説明

OLED素子

【課題】素子の発光効率及び素子の寿命を向上させたOLED素子を提供する。
【解決手段】本発明は、OLED素子に関する。本発明によるOLED素子は、基板と、前記基板上に形成されたアノードと、前記アノード上に形成された第1有機薄膜層と、前記第1有機薄膜層上に形成された有機発光層と、前記有機発光層上に形成された第2有機薄膜層と、前記第2有機薄膜層上に形成されたカソードと、を含み、前記第1有機薄膜層及び前記第2有機薄膜層は、各々単層または多層で構成され、第1有機薄膜層または第2有機薄膜層の少なくとも一部が絶縁体でドーピングまたは積層される。本発明によるOLED素子は、有機薄膜層に絶縁体をドーピングしたり積層することによって、電荷の均衡された注入を通じて発光効率を増加させ、且つ耐久性に優れた長寿命の素子を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OLED(Organic light Emitting diode)素子に関する。より詳細には、アノードと発光層との間及び発光層とカソードとの間に形成される有機薄膜層の少なくとも一部を絶縁体でドーピングまたは積層し、均衡された電子注入と正孔注入を通じて内部効率を増加させ、且つ耐久性に優れた長寿命を有するOLED素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のOLED素子は、発光層がアノードとカソードとの間に積層されていて、アノードと発光層との間に第1有機薄膜層が積層され且つ発光層とカソードとの間に第2有機薄膜層が積層されている構造となっており、外部から電気を印加する場合、アノードから正孔が第1有機薄膜層を介して発光層に輸送され、カソードでは、電子が第2有機薄膜層を介して発光層に輸送され、発光層でエキシトンを形成した後、励起状態から基底状態に転移しながら光を放出する。
【0003】
図1は、従来の一般的なOLED素子構造を示す断面図である。
図1は、基板10上にアノード20、第1有機薄膜層A、発光層(Emission Layer、EML)50、第2有機薄膜層B及びカソード90が順次に構成されたOLED素子である。
【0004】
第1有機薄膜層Aとしては、正孔注入に優れた正孔注入層(Hole Injection Layer、HIL)30と、正孔伝達に優れた正孔輸送層(Hole Transport Layer、HTL)40があり、第2有機薄膜層としては、正孔の流入を抑制する正孔遮断層(Hole Blocking Layer、HBL)60、電子注入に優れた電子注入層(Electron Injection Layer、EIL)80と、電子の移動度に優れた電子輸送層(Electron Transport Layer、ETL)70があり、これらを薄膜で製作し、正孔注入と電子注入が容易になされるようにする。
【0005】
このような従来のOLED素子は、両電極から注入された正孔と電子が有機発光層でエキシトンを形成した後、励起状態から基底状態に転移することによって発光するが、正孔の移動度と電子の移動度の差異による電荷の不均衡による漏洩電流(leakage current)の形成、輝度の不均一、素子の寿命低下などの問題点を有している。
【0006】
したがって、発光効率を増加させ、且つ耐久性が強い長寿命を有するOLED素子に対する研究開発が継続的に要求されていて、これにより、素子の構造的な側面及び材料的な側面での改良を通じてOLED素子を改善させている。
【0007】
本発明者らは、発光効率を増加させ、且つ耐久性が強い長寿命のOLED素子に対する研究を進行しながら、OLED素子を構成するアノードと発光層との間の第1有機薄膜層または発光層とカソードとの間の第2有機薄膜層の少なくとも一部を特定の絶縁体を使用して適切な濃度または厚さでドーピングまたは積層する場合、均衡された電荷(正孔または電子)の注入を通じて内部効率を増加させ、且つ耐久性に優れた長寿命を有する素子を提供する。
【0008】
【特許文献1】米国特許第5677572号明細書
【特許文献2】米国特許第5776622号明細書
【特許文献3】米国特許第5719467号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の技術的課題は、素子の発光効率及び素子の寿命を向上させたOLED素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記技術的課題を解決するために、本発明は、基板と、前記基板上に形成されたアノードと、前記アノード上に形成された第1有機薄膜層と、前記第1有機薄膜層上に形成された有機発光層と、前記有機発光層上に形成された第2有機薄膜層と、前記第2有機薄膜層上に形成されたカソードと、を含み、前記第1有機薄膜層及び前記第2有機薄膜層は、各々単層または多層で構成され、第1有機薄膜層または第2有機薄膜層の少なくとも一部が絶縁体でドーピングまたは積層されるOLED素子を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるOLED素子は、次のような効果を有する。
第一に、一般的にOLED素子において正孔の移動度は、電子の移動度より約100倍大きい。このような電荷の移動度の差異は、電荷注入の不均衡に起因して漏洩電流を増加させ、発光効率を減少させる。これに対して、本発明は、陽極から正孔が発光層に移動し、陰極から電子が発光層に移動するのに障壁(Barrier)としての役目をし、電荷の流れを制御することによって、漏洩電流を最小化し、これにより、素子寿命を増加させる。
【0012】
第二に、第1有機薄膜層及び第2有機薄膜層に適合した絶縁層の選定、適切な厚さの調節、及び適切なドーピング濃度の調節を通じて正孔の移動と電子の移動を制御することができるので、発光層で正孔と電子の再結合確率(recombination probability)を増加させて、均衡された電荷注入を通じて発光効率を増加させる。
【0013】
第三に、第1有機薄膜層及び第2有機薄膜層に絶縁体をドーピングしたり積層する場合、アノードと発光層との間、またはカソードと発光層との間で薄膜界面間の接触を向上させて、熱安定性に優れた有機薄膜を形成するので、耐久性が向上した素子を製作することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明によるOLED素子は、基板、アノード、第1有機薄膜層、発光層、第2有機薄膜層及びカソードで構成されていて、ここで、第1有機薄膜層は、正孔注入層または正孔輸送層であることができ、第2有機薄膜層は、正孔遮断層、電子輸送層または電子注入層であることができる。これらの正孔注入層、正孔輸送層、正孔遮断層、電子輸送層または電子注入層は、全て含まれることができ、各層は省略可能である。
【0015】
したがって、本発明によって正孔注入層、正孔輸送層、正孔遮断層、電子輸送層または電子注入層のうちいずれか1つ以上の層が絶縁体でドーピングされるか、絶縁体で形成されることができる。また、第1有機薄膜層または第2有機薄膜層の所定の位置、例えば、正孔注入層の上、正孔輸送層の上、正孔注入層と正孔輸送層との間、正孔遮断層の上、電子輸送層の上、電子注入層の上、正孔遮断層と電子輸送層との間、または電子輸送層と電子注入層との間などに絶縁体層がさらに形成されることもできる。
【0016】
前記絶縁体は、アノードから正孔が発光層に移動し、カソードから電子が発光層に移動するのに障壁としての役目をして電荷の流れを制御し、有機薄膜層と電極とのエネルギー障壁を最小化して、電荷の注入を容易にするので、駆動電圧を低減し、また、電極と有機薄膜層または有機薄膜間の界面特性の向上をもたらす。このような絶縁体としては、次のような物質が使われることができる。
【0017】
1)双極性特性(strong dipole characteristics)を有する非導電性物質(nonconductive materials)を含む無機絶縁体及び/または有機絶縁体。
【0018】
2)前記非導電性物質は、アルカリ酸化物、アルカリ土金属酸化物、アルカリ弗素化物、アルカリ土金属弗素化物、金属または非金属酸化物、陰イオンを含む金属または非金属酸化物よりなる群から1種以上選択。
【0019】
3)前記アルカリ酸化物としては、リチウムオキサイド(lithium oxide)、ソジウムオキサイド(sodium oxide)、ポタシウムオキサイド(potassium oxide)、ルビジウムオキサイド(rubidium oxide)及びセシウムオキサイド(cesium oxide)よりなる群から1種以上選択。
【0020】
4)前記アルカリ土金属酸化物としては、マグネシウムオキサイド(magnesium oxide)、カルシウムオキサイド(calcium oxide)、ストロンチウムオキサイド(strontium oxide)及びバリウムオキサイド(barium oxide)よりなる群から1種以上選択。
【0021】
5)前記アルカリ弗素化物としては、リチウムフルオライド(lithium fluoride)、ソジウムフルオライド(sodium fluoride)、ポタシウムフルオライド(potassium fluoride)、ルビジウムフルオライド(rubidium fluoride)、及びセシウムフルオライド(cesium fluoride)よりなる群から1種以上選択。
【0022】
6)前記アルカリ土金属弗素化合物としては、マグネシウムフルオライド(magnesium fluoride)、カルシウムフルオライド(calcium fluoride)、ストロンチウムフルオライド(strontium fluoride)、及びバリウムフルオライド(barium fluoride)よりなる群から1種以上選択。
【0023】
7)前記金属または非金属酸化物としては、アルミニウムオキサイド(aluminum oxide)、シリコンオキサイド(silicon oxide)、チタニウムオキサイド(titanium oxide)、及びタンタルオキサイド(tantalum oxide)よりなる群から1種以上選択。
【0024】
8)前記陰イオンを含む金属または非金属化合物において、陰イオンとしては、アセテート、ベンゾエイトまたはカーボネートなどを含み、金属としては、リチウム、ソジウム、ポタシウム、ルビジウム、セシウムなどのアルカリ金属を主に含む。具体的に、リチウムアセテート(lithium acetate)、ソジウムアセテート(sodium acetate)、ポタシウムアセテート(potassium acetate)、ルビジウムアセテート(rubidium acetate)、セシウムアセテート(cesium acetate)、リチウムベンゾエイト(lithium benzoate)、ソジウムベンゾエイト(sodium benzoate)、ポタシウムベンゾエイト(potassium benzoate)、ルビジウムベンゾエイト(rubidium benzoate)、セシウムベンゾエイト(cesium benzoate)、リチウムカーボネート(lithium carbonate)、ソジウムカーボネート(sodium carbonate)、ポタシウムカーボネート(potassium carbonate)、ルビジウムカーボネート(rubidium carbonate)、またはセシウムカーボネート(cesium carbonate)を含む。
【0025】
前記絶縁体が積層される場合、絶縁体の厚さは、0.1nm乃至10nmであることが好ましく、絶縁体がドーピングされる場合、1重量%乃至50重量%の範囲でドーピングされることが好ましい。
【0026】
前記絶縁体に使われる物質の選定、適切な厚さの調節及び適切なドーピング濃度の調節を通じてアノードから発光層に移動する正孔の移動とカソードから発光層に移動する電子の移動を制御することができるので、発光層で正孔と電子の再結合確率(recombination probability)を増加させ、均衡された電荷注入を通じて発光効率を増加させる。
【0027】
以下、図面を参照して本発明をさらに詳しく説明する。
本発明によるOLED素子の積層構造は、添付の図2乃至図4に示されたような構造であることができる。
【0028】
すなわち、図2を参照すれば、本発明によるOLED素子は、基板10/アノード20/正孔輸送層40/発光層50/電子輸送層70/絶縁体で形成された電子注入層80/カソード90の積層構造を有することができ、図3を参照すれば、基板10/アノード20/正孔輸送層40/発光層50/電子輸送層70/絶縁体でドーピングされた電子輸送層71/絶縁体で形成された電子注入層80/カソード90の積層構造を有し、図4を参照すれば、基板10/アノード20/正孔注入層30/正孔輸送層40/発光層50/電子輸送層70/絶縁体で形成された電子注入層80/カソード90の積層構造を有することができる。その他、必要に応じて、多様な積層構造を有することができる。
【0029】
以下、図4を参照して、OLED素子の構造及び各層について詳細に説明する。
【0030】
基板10は、この分野において一般的な材料を使用することができ、特にガラス、プラスチック、高分子フィルムまたはSUS基板などが使われることができる。
【0031】
アノード20は、第1有機薄膜層を介して発光層50に正孔を注入させる役目をし、透明電極または反射電極であることができる。前記アノード20が透明電極である場合、ITO(Indium Tin Oxide)膜、IZO(Indium Zinc Oxide)膜、TO(Tin Oxide)膜またはZnO(Zinc Oxide)膜であることができる。前記アノード20が反射電極である場合、銀Ag膜、アルミニウムAl膜、ニッケルNi膜、白金Pt膜、パラジウムPd膜またはこれらの合金膜、またはこれらの合金膜上にITO、IZO、TOまたはZnOの透過型酸化膜が積層された構造であることができる。
【0032】
前記アノード20は、スパッタリング(sputtering)法及び蒸発(evaporation)法のような気相蒸着(vapor phase deposition)法、イオンビーム蒸着(ion beam deposition)法、電子ビーム蒸着(electron beam deposition)法またはレーザーアブレーション(laser ablation)法を使用して基板10上にこの分野において通用される一般的な厚さで形成されることができる。
【0033】
本発明による第1有機薄膜層Aは、正孔注入層30、正孔輸送層40が順次に積層された構造を例示しているが、必ずこれに限定されるものではなく、前記正孔注入層30及び正孔輸送層40のいずれか1つの層を省略して形成することができ、また、複数の層で形成することもできる。
【0034】
前記アノード20上に形成される正孔注入層30及び/または正孔輸送層40は、発光層50への正孔の注入及び伝達を容易にする層であって、次のような物質で形成されることができる:例えば、TNATA(4,4’,4”−トリス[N−1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]−トリフェニル−アミン)、TCTA(4,4’,4”−トリス(N−カルバゾリル)−トリフェニルアミン)、TDAPB(1,3,5−トリス(4−(2,2−ジピリジルアミノ)フェニル)ベンゼン)、TDATA(4,4’,4”−トリス(N,N−ジフェニル−アミノ)−トリフェニルアミン)のような低分子材料またはPANI(ポリアニリン)、PEDOT(ポリ(3,4)−エチレン−ジオキシチオフェン)のような高分子材料を使用して形成することができる。また、CuPc(銅フタロシアニン)のような金属錯体の緩衝層を挿入し、界面間の接触を向上することによって、寿命を延長させることができる。
【0035】
また、本発明によれば、前記正孔注入層30または正孔輸送層40は、上記で提示した絶縁体で1乃至50重量%の範囲内でドーピングされることができ、また、0.1nm乃至10nmの厚さで積層されることができる。
【0036】
前記正孔注入層30及び正孔輸送層40は、真空蒸着法、スピンコーティング法及びインクジェット(ink-jet)法からなる群から選択されたいずれか1つの方法を用いてこの分野において通用される一般的な厚さで形成されることができる。
【0037】
前記有機発光層50は、リン光発光層または蛍光発光層であることができる。発光層50が蛍光発光層である場合、発光層50は、Alq3(8-trishydroxyquinoline aluminum)、ジスチリルアリレン(distyrylarylene;DSA)、ジスチリルアリレン誘導体、ジスチリルベンゼン(distyrylbenzene;DSB)、ジスチリルベンゼン誘導体、DPVBi(4,4’-bis(2,2’-diphenylvinyl)-1,1’-biphenyl)、DPVBi誘導体、スパイロ−DPVBi及びスパイロ−6P(spirosexyphenyl)よりなる群から発光色によって選択される1つの物質を含むことができる。さらに、発光層50は、スチリルアミン(styrylamine)系、フェリレン(pherylene)系及びDSBP(distyrylbiphenyl)系よりなる群から選択される1つのドーパント物質をさらに含むことができる。
【0038】
これとは異なって、前記発光層50がリン光発光層である場合、前記発光層50は、ホスト物質としてアリルアミン系、カルバゾール系及びスピロ系よりなる群から選択される1つの物質を含むことができる。好ましくは、前記ホスト物質は、CBP(4,4-N,N dicarbazole-biphenyl)、CBP誘導体、mCP(N,N-dicarbazolyl-3,5-benzene)mCP誘導体及びスピロ系誘導体よりなる群から選択される1つの物質である。ドーパント物質としては、Ir、Pt、Tb、及びEuよりなる群から選択される1つの中心金属を有するリン光有機金属錯体を含むことができる。好ましくは、リン光有機金属錯体は、PQIr、PQIr(acac)、PQ2Ir(acac)、PIQIr(acac)及びPtOEPよりなる群から選択される1つであることができる。
フルカラー有機電界発光素子の場合、発光層50を形成することは、高精細マスクを使用した真空蒸着法、インクジェットプリント法またはレーザー熱転写法を使用して行うことができる。発光層の厚さは、この分野おいて通用される一般的な厚さで形成されることができる。
【0039】
前記発光層50上に第2有機薄膜層Bが形成される。第2有機薄膜層Bとしては、正孔遮断層、電子輸送層70及び電子注入層80が順次に積層されることができ、又は、各層は、省略可能である。
【0040】
正孔遮断層(hole blocking layer、HBL)が選択的に形成されることができ、特に発光層50が蛍光発光層である場合に省略されることができ、素子の駆動過程において発光層50で生成されたエキシトンが拡散されることを抑制する役目をする。このような正孔遮断層は、Balq、BCP、CF−X、TAZまたはスピロ−TAZを使用してこの分野において通用される一般的な厚さで形成することができる。
【0041】
前記発光層50または正孔遮断層60上に電子輸送層70が形成される。前記電子輸送層70は、発光層50への電子の輸送を容易にする層であり、例えば、PBD、TAZ、spiro−PBDのような高分子材料またはBphen(4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン)、Alq3、BAlq、SAlqのような低分子材料を使用して形成することができる。
【0042】
前記電子輸送層70上に電子注入層80を形成することができる。電子注入層は、発光層50への電子の注入を容易にするものであり、例えば、Alq3、LiF、ガリウム混合物(Ga complex)、PBDを使用して形成することができる。一方、電子輸送層70と電子注入層80を形成することは、真空蒸着法、スピンコーティング法、インクジェットプリント法またはレーザー熱転写法などを使用して一般的な厚さで形成されることができる。
【0043】
一方、本発明によれば、正孔遮断層60、電子輸送層70または電子注入層80の少なくとも一部は、上記で提示した絶縁体物質で1乃至50重量%の範囲内でドーピングされることができ、または、0.1nm乃至10nmの厚さで積層されることができる。図2及び図4の場合、電子注入層80が絶縁体で積層された場合を示し、図3の場合、電子輸送層70が絶縁体でドーピングされ、電子注入層80が絶縁体で積層された場合を示している。
【0044】
電子注入電極として使われるカソード90は、発光層50に電子を注入し、主にワーク関数の低い(4.2eV以下)金属(Ca、Ag、Mg−Ag、Ca/Al、Alなど)または合金(Al−Li、Al−Mgなど)を使用する。一方、透明カソードとしては、Ag、Ca、Ca/Ag及びMg/Agよりなる群から選択されたいずれか1つの物質を用いて形成することができる。
【0045】
前述のような構造を有するOLED素子において、第1有機薄膜層Aまたは第2有機薄膜層Bの少なくとも一部が適合に選定された絶縁体物質で適切な濃度または厚さでドーピングまたは形成される場合、均衡された電子注入と正孔の注入を通じて内部効率を増加させ、且つ耐久性に優れた長寿命を有する素子を得ることができる。
【0046】
以下、実施例を参照して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明がこれらの実施例に限定されるわけではない。
【0047】
実施例1
まず、基板10上にカソード20であるITO電極を100nmの厚さで形成した後、正孔輸送層40としてNPDを50nmの厚さで形成した(第1工程)。次に、正孔輸送層40上に、緑色リン光発光層50としてCBPにIr(ppy)3を8重量%ドーピングし、10nmの薄膜を形成した(第2工程)。次に、前記発光層50上に第2有機薄膜層として電子輸送層70であるBphenを50nm積層させた(第3工程)。電子輸送層70上に電子注入層80として各々有機絶縁体であるリチウムベンゾエイト(LBという)を0.5nm、0.8nm、1.0nmの厚さで積層した(第4工程)。次に、カソード90としてAlを60nm蒸着し、OLED素子を製作した。
【0048】
前記実施例1によって製作されたOLED素子においてLB厚さによる発光効率を評価し、その結果を図5に示した。
【0049】
図5を参照すれば、有機絶縁体の厚さが大きくなるにつれて、発光効率が1,000cd/m2で10%程度向上することが分かる。
【0050】
実施例2
まず、基板10上にアノード20であるITO電極を100nmで形成した後、第1有機薄膜層の正孔輸送層40としてNPDを50nm厚さで形成した(第1工程)。前記正孔輸送層40上に緑色リン光発光層50としてCBPにIr(ppy)3を8重量%ドーピングし、10nmの薄膜を積層した(第2工程)。前記発光層50上に第2有機薄膜層としてBphenをもって電子輸送層70を10nmの厚さで積層し、次に、有機絶縁体であるLBを各々0重量%、10重量%、50重量%の濃度でドーピングし、Bphen 40nm薄膜71を積層した(第3工程)。前記有機絶縁体がドーピングされた電子輸送層71上に電子注入層80として有機絶縁体であるLBを1nmの厚さで積層し(第4工程)、カソード90としてAlを60nmで蒸着し、OLED素子を製作した。
【0051】
前記実施例2によりLBドーピング濃度による発光効率を評価し、その結果を図6に示した。図6から明らかなように、100cd/m2以下の低い輝度では、電子輸送層70に絶縁体をドーピングし、電子注入層80としてLBを積層することによって、発光効率が急激に増加することが分かり、10,000cd/m2で、発光効率は、ドーピング濃度が大きくなるにつれて34cd/Aから41cd/Aに20%程度向上したことを確認することができる。
【0052】
実施例3
まず、基板10上に反射率に優れたAgアノード20を真空蒸着法で80nmの厚さで形成した(第1工程)。アノード上に形成される第1有機薄膜層は、多層構造の薄膜で正孔注入層30と正孔輸送層40を積層し、正孔注入層30としては、m−TDATAを20nmで積層し、正孔輸送層40としてNPDを30nmで積層した(第2工程)。正孔輸送層40上に緑色リン光発光層50としてCBPにIr(ppy)3を8重量%ドーピングし、10nmの薄膜で積層した(第3工程)。前記発光層50上に第2有機薄膜層としてBphenを使用して電子輸送層70を50nmの厚さで積層し、電子注入層80として各々有機絶縁体であるLBを0nm、5nm、10nm、15nmの厚さで積層した(第4工程)。次に、電子注入層80上に透明なカソードとしてAlを1nmで、Agを15nmで積層し、前面発光型(Top emission)OLED素子を製作した。
【0053】
前記実施例3により有機絶縁体で形成された電子注入層の厚さによる発光効率を評価し、その結果を図7に示した。図7から明らかなように、電子注入層80としてLBを使用しない時に比べて、LBを使用した場合の発光効率が顕著に増加し、LBの厚さを10nmに増加させることによって、2倍以上の発光効率を増加させたが、LBの厚さが10nmを超過して増加する場合には、発光効率が却って劣化している。
【0054】
これは、電子注入層80として使われた有機絶縁層の厚さが薄い場合には、電子注入がトンネリング(tunneling)現象によって容易に注入されるが、一般的に10nm以上の場合には、却って絶縁体の厚い障壁に起因して電荷注入が難しいからである。
【0055】
以上において説明した本発明は、本発明が属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で、様々な置換、変形及び変更が可能であるので、上述した実施例及び添付された図面に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】従来のOLED素子の断面図である。
【図2】本発明の具現例によるOLED素子の断面図である。
【図3】本発明の具現例によるOLED素子の断面図である。
【図4】本発明の具現例によるOLED素子の断面図である。
【図5】本発明によるOLED素子において絶縁体層の厚さ変化による発光効率の変化を示すグラフである。
【図6】本発明によるOLED素子において絶縁体のドーピング濃度の変化による発光効率の変化を示すグラフである。
【図7】本発明による前面発光OLED素子において絶縁体層の厚さ変化による発光効率の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0057】
10 基板
20 アノード(Anode)
A 第1有機薄膜層
30 正孔注入層(HIL)
40 正孔輸送層(HTL)
50 発光層(EML)
60 正孔遮断層(HBL)
B 第2有機薄膜層
70 電子輸送層(ETL)
71 ドーピングされた電子輸送層
80 電子注入層(EIL)
90 カソード(Cathode)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成されたアノードと、
前記アノード上に形成された第1有機薄膜層と、
前記第1有機薄膜層上に形成された有機発光層と、
前記有機発光層上に形成された第2有機薄膜層と、
前記第2有機薄膜層上に形成されたカソードと、を含み、
前記第1有機薄膜層及び前記第2有機薄膜層は、各々単層または多層で構成され、第1有機薄膜層または第2有機薄膜層の少なくとも一部が絶縁体でドーピングまたは積層されるOLED素子。
【請求項2】
前記積層される絶縁体の厚さが0.1nm乃至10nm範囲であることを特徴とする請求項1に記載のOLED素子。
【請求項3】
前記ドーピングされる絶縁体の濃度が1重量%乃至50重量%の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のOLED素子。
【請求項4】
前記第1有機薄膜層は、正孔注入層、または正孔注入層及び正孔輸送層であることを特徴とする請求項1に記載のOLED素子。
【請求項5】
前記第2有機薄膜層は、正孔遮断層、電子注入層及び電子輸送層よりなる群から1種以上選択されることを特徴とする請求項1に記載のOLED素子。
【請求項6】
前記絶縁体は、双極性特性を有する非導電性物質を含む無機絶縁体または有機絶縁体よりなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のOLED素子。
【請求項7】
前記非導電性物質は、アルカリ酸化物、アルカリ土金属酸化物、金属または非金属酸化物、アルカリ弗素化物、アルカリ土金属弗素化物及び陰イオンを含む金属または非金属化合物よりなる群から1種以上選択されることを特徴とする請求項6に記載のOLED素子。
【請求項8】
前記アルカリ酸化物は、リチウムオキサイド、ソジウムオキサイド、ポタシウムオキサイド、ルビジウムオキサイド及びセシウムオキサイドよりなる群から1種以上選択されることを特徴とする請求項7に記載のOLED素子。
【請求項9】
前記アルカリ土金属酸化物は、マグネシウムオキサイド、カルシウムオキサイド、ストロンチウムオキサイド及びバリウムオキサイドよりなる群から1種以上選択されることを特徴とする請求項7に記載のOLED素子。
【請求項10】
前記アルカリ弗素化物は、リチウムフルオライド、ソジウムフルオライド、ポタシウムフルオライド、ルビジウムフルオライド及びセシウムフルオライドよりなる群から1種以上選択されることを特徴とする請求項7に記載のOLED素子。
【請求項11】
前記アルカリ土金属弗素化物は、マグネシウムフルオライド、カルシウムフルオライド、ストロンチウムフルオライド、及びバリウムフルオライドよりなる群から1種以上選択されることを特徴とする請求項7に記載のOLED素子。
【請求項12】
前記金属または非金属酸化物は、アルミニウムオキサイド、シリコンオキサイド、チタニウムオキサイド及びタンタルオキサイドよりなる群から1種以上選択されることを特徴とする請求項7に記載のOLED素子。
【請求項13】
前記陰イオンを含む金属または非金属化合物において、陰イオンは、アセテート、ベンゾエイト及びカーボネートよりなる群から1種以上選択されることを特徴とする請求項7に記載のOLED素子。
【請求項14】
前記アセテートを含む金属または非金属化合物は、リチウムアセテート、ソジウムアセテート、ポタシウムアセテート、ルビジウムアセテート及びセシウムアセテートよりなる群から1種以上選択されることを特徴とする請求項13に記載のOLED素子。
【請求項15】
前記ベンゾエイトを含む金属または非金属化合物は、リチウムベンゾエイト、ソジウムベンゾエイト、ポタシウムベンゾエイト、ルビジウムベンゾエイト及びセシウムベンゾエイトよりなる群から選択されることを特徴とする請求項13に記載のOLED素子。
【請求項16】
前記カーボネートを含む金属または非金属化合物は、リチウムカーボネート、ソジウムカーボネート、ポタシウムカーボネート、ルビジウムカーボネート及びセシウムカーボネートよりなる群から選択されることを特徴とする請求項13に記載のOLED素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−147630(P2008−147630A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−285325(P2007−285325)
【出願日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(596180076)韓國電子通信研究院 (733)
【氏名又は名称原語表記】Electronics and Telecommunications Research Institute
【住所又は居所原語表記】161 Kajong−dong, Yusong−gu, Taejon korea
【Fターム(参考)】