説明

OLEDの電子輸送層

有機発光デバイス(OLED)は、アノードと;カソードと;主要ホストとドーパントを含んでいて、アノードとカソードの間に配置された発光層を備えている。このデバイスは、発光層のカソード側に直接接触して配置されている電子輸送層も備えている。この電子輸送層は、発光層の主要ホストと同じ発色団を持つ電子輸送材料を含んでいて、この電子輸送材料は、この電子輸送層の50体積%を超える割合を占めており、発光層の主要ホストよりも大きな還元電位を持つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光ダイオード(OLED)に関する。より詳細には、本発明は、デバイスのエレクトロルミネッセンス(EL)性能を向上させるため電子輸送層を有するOLEDに関する。
【背景技術】
【0002】
譲受人に譲渡されたアメリカ合衆国特許第4,356,429号にTangによって記載されているOLEDは、長い寿命、高い輝度効率、低い駆動電圧、広い色範囲を有する明るいELの高密度画素ディスプレイを低コストで製造できる可能性があるため商業的に魅力的である。
【0003】
典型的なOLEDは、2つの電極と、これら2つの電極の間に配置された1つの有機ELユニットを備えている。有機ELユニットは、一般に、有機正孔輸送層(HTL)と、有機発光層(LEL)と、有機電子輸送層(ETL)を備えている。一方の電極はアノードであり、ELユニットのHTLに正の電荷(正孔)を注入することができる。他方の電極はカソードであり、ELユニットのETLに負の電荷(電子)を注入することができる。アノードがカソードに対してある正の電位にされると、アノードから注入された正孔とカソードから注入された電子が再結合してLELから光が発生する。電極の少なくとも一方は光を透過させるため、発生した光をその透過性電極を通じて見ることができる。
【0004】
EL性能を向上させるため、適切な材料を選択してOLEDの中にさまざまな層構造を形成する多くの努力がなされてきた。別の層構造を有する多数のOLEDがこれまでに開示されている。例えばHTLとETLの間にLELを含む(HTL/LEL/ETLと表記される)3層OLEDに加え、ELユニットに追加の機能層(例えば正孔注入層(HIL)、電子注入層(EIL)、電子阻止層(EBL)、正孔阻止層(HBL)のいずれか、またはこれらの組み合わせ)を含む他の多層OLEDが存在している。新しい材料を用いた新しいこれらの層構造によって実際にデバイスの性能が向上している。
【0005】
従来技術において、LEL/ETLの界面がOLED(特に青色OLED)のEL性能にとって極めて重要であることが指摘されている。この界面は、輝度効率、駆動電圧、色域、動作寿命に影響を与える。したがってOLEDのLEL/ETLに有効な界面を形成するには、ETLに適切な材料を選択することが重要である。ここでは、ETLは、LELのカソード側に直接接触しているあらゆる層(例えば従来技術でEIL、中間層、HBL、非正孔阻止層と呼ばれているあらゆる層)を意味する(通常のOLEDのLELと直接接触しているどの層も、電子を輸送するという基本的な機能を有するであろう)。
【0006】
ETLで使用する材料は2つのタイプに分類される。一方は、LELにおける主要なホストと同じ材料であり、他方は、LELにおける主要なホストとは異なる材料である。“主要なホスト”という用語は、LELの中で(モル比で)濃度が最も大きいホスト材料を意味する。2種類のホスト材料がLEL中で同じ濃度である場合には、これら2つのホスト材料のうちで電子輸送特性が優れているほうを主要なホストとして選択することが好ましい。例えば従来の緑色OLEDでは、LEL中の主要なホストは、トリス(8-ヒドロキノリン)アルミニウム(Alq)であり、同じ材料がETLでも使用される。従来の青色OLEDでは、LELで用いる主要なホストは、2-(1,1-ジメチルエチル)-9,10-ビス(2-ナフタレニル)アントラセン(TBADN)であり、同じ材料がETLでも使用される(が、アメリカ合衆国特許第6,881,502号に開示されているように、非正孔阻止層と呼ばれる)。この場合にはLELとETLの間に界面はない。その結果、LEL/ETLに関する問題(例えば短い動作寿命、色域の変化)がなくなる。しかしOLEDでこのタイプのETLを用いる場合には、カソードのフェルミ準位とLELのLUMO(最低空軌道)の間に中間エネルギー・ステップが欠けているため、カソードからLELへの電子の注入は容易でない。さらに、HTLからLELに注入される正孔は、正孔阻止効果が欠けているためにLELのHOMO(最高被占軌道)から容易に逃げ出すことができる。したがってこの場合には、実際に応用する上で、OLEDの輝度効率は十分に大きくなく、駆動電圧を十分に低くすることもできない。
【0007】
ETLで用いられる材料がLELの主要なホストとは異なっている別のケースでは、LEL/ETLの界面が存在する。例えばLELの主要なホストとしてTBADNを含み、ETLの材料としてAlqを含む従来の青色OLEDでは、LEL/ETLの界面において、AlqのLUMOとTBADNのLUMOの間に比較的大きな電子注入障壁が存在するため、駆動電圧が大きくなる。この場合には、AlqのLUMOがTBADNのLUMOよりも大きくて輝度効率が低いために正孔阻止効果は存在しない。さらに、Alqの光学的ギャップはLELのドーパントの光学的ギャップよりも小さいために緑色の発光がいくらか混入し、色域が変化する。別の例として、LELの主要なホストとしてTBADNを含み、ETL(またはHBL)の材料として4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(Bphen)を含む青色OLEDでは、正孔阻止効果のために輝度効率が改善され、Bphenのバルク伝導率が向上するために駆動電圧が改善されるが、色域の変化はない。しかしTBADNとBphenの分子構造は似ていないため、効果的な界面の接触を形成しにくい。さらに、BphenのHOMOとTBADNのHOMOの間の電子エネルギーの差は約0.5eVであるという事実により、LEL/ETLの界面に正孔が過剰に蓄積し、この界面における電子-正孔再結合の確率が増大する。その結果、界面が早く劣化し、ETLとしてBphenを含むOLEDの動作寿命が劇的に短くなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
LEL/ETLの界面における上記の問題を解決するには、そしてOLEDのEL性能をさらに向上させるには、OLEDのLEL/ETLの界面を改善する方法を見いだす必要がある。
【0009】
そこで本発明の1つの目的は、OLEDのEL性能を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、
a)アノードと;
b)カソードと;
c)主要ホストとドーパントを含んでいて、上記アノードと上記カソードの間に配置された発光層と;
d)上記発光層のカソード側に直接接触して配置されている電子輸送層とを備えていて、この電子輸送層が、上記発光層の主要ホストと同じ発色団を持つ電子輸送材料を含んでいることと、この電子輸送材料が、この電子輸送層の50体積%を超える割合を占めることと、この電子輸送材料が、上記発光層の主要ホストよりも大きな還元電位を持つことを特徴とする有機発光デバイス(OLED)によって達成される。
【0011】
本発明では、形態的にも電子的にも改善されたLEL/ETLの界面を有するETLを利用する。このETLはLELの主要なホストと同様の材料を含んでいるが、還元電位がLELの主要なホストよりも大きい。本発明の1つの利点は、このETLを含んでいて特に青色の光を出すOLEDの輝度効率、駆動電圧、色域、動作寿命が改善されていることである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
個々の層が薄すぎ、しかもさまざまな層の厚さの違いが大きすぎて実際のスケールで図示できないため、図1〜図8は実際のスケール通りになっていないことがわかるであろう。
【0013】
この明細書では、“同じ発色団”という用語は、同じ分子コア構造にさまざまな置換基が付いた1種類以上の化合物を意味する。例えばアントラセン誘導体のうちで2-(1,1-ジメチルエチル)-9,10-ビス(2-ナフタレニル)アントラセン(TBADN)と9,10-ビス(2-ナフタレニル)アントラセン(AD-N)の両方とも同じアントラセン発色団を有するが、TBADNは追加の置換基を備えている。テトラセン誘導体のうちでルブレンと5,6,11,12-テトラキス(2-ナフチル)テトラセンの両方とも同じテトラセン発色団を有するが、置換基は互いに異なっている。
【0014】
本発明は、たいていのOLEDデバイス構造で使用されている。OLEDデバイス構造には、単一のアノードと単一のカソードを備える非常に単純な構造から、より複雑なデバイス(複数のアノードとカソードが直交アレイをなして画素を形成するパッシブ・マトリックス・ディスプレイや、各画素が例えば薄膜トランジスタ(TFT)で独立に制御されるアクティブ・マトリックス・ディスプレイ)までが含まれる。本発明をうまく実現することのできる有機層の構造が多数ある。本質的に必要とされるのは、アノードと、カソードと、アノードとカソードの間に位置する有機発光ユニットである。
【0015】
図1に、本発明によるOLEDの一実施態様の断面図を示してある。OLED100は、基板110と、アノード120と、HIL130と、HTL140と、LEL150と、ETL160と、EIL170と、カソード180を備えている。(HIL130と、HTL140と、LEL150と、ETL160と、EIL170が、アノード120とカソード180の間に有機ELユニットを形成する。)OLED100は、導電線191を通じて外部の電圧/電流源192に接続されている。OLED100は、電圧/電流源192が発生させる電位を一対の電極、すなわちアノード120とカソード180の間に印加することによって動作する。図2、図3、図4に、それぞれOLED200、OLED300、OLED400が示してあり、これらは本発明に従って製造されるOLEDの他の実施態様のうちのいくつかの例である。図2のOLED200は、OLED200にHIL130がないこと以外はOLED100と同じである。図3のOLED300は、OLED300にEIL170がないこと以外はOLED100と同じである。図4のOLED400は、OLED400にHIL130とEIL170がないこと以外はOLED100と同じである。
【0016】
図5に、本発明による逆転構造を有するOLEDの一実施態様の断面図を示してある。OLED500は、基板110と、カソード180と、EIL170と、ETL160と、LEL150と、HTL140と、HIL130と、アノード120を備えている。OLED500は、導電線191を通じて外部の電圧/電流源192にも接続されている。OLED500は、電圧/電流源192が発生させる電位を一対の電極、すなわちアノード120とカソード180の間に印加することによって動作する。図6、図7、図8に、それぞれOLED600、OLED700、OLED800が示してあり、これらは本発明に従って製造されるOLEDの他の実施態様のうちのいくつかの例である。図6のOLED600は、OLED600にHIL130がないこと以外はOLED500と同じである。図7のOLED700は、OLED700にEIL170がないこと以外はOLED500と同じである。図8のOLED800は、OLED800にHIL130とEIL170がないこと以外はOLED500と同じである。
【0017】
以下に、図1〜図4に示したOLEDの実施態様に関するデバイス構造、材料の選択、製造方法を説明する。
【0018】
基板110は、有機の固体であるか、無機の固体であるか、有機と無機の固体を含んでいるかであり、OLEDを保持する支持背面となる。基板110は堅固であるか可撓性であり、独立した個別の部材(例えばシートやウエハ)として、または連続したロールとして処理される。典型的な基板材料としては、ガラス、プラスチック、金属、セラミック、半導体、金属酸化物、半導体酸化物、半導体窒化物や、これらの組み合わせが挙げられる。基板110は、諸材料の均一な混合物、諸材料の複合体、諸材料の多層体のいずれかである。基板110は、OLEDディスプレイの製造で一般に使用されるTFT回路を含む背面板(例えばアクティブ-マトリックス低温ポリシリコンTFT基板)にすることもできる。基板110は、どの方向に光を出したいかに応じ、透光性にすること、または不透明にすることができる。基板を通じてEL光を見るには光透過特性が望ましい。そのような場合には透明なガラスやプラスチックが一般に用いられる。上部電極を通してEL光を見る用途では、底部支持体の透光特性は重要ではないため、底部支持体は、透光性、光吸収性、光反射性のいずれでもよい。その場合に使用される基板としては、ガラス、プラスチック、半導体材料、セラミック、回路板材料や、OLED(このOLEDは、パッシブ-マトリックス・デバイスまたはアクティブ-マトリックス・デバイスである)の形成に一般に使用される他のあらゆる材料がある。
【0019】
図1、図2、図3、図4では、アノード120は基板110の上に形成される。基板110を通じてEL光を見る場合には、アノードは、興味の対象となる光に対して透明か、実質的に透明である必要がある。上部電極を通してEL光を見る用途では、アノード材料の透光特性は重要ではないため、アノードが透明であるか、不透明であるか、反射性であるかに関係なく、あらゆる導電性材料または半導体材料が使用される。望ましいアノード材料は、適切な任意の方法(例えば蒸着、スパッタリング、化学蒸着、電気化学的手段)で堆積される。アノード材料は、よく知られているフォトリソグラフィ法を利用してパターニングされる。
【0020】
アノード120の形成に使用される材料は、無機材料、有機材料、またはこれらの組み合わせの中から選択される。アノード120は、アルミニウム、銀、金、銅、亜鉛、インジウム、スズ、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、ケイ素、ゲルマニウムの中から選択した元素、またはこれらの組み合わせを含むことができる。アノード120は、化合物材料(例えば導電性化合物や半導体化合物)を含むこともできる。導電性化合物または半導体化合物は、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、亜鉛、インジウム、スズ、ケイ素、ゲルマニウムの酸化物、またはこれらの組み合わせの中から選択される。導電性化合物または半導体化合物は、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、亜鉛、インジウム、スズ、ケイ素、ゲルマニウムの硫化物、またはこれらの組み合わせの中から選択される。導電性化合物または半導体化合物は、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、亜鉛、インジウム、スズ、ケイ素、ゲルマニウムのセレン化物、またはこれらの組み合わせの中から選択される。導電性化合物または半導体化合物は、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、亜鉛、インジウム、スズ、ケイ素、ゲルマニウムのテルル化物、またはこれらの組み合わせの中から選択される。導電性化合物または半導体化合物は、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、亜鉛、インジウム、スズ、ケイ素、ゲルマニウムの窒化物、またはこれらの組み合わせの中から選択される。導電性化合物または半導体化合物は、インジウム-スズ酸化物、スズ酸化物、アルミニウムをドープした亜鉛酸化物、インジウムをドープした亜鉛酸化物、マグネシウム-インジウム酸化物、ニッケル-タングステン酸化物、硫化亜鉛、セレン化亜鉛、窒化ガリウム、またはこれらの組み合わせの中から選択されることが好ましい。
【0021】
必ずしも必要なわけではないが、有機ELユニットにHILを設けると有用であることがしばしばある。OLEDのHIL130は、正孔をアノードからHTLに容易に注入できるようにする機能を持つことができる。そのためOLEDの駆動電圧が低下する。HIL130で使用するのに適した材料としては、アメリカ合衆国特許第4,720,432号に記載されているポルフィリン化合物や、いくつかの芳香族アミン(例えば4,4',4"-トリス[(3-エチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン(m-TDATA))などがある。有機ELデバイスにおいて有用であることが報告されている別の正孔注入材料は、ヨーロッパ特許第0 891 121 A1号と第1 029 909 A1号に記載されている。以下に説明する芳香族第三級アミンも正孔注入材料として有用である可能性がある。他の有用な正孔注入材料(例えばジピラジノ[2,3-f:2',3'-h]キノキサリンヘキサカルボニトリル)が、アメリカ合衆国特許出願公開2004/0113547 A1とアメリカ合衆国特許第6,720,573号に記載されている。さらに、アメリカ合衆国特許第6,423,429号に記載されているように、p型をドープされた有機層もHILにとって有用である。“p型をドープされた有機層”という用語は、ドーピング後にこの層が半導体特性を持ち、この層を流れる電流が実質的に正孔によって担われることを意味する。導電性は、ドーパントからホスト材料に正孔が輸送される結果として電荷移動錯体が形成されることによって生じる。HIL130の厚さは0.1nm〜200nmの範囲であるが、0.5nm〜150nmの範囲が好ましい。
【0022】
HTL140は、少なくとも1種類の正孔輸送化合物(例えば芳香族第三級アミン)を含んでいる。芳香族第三級アミンは、炭素原子(そのうちの少なくとも1つは芳香族環のメンバーである)だけに結合する少なくとも1つの3価窒素原子を含んでいる化合物であると理解されている。芳香族第三級アミンの1つの形態は、アリールアミン(例えばモノアリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ポリマー・アリールアミン)である。モノマー・トリアリールアミンの例は、Klupfelらによってアメリカ合衆国特許第3,180,730号に示されている。1個以上のビニル基で置換された他の適切なトリアリールアミン、および/または少なくとも1つの活性な水素含有基を含む他の適切なトリアリールアミンは、Brantleyらによってアメリカ合衆国特許第3,567,450号と第3,658,520号に開示されている。
【0023】
芳香族第三級アミンのより好ましい1つのクラスは、アメリカ合衆国特許第4,720,432号と第5,061,569号に記載されているように、少なくとも2つの芳香族第三級アミン部分を含むものである。このような化合物としては、構造式(A):
【化1】

で表わされるものがある。ただし、
Q1とQ2は、独立に選択された芳香族第三級アミン部分であり、
Gは、炭素-炭素結合の結合基(例えば、アリーレン基、シクロアルキレン基、アルキレン基など)である。
【0024】
一実施態様では、Q1とQ2の少なくとも一方は、多環式縮合環構造(例えばナフタレン)を含んでいる。Gがアリール基である場合には、Q1とQ2の少なくとも一方は、フェニレン部分、ビフェニレン部分、ナフタレン部分のいずれかであることが好ましい。
【0025】
構造式(A)に合致するとともに2つのトリアリールアミン部分を含むトリアリールアミンの有用な1つのクラスは、構造式(B):
【化2】

で表わされる。ただし、
R1とR2は、それぞれ独立に、水素原子、アリール基、アルキル基のいずれかを表わすか、R1とR2は、合わさって、シクロアルキル基を完成させる原子を表わし;
R3とR4は、それぞれ独立にアリール基を表わし、そのアリール基は、構造式(C):
【化3】

に示したように、ジアリール置換されたアミノ基によって置換されている。ただし、
R5とR6は、独立に、アリール基の中から選択される。一実施態様では、R5とR6のうちの少なくとも一方は、多環式縮合環構造(例えばナフタレン)を含んでいる。
【0026】
芳香族第三級アミン基の別のクラスは、テトラアリールジアミンである。望ましいテトラアリールジアミンとして、構造式(C)に示したように、アリーレン基を通じて結合した2つのジアリールアミノ基が挙げられる。有用なテトラアリールジアミン基としては、一般式(D):
【化4】

で表わされるものがある。ただし、
それぞれのAreは、独立に選択したアリーレン基(例えばフェニレン部分またはアントラセン部分)であり;
nは1〜4の整数であり;
Ar、R7、R8、R9は、独立に選択したアリール基である。
【0027】
典型的な一実施態様では、Ar、R7、R8、R9のうちの少なくとも1つは多環式縮合環構造(例えばナフタレン)である。
【0028】
上記の構造式(A)、(B)、(C)、(D)のさまざまなアルキル部分、アルキレン部分、アリール部分、アリーレン部分は、それぞれ、置換されていてもよい。典型的な置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ハロゲン(例えばフッ化物、塩化物、臭化物)などがある。さまざまなアルキル部分とアルキレン部分は、一般に、1〜約6個の炭素原子を含んでいる。シクロアルキル部分は、3〜約10個の炭素原子を含むことができるが、一般には5個、または6個、または7個の炭素原子を含んでいる(例えばシクロペンチル環構造、シクロヘキシル環構造、シクロヘプチル環構造)。アリール部分とアリーレン部分は、通常は、フェニル部分とフェニレン部分である。
【0029】
HTLは、単一の芳香族第三級アミン化合物で、または芳香族第三級アミン化合物の混合物で形成することができる。特に、トリアリールアミン(例えば構造式(B)を満たすトリアリールアミン)をテトラアリールジアミン(例えば構造式(D)に示したもの)と組み合わせて使用することができる。トリアリールアミンをテトラアリールジアミンと組み合わせて使用する場合には、後者は、トリアリールアミンと電子注入・輸送層の間に位置する層として配置される。芳香族第三級アミンは、正孔注入材料としても有用である。有用な芳香族第三級アミンの代表例としては、以下のものがある。
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)-4-フェニルシクロヘキサン;
1,5-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ナフタレン;
2,6-ビス(ジ-p-トリルアミノ)ナフタレン;
2,6-ビス[ジ-(1-ナフチル)アミノ]ナフタレン;
2,6-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ナフタレン;
2,6-ビス[N,N-ジ(2-ナフチル)アミン]フルオレン;
4-(ジ-p-トリルアミノ)-4'-[4-(ジ-p-トリルアミノ)-スチリル]スチルベン;
4,4'-ビス(ジフェニルアミノ)クアドリフェニル;
4,4"-ビス[N-(1-アントリル)-N-フェニルアミノ]-p-テルフェニル;
4,4'-ビス[N-(1-コロネニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(NPB);
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ビフェニル(TNB);
4,4"-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]-p-テルフェニル;
4,4'-ビス[N-(2-ナフトアセニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(2-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(2-ペリレニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(2-フェナントリル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(2-ピレニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(3-アセナフテニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(TPD);
4,4'-ビス[N-(8-フルオランテニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(9-アントリル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス{N-フェニル-N-[4-(1-ナフチル)-フェニル]アミノ}ビフェニル;
4,4'-ビス[N-フェニル-N-(2-ピレニル)アミノ]ビフェニル;
4,4',4"-トリス[(3-メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン(m-TDATA);
ビス(4-ジメチルアミノ-2-メチルフェニル)-フェニルメタン;
N-フェニルカルバゾール;
N,N'-ビス[4-([1,1'-ビフェニル]-4-イルフェニルアミノ)フェニル]-N,N'-ジ-1-ナフタレニル-[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジアミン;
N,N'-ビス[4-(ジ-1-ナフタレニルアミノ)フェニル]-N,N'-ジ-1-ナフタレニル-[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジアミン;
N,N'-ビス[4-([3-メチルフェニル]フェニルアミノ)フェニル]-N,N'-ジフェニル-[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジアミン;
N,N'-ビス[4-(ジフェニルアミノ)フェニル]-N,N'-ジフェニル-[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジアミン;
N,N'-ジ-1-ナフタレニル-N,N'-ビス[4-(1-ナフタレニルフェニルアミノ)フェニル]-[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジアミン;
N,N'-ジ-1-ナフタレニル-N,N'-ビス[4-(2-ナフタレニルフェニルアミノ)フェニル]-[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジアミン;
N,N,N-トリ(p-トリル)アミン;
N,N,N',N'-テトラ-p-トリル-4,4'-ジアミノビフェニル;
N,N,N',N'-テトラフェニル-4,4'-ジアミノビフェニル;
N,N,N',N'-テトラ-1-ナフチル-4,4'-ジアミノビフェニル;
N,N,N',N'-テトラ-2-ナフチル-4,4'-ジアミノビフェニル;
N,N,N',N'-テトラ(2-ナフチル)-4,4"-ジアミノ-p-テルフェニル。
【0030】
有用な正孔輸送材料の別のクラスとして、ヨーロッパ特許第1 009 041号に記載されている多環式芳香族化合物がある。3つ以上のアミノ基を有する第三級芳香族アミンを使用できる(オリゴマー材料も含む)。さらに、正孔輸送ポリマー材料を使用することができる。それは、例えば、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、コポリマー(例えばポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホネート)(PEDOT/PSSとも呼ばれる))などである。
【0031】
HTL140の厚さは5nm〜200nmの範囲だが、10nm〜150nmの範囲が好ましい。
【0032】
一般に、LEL150は、発光材料または蛍光材料を含んでおり、この領域で電子-正孔対の再結合が起こる結果としてエレクトロルミネッセンスが生じる。LELは単一の材料を含んでいるが、より一般的には、少なくとも1種類の発光材料をドープした少なくとも1種類のホスト材料を含んでいる。LELのホスト材料は、電子輸送材料、または正孔輸送材料、または正孔-電子再結合をサポートする別の単一の材料または組み合わせた材料である。発光材料は、ドーパントと呼ばれることがしばしばある。ドーパントは一般に強い蛍光染料とリン光化合物(例えばWO 98/55561、WO 00/18851、WO 00/57676、WO 00/70655に記載されている遷移金属錯体)の中から選択される。ドーパント材料は、一般に、ホスト材料の0.01〜20体積%の割合で組み込まれる。
【0033】
有用であることが知られているホストおよびドーパントとしては、アメリカ合衆国特許第4,768,292号、第5,141,671号、第5,150,006号、第5,151,629号、第5,405,709号、第5,484,922号、第5,593,788号、第5,645,948号、第5,683,823号、第5,755,999号、第5,928,802号、第5,935,720号、第5,935,721号、第6,020,078号、第6,475,648号、第6,534,199号、第6,661,023号、アメリカ合衆国特許出願公開2002/0127427 A1、2003/0198829 A1、2003/0203234 A1、2003/0224202 A1、2004/0001969 A1に開示されているものなどがある。
【0034】
ホスト材料の1つのクラスとして、8-ヒドロキシキノリン(オキシン)の金属錯体と、エレクトロルミネッセンスをサポートすることのできるそれと同様の誘導体がある。ここで考慮するオキシノイド化合物の例は、一般式(E)を満たすものである。
【0035】
【化5】

ただし、
Mは金属を表わし;
nは1〜4の整数であり;
Zは、各々独立に、縮合した少なくとも2つの芳香族環を有する核を完成させる原子を表わす。
【0036】
有用なホスト材料の別のクラスとして、アメリカ合衆国特許第5,935,721号、第5,972,247号、第6,465,115号、第6,534,199号、第6,713,192号、アメリカ合衆国特許出願公開2002/0048687 A1、2003/0072966 A1、WO 2004/018587に記載されているアントラセンの誘導体などがある。一般的な例として、9,10-ビス(2-ナフタレニル)アントラセン(AD-N)、2-(1,1-ジメチルエチル)-9,10-ビス(2-ナフタレニル)アントラセン(TBADN)などがある。他の例としては、AD-Nのさまざまな誘導体がある。それは、例えば、一般式(F)で表わされるもの:
【化6】

(ただし、
Ar2、Ar9、Ar10は、独立にアリール基を表わし;
v1、v3、v4、v5、v6、v7、v8は、独立に水素または置換基を表わす)と、
一般式(G)で表わされるもの:
【化7】

(ただし、
Ar9、Ar10は、独立にアリール基を表わし;
v1、v2、v3、v4、v5、v6、v7、v8は、独立に水素または置換基を表わす)である。
【0037】
ホスト材料のさらに別のクラスとして、ルブレンとそれ以外のテトラセン誘導体がある。そのいくつかの例は、一般式(H):
【化8】

(ただし、
RaとRbは置換基であり;
nは0〜4の中から選択され;
mは0〜5の中から選択される)で表わされる。
【0038】
ホスト材料の他の有用なクラスとして、アメリカ合衆国特許第5,121,029号に記載されているジスチリルアリーレン誘導体や、ベンズアゾール誘導体(例えば2,2',2"-(1,3,5-フェニレン)トリス[1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール])がある。
【0039】
リン光ドーパントに適したホスト材料は、三重項エキシトンがホスト材料からリン光材料に効率的に移動するように選択する。この移動が起こるためには、リン光材料の励起状態のエネルギーが、ホストの最低三重項状態と基底状態のエネルギー差よりも小さいというのが極めて望ましい条件である。しかしホスト材料のバンドギャップは、OLEDの駆動電圧を許容できないくらい上昇させるほど大きくなるように選択してはならない。適切なホスト材料は、WO 00/70655 A2、WO 01/39234 A2、WO 01/93642 A1、WO 02/074015 A2、WO 02/15645 A1、アメリカ合衆国特許出願公開2002/0117662 A1に記載されている。適切なホスト材料としては、ある種のアリールアミン、トリアゾール、インドール、カルバゾール化合物などがある。望ましいホスト材料の例は、4,4'-N,N'-ジカルバゾール-ビフェニル(CBP)、2,2'-ジメチル-4,4'-(N,N'-ジカルバゾール)ビフェニル、m-(N,N'-ジカルバゾール)ベンゼン、ポリ(N-ビニルカルバゾール)と、これらの誘導体である。
【0040】
望ましいホスト材料は、連続膜を形成することができる。LELは、デバイスの膜の形状、電気的特性、発光効率、動作寿命の改善を目的として、2種類以上のホスト材料を含むことができる。電子輸送材料と正孔輸送材料の混合物が有用なホストであることが知られている。さらに、上に示したホスト材料と正孔輸送材料または電子輸送材料との混合物も適切なホストになる可能性がある。
【0041】
ホストからドーパントにエネルギーを効率的に移動させるための必要条件は、ドーパントのバンドギャップがホストのバンドギャップよりも小さいことである。リン光発光体(三重項励起状態から発光する材料、すなわちいわゆる“三重項発光体”が含まれる)では、ホストから発光材料にエネルギーが移動できるためには、ホストの三重項エネルギー・レベルが十分に高いことも重要である。
【0042】
有用な蛍光ドーパントとして、アントラセン、テトラセン、キサンテン、ペリレン、ルブレン、クマリン、ローダミン、キナクリドンの誘導体、ジシアノメチレンピラン化合物、チオピラン化合物、ポリメチン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、フルオレン誘導体、ペリフランテン誘導体、インデノペリレン誘導体、ビス(アジニル)アミンホウ素化合物、ビス(アジニル)メタンホウ素化合物、ジスチリルベンゼンの誘導体、ジスチリルビフェニルの誘導体、カルボスチリル化合物などが挙げられる。ジスチリルベンゼンの誘導体のうちで特に有用なのは、ジアリールアミノ基で置換されたもの(ジスチリルアミンとしても知られる)である。有用な材料の代表例を以下に示すが、これですべてではない。
【0043】
【化9】

【0044】
【化10】

【0045】
【化11】

【0046】
【化12】

【0047】
【化13】

【0048】
本発明の発光層で使用できる有用なリン光ドーパントの例が記載されているのは、WO 00/57676、WO 00/70655、WO 01/41512 A1、WO 02/15645 A1、WO 02/071813 A1、WO 01/93642 A1、WO 01/39234 A2、WO 02/074015 A2、アメリカ合衆国特許第6,458,475号、第6,573,651号、第6,451,455号、第6,413,656号、第6,515,298号、第6,451,415号、第6,097,147号、アメリカ合衆国特許出願公開2003/0017361 A1、2002/0197511 A1、2003/0072964 A1、2003/0068528 A1、2003/0124381 A1、2003/0059646 A1、2003/0054198 A1、2002/0100906 A1、2003/0068526 A1、2003/0068535 A1、2003/0141809 A1、2003/0040627 A1、2002/0121638 A1、ヨーロッパ特許第1 239 526 A2号、第1 238 981 A2号、第1 244 155 A2号などである。有用なリン光ドーパントは、遷移金属錯体(例えばイリジウム錯体や白金錯体)を含んでいることが好ましい。
【0049】
ホストおよびドーパントは、小さな非ポリマー分子またはポリマー材料である(例えばポリフルオレン、ポリビニルアリーレン(例えばポリ(p-フェニレンビニレン)、PPV))。ポリマーの場合、小分子ドーパントは、ホスト・ポリマーの中に分子として分散させること、またはドーパントを微量成分とコポリマー化してホスト・ポリマーに添加することができる。
【0050】
ELユニットに含まれる1つ以上のLELが広帯域光(例えば白色光)を発生させると有用である場合がある。多数のドーパントを1つ以上の層に添加し、例えば、青色発光材料と黄色発光材料を組み合わせることによって、またはシアン色発光材料と赤色発光材料の組み合わせることによって、または赤色発光材料と緑色発光材料と青色発光材料の組み合わせることによって白色発光OLEDを製造することができる。白色発光デバイスは、例えば、ヨーロッパ特許第1 187 235号、第1 182 244号、アメリカ合衆国特許第5,683,823号、第5,503,910号、第5,405,709号、第5,283,182号、第6,627,333号、第6,696,177号、第6,720,092号、アメリカ合衆国特許出願公開2002/0186214 A1、2002/0025419 A1、2004/0009367 A1に記載されている。これらの系の中には、1つの発光層のためのホストが正孔輸送材料であるものがある。例えば、ドーパントをHTL140に添加することによってHTL140をホストとして機能させうることが従来技術で知られている。各LELの厚さは5nm〜50nmの範囲だが、10nm〜40nmの範囲が好ましい。
【0051】
ETL160は本発明に独自の層であり、ETL160の材料は、LEL150の主要ホストと同じ発色団になるように選択する。
【0052】
LEL150の主要なホストが金属キレート化オキシノイド化合物である場合には、ETL160で使用される材料は、さまざまな金属キレート化オキシノイド化合物(例えばオキシンそのもの(一般に8-キノリノールまたは8-ヒドロキシキノリンとも呼ばれる)のキレート)の中から選択される。ここで考慮するオキシノイド化合物の例は、一般式(E)を満たすものである。
【0053】
【化14】

ただし、
Mは金属を表わし;
nは1〜4の整数であり;
Zは、各々独立に、縮合した少なくとも2つの芳香族環を有する核を完成させる原子を表わす。
【0054】
ETL160で使用する有用なキレート化オキシノイド化合物の代表例としては、以下のものがある。
CO-1:アルミニウムトリスオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)]
CO-2:マグネシウムビスオキシン[別名、ビス(8-キノリノラト)マグネシウム(II)]
CO-3:ビス[ベンゾ{f}-8-キノリノラト]亜鉛(II)
CO-4:ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)-μ-オキソ-ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)
CO-5:インジウムトリスオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)インジウム]
CO-6:アルミニウムトリス(5-メチルオキシン)[別名、トリス(5-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)]
CO-7:リチウムオキシン[別名、(8-キノリノラト)リチウム(I)]
CO-8:ガリウムオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)ガリウム(III)]
CO-9:ジルコニウムオキシン[別名、テトラ(8-キノリノラト)ジルコニウム(IV)]
【0055】
LEL150の主要ホストがアントラセン誘導体である場合には、ETL160で使用する材料は、さまざまなアントラセン誘導体の中から選択する。例として、A-DNの誘導体、(9-ナフチル-10-フェニル)アントラセンの誘導体などがある。それは、一般式(F)で表わされる誘導体:
【化15】

(ただし、
Ar2、Ar9、Ar10は、独立にアリール基を表わし;
v1、v3、v4、v5、v6、v7、v8は、独立に水素または置換基を表わす)や、
一般式(G)で表わされる誘導体:
【化16】

(ただし
Ar9、Ar10は、独立にアリール基を表わし;
v1、v2、v3、v4、v5、v6、v7、v8は、独立に水素または置換基を表わす)などである。
【0056】
“置換基”という用語は、水素以外のあらゆる基または原子を意味する。特に断わらない限り、1つの置換基(その中には化合物または錯体が含まれる)が置換可能な1つの水素を含んでいるとすると、その中には置換されていない形態が含まれるだけでなく、この明細書に記載した任意の1個または複数の置換基でさらに置換された形態も、デバイスが機能する上で必要な性質を失わせない限りは含まれるものとする。置換基は、ハロゲンにすること、または1個の原子(炭素、ケイ素、酸素、窒素、リン、イオウ、セレン、ホウ素)によって分子の残部と結合させることが好ましい。置換基としては、例えば、ハロゲン(クロロ、ブロモ、フルオロなど);ニトロ;ヒドロキシル;シアノ;カルボキシルや;さらに置換されていてもよい基が可能である。さらに置換されていてもよい基としては、アルキル(直鎖アルキル、分岐鎖アルキル、環式アルキルが含まれ、例えばメチル、トリフルオロメチル、エチル、t-ブチル、3-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)プロピル、テトラデシルなどがある);アルケニル(例えばエチレン、2-ブテン);アルコキシ(例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、2-メトキシエトキシ、s-ブトキシ、ヘキシルオキシ、2-エチルヘキシルオキシ、テトラデシルオキシ、2-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)エトキシ、2-ドデシルオキシエトキシ);アリール(例えばフェニル、4-t-ブチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル、ナフチル);アリールオキシ(例えばフェノキシ、2-メチルフェノキシ、α-ナフチルオキシ、β-ナフチルオキシ、4-トリルオキシ);カーボンアミド(例えばアセトアミド、ベンズアミド、ブチルアミド、テトラデカンアミド、α-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)アセトアミド、α-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)ブチルアミド、α-(3-ペンタデシルフェノキシ)-ヘキサンアミド、α-(4-ヒドロキシ-3-t-ブチルフェノキシ)-テトラデカンアミド、2-オキソ-ピロリジン-1-イル、2-オキソ-5-テトラデシルピロリン-1-イル、N-メチルテトラデカンアミド、N-スクシンイミド、N-フタルイミド、2,5-ジオキソ-1-オキサゾリジニル、3-ドデシル-2,5-ジオキソ-1-イミダゾリル、N-アセチル-N-ドデシルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、ベンジルオキシカルボニルアミノ、ヘキサデシルオキシカルボニルアミノ、2,4-ジ-t-ブチルフェノキシカルボニルアミノ、フェニルカルボニルアミノ、2,5-(ジ-t-ペンチルフェニル)カルボニルアミノ、p-ドデシル-フェニルカルボニルアミノ、p-トリルカルボニルアミノ、N-メチルウレイド、N,N-ジメチルウレイド、N-メチル-N-ドデシルウレイド、N-ヘキサデシルウレイド、N,N-ジオクタデシルウレイド、N,N-ジオクチル-N'-エチルウレイド、N-フェニルウレイド、N,N-ジフェニルウレイド、N-フェニル-N-p-トリルウレイド、N-(m-ヘキサデシルフェニル)ウレイド、N,N-(2,5-ジ-t-ペンチルフェニル)-N'-エチルウレイド、t-ブチルカーボンアミド);スルホンアミド(例えばメチルスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、p-トリルスルホンアミド、p-ドデシルベンゼンスルホンアミド、N-メチルテトラデシルスルホンアミド、N,N-ジプロピルスルファモイルアミノ、ヘキサデシルスルホンアミド);スルファモイル(例えばN-メチルスルファモイル、N-エチルスルファモイル、N,N-ジプロピルスルファモイル、N-ヘキサデシルスルファモイル、N,N-ジメチルスルファモイル、N-[3-(ドデシルオキシ)プロピル]スルファモイル、N-[4-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)ブチル]スルファモイル、N-メチル-N-テトラデシルスルファモイル、N-ドデシルスルファモイル);カルバモイル(例えばN-メチルカルバモイル、N,N-ジブチルカルバモイル、N-オクタデシルカルバモイル、N-[4-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)ブチル]カルバモイル、N-メチル-N-テトラデシルカルバモイル、N,N-ジオクチルカルバモイル);アシル(例えばアセチル、(2,4-ジ-t-アミルフェノキシ)アセチル、フェノキシカルボニル、p-ドデシルオキシフェノキシカルボニル、メトキシカルボニル、ブトキシカルボニル、テトラデシルオキシカルボニル、エトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、3-ペンタデシルオキシカルボニル、ドデシルオキシカルボニル);スルホニル(例えばメトキシスルホニル、オクチルオキシスルホニル、テトラデシルオキシスルホニル、2-エチルヘキシルオキシスルホニル、フェノキシスルホニル、2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシスルホニル、メチルスルホニル、オクチルスルホニル、2-エチルヘキシルスルホニル、ドデシルスルホニル、ヘキサデシルスルホニル、フェニルスルホニル、4-ノニルフェニルスルホニル、p-トリルスルホニル);スルホニルオキシ(例えばドデシルスルホニルオキシ、ヘキサデシルスルホニルオキシ);スルフィニル(例えばメチルスルフィニル、オクチルスルフィニル、2-エチルヘキシルスルフィニル、ドデシルスルフィニル、ヘキサデシルスルフィニル、フェニルスルフィニル、4-ノニルフェニルスルフィニル、p-トリルスルフィニル);チオ(例えばエチルチオ、オクチルチオ、ベンジルチオ、テトラデシルチオ、2-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)エチルチオ、フェニルチオ、2-ブトキシ-5-t-オクチルフェニルチオ、p-トリルチオ);アシルオキシ(例えばアセチルオキシ、ベンゾイルオキシ、オクタデカノイルオキシ、p-ドデシルアミドベンゾイルオキシ、N-フェニルカルバモイルオキシ、N-エチルカルバモイルオキシ、シクロヘキシルカルボニルオキシ);アミン(例えばフェニルアニリノ、2-クロロアニリノ、ジエチルアミン、ドデシルアミン);イミノ(例えば1(N-フェニルイミド)エチル、N-スクシンイミド、3-ベンジルヒダントイニル);ホスフェート(例えばジメチルホスフェート、エチルブチルホスフェート);ホスフィト(例えばジエチルホスフィト、ジヘキシルホスフィト);複素環基、複素環オキシ基、複素環チオ基(どの基も置換されていてよく、炭素原子と少なくとも1個のヘテロ原子(酸素、窒素、イオウ、リン、ホウ素からなるグループの中から選択する)からなる3〜7員の複素環を含んでいる。2-フリル、2-チエニル、2-ベンゾイミダゾリルオキシ、2-ベンゾチアゾリルなどが例として挙げられる);第四級アンモニウム(例えばトリエチルアンモニウム);第四級ホスホニウム(例えばトリフェニルホスホニウム);シリルオキシ(例えばトリメチルシリルオキシ)がある。
【0057】
望むのであれば、置換基それ自体がさらに上記の置換基で1回以上置換されていてもよい。使用する具体的な置換基は、当業者が、特定の用途にとって望ましい性質が実現されるように選択することができ、例えば、電子求引基、電子供与基、立体基などが挙げられる。1つの分子が2つ以上の置換基を持てる場合には、特に断わらない限り、その置換基を互いに結合させて環(例えば縮合環)を形成することができる。一般に、上記の基と、その基に対する置換基は、48個までの炭素原子(一般には1〜36個であり、通常は24個未満である)を含むことができるが、選択した具体的な置換基が何であるかにより、それよりも多くすることも可能である。
【0058】
このクラスのETL材料のより特別な例は、以下のように表わされる。
【0059】
【化17】

【0060】
【化18】

【0061】
【化19】

【0062】
【化20】

【0063】
【化21】

【0064】
【化22】

【0065】
【化23】

【0066】
【化24】

【0067】
【化25】

【0068】
【化26】

【0069】
LEL150の主要ホストがテトラセン誘導体である場合には、ETL160で使用する材料は、さまざまなテトラセン誘導体の中から選択する。そのうちのいくつかは、一般式(H):
【化27】

(ただし、
RaとRbは置換基であり;
nは0〜4の中から選択され;
mは0〜5の中から選択される)で表わされる。
【0070】
より特別な例は、以下のように表わされる。
【0071】
【化28】

【0072】
【化29】

【0073】
【化30】

【0074】
LEL150の主要ホストが他の材料(例えばアメリカ合衆国特許第5,121,029号に記載されているジスチリルアリーレン誘導体や、ベンズアゾール誘導体)である場合には、ETL160で使用する材料は、その条件に合うようにさまざまなジスチリルアリーレン誘導体やさまざまなベンズアゾール誘導体の中から選択する。
【0075】
隣り合った層のそれぞれで使用する2つの材料が非常に似ていると、両者が接触する界面における劇的な変化を避けられるため、界面の接触が改善される。したがってOLEDの動作安定性が向上することが予想される。
【0076】
本発明では、ETL160で使用する材料は、上に説明したLEL150の主要ホストと同じ発色団を持つだけでなく、LEL150の主要ホストよりも大きな還元電位を持つように選択する。LEL150の主要ホストよりも大きな還元電位というのは、LEL150の主要ホストよりも(真空のエネルギー・レベルと比べた)LUMOの位置が低いことも意味する。この場合には、ETL160のLUMOとカソード180のフェルミ準位の中間のエネルギー・レベルが発生する。言い換えるならば、カソード180とLEL150の間の電子注入障壁は、ETL160を挿入すると、その障壁がより小さな2つの障壁に分割されることによって実際に低くなる。その結果、電子はカソード180からETL160により容易に注入され、次いでETL160からLEL150に注入される。ETL160のLUMOとLEL150のLUMOの差が0.3eV未満であること、またはETL160の還元電位とLEL150の還元電位の差が0.3V未満であることが好ましい。
【0077】
輝度効率を向上させるには、正孔がETL160に逃げ込むのを阻止する小さな障壁を作ることが望ましいが、必ずそうしなければならないわけではない。したがってETL160の材料のHOMO(またはイオン化ポテンシャル)は、LEL150のホスト材料のHOMOよりも小さい。その差は、0.3eV以内であることが好ましい。言い換えるならば、ETL160の材料の酸化ポテンシャルは、LEL150のホスト材料の酸化ポテンシャルよりも大きく、その差は0.3V以内であることが好ましい。酸化ポテンシャル差が0.3Vよりも大きい場合には、HBLと同様、動作寿命にマイナスの影響をもたらすであろう。
【0078】
“還元電位”という用語(単位はボルトであり、E還元と略記する)は、ある物質の電子に対する親和性の指標である。値が大きい(よりプラスである)ほど親和性も大きい。ある物質の還元電位は、サイクリック・ボルタンメトリー(CV)によって容易に得られ、SCEを基準にして測定される。ある物質の還元電位の測定は以下のようにしてなされる。電気化学分析装置(例えばCHインスツルメンツ社、オースチン、テキサス州が製造したCHI660電気化学分析装置)を使用して電気化学的を行なう。CVとオスターヤング矩形波ボルタンメトリー(SWV)の両方を利用してその物質の酸化還元特性を明らかにする。ガラス状炭素(GC)からなるディスク電極(A=0.071cm2)を作用電極として使用する。GC電極は、0.05μmのアルミナ・スラリーで研磨した後、脱イオン水の中で超音波洗浄し、次いでアセトンを用いてリンスし、再び脱イオン水の中で超音波洗浄する。電極を最終的にクリーンにして電気化学的処理によって活性化した後、使用する。白金ワイヤーを補助電極として用い、SCEを準参照電極として用いて標準的な3電極電気化学的セルを完成させる。アセトニトリルとトルエンの混合物(1:1 MeCN/トルエン)または塩化メチレン(MeCl2)を有機溶媒系として用いる。使用するどの溶媒も、含水量が極めて少ないグレードである(水が10ppm未満)。サポート用電解質であるテトラフルオロホウ酸テトラブチルアンモニウム(TBAF)をイソプロパノールの中で2回再結晶させ、真空下で3日間にわたって乾燥させる。フェロセン(Fc)を内標準(1:1 MeCN/トルエンの中ではSCEを基準にしてE還元Fc=0.50V;MeCl2、0.1MのTBAFの中ではSCEを基準にしてE還元Fc=0.55V:どちらの値もフェロセニウム・ラジカル・アニオンの還元に関する)として使用する。テスト溶液を高純度窒素ガスで約15分間にわたってパージして酸素を除去し、実験中は窒素ブランケットが溶液の上部に被さった状態を維持する。すべての測定を25±1℃という周囲温度で実施する。興味の対象である化合物の溶解度が不十分である場合には、当業者が他の溶媒を選択して使用する。あるいは適切な溶媒系を決められない場合には、電子受容材料を電極の上に堆積させ、その変化させた電極の還元電位を測定する。
【0079】
同様に、“酸化電位”という用語(単位はボルトであり、E酸化と略記する)は、ある物質から電子を失わせる能力の指標である。値が大きいほど電子を失わせることが難しい。ある物質の酸化電位も、上に説明したCVによって容易に得られる。
【0080】
ETL160の材料とLEL150のホスト材料で発色団が同じであるというのは、これら2つの材料のエネルギー・バンドギャップが似た値であることも意味する。エネルギー・バンドギャップは、ある材料の還元電位と酸化電位の差に1電子単位を掛けたエネルギー、またはその材料のLUMOとHOMOのエネルギー差として定義される。例えばETL160の材料としての分子F-3は、OLEDのLEL150の主要ホストであるTBADNと同じアントラセン発色団を有する。分子F-3のエネルギー・バンドギャップは約3.06eVであり、TBADNのエネルギー・バンドギャップは約3.16eVであるため、互いに似た値である。ETL160とLEL150のエネルギー・バンドギャップは似ているため、エキシトンが拡散してこの層に入ることがあれば、ETL160から似た色の光が出るであろう。
【0081】
電子輸送特性と電子注入特性をさらに改善するため、2種類以上の材料を用いてETL160を形成する。そのうちの1つはLEL150の主要ホストと同様にこのETL(ETL160)の50体積%超を占め、それ以外は、OLEDのEL性能が改善される限り他のタイプの材料である。ETL160は、仕事関数が4.0eV未満のドーパントも含むことができる。ETL160のドーパントとしては、アルカリ金属、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属化合物などがある。ETL160のドーパントは、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、La、Ce、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ybを含むことが好ましい。ETL160に含まれるドーパントの濃度は、ETLの0.01体積%〜20体積%の範囲である。ETL160の厚さは1nm〜70nmの範囲だが、2nm〜20nmであることが好ましい。
【0082】
EIL170は、ホスト材料としての少なくとも1種類の電子輸送材料と、少なくとも1種類のn型ドーパントとを含むn型をドープされた層である。ドーパントは、電荷の移動によって有機ホスト材料を還元することができる。“n型をドープされた層”という用語は、この層がドーピング後に半導体特性を持つことを意味し、この層を流れる電流は実質的に電子によって運ばれる。
【0083】
EIL170のホスト材料は、電子の注入と輸送をサポートできる電子輸送材料である。
【0084】
EIL170のホスト材料は、一般式(E)で表わされるオキシノイド化合物の中から選択される。
【0085】
【化31】

ただし、
Mは金属を表わし;
nは1〜4の整数であり;
Zは、各々独立に、縮合した少なくとも2つの芳香族環を有する核を完成させる原子を表わす。
【0086】
EIL170で使用される有用なキレート化オキシノイド化合物の代表例は、ETL160で言及したCO-1〜CO-9である。
【0087】
EIL170のホスト材料は、一般式(H)で表わされる化合物の中から選択される。
【0088】
【化32】

(ただし、
RaとRbは置換基であり;
nは0〜4の中から選択され;
mは0〜5の中から選択される)で表わされる。
【0089】
EIL170のホスト材料は、一般式(I)で表わされる化合物の中から選択される。
【0090】
【化33】

(ただし、
R1〜R8は、独立に、水素、アルキル、アリール、置換されたアリールであり、R1〜R8の少なくとも1つは、アリールまたは置換されたアリールである。適切な電子輸送材料は、2つのフェナントロリン環基を含むことができる。
【0091】
EIL170のホスト材料は、一般式(J)で表わされる化合物の中から選択される。
【0092】
【化34】

(ただし、
R1〜R4は、独立に、水素、アルキル、アリール、ヘテロアリールであり;
XとYは、独立に、水素、アルキル、アリール、ヘテロアリールであり、互いに結合して飽和環または不飽和環を形成することができる)。R1とR4の両方とも、1個の窒素原子を含む5員または6員の環を備えることが好ましい。
【0093】
EIL170のホスト材料は、一般式(K)で表わされる化合物の中から選択される。
【0094】
【化35】

(ただし、
R2は電子供与基を表わし;
R3とR4は、それぞれ独立に、水素または電子供与基を表わし;
R5、R6、R7は、それぞれ独立に、水素または電子受容基を表わし;
Lは、酸素によってアルミニウムに結合された芳香族部分であり、置換されてLが7〜24個の炭素原子を持つようになっていてもよい)
【0095】
EIL170のホスト材料は、一般式(M)で表わされる化合物の中から選択される。
【0096】
【化36】

ただし、
nは3〜8の整数であり;
Zは、O、NR、Sのいずれかであり;
RとR'は、独立に、水素;炭素原子が1〜24個のアルキル(例えばプロピル、t-ブチル、ヘプチルなど);炭素原子が5〜20個のアリールまたはヘテロ原子で置換されたアリール(例えばフェニル、ナフチル、フリル、チエニル、ピリジル、キノリニルや、他の複素環系);ハロ(例えばクロロ、フルオロ);縮合芳香族環を完成させるのに必要な原子のいずれかであり;
Lは、アルキル、アリール、置換されたアルキル、置換されたアリールを含んでいて複数のベンズアゾールを共役または非共役に結合させる結合単位である。
【0097】
有用なベンズアゾールの一例は、2,2',2"-(1,3,5-フェニレン)トリス[1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール]である。
【0098】
EIL170で用いるのが好ましい材料として、金属キレート化オキシノイド化合物、Tangによってアメリカ合衆国特許第4,356,429号に開示されているさまざまなブタジエン誘導体、VanSlykeらによってアメリカ合衆国特許第4,539,507号に開示されているさまざまな複素環蛍光剤、トリアジン、ベンズアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体などがある。シロール誘導体(例えば2,5-ビス(2',2"-ビピリジン-6-イル)-1,1-ジメチル-3,4-ジフェニルシラシクロペンタジエン)もEIL170において有用である。上記の材料の組み合わせも、n型をドープされたEIL170を形成するのに役立つ。より好ましいのは、n型をドープされたEIL170のホスト材料が、トリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq)、4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(Bphen)、2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(BCP)、2,2'-[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジイルビス[4,6-(p-トリル)-1,3,5-トリアジン](TRAZ)、ルブレン、またはこれらの組み合わせを含んでいることである。
【0099】
n型をドープされたEIL170のn型ドーパントの選択は、アルカリ金属、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属化合物、またはこれらの組み合わせの中から行なう。“金属化合物”という用語には、有機金属錯体、金属-有機塩、無機塩、酸化物、ハロゲン化物が含まれる。金属含有n型ドーパントのクラスのうちで、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、La、Ce、Sm、Eu、Tb、Dy、Ybとその化合物が特に有用である。n型をドープされたEIL170のn型ドーパントとして用いられる材料には、強い電子供与特性を持つ有機還元剤も含まれる。“強い電子供与特性”とは、有機ドーパントがホストに少なくともいくつかの電荷を与えてホストとの電荷移動錯体を形成できねばならないことを意味する。有機分子の例として、ビス(エチレンジチオ)-テトラチアフルバレン(BEDT-TTF)、テトラチアフルバレン(TTF)などや、その誘導体がある。ホストがポリマーである場合には、ドーパントは、上記の任意のもの、または少量成分の分子としてホストに分散させるかホストと共重合させた材料である。n型をドープされたEIL170のn型ドーパントは、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、La、Ce、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Yb、またはこれらの組み合わせを含んでいることが好ましい。n型ドーパントの濃度は、この層の0.01〜20体積%の範囲であることが好ましい。n型をドープされたEIL170の厚さは、一般に200nm未満であるが、150nm未満の範囲であることが好ましい。
【0100】
OLEDの有機ELユニットの各層(HIL130、HTL140、LEL150、ETL160、EIL170)は、小分子(または非ポリマー)材料(蛍光材料とリン光材料も含む)、ポリマーLED材料、無機材料、またはこれらの組み合わせで形成される。
【0101】
OLEDの上記有機材料は、気相法(例えば蒸着)でうまく堆積させることができるが、流体(例えば溶媒。場合によっては結合剤も用いて膜の形成を改善する)から堆積させることもできる。材料がポリマーである場合には、溶媒堆積が有用だが、他の方法(例えばスパッタリングや、ドナー・シートからの熱転写)も利用される。蒸着によって堆積させる材料は、タンタル材料からなることの多い蒸発用“ボート”から気化させること(例えばアメリカ合衆国特許第6,237,529号に記載されている)や、まず最初にドナー・シートにコーティングし、次いで基板のより近くで昇華させることができる。混合材料からなる層では、別々の蒸発用ボートを用いること、または材料をあらかじめ混合し、単一のボートまたはドナー・シートからコーティングすることができる。フル・カラー・ディスプレイでは、LELの画素化が必要となる可能性がある。LELのこの画素化された堆積は、シャドウ・マスク、一体化シャドウ・マスク(アメリカ合衆国特許第5,294,870号)、ドナー・シートからの空間的に限定された染料熱転写(アメリカ合衆国特許第5,688,551号、第5,851,709号、第6,066,357号)、インクジェット法(アメリカ合衆国特許第6,066,357号)を利用して実現される。
【0102】
アノードだけを通して発光を見る場合には、カソード180は、ほぼ任意の導電性材料を含むことができる。望ましい材料は優れたフィルム形成特性を有するため、下にある有機層との接触がよくなり、低電圧で電子の注入が促進され、優れた安定性を得ることができる。有用なカソード材料は、仕事関数が小さな(4.0eV未満)金属または合金を含んでいることがしばしばある。好ましい1つのカソード材料は、アメリカ合衆国特許第4,885,221号に記載されているMg:Ag合金である。適切なカソード材料の別のクラスとして、有機層(例えば有機のEILまたはETL)に接する薄い無機EIL層の上により厚い導電性金属層が載った二層がある。そのとき無機EILは、仕事関数が小さな金属または金属塩を含んでいることが好ましく、その場合には、より厚い被覆層は仕事関数が小さい必要はない。このような1つのカソードは、アメリカ合衆国特許第5,677,572号に記載されているように、LiFからなる薄い層と、その上に載るより厚いAl層である。他の有用なカソード材料としては、アメリカ合衆国特許第5,059,961号、第5,059,862号、第6,140,763号に開示されているものがあるが、これだけに限定されるわけではない。
【0103】
カソードを通して発光を見る場合、カソード180は、透明であるか、ほぼ透明である必要がある。このような用途のためには、金属が薄いか、透明な導電性酸化物を使用するか、このような材料を含んでいる必要がある。光学的に透明なカソードは、アメリカ合衆国特許第4,885,211号、第5,247,190号、第5,703,436号、第5,608,287号、第5,837,391号、第5,677,572号、第5,776,622号、第5,776,623号、第5,714,838号、第5,969,474号、第5,739,545号、第5,981,306号、第6,137,223号、第6,140,763号、第6,172,459号、第6,278,236号、第6,284,393号、ヨーロッパ特許第1 076 368号に、より詳細に記載されている。カソード材料は、一般に、蒸着、電子ビーム蒸着、イオン・スパッタリング、化学蒸着によって堆積させることができる。必要な場合には、よく知られた多数の方法でパターニングすることができる。方法としては、例えば、スルー・マスク蒸着、アメリカ合衆国特許第5,276,380号とヨーロッパ特許第0 732 868号に記載されている一体化シャドウ・マスキング、レーザー除去、選択的化学蒸着などがある。
【0104】
本発明による図5〜図8に示したOLEDのデバイス構造と材料の選択に関する説明は、図1〜図4に基づいて上に説明したのと同じである。唯一の大きな違いは、層を製造する順番が図5〜図8では異なっていることである。その結果、図5〜図8に示したデバイスではカソード180が最初に堆積されて基板110に接触する。
【0105】
たいていのOLEDデバイスは、水分と酸素の一方または両方に敏感であるため、一般に不活性雰囲気(例えば窒素やアルゴン)中で、乾燥剤(例えばアルミナ、ボーキサイト、硫酸カルシウム、粘土、シリカゲル、ゼオライト、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、硫酸塩、ハロゲン化金属、過塩素酸塩)とともに密封される。封入と乾燥のための方法としては、アメリカ合衆国特許第6,226,890号に記載されている方法などがある。さらに、障壁層(例えばSiOx、テフロン(登録商標)、交互にした無機層/ポリマー層)が、封止のための方法として知られている。
【0106】
本発明に従って製造した上記のOLEDはさまざまな用途で役に立つ。OLEDディスプレイまたは他のエレクトロニクス・デバイスは、上記のようなOLEDデバイスを複数個含むことができる。
【実施例】
【0107】
以下の実施例は、本発明をよりよく理解するために提示する。以下の実施例では、材料の還元電位は、電気化学分析装置(例えばCHインスツルメンツ社、オースチン、テキサス州が製造したCHI660電気化学分析装置)を用いてすでに説明した方法で測定した。OLEDを製造している間、有機層の厚さとドーパントの濃度を制御し、較正された厚さ計(インフィコン社、シラキュース、ニューヨーク州が製造したINFICON IC/5堆積制御装置)を用いてその場で測定した。製造した全デバイスのEL特性は、定電流源(キースリー・インスツルメンツ社、クリーヴランド、オハイオ州が製造したKEITHLEY 2400ソースメーター)と光度計(フォト・リサーチ社、チャッツワース、カリフォルニア州が製造したPHOTO RESEARCHスペクトラスキャンPR 650)を室温で用いて評価した。色は、国際照明委員会(CIE)座標を用いて記述した。デバイスの動作安定性は、デバイスに20nA/cm2の電流を流して70℃でテストした。
【0108】
例1
(比較例)
【0109】
従来のOLEDを以下のようにして製造する。透明なITO導電層でコーティングした厚さ約1.1mmのガラス基板を市販のガラス磨きツールを用いてクリーンにして乾燥させた。ITOの厚さは約42nmであり、ITOの面抵抗は約68Ω/□である。次にITOの表面を酸化性プラズマで処理してその表面をアノードにした。RFプラズマ処理チェンバーの中でCHF3ガスを分解することにより、アノード緩衝層として厚さ1nmのCFx層をクリーンなITOの表面に堆積させた。次に基板を真空蒸着チェンバーに移し、基板の上に他のすべての層を堆積させた。約10-6トルという真空下で加熱したボートから蒸発させることにより、以下の層を以下の順番で堆積させた。
【0110】
1.ELユニット:
a)4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)を含む厚さ90nmのHTL;
b)1.5体積%の2,5,8,11-テトラ-t-ブチルペリレン(TBP)がドープされたTBADNホスト材料を含む厚さ20nmのLEL;
c)Alqを含む厚さ10nmのETL;
d)約1.2体積%のリチウムをドープされたAlqを含む厚さ25nmのEIL。
【0111】
2.カソード:厚さが約210nmで、(約95体積%のMgと5体積%のAgを同時に気化させることによって形成した)Mg:Agを含む。
【0112】
これらの層を堆積させた後、デバイスを蒸着チェンバーからドライ・ボックス(VACバキューム・アトモスフェア社、ホーソーン、カリフォルニア州が製造)に移して封入した。このOLEDの発光面積は10mm2である。
【0113】
この従来のOLEDは、20mA/cm2を流すのに約5.5Vの駆動電圧を必要とする。このテスト条件では、デバイスは輝度が585cd/m2、輝度効率が約2.9cd/Aである。その色座標は、CIEx=0.139、CIEy=0.210であり、発光のピークは464nmの位置にある。動作安定性は、T80(70℃、20mA/cm2)(すなわち70℃かつ20mA/cm2で動作させた後に輝度が初期値の80%に低下するまでの時間)として測定した。T80(70℃、20mA/cm2)は約140時間である。EL性能に関するデータを表1にまとめてある。70℃かつ20mA/cm2でテストした正規化した輝度と動作時間の関係を図9に示してあり、正規化したELスペクトルを図10に示してある。
【0114】
これは従来のデバイスである。LELとETLに含まれる材料が分子構造に関して互いに異なっていることが明らかである。図10に示したように、ETLは、全スペクトルに対して緑色発光にわずかに寄与する。
【0115】
例2
(比較例)
【0116】
別のOLEDを例1と同様にして構成したが、層cとdを以下のように変えた点が異なっている。
c)Bphenを含む厚さ10nmのETL;
d)約1.2体積%のリチウムをドープされたBphenを含む厚さ25nmのEIL。
【0117】
このOLEDは、20mA/cm2を流すのに約4.1Vの駆動電圧を必要とする。このテスト条件では、デバイスは輝度が633cd/m2、輝度効率が約3.2cd/Aである。その色座標は、CIEx=0.135、CIEy=0.187であり、発光のピークは464nmの位置にある。T80(70℃、20mA/cm2)は約29時間である。EL性能に関するデータを表1にまとめてある。70℃かつ20mA/cm2でテストした正規化した輝度と動作時間の関係を図9に示してある。
【0118】
このデバイスでは、LELとETLに含まれる材料が分子構造に関して互いに異なっていることが明らかである。このデバイスは駆動電圧が低く、輝度効率が高く、青色が改善されているが、動作安定性は非常に短いため、実際に利用する上で許容できない。
【0119】
例3
(比較例)
【0120】
別のOLEDを例1と同様にして構成したが、ELユニットを以下のように変えた点が異なっている。
a)NPBを含む厚さ75nmのHTL;
b)1.5体積%のTBPをドープされたTBADNホスト材料を含む厚さ20nmのLEL;
c)TBADNを含む厚さ5nmのETL;
d)約1.2体積%のリチウムをドープされたAlqを含む厚さ30nmのEIL。
【0121】
このOLEDは、20mA/cm2を流すのに約5.3Vの駆動電圧を必要とする。このテスト条件では、デバイスは輝度が365cd/m2、輝度効率が約1.8cd/Aである。その色座標は、CIEx=0.135、CIEy=0.166であり、発光のピークは461nmの位置にある。T80(70℃、20mA/cm2)は約500時間である。EL性能に関するデータを表1にまとめてある。
【0122】
このデバイスでは、LELに含まれるホスト材料とETLに含まれる材料がTBADNである。このデバイスは動作安定性が非常に優れているが、輝度効率は非常に低い。
【0123】
例4
(本発明)
【0124】
本発明のOLEDを例3と同様にして構成したが、厚さ5nmのETL(層c)がAlqの代わりに材料F-3を含んでいる点が異なっている。
【0125】
このOLEDは、20mA/cm2を流すのに約4.8Vの駆動電圧を必要とする。このテスト条件では、デバイスは輝度が587cd/m2、輝度効率が約2.9cd/Aである。その色座標は、CIEx=0.135、CIEy=0.169であり、発光のピークは461nmの位置にある。T80(70℃、20mA/cm2)は約220時間である。EL性能に関するデータを表1にまとめてある。70℃かつ20mA/cm2でテストした正規化した輝度と動作時間の関係を図9に示してある。
【0126】
このデバイスでは、LELに含まれるホスト材料とETLに含まれる材料の両方ともアントラセン誘導体である。TBADNとF-3の還元電位の測定値は、1:1 MeCN/トルエン有機溶媒系においてSCEを基準にしてそれぞれ約-1.90Vと約-1.78Vであった。したがってF-3の還元電位はTBADNの還元電位よりも約0.12V大きい。さらに、TBADNとF-3の酸化電位の測定値は、1:1 MeCN/トルエン有機溶媒系においてSCEを基準にしてそれぞれ約1.25Vと約1.29Vであった。したがってF-3の酸化電位はTBADNの酸化電位よりも約0.04V大きい。例1のデバイスと比較すると、例4のこのデバイスは、駆動電圧が低く、輝度効率が同等で、動作安定性が優れていて、青色がより純粋である。
【0127】
例5
(本発明)
【0128】
本発明による別のOLEDを例3と同様にして構成したが、厚さ5nmのETL(層c)がAlqの代わりに約1.2体積%のリチウムをドープされた材料F-3を含んでいる点が異なっている。
【0129】
このOLEDは、20mA/cm2を流すのに約4.2Vの駆動電圧を必要とする。このテスト条件では、デバイスは輝度が577cd/m2、輝度効率が約2.9cd/Aである。その色座標は、CIEx=0.136、CIEy=0.158であり、発光のピークは460nmの位置にある。T80(70℃、20mA/cm2)は約300時間が期待される。EL性能に関するデータを表1にまとめてある。70℃かつ20mA/cm2でテストした正規化した輝度と動作時間の関係を図9に示してあり、正規化したELスペクトルを図10に示してある。
【0130】
このデバイスでは、LELに含まれるホスト材料とETLに含まれる材料の両方ともアントラセン誘導体である。ETLにリチウムが含まれていることにより、駆動電圧、動作安定性、色が、例4のデバイスと比べてさらに改善された。
【0131】
例6
(本発明)
【0132】
本発明のOLEDを例3と同様にして構成したが、厚さ5nmのETL(層c)がAlqの代わりに材料G-1を含んでいる点が異なっている。
【0133】
このOLEDは、20mA/cm2を流すのに約4.9Vの駆動電圧を必要とする。このテスト条件では、デバイスは輝度が570cd/m2、輝度効率が約2.9cd/Aである。その色座標は、CIEx=0.135、CIEy=0.162であり、発光のピークは462nmの位置にある。T80(70℃、20mA/cm2)は220時間よりも長い。EL性能に関するデータを表1にまとめてある。
【0134】
このデバイスでは、LELに含まれるホスト材料とETLに含まれる材料の両方ともアントラセン誘導体である。TBADNとG-1の還元電位の測定値は、1:1 MeCN/トルエン有機溶媒系においてSCEを基準にしてそれぞれ約-1.90Vと約-1.86Vであった。したがってG-1の還元電位はTBADNの還元電位よりも約0.04V大きい。さらに、TBADNとG-1の酸化電位の測定値は、1:1 MeCN/トルエン有機溶媒系においてSCEを基準にしてそれぞれ約1.25Vと約1.31Vであった。したがってG-1の酸化電位はTBADNの酸化電位よりも約0.06V大きい。例1のデバイスと比較すると、例6のこのデバイスは、駆動電圧が低く、輝度効率が同等で、動作安定性が優れていて、青色がより純粋である。
【0135】
例7
(本発明)
【0136】
本発明による別のOLEDを例3と同様にして構成したが、厚さ5nmのETL(層c)がAlqの代わりに約1.2体積%のリチウムをドープされた材料G-1を含んでいる点が異なっている。
【0137】
このOLEDは、20mA/cm2を流すのに約4.5Vの駆動電圧を必要とする。このテスト条件では、デバイスは輝度が623cd/m2、輝度効率が約3.1cd/Aである。その色座標は、CIEx=0.136、CIEy=0.163であり、発光のピークは462nmの位置にある。T80(70℃、20mA/cm2)は220時間よりも長い。EL性能に関するデータを表1にまとめてある。
【0138】
このデバイスでは、LELに含まれるホスト材料とETLに含まれる材料の両方ともアントラセン誘導体である。ETLにリチウムが含まれていることにより、駆動電圧と輝度効率が、例6のデバイスと比べてさらに改善された。
【0139】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】本発明に従って製造したOLEDの一実施態様の断面図である。
【図2】本発明に従って製造したOLEDの別の一実施態様の断面図である。
【図3】本発明に従って製造したOLEDのさらに別の一実施態様の断面図である。
【図4】本発明に従って製造したOLEDのさらに別の一実施態様の断面図である。
【図5】本発明に従って製造した逆転構造を有するOLEDの一実施態様の断面図である。
【図6】本発明に従って製造した逆転構造を有するOLEDの別の一実施態様の断面図である。
【図7】本発明に従って製造した逆転構造を有するOLEDのさらに別の一実施態様の断面図である。
【図8】本発明に従って製造した逆転構造を有するOLEDのさらに別の一実施態様の断面図である。
【図9】70℃かつ20mA/cm2でテストした一群のOLEDに関する正規化した輝度と動作時間の関係を示すグラフである。
【図10】従来のOLEDと本発明に従って製造したOLEDのELスペクトルである。
【符号の説明】
【0141】
100 OLED
110 基板
120 アノード
130 正孔注入層(HIL)
140 正孔輸送層(HTL)
150 発光層(LEL)
160 電子輸送層(ETL)
170 電子注入層(EIL)
180 カソード
191 導電線
192 電圧/電流源
200 OLED
300 OLED
400 OLED
500 OLED
600 OLED
700 OLED
800 OLED

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)アノードと;
b)カソードと;
c)主要ホストとドーパントを含んでいて、上記アノードと上記カソードの間に配置された発光層と;
d)上記発光層のカソード側に直接接触して配置されている電子輸送層とを備えていて、この電子輸送層が、上記発光層の主要ホストと同じ発色団を持つ電子輸送材料を含んでいることと、この電子輸送材料が、この電子輸送層の50体積%を超える割合を占めることと、この電子輸送材料が、上記発光層の主要ホストよりも大きな還元電位を持つことを特徴とする有機発光デバイス(OLED)。
【請求項2】
上記発光層の主要ホストがアントラセン誘導体であり、上記電子輸送層の電子輸送材料が異なるアントラセン誘導体を含む、請求項1に記載のOLED。
【請求項3】
上記電子輸送層の異なるアントラセン誘導体が、
【化1】

で表わされる材料(ただし、
Ar2、Ar9、Ar10は、独立にアリール基を表わし;
v1、v3、v4、v5、v6、v7、v8は、独立に水素または置換基を表わす)の中から選択される、請求項2に記載のOLED。
【請求項4】
上記電子輸送層の異なるアントラセン誘導体が、
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

で表わされる材料の中から選択される、請求項3に記載のOLED。
【請求項5】
上記電子輸送層の異なるアントラセン誘導体が、
【化7】

で表わされる材料(ただし、
Ar9、Ar10は、独立にアリール基を表わし;
v1、v2、v3、v4、v5、v6、v7、v8は、独立に水素または置換基を表わす)の中から選択される、請求項2に記載のOLED。
【請求項6】
上記電子輸送層の異なるアントラセン誘導体が、
【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

で表わされる材料の中から選択される、請求項5に記載のOLED。
【請求項7】
上記発光層の主要ホストが、
【化14】

で表わされる2-(1,1-ジメチルエチル)-9,10-ビス(2-ナフタレニル)アントラセン(TBADN)であり、上記電子輸送層の材料が、
【化15】

で表わされる異なるアントラセン誘導体を含む、請求項2に記載のOLED。
【請求項8】
上記発光層の主要ホストが、9,10-ビス(2-ナフチル)アントラセン(AD-N)であり、上記電子輸送層の材料が、
【化16】

で表わされる異なるアントラセン誘導体を含む、請求項2に記載のOLED。
【請求項9】
上記発光層の主要ホストがテトラセン誘導体であり、上記電子輸送層の材料が異なるテトラセン誘導体を含む、請求項1に記載のOLED。
【請求項10】
上記電子輸送層の異なるテトラセン誘導体が、
【化17】

で表わされる材料(ただし、
RaとRbは置換基であり;
nは0〜4の中から選択され;
mは0〜5の中から選択される)の中から選択される、請求項9に記載のOLED。
【請求項11】
上記電子輸送層の異なるテトラセン誘導体が、
【化18】

【化19】

【化20】

で表わされる材料の中から選択される、請求項10に記載のOLED。
【請求項12】
上記発光層の主要ホストがルブレンであり、上記電子輸送層の材料が、
【化21】

【化22】

で表わされる異なるテトラセン誘導体を含む、請求項9に記載のOLED。
【請求項13】
上記電子輸送層が、仕事関数が4.0eVよりも小さいドーパントを含む、請求項1に記載のOLED。
【請求項14】
上記電子輸送層のドーパントが、アルカリ金属、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属化合物のいずれかを含む、請求項13に記載のOLED。
【請求項15】
上記電子輸送層のドーパントが、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、La、Ce、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ybのいずれかを含む、請求項13に記載のOLED。
【請求項16】
上記ドーパントの濃度が上記電子輸送層の0.01体積%〜20体積%の範囲である、請求項13に記載のOLED。
【請求項17】
上記電子輸送層の厚さが1nm〜70nmの範囲である、請求項1に記載のOLED。
【請求項18】
赤色、緑色、青色、白色いずれかの光を発生させる、請求項1に記載のOLED。
【請求項19】
請求項1に記載のOLEDを複数個備えるOLEDディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−546185(P2008−546185A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−513528(P2008−513528)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【国際出願番号】PCT/US2006/018725
【国際公開番号】WO2006/127315
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】