説明

OOB受信回路、SATAコントローラ、ハードディスクドライブ、及び電子機器

【課題】OOBパターン検出精度を犠牲にすることなく、ダイナミックレンジの広い高感度なOOB受信回路を提供する。
【解決手段】OOB受信回路は、OOB信号を構成する互いに逆位相の2つのOOB信号成分RX−,RX+を伝送する差動ライン1と、差動ライン1の2つの信号ラインにそれぞれ入力されたOOB信号成分RX−,RX+の電位をオフセットし、2つのOOB信号成分RX−,RX+間に電位差を付与するオフセット印加部2,3と、オフセット印加部2,3により電位差が付与された2つのOOB信号成分RX−′,RX+′の差分を増幅する差動メインアンプ4と、差動メインアンプ4からの信号出力レベルに応じて差動メインアンプ4のゲインを調整するオートゲインコントロール部6と、差動メインアンプ4から出力されたゲイン調整後のOOB信号を検出する検出部7とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OOB受信回路、SATAコントローラ、ハードディスクドライブ、及び電子機器に関し、より詳細には、高速シリアル通信であるSATA(Serial ATA)の差動信号を受信する受信回路方式に関する。
【背景技術】
【0002】
SATA(Serial ATA)は、高速シリアル通信の規格であり、パラレル転送方式による転送速度向上が難しくなってきたため、さらなる高速化を目指すべく開発されたものである。現在では、コンピュータとHDD(ハードディスクドライブ)等の周辺機器を高速で接続するために使用されている。SATAの最初の規格「Serial ATA 1.0」は1.5Gbpsの通信速度を実現する。2004年4月には通信速度を3Gbps(転送速度は300MB/s)に引き上げたSATA2規格が、また、2009年5月には6Gbps(600MB/s)のSATA3規格が発表された。
【0003】
SATA物理層では、8B/10B符号化方式にてエンコード/デコードを行なう。8B/10B符号化方式では、連続して送信する「0」と「1」の数が5ビット以上「0」と「1」が連続しないように制限されるという特徴を持ち、通信プロセス内の「0」と「1」が同数になるように選ばれている。こうして「0」と「1」が同数だけ送られるため、DCバランスに優れ、シリアル・データ中にクロックを埋め込むことで、データとクロックの転送を同じ配線で行なっている。ただし、実データ8bitから10bitへの冗長な2bitを加える変換を行なうため、データリンク帯域は物理レートの80%となる。
【0004】
SATA規格では、データ転送を行う前に「OOBシーケンス」と呼ばれるネゴシエーションが行われる。なお、OOBは、“Out Of Band”の略であり、このOOB信号は、SATAの特徴の一つで、インターフェイスのリセット、初期化や通信の確立、スピードネゴシエーションなどを司る信号であり、以下の「COMRESET」、「COMINIT」、「COMWAKE」等の信号を総称したものである。
【0005】
従来のOOBシーケンスの手順を図4に示す。まず、ホスト(Host)が「HostCOMRESET」信号を送信し、デバイス(Device)側で「HostCOMRESET」を受信すると、デバイスが「DeviceCOMINIT」信号を送信する。ホストが、この「DeviceCOMINIT」信号を受信すると、ホストが「HostCOMWAKE」信号を送信する。デバイスが「HostCOMWAKE」信号を受信すると、デバイスがホストに対して「DeviceCOMWAKE」信号を出力する。この後、お互いAlign期間に同期を取り、データ転送が始まる。OOBシーケンスでは、信号が存在する「バースト区間」と、信号が存在しない「スケルチ区間」とに分かれる。
【0006】
そして、OOB信号の検出は、「バースト区間」と「スケルチ区間」とを検出することで行なわれる。このOOBシーケンスでは、ホストとデバイスのどちらかから相手側に対してOOB信号に応じた特定のパターン(OOBパターン)を送信し、受信側では送信されてきたOOBパターンを認識して、OOB信号を特定する処理が行われる。
【0007】
上記のようなOOBシーケンスを行うOOB信号検出回路に関し、例えば、特許文献1には、信号の立上エッジ、立下エッジのみに着目して、立上、立下エッジの間隔により、バースト区間にあるのか、スケルチ区間にあるのかを識別する技術が記載されている。この場合、従来に比べて、信号パターンを判別しなくてよいので、非常に低コストでOOB信号検出回路を提供することができる。また、特許文献2には、ウェハープロセスによるバラつきに左右されない振幅判定回路、時間判定回路で受信回路を構成することにより、正確な信号判定を可能とし、製品の歩留まりを低下させないOOB信号検出回路が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−4587号公報
【特許文献2】特開2009−141722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図5に従来のSATA受信回路の構成を示す。図中、101は差動メインアンプ、102はLPF(Low pass Filter)、103は検出部、104はデジタル処理部を示す。SATA通信ラインは、2つの信号ラインからなる差動ラインで構成され、ここではRX+とRX−という信号名称とする。SATAの通信では、ホストコントローラからデバイス(HDD(Hard Disk Drive)等)へ送られる信号とデバイスからホストへ送られる信号と合計4本のラインにて構成される。ここでは、ホスト、デバイス側を特定せず、ホスト、デバイスいずれにも搭載可能な受信回路として説明する。
【0010】
RX+とRX−の各信号は、それぞれ受信端にて50Ωで終端される。これは伝送路が50Ωでコントロールされているため、受信端での反射による波形歪みの影響を低減するためである。従来方式では、RX+、RX−の各信号をそのまま差動メインアンプ101に入力させ、LPF102で不要な高周波ノイズを除去する。検出部103は、一般的にはコンパレータで構成され、入力信号の電圧と基準電圧Vとを比較し、比較結果に応じて、”H(High)”、または、”L(Low)”を出力する。そして、デジタル処理部104は、検出部103の出力値に基づいて、OOBパターンを認識する。なお、デジタル処理部104でのOOBパターン認識では、8B/10Bパターンから実データに変換される。
【0011】
ところで、昨今、代表的なSATAデバイスであるHDDは、様々な電子機器に搭載されるようになった。例えば、テレビ、複写機などでは、画像データ、動画データを蓄積するためにHDDが標準で搭載された機種も増えている。特に、複写機では、製品デザインとの機構的な制約により、ホストとHDDデバイスを近い距離で配置できないことがあり、ホストとHDDデバイス間の伝送ラインが長距離化されるケースがある。SATA規格では、最小受信感度の最大値が規格で規定されているが、その規格にかかわらず受信感度を高めて、長距離伝送を実現することが要望されている。
【0012】
ホスト、デバイス間の伝送距離を長距離化していくと信号振幅が下がっていくが、一般に信号周波数が高いほど、信号振幅の減衰は大きい。SATAでは、従来より高速の信号を伝送するため、信号ラインの長距離化による信号振幅の減衰が大きくなる。また、製品構成によっては近距離間での伝送も実現しなければいけないため、信号のダイナミックレンジを確保するために、ゲインを選択する手段やオートゲインコントロール回路が必要となってくる。
【0013】
上記のオートゲインコントロール回路は、出力が下がれば、アンプゲインを上げ、出力が上がれば、アンプゲインを下げるという動作を出力の振幅レベルをアンプ側にフィードバックすることにより実現する手段である。このオートゲインコントロール回路により、幅広いダイナミックレンジを確保することができ、ホスト、デバイス間距離を近距離、遠距離にかかわらない通信を実現できるため、製品の機構設計に対し自由度を大きくすることができる。
【0014】
すなわち、高感度の受信回路を実現する場合、近距離の相手から送信された信号振幅の大きい信号から、遠距離の相手から送信された信号振幅の小さい信号まで幅広いダイナミックレンジを確保するために、アンプのゲインを有限の設定の中から信号レベルに応じて選択する手段やオートゲインコントロール回路が採用される。この場合、無信号区間であるスケルチ区間がSATA信号周期に比べて十分長く、スケルチ期間の信号待機状態でゲインが最大となり、スケルチ区間の終わりで、バースト信号が入力された場合の最初のヘッダ部分の信号が最大ゲインで増幅されることにより波形が歪み、ヘッダ部分の信号を読み取れないという問題が生じていた。
【0015】
つまり、スケルチ区間は無信号状態なので、オートゲインコントロール回路は信号がないと判断し、ゲインを最大にしてしまう。こうした場合、スケルチ区間が終わり、バースト信号が入力されたときに、バースト信号がゲイン最大で増幅されることになる。このバースト信号は入力され続けるため、わずかな時間で適正なゲインに戻るが、不必要に高いゲインで増幅された最初のヘッダ部分の信号の波形が歪み、OOBパターン認識を正確に行うことができなくなる可能性がある。
【0016】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたものであり、OOBパターン検出精度を犠牲にすることなく、ダイナミックレンジの広い高感度なOOB受信回路、SATAコントローラ、ハードディスクドライブ、及び電子機器を提供すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明の第1の技術手段は、シリアルATAにおけるOOB信号を受信するOOB受信回路であって、前記OOB信号を構成する互いに逆位相の2つのOOB信号成分を伝送する差動ラインと、該差動ラインの2つの信号ラインにそれぞれ入力されたOOB信号成分のうちの少なくとも一方のOOB信号成分の電位をオフセットし前記2つのOOB信号成分間に電位差を付与するオフセット印加部と、該オフセット印加部により電位差が付与された2つのOOB信号成分の差分を増幅する差動メインアンプと、該差動メインアンプからの信号出力レベルに応じて該差動メインアンプのゲインを調整するゲイン調整部と、前記差動メインアンプから出力されたゲイン調整後のOOB信号を検出する検出部とを備えたことを特徴としたものである。
【0018】
第2の技術手段は、第1の技術手段において、前記オフセット印加部は、電流源を含むことを特徴としたものである。
【0019】
第3の技術手段は、第1の技術手段において、前記オフセット印加部は、トランジスタを含むことを特徴としたものである。
【0020】
第4の技術手段は、第1の技術手段において、前記オフセット印加部は、複数の抵抗からなる抵抗群と、該抵抗群から抵抗を選択する抵抗選択部とを含むことを特徴としたものである。
【0021】
第5の技術手段は、第1〜第4のいずれか1の技術手段におけるOOB受信回路を備えたSATAコントローラである。
【0022】
第6の技術手段は、第5の技術手段におけるSATAコントローラを搭載した電子機器である。
【0023】
第7の技術手段は、第1〜第4のいずれか1の技術手段におけるOOB受信回路を備えたハードディスクドライブである。
【0024】
第8の技術手段は、第7の技術手段におけるハードディスクドライブを搭載した電子機器である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、OOB信号を構成する互いに逆位相の2つのOOB信号成分に対して、オフセット印加部により2つのOOB信号成分間に電位差を生じさせ、無信号状態であっても、差動メインアンプのゲインを適正に保つことができるため、OOBパターン検出精度を犠牲にすることなく、ダイナミックレンジの広い、高精度で高感度なOOB受信回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るOOB受信回路の構成例を示す図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係るOOB受信回路の要部構成例を示す図である。
【図3】本発明の第3の実施形態に係るOOB受信回路の要部構成例を示す図である。
【図4】従来のOOBシーケンスの手順を示す図である。
【図5】従来のSATA受信回路の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照しながら、本発明のOOB受信回路、SATAコントローラ、ハードディスクドライブ、及び電子機器に係る好適な実施の形態について説明する。
【0028】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るOOB受信回路の構成例を示す図である。図中、1は差動ライン、2は第1のオフセット印加部、3は第2のオフセット印加部、4は差動メインアンプ、5はLPF、6はオートゲインコントロール部、7は検出部、8はデジタル処理部を示す。差動ライン1は、2つの信号ラインで構成され、差動信号であるOOB信号を構成する互いに逆位相の2つのOOB信号成分(RX−,RX+)を伝送する。
【0029】
本実施形態のOOB受信回路は、差動ライン1の2つの信号ラインにそれぞれ入力されたOOB信号成分(RX−,RX+)の電位をオフセットし、これら2つのOOB信号成分間に電位差を付与するオフセット印加部2,3と、オフセット印加部2,3により電位差が付与された2つのOOB信号成分(RX−′,RX+′)の差分を増幅する差動メインアンプ4と、差動メインアンプ4からの信号出力レベルに応じて差動メインアンプ4のゲインを調整するゲイン調整部の一例であるオートゲインコントロール部6と、差動メインアンプ4から出力されたゲイン調整後のOOB信号を検出する検出部7とを備えている。
【0030】
なお、本実施形態では、オフセット印加部を各信号ラインに1つずつ設けているが、オフセット印加部は少なくとも1つあればよく、いずれか一方の信号ラインにのみ備える構成としてもよい。このことは、後述の第2、第3の実施形態においても同様である。
【0031】
検出部7は、例えば、コンパレータで構成され、差動メインアンプ4から出力された、オートゲインゲインコントロール部6によるゲイン調整後のOOB信号を検出する。各OOB信号は、信号が送信されるバースト期間と、信号が送信されないスケルチ期間とを含む。COMRESET信号及びCOMINIT信号のバースト期間及びスケルチ期間は、それぞれ106.7ns及び320nsであり、COMWAKE信号のバースト期間及びスケルチ期間は、それぞれ106.7nsである。検出部7は、入力信号の電圧と基準電圧Vとを比較し、比較結果に応じて、”H(High)”、または、”L(Low)”を出力する。具体的には、入力信号の電圧が基準電圧V以上であれば、“H(High)”を出力し、基準電圧V未満であれば、“L(Low)”を出力する。つまり、入力信号の電圧が基準電圧V以上か否かを判定することにより、バースト期間とスケルチ期間の検出を行なうようにしている。
【0032】
デジタル処理部8は、検出部7から出力される出力値(“L(Low)”または“H(High)”)に基づいて、OOB信号のパターンの認識を行う。例えば、あるOOB信号に対して規定されたバースト期間及びスケルチ期間がそれぞれ連続して3回以上検出されると、そのOOB信号が検出されたものとみなし、OOB信号のパターン(COMRESET、COMINIT、COMWAKE)を認識する。
【0033】
図1において、差動メインアンプ4から出力されたOOB信号(差動信号)はLPF5で高周波ノイズが除去され、その出力がオートゲインコントロール部6に入力される。オートゲインコントロール部6は、LPF5の出力値(信号出力レベル)に基づいて差動メインアンプ4のゲインを定める。すなわち、出力値(信号出力レベル)が小さいときは、アンプのゲインを上げ、出力値(信号出力レベル)が大きいときは、アンプのゲインを下げる動作をする。
【0034】
ここで問題となってくるのは、前述したように、スケルチ区間は無信号状態であるため、オートゲインコントロール部6が信号なしと判断し、ゲインを最大にしてしまうことである。この場合、スケルチ区間が終わり、バースト信号が入力されたときに、バースト信号がゲイン最大で増幅されることになる。当然バースト信号が入力され続けられるので、わずかな時間でゲインは適正な値になるが、不必要に高いゲインで増幅されたヘッダ部分の信号の波形が歪み、パターン認識できなくなる可能性がある。
【0035】
そこで、本発明では、第1のオフセット印加部2と第2のオフセット印加部3を各信号ラインに設けるようにした。例えば、RX−に信号が入力されるとトランジスタ2bがオンとなり、+VCCと−VCC間に電流が流れる。この場合、抵抗2cにて流れる電流に比例して電圧降下が起こり、+VCCの電圧からの電圧降下分がRX−の電圧となる。+VCCと−VCC間に流れる電流は、電流源2aと可変抵抗2dの値で決まる。RX+側も同様である。つまり意図的にドライブ能力の異なる電流源2a,3aを配置し、可変抵抗2d、3dの値を変えれば、オフセット後のRX−′とRX+′に電位差が生じることになる。これにより、RX−とRX+の2つのOOB信号成分間で電位差を発生させ、スケルチ区間(すなわち、無信号区間)においても、差動メインアンプ4が常に一定の振幅で信号を出力できるようにしている。このため、オートゲインコントロール部6は無信号時であってもゲインを不必要に大きくすることがなく、差動メインアンプ4は適正なゲインで安定して動作することができる。
【0036】
本実施形態では、第1のオフセット印加部2は、第1の電流源2aを含み、第2のオフセット印加部3は、第2の電流源3aを含む。これらの電流源2a,3aは、ドライブ能力(ドライブ電流)が異なるため、RX−,RX+の2つのOOB信号成分間に電位差を設けることが出来る。この際、OOB信号成分RX−の電位は第1の電流源2aによりオフセットされ、第1の電流源2aからOOB信号成分RX−′が出力される。このOOB信号成分RX−′は、OOB信号成分RX−の電位がオフセットされたものである。同様に、OOB信号成分RX+の電位は第2の電流源3aによりオフセットされ、第2の電流源3aからOOB信号成分RX+′が出力される。このOOB信号成分RX+′は、OOB信号成分RX+の電位がオフセットされたものである。
【0037】
そして、上記のオフセットの結果、OOB信号成分RX−′の電位とOOB信号成分RX+′の電位とが異なるため、2つのOOB信号成分間に電位差が発生する。この電位差によりスケルチ区間(無信号区間)であっても、差動メインアンプ4が常に一定の振幅で信号を出力するため、オートゲインコントロール部6が不必要に高いゲインにて信号待機することがなくなる。このため、バースト区間のヘッダ信号での増幅において信号の歪みが出なくなる。なお、オフセット後のOOB信号成分RX−′,RX+′間の電位差は、スケルチ区間において基準電圧V以下になるように設定されるものとする。
【0038】
また、上記例では、OOB信号成分RX−の電位とOOB信号成分RX+の電位を両方オフセットしているが、いずれか一方の電位をオフセットさせることでも、2つのOOB信号成分間に電位差を発生させることができる。この場合、オフセット印加部はいずれかの信号ラインに一つ設けておけばよい。
【0039】
このように本実施形態によれば、少なくとも1つのオフセット印加部により、RX−,RX+のOOB信号成分間に電位差を生じさせ、スケルチ区間(無信号区間)であっても、差動メインアンプのゲインを適正に保つことができるため、OOBパターン検出精度を犠牲にすることなく、ダイナミックレンジの広い、高精度で高感度なOOB受信回路を構成することができる。
【0040】
(第2の実施形態)
上述の第1の実施形態は、本発明のいくつかの実施例のうちの一つを例示したに過ぎず、各種ハードウェア等の構成は、目的、用途等に応じて適宜設計することが可能である。本実施形態では、第1の実施形態と異なる部分について説明する。
【0041】
図2は、本発明の第2の実施形態に係るOOB受信回路の要部構成例を示す図である。図中、11は第1のオフセット印加部、11aは第1のトランジスタ、12は第2のオフセット印加部、12aは第2のトランジスタを示す。本実施形態では、RX−とRX+の2つのOOB信号成分を伝送する2つの信号ラインに、スイッチング用の第1のトランジスタ11a、抵抗11b、可変抵抗11c、及び第2のトランジスタ12a、抵抗12b、可変抵抗12cをそれぞれ配置する。そして、これらのトランジスタ11a,12aとして、意図的に異なるドライブ電流のトランジスタを配置する。つまり、RX−とRX+が同じ振幅であったとしても、トランジスタ11a、12aをオンすることにより、オフセット印加部11,12にそれぞれ異なる電流が流れ、オフセット後のOOB信号成分RX−′とRX+′が異なる振幅を持つ。これにより、RX−,RX+の2つのOOB信号成分間に電位差を設けることが出来る。トランジスタ11a,12aがそれぞれオンされた場合、OOB信号成分RX−,RX+の電位はそれぞれオフセットされる。
【0042】
すなわち、OOB信号成分RX−の電位は第1のトランジスタ11aによりオフセットされ、第1のトランジスタ11aからOOB信号成分RX−′が出力される。このOOB信号成分RX−′は、OOB信号成分RX−の電位がオフセットされたものである。同様に、OOB信号成分RX+の電位は第2のトランジスタ12aによりオフセットされ、第2のトランジスタ12aからOOB信号成分RX+′が出力される。このOOB信号成分RX+′は、OOB信号成分RX+の電位がオフセットされたものである。なお、オフセット後のOOB信号成分RX−′,RX+′間の電位差は、スケルチ区間において基準電圧V以下になるように設定されるものとする。
【0043】
このように本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、RX−,RX+のOOB信号成分間に電位差を生じさせることができる。そして、この電位差によりスケルチ区間(無信号区間)であっても、差動メインアンプが常に一定の振幅で信号を出力することができる。また、オートゲインコントロール部(図示せず)は無信号時であってもゲインを不必要に大きくすることがなく、差動メインアンプは適正なゲインで安定して動作することができ、さらに、トランジスタによりオフセット印加部を構成することで、高精度なOOB受信回路を低コストで実現することができる。
【0044】
(第3の実施形態)
図3は、本発明の第3の実施形態に係るOOB受信回路の要部構成例を示す図である。図中、21は第1のオフセット印加部、21aは第1の抵抗群、21bは第1のマルチプレクサ、22は第2のオフセット印加部、22aは第2の抵抗群、22bは第2のマルチプレクサを示す。第1のオフセット印加部21は、複数の抵抗からなる第1の抵抗群21aと、第1の抵抗群21aから抵抗を選択する抵抗選択部の一例である第1のマルチプレクサ21bとで構成される。同様に、第2のオフセット印加部22は、複数の抵抗からなる第2の抵抗群22aと、第2の抵抗群22aから抵抗を選択する抵抗選択部の一例である第2のマルチプレクサ22bとで構成されている。
【0045】
本実施形態の場合、OOB信号成分RX−を伝送する信号ラインに、第1のマルチプレクサ21bを介して第1の抵抗群21aが接続される。同様に、OOB信号成分RX+を伝送する信号ラインに、第2のマルチプレクサ22bを介して第2の抵抗群22aが接続される。そして、抵抗群21a,22aの中から互いに異なる抵抗をマルチプレクサ21b,22bにより選択し、選択された抵抗が各信号ラインに接続される。つまり、マルチプレクサ21b,22bにより適切な抵抗を選択して、オフセット印加部21,22に流れる電流を調整する。この電流調整により、RX−,RX+の2つのOOB信号成分間に電位差を設けることが出来る。
【0046】
すなわち、OOB信号成分RX−の電位は第1のオフセット印加部21によりオフセットされ、第1のオフセット印加部21からOOB信号成分RX−′が出力される。このOOB信号成分RX−′は、OOB信号成分RX−の電位がオフセットされたものである。同様に、OOB信号成分RX+の電位は第2のオフセット印加部22によりオフセットされ、第2のオフセット印加部22からOOB信号成分RX+′が出力される。このOOB信号成分RX+′は、OOB信号成分RX+の電位がオフセットされたものである。なお、オフセット後のOOB信号成分RX−′,RX+′間の電位差は、スケルチ区間において基準電圧V以下になるように設定されるものとする。
【0047】
このように本実施形態においても、抵抗を適切に選択し、オフセット印加部に流れる電流を調整することで、第1,第2の実施形態と同様に、RX−とRX+の2つのOOB信号成分に電位差を生じさせることができる。そして、この電位差によりスケルチ区間(無信号区間)であっても、差動メインアンプが常に一定の振幅で信号を出力することができる。また、オートゲインコントロール部(図示せず)は無信号時であってもゲインを不必要に大きくすることがなく、差動メインアンプは適正なゲインで安定して動作することができ、さらに、回路構成を単純化することで、OOB受信回路を低コストで実現することができる。
【0048】
以上では、本発明に係るOOB受信回路の各実施形態を中心に説明したが、本発明は、各実施形態で説明したOOB受信回路を備えたSATAコントローラ、あるいは、このSATAコントローラを搭載した電子機器の形態としてもよい。また、本発明は、各実施形態で説明したOOB受信回路を備えたHDD(ハードディスクドライブ)、あるいは、このHDDを搭載した電子機器の形態としてもよい。
【0049】
本発明に係るOOB受信回路を備えたSATAコントローラあるいはHDDを、例えば、PC、テレビ、複写機等の電子機器に搭載することで、OOBパターンの検出精度を犠牲にすることなく、広いダイナミックレンジを確保することができるため、自由度の高い機構設計を行うことができる。
【符号の説明】
【0050】
1…差動ライン、2,11,21…第1のオフセット印加部、2a…第1の電流源、3,12,22…第2のオフセット印加部、3a…第2の電流源、4…差動メインアンプ、5…LPF、6…オートゲインコントロール部、7…検出部、8…デジタル処理部、11a…第1のトランジスタ、12a…第2のトランジスタ、21a…第1の抵抗群、21b…第1のマルチプレクサ、22a…第2の抵抗群、22b…第2のマルチプレクサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリアルATAにおけるOOB信号を受信するOOB受信回路であって、
前記OOB信号を構成する互いに逆位相の2つのOOB信号成分を伝送する差動ラインと、該差動ラインの2つの信号ラインにそれぞれ入力されたOOB信号成分のうちの少なくとも一方のOOB信号成分の電位をオフセットし前記2つのOOB信号成分間に電位差を付与するオフセット印加部と、該オフセット印加部により電位差が付与された2つのOOB信号成分の差分を増幅する差動メインアンプと、該差動メインアンプからの信号出力レベルに応じて該差動メインアンプのゲインを調整するゲイン調整部と、前記差動メインアンプから出力されたゲイン調整後のOOB信号を検出する検出部とを備えたことを特徴とするOOB受信回路。
【請求項2】
前記オフセット印加部は、電流源を含むことを特徴とする請求項1に記載のOOB受信回路。
【請求項3】
前記オフセット印加部は、トランジスタを含むことを特徴とする請求項1に記載のOOB受信回路。
【請求項4】
前記オフセット印加部は、複数の抵抗からなる抵抗群と、該抵抗群から抵抗を選択する抵抗選択部とを含むことを特徴とする請求項1に記載のOOB受信回路。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のOOB受信回路を備えたSATAコントローラ。
【請求項6】
請求項5に記載のSATAコントローラを搭載した電子機器。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のOOB受信回路を備えたハードディスクドライブ。
【請求項8】
請求項7に記載のハードディスクドライブを搭載した電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−45275(P2013−45275A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182366(P2011−182366)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】