PCRアナロジーとダブルシグモイド方程式による単一ピーク融解温度の決定
【課題】融解曲線のデータからDNAの融解温度Tmを決定するためのシステムと方法。このシステムと方法により、ピーク高に基づいて遺伝子の量を定量することもできる。
【解決手段】PCRアナロジーを利用し、取得した融解曲線のデータ・セットの定量化を行なう。水平反転と水平並進を利用して融解曲線を変換し、次いでそのデータにダブルシグモイド式を適合させる。逆並進変換と逆水平反転変換をその式に適用し、融解曲線のデータ・セットに関する式に基づく解を生成させる。次に、融解曲線に関する式に基づくその解を利用して第1の微分係数(例えばTm値)とピーク高を決定する。
【解決手段】PCRアナロジーを利用し、取得した融解曲線のデータ・セットの定量化を行なう。水平反転と水平並進を利用して融解曲線を変換し、次いでそのデータにダブルシグモイド式を適合させる。逆並進変換と逆水平反転変換をその式に適用し、融解曲線のデータ・セットに関する式に基づく解を生成させる。次に、融解曲線に関する式に基づくその解を利用して第1の微分係数(例えばTm値)とピーク高を決定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として、オリゴヌクレオチドの融解特性を表わすデータの処理に関するものであり、より詳細には、融解曲線のデータに基づいてオリゴヌクレオチド・サンプルの融解温度を決定するシステムと方法に関する。
【背景技術】
【0002】
融解温度の決定は、遺伝子型を区別するための重要な1つの方法である。オリゴヌクレオチドまたはDNAの融解温度を決定するための典型的な単一ステップのホモジニアス閉管法では、二本鎖特異的DNA染料(例えばSYBRグリーンI、モレキュラー・プローブ社、ユージーン、オレゴン州)または標識したオリゴヌクレオチドを用いて生成物の形成(Wittwer C.T.他、BioTechnniques、1997年、第22巻、130〜138ページ)と融解温度(Ririe K.M.他、Anal. Biochem.、1997年、第245巻、154〜160ページ)をリアル-タイムPCRでモニタする。一般に、DNA変性温度で安定な熱安定酵素と、少なくとも一対のオリゴヌクレオチド・プライマーとを用いて増幅させる。いくつかの実施態様では、(例えばDNAの2箇所以上または2つ以上の遺伝子型を増幅するため)1種類以上の別のオリゴヌクレオチド・プライマーを使用できる。特に、ホモジニアスであって増幅の開始後に試薬を添加したり分析のために反応物を物理的にサンプリングしたりする必要がない蛍光技術が魅力的である。ホモジニアスな技術の例では、興味の対象である領域を突き止めるためのオリゴヌクレオチド・プライマーと、信号を発生させるための蛍光標識または染料を用いる。PCRに基づく典型的な方法では、相互作用する2つの発色団を有するFRETオリゴヌクレオチド・プローブ(隣接ハイブリダイゼーション・プローブ、TaqManプローブ、モレキュラー・ビーコンズ社、スコーピオンズ)や、蛍光団が1つだけの一本鎖オリゴヌクレオチド・プローブ(G-クエンチング・プローブ、Crockett, A.O.とC.T. Wittwer、Anal. Biochem.、2001年、第290巻、89〜97ページと、シンプルプローブ、アイダホ・テクノロジー社)や、蛍光標識が共有結合したオリゴヌクレオチド・プローブの代わりにdsDNA染料(例えばSYBRグリーンI)を用いた技術が利用される。
【0003】
オリゴヌクレオチドまたはDNAの融解温度を決定する典型的な1つの方法は、標的とする核酸の一部を増幅するステップと、その後にアンプリコンの融解温度を決定するステップを含んでいる。後者のステップでは、分析するサンプルの温度をある温度範囲にわたって変化させ(例えば上昇させ)、蛍光の変化を測定する。融解温度においてDNAの2本の鎖が分離するため、蛍光は急速に減少する。時間(T)の経過に伴う相対的蛍光単位(RFU)の変化速度(-d(RFU)/dT)をY軸に、温度をX軸にプロットする。一般に、融解温度の決定は、増幅ステップの直後に実施される。いくつかの実施態様では、融解温度の決定は、増幅反応を実施している間にすでに実施することができる。
【0004】
通常はPCR実験の直後に実施されるオリゴヌクレオチドまたはDNAの融解温度決定は、遺伝子型を区別するための重要な1つの方法である。アッセイによっては、変異した遺伝子から野生型を識別するのに多数の融解温度を決定する必要がある。あるいは単一の遺伝子型では、融解アッセイを利用し、ピーク高に基づいて遺伝子の量を定量的に決定することができる。例えば文献で最近議論されているのは、K-RAS遺伝子を調べてどの患者が非小細胞肺がんを治療するための候補である可能性があるかを明らかにするというものである。K-RAS遺伝子が野生型である患者は治療の恩恵を受けられる可能性があるのに対し、この遺伝子が変異したバリエーションを患者が有する場合には、治療の恩恵がなかろう。こうした治療は大きな副作用をもたらすことがしばしばあるため、患者の正確な遺伝子型を明らかにすることが非常に重要である。また、存在している遺伝子の量を知ることも有用である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、DNAサンプルの融解温度と遺伝子の量をピーク高に基づいて正確かつ効率的に決定するシステムと方法が提供されることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明により、融解曲線のデータに基づいてオリゴヌクレオチドの融解温度Tmを決定するシステムと方法が提供される。このシステムと方法により、ピーク高に基づいて遺伝子の量を定量的に決定することもできる。
【0007】
さまざまな実施態様によれば、PCRアナロジーを利用し、取得した融解温度曲線のデータ・セットの量子化を行なう。いくつかの特徴では、水平方向の反転と水平方向の並進を利用して融解曲線を変換する。その後、ダブルシグモイド式をデータに適合させる。次に、逆並進変換と逆水平反転変換をその式に適用し、融解曲線のデータ・セットに関して式に基づく解を得る。次に、融解曲線に関するその式に基づく解を用いて第1の微分係数(例えばTm値)とピーク高を決定する。
【0008】
本発明の1つの特徴によれば、DNAの融解温度Tmを決定するのにコンピュータで実現する方法が提供される。この方法は、一般に、処理モジュールの中で実現される複数のステップを含んでいる。この方法のその複数のステップには、一般に、データ値系列{(X1, Y1)、(X2, Y2)...(Xn-1, Yn-1)、(Xn, Yn)}(ただしXは温度(T)の値を表わし、Yは蛍光強度の値を表わす)として表わされる複数のデータ点が含まれていてDNAサンプルの融解曲線を表わすデータ・セットを受け取るステップと、そのデータ・セットに適合する解析表現を決定するステップと、Xに関してその解析表現の微分係数を求めることによって微分係数曲線を決定するステップが含まれる。この方法の複数のステップには、一般に、微分係数曲線の最大微分係数(dY/dX)値に対応する値Xmaxを決定するステップと、その値Xmaxを出力するステップも含まれる。ここに、値XmaxはDNAサンプルの融解温度Tmを表わす。いくつかの特徴では、この方法はさらに、Tm値に対応する微分係数曲線のピーク高を決定するステップと、そのピーク高を出力するステップも含んでいる。いくつかの特徴では、解析表現は、ダブルシグモイド関数に回帰法を適用してデータ・セットに適合する大まかな曲線を計算し、その関数のパラメータを決定することによって決定される。いくつかの特徴では、回帰法は、レーベンバーグ-マルカート回帰法である。
【0009】
いくつかの実施態様では、データ・セットに対して第1の変換を適用してデータ値系列{(X1, Y1)、(X2, Y2)...(Xn-1, Yn-1)、(Xn, Yn)}を変換された系列{(Xn, Y1)、(Xn-1, Y2)...(X2, Yn-1)、(X1, Yn)}にした後、ダブルシグモイド関数に回帰法を適用して変換されたその系列に適合する大まかな曲線を計算し、そのダブルシグモイド関数のパラメータを決定することによって解析表現を決定する。その場合、いくつかの特徴では、回帰法は、レーベンバーグ-マルカート回帰法である。別の特徴では、本発明の方法はさらに、第1の変換の逆である第2の変換をダブルシグモイド関数に適用するステップを含んでいる。その場合、いくつかの特徴では、第2の変換に、(X1+Xn)−xの形の関数が含まれる。
【0010】
さらに別の一実施態様では、本発明の方法はさらに、計算の前にデータ・セットまたは変換された系列のX値を第1の量(Xtrans)だけシフトさせ、変換された系列が単位1の値の位置から始まるようにするステップを含んでいる。いくつかの特徴では、本発明の方法はさらに、計算後、ダブルシグモイド関数のX値を−Xtransだけシフトさせるステップを含んでいる。
【0011】
本発明の方法のさらに別の特徴では、微分係数曲線を決定するステップに、Xに関して解析表現の負の微分係数を求めるステップが含まれる。本発明の方法のさらに別の特徴では、処理モジュールが、コンピュータ・システムと、PCRデータを取得する装置またはシステムと、サーモサイクラー(例えばキネティック・サーモサイクラー)のうちの1つの中に組み込まれている。
【0012】
本発明の別の特徴によれば、DNAの融解温度Tmを決定するため、コンピュータで読み取り可能でプロセッサを制御するコードを含んでいる媒体が用意される。コードは、一般に、DNAサンプルの融解曲線を表わしていてデータ値系列{(X1, Y1)、(X2, Y2)...(Xn-1, Yn-1)、(Xn, Yn)}(ただしXは温度(T)の値を表わし、Yは蛍光強度の値を表わす)として表わされる複数のデータ点が含まれるデータ・セットを受け取る命令と、そのデータ・セットに適合する解析表現を決定する命令と、Xに関してその解析表現の微分係数を求めることによって微分係数曲線を決定する命令を含んでいる。コードは、一般に、微分係数曲線の最大微分係数(dY/dX)値に対応する値Xmaxを決定する命令と、その値Xmaxを出力する命令も含んでいる。ここに、値XmaxはDNAサンプルの融解温度Tmを表わす。いくつかの特徴では、コードはさらに、Tm値に対応する微分係数曲線のピーク高を決定する命令と、そのピーク高を出力する命令を含んでいる。いくつかの特徴では、解析表現は、ダブルシグモイド関数に回帰法を適用してデータ・セットに適合する大まかな曲線を計算し、その関数のパラメータを決定することによって決定される。いくつかの特徴では、回帰法は、レーベンバーグ-マルカート回帰法である。
【0013】
いくつかの実施態様では、解析表現を決定する命令は、データ・セットに対して第1の変換を適用してデータ値系列{(X1, Y1)、(X2, Y2)...(Xn-1, Yn-1)、(Xn, Yn)}を変換された系列{(Xn, Y1)、(Xn-1, Y2)...(X2, Yn-1)、(X1, Yn)}にする命令と、ダブルシグモイド関数に回帰法を適用して変換されたその系列に適合する大まかな曲線を計算し、そのダブルシグモイド関数のパラメータを決定する命令を含んでいる。その場合、いくつかの特徴では、回帰法は、レーベンバーグ-マルカート回帰法である。別の特徴では、コンピュータ可読媒体はさらに、第1の変換の逆である第2の変換をダブルシグモイド関数に適用する命令を含んでいる。その場合、いくつかの特徴では、第2の変換に、(X1+Xn)−xの形の関数が含まれる。
【0014】
さらに別の一実施態様では、コンピュータ可読媒体はさらに、計算の前にデータ・セットまたは変換された系列のX値を第1の量(Xtrans)だけシフトさせ、変換された系列が単位1の値の位置から始まるようにする命令を含んでいる。その場合、いくつかの特徴では、本発明の方法はさらに、計算後、ダブルシグモイド関数のX値を−Xtransだけシフトさせるステップを含んでいる。
【0015】
コンピュータ可読媒体のさらに別の特徴では、微分係数曲線の決定には、Xに関して解析表現の負の微分係数を得ることが含まれる。コンピュータ可読媒体のさらに別の特徴では、プロセッサは、コンピュータ・システムと、PCRデータを取得する装置またはシステムのうちの1つに組み込まれる。
【0016】
本発明のさらに別の特徴によれば、キネティック・ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)システムが用意される。PCRシステムは、一般に、データ値系列{(X1, Y1)、(X2, Y2)...(Xn-1, Yn-1)、(Xn, Yn)}(ただしXは温度(T)の値を表わし、Yは蛍光強度の値を表わす)として表わされる複数のデータ点が含まれていてDNA融解曲線を表わす融解曲線データ・セットを生成させるキネティックPCR分析モジュールと、Tm値を決定する融解曲線データ・セットを処理することのできるインテリジェンス・モジュールを含んでいる。インテリジェンス・モジュールは、一般に、データ・セットに適合する解析表現を決定することによってTm値を決定することと、Xに関してその解析表現の微分係数を取ることによって微分係数曲線を決定することと、その微分係数曲線の最大微分係数(dY/dX)値に対応する値Xmaxを決定することができる。インテリジェンス・モジュールはさらに、一般に、値Xmaxを出力することができる。ここに、値XmaxはDNAサンプルの融解温度Tmを表わす。いくつかの特徴では、インテリジェンス・モジュールは、を含んでいる。いくつかの特徴では、インテリジェンス・モジュールは、さらに、Tm値に対応する微分係数曲線のピーク高を決定することと、そのピーク高を出力することができる。いくつかの特徴では、解析表現は、ダブルシグモイド関数に回帰法を適用してデータ・セットに適合する大まかな曲線を計算し、その関数のパラメータを決定することによって決定される。いくつかの特徴では、回帰法は、レーベンバーグ-マルカート回帰法である。
【0017】
いくつかの実施態様では、解析表現は、データ・セットに第1の変換を適用してデータ値系列{(X1, Y1)、(X2, Y2)...(Xn-1, Yn-1)、(Xn, Yn)}を変換された系列{(Xn, Y1)、(Xn-1, Y2)...(X2, Yn-1)、(X1, Yn)}にし、ダブルシグモイド関数に回帰法を適用して変換されたその系列に適合する大まかな曲線を計算し、そのダブルシグモイド関数のパラメータを決定することによって決定される。その場合、いくつかの特徴では、回帰法は、レーベンバーグ-マルカート回帰法である。別の1つの特徴では、解析表現はさらに、第1の変換の逆である第2の変換をダブルシグモイド関数に適用することによって決定される。その場合、いくつかの特徴では、第2の変換に、(X1+Xn)−xの形の関数が含まれる。
【0018】
キネティックPCRシステムのさらに別の一実施態様では、インテリジェンス・モジュールはさらに、計算の前にデータ・セットまたは変換された系列のX値を第1の量(Xtrans)だけシフトさせ、変換された系列が単位1の値の位置から始まるようにすることができる。その場合、いくつかの特徴では、インテリジェンス・モジュールはさらに、計算後、ダブルシグモイド関数のX値を−Xtransだけシフトさせることができる。
【0019】
キネティックPCRシステムのさらに別の特徴では、微分係数曲線の決定に、Xに関して解析表現の負の微分係数を得ることが含まれる。
【0020】
この明細書の残りの部分を図面と請求項も含めて参照すると、本発明の他の特徴と利点がわかるであろう。本発明のさらに別の特徴と利点、ならびに本発明のさまざまな実施態様の構造と動作を添付の図面を参照して以下に詳しく説明する。図面では、似た参照番号は、同じ要素、または機能の似た要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】PCR法に関連する融解曲線の一例である。
【図2】一実施態様に従って融解温度を決定する方法を示している。
【図3】一実施態様に従ってPCRアナロジーを利用して融解温度を決定する方法を示している。
【図4】図1のデータ・セットに水平反転変換を適用した結果を示している。
【図5】図4のデータ・セットに水平並進変換を適用した結果を示している。
【図6】図5のデータに適合させて得られたダブルシグモイド曲線を示している。
【図7】逆並進変換の結果を示している。
【図8】PCR曲線として確立された融解曲線を示している。
【図9】得られた融解ピーク曲線のグラフ表示である。
【図10】本発明の方法とシステムを実現するのに使用できるソフトウエア資源とハードウエア資源の間の関係を示す一般的なブロック・ダイヤグラムの一例を示している。
【図11】サーモサイクラー装置とコンピュータ・システムの間の関係を示す一般的なブロック・ダイヤグラムの一例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明により、融解曲線のデータに基づいてオリゴヌクレオチドの融解温度Tmを決定するシステムと方法が提供される。このシステムと方法により、ピーク高に基づいて遺伝子の量を定量的に決定することもできる。
【0023】
PCR法の文脈における融解曲線の一例を図1に示す。図1に示した曲線は、1種類の遺伝子型だけが存在する場合にPCR実験で得られた典型的な融解曲線のグラフである。この曲線では、蛍光強度が温度の上昇とともに低下している。
【0024】
図1からわかるように、典型的な融解曲線のデータは、例えばx軸を規定する温度と、y軸を規定する蓄積されたポリヌクレオチドの指標とを用いた二次元座標系で表わすことができる。一般に、蓄積されたポリヌクレオチドの指標は、蛍光強度の値である。なぜなら蛍光マーカーの利用はおそらく最も広く使用されている標識スキームだからである。しかし使用する個々の標識および/または検出スキームに応じて他の指標も利用できる。蓄積されたポリヌクレオチドの他の有用な指標の例として、ルミネッセンス強度、化学発光強度、生物発光強度、リン光強度、電荷移動、電圧、電流、電力、エネルギー、温度、粘性率、光散乱、放射能強度、反射率、透過率、吸光度などがある。
【0025】
一般的な方法の概説
図1に示した典型的な融解曲線を考える。図1に示したデータから1つ以上の融解温度が得られることが望ましい。一実施態様によれば、融解温度を決定する方法100は、図2を参照して簡単に説明することができる。ステップ110では、融解曲線を表わす実験データ・セットを受け取るか取得する。プロットした実験データ・セットの一例を図1に示してある。ここではy軸(縦軸)とx軸(横軸)は、1つの融解曲線に関する蛍光強度と温度をそれぞれ表わす。取得したデータ・セットは、データ値系列{(X1, Y1)、(X2, Y2)...(Xn-1, Yn-1)、(Xn, Yn)}(ただしXは温度(T)の値を表わし、Yは蛍光強度の値を表わす)として表わされる複数のデータ点を含んでいる。いくつかの特徴では、データ・セットは、横軸に沿って連続的に等間隔に並んだデータを含んでいる必要がある。
【0026】
方法100をPCR装置(例えばサーモサイクラー)の中に位置するインテリジェンス・モジュール(例えば命令を実行する1つ以上のプロセッサ)で実施する場合には、データ・セットは、データが回収されるのに合わせてリアル・タイムでインテリジェンス・モジュールに供給すること、またはメモリ・ユニットまたはバッファに記憶させ、実験が完了した後にインテリジェンス・モジュールに供給することができる。同様に、データ・セットは、ネットワーク(例えばLAN、VPN、イントラネット、インターネットなど)接続を通じて別のシステム(デスクトップ・コンピュータ・システムや他のコンピュータ・システム)に供給すること、または取得装置に直接接続すること(例えばUSBや、他の直接的な有線または無線の接続)、または携帯媒体(例えばCD、DVD、フロッピー(登録商標)・ディスクなど)に保管することができる。いくつかの特徴では、データ・セットは、一対の座標値(または二次元ベクトル)を有するデータ点を含んでいる。融解データに関しては、一対の座標値は、一般に、温度と蛍光強度の値を表わす。例えば二次元のグラフに表示するときには、x軸(横軸)は一般に温度を表わし、y軸(縦軸)は一般に蛍光強度を表わす。データ・セットは、ステップ110で受け取りまたは取得がなされた後、解析されて融解温度および/または微分係数曲線のピーク高の値を決定することが可能になる。
【0027】
ステップ120では、データ・セットに適合する解析表現が決定される。あとでより詳しく議論するように、いくつかの特徴では、ダブルシグモイド・タイプの式をそのデータ・セットに適合させる。いくつかの特徴では、レーベンバーグ-マルカート回帰法を利用してダブルシグモイド式をデータ・セットに適合させる。しかし他の回帰法も利用できる。ステップ130では、解析表現から、X(温度)に関してその解析表現の微分係数を求めることによって微分係数曲線が決定される。次に、ステップ140において、微分係数曲線の最大微分係数(dY/dX)の値に対応する値Xmaxを決定することにより、微分係数曲線のピークを決定する。いくつかの特徴では、曲線の最大値を求める標準的な解析法(例えばニュートン法、勾配法、グリッド探索法や、他の方法)を利用して微分係数曲線の最大値Xmaxを決定する。値Xmaxは、DNAサンプルの融解温度Tmを表わす。ステップ150では、Tmの値および/またはピーク高の値が例えば表示やさらなる処理のために送り返される。図2の解析を実施したシステムに接続されたディスプレイ装置(例えばモニタ・スクリーンやプリンタ)を用いてグラフ表示することや、ディスプレイ装置に表示するための別のシステムにデータを供給することができる。
【0028】
図3は、一実施態様に従ってPCRアナロジーを利用して融解温度を決定する方法200を示している。この実施態様では、PCRデータを処理して解析するために設計された以前のアルゴリズムを利用できるようにするため、(例えばデータ・セットを見るときに)PCR曲線のデータ・セットに似たものになるように融解曲線のデータ・セットを変換し、その融解曲線のデータ・セットに適合する解析式を決定する。
【0029】
ステップ210では、融解曲線のデータ・セットをステップ110におけるようにして受け取るか取得する。ステップ220〜260では、そのデータ・セットに適合する解析表現を決定する。ステップ220では、一実施態様によれば、水平反転変換をデータ・セットに適用して温度値を逆転させる。例えば系列{{T1, F1}、{T2, F2}...{Tn-1, Fn-1}、{Tn, Fn}}(ただしTは温度を表わし、Fは蛍光強度を表わし、添字は系列内の順番を表わす)が{{Tn, F1}、{Tn-1, F2}...{T2, Fn-1}、{T1, Fn}}になるような変換を適用する。図1のデータに対してこの変換を適用すると、図4に示した結果が得られる。図4からわかるように、この形は今や典型的なPCR曲線を表わしている。ステップ230では、水平並進変換をデータ・セットに適用し、そのデータ・セットがX軸上で単位1(例えば1℃)から始まるようにする。このようにすると曲線は左にシフトして1℃から始まるため、PCR曲線と同じ特徴を持つ。そのためPCRに関して以前に開発した解析表現を融解曲線に容易に適用することができる。図4のデータをこのように並進させた結果(この場合には39.47℃だけ並進)を図5に示す。ステップ230は実施しなくてもよいことと、ステップ220と230の順番は逆にできることに注意されたい。
【0030】
ステップ240では、解析表現を図5のデータに適合させる。一実施態様では、ダブルシグモイド式をデータ曲線に適合させる。図5の曲線はPCR曲線の特徴を有するため、ダブルシグモイド式に適合させるために以前に開発された方法をこのデータに適用することができる。ステップ240では、一実施態様において、レーベンバーグ-マルカート(LM)回帰法または他の回帰法によって決定されたパラメータを持つダブルシグモイド関数を用い、そのデータ・セットを表わす大まかな曲線を見いだす。LM法は非線形回帰法である。LM法は、非線形関数とデータ・セットの間の距離の二乗を最小にする反復法である。この方法は、最急降下法とガウス-ニュートン法の組み合わせのように振る舞う。現在の近似がうまく適合していないときには最急降下法のように振る舞う(より遅いが、収束の信頼性がより高い)が、現在の近似がより正確になると、ガウス-ニュートン法のように振る舞う(より早いが収束の信頼性がより低い)。LM回帰法は、非線形回帰問題を解くのに広く用いられている。
【0031】
一般に、LM回帰法は、さまざまな入力を必要とするアルゴリズムを含んでいて、そのアルゴリズムから出力がなされる。1つの特徴では、入力は、処理すべきデータ・セットと、そのデータにフィトさせるのに用いる関数と、その関数のパラメータまたは変数の最初の推定値を含んでいる。出力は、その関数とデータ・セットの間の距離を最小にする一群のパラメータを含んでいる。
【0032】
一実施態様によれば、フィット関数は、以下の形のダブルシグモイドである。
【0033】
【化1】
【0034】
フィット関数としてこの式を選択したのは、この式が、典型的なPCR曲線または他の増加曲線が取ることのできるさまざまな形の曲線に適合する柔軟性と能力を有するからである。当業者であれば、望みに応じて上記のフィット関数のバリエーションや他のフィット関数を使用できることが理解できよう。ダブルシグモイド式(1)は、a、b、c、d、e、f、gという7つのパラメータを有する。この式は、定数と勾配とダブルシグモイドの和に分解することができる。ダブルシグモイドそのものは、2つのシグモイドの積である。ダブルシグモイド式をPCRデータ・セットに適合させる方法の詳細は、パラメータの決定も含め、2006年2月6日にアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第11/349,550号として出願されたアメリカ合衆国特許出願公開第2007-0143385号に見いだすことができる。
【0035】
図5のデータに適合させて得られるダブルシグモイド曲線を図6に示してあり、そのダブルシグモイド表現は式(2)で表わされる。
【0036】
【化2】
【0037】
式(2)のダブルシグモイド表現をここで変換して原融解曲線の形式に戻さねばならない。ステップ250では、図6に対応する曲線およびダブルシグモイド表現と式(2)を、ステップ230においてシフトさせた負の量だけシフトさせる。得られるシフトさせた曲線とダブルシグモイド表現をそれぞれ図7と式(3)に示す。
【0038】
【化3】
【0039】
ステップ260では、図7に示した曲線を逆水平反転させる関数を決定して適用する。逆水平反転させるこの関数は、元の原融解曲線の最初と最後のx座標の和からxを差し引いて決定することができる。例えば元の原融解データが{{T1, F1}、{T2, F2}...{Tn-1, Fn-1}、{Tn, Fn}}であると仮定する。すると逆水平反転関数は(T1+Tn)-xになる。図7のデータに関しては、逆関数は、InvFlip(x)=125-xであることがわかる。
【0040】
再構成された元の融解関数と曲線を図8と式(4)に示す。
【0041】
【化4】
【0042】
式(4)は、ds3(x)=ds2(InvFlip(x))として決定される。ds3(x)のグラフに元の原融解データを重ねたものを図8に示してある。適合はほぼ完全であることがわかる。そのため原融解曲線とPCR曲線の間の関数の同等性が明確になる。
【0043】
ステップ270では、原融解曲線の関数形の負の微分係数を決定する。融解のピークの表現は、原融解データの負の微分係数を求めることによって明らかになる。原融解曲線と同等な解析表現を利用し、融解のピーク曲線の表現が式(5)として求められる。
【化5】
【0044】
式(5)のグラフ表示を図9に示す。
【0045】
ステップ280では、融解温度Tmおよび/またはピーク高を決定し、例えば表示やさらに処理するために送り返す。融解温度は、融解ピーク曲線の最大値に対応する温度として決定される。融解温度Tmは、曲線の最大値を求める標準的な解析法(例えばニュートン法、勾配法、グリッド探索法や、他の方法)によって見いだすことができる。この明細書の例では、最大温度はTm=59.64℃であることがわかり、ピーク高は0.655であることがわかった。
【0046】
この明細書に記載した方法は、多数の屈曲部が許されるPCR曲線の解析表現を利用することで、多数のピークを有する融解曲線に拡張することができる。あるいは手続きを再構成し、ダブルシグモイド表現を元の原融解曲線に直接適用することができる。すると融解-PCRアナロジーが不要になる。このような手続きの確立に関する詳細は、2006年2月6日にアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第11/349,550号として出願されたアメリカ合衆国特許出願公開第2007-0143385号に見いだすことができる。
【0047】
生データを
1)平均値
2)中央値
3)範囲(最大値−最小値)
のいずれかで割ることにより、得られたピーク高を機械とは独立にできることに注意されたい。
【0048】
機械が多数のチャネルを有する場合には、各チャネルをそのチャネル自身の平均値、中央値、範囲のいずれかで割ること、またはすべてのチャネルを1つのチャネルの平均値/中央値/範囲で割ることができる。例えばチャネル1とチャネル2をチャネル1の平均値/中央値/範囲で割ることができる。
【0049】
Tmの決定法は、コンピュータ・システムのプロセッサ上を走るコンピュータ・コードとして実現することができる。コードは、Tm決定法のさまざまな特徴とステップを実現するプロセッサを制御する命令を含んでいる。コードは、一般に、ハード・ディスク、RAM、携帯媒体(例えばCD、DVDなど)に記憶される。同様に、この方法は、PCR装置(例えばサーモサイクラー)や他の特別な装置(命令がメモリ・ユニットに記憶されていて、そのメモリ・ユニットに接続することによってその命令を実行するプロセッサ)で実現することができる。このような命令を含むコードは、ネットワーク接続を通じて、またはコード源への直接的な接続を通じて、またはよく知られた携帯媒体を利用して装置のメモリ・ユニットにダウンロードすることができる。
【0050】
当業者であれば、さまざまなプログラミング言語(C、C++、C#、フォートラン、ビジュアルベーシックなど)やアプリケーション(例えばデータの可視化と解析に役立つあらかじめパッケージ化されたルーチン、関数、手続きを提供するMathematica(登録商標))を用いて本発明によるTm決定法をコード化できることがわかるはずである。後者の別の一例は、MATLAB(登録商標)である。
【0051】
ある一実施態様では、本発明の方法は、従来からあるパーソナル・コンピュータ・システムを利用して実現できる。その例として、データ・セットを入力する入力装置(例えばキーボード、マウスなど);曲線のある領域中の興味ある特別な点を表示するディスプレイ装置(例えばモニタ);本発明の方法の各ステップを実施するのに必要な処理装置(例えばCPU);ネットワーク・インターフェイス(例えばモデム、データ・セットを記憶するデータ記憶装置、プロセッサ上を走るコンピュータ・コードなど)があるが、これだけに限定されるわけではない。さらに、本発明の方法は、例えば請求項の実施態様によるPCR法やPCRシステムで実現することもできる。
【実施例】
【0052】
本発明によるシステムの一例を図10と図11に示す。図10は、本発明の方法とシステムの実現に利用できるソフトウエア資源とハードウエア資源の間の関係を説明する一般的なブロック・ダイヤグラムを示している。図11に示したシステムは、サーモサイクラー装置の中に設置できるキネティックPCRモジュールと、コンピュータ・システムの一部であるインテリジェンス・モジュールを備えている。データ・セット(PCRデータ・セット)は、ネットワーク接続または直接的な接続を通じ、解析モジュールからインテリジェンス・モジュールへ、またはその逆へと転送される。データ・セットは、例えば図2と図3に示したフローチャートに従って処理することができる。これらのフローチャートは、例えば図10に示したフローチャートに従うコンピュータ・システムのハードウエアに記憶されたソフトウエアによってうまく実現できる。図10を参照すると、コンピュータ・システム(300)は、例えばPCR反応の間に得られた蛍光データを受け取る受信手段(310)と、そのデータを本発明の方法に従って処理する計算手段(320)と、その計算手段によって得られた結果に従ってそのデータの一部を置き換える適用手段(330)と、結果をコンピュータ・スクリーンに表示する表示手段(340)を備えることができる。図11は、サーモサイクラー装置とコンピュータ・システムの間のやり取りを示している。このシステムは、サーモサイクラー装置の中に設置できるキネティックPCR分析モジュールと、コンピュータ・システムの一部であるインテリジェンス・モジュールを備えている。データ・セット(PCRデータ・セット)は、ネットワーク接続または直接的な接続を通じ、解析モジュールからインテリジェンス・モジュールへ、またはその逆へと転送される。データ・セットは、インテリジェンス・モジュールの記憶装置に記憶されていてプロセッサ上を走るコンピュータ・コードを用いて図10に従って処理し、処理後、解析モジュールの記憶装置に送り返すことができる。解析モジュールでは、変更されたデータをディスプレイ装置に表示することができる。
【0053】
例として本発明を特別な実施態様に関して説明してきたが、本発明はここに開示した実施態様に限定されないことが理解されよう。それとは逆に、本発明には、当業者にとって明らかであろうさまざまな変更や似た構成が含まれるものとする。したがって添付の請求項の範囲は、そのような変更や似た構成をすべて含むよう、最も広く解釈されるべきである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として、オリゴヌクレオチドの融解特性を表わすデータの処理に関するものであり、より詳細には、融解曲線のデータに基づいてオリゴヌクレオチド・サンプルの融解温度を決定するシステムと方法に関する。
【背景技術】
【0002】
融解温度の決定は、遺伝子型を区別するための重要な1つの方法である。オリゴヌクレオチドまたはDNAの融解温度を決定するための典型的な単一ステップのホモジニアス閉管法では、二本鎖特異的DNA染料(例えばSYBRグリーンI、モレキュラー・プローブ社、ユージーン、オレゴン州)または標識したオリゴヌクレオチドを用いて生成物の形成(Wittwer C.T.他、BioTechnniques、1997年、第22巻、130〜138ページ)と融解温度(Ririe K.M.他、Anal. Biochem.、1997年、第245巻、154〜160ページ)をリアル-タイムPCRでモニタする。一般に、DNA変性温度で安定な熱安定酵素と、少なくとも一対のオリゴヌクレオチド・プライマーとを用いて増幅させる。いくつかの実施態様では、(例えばDNAの2箇所以上または2つ以上の遺伝子型を増幅するため)1種類以上の別のオリゴヌクレオチド・プライマーを使用できる。特に、ホモジニアスであって増幅の開始後に試薬を添加したり分析のために反応物を物理的にサンプリングしたりする必要がない蛍光技術が魅力的である。ホモジニアスな技術の例では、興味の対象である領域を突き止めるためのオリゴヌクレオチド・プライマーと、信号を発生させるための蛍光標識または染料を用いる。PCRに基づく典型的な方法では、相互作用する2つの発色団を有するFRETオリゴヌクレオチド・プローブ(隣接ハイブリダイゼーション・プローブ、TaqManプローブ、モレキュラー・ビーコンズ社、スコーピオンズ)や、蛍光団が1つだけの一本鎖オリゴヌクレオチド・プローブ(G-クエンチング・プローブ、Crockett, A.O.とC.T. Wittwer、Anal. Biochem.、2001年、第290巻、89〜97ページと、シンプルプローブ、アイダホ・テクノロジー社)や、蛍光標識が共有結合したオリゴヌクレオチド・プローブの代わりにdsDNA染料(例えばSYBRグリーンI)を用いた技術が利用される。
【0003】
オリゴヌクレオチドまたはDNAの融解温度を決定する典型的な1つの方法は、標的とする核酸の一部を増幅するステップと、その後にアンプリコンの融解温度を決定するステップを含んでいる。後者のステップでは、分析するサンプルの温度をある温度範囲にわたって変化させ(例えば上昇させ)、蛍光の変化を測定する。融解温度においてDNAの2本の鎖が分離するため、蛍光は急速に減少する。時間(T)の経過に伴う相対的蛍光単位(RFU)の変化速度(-d(RFU)/dT)をY軸に、温度をX軸にプロットする。一般に、融解温度の決定は、増幅ステップの直後に実施される。いくつかの実施態様では、融解温度の決定は、増幅反応を実施している間にすでに実施することができる。
【0004】
通常はPCR実験の直後に実施されるオリゴヌクレオチドまたはDNAの融解温度決定は、遺伝子型を区別するための重要な1つの方法である。アッセイによっては、変異した遺伝子から野生型を識別するのに多数の融解温度を決定する必要がある。あるいは単一の遺伝子型では、融解アッセイを利用し、ピーク高に基づいて遺伝子の量を定量的に決定することができる。例えば文献で最近議論されているのは、K-RAS遺伝子を調べてどの患者が非小細胞肺がんを治療するための候補である可能性があるかを明らかにするというものである。K-RAS遺伝子が野生型である患者は治療の恩恵を受けられる可能性があるのに対し、この遺伝子が変異したバリエーションを患者が有する場合には、治療の恩恵がなかろう。こうした治療は大きな副作用をもたらすことがしばしばあるため、患者の正確な遺伝子型を明らかにすることが非常に重要である。また、存在している遺伝子の量を知ることも有用である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、DNAサンプルの融解温度と遺伝子の量をピーク高に基づいて正確かつ効率的に決定するシステムと方法が提供されることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明により、融解曲線のデータに基づいてオリゴヌクレオチドの融解温度Tmを決定するシステムと方法が提供される。このシステムと方法により、ピーク高に基づいて遺伝子の量を定量的に決定することもできる。
【0007】
さまざまな実施態様によれば、PCRアナロジーを利用し、取得した融解温度曲線のデータ・セットの量子化を行なう。いくつかの特徴では、水平方向の反転と水平方向の並進を利用して融解曲線を変換する。その後、ダブルシグモイド式をデータに適合させる。次に、逆並進変換と逆水平反転変換をその式に適用し、融解曲線のデータ・セットに関して式に基づく解を得る。次に、融解曲線に関するその式に基づく解を用いて第1の微分係数(例えばTm値)とピーク高を決定する。
【0008】
本発明の1つの特徴によれば、DNAの融解温度Tmを決定するのにコンピュータで実現する方法が提供される。この方法は、一般に、処理モジュールの中で実現される複数のステップを含んでいる。この方法のその複数のステップには、一般に、データ値系列{(X1, Y1)、(X2, Y2)...(Xn-1, Yn-1)、(Xn, Yn)}(ただしXは温度(T)の値を表わし、Yは蛍光強度の値を表わす)として表わされる複数のデータ点が含まれていてDNAサンプルの融解曲線を表わすデータ・セットを受け取るステップと、そのデータ・セットに適合する解析表現を決定するステップと、Xに関してその解析表現の微分係数を求めることによって微分係数曲線を決定するステップが含まれる。この方法の複数のステップには、一般に、微分係数曲線の最大微分係数(dY/dX)値に対応する値Xmaxを決定するステップと、その値Xmaxを出力するステップも含まれる。ここに、値XmaxはDNAサンプルの融解温度Tmを表わす。いくつかの特徴では、この方法はさらに、Tm値に対応する微分係数曲線のピーク高を決定するステップと、そのピーク高を出力するステップも含んでいる。いくつかの特徴では、解析表現は、ダブルシグモイド関数に回帰法を適用してデータ・セットに適合する大まかな曲線を計算し、その関数のパラメータを決定することによって決定される。いくつかの特徴では、回帰法は、レーベンバーグ-マルカート回帰法である。
【0009】
いくつかの実施態様では、データ・セットに対して第1の変換を適用してデータ値系列{(X1, Y1)、(X2, Y2)...(Xn-1, Yn-1)、(Xn, Yn)}を変換された系列{(Xn, Y1)、(Xn-1, Y2)...(X2, Yn-1)、(X1, Yn)}にした後、ダブルシグモイド関数に回帰法を適用して変換されたその系列に適合する大まかな曲線を計算し、そのダブルシグモイド関数のパラメータを決定することによって解析表現を決定する。その場合、いくつかの特徴では、回帰法は、レーベンバーグ-マルカート回帰法である。別の特徴では、本発明の方法はさらに、第1の変換の逆である第2の変換をダブルシグモイド関数に適用するステップを含んでいる。その場合、いくつかの特徴では、第2の変換に、(X1+Xn)−xの形の関数が含まれる。
【0010】
さらに別の一実施態様では、本発明の方法はさらに、計算の前にデータ・セットまたは変換された系列のX値を第1の量(Xtrans)だけシフトさせ、変換された系列が単位1の値の位置から始まるようにするステップを含んでいる。いくつかの特徴では、本発明の方法はさらに、計算後、ダブルシグモイド関数のX値を−Xtransだけシフトさせるステップを含んでいる。
【0011】
本発明の方法のさらに別の特徴では、微分係数曲線を決定するステップに、Xに関して解析表現の負の微分係数を求めるステップが含まれる。本発明の方法のさらに別の特徴では、処理モジュールが、コンピュータ・システムと、PCRデータを取得する装置またはシステムと、サーモサイクラー(例えばキネティック・サーモサイクラー)のうちの1つの中に組み込まれている。
【0012】
本発明の別の特徴によれば、DNAの融解温度Tmを決定するため、コンピュータで読み取り可能でプロセッサを制御するコードを含んでいる媒体が用意される。コードは、一般に、DNAサンプルの融解曲線を表わしていてデータ値系列{(X1, Y1)、(X2, Y2)...(Xn-1, Yn-1)、(Xn, Yn)}(ただしXは温度(T)の値を表わし、Yは蛍光強度の値を表わす)として表わされる複数のデータ点が含まれるデータ・セットを受け取る命令と、そのデータ・セットに適合する解析表現を決定する命令と、Xに関してその解析表現の微分係数を求めることによって微分係数曲線を決定する命令を含んでいる。コードは、一般に、微分係数曲線の最大微分係数(dY/dX)値に対応する値Xmaxを決定する命令と、その値Xmaxを出力する命令も含んでいる。ここに、値XmaxはDNAサンプルの融解温度Tmを表わす。いくつかの特徴では、コードはさらに、Tm値に対応する微分係数曲線のピーク高を決定する命令と、そのピーク高を出力する命令を含んでいる。いくつかの特徴では、解析表現は、ダブルシグモイド関数に回帰法を適用してデータ・セットに適合する大まかな曲線を計算し、その関数のパラメータを決定することによって決定される。いくつかの特徴では、回帰法は、レーベンバーグ-マルカート回帰法である。
【0013】
いくつかの実施態様では、解析表現を決定する命令は、データ・セットに対して第1の変換を適用してデータ値系列{(X1, Y1)、(X2, Y2)...(Xn-1, Yn-1)、(Xn, Yn)}を変換された系列{(Xn, Y1)、(Xn-1, Y2)...(X2, Yn-1)、(X1, Yn)}にする命令と、ダブルシグモイド関数に回帰法を適用して変換されたその系列に適合する大まかな曲線を計算し、そのダブルシグモイド関数のパラメータを決定する命令を含んでいる。その場合、いくつかの特徴では、回帰法は、レーベンバーグ-マルカート回帰法である。別の特徴では、コンピュータ可読媒体はさらに、第1の変換の逆である第2の変換をダブルシグモイド関数に適用する命令を含んでいる。その場合、いくつかの特徴では、第2の変換に、(X1+Xn)−xの形の関数が含まれる。
【0014】
さらに別の一実施態様では、コンピュータ可読媒体はさらに、計算の前にデータ・セットまたは変換された系列のX値を第1の量(Xtrans)だけシフトさせ、変換された系列が単位1の値の位置から始まるようにする命令を含んでいる。その場合、いくつかの特徴では、本発明の方法はさらに、計算後、ダブルシグモイド関数のX値を−Xtransだけシフトさせるステップを含んでいる。
【0015】
コンピュータ可読媒体のさらに別の特徴では、微分係数曲線の決定には、Xに関して解析表現の負の微分係数を得ることが含まれる。コンピュータ可読媒体のさらに別の特徴では、プロセッサは、コンピュータ・システムと、PCRデータを取得する装置またはシステムのうちの1つに組み込まれる。
【0016】
本発明のさらに別の特徴によれば、キネティック・ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)システムが用意される。PCRシステムは、一般に、データ値系列{(X1, Y1)、(X2, Y2)...(Xn-1, Yn-1)、(Xn, Yn)}(ただしXは温度(T)の値を表わし、Yは蛍光強度の値を表わす)として表わされる複数のデータ点が含まれていてDNA融解曲線を表わす融解曲線データ・セットを生成させるキネティックPCR分析モジュールと、Tm値を決定する融解曲線データ・セットを処理することのできるインテリジェンス・モジュールを含んでいる。インテリジェンス・モジュールは、一般に、データ・セットに適合する解析表現を決定することによってTm値を決定することと、Xに関してその解析表現の微分係数を取ることによって微分係数曲線を決定することと、その微分係数曲線の最大微分係数(dY/dX)値に対応する値Xmaxを決定することができる。インテリジェンス・モジュールはさらに、一般に、値Xmaxを出力することができる。ここに、値XmaxはDNAサンプルの融解温度Tmを表わす。いくつかの特徴では、インテリジェンス・モジュールは、を含んでいる。いくつかの特徴では、インテリジェンス・モジュールは、さらに、Tm値に対応する微分係数曲線のピーク高を決定することと、そのピーク高を出力することができる。いくつかの特徴では、解析表現は、ダブルシグモイド関数に回帰法を適用してデータ・セットに適合する大まかな曲線を計算し、その関数のパラメータを決定することによって決定される。いくつかの特徴では、回帰法は、レーベンバーグ-マルカート回帰法である。
【0017】
いくつかの実施態様では、解析表現は、データ・セットに第1の変換を適用してデータ値系列{(X1, Y1)、(X2, Y2)...(Xn-1, Yn-1)、(Xn, Yn)}を変換された系列{(Xn, Y1)、(Xn-1, Y2)...(X2, Yn-1)、(X1, Yn)}にし、ダブルシグモイド関数に回帰法を適用して変換されたその系列に適合する大まかな曲線を計算し、そのダブルシグモイド関数のパラメータを決定することによって決定される。その場合、いくつかの特徴では、回帰法は、レーベンバーグ-マルカート回帰法である。別の1つの特徴では、解析表現はさらに、第1の変換の逆である第2の変換をダブルシグモイド関数に適用することによって決定される。その場合、いくつかの特徴では、第2の変換に、(X1+Xn)−xの形の関数が含まれる。
【0018】
キネティックPCRシステムのさらに別の一実施態様では、インテリジェンス・モジュールはさらに、計算の前にデータ・セットまたは変換された系列のX値を第1の量(Xtrans)だけシフトさせ、変換された系列が単位1の値の位置から始まるようにすることができる。その場合、いくつかの特徴では、インテリジェンス・モジュールはさらに、計算後、ダブルシグモイド関数のX値を−Xtransだけシフトさせることができる。
【0019】
キネティックPCRシステムのさらに別の特徴では、微分係数曲線の決定に、Xに関して解析表現の負の微分係数を得ることが含まれる。
【0020】
この明細書の残りの部分を図面と請求項も含めて参照すると、本発明の他の特徴と利点がわかるであろう。本発明のさらに別の特徴と利点、ならびに本発明のさまざまな実施態様の構造と動作を添付の図面を参照して以下に詳しく説明する。図面では、似た参照番号は、同じ要素、または機能の似た要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】PCR法に関連する融解曲線の一例である。
【図2】一実施態様に従って融解温度を決定する方法を示している。
【図3】一実施態様に従ってPCRアナロジーを利用して融解温度を決定する方法を示している。
【図4】図1のデータ・セットに水平反転変換を適用した結果を示している。
【図5】図4のデータ・セットに水平並進変換を適用した結果を示している。
【図6】図5のデータに適合させて得られたダブルシグモイド曲線を示している。
【図7】逆並進変換の結果を示している。
【図8】PCR曲線として確立された融解曲線を示している。
【図9】得られた融解ピーク曲線のグラフ表示である。
【図10】本発明の方法とシステムを実現するのに使用できるソフトウエア資源とハードウエア資源の間の関係を示す一般的なブロック・ダイヤグラムの一例を示している。
【図11】サーモサイクラー装置とコンピュータ・システムの間の関係を示す一般的なブロック・ダイヤグラムの一例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明により、融解曲線のデータに基づいてオリゴヌクレオチドの融解温度Tmを決定するシステムと方法が提供される。このシステムと方法により、ピーク高に基づいて遺伝子の量を定量的に決定することもできる。
【0023】
PCR法の文脈における融解曲線の一例を図1に示す。図1に示した曲線は、1種類の遺伝子型だけが存在する場合にPCR実験で得られた典型的な融解曲線のグラフである。この曲線では、蛍光強度が温度の上昇とともに低下している。
【0024】
図1からわかるように、典型的な融解曲線のデータは、例えばx軸を規定する温度と、y軸を規定する蓄積されたポリヌクレオチドの指標とを用いた二次元座標系で表わすことができる。一般に、蓄積されたポリヌクレオチドの指標は、蛍光強度の値である。なぜなら蛍光マーカーの利用はおそらく最も広く使用されている標識スキームだからである。しかし使用する個々の標識および/または検出スキームに応じて他の指標も利用できる。蓄積されたポリヌクレオチドの他の有用な指標の例として、ルミネッセンス強度、化学発光強度、生物発光強度、リン光強度、電荷移動、電圧、電流、電力、エネルギー、温度、粘性率、光散乱、放射能強度、反射率、透過率、吸光度などがある。
【0025】
一般的な方法の概説
図1に示した典型的な融解曲線を考える。図1に示したデータから1つ以上の融解温度が得られることが望ましい。一実施態様によれば、融解温度を決定する方法100は、図2を参照して簡単に説明することができる。ステップ110では、融解曲線を表わす実験データ・セットを受け取るか取得する。プロットした実験データ・セットの一例を図1に示してある。ここではy軸(縦軸)とx軸(横軸)は、1つの融解曲線に関する蛍光強度と温度をそれぞれ表わす。取得したデータ・セットは、データ値系列{(X1, Y1)、(X2, Y2)...(Xn-1, Yn-1)、(Xn, Yn)}(ただしXは温度(T)の値を表わし、Yは蛍光強度の値を表わす)として表わされる複数のデータ点を含んでいる。いくつかの特徴では、データ・セットは、横軸に沿って連続的に等間隔に並んだデータを含んでいる必要がある。
【0026】
方法100をPCR装置(例えばサーモサイクラー)の中に位置するインテリジェンス・モジュール(例えば命令を実行する1つ以上のプロセッサ)で実施する場合には、データ・セットは、データが回収されるのに合わせてリアル・タイムでインテリジェンス・モジュールに供給すること、またはメモリ・ユニットまたはバッファに記憶させ、実験が完了した後にインテリジェンス・モジュールに供給することができる。同様に、データ・セットは、ネットワーク(例えばLAN、VPN、イントラネット、インターネットなど)接続を通じて別のシステム(デスクトップ・コンピュータ・システムや他のコンピュータ・システム)に供給すること、または取得装置に直接接続すること(例えばUSBや、他の直接的な有線または無線の接続)、または携帯媒体(例えばCD、DVD、フロッピー(登録商標)・ディスクなど)に保管することができる。いくつかの特徴では、データ・セットは、一対の座標値(または二次元ベクトル)を有するデータ点を含んでいる。融解データに関しては、一対の座標値は、一般に、温度と蛍光強度の値を表わす。例えば二次元のグラフに表示するときには、x軸(横軸)は一般に温度を表わし、y軸(縦軸)は一般に蛍光強度を表わす。データ・セットは、ステップ110で受け取りまたは取得がなされた後、解析されて融解温度および/または微分係数曲線のピーク高の値を決定することが可能になる。
【0027】
ステップ120では、データ・セットに適合する解析表現が決定される。あとでより詳しく議論するように、いくつかの特徴では、ダブルシグモイド・タイプの式をそのデータ・セットに適合させる。いくつかの特徴では、レーベンバーグ-マルカート回帰法を利用してダブルシグモイド式をデータ・セットに適合させる。しかし他の回帰法も利用できる。ステップ130では、解析表現から、X(温度)に関してその解析表現の微分係数を求めることによって微分係数曲線が決定される。次に、ステップ140において、微分係数曲線の最大微分係数(dY/dX)の値に対応する値Xmaxを決定することにより、微分係数曲線のピークを決定する。いくつかの特徴では、曲線の最大値を求める標準的な解析法(例えばニュートン法、勾配法、グリッド探索法や、他の方法)を利用して微分係数曲線の最大値Xmaxを決定する。値Xmaxは、DNAサンプルの融解温度Tmを表わす。ステップ150では、Tmの値および/またはピーク高の値が例えば表示やさらなる処理のために送り返される。図2の解析を実施したシステムに接続されたディスプレイ装置(例えばモニタ・スクリーンやプリンタ)を用いてグラフ表示することや、ディスプレイ装置に表示するための別のシステムにデータを供給することができる。
【0028】
図3は、一実施態様に従ってPCRアナロジーを利用して融解温度を決定する方法200を示している。この実施態様では、PCRデータを処理して解析するために設計された以前のアルゴリズムを利用できるようにするため、(例えばデータ・セットを見るときに)PCR曲線のデータ・セットに似たものになるように融解曲線のデータ・セットを変換し、その融解曲線のデータ・セットに適合する解析式を決定する。
【0029】
ステップ210では、融解曲線のデータ・セットをステップ110におけるようにして受け取るか取得する。ステップ220〜260では、そのデータ・セットに適合する解析表現を決定する。ステップ220では、一実施態様によれば、水平反転変換をデータ・セットに適用して温度値を逆転させる。例えば系列{{T1, F1}、{T2, F2}...{Tn-1, Fn-1}、{Tn, Fn}}(ただしTは温度を表わし、Fは蛍光強度を表わし、添字は系列内の順番を表わす)が{{Tn, F1}、{Tn-1, F2}...{T2, Fn-1}、{T1, Fn}}になるような変換を適用する。図1のデータに対してこの変換を適用すると、図4に示した結果が得られる。図4からわかるように、この形は今や典型的なPCR曲線を表わしている。ステップ230では、水平並進変換をデータ・セットに適用し、そのデータ・セットがX軸上で単位1(例えば1℃)から始まるようにする。このようにすると曲線は左にシフトして1℃から始まるため、PCR曲線と同じ特徴を持つ。そのためPCRに関して以前に開発した解析表現を融解曲線に容易に適用することができる。図4のデータをこのように並進させた結果(この場合には39.47℃だけ並進)を図5に示す。ステップ230は実施しなくてもよいことと、ステップ220と230の順番は逆にできることに注意されたい。
【0030】
ステップ240では、解析表現を図5のデータに適合させる。一実施態様では、ダブルシグモイド式をデータ曲線に適合させる。図5の曲線はPCR曲線の特徴を有するため、ダブルシグモイド式に適合させるために以前に開発された方法をこのデータに適用することができる。ステップ240では、一実施態様において、レーベンバーグ-マルカート(LM)回帰法または他の回帰法によって決定されたパラメータを持つダブルシグモイド関数を用い、そのデータ・セットを表わす大まかな曲線を見いだす。LM法は非線形回帰法である。LM法は、非線形関数とデータ・セットの間の距離の二乗を最小にする反復法である。この方法は、最急降下法とガウス-ニュートン法の組み合わせのように振る舞う。現在の近似がうまく適合していないときには最急降下法のように振る舞う(より遅いが、収束の信頼性がより高い)が、現在の近似がより正確になると、ガウス-ニュートン法のように振る舞う(より早いが収束の信頼性がより低い)。LM回帰法は、非線形回帰問題を解くのに広く用いられている。
【0031】
一般に、LM回帰法は、さまざまな入力を必要とするアルゴリズムを含んでいて、そのアルゴリズムから出力がなされる。1つの特徴では、入力は、処理すべきデータ・セットと、そのデータにフィトさせるのに用いる関数と、その関数のパラメータまたは変数の最初の推定値を含んでいる。出力は、その関数とデータ・セットの間の距離を最小にする一群のパラメータを含んでいる。
【0032】
一実施態様によれば、フィット関数は、以下の形のダブルシグモイドである。
【0033】
【化1】
【0034】
フィット関数としてこの式を選択したのは、この式が、典型的なPCR曲線または他の増加曲線が取ることのできるさまざまな形の曲線に適合する柔軟性と能力を有するからである。当業者であれば、望みに応じて上記のフィット関数のバリエーションや他のフィット関数を使用できることが理解できよう。ダブルシグモイド式(1)は、a、b、c、d、e、f、gという7つのパラメータを有する。この式は、定数と勾配とダブルシグモイドの和に分解することができる。ダブルシグモイドそのものは、2つのシグモイドの積である。ダブルシグモイド式をPCRデータ・セットに適合させる方法の詳細は、パラメータの決定も含め、2006年2月6日にアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第11/349,550号として出願されたアメリカ合衆国特許出願公開第2007-0143385号に見いだすことができる。
【0035】
図5のデータに適合させて得られるダブルシグモイド曲線を図6に示してあり、そのダブルシグモイド表現は式(2)で表わされる。
【0036】
【化2】
【0037】
式(2)のダブルシグモイド表現をここで変換して原融解曲線の形式に戻さねばならない。ステップ250では、図6に対応する曲線およびダブルシグモイド表現と式(2)を、ステップ230においてシフトさせた負の量だけシフトさせる。得られるシフトさせた曲線とダブルシグモイド表現をそれぞれ図7と式(3)に示す。
【0038】
【化3】
【0039】
ステップ260では、図7に示した曲線を逆水平反転させる関数を決定して適用する。逆水平反転させるこの関数は、元の原融解曲線の最初と最後のx座標の和からxを差し引いて決定することができる。例えば元の原融解データが{{T1, F1}、{T2, F2}...{Tn-1, Fn-1}、{Tn, Fn}}であると仮定する。すると逆水平反転関数は(T1+Tn)-xになる。図7のデータに関しては、逆関数は、InvFlip(x)=125-xであることがわかる。
【0040】
再構成された元の融解関数と曲線を図8と式(4)に示す。
【0041】
【化4】
【0042】
式(4)は、ds3(x)=ds2(InvFlip(x))として決定される。ds3(x)のグラフに元の原融解データを重ねたものを図8に示してある。適合はほぼ完全であることがわかる。そのため原融解曲線とPCR曲線の間の関数の同等性が明確になる。
【0043】
ステップ270では、原融解曲線の関数形の負の微分係数を決定する。融解のピークの表現は、原融解データの負の微分係数を求めることによって明らかになる。原融解曲線と同等な解析表現を利用し、融解のピーク曲線の表現が式(5)として求められる。
【化5】
【0044】
式(5)のグラフ表示を図9に示す。
【0045】
ステップ280では、融解温度Tmおよび/またはピーク高を決定し、例えば表示やさらに処理するために送り返す。融解温度は、融解ピーク曲線の最大値に対応する温度として決定される。融解温度Tmは、曲線の最大値を求める標準的な解析法(例えばニュートン法、勾配法、グリッド探索法や、他の方法)によって見いだすことができる。この明細書の例では、最大温度はTm=59.64℃であることがわかり、ピーク高は0.655であることがわかった。
【0046】
この明細書に記載した方法は、多数の屈曲部が許されるPCR曲線の解析表現を利用することで、多数のピークを有する融解曲線に拡張することができる。あるいは手続きを再構成し、ダブルシグモイド表現を元の原融解曲線に直接適用することができる。すると融解-PCRアナロジーが不要になる。このような手続きの確立に関する詳細は、2006年2月6日にアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第11/349,550号として出願されたアメリカ合衆国特許出願公開第2007-0143385号に見いだすことができる。
【0047】
生データを
1)平均値
2)中央値
3)範囲(最大値−最小値)
のいずれかで割ることにより、得られたピーク高を機械とは独立にできることに注意されたい。
【0048】
機械が多数のチャネルを有する場合には、各チャネルをそのチャネル自身の平均値、中央値、範囲のいずれかで割ること、またはすべてのチャネルを1つのチャネルの平均値/中央値/範囲で割ることができる。例えばチャネル1とチャネル2をチャネル1の平均値/中央値/範囲で割ることができる。
【0049】
Tmの決定法は、コンピュータ・システムのプロセッサ上を走るコンピュータ・コードとして実現することができる。コードは、Tm決定法のさまざまな特徴とステップを実現するプロセッサを制御する命令を含んでいる。コードは、一般に、ハード・ディスク、RAM、携帯媒体(例えばCD、DVDなど)に記憶される。同様に、この方法は、PCR装置(例えばサーモサイクラー)や他の特別な装置(命令がメモリ・ユニットに記憶されていて、そのメモリ・ユニットに接続することによってその命令を実行するプロセッサ)で実現することができる。このような命令を含むコードは、ネットワーク接続を通じて、またはコード源への直接的な接続を通じて、またはよく知られた携帯媒体を利用して装置のメモリ・ユニットにダウンロードすることができる。
【0050】
当業者であれば、さまざまなプログラミング言語(C、C++、C#、フォートラン、ビジュアルベーシックなど)やアプリケーション(例えばデータの可視化と解析に役立つあらかじめパッケージ化されたルーチン、関数、手続きを提供するMathematica(登録商標))を用いて本発明によるTm決定法をコード化できることがわかるはずである。後者の別の一例は、MATLAB(登録商標)である。
【0051】
ある一実施態様では、本発明の方法は、従来からあるパーソナル・コンピュータ・システムを利用して実現できる。その例として、データ・セットを入力する入力装置(例えばキーボード、マウスなど);曲線のある領域中の興味ある特別な点を表示するディスプレイ装置(例えばモニタ);本発明の方法の各ステップを実施するのに必要な処理装置(例えばCPU);ネットワーク・インターフェイス(例えばモデム、データ・セットを記憶するデータ記憶装置、プロセッサ上を走るコンピュータ・コードなど)があるが、これだけに限定されるわけではない。さらに、本発明の方法は、例えば請求項の実施態様によるPCR法やPCRシステムで実現することもできる。
【実施例】
【0052】
本発明によるシステムの一例を図10と図11に示す。図10は、本発明の方法とシステムの実現に利用できるソフトウエア資源とハードウエア資源の間の関係を説明する一般的なブロック・ダイヤグラムを示している。図11に示したシステムは、サーモサイクラー装置の中に設置できるキネティックPCRモジュールと、コンピュータ・システムの一部であるインテリジェンス・モジュールを備えている。データ・セット(PCRデータ・セット)は、ネットワーク接続または直接的な接続を通じ、解析モジュールからインテリジェンス・モジュールへ、またはその逆へと転送される。データ・セットは、例えば図2と図3に示したフローチャートに従って処理することができる。これらのフローチャートは、例えば図10に示したフローチャートに従うコンピュータ・システムのハードウエアに記憶されたソフトウエアによってうまく実現できる。図10を参照すると、コンピュータ・システム(300)は、例えばPCR反応の間に得られた蛍光データを受け取る受信手段(310)と、そのデータを本発明の方法に従って処理する計算手段(320)と、その計算手段によって得られた結果に従ってそのデータの一部を置き換える適用手段(330)と、結果をコンピュータ・スクリーンに表示する表示手段(340)を備えることができる。図11は、サーモサイクラー装置とコンピュータ・システムの間のやり取りを示している。このシステムは、サーモサイクラー装置の中に設置できるキネティックPCR分析モジュールと、コンピュータ・システムの一部であるインテリジェンス・モジュールを備えている。データ・セット(PCRデータ・セット)は、ネットワーク接続または直接的な接続を通じ、解析モジュールからインテリジェンス・モジュールへ、またはその逆へと転送される。データ・セットは、インテリジェンス・モジュールの記憶装置に記憶されていてプロセッサ上を走るコンピュータ・コードを用いて図10に従って処理し、処理後、解析モジュールの記憶装置に送り返すことができる。解析モジュールでは、変更されたデータをディスプレイ装置に表示することができる。
【0053】
例として本発明を特別な実施態様に関して説明してきたが、本発明はここに開示した実施態様に限定されないことが理解されよう。それとは逆に、本発明には、当業者にとって明らかであろうさまざまな変更や似た構成が含まれるものとする。したがって添付の請求項の範囲は、そのような変更や似た構成をすべて含むよう、最も広く解釈されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータで実現されるDNAの融解温度Tmを決定するための方法であって、処理モジュールにおいて実現されるステップとして、
- データ値系列{(X1, Y1)、(X2, Y2)...(Xn-1, Yn-1)、(Xn, Yn)}(ここで、Xは温度(T)の値を表わし、Yは蛍光強度の値を表わす)として表わされる複数のデータ点が含まれている、DNAサンプルの融解曲線を表わすデータ・セットを受け取るステップと;
- 該データ・セットに適合する解析表現を決定するステップと;
- Xに関する解析表現の微分係数を求めることによって微分係数曲線を決定するステップと;
- 該微分係数曲線の最大微分係数(dY/dX)値に対応する値Xmaxを決定するステップと;
- 該値Xmax出力するステップを含んでおり、該値Xmaxが、前記DNAサンプルの融解温度Tmを表わしている方法。
【請求項2】
- 前記Tm値に対応する微分係数曲線のピーク高を決定するステップと;
- 該ピーク高を出力するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記解析表現が、
- 回帰法をダブルシグモイド関数に適用することによって前記データ・セットに適合する曲線の近似を計算し、該関数のパラメータを決定するステップによって決定される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記回帰法がレーベンバーグ-マルカート回帰法である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記解析表現が、
- 前記データ・セットに第1の変換を適用してデータ値系列{(X1, Y1)、(X2, Y2)...(Xn-1, Yn-1)、(Xn, Yn)}を、変換系列{(Xn, Y1)、(Xn-1, Y2)...(X2, Yn-1)、(X1, Yn)}にするステップと;
- 回帰法をダブルシグモイド関数に適用することによって前記変換系列に適合する曲線の近似を計算し、該ダブルシグモイド関数のパラメータを決定するステップ、
によって決定される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記回帰法がレーベンバーグ-マルカート回帰法である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ダブルシグモイド関数に、第2の変換を適用するステップをさらに含み、ここで第2の変換は第1の変換の逆である、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の変換が、(X1+Xn)−xの形の関数を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
計算の前に、
- 前記データ・セットまたは前記変換系列のX値を第1の量(Xtrans)だけシフトさせ、該変換系列が単位1の値から始まるようにするステップをさらに含む、請求項5〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
計算の後に、前記ダブルシグモイド関数のX値を−Xtransだけシフトさせるステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
微分係数曲線を決定するステップが、Xに関する解析表現の負の微分係数を求めるステップを含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
プロセッサを制御してDNAの融解温度Tmを決定するためのコードを収容する、コンピュータ可読媒体であって、該コードが、
- データ値系列{(X1, Y1)、(X2, Y2)...(Xn-1, Yn-1)、(Xn, Yn)}(ここで、Xは温度(T)の値を表わし、Yは蛍光強度の値を表わす)として表わされる複数のデータ点が含まれている、DNAサンプルの融解曲線を表わすデータ・セットを受け取る命令と;
- 該データ・セットに適合する解析表現を決定する命令と;
- Xに関する解析表現の微分係数を求めることによって微分係数曲線を決定する命令と;
- 該微分係数曲線の最大dY/dX値に対応する値Xmaxを決定する命令と;
- 該値Xmaxを出力する命令を含んでいて、該値Xmaxが、前記DNAサンプルの融解温度Tmを表わしている、媒体。
【請求項13】
- データ値系列{(X1, Y1)、(X2, Y2)...(Xn-1, Yn-1)、(Xn, Yn)}(ここでXは温度(T)の値を表わし、Yは蛍光強度の値を表わす)として表わされる複数のデータ点が含まれている、DNA融解曲線を表わす融解曲線データ・セットを生成させるキネティックPCR解析モジュールと;
- 前記融解曲線データ・セットを処理してTm値を決定することのできるインテリジェンス・モジュールとを備えていて、Tm値の決定が、
- 前記データ・セットに適合する解析表現を決定し;
- Xに関する解析表現の微分係数を求めることによって微分係数曲線を決定し;
- 該微分係数曲線の最大微分係数(dY/dX)値に対応する値Xmaxを決定し;
- 該値Xmaxを出力することによってなされ、該値Xmaxが、前記DNAサンプルの融解温度Tmを表わしている、キネティック・ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)システム。
【請求項14】
前記インテリジェンス・モジュールがさらに、
- 前記Tm値に対応する微分係数曲線のピーク高を決定し;
- 該ピーク高を出力することができる、請求項13に記載のキネティックPCRシステム。
【請求項15】
前記解析表現が、
- 回帰法をダブルシグモイド関数に適用することによって前記データ・セットに適合する曲線の近似を計算し、該関数のパラメータを決定することによって決定される、請求項13または14に記載のキネティックPCRシステム。
【請求項1】
コンピュータで実現されるDNAの融解温度Tmを決定するための方法であって、処理モジュールにおいて実現されるステップとして、
- データ値系列{(X1, Y1)、(X2, Y2)...(Xn-1, Yn-1)、(Xn, Yn)}(ここで、Xは温度(T)の値を表わし、Yは蛍光強度の値を表わす)として表わされる複数のデータ点が含まれている、DNAサンプルの融解曲線を表わすデータ・セットを受け取るステップと;
- 該データ・セットに適合する解析表現を決定するステップと;
- Xに関する解析表現の微分係数を求めることによって微分係数曲線を決定するステップと;
- 該微分係数曲線の最大微分係数(dY/dX)値に対応する値Xmaxを決定するステップと;
- 該値Xmax出力するステップを含んでおり、該値Xmaxが、前記DNAサンプルの融解温度Tmを表わしている方法。
【請求項2】
- 前記Tm値に対応する微分係数曲線のピーク高を決定するステップと;
- 該ピーク高を出力するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記解析表現が、
- 回帰法をダブルシグモイド関数に適用することによって前記データ・セットに適合する曲線の近似を計算し、該関数のパラメータを決定するステップによって決定される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記回帰法がレーベンバーグ-マルカート回帰法である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記解析表現が、
- 前記データ・セットに第1の変換を適用してデータ値系列{(X1, Y1)、(X2, Y2)...(Xn-1, Yn-1)、(Xn, Yn)}を、変換系列{(Xn, Y1)、(Xn-1, Y2)...(X2, Yn-1)、(X1, Yn)}にするステップと;
- 回帰法をダブルシグモイド関数に適用することによって前記変換系列に適合する曲線の近似を計算し、該ダブルシグモイド関数のパラメータを決定するステップ、
によって決定される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記回帰法がレーベンバーグ-マルカート回帰法である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ダブルシグモイド関数に、第2の変換を適用するステップをさらに含み、ここで第2の変換は第1の変換の逆である、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の変換が、(X1+Xn)−xの形の関数を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
計算の前に、
- 前記データ・セットまたは前記変換系列のX値を第1の量(Xtrans)だけシフトさせ、該変換系列が単位1の値から始まるようにするステップをさらに含む、請求項5〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
計算の後に、前記ダブルシグモイド関数のX値を−Xtransだけシフトさせるステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
微分係数曲線を決定するステップが、Xに関する解析表現の負の微分係数を求めるステップを含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
プロセッサを制御してDNAの融解温度Tmを決定するためのコードを収容する、コンピュータ可読媒体であって、該コードが、
- データ値系列{(X1, Y1)、(X2, Y2)...(Xn-1, Yn-1)、(Xn, Yn)}(ここで、Xは温度(T)の値を表わし、Yは蛍光強度の値を表わす)として表わされる複数のデータ点が含まれている、DNAサンプルの融解曲線を表わすデータ・セットを受け取る命令と;
- 該データ・セットに適合する解析表現を決定する命令と;
- Xに関する解析表現の微分係数を求めることによって微分係数曲線を決定する命令と;
- 該微分係数曲線の最大dY/dX値に対応する値Xmaxを決定する命令と;
- 該値Xmaxを出力する命令を含んでいて、該値Xmaxが、前記DNAサンプルの融解温度Tmを表わしている、媒体。
【請求項13】
- データ値系列{(X1, Y1)、(X2, Y2)...(Xn-1, Yn-1)、(Xn, Yn)}(ここでXは温度(T)の値を表わし、Yは蛍光強度の値を表わす)として表わされる複数のデータ点が含まれている、DNA融解曲線を表わす融解曲線データ・セットを生成させるキネティックPCR解析モジュールと;
- 前記融解曲線データ・セットを処理してTm値を決定することのできるインテリジェンス・モジュールとを備えていて、Tm値の決定が、
- 前記データ・セットに適合する解析表現を決定し;
- Xに関する解析表現の微分係数を求めることによって微分係数曲線を決定し;
- 該微分係数曲線の最大微分係数(dY/dX)値に対応する値Xmaxを決定し;
- 該値Xmaxを出力することによってなされ、該値Xmaxが、前記DNAサンプルの融解温度Tmを表わしている、キネティック・ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)システム。
【請求項14】
前記インテリジェンス・モジュールがさらに、
- 前記Tm値に対応する微分係数曲線のピーク高を決定し;
- 該ピーク高を出力することができる、請求項13に記載のキネティックPCRシステム。
【請求項15】
前記解析表現が、
- 回帰法をダブルシグモイド関数に適用することによって前記データ・セットに適合する曲線の近似を計算し、該関数のパラメータを決定することによって決定される、請求項13または14に記載のキネティックPCRシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−246540(P2010−246540A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−94354(P2010−94354)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94354(P2010−94354)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】
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