説明

P.multocidaのfur細胞およびその外膜タンパク質の抽出物によるPasteurellamultocidaに対する異種性の防御

本発明は、毒性のP. multocidaによる感染症に対して異種性の防御を付与することができるPasteurella multocidaの変異体に関する。上記変異体は、fur ompH遺伝子およびfur ompH galE遺伝子に欠損を有する。本発明は、P. multocidaから得られたfur ompH二重変異体、およびfur ompH galE三重変異体、または上記変異体から得られる鉄によって制御される外膜タンパク質(IROMPs)の抽出物を含むPasteurella multocida細菌ワクチン、および賦形剤および/または薬学的に許容可能なアジュバントに関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、毒性のP. multocidaによる感染症に対する異種性の防御(heterologous protection)を実現できるPasteurella multocidaの変異体に関する。これらの変異体は、fur ompH遺伝子およびfur ompH galE遺伝子に欠損を有する。本発明は、P. multocidaから得られる、furとompHとの二重変異体およびfurとompHとgalEとの三重変異体、または、これらの変異体から得られる鉄によって制御される外膜タンパク質(IROMPs)の抽出物と、賦形剤と、および/または、薬学的に許容可能なアジュバントと、を含む、パスツレラ属細菌(特に、Pasteurella multocida)に対するワクチン組成物に関する。
【0002】
〔背景技術〕
世界的に、動物およびヒト(特に子供)が罹る病気の主な原因は、細菌の感染である。パスツレラ属細菌は病原菌であり、現在、Pasteurella multocidaを含む20の種が存在している。Pasteurella multocidaは、豚やその他の家畜において、家禽コレラ、ウシの肺炎、出血性敗血症、萎縮性鼻炎などの様々な感染症を引き起こす病原菌であり、この感染症の制御は、上記家畜を飼育する畜産農家にとって極めて重要である。
【0003】
それ故に、家畜を感染症から守るワクチンを開発する必要がある。ワクチンを開発する目的は、できる限り長期間に渡る十分な防御を提供することにある。
【0004】
従来から、大別して3つのタイプのワクチンが開発されてきた。
a)生きた病原菌の毒性を生育にとって低減、除去、または無毒化して生成する「弱毒化生ワクチン(live attenuated vaccines)」、
b)病原菌の精製された成分を使用するワクチン、
c)死んだ病原菌を直接使用する「死菌ワクチン(killed vaccines)」、
これらの3種類のワクチンは、それぞれ利点および欠点をもつ。弱毒化生ワクチンは、自然の疾病と同様の条件下において防御を生み出す。しかし、b)およびc)のタイプのワクチンの方が、安全性の観点からは好ましい。
【0005】
獣医学では、主にP. multocidaのワクチン接種は、「バクテリン」として知られる不活性化されたP. multocidaの使用、または弱毒化された生細菌の使用に基づいている。バクテリンは、同種性の防御(homologous protection)のみを付与する。生ワクチンは、同種性の防御および異種性の防御を付与するが、不明な弱毒マーカーを含み、場合によっては集団感染(epidemic outbreaks)を招くこともあった。
【0006】
米国特許3,855,408、米国特許4,169,886、および米国特許4,626,430は、P. multocidaの「生ワクチン」について記載している。
【0007】
WO98/56901 A2(発明の名称:弱毒化生ワクチン)は、弱毒化された細菌について開示している。この弱毒化された細菌では、fur遺伝子またはfur遺伝子の同種遺伝子(homolog)の発現が、細菌が生育している培地中に存在する鉄の濃度と関係なく制御されるように、fur遺伝子またはfur遺伝子の同種遺伝子が改変されている。上記細菌を「生ワクチン」として使用することができる。上記文献は、特にNeisseria meningitidisに焦点を当てているが、あらゆるグラム陰性菌に関するものである。
【0008】
ヒトまたは動物が生産しない代謝産物(metabolite)または異化生成物(catabolite)を生産するために必要な遺伝子の変異によって、細菌が弱毒化される。好適には、細菌を弱毒化するための変異は、aro遺伝子、またはプリンまたはピリミジン経路に関与する遺伝子の変異である。本発明の他の形態では、細菌は、recAに変異を有する。
【0009】
また、本発明は、ワクチン、および本発明に基づいた細菌を産生するための方法を提供する。当該方法は、fur遺伝子またはその同種遺伝子の発現が、細菌をとりまく環境中に存在する鉄の濃度に関係なく制御されるように、弱毒化細菌の野生型fur遺伝子またはその同種遺伝子を改変することを含む。
【0010】
上記文献によれば、弱毒化生ワクチンを産生しようとする過去の試みでは、交叉防御(cross protection)にとって重要な特定のタンパク質を、バルク培養中の生物が産生しなかった。これらのタンパク質には、鉄によって制御されるタンパク質が含まれており、その産生がfur遺伝子によって調整される。さらに、一旦これらの細菌が宿主に投与されると、制限されたコロニー形成の間では、ワクチン株は、上記タンパク質を発現させるための時間または代謝資源を有していなかった。
【0011】
furの発現が改変された弱毒化細菌株の作製は、一般的に用いられている技術である。したがって、fur遺伝子またはその同種遺伝子を有する病原菌を、当該病原菌が病原として働く宿主内における成長にとって不可欠な遺伝子を抑制または改変することによって弱毒化させ、上述したように、細菌の環境下に存在する鉄の濃度とは関係なく細菌がfur遺伝子またはその同種遺伝子の産物を生成するように、上記弱毒化された病原菌を改変することができる。fur遺伝子の同種遺伝子は、例えば、E. coliやN. meningitidisなどの、他のfur遺伝子の配列との比較によって同定され得る。好適には、これらの同種遺伝子は、他の周知のfur遺伝子と実質的に同種(homologous)であり、少なくとも100アミノ酸の長さにおいて60〜70%が同一(identity)である。したがって、転写因子をコードし、鉄の存在に対して反応性を有する遺伝子であれば、他の細菌において同定された遺伝子を使用してもよい。
【0012】
また、本発明は、ワクチンに使用する細菌に安定性を与えるために、recA遺伝子およびcomA遺伝子における変異を提案している。これらの変異は、記載されている残りの改変の後に、最終的な遺伝子改変として導入される必要がある。
【0013】
欧州特許出願2 059 503T3(発明の名称:パスツレラ症のワクチン“Vacuna contra la pasteurelosis”)は、パスツレラ遺伝子を有する細菌(特にPasteurella multocida)に対する症例について記載している。
【0014】
上記文献によると、鉄が制限された条件下にてパスツレラ生体を培養する場合、鉄、外膜抽出物、または全細胞溶解液は、in vitroの通常条件下において得られるものとは異なるタンパク質プロフィールを形成する。この異なるタンパク質プロフィールは、通常の成長条件下において培養された同じ生体によって形成されたタンパク質プロフィールよりも免疫原性が高い。本発明は、ワクチンの調製を目的として、鉄が制限された条件下において培養された、「バクテリン」を含む不活性化パスツレラ全細胞溶解液を含む。
【0015】
本発明は、ホモ血清型(homologous serotype)を使用したワクチン製剤について提案しているが、病理学的に重要な全てのパスツレラ血清型(Pasteurella serotypes)の、鉄によって制御されるタンパク質を含む多価ワクチンをも含む。したがって、上記特許文献は、鉄調節タンパク質、当該タンパク質のモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体、およびワクチン製剤に焦点を当てている。ワクチン製剤では、動物用ワクチン中にて、タンパク質材料が代表的なコアジュバント(coadjuvant)の何れかと混合される。上記文献では、使用するキレート試薬の濃度が高すぎると細菌の培養が阻害されることから、その濃度を慎重に制御する必要がある。
【0016】
米国特許6,790,950 B2(発明の名称:抗菌ワクチン組成物)は、グラム陰性細菌の毒性の遺伝子を特定している(具体的には、Pasteurella multocidaに焦点を当てている)。この文献により、これらの毒性の遺伝子およびその産物に対する新たな抗菌剤(antibacterial agents)を特定することができる。
【0017】
上記特許は、従来用いられてきた、血清に対して特異的な防御のみを提供する死菌(不活性化細菌)の全細胞を使用したワクチン組成物を作製する試みに関するものであるが、異なる血清の存在を鑑みると、ワクチン接種に関する問題を含む。発明者らは、不活性化されたApxII毒素を産生する弱毒化細菌ワクチンが交叉防御を示すと述べている。
【0018】
不明確な自然突然変異を有する細菌株を含むワクチン製剤に関する問題を考慮して、上記文献の著者らは、弱毒化細菌の同定、および細菌の毒性に必須である、抗菌剤を特定するための方法の進歩に役立つ遺伝子の同定だけでなく、安全で、パスツレラ血清型に対する同種性の防御および異種性の防御を提供するワクチンとして使用できる弱毒化細菌の構築に焦点を当てている。したがって、上記文献は、特定の遺伝子配列中の機能突然変異(functional mutations)を含むグラム陰性細菌性生物(とりわけ、Pasteurella multocida)を提供する。この突然変異は、遺伝子によってコードされた産物の発現または生物活性を抑制または阻害し、この突然変異によって、細菌株の毒性が弱くなる。
【0019】
細菌感染またはそれに伴う症状を予防するワクチンを構築するという観点から、突然変異を起こした弱毒化されたグラム陰性細菌、および、任意の薬学的に許容可能なアジュバントおよび/または賦形剤もしくは希釈剤を含む組成物について説明されている。
【0020】
本発明者らは、本発明の改変された菌株が有効な製剤になるためには、感染症による臨床症状を抑えるには十分であって、しかも、宿主における細菌の複製および限定的な成長を可能にする程度に弱毒化を行う必要があると指摘している。
【0021】
本発明は、弱毒化されたP. multocida株、(ヒトおよび動物に投与可能な)ワクチン、グラム陰性細菌の毒性に必要な遺伝子産物をコードしているポリヌクレオチド、感染したポリヌクレオチドによって形質転換された宿主細胞、本発明に係るポリペプチドの生成方法、本発明の抗菌剤の投与による、グラム陰性細菌に感染した被験者の治療方法などを提供する。
【0022】
しかし、本出願は、与えられた配列によってコードされたポリヌクレオチド、当該ポリヌクレオチドを含むベクター、および、当該ベクターによって形質転換された宿主細胞を請求している。本願に記載された弱毒化Pasteurella細菌は、弱毒化されて使用される。
【0023】
本発明のfur変異の目的は、細菌の毒性の低減を意図するものではないので、上記グループの変異には含まれない。米国特許6,790,950B2には、死菌の全細胞のワクチン接種によって異種性の防御を付与するのは難しいと記載されているが、本出願に係る発明は、その達成を目的としている。
【0024】
WO99/29724A2(発明の名称:Pasteurella multocidaの外膜タンパク質をコードするDNA)は、鳥類のPasteurella multocidaの膜タンパク質またはOmpHポリペプチド、および、生物活性サブユニットまたは変異体をコードする予め選択された核酸配列を含む、単離および精製された核酸分子を請求している。これを達成するために、(73%は同一である)16 P. multocida血清型のOmpHsの配列を決めて複製している。
【0025】
上記特許文献は、単離されかつ精製された外膜X−73ポリペプチドを介した、鶏の同種性の防御の研究を示している。また、上記発明に係る免疫原性組成物が、バクテリンと組み合わせて使用され得ることも記載されている。これらの免疫原性組成物は、有効量の単離精製されたP. multocida外膜ポリペプチド、サブユニット、ペプチド、変異体またはそれらの混合物、ならびに組成物を脊椎に投与した後でP. multocida外膜のポーリンに特異的な抗体の産生を促す薬学的に許容可能な賦形剤を含む。また、上記発明は、鶏のP. multocidaに特異的な抗体の存在を検出または測定する方法をも提供する。
【0026】
非特許文献「深海の細菌Photobacterium sp. SS9における高圧信号伝達を追跡するレポータ遺伝子の使用」[Ellen Chi and Douglas H. Bartlett, (American Society for Microbiology, pp. 7533-7540 (1993))では、好圧菌であるPhotobacterium spl SS9の第一遺伝子システムが開発されている。上記システムを、静水圧の変化に応答するompH遺伝子の発現を制御する調節機構の初期特性に使用することについて記載されている。
【0027】
ompH遺伝子と圧力との関係を研究するために、ompHLac Photobacterium spl株が得られる。また、1アトムの圧力条件下において選択された変異ompH株が得られる。その結果、4つの変異体が得られる。そのうち3つの変異体は、発現について培地の圧力の影響を受けない。しかし、4つ目の変異体(EC1002)は、圧力に対して極めて高い感受性をもつことが実証されている。したがって、EC1002のような圧力に対して感受性がある変異体の特性を将来調べることにより、高圧へ適合するために必要な機能を同定する機会が得られるであろう。
【0028】
上記非特許文献に記載された研究では、グラム陰性細菌のompH変異体が作製されてはいるが、これらの変異体は上記細菌に対する免疫研究を目的としておらず、この特定の場合では、ompH欠損変異体は、高圧における成長にとって重要な機能の特定を目的としている。
【0029】
最後に、本願の著者らは、文献「Expression of the Pasteurella multocida ompHgene is negatively regulated by the Fur protein」[Montserrat Bosch, Raul Tarrago, Ma Elena Garrido, Susana Campoy, Antonio R. Fernandez de Henestrosa, Ana M. Perez de Rozas, Ignacio Badiola and Jordi Barbe; FEMS Microbiology Letters 203, 35-40 (2001)]において、P. multocidaにおける鉄の取り込みに関する機構および調整について研究している。P. multocidaのfur変異体を構築することによって、(高い抗原性を有する)主要な構造膜タンパク質(main structural membrane protein)をコードするompH遺伝子が、furタンパク質、鉄およびグルコースによって負に調節されることを実証した。同様に、野生型およびfur欠損型のP. multocida細胞が、同レベルの毒性をもつことも実証された。
【0030】
上記文献は、生成物、つまり、Fe2+依存性のDNA結合活性を有する17KDaのタンパク質を介した、細菌の鉄の取り込みシステムにおけるfur遺伝子の役割について説明している。furタンパク質は、正(positive)の調節因子または負(negative)の調節因子として機能し得る。
【0031】
鉄が欠乏した条件下における培養により、毒性のP. multocida株によって起こる感染症に対する異種性の防御が誘発されることが周知であることを考慮して、著者らは、当該細菌のfur欠損変異体を採取し単離して、特徴付けることを提案している。上記遺伝子のヌクレオチド配列は、GenBankに受託番号AF027154として登録されている。
【0032】
上記文献は、P. multocidaのfur変異体のクローン化および作製について記載している。この目的のために、fur遺伝子の内部領域を含む自殺プラスミド(suicide plasmid)の単一の組み換え(simple recombination)によって、P. multocidaのfur遺伝子を不活性化させる。Fur1プライマーおよびFur2プライマーを用いたPCR増幅によって、fur遺伝子の18−412ヌクレオチドを含む394塩基対の断片が得られる。この断片を自殺プラスミドpUA826にクローン化してプラスミドpUA891を作製し、プラスミドpUA891が、「トリペアレンタルメイティング(triparental mating)」によってP. multocidaに導入される。ストレプトマイシン抵抗性のトランス接合体が選択される。
【0033】
本特許出願の目的である、二重変異体および三重変異体を得るための開始点として、fur遺伝子、増幅領域、使用するプライマー、およびプラスミドを不活性化する方法が用いられる。
【0034】
上記文献において実施された研究は、(上述した36KDaであるポーリンをコードする)野生型のP. multocidaのompH遺伝子の発現分析、およびfur変異体における分析へと続いている。ompHの発現は、野生型の株よりもfur変異体において多いことが観察されている。このことから、ompHの発現がfurによって負に調節されていることがわかる。上記文献では、fur変異体の毒性の研究も行っており、野生型のP. multocidaおよびfur変異体の毒性は、同じレベルであると結論づけられている。
【0035】
上記文献は、「バクテリン」を得ることを目的とした、P. multocidaによる感染症に対する防御を行う抗原としてompHタンパク質が機能することが実証された事実を鑑みて、グルコースがompH遺伝子の発現に対して阻害作用を及ぼすことから、グルコースを除去した条件下において、使用する株を培養する必要があると結論付けている。
【0036】
〔発明の要約〕
本発明の目的は、Pasteurella multocidaのfur ompH変異体から調製される外膜タンパク抽出物が毒性Pasteurella multocidaに対して完全な異種性の防御を行うことから、Pasteurella multocidaのfur ompH二重変異体およびfur ompH galE三重変異体を含むワクチンを生成するための材料および方法を提供することにある。
【0037】
本発明は、熱によって不活性化されたP. multocidaのFur ompH変異体およびfur ompH galE三重変異体の使用が、毒性のP. multocidaに対する60%の交叉防御を付与することについても言及している。同様に、本発明は、超音波処理を用いて細胞を不活性化させた場合、熱処理のみの場合よりも高いレベルの防御が得られることも指摘している。
【0038】
したがって、本発明の目的は、毒性のP. multocidaに対する防御のために免疫原として使用される二重変異体および三重変異体を含む組成物を提供することにある。
【0039】
同様に、例えば家禽コレラだけでなく、豚、ウシおよび小動物の肺炎などのP. multocidaによる感染症に対するワクチンの提供も本発明の目的である。
【0040】
さらに、本発明は、P. multocidaによって発病する危険がある動物に上記ワクチンを投与するためのキットを提供する。上記ワクチンは、fur、fur ompH(二重変異体)、および/または、fur ompH galE(三重変異体)が欠損したP. multocidaから得られる外膜タンパク質の抽出物と、投与に適したアジュバントを任意で含む薬学的に許容可能な賦形剤と、を含む。
【0041】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、Pasteurella multocidaのfur変異体のPCR分析を示す。
【0042】
図1Aは、P. multocidaのfur変異体の構成を示す。Fur3およびAad3は、Fur変異の存在を確認するために使用するプライマーの位置を示している。
【0043】
図1Bは、Aad3プライマーおよびFur3プライマーを用いてPCR分析を行った、野生型の菌株(PM1011(レーン2)、Fur変異体(PM 1095)(レーン3)、およびFur ompH変異体(PM1094)(レーン4)の染色体DNAを示している(表2)。対照であるDNAを含まないPCRを、レーン5に示している。HinfIによって消化したファージΦX174のDNAを、分子量マーカーとして使用した(レーン1およびレーン6)。
【0044】
図2は、P. multocidaのompH1遺伝子およびompH2遺伝子の構造を示している。RTompH1up、RTompH1rp、RTompH2upおよびRTompH2rpは、転写解析に使用されるプライマーの位置を示している。
【0045】
図2Aは、pmpH1遺伝子の転写物のRT−PCR分析の結果を示している。
【0046】
図2Bは、ompH2遺伝子の転写物のRT−PCR分析の結果を示している。
【0047】
図2Cは、想定されるompH1−ompH2オペロン遺伝子の転写物のRT−PCR分析の結果を示している。
【0048】
図2Dは、野生型株(PM1011)(レーン2)およびfur ompH変異体(PM1094)(レーン3)における遺伝子の転写物のRT−PCR分析の結果を示している。上記各菌株の全RNA、RTompH1upとRTompH1rpとのプライマー対、RTompH2upとRTompH2rpとのプライマー対、および、RTompH1upとRTompH2rpとのプライマー対を使用した。野生型株のDNAのPCR(レーン4)、および、RNAまたはDNAを用いないネガティブな対照(レーン5)のPCRについても示す。HinfIによって消化されたファージΦX174のDNA(BおよびC)、およびBstEIIによって消化されたファージλのDNA(D)を分子量マーカーとして使用した(レーン1およびレーン6)。
【0049】
図3は、P. multocidaのgalE変異体のPCR分析を示している。
【0050】
図3Aは、P. multocidaのgalE変異体の構成を示している。GalEint2upおよびpKO3−Rは、galE変異体の存在を確認するために使用するプライマーの位置を示している。
【0051】
図3Bは、GalEint2upプライマーおよびpKO3−Rプライマーを用いたPCR分析を行った、野生型株(PM1011)(レーン2)、fur ompH変異体(PM1094)(レーン3)、およびfur ompH galE変異体(PM1096)(レーン4)の染色体DNAを示している(表2)。DNAを用いない対照のPCRを、レーン5に示す。BstEIIによって消化されたファージλのDNAを分子量マーカーとして使用した(レーン1およびレーン6)。
【0052】
〔発明の詳細な説明〕
本発明は、P. multocidaによる感染症に対する異種性の防御を促進することができるPasteurella multocida由来の変異体、およびワクチンにおけるその利用に関する。これらの変異体は、fur遺伝子に異常を有している。この変異体については、以前、本発明の発明者らと同一の著者らが説明しているが、ワクチンにおけるその利用については説明していない。P. multocidaのfur変異体に加えて、fur ompH変異体などの二重変異体、および、fur ompH galE変異体などの三重変異体が得られる。これらをワクチンに加えることによって、P. multocidaによる感染症に対する異種性の防御を実現する。
【0053】
殆ど全ての生細胞にとって、鉄は必須の元素である。Haemophilus influenzaeやNeisseria meningitidisなどの多くのグラム陰性の病原菌は、当該病原菌の外膜に、宿主生物の粘膜に存在する、トランスフェリン、ラクトフェリン、ヘモグロビン、ヘミン、フェリチンなどの鉄結合性分子に結合するタンパク質を有している(Ratledge, C. and L.G. Dover. Annu. Rev. Microbiol. 54: 881-941. 2000)。これらの外膜タンパク質の略全ての発現は、Fur(鉄取り込み調節)タンパク質によって制御されている(Stojiljkovic, I., et al. A.J. Baumler and K. Hantke. J. Mol. Biol. 236: 531-545. J. Mol. Biol. 240: 271. 1994)。Furタンパク質は、細菌の細胞質に存在する鉄に結合する。この反応において、Furタンパク質は、Fe(II)と複合体を形成する。次いで、当該複合体は、鉄調節遺伝子のプロモータ領域において、「fur box」(2,12,14)として知られる特定のDNA配列に結合し、その結果、それらの転写を阻害する。鉄によって制御される外膜タンパク質(IROMPs)の多くは、強力な抗原であり、病原体の感染過程における毒性にとって、必須の因子である(Ratledge, C., and L.G. Dover. Annu. Rev. Microbiol. 54: 881-941. 2000)。このことから、上記鉄によって制御される外膜タンパク質は、精製された受容体に基づくワクチン(Chibber, S., and S.B. Bhardwaj J. Med. Microbiol. 53: 705-706. 2004)、または抗IROMP抵血清を用いたワクチン(Sood, S., P. Rishi, V. Dahwan, S. Sharma, and N.K. Ganguly. Mol. Cell. Biochem. 273:69-78. 2005)の候補として提案されてきた。
【0054】
Pasteurella multocidaは、家禽コレラや、ウシの肺炎、出血性敗血症、および豚や家畜の萎縮性鼻炎などの様々な感染症を引き起こす病原菌である。獣医学では、P. multocidaのワクチン接種は、主に、「バクテリン」として知られる不活性されたP. multocida細胞の使用に基づくか、または弱毒化された生細菌の使用に基づいている。しかしながら、バクテリンは同種性の防御しか与えず、一方、生ワクチンは、同種性の防御および異種性の防御を付与するが、不明確な弱毒マーカーを含んでおり、場合によっては、集団感染を招くこともあった。鉄を除去せずに成長させたP. multocidaの外膜タンパク質を用いることによって、異種性の防御を得た(Basagoudanavar, S.H., D.K. Singh and B.C. Varshney. J. Vet. Med. 53: 524-530. 2006)。さらに、最近、ワクチン候補となり得る明確に定義された複数の弱毒化された生株が記載されている(10,17)。
【0055】
鉄が欠乏した培地にて成長したP. multocidaから得られるバクテリンによる交叉防御(Glisson, J.R., M.D. Contreras, I.H. Cheng, and C. Wang. Avian. Dis. 37:1074-1079. 1993)、および外膜タンパク質の抽出物による交叉防御(Adler B. et al. J. Biotechnol., Vol. 44, pp. 139-144. 1996; Ruffolo, C.G., et al. B.H. Jose, and B. Adler. Vet. Microbiol. 59:123-137. 1998)は、公知である。この異種性の防御は、培地における鉄の欠乏、ひいては細胞内における鉄の欠乏によって誘発される、P. multocidaの鉄によって制御される外膜タンパク質の過剰発現に基づくと考えられる。2,2’−ジピリジル(DPD)などの二価陽イオンに対するキレート剤の存在下では、細菌の成長率が極めて低いということから、上記手法には限界がある。この限界は、大量のワクチンを得ることにとって、大きな限界である。
【0056】
2つのヘモグロビン結合性受容体はP. multocidaにおいて最初に見出され(Bosch, M. et al., M.E. Garrido, M. Llagostera, A.M. Perez de Rozas. I. Badiola, and J. Barbe. Infect. Immun. 70: 5955-5964. 2002; Cox, A.J., M.L. Hunt, J.D. Boyce, and B. Adler. Microb. Pathog. 34: 287-296, 2003)、次に、上記細菌が、免疫原性をもつ少なくとも6つのヘミンおよび/またはヘモグロビン結合性タンパク質を有することが実証された(Bosch, M. et al., M.E. Garrido, A.M. Perez de Rozas, I. Badiola, J. Barbe, and M. Llagostera. Vet. Microbiol. 99: 103-112. 2004)。しかしながら、それらを別々にワクチン接種した場合には、その何れも異種攻撃(heterologous attack)に対する防御を行わない(Bosch, M., M.E. Garrido, M. Llagostera, A.M. Perez de Rozas, I. Badiola, and J. Barbe. Infect. Immun. 70: 5955-5964. 2002; Bosch, M., M.E. Garrido, A.M. Perez de Rozas, I. Badiola, J. Barbe, and M. Llagostera. Vet. Microbiol. 99: 103-112. 2004; B. Adler, personal communication)。
【0057】
本発明の発明者らは、近年のP. multocidaにおけるfur遺伝子の単離により、上記細菌種のfur変異体を作製することに成功した(Bosch, M., R. Tarrago, M.E. Garrido, S. Campoy, A.R. Fernandez de Henestrosa, A.M. Perez de Rozas, I. Badiola, and J. Barbe. FEMS Microbiol. Lett. 203:35-40. 2001)。Furが多くの細菌の鉄取り込みタンパク質を制御することを鑑みて、本発明の発明者らはP. multocidaのfur細胞による異種性の防御について研究してきた。
【0058】
P. multocidaのfur変異体における、鉄によって制御される外膜タンパク質の過剰発現が、鉄が欠乏した培地中で成長する野生型のP. multocida細胞と同じであることから、fur変異体を用いる手法は、鉄キレート剤が存在する培養液中における細菌の低い成長性に関する問題を解決し、これらの条件下において細胞が示す低成長性を抑制する。
【0059】
鉄によって制御される外膜タンパク質に基づくワクチンの開発、特に複数の異なる鉄受容体を有する病原菌(例えば、P. multocida)に対するワクチンの開発は、その用途の中でもとりわけ顕著である。
【0060】
fur遺伝子に欠損を有するP. multocida変異体を本発明の結果として記載している。fur遺伝子は、細菌中で、鉄によって調節される多くのタンパク質の発現を制御している。したがって、P. multocidaのfur変異体における鉄によって制御される外膜タンパク質の過剰発現は、鉄が欠乏した培地において野生型のP. multocidaを成長させて生じる過剰発現と同じである。
【0061】
fur変異体に加えて、ompHタンパク質(高い免疫原性を有する)を発現しないfur ompH二重変異体、ならびに、furおよびompHの欠損に加えてgalEの欠損をも有するfur ompH galE三重変異体についても記載されている。
【0062】
本発明に係る変異体に加えて、対応する変異体を作製するためのオリゴ、当該オリゴを内包するプラスミド、および変異体から作製されるワクチンについても記載されている。ワクチンは、熱によって不活性化された、または超音波処理によって不活性化された変異細菌(上述した変異体を含む)、または、P. multocidaの変異体が発現する上記鉄によって制御される外膜タンパク質に基づいていてもよい。
【0063】
したがって、本願は下記について説明している。
【0064】
a)変異が生じたP. multocidaのfur遺伝子。この変異では、18番目〜412番目である、394塩基対のfur遺伝子の内部領域の断片を含むプラスミドを細菌内へ導入することによって、fur遺伝子が分断される。
【0065】
b)Fur1プライマー、Fur2プライマーおよびFur3プライマー。Fur1プライマーおよびFur2プライマーを用いたPCRによって、P. multocidaのfur遺伝子の394塩基対の内部断片をクローニングすることができ、次に、当該内部断片をプラスミドに挿入する。Fur3プライマーを用いて、P. multocidaからクローニングされた394塩基対の断片を含むプラスミドがP. multocidaに挿入されることによって野生型遺伝子が阻害されたことを確認することができる。
【0066】
Fur1、Fur2およびFur3のオリゴの配列を表2に示す。
【0067】
c)自殺プラスミドpUA826を介して得られるとともに、P. multocidaのfur遺伝子の394塩基対の断片をクローニングすることができる、ストレプトマイシン抵抗性遺伝子を内包するプラスミドpUA891。このプラスミドを、トリペアレンタルメイティング(triparental mating)によってP. multocidaに導入し、次に、fur変異体の候補を選択して単離する。
【0068】
d)ompH1およびompH2遺伝子におけるナンセンス変異。P. multocidaでは、154塩基対にて分離されるompH遺伝子の2つのコピーが存在し、それらが個々に転写されることを鑑みて、2つの変異体を説明する。
【0069】
ompH1における変異は、グルタミンコドンの代わりに終止コドンを生じさせる、76位のナンセンス変異であり、24アミノ酸を有する短縮されたタンパク質(truncated protein)を発現させる。OmpH2における変異は、670位のナンセンス変異を含む複数のヌクレオチドの変化を伴い、670位のナンセンス変異は、天然タンパク質が有する350アミノ酸の代わりに223アミノ酸を有する短縮されたタンパク質を生じさせる。ompH1およびompH2におけるナンセンス変異によってもたらされる効果は、35KDaのOMPタンパク質が発現しないことである。
【0070】
e)OmpH1sequp、OmpH2seqdw、Omp21000、Omp22000、ompH1−2up、RTompH1up、RTompH1rp、RTompH2upおよびRTompH2dwプライマー。
【0071】
OmpH1sequpプライマーおよびOmpH2seqdwプライマーは、次のベクターへのクローニングのためにP. multocidaのompH1遺伝子およびompH2遺伝子(ompH1遺伝子の受託番号: EF102481、およびompH2遺伝子の受託番号: EF102482, GenBank)を含むバンド(bands)を増幅させる。P. multocidaのompH1遺伝子およびompH2遺伝子の配列を解析するために、Omp21000およびOmp22000を使用する。P. multocidaのompH1の配列を解析するために、OmpH1−2upを使用する。そして、P. multocidaにおけるompH遺伝子(OmpH1およびOmpH2)の転写物を解析するために、RTompH1up、RTompH1rp、RTompH2up、RTompH2dwを使用する。上記オリゴの配列を表2に示す。
【0072】
f)プライマーを用いてクローン化されたP. multocidaの断片が組み込まれ、P. multocidaへ挿入されることによってP. multocidaのfur ompH変異体を生じさせるベクター。
【0073】
g)GalEintup、GalEintrp、GalEint2upおよびpKO3−Rプライマー:GalEintupおよびGalEintrpプライマーは、P. multocidaのgalE遺伝子の495bpの内部断片を得るために使用されるプライマーであり、GalEint2upは、P. multocidaのgalE遺伝子の分断を確認するために使用される順方向プライマーであり、pKO3−Rは、プラスミドpUA891(495bp断片がクローン化されたプラスミド)がP. multocidaのfur ompHへ挿入されてP. multocidaのgalE遺伝子が分断されたことを確認するためのプライマーである。これらのプライマーの配列を表2に示す。
【0074】
h)P. multocidaの変異体:これらの細菌は、本来の遺伝子に欠陥をもつ。P. multocidaのfur変異体は、fur遺伝子に欠損を有し、fur−Fe(II)複合体の形成を妨げ、鉄によって制御される遺伝子の転写の阻害を起こさせない。これらの変異体、またはこれらの変異体が発現する鉄によって制御される外膜タンパク質を用いて、毒性のP. multocidaに対する異種性の防御を付与することができるP. multocidaワクチンを製造することができる。鉄が欠乏した培地における培養を必要としないので、細菌の培養においてより高い収量が達成される(細菌の成長率は、キレート剤の存在下においては極めて低い)。P. multocidaのfur遺伝子の394塩基対の断片を組み込むプラスミドを挿入することによって得られる変異体を単離した後で、P. multocidaのfur細菌を得る。上記変異体については既に説明されている(Bosch, M., R. Tarrago, M.E. Garrido, S. Campoy, A.R. Fernandez de Henestrosa, A.M. Perez de Rozas, I. Badiola, and J. Barbe. FEMS Microbiol. Lett. 203:35-40. 2001)。
【0075】
本発明の他の目的は、P. multocidaのfur ompH変異体である。上記細菌は、furおよびompH遺伝子に欠損を有する。したがって、これらの細菌では、ompH1およびompH2が発現しない。このことは、上記変異体をワクチンに使用する上で、fur変異体よりも高い防御がもたらされることを意味している(これは、ompHが高い免疫原性をもつ36KdaのOmpHタンパク質をコードするからという予期せぬ結果である)。
【0076】
最後に、P. multocidaのfur ompH galE三重変異体をも得た。galEを変異させる目的は、P. multocidaに対する防御を高めるために、P. multocida のfur ompH変異体における鉄によって制御される外膜タンパク質の表面への露出を最適化することにある。このことを達成するために、galEの495塩基対の断片を増幅させるのに使用されるプライマーの配列を提供し、次に、galEの495塩基対の断片がプラスミドpUA1089にクローン化される。トリペアレンタルメイティングを用いて、上記プラスミドをP. multocidaのfur ompH PM1094変異体に導入し、次に、三重変異体を選択する。それでもなお、マウスの生体内にて実施したこれらのワクチンの効果についての実験では、fur ompH変異体による防御と同じレベルの防御が示されている。
【0077】
i)毒性のP. multocidaに感染しやすい動物に異種性の防御を付与することを目的としたワクチンの調製における、原則として抽出物の形態である、不活性化されたP. multocidaのfur変異体細菌、P. multocidaのfur ompH変異体細菌、P. multocidaのfur ompH galE変異体細菌、および/または、その鉄によって制御される外膜タンパク質の使用。上記不活性化は、熱処理、または超音波処理によるものである。
【0078】
j)熱処理または超音波処理によって不活性化されたP. multocidaのfur変異体細菌、fur ompH変異体細菌、またはfur ompH galE変異体細菌、および/または、これら変異体の鉄によって制御される外膜タンパク質の抽出物を含み、1つ以上のアジュバントおよび/または1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤を含むワクチン。ワクチンを得るという本発明の用途は、本発明の産業上の利用要件を満たす。
【0079】
マウスを用いて、本願に係る二重変異体および三重変異体を用いたP. multocidaに対する防御の研究を行った。しかし、発症する豚および牛の肺炎、ウサギやハムスターなどの小動物の家禽コレラ、および肺炎など、P. multocidaにより発症するあらゆる病気を制御するために上記ワクチンを用いることができる。
【0080】
ワクチンを製剤するために、P. multocidaのfur fur ompH変異体またはfur ompH galE変異体を、リポ多糖体や、完全フロインドアジュバントまたは不完全フロインドアジュバント、モノホスホリピッドAなどのモノホスホリピッド、硫酸、リン酸アルミニウムなどのリン酸塩、水酸化アルミニウムヒドロキシリン酸や水酸化アルミニウムなどの水酸化物、などの上記タイプの家畜ワクチンにおける代表的なコアジュバントのいずれかと混合してもよい。
【0081】
ワクチンの用量は、抗原成分の濃度によって異なる。活性物質の濃度は、通常、賦形剤および任意に0.7%水酸化アルミニウムなどのアジュバント1mlの溶液中において7×l0〜l×l0cfu/mlであるが、例えば、不活性化された細胞に基づくワクチンであれば、用量は0.1mlであり、賦形剤として用いる1mlの生理食塩水中において10cfu/mlの濃度のfur変異体、fur ompH変異体またはfur ompH galE変異体を用いる。活性物質の濃度は、通常、賦形剤および任意に0.7%水酸化アルミニウムなどのアジュバントの1ml溶液中において100〜400μgであるが、外膜タンパクの抽出物に基づくワクチンであれば、用量は0.1mlであり、1mlの生理食塩水において400μgの濃度の抽出物を使用する。
【0082】
【表1】

【0083】
【表2】

【0084】

【0085】
【表3】

【0086】
【表4】

【0087】
〔材料および方法〕
〔細菌株および成長条件〕
使用した細菌株の一覧を表1に示す。全てのP. multocida株を液体培地、緩衝ペプトン水(BPW)またはBHI、SBA寒天プレートにて培養した。必要に応じて、上記濃縮液に抗菌剤を加えた(Cardenas, M. et al. A.R. Fernandez de Henestrosa, S. Campoy, A.M. Perez de Rozas, J. Barbe, I. Badiola, and M. Llagostera. Vet. Microbiol. 80:53-61. 2001)。野生型株の培養では、使用した二価陽イオンキレート剤、2−2’−ジピリジルDPD(シグマ)の濃度は150μMであった(表3)。
【0088】
〔遺伝子法〕
プラスミドpUA891から、P. multocidaのfur変異体を得た(図1A)。このプラスミドは、394bpのPasteurella multocidaのfur遺伝子の内部断片とともに、pUA826遺伝子の内部断片を挿入した結果得られる(Bosch, M., R. Tarrago, M.E. Garrido, S. Campoy, A.R. Fernandez de Henestrosa, A.M. Perez de Rozas, I. Badiola, and J. Barbe. FEMS Microbiol. Lett. 203: 35-40. 2001)。pUA826は、pGY2(26−)に由来する。pGY2(26−)から、SalI制限酵素によってcat遺伝子が抽出された。プラスミドpGY2は、R6Kの複製起点を有している。R6Kの複製はλpirタンパク質に依存しているので、プラスミドpGY2は、Pasteurella multocidaにおいて自己不活性化(suicidal)しているとともに、RP4のmob可動化領域(mobilization region)、並びに、アンピシリン(bla)、ストレプトマイシン、スペクチノマイシン(aadA)およびクロラムフェニコール(cat)に対する抵抗性を付与する遺伝子を含む。後者の遺伝子は、すでに述べたように、pUA826およびpUA891には存在しない。
【0089】
fur ompH galE変異体を作製するために、プラスミドpUA1090(図3A)を使用した。このプラスミドは、プラスミドpUA1089(pUA826のmobサイトを有するpKO3)内にPasteurella multocidaのgalE遺伝子の495bpの内部断片を挿入することによって得られる。トリペアレンタルメイティングによって、fur ompH変異体にプラスミドpUA1090を導入した。選択培地において、トランス接合体を選択した。
【0090】
fur変異の安定性を測定するために、抗菌剤を加えずに、SBA培地において20回連続してfur変異体を二次培養した。ストレプトマイシン有り、および無しのSBA培地において、適した希釈の細胞縣濁液(10cfu/ml)を用いて、5、15および20継代における生菌の濃度を測定した。というのも、pUA891が、上記抗菌剤に対する抵抗性を示す遺伝子をコードするからである。抗菌剤を加えた培地にて得られたコロニーの数と、抗菌剤を含まない培地にて得られたコロニーの数とを比較して、安定率を算出した。
【0091】
fur変異は、選択圧がない20継代後の細胞においても100%の安定性をもって維持されることがわかった。
【0092】
〔生化学的方法、DNAおよびRNA技術〕
上述したように、コンピュータを用いて、配列を分析した(8- Cardenas, M., A.R. Fernandez de Henestrosa, S. Campoy, A.M. Perez de Rozas, J. Barbo, I. Badiola, and M. Llagostera. Vet. Microbiol. 80: 53-61. 2001)。使用したプライマーを表2に示す。ALFシーケンサー(Pharmacia Biotech)においてジデオキシ法を実施し、ヌクレオチド配列を測定した。上述したように、RNA抽出およびRT−PCR分析を実施した(Bosch, M., E. Garrido, M. Llagostera, A.M. Perez de Rozas, I. Badiola, and J. Barbe. FEMS Microbiol Lett. 210: 201-208. 2002)。上述したように、P. multocidaの外膜タンパク質の抽出物を得て、分析した(Bosch, M., E. Garrido, M. Llagostera, A.M. Perez de Rozas, I. Badiola, and J. Barbe. FEMS Microbiol Lett. 210: 201-208. 2002)。上述したように、タンパク質の濃度を測定した(Lowry, O.H., N.J. Rosebrough, A.L. Farr, and R.J. Randall. J. Biol. Chem. 193: 265-275. 1951)。
【0093】
〔P. multocidaに対する防御の研究〕
生後3週間のメスのスイスマウス(Harlan Iberica; Barcelona, Spain)5匹の群に、腹腔内注射によって10または40μg/匹の外膜タンパク質(OMP)の抽出物を注入した。異なる培養条件下にて培養した、異なるP. multocida株から抽出物を調製した。全ての場合において、投与した抽出物の量は、100μlであった。この100μlを、2週間の間隔を空けて2服にわけて投与した。対照マウスには100μlの生理食塩水を投与した。3週間後、0.1mlの毒性のP. multocida株(PM1002)を腹腔内投与することによって、異種抗原投与(heterologous challenge)を行った。この毒性のP. multocida株(PM1002)は、100または500倍のLD50を含んでいた。
【0094】
熱処理または超音波処理によって不活性化されたP. multocida PM1094株(furおよびompHにおける欠損)およびPM1096株(fur、ompHおよびgalEにおける欠損)によって与えられた防御を試験するために、同じ方法論を使用した。30℃の温度下のBFnにおいて7×10cfu/mlの密度にまで予め培養した培養液を45℃にて一晩培養することによって、熱による不活性化を行った。超音波処理によって不活性化させた細胞は、7×10cfu/mlの細胞を超音波処理することによって調製し、BPWに再縣濁させて、−40℃の氷浴を用いて5分間ずつ5回処置し、収率80%を得た。SBAプレート上で、生菌が存在しないことを試験した。全ての場合において、投与された不活性化された細胞の抽出物の量は100μlであり、2週間の間隔を空けて2回投与した。上述したように、ネガティブな対照試験および異種抗原投与を行った。
【0095】
〔結果:P. multocida変異体の構築〕
Fur1プライマーおよびFur2プライマーを用いたPCR増幅によって、P. multocidaのfur遺伝子の394−bpの内部断片を得た(表2)。得られた断片を自殺プラスミドpUA826にクローン化し、プラスミドpUA891を得た(図1A)。
【0096】
トリペアレンタルメイティングによってP. multocidaにプラスミドpUA891を導入した後で、適した選択培地にて細菌を生育させ、複数のfur変異体の候補を単離した。PCR技術による染色体DNAの分析によって、プラスミドpUA891の挿入による野生型fur遺伝子の分断が確認された(図1B)。
【0097】
図1Bは、Aad3プライマーおよびFur3プライマーを用いてPCR分析にかけられた、野生型株(PM1011)(レーン2)、fur変異体(PM1095)(レーン3)およびfur ompH変異体(PM1094)(レーン4)の染色体DNAを示している。DNAを用いない対照PCRを、レーン5に示す。HinfIによって消化されたファージΦX174のDNAを、分子量マーカーとして使用した(レーン1およびレーン6)。
【0098】
同様に、幾つかのfur変異体の外膜画分(outer-membrane fractions)の電気泳動像を分析して、既に記載したように(4)、fur変異によって、鉄によって制御される大きな分子量の外膜タンパク質(IROMPs)の誘導が生じることを確認した。2つの異なるfur変異体のプロフィールが得られた。驚くべきことに、第一の変異体は、P. multocidaの36−Kdaの主要な外膜タンパク質(OMP)、OmpΗを発現させ、第二の変異体は発現させなかった。
【0099】
P. multocidaの全ゲノム塩基配列において、OmpΗlタンパク質およびOmpΗ2タンパク質をコードする、Pm70(21)、(154bpによって単離された)ompH遺伝子の2つのコピーが同定された。fur ompH変異体(PM1094株)において見られる表現型に関連する変異を決定するために、RT−PCR分析を実施し、ompH遺伝子が転写されたか否かを測定した。その結果、fur ompH変異体のompHlおよびompH2が個別に転写されたことが実証された。しかしながら、これらの遺伝子(GenBank 受託番号EF102481およびEF102482)のDNA配列は、PM1011およびPm70株における対応する配列とは大きく異なることが明らかになった。fur ompH変異体のompH遺伝子では、76位にナンセンス変異が見出され、グルタミンをコードするかわりに終止コドンが生じていた。これにより、24アミノ酸を有する極めて短い短縮タンパク質が生じる。同様に、この変異体のompH2の配列は、350アミノ酸の代わりに223アミノ酸を有する短縮タンパク質を発生させる、670位のナンセンス変異を含む多くのヌクレオチド変化を有していた。これらの結果は、P. multocidaのfur ompH変異体では36−Kdaの主要な外膜タンパク質(OMP)が無い原因が、ompH1およびompH2におけるナンセンス変異であることを明確に示している。図2は、P. multocidaのompH1遺伝子およびompH2遺伝子の構造を示している。RTompH1up、RTompH1rp、RTompH2upおよびRTompH2rpは、転写解析に使用するプライマーの位置を示す(A)。図2(B)、(C)および(D)は、野生型株(PM1011)(レーン2)およびfur ompH変異体(PM1094)(レーン3)におけるompH1、ompH2遺伝子の転写、および想定されるompH1−ompH1オペロンの転写のRT−PCRによる分析を示している。上記各株の全RNA、および、RTompH1upとRTompH1rpとのプライマー対、RTompH2upとRTompH2rpとのプライマー対、または、RTompH1upとRTompH2rpとのプライマー対を、各々使用した。野生型株のDNAのPCR(レーン4)、およびRNAまたはDNAを用いないネガチティブ対照のPCR(レーン5)についても示している。HinfIによって消化されたファージΦX174のDNA(BおよびC)、およびBstEIIによって消化されたファージλのDNA(D)を、分子量マーカーとして使用した(レーン1およびレーン6)。
【0100】
〔P. multocida fur変異体による防御の研究〕
P. multocidaのfur変異体の推定される防御効果を分析するために、DPDの非存在下または存在下にて培養した野生型のP. multocida PM1011株、fur変異体およびfur ompH変異体から調製された外膜タンパク質(OMP)の抽出物を10μg/匹および40μg/匹にて、5匹のマウス群に免疫した。そして、用量500XLD50の毒性PM1002株(LD50=3cfu/匹)によって、マウスに異種抗原投与を行った。DPD欠乏下において培養された野生型の細胞から得られた外膜タンパク質(OMP)の抽出物を免疫した全てのマウスが、抗原投与の2日後に死んだ(表3)。しかし、鉄が欠乏した培地にて培養された野生型株由来の外膜タンパク質(OMP)の抽出物40μgを免疫したマウス、およびfur変異体を免疫したマウスは、20%の防御を示した(表3)。抽出物におけるP. multocida主要な外膜タンパク質(OMP)が無いことにより、完全防御(complete protection)が飛躍的に達成された(表3)。
【0101】
最も高い防御を示したのは、fur ompH二重変異体から調製された外膜タンパク質(OMP)の抽出物であったことから、以下の実験は、当該株を熱によって不活性化させた細胞による防御の分析に焦点を当てて行った。熱によって不活性化された、用量7×10cfu/mlのfur ompH細胞を投与されたマウスを、続いて、用量l00XLD50のPM1002株を用いて異種抗原投与した。これらのマウスの防御率は60%であった(表4)。これらの結果は、一度熱によって不活性化したP. multocidaのfur ompH細胞を用いて、異種性の防御を付与するワクチンを作製することができることを示している。
【0102】
〔P. multocida株の防御能におけるgalE変異の効果〕
鉄によって制御される外膜タンパク質(IROMPs)の表面への露出の最適化が、不活性化されたfur ompH細胞から得られる防御を高めるか否かを測定するために、fur ompH変異体のリポ多糖体(LPS)に変異を導入して、派生株を作製した。galE遺伝子の産物は、UDP−ガラクトースのUDP−グルコースへのエピ化を触媒するものであって、リポ多糖体の中心の正確な合成に必要である。このために、グルコースの存在下において培養できるが、野生型の細胞の表面LPSを合成することができないgalE変異体を作製した。GalEintupオリゴヌクレオチドおよびGalEintrpオリゴヌクレオチドを用いたPCR増幅によって、495bpのgalE遺伝子の内部断片を得た。この断片をpUA1089にクローン化し、その結果生じたプラスミドを、トリペアレンタルメイティングによってfur ompH株(PM1094)に導入した。適した選択培地によって培養した後で、複数のgalE変異体を得た。
【0103】
図3は、P. multocidaのgalE変異体のPCR分析を示す。図3(A)は、P. multocidaのgalE変異体の構築を示す。GalEint2upおよびpKO3−Rは、galE変異の存在を確認するために使用するプライマーの位置を示し、図3(B)は、GalEint2upおよびpKO3−Rプライマーを用いたPCR分析にかけられた野生型株(PM1011)(レーン2)、fur ompH変異体(PM1094)(レーン3)およびfur ompH galE変異体(PM1096)(レーン4)の染色体DNAを示している(表2)。DNAを用いない対照のPCRを、レーン5に示す。BstEIIによって消化されたファージλのDNAを、分子量マーカーとして使用した(レーン1およびレーン6)。
【0104】
トランス接合体の4つの染色体DNAのPCR分析によって、pUA1090の挿入が野生型galE遺伝子を分断することが確認された。そして、これらのクローンのうちの1つ、つまりPM1096(図3)が、次の試験のために選択され、その外膜タンパク質プロフィールの分析により、PM1096が前駆株(progenitor strain)と同じプロフィールを有することが確認された。
【0105】
5匹のマウス群に、熱によって不活性化(45℃にて12時間)されたfur ompH galE細胞を7×10cfu/匹投与し、次に、用量100および500xLD5OのPM1002の異種抗原投与を行った。表4から明らかなように、熱によって不活性化された株によって免疫された動物が、最小用量にて60%の防御率を示した。つまり、細菌細胞がより短い細胞表面LPSを発現させたとしても、それが鉄によって制御される外膜タンパク質(IROMPs)によって媒介される防御を高めることはなかった。というのも、fur ompH変異体およびfur ompH galE変異体は、上記熱によって不活性化された変異体のいずれかの株によって免疫されたマウスにおいて、同じレベルの防御を生じさせたからである。
【0106】
さらに、超音波処理による細胞の分断に基づいた別の不活性化方法についても試験した。超音波処理によって不活性化されたfur ompH galE細胞によって免疫されたマウスは、最高用量(500xLD50)の病原菌に対して60%の防御を示した(表A)。これらの結果は、上記方法による細胞の不活性化が、熱処理よりも強い免疫反応を生じさせることを示している。したがって、超音波処理によって不活性化させる方法は、P. multocidaによる感染症に対するワクチンの開発により適していると言える。
【0107】
最後に、新たに提示された結果は、P. multocidaのfur ompH変異体の鉄によって制御される外膜タンパク質(IROMPs)は免疫原性を有し、異種性の防御を付与するものであることを示している。したがって、上記結果は、特にP. multocidaのように複数の異なる鉄受容体を有する病原体に対して、鉄によって制御される外膜タンパク質(IROMPs)に基づくワクチンの開発にfur変異体を用いることができることを示している。さらに、fur変異体を用いる方法は、二価陽イオンキレート剤の存在下において細菌性細胞が示す低い成長率などの、他の方法において見られる問題を解決する。
【0108】
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【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】図1は、Pasteurella multocidaのfur変異体のPCR分析を示している。
【図2】図2は、P. multocidaのompH1遺伝子およびompH2遺伝子の構造を示している。
【図3】図3は、P. multocidaのgalE変異体のPCR分析を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
furの発現、または、ompH1およびompH2の発現が生じないように、fur遺伝子およびompH遺伝子に欠損を有することを特徴とする、Pasteurella multocida細菌の変異体。
【請求項2】
fur遺伝子およびompH遺伝子に欠損を有することに加えて、P. multocidaのfur ompH細胞における鉄によって制御される外膜タンパク質の表面への露出が最適化されるようにgalE遺伝子にも欠損を有することを特徴とする、請求項1に記載のPasteurella multocida細菌の変異体。
【請求項3】
Fur1プライマーおよびFur2プライマーによって増幅される394bpのfur遺伝子の内部断片をfur遺伝子内に挿入することによって野生型遺伝子が分断され、これによって、fur遺伝子に欠損を有することを特徴とする、請求項1または2に記載のPasteurella multocida細菌の変異体。
【請求項4】
ompH1における76位のナンセンス変異、並びに、ompH2における670位のナンセンス変異および複数のヌクレオチドの変化を有する、OmpHに欠損を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のPasteurella multocida細菌の変異体。
【請求項5】
ompH1における上記変異が、グルタミンのかわりに終止コドンを生じさせることによって、24個のアミノ酸からなる短縮されたタンパク質を発生させ、
ompH2における上記変異が、350個のアミノ酸の代わりに223個のアミノ酸からなる短縮されたタンパク質を発生させることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のPasteurella multocida細菌の変異体。
【請求項6】
請求項4または5に記載の上記ナンセンス変異によって、36−Kdaの主要な外膜タンパク質が無いことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のPasteurella multocida細菌の変異体。
【請求項7】
GalEintupプライマーおよびGalEintpプライマーによる増幅によって得られる495bpのgalEの内部断片をgalE遺伝子内に挿入することによって野生型遺伝子が分断され、これによって、galEに欠損を有することを特徴とする、請求項2に記載のPasteurella multocida細菌の変異体。
【請求項8】
不活性化されていることを特徴とする、請求項1〜7の何れか1項に記載のPasteurella multocida細菌の変異体。
【請求項9】
熱によって不活性化されていることを特徴とする、請求項8に記載のPasteurella multocida細菌の変異体。
【請求項10】
超音波処理によって不活性化されていることを特徴とする、請求項8に記載のPasteurella multocida細菌の変異体。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか1項に記載のPasteurella multocida細菌の変異体の外膜タンパク質の製剤。
【請求項12】
P. multocidaの感染に対する異種性の防御を動物へ付与するためのワクチンの製造方法であって、以下のa)およびb)の工程を含む製造方法。
a)fur遺伝子およびompH遺伝子、または、fur遺伝子、ompH遺伝子およびgalE遺伝子に欠損を有する請求項1〜10の何れか1項に記載のP. multocida細菌の変異体を得る、および/または、上記P. multocida細菌の変異体の細胞から作製される請求項11に記載の外膜タンパク質の製剤を得る、工程。
b)有効量のfur ompH変異体またはfur ompH galE変異体および/または当該変異体の外膜タンパク質と、賦形剤と、および/または、薬学的に許容可能なアジュバントとを含む、上記a)において得られる細胞の抽出物を含む上記ワクチンの選択された投与方法に適した準備を行う工程。
【請求項13】
P. multocidaの感染症に対して異種性の防御を動物へ付与する、請求項12に記載のワクチンの製造方法であって、
上記fur変異体の上記細胞、上記fur ompH二重変異体の上記細胞、または上記fur ompH galE三重変異体の上記細胞が、熱によって不活性化されていることを特徴とする製造方法。
【請求項14】
P. multocidaの感染症に対して異種性の防御を動物へ付与する、請求項12に記載のワクチンの製造方法であって、
上記fur変異体の上記細胞、上記fur ompH二重変異体の上記細胞、または上記fur ompH galE三重変異体の上記細胞が、超音波処理によって不活性化されていることを特徴とする製造方法。
【請求項15】
Pasteurella multocidaの感染症に対して異種性の防御を動物へ付与するワクチン組成物であって、
請求項12〜14に記載の方法により得られた、免疫原性量のfur ompH二重変異体、免疫原性量のfur ompH galE三重変異体、および/または当該変異体の上記外膜タンパク質と、賦形剤と、および/または薬学的に許容可能なアジュバントとを含むことを特徴とするワクチン組成物。
【請求項16】
豚および牛の肺炎、ウサギやハムスターなどの小動物の家禽コレラ、および肺炎などのP. multocidaの感染によって発症する病気に対する異種性の防御のための、請求項15に記載のワクチン組成物。
【請求項17】
Pasteurella multocidaによる感染症に対して動物に異種性の防御を付与する請求項12〜16の何れか1項に記載の製造方法またはワクチン組成物のための、Pasteurella multocidaのfur ompH二重変異体またはfur ompH galE三重変異体、および/または、当該変異体の外膜タンパク質の抽出物の使用。
【請求項18】
Pasteurella multocidaによる感染症に対して動物に異種性の防御を付与する請求項12〜16に記載の製造方法またはワクチン組成物のための、Pasteurella multocidaのfur ompH 二重変異体、および/または、当該変異体の外膜タンパク質の抽出物の使用。
【請求項19】
Pasteurella multocidaによる感染症に対して動物に異種性の防御を付与する請求項12〜16に記載の製造方法またはワクチン組成物のための、Pasteurella multocidaのfur ompH galE三重変異体、および/または、当該変異体の外膜タンパク質の抽出物の使用。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−511630(P2011−511630A)
【公表日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544740(P2010−544740)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際出願番号】PCT/ES2009/000046
【国際公開番号】WO2009/095518
【国際公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(510207313)ウニベルシタット アウトノマ デ バルセロナ (2)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITAT AUTONOMA DE BARCELONA
【住所又は居所原語表記】Edifici A−Campus universitari s/n,E−08193 Bellaterra(Barcelona)Spain
【Fターム(参考)】