説明

PACAP化合物を用いる腎臓機能障害及び多発性骨髄腫の治療

【課題】 本発明は、哺乳類における多発性骨髄腫及び/又は腎臓機能障害の治療、管理又は予防のための方法及び組成物に関する。
【解決手段】 本発明の方法は1つ以上の脳下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(「PACAP」)化合物の有効量の投与を含み、その例としては1つ又は複数のPACAP活性を有するPACAP、血管作用性小腸ペプチド(「VIP」)、それらのアゴニスト、類似体、断片又は誘導体がある。本発明は、本発明の1つ以上のPACAP化合物を単独で、或いは多発性骨髄腫及び/又は腎臓機能障害の治療、管理又は予防のための療法に役立つ1つ又は複数の他の予防剤/治療剤と併用して含む、医薬組成物も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、本明細書で全体として参照により組み込まれている2004年7月21日に出願の米国仮出願第60/589674号への優先権を請求する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、哺乳類における腎臓機能障害及び/又は多発性骨髄腫の治療、管理又は予防のための方法及び組成物に関する。本発明の方法は、PACAP、血管作用性小腸ペプチド(「VIP」)、1つ又は複数のPACAP活性を有するそれらのアゴニスト、類似体、断片又は誘導体を含む、1つ又は複数の脳下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(「PACAP」)化合物の有効量の投与を含む。本発明は、本発明の1つ又は複数のPACAP化合物を単独で、或いは腎臓機能障害及び/又は多発性骨髄腫の治療、管理又は予防のための療法に役立つ1つ又は複数の他の予防剤/治療剤と併用して含む、医薬組成物も提供する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
血液から有害な老廃物を除去して尿を産生する基本的な腎臓濾過単位は、ネフロンと呼ばれる複雑な解剖学的構造物である。ヒト腎臓は、1日に1700リットルを超える血液を約1リットルの尿に変換する役目を果たす。ヒトの各腎臓は、約100万のネフロンを含む。各ネフロンは、血管成分及び管状成分で構成される。糸球体は主要な血管成分であり、水及び溶質の一部が通過する血液から濾過される回旋状、半透性の毛細管網目構造である。糸球体基底膜は篩のような働きをして細胞及び大きなタンパク質分子を保持するが、その一方で水及び可溶性老廃物を通過させる。濾過された流体(腎臓濾液とも呼ばれる)は組成が血漿とほとんど同一であるが、次にネフロンの管状部分に入る。管状部分は近位尿細管、ヘンレ係蹄、遠位尿細管及び集合管を含む連続した一連の管で構成され、これらは輸尿管に、さらに膀胱に至る。糸球体を最初に通過する水、塩類及び栄養素の多くは、濾液が膀胱に完全に移行する前に様々な輸送過程を通してネフロンによって回収される。
【0004】
腎臓機能障害、又は疾患と関連するときは腎疾患(腎臓の疾患)は多くの原因で起こり、例としては、それらには限定されないが、薬剤、有害物質、抗生物質、感染症、糖尿病及び癌などがある。腎臓は主に4つの系(血管、糸球体、管状及び間質性の領域を含む)の非常に複雑な構造物であり、これらの構造物の解剖学的相互依存は、1つの構造への損傷は通常2次的に他のものに影響を及ぼすことを意味する。このように、慢性腎障害の全ての形態は結局4つ全ての系を破壊する傾向がある。さらに、腎臓は大きな機能性貯蔵庫を有するので、臨床症状が明らかになる前に多大な損傷が起こる可能性がある。このように、腎臓病は通常潜行性であり、初期の徴候及び症状の検出が特に重要である。
【0005】
多発性骨髄腫は形質細胞の悪性腫瘍であり、溶骨性病変(溶解性骨消失)、再発性の細菌感染症、貧血症及び慢性間質性腎炎(腎臓の間質組織の炎症)を通常伴い、腎不全を導く。多発性骨髄腫(骨髄腫とも呼ばれる)の病因は知られていないが、重要性が未確定の単クローン性免疫グロブリン血症患者(単クローン性免疫グロブリンIgA又はIgGの血清中の存在が特徴)における本症の発症率は高い。さらに、重要性が未確定の多発性骨髄腫及び単クローン性免疫グロブリン血症の家系の存在は、これらの疾患の間の遺伝的関連を暗示する。
【0006】
米国癌協会(American Cancer Society)は、2004年に15,000を超える多発性骨髄腫の新患者が診断され、2004年に11,000人を超えるアメリカ人が多発性骨髄腫で死ぬと推定する。American Cancer Society, Cancer-Facts & Figures 2004。
【0007】
多発性骨髄腫では、腎臓関与の源は抗体軽鎖(ベンス−ジョーンズタンパク質)の過剰産生であり、それは腎臓の遠位尿細管及び集合管に凝集してタンパク円柱を形成する。抗体は形質細胞と呼ばれる免疫細胞によって産生され、それは活性化されたBリンパ球(B細胞)に起因する。各B細胞は、異物に特異的で細胞表面に整列する固有の受容体(B細胞受容体)を産生する。B細胞受容体がその同種抗原(異物)を認識するとき、その受容体を運ぶ細胞は活性化されて細胞周期に再突入し、それ自体のクローンコピーを多数産生する。これらのクローンは形質細胞に成熟して、それらは主に骨髄に存在する。形質細胞はB細胞受容体のコピーを産生するように専門化され、それらは次に抗体(免疫グロブリン)として血流に放出される。免疫グロブリンは重鎖と呼ばれる2つの長鎖及び軽鎖と呼ばれる2つのより短い鎖の、4つのタンパク質鎖で構成される。
【0008】
多発性骨髄腫では、B母細胞は、結果として細胞分裂の抑制又は細胞分裂に対する正常な制約への非感受性をもたらす遺伝的損傷を受ける。このように、そのようなB細胞によって産生される娘形質細胞は悪性であり、分裂を無制限に継続してより多くの悪性形質細胞を形成し、同じ免疫グロブリン(単クローン性タンパク質、Mタンパク質又はパラプロテインとも呼ばれる)の複数コピーを過量に生成する。血液中のMタンパク質のレベルの上昇は多発性骨髄腫の特性であるが、最高20%の骨髄腫患者はベンス−ジョーンズタンパク質(「Mタンパク質」群のサブセット)と呼ばれる免疫グロブリンの軽鎖部分だけを産生する。そのような患者において、これらの遊離の単クローン性軽鎖は腎臓濾過機構を通過して、血液の代わりに主に尿で見られる。ベンス−ジョーンズタンパク質は、腎臓の遠位尿細管及び集合管を通過する間に溶液から沈殿して、その中でタンパク性沈着物(「円柱」とも呼ばれる)を形成する。これらの円柱は腎尿細管網を詰まらせ、周辺の上皮に損傷を引き起こし、炎症性カスケードを開始して、結局腎不全に至る。高カルシウム血症、カルシウム過剰尿症及び尿酸過剰血症は、さらなる損傷に寄与する。「骨髄腫腎」は、組織学的に、上皮細胞又は多核の巨細胞によって囲まれた間質性線維症及び硝子様円柱を特徴とする。
【0009】
脳下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)は、当初、ラット脳下垂体細胞培養でアデニル酸シクラーゼを活性化するその能力に基づいて、ヒツジの視床下部組織から単離された。Miyataらの論文(Biochem Biophys Res Commun. 164: 567 (1989))。PACAPは神経伝達物質及び神経内分泌ホルモンであって、2つの活性型、38アミノ酸の長い形態(PACAP38)、及び27アミノ酸のC末端でトランケーションされた形態(PACAP27)、で存在する。Miyataらの論文(Biochem Biophys Res Commun. 170: 643 (1990))。これらの2つのバージョンのアミノ酸配列は、図1(配列番号1及び配列番号2)で示す。PACAPはセクレチン/グルカゴン/血管作用性小腸ペプチドファミリーのメンバーであり、N末端領域はVIP(配列番号3)と68%相同的であるが、培養された脳下垂体細胞、ニューロン及び星状神経膠細胞でのそのアデニル酸シクラーゼ刺激活性は約1,000〜10,000倍VIPより高い。Miyataらの論文(1990)、前掲。PACAPは多面的ニューロペプチドであり、異なる器官及び組織でいくつかの神経栄養活性を示す。例えば、PACAPは交感神経芽細胞の増殖及び分化を促進し、副腎のクロム親和性細胞系(PC−12褐色細胞腫細胞)の神経突起増成を刺激して、星状神経膠細胞の増殖を刺激する。Arimura A.の論文(Regul Pept. 37: 285 (1992));Okazaki K,らの論文(FEBS Lett. 298: 49 (1992))。PACAPのインビボ細胞保護的作用は、一時的な前脳局所貧血のラットで調査された。Uchidaらの論文(Soc Neurosci Abst., Vol. 20,1994 (Abstract No. 193.10))。
【0010】
PACAPの活性の1つは、1つ又は複数のPACAP受容体と結合するその能力である。少なくとも3つの公知のPACAP受容体がある:PAC−R(I型PACAP受容体)、VPAC−R(II型PACAP受容体又はI型VIP受容体)、及びVPAC−R(II型VIP受容体又はVIP2)。Gottschall PE,らの論文(Endocrinology. 127: 272 (1990));Shivers BD,らの論文(Endocrinology. 128: 3055 (1991));Arimura A.の論文(Trends Endocrinol Metab. 3: 288 (1992))。PAC1−Rは視床下部、脳幹、脳下垂体、副腎、膵臓及び精巣で見られ、PACAPと特異的に高親和性で結合するが、VIPとは結合しない。Ogi K,らの論文(Biochem Biophys Res Commun. 196: 1511 (1993))。VPAC−R及びVPAC−Rの両方は、PACAP及びVIPと類似した高親和性で結合する。Sreedharan SP,らの論文(Proc Natl Acad Sci USA. 92: 2939 (1995));Svoboda M,らの論文(Biochem Biophys Res Commun. 205: 1617(1994))。
【0011】
多発性骨髄腫のための標準の治療としては、化学療法、自家幹細胞移植及びサリドマイドがある。デキサメサゾン(ステロイド)は、軽鎖によって誘導される腎障害から保護し、腫瘍細胞増殖を抑えるために現在用いられる。しかし、デキサメサゾン長期投与の副作用は、重大な懸念である。詳細には、骨髄腫の主要な後遺症は骨吸収であるので、長期デキサメサゾン治療は骨粗鬆症を引き起こすことによって骨髄腫療法でのその有用性を減損させる。このように、多発性骨髄腫及び腎のための既存の療法の改善を図る必要がある。
本明細書での参考文献の引用又は議論は、それが本発明の先行技術であるということの容認として解釈されてはならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
PACAP化合物を用いる腎臓機能障害及び多発性骨髄腫の治療方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要旨)
発明者らは、PACAP化合物は腎細胞を保護及び/又は救済する際に、また、腎臓機能障害及び多発性骨髄腫の治療又は予防のために極めて効果的であることを発見した。特定の機構には束縛されないが、治療効果はMAPキナーゼ及び/又はNFκBの活性化の抑制によって媒介される。脳下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド、特にPACAP38は多面的である。PACAP38は、PACAPがどの受容体と相互作用するかによってMAPKを抑制するか又は活性化する。PACAP38は免疫細胞と直接相互作用して、それらのサイトカイン(TNF−α及びIL6を含む)の産生を調整することもできる。
【0014】
したがって、本発明は腎臓機能障害に関連する腎細胞障害及び/又は多発性骨髄腫に起因する腎細胞障害の治療、管理及び予防のための方法及び組成物に関する。本方法は、腎細胞、特に腎尿細管細胞で病理を引き起こす細胞表現型(例えば病理を引き起こす上皮細胞表現型)及び多発性骨髄腫の抑制のために、1つ又は複数のPACAP活性を有するPACAP、VIP、それらのアゴニスト、類似体、断片又は誘導体を含む1つ又は複数のPACAP化合物の有効量を投与することを含む。様々な腎臟病の腎細胞の組織病理学的比較については、Kucherらの論文(J. Cutan Path. 32(7): 484-90 (2005))を参照されたい。
【0015】
PACAP化合物は、腎細胞を濃度依存的に保護及び/又は救済する際に極めて効果的である。このように、本発明は約10−13Mから10−7M濃度のPACAP化合物による腎細胞の治療法に関する。腎細胞が培養中にあるときは、培地中のPACAP化合物の濃度は好ましくは約10−13Mから10−7Mである。腎細胞が対象の組織内にあるとき、間質腔又は血液中のPACAP化合物の濃度は好ましくは約10−13Mから10−7Mである。発明者らは、本発明の組成物の一般に有効な濃度範囲では効果のピークがあり、それよりも下では組成物の効果はかなりの程度低下することを発見した。好ましい実施態様では、本発明のPACAP組成物の濃度は約10−13Mから約10−7Mであり、その濃度は治療からくる有害副作用のリスクを最小限にして対象の治療を可能にする。好ましい一実施態様では、PACAP化合物の濃度は約10−9Mである。本発見は、腎細胞の実質的な保護及び救済を提供するために、本発明の組成物の低濃度での使用を可能にする。具体的な実施態様では、本発明の組成物は腎尿細管上皮細胞を傷害又は死から保護する。腎細胞の傷害又は死は、単クローン性タンパク質、パラプロテイン、Mタンパク質及びベンス−ジョーンズタンパク質を含むタンパク質、又は糸球体濾過の障害、水銀及び抗生物質のような様々な毒剤、移植された腎臓の拒絶反応を含む強化された免疫反応並びに他の原因により腎尿細管系に入るものの過負荷が原因で起こる可能性がある。
【0016】
腎細胞を保護及び/又は救済する際のその効果と同様に、PACAPは複数の骨髄腫細胞の増殖の濃度依存的な治療、管理又は予防のためにも非常に有効である。このように、本発明はPACAP化合物の濃度が約10−13Mから10−7Mである、複数の骨髄腫細胞の増殖の治療、管理又は予防の方法も含む。一実施態様では、治療する細胞が培養中のとき、有効量は培地中で約10−13Mから約10−7Mである。他の実施態様では、骨髄腫細胞が対象の組織内にあるとき、PACAP化合物の濃度は間質腔又は血液で測定される。治療のためのPACAP化合物の好ましい濃度は、約10−13Mから約10−7Mである。この濃度域では、対象の、治療からくる副作用のリスクは最小限である。本発見は、多発性骨髄腫細胞増殖の非常に実質的な抑制を提供するために、本発明の組成物の低濃度での使用を可能にする。
【0017】
本発明の組成物は、1つ又は複数のPACAP化合物、例えばPACAPのその形態(PACAP38及びPACAP27)のいずれか、VIP、並びに1つ又は複数のPACAP活性を、例えばそれには限定されないが、少なくとも1つのPACAP受容体(PAC−R、VPAC−R及びVPAC−R)との結合活性を有するそれらのペプチド若しくは非ペプチドアゴニスト、類似体、断片又は誘導体のいずれかを含む組成物を含む。好ましい一実施態様では、PACAP、VIP及びそれらのアゴニスト、類似体、断片又は誘導体は、VPAC−R(II型VIP受容体)と結合する。好ましくは、それらのPACAPアゴニスト、類似体、断片又は誘導体は、図1のPACAP38のアミノ酸配列の一部に対応する少なくとも12の連続的アミノ酸を含み、少なくとも1つのPACAP受容体と結合する、ポリペプチド又はそれらの塩若しくは誘導体である。本明細書で使用されるように、「PACAP12アゴニスト」は、図1のPACAP38のアミノ酸配列の一部に対応する少なくとも12の連続的アミノ酸を有し、少なくとも1つのPACAP受容体と結合する、ポリペプチド又はそれらの塩若しくは誘導体を指す。同様に、用語「PACAP23アゴニスト」及び「PACAP27アゴニスト」は、図1のPACAP38のアミノ酸配列の一部に対応するそれぞれ少なくとも23及び27の連続的アミノ酸を有し、少なくとも1つのPACAP受容体と結合する、ポリペプチド又はそれらの塩若しくは誘導体を指す。ポリペプチドのアミノ酸配列の決定及びポリペプチドがPACAP受容体と結合するかどうかの決定は、当技術分野の技術の範囲内である。
【0018】
本発明の組成物は腎細胞を治療、保護及び/又は救済するのに有効な濃度でPACAP化合物を送達するために、静脈内、そうでなければ血液内に投与することができる。他の実施態様では、本発明の組成物はPACAPが骨髄腫細胞と接触して癌性の形質細胞を抑制及び/又は阻害するために有効な濃度で投与することができる。
【0019】
本発明は、腎臓機能障害を治療、管理又は予防する方法を提供し、この方法は、対象に1つ又は複数のPACAP化合物の有効量を投与することを含み、このPACAP化合物は1つ若しくは複数のPACAP受容体と結合するか、又は病理を引き起こす細胞表現型を減少させる。具体的な実施態様では、腎臓機能障害は、虚血、再潅流、外傷、出血、感染、抗生物質の投与又は有害物質への曝露に起因する。具体的な実施態様において、腎臓機能障害は疾患に付随する。具体的な実施態様において、疾患は多発性骨髄腫である。他の実施態様では、疾患は糖尿病である。他の具体的な実施態様では、腎臓機能障害は慢性腎不全、急性腎不全又は骨髄腫腎である。ある実施態様では、病理を引き起こす細胞表現型は、細胞生存能力の増加である。他の実施態様では、病理を引き起こす細胞表現型は、細胞の過剰増殖の抑制である。好ましい実施態様では、病理を引き起こす細胞表現型は、TNF−α及び/又はIL−6の産生の減少である。他の実施態様では、病理を引き起こす細胞表現型は、NFκBの活性化である。
【0020】
本発明は、過剰増殖性疾患を治療、管理又は予防する方法を対象とし、この方法は、対象に1つ又は複数のPACAP化合物の有効量を投与することを含み、このPACAP化合物は1つ若しくは複数のPACAP受容体と結合するか、又は病理を引き起こす細胞表現型を減少させる。好ましい一実施態様では、過剰増殖性疾患は多発性骨髄腫である。
【0021】
本発明は、腎尿細管細胞障害から保護又は救済する方法を対象とし、この方法は、対象に1つ又は複数のPACAP化合物の有効量を投与することを含み、このPACAP化合物は1つ若しくは複数のPACAP受容体と結合するか、又は病理を引き起こす細胞表現型を減少させる。具体的な実施態様では、障害は虚血、再潅流、外傷、出血、毒剤又は過剰なタンパク質への曝露に起因する。他の具体的な実施態様では、タンパク質は単クローン性タンパク質、パラプロテイン、Mタンパク質又はベンス−ジョーンズタンパク質である。
【0022】
本発明は、骨髄腫の進行を治療、管理又は予防する方法を対象とし、この方法は、対象に1つ又は複数のPACAP化合物の有効量を投与することを含み、このPACAP化合物は1つ若しくは複数のPACAP受容体と結合するか、又は病理を引き起こす細胞表現型を減少させる。
本発明は、NFκBの活性化に起因する腎疾患を治療、管理又は予防する方法を対象とし、この方法は、対象に1つ又は複数のPACAP化合物の有効量を投与することを含み、このPACAP化合物は1つ若しくは複数のPACAP受容体と結合するか、又は病理を引き起こす細胞表現型を減少させる。
【0023】
本発明は、腎臓損傷と関連する障害を治療、管理又は予防する方法を対象とし、この方法は、対象に1つ又は複数のPACAP化合物の有効量を投与することを含み、このPACAP化合物は1つ若しくは複数のPACAP受容体と結合するか、又は病理を引き起こす細胞表現型を減少させる。具体的な実施態様では、障害は高血圧、鎌状赤血球貧血、シェーグレン症候群、ループス、多発性嚢胞腎、慢性腎不全、急性腎不全、糖尿病、骨髄腫、溶血尿毒症症候群、ループス腎炎又はヘノッホ−シェーンライン紫斑病腎炎である。
【0024】
4.1配列
下記は、本明細書で全体として参照により組み込まれている添付の配列リストで提示される配列の概要である。
配列番号1は、本発明に従って用いることができる、PACAPのアミノ酸配列である。
配列番号2は、本発明に従って用いることができる、PACAPのアミノ酸配列である。
配列番号3は、本発明に従って用いることができる、VIPのアミノ酸配列である。
配列番号4は、本発明に従って用いることができる、PACAPのアミノ酸配列である。
【0025】
配列番号5は、本発明に従って用いることができる、PACAPのアミノ酸配列である。
配列番号6は、本発明に従って用いることができる、PACAPのアミノ酸配列である。
配列番号7は、本発明に従って用いることができる、PACAPのアミノ酸配列である。
配列番号8は、本発明に従って用いることができる、PACAPのアミノ酸配列である。
配列番号9は、本発明に従って用いることができる、PACAPのアミノ酸配列である。
配列番号10は、本発明に従って用いることができる、PACAPのアミノ酸配列である。
配列番号11は、本発明に従って用いることができる、PACAPのアミノ酸配列である。
配列番号12は、本発明に従って用いることができる、PACAPのアミノ酸配列である。
【0026】
配列番号13は、本発明に従って用いることができる、PACAPのアミノ酸配列である。
配列番号14は、本発明に従って用いることができる、PACAPのアミノ酸配列である。
配列番号15は、本発明に従って用いることができる、PACAPのアミノ酸配列である。
配列番号16は、本発明に従って用いることができる、PACAPのアミノ酸配列である。
配列番号17は、本発明に従って用いることができる、PACAPのアミノ酸配列である。
配列番号18は、本発明に従って用いることができる、PACAPのアミノ酸配列である。
配列番号19は、本発明に従って用いることができる、PACAPのアミノ酸配列である。
配列番号20は、本発明に従って用いることができる、PACAPのアミノ酸配列である。
【0027】
配列番号21は、本発明に従って用いることができる、PACAPのアミノ酸配列である。
配列番号22は、本発明に従って用いることができる、PACAPのアミノ酸配列である。
配列番号23は、本発明に従って用いることができる、PACAPのアミノ酸配列である。
配列番号24は、本発明に従って用いることができる、PACAPのアミノ酸配列である。
配列番号25は、本発明に従って用いることができる、PACAPのアミノ酸配列である。
配列番号26は、本発明に従って用いることができる、PACAPのアミノ酸配列である。
配列番号27は、本発明に従って用いることができる、PACAPのアミノ酸配列である。
【0028】
4.2定義
本明細書で使用するように、用語「アゴニスト」は、1つ又は複数のPACAP受容体と結合する任意の分子、例えばタンパク質、翻訳後修飾タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、断片、大分子又は小分子(1000ダルトン未満)を指す。
【0029】
本明細書で使用するように、ポリペプチドとの関連で用語「類似体」は、第2のポリペプチドと類似又は同一の機能を有するが、その第2のポリペプチドと類似又は同一のアミノ酸配列又は構造を必ずしも含むものではないポリペプチドを指す。類似したアミノ酸配列を有するポリペプチドは、以下のうちの少なくとも1つを満たすポリペプチドを指す。(a)第2のポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチド、(b)少なくとも12のアミノ酸残基、少なくとも15のアミノ酸残基、少なくとも20のアミノ酸残基、少なくとも25のアミノ酸残基、少なくとも30のアミノ残基、少なくとも35のアミノ酸残基の第2のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列とストリンジェント条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド、及び(c)第2のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列と少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも99%同一であるヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド。第2のポリペプチドと類似した構造を有するポリペプチドは、その第2のポリペプチドと類似した二次的、三次的又は四次的な構造を有するポリペプチドを指す。ポリペプチドの構造は当業者に公知の方法、例えば、それらには限定されないが、X線結晶分析、核磁気共鳴及び結晶学的電顕法で測定することができる。好ましくは、そのポリペプチドは1つ又は複数のPACAP活性を有する。
【0030】
2つのアミノ酸配列又は2つの核酸配列の同一性割合を測定するために、配列を最適比較の目的のために整列させる(例えば、第2のアミノ酸又は核酸配列との最適アラインメントのために、第1のアミノ酸配列又は核酸配列へギャップを導入することができる)。対応するアミノ酸位置又はヌクレオチド位置のアミノ酸残基又はヌクレオチドを、次に比較する。第1の配列の位置が第2の配列の対応する位置と同じアミノ酸残基又はヌクレオチドによって占められる場合は、それらの分子はその位置で同一である。2つの配列の間の同一性割合は、それらの配列によって共有される同一の位置の数の関数である(すなわち、同一性%=同一の重複する位置の数/位置総数×100%)。一実施態様では、2つの配列は同じ長さである。
【0031】
2つの配列間の同一性割合の決定は、数値計算用アルゴリズムを用いて達成することもできる。2配列の比較のために利用される数値計算用アルゴリズムの好ましい、それには限定されない例は、Karlin及びAltschulの論文(1990, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 87: 2264-2268)、のアルゴリズムであり、Karlin及びAltschulの論文(1993 , Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90: 5873-5877)、で修正された。そのようなアルゴリズムは、Altschulらの論文(1990, J. Mol. Biol. 215: 403)、のNBLAST及びXBLASTプログラムに組み込まれる。本発明の核酸分子に相同なヌクレオチド配列を得るために、NBLASTヌクレオチドプログラムパラメータを例えば、スコア=100、語長=12に設定してBLASTヌクレオチド検索を実施することができる。本発明のタンパク質分子に相同なアミノ酸配列を得るために、XBLASTプログラムパラメータを例えば、スコア=50、語長=3に設定してBLASTタンパク質検索を実施することができる。比較目的のためにギャップアラインメントを得るために、Altschulらの論文(1997, Nucleic Acids Res. 25: 3389-3402)、が記載しているようにGapped BLASTを利用することが可能である。或いは、分子間の距離関係を検出する反復検索(Id.)を実施するために、PSI−BLASTを使用することができる。BLAST、Gapped BLAST及びPSI−Blastプログラムを利用するとき、それぞれのプログラムのデフォルトパラメータ(例えば、XBLAST及びNBLASTのもの)を用いることができる(例えばNCBIウェブサイトを参照)。配列の比較のために利用される数値計算用アルゴリズムの他の好ましい、それには限定されない例は、Myers及びMillerの論文(1988, CABIOS 4: 11-17)、のアルゴリズムである。そのようなアルゴリズムは、GCG配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれる。アミノ酸配列を比較するためにALIGNプログラムを利用するときは、PAM120重量残基表、12のギャップ長ペナルティ及び4のギャップペナルティを用いることができる。
【0032】
2つの配列間の同一性割合は、上述のものに類似した手法を用い、ギャップを用いるか又は用いないで測定することができる。同一性割合を計算する際には、一般的に正確に一致するものだけを数える。
本明細書で使用するように、ポリペプチドとの関連で用語「誘導体」は、アミノ酸残基の置換、欠失及び/又は付加の導入によって変化させられたアミノ酸配列を含むポリペプチドを指す。
【0033】
本明細書で使用する用語「誘導体」は、修飾された、すなわち一種の分子のポリペプチドへの共有結合によって修飾されたポリペプチドも指す。例えば、それに限定するものではないが、ポリペプチドの誘導体は、例えばグリコシル化、アセチル化、PEG化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロック基による誘導体化、タンパク分解性切断、細胞リガンド又は他のタンパク質への結合、その他によって生成することができる。ポリペプチドの誘導体は、当業者に公知の手法、例えばそれらには限定されないが特異的化学開裂、アセチル化、ホルミル化、その他を用いて化学修飾によって生成することもできる。さらに、ポリペプチド誘導体は1つ又は複数の非古典的アミノ酸を含むことができる。ポリペプチド誘導体は、それが誘導されたポリペプチドと同一の機能を有する。
【0034】
本明細書で使用するように、PACAPポリペプチド又はVIPポリペプチドとの関連で用語「誘導体」は、アミノ酸残基の置換、欠失又は付加(すなわち変異)の導入によって変化させられた、それぞれPACAPポリペプチド又はVIPポリペプチドのポリペプチド若しくは断片のアミノ酸配列を含むポリペプチドを指す。本明細書で使用するように、PACAPポリペプチド又はVIPポリペプチドとの関連で用語「誘導体」は、例えばそのポリペプチドへの任意の種類の分子の共有結合により修飾されたPACAPポリペプチド若しくはVIPポリペプチド又はPACAPポリペプチド若しくはVIPポリペプチドの断片も指す。例えば、それに限定するものではないが、PACAPポリペプチド若しくはVIPポリペプチド又はPACAPポリペプチド若しくはVIPポリペプチドの断片は、例えばグリコシル化、アセチル化、PEG化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロック基による誘導体化、タンパク分解性切断、細胞リガンド又は他のタンパク質への結合、その他によって修飾することができる。PACAPポリペプチド若しくはVIPポリペプチド又はPACAPポリペプチド若しくはVIPポリペプチドの断片の誘導体は、当業者に公知の手法、例えばそれらには限定されないが特異的化学開裂、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成、その他を用いて化学修飾によって修飾することができる。さらに、PACAPポリペプチド若しくはVIPポリペプチド又はPACAPポリペプチド若しくはVIPポリペプチドの断片の誘導体は、1つ又は複数の非古典的アミノ酸を含むことができる。一実施態様では、ポリペプチド誘導体は、本明細書で記載されるPACAP若しくはVIPのポリペプチド又はPACAP若しくはVIPのポリペプチドの断片と類似又は同一の機能を有する。他の実施態様では、PACAPポリペプチド若しくはVIPポリペプチド又はPACAPポリペプチド若しくはVIPポリペプチドの断片の誘導体は、変更されないポリペプチドと比較して変更された活性を有する。
【0035】
本明細書で使用するように、PACAP又はVIPのポリペプチドとの関連で用語「断片」は、PACAP又はVIPのポリペプチドアミノ酸配列の少なくとも5つの連続アミノ酸残基、少なくとも10の連続アミノ酸残基、少なくとも15の連続アミノ酸残基、少なくとも20の連続アミノ酸残基、少なくとも25の連続アミノ酸残基、少なくとも30の連続アミノ酸残基、少なくとも35の連続アミノ酸残基のアミノ酸配列を含むPACAP又はVIPのペプチド又はポリペプチドを含む。
【0036】
本明細書で使用するように、用語「融合タンパク質」は、第1のポリペプチド又はタンパク質又はその断片、類似体若しくは誘導体のアミノ酸配列、及び異種ポリペプチド又はタンパク質のアミノ酸配列を含むポリペプチド又はタンパク質を指す。一実施態様では、融合タンパク質は異種タンパク質、ポリペプチド又はペプチドと融合した予防剤又は治療剤を含む。この実施態様に従い、異種タンパク質、ポリペプチド又はペプチドは、異なる種類の予防剤又は治療剤であっても、そうでなくともよい。例えば、免疫調節活性を有する2つの異なるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドは、互いに融合させて融合タンパク質を形成することができる。好ましい一実施態様では、融合タンパク質は異種タンパク質、ポリペプチド又はペプチドに融合される前の元のポリペプチド又はタンパク質の活性と比較して、改善された活性を保持するか、又は有する。
【0037】
本明細書で使用するように、用語「過剰増殖性細胞障害」、「過剰増殖性細胞疾患」、「過剰増殖性障害」、「過剰増殖性疾患」及び類似した用語は、細胞の過剰増殖、又は任意の形態の過剰細胞蓄積がその障害の病理的状態又は症状を引き起こすか又はそれに寄与する障害を指す。ある実施態様では、過剰増殖性細胞障害は過剰増殖性上皮細胞を特徴とする。他の実施態様では、過剰増殖性細胞障害は過剰増殖性腎尿細管細胞を特徴とする。ある実施態様では、過剰増殖性細胞障害は腫瘍性ではない。ある実施態様では、過剰増殖性細胞障害は腫瘍性である。好ましい一実施態様では、過剰増殖性障害は骨髄腫である。
【0038】
本明細書で使用するように、用語「併用して」は、複数の療法(例えば予防及び/又は治療剤)の使用を指す。用語「併用して」の使用は、療法(例えば予防剤及び/又は治療剤)が過剰増殖性細胞障害、特に癌を有する対象に投与される順序を制限しない。一次療法(例えば予防剤及び/又は治療剤)は、過剰増殖性細胞障害、特に癌を有した、有する又はそれに感受性の対象に対して、二次療法(例えば予防剤及び/又は治療剤)の投与より前(1分、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週、2週、3週、4週、5週、6週、8週又は12週前)に、同時に、又はその後(1分、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週、2週、3週、4週、5週、6週、8週又は12週後)に投与することができる。それらの療法(例えば予防剤及び/又は治療剤)は、本発明の剤が他の剤と共に作用してそれらが別の方法で投与されたときよりも恩恵が増大するように経時的に、またある時間間隔で対象に投与される。任意のさらなる療法(例えば予防剤及び/又は治療剤)は、他のさらなる療法(例えば予防剤及び/又は治療剤)と任意の順序で施すことができる。
【0039】
本明細書で使用するように、用語「管理する」、「管理すること」及び「管理」は、疾患の治癒には至らないが療法(例えば予防剤及び/又は治療剤)の投与から対象が引き出す有益効果を指す。ある実施態様では、対象は疾患の進行又は悪化を予防するために疾患を「管理する」ために、1つ又は複数の療法(例えば予防剤及び/又は治療剤)を施される。
【0040】
本明細書で使用するように、用語「腫瘍性」は、遠位部位に転移する能力を有する細胞を含む疾患を指す。腫瘍細胞は、様々な機構を通してとはいえ、それらの発達の間に特徴的な一組の機能的能力を得る。そのような能力としては、回避アポトーシス、増殖シグナルの自給自足、抗増殖シグナルへの非感受性、組織侵入/転移、無限の複製能力及び持続的血管形成がある。したがって「非腫瘍性」は、病態、疾患又は障害は癌細胞を含まないことを意味する。
【0041】
本明細書で使用するように、句「非反応性の/難治性の」は、化学療法、放射線療法、外科手術、ホルモン療法及び/又は生物学的療法/免疫療法、特に特定の癌のための標準の療法などの1つ又は複数の今日利用できる療法(例えば癌療法)で治療される患者を記載するために用いられるが、その療法は患者を治療するのに臨床的に十分ではなく、これらの患者はさらなる有効な療法を必要とし、例えば療法に非感受性のままである。この句は、療法に応答するが副作用があるか、再発するか、抵抗性が発達するか、その他である患者を記載することもできる。様々な実施態様で、「非反応性の/難治性の」は、癌細胞の少なくとも一部の相当部分が死なないか又はそれらの細胞分裂が停止しないことを意味する。癌細胞が「非反応性/難治性」であるかどうかは、当技術分野で容認されているそのような文脈での「難治性」の意味を用いて、癌細胞に及ぼす治療の効果を分析するための当技術分野で公知の任意の方法によってインビボ又はインビトロで決定することができる。様々な実施態様では、癌は「非反応性/難治性」であり、治療の間、癌細胞数はほとんど減少しなかったか、増加した。
【0042】
本明細書で使用するように、用語「予防する」、「予防すること」及び「予防」は、対象における、療法(例えば予防剤又は治療剤)又は併用療法の投与から生じる疾患の開始、再発又は拡大の予防を指す。
本明細書で使用するように、用語「腎臓機能障害」は、必須栄養素を十分に保持して有害物質を血液から排除する体の能力を損なう、腎臓系の障害である。腎臓機能障害は、疾患と関連しているか又は関連していない。
【0043】
本明細書で使用するように、用語「腎臟病」は1つ又は複数の疾患、例えばそれらには限定されないが、慢性腎不全、急性腎不全、骨髄腫腎、多発性骨髄腫、糖尿病、癌、肝疾患、良性B細胞過剰増殖、悪性B細胞過剰増殖、高血圧、鎌状赤血球貧血、シェーグレン症候群、ループス及び多発性嚢胞腎と関連する腎臓機能障害である。
本明細書で使用するように、用語「細胞に対する細胞保護効果」、「細胞の保護」及び「細胞の救済」は、病理を引き起こす細胞表現型の抑制又は細胞の病理学的症状の減少を意味する。
【0044】
本明細書で使用するように用語「病理を引き起こす細胞表現型の抑制」及び「病理学的症状の減少」には、それらには限定されないが、以下のものの1つ又は複数が含まれる:細胞生存能力の高進、細胞の過剰増殖の抑制、NFκBの活性化、TNF−α及びIL−6のような病理に関連する分子の産生の減少。
【0045】
本明細書で使用するように、用語「予防剤」は、腎臓機能障害及び多発性骨髄腫と関連する障害、過剰増殖性細胞疾患と関連する障害、特に癌の開始、再発又は拡大の予防で用いることができる任意の剤を指す。ある実施態様では、用語「予防剤」は本発明の組成物を指す。他のある実施態様では、用語「予防剤」は本発明の組成物以外の療法、例えば癌化学療法、放射線療法、ホルモン療法、生物学的療法(例えば免疫療法)を指す。他の実施態様では、1つを超える予防剤を併用して投与することができる。
【0046】
本明細書で使用するように、「予防的有効量」は障害(例えば、腎臟病又は過剰増殖性細胞疾患、好ましくは癌と関連する障害)の開始、再発又は拡大の予防をもたらすのに十分な療法(例えば予防剤)の量を指す。予防的有効量は、対象、例えばそれらには限定されないが、腎臟病又は過剰増殖性細胞疾患の素因を有する対象、例えば腎臟病、糖尿病、感染症若しくは癌(特に、骨髄腫)の遺伝的素因を有するか、又は以前に発癌物質にさらされた対象において、障害(例えば腎臟病又は過剰増殖性細胞疾患、特に癌と関連する障害)の開始、再発又は拡大を予防するのに十分な量の療法(例えば予防剤)を指す。予防的有効量は、障害(例えば腎臟病及び過剰増殖性細胞疾患と関連する障害)の予防において予防的利益を提供する量の療法(例えば予防剤)を指すこともある。さらに、療法(例えば予防剤)に関して予防的有効量は、療法(例えば予防剤)単独の、又は他の療法(例えば剤)と併用されたときの、障害(例えば腎臟病及び過剰増殖性細胞疾患と関連する障害)の予防で予防的利益を提供するその量を意味する。本発明の組成物の量と関連して用いられると、その用語は全体的な予防を改善するか、又は他の療法(例えば予防剤)の予防効力若しくはそれとの相乗効果を強化する量を含むことができる。
本明細書で使用するように、「プロトコル」は投薬スケジュール及び投薬計画を含む。
【0047】
本明細書で使用するように、句「副作用」は、予防剤又は治療剤の望ましくない悪影響を含む。悪影響は常に望ましくないが、望ましくない影響は必ずしも有害であるというわけではない。療法(例えば予防剤又は治療剤)からの悪影響は、有害又は不快又は危険なことがある。化学療法からの副作用としては、それらには限定されないが、胃腸毒性、例えばそれらには限定されないが初期及び後期形成の下痢及び鼓腸、吐き気、嘔吐、食欲不振、白血球減少症、貧血症、好中球減少症、無力症、腹部痙攣、熱、疼痛、体重減少、脱水、脱毛症、呼吸困難、不眠症、めまい、粘膜炎、口内乾燥症及び腎不全、並びに便秘、神経及び筋肉への影響、腎臓及び膀胱への一時的若しくは恒久的損傷、風邪様症状、流体貯留並びに一時的若しくは恒久的不妊症などがある。放射線療法からの副作用としては、それらには限定されないが、疲労、口渇及び食欲不振がある。生物学的療法/免疫療法からの副作用としては、それらには限定されないが、投与部位の発疹又は腫脹、熱、悪寒及び疲労のような風邪様症状、消化管問題並びにアレルギー反応などがある。ホルモン療法からの副作用としては、それらには限定されないが、吐き気、受胎能力の問題、うつ病、食欲不振、目の問題、頭痛及び体重変動がある。患者によって一般的に経験されるさらなる好ましくない影響は非常に多く、当技術分野で公知である。多くは、Physicians' Desk Reference (第56版., 2002、57th ed., 2003及び58th ed., 2004)で記載される。
【0048】
本明細書で使用されているように、用語「対象」と「患者」は互換的に使用される。本明細書で使用されているように、対象は好ましくは哺乳類、例えば非霊長類(例えばウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラット、その他)及び霊長類(例えばサル及びヒト)、好ましくはヒトである。具体的な一実施態様では、対象はヒト以外の動物である。他の実施態様では、対象は家畜(例えばウマ、ブタ、子羊若しくはウシ)又はペット(例えばイヌ、ネコ、ウサギ若しくは鳥)である。他の実施態様では、対象は実験動物又は動物モデル(例えばマウス、ラット、モルモット若しくはサル)以外の動物である。好ましい一実施態様では、対象はヒトである。他の好ましい実施態様では、対象は尿にタンパク質が過剰産生されるヒトである。具体的な実施態様では、タンパク質は単クローン性タンパク質、パラプロテイン、Mタンパク質又はベンス−ジョーンズタンパク質である。他の好ましい実施態様では、対象は腎臓に間質性線維症又は硝子様円柱を有するヒトである。
【0049】
本明細書で使用するように、用語「治療する」、「治療すること」及び「治療」は、障害又はその症状の根絶、減少又は改善、特に1つ又は複数の療法(例えば治療剤)の実施から生じる一次性、局所性又は転移性の癌組織の根絶、切除、修飾又は制御を指す。ある実施態様では、そのような用語はそのような疾患を有する対象への1つ又は複数の療法(例えば治療剤)の実施から生じる癌の拡大の最小化又は遅延を指す。他の実施態様では、用語「治療する」、「治療すること」及び「治療」は、ベンス−ジョーンズタンパク質の過剰産生に関連した障害若しくは症状の根絶、減少若しくは改善、又は腎細胞を保護及び/若しくは救済することを指す。
【0050】
本明細書で使用するように、用語「治療剤」は、疾患(例えば、腎臟病及び/又は過剰増殖性細胞障害、特に骨髄腫と関連する障害)の予防、治療又は管理において用いることができる任意の剤を指す。ある実施態様では、用語「治療剤」は本発明の組成物を指す。他のある実施態様では、用語「治療剤」は本発明の組成物以外の療法、例えば癌化学療法、放射線療法、ホルモン療法、及び/又は生物学的療法/免疫療法を指す。他の実施態様では、1つを超える療法(例えば治療剤)を併用して投与することができる。
【0051】
本明細書で使用するように、「治療的有効量」は障害(例えば腎臟病と関連する障害、過剰増殖性細胞疾患と関連する障害)を治療又は管理するのに十分な量、好ましくは、一次性、局所性又は転移性の癌組織を破壊、修飾、制御又は除去するのに十分な量の療法(例えば治療剤)を指す。治療的有効量は、障害(例えば腎臓機能障害又は過剰増殖性細胞疾患)の開始を遅延させるか最小化するのに十分な、例えば癌の拡大を遅延させるか最小化するのに十分な量の療法(例えば治療剤)を指すこともできる。治療的有効量は、障害(例えば腎機能障害又は骨髄腫)の治療又は管理において治療的利益を提供する量の療法(例えば治療剤)を指すこともある。さらに、療法(例えば治療剤)に関して治療的有効量は、療法(例えば治療剤)単独の、又は他の療法と併用されたときの、障害(例えば癌などの過剰増殖性細胞疾患)の治療又は管理で治療的利益を提供するその量を意味する。本発明の組成物の量と関連して用いられると、その用語は全体的な治療を改善するか、望ましくない影響を低減若しくは回避するか、又は他の療法(例えば治療剤)の治療効力若しくはそれとの相乗効果を強化する量を含むことができる。
【0052】
本明細書で使用するように、用語「療法」は、障害(例えば、腎臟病、過剰増殖性細胞障害、非腫瘍性過剰増殖性細胞障害と関連する障害)又はその症状の予防、治療又は管理において用いることができる任意のプロトコル、方法及び/又は剤を指す。ある実施態様では、用語「複数の療法」及び「療法」は、障害(例えば、腎臟病、又は過剰増殖性細胞障害、及び/又は非腫瘍性過剰増殖性細胞障害)又は医療関係者などの当業者に公知の1つ若しくは複数のその症状の治療、管理、予防又は改善に役立つ生物学的療法、支持療法及び/又は他の療法を指す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
(発明の詳細な説明)
本出願の発明者らは、軽鎖(LC)免疫グロブリンによって誘導された、培養されたヒト腎尿細管上皮細胞への損傷は、38アミノ酸を含む脳下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP38)によって劇的に抑制することができることを発見した。さらに、PACAP38は骨髄腫細胞の成長(すなわち増殖)を直接抑えることが分かった。このように、PACAPは多発性骨髄腫の治療で、二重の治療効果を有する:(1)腎障害の予防及び(2)腫瘍増殖の抑制。
【0054】
いかなる作用機構によっても束縛されないが、発明者らはPACAPが、おそらくはVPAC−R及び他の受容体を通してヒト腎尿細管細胞と直接に相互作用して、細胞を軽鎖誘導性の損傷から保護することを本発明で発見した。発明者らは、PACAPが多発性骨髄腫腫瘍細胞の増殖を抑えることも本発明で発見した。
【0055】
したがって、本発明は、腎尿細管細胞に対する潜在的損傷を有するいかなる疾患、特に過剰なタンパク質又は毒剤への腎尿細管細胞の曝露に起因する疾患の治療、管理又は予防を提供する方法及び組成物に関するものである。特に、過剰なタンパク質がNFκBを活性化する場合である。具体的な実施態様では、本発明の方法及び組成物は、多発性骨髄腫及び/又は腎臓機能障害の治療、管理又は予防を提供する。具体的には、本発明は、それを必要とする腎細胞又は哺乳動物に対して、PACAP及びVIP並びにそれらのアゴニスト、類似体、断片又は誘導体を含むPACAP化合物の有効量を投与することによる、腎細胞の障害及び死の治療及び予防のための方法を提供する。好ましい実施態様では、PACAP化合物は、PAC、VPAC及び/又はVPAC受容体を含む1つ又は複数のPACAP受容体と結合する。具体的な実施態様では、本発明はヒト腎細胞に対する細胞保護効果を与える方法を提供する。他の実施態様では、本発明はヒト骨髄腫細胞の増殖を抑制する方法を提供する。さらに、本発明の組成物及び方法は、本発明の組成物と併用する他の種類の治療剤を含む。
【0056】
本発明は、腎臓損傷と関連する障害の治療、管理又は予防のための方法及び組成物にも関する。
本発明は、現在の治療では部分的又は完全に難治性となった過剰増殖性細胞障害の治療、管理及び予防のための方法にも関する。
本発明は、1つ又は複数のPACAP活性、例えば、それらには限定されないものの、1つ又は複数のPACAP受容体に結合して、病理を引き起こす細胞表現型を抑制する活性を含む適当なPACAP化合物のスクリーニング及び同定を可能にする。
【0057】
5.1 腎臓機能障害及び多発性骨髄腫のための予防/治療の方法
本発明の方法に従い、PACAP化合物を含む医薬組成物は、腎臓及び腎細胞への損傷の治療、管理及び予防で用いることができる。ある実施態様では、本発明の方法は腎臓濾液中のタンパク質レベルの増加を伴う腎臓機能障害の治療、管理及び予防を提供する。具体的な実施態様において、腎細胞は、腎尿細管上皮細胞である。細胞の損傷は、タンパク質、例えばそれらには限定されないが、単クローン性タンパク質、パラプロテイン、Mタンパク質又はベンス−ジョーンズタンパク質の過負荷による傷害又は死に起因し、ある実施態様では多発性骨髄腫細胞の増殖が続く。本発明の方法は、例えば、障害のある糸球体濾過、水銀及び抗生物質などの様々な毒剤、虚血/再還流傷害、外傷、出血、感染症、炎症、糖尿病、癌、肝疾患、移植された腎臓の拒絶反応を含む強化された免疫反応などによる腎尿細管系へのタンパク質の流入に起因する腎臓機能障害の治療、管理及び予防を提供することもできる。
【0058】
腎細胞の傷害、例えばそれらには限定されないが尿細管の間質性傷害、髄及び乳頭の欠陥は、他の多くのタンパク質及び剤によっても起こることがある。タンパク尿症は、単に糸球体の過剰濾過(腎糸球体の濾過速度及び変化した糸球体障壁完全性の徴候の異常な増加)の結果だけではない。糸球体毛細血管を通しての異常なタンパク質輸送も、腎臟病の進行に寄与する。Brenner BM,らの論文(Am J Hypertens. 14:335(1988))。糸球体濾過機構を通過するタンパク質は、近位及び遠位尿細管によって後に再吸収される。しかし、腎臓濾液のタンパク質濃度が増加する場合は、尿細管はいずれ、取り除かれるべきタンパク質からの過負荷で傷つき、尿細管傷害をもたらす。さらに、濾液中の増加したタンパク質濃度は、タンパク質が溶液から沈殿して、凝集により尿細管内で円柱を形成してそれらを詰まらせる原因になる。タンパク質過負荷はエンドセリン−1、単球化学誘引物質タンパク質1(MCP−1)などの炎症伝達物質の増産を引き起こし、活性化後に調節され、正常T細胞が発現されて分泌される(RANTES、単球及び記憶T細胞のための化学走性サイトカイン及びオステオポンチン)。ケモカイン過剰発現に導く分子機構は、遺伝子発現を促進する転写因子NFκBによって媒介される。アルブミン及びIgG(人血のタンパク質成分)は近位尿細管細胞でのNFκB活性化の用量依存的増加(RANTES及びMCP−1のアップレギュレーションに先行する事象)を引き起こすことができる、インビトロでの証拠がある。
【0059】
具体的な実施態様において、本発明は腎細胞でTNF−αの産生を抑制する方法を提供する。他の具体的な実施態様では、本発明は腎細胞でIL6の産生を抑制する方法を提供する。他の具体的な実施態様で、本発明は腎細胞でMAPキナーゼの活性化を抑制する方法を提供する。他の実施態様で、本発明は腎細胞でNFκB活性化を抑制する方法を提供する。具体的な実施態様において、細胞に対する細胞保護効果は、細胞によって産生される炎症誘発性サイトカイン類のレベルで測定される。これらの炎症誘発性サイトカインとしては、それらには限定されないが、TNF−α、IL6及びインターフェロンがある。
【0060】
デキサメサゾンもPACAP38も免疫グロブリン軽鎖によって誘導されたERK1/2MAPK活性化(図5)及びNFκB p65活性化(図7)を抑制しなかったが、両方とも腎尿細管細胞内のNFκB p50活性化をほぼ同じ効力で有意に抑制した(図6)。いかなる機構によっても束縛されないが、腎尿細管細胞に及ぼすPACAP38の細胞保護効果は、NFκB活性化の抑制以外の他の機構によって媒介されることもある。PACAP38及びデキサメサゾンの両方は腎尿細管細胞による免疫グロブリン軽鎖誘導性のIL6産生を有意に抑制することを本発明者らは発見した(図11)。同様に、PACAP38及びデキサメサゾンの両方は、サイトカイン産生に強く関係すると考えられるキナーゼp38 MAPK(ストレス活性化プロテインキナーゼ2a)の活性化を抑制した(図12)。
【0061】
さらに、PACAP38及びデキサメサゾンの両方は、培養中の骨髄腫細胞の増殖をほぼ同じ効力で抑制したが、その機構は明らかになっていない(図8)。しかし、近位尿細管細胞及びヒト骨髄腫細胞の両方はVPAC受容体を発現し(図9)、PACAP及びVIP、並びにそれらの類似体、アゴニスト、断片又は誘導体の治療効果はこの受容体との相互作用を含む可能性が示唆される(しかし、このことはPAC−R及び/又はVPAC−Rも関係する可能性を排除するものではない)。結論として、PACAP38は多発性骨髄腫によって誘導される損傷から腎臓を保護し、骨髄腫細胞の増殖を抑制し、毒剤から腎臓を保護するために役立つ新規で、安全で有望な治療剤である。
【0062】
本発明の方法によって治療することができる他の疾患としては、悪性又は良性の単クローン性B細胞の増殖から生じ、単クローン性免疫グロブリン(Ig)組織沈着から生じる疾患がある。Decourtらの論文(Am. J. Path. 153:313-318 (1998))。これらの疾患は、多臓器Ig関連の物質の沈澱物を特徴とし、それらはしばしば単クローン性の軽鎖(LC)又はLC断片に対応して通常腎臓で優位を占める。2つの最も頻出する病理所見は、AL−アミロイド沈着症及び非アミロイド(ランダル型)LC沈着疾患(LCDD)である。AL−アミロイド沈着症沈着物は、通常糸球体間質及び細動脈壁で優位を占め、大部分はβプリーツシートフィブリル中で高度に組織されたλLCを含む。対照的に、LCDD沈着物(大部分はκ型)は不定形であり、遠位尿細管及びヘンレ係蹄の基底膜の外側部分に沿って優位を占め、しばしば顕著な結節性糸球体硬化症と関連する。
【0063】
生理ストレス、様々な抗生物質及び毒剤(例えば細胞殺傷剤又は細胞傷害剤)を含む多くの物質は、腎尿細管上皮細胞に直接的に影響を及ぼして尿細管細胞傷害を引き起こす可能性がある。糖尿病、肝疾患、外傷、出血、感染症も腎臓機能障害を引き起こすことがある。炎症性機構が虚血/再還流傷害と同様に毒素誘導性の急性腎不全に寄与することを、益々多くの証拠が示す。したがって、本発明は腎細胞の傷害、例えばそれらには限定されないが、治療法又は抗生物質又は有害物質に起因する尿細管細胞、尿細管上皮細胞の傷害の予防を提供する。他の実施態様では、細胞は糖尿病、糸球体過剰濾過及び腎臓機能障害に関連した他の病態によって傷つく。腎臟病を引き起こす可能性のある他の剤としては、例えばそれらには限定されないが、溶血尿毒症症候群(溶血性貧血、出血性大腸炎、血小板減少症)を引き起こし、子供の急性腎不全の主要な原因である志賀毒素、志賀毒素様毒素、ベロ毒素、志賀毒素産生大腸菌(STEC)、特に血清型0157:H7、Ceponisらの論文(Mem Inst Oswaldo Cruz, Rio de Janeiro 100 (Supp. 1): 199-203 (2005))、ジフテリア毒素、アブリン、リシンA、シュードモナス外毒素、コレラ毒素、重金属、例えば水銀、鉛、シスプラチンなどがある。
【0064】
具体的な実施態様では、本発明は、特に細胞傷害剤の影響から腎細胞を、より好ましくは尿細管細胞を保護又は救済するための、化学療法の細胞傷害効果の治療、管理又は予防のための方法及び組成物を提供する。
【0065】
5.2 PACAP化合物の同定
本発明は、本発明の方法に適当な、PACAP、VIP、それらのアゴニスト、類似体、断片又は誘導体などのPACAP化合物を試験及びスクリーニングするための、PACAP受容体を含む細胞、特に上皮細胞と剤をインキュベートし、次に、病理を引き起こす細胞表現型の減少、例えば細胞生存能力の向上、過剰増殖の抑制及び/又は病理関連分子(例えばTNF−α、IL−6)の量の減少などについて試験し、それによって本発明の方法に役立つPACAP化合物を特定することによる方法を提供する。PAC、VPAC又はVPAC受容体を有するいかなる細胞も、このようにPACAPによって刺激することができる。
【0066】
好ましくは、PACAP化合物は一般式:
X−PACAP[a−b]−Y、
を有し、
式中、XはH又はC1〜20カルボン酸部分、例えばホルミル、アセチル、その他などの溶解性に影響を及ぼす基であり、a及びbは図1で示すPACAP38の配列からのN末端及びC末端のアミノ酸であり、YはH、NH、OH又はC1〜4カルボキシである。親油性の調整のために、好ましくはXは脂肪酸部分であり、好ましくはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸又はオレイン酸に由来し、最も好ましくはパルミチン酸又はステアリン酸に由来する。このように、PACAP38はPACAP[1〜38]−NHと表され、すなわち、XはH、YはC末端のリジンに結合したNHであり、その化合物は図1の1〜38アミノ酸の完全な配列を有する。ポリペプチドはいずれの末端においても、担体溶液中の溶解性に有利に影響するか、又は実質的に化合物の効果に悪影響を与えることなく酵素的分解に抵抗してその生物学的半減期を延長するPACAP化合物の能力に有利に影響する基で置換することができる。このように、Xは有機酸又はその塩でよく、好ましくはC1〜25、好ましくはC1〜20のアルキル基だけを含み、又はそのような酸からの残基、例えばそのような酸に由来するエーテルを含む。低分子量(C1〜4)酸又は酸残基は、医薬組成物中又は体液中でのポリペプチドの溶解性を増加させるために用いることができる。より大きな分子量の部分、例えばC12〜20長鎖脂肪酸残基も、酵素的分解に対する抵抗性を強化して生物学的半減期を長くするために用いることができる。ポリペプチドのC末端の置換基も、その有用性に悪影響を及ぼすことなくPACAP化合物の溶解性を強化するために用いることができる。例えば、C末端アミノ酸のアミノ(NH)基は、ヒドロキシル基又は低級(C1〜4)アルコール又はカルボキシル基によって置換することができる。
【0067】
PACAP配列中に含まれるあるアミノ酸を、多発性骨髄腫及び/又は腎臓機能障害の治療、管理又は予防におけるその有用性に実質的に影響することなく、その分子の物性のマイナーな調整のために様々に置換することも可能である。例えば、反応性の低いアミノ酸の置換は、医薬組成物の安定性及び有効寿命を増加させることができる。他のアミノ酸置換が可能であるけれども、好ましい実施態様において1つ又は複数の以下の置換が可能である。
【0068】
【表1】

【0069】
D−アミノ酸の置換は、増加したインビボ安定性を提供して生物学的半減期を長くすることができる。本出願で用いられるように、置換は修飾されたPACAP構造の前に大括弧で示される。例えば、[Glu3,8]PACAP[1〜27]−NHは、位置3のアスパラギン及び位置8のアスパラギンがそれぞれグルタミン酸で置換されたPACAP27を指す。
適当な例示的な組成物を下で開示する。
【0070】
好ましい一実施態様では、本発明の医薬組成物は、PACAP38、その塩又は誘導体を含む。他の好ましい実施態様では、本発明の医薬組成物は、PACAP27、VIP、それらの塩又は誘導体を含む。本明細書で使用するように、「PACAP27」及び「PACAP38」は、図1で示すようにそれぞれPACAP38のアミノ酸1〜27及び1〜38と同じアミノ酸配列を有するポリペプチドを指す。他の適当なPACAP化合物としては以下がある。
【0071】
1.Nαアセチル−PACAP1〜38−NH(式中、PACAP1〜38は配列番号1のアミノ酸1〜38を表す)。
2.Nαアセチル−PACAP2〜38−NH、(式中、PACAP2〜38は配列番号1のアミノ酸2〜38を表す)。
3.Nα−ステアリル−PACAP1〜38−NH、(式中、PACAP1〜38は配列番号1のアミノ酸1〜38を表す)。
4.Nα−ステアリル−PACAP2〜38−NH、(式中、PACAP2〜38は配列番号1のアミノ酸2〜38を表す)。
【0072】
5.PACAP1〜38−OH、式中、PACAP1〜38は配列番号1のアミノ酸1〜38を表す)。
6.PACAP1〜30−NH、(式中、PACAP1〜30は配列番号1のアミノ酸1〜30を表す)。
7.PACAP2〜30−NH、(式中、PACAP2〜30は配列番号1のアミノ酸2〜30を表す)。
8.Nα−アセチル−PACAP2〜30−NH、(式中、PACAP2〜30は配列番号1のアミノ酸2〜30を表す)。
【0073】
9.PACAP1〜27−NH、(式中、PACAP1〜27は配列番号1又は配列番号2のアミノ酸1〜27を表す)。
10.Nα−アセチル−PACAP1〜27−NH、(式中、PACAP1〜27は配列番号1又は配列番号2のアミノ酸1〜27を表す)。
11.Nα−アセチル−PACAP2〜27−NH、(式中、PACAP2〜27は配列番号1又は配列番号2のアミノ酸2〜27を表す)。
12.Nα−ステアリル−PACAP1〜27−NH、(式中、PACAP1〜27は配列番号1又は配列番号2のアミノ酸1〜27を表す)。
【0074】
13.Nα−ステアリル−PACAP2〜27−NH、(式中、PACAP2〜27は配列番号1又は配列番号2のアミノ酸2〜27を表す)。
14.PACAP2〜27−NH、(式中、PACAP2〜27は配列番号1又は配列番号2のアミノ酸2〜27を表す)。
15.[Tyr]PACAP1〜b−NH、b=27〜38、(式中、PACAP1〜bは配列番号1のアミノ酸1〜bを表し、bはアミノ酸27〜38を表す)。
16.[Ala]PACAP1〜b−NH、b=27〜38、(式中、PACAP1〜bは配列番号1のアミノ酸1〜bを表し、bはアミノ酸27〜38を表す)。
【0075】
17.[Arg]PACAP1〜b−NH、b=27〜38、(式中、PACAP1〜bは配列番号1のアミノ酸1〜bを表し、bはアミノ酸27〜38を表す)。
18.[Glu]PACAP1〜b−NH、b=27〜38、(式中、PACAP1〜bは配列番号1のアミノ酸1〜bを表し、bはアミノ酸27〜38を表す)。
19.[Glu]PACAP1〜b−NH、b=27〜38、(式中、PACAP1〜bは配列番号1のアミノ酸1〜bを表し、bはアミノ酸27〜38を表す)。
20.[Glu]PACAP1〜b−NH、b=27〜38、(式中、PACAP1〜bは配列番号1のアミノ酸1〜bを表し、bはアミノ酸27〜38を表す)。
21.[Glu3,8]PACAP1〜b−NH、b=27〜38、(式中、PACAP1〜bは配列番号1のアミノ酸1〜bを表し、bはアミノ酸27〜38を表す)。
【0076】
22.[Asn]PACAP1〜b−NH、b=27〜38、(式中、PACAP1〜bは配列番号1のアミノ酸1〜bを表し、bはアミノ酸27〜38を表す。
23.[Thr11]PACAP1〜b−NH、b=27〜38、(式中、PACAP1〜bは配列番号1のアミノ酸1〜bを表し、bはアミノ酸27〜38を表す)。
24.[Leu13]PACAP1〜b−NH、b=27〜38、(式中、PACAP1〜bは配列番号1のアミノ酸1〜bを表し、bはアミノ酸27〜38を表す)。
25.[Ser24,25]PACAP1〜b−NH、b=27〜38、(式中、PACAP1〜bは配列番号1のアミノ酸1〜bを表し、bはアミノ酸27〜38を表す)。
26.X−[Gly17]PACAP1〜b−NH、X=C10〜18脂肪酸、b=27〜38、(式中、PACAP1〜bは配列番号1のアミノ酸1〜bを表し、bはアミノ酸27〜38を表す)。
【0077】
27.X−[Ser17]PACAP27−NH、X=C10〜18脂肪酸。
28.X−[Phe17]PACAP27−NH、X=C10〜18脂肪酸。
29.X−[Glu17]PACAP27−NH、X=C10〜18脂肪酸。
30.X−[Arg17]PACAP27−NH、X=C10〜18脂肪酸。
31.X−[Nle17]PACAP27−NH、X=C10〜18脂肪酸。
32.X−[Ala]PACAP(1〜23)−NH、X=C10〜18脂肪酸。
【0078】
33.[Ala,Leu13]PACAP1〜b−NH、b=23〜38、(式中、PACAP1〜bは配列番号1のアミノ酸1〜bを表し、bはアミノ酸23〜38を表す)。
34.[Leu13]PACAP1〜b−NH、b=23〜38、(式中、PACAP1〜bは配列番号1のアミノ酸1〜bを表し、bはアミノ酸23〜38を表す)。
35.[Tyr]PACAP1〜b−NH、b=23〜26、(式中、PACAP1〜bは配列番号1又は配列番号2のアミノ酸1〜bを表し、bはアミノ酸23〜26を表す)。
36.PACAP1〜b−NH、b=23〜26、(式中、PACAP1〜bは配列番号1又は配列番号2のアミノ酸1〜bを表し、bはアミノ酸23〜26を表す)。
【0079】
37.PACAP1〜24−NH、(式中、PACAP1〜24は配列番号1又は配列番号2のアミノ酸1〜24を表す)。
38.PACAP1〜23−OH、(式中、PACAP1〜23は配列番号1又は配列番号2のアミノ酸1〜23を表す)。
39.PACAP2〜23−NH、(式中、PACAP2〜23は配列番号1又は配列番号2のアミノ酸2〜23を表す)。
40.Nα−X−PACAP1〜38−NH、X=C10〜18脂肪酸、(式中、PACAP1〜38は配列番号1のアミノ酸1〜38を表す)。
【0080】
41.Nα−X−PACAP2〜38−NH、X=C10〜18脂肪酸、(式中、PACAP2〜38は配列番号1のアミノ酸2〜38を表す)。
42.Nα−X−PACAP1〜27−NH、X=C10〜18脂肪酸、(式中、PACAP1〜27は配列番号2のアミノ酸1〜27を表す)。
43.Nα−X−PACAP2〜27−NH、X=C10〜18脂肪酸、(式中、PACAP2〜27は配列番号2のアミノ酸2〜27を表す)。
44.PAC受容体、VPAC受容体又はVPAC受容体のための任意のペプチド若しくは非ペプチドのアゴニスト(上で列記したもの以外)、並びにそれらの有機及び無機の塩。
PACAPの用途に関するさらなる情報は、その開示が本明細書で参照により組み込まれている米国特許第6680295号で開示される。
【0081】
好ましい実施態様では、PACAP化合物には、1つ又は複数のPACAP受容体と結合するPACAP、VIP、それらのアゴニスト、類似体、断片又は誘導体が含まれる。好ましい実施態様では、本発明の組成物は1つ又は複数のPACAP化合物を含み、その例としては、それらには限定されないが、下記アミノ酸配列を含むペプチド類がある。配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、及び配列番号27。
【0082】
好ましい一実施態様では、本発明のPACAP化合物は融合タンパク質である。具体的な実施態様では、異種タンパク質は予防剤/治療剤である。具体的な実施態様において、異種タンパク質はインターフェロンである。
本発明は、例えば病理学的症状の減少、細胞生存能力の向上、過剰増殖の抑制、NFκBの活性化及び/又は病理関連分子(例えばTNF−α、IL−6)の減量による、PACAP化合物を特定するインビボアッセイの使用も含む。これらの方法は、下記の第6節で開示される。
【0083】
一実施態様では、病理を引き起こす上皮細胞表現型は、過剰増殖である。生存及び/又は増殖を評価するために、当技術分野で公知の多くのアッセイを使用することができる。例えば、細胞増殖は(H)−チミジンの取り込みの測定、直接的細胞計数、細胞周期マーカー(Rb、cdc2、サイクリンA、D1、D2、D3、E、その他)などの既知の遺伝子の転写、翻訳又は活性の変化を検出することによって分析することができる。そのようなタンパク質及びmRNA並びに活性のレベルは、当技術分野で公知の任意の方法で測定することができる。例えば、タンパク質は、市販の抗体を用いてウエスタンブロット法又は免疫沈降反応などの公知の免疫診断法によって定量することができる(例えば、多くの細胞周期マーカー抗体は、Santa Cruz社からのものである)。mRNAは、当技術分野で公知で日常用いられる方法、例えばノーザン分析、RNアーゼ保護、逆転写と組み合わせたポリメラーゼ連鎖反応、その他によって定量することができる。細胞生存能力は、トリパンブルー染色又は当技術分野で公知の他の細胞死若しくは生存能力マーカーを用いて評価することができる。
【0084】
本発明は、当技術分野で公知の様々な手法、例えばそれらには限定されないが以下の手法などによる細胞周期及び細胞増殖の分析を可能にする。一例として、ブロモデオキシウリジン(BRDU)取り込みを、増殖性細胞を特定するためのアッセイとして用いることができる。BRDUアッセイは、新しく合成されたDNAへのBRDUの取り込みによって、DNA合成中の細胞集団を特定する。新しく合成されたDNAは、次に抗BRDU抗体を用いて検出することができる(Hoshinoらの論文(1986, Int. J. Cancer 38:369)、Campanaらの論文(1988, J. Immunol. Meth. 107:79)を参照)。
【0085】
細胞増殖は、(H)−チミジン取り込みを用いても検査することができる(例えばChenの論文(1996, Oncogene 13:1395-403);Jeoungの論文(1995, J. Biol. Chem. 270:18367-73)を参照)。このアッセイは、S期のDNA合成の定量的な特性評価を可能にする。このアッセイでは、DNAを合成する細胞は(H)−チミジンを新しく合成されたDNAへ取り込む。取り込みは、次に当技術分野で標準の手法により、例えばシンチレーションカウンター(例えばBeckman LS3800 Liquid Scintillation Counter)での放射性同位体の計数によって測定することができる。
【0086】
細胞増殖を測定するために、増殖性細胞核抗原(PCNA)の検出を用いることもできる。PCNAは、その発現が増殖性細胞内で、特に細胞周期の初期G1期及びS期に上昇することから増殖性細胞のマーカーの役目を果たすことができる、36キロダルトンのタンパク質である。陽性細胞は、抗PCNA抗体を用いる免疫染色によって特定される(Liらの論文(1996, Curr. Biol. 6:189-99);Vassilevらの論文(1995, J. Cell Sci. 108:1205-15)を参照)。
【0087】
細胞増殖は、経時的に細胞集団の試料を計数することによって測定することができる。細胞は、血球計数器及び光学顕微鏡(例えばHyLite血球計数器、Hausser Scientific)を用いて計数することができる(例えば毎日の細胞数)。関心の集団に関する増殖曲線を得るために、細胞数を時間に対してグラフで表示することができる。好ましい一実施態様では、この方法で計数した細胞を先ず色素トリパンブルー(Sigma)と混合すると、生細胞は色素を排除するので集団の生存可能なメンバーとして計数される。
【0088】
細胞のDNA含量及び/又は分裂指数は、例えば細胞のDNA倍数性値に基づいて測定することができる。例えば、細胞周期のG1期の細胞は、一般に2NのDNA倍数性値を含む。DNAは複製しているが有糸分裂(例えばS期の細胞)を通して進行していない細胞は、2Nより高くて最高4Nの倍数性値のDNA含量を示す。倍数性値及び細胞周期動態は、ヨウ化プロピダム(propidum)アッセイを用いてさらに測定することができる(例えばTurnerらの論文(1998, Prostate 34:175- 81)を参照)。或いは、DNA倍数性は、コンピュータ化されたミクロデンシトメトリー染色系の上で、DNAフォイルゲン染色(これは、DNAに化学量論的に結合する)の定量化で測定することができる(例えば、Bacusの論文(1989, Am. J. Pathol. 135:733-92)を参照)。他の実施態様では、DNA含量は染色体スプレッドの調製によって分析することができる(Zabalouの論文(1994, Hereditas.120: 127-40);Pardueの論文(1994, Meth. Cell Biol. 44:333-351))。
【0089】
細胞周期タンパク質(例えば、CycA、CycB、CycE、CycD、cdc2、Cdk4/6、Rb、p21、p27、その他)の発現は、細胞又は細胞集団の増殖状態に関して重要な情報を提供する。例えば、抗増殖情報伝達経路内の特定は、p21cip1の誘導によって示すことができる。細胞内のp21発現量の増加は、細胞周期のG1への移行が遅延する結果となる(Harperらの論文(1993, Cell 75:805-816);Liらの論文(1996, Curr. Biol. 6:189-199))。p21誘導は、市販の特異的抗p21抗体(例えばSanta Cruz)を用いる免疫染色によって特定することができる。同様に、細胞周期タンパク質は、市販の抗体を用いてウエスタンブロット分析によって検査することができる。他の実施態様では、細胞集団は細胞周期タンパク質の検出の前に同期させる。細胞周期タンパク質は、関心のタンパク質に対する抗体を用いてFACS(蛍光活性化細胞選別装置)分析によって検出することもできる。
【0090】
5.3 投薬量
本発明者らは、腎尿細管上皮細胞による免疫グロブリン軽鎖依存性TNF−α産生は、デキサメサゾンより10,000倍大きな効力でPACAP38によって用量依存的に抑制されることを示した(図4)。
【0091】
LCによる腎尿細管細胞損傷の程度が産生される炎症誘発性サイトカインのレベルに対応するならば、PACAPはデキサメサゾンの同等効果の用量より10,000倍低い用量でヒト腎尿細管細胞において類似した細胞保護効果を達成することができる。デキサメサゾンの長期投与は重大な有害副作用を引き起こすことがあるので、類似した又はより大きな治療効果を達成するために非常により低い用量のPACAP38の使用が、その臨床有用性という点で有利である。さらに、デキサメサゾンは腎不全の危険が高く、また、ステロイドは血糖値を変化させる可能性があるので、糖尿病患者においては禁忌である。対照的に、PACAP38はこれらの欠点がないと予想される。
【0092】
具体的な実施態様では、本方法は腎細胞又は対象に対して、腎細胞に細胞保護効果を提供するためのPACAP化合物の有効量を投与することを含む。具体的な実施態様において、細胞保護効果は、腎細胞によって産生される炎症誘発性サイトカイン類のレベルによって測定される。他の具体的な実施態様では、本方法は骨髄腫細胞又は対象に対して、骨髄腫細胞の増殖抑制のためのPACAP化合物の有効量を投与することを含む。一実施態様では、治療する細胞が培養中のとき、有効量は培地中で約10−13Mから約10−7Mである。他の実施態様では、骨髄腫細胞が対象の組織内にあるとき、PACAP化合物の濃度は間質腔又は血液で測定される。具体的な実施態様では、有効量は約10−13M〜10−12M、10−12M〜10−11M、10−11M〜10−10M、10−10M〜10−9M、10−9M〜10−8M、10−8M〜10−7Mである。好ましい一実施態様では、有効量は約10−11Mである。最も好ましい実施態様では、有効量は約10−9Mである。
【0093】
好ましい実施態様では、ヒトにおけるPACAP化合物の静脈内投与については、PACAP化合物の濃度は、1〜2pmol/kg体重/分、2〜4pmol/kg体重/分、4〜6pmol/kg体重/分、6〜8pmol/kg体重/分、8〜10pmol/kg体重/分、10〜12pmol/kg体重/分、12〜14pmol/kg体重/分、14〜16pmol/kg体重/分である。他の好ましい実施態様では、PACAP化合物の濃度は4pmol/kg体重/分である。PACAP化合物は、30分〜1時間、1〜2時間、2〜3時間、3〜4時間、4〜6時間、6〜8時間、8〜10時間、10〜12時間、12〜24時間又は24〜36時間投与される。
【0094】
本明細書で提供される投与の投薬量及び頻度は、用語治療的に有効な及び予防的に有効な、に包含される。投薬量及び頻度は、さらに投与する具体的な治療剤又は予防剤、腎臟病又は過剰増殖性障害の重大度、投与経路、並びに患者の年齢、体重、反応及び過去の既往に従い、各患者の特異的要素によって一般的に異なる。適当な投薬計画は、そのような要素を考慮し、また、例えば文献で報告され、Physician's Desk Reference (第56版., 2002)で推奨される投薬量に従って当業者は選択することができる。
【0095】
腎疾患及び増殖過剰性細胞障害の治療、予防又は管理に有効な本発明の組成物の量は、標準の研究手法で決定することができる。例えば、腎疾患及び過剰増殖性細胞障害の治療、予防又は管理に有効な本組成物の投薬量は、本明細書で開示される動物モデル又は当業者に公知のものなどの動物モデルに本組成物を投与することによって測定することができる。さらに、最適投薬量範囲を特定するのを助けるために、インビトロアッセイを任意選択に使用することができる。
【0096】
好ましい有効量の選択は、当業者に公知のいくつかの要素を考慮して(例えば、治験を通して)当業者は測定することができる。そのような要素としては、治療又は予防する障害、関係する症状、患者の体重、患者の免疫状態及び当業者によって投与される医薬組成物の精度を反映することが知られている他の要素がある。
【0097】
様々な実施態様において、予防剤又は治療剤は5分間隔未満、30分間隔未満、1時間間隔、約1時間間隔、約1時間〜約2時間間隔、約2時間〜約3時間間隔、約3時間〜約4時間間隔、約4時間〜約5時間間隔、約5時間〜約6時間間隔、約6時間〜約7時間間隔、約7時間〜約8時間間隔、約8時間〜約9時間間隔、約9時間〜約10時間間隔、約10時間〜約11時間間隔、約11時間〜約12時間間隔、多くて24時間間隔又は多くて48時間間隔で投与される。好ましい実施態様では、2つ以上の成分が患者の同じ訪問時に投与される。
【0098】
5.4 患者集団
本発明は、それを必要とする対象に対して本発明の1つ又は複数の組成物の治療的又は予防的な有効量を投与することによる、腎臓機能障害及び/又は細胞過剰増殖、特に腎臓上皮細胞のそれと関連する障害を治療、予防及び管理するための方法を提供する。他の実施態様では、本発明の組成物は1つ又は複数の他の治療剤と併用して投与することができる。対象は好ましくは哺乳類、例えば非霊長類(例えばウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、ネコ、イヌ、げっ歯類、その他)及び霊長類(例えばサル及びヒト)である。好ましい一実施態様では、対象はヒトである。具体的な実施態様では、対象は幼児、子供又は成人である。
【0099】
本発明の方法及び組成物は、過剰増殖性細胞障害を患っている患者又は患うことが予想される患者、例えば過剰増殖性細胞障害の遺伝的素因を有するか又は過去に過剰増殖性細胞障害を患ったか又は発癌物質にさらされたか又は癌抗原に感染したか若しくは以前にそれに曝露したことのある患者に対する、本発明の1つ又は複数の組成物の投与を含む。好ましい一実施態様では、患者は悪性又は良性の単クローン性B細胞増殖の素因を有するかそれを患っている。具体的な実施態様では、患者はAL−アミロイド沈着症又は非アミロイドLC沈着疾患の病理所見を有する。好ましい一実施態様では、患者の腎臓は管膜基底に沿って円柱沈着物を有する。好ましい一実施態様では、患者は骨髄腫腎臓を患う。他の好ましい実施態様では、患者は糖尿病を患う。他の実施態様では、患者は以下の1つ又は複数を患う。溶骨性病変、再発性の細菌感染症、貧血症、慢性間質性腎炎、炎症、単クローン性免疫グロブリン血症、ヘノッホ−シェーンライン紫斑病腎炎(HSPN)、ループス腎炎、溶血尿毒症症候群。
【0100】
そのような患者は、以前過剰増殖性細胞障害のために治療されたことがあるか又はない。本発明の方法及び組成物は、一次治療又は二次治療として用いることができる。また、過剰増殖性細胞障害を治療するために現在、PACAP化合物を含まない療法を受けている患者の治療も、本発明に含まれる。本発明の方法及び組成物は、PACAPに基づかない療法のいかなる悪影響又は不耐性が起こる前に用いることができる。本発明は、難治性患者で症状を治療又は改善するために、本発明の1つ又は複数の組成物を投与する方法も含む。本発明は、過剰増殖性細胞障害の素因を有する患者で過剰増殖性細胞障害の開始又は再発を予防するために、本発明の1つ又は複数の組成物を投与する方法も含む。
一実施態様では、過剰増殖性上皮細胞障害(例えば腎臓上皮細胞)を患うことが予想される患者は、多発性骨髄腫の患者又はそれを経験した患者である。
【0101】
他の実施態様では、本発明は現在の療法に代わるものとしての、過剰増殖性細胞障害の治療方法も提供する。一実施態様では、現在の療法(例えばデキサメサゾンの使用)は患者にとって毒性が強すぎる(すなわち受け入れがたいか耐えられない副作用をもたらす)ことが判明したか、判明する可能性がある。他の実施態様では、患者は現在の療法では難治性であると判明した。そのような実施態様では、本発明は他のいかなる過剰増殖性細胞障害の療法を併用せずに、本発明の1つ又は複数の組成物の投与を提供する。ある実施態様では、本発明の1つ又は複数の組成物を、過剰増殖性細胞障害を治療するために、他の療法の代わりにそれを必要とする患者に対して投与することができる。
【0102】
5.5 他の予防/治療剤
一部の実施態様では、本発明は、本発明の1つ又は複数の組成物を腎臓機能障害又は過剰増殖性細胞障害のための他の任意の療法と併用して投与することによる、患者の腎臓機能障害又は過剰増殖性細胞障害を治療するための方法を提供する。このような他の療法の例としては、それには限定されないが、抗炎症、化学療法、放射線療法、ホルモン療法及び/又は生物学的療法及び/又は免疫療法、骨髄移植術、遺伝子治療、透析が含まれる。糖尿病の治療法も本発明の組成物と併用して投与してもよい。そのような治療としては、インシュリン療法、例えばフムリン、スルホニル尿素(グリブリド(MICRONASE(登録商標)、DIABETA(登録商標))及びグリピジド(GLUCOTROL(登録商標))、メタフォルミン(GLUCOPHAGE(登録商標))、トログリタゾン(REZULIN(登録商標))及びアカルボース(PRECOSE(登録商標))などがある。
【0103】
当技術分野で公知のいかなる抗炎症療法(例えば、抗炎症剤)でも、本発明の組成物及び方法と併用することができる。抗炎症剤のそれには限定されない例としては、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、ステロイド性抗炎症薬、βアゴニスト、抗コリン作用薬、抗ヒスタミン薬(例えばエタノールアミン、エチレンジアミン、ピペラジン及びフェノチアジン)並びにメチルキサンチンがある。NSAIDの例としては、それらには限定されないが、アスピリン、イブプロフェン、サリチラート、アセトアミノフェン、セレコキシブ(CELEBREX(商標))、ジクロフェナク(VOLTAREN(商標))、エトドラク(LODINE(商標))、フェノプロフェン(NALFON(商標))、インドメタシン(INDOCIN(商標))、ケトララック(TORADOL(商標))、オキサプロジン(DAYPRO(商標))、ナブメントン(RELAFEN(商標))、スリンダク(CLINORIL(商標))、トルメンチン(TOLECTIN(商標))、ロフェコキシブ(VIOXX(商標))、ナプロキセン(ALEVE(商標)、NAPROSYN(商標))、ケトプロフェン(ACTRON(商標))及びナブメトン(RELAFEN(商標))がある。そのようなNSAIDは、シクロオキシゲナーゼ酵素(例えばCOX−1及び/又はCOX−2)を抑制する働きをする。ステロイド性抗炎症薬の例としては、それらには限定されないが、グルココルチコイド、デキサメサゾン(DECADRON(商標))、コーチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン(DELTASONE(商標))、プレドニソロン、トリアムシノロン、アズルフィジン並びにエイコサノイド、例えばプロスタグランジン、トロンボキサン及びロイコトリエンがある。
【0104】
好ましい実施態様では、本発明の方法と併用することができる治療は化学療法である。特定の実施態様では、その治療としては化学療法の投与、例えばそれらには限定されないが、サリドマイド(THALOMID(登録商標))、デキサメサゾン、三酸化ヒ素(TRISENOX(登録商標))、パミドロン酸、ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標))、メトトレキセート、タキソール、メルカプトプリン、チオグアニン、ヒドロキシ尿素、シタラビン、シクロホスファミド、イホスファミド、ニトロソ尿素、シスプラチン、カルボプラチン、マイトマイシン、ダカルバジン、プロカルビジン、エトポシド、カンパテシン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、プリカマイシン、ミトキサントロン、アスパラギナーゼ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、パクリタキセル、ドセタキセル、カルムスチン、メルファラン、シクロホスファミド、レナリドミド(REVLIMID(商標))、その他の投与がある。放射線療法、ホルモン療法及び/又は生物学的療法/免疫療法で治療される患者は、これらの患者に含まれる。
【0105】
或いは、本発明は、放射線療法と併用することもできる。他の実施態様では、本発明はホルモン療法及び/又は生物学的療法/免疫療法と併用することができる。化学療法及び/又は放射線療法で治療される患者は、これらの患者に含まれる。また、癌の治療のために外科手術を受けた患者も、これらの患者に含まれる。
【0106】
さらに、本発明はその療法が治療する対象にとって毒性が強すぎる、すなわち受け入れがたいか耐えがたい副作用をもたらすことが判明したか、判明する可能性がある場合に、化学療法、放射線療法、ホルモン療法及び/又は生物学的療法/免疫療法の代替療法としての過剰増殖性疾患の治療法を提供する。本発明の方法で治療される対象は、どの治療が受け入れがたい又は耐えがたいかが分かれば任意選択に、外科手術、化学療法、放射線療法、ホルモン療法又は生物学的療法などの他の癌治療法で治療することができる。
【0107】
好ましい実施態様では、その治療は、本発明の組成物と併用したプレドニソン、メルファラン(Alderan(登録商標))を含む。
他の好ましい実施態様では、その治療は本発明の組成物と併用したサリドマイドを含む。
他の好ましい実施態様では、患者はインターフェロン及び本発明の組成物で治療される。
【0108】
5.6 PACAP38、PACAP27、VIP及びそれらの関連ペプチドの合成
PACAP化合物は当業者に公知の方法で調製される。ペプチドは、自動ペピチド合成機(Beckman 990B)を用いて、固相法によって合成した。C末端のアミド形ペプチド及びC末端遊離型ペプチドの合成のために、4−メチルベンズヒドリルアミン樹脂及びPAM−樹脂をそれぞれ使用した。ペプチド鎖は、Nα−Boc−アミノ酸誘導体、例えばBoc−Lys(Cl−Z)−OH、Boc−Asn−OH、Boc−Val−OH、Boc−Arg(Tos)−OH、Boc−Gin−OH、Boc−Tyr(Br−Z)−OH、Boc−Leu−OH、Boc−Ala−OH、Boc−Met−OH、Boc−Ser(Bzl)−OH、Boc−Asp(OBzl)−OH、Boc−Thr(Bzl)−OH、Boc−Phe−OH、Boc−Ile−OH、Boc−His(Tos)−OH、Boc−Glu(OBzl)−OH及びBoc−Nle−OHを用いて樹脂上で伸長させた。
【0109】
これらのNα−Bocアミノ酸誘導体は、触媒としての1−ヒドロキシベンゾトリアゾールのDMF溶液の存在下で結合したBoc−Asn−OH及びBoc−Glyn−OHを除いて、ジイソプロピルカルボジイミドのジクロロメタン溶液の存在下でペプチド鎖に連続して導入した。完成し、保護されたペプチド樹脂(それぞれ90.025mM)は、0℃で45分間、10%アニソール及び100mgのジチオスレイトールを含む無水フッ化水素の20mLで処理した。窒素流の下でフッ化水素を除いた後、遊離ペプチドをエーテル又は酢酸エチルで沈殿させ、濾過して2M酢酸で抽出した。凍結乾燥後、粗ペプチド類を得た。粗ペプチド類は、溶離液として0.02%のβ−メルカプトエタノールを含む2M酢酸を用いてSEPHADEX G−50ファイン(2.5×100cm)カラムでゲル濾過により精製し、続いて、Vydac C−18シリカ(15〜20mm粒径)の調製用逆相HPLCカラム(1.5×50cm)を実施し、これをアセトニトリルの0.1%TFA溶液の10〜35%の直線濃度勾配で3mL/分の流速で溶出した。
【0110】
精製された各物質の純度は、分析用逆相HPLC、アミノ酸分析、シークエンシング及びFABMSで確認された。
この出願で言及する物質の調製に関するさらなる情報は、例えば、その開示が本明細書で参照により組み込まれている米国特許第5198542号、5128242号、A. Sakiyamaらの論文(Pep. Chem. 1991:215 (1991))、及びC. Kitadaらの論文(Pep. Chem. 1990:239 (1991))で開示される。
【0111】
PACAP化合物は、それを必要とする宿主に対して当業者に公知の様々な手段を用いて、静脈内、骨内又は皮下に投与することができる。所望の細胞保護的(腎臓)又は細胞抑制性(骨髄腫細胞)効果を達成するためのPACAP又はVIPの最適濃度を達成するために、長期静脈内(IV)又は皮下注入によりポリペプチドを投与することも可能である。そのような投与のための適当な組成物には、生理的食塩水、リンガー液、グルコース(例えば、3〜7%、好ましくは約5重量%)及び等張性リン酸緩衝液(約pH7)などの担体中の、ポリペプチドの有効量が含まれる。IV注入のために、0.1%ウシ血清アルブミンを含む0.9%生理食塩水を用いることができる。ウシ血清アルブミンは、吸着による消失からのポリペプチドの保護のために用いられる。ウシ血清アルブミンは、ヒト血清アルブミン及びゼラチンなどの他のいかなる不活性タンパク質にも置換することができる。
【0112】
治療する細胞において有効濃度を達成するのに十分なPACAP化合物又はVIP化合物の投与量は、約10−13から約10−7M、より好ましくは約10−11から約10−7Mである。静脈内投与のための医薬組成物中のPACAP化合物又はVIP化合物の量は、活性領域で有効な量の10〜100,000倍、好ましくは100〜10,000倍、最も好ましくは500〜5,000倍である。
【0113】
5.7 治療的又は予防的有用性の特徴及び実証
本発明の予防及び/又は治療プロトコルの毒性及び効力は、細胞培養又は実験動物での標準的な薬学手順により、例えばLD50(集団の50%に致死的な用量)及びED50(集団の50%で治療効果を示す用量)を測定する方法により決定することができる。毒性効果と治療効果との間の用量比を治療指数といい、LD50/ED50比で表すことができる。大きな治療指数を示す予防及び/又は治療剤が好ましい。有害な副作用を示す予防剤及び/又は治療剤を用いることはできるが、非感染細胞への潜在的損傷を最小にし、それにより副作用を減らすために、そのような剤の標的を患部組織の部位にする送達系を設計するように注意する必要がある。
【0114】
細胞培養アッセイ及び動物試験から得られたデータは、ヒトで使用する予防剤及び/又は治療剤の用量の範囲を処方するときに使用することができる。好ましくはそのような剤の投薬量は、ほとんどもしくは全く毒性がなく、ED50を含む循環濃度の範囲内にある。投薬量は、使用される剤形、使用される投与経路に従ってこの範囲内で変動してもよい。本発明の方法で使用される任意の剤について、最初に細胞培養アッセイで治療有効量を推定することができる。細胞培養で測定されるIC50値(すなわち、症状の最大半減抑制を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿中濃度範囲を達成するために、用量を動物モデルで決定することができる。そのような情報は、ヒトで役立つ用量をより正確に決定するために用いることができる。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーにより測定することができる。
【0115】
本発明に従って用いられる療法の抗過剰増殖性細胞障害活性は、抗過剰増殖性上皮細胞障害及び抗過剰増殖性内皮細胞障害の試験のための様々な実験動物モデルを用いて測定することもできる。
本発明に従って用いられる療法の腎臓への影響は、糸球体濾過率(GFR)及び腎血流量(RBF)で測定することもできる。急性腎不全は、RBFの様々な低下を伴うGFRの低下と関連していた。
【0116】
5.8 治療有用性の実証
好ましくは本発明のプロトコル及び組成物は、ヒトで用いる前に所望の治療的又は予防的活性についてインビトロで、次にインビボで試験される。例えば、特定の治療プロトコルの投与の必要を示すかどうかを決定するために用いることができるインビトロアッセイとしては、患者組織試料を培養物中で増殖させて、プロトコルに曝露させるかそうでなければそれを投与し、その組織試料に及ぼすそのようなプロトコルの影響、例えば減少したNFκB活性化、腎臓上皮細胞の救済、B細胞の生存/過剰増殖の低減、ベンス−ジョーンズタンパク質レベルの低下、TNF−α及びIL−6産生の減少、などを観察するインビトロ細胞培養アッセイがある。接触した細胞の前記特性のいずれかの実証は、その治療剤が患者のその病態を治療するのに有効であることを示す。或いは、患者からの細胞を培養する代わりに、上皮細胞系の細胞を用いて治療剤及び方法をスクリーニングすることができる。上皮細胞又はB細胞のそのような生存及び/又は増殖を評価するために、当技術分野で標準の多くのアッセイを使用することができる。さらに、本明細書で開示される腎臟病又は過剰増殖性細胞障害の治療又は予防のための併用療法の予防的及び/又は治療的有用性を評価するために、当業者に公知の任意のアッセイを用いることができる。
【0117】
5.9 医薬組成物
本発明の組成物としては、医薬組成物の製造に役立つバルク製剤組成物(例えば不純又は非無菌の組成物)及び単位用量剤形の調製で用いることができる腸管外医薬組成物(すなわち、対象又は患者への投与に適当な組成物)がある。そのような組成物は、本明細書で開示される予防剤及び/又は治療剤又はそれらの剤の組合せの予防的又は治療的有効量及び医薬として許容し得る担体を含む。好ましくは、本発明の組成物は、本発明の方法で有用な1つ又は複数のPACAP化合物の予防的又は治療的有効量と、医薬として許容し得る担体を含む。他の実施態様では、本発明の組成物は上で議論したさらなる治療薬を含む。
【0118】
具体的な実施態様において、用語「医薬として許容し得る」は、連邦又は州政府の規制機関によって承認されること、或いは米国薬局方又は一般的に認められている動物、特に人間用の他の局方にリストされることを意味する。用語「担体」は、治療薬と共に投与される希釈液、アジュバント(例えば、フロイントアジュバント(完全及び不完全)又は、より好ましくはChiron、Emeryville、CA、から入手できるMF59C.1アジュバント)、賦形剤又は溶媒を指す。そのような医薬用担体は、水及び油などの無菌の液体、例えば石油、動物、植物又は合成に由来するもの、例えば落花生油、ダイズ油、鉱油、胡麻油などでよい。医薬組成物を静脈内に投与するときは、水が好ましい担体である。生理食塩水及び水性デキストロース及びグリセリン溶液も、液体の担体として、特に注射溶液のために利用できる。適当な医薬用賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセリン、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどがある。この組成物は、必要に応じて、少量の湿潤剤若しくは乳化剤、又はpH緩衝剤を含むこともできる。これらの組成物は、液剤、懸濁液、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル、粉末、徐放性製剤などの剤形をとることができる。
【0119】
通常、本発明の組成物の成分は、単位投薬量剤形、例えば活性剤の量を表示しているアンプル又はサッシェなどの密封容器に入った乾燥した凍結乾燥粉末又は無水濃縮物として、別々に又は混合して供給される。組成物を注入により投与する場合は、無菌の医薬品級の水又は生理食塩水を含有する注入ボトルで調剤される。組成物を注射により投与する場合は、成分を投与前に混合できるように、注射用蒸留水又は生理食塩水のアンプルを提供することができる。
【0120】
本発明の組成物は、中性又は塩の剤形として製剤化することができる。医薬として許容し得る塩には、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来するアニオンで形成された塩、及びナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第2鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン、などに由来するカチオンで形成された塩が含まれる。
【0121】
所望により、溶解補助剤(例えばサリチル酸ナトリウム、酢酸ナトリウム)、緩衝液(例えばクエン酸ナトリウム、グリセリン)、等張化剤(例えばグルコース、転化糖)、安定剤(例えばヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコール)、保存料(例えばベンジルアルコール、フェノール)又は鎮痛薬(例えば塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカイン)などの添加剤を加えることができる。
【0122】
様々な送達系が公知であり、それらは腎臓病又は過剰増殖性細胞障害の予防、管理又は治療で役立つPACAP化合物又は他の予防剤/治療剤の組合せを投与するために用いることができ、その例としては、リポソームカプセル化、微小粒子、マイクロカプセル、PACAP化合物を発現することができる組換え細胞、受容体介在性エンドサイトーシス(例えば、Wu及びWuの論文(1987, J. Biol. Chem. 262:4429-4432)を参照)、レトロウイルス若しくは他のベクターの一部としての核酸の構築などがある。本発明の予防又は治療剤を投与する方法としては、それらには限定されないが、経膣、腸管外投与(例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈及び皮下)、硬膜外並びに粘膜(例えば、鼻腔内、吸入及び経口の経路)がある。具体的な実施態様では、本発明の予防剤又は治療剤は、筋内、静脈内、骨内又は皮下に投与される。予防剤又は治療剤は、いかなる都合のよい経路、例えば注入又はボーラス注射、上皮又は皮膚粘膜ライニング(例えば口腔粘膜、直腸、局所、例えば口内及び舌下、及び腸粘膜、その他)を通した吸収、によっても投与でき、それらは他の生物活性物質と共に投与することもできる。投与は、全身投与でも局所投与でもよい。
【0123】
具体的な実施態様において、本発明の予防剤又は治療剤は治療が必要な部位に局所投与することが望ましいことがある。このことは、例えば、それにより限定するものではないが、局所注入、注射、又はインプラントによって達成でき、このインプラントは多孔性、非多孔性若しくはゲル状の材料、例えばシアラスティック膜などの膜又は繊維、などでよい。
【0124】
他の実施態様では、予防剤又は治療剤は放出制御系又は徐放系で送達することができる。一実施態様では、放出制御又は徐放を達成するために、ポンプを使用することができる(上記Langerの論文、Seftonの論文(1987, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14: 20)、Buchwaldらの論文(1980, Surgery 88:507)及びSaudekらの論文(1989年, N. Engl. J. Med. 321: 574)を参照)。他の実施態様では、本発明の抗体又はその断片の制御放出又は徐放を達成するために、ポリマー材を用いることができる(例えば、Medical Applications of Controlled Release、Langer及びWise編, CRC Pres., Boca Raton, Florida (1974)、Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance, Smolen及びBall編, Wiley, New York (1984)、Ranger及びPeppas, 1983, J.Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23:61、さらに、Levyらの論文、1985, Science 228:190、Duringらの論文、1989, Ann. Neurol. 25:351、Howardらの論文、1989, J. Neurosurg. 71:105を参照)、米国特許第5679377号、5916597号、5912015号、5989463号、5128326号、国際出願公開99/15154及び国際公開99/20253。徐放性製剤で用いられるポリマーの例としては、それらには限定されないが、ポリ(2−ヒドロキシメタクリル酸エチル)、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチレン−共酢酸ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、ポリグリコリド(PLG)、ポリ無水物、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(ラクチド−共グリコリド)(PLGA)及びポリオルトエステルがある。好ましい一実施態様では、徐放性製剤で用いられるポリマーは不活性で、浸出性不純物を含まず、保存安定性があり、無菌で生物分解性である。他の実施態様では、放出制御又は徐放系は予防又は治療の標的の近くに置くことができ、このようにして全身の用量の僅か一部だけを必要とする(例えば、Goodsonの論文(上記Medical Applications of Controlled Release、第2巻、115-138頁 (1984))を参照)。
【0125】
放出制御系は、Langerによるレビュー(1990, Science 249:1527-1533)で議論されている。本発明の1つ又は複数の治療剤を含む徐放剤を産生するために、当業者に公知のいかなる手法でも用いることができる。例えば、本明細書で参照により全体として組み込まれている、米国特許第4526938号、国際出願公開91/05548及び国際公開96/20698、Ningらの論文(1996, Radiotherapy & Oncology 39:179-189)、Songらの論文(1995, PDA Journal of Pharmaceutical Science & Technology 50:372-397)、Cleekらの論文(1997, Pro. Int'l. Symp. Control. Rel. Bioact. Mater. 24:853-854)及びLamらの論文(1997, Proc. Int'l. Symp. Control Rel. Bioact. Mater. 24:759-760)を参照。
【0126】
PACAPの投与のための組成物としては、経口、直腸、経鼻、局所(口内及び舌下を含む)、膣内又は腸管外(皮下、筋肉内、静脈内及び皮内を含む)投与に適当な組成物がある。便宜上、製剤は単位用量剤形、例えば錠剤及び徐放カプセル剤、並びにリポソームで提供されてもよく、それらは薬学の分野で公知のいかなる方法によっても調製することができる。そのような方法は、投与する成分を1つ又は複数の副次的な成分を構成する担体と組み合わせる段階を含む。一般に、組成物は、有効成分を液状の担体、リポソーム又は微粉固体担体又はその両方と一様に且つ密接に混ぜ合わせ、その後必要に応じて生成物を成型することによって調製される。
【0127】
このように、本発明のPACAP化合物並びにそれらの生理的に許容できる塩及び溶媒和物は、吸入若しくは吹入法(経口若しくは経鼻)による投与、又は経口、非経口若しくは粘膜(口内、膣、直腸、舌下など)投与のために製剤化することができる。好ましい一実施態様では、局所又は全身の非経口投与が利用される。
【0128】
経口投与のためには、医薬組成物は、例えば錠剤又はカプセルのような、医薬として許容し得る賦形剤を用いて従来の手段で調製された剤型が可能で、このような賦形剤としては、結合剤(例えば、前ゼラチン化されたトウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン若しくはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、充填剤(例えばラクトース、ミクロ結晶セルロース若しくはリン酸水素カルシウム)、潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク若しくはシリカ)、崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプン若しくはグリコール酸デンプンナトリウム)、又は湿潤剤(例えばラウリル硫酸ナトリウム)がある。錠剤は当技術分野周知の方法によってコーティングしてもよい。経口投与のための液状製剤は、例えば液剤、シロップ又は懸濁液の剤形でもよく、或いはそれらは使用時に水又は他の適当な溶媒で再構成するための乾燥品として提供されてもよい。そのような液状製剤は、医薬として許容し得る添加物、例えば、懸濁剤(例えばソルビトールシロップ、セルロース誘導体又は水素化食用脂)、乳化剤(例えばレシチン又はアカシア)、非水性溶媒(例えば、アーモンドオイル、油性エステル、エチルアルコール又は分別植物油)及び防腐剤(例えば、メチル−若しくはプロピル−p−ヒドロキシベンゾアート又はソルビン酸)などを用いて従来の手段で調製することができる。製剤は適宜、緩衝塩、香料、着色剤及び甘味剤を含むこともできる。
【0129】
経口投与のために適当な本発明の組成物は、カプセル、カシェ剤若しくは錠剤などの活性剤の所定量をそれぞれ含む別々の単位として、粉末若しくは顆粒剤として、水性液体若しくは非水性液体中の溶液若しくは懸濁液として、又は水中油型乳濁液若しくは油中水型乳濁液として、又はリポソームに充填して、又はボーラスとして提供することができる。
【0130】
錠剤は圧縮又は成形により、任意選択に1つ又は複数の副成分と一緒に調製することができる。圧縮錠剤は適当な機械内で粉末又は顆粒などの易流動性の形態の有効成分を、任意選択に結合剤、滑剤、不活性の希釈液、防腐剤、界面活性又は分散性の水と混合して圧縮することによって調製することができる。成型錠剤は、不活性の液体希釈液で湿らせた粉末状の化合物の混合物を適当な機械内で成型することによって作ることができる。錠剤は、任意選択にコーティングするか切り目をつけることができ、また、その中の有効成分の遅延的放出又は制御された放出を可能にするように製剤化することができる。
経口投与のための製剤は、活性合成物の放出を制御できるように適切に製剤化することができる。
【0131】
口内投与では、組成物は従来の方法で製剤化した錠剤又はロゼンジの形状をとることができる。
吸入による投与では、本発明に従う用途の予防剤又は治療剤は、適当な噴射剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の適当なガスを使った加圧パック、又は噴霧器からのエアゾール噴霧の形で便利に送達される。加圧式エアゾールの場合、用量単位は、計量した量を送達するためのバルブを備えることにより決めることができる。例えば吸入器又は吹入器に用いられるゼラチンのカプセル剤及びカートリッジ剤は、化合物及び適当な粉状基剤、例えばラクトース又はデンプンの粉状混合物を含ませて製剤化することができる。
【0132】
予防剤又は治療剤は、注射、例えばボーラス注射又は連続注入による非経口投与のために製剤化することができる。注射用の剤型は保存剤を加えた用量単位の剤型、例えばアンプル又は多用量容器の剤型で提供してもよい。組成物は、懸濁液、油性又は水性溶媒中の液剤又は乳剤のような形態をとることができ、それらは懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤のような製剤用の剤を含むことができる。或いは、活性成分は、適当な溶媒、例えば発熱性物質を含まない無菌水で使用時に再構成するための粉末の形態でもよい。
【0133】
予防剤又は治療剤は、例えば、カカオ脂又は他のグリセリドのような従来の坐剤基剤を含有する坐薬又は停留浣腸などの直腸製剤の形態で製剤化することもできる。
前記製剤に加えて、予防剤又は治療剤は、デポー製剤として製剤化することもできる。このような長時間作用性製剤は、植込み(例えば、経皮的若しくは筋肉内)、又は筋肉内注射により投与することができる。このように、例えば、予防剤又は治療剤は適当なポリマー物質若しくは疎水材料で(例えば、許容できる油に含有させた乳剤として)、又はイオン交換樹脂で、又はやや溶けにくい誘導体、例えばやや溶けにくい塩として製剤化することができる。
【0134】
本発明は、予防剤又は治療剤が、その量を表示しているアンプル又はサッシェなどの密封容器に封入されることを規定する。一実施態様では、予防剤又は治療剤は密封容器に入っている乾燥した殺菌凍結乾燥粉末又は無水濃縮物として供給され、それらは例えば水又は生理食塩水で、対象への投与に適当な濃度に再構成することができる。
本発明の好ましい実施態様では、様々な化学療法、生物/免疫療法及びホルモン療法の剤の製剤及び投与は当技術分野で公知であり、Physician's Desk Reference, 第56版. (2002)、でしばしば記載されている。
【0135】
本発明の他の実施態様では、放射性同位体などの放射線療法剤を、カプセル内の液体として、又は飲物として経口的に与えることができる。放射性同位体は、静脈注射用に製剤化することも可能である。熟練した癌研究者は、好ましい製剤及び投与経路を決めることができる。
ある実施態様では、本発明の組成物は、静脈内注射のために1mg/ml、5mg/ml、10mg/ml及び25mg/ml、反復皮下投与及び筋肉内注射のために5mg/ml、10mg/ml及び80mg/mlで製剤化される。
【0136】
組成物は、必要に応じて、活性成分を含有する1つ又は複数の単位投薬量剤形を含むことができるパック又はディスペンサー装置で提供されてもよい。このパックは、例えば、ブリスターパックのような金属又はプラスチックのホイルを含むことができる。このパック又はディスペンサー装置には、投与のための指示書が添付されてもよい。
非経口投与(座薬、舌下錠剤又は鼻投与)のための組成物中のPACAPの量は、活性領域で有効な量の100〜1,000,000倍、好ましくは1,000〜100,000倍、最も好ましくは5,000〜50,000倍である。
【0137】
皮膚への局所投与のために適当な組成物は、化合物及び医薬として許容し得る担体を含む軟膏、クリーム、ゲル及びペーストとして提供することができる。適当な局所送達系は、投与成分を含む経皮パッチである。
舌下錠剤は、結合剤(例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はポリエチレングリコール)、崩壊剤(例えばデンプン又はカルボキシメチルセルロースカルシウム)及び/又は滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム又はタルク)を用いて調製することができる。
【0138】
直腸投与のための適当な組成物は、例えばポリエチレングリコール600、カカオバター又はサリチル酸を含む適切な基剤を有する坐薬として提供することができる。
担体が固体である鼻投与に適する組成物としては、例えば20〜500ミクロン(μm)の粒径の粗い粉末がある。担体が液体である、例えば鼻内噴霧又は点鼻剤としての投与に適当な製剤としては、活性成分の水性又は油性の溶液がある。
膣投与に適した組成物は、活性成分以外に当技術分野で適当であることが知られている担体を含む、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム又はスプレー製剤として提供することができる。
【0139】
非経口投与に適当な組成物としては、酸化防止剤、緩衝液、静菌薬、及びその製剤を予定受容個体の血液と等張性にする溶質を含むことができる水性及び非水性の無菌注射溶液、並びに懸濁化剤及び増粘剤を含むことができる水性及び非水性の無菌懸濁液がある。製剤は単位用量又は複数用量容器で、例えば密封アンプル及びバイアルで提供することができ、それらは使用直前に無菌の液状担体、例えば注射用水を添加するだけで済むフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存することができる。即時使用の注射液及び懸濁液は、前に記載した種類の無菌の粉末、顆粒及び錠剤から調製することができる。
【0140】
上で詳細に指摘した成分に加えて、本発明の製剤は問題の製剤の剤型に関して当技術分野で慣用される他の剤を含むことができることが理解されなければならず、例えば経口投与に適した剤型は着香料を含むことができる。
PACAP、VIP、それらのアゴニスト、類似体、断片及び誘導体は、PAC、VPAC、VPAC受容体部位に対して極めて低毒性であるので、これらの化合物を含む組成物は極めて低毒性である。
【0141】
5.10 遺伝子治療
具体的な実施態様において、本発明の方法に役立つPACAP化合物をコードする核酸は、遺伝子治療により腎臟病又は上皮細胞過剰増殖を治療、予防又は管理するために投与される。遺伝子治療は、発現された又は発現可能な核酸の対象への投与により実行される療法を指す。本発明のこの実施態様において、前記核酸は予防的又は治療的効果を生むかそれを媒介する。
【0142】
当技術分野で利用できる遺伝子治療法のいずれも、本発明に従い利用することができる。例示的な方法を以下で記載する。遺伝子治療法の総説については、Goldspielらの論文(1993, Clinical Pharmacy 12:488)、Wu及びWuの論文(1991, Biotherapy 3:87)、Tolstoshevの論文(1993, Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 32:573)、Mulliganの論文(1993, Science 260:926-932)及びMorgan及びAndersonの論文(1993, Ann. Rev. Biochem. 62: 191)、Mayの論文(1993, TIBTECH 11:155)を参照。用いることができる当技術分野で公知の組換えDNA技術の方法は、Ausubelら(編)の論文(Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, NY (1993))及びKrieglerの論文(Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manual, Stockton Press, NY (1990))で記載されている。
【0143】
好ましい一態様では、本発明のPACAP化合物は、適当な宿主でその核酸を発現する発現ベクターの一部である、核酸によってコードされる。詳細には、そのような核酸はプロモーター、好ましくは異種プロモーターを有し、前記プロモーターは誘導可能であるか又は構成的であり、また、任意選択に組織特異的である。他の特定の実施態様では、用いる核酸分子はゲノム中の所望の部位で相同組換えを促進する領域が隣接する本発明の核酸分子を含み、このように本発明の方法に有用なPACAP化合物をコードする核酸の染色体内の発現が可能になる(Koller及びSmithiesの論文(1989, PNAS 86:8932)、Zijlstraらの論文(1989, Nature 342:435))。
【0144】
対象への核酸の送達は、直接的でも、すなわち対象は核酸又は核酸を運ぶベクターに直接曝されても、又は間接的でも、すなわち細胞が先ずインビトロで核酸により形質転換され、次に患者に移植されてもよい。これらの2つの手法は、それぞれ生体内又は生体外遺伝子治療として知られる。具体的な実施態様において、核酸配列はインビボで直接投与される。これは、当技術分野で公知の多くの方法のいずれかにより、例えば、それらを適当な核酸発現ベクターの一部として構築し、それらが細胞内に入るように投与することにより、例えば不完全若しくは弱毒化レトロウイルス又は他のウイルスのベクターを用いて感染させることにより(例えば、米国特許第4980286号を参照)、或いは、裸のDNAの直接注入により、或いは、微小粒子衝撃(例えば、遺伝子銃:Biolistic、Dupont)の利用、又は脂質若しくは細胞表面受容体若しくはトランスフェクション剤によるコーティングにより、リポソーム、微小粒子若しくはマイクロカプセル内への封入により、又は、細胞(例えば膜浸透性配列)及び/又は核に入ることが知られているペプチドと、例えばチオエステル結合を通して結合させて投与することにより、受容体エンドサイトーシスを受けるリガンドと結合させて投与することにより(例えば、Wu及びWuの論文(1987, J. Biol. Chem. 262:4429)を参照)(それは、受容体を特異的に発現する細胞型を標的にするために用いることができる)、その他の方法で達成することができる。他の実施態様では、リガンドがエンドソームを崩壊させる融合誘導ウイルスペプチドを含み、核酸がリソソーム分解を避けることを可能にする核酸リガンド複合体を形成することができる。他の実施態様では、特定の受容体を標的にすることによって、核酸を、インビボで細胞特異的な取り込み及び発現のための標的にすることができる(例えば、国際公開92/06180、国際公開92/22635、国際公開92/20316、国際公開93/14188、国際公開93/20221を参照)。或いは、核酸を細胞内に導入して、相同組換えにより発現のために宿主細胞DNA内に組み込むことができる(Koller及びSmithiesの論文(1989, PNAS 86:8932)及びZijlstraらの論文(1989, Nature 342:435))。
【0145】
具体的な実施態様において、レトロウイルスベクターを用いることができる(Millerらの論文(1993, Meth. Enzymol. 217:581)を参照)。これらのレトロウイルスベクターは、ウイルスゲノムの正しいパッケージング及び宿主細胞DNAへの組込みのために必要な成分を含む。遺伝子治療で用いる核酸配列は1つ又は複数のベクターにクローン化され、対象への核酸の送達を促進する。レトロウイルスベクターについてのさらなる詳細は、幹細胞の化学療法抵抗性を強化するためにmdr1遺伝子を造血幹細胞へ送達するためのレトロウイルスベクターの使用を記載する、Boesenらの論文(1994, Biotherapy 6:291-302)で見られる。遺伝子治療でのレトロウイルスベクターの使用を例示する他の参考文献を以下で示す:Clowesらの論文(1994, J. Clin. Invest. 93:644-651)、Kleinらの論文(1994, Blood 83:1467-1473)、Salmons及びGunzbergの論文(1993, Human Gene Therapy 4:129-141)及びGrossman及びWilsonの論文(1993, Curr. Opin. in Genetics Devel. 3:110-114)。
【0146】
アデノウイルスは遺伝子治療で用いることができる他のウイルスベクターである。アデノウイルスは、非分裂細胞を感染させることができるという長所がある。Kozarsky及びWilsonの論文(1993, Current Opinion in Genetics Development 3:499)は、アデノウイルスに基づく遺伝子治療の概説を提示している。遺伝子治療でのアデノウイルスの他の使用例は、Rosenfeldらの論文(1991, Science 252:431)、Rosenfeldらの論文(1992. Cell 68:143)、Mastrangeliらの論文(1993, J. Clin. Invest. 91:225)、国際出願公開94/12649、及びWangらの論文(1995, Gene Therapy 2:775)で見られる。好ましい一実施態様では、アデノウイルスベクターが用いられる。アデノ随伴ウイルス(AAV)も、遺伝子治療での使用が提案されている(Walshらの論文(1993, Proc. Soc. Exp. Biol. Med. 204: 289-300)及び米国特許第5436146号)。
【0147】
細胞への外来遺伝子の導入のために多数の手法が当技術分野で公知であり(例えば、Loeffler及びBehrの論文(1993, Meth. Enzymol. 217:599)、Cohenらの論文(1993, Meth. Enzymol. 217:618)を参照)、それらは受容細胞の必要な発達機能及び生理的機能が妨害されない限り本発明に従って用いることができる。手法は、核酸が細胞によって発現可能で、好ましくはその細胞の後代によって引き継がれて発現されるように、細胞への核酸の安定した転移を提供しなければならない。
【実施例】
【0148】
以下の実施例により、本発明をさらに説明する。これらの実施例は本発明の理解の助けとするために提供され、それを限定するものと解釈されない。
【0149】
(実施例1)
ヒト腎尿細管細胞に及ぼす免疫グロブリン軽鎖の影響
SV40で不死化されたヒト腎近位尿細管細胞培養物を、50μM免疫グロブリン軽鎖(LC)と3日間インキュベートした(図2)。LCに曝露させた近位尿細管細胞は、細胞縮小、壊死及び細胞間接着の消失を含む著しい形態学的変化を示した。10−9MのPACAP38の単用は細胞形態のいかなる変化も引き起こさなかったが、10−9MのPACAP38はLC誘導性の変化を阻止した。
【0150】
(実施例2)
ヒト腎尿細管細胞によるTNF−α産生に及ぼす免疫グロブリン軽鎖の影響
理論によって束縛されることは望まないが、LC誘導性の傷害は、インターロイキン6(IL6)及び腫瘍壊死因子α(TNF−α)などの炎症誘発性サイトカインの産生に起因すると仮定された。実際、インビトロのヒト腎尿細管細胞培養物中で50μMの最終濃度までのLCの添加は、TNF−αの時間依存性産生を刺激し、48時間後に最大レベルに達した(図3)。TNF−α濃度は、ELISAで測定した。
【0151】
(実施例3)
ヒト腎尿細管細胞による免疫グロブリン軽鎖誘導性のTNF−α産生に及ぼすPACAP38、デキサメサゾン及びNFκB阻害剤の影響
LC誘導性の炎症誘発性サイトカイン産生は、細胞外シグナルで調節されたキナーゼ(ERK)型マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MARK)及び/又は核因子κB(NFκB)の活性化を通して媒介されると仮定された。LC誘導性のサイトカイン産生の抑制のための現在の治療としては、ステロイド剤デキサメサゾン及びピロリジンジチオカルバメート(PDTC)、NFκBの阻害剤がある。アポトーシスを刺激することによって骨髄腫腫瘍細胞増殖を抑えるために、デキサメサゾンも用いられる。
【0152】
ELISAで測定されたLC誘導性のTNF−α産生に対する影響を測定するために、デキサメサゾン、PACAP38、MARKキナーゼ阻害剤(U0126)又はPDTCの様々な用量を、50μMのLCと共に腎尿細管細胞培養物に加えた(図4)。LC刺激性のTNF−α産生は、デキサメサゾン及びPACAP38の双方によって用量依存的に抑制された。10−9MデキサメサゾンによるTNF−α抑制の程度は、10−13MのPACAP38で観察されたものとて同等であった。TNF−α産生の最大の抑制は、10−5Mデキサメサゾン又は10−9MのPACAP38によって成し遂げられた。これは、TNF−α産生の抑制において、PACAP38はデキサメサゾンよりも10,000倍有効なことを証明する。
【0153】
免疫グロブリン軽鎖(LC)の存在下で、10−9MのPACAP38は腎尿細管細胞の生存及び形態の劇的な保存を示した(図2)。同じ濃度のPACAP38は、サイトカインTNF−αのLC誘導性産生の劇的な抑制を示した(図4)。TNF−α産生に及ぼすPACAP38の抑制効力は、デキサメサゾンのそれの10,000倍であった。このことは、デキサメサゾンで見られたものに類似したLC誘導性のTNF−α産生のインビボ抑制を達成するために、PACAP38はデキサメサゾンよりも10,000倍小さな用量を要求することを示唆する。
【0154】
NFκB阻害剤PDTCは、この研究では高濃度(0.125μM及び12.5μM)で試験した。用いた両濃度レベルで、PDTCはLC誘導性のTNF−α産生を完全に抑制した。高用量の特異的MAPKキナーゼ(MEK1/2)阻害剤U0126も、LC誘導性のTNF−α産生を完全に抑制した。これらの結果は、腎尿細管細胞によるLC誘導性のTNF−α産生は、ERK及び/又はNFκBによって媒介される経路を伴うとの仮説を裏づける。
【0155】
(実施例4)
免疫グロブリン軽鎖誘導性のERK1/2活性化に及ぼすデキサメサゾン又はPACAP38の影響
ERK型MAPキナーゼ(ERK1及びERK2、又はまとめてERK1/2)は、リン酸化によって活性化される。そのような活性化の証拠は、ERK1/2のリン酸化形態に特異的な抗体を用いて、抗体検出手法により視覚化される。図4で示すように、50μMのLCは、3日間のインキュベーションの間、ヒト近位尿細管細胞でERK1/2の活性化を誘導した。ERK1/2の活性化は、デキサメサゾン又はPACAP38との共インキュベーションによって低減されるようであったが、その差は統計学的に有意ではなかった。このように、ERK1/2の活性化に及ぼすデキサメサゾン及びPACAP38の抑制効果は、取るに足りない。ERK1/2の活性化は、ELISAで測定した。
【0156】
(実施例5)
免疫グロブリン軽鎖によって誘導されたNFκBのp50及びp65サブユニットの活性化に及ぼすデキサメサゾン又はPACAP38の影響
インビトロのヒト腎尿細管細胞を、デキサメサゾン又はPACAP38の存在下又は非存在下で50μMのLCと3日間インキュベートし、ELISAによりNFκBサブユニットの活性化を分析した(図6と7)。図6で見られるように、LCとのインキュベーションはNFκB p50サブユニットの活発な活性化をもたらし、それは10−7Mデキサメサゾンによって、また、10−9MのPACAP38によって著しく抑制された。対照的に、図7で示すように、LCとのインキュベーションはNFκB p65サブユニットの劇的な活性化をもたらすことはなかった。しかし、対照と比較して、p65サブユニットの活性化は10−9MのPACAP38によって抑制された。ヒトRaji細胞系(Bリンパ球、バーキットリンパ腫)は、陽性対照のために用いた。
【0157】
(実施例6)
PACAP38による骨髄腫細胞増殖の抑制
上の知見は多発性骨髄腫におけるLC誘導性の腎尿細管細胞損傷の予防及び治療時のPACAP38の有用性を示唆するが、PACAP38が腫瘍細胞増殖に影響を及ぼすかどうかを検査することも重要である。上で用いたラムダ(λ)軽鎖を産生するヒト骨髄腫細胞系(NCI−H929)を、非不活性化培地を含む培地で、デキサメサゾン又はPACAP38の存在下又は非存在下で3日間増殖させた(図8)。細胞増殖は、細胞による5−ブロモ−2−デオキシウリジン(BrdU)の取り込み程度を測定する、比色アッセイで測定した。NCI−H929培養物へのデキサメサゾン又はPACAP38の添加は、細胞増殖をかなり抑制した。PACAP38は10−13Mの低い濃度で腫瘍細胞増殖を抑制する傾向があり、最大の抑制は10−7Mで観察された。10−9Mで、デキサメサゾンは腫瘍細胞増殖のかなりの抑制を示したが、10−7Mで、細胞は再び成長し始めた。多発性骨髄腫の治療におけるデキサメサゾンの治療作用は、アポトーシスの刺激に帰される。
【0158】
PACAP38は骨髄腫細胞のインビトロ増殖を抑制することを、発明者らは明らかにした。骨髄腫細胞は非不活化血清を含む培地で培養したが、この増殖は10−11Mという低いレベルのPACAP38によって抑制された。この濃度では、インビボでのPACAPの有害副作用は予想されない。インビボでは、微小環境中、特に骨髄中の他の様々な細胞及び可溶性因子との相互作用を通して骨髄腫細胞が発達する可能性がある。Hideshima Tらの論文(Blood. 101: 703 (2003))。現在では、癌の治療は化学療法から微小環境の調整の方へ移行している。骨髄では、PACAP38はp38 MAPKの活性化及びIL6の産生を抑制する。このように、腎尿細管細胞に及ぼすその有益効果及び骨髄腫細胞自体に及ぼすその予防効果のために、PACAP38は多発性骨髄腫の治療のための理想的な抗癌剤である。
【0159】
(実施例7)
ヒト脳下垂体、ヒト腎尿細管細胞及び骨髄腫細胞におけるPACAP受容体の発現
PACAPは、少なくとも3つの異なる受容体(PACAP受容体)と高親和性で相互作用する:PACAP特異的受容体(PAC−R)、及び、VIPとも相互作用することができる他の2つの受容体(VPAC−R及びVPAC−R)。PACAPの影響は細胞表面で発現するこれらの受容体の1つ又は複数との相互作用をによって媒介される可能性があるので、出願人はこれらの受容体がヒト腎尿細管上皮細胞及び骨髄腫細胞で発現されるかどうかを検査した。ヒト脳下垂体を陽性対照(参照組織)として用いた。全リボ核酸(RNA)を抽出して、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)及び適当な受容体特異的プライマーを用いて、PACAP受容体の発現を測定した(図9)。3つ全てのPACAP受容体は脳下垂体で発現したが、腎尿細管細胞も骨髄腫細胞も予測された相対的分子量でPAC−R又はVPAC−R関連のバンドを示さなかった。しかし、VPAC−Rに対応するかすかなバンドが腎尿細管細胞及び骨髄腫細胞で観察された。VPAC−R又はVPAC−Rのいずれにも対応しない頑強なバンドが、腎尿細管細胞及び骨髄腫細胞からのRNAで観察された。これらのバンドの素性は、分かっていない。
【0160】
(実施例8)
ヒト腎尿細管細胞における免疫グロブリン軽鎖誘導性のIL6産生に及ぼすPACAPの影響
腫瘍細胞によるIL6の過剰産生は、多発性骨髄腫の増殖と緊密に関連している。Kawano Mらの論文(Nature, 332: 83 (1988))。ELISAで測定されたLC誘導性のIL6産生に対する影響を測定するために、PACAP38、デキサメサゾン又はp38MARKキナーゼ阻害剤(SB202190)の様々な用量を、50μMのLCと共に腎尿細管細胞培養に加えた(図11)。LC誘導性のIL6産生は、デキサメサゾン及びPACAP38の双方によって用量依存的に抑制された。10−9MのPACAPによるIL6抑制の程度は、10−9Mのデキサメサゾン又は10μMのSB202190で観察されたものよりも高かった。
【0161】
(実施例9)
ヒト腎尿細管細胞における免疫グロブリン軽鎖誘導性のp38 MAPK活性化に及ぼすPACAPの影響
サイトカイン産生は、p38 MAPキナーゼ(ストレス活性化プロテインキナーゼ2a)アイソフォームの活性化(リン酸化)に依存する可能性がある。そのような活性化の証拠は、リン酸化p38 MAPKに特異的な抗体を用いて、ELISAにより視覚化された。図12で示すように、50μMのLCは、3日間のインキュベーションの間、ヒト近位尿細管細胞でp38 MAPKの活性化を誘導した。p38 MAPKの活性化は、デキサメサゾン又はPACAP38との共インキュベーションによって有意に、且つ用量依存的に低減された。興味深いことに、このアッセイにおいて、10nM PACAP38は、10μMのSB202190によってもたらされた減少と同等の、p38 MAPK活性化の減少を引き起こした。
【0162】
(実施例10)
免疫グロブリン軽鎖によって誘導された腎損傷の動物モデル
LCによって誘導された腎尿細管細胞損傷に及ぼすPACAPの影響をインビボで測定するために、140から200gの体重の雄のSprague Dawleyラットを用いた。動物は、内部頸部カニューレを移植するための外科手術の間、亜酸化窒素/酸素(7:3)中のトリフルオランで麻酔した。深麻酔を達成した後に、動物の右鎖骨及びうなじの領域上を剃り、皮膚は70%アルコールで清浄した。動物を手術台に置いて軽く拘束し、手術の間深麻酔を維持するために、鼻孔を吸入マスク内に置き、そこを通して1%トリフルオランガスを投与した。右鎖骨中央部の上の皮膚を切開し、皮下組織を取り除いて右頸静脈を露出させた。2本の絹縫合糸(#5)を静脈の下及びそれに垂直に縫った。頸静脈上の2本の縫合糸の間に、小さな切開を形成した。その近端部にストッパを有し、0.9%生理食塩水及びヘパリン(1000U/mL)の溶液で満たしたポリエチレン管(PE50)を切開穴から頸静脈に挿入し、管の末端部が心臓の右心房に達するようにした。挿入の前に、管の末端部から3cmの点に印を付けた。管の上の印が頸静脈の切開点に到達するまで、管の末端部を頸静脈から挿入した。管の末端は、ラットの右心房に到達したものと推定した。次に静脈のまわりで2本の縫合糸を締めることによって所定の位置に管を固定し、また、近くの筋肉の上に固定した。管の近端部は皮膚の下でうなじ部へ向けて装着し、そこの皮膚に小さな切開を形成した。管の近位部を切開から引き出した。次に近位の管を柔軟な鋼管を通して導入して、その鋼管はその末端に取り付けた小さな端板を固定することによってうなじ部に固定した。端板は、ラットのための保護ジャケットで固定した。各ラットは深いガラスジャーに置き、管の近端部は注入ポンプに接続した。実験の間、ジャー内の動物は自由に動くことを許され、食物及び水は自由に与えられた。
【0163】
植え込まれた管を通した静脈内(心臓内)注入は急速注入とし、100g体重につき270mgの免疫グロブリン軽鎖タンパク質(LC)を5分にわたって投与し、体液中で約100μMの濃度を達成した。この用量は、我々のヒト腎尿細管細胞のインビトロ実験で用いた濃度に一致し、その用量は細胞をかなり悪化させて様々な炎症誘発性サイトカインを発現させた。軽鎖タンパク質は注入ポンプによって27mg/時間/100g体重の速度で連続的に注入し、血液中で100μMのLC濃度を維持した。動物は、このように72時間にわたってLCだけを、又は、異なる用量のPACAP38を含むLCが注入された。PACAP38は最初に10μg/100gボーラスとして与えられ、その後PACAPを100g、1時間につき0.1μg〜2μgの速度で72時間ゆっくりと注入した。実験終了後、動物はトリフルオランで深麻酔し、サイトカイン発現及びNFκB活性化の測定のために1つの腎臓を外科的に取り出した。次に動物に、生理食塩水(ヘパリンを含む)を心臓経由で潅流させ、その後ブアン固定液を注入した。反対側の腎臓を取り出して、後の組織学的試験のためにブワン溶液中に後固定した。このように、LCによって誘導された腎尿細管細胞損傷に及ぼすインビボでのPACAPの影響を測定した。
【0164】
7.同等物
当業者は、ルーチン実験以上のものを用いなくとも、本明細書に記載された本発明の具体的な実施態様の多くの同等物を認識し、又は確認することができるようになる。そのような同等物は以下の請求項の範囲に入るものとする。
【0165】
本明細書で指摘されている全ての出版物、特許及び特許出願は、本明細書において個々それぞれの出版物、特許又は特許出願が参照により組み込まれることが具体的に及び個々に示されてのと同じ程度で、本明細書に参照により組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】一次構造PACAP38(配列番号1)、PACAP27(配列番号2)及びVIP(配列番号3)を示す図である。
【図2】軽鎖の存在下又は非存在下におけるヒト腎尿細管細胞の形態及びインビトロ生存に及ぼすPACAP38の有益効果を示す図である。 A−軽鎖がない場合の、対照ヒト腎尿細管細胞形態。 B−培養物への軽鎖(50μm)の3日間の添加は、著しい細胞障害を生成した。 C−ヒト腎尿細管細胞形態は、PACAP38(10nM)の添加によって劇的に細くなった。 D−PACAP38だけによるインキュベーションは、ヒト腎尿細管細胞形態を変化させなかった。
【図3】免疫グロブリン軽鎖(50μM)と同時インキュベートしたときの、インビトロにおけるヒト近位尿細管細胞による腫瘍壊死因子α(TNF−α)産生の時間経過を例示する図である。TNF−α産生は徐々に増加して、48時間後に最大レベルに達した。データは、平均±SEMである。
【図4】免疫グロブリン軽鎖と72時間同時インキュベートしたときの、ヒト近位尿細管細胞によるインビトロでのTNF−α産生に及ぼすデキサメサゾン(Dex)、PACAP38、U0126(MEK1/2阻害剤)又はPDTC(NFκB阻害剤)の影響を示す図である。デキサメサゾン又はPACAP38(P38)によるTNF−α産生の抑制は用量依存性であって、10−7MのPACAP38で最大に達した。このアッセイにおけるPACAP38の抑制効力は、デキサメサゾンの同等濃度のそれより10,000倍強い。データは、平均±SEMである。
【図5】ヒト近位尿細管細胞における軽鎖によって誘導されたERK1/2の活性化(リン酸−ERK1/2 ELISAにより反映される)に及ぼすデキサメサゾン又はPACAP38の影響を示す図である。用いたデキサメサゾン及びPACAP38の濃度(それぞれ10−7M及び10−9M)は、軽鎖によって誘導されたTNF−α産生(図4を参照)を抑えるそれらの能力で、同等の活性を示した。しかし、デキサメサゾンもPACAP38も、軽鎖誘導性のERK1/2活性化を有意には抑えなかった。データは、平均±SEMである。
【図6】ヒト近位尿細管細胞における軽鎖によって誘導されたNFκBのp50サブユニットの活性化に及ぼすデキサメサゾン又はPACAP38の影響を示す図である。用いたデキサメサゾン及びPACAP38の濃度(それぞれ10−7M及び10−9M)は、軽鎖によって誘導されたTNF−α産生(図4を参照)を抑えるそれらの能力で、同等の活性を示した。軽鎖はNFκBのp50サブユニットの活性化を誘導し、それはデキサメサゾン及びPACAP38の双方によって抑制された。データは、平均±SEMである。
【図7】ヒト近位尿細管細胞における軽鎖によって誘導されたNFκBのp65サブユニットの活性化に及ぼすデキサメサゾン又はPACAP38の影響を示す図である。用いたデキサメサゾン及びPACAP38の濃度(それぞれ10−7M及び10−9M)は、軽鎖によって誘導されたTNF−α産生(図4を参照)を抑えるそれらの能力で、同等の活性を示した。軽鎖はNFκBのp65サブユニットの活性化を誘導しなかったが、デキサメサゾン及びPACAP38は僅かにNFκBのp65サブユニットの活性を抑制した。データは、平均±SEMである。
【図8】5−ブロモ−2−デオキシウリジン(BrdU)の取り込みで測定された、NCI−H929ヒト骨髄腫細胞系増殖に及ぼすデキサメサゾン又はPACAP38の影響を示す図である。PACAP38はデキサメサゾンよりかなり低い濃度で、骨髄腫細胞増殖の用量依存的抑制を示す。データは、平均±SEMである。
【図9】脳下垂体、腎近位尿細管細胞(PTC)、軽鎖とインキュベートしたPTC、及びヒト多発性骨髄腫細胞(NCI−H929)における、PAC、VPAC及びVPAC受容体の存在についてのRT−PCR分析の結果を示す図である。脳下垂体は全3受容体型を発現するので、陽性対照として用いた。PAC−R及びVPAC−Rは、PTC及び骨髄腫細胞によって発現されなかった。しかし、VPAC−Rに対応するかすかなバンドがPTC及び骨髄腫細胞の双方について観察された。
【図10】免疫グロブリン軽鎖(50μM)と同時インキュベートしたときの、インビトロにおけるヒト近位尿細管細胞によるインターロイキン6(IL−6)産生の時間経過を例示する図である。IL−6産生は12時間後にかなり増加して、24時間後に安定期に達した。データは、平均±SEMである。
【図11】インビトロにおけるヒト近位尿細管細胞による軽鎖によって誘導されたIL−6産生に及ぼすPACAP38、デキサメサゾン及びSB202190(p38 MAPKの特異阻害剤、ストレスにより活性化されるプロテインキナーゼ)の影響を示す図である。デキサメサゾン及びPACAP38によるIL−6産生の抑制は、用量依存性であった。PACAP38はIL−6産生の抑制においてデキサメサゾンよりもかなり有効である。データは、平均±SEMである。
【図12】インビトロでのヒト近位尿細管細胞における軽鎖誘導性のp38 MAPK活性化(ELISAで測定される)に及ぼす、PACAP38、デキサメサゾン又はSB202190(p38 MAPK阻害剤)の影響を示す図である。軽鎖とのインキュベーションは、p38 MAPKのかなりの活性化を引き起こした。PACAP38及びデキサメサゾンは用量依存的にp38 MAPK活性化を抑制したが、PACAP38は同等の用量ではずっと有効であった。このアッセイでのPACAP38の抑制効力は、特異p38 MAPK阻害剤自体のそれと同等であった。データは、平均±SEMである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腎臓機能障害を治療、管理又は予防する方法であって、対象に1つ以上複数のPACAP化合物の有効量を投与することを含み、前記PACAP化合物は1つ以上のPACAP受容体と結合するか又は病理を引き起こす細胞表現型を減少させる、前記方法。
【請求項2】
前記PACAP化合物は下記化合物、又はそれらの混合物である、請求項1記載の方法:
His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Met-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-Gly-Lys-Arg-Tyr-Lys-Gln-Arg-Val-Lys-Asn-Lys-NH2(配列番号1)、
His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Met-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-NH2(配列番号2)、
His-Ser-Asp-Ala-Val-Phe-Thr-Asp-Asn-Tyr-Thr-Arg-Leu-Arg-Lys-Gln-Met-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Asn-Ser-Ile-Leu-Asn-NH2(配列番号3)、
X-His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Xaa-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-NH2(配列番号4)、
X-His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Xaa-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-OH(配列番号5)、
X-His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Xaa-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-Gly-NH2(配列番号6)、
X-His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Xaa-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-Gly-OH(配列番号7)、
X-His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Xaa-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-Gly-Lys-NH2(配列番号8)、
X-His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Xaa-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-Gly-Lys-OH(配列番号9)、
X-His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Xaa-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-Gly-Lys-Arg-NH2(配列番号10)、
X-His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Xaa-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-Gly-Lys-Arg-OH(配列番号11)、
X-His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Xaa-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-Gly-Lys-Arg-Tyr-NH2(配列番号12)、
X-His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Xaa-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-Gly-Lys-Arg-Tyr-OH(配列番号13)、
X-His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Xaa-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-Gly-Lys-Arg-Tyr-Lys-NH2(配列番号14)、
X-His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Xaa-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-Gly-Lys-Arg-Tyr-Lys-OH(配列番号15)、
X-His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Xaa-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-Gly-Lys-Arg-Tyr-Lys-Gln-NH2(配列番号16)、
X-His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Xaa-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-Gly-Lys-Arg-Tyr-Lys-Gln-OH(配列番号17)、
X-His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Xaa-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-Gly-Lys-Arg-Tyr-Lys-Gln-Arg-NH2(配列番号18)、
X-His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Xaa-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-Gly-Lys-Arg-Tyr-Lys-Gln-Arg-OH(配列番号19)、
X-His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Xaa-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-Gly-Lys-Arg-Tyr-Lys-Gln-Arg-Val-NH2(配列番号20)、
X-His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Xaa-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-Gly-Lys-Arg-Tyr-Lys-Gln-Arg-Val-OH(配列番号21)、
X-His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Xaa-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-Gly-Lys-Arg-Tyr-Lys-Gln-Arg-Val-Lys-NH2(配列番号22)、
X-His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Xaa-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-Gly-Lys-Arg-Tyr-Lys-Gln-Arg-Val-Lys-OH(配列番号23)、
X-His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Xaa-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-Gly-Lys-Arg-Tyr-Lys-Gln-Arg-Val-Lys-Asn-NH2(配列番号24)、
X-His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Xaa-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-Gly-Lys-Arg-Tyr-Lys-Gln-Arg-Val-Lys-Asn-OH(配列番号25)、
X-His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Xaa-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-Gly-Lys-Arg-Tyr-Lys-Gln-Arg-Val-Lys-Asn-Lys-NH2(配列番号26)、
X-His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Xaa-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-Gly-Lys-Arg-Tyr-Lys-Gln-Arg-Val-Lys-Asn-Lys-OH(配列番号27)
(式中、XはNHR(該式中、RはH又はアシル基CH(CHCOを有する溶解性に影響を及ぼす基、n=0〜24)であり、
Xaaは、Met、Gly、Ser、Phe、Nle、Arg又はGluである。)。
【請求項3】
対象の血液中の前記PACAP化合物が10−13Mから10−7Mの濃度である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記PACAP化合物が2pmol/kg体重/時間から15pmol/kg体重/時間の速度で静脈内注入によって投与される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記静脈内注入による投与が2〜5時間である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記腎臓機能障害が、虚血、再潅流、外傷、出血、感染、抗生物質の投与又は有害物質への曝露に起因する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記腎臓機能障害がある疾患に付随する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記疾患が多発性骨髄腫である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記疾患が糖尿病である、請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記腎臓機能障害は慢性腎不全、急性腎不全又は骨髄腫腎である、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記病理を引き起こす細胞表現型が細胞生存能力の増加である、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記病理を引き起こす細胞表現型が細胞の過剰増殖の抑制である、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記病理を引き起こす細胞表現型がTNF−α及び/又はIL−6の産生の減少である、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記病理を引き起こす細胞表現型がNFκBの活性化である、請求項1記載の方法。
【請求項15】
過剰増殖性疾患を治療、管理又は予防する方法であって、対象に1つ以上のPACAP化合物の有効量を投与することを含み、前記PACAP化合物が1つ以上のPACAP受容体と結合するか又は病理を引き起こす細胞表現型を減少させる、前記方法。
【請求項16】
前記PACAP化合物が下記化合物、又はその混合物である、請求項15記載の方法:
His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Met-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-Gly-Lys-Arg-Tyr-Lys-Gln-Arg-Val-Lys-Asn-Lys-NH2(配列番号1)、
His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-The-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Met-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-NH2(配列番号2)、
His-Ser-Asp-Ala-Val-Phe-Thr-Asp-Asn-Tyr-Thr-Arg-Leu-Arg-Lys-Gln-Met-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Asn-Ser-Ile-Leu-Asn-NH2(配列番号3)、
X-His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Xaa-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-NH2(配列番号4)、
X-His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Xaa-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-OH(配列番号5)、
X-His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Xaa-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-Gly-NH2(配列番号6)、
X-His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Xaa-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-Gly-OH(配列番号7)、
X-His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Xaa-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-Gly-Lys-NH2(配列番号8)、
X-His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Xaa-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-Gly-Lys-OH(配列番号9)、
X-His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Xaa-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-Gly-Lys-Arg-NH2(配列番号10)、
X-His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Xaa-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-Gly-Lys-Arg-OH(配列番号11)、
X-His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Xaa-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-Gly-Lys-Arg-Tyr-NH2(配列番号12)、
X-His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Xaa-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-Gly-Lys-Arg-Tyr-OH(配列番号13)、
X-His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Xaa-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-Gly-Lys-Arg-Tyr-Lys-NH2(配列番号14)、
X-His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Xaa-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-Gly-Lys-Arg-Tyr-Lys-OH(配列番号15)、
X-His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Xaa-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-Gly-Lys-Arg-Tyr-Lys-Gln-NH2(配列番号16)、
X-His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Xaa-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-Gly-Lys-Arg-Tyr-Lys-Gln-OH(配列番号17)、
X-His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Xaa-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-Gly-Lys-Arg-Tyr-Lys-Gln-Arg-NH2(配列番号18)、
X-His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Xaa-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-Gly-Lys-Arg-Tyr-Lys-Gln-Arg-OH(配列番号19)、
X-His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Xaa-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-Gly-Lys-Arg-Tyr-Lys-Gln-Arg-Val-NH2(配列番号20)、
X-His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Xaa-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-Gly-Lys-Arg-Tyr-Lys-Gln-Arg-Val-OH(配列番号21)、
X-His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Xaa-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-Gly-Lys-Arg-Tyr-Lys-Gln-Arg-Val-Lys-NH2(配列番号22)、
X-His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Xaa-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-Gly-Lys-Arg-Tyr-Lys-Gln-Arg-Val-Lys-OH(配列番号23)、
X-His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Xaa-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-Gly-Lys-Arg-Tyr-Lys-Gln-Arg-Val-Lys-Asn-NH2(配列番号24)、
X-His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Xaa-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-Gly-Lys-Arg-Tyr-Lys-Gln-Arg-Val-Lys-Asn-OH(配列番号25)、
X-His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Xaa-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-Gly-Lys-Arg-Tyr-Lys-Gln-Arg-Val-Lys-Asn-Lys-NH2(配列番号26)、
X-His-Ser-Asp-Gly-Ile-Phe-Thr-Asp-Ser-Tyr-Ser-Arg-Tyr-Arg-Lys-Gln-Xaa-Ala-Val-Lys-Lys-Tyr-Leu-Ala-Ala-Val-Leu-Gly-Lys-Arg-Tyr-Lys-Gln-Arg-Val-Lys-Asn-Lys-OH(配列番号27)
(式中、XはNHR(該式中、RはH又はアシル基CH(CHCOを有する溶解性に影響を及ぼす基、n=0〜24)であり、
Xaaは、Met、Gly、Ser、Phe、Nle、Arg又はGluである。)。
【請求項17】
前記過剰増殖性疾患が多発性骨髄腫である、請求項15記載の方法。
【請求項18】
対象の血液中の前記PACAP化合物が10−13Mから10−7Mの濃度である、請求項15記載の方法。
【請求項19】
前記PACAP化合物が2pmol/kg体重/時間から15pmol/kg体重/時間の速度で静脈内注入によって投与される、請求項15記載の方法。
【請求項20】
前記静脈内注入による投与が2〜5時間である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
腎尿細管細胞を障害から保護又は救済する方法であって、対象に1つ又は複数のPACAP化合物の有効量を投与することを含み、前記PACAP化合物が1つ若しくは複数のPACAP受容体と結合するか又は病理を引き起こす細胞表現型を減少させる、前記方法。
【請求項22】
前記障害が虚血、再潅流、外傷、出血、毒剤又は過剰なタンパク質への曝露に起因する、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記タンパク質が単クローン性タンパク質、パラプロテイン、Mタンパク質又はベンス−ジョーンズタンパク質である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
骨髄腫の進行を治療、管理又は予防する方法であって、対象に1つ又は複数のPACAP化合物の有効量を投与することを含み、前記PACAP化合物が1つ若しくは複数のPACAP受容体と結合するか又は病理を引き起こす細胞表現型を減少させる、前記方法。
【請求項25】
NFκBの活性化に起因する腎疾患を治療、管理又は予防する方法であって、対象に1つ又は複数のPACAP化合物の有効量を投与することを含み、前記PACAP化合物が1つ若しくは複数のPACAP受容体と結合するか又は病理を引き起こす細胞表現型を減少させる、前記方法。
【請求項26】
腎臓損傷と関連する障害を治療、管理又は予防する方法であって、対象に1つ又は複数のPACAP化合物の有効量を投与することを含み、前記PACAP化合物が1つ若しくは複数のPACAP受容体と結合するか又は病理を引き起こす細胞表現型を減少させる、前記方法。
【請求項27】
前記障害が高血圧、鎌状赤血球貧血、シェーグレン症候群、ループス、多発性嚢胞腎、慢性腎不全、急性腎不全、糖尿病、骨髄腫、溶血尿毒症症候群、ループス腎炎又はヘノッホ−シェーンライン紫斑病腎炎である、請求項26記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2008−507540(P2008−507540A)
【公表日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−522734(P2007−522734)
【出願日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/025836
【国際公開番号】WO2006/012394
【国際公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(507020071)チューレン ユニバーシティ ヘルス サイエンス センター (1)
【Fターム(参考)】