説明

OS起動方法及びプロトコル変換器

【課題】汎用のPCにおいて、PCIバス用スロット等のような1つの汎用バス用スロットを消費することなくネットブートの仕組みを構築する。
【解決手段】本実施形態に係るプロトコル変換器1は、内蔵ハードディスクドライブ用コネクタに接続可能であり、システムBIOSからの要求に応じてMBRを提供するMBRエミュレート部11と、二次ブートローダからのOS取得要求に応じて、ネットワークを介して、リモートハードディスクドライブからOSを取得する第1インターフェース13と、第1インターフェイス13によって取得されたOSを、二次ブートローダに対して提供する第2インターフェース12と、第1インターフェース13で用いられる第1プロトコルと第2インターフェース12で用いられる第2プロトコルとを変換する変換部とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CPU及びメモリを具備するコンピュータシステムにおけるOS起動方法、及び、CPU及びメモリを具備するコンピュータシステムにおけるハードディスクドライブ用コネクタに接続可能なプロトコル変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザが使用するクライアント端末(コンピュータシステム)に必要最小限の処理をさせ、ほとんどの処理をサーバ装置側に集中させたシステムアーキテクチャを有する「シンクライアント(Thin Client)システム」が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
かかるシンクライアントシステムで使用されるクライアント端末(コンピュータシステム)は、ハードディスクドライブ等の記憶装置を具備しておらず、「シンクライアント端末」と呼ばれている。
【特許文献1】特許第4013980号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のシンクライアント端末では、ネットブートの仕組みを構築するために、少なくても1つの汎用バス用スロット(例えば、PCIバス用スロット等)を使用しなければならないという問題点があった。
【0005】
すなわち、従来のシンクライアント端末では、ネットブートの仕組みを構築するにあたって、PXE(Preboot eXecution Environment)対応のネットワークカード等を挿入するためのPCIバス用スロット等を消費してしまうという問題点があった。
【0006】
或いは、従来のシンクライアントシステムを構築するには、専用のシステムを用いなければならないという問題点があった。
【0007】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、汎用のPC(Personal Computer)やサーバを用いて、かつ、PCIバス用スロット等のような1つの汎用バス用スロットを消費することなく、ネットブートの仕組みを構築することができるOS起動方法及びプロトコル変換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の特徴は、CPU及びメモリを具備するコンピュータシステムにおけるOS起動方法であって、電源投入時に、前記CPUが、システムBIOSを実行する工程と、前記システムBIOSが、初期プログラムロード用機器として、内蔵ハードディスクドライブを選択する工程と、前記システムBIOSが、前記内蔵ハードディスクドライブ用コネクタに接続されているプロトコル変換器から、マスターブートレコードを取得する工程と、前記システムBIOSが、前記マスターブートレコードに基づいて、ブートローダを前記メモリに読み込んで実行する工程と、前記ブートローダが、二次ブートローダを前記メモリに読み込んで実行する工程と、前記二次ブートローダが、前記プロトコル変換器に対して、OS取得要求を送信する工程と、前記プロトコル変換器が、受信した前記OS取得要求に基づいて、ネットワークを介して、リモートハードディスクドライブからOSを取得し、前記二次ブートローダに対して該OSを提供する工程と、前記二次ブートローダが、前記プロトコル変換器によって提供された前記OSを前記メモリに読み込んで実行する工程とを有することを要旨とする。
【0009】
本発明の第2の特徴は、CPU及びメモリを具備するコンピュータシステムにおけるハードディスクドライブ用コネクタに接続可能なプロトコル変換器であって、システムBIOSからの要求に応じて、マスターブートレコードを提供するように構成されているMBRエミュレート部と、前記二次ブートローダからのOS取得要求に応じて、ネットワークを介して、リモートハードディスクドライブからOSを取得するように構成されている第1インターフェースと、前記第1インターフェイスによって取得された前記OSを、前記二次ブートローダに対して提供するように構成されている第2インターフェースと、前記第1インターフェースで用いられる第1プロトコルと前記第2インターフェースで用いられる第2プロトコルとを変換するように構成されている変換部とを具備することを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明によれば、汎用のPC(Personal Computer)やサーバを用いて、かつ、PCIバス用スロット等のような1つの汎用バス用スロットを消費することなく、ネットブートの仕組みを構築することができるOS起動方法及びプロトコル変換器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(本発明の第1の実施形態に係るプロトコル変換器)
図1及び図2を参照して、本発明の第1の実施形態に係るプロトコル変換器1について説明する。
【0012】
図1に、本発明の第1の実施形態に係るプロトコル変換器1を搭載したコンピュータシステムの構成について示す。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係るプロトコル変換器1は、CPU及びメモリを具備するコンピュータシステムにおけるATA(AT Attachment)インターフェース用コネクタ(内蔵ハードディスクドライブ用コネクタ)に接続するように構成されている。
【0014】
なお、本実施形態に係るプロトコル変換器1は、かかるコンピュータシステムにおけるUSB(Universal Serial Bus)用コネクタに接続するように構成されていてもよい。
【0015】
具体的には、本実施形態に係るプロトコル変換器1は、図2に示すように、変換部10と、MBR(Master Boot Record)エミュレート部11と、SATA(Serial ATA)ターゲット用インターフェース12と、iSCSI(Internet Small Computer System Interface)イニシエータ用インターフェース13と、設定部14とを具備している。
【0016】
変換部10は、iSCSIイニシエータ用インターフェース13(第1インターフェース)で用いられるiSCSIプロトコル(第1プロトコル)とSATAターゲット用インターフェース12(第2インターフェース)で用いられるSATAプロトコル(第2プロトコル)とを変換するように構成されている。
【0017】
ここで、第1プロトコルは、iSCSIプロトコル以外のプロトコルであってもよいし、第2プロトコルは、SATAプロトコル以外のプロトコルであってもよい。
【0018】
また、変換部10は、iSCSIイニシエータ用インターフェース13によって受信されたiSCSIプロトコルのコマンドを、SATAプロトコルのコマンドに変更してSATAターゲット用インターフェース12に送信するように構成されている。
【0019】
一方、変換部10は、SATAターゲット用インターフェース12によって受信されたSATAプロトコルのコマンドを、iSCSIプロトコルのコマンドに変換してiSCSIイニシエータ用インターフェース13に送信するように構成されている。
【0020】
MBRエミュレート部11は、システムBIOS(Basic Input/Output System)からの要求に応じて、マスターブートレコード(MBR)を提供するように構成されている。
【0021】
SATAターゲット用インターフェース12は、SATAターゲットとしての機能をエミュレートするように構成されている。
【0022】
例えば、SATAターゲット用インターフェース12は、iSCSIイニシエータ用インターフェース13によって取得されたOS(Operating System)を、二次ブートローダに対して提供するように構成されている。
【0023】
なお、SATAイニシエータからのSATAプロトコルのコマンドに対応する機能が、プロトコル変換器1においてサポートされていない場合、SATAターゲット用インターフェース12は、予め決められた応答処理を行うように構成されている。
【0024】
iSCSIイニシエータ用インターフェース13は、iSCSIイニシエータとしての機能をエミュレートするように構成されている。
【0025】
例えば、iSCSIイニシエータ用インターフェース13は、二次ブートローダからのOS取得要求に応じて、基幹ネットワークを介して、iSCSI HDD2(リモートハードディスクドライブ)からOSを取得するように構成されている。
【0026】
なお、iSCSIイニシエータ用インターフェース13は、iSCSIターゲットからの全てのコマンドに対して応答することができるように構成されている。
【0027】
設定部14は、iSCSIイニシエータ用インターフェース13における設定を行うように構成されている。
【0028】
なお、本実施形態に係るプロトコル変換器1は、iSCSIプロトコルにおける高速な暗号化を実現するために、暗号化エンジンを搭載していてもよい。
【0029】
(本発明の第1の実施形態に係るコンピュータシステムにおけるOS起動方法)
図3及び図4を参照して、本発明の第1の実施形態に係るコンピュータシステムにおけるOS起動方法について説明する。
【0030】
ステップS101において、ユーザが、コンピュータシステムの電源を投入すると、ステップS102において、CPUが、システムBIOSを実行する。
【0031】
ここで、ユーザは、システムBIOSの標準出力として表示された設定画面において、iSCSIイニシエータ用インターフェース13における設定を行う。
【0032】
例えば、ユーザは、かかる設定画面において、iSCSIターゲット(例えば、iSCSI HDD)、及び、かかるiSCSIターゲットにおけるマウントポイント等を設定する。
【0033】
ステップS103において、システムBIOSが、初期プログラムロード(IPL:Initial Program Load)用機器として、内蔵ハードディスクドライブを選択する。
【0034】
なお、本実施形態では、システムBIOSにおいて、初期プログラムロード用機器として選択すべきドライブの優先度が、図4に示すように設定されているものとする。
【0035】
そして、システムBIOSが、ATAインターフェース用コネクタ(内蔵ハードディスクドライブ用コネクタ)に接続されているプロトコル変換器1から、マスターブートレコード(MBR)を取得する。
【0036】
ステップS104において、システムBIOSが、かかるマスターブートレコードに基づいて、ブートローダ(一次ブートローダ)をメモリに読み込んで実行する。
【0037】
ここで、ブートローダは、iSCSI HDD2に記録されており、ネットワークを介してプロトコル変換器1によって取得されるように構成されていてもよい。
【0038】
ブートローダは、ステップS105において、iSCSIプロトコルにおいて必要な認証処理を行い、ステップS106において、iSCSIプロトコルにおいて必要な設定を行う。
【0039】
ステップS105において、ブートローダが、二次ブートローダをメモリに読み込んで実行する。
【0040】
ここで、二次ブートローダは、iSCSI HDD2に記録されており、ネットワークを介してプロトコル変換器1によって取得されるように構成されていてもよい。
【0041】
ステップS106において、二次ブートローダが、プロトコル変換器1に対して、OS取得要求を送信する。
【0042】
そして、プロトコル変換器1が、SATAターゲット用インターフェース12を介して受信したOS取得要求に基づいて、ネットワークを介して、iSCSI HDD2(リモートハードディスクドライブ)からOSを取得し、二次ブートローダに対して当該OSを提供し、かかる二次ブートローダが、プロトコル変換器によって提供された当該OSをメモリに読み込んで実行する。
【0043】
ここで、OSは、上述の設定画面を介して設定されたiSCSI HDD2のマウントポイントによって特定されている領域に記録されている。
【0044】
(本発明の第1の実施形態に係るプロトコル変換器の作用・効果)
本発明の第1の実施形態に係るプロトコル変換器1は、内蔵ハードディスクドライバの代わりに、ATAインターフェース用コネクタに接続されるように構成されているため、PCIバス用スロット等のような1つの汎用バス用スロットを消費することなくネットブートの仕組みを構築することができる。
【0045】
また、本発明の第1の実施形態に係るプロトコル変換器1によれば、システムBIOSによって正常に読み込まれない可能性がある拡張BIOSや、ドライバを必要とするコンピュータシステムにおけるSCSIリソースを用いることなく、ネットブートの仕組みを構築することができる。
【0046】
なお、上述の実施形態では、本発明に係るプロトコル変換器1を、コンピュータシステム(シンクライアントシステム)に用いる例について記載されているが、本発明に係るプロトコル変換器1は、コンピュータシステム(シンクライアントシステム)以外に、例えば、メディアサーバやSTB(Set Top Box)に用いられてもよい。
【0047】
以上、上述の実施形態を用いて本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。従って、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るプロトコル変換器を搭載したコンピュータシステムの構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るプロトコル変換器の機能ブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るプロトコル変換器が搭載されているコンピュータにおけるブート時の動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る本発明の第1の実施形態に係るプロトコル変換器が搭載されているコンピュータに設定されているシステムBIOSの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1…プロトコル変換器
10…変換部
11…MBRエミュレート部
12…SATAターゲット用インターフェース
13…iSCSIイニシエータ用インターフェース
14…設定部
2…iSCSI HDD

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CPU及びメモリを具備するコンピュータシステムにおけるOS起動方法であって、
電源投入時に、前記CPUが、システムBIOSを実行する工程と、
前記システムBIOSが、初期プログラムロード用機器として、内蔵ハードディスクドライブを選択する工程と、
前記システムBIOSが、前記内蔵ハードディスクドライブ用コネクタに接続されているプロトコル変換器から、マスターブートレコードを取得する工程と、
前記システムBIOSが、前記マスターブートレコードに基づいて、ブートローダを前記メモリに読み込んで実行する工程と、
前記ブートローダが、二次ブートローダを前記メモリに読み込んで実行する工程と、
前記二次ブートローダが、前記プロトコル変換器に対して、OS取得要求を送信する工程と、
前記プロトコル変換器が、受信した前記OS取得要求に基づいて、ネットワークを介して、リモートハードディスクドライブからOSを取得し、前記二次ブートローダに対して該OSを提供する工程と、
前記二次ブートローダが、前記プロトコル変換器によって提供された前記OSを前記メモリに読み込んで実行する工程とを有することを特徴とするOS起動方法。
【請求項2】
CPU及びメモリを具備するコンピュータシステムにおける内蔵ハードディスクドライブ用コネクタに接続可能なプロトコル変換器であって、
システムBIOSからの要求に応じて、マスターブートレコードを提供するように構成されているMBRエミュレート部と、
二次ブートローダからのOS取得要求に応じて、ネットワークを介して、リモートハードディスクドライブからOSを取得するように構成されている第1インターフェースと、
前記第1インターフェイスによって取得された前記OSを、前記二次ブートローダに対して提供するように構成されている第2インターフェースと、
前記第1インターフェースで用いられる第1プロトコルと前記第2インターフェースで用いられる第2プロトコルとを変換するように構成されている変換部とを具備することを特徴とするプロトコル変換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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