくなり、糖ペプチド合成を迅速化することができる。また、小さなアセチル基を保護基として使用しているので立体障害が少なく、ペプチドの伸長反応や糖鎖の伸長反応も従来の糖ペプチド合成に比べて反応性が向上する。
【0019】
本発明の化合物はコア構造と呼ばれる糖残基を有する糖ペプチドであり、この化合物を出発物質として用いることにより、例えば、糖転移酵素を用いて酵素反応的に容易に糖鎖を伸長することが可能であり、糖ペプチドライブラリー合成法のための出発原料として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の化合物は、下記式(I):
【0021】
【化5】

(式中、
Pは、1〜20個のアミノ酸残基を有するペプチド鎖であって、ここで糖残基は該ペプチド鎖中のSer又はThr残基の側鎖とO−グリコシド結合し;
X、Y及びZは、互いに独立して、水素、アセチル基、アセチル保護されていてもよい糖残基又はアセチル保護されていてもよい2〜15糖の糖鎖である。)
で表される化合物である。
【0022】
式Iにおいて「P」で表されるペプチド鎖(又はアミノ酸残基)は1〜20個のアミノ酸残基を有するペプチド鎖であって、ここで糖残基は該ペプチド鎖中のSer又はThr残基の側鎖とO−グリコシド結合により結合している。
【0023】
本発明においては、式Iの化合物としてはPがセリン残基、トレオニン残基又はその誘導体である下記式(II):
【0024】
【化6】

(式中、
X、Y及びZは、上記定義のとおりであり;
は、水素又はメチルであり;
は、OH、カルボキシル基の保護基又はカルボキシル基の活性化基であり;
は、アミノ基の保護基である。)
で表される化合物が好ましい。
【0025】
上記X、Y及びZとしては、互いに独立して、水素、アセチル基、アセチル保護されていてもよい糖残基又はアセチル保護されていてもよい2〜15糖の糖鎖が挙げられる。前記糖残基又は2〜15糖の糖鎖としては、単糖及びオリゴ糖(2〜15糖、好ましくは2〜10糖、さらに好ましくは2〜5糖)のいずれでもよく、また、各構成糖はペントース、ヘキソース及びヘプトース等のいずれであってもよい。3糖以上のオリゴ糖鎖である場合には直鎖状糖鎖及び分岐状糖鎖のいずれでもよい。前記糖残基又は糖鎖は、その水酸基の1つ以上がアセチル基により保護されていてもよく、すべての水酸基が保護されていることが好ましい。なお、本発明において前記糖残基又は糖鎖の水酸基の保護基としてはアセチル基のみを用いることが好ましい。
【0026】
前記糖残基又は糖鎖の具体例としては、例えば、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン、キシロース、マンノース、ガラクトース、グルコース、フコース、N−アセチルラクトサミン、リボース、ラクトース、マルトース等の単糖類、並びにこれらの構成糖単位を含み直鎖状又は分岐状に結合したオリゴ糖が挙げられる。また、本発明においては、前記糖残基及び糖鎖としてはカルボキシル基を有さないものであることが好ましい。
【0027】
X、Y及びZの組合せとして好ましいのは、X及びZがアセチル保護されていてもよい糖残基又はアセチル保護されていてもよい2〜15糖の糖鎖であり、且つYが水素又はアセチル基である組合せである。特には、X及びZとしては、互いに独立して、下記式:
【0028】
【化7】

からなる群より選択される基が好ましい。
【0029】
は、OH、カルボキシル基の保護基又はカルボキシル基の活性化基であり、通常は遊離の状態で使用されるが、ペプチド合成も行うためには、保護基により保護したり、活性化してもよい。カルボキシル基の活性化基とは、カルボキシル基のカルボニル炭素の反応性を高める目的で導入される官能基である。カルボキシル基の保護基及び活性化基Rとしては、例えば、−OR(エステル:−COORとして)、Pfp(ペンタフルオロフェニル基)、フッ素基、S−アルキル基及びS−アリール基(チオエステル:−COSRとして)等が挙げられる。ここで、前記Rは低級アルキル又はアリール基である。
【0030】
は、アミノ基の保護基であり、例えば、9−フルオレニルオキシカルボニル基(Fmoc基)、ベンジルオキシカルボニル基、第3ブチルオキシカルボニル基等が挙げられ、特にFmoc基が好ましい。
【0031】
本発明の化合物において、糖残基とペプチド鎖又はトレオニン残基若しくはセリン残基とはO−グリコシド結合により結合されている。
【0032】
本発明において、もっとも好ましい化合物は以下のコア構造を有するCore1〜Core8等の化合物である:
【0033】
【化8】

【0034】
次に、本発明の化合物の製造方法について説明する。
本発明の化合物は、これに限定されるものではないが、以下のような糖誘導体の合成に利用される公知の化学反応を利用して合成することができる。
【0035】
【化9】

まず、糖供与体としては、例えば、1位がトリクロロアセトイミデート化された2−アジド−D−ガラクトース誘導体を使用することができる。なお、目的化合物までの製造工程中は、糖水酸基は、1位の水酸基以外は適宜アセチル保護、アセタール保護、シリル保護又はグリコシル化されていてもよい。
【0036】
もう一方のペプチド鎖については、目的化合物までの製造工程中は上記糖供与体との結合に利用されるセリン又はトレオニン残基の水酸基以外の基は保護しておくことが好ましい。例えば、アミノ基は9−フルオレニルオキシカルボニル基(Fmoc基)、ベンジルオキシカルボニル基、第3ブチルオキシカルボニル基等で保護しておくことが好ましい。カルボキシル基は適宜エステル化して保護したり(例えば、tert−Buエステル)、その後のペプチド合成のためにペンタフルオロフェニル基、チオエステル基、フッ素基等の基により活性化基としてもよい。
【0037】
各反応工程は公知の合成反応を利用するものであり、試薬、触媒、溶媒、温度、時間等の反応条件を適宜選択して行う。
【0038】
上記の合成スキームでは、まず1位がトリクロロアセトイミデート化された3,4,6−O−トリアセチル−2−アジドガラクトースとペプチド鎖(Fmocセリン又はトレオニンのtert−Buエステル体)とを反応させる。次いで、一旦アセチル基を除去し、4位及び6位水酸基をイソプロピリデン又はベンジリデン基で保護し、3位のみ遊離水酸基にする。3位の遊離水酸基に、1位がトリクロロアセトイミデート化された2,3,4,6−O−テトラアセチル−ガラクトースを上記と同様にして導入し、4位及び6位水酸基を脱保護する。次いで、6位の遊離水酸基に1位がトリクロロアセトイミデート化された3,4,6−O−トリアセチル−グルコサミン(アミノ基はトリクロロエチルオキシカルボニル基(Troc基)で保護)を同様にして導入する。このTroc基とガラクトースの2−アジド基は最後に還元処理を経てアセトアミド基に変換して本発明の化合物を得る。この後、必要に応じて、ペプチド鎖のカルボキシル基を保護していたtert−Bu基を脱保護してもよい。
【0039】
上記各反応工程に用いられる溶媒としては、周知の有機溶媒(又は水との混合溶媒)を状況に応じて使用することができる。有機溶媒としては、例えば、エーテル、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ジクロロメタン、酢酸エチル、酢酸、トルエン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。
【0040】
各反応工程における反応温度は、反応が進行するものである限り特に制限されるものではないが、通常−78℃〜その溶媒の沸点の温度である。反応時間は反応の進行具合により適宜変更してよい。
【0041】
反応溶液の濃度としては、例えば、糖及びペプチド鎖のそれぞれが0.01mol/l〜2mol/lの範囲、より好ましくは0.1mol/l〜1mol/lの範囲として行うことが好ましい。
【0042】
反応終了後、必要に応じて保護基を除去し、そして生成した本発明の化合物を通常の方法に従って精製する。精製手段としては、例えば、抽出、再結晶、シリカゲルクロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィー、逆相液体クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等が挙げられる。
【0043】
上記のようにして得られた本発明の化合物のペプチド鎖を伸長するには公知のペプチド合成反応を利用して行うことができる。例えば、本発明の化合物のペプチド鎖のアミノ基又はカルボキシル基の保護基を脱保護し、公知の縮合剤(例えば、ジフェニルホスホリルアジド(DPPA)、ジエチルホスホリルシアニデート、アジドトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩等の有機リン化合物、N−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジハイドロキノリン(EEDQ)、1−イソブチル−2−イソブチル−1,2−ジヒドロキシキノリン等のキノリン系ペプチド縮合剤、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、DCC等のカルボジイミド類等)を用いて、順次糖アミノ酸(又はアミノ酸)を結合していくことによりペプチド鎖を伸長することができる。また、マイクロ波を照射しながら行ってもよい。本明細書で言う「マイクロ波」とは波長約0.3〜30cm程度の電磁波(1〜100GHzに相当する)のことをいう。マイクロ波の波長としては、好ましくは2300〜2600MHzであるが、さらに好ましくは2350〜2550MHz、特に好ましくは2400〜2500MHzである。
【0044】
これは固相反応により行ってもよく、例えば、固相担体に本発明の化合物のN末端アミノ基又はC末端カルボキシル基を結合して(例えば、C末端のカルボキシル基をクロロトリチル樹脂、クロルメチル樹脂、オキシメチル樹脂、p−アルコキシベンジルアルコール樹脂等の担体に結合する)、通常の固相合成反応と同様にして行うことができる。
【0045】
また、糖鎖を伸長するには公知の方法を使用することができ、例えば、1位がトリクロロアセトイミデート化され且つ水酸基が適宜アセチル基で保護された糖誘導体を用いて上記と同様にしてグリコシル化反応を行なうことにより、容易に糖鎖を伸長することができる。あるいは、本発明の化合物を糖転移酵素の基質として用いて酵素反応的に糖鎖を伸長することもできる。
【0046】
例えば、コア2型糖鎖を有するトレオニン誘導体のアセチル基を脱保護し、これにα2,3−シアル酸転移酵素とその供与体基質であるCMPシアル酸を添加することによりガラクトース残基の3位水酸基上にシアル酸がα結合した化合物を得ることができる。一方、β1,4−ガラクトース転移酵素とUDPガラクトースを添加すると、グルコサミン残基の4位水酸基上にガラクトース残基がβ結合した化合物が得られる。また、これらの二つの酵素を転化する順序に関係なく、もう一方の糖残基を伸長することもできる。また、双方の酵素と供与体基質を同時に添加することにより、それぞれの糖残基を同時に伸長することもできる。このように作用させる糖転移酵素の種類、順番を変えることにより、さまざまな構造の糖アミノ酸及び糖ペプチドを調製することができる。
【0047】
本発明の化合物を用いて糖ペプチドを合成すれば、保護基がアセチル基に統一されているので、均一の反応条件で様々なコア構造の組み合わせを有する種々の糖ペプチドを容易に調製することが可能となり、糖ペプチド合成の反応工程を大幅に簡素化することができる。
【実施例】
【0048】
以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0049】
本明細書で用いられる略語は、以下のような意味を有する。
DMF = N,N−ジメチルホルムアミド
DCM = ジクロロメタン
HOBT = N-ヒドロキシベンゾトリアゾール
DIEA = ジイソプロピルエチルアミン
HBTU = 1− [ビス(ジメチルアミノ)メチレン]−1H−ベンゾトリアジウム3−オキシドヘキサフルオロホスフェート
TFA = トリフルオロ酢酸
TMSOTf = トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルエステル
CSA = 10−カンファースルホン酸
TLC = シリカゲル薄層クロマトグラフ(Merck社製、Silica gel 60 F254
Fmoc−Ala−OH = N−α−Fmoc−L−アラニン
Fmoc−Gly−OH = N−α−Fmoc−L−グリシン
Fmoc−Pro−OH = N−α−Fmoc−L−プロリン
Fmoc−Arg(Pbf)−OH = N−α−Fmoc−Nγ−(2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル)−L−アルギニン
Fmoc−Asp(OtBu)−OH = N−α−Fmoc−L−アスパラギン酸 β−t−ブチルエステル
Fmoc−Gln(OtBu)−OH = N−α−Fmoc−L−グルタミン酸 β−t−ブチルエステル
Fmoc−Phe−OH = N−α−Fmoc−L−フェニルアラニン
Fmoc−Val−OH = N−α−Fmoc−L−バリン
Fmoc−His(Trt)−OH = N−α−Fmoc−N−im−トリチル−L−ヒスチジン
Fmoc−Thr−OH = N−α−Fmoc−L−トレオニン
Fmoc−Ser−OH = N−α−Fmoc−L−セリン
Fmoc−Thr(Ac3GalNAc)−OH = N−α−Fmoc−O−(2−アセトアミド−3,4,6−トリ−O−アセチル−2−デオキシ−α−D−ガラクトピラノシル)−L−トレオニン
Fmoc−Ser(Ac3GalNAc)−OH = N−α−Fmoc−O−(2−アセトアミド−3,4,6−トリ−O−アセチル−2−デオキシ−α−D−ガラクトピラノシル)−L−セリン
Fmoc−Thr(Ac7core2)−OH = N−α−Fmoc−O−{O−(2’,3,’4,’6’−テトラ−O−アセチル−β−D−ガラクトピラノシル)−(1’→3)−O−[2”−アセトアミド−3”,4”,6”−トリ−O−アセチル−2”−デオキシ−β−D−グルコピラノシル−(1”→6)]−2−アセトアミド−2−デオキシ−α−D−ガラクトピラノシル}−L−スレオニン
Fmoc−Ser(Ac7core2)−OH = N−α−Fmoc−O−{O−(2’,3,’4,’6’−テトラ−O−アセチル−β−D−ガラクトピラノシル)−(1’→3)−O−[2”−アセトアミド−3”,4”,6”−トリ−O−アセチル−2”−デオキシ−β−D−グルコピラノシル−(1”→6)]−2−アセトアミド−2−デオキシ−α−D−ガラクトピラノシル}−L−セリン
Fmoc−Thr(Ac5core6)−OH = N−α−Fmoc−O−[O−(2”−アセトアミド−3”,4”,6”−トリ−O−アセチル−2”−デオキシ−β−D−グルコピラノシル)−(1”→6)−2−アセトアミド−4,6−ジ−O−アセチル−2−デオキシ−α−D−ガラクトピラノシル]−L−スレオニン
Fmoc−Ser(Ac5core6)−OH = N−α−Fmoc−O−[O−(2”−アセトアミド−3”,4”,6”−トリ−O−アセチル−2”−デオキシ−β−D−グルコピラノシル)−(1”→6)−2−アセトアミド−4,6−ジ−O−アセチル−2−デオキシ−α−D−ガラクトピラノシル]−L−セリン
【0050】
(実施例1)コア(Core)2トレオニン誘導体の調製
下記の合成スキームにしたがってコア2トレオニン誘導体(化合物8)を調製した。
【0051】
【化10】

【0052】
化合物(1)の合成
3,4,6−トリ−O−アセチル−D−ガラクタール(68.9g)を乾燥アセトニトリル(1000ml)に溶かし、−20℃に冷却した。−20℃まで冷えたらセリウムアンモニウムナイトレート(216g)及びアジ化ナトリウム(13.0g)を加え、−20℃で激しく攪拌した。1時間後、さらにセリウムアンモニウムナイトレート(200g)及びアジ化ナトリウム(11.7g)を加え、−20℃で攪拌した。6時間後、反応液にエーテルと水とを加え、分液操作により有機層を集め、水層からエーテルで2回抽出操作を行った。有機層を集め、硫酸マグネシウム乾燥した後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲル(200g)を充填したショートカラムに加え、ヘキサン−酢酸エチル(1:1)で溶出した。得られた粗生成物画分を集め、濃縮し、その残渣をアセトン−水(1:1)混合液(1000ml)に溶かし、これに炭酸カルシウム(25g)を加え、室温で3日間攪拌した。反応懸濁液からカルシウム塩を濾別したのち、濾液を半量になるまで濃縮し、酢酸エチルを用いて3回抽出した。有機層を乾燥、濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[トルエン−酢酸エチル(2:1)]により精製し、化合物(1)(43g、52%)を得た。化合物(1):Rf0.3[ヘキサン−酢酸エチル(1:1)]。
【0053】
化合物(2)の合成
化合物(1)(4.05g)とトリクロロアセトニトリル(2.45ml)とのジクロロメタン(40ml)溶液に無水炭酸カリウム(1.69g)を加え、室温で7時間激しく攪拌した。炭酸カリウムをセライトろ過により濾別した後、濾液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[トルエン−酢酸エチル−トリエチルアミン(150:50:1)]により精製し、化合物(2)(4.6g、79%)を得た。化合物(2):Rf0.4[トルエン−酢酸エチル−トリエチルアミン(150:50:1)]。
【0054】
化合物(3)の合成
化合物(2)(25.0g)とN−α−Fmoc−L−トレオニン−t−ブチルエステル(11.4g)をジクロロメタン−エーテル(1:1)の乾燥混合液(200ml)に溶かし、−30℃に冷却した後、TMSOTf(516μl)を滴下した。反応液を−30℃で30分間攪拌した後、トリエチルアミン(400μl)で中和し、クロロホルムで希釈した後、0.1M 塩酸で洗浄、硫酸マグネシウム乾燥、濃縮を順次行った。残渣を減圧乾燥した後、乾燥メタノールに溶かし、これに、pH8〜9の範囲に保つように注意しながら0.5M ナトリウムメトキシドメタノール溶液を滴下した。TLCで目的物(Rf0.5;酢酸エチル)の蓄積を確認した後、反応液に酢酸(2.0ml)を加え、減圧濃縮した。次に、残渣をクロロホルムに溶かし、飽和炭酸水素ナトリウム水、水で順次洗浄した後、有機層を硫酸マグネシウム乾燥、濃縮し、減圧乾燥した。続いて、残渣を乾燥アセトニトリルに溶かし、ベンズアルデヒドジメチルアセタール(8.5ml)とCSA(200mg)を加え、室温で3時間攪拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水を加え、この懸濁液からクロロホルムで3回抽出した。抽出液を硫酸マグネシウム乾燥、濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ヘキサン−酢酸エチル(3:2)]により精製し、化合物(3)(7.2g、38%)を得た。化合物(3):Rf0.6[ヘキサン−酢酸エチル(1:1)]。
【0055】
化合物(4)の合成
化合物(3)(200mg)、2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−α−D−ガラクトーストリクロロアセトイミデート(200mg)のジクロロメタン(4ml)溶液を0℃に冷却し、TMSOTf(11μl)を滴下した。0℃で時間攪拌した後、反応液にトリエチルアミン(8μl)を加え、反応液に0.1M塩酸を加えた。有機層の分液及び水層のクロロホルム抽出を行った後、有機層を合わせ、硫酸マグネシウム乾燥し、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ヘキサン−酢酸エチル(1:1)]により精製し、化合物(4)(249mg、84%)を得た。化合物(4):Rf0.4[ヘキサン−酢酸エチル(1:1)]。
【0056】
化合物(5)の合成
化合物(4)(224mg)を80%酢酸水に溶かし、80℃で2時間攪拌した。反応液の濃縮、トルエン共沸を行い、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ヘキサン−酢酸エチル(1:3)]により精製し、化合物(5)(176mg、86%)を得た。化合物(5):Rf0.2[ヘキサン−酢酸エチル(1:3)]。
【0057】
化合物(6)の合成
化合物(5)(1.71g)と3,4,6−トリ−O−アセチル−N−(2,2,2−トリクロロエチルオキシカルボニル)−D−グルコサミントリクロロイミデート(2.28g)の乾燥ジクロロメタン(50ml)溶液を−40℃に冷却し、TMSOTf(48μl)を滴下した。10分後、反応液にトリエチルアミン(38μl)を加え、反応液に0.1M塩酸を加えた。有機層の分液及び水層のクロロホルム抽出を行った後、有機層を合わせ、硫酸マグネシウム乾燥し、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ヘキサン−酢酸エチル(1:2)]により精製し、化合物(6)(3.15g、92%)を得た。化合物(6):Rf0.6[ヘキサン−酢酸エチル(1:3)]。
【0058】
化合物(7)の合成
化合物(6)(3.5g)及び酢酸(8.0ml)の酢酸エチル溶液(60ml)に亜鉛粉末(19g)を加え、激しく攪拌した。30分後、反応液に無水酢酸(8.0ml)を加え、さらに30分間攪拌した。未反応の亜鉛末をセライトろ過により濾別した後、濾液を0.1M塩酸及び水で順次洗浄し、硫酸マグネシウム乾燥、濃縮した。残渣にシリカゲルカラムクロマトグラフィー[アセトン−ヘキサン(2:1)]を行い(7)の粗生成物(3.0g、94%)を得た。さらにクロロホルム−ヘキサンより3回再結晶することにより化合物(7)の精製物(1.9g、60%)を得た。化合物(7):Rf0.3[アセトン−ヘキサン(2:1)]。
【0059】
化合物(8)の合成
化合物(7)(1.8g)を95%TFAに溶かし、室温で1時間攪拌した。反応液をトルエンで希釈した後濃縮し、さらにトルエン共沸を2回行い、化合物(8)(1.7g、100%)を得た。化合物(8):Rf0.5[クロロホルム−メタノール(4:1)]。
【0060】
(実施例2)コア1トレオニン誘導体の調製
下記の合成スキームにしたがってコア1トレオニン誘導体(化合物10)を調製した。
【0061】
【化11】

【0062】
化合物(9)の合成
化合物(5)(349mg)をピリジン(3ml)、無水酢酸(2ml)に溶かし、室温で5時間攪拌した後、トルエンで希釈して濃縮し、さらにトルエン共沸を2回行った。残渣を酢酸エチル(10ml)に溶かし、酢酸(0.86ml)及び亜鉛粉末(1.3g)を加え、室温で30分間攪拌した。続いて、反応液に無水酢酸(1.5ml)を加え、室温で30分間攪拌した後、亜鉛をセライト濾過により濾別した。濾液を0.1M塩酸及び水で順次洗浄し、硫酸マグネシウム乾燥、濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[酢酸エチル−ヘキサン(3:1)]で精製し、化合物(9)(327mg、85%)を得た。化合物(9):Rf0.3[酢酸エチル−ヘキサン(3:1)]。
【0063】
化合物(10)の合成
化合物(9)(325mg)を95%TFAに溶かし、室温で1時間攪拌した。反応液をトルエン希釈した後濃縮し、さらにトルエン共沸を2回行った。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[酢酸エチル−ヘキサン(3:1)]で精製し、化合物(10)(297mg、97%)を得た。化合物(10):Rf0.4[クロロホルム−メタノール(4:1)]。
【0064】
(実施例3)コア4セリン誘導体の調製
下記の合成スキームにしたがってコア4セリン誘導体(化合物16)を合成した。
【0065】
【化12】

【0066】
化合物(12)の合成
実施例1の方法に基づいて別途調製した化合物(11)(750mg)と3,4,6−トリ−O−アセチル−N−(2,2,2−トリクロロエチルオキシカルボニル)−D−グルコサミントリクロロイミデート(855mg)の乾燥ジクロロメタン(15ml)溶液を−30℃に冷却し、TMSOTf(25μl)を滴下した。10分後、反応液にトリエチルアミン(20μl)を加え、反応液に0.1M塩酸を加えた。有機層の分液及び水層のクロロホルム抽出を行った後、有機層を合わせ、硫酸マグネシウム乾燥し、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ヘキサン−酢酸エチル(1:1)]により精製し、化合物(12)(1.16g、91%)を得た。化合物(12):Rf0.4[ヘキサン−酢酸エチル(1:1)]。
【0067】
化合物(13)の合成
化合物(12)(1.15g)を80%酢酸水に溶かし、80℃で2時間攪拌した。反応液の濃縮、トルエン共沸を行い、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ヘキサン−酢酸エチル(1:3)]により精製し、化合物(13)(912mg、86%)を得た。化合物(13):Rf0.3[ヘキサン−酢酸エチル(1:3)]。
【0068】
化合物(14)の合成
化合物(13)(655mg)と3,4,6−トリ−O−アセチル−N−(2,2,2−トリクロロエチルオキシカルボニル)−D−グルコサミントリクロロイミデート(396mg)の乾燥ジクロロメタン(10ml)溶液を−40℃に冷却し、TMSOTf(11μl)を滴下した。10分後、反応液にトリエチルアミン(9μl)を加え、反応液に0.1M塩酸を加えた。有機層の分液及び水層のクロロホルム抽出を行った後、有機層を合わせ、硫酸マグネシウム乾燥し、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ヘキサン−酢酸エチル(1:2)]により精製し、化合物(14)(624mg、66%)を得た。化合物(14):Rf0.2[ヘキサン−酢酸エチル(1:1)]。
【0069】
化合物(15)の合成
化合物(14)(624mg)及び酢酸(2.0ml)の酢酸エチル溶液(20ml)に亜鉛粉末(4.9g)を加え、激しく攪拌した。30分後、反応液に無水酢酸(4.0ml)を加え、さらに30分間攪拌した。未反応の亜鉛末をセライトろ過により濾別した後、濾液を0.1M塩酸及び水で順次洗浄し、硫酸マグネシウム乾燥、濃縮した。残渣にシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム−メタノール(10:1)]を行い(15)の粗生成物(495mg、95%)を得た。さらにクロロホルム−ヘキサンより2回再結晶することにより化合物(15)の精製物(423mg、82%)を得た。化合物(15):Rf0.2[クロロホルム−メタノール(10:1)]。
【0070】
化合物(16)の合成
化合物(15)(412mg)を95%TFAに溶かし、室温で1時間攪拌した。反応液をトルエンで希釈した後濃縮し、さらにトルエン共沸を2回行い、化合物(16)(395mg、100%)を得た。化合物(16):Rf0.4[クロロホルム−メタノール(4:1)]。
【0071】
(実施例4)コア3セリン誘導体の調製
下記の合成スキームにしたがってコア3セリン誘導体(化合物18)を調製した。
【0072】
【化13】

【0073】
化合物(17)の合成
化合物(13)(1.03g)をピリジン(5ml)、無水酢酸(3ml)に溶かし、室温で3時間攪拌した後、トルエン希釈、濃縮し、さらにトルエン共沸を2回行った。残渣を酢酸エチル(40ml)に溶かし、酢酸(4.9ml)及び亜鉛粉末(7.5g)を加え、室温で20分間攪拌した。続いて、反応液に無水酢酸(4.0ml)を加え、室温で30分間攪拌した後、亜鉛をセライト濾過により濾別した。濾液を水で洗浄し、硫酸マグネシウム乾燥、濃縮した後、残渣をクロロホルム−ヘキサンから再結晶し化合物(17)(862mg、87%)を得た。化合物(17):Rf0.5[クロロホルム−メタノール(10:1)]。
【0074】
化合物(18)の合成
化合物(17)(857mg)を95%TFAに溶かし、室温で1時間攪拌した。反応液をトルエン希釈した後濃縮し、さらにトルエン共沸を2回行った。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム−メタノール(10:1)]で精製し、化合物(18)(731mg、90%)を得た。化合物(18):Rf0.3[クロロホルム−メタノール(4:1)]。
【0075】
(実施例5)糖ペプチド合成
上記のようにして合成した糖アミノ酸を用いて、下記の合成スキームにしたがって糖ペプチド20を合成した。
【0076】
【化14】

【0077】
化合物(19)の合成
【化15】

【0078】
Tentagel(登録商標)(Hipep Laboratories、0.25mmol/g)0.12g(0.03mmol)を担体として、以下に示すN−Fmoc保護アミノ酸とケト酸とをそれぞれ10等量とFmoc/HBTU/HOBt法試薬とを用いて室温で2時間カップリング反応を行った。糖アミノ酸は試薬1.1等量を用いてマイクロ波照射下50℃で20分間カップリング反応を行うことにより、以下の通り順次縮合して目的の糖ペプチド誘導体を合成した。
使用した保護アミノ酸、ケト酸及び糖アミノ酸:
Fmoc−Arg(Pbf)−OH、Fmoc−Thr(Ac5core6)−OH、Fmoc−Asp(OtBu)−OH、Fmoc−Pro−OH、Fmoc−Ala−OH、Fmoc−Ser(Ac7core2)−OH、Fmoc−Thr(Ac3GalNAc)−OH、Fmoc−Val−OH、Fmoc−Gly−OH、Fmoc−His(Trt)−OH、Fmoc−Ala−OH、Fmoc−Gln(OtBu)−OH、Fmoc−Phe−OH、5−ケトヘキサン酸。
【0079】
ペプチド伸長反応終了後、90%TFA水溶液中、室温で2時間反応させることによってペプチド残基上の保護基を脱離させるとともに、固相担体上から化合物(19)を遊離させた。樹脂を濾別し、TFAを揮発留去した後、10%アセトニトリル水溶液に溶解し固体を逆相HPLC(Inertsil(登録商標) ODS−3 20×250mmカラム、移動層A:0.1%TFA水溶液に対するB:0.1%TFA含有アセトニトリルの10%〜70%のグラジエント)により精製して化合物(19)を17mg得た(収率17%)。MALDI−TOF/MS:[M(average)+H]=3306.340、(理論値:[M(average)+H]=3305.329)。
【0080】
化合物(20)の合成
【化16】

化合物(19)をメタノール5mlに溶解し、0.1N水酸化ナトリウム水溶液にてpHを12.0に調整した。随時0.1N水酸化ナトリウム水溶液でpHを調節しながら、反応終了まで2時間撹拌した。反応終了後、H型陽イオン交換樹脂Dowex50WX8(ダウケミカル社製)を加えて中和した後、樹脂を濾別し、濾液の溶媒を留去して残渣を逆相HPLC(Inertsil(登録商標) ODS−3 20×250mmカラム、移動層A:0.1%TFA水溶液に対するB:0.1%TFA含有アセトニトリルの0%〜60%のグラジエント)により精製して化合物(20)を5.6mg得た(収率40%)。MALDI−TOF/MS:[M(average)+H]=2675.547、(理論値:[M(average)+H]=2675.171)。
【0081】
(実施例6)Fmoc−Thr(Ac7core2)−OH(21)の合成
以下の合成スキームにしたがってFmoc−Thr(Ac7core2)−OH(化合物21)を調製した。
【0082】
【化17】

【0083】
化合物(21)の合成
化合物(8)(12.4mg)をメタノール−水(10:1)混合液(5ml)に溶かし、0.1Nナトリウムメトキシドメタノール溶液にてpHをフェノールフタレインピンクに調整し、さらに、随時0.1Nナトリウムメトキシドメタノール溶液を追加し、pHを維持した。4時間後、反応液に酢酸(0.2ml)を加え、濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム−メタノール−水(10:10:1→10:10:2)]で精製し、化合物(21)(8.1mg、86%)を得た。化合物(21):Rf0.2[クロロホルム−メタノール−水(10:10:1)]、MALDI−TOF/MS:[M(average)+H]=931.5、(理論値:[M(average)+H]=932.3)、純度95%以上(逆相HPLC:Inertsil(登録商標) ODS−3 4.6×250mmカラム、移動層A:0.1%TFA水溶液に対するB:0.1%TFA含有アセトニトリルの10%〜90%のグラジエント)。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の化合物及び製造方法は、コア構造の組み合わせ、ペプチド配列の選択、及び糖転移酵素の選択のそれぞれで多様性の付加ができるため、糖ペプチドライブラリー調製に有用である。
【0085】
本発明に含まれる糖アミノ酸を用いることにより、これまで実現が困難であった糖ペプチドのライブラリー合成が可能となり、糖タンパク質の機能解析や構造解析が飛躍的に進行するものと期待される。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】図1は、実施例6で製造した化合物(21)のHPLCクロマトグラムである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I):
【化1】

(式中、
Pは、1〜20個のアミノ酸残基を有するペプチド鎖であって、ここで糖残基は該ペプチド鎖中のSer又はThr残基の側鎖とO−グリコシド結合し;
X、Y及びZは、互いに独立して、水素、アセチル基、アセチル保護されていてもよい糖残基又はアセチル保護されていてもよい2〜15糖の糖鎖である。)
で表される化合物。
【請求項2】
下記式(II):
【化2】

(式中、
X、Y及びZは、上記定義のとおりであり;
は、水素又はメチルであり;
は、OH、カルボキシル基の保護基又はカルボキシル基の活性化基であり;
は、アミノ基の保護基である。)
で表される請求項1記載の化合物。
【請求項3】
式(I)において、X及びZは完全にアセチル化された糖残基であり;YはHであり;RはOHであり;RはFmoc基である請求項1又は2記載の化合物。
【請求項4】
式(I)において、X及びZが、互いに独立して、下記式:
【化3】

からなる群より選択される糖残基である請求項1〜3のいずれか1項記載の化合物。
【請求項5】
下記式:
【化4】

からなる群より選択される請求項1記載の化合物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載の化合物を用いて糖鎖及び/又はペプチド鎖の伸長反応を行なうことを含む糖ペプチドの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−63055(P2006−63055A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−250954(P2004−250954)
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「健康維持・増進のためのバイオテクノロジー基盤研究プログラム/糖鎖エンジニアリングプロジェクト/糖鎖構造解析技術開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】