説明

PCB汚染土壌の洗浄方法及びPCB汚染土壌の洗浄装置

【課題】 PCBで汚染された土壌を水によって洗浄し、清浄な土粒子とPCBを多く含む土粒子とを、少ない費用で効率よく分離する。
【解決手段】 PCBで汚染した土壌に加水し、スラリーとしてエジェクタ5に導入する。エジェクタでは、高速で噴出する噴流水中に汚染土壌を含むスラリーを取り込む。PCBが付着した土粒子に噴流を衝突させ、さらに土粒子周辺の乱流によってPCBを剥離する。エジェクタによって推進力が付与されたスラリーには、第2の空気供給装置56によって下流側に向けて空気を噴射し、推進力を付加するともに気泡を供給する。これにより、剥離したPCBの土粒子への再付着を防止する。噴流はサイクロン6に導入し、剥離したPCB及びPCBが付着する微細土粒子をオーバーフローに含んで分離する。アンダーフローは浮選分離槽7に導入し、疎水性を有するPCBを気泡に付着させ、浮上させて分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ポリ塩化ビフェニール類(以下PCBという)で汚染された土壌を洗浄し、PCBをほとんど含まない清浄な土壌と、PCBを高濃度で含む部分とを分離する方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
PCBは、化学的に安定で熱特性が良好であることからコンデンサやトランス等に多く用いられたが、人体に対する毒性を有することから有害な環境汚染物質として製造が禁止されている。そして、これまでに製造又は使用されたPCBは回収して保管することになっている。しかし、既に環境中に放出されたものがあり、廃棄等によって土壌が汚染されているところがある。土壌中においてもPCBは安定で分解しにくく、地下水等を汚染するおそれがある。
【0003】
このように、土壌を汚染しているPCBの浄化処理方法としては、土壌をロータリーキルン等の焼却設備により、高温度で焼却する方法がある。また、特許文献1には、PCBで汚染された土壌を真空加熱乾燥炉で加熱し、PCB等の有害物質をガス状態として土壌から分離して、これを水熱酸化分解処理装置において無害化処理を行うシステムが提案されている。
【0004】
また、特許文献2、特許文献3等には、PCB等の有害物質を分離する溶剤中に汚染土壌を浸漬し、汚染土壌を洗浄する装置が記載されている。この装置では有機溶剤によって有害物質を土壌粒子から溶出分離し、有害物質を含む液状体は蒸留して有機溶剤を回収する。一方、有機溶剤から分離された有害物質は熱処理等を行うものである。
【特許文献1】特開2003−94033号公報
【特許文献2】特開2003−103244号公報
【特許文献3】特開2003−103245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記にような従来から知られている方法及び装置では、次に示すように解決が望まれる課題がある。
特許文献1に記載されているように、汚染土壌を高温で加熱処理を行う方法では、ダイオキシン等の有害ガスが発生することが知られており、この有害ガスの処理を厳重に行う必要がある。そして、加熱に多大なエネルギーを必要とし、大量の土壌について全量を処理することは、経済的にも効率が悪い。
【0006】
また、特許文献2や特許文献3に記載されているように、有機溶剤を用いてPCBを分離する装置では、多量の有機溶剤を用いることになり、溶剤の管理・処理等の設備が必要となる。このため、設備等に必要な費用が増大し、処理費用も多大となる。
【0007】
一方、特開2002−355663号公報等には、油で汚染された土壌を水で洗浄する方法及びシステムが記載されている。しかし、PCBは石油類に比べて粘性が大きく、土壌粒子からの剥離が難しい点、剥離しても土壌粒子への再付着が起こりやすい点、及びPCBは油に比べて比重が大きく土壌粒子との分離が難しい点等、特有の問題点がある。このため、上記公報に記載の方法をPCBにそのまま適用しても、良好な結果は得られない。
【0008】
本願発明の上記のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、PCBによって汚染された土壌を水によって洗浄し、清浄な土粒子とPCBを多く含む土粒子とを、効率よく且つ経済的に分離する装置及び方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、 高圧水をノズルから噴出し、噴流水中にPCBで汚染された土壌を導入する剥離工程と、 汚染土壌が取り込まれた噴流水をサイクロンに導いて、噴流内で剥離したPCB及び微細土粒子に付着したPCBを該サイクロンのオーバーフロー中に含めて取り出す分離工程と、 前記サイクロンのアンダーフローに気泡を接触させ、剥離したPCB又は土粒子に付着したPCBを気泡に付着して浮上させる浮選分離工程とを含むPCB汚染土壌の洗浄方法を提供する。
【0010】
上記方法において、ノズルからの噴流水中に導入する汚染土壌は、汚染地盤から掘削された土壌そのままでもよいが、土塊をほぐし、加水してスラリーとして導入するのが望ましい。また、篩によって大粒径の礫等は除去しておくのがよい。
【0011】
この方法では、汚染土壌に高速の噴流水が衝突し、さらに土粒子の周辺に激しい乱流を生じさせる。これにより土粒子に付着しているPCBが剥離される。特に粒径が大きい土粒子に対しては、表面付近に高速の水流が生じ、PCBを効率よく剥離する。剥離されたPCB及び土壌を含むスラリーは、ノズルからの噴射による駆動力で、停止することなくそのままサイクロンに導入される。これにより剥離されたPCB及び微細土粒子に付着したPCBは、粒径が大きな土粒子に再付着することなく、サイクロンのオバーフローに含まれて大部分の土壌粒子から分離される。サイクロンのアンダーフローには、PCBの比重が大きいためになおPCBが含まれる。このPCBは、アンダーフローとして取り出されたスラリーが気泡と接触することにより、この気泡に付着して浮上する。PCBは疎水性を有するために気泡に付着し、比重が水より大きくても気泡とともに浮上するものである。このようにしてアンダーフロー中のPCB及びPCBが付着した土粒子を除去することにより沈殿する土粒子は、原地盤への埋め戻しが可能な程度までPCBが除去され、清浄化される。
一方、サイクロンのオバーフローに含まれているPCB及びPCBが付着した土粒子、並びにアンダーフローから気泡に付着して除去されたPCB及びPCBが付着した土粒子は、汚染土壌の全体に占める量は極めて少なく、熱処理等により無害化処理を行っても、費用は限られており、経済的で効率の良い処理が可能となる。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のPCB汚染土壌の洗浄方法において、 前記剥離工程において、前記ノズルに送られる高圧水には高圧の空気を導入し、水と空気とを混合して噴出するものとし、 前記ノズルから噴出され、前記サイクロンに導入される前の噴流水中に、下流側へ向けて高圧の空気を噴出するものとする。
【0013】
この方法では、ノズルの上流側で供給された空気は、高圧下において体積が小さくなっており、ノズルから水とともに噴出されるときに膨張して、噴流水を加速する。これにより汚染土壌と強く衝突して土粒子の周辺で強い乱流が形成され、PCBを剥離する効果が増大する。また、ノズルからサイクロンへの管路において、下流側に向かって高圧の空気が噴射されることにより、移送されるスラリーに推進力が付与されるとともに、スラリー中の気泡を増加させる。気泡が増加することにより、PCBは気泡に接触して付着し易くなり、一旦土粒子から剥離したPCB等が大きな粒径の土粒子に再付着するのを抑制することができる。また、スラリーの推進力が増大されることによっても、滞留等によるPCBの再付着を有効に抑えることができる。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載のPCB汚染土壌の洗浄方法おいて、 前記浮選分離工程は、粘土を焼成して素焼きにした部材を透過する空気を、前記サイクロンのアンダーフローに接触させるものとする。
【0015】
素焼きの部材は、多孔性で極めて微細な孔によって透気性を有する。この素焼きの部材を透過する気体を水中に放出すると、極めて微細な気泡となる。微細な気泡は体積に対する表面積の比率が大きく、サイクロンのアンダーフローとして取り出されたスラリーと接触すると、PCBを付着し易く、効率よくPCB及びPCBが付着した土粒子を浮上させることができる。
【0016】
請求項4に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載のPCB汚染土壌の洗浄方法において、 前記サイクロンのアンダフローとして取り出されたスラリーに、起泡剤を添加するものとする。
【0017】
この方法では、起泡剤によってスラリー中に多量の微細な気泡が発生し、広い表面積でスラリーと接触する。これにより、スラリー中に浮遊する剥離されたPCB又は小さいな粒径の土粒子に付着しているPCBが気泡に付着する。したがって、PCBを気泡とともに効率よく浮上させることができ、清浄な土粒子と分離することができる。
【0018】
請求項5に係る発明は、 高圧水をノズルから噴出し、噴流水中にPCBで汚染された土壌を導入するエジェクタと、 前記エジェクタから噴出されたスラリーが導入されるサイクロンと、 前記サイクロンのアンダーフローが導入されるとともに気泡が導入され、剥離されたPCB又は土粒子に付着したPCBを気泡に付着して浮上させる浮選分離槽とを有するPCB汚染土壌の洗浄装置を提供する。
【0019】
この装置では、エジェクタで噴射された高速の噴流水が汚染土壌に衝突し、土粒子の周辺に激しい乱流を生じさせて土粒子に付着しているPCBを剥離する。剥離されたPCB及び土壌を含むスラリーは、ノズルからの噴射による駆動力で、停止することなくそのままサイクロンに導入され、剥離されたPCB及び微細土粒子に付着したPCBは、粒径が大きな土粒子に再付着することなく、サイクロンのオバーフローに含まれて大部分の土壌粒子から分離される。サイクロンのアンダーフローは気泡と接触し、この気泡に付着して浮選分離槽内で浮上する。したがって、サイクロンのオーバーフロー及び浮選分離槽内の浮遊物としてPCBが分離され、これらを効率よく処理することができる。また、浮選分離槽には汚染の少ない土粒子が沈殿し、原地盤等への埋め戻しが可能となる。
【0020】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載のPCB汚染土壌の洗浄装置において、 前記エジェクタへ高圧水を供給する管路に高圧空気を注入する第1の高圧空気供給装置と、 前記エジェクタから前記サイクロンへ水と汚染土壌との混合物を搬送する管路内で、下流側に向けて高圧空気を噴出する第2の高圧空気供給装置とを有するものとする。
【0021】
この装置では、第1の高圧空気供給装置から送り込まれた空気は、高圧下において体積が小さくなっており、ノズルから噴出される時に膨張して、噴流水を加速する。これにより汚染土壌と強く衝突して土粒子の周辺で強い乱流が形成され、PCBを剥離する効果が増大する。また、エジェクタの下流側で、第2の高圧空気供給装置から下流側に向かって高圧の空気が噴射されることにより、移送されるスラリーに推進力が付与されるとともに、スラリー中の気泡を増加させる。ことにより、PCBは気泡に接触して付着し、剥離したPCB等が大きな粒径の土粒子に再付着することなくサイクロンに送り込まれる。したがって、サイクロンでPCBを効率よく分離することができる。
【0022】
請求項7に係る発明は、請求項5又は請求項6に記載のPCB汚染土壌の洗浄装置において、 前記浮選分離槽は、粘土を焼成して素焼きにした部材を透過する空気を該槽内に供給する気泡発生装置を有するものとする。
【0023】
粘土を素焼きにした部材を透過する空気は極めて微細な気泡となって浮選分離槽内に供給され、分離槽内でサイクロンのアンダーフローとして取り出されたスラリーと接触する。これによりPCBを効率よく付着して浮遊させ、汚染の少ない清浄な土粒子と分離することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本願発明の洗浄装置及び洗浄方法では、PCBで汚染された土壌を水で洗浄し、高濃度でPCBを含む部分と汚染の少ない清浄な土壌とを効率よく分離することができる。そして、高濃度でPCBを含む部分のみを熱処理等によって無害化することにより、多量の汚染土壌の処理を経済的且つ効率的に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本願発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、本願発明の一実施形態である洗浄装置の概略構成図である。
この洗浄装置は、PCBで汚染された土壌を洗浄して、汚染の少ない清浄な土壌をPCBを多く含む部分から分離するものであり、汚染地盤で掘削された土壌から大きな粒径の石片等を分離するグリズリー1と、土壌に加水するとともに攪拌し、スラリーにして洗浄するドラム型洗浄機2と、上記スラリーから粒径の大きい土粒子を分離する振動篩3と、上記振動篩を通過したスラリーを一旦貯留する貯留槽4と、高圧水をノズルから噴射するとともに、噴流水中に上記貯留槽からスラリーを導入し、噴流水中で土粒子を洗浄するエジェクタ5と、エジェクタによって推進力が付与されたスラリーが導かれるサイクロン6と、上記サイクロンのアンダーフローに気泡を接触させ、PCB及びPCBが付着した土粒子を付着させて浮上させる浮選分離槽7と、上記浮選分離槽の浮遊物及び上記サイクロンのオーバーフローが導入され、PCB及びPCBが付着した土粒子を沈殿させる沈殿槽8と、上記沈殿槽内の沈殿物から水分を除去するフィルタプレス機9とを有している。
【0026】
上記グリズリー1は、平行に架け渡された複数の鋼製の棒状部材又は格子状部材を有し、PCBによって汚染された土壌をこれらの棒状部材間又は格子状部材を通過させ、ふるい落とすものである。そして、特に大きな粒径の石片、コンクリート片、玉石等を上記平行な棒状部材上又は格子状部材上に止めて分離するものとなっている。上記棒状部材の間隔又は格子の部材間隔は、例えば50mmに設定され、粒径が50mm以上の石片等を分離する。なお、この間隔は上記値に限定されるものではなく、土壌の状態、汚染の状態、装置全体の構成等によって適宜に設定することができる。
上記ドラム型洗浄機2は、円筒状の攪拌用ドラムが軸線回りに回転駆動されるものであり、ドラム内部に水を供給する給水装置21を備えている。したがって、PCBで汚染された土壌が導入されると給水装置21から加水されるとともに、ドラムの回転駆動によって攪拌され、固まって土塊となっている土壌を壊砕してほぐすとともに、スラリーとして土壌を洗浄するものとなっている。
上記給水装置21は、図1に示すようにドラム内で散水するもの、ドラム内に土壌が供給される位置で集中的に給水するもの等、様々なタイプのものを採用することができる。
【0027】
上記振動篩3は、汚染土壌を含むスラリーから粒径が2mm以上の土粒子を分離するものであり、振動する篩を水および2mm未満の土粒子が通過するものとなっている。なお、この振動篩には散水装置を設け、篩上でさらに洗浄するように構成することもできる。
【0028】
上記エジェクタ5は、図2に示すように、ポンプ51によって加圧された水を噴出するノズル5aを備えており、このノズル5aからの噴流水中に貯留槽4からスラリーを導入し、スラリー中の土粒子に高圧水を衝突させるとともに、土粒子の周辺に激しい乱流を生じされるものである。スラリーは、エジェクタ5内でノズル5aから高圧水が噴射されることによる負圧で吸引され、噴流水中に取り込まれるようになっている。
【0029】
上記エジェクタ5に高圧の駆動水を送り込む送水管52には、図2に示すように、第1の空気供給管53が設けられており、ポンプ54で高圧に圧縮された空気が高圧水中に送り込まれるようになっている。また、エジェクタ5の下流側であって、エジェクタ5で推進力が付与されたスラリーをサイクロンに送り込む搬送管55には、第2の空気供給管56が設けられている。この第2の空気供給管56は、先端の空気吹き出し口が上記搬送管55の下流側に向けて取り付けられており、ポンプ57で圧縮された空気を噴射してスラリーに推進力を追加するともに、スラリー中の気泡を増加させるものとなっている。
【0030】
上記サイクロン6は、一般に知られている湿式のサイクロンであるが、上記エジェクタ5からの噴流水とともにPCBで汚染された土壌が導入されたときに、土粒子から剥離されたPCB及び微細な土粒子をオーバーフローとして分離するように設定されている。
【0031】
上記浮選分離槽7は、図3に示すように、上記サイクロン6のアンダーフローに第3の空気供給管71から空気を吹き込んだスラリーが導入されるものとなっており、PCB及びPCBが付着した土粒子が気泡に付着して浮上する。この浮選分離槽7には、液面の浮遊物を排出する浮遊物排出装置72と、槽内で沈殿した土粒子を排出する沈殿物排出装置73とが備えられている。
【0032】
次に、上記洗浄装置におるPCB汚染土壌の洗浄工程を説明する。
PCBで汚染された地盤から掘削された土壌はグリズリー1に投入され、特に粒径の大きい石片、玉石等(粒径が50mm以上)が分離される。この石片等は、高圧水による洗浄を行うことによって付着するPCBはごくわずかとなり、洗浄後に原地盤への埋め戻しが可能となる。
グリズリー1を通過した土壌は、ドラム型洗浄機2に送り込まれる。ここで加水されスラリーにして攪拌・洗浄される。これにより土粒子に付着しているPCBのある程度は土粒子から剥離され、粒径の大きい土粒子のみに着目すると付着量はごくわずかとなる。このスラリーは、振動篩3に送り込まれ、2mmより粒径が大きい土粒子が分離される。2mmより粒径が大きい土粒子は、先に述べたように付着するPCBがわずかとなっており、この大粒径の土粒子は清浄土として原地盤への埋め戻しが可能となる。一方、振動篩を通過したスラリーは一旦貯留槽4に導入される。
【0033】
エジェクタ5では、ノズル5aから高圧水が噴出される。この高圧水は、貯水槽58から供給される水をポンプ51で加圧し、第1の空気供給管53から高圧空気を導入した状態でノズル5aに供給される。このように高圧水(駆動水)は気泡を含むことによって、ノズル5aから噴出されたときに気泡の急激な膨張によって効率よく加速される。
【0034】
エジェクタのノズル5aから駆動水が噴射されている部分では、高速の噴流によって負圧が生じ、貯留槽4から汚染土壌を含むスラリーが吸引され、噴流中に供給される。これにより、高速の噴流がスラリー中の土粒子に衝突するとともに土粒子の周辺で激しい乱流が生じ、土粒子に付着しているPCBの剥離が行われる。このとき噴流に気泡が含まれていると、さらにPCBの剥離の効率が向上する。
【0035】
エジェクタ5からの噴流水と混合されたスラリーは、噴流水の推進力によって搬送管55をサイクロン6へと送られる。この搬送管55で、第2の空気供給管56から高圧の空気が下流側に向けて供給される。これにより、スラリーの推進力がさらに付与され、搬送管内でスラリーが滞留することなく大きな速度でサイクロン6に送り込まれる。また、搬送管56で多くの気泡が供給されることによって、これらの気泡がPCB又はPCBが付着した土粒子と接触する機会が多くなり、PCBが気泡に付着される。PCBは疎水性を有するために気泡と接触するとPCBが気泡に付着するものである。これにより、ノズル5aからの噴流によって土粒子から剥離されたPCBが土粒子に再付着するのが有効に防止される。
【0036】
サイクロン6内では、気泡及びこれに付着したPCBはオーバーフローに含まれて排出される。また、PCBが付着している微細な土粒子もオーバーフローに含まれて排出される。このように多くのPCBを含んでいるオーバーフローは沈殿槽8に送り込まれ、ここでPCB及び土粒子が沈殿する。PCBは比重が水よりも大きく、気泡との付着が解除されると水中で沈殿し、沈殿物として取り出すことができる。このような沈殿物は、フィルタープレス機9で水分をできるだけ分離した後、従来から知られている加熱処理等によって無害化処理が行なわれる。サイクロン6のオーバーフローに含まれる土粒子はわずかであるため、加熱処理等を行っても効率のよい処理ができる。
【0037】
一方、サイクロン6のアンダーフローには、粒径が比較的に大きい土粒子が含まれるとともに、PCBは比重が大きいためにアンダーフロー中に残存する。このアンダーフローとして取り出されたスラリーには、図3に示すように、第3の空気供給管71から空気が送り込まれ、この気泡と混合して浮選分離槽7内に送り込まれる。疎水性を有するPCBは気泡に接触することによって付着し、PCBの比重が水より大きくても気泡とともに浮上する。また、土粒子に付着しているPCBも気泡に付着し、付着している土粒子をともなったまま浮上して浮遊物排出装置72によって取り出され、沈殿槽8に送られる。浮遊物のこの後の処理工程は、サイクロンのオーバーフローの処理と同じである。
一方、浮選分離槽内で沈殿した土粒子はPCBがほとんど分離されており、沈殿物排出装置73によって取り出され、清浄土として原地盤への埋め戻しが可能となる。
【0038】
なお、上記実施の形態では、サイクロン6のアンダーフローに空気を吹き込んで浮選分離槽に送り込んでいるが、空気を吹き込むのに代えて、又は空気を吹き込むとともに、起泡剤をスラリーに添加することができる。起泡剤はとしては、例えば界面活性剤系の起泡剤等を用いることができる。
【0039】
図4は、図1に示す洗浄装置における浮選分離槽7に代えて用いることできる浮選分離槽の他の例を示す概略構成図である。
この浮選分離槽101では、サイクロンのアンダーフローは気泡が添加されることなく直接に導入される。そして、浮選分離槽の底部に設けられた空気吹き出し口102より空気が気泡となって吹き出され、導入されたスラリーと接触する。これによって、PCB及びPCBが付着した土粒子は気泡に付着して浮上する。浮上したPCB及び土粒子の処理及び沈殿した土粒子の処理は、図1に示す浮選分離槽7と同じである。
このような分離槽を用いても、サイクロンのアンダーフローに含まれるPCBは気泡とともに分離され、沈殿する汚染が少ない土粒子と効率よく分離することができる。
【0040】
図5に示す浮選分離槽111も、図1に示す洗浄装置における浮選分離槽に代えて用いることできる。
この浮選分離槽111は、槽内の底部に空気吹き出し口が設けられている点は、図4に示す分離槽と同じであるが、この装置では高圧の空気が粘土を素焼きにした筒体112の周面から、この素焼きの筒体の周壁を透過して槽内のスラリー中に吹き出されるものとなっている。
【0041】
素焼きの筒体112は、図6に示すように、所定長さの円筒状の部材であり、両端が閉鎖されて軸線がほぼ水平となるように支持されている。これらの筒体は、複数が槽内の底部に配列され、それぞれに送気管113が接続されている。そして、高圧の空気が上記筒体112内に供給される。素焼きの部材は多孔質で極めて微細な孔によって透気性を有するものとなっており、この素焼きの筒体112の周壁を透過することによって、空気は極めて微細な気泡となってスラリー中に放出される。したがって、放出された空気は表面積が大きくなっており、スラリーと接触しやすく、PCBやPCBが付着した土粒子と接触して互いに付着する。これによりPCB及びPCBが付着した土粒子を効率よく浮上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本願発明の一実施形態であるPCB汚染土壌の洗浄装置を示す概略構成図である。
【図2】図1に示す洗浄装置で用いられるエジェクタ及びその前後に設けられた空気供給装置を示す概略断面図である。
【図3】図1に示す洗浄装置で用いられる浮選分離槽の概略構成図である。
【図4】図1に示す洗浄装置で用いられている浮選分離槽に代えて用いることができる浮選分離槽の他の例を示す概略構成図である。
【図5】図1に示す洗浄装置で用いられている浮選分離槽に代えて用いることができる浮選分離槽の他の例を示す概略構成図である。
【図6】図5に示す浮選分離槽内に空気を吹き込む筒体の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1:グリズリー、 2:ドラム型洗浄機、 3:振動篩、 4:貯留槽、 5:エジェクタ、 5a:ノズル、 6:サイクロン、 7:浮選分離槽、 8:沈殿槽、 9:フィルタプレス機、
21:給水装置、
51:ポンプ、 52:送水管、 53:第1の空気供給管、 54:ポンプ、 55:搬送管、 56:第2の空気供給管、 57:ポンプ、 58:貯水槽、
71:第3の空気供給管、 72:浮遊物排出装置、 73:沈殿物排出装置、
101:浮選分離槽、 102:空気吹き出し口、
111:浮選分離槽、 112:素焼きの筒体、 113:送気管



【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧水をノズルから噴出し、噴流水中にPCBで汚染された土壌を導入する剥離工程と、
汚染土壌が取り込まれた噴流水をサイクロンに導いて、噴流内で剥離したPCB及び微細土粒子に付着したPCBを該サイクロンのオーバーフロー中に含めて取り出す分離工程と、
前記サイクロンのアンダーフローに気泡を接触させ、剥離したPCB又は土粒子に付着したPCBを気泡に付着して浮上させる浮選分離工程とを含むことを特徴とするPCB汚染土壌の洗浄方法。
【請求項2】
前記剥離工程において、前記ノズルに送られる高圧水には高圧の空気を導入し、水と空気とを混合して噴出するものとし、
前記ノズルから噴出され、前記サイクロンに導入される前の噴流水中に、下流側へ向けて高圧の空気を噴出することを特徴とする請求項1に記載のPCB汚染土壌の洗浄方法。
【請求項3】
前記浮選分離工程は、粘土を焼成して素焼きにした部材を透過する空気を、前記サイクロンのアンダーフローに接触させるものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のPCB汚染土壌の洗浄方法。
【請求項4】
前記サイクロンのアンダフローとして取り出されたスラリーに、起泡剤を添加することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のPCB汚染土壌の洗浄方法。
【請求項5】
高圧水をノズルから噴出し、噴流水中にPCBで汚染された土壌を導入するエジェクタと、
前記エジェクタから噴出されたスラリーが導入されるサイクロンと、
前記サイクロンのアンダーフローが導入されるとともに気泡が導入され、剥離されたPCB又は土粒子に付着したPCBを気泡に付着して浮上させる浮選分離槽とを有することを特徴とするPCB汚染土壌の洗浄装置。
【請求項6】
前記エジェクタへ高圧水を供給する管路に高圧空気を注入する第1の高圧空気供給装置と、
前記エジェクタから前記サイクロンへ水と汚染土壌との混合物を搬送する管路内で、下流側に向けて高圧空気を噴出する第2の高圧空気供給装置とを有することを特徴とする請求項5に記載のPCB汚染土壌の洗浄装置。
【請求項7】
前記浮選分離槽は、粘土を焼成して素焼きにした部材を透過する空気を該槽内に供給する気泡発生装置を有することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のPCB汚染土壌の洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−88056(P2006−88056A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−277417(P2004−277417)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(594082501)スミコンセルテック株式会社 (16)
【Fターム(参考)】