説明

OFDM受信装置

【課題】連結送信された地上波デジタル信号を受信するときにPRBS初期値を自動的に検出することで、選局時の設定が簡便になるOFDM受信装置を提供することである。
【解決手段】パイロット信号抽出手段104は受信信号を周波数領域信号に変換するFFT手段102出力からパイロット信号を抽出する。PRBS発生手段109は選択信号に応じて複数のPRBSのいずれかを発生させる。BPSK変調除去手段108はパイロット信号抽出手段出力をPRBS発生手段出力を用いてBPSK変調除去を行う。データ復調手段103はBPSK変調除去手段出力でFFT手段出力を等化し復調データを得る。検出手段108はデータ復調手段出力である復調データの良否に関わる検出信号を得る。判定手段110はこの検出信号が最良となる判定基準に基づき複数のPRBSの内最適なPRBSを選択する前述の選択信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連結送信された地上波デジタル信号の一部を受信するOFDM受信装置に関し、特にスキャタードパイロット(以下、SP)信号を受信するOFDM受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、OFDM信号を用いたデジタル伝送方式は、地上波デジタル放送の分野で実用化が進められている。わが国においてもISDB−T規格の地上波デジタルテレビジョン放送がUHF帯で、及び、ISDB−TSB規格の地上波デジタル音声放送がVHF帯で開始されている。また、将来的には、ISDB−Tmm規格の地上波デジタルモバイルマルチメディア放送の開始が予定されている。
【0003】
このOFDM方式は、伝送するデジタルデータによって互いに直交する多数のサブキャリアを変調し、それらの変調波を多重して伝送する。この方式は、使用するサブキャリアの数が数百から数千本となり、マルチパス干渉の影響を受けにくい特徴を有している。
【0004】
地上波デジタル放送では、各番組事業者のセグメント(1以上の所定数のセグメント)を複数連結して1つのOFDM信号として送信する伝送方式が開発され、その連結送信された地上波デジタル信号の一部を受信する地上波デジタル受信装置が現れてきている。
【0005】
また、地上波デジタル信号には周波数方向および時間方向にまばらにスキャタードパイロット(SP:Scattered Pilot)信号が挿入されており、受信装置ではこのSP信号を基準に伝送路ひずみを補正してデータ復調を行う。なお、SP信号は周波数方向に既知の擬似ランダム符号系列(PRBS:Pseudo-Random Binary Sequence)によってBPSK(Binary Phase Shift Keying)変調されて送信される。受信装置ではBPSK変調されたSP信号から送信側と同一のPRBSを用いてBPSK変調を除去して使用する。ただし、連結送信の場合は連結されたセグメントの位置(中心サブチャンネル番号)によってPRBSの初期値は異なっている(例えば、非特許文献1参照)。
【0006】
従来のOFDM受信装置は、チューナでセグメントの受信選局を行った後、SP信号を基準に伝送路ひずみを補正してデータ復調を行うように構成されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
このような従来のOFDM受信装置では、連結送信された信号のどの位置(中心サブチャンネル番号)のセグメントを受信するかを予め把握しており、受信するセグメント位置(中心サブチャンネル番号)に応じたPRBSの初期値(後述する図10参照)を用いてSP信号のBPSK除去を行う必要がある。従って、従来の受信装置では、選局の際に受信装置のチューナに選局のための周波数情報を供給する必要がある一方、復調手段である後段の等化回路の基準信号となるSP信号を再生する際にもBPSK変調除去を行うのに中心サブチャンネル番号あるいはPRBS初期値の情報を必要とする。このように選局情報を受信装置の異なった別々の回路部に供給する必要があった。このためチューナ側の選局情報を後段の復調部分に供給する配線が必要であったり、復調部分の製造においてチューナ側の選局情報を考慮に入れた構成としなければならずチューナ側の選局情報を必要としない回路構成とすることができなかった。
【非特許文献1】「地上デジタル音声放送の伝送方式」,社団法人電波産業会,ARIB STD-B29 第3章
【特許文献1】特開2003−259244号公報
【特許文献2】特開2005−191801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は上記の問題に鑑み、連結送信された地上波デジタル信号の一部を受信するときにPRBS初期値を自動的に検出し、そのPRBS初期値を用いてSP信号のBPSK変調除去を行うことで選局の際に復調部分で選局制御を行っているマイコン側から中心サブチャンネル番号あるいはPRBS初期値を入力する必要がなく、選局時の設定が簡便になるOFDM受信装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明の一態様によれば、パイロット信号を周波数方向及び時間方向に予め定められた配置パターンで多重して送信し、かつ前記パイロット信号は周波数方向に複数のPRBSのいずれかでBPSK変調して送信するOFDM信号を受信するOFDM受信装置において、受信信号を高速離散フーリエ変換により周波数領域の信号に変換する高速離散フーリエ変換手段と、前記高速離散フーリエ変換手段の出力からパイロット信号を抽出するパイロット信号抽出手段と、選択信号に応じて前記複数のPRBSのいずれかを発生させるPRBS発生手段と、前記パイロット信号抽出手段の出力を前記PRBS発生手段の出力を用いてBPSK変調除去を行うBPSK変調除去手段と、このBPSK変調除去手段の出力で前記高速離散フーリエ変換手段の出力を等化し、復調データを得るデータ復調手段と、前記データ復調手段の出力である復調データの良否に関わる検出信号を得る検出手段と、前記検出信号を入力し、該検出信号が最良となる判定基準に基づいて、前記複数のPRBSのうち最適なPRBSを選択するための前記選択信号を出力する判定手段とを具備し、前記判定手段は前記複数のPRBSを試行して前記判定基準を得ることを特徴とするOFDM受信装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、連結送信された地上波デジタル信号を受信するときにPRBS初期値
を自動的に検出することで、選局時の設定が簡便になるOFDM受信装置を提供すること
ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1乃至図4を参照して本発明の実施形態を説明する前に、図5乃至図10を参照して本発明の関連技術について説明する。
図5は14個のセグメントに分割されて連結送信される6MHz帯域のOFDM信号を表している。なお、1セグメントは例えば432個のサブキャリアを備えている。
【0011】
図6は或る周波数帯の6MHz帯域を41分割して得られる、1セグメントの中心サブチャンネル番号0〜41を示している。通常、放送局では、図6に示した或る周波数帯の中心サブチャンネル番号0〜41のいずれかのサブチャンネル番号(例えば図10の数字行の2行目に示したようにサブチャンネル番号2,3又は4)に、図5に示した14個のセグメントのうちの例えば最初(図示左端)のセグメントの中心周波数f1を合わせるように周波数を設定している。この周波数設定は一度設定すると、固定的になるが、周波数の有効利用などの目的で、放送チャンネルの周波数帯域を移動など変更しなければならないときに、最初(図示左端)のセグメントの中心周波数f1をサブチャンネル番号0〜41のどれかに設定できる、例えば図10の数字行の14行目に示したようにサブチャンネル番号38,39又は40に設定することが可能となっている。
【0012】
図7は、OFDM伝送方式におけるSP信号の配置例を示す図である。図7の縦軸は時間方向(シンボル数に相当)、横軸は周波数方向(サブキャリア数に相当)である。地上波デジタル放送等に用いられているOFDM伝送方式(ISDB−T)では、送信側で周波数軸上および時間軸上の所定位置に予め振幅および位相が一定の既知のSP信号をデータ信号列中に規則的に挿入している。周波数方向には、12キャリアごとに1回、時間方向には4シンボルごとに1回挿入されている。図7中、●はSPキャリアであり、○はデータキャリアである。受信側では、このSP信号を基準に伝送路ひずみを補正してデータ復調を行う。なお、SP信号は送信側で周波数方向に既知のPRBS(擬似ランダム符号系列)によってBPSK変調されて送信される。
【0013】
例えば、図7に示すように、一行目(1つ目)のシンボルを構成するサブキャリア(以下、単にキャリア)について、1又は0を擬似ランダム符号系列(PRBS)に従ってランダムに割り当て、これによってSP信号がBPSK変調されて送信される。なお、図7では1つ目のシンボルを構成するキャリアに割り当てられるPRBS(1011010111010101…)を見ると、1つ目のシンボルを構成する最初のSPキャリア●には‘1’が、次のSPキャリア●には‘0’が割り当てられている。これによって、図8に示すように、各SPキャリアごとに1又は0がPRBSに従ってランダムに割り当てられるようになっており、‘1’が割り当てられればIQ平面のI軸上のa点の位相で送信され、‘0’が割り当てられればI軸上のa点の位相とは180度位相が異なるb点の位相で送信されることになる。このようにSP信号をPRBSの‘1’,‘0’を用いてBPSK変調する理由は、1つの位相だけで信号を送ると信号伝送上のデメリット(他の信号との干渉など)が生じるのを回避するためである。
【0014】
受信側では送信側と同一のPRBSを用いてBPSK変調を除去して使用する。つまり、送受側で同一のPRBS発生回路を有し、同じタイミングでPRBS発生回路を構成する所定数のレジスタにPRBS初期値を与えることによって送受側で同一のPRBSを発生させることができる。
OFDM伝送では、互いに直交する複数キャリアにデータを割り当てて変調及び復調を行う。これは、送信側では複数のシンボルデータに対して逆高速フーリエ変換(以下、IFFT)処理を行い、受信側では受信データに対して高速フーリエ変換(以下、FFT)処理を行うことにより実現する。
【0015】
また、図7に示したように、送信側で周波数方向に1/12、時間方向に1/4の割合でSP信号を挿入しておき、受信側でSP信号を検出して各キャリアの誤差を求め、振幅等化及び位相等化を行うことにより、同期検波を実現する。すなわち、SP信号は時間方向に4シンボル周期で配列されているので、4シンボル周期のSP信号を時間方向に補間して4シンボルのSP信号を得ることにより3キャリア間隔のSP信号を得る。ここで、前述したように送信側と同一のPRBSを用いてBPSK変調を除去を行う。BPSK変調除去によって、図8のa点とb点のどちらかの位相にランダムにBPSK変調されたSP信号が、全て本来のa点のみの位相のSP信号に戻される。次に、このBPSK変調除去されたSP信号を周波数方向に補間することにより、全キャリアに亘っての基準信号としてのSP信号が得られる。
このようにして時間方向及び周波数方向に補間された全キャリアのSP信号は、振幅等化及び位相等化を行う等化回路に送られる。
【0016】
図8はQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)変調されたI軸及びQ軸の複素データの振幅・位相特性(以下、コンスタレーション)、及び、BPSK変調された複素SP信号のコンスタレーションを示している。小さい4つの白丸がQPSK変調されたデータ信号であり、I軸上の小さい2つの黒丸がBPSK変調されたSP信号a,bを示している。この図示の状態では、QPSK信号及びSP信号とも何ら歪みを受けていないが、送信される伝送路上でマルチパスなどの妨害を受けると、受信側ではa点のSP信号の位相はa’点にずれ、同様にc点のQPSK信号の位相も同じずれ量でc’点にずれる。これはb点のSP信号の位相や、他の3つの点のQPSK信号の位相についても同じ量でずれを生じる。なお、受信装置では、この位相のずれ量(即ち位相の回転)や振幅の変位を元に戻すのが等化回路(図1の符号103などを参照)である。
【0017】
図9は地上波デジタル信号でSP信号をBPSK変調するために使用するPRBS発生回路の構成例を示している。PRBS発生回路は、1ビットずつのラッチ(遅延)が可能な11個のレジスタD1,D2,D3……,D10,D11が直列に接続し、レジスタD9の出力信号とレジスタD11の出力信号とをエクスクルーシブオア(EXORと呼ばれる)回路21の2つの入力端に入力し、EXOR回路21の出力信号をレジスタD1に入力し、レジスタD11からの信号を出力端子22から出力する構成となっている。レジスタD1〜D11はそれぞれ、クロックごとに1ビットずつのラッチを行うことが可能なラッチ回路としてのフリップフロップで構成されている。
EXOR回路21を構成する11個のレジスタD1〜D11には、初期値として図10の「PRBSレジスタの初期値」を示す表から選択して設定することができるようにしてある。
【0018】
但し、連結送信の場合は図10に示すように連結されたセグメントの位置(中心サブチャンネル番号)によってPRBSの初期値は異なる。図10に示すように、中心サブチャンネル番号は1セグメントの中に設定できる番号が3つあり、14個の全セグメントについては42個の中心サブチャンネル番号が予め定められている。つまり、送信側では、各セグメントにつきサブチャンネル単位でセグメントをずらせるような方式となっている。例えば図10の数字行の2行目にある「1セグメントの中心サブチャンネル番号」の「2,3,4」は、図6に示した0〜41までのサブチャンネル番号のうちの2,3,4のとれかがセグメントの中心周波数f1になるようにセグメントをずらせることを意味している。なお、図10でモード1,2,3は、地上デジタル放送の伝送パラメータによって区別されるモードの違いを指しており、1セグメント内のサブキャリア数がそれぞれ108,216,432に相当するものである。これら地上波デジタル信号および連結送信の伝送方式については非特許文献1に詳しく記載されている。
【0019】
従来のOFDM受信装置では連結送信された信号のどの位置(中心サブチャンネル番号)のセグメントを受信するかをあらかじめ把握しており、受信するセグメント位置(中心サブチャンネル番号)に応じたPRBSの初期値を用いてSP信号のBPSK変調除去を行っていた。従って、従来の受信装置では、選局の際に受信装置に中心サブチャンネル番号あるいはPRBS初期値の情報をチューナに供給する一方、復調部分を構成する復調ICにも供給する必要があった。
【0020】
そこで、本発明の実施形態では、受信装置の復調ICにおいて、復調に必要な複数のPRBSの初期値を切り替えていき、復調データの良否に関わる検出信号(例えばS/N比や誤り率等)が最良のときを自動的に検出することによって、最適なPRBSの初期値を検出できるようにしたものである。
【0021】
[第1の実施形態]
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は本発明の第1の実施形態のOFDM受信装置の構成を示すブロック図である。
【0022】
図1に示すOFDM受信装置100は、地上波デジタル放送信号を選局する図示しないチューナと、ベースバンドの複素信号に変換して時間領域の地上波デジタル信号を生成する図示しない直交検波回路と、受信信号をFFTにより周波数領域の信号に変換するFFT回路102と、このFFT回路102の出力からSP信号を抽出するパイロット信号抽出手段としてのSP抽出回路104と、このSP抽出回路104で抽出されたSP信号について時間方向に補間を行うSP時間軸補間回路105と、選択信号に応じて複数のPRBSのいずれかを発生させるPRBS発生回路109と、SP時間軸補間回路105の出力をPRBS発生回路109の出力を用いてBPSK変調除去を行うBPSK変調除去回路106と、このBPSK変調除去回路106でBPSK変調除去されたSP信号について周波数方向に補間を行うSP周波数軸補間回路107と、このSP周波数軸補間回路107のSP出力でFFT回路102の出力を等化し、復調データを得るデータ復調手段としての等化回路103と、この等化回路103の出力である復調データを用いて受信S/Nを検出するS/N検出回路108と、検出された受信S/N信号を入力し、受信S/N信号が最良となる判定基準に基づいて、複数のPRBSのうち最適なPRBSを選択するための選択信号を出力する判定回路110と、復調データの出力端子111と、PRBSサーチモード信号の入力端子112とを備えている。
【0023】
判定回路110は、図示しない制御手段からサーチモード信号が入力された時、PRBS発生回路109にPRBS切替信号を与えてPRBS発生回路109に複数のPRBSを試行させて受信S/N信号が最良となる判定基準を得ることによって、最適なPRBSを自動的に見つけ出し、復調動作を実行する。
なお、PRBS発生回路109としては、前述の図9の構成を用いることができる。
【0024】
以下、図1を参照しながら動作説明する。
入力端子101には図示しないチューナで選局され、その後図示しない直交検波回路でベースバンドの複素信号に変換された時間領域の地上波デジタル信号が入力端子101に入力される。FFT回路102の入力信号は連結送信された地上波デジタル信号の一部のセグメント信号である。なお、チューナでは所定数のセグメントが受信可能である。地上波デジタル信号の一部のセグメント信号とは、1シンボルを構成する所定数のセグメントの信号である。この入力信号はFFT回路102に供給され、高速フーリエ変換(FFT)演算により周波数領域の信号に変換される。FFT回路102の出力は2つに分岐され、一方は等化回路103に供給され、もう一方はSP抽出回路104に供給される。
【0025】
SP抽出回路104では、図7に示したように周波数方向および時間方向にまばらに多重されたSP信号のみを抜き取り、SP時間軸補間回路105に供給する。SP時間軸補間回路105で時間方向に補間されたSP信号はBPSK変調除去回路106に供給される。この時間軸補間により、SP信号は周波数方向に3キャリアごとに1回挿入される。即ち周波数方向に1/3の割合でSP信号が挿入された状態となる。
【0026】
BPSK変調除去回路106には、PRBS発生回路109からPRBS信号も入力され、このPRBS信号に基づいてSP信号のBPSK変調が除去される。BPSK変調除去回路106の出力はSP周波数軸補間回路107に供給され、周波数方向に周波数補間フィルタにより補間されて補間出力が等化回路103に供給される。この時間軸補間により、全キャリアの基準信号が得られる。
【0027】
等化回路103においてFFT回路102からのデータキャリアはSP周波数軸補間回路107からの全キャリアのSP信号に基づいて伝送路ひずみを補正され復調データとして出力端子111から図示しない後段の誤り訂正回路へと供給される。
また、等化回路103の出力はS/N検出回路108にも供給され、復調データを用いて受信S/Nが検出される。検出結果である受信S/N信号は判定回路110に供給される。また、判定回路110には、PRBSサーチモード信号が入力されて、PRBSサーチモードと通常受信モードが切り替えられる。
【0028】
PRBSサーチモードのとき、判定回路110からPRBS発生回路109にPRBS初期値切替信号が供給され、PRBS初期値を順次切り替えながら判定回路110では受信S/N信号を監視する。そして、受信S/N信号が最良となるPRBS初期値を選択してPRBSサーチモードを終了し、通常受信モードに切り替わる。PRBS初期値が入力信号と合っていなければ、SP信号のBPSK変調除去が正しく行われず、BPSK変調成分が周波数軸で高域成分となるため周波数補間フィルタで破綻が生じてしまい、受信S/Nを劣化させる。従って、正しいPRBS初期値のとき受信S/N信号が最良となるので最適なPRBS初期値検出のための判定基準に用いることができる。なお、PRBSサーチモードは、例えばSP信号の4シンボル周期が確定した直後あるいはフレーム同期が確立した直後に一度実行されればよい。
【0029】
以上説明したように第1の実施形態によれば、PRBS初期値を切り替えながら受信S/N信号を判定基準として利用してPRBS初期値の自動検出を行うことができるためユーザーがPRBS初期値を設定する必要がない。
【0030】
[第2の実施形態]
図2は本発明の第2の実施形態のOFDM受信装置の構成を示すブロック図である。
図2に示すOFDM受信装置200は、地上波デジタル放送信号を選局する図示しないチューナと、ベースバンドの複素信号に変換して時間領域の地上波デジタル信号を生成する図示しない直交検波回路と、受信信号をFFTにより周波数領域の信号に変換するFFT回路202と、このFFT回路202の出力からSP信号を抽出するパイロット信号抽出手段としてのSP抽出回路204と、このSP抽出回路204で抽出されたSP信号について時間方向に補間を行うSP時間軸補間回路205と、選択信号に応じて複数のPRBSのいずれかを発生させるPRBS発生回路209と、SP時間軸補間回路205の出力をPRBS発生回路209の出力を用いてBPSK変調除去を行うBPSK変調除去回路206と、このBPSK変調除去回路206でBPSK変調除去されたSP信号について周波数方向に補間を行うSP周波数軸補間回路207と、このSP周波数軸補間回路207のSP出力でFFT回路202の出力を等化し、復調データを得るデータ復調手段としての等化回路203と、この等化回路203の出力である復調データを入力して、誤り訂正を行って出力端子211に出力する一方、誤り率を検出する機能を備えた誤り訂正回路208と、検出された誤り率を入力し、誤り率が最良となる判定基準に基づいて、複数のPRBSのうち最適なPRBSを選択するための選択信号を出力する判定回路210と、TSデータの出力端子211と、PRBSサーチモード信号の入力端子212とを備えている。
【0031】
この判定回路210は、図示しない制御手段からサーチモード信号が入力された時、PRBS発生回路209にPRBS切替信号を与えてPRBS発生回路209に複数のPRBSを試行させて誤り率が最良となる判定基準を得ることによって、最適なPRBSを自動的に見つけ出し、復調動作を実行する。
【0032】
以下、図2を参照しながら動作説明する。
入力端子201には図示しないチューナで選局され、その後図示しない直交検波回路でベースバンドの複素信号に変換された時間領域の地上波デジタル信号が入力される。FFT回路202の入力信号は連結送信された地上波デジタル信号の一部のセグメント信号である。なお、チューナでは所定数のセグメントが受信可能である。地上波デジタル信号の一部のセグメント信号とは、1シンボルを構成する所定数のセグメントの信号である。この入力信号はFFT回路202に供給され、FFT演算により周波数領域の信号に変換される。FFT回路202の出力は2つに分岐され、一方は等化回路203に供給され、もう一方はSP抽出回路204に供給される。
【0033】
SP抽出回路204では図7に示したように周波数方向および時間方向にまばらに多重されたSP信号のみを抜き取りSP時間軸補間回路205に供給する。SP時間軸補間回路205で時間軸方向に補間されたSP信号はBPSK変調除去回路206に供給される。この時間軸補間により、SP信号は周波数方向に3キャリアごとに1回挿入される。即ち周波数方向に1/3の割合でSP信号が挿入された状態となる。
【0034】
BPSK変調除去回路206には、PRBS(擬似ランダム符号系列)発生回路209からPRBS信号も入力され、このPRBS信号に基づいてSP信号のBPSK変調が除去される。BPSK変調除去回路206の出力はSP周波数軸補間回路207に供給され、周波数軸方向に周波数補間フィルタにより補間されて補間出力が等化回路203に供給される。この時間軸補間により、全キャリアの基準信号が得られる。
【0035】
等化回路203においてFFT回路202からのデータキャリアはSP周波数軸補間回路207からの全キャリアのSP信号に基づいて伝送路ひずみを補正され復調データとして誤り訂正回路208へと供給される。誤り訂正回路208で誤り訂正演算処理され、TSデータとして出力端子211へ出力される。
また、誤り訂正回路208からは誤り率を示すエラー情報が判定回路210に供給される。判定回路210には、PRBSサーチモード信号が入力されて、PRBSサーチモードと通常受信モードが切り替えられる。
【0036】
PRBSサーチモードのとき、判定回路210からPRBS発生回路209にPRBS初期値切替信号が供給され、PRBS初期値を順次切り替えながら判定回路210ではエラー情報を監視する。そして、誤り率が最良となるPRBS初期値を選択してPRBSサーチモードを終了し通常受信モードに切り替わる。PRBS初期値が入力信号と合っていなければSP信号のBPSK変調除去が正しく行われず、誤り訂正回路208で誤り訂正できず誤り率を劣化させる。従って、正しいPRBS初期値のとき誤り率が最良となるので最適なPRBS初期値検出のための判定基準として用いることができる。なお、PRBSサーチモードには例えばSP信号の4シンボル周期が確定した直後あるいはフレーム同期が確立した直後に一度実行されればよい。
【0037】
以上説明したように第2の実施形態によれば、PRBS初期値を切り替えながら誤り率の状態を示すエラー情報を判定基準として利用してPRBS初期値の自動検出を行うことができるためユーザーがPRBS初期値を設定する必要がない。
【0038】
[第3の実施形態]
図3は本発明の第3の実施形態のOFDM受信装置の構成を示すブロック図である。
図3に示すOFDM受信装置300は、地上波デジタル放送信号を選局する図示しないチューナと、ベースバンドの複素信号に変換して時間領域の地上波デジタル信号を生成する図示しない直交検波回路と、受信信号をFFTにより周波数領域の信号に変換するFFT回路302と、このFFT回路302の出力からSP信号を抽出するパイロット信号抽出手段としてのSP抽出回路304と、このSP抽出回路304で抽出されたSP信号について時間方向に補間を行うSP時間軸補間回路305と、選択信号に応じて複数のPRBSのいずれかを発生させるPRBS発生回路309と、SP時間軸補間回路305の出力をPRBS発生回路309の出力を用いてBPSK変調除去を行うBPSK変調除去回路306と、このBPSK変調除去回路306でBPSK変調除去されたSP信号について周波数方向に補間を行うSP周波数軸補間回路307と、このSP周波数軸補間回路307のSP出力でFFT回路302の出力を等化し、復調データを得るデータ復調手段としての等化回路303と、BPSK変調除去回路306から出力されるSP信号を入力し、BPSK変調除去されなかった成分を微分誤差信号として検出するための微分誤差検出回路311と、検出された微分誤差信号を入力し、微分誤差信号が最小となる判定基準に基づいて、複数のPRBSのうち最適なPRBSを選択するための選択信号を出力する判定回路310と、復調データの出力端子312と、PRBSサーチモード信号の入力端子313とを備えている。
【0039】
この判定回路310は、図示しない制御手段からサーチモード信号が入力された時、PRBS発生回路309にPRBS切替信号を与えてPRBS発生回路309に複数のPRBSを試行させて微分誤差信号が最良となる判定基準を得ることによって、最適なPRBSを自動的に見つけ出し、復調動作を実行する。
【0040】
図4は図3における微分誤差検出回路311の構成例のブロック図を示している。
図4に示す微分誤差検出回路311は、BPSK変調除去回路306の出力をクロック遅延させるレジスタ311-1と、BPSK変調除去回路306のSP出力とこの出力から周波数方向に隣り合うSP信号(レジスタ311-1出力)の差分値を求める差分演算回路311-2と、この差分演算回路の絶対値を検出する絶対値検出回路311-3と、この絶対値検出回路の出力を所定区間積分して微分誤差信号として出力する積分回路311-4とを備え、積分回路の出力を判定基準として積分回路出力が最小となるPRBSを選択する。
【0041】
以下、図3及び図4を参照しながら動作説明する。
入力端子301には図示しないチューナで選局され、その後図示しない直交検波回路でベースバンドの複素信号に変換された時間領域の地上波デジタル信号が入力される。FFT回路302の入力信号は連結送信された地上波デジタル信号の一部のセグメント信号である。なお、チューナでは所定数のセグメントが受信可能である。地上波デジタル信号の一部のセグメント信号とは、1シンボルを構成する所定数のセグメントの信号である。この入力信号はFFT回路302に供給され、FFT演算により周波数領域の信号に変換される。FFT回路302の出力は2つに分岐され、一方は等化回路303に供給され、もう一方はSP抽出回路304に供給される。
【0042】
SP抽出回路304では図7に示したように周波数方向および時間方向にまばらに多重されたSP信号のみを抜き取りSP時間軸補間回路305に供給する。SP時間軸補間回路305で時間軸方向に補間されたSP信号はBPSK変調除去回路306に供給される。この時間軸補間により、SP信号は周波数方向に3キャリアごとに1回挿入される。即ち周波数方向に1/3の割合でSP信号が挿入された状態となる。
【0043】
BPSK変調除去回路306にはPRBS(擬似ランダム符号系列)発生回路309からPRBS信号も入力され、このPRBS信号に基づいてSP信号のBPSK変調が除去される。BPSK変調除去回路306の出力はSP周波数軸補間回路307に供給され、周波数方向に周波数補間フィルタにより補間されて補間出力が等化回路303に供給される。この時間軸補間により、全キャリアの基準信号が得られる。
【0044】
等化回路303においてFFT回路302からのデータキャリアはSP周波数軸補間回路307からの全キャリアのSP信号に基づいて伝送路ひずみを補正され復調データとして誤り訂正回路308へと供給される。誤り訂正回路308で誤り訂正処理されて出力端子312へTSデータとして出力される。
【0045】
また、BPSK変調除去回路306の出力は微分誤差検出回路311にも供給される。図4に示すように、微分誤差検出回路311は、SP信号を周波数方向に差分演算し、その絶対値を一定区間積分する。積分演算結果を微分誤差信号として判定回路310に供給する。また、判定回路310にはPRBSサーチモード信号が入力されて、PRBSサーチモードと通常受信モードが切り替えられる。
【0046】
PRBSサーチモードのとき、判定回路310からPRBS発生回路309にPRBS初期値切替信号が供給され、PRBS初期値を順次切替ながら判定回路310では微分誤差信号を監視する。そして、微分誤差信号が最小となるPRBS初期値を選択してPRBSサーチモードを終了し通常受信モードに切り替わる。PRBS初期値が入力信号と合っていなければSP信号のBPSK変調除去が正しく行われず、BPSK変調成分が存在するため微分誤差信号は大きくなる。従って、正しいPRBS初期値のとき微分誤差信号が最小となるので最適なPRBS初期値検出のための判定基準に用いることができる。PRBSサーチモードには例えばSP信号の4シンボル周期が確定した直後あるいはフレーム同期が確立した直後に一度実行されればよい。
【0047】
以上説明したように第3の実施形態によれば、PRBS初期値を切り替えながら微分誤差信号を判定基準として利用してPRBS初期値の自動検出を行うことができるためユーザーがPRBS初期値を設定する必要がない。
【0048】
以上の第1乃至第3の実施形態の説明では、BPSK変調除去回路がSP時間軸補間回路の後段に位置しているが前段にあってもかまわない。さらに、第1乃至第3の実施形態では、PRBS初期値を順次切り替えながらサーチしていくように説明したが、回路を複数使用して並列処理で実施しても同様の効果があることは言うまでもない。
【0049】
以上述べたように本発明によれば、連結送信された地上波デジタル信号の一部を受信するOFDM受信装置において、SP信号に施されているPRBSによるBPSK変調を除去するためのPRBS初期値を自動検出するため、選局のとき中心サブチャンネル番号やPRBS初期値を復調用に設定する必要がなく簡便な選局操作が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1の実施形態のOFDM受信装置の構成を示すブロック図。
【図2】本発明の第2の実施形態のOFDM受信装置の構成を示すブロック図。
【図3】本発明の第3の実施形態のOFDM受信装置の構成を示すブロック図。
【図4】図3における差分誤差検出回路の構成例を示すブロック図。
【図5】セグメントに分割されて連結送信されるOFDM信号を示す図。
【図6】1セグメントの中心サブチャンネル番号0〜41を示す図。
【図7】OFDM伝送方式におけるSP信号の多重例を示す図。
【図8】QPSK変調されたI軸及びQ軸の複素データのコンスタレーション、及び、BPSK変調された複素SP信号のコンスタレーションを示す図。
【図9】SP信号をBPSK変調するために使用するPRBS発生回路のブロック図。
【図10】PRBS発生回路におけるレジスタ初期値の一覧表を示す図。
【符号の説明】
【0051】
102,202,302…FFT回路
103,203,303…等化回路
104,204,304…SP抽出回路
105,205,305…SP時間軸補間回路
106,206,306…BPSK変調除去回路
107,207,307…SP周波数軸補間回路
108…S/N検出回路
109,209,309…PRBS発生回路
110,210,310…判定回路
208…誤り訂正回路
311…微分誤差検出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイロット信号を周波数方向及び時間方向に予め定められた配置パターンで多重して送信し、かつ前記パイロット信号は周波数方向に複数の擬似ランダム符号系列(以下、PRBS)のいずれかでBPSK変調して送信する直交周波数分割多重(以下、OFDM)信号を受信するOFDM受信装置において、
受信信号を高速離散フーリエ変換により周波数領域の信号に変換する高速離散フーリエ変換手段と、
前記高速離散フーリエ変換手段の出力からパイロット信号を抽出するパイロット信号抽出手段と、
選択信号に応じて前記複数のPRBSのいずれかを発生させるPRBS発生手段と、
前記パイロット信号抽出手段の出力を前記PRBS発生手段の出力を用いてBPSK変調除去を行うBPSK変調除去手段と、
このBPSK変調除去手段の出力で前記高速離散フーリエ変換手段の出力を等化し、復調データを得るデータ復調手段と、
前記データ復調手段の出力である復調データの良否に関わる検出信号を得る検出手段と、
前記検出信号を入力し、該検出信号が最良となる判定基準に基づいて、前記複数のPRBSのうち最適なPRBSを選択するための前記選択信号を出力する判定手段とを具備し、
前記判定手段は前記複数のPRBSを試行して前記判定基準を得ることを特徴とするOFDM受信装置。
【請求項2】
前記検出手段は、前記データ復調手段の出力から受信S/Nを検出するS/N検出手段であって、前記S/N検出手段の出力を前記判定基準として受信S/Nが最良となるPRBSを選択することを特徴とする請求項1記載のOFDM受信装置。
【請求項3】
前記データ復調手段の出力を誤り訂正する誤り訂正手段をさらに具備し、
前記検出手段は、前記誤り訂正手段の出力から誤り率を検出する誤り率検出手段であって、前記誤り率検出手段の出力を前記判定基準として誤り率が最良となるPRBSを選択することを特徴とする請求項1記載のOFDM受信装置。
【請求項4】
前記誤り訂正手段は、前記誤り率検出手段を含むことを特徴とする請求項3に記載のOFDM受信装置。
【請求項5】
前記検出手段は、
前記BPSK変調除去手段の出力から周波数方向に隣り合うパイロット信号の差分値を求める差分演算手段と、
この差分演算手段の絶対値を検出する絶対値検出手段と、
前記絶対値検出手段の出力を所定区間積分する積分手段とを具備し、
前記積分手段の出力を前記判定基準として積分手段出力が最小となるPRBSを選択することを特徴とする請求項1記載のOFDM受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−284436(P2009−284436A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−137058(P2008−137058)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(390010308)東芝デジタルメディアエンジニアリング株式会社 (192)
【Fターム(参考)】