説明

OHV型レシプロ式内燃機関

【課題】 OHV型レシプロ式内燃機関において、搭載性向上や振動抑制を図ることを目的とする。
【解決手段】 シリンダ部35及びクランクケース部34を有するシリンダブロック13と、シリンダブロック13に締結されたシリンダヘッド14とを備え、クランクケース部34にクランク軸17を回転自在に支持するとともに、クランク軸17にコンロッド19を介してピストン20を連結し、ピストン20をシリンダ部35内のシリンダ11に摺動自在に嵌挿し、シリンダ部35内のカム室36に、クランク軸心Oと平行にカム軸27を配設し、シリンダヘッド14に、カム軸27の回転により操作されるバルブ24を配設し、シリンダ11の中心軸線Y3を、クランク軸心Oを通りシリンダ中心軸線Y3と平行な縦軸線Y1に対して、反カム軸27側にオフセットする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はOHV型レシプロ式内燃機関に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のOHV型レシプロ式内燃機関として図2に示すものがある。この内燃機関は、上部にシリンダ部135を、下部にクランクケース部134を有するシリンダブロック113を備え、クランクケース部134に水平な軸心Oを有するクランク軸117を回転自在に支持し、クランク軸117にクランクピン118を介してコンロッド119の一端を回転自在に連結し、コンロッド119の他端をピストン120に回転自在に連結し、ピストン120をシリンダ部135内のシリンダ111に摺動自在に嵌挿したものとなっている。
【0003】
また、シリンダ部135内のカム室136には、クランク軸117と平行なカム軸127を配設し、シリンダヘッド114に、吸気及び排気バルブ124を配設し、シリンダブロック113及びシリンダヘッド114等に、カム軸127の回転によりバルブ124を操作する操作機構129を配設している。
【0004】
【特許文献1】特開2003−214160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図2に示す従来のOHV型レシプロ式内燃機関では、クランク軸117の軸心Oを通る上下方向の縦軸心Y1が、クランクケース部134の左右外壁134A,134B間の中心線Y2と一致するようになっている。また、シリンダ111の中心軸線Y3は、前記縦軸心Y1及び前記中心線Y2と一致するようになっている。
【0006】
ところが、シリンダ111の側方にはカム軸127等が配設されているため、シリンダ部135は、クランクケース部134の中心線Y2から右側の外壁135Aまでの距離L1が、左側の外壁135Bまでの距離L2よりも大きくなり、クランクケース部134に対してカム軸127側に偏って配置されるようになっていた。
【0007】
このため、内燃機関の左右の重量バランスが悪くなり、この内燃機関を搭載する装置への搭載性が悪化するとともに、振動も大きくなるという不都合が生じていた。
【0008】
そこで、本発明は、OHV型レシプロ式内燃機関において、搭載性向上や振動抑制を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、シリンダ部35及びクランクケース部34を有するシリンダブロック13と、シリンダブロック13に締結されたシリンダヘッド14とを備え、クランクケース部34にクランク軸17を回転自在に支持するとともに、クランク軸17にコンロッド19を介してピストン20を連結し、ピストン20をシリンダ部35内のシリンダ11に摺動自在に嵌挿し、シリンダ部35内のカム室36に、クランク軸心Oと平行にカム軸27を配設し、シリンダヘッド14に、カム軸27の回転により操作されるバルブ24を配設しているOHV型レシプロ式内燃機関において、シリンダ11の中心軸線Y3が、クランク軸心Oを通りシリンダ中心軸線Y3と平行な縦軸線Y1に対して、反カム軸27側にオフセットされていることを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、クランク軸17の前記縦軸線Y1が、シリンダ部35におけるカム軸27配置側の外壁35Aと反カム軸27配置側の外壁35Bとの間の略中心Y4に配設されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、シリンダ11の中心軸線Y3が、クランク軸17の前記縦軸線Y1に対して、クランク軸17の回転方向Xにオフセットされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1及び請求項2記載の発明によれば、クランクケース部のカム軸側の外壁と反カム軸側の外壁の間の中心に対して、シリンダ部のカム軸側の外壁と反カム軸側の外壁の間の中心を一致させるか又は近づけることができ、これによって、内燃機関の重量バランス良くし、搭載性の向上及び振動の抑制を図ることができる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、ピストン、シリンダの摩擦損失を低減し、動力伝達効率を良くすることができ、また、機関サイクルの膨張行程(ピストンの下降行程)において、ピストンの摺動量に対するクランク軸の回転角を大きくすることができ、動力アップを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本発明の実施形態にかかるOHV型レシプロ式内燃機関の正面断面図であり、この内燃機関10は、シリンダ部35及びクランクケース部34を有するシリンダブロック13を備えている。本実施形態では、シリンダ部35が上側、クランクケース部34が下側に配置されており、シリンダブロック13のシリンダ部35側の端面にはヘッドボルトによりシリンダヘッド14が締結され、クランクケース部34側の端面にはオイルパン15が設けられている。シリンダヘッド14上にはロッカカバー16が設けられている。
【0015】
クランクケース部34には、軸心Oを水平方向に向けたクランク軸17が回転自在に支持されている。このクランク軸17には、クランクピン18を介してコンロッド19の下端部が回転自在に連結され、コンロッド19の上端部にピストン20が回転自在に連結されている。
【0016】
シリンダ部35内には、シリンダライナー21によって円筒形状を呈したシリンダ11が形成されており、このシリンダ11内に、ピストン20が摺動自在に嵌挿されている。シリンダライナー21とシリンダブロック13の外壁との間にはウォータージャケット22が形成されている。シリンダライナー21は、シリンダブロック13と一体に形成されているが、別体のものをシリンダブロック13内に嵌挿するようにしてもよい。
【0017】
なお、本明細書では、クランク軸17の軸心O方向及びシリンダ10の中心軸線Y3方向に直交する方向(図1の左右方向)を左右方向とする。
【0018】
シリンダブロック13は、クランクケース部34が、シリンダ部35よりも左右に幅広で、シリンダ部35から左右両側に膨出した形状となっている。
【0019】
シリンダヘッド14には、吸気ポート及び排気ポート23が形成され、これらを開閉する吸気バルブ及び排気バルブ24が配設されている。これらバルブ24は上端にリテーナ25を有し、このリテーナ25とシリンダヘッド14のとの間にバルブスプリング26が介装され、このバルブスプリング26によってバルブ24が上方に付勢されている。
【0020】
シリンダ部35には、シリンダ11の側方(図1の右側方)に形成されたカム室36に、クランク軸17の軸心Oと平行にカム軸27が配設され、カム軸27には軸心方向に複数のカム28が設けられている。
【0021】
シリンダブロック13、シリンダヘッド14及びロッカカバー16には、カム軸27の回転によりバルブ24を操作する操作機構29が内蔵されている。操作機構29は、シリンダブロック13に上下動自在に支持されたタペット30と、タペット30から上方に延びるプッシュロッド31と、プッシュロッド31の上端に連結されたロッカアーム32とを有している。
【0022】
プッシュロッド31は、シリンダブロック13及びシリンダヘッド14に形成された連通路33に配設され、ロッカアーム32は、ロッカカバー16内に配設されている。また、ロッカアーム32は、一端がプッシュロッド31の上端に連結され、他端がバルブ24の上端に当接され、中間部が軸を介して揺動自在に支持されている。
【0023】
カム軸27は、クランク軸17の回転に伴って回転し、タペット30は、カム軸27の回転によりカム28周面に倣って上下動する。ロッカアーム32は、タペット30の上下動によりプッシュロッド31を介して揺動し、バルブ24を開閉するようになっている。
【0024】
クランク軸17は、その軸心Oを通りシリンダ11の中心軸線Y3と平行な上下方向の縦軸線Y1が、クランクケース部34の右側(カム軸27側)の外壁34Aと左側(反カム軸27側)の外壁34Bの間の中心線Y2と一致するように配置されている。一方、シリンダ11は、側方にカム軸27等が配設されているため、中心軸線Y3が、シリンダ部35の右側の外壁35Aと左側の外壁35Bの間の中心線Y4から反カム軸27側にずれて配置されている。
【0025】
ここで、シリンダ11の中心軸線Y3は、従来技術(図2)では、クランク軸17の縦軸線Y1と一致していたが、本発明では、縦軸心Y1に対して反カム軸27側にずれて(オフセットして)配置されている。
【0026】
このため、シリンダ部35の左右外壁35A,35B間の中心線Y4と、クランクケース部34の左右外壁34A,34B間の中心線Y2とを一致し、クランクケース部34の中心線Y2から、シリンダ部35の左右各外壁35A、35Bまでの距離L1,L2を同じにすることができるようになっている。また、クランク軸17の縦軸線Y1を、シリンダ部35の左右外壁35A,35B間の中心線Y4に一致することができるようになっている。
【0027】
これによって、内燃機関10は、左右の重量バランスが良好となり、振動の発生を抑制できるとともに、内燃機関10が搭載される装置等への搭載性も良好になっている。
【0028】
図1において、矢印Xは、クランク軸17の回転方向を示しており、シリンダ11の中心軸線Y3は、クランク軸17の縦軸心Y1に対して回転方向Xにオフセットされている。図1では、クランク軸17が左回転であるのに対し、シリンダ中心軸線Y3がクランク軸17の縦軸線Y1に対して左側にオフセットされている。このような配置とすることによって、ピストン、シリンダの摩擦損失を低減し、動力伝達効率を良くすることができ、また、機関サイクルの膨張行程(ピストンの下降行程)で、ピストンの摺動量に対するクランク軸の回転角を大きくすることができ、動力アップを図ることができる。
【0029】
なお、本実施形態では、シリンダ11のオフセット量が、コンロッド19の長さの5〜10%とされている。このオフセット量は、クランクケース部34の中心線Y2とシリンダ部35の中心線Y4とを一致させるという点に鑑みれば、シリンダ11の中心軸線Y3からカム軸27側の外壁35Aまでの距離と、反カム軸側の外壁35Bまでの距離との差の半分とするのが好ましい。
【0030】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく適宜設計変更可能である。例えば、クランク軸17の縦軸線Y1、クランク形成部位34の中心線Y2、及びシリンダ部35の中心線Y4は、完全に一致しなくてもよく、内燃機関の重量バランス向上等の効果を奏する程度に略一致(相互に接近)した関係にあればよい。また、シリンダ中心軸線Y3のオフセット方向とクランク軸17の回転方向Xとは、逆方向であってもよい。本発明に係る内燃機関10のシリンダ11は、単気筒であってもよいし、複数気筒であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明に係るOHV型レシプロ式内燃機関は、各種装置、機械等の駆動源として有効に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態に係るOHV型レシプロ式内燃機関10の正面断面図である。
【図2】従来技術に係るOHV型レシプロ式内燃機関10の正面断面図である。
【符号の説明】
【0033】
10 内燃機関
11 シリンダ
12 クランク室
13 シリンダブロック
17 クランク軸
19 コンロッド
20 ピストン
24 バルブ
27 カム軸
34 クランクケース部
35 シリンダ部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ部(35)及びクランクケース部(34)を有するシリンダブロック(13)と、シリンダブロック(13)に締結されたシリンダヘッド(14)とを備え、クランクケース部(34)にクランク軸(17)を回転自在に支持するとともに、クランク軸(17)にコンロッド(19)を介してピストン(20)を連結し、ピストン(20)をシリンダ部(35)内のシリンダ(11)に摺動自在に嵌挿し、シリンダ部(35)内のカム室(36)に、クランク軸心(O)と平行にカム軸(27)を配設し、シリンダヘッド(14)に、カム軸(27)の回転により操作されるバルブ(24)を配設しているOHV型レシプロ式内燃機関において、
シリンダ(11)の中心軸線(Y3)が、クランク軸心(O)を通りシリンダ中心軸線(Y3)と平行な縦軸線(Y1)に対して、反カム軸(27)側にオフセットされていることを特徴とするOHV型レシプロ式内燃機関。
【請求項2】
クランク軸(17)の前記縦軸線(Y1)が、シリンダ部(35)におけるカム軸(27)配置側の外壁(35A)と反カム軸(27)配置側の外壁(35B)との間の略中心(Y4)に配設されていることを特徴とする請求項1に記載のOHV型レシプロ式内燃機関。
【請求項3】
シリンダ(11)の中心軸線(Y3)が、クランク軸(17)の前記縦軸線(Y1)に対して、クランク軸(17)の回転方向(X)にオフセットされていることを特徴とする請求項1又は2に記載のOHV型レシプロ式内燃機関。


【図1】
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【図2】
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