説明

PD−1アンタゴニストおよびその使用方法

T細胞の活性化を増強および/または延長するため(すなわち、T細胞の抗原特異的増殖を増大させるため、T細胞によるサイトカイン産生を増強するため、T細胞の分化およびエフェクター機能を刺激するため、および/またはT細胞の生存を促進するため)またはT細胞の消耗および/または無応答を克服するために使用するための組成物および方法が提供される。好適な組成物は、PD−1から阻害シグナルを誘発することなく内因性PD−1受容体と結合してそれを遮断するか、またはPD−1受容体リガンドと結合してそれを遮断し、それらをPD−1受容体と相互作用しないようにするPD−1受容体アンタゴニストが含まれる。それを必要とする被験体において免疫応答を増強するためにPD−1受容体アンタゴニストを使用する方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国仮出願第61/091,502号、同第61/091,694号、同第61/091,709号、および同第61/091,705号(総て2008年8月25日に出願)、2009年1月5日に出願された米国仮出願第61/142,548号、および2009年4月1日に出願された米国仮出願第61/165,652号の優先権と利益を主張するものであり、許容される場合には、引用することにより本明細書の開示の一部とされる。
【0002】
発明の分野
本発明は、T細胞の活性化を調節するための組成物および方法、特に、T細胞の活性化を増強するための組成物および方法に関する。
【0003】
背景技術
抗原特異的T細胞応答は、1)T細胞受容体(TCR)と、MHC(シグナル1)に関して提示される抗原ペプチドの結合、および2)種々の受容体/リガンド対の間の接触により送達される第二の抗原非依存性シグナル(シグナル2)の二つのシグナルにより媒介される。この「第二のシグナル」は、T細胞応答の種類(活性化か阻害か)ならびにその応答の強度および持続時間の決定に極めて重要であり、B7ファミリータンパク質などの共刺激分子からの正および負のシグナルの双方によって調節される。最も詳細に特性決定されているT細胞共刺激経路はB7−CD28であり、B7−1(CD80)およびB7−2(CD86)はそれぞれ活性化CD28受容体および阻害性CTLA−4(CD152)受容体と結合することができる。
【0004】
T細胞受容体を介したシグナル伝達に関して、CD28の結合はT細胞の抗原特異的増殖を増大させ、サイトカインの産生を増強し、分化およびエフェクター機能を活性化し、T細胞の生存を促進する(Lenshow, et al., Annu. Rev. Immunol., 14:233-258 (1996)、 Chambers and Allison, Curr. Opin. Immunol., 9:396-404 (1997)、およびRathmell and Thompson, Annu. Rev. Immunol., 17:781-828 (1999))。これに対して、CTLA−4を介したシグナル伝達は、T細胞の増殖、IL−2の産生および細胞周期の進行を阻害する負のシグナルを送達すると思われる(Krummel and Allison, J. Exp. Med., 183:2533-2540 (1996)、およびWalunas, et al., J. Exp. Med., 183:2541-2550 (1996))。B7ファミリーの他のメンバーとしては、PD−L1(Dong, et al., Nature Med., 5:1365-1369 (1999)、およびFreeman, et al., J. Exp. Med., 192:1-9 (2000))、PD−L2(Tseng, et al., J. Exp. Med., 193:839-846 (2001)、およびLatchman, et al., Nature Immunol., 2:261-268 (2001))、B7−H2(Wang, et al., Blood, 96:2808-2813 (2000)、 Swallow, et al., Immunity, 11:423-432 (1999)、およびYoshinaga, et al., Nature, 402:827-832 (l999))、B7−H3(Chapoval, et al., Nature Immunol., 2:269-274 (2001))およびB7−H4(Choi, et al., J. Immunol., 171:4650-4654 (2003)、 Sica, et al., Immunity, 18:849-861 (2003)、 Prasad, et al., Immunity, 18:863-873 (2003)、およびZang, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 100:10388-10392 (2003))。B7−H5はは比較的新しく見出されたB7ファミリーメンバーである。B7−H5はPCT公開番号WO2006/012232号公報に記載されている。機能的研究は、B7−H5がT細胞を活性化する働きをするT細胞活性の正のレギュレーターであることを示す。
【0005】
PD−L1およびPD−L2は、PD−1(programmed cell death-1)のリガンドであり、B7−H2はICOSのリガンドであり、B7−H3、B7−H4およびB7−H5は、当初はまだオーファンリガンドである(Dong, et al., Immunol. Res., 28:39-48 (2003))。
【0006】
ほとんどのB7ファミリー分子は、膜近位定常IgCドメインと、膜遠位IgVドメインとを有する細胞表面で発現される。これらのリガンドの受容体は共通の細胞外IgV様ドメインを有する。受容体−リガンド対の相互作用は、主としてリガンドと受容体のIgVドメインの残基により媒介される(Schwartz, et al., Nature Immunol., 3:427-434 (2002))。一般に、IgVドメインは、それぞれβ鎖の層を含む2枚のシートを有することが記載されている(Williams and Barclay, Annu. Rev. Immunol., 6:381-405 (1988))。CTLA−4の表および裏のシートはそれぞれA’GFC’C鎖およびABEDC”鎖を含む(Ostrov, et al., Science, 290:816-819 (2000))が、B7 IgVドメインの表および裏のシートはそれぞれAGFCC’C”鎖およびBED鎖からなる(Schwartz, et al., Nature, 410:604-608 (2001)、 Stamper, et al., Nature, 410:608-611 (2001)、およびIkemizu, et al., Immunity, 12:51-60 (2000))。結晶学的分析から、CTLA−4/B7結合境界は、MYPPPYモチーフからなる、CTLA−4由来のCDR3類似ループと、主としてG、F、C、C’およびC”鎖によって形成されるB7上の表面との相互作用により支配されることが明らかになった(Schwartz, et al., Nature, 410:604-608 (2001)、 およびStamper, et al., Nature, 410:608-611 (2001))。アミノ酸(ammo acid)ホモロジー、突然変異およびコンピューターモデリングからのデータは、このモチーフもCD28の主要なB7結合部位であるという概念に裏付けを与える(Bajorath, et al., J. Mol. Graph. Model., 15:135-139 (1997))。ICOSではMYPPPYモチーフは保存されていないが、研究では、配列FDPPPFを有し、同様の位置に存在する関連モチーフがICOSと、B7−H2との結合に主要な決定因子であることが示されている(Wand, et al., J. Exp. Med., 195:1033-1041 (2002))。
【0007】
PD−L2(B7−DCとも呼ばれる)は比較的新しいB7ファミリーメンバーであり、PD−L1(B7−H1とも呼ばれる)と約34%同一のアミノ酸配列を有する。ヒトおよびマウスPD−L2相同分子種は約70%のアミノ酸同一性を有する。PD−L1およびPD−L2転写物は種々の組織で見られ(Dong, et al., Nature Med., 5:1365-1369 (1999)、 Latchman, et al., Nature Immunol., 2:261-268 (2001)、およびTamura, Blood, 97:1809-1816 (2001))が、タンパク質の発現特性は全く異なっている。PD−L1タンパク質の発現は、マクロファージ様細胞以外の通常の組織には本質的に見られないが、種々の組織および細胞種で誘導することができる(Dong, et al., Nature Med., 5:1365-1369 (1999)、およびIshida, et al., Immunol. Lett., 84:57-62 (2000))。これに対して、PD−L2は樹状細胞および単球でのみ発現される。
【0008】
PD−L1およびPD−L2は双方とも、細胞質ドメインに免疫受容抑制性チロシンモチーフ(immunoreceptor tyrosine-based inhibitory motif)(ITIM)を有するCD28ファミリーの遠位メンバーである(Ishida, et al., EMBO J., 11:3887-3895 (1992))PD−1と結合する(Freeman, et al., J. Exp. Med., 192:1027-1034 (2000))ことが示されている。PD−1は胸腺細胞の一部で発現され、活性化後のT、Bおよび骨髄細胞でアップレギュレートされる(Agata, et al., Int. Immunol., 8:765-772 (1996))。PD−1は、主要組織適合性複合体(MHC)により提示されるペプチド抗原と結合した後にTCRの下流でシグナル伝達に拮抗する働きをする。PD−1のシグナル伝達には、TCR:MHC複合体と近接したリガンドとの結合を必要とすると思われ、これはT細胞と抗原提示細胞の間の免疫シナプスで生じる(Freeman, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A, 105:10275-10276 (2008))。そのリガンドによるPD−1結合の主要な結果は、TCRの下流でシグナル伝達を阻害することである。よって、PD−1を介したシグナル伝達は通常、T細胞に対して、T細胞増殖の低下またはT細胞活性におけるその他の低下をもたらす抑制または阻害シグナルを与える。
【0009】
PD−1−/−マウスの表現型は、PD−1がインビボにおける免疫応答の負のレギュレーターであるという直接的な証拠となる。PD−1の非存在下では、C57BL/6バックグラウンドを持つマウスは狼瘡様糸球体腎炎および進行性関節炎をゆっくり発症する(Nishimura, et al., Immunity, 11:141-151 (1999))。BALB/cバックグラウンドを持つPD−1−/−マウスは致死性の自己免疫拡張型心筋症を急速に発症する(Nishimura, et al., Science. 291:319-322 (2001))。しかしながら、実質的証拠は、PD−L2がT細胞応答を活性化させる働きをし得ることを示唆している。最適に満たないTCRシグナルの存在下では、PD−L2はインビトロにおいて増殖およびサイトカイン産生の増大を刺激する(Tseng, et al., J. Exp. Med. 193:839-846 (2001))。他方、インビトロ研究では、T細胞応答におけるPD−L2の負の調節的役割が示唆されている。これらの矛盾したように見えるデータは、PD−1以外の、T細胞上のPD−L2に対するさらなる受容体の発現により最も良く説明される。
【0010】
PD−L1はT細胞において阻害的シグナル伝達を生じる主要なPD−1リガンドである。PD−1のシグナル伝達はTCR:MHC複合体と近接したPD−1リガンド(一般にPD−L1)との結合を必要とすると思われ、受容体を遮断するか、またはそのリガンドを阻害することによって、その内因性リガンドとの相互作用からPD−1受容体を遮断し、従って、T細胞膜上でのPD−1およびTCRの同時結合を妨げるタンパク質、抗体、または小分子が意図される有用なPD−1アンタゴニストである。
【0011】
よって、本発明の一つの目的は、T細胞上のPD−1を介したシグナル伝達を阻害するための組成物および方法を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、PD−1と結合するが、PD−1のシグナル伝達を活性化しないPD−1アンタゴニストを提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、PD−1リガンドと結合し、該リガンドとPD−1の相互作用を阻害または低減するPD−1アンタゴニストを提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は、PD−1受容体を介したシグナル伝達に結びつくことなくPD−1受容体と結合し、PD−1のリガンドと結合し、かつ該リガンドと、PD−1受容体との相互作用を阻害または低減し、かつ場合により別の受容体経路を介してT細胞を活性化するPD−1アンタゴニストを提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は、PD−1のアンタゴニストポリペプチドをコードする核酸分子を発現するベクターを含む細胞を提供することである。
【0016】
なお、さらに本発明の目的は、T細胞の活性化を増強および/または延長する、あるいはT細胞の消耗および/またはT細胞の無応答を克服するための方法であって、それらを、PD−1を活性化させることなくPD−1と結合するか、またはPD−1のリガンドと結合し、そのリガンドとPD−1受容体の相互作用を阻害または低減するポリペプチドと接触させることによる方法を提供することである。
【0017】
なお、さらなる本発明の目的は、PD−1のアンタゴニストポリペプチド、それをコードする核酸、またはPD−1のアンタゴニストポリペプチドをコードする核酸でトランスフェクトもしくは形質導入された細胞を、それを必要とする哺乳類に投与するための方法を提供することである。
【0018】
なお、さらなる本発明の目的は、抗原またはワクチンに対する免疫応答を増強するための方法であって、PD−1のアンタゴニストポリペプチドを抗原またはワクチンと組み合わせて投与することによる方法を提供することである。
【発明の概要】
【0019】
T細胞の活性化を増強および/または延長する(すなわち、T細胞の抗原特異的増殖を増大させる、T細胞によるサイトカイン産生を増強する、T細胞の分化およびエフェクター機能を刺激する、かつ/またはT細胞の生存率を高める)、またはT細胞の消耗および/または無応答を克服するための組成物および方法が提供される。代表的な組成物としては、PD−1から阻害シグナルを誘発することなく、免疫細胞上の内因性PD−1と結合してそれを遮断するPD−1アンタゴニストが含まれる。他の実施形態においては、該組成物としては、PD−1リガンドと結合してそれを遮断し、それによりそれがPD−1と相互作用しないようにするPD−1アンタゴニストが含まれる。PD−1アンタゴニストを用いて、それを必要とする被験体において免疫応答を増強する方法が提供される。
【0020】
免疫細胞、好ましくは、T細胞上の内因性PD−1と結合してそれを遮断するPD−1アンタゴニストとしては、PD−L1およびPD−L2ポリペプチド、そのPD−1結合断片、PD−1抗体、融合タンパク質、ならびにその変異体が含まれる。これらのPD−1アンタゴニストは生理学的条件下でPD−1と結合し、T細胞の阻害を遮断する。
【0021】
天然PD−1リガンドと結合するPD−1アンタゴニストとしては、PD−1およびB7.1ポリペプチド、その断片、抗体、および融合タンパク質が含まれる。これらのPD−1アンタゴニストはB7−H1およびB7−DCと結合し、免疫細胞上でPD−1を介した阻害的シグナル伝達を誘発しないようにする。
【0022】
好ましい実施形態においては、B7−DCおよびB7−H1ポリペプチド、またはその変異体は他のポリペプチドと組み合わされて、PD−1を介したシグナル伝達を生じることなくPD−1受容体と結合することによってPD−1受容体と拮抗する融合タンパク質を形成する。一般に、該融合ポリペプチドは、(i)第二のポリペプチドと直接融合された、または(ii)場合により、第二のポリペプチドと融合されたリンカーペプチド配列と融合された、B7−DCもしくはB7−H1の全部もしくは一部、またはその変異体を有する第一の融合相手を有する。この融合相手の存在は、ポリペプチドの溶解度、親和性、および/または価数を変化させ得る。ある特定の実施形態においては、B7−DC、B7−H1、またはその変異体は、好ましくは、ヒト免疫グロブリンCγ1鎖のヒンジ、C2およびC3領域に相当するアミノ酸配列を有するIg重鎖定常領域の1以上のドメインと融合される。B7.1とPD−1を用いた同様の融合タンパク質も提供される。
【0023】
また、PD−1受容体アンタゴニストポリペプチドおよび融合タンパク質をコードする核酸、ならびにこのような核酸をベクター内に含む宿主細胞も提供される。
【0024】
また、開示されているPD−1受容体アンタゴニストを含む免疫原組成物も提供される。免疫原組成物は、抗原、PD−1受容体アンタゴニストの供給源、および場合によりアジュバントを含む。好適な抗原としては、ウイルス抗原、細菌抗原、寄生虫抗原、環境抗原、および腫瘍抗原が含まれる。
【0025】
PD−1受容体アンタゴニストを用いて、T細胞の阻害を低減する、および/またはT細胞の活性化を延長する、またはT細胞の消耗および/または無応答を克服する方法が提供される。PD−1受容体アンタゴニストおよびそれをコードする核酸の治療的使用が提供される。PD−1受容体アンタゴニスト組成物は癌に対する免疫応答を増強するために使用可能である。PD−1受容体アンタゴニスト組成物はまた、免疫抑制被験体の免疫応答を刺激するために使用可能である。ある特定の実施形態においては、PD−1受容体アンタゴニスト組成物はワクチンとともに投与される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1A−Bは、実施例1に記載されているように、PD−1結合ELISAにおける、B7−DC−IgのPD−1への結合を示すグラフである。
【図2】図2は、B7−DC−IgがCHO細胞を発現するPD−1と結合することを示すグラフである。
【図3】図3は、B7−DC−IgがPD−1との結合に関してPD−L1と競合することを示すグラフである。
【図4】図4は、P815腫瘍モデルに関する例示的投与計画の図である。
【図5】図5A−Cは、時間および処理の関数としてプロットされた腫瘍体積の線グラフである:A)ビヒクル対照、B)マウスIgG対照、およびC)ネズミB7−DC−Ig。
【図6】図6A−Cは、シクロホスファミド(CTX)と、B7−DC−Igとの組合せがマウスにおける確立されたCT26腫瘍(結腸癌腫)の根絶をもたらしたことを示す線グラフである。
【図7】図7は、CTXとB7−DC−Igの組合せがマウスにおける確立されたCT26腫瘍(結腸癌腫)を根絶し、CT26の再負荷から保護したことを示す。
【図8】図8は、CTXおよびB7−DC−Ig処置が腫瘍特異的メモリーCTLの生成をもたらしたことを示す。
【発明の具体的説明】
【0027】
I.定義
本明細書において「単離された」とは、その化合物が天然に存在する場合と異なる環境にある、例えば、ペプチドをそれが天然には見られない濃度まで濃縮することなどによってその天然の環境から分離された目的化合物(例えば、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドのいずれか)を表すことを意味する。「単離された」とは、目的化合物が実質的に富化された、かつ/または目的化合物が部分的または実質的に精製されたサンプル内にある化合物を含むことを意味する。
【0028】
本明細書において、「ポリペプチド」とは、修飾(例えば、リン酸化またはグリコシル化)とは無関係に任意の長さのアミノ酸鎖を意味する。
【0029】
本明細書において、「変異体」ポリペプチドは、対応する野生型ポリペプチドのアミノ酸配列に比べて少なくとも一つのアミノ酸配列の変更を含む。
【0030】
本明細書において、「アミノ酸配列の変更」とは、例えば、1以上のアミノ酸の置換、欠失、または挿入であり得る。
【0031】
本明細書において、「ベクター」とは、別のDNAセグメントが、その挿入されたセグメントの複製を生じるように挿入することができるプラスミド、ファージ、またはコスミドなどのレプリコンである。本明細書に記載のベクターは発現ベクターであり得る。
【0032】
本明細書において、「発現ベクター」とは、1以上の発現制御配列を含むベクターである。
【0033】
本明細書において、「発現制御配列」とは、別のDNA配列の転写および/または翻訳を制御および調節するDNA配列である。
【0034】
本明細書において、「機能的に連結される」とは、発現制御配列が目的のコード配列の発現を有効に制御するように遺伝構築物に組み込まれることを意味する。
【0035】
本明細書において、ポリペプチドの「断片」とは、全長タンパク質のより短いポリペプチドであるポリペプチドの任意のサブセットを意味する。一般に、断片はアミノ酸5個以上の長さである。
【0036】
本明細書において、「価数」とは、分子当たりに利用可能な結合部位の数を意味する。
【0037】
本明細書において、「保存的」アミノ酸置換とは、置換されたアミノ酸が類似の構造的または化学的特性を有する置換である。
【0038】
本明細書において、「非保存的」アミノ酸置換とは、置換されたアミノ酸の電荷、疎水性、または嵩が有意に変化するものである。
【0039】
本明細書において、「単離された核酸」とは、哺乳類ゲノムにおいてその核酸の一端または両端に通常隣接している核酸を含み、哺乳類ゲノムに存在する他の核酸分子から分離された核酸を意味する。
【0040】
本明細書において、核酸に関して「単離された」は任意の非天然核酸配列を含む(このような非天然配列は天然には見られず、天然ゲノムには直接連続する配列を持たないため)。
【0041】
本明細書において、「宿主細胞」とは、組換え発現ベクターが導入できる原核細胞および真核細胞を意味する。
【0042】
本明細書において、「形質転換させる」および「トランスフェクトする」とは、当該技術分野で知られているいくつかの技術によって核酸(例えばベクター)を細胞に導入することを包含する。
【0043】
本明細書において、「抗体」とは、完全分子ならびに抗原−結合部位を含むその断片の双方を含むことを意味する。これらには完全抗体のFc断片を欠いたFabおよびF(ab’)断片が含まれる。
【0044】
「個体」、「宿主」、「被験体」、および「患者」は、本明細書では互換的に用いられ、限定されるものではないが、ヒト、齧歯類(例えば、マウスおよびラット)、および他の実験動物を含む哺乳類を意味する。
【0045】
本明細書において、「有効量」または「治療上有効な量」とは、処置される病態の1以上の症状を処置、阻害、もしくは緩和するのに、またはそうでなければ、所望の薬理学的および/または生理学的効果を提供するのに十分な用量を意味する。厳密な用量は、被験体に依存する変数(例えば、齢、免疫系の健全性)、および投じられる処置などの様々な因子によって異なる。
【0046】
II.PD−1アンタゴニスト
PD−1とPD−L1の間の相互作用に干渉するのに好ましいPD−1アンタゴニスト化合物は、PD−L2(B7−DCとしても知られる)、PD−L2の細胞外ドメイン、PD−L2の融合タンパク質、およびPD−1を介した阻害的シグナル伝達を誘発することなくPD−1と結合してそれを遮断し、PD−L1と、PD−1との結合を妨げるその変異体である。さらなるPD−1アンタゴニストとしては、PD−1を介した阻害的シグナル伝達を誘発することなくPD−1と結合するPD−L1の断片、PD−1のリガンドと結合し、T細胞上の内因性PD−1受容体と結合するのを妨げるPD−1または可溶性その断片、ならびにPD−L1と結合し、PD−L1と、PD−1との結合を妨げることができるB7.1または可溶性その断片が含まれる。ある特定の実施形態においては、PD−1アンタゴニストは被験体におけるT細胞傷害性を高める。この多機能性PD−1アンタゴニストは被験体において強力な免疫応答を誘導し、T細胞の消耗およびT細胞の無応答を克服する助けをする。
【0047】
PD−1アンタゴニストは、PD−1のリガンドと結合し、それと相互作用するか、またはリガンドとPD−1受容体の結合を阻害するか、またはPD−1受容体を介したシグナル伝達に結びつくことなくPD−1受容体と直接結合する。好ましい実施形態においては、PD−1アンタゴニストは、PD−1と直接結合し、PD−1阻害的シグナル伝達を遮断する。他の実施形態においては、PD−1アンタゴニストはPD−1のリガンドと結合し、リガンドがPD−1を介した阻害的シグナル伝達を誘発するのを低減または阻害する。さらに別の実施形態においては、PD−1アンタゴニストは、PD−1受容体以外の受容体と結合することによりT細胞を活性化することができる。
【0048】
PD−1アンタゴニストは小分子アンタゴニストであり得る。「小分子」とは、100ダルトンを超え、約2,500ダルトン未満、好ましくは100〜2000ダルトン、より好ましくは約100〜約1250ダルトン、より好ましくは約100〜約1000ダルトン、より好ましくは約100〜約750ダルトン、より好ましくは約200〜約500ダルトンの分子量を有する小有機化合物を意味する。これらの小分子は多くの場合、環状炭素または複素環式構造および/または1以上の官能基で置換された芳香族または多環芳香族構造を含む。これらの小分子アンタゴニストは、PD−L1およびPD−L2などのPD−1のリガンドと結合し、そのリガンドがPD−1と相互作用しないようにすることにより、またはPD−1受容体を介したシグナル伝達を誘発することなく、PD−1受容体と直接結合することにより、PD−1受容体シグナル伝達を低減するか、またはそれと干渉する。
【0049】
例示的PD−1アンタゴニストとしては、限定されるものではないが、PD−L2、PD−L1、PD−1、またはB7−1ポリペプチド、およびその変異体、断片または融合タンパク質が挙げられる。さらなる実施形態としては、これらのタンパク質のいずれかと結合する抗体が挙げられる。
【0050】
A.PD−L2に基づくPD−1アンタゴニスト
1.PD−1と結合する、PD−L2に基づくPD−1アンタゴニスト
PD−1アンタゴニストは免疫細胞上のPD−1と結合し、阻害的PD−1のシグナル伝達を遮断する。PD−1のシグナル伝達は、PD−1リガンド(PD−L2またはPD−L1、一般に、PD−L1)が免疫シナプス内でTCR:MHC複合体と近接してPD−1と結合する必要があると思われる。よって、PD−1を介した阻害的シグナル伝達を遮断し、場合により、T細胞膜上でのPD−1とTCRの同時結合を妨げるタンパク質、抗体または小分子は有用なPD−1アンタゴニストである。
【0051】
代表的なポリペプチドアンタゴニストとしては、限定されるものではないが、PD−L2ポリペプチド、その断片、その融合タンパク質、およびその変異体が挙げられる。PD−1と結合し、PD−1を介した阻害的シグナル伝達を遮断するPD−L2ポリペプチドは好ましい実施形態の一つである。他の実施形態としては、PD−1の天然リガンドが結合しないように、かつシグナル伝達を誘発しないようにするPD−1アンタゴニストが含まれる。ある特定の実施形態においては、開示されたPD−L2ポリペプチドは、免疫シナプスに関してペプチド−MHC複合体によるTCRの同時結合が存在しないので、PD−1受容体を介したシグナル伝達が低減されているか、またはそれを誘発する能力がないと考えられる。PD−1受容体を介したシグナル伝達は、T細胞の活性化およびT細胞の増殖を減衰する負のシグナルを伝達するので、PD−1のシグナル伝達経路を阻害すれば、そうでなければ減衰される細胞を活性化させることができる。
【0052】
2.例示的PD−L2ポリペプチドPD−1アンタゴニスト
ネズミPD−L2ポリペプチドは、
【化1】

(配列番号1)または
【化2】

(配列番号2)
と少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有し得る。
【0053】
ヒトPD−L2ポリペプチドは、
【化3】

(配列番号3)または
【化4】

(配列番号4)
と少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有し得る。
【0054】
非ヒト霊長類(カニクイザル)PD−L2ポリペプチドは、
【化5】

(配列番号5)または
【化6】

(配列番号6)
と少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有し得る。
配列番号1、3および5はそれぞれシグナルペプチドを含む。
【0055】
B.PD−L1に基づくPD−1アンタゴニスト
1.PD−1受容体と結合するPD−L1に基づくPD−1アンタゴニスト
PD−1受容体と結合する他のPD−1アンタゴニストとしては、限定されるものではないが、PD−L1ポリペプチド、その断片、その融合タンパク質およびその変異体が挙げられる。これらのPD−1ポリペプチドアンタゴニストはPD−1受容体と結合してそれを遮断し、PD−1受容体を介した阻害的シグナル伝達が低減されているか、またはそれを誘発する能力がない。一つの実施形態においては、PD−L1ポリペプチドは、免疫シナプスに関してペプチド−MHC複合体によるTCRの同時結合が存在しないので、PD−1受容体を介したシグナル伝達が低減されているか、またはそれを誘発する能力がないと考えられる。PD−1受容体を介したシグナル伝達は、T細胞の活性化およびT細胞の増殖を減衰する負のシグナルを伝達するので、PD−L1ポリペプチドを用いてPD−1のシグナル伝達を阻害すれば、そうでなければ減衰される細胞を活性化することができる。
【0056】
2.例示的PD−L1ポリペプチドPD−1アンタゴニスト
ネズミPD−L1ポリペプチドは、
【化7】

(配列番号7)または
【化8】

(配列番号8)
と少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有し得る。
【0057】
ヒトPD−L1ポリペプチドは、
【化9】

(配列番号9)
【化10】

(配列番号10)
と少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有し得る。
配列番号7および9はそれぞれシグナルペプチドを含む。
【0058】
C.B7.1およびPD−1に基づくPD−1アンタゴニスト
1.PD−L1およびPD−L2と結合するB7.1およびPD−1に基づくPD−1アンタゴニスト
他の有用なポリペプチドとしては、PD−L1またはPD−L2などのPD−1リガンドと結合し、内因性PD−1受容体との結合を妨げ、それにより阻害的シグナル伝達を妨げることができるPD−1受容体タンパク質、またはその可溶性断片が含まれる。このような断片はまた、場合により天然リガンドとの結合を増大させるA99L突然変異などの突然変異を含む、PD−1タンパク質の可溶性ECD部分も含む。PD−L1はまた、タンパク質B7.1と結合することも示されている(Butte, et al., Immunity, 27(1): 111-122 (2007))。よって、PD−L1リガンドと結合し、内因性PD−1受容体との結合を妨げ、それにより阻害的シグナル伝達を妨げることができるB7.1またはその可溶性断片もまた有用である。
【0059】
2.例示的B7.1ポリペプチドPD−1アンタゴニスト
ネズミB7.1ポリペプチドは、
【化11】

(配列番号11)または
【化12】

(配列番号12)
と少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有し得る。
【0060】
ヒトB7.1ポリペプチドは、
【化13】

(配列番号13)または
【化14】

(配列番号14)
と少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有し得る。
配列番号11および13はそれぞれシグナルペプチドを含む。
【0061】
3.例示的PD−1ポリペプチドPD−1アンタゴニスト
ヒトPD−1ポリペプチドは、
【化15】

(配列番号15)
と少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有し得る。
【0062】
非ヒト霊長類(カニクイザル)PD−1ポリペプチドは、
【化16】

(配列番号16)
と少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有し得る。
配列番号15および16はそれぞれシグナルペプチドを含む。
【0063】
D.PD−1アンタゴニストポリペプチドの断片
PD−1アンタゴニストポリペプチドは、全長ポリペプチドであってもよいし、あるいは全長ポリペプチドの断片であってもよい。本明細書において、PD−1アンタゴニストポリペプチドの断片とは、全長タンパク質のより短いポリペプチドであるポリペプチドの任意のサブセットを意味する。
【0064】
有用な断片は、それらの天然リガンドと結合する能力を保持するものである。全長PD−1アンタゴニストポリペプチドの断片であるPD−1アンタゴニストポリペプチドは一般に、全長PD−1アンタゴニストポリペプチドに比べてその天然リガンドと結合する能力の少なくとも20パーセント、30パーセント、40パーセント、50パーセント、60パーセント、70パーセント、80パーセント、90パーセント、95パーセント、98パーセント、99パーセント、100パーセントを有する、またはさらには100パーセントを超える。
【0065】
例えば、PD−L2およびPD−L1の有用な断片は、PD−1と結合する能力を保持するものである。PD−L2およびPD−L1断片は一般に、全長PD−L2およびPD−L1に比べてPD−1と結合する能力の少なくとも20パーセント、30パーセント、40パーセント、50パーセント、60パーセント、70パーセント、80パーセント、90パーセント、95パーセント、98パーセント、99パーセント、100パーセントを有する、またはさらには100パーセントを超えるものである。
【0066】
PD−1アンタゴニストポリペプチドの断片は可溶性断片を含む。可溶性PD−1アンタゴニストポリペプチド断片は、産生細胞から放出、分泌またはそうでなければ抽出され得るPD−1アンタゴニストポリペプチドの断片である。PD−1アンタゴニストポリペプチドの可溶性断片は、該ポリペプチドの細胞外ドメインの一部または全部を含み、細胞内ドメインおよび/または膜貫通ドメインの一部または全部を欠く。一つの実施形態においては、PD−1アンタゴニストポリペプチド断片はPD−1アンタゴニストポリペプチドの全細胞外ドメインを含む。細胞外ドメインは膜貫通ドメイン由来の1、2、3、4、または5個のアミノ酸を含み得ると考えられる。あるいは、細胞外ドメインはC末端、N末端または双方から除去された1、2、3、4、または5個のアミノ酸を有し得る。
【0067】
一般に、PD−1アンタゴニストポリペプチドまたはその断片は、シグナル配列をコードする配列を含む核酸から発現される。このシグナル配列が一般に未熟なポリペプチドから切断されて、シグナル配列を欠く成熟ポリペプチドが生じる。PD−1アンタゴニストポリペプチドのこのシグナル配列は、そのポリペプチドの発現レベル、分泌、溶解度、または他の特性に影響を与えるために標準的な分子生物学的技術を用いて別のポリペプチドのシグナル配列で置換することができる。PD−1アンタゴニストポリペプチドシグナル配列を置換するために用いられるシグナル配列は、当該技術分野で知られているいずれのものであってもよい。
【0068】
1.PD−L2細胞外ドメイン
a.ヒトPD−L2細胞外ドメイン
一つの実施形態においては、PD−1アンタゴニストポリペプチドはヒトPD−L2またはその断片の細胞外ドメインを含む。PD−1アンタゴニストポリペプチドは、
【化17】

(配列番号17)
と少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列によりコードされ得る。
【0069】
別の実施形態においては、PD−1アンタゴニストポリペプチドは、ヒトアミノ酸配列:
【化18】

(配列番号18)
と少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有し得る。
【0070】
このシグナル配列は成熟タンパク質では除去されると考えられる。さらに、産生中に宿主からのタンパク質の分泌を増強するために他の生物由来のシグナルペプチドを使用することができると考えられる。配列番号19は、シグナル配列を含まない配列番号18のヒトアミノ酸配列を示す。
【化19】

(配列番号19)
【0071】
別の実施形態においては、PD−1アンタゴニストポリペプチドはヒトPD−L2のIgVドメインを含む。第一の融合相手は、
【化20】

(配列番号20)
と少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列によりコードされ得る。
【0072】
PD−1アンタゴニストポリペプチドは、ヒトアミノ酸配列:
【化21】

(配列番号21)(PD−L2Vとも呼ばれる)
と少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有し得る。
【0073】
b.非ヒト霊長類PD−L2細胞外ドメイン
一つの実施形態においては、PD−1アンタゴニストポリペプチドは非ヒト霊長類(カニクイザル)PD−L2の細胞外ドメインまたはその断片を含む。PD−1アンタゴニストポリペプチドは、
【化22】

(配列番号22)
と少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列によりコードされ得る。
【0074】
別の実施形態においては、PD−1アンタゴニストポリペプチドは、非ヒト霊長類アミノ酸配列:
【化23】

(配列番号23)
と少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有し得る。
【0075】
シグナル配列は成熟タンパク質では除去される。さらに、産生中に宿主からの融合タンパク質の分泌を増強するために他の生物由来のシグナルペプチドを使用することができる。配列番号24は、シグナル配列を含まない配列番号23の非ヒト霊長類アミノ酸配列を示す。
【化24】

(配列番号24)
【0076】
別の実施形態においては、PD−1アンタゴニストポリペプチドは非ヒト霊長類PD−L2のIgVドメインを含む。第一の融合相手は、
【化25】

(配列番号25)
と少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列によりコードされ得る。
【0077】
PD−1アンタゴニストポリペプチドは、非ヒト霊長類アミノ酸配列:
【化26】

(配列番号26)(PD−L2Vとも呼ばれる)
と少なくとも80%、85%、90%、95%、99%または100%の配列同一性を有し得る。
【0078】
d.ネズミPD−L2細胞外ドメイン
一つの実施形態においては、PD−1アンタゴニストポリペプチドはネズミPD−L2またはその断片の細胞外ドメインを含む。PD−1アンタゴニストポリペプチドは、
【化27】

(配列番号27)
と少なくとも80%、85%、90%、95%、99%または100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列によりコードされ得る。
【0079】
別の実施形態においては、PD−1アンタゴニストポリペプチドは、ネズミアミノ酸配列:
【化28】

(配列番号28)
と少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有し得る。
【0080】
シグナル配列は成熟タンパク質では除去される。さらに、産生中に宿主からのタンパク質の分泌を増強するために他の生物由来のシグナルペプチドを使用することができる。配列番号29は、シグナル配列を含まない配列番号28のネズミアミノ酸配列を示す。
【化29】

(配列番号29)
【0081】
別の実施形態においては、PD−1アンタゴニストポリペプチドはネズミPD−L2のIgVドメインを含む。第一の融合相手は、
【化30】

(配列番号30)
と少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列によりコードされ得る。
【0082】
PD−1アンタゴニストポリペプチドは、ネズミアミノ酸配列:
【化31】

(配列番号31)(PD−L2Vとも呼ばれる)
と少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有し得る。
【0083】
d.PD−L2細胞外ドメイン断片
PD−L2細胞外ドメインは、シグナルペプチドまたはPD−L2の推定膜貫通ドメイン由来の1以上のアミノ酸を含み得る。分泌の際に切断されるシグナルペプチドのアミノ酸の数は発現系および宿主によって異なり得る。さらに、PD−1と結合する能力を保持するC末端またはN末端から1以上のアミノ酸を欠くPD−L2細胞外ドメインの断片を使用することもできる。
【0084】
第一の融合相手として使用することができるネズミPD−L2の好適な断片の例としては、限定されるものではないが、以下のもの:
配列番号53の
【化32】

が挙げられる。
【0085】
ネズミPD−L2のさらなる好適な断片としては、限定されるものではないが、場合によりシグナルペプチドの1〜5個のアミノ酸がN末端に付加された、以下のもの:
配列番号1の
【化33】

が挙げられる。シグナルペプチドは、配列番号1内に含まれるシグナルペプチドを含め、本明細書に開示されているいずれのものであってもよく、または当該技術分野で知られているいずれのシグナルペプチドであってもよい。
【0086】
第一の融合相手として使用することができるヒトPD−L2の好適な断片の例としては、限定されるものではないが、以下のもの:
配列番号56の
【化34】

が挙げられる。
【0087】
ヒトPD−L2のさらなる好適な断片としては、限定されるものではないが、場合によりシグナルペプチドの1〜5個のアミノ酸がN末端に付加された、以下のもの:
配列番号3の
【化35】

が挙げられる。シグナルペプチドは、配列番号3内に含まれるシグナルペプチドを含め、本明細書に開示されているいずれのものであってもよく、または当該技術分野で知られているいずれのシグナルペプチドであってもよい。
【0088】
第一の融合相手として使用することができる非ヒト霊長類PD−L2の好適な断片の例としては、限定されるものではないが、以下のもの:
配列番号5の
【化36】

が挙げられる。
【0089】
非ヒト霊長類PD−L2のさらなる好適な断片としては、限定されるものではないが、場合によりシグナルペプチドの1〜5個のアミノ酸がN末端に付加された、以下のもの:
配列番号5の
【化37】

が挙げられる。シグナルペプチドは、配列番号5内に含まれるシグナルペプチドを含め、本明細書に開示されているいずれのものであってもよく、または当該技術分野で知られているいずれのシグナルペプチドであってもよい。
【0090】
PD−L2タンパク質は、また、配列番号3(ヒト全長)のアミノ酸20−121または配列番号23(細胞外ドメインまたはECD)のアミノ酸1−102のPD−1結合断片も含む。その特定の実施形態においては、PD−L2ポリペプチドまたはPD−1結合断片はまた、配列番号3の残基110−114にアミノ酸WDYKYを、または配列番号23の残基91−95にWDYKYを組み込んでいる。限定されない例としてが、このようなPD−1結合断片は、配列番号3のアミノ酸20−121の配列の少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも75、少なくとも80、少なくとも85、少なくとも90、少なくとも95、または少なくとも100個の連続するアミノ酸を含んでなり、このようなPD−1結合断片のそれぞれの好ましい実施形態は、部分断片として配列番号3の残基110−114に見られるアミノ酸WDYKY、または配列番号23の残基91−95に見られるWDYKYを含んでなる。
【0091】
2.PD−L1細胞外ドメイン
一つの実施形態においては、変異体PD−L1ポリペプチドは細胞外ドメインの全部または一部を含む。PD−L1の代表的な細胞外ドメインのアミノ酸配列は、
【化38】

(配列番号32)
と80%、85%、90%、95%、または99%の配列同一性を有し得る。
【0092】
PD−L1の膜貫通ドメインは配列番号9の239番のアミノ酸で始まる。PD−L1の好適な断片は、シグナルペプチド配列、例えば、配列番号9またはその変異体の1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10個の連続するアミノ酸、膜貫通ドメインの1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10個のアミノ酸、またはその組合せを含み得る。
【0093】
ネズミPD−L1の細胞外ドメインは以下のアミノ酸配列:
【化39】

(配列番号33)
を有する。
【0094】
ネズミPD−L1の膜貫通ドメインは配列番号7の240番のアミノ酸で始まる。ある特定の実施形態においては、PD−L1ポリペプチドは、シグナルペプチドの1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10個の連続するアミノ酸、膜貫通ドメインの1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10個の連続するアミノ酸、またはその組合せを有するネズミPD−L1の細胞外ドメインを含む。
【0095】
3.B7.1細胞外ドメイン
a.ネズミB7.1細胞外ドメイン
一つの実施形態においては、PD−1アンタゴニストポリペプチドは、ネズミB7.1またはその断片の細胞外ドメインを含む。PD−1アンタゴニストポリペプチドは、
【化40】

(配列番号34)
と少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列によりコードされ得る。
【0096】
別の実施形態においては、PD−1アンタゴニストポリペプチドは、ネズミアミノ酸配列:
【化41】

(配列番号35)
と少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有し得る。
【0097】
シグナル配列は成熟タンパク質では除去される。さらに、産生中に宿主からのタンパク質の分泌を増強するために、他の生物由来のシグナルペプチドを使用することができる。配列番号36は、シグナル配列を含まない配列番号35のネズミアミノ酸配列を示す。
【化42】

(配列番号36)
【0098】
別の実施形態においては、PD−1アンタゴニストポリペプチドはネズミB7.1のIgVドメインを含む。第一の融合相手は、
【化43】

(配列番号37)
と少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列によりコードされ得る。
【0099】
PD−1アンタゴニストポリペプチドは、ネズミアミノ酸配列:
【化44】

(配列番号38)(B7.1Vとも呼ばれる)
と少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有し得る。
【0100】
b.ヒトB7.1細胞外ドメイン
一つの実施形態においては、PD−1アンタゴニストポリペプチドはヒトB7.1またはその断片の細胞外ドメインを含む。PD−1アンタゴニストポリペプチドは、
【化45】

(配列番号39)
と少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列によりコードされ得る。
【0101】
別の実施形態においては、PD−1アンタゴニストポリペプチドは、ヒトアミノ酸配列:
【化46】

(配列番号40)
と少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有し得る。
【0102】
シグナル配列は成熟タンパク質では除去される。さらに、産生中に宿主からのタンパク質の分泌を増強するために、他の生物由来のシグナルペプチドを使用することができる。配列番号41は、シグナル配列を含まない配列番号40のヒトアミノ酸配列を示す。
【化47】

(配列番号41)
【0103】
別の実施形態においては、PD−1アンタゴニストポリペプチドはヒトB7.1のIgVドメインを含む。第一の融合相手は、
【化48】

(配列番号42)
と少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列によりコードされ得る。
【0104】
PD−1アンタゴニストポリペプチドは、ヒトアミノ酸配列:
【化49】

(配列番号43)(B7.1Vとも呼ばれる)
と少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有し得る。
【0105】
3.B7.1細胞外ドメイン断片
共刺激ポリペプチドドメインとして使用することができるネズミB7.1の好適な断片の例としては、限定されるものではないが、以下のもの:
配列番号11の
【化50】

が挙げられる。
【0106】
ネズミB7.1のさらなる好適な断片としては、限定されるものではないが、場合によりシグナルペプチドの1〜5個のアミノ酸がN末端に付加された、以下のもの:
配列番号11の
【化51】

が挙げられる。シグナルペプチドは、配列番号11内に含まれるシグナルペプチドを含め、本明細書に開示されているいずれのものであってもよく、または当該技術分野で知られているいずれのシグナルペプチドであってもよい。
【0107】
共刺激ポリペプチドドメインとして使用することができるヒトB7.1の好適な断片の例としては、限定されるものではないが、以下のもの:
配列番号13の
【化52】

が挙げられる。
【0108】
ヒトB7.1のさらなる好適な断片としては、限定されるものではないが、場合によりシグナルペプチドの1〜5個のアミノ酸がN末端に付加された、以下のもの:
配列番号13の
【化53】

が挙げられる。シグナルペプチドは、配列番号13内に含まれるシグナルペプチドを含め、本明細書に開示されているいずれのものであってもよく、または当該技術分野で知られているいずれのシグナルペプチドであってもよい。
【0109】
E.変異体
1.変異体PD−L2およびPD−L1 PD−1アンタゴニスト
さらなるPD−1アンタゴニストとしては、生理学的条件下でPD−1と結合する能力保持し、非突然変異PD−1に比べてPD−1に対する結合が増強されているか、またはPD−1に対する結合が低下されているが、PD−1受容体を介したシグナル伝達を促進することができないように突然変異誘発されたPD−L2およびPD−L1、ポリペプチドおよびその断片が含まれる。一実施形態は、PD−1を活性化し、T細胞へ阻害シグナルを伝達するポリペプチドの能力を非突然変異PD−L2またはPD−L1に比べて阻害または低減する1以上のアミノ酸置換、欠失、または挿入を含む単離されたPD−L2およびPD−L1ポリペプチドを提供する。該PD−L2およびPD−L1ポリペプチドはいずれの起源種のものであってもよい。一つの実施形態においては、PD−L2またはPD−L1ポリペプチドは哺乳類種に由来する。好ましい実施形態においては、PD−L2またはPD−L1ポリペプチドはヒトまたは非ヒト霊長類起源のものである。
【0110】
別の実施形態においては、変異型PD−L2またはPD−L1ポリペプチドは、PD−1に対して野生型または非変異型PD−L2またはPD−L1と同じ結合活性を有するが、非突然変異PD−L2またはPD−L1ポリペプチドに比べてPD−1受容体を介したシグナル伝達を刺激する能力を持たないか、または10%未満である。他の実施形態においては、該変異型PD−L2またはPD−L1ポリペプチドは野生型PD−L2またはPD−L1よりもPD−1に対して10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、またはそれを超える結合活性を有し、非突然変異PD−L2またはPD−L1ポリペプチドに比べてPD−1受容体を介したシグナル伝達を刺激する能力が50%、40%、30%、20%、または10%未満である。
【0111】
変異型PD−L2またはPD−L1ポリペプチドは、アミノ酸置換、欠失または挿入の任意の組合せを有し得る。一つの実施形態においては、単離されたPD−L2またはPD−L1変異型ポリペプチドは、それらのアミノ酸配列が野生型PD−L2またはPD−L1ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、85、90、95、97、98、99、99.5、または100%の同一性を有するように、ある整数のアミノ酸変化を有する。好ましい実施形態においては、B7−H1変異型ポリペプチドは、野生型ネズミ、非ヒト霊長類またはヒトPD−L2またはPD−L1ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、85、90、95、97、98、99、99.5、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0112】
配列同一性%は、コンピュータープログラムまたは直接的配列比較を用いて計算することができる。二つの配列間の同一性を決定するための好ましいコンピュータープログラム法としては、限定されるものではないが、GCGプログラムパッケージ、FASTA、BLASTP、およびTBLASTNが挙げられる(例えば、D. W. Mount, 2001, Bioinformatics: Sequence and Genome Analysis, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. 参照)。BLASTPおよびTBLASTNプログラムはNCBIおよび他のソースから公的に入手可能である。周知のSmith Watermanアルゴリズムも同一性を決定するために使用可能である。
【0113】
アミノ酸配列比較のためのパラメーター例としては以下のものが挙げられる:1)Needleman and Wunsch (J. Mol. Biol., 48:443-453 (1970))からのアルゴリズム、2)Hentikoff and Hentikoff (Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 89:10915-10919 (1992))からのBLOSSUM62比較マトリックス、3)ギャップペナルティー=12、および4)ギャップレングスペナルティー=4。これらのパラメーターを用いる有用なプログラムは、「ギャップ」プログラム(Genetics Computer Group, Madison, Wis.)として公的に入手可能である。上述のパラメーターはポリペプチド比較のためのデフォルトパラメーターである(エンドギャップに対するペナルティーは無い)。
【0114】
あるいは、ポリペプチド配列同一性は、下式:同一性%=(同一の残基の数)/(アミノ酸残基のアライメント長)*100を用いて計算することができる。この計算では、アライメント長は内部ギャップを含むが、末端ギャップは含まない。
【0115】
PD−L2またはPD−L1ポリペプチドのアミノ酸置換は「保存的」または「非保存的」であり得る。本明細書において、「保存的」アミノ酸置換は、置換されたアミノ酸が類似の構造的または化学的特性を有する置換であり、「非保存的」アミノ酸置換は、置換されたアミノ酸の電荷、疎水性または嵩が有意に変更されるものである。非保存的置換は、(a)例えば、シートまたはらせんコンフォメーションのような置換領域におけるペプチド主鎖の構造、(b)標的部位における分子の電荷または疎水性、または(c)側鎖の嵩の維持に対するそれらの効果がより有意に異なる。
【0116】
保存的アミノ酸置換の例としては、置換が以下の5群のうち一つの中でのものが挙げられる:1)小さな脂肪族、非極性またはやや極性の残基(Ala、Ser、Thr、Pro、Gly)、2)極性、負電荷を有する残基およびそれらのアミド(Asp、Asn、Glu、Gln)、極性、正電荷を有する残基(His、Arg、Lys)、大きな脂肪族、非極性残基(Met、Leu、Ile、Val、Cys)、および大きな芳香族残基(Phe、Tyr、Trp)。非保存的アミノ酸置換の例としては、1)親水性残基(例えば、セリルまたはトレオニル)が疎水性残基(例えば、ロイシル、イソロイシル、フェニルアラニル、バリルまたはアラニル)から(またはにより)置換される場合、2)システインまたはプロリンが他の残基から(またはにより)置換される場合、3)電気的に陽性の側鎖を有する残基(例えば、リシル、アルギニルまたはヒスチジル)が電気的に陰性の残基(例えば、グルタミルまたはアスパルチル)から(またはにより)置換される場合、または4)嵩高の側鎖を有する残基(例えば、フェニルアラニン)が側鎖を持たない残基(例えば、グリシン)から(またはにより)置換される場合が挙げられる。
【0117】
しかしながら、挙げられたアミノ酸位置における置換は、任意のアミノ酸またはアミノ酸類似体を用いて行うことができると理解される。例えば、挙げられた位置における置換は、任意の天然アミノ酸(例えば、アラニン、アスパラギン酸、アスパラギン、アルギニン、システイン、グリシン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、ロイシン、バリン、イソロイシン、リシン、メチオニン、プロリン、トレオニン、セリン、フェニルアラニン、トリプトファン、またはチロシン)を用いて行うことができる。
【0118】
本明細書に記載される置換はマウス、非ヒト霊長類およびヒトPD−L2またはPD−L1に関するものであるが、当業者ならば他種(例えば、ラット、ハムスター、モルモット、アレチネズミ、ウサギ、イヌ、ネコ、ウマ、ブタ、ヒツジ、またはウシ)由来の相当するポリペプチドにおいても等価の変更を容易に行うことができることを注記しておく。しかしながら、結合は種特異的な成分であることから、PD−1アンタゴニストをヒト投与する場合にはヒトを使用するのが好ましい。
【0119】
一つの実施形態においては、開示されている単離された変異型PD−L2またはPD−L1ポリペプチドはPD−1のアンタゴニストであり、PD−1を介したシグナル伝達を誘発することなくPD−1と結合してそれを遮断する。PD−1シグナル伝達によるT細胞の減衰を妨げることにより、より多くのT細胞の活性化に利用可能とする。T細胞阻害を妨げると、PD−1アンタゴニストと接触していないT細胞に比べて、T細胞応答が高まるか、T細胞の増殖が増大し、T細胞によるサイトカインの産生および/または分泌が高まるか、T細胞の分化およびエフェクター機能が刺激されるか、またはT細胞の生存が促進される。この相互作用から生じるT細胞応答は一般に、PD−1アンタゴニストポリペプチドの非存在下での応答よりも大きい。PD−1アンタゴニストポリペプチドの非存在下でのT細胞の応答は応答性がないか、またはPD−1アンタゴニストポリペプチドの存在下よりも有意に低いものであり得る。このT細胞の応答は、エフェクター(例えば、CTLまたは抗体産生B細胞)応答、1以上のエフェクター(例えば、CTLまたは抗体産生B細胞)応答を助けるヘルパー応答または抑制的応答であり得る。
【0120】
2分子間の結合親和性を測定する方法は技術分野でよく知られている。PD−1に対する変異型PD−L2またはPD−L1ポリペプチドの結合親和性を測定する方法としては、限定されるものではないが、蛍光活性化細胞選別(FACS)、表面プラズモン共鳴、蛍光異方性、アフィニティークロマトグラフィー、および親和性選択−質量分析が挙げられる。
【0121】
本明細書に開示される変異型ポリペプチドは全長ポリペプチドであってもよいし、あるいは全長ポリペプチドの断片であってもよい。好ましい断片は、PD−1と結合するのに有効な細胞外ドメインの全部または一部を含む。本明細書において、断片とは、全長タンパク質のより短いポリペプチドであるポリペプチドの任意のサブセットを意味する。
【0122】
2.変異型B7.1およびPD−1アンタゴニスト
さらなるPD−1アンタゴニストとしては、生理学的条件下でPD−L2および/またはPD−L1と結合する能力を保持し、PD−L2および/またはPD−L1対する結合が増強されるか、または低下されるように改変されているB7.1およびPD−1ポリペプチドおよびその断片が含まれる。B7.1およびPD−1ポリペプチドはいずれの起源種のものであってもよい。一つの実施形態においては、B7.1またはPD−1ポリペプチドは哺乳類種に由来する。好ましい実施形態においては、B7.1またはPD−1ポリペプチドはヒトまたは非ヒト霊長類起源のものである。
【0123】
変異型B7.1またはPD−1ポリペプチドはアミノ酸置換、欠失または挿入の任意の組合せを有し得る。一つの実施形態においては、単離されたB7.1またはPD−1変異型ポリペプチドは、それらのアミノ酸配列が野生型B7.1またはPD−1ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、85、90、95、97、98、99、99.5、または100%の同一性を有するように、ある整数のアミノ酸変化を有する。好ましい実施形態においては、B7.1またはPD−1変異型ポリペプチドは、野生型ネズミ、非ヒト霊長類またはヒトB7.1またはPD−1ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、85、90、95、97、98、99、99.5、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0124】
B7.1またはPD−1ポリペプチドにおけるアミノ酸置換は「保存的」または「非保存的」であり得る。保存的および非保存的置換は上記に定義されている。
【0125】
一つの実施形態においては、開示されている単離された変異型B7.1またはPD−1ポリペプチドは、PD−1のアンタゴニストであり、PD−L2および/またはPD−L1と結合し、それによりそれらの内因性PD−1との結合を遮断する。PD−1シグナル伝達によるT細胞の減衰を妨げることにより、より多くのT細胞を活性化に利用可能とする。T細胞阻害を妨げると、PD−1アンタゴニストと接触していないT細胞に比べて、T細胞応答が高まるか、T細胞の増殖が増大するか、T細胞によるサイトカインの産生および/または分泌が高まるか、T細胞の分化およびエフェクター機能が刺激されるか、またはT細胞の生存が促進される。この相互作用から生じるT細胞応答は一般に、PD−1アンタゴニストポリペプチドの非存在下での応答よりも大きい。PD−1アンタゴニストポリペプチドの非存在下でのT細胞の応答は応答性がないか、またはPD−1アンタゴニストポリペプチドの存在下よりも有意に低いものであり得る。このT細胞の応答は、エフェクター(例えば、CTLまたは抗体産生B細胞)応答、1以上のエフェクター(例えば、CTLまたは抗体産生B細胞)応答を助けるヘルパー応答または抑制的応答であり得る。
【0126】
変異体ポリペプチドは全長ポリペプチドであってもよいし、あるいは全長ポリペプチドの断片であってもよい。好ましい断片は、PD−L2および/またはPD−L1と結合するのに有効な細胞外ドメインの全部または一部を含む。本明細書において、断片とは、全長タンパク質のより短いポリペプチドであるポリペプチドの任意のサブセットを意味する。
【0127】
F.融合タンパク質
いくつかの実施形態においては、PD−1アンタゴニストは、第一のポリペプチドドメインと、その融合タンパク質を腫瘍細胞または腫瘍細胞関連新生血管系に標的化する抗原結合ドメインである第二の標的化ドメインとを含む融合タンパク質である。この融合タンパク質はT細胞受容体に結合することができるか、またはT細胞応答を増強することができ、あるいは好ましくはこの融合タンパク質は、例えばPD−1と競合的に結合することによって、T細胞と結合して、T細胞への阻害的シグナル伝達を遮断することができる。開示されている組成物は、天然阻害リガンドとPD−1との結合に干渉することにより、PD−1を介したシグナル伝達を有効に遮断する。好適な共刺激ポリペプチドとしては、阻害性T細胞シグナル伝達受容体に対する結合親和性が増強または低下されたPD−1などの変異型ポリペプチドおよび/またはその断片が含まれる。
【0128】
融合タンパク質はまた場合により、第一のポリペプチドドメインを抗原結合ドメインから分離するペプチドまたはポリペプチドリンカードメインを含んでもよい。
【0129】
本明細書に開示される融合タンパク質は式I:
N−R−R−R−C
(式中、「N」は融合タンパク質のN末端を表し、「C」は融合タンパク質のC末端を表し、「R」はPD−L2、PD−L1、B7.1またはPD−1ポリペプチドまたは抗原結合標的化ドメインであり、「R」はペプチド/ポリペプチドリンカードメインであり、「R」は標的化ドメインまたは抗原結合標的化ドメインであり、ここで、「R」が抗原結合標的化ドメインである場合には、「R」はポリペプチドドメインであり、「R」がPD−L2、PD−L1、B7.1またはPD−1ポリペプチドドメインである場合には、「R3」は抗原結合標的化ドメインである)
で表されるものである。好ましい実施形態においては、「R」はPD−L2、PD−L1、B7.1、またはPD−1ポリペプチドドメインであり、「R」は抗原結合標的化ドメインである。
【0130】
場合により、融合タンパク質はさらに、2以上の融合タンパク質を二量体化または多量体化する働きをするドメインを含む。該融合タンパク質を二量体化または多量体化する働きをするドメインは別個のドメインであってもよいし、あるいはまたその融合タンパク質の他のドメイン(PD−L2、PD−L1、B7.1もしくはPD−1ポリペプチドドメイン、抗原結合標的化ドメインまたはペプチド/ポリペプチドリンカードメイン)の一つに含まれていてもよい。
【0131】
融合タンパク質は二量体化または多量体化されていてもよい。二量体化または多量体化は二量体化または多量体化ドメインを介して2以上の融合タンパク質間で生じ得る。あるいは、融合タンパク質の二量体化または多量体化は化学的架橋によっても生じる。形成される二量体または多量体は、ホモ二量体/ホモ多量体またはヘテロ二量体/ヘテロ多量体であり得る。
【0132】
融合タンパク質のモジュール性およびそれらの種々の組合せでの二量体化または多量体化能は、腫瘍細胞の微小環境に対する免疫応答を増強する働きをする標的化分子に豊富な選択肢を与える。
【0133】
1.抗原結合標的化ドメイン
融合タンパク質はまた抗原結合標的化ドメインを含む。いくつかの実施形態においては、標的化ドメインは腫瘍細胞もしくは腫瘍関連新生血管系に特異的であるか、または正常組織に比べて腫瘍細胞もしくは腫瘍関連新生血管系でアップレギュレートされている抗原、リガンドまたは受容体と結合する。いくつかの実施形態においては、標的化ドメインは、感染性疾患を引き起こす病原体に応答したT細胞の活性化の調節に関与する免疫組織に特異的な抗原、リガンド、または受容体と結合する。
【0134】
腫瘍/腫瘍関連血管系標的化ドメイン
腫瘍特異的および腫瘍関連抗原を標的化するための抗原、リガンド、および受容体
一つの実施形態においては、融合タンパク質は、腫瘍細胞により発現される抗原と特異的に結合するドメインを含む。腫瘍により発現される抗原は腫瘍に特異的なものであっても、非腫瘍細胞に比べて腫瘍細胞でより高いレベルで発現されるものでもよい。腫瘍関連抗原として知られる血清学的に定義されたマーカーなど、癌細胞によって独自に発現されるか、または適当な対照に比べて悪性症状を有する被験体において著しく高いレベルで存在する(例えば、統計学的に有意に上昇している)抗原マーカーがある特定の実施形態での使用に意図される。
【0135】
腫瘍関連抗原としては、例えば、細胞癌遺伝子によりコードされている産物または発現の異常な原癌遺伝子によりコードされている産物(例えば、neu、ras、trk、およびkit遺伝子によりコードされている産物)または増殖因子受容体もしくは受容体様細胞表面分子(例えば、c−erb B遺伝子によりコードされている表面受容体)の突然変異型を含み得る。他の腫瘍関連抗原としては、形質転換事象に直接関与すると思われる分子または発癌性形質転換事象に直接関与するとは思われないが腫瘍細胞により発現される分子(例えば、癌胎児性抗原、CA−125、黒色腫(melonoma)関連抗原など)が含まれる(例えば、米国特許第6,699,475号公報、Jager, et al., Int. J. Cancer, 106:817-20 (2003)、 Kennedy, et al., Int. Rev. Immunol., 22:141-72 (2003)、 Scanlan, et al. Cancer Immun., 4:1 (2004)参照)。
【0136】
細胞腫瘍関連抗原をコードする遺伝子としては、細胞癌遺伝子および発現の異常な原癌遺伝子が含まれる。一般に、細胞癌遺伝子は細胞の形質転換に直接関連のある産物をコードし、このためこれらの抗原は免疫療法にとって特に好ましい標的である。例として、発癌性形質転換に関与する細胞表面分子をコードする腫瘍形成neu遺伝子がある。他の例としては、ras、kit、およびtrk遺伝子が挙げられる。これらの原癌遺伝子(突然変異誘発されて癌遺伝子を形成する正常な遺伝子)の産物は異常な発現を示す(例えば、過剰発現する)ことがあり、この異常な発現は細胞の形質転換に関連する可能性がある。よって、原癌遺伝子によりコードされている産物は標的化可能である。いくつかの癌遺伝子は腫瘍細胞表面で発現される増殖因子受容体分子または増殖因子受容体様分子をコードする。例として、c−erbB遺伝子によりコードされている細胞表面受容体がある。他の腫瘍関連抗原は悪性形質転換に直接関与するかもしれないし、関与しないかもしれない。しかしながら、これらの抗原はある特定の腫瘍細胞で発現され、従って、有効な標的となる。いくつかの例として、癌胎児性抗原(CEA)、CA125(卵巣癌に関連)、および黒色腫特異的抗原がある。
【0137】
卵巣癌および他の癌腫においては、例えば、腫瘍関連抗原は、血清または粘膜分泌物などの容易に得られる体液のサンプル中で検出可能である。このようなマーカーの一つが、血流中にも放出され、血清中で検出可能な癌腫関連抗原であるCA125である(例えば、Bast, et al., N. Eng. J. Med., 309:883 (1983)、 Lloyd, et al., Int. J. Canc., 71:842 (1997))。卵巣癌および他の癌腫の診断および/または予後プロファイルを得る努力において、血清および他の体液中のCA125レベルが、他のマーカー、例えば、癌胎児性抗原(CEA)、扁平上皮癌抗原(SCC)、組織ポリペプチド特異的抗原(TPS)、シアリルTNムチン(STN)、および胎盤アルカリ性ホスファターゼ(PLAP)のレベルとともに測定されている(例えば、Sarandakou, et al., Acta Oncol., 36:755 (1997)、 Sarandakou, et al., Eur. J. Gynaecol. Oncol., 19:73 (1998)、 Meier, et al., Anticancer Res., 17(4B):2945 (1997)、 Kudoh, et al., Gynecol. Obstet. Invest., 47:52 (1999))。また神経芽腫にも高い血清CA125が伴っている場合があり(例えば、Hirokawa, et al., Surg. Today, 28:349 (1998))、中でも高いCEAおよびSCCが直腸直腸癌に伴っている場合がある(Gebauer, et al., Anticancer Res., 17(4B):2939 (1997))。
【0138】
モノクローナル抗体K−1との反応性によって定義される腫瘍関連抗原メソテリンは、上皮卵巣腫瘍、子宮頸腫瘍、および食道腫瘍を含む扁平上皮癌の大多数ならびに中皮腫に存在する(Chang, et al., Cancer Res., 52:181 (1992)、 Chang, et al., Int. J. Cancer, 50:373 (1992)、 Chang, et al., Int. J. Cancer, 51:548 (1992)、 Chang, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93:136 (1996)、 Chowdhury, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95:669 (1998))。MAb K−1を用いた場合、メソテリンは細胞関連腫瘍マーカーとして唯一検出可能であり、卵巣癌患者由来の血清またはOVCAR−3細胞により馴化された培地中には可溶性形態で見られたことはない(Chang, et al., Int. J. Cancer, 50:373 (1992))。しかしながら、構造的に関連のあるヒトメソテリンポリペプチドにはまた、悪性腫瘍を有する患者由来の体液で天然可溶性抗原として検出可能な明瞭に異なるメソテリン関連抗原(MRA)ポリペプチドなどの腫瘍関連抗原ポリペプチドも含む(WO00/50900号公報参照)。
【0139】
腫瘍抗原は細胞表面分子を含み得る。既知の構造が既知で、既知のまたは記載された機能を有する腫瘍抗原としては、以下の細胞表面受容体:HER1(GenBank受託番号U48722)、HER2(Yoshino, et al., J. Immunol., 152:2393 (1994)、 Disis, et al., Canc. Res., 54:16 (1994)、 GenBank受託番号X03363およびM17730)、HER3(GenBank受託番号U29339およびM34309)、HER4(Plowman, et al., Nature, 366:473 (1993)、 GenBank受託番号L07868およびT64105)、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)(GenBank受託番号U48722およびKO3193)、血管内皮細胞増殖因子(GenBank番号M32977)、血管内皮細胞増殖因子受容体(GenBank受託番号AF022375、1680143、U48801およびX62568)、インスリン様増殖因子−I(GenBank受託番号X00173、X56774、X56773、X06043、欧州特許第GB2241703号公報)、インスリン様増殖因子−II(GenBank受託番号X03562、X00910、M17863およびM17862)、トランスフェリン受容体(Trowbridge and Omary, Proc. Nat. Acad. USA, 78:3039 (1981)、GenBank受託番号X01060およびM11507)、エストロゲン受容体(GenBank受託番号M38651、X03635、X99101、U47678およびM12674)、プロゲステロン受容体(GenBank受託番号X51730、X69068およびM15716)、卵胞刺激ホルモン受容体(FSH−R)(GenBank受託番号Z34260およびM65085)、レチノイン酸受容体(GenBank受託番号L12060、M60909、X77664、X57280、X07282およびX06538)、MUC−1(Barnes, et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 86:7159 (1989)、GenBank受託番号M65132およびM64928)NY−ESO−1(GenBank受託番号AJ003149およびU87459)、NA17−A(PCT公開番号WO96/40039号公報)、Melan−A/MART−1(Kawakami, et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 91:3515 (1994)、GenBank受託番号U06654およびU06452)、チロシナーゼ(Topalian, et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 91:9461 (1994)、GenBank受託番号M26729、Weber, et al., J. Clin. Invest, 102:1258 (1998))、Gp−100(Kawakami, et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 91:3515 (1994)、GenBank受託番号S73003、Adema, et al., J. Biol. Chem., 269:20126 (1994))、MAGE(van den Bruggen, et al., Science, 254:1643 (1991))、GenBank受託番号U93163、AF064589、U66083、D32077、D32076、D32075、U10694、U10693、U10691、U10690、U10689、U10688、U10687、U10686、U10685、L18877、U10340、U10339、L18920、U03735およびM77481)、BAGE(GenBank受託番号U19180、米国特許第5,683,886号公報および同第5,571,711号公報)、GAGE(GenBank受託番号AF055475、AF055474、AF055473、U19147、U19146、U19145、U19144、U19143およびU19142)、特に、SSX2遺伝子によりコードされているHOM−MEL−40抗原(GenBank受託番号X86175、U90842、U90841およびX86174)、癌胎児性抗原(CEA、Gold and Freedman, J. Exp. Med., 121:439 (1985)、GenBank受託番号M59710、M59255およびM29540)およびPyLT(GenBank受託番号J02289およびJ02038)を含む任意のCTAクラス受容体、p97(メラノトランスフェリン)(Brown, et al., J. Immunol., 127:539-46 (1981)、 Rose, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 83:1261-61 (1986))が含まれる。
【0140】
さらなる腫瘍関連抗原としては、前立腺表面抗原(PSA)(米国特許第6,677,157号公報、同第6,673,545号公報)、β−ヒト絨毛性性腺刺激ホルモンβ−HCG)(McManus, et al., Cancer Res., 36:3476-81 (1976)、 Yoshimura, et al., Cancer, 73:2745-52 (1994)、 Yamaguchi, et al., Br. J. Cancer, 60:382-84 (1989): Alfthan, et al., Cancer Res., 52:4628-33 (1992))、グリコシルトランスフェラーゼβ−1,4−N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(GalNAc)(Hoon, et al., Int. J. Cancer, 43:857-62 (1989)、 Ando, et al., Int. J. Cancer, 40:12-17 (1987)、 Tsuchida, et al., J. Natl. Cancer, 78:45-54 (1987)、 Tsuchida, et al., J. Natl. Cancer, 78:55-60 (1987))、NUC18(Lehmann, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:9891-95 (1989)、 Lehmann, et al., Cancer Res., 47:841-45 (1987))、黒色腫抗原gp75(Vijayasardahi, et al., J. Exp. Med., 171:1375-80 (1990)、GenBank受託番号X51455)、ヒトサイトケラチン8、高分子量黒色腫抗原(Natali, et al., Cancer, 59:55-63 (1987)、 ケラチン19(Datta, et al., J. Clin. Oncol., 12:475-82 (1994))が含まれる。
【0141】
注目される腫瘍抗原としては、悪性症状を有する被験体において免疫原性である、当該技術分野で「癌/精巣」(CT)抗原としてみなされている抗原が含まれる(Scanlan, et al., Cancer Immun., 4:1 (2004))。CT抗原としては、1以上のメンバーを含み、免疫応答を誘導し得る、限定されるものではないが、MAGEA(CT1)、BAGE(CT2)、MAGEB(CT3)、GAGE(CT4)、SSX(CT5)、NY−ESO−1(CT6)、MAGEC(CT7)、SYCP1(C8)、SPANXB1(CT11.2)、NA88(CT18)、CTAGE(CT21)、SPA17(CT22)、OY−TES−1(CT23)、CAGE(CT26)、HOM−TES−85(CT28)、HCA661(CT30)、NY−SAR−35(CT38)、FATE(CT43)、およびTPTE(CT44)を含む、少なくとも19の異なるファミリーの抗原が含まれる。
【0142】
腫瘍関連または腫瘍特異的抗原を含む標的化され得るさらなる腫瘍抗原としては、限定されるものではないが、α−アクチニン−4、Bcr−Abl融合タンパク質、Casp−8、β−カテニン、cdc27、cdk4、cdkn2a、coa−1、dek−can融合タンパク質、EF2、ETV6−AML1融合タンパク質、LDLR−フコシルトランスフェラーゼAS融合タンパク質、HLA−A2、HLA−A11、hsp70−2、KIAAO205、Mart2、Mum−1、2および3、ネオ−PAP、ミオシンクラスI、OS−9、pml−RARα融合タンパク質、PTPRK、K−ras、N−ras、トリオースリン酸イソメラーゼ、Bage−1、Gage 3、4、5、6、7、GnTV、Herv−K−mel、Lage−1、Mage−A1、2、3、4、6、10、12、Mage−C2、NA−88、NY−Eso−1/Lage−2、SP17、SSX−2およびTRP2−Int2、MelanA(MART−I)、gp100(Pmel 17)、チロシナーゼ、TRP−1、TRP−2、MAGE−1、MAGE−3、BAGE、GAGE−1、GAGE−2、p15(58)、CEA、RAGE、NY−ESO(LAGE)、SCP−1、Hom/Mel−40、PRAME、p53、H−Ras、HER−2/neu、BCR−ABL、E2A−PRL、H4−RET、IGH−IGK、MYL−RAR、エプスタイン・バーウイルス抗原、EBNA、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)抗原E6およびE7、TSP−180、MAGE−4、MAGE−5、MAGE−6、p185erbB2、p180erbB−3、c−met、nm−23H1、PSA、TAG−72−4、CA 19−9、CA 72−4、CAM 17.1、NuMa、K−ras、β−カテニン、CDK4、Mum−1、p16、TAGE、PSMA、PSCA、CT7、テロメラーゼ、43−9F、5T4、791Tgp72、α−フェトタンパク質、13HCG、BCA225、BTAA、CA 125、CA 15−3(CA 27.29\BCAA)、CA 195、CA 242、CA−50、CAM43、CD68\KP1、CO−029、FGF−5、G250、Ga733(EpCAM)、HTgp−175、M344、MA−50、MG7−Ag、MOV18、NB\70K、NY−CO−1、RCAS1、SDCCAG16、TA−90(Mac−2結合タンパク質\シクロフィリンC関連タンパク質)、TAAL6、TAG72、TLPおよびTPSが挙げられる。他の腫瘍関連および腫瘍特異的抗原は当業者に知られており、開示されている融合タンパク質による標的化に好適である。
【0143】
腫瘍新生血管系に関連する抗原
タンパク質治療薬は腫瘍浸透において有効でないため、腫瘍の処置に有効でない可能性がある。腫瘍関連新生血管系は、タンパク質治療薬が腫瘍へ接近し得る容易に接近可能な経路を提供する。別の実施形態においては、融合タンパク質は、腫瘍に関連する新生血管系により発現される抗原と特異的に結合するドメインを含む。
【0144】
該抗原は腫瘍の新生血管系に特異性があり得るか、または正常な血管系に比べて腫瘍の新生血管系で高いレベルで発現され得る。正常な血管に比べて腫瘍関連新生血管系により過剰発現される抗原の例としては、限定されるものではないが、VEGF/KDR、Tie2、血管細胞接着分子(VCAM)、エンドグリンおよびα5β3インテグリン/ビトロネクチンが挙げられる。正常な血管系に比べて腫瘍関連新生血管系により過剰発現される他の抗原は当業者に知られており、開示されている融合タンパク質による標的化に好適である。
【0145】
ケモカイン/ケモカイン受容体
別の実施形態においては、融合タンパク質はケモカインまたはケモカイン受容体と特異的に結合するドメインを含む。ケモカインは、それらのコグネイトGタンパク質共役型受容体(GPCR)と結合して細胞応答、通常には指向性移動または走化性を惹起する可溶性で小分子量(8〜14kDa)のタンパク質である。腫瘍細胞はケモカインを分泌し、ケモカインに応答し、これにより内皮細胞の補充および脈管形成により達成される増殖、免疫監視の破壊ならびにケモカイン放出が腫瘍増殖および遠位部位への転移を可能とするようにそれを歪曲する腫瘍白血球特性の策略を助長する。よって、ケモカインは腫瘍の進行に極めて重要である。
【0146】
ケモカインの二つのN末端システイン残基を保存している位置に基づき、それらは4つの群、すなわち、CXC、CC、CX3C、およびCケモカインに分類される。CXCケモカインは、CXC配列に先行するモチーフ「glu−leu−arg(ELRモチーフ)」の有無に基づいてさらにELR+およびELR−ケモカインに分類することができる。CXCケモカインは、好中球、リンパ球、内皮細胞、および上皮細胞上のそれらのコグネイトケモカイン受容体と結合してそれらを活性化する。CCケモカインは樹状細胞、リンパ球、マクロファージ、好酸球、ナチュラルキラー細胞のいくつかのサブセットに働くが、それらはネズミ好中球以外のCCケモカイン受容体を欠いているので好中球は刺激しない。およそ50のケモカインとわずか20のケモカイン受容体が存在するので、このリガンド/受容体相互作用系にはかなりの重複が存在する。
【0147】
腫瘍および間質細胞から合成されたケモカインは腫瘍および間質細胞上に存在するケモカイン受容体と結合する。腫瘍細胞の自己分泌ループおよび腫瘍と間質細胞の間のパラ分泌刺激ループは腫瘍の進行を助長する。特に、CXCR2、CXCR4、CCR2、およびCCR7は腫瘍形成および転移に主要な役割を果たす。CXCR2は脈管形成に極めて重要な役割を果たし、CCR2はマクロファージの腫瘍微小環境への動員に役割を果たす。リンパ節はCCR7に対するリガンドCCL21を有するので、CCR7は腫瘍細胞の前哨リンパ節への転移に関与する。CXCR4は主として多様な腫瘍の転移拡散に関与する。
【0148】
標的化ドメインの分子種
リガンドおよび受容体
一つの実施形態においては、腫瘍または腫瘍関連新生血管系標的化ドメインは、腫瘍細胞もしくは腫瘍関連新生血管系で特異的に発現される細胞表面抗原もしくは受容体と結合するか、または正常組織に比べて腫瘍細胞もしくは腫瘍関連新生血管系で過剰発現されるリガンドである。腫瘍はまた、腫瘍の増殖および発達に影響を及ぼす腫瘍微小環境中に多数のリガンドを分泌する。限定されるものではないが、増殖因子、サイトカイン、およびケモカイン(上記に示されるケモカインを含む)をはじめとする、腫瘍により分泌されるリガンドと結合する受容体は、開示されている融合タンパク質に用いるのに好適である。腫瘍により分泌されるリガンドは、分泌されたリガンドと結合する受容体の可溶性断片を用いて標的化され得る。可溶性受容体断片は産生細胞から放出、分泌またはそうでなければ抽出され得る断片ポリペプチドであり、全細胞外ドメインまたはその断片を含む。
【0149】
単鎖ポリペプチド抗体
別の実施形態においては、腫瘍または腫瘍関連新生血管系標的化ドメインは、腫瘍細胞もしくは腫瘍関連新生血管系で特異的に発現されるか、または正常組織に比べて腫瘍細胞もしくは腫瘍関連新生ポリペプチド血管系で過剰発現される細胞表面抗原または受容体と結合する単鎖抗体である。単鎖ドメイン抗体は共阻害性受容体アンタゴニストドメインに関して上記されている。
【0150】
Fcドメイン
別の実施形態においては、腫瘍または腫瘍関連新生血管系標的化ドメインは、腫瘍細胞または腫瘍関連新生血管系で発現されるFc受容体と結合する免疫グロブリン重鎖のFcドメインである。本明細書においてFc領域は、第一の定常領域免疫グロブリンドメインを除く抗体の定常領域を含むポリペプチドを含む。よって、FcはIgA、IgD、およびIgGの最後の二つの定常領域免疫グロブリンドメインとIgEおよびIgMの最後の三つの定常領域免疫グロブリンドメインを意味する。好ましい実施形態においては、Fcドメインはヒトまたはネズミ免疫グロブリンに由来する。より好ましい実施形態においては、Fcドメインは、C2およびC3領域を含むヒトIgG1またはネズミIgG2aに由来する。
【0151】
一つの実施形態においては、ヒト免疫グロブリンCγ1鎖のヒンジ、C2、およびC3域は、
【化54】

(配列番号44)
と少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有する核酸によりコードされる。
【0152】
配列番号44によりコードされるヒト免疫グロブリンCγ1鎖のヒンジ、C2およびC3領域は以下のアミノ酸配列:
【化55】

(配列番号45)
を有する。
【0153】
別の実施形態においては、ネズミ免疫グロブリンCγ2a鎖のヒンジ、C2、およびC3領域は、
【化56】

(配列番号46)
と少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有する核酸によりコードされる。
【0154】
配列番号46によりコードされるネズミ免疫グロブリンCγ2a鎖のヒンジ、C2、およびC3領域は以下のアミノ酸配列:
【化57】

(配列番号47)
を有する。
【0155】
一実施形態においては、Fcドメインは、腫瘍もしくは腫瘍関連新生血管系で特異的に発現されるか、または正常組織に比べて腫瘍もしくは腫瘍関連新生ポリペプチド血管系で過剰発現される特異的Fc受容体との結合を増強する1以上のアミノ酸挿入、欠失、または置換を含み得る。好適なアミノ酸置換は上記のように保存的および非保存的置換を含む。
【0156】
非ホジキンリンパ腫またはワルデンストロームマクログロブリン血症に対してリツキシマブ(キメラマウス/CD20に対するヒトIgG1モノクローナル抗体)で処置された患者における治療転帰は、ヒトIgG1のFcドメインに対して明瞭な内因的親和性を有するFcγ受容体の対立遺伝子変異体の個々の発現と相関していた。特に、Fc受容体CD16A(FcγRIIIA)を活性化する低親和性の高親和性対立遺伝子を有する患者はより高い奏功率を示し、非ホジキンリンパ腫の場合には、無進行生存を改善した。別の実施形態においては、Fcドメインは、低親和性阻害Fc受容体CD32B(FcγRIIB)との結合を低減し、かつ、低親和性活性化Fc受容体CD16A(FcγRIIIA)との野生型レベルの結合を保持するか、またはそれとの結合を増強する以上のアミノ酸挿入、欠失または置換を含み得る。
【0157】
好ましい実施形態においては、Fcドメインは、CD16Aとの結合を増強するアミノ酸挿入、欠失または置換を含む。CD16Aとの結合を増強し、CD32Bとの結合を低減するヒトIgG1のFcドメインの多数の置換が当該技術分野に知られており、Stavenhagen, et al., Cancer Res., 57(18):8882-90 (2007)に記載されている。CD32Bとの結合が低減され、かつ/またはCD16Aとの結合が増強されたヒトIgG1 Fcドメインの変異体の例は、F243L、R929P、Y300L、V305IまたはP296L置換を含む。これらのアミノ酸置換はヒトIgG1 Fcドメインにいずれの組合せで存在してもよい。一つの実施形態においては、ヒトIgG1 Fcドメイン変異体は、F243L、R929P、およびY300L置換を含む。別の実施形態においては、ヒトIgG1 Fcドメイン変異体はF243L、R929P、Y300L、V305I、およびP296L置換を含む。
【0158】
グリコホスファチジルイノシトールアンカードメイン
別の実施形態においては、腫瘍または腫瘍関連新生血管系標的化ドメインは、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーの翻訳後付加のためのシグナルを与えるポリペプチドである。GPIアンカーは、多くの真核生物のタンパク質のC末端に翻訳後に付加される糖脂質構造である。この修飾は細胞膜の外片に付着タンパク質をしっかり固定する。GPIアンカーは、T細胞に対する提示のために細胞表面にT細胞受容体結合ドメインを付着させるのに使用することができる。この実施形態においては、GPIアンカードメインはT細胞受容体結合ドメインに対してC末端にある。
【0159】
一つの実施形態においては、GPIアンカードメインは、ポリペプチドが真核生物系で発現される場合にGPIアンカーの翻訳後付加のためにシグナルを伝達するポリペプチドである。アンカーの付加はGPIアンカーシグナル配列により決定され、アンカー付加の部位における小アミノ酸のセット(ω部位)とそれに続く親水性スペーサーからなり、疎水性ストレッチ(hydrophobic stretch)で終わる(Low, FASEB J., 3:1600-1608 (1989))。このシグナル配列の切断は、保存された中央成分(Low, FASEB J., 3:1600-1608 (1989))を有するが、可変の末梢部分(Homans et al., Nature, 333:269-272 (1988))を有するアンカーを付加する前にERで起こる。GPIアンカータンパク質のC末端は、ホスホエタノールアミン橋を介して保存性の高いコアグリカン、マンノース(α1−2)マンノース(α1−6)マンノース(α1−4)グルコサミン(α1−6)ミオイノシトールに連結されている。リン脂質テールはGPIアンカーを細胞膜に付着させる。このグリカンコアは、ホスホエタノールアミン基、マンノース、ガラクトース、シアル酸、または他の糖などの側鎖で様々に修飾することができる。第一のマンノース残基に付着されている最も一般的な側鎖は別のマンノースである。グリカンコアの第三のマンノースに付着されているN−アセチルガラクトサミン含有多糖などの複合側鎖が哺乳類アンカー構造に見られる。コアグルコサミンの修飾はまれである。タンパク質および起源種によって、ホスホイノシトール環の脂質アンカーは、ジアシルグリセロール、アルキルアシルグリセロール、またはセラミドである。これらの脂質種は炭素14〜28個の範囲で長さが異なり、飽和であっても不飽和であってもよい。多くのGPIアンカーはまた、イノシトール環の2−ヒドロキシルにパルミチン酸などの付加的脂肪酸を含む。この余分な脂肪酸により、GPIアンカーはPI−PLCによる切断に耐性となる。
【0160】
GPIアンカーは、GPI翻訳後修飾を行うことができる真核生物系でGPIアンカードメインを含む融合タンパク質を発現させることよって達成することができる。GPIアンカードメインは腫瘍または腫瘍血管系標的化ドメインとして使用することもできるし、あるいはすでに別個の腫瘍または腫瘍血管系標的化ドメインを含む融合タンパク質に追加することもできる。
【0161】
別の実施形態においては、GPIアンカー部分は、インビトロ酵素的または化学的工程を介して、単離されたT細胞受容体結合ドメインに直接付加される。この実施形態においては、GPIアンカーは、GPIアンカードメインを必要とすることなくポリペプチドに付加することができる。よって、GPIアンカー部分は、T細胞受容体結合ドメインおよび腫瘍または腫瘍血管系標的化ドメインを有する、本明細書に記載の融合タンパク質に付加することができる。あるいは、GPIアンカーは、腫瘍または腫瘍血管系標的化ドメインをコードする融合相手を必要とすることなく、T細胞受容体結合ドメインポリペプチドに直接付加することができる。
【0162】
2.ペプチドまたはポリペプチドリンカードメイン
本明細書に開示される融合タンパク質は場合により、共刺激ポリペプチドドメインを抗原結合標的化ドメインから分離するペプチドまたはポリペプチドリンカードメインを含む。
【0163】
抗体のヒンジ領域
一つの実施形態においては、リンカードメインは免疫グロブリンのヒンジ領域を含む。好ましい実施形態においては、ヒンジ領域はヒト免疫グロブリンに由来する。ヒンジが由来し得る好適なヒト免疫グロブリンとしては、IgG、IgD、およびIgAが挙げられる。好ましい実施形態においては、ヒンジ領域はヒトIgGに由来する。
【0164】
別の実施形態においては、リンカードメインは、上記のような免疫グロブリンのヒンジ領域を含み、さらに1以上の付加的な免疫グロブリンドメインを含む。一実施形態においては、付加的ドメインは免疫グロブリンのFcドメインを含む。本明細書においてFc領域は、第一の定常領域免疫グロブリンドメインを除く抗体の定常領域を含むポリペプチドを含む。よって、FcIgA、IgD、およびIgGの最後の二つの定常領域免疫グロブリンドメインとIgEおよびIgMの最後の三つの定常領域免疫グロブリンドメインを意味する。好ましい実施形態においては、Fcドメインはヒト免疫グロブリンに由来する。より好ましい実施形態においては、FcドメインはC2およびC3領域を含むヒトIgGに由来する。
【0165】
別の実施形態においては、リンカードメインは免疫グロブリンのヒンジ領域と、免疫グロブリン重鎖のC1ドメインまたは免疫グロブリン軽鎖のCドメインのいずれかを含む。好ましい実施形態においては、C1またはCドメインはヒト免疫グロブリンに由来する。Cドメインはκ軽鎖またはl軽鎖のいずれかに由来するものであり得る。より好ましい実施形態においては、C1またはCドメインはヒトIgGに由来する。
【0166】
免疫グロブリンヒンジ領域および他のドメインのアミノ酸配列は当該技術分野でよく知られている。
【0167】
他のペプチド/ポリペプチドリンカードメイン
他の好適なペプチド/ポリペプチドリンカードメインは、天然または非天然ペプチドまたはポリペプチドを含む。ペプチドリンカー配列は少なくともアミノ酸2個の長さである。好ましくは、ペプチドまたはポリペプチドドメインは柔軟なペプチドまたはポリペプチドである。本明細書において「柔軟なリンカー」とは、柔軟なリンカーの非存在下で二つの連結されたポリペプチドが持つものよりも、それにより連結された二つのポリペプチドの回転自由度を高めるペプチド結合により連結された2以上のアミノ酸残基を含むペプチドまたはポリペプチドを意味する。このような回転自由度は、柔軟なリンカーによって各接近標的抗原に連結された2以上の抗原結合部位をより有効とする。柔軟なペプチド/ポリペプチドの例としては、限定されるものではないが、アミノ酸配列Gly−Ser、Gly−Ser−Gly−Ser(配列番号48)、Ala−Ser、Gly−Gly−Gly−Ser(配列番号49)、(Gly4−Ser)3(配列番号50)、および(Gly4−Ser)4(配列番号51)が挙げられる。さらなる柔軟なペプチド/ポリペプチド配列も当該技術分野でよく知られている。
【0168】
3.二量体化および多量体化ドメイン
本明細書に開示される融合タンパク質は場合により、2以上の融合タンパク質を二量体化または多量体化する働きをする二量体化または多量体化ドメインを含む。融合タンパク質を二量体化または多量体化する働きをするドメインは分離ドメインであってもよいし、あるいはまた融合タンパク質の他のドメイン(T細胞共刺激/共阻害受容体結合ドメイン、腫瘍/腫瘍新生血管系抗原結合ドメインまたはペプチド/ポリペプチドリンカードメイン)の一つの中に含まれてもよい。
【0169】
二量体化ドメイン
「二量体化ドメイン」とは、少なくとも二つのアミノ酸残基または少なくとも二つのペプチドもしくはポリペプチド(同じまたは異なるアミノ酸配列を持ち得る)の会合によって形成される。これらのペプチドまたはポリペプチドは共有結合的会合および/または非共有結合的会合によって互いに相互作用し得る。好ましい二量体化ドメインは、融合タンパク質相手上のシステインと分子間ジスルフィド結合を形成することができる少なくとも一つのシステインを含む。二量体化ドメインは、融合タンパク質相手の間でジスルフィド結合が形成できるように1以上のシステイン残基を含み得る。一つの実施形態においては、二量体化ドメインは一つ、二つ、または3つ〜約10のシステイン残基を含む。好ましい実施形態においては、二量体化ドメインは免疫グロブリンのヒンジ領域である。この特定の実施形態においては、二量体化ドメインは融合タンパク質のリンカーペプチド/ポリペプチド内に含まれる。
【0170】
さらなる二量体化ドメインの例も当該技術分野で知られており、限定されるものではないが、コイルドコイル、アシッドパッチ(acid patches)、ジンクフィンガー、カルシウムハンド、C1−C対、米国特許第5,821,333号公報に記載されている操作された「こぶ(knob)」および/または「突起(protruberance)」を有する「境界」、ロイシンジッパー(例えば、junおよび/またはfos由来)(米国特許第5,932,448号公報)、SH2(srcホモロジー2)、SH3(srcホモロジー3)(Vidal, et al., Biochemistry, 43, 7336-44 ((2004))、ホスホチロシン結合(PTB)(Zhou, et al., Nature, 378:584-592 (1995))、WW(Sudol, Prog. Biochys. Mol. Bio., 65:113-132 (1996))、PDZ(Kim, et al., Nature, 378: 85-88 (1995)、 Komau, et al., Science, 269:1737-1740 (1995))14−3−3、WD40(Hu, et al., J Biol Chem., 273, 33489-33494 (1998))EH、Lim、イソロイシンジッパー、受容体二量体対(例えば、インターロイキン−8受容体(IL−8R)、ならびにインテグリンヘテロ二量体、例えば、LFA−1およびGPIIIb/IIIaまたはその二量体化領域、二量体リガンドポリペプチド(例えば、神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン−3(NT−3)、インターロイキン−8(IL−8)、血管内皮増殖因子(VEGF)、VEGF−C、VEGF−D、PDGFメンバー、および脳由来神経栄養因子(BDNF)(Arakawa, et al., J. Biol. Chem., 269(45): 27833-27839 (1994)およびRadziejewski, et al., Biochem., 32(48): 1350 (1993))が挙げられ、親和性が変更されたこれらのドメインの変異体であってもよい。これらのポリペプチド対は、酵母二つのハイブリッドスクリーンを含む当該技術分野で知られている方法によって同定することができる。酵母ツーハイブリッドスクリーンは米国特許第5,283,173号公報および同第6,562,576号公報に記載されており、ともに引用することにより本明細書の開示の一部とされる。相互作用ドメイン対の間の親和性はKatahira, et al., J. Biol. Chem., 277, 9242-9246 (2002)の記載を含む、当該技術分野で知られている方法を用いて決定することができる。あるいは、ペプチド配列のライブラリーを、例えばWO01/00814号公報に記載されている方法を用いてヘテロ二量体形成に関してスクリーニングすることもできる。タンパク質−タンパク質相互作用に関する有用な方法はまた米国特許第6,790,624号公報にも記載されている。
【0171】
多量体化ドメイン
「多量体化ドメイン」とは、三つ以上のペプチドまたはポリペプチドを共有結合的会合および/または非共有結合的会合によって互いに相互作用させるドメインである。好適な多量体化ドメインとしては、限定されるものではないが、コイルドコイルドメインが挙げられる。コイルドコイルは、通常、7つのアミノ酸(ヘプタッドリピート)または11のアミノ酸(ウンデカドリピート)の配列に、3および4残基の間隔を置いた主として疎水性の残基の連続パターンを有し、組み立てられて(折りたたまれて)多量性のらせん束を形成するペプチド配列を意味する。3および4残基おきのいくつかの不規則な分布を含む配列を有するコイルドコイルも意図される。疎水性残基は特に、疎水性アミノ酸Val、Ile、Leu、Met、Tyr、Phe、およびTrpである。主として疎水性とは、残基の少なくとも50%が記載の疎水性アミノ酸から選択されるべきであることを意味する。
【0172】
コイルドコイルドメインはラミニンに由来してもよい。細胞外間隙で、ヘテロ三量体コイルドコイルタンパク質ラミニンは基底膜の形成に重要な役割を果たす。明らかに、多機能オリゴマー構造はラミニン機能に必要である。コイルドコイルドメインはまた、三つ(TSP−1およびTSP−2)または五つ(TSP−3、TSP−4、およびTSP−5)の鎖が接続されたトロンボスポンジンまたは平行5鎖コイルドコイル(Malashkevich ,et al., Science, 274: 761-765 (1996))へと折りたたまれるCOMP(COMPcc)(Guo, et at., EMBO J., 1998, 17: 5265-5272)に由来してもよい。
【0173】
他のタンパク質に由来するさらなるコイルドコイルドメインおよびポリペプチドの多量体化を媒介する他のドメインも当該技術分野で知られており、開示されている融合タンパク質で用いるのに好適である。
【0174】
4.融合タンパク質例
B7−DC
代表的なネズミPD−L2融合タンパク質は、
【化58】

(配列番号52)
と少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有する核酸によりコードされる。
【0175】
配列番号52によりコードされているネズミPD−L2融合タンパク質は以下のアミノ酸配列:
【化59】

(配列番号53)
を有する。
【0176】
シグナル配列を含まない配列番号53のネズミPD−L2融合タンパク質のアミノ酸配列は、
【化60】

(配列番号54)
である。
【0177】
代表的なヒトPD−L2融合タンパク質は、
【化61】

(配列番号55)
と少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有する核酸によりコードされる。
【0178】
配列番号55によりコードされているヒトPD−L2融合タンパク質は以下のアミノ酸配列:
【化62】

(配列番号56)
を有する。
【0179】
シグナル配列を含まない配列番号56のヒトPD−L2融合タンパク質のアミノ酸配列は
【化63】

(配列番号57)
である。
【0180】
G.PD−1受容体アンタゴニストをコードする単離された核酸分子
PD−1アンタゴニストポリペプチド、その変異体およびその融合タンパク質をコードする単離された核酸配列が開示される。本明細書において「単離された核酸」とは、哺乳類ゲノムにおいてその核酸の一端または両端に通常隣接している核酸をはじめ、哺乳類ゲノムに存在する他の核酸分子から分離された核酸を意味する。
【0181】
単離された核酸は、例えば、天然ゲノムにおいてそのDNA分子にすぐ隣接して通常見られる核酸配列の一つが除去されているか、または存在しない限り、DNA分子であってもよい。よって、単離された核酸としては、限定されるものではないが、他の配列とは独立した分離分子として存在するDNA分子(例えば、化学的に合成された核酸またはcDNAまたはPCRまたは制限エンドヌクレアーゼ処理によって生成されるゲノムDNA断片)ならびにベクター、自律的に複製するプラスミド、ウイルス(例えば、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、またはヘルペスウイルス)に、または原核生物または真核生物のゲノムDNAに組み込まれた組換えDNAが挙げられる。さらに、単離された核酸としては、ハイブリッドまたは融合核酸の一部である組換えDNA分子などの操作核酸が挙げられる。例えば、cDNAライブラリーもしくはゲノムライブラリーの中の数百から数百万の他の核酸に存在する核酸、またはゲノムDNA制限消化を含むゲルスライスは単離された核酸とはみなさない。
【0182】
核酸はセンス配向であってもアンチセンス配向であってもよく、あるいはB7−DC、PD−L1、PD−1、またはB7.1ポリペプチドまたはその変異体をコードする参照配列と相補的であってもよい。参照配列としては、例えば、当該技術分野で知られており、上記に述べられているヒトB7−DC、ヒトPD−L1、またはネズミPD−L2およびネズミPD−L1のヌクレオチド配列が含まれる。
【0183】
核酸はDNA、RNA、または核酸類似体であり得る。核酸類似体は塩基部分、糖部分、またはリン酸主鎖において修飾することができる。このような修飾は例えば、核酸の安定性、ハイブリダイゼーション、または溶解度を改善することができる。塩基部分における修飾としては、デオキシチミジンをデオキシウリジン、デオキシシチジンを5−メチル−2’−デオキシシチジンまたは5−ブロモ−2’−デオキシシチジンにいうものが挙げられる。糖部分の修飾としては、リボース糖の2’ヒドロキシルの修飾による2’−O−メチルまたは2’−O−アリル糖の形成が挙げられる。デオキシリボースリン酸主鎖は、各塩基部分が6員のモルホリノ環に連結されているモルホリノ核酸、またはデオキシリン酸主鎖がシュードペプチド主鎖で置換され、4つの塩基が保持されているペプチド核酸を生成するように修飾することができる。例えば、Summerton and Weller (1997) Antisence Nucleic Acid Drug Dev. 7:187-195、およびHyrup et al. (1996) Bioorgan. Med. Chem. 4:5-23参照。さらに、デオキシリン酸主鎖は、例えば、ホスホロチオエートまたはホスホロジチオエート主鎖、ホスホロアミダイト、またはアルキルホスホトリエステル主鎖で置換することができる。
【0184】
H.PD−1受容体アンタゴニストを発現するベクターおよび宿主細胞
上記のものなどの核酸は、細胞で発現させるためにベクターに挿入することができる。本明細書において「ベクター」とは、別のDNAセグメントが、挿入されたセグメントの複製が起こるように挿入され得る、プラスミド、ファージ、またはコスミドなどのレプリコンである。ベクターは発現ベクターであり得る。「発現ベクター」とは、1以上の発現制御配列を含むベクターであり、「発現制御配列」とは、別のDNA配列の転写および/または翻訳を制御および調節するDNA配列である。
【0185】
ベクター中の核酸は1以上の発現制御配列に機能的に連結させることができる。本明細書において「機能的に連結される」とは、発現制御配列が目的のコード配列の発現を有効に制御するように遺伝子構築物に組み込まれることを意味する。発現制御配列の例としては、プロモーター、エンハンサー、および転写終結領域が挙げられる。プロモーターは、一般に、転写が開始する点の上流100ヌクレオチド以内(一般に、RNAポリメラーゼIIの開始部位付近)のDNA分子の領域からなる発現制御配列である。コード配列をプロモーターの制御下に置くためには、そのポリペプチドの翻訳リーディングフレームの翻訳開始部位ををプロモーターの下流1〜約15ヌクレオチドの間に置く必要がある。エンハンサーは、時間、場所、およびレベルに関して発現特異性を与える。プロモーターとは異なり、エンハンサーは転写部位から様々な距離に位置する場合にも機能し得る。エンハンサーはまた、転写開始部位から下流に位置してもよい。コード配列は、RNAポリメラーゼがコード配列をmRNAへ転写することができ、それがコード配列によりコードされているタンパク質へ翻訳され得る場合に、「機能的に連結され」かつ細胞内の発現制御配列の「制御下」にある。
【0186】
好適な発現ベクターとしては、限定されるものではないが、例えば、バクテリオファージ、バキュロウイルス、タバコモザイクウイルス、ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルスに由来するプラスミドおよびウイルスベクターが挙げられる。多くのベクターおよび発現系がNovagen (Madison, WI)、Clontech (Palo Alto, CA)、Stratagene (La Jolla, CA)およびInvitrogen Life Technologies (Carlsbad, CA)などの会社から市販されている。
【0187】
発現ベクターはタグ配列を含み得る。タグ配列は一般に、コードされているポリペプチドとの融合物として発現される。このようなタグは、カルボキシル末端またはアミノ末端を含むポリペプチド内のいずれの位置にでも挿入することができる。有用なタグの例としては、限定されるものではないが、緑色蛍光タンパク質(GFP)、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、ポリヒスチジン、c−myc、血球凝集素、Flag(商標)タグ(Kodak, New Haven, CT)、マルトースE結合タンパク質、およびタンパク質Aが挙げられる。一つの実施形態においては、変異体PD−L2融合タンパク質は、Ig重鎖定常領域の1以上のドメインをコードする、好ましくは、ヒト免疫グロブリンCγ1鎖のヒンジ、C2およびC3領域に相当するアミノ酸配列を有する核酸を含むベクター内に存在する。
【0188】
発現される核酸を含むベクターを宿主細胞に導入することができる。「宿主細胞」とは、組換え発現ベクターが導入可能な原核生物のおよび真核細胞を含むものとする。本明細書において、「形質転換される」および「トランスフェクトされる」は、多くの技術の一つによって核酸分子(例えばベクター)を細胞に導入することを包含する。特定の技術に限定されるものではないが、これらの技術の多くは当該技術分野で十分に確立されている。
【0189】
原核細胞は、例えば、エレクトロポレーションまたは塩化カルシウム媒介形質転換により核酸で形質転換させることができる。核酸は、例えば、リン酸カルシウム共沈殿、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、リポフェクション、エレクトロポレーション、またはマイクロインジェクションを含む技術によって哺乳類細胞へトランスフェクトすることができる。宿主細胞(例えば、原核細胞または真核細胞、例えばCHO細胞)を用いて、例えば、本明細書に記載のPD−1アンタゴニストポリペプチドを生産することができる。
【0190】
I.抗体PD−1アンタゴニスト
PD−1アンタゴニストまたはPD−1のエピトープと反応性のあるモノクローナルおよびポリクローナル抗体が開示されている。モノクローナル抗体(mAbs)およびそれらの製造および使用方法は、Kohler and Milstein, Nature 256:495-497 (1975)、米国特許第4,376,110号公報、Hartlow, E. et al., Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1988)、 Monoclonal Antibodies and Hybridomas: A New Dimension in Biological Analyses, Plenum Press, New York, N.Y. (1980)、 H. Zola et al., Monoclonal Hybridoma Antibodies: Techniques and Applications, CRC Press, 1982に記載されている。
【0191】
PD−1と結合し、PD−1を介したシグナル伝達を遮断し、かつ、現行使用されているものよりも親和性が低く、投与後3か月、2か月、1か月、3週間、2週間、1週間、または数日未満の期間で抗体を解離させる抗体が免疫応答の増強、増進または刺激に好ましい。
【0192】
イムノアッセイ法は、Coligan, J. E. et al., eds., Current Protocols in Immunology, Wiley-Interscience, New York 1991 (または最新版)、 Butt, W. R. (ed.) Practical Immunoassay: The State of the Art, Dekker, N.Y., 1984、 Bizollon, Ch. A., ed., Monoclonal Antibodies and New Trends in Immunoassays, Elsevier, N.Y., 1984、 Butler, J. E., ELISA (Chapter 29), In: van Oss, C. J. et al., (eds), Immunochemistry, Marcel Dekker, Inc., New York, 1994, pp. 759-803、 Butler, J. E. (ed.), Immunochemistry of Solid-Phase Immunoassay, CRC Press, Boca Raton, 1991、 Weintraub, B., Principles of Radioimmunoassays, Seventh Training Course on Radioligand Assay Techniques, The Endocrine Society, March, 1986、 Work, T. S. et al., Laboratory Techniques and Biochemistry in Molecular Biology, North Holland Publishing Company, NY, (1978) (Chapter by Chard, T., "An Introduction to Radioimmune Assay and Related Techniques")に記載されている。
【0193】
抗イディオタイプ抗体は、例えば、Idiotypy in Biology and Medicine, Academic Press, New York, 1984、 Immunological Reviews Volume 79, 1984、 Immunological Reviews Volume 90, 1986、 Curr. Top. Microbiol., Immunol. Volume 119, 1985、 Bona, C. et al., CRC Crit. Rev. Immunol., pp. 33-81 (1981)、 Jerme, N K, Ann. Immunol. 125C:373-389 (1974)、 Jerne, N K, In: Idiotypes--Antigens on the Inside, Westen-Schnurr, I., ed., Editiones Roche, Basel, 1982, Urbain, J. et al., Ann. Immunol. 133D:179-(1982)、 Rajewsky, K. et al., Ann. Rev. Immunol. 1:569-607 (1983)に記載されている。
【0194】
これらの抗体は、異種、同種異系、同系、またはその改変形態(ヒト化またはキメラ抗体など)であり得る。特定の抗体、例えば、抗PD−L2抗体のイディオタイプに特異的な抗イディオタイプ抗体も含まれる。「抗体」との用語は、完全分子ならびに抗原結合部位を含み、かつ、およびPD−1アンタゴニストエピトープと結合することができるその断片の双方を含むことを意味する。これらには、完全抗体のFc断片を欠き、循環からより迅速に排除され、完全抗体よりも低い非特異的組織結合性を持ち得るFabおよびF(ab’)2断片が含まれる(Wahl et al., J. Nuc. Med. 24:316-325 (1983))。また、Fv断片も含まれる(Hochman, J. et al. (1973) Biochemistry 12:1130-1135、 Sharon, J. et al.(1976) Biochemistry 15:1591-1594)。これらの種々の断片は、プロテアーゼ切断または化学的切断などの常法を用いて作製される(例えば、Rousseaux et al., Meth. Enzymol., 121:663-69 (1986)参照)。
【0195】
ポリクローナル抗体は、ウサギ、ヤギ、齧歯類などの免疫動物から血清として得られ、それ以上処理することなくそのまま用いてもよく、あるいは硫酸アンモニウム沈殿、イオン交換クロマトグラフィーおよびアフィニティークロマトグラフィーなどの慣例の富化または精製方法を施してもよい。
【0196】
免疫原は、完全なPD−1アンタゴニスト、PD−1もしくは断片またはその誘導体を含む。好ましい免疫原は、PD−1アンタゴニストまたはPD−1の細胞外ドメイン(ECD)の全部または一部を含み、ここで、これらの残基はグリコシル化などの翻訳後調節を含む。細胞外ドメインを含む免疫原は、例えば、慣例の組換え法を用いたクローン化遺伝子の発現または起源細胞からの単離などの当該技術分野で知られている種々の方法で生産される。
【0197】
モノクローナル抗体は、Kohler and Milstein, Nature, 256:495-97 (1975)により紹介された手順およびその改変法(上記の参照を参照)などの慣例のハイブリドーマ技術を用いて生産され得る。動物、好ましくはマウスを上記のような免疫原に感作させることにより初回刺激し、刺激動物に所望の抗体応答を惹起させる。初回刺激動物のリンパ節、脾臓または末梢血からのBリンパ球を、一般にポリエチレングリコール(PEG)などの誘導促進剤の存在下で骨髄腫細胞と融合させる。多くのネズミ骨髄腫細胞系統はいずれもがこのような使用に利用できる:P3−NS1/1−Ag4−1、P3−x63−k0Ag8.653、Sp2/0−Ag14、またはHL1−653骨髄腫系統(ATCC, Rockville, Md.から入手可能)。その後の工程は、融合されてない親骨髄腫細胞と、ドナーリンパ球細胞とがやがて死に至り、ハイブリドーマ細胞だけが生き残るような選択培地で増殖させることを含む。これらをクローニングし、増殖させ、それらの上清を、例えば、PD−L2またはPD−L1融合タンパク質を用いたイムノアッセイ技術によって所望の特異性の抗体が存在するか否かをスクリーニングする。例えば、制限希釈によって陽性クローンをサブクローニングし、モノクローナル抗体を単離する。
【0198】
これらの方法に従って生産されたハイブリドーマは、当該技術分野で知られている技術(一般に、Fink et al., Prog. Clin. Pathol., 9:121-33 (1984)参照)を用いて、インビトロまたはインビボ(腹水中)で増殖させることができる。一般に、個々の細胞系統を培養で増殖させ、高濃度の単一モノクローナル抗体を含む培養培地を、デカンテーション、濾過または遠心分離によって採取することができる。
【0199】
抗体は、正常な多量体構造の代わりに単鎖抗体またはscFvとして生産してもよい。単鎖抗体は、着目するIgに由来する超可変領域を含み、完全なIgのサイズの一部でありつつ、天然Igの抗原結合部位を再形成する(Skerra, A. et al. Science, 240: 1038-1041 (1988)、 Pluckthun, A. et al. Methods Enzymol. 178: 497-515 (1989)、 Winter, G. et al. Nature, 349: 293-299 (1991))。好ましい実施形態においては、抗体は慣例の分子生物学的技術を用いて生産される。
【0200】
III.製造方法
PD−1アンタゴニストの生産方法
ポリペプチドおよびその変異体
単離されたPD−1アンタゴニストポリペプチド、その変異体およびその融合タンパク質は、例えば、化学的合成または宿主細胞での組換え生産によって得ることができる。PD−1アンタゴニストポリペプチドを組換え生産するためには、そのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を用いて、細菌または真核生物宿主細胞(例えば、昆虫、酵母、または哺乳類細胞)に形質転換、形質導入またはトランスフェクションを行うことができる。一般に、核酸構築物は、PD−1アンタゴニストポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に機能的に連結された調節配列を含む。調節配列(本明細書では発現制御配列とも呼ばれる)は一般に遺伝子産物をコードしないが、それらが機能的に連結されている核酸配列の発現に影響を与える。
【0201】
ポリペプチドを発現および生産するのに有用な原核生物系および真核生物系は当該技術分野でよく知られており、例えば、BL−21などの大腸菌(Escherichia coli)株、およびCHO細胞などの培養哺乳類細胞が挙げられる。
【0202】
真核生物宿主細胞では、PD−1アンタゴニストポリペプチドを発現させるために多くのウイルスに基づく発現系が利用可能である。ウイルスに基づく発現系は当該技術分野でよく知られており、限定されるものではないが、バキュロウイルス、SV40、レトロウイルス、またはワクシニアに基づくウイルスベクターが挙げられる。
【0203】
変異体共刺激ポリペプチドを安定発現する哺乳類細胞系統は、適当な制御エレメントと、選択マーカーとを備えた発現ベクターを用いて作出することができる。例えば、真核生物発現ベクターpCR3.1(Invitrogen Life Technologies) およびp91023(B)(Wong et al. (1985) Science 228:810-815参照)は、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、COS−1細胞、ヒト胎児腎臓293細胞、NIH3T3細胞、BHK21細胞、MDCK細胞およびヒト血管内皮細胞(HUVEC)での変異体共刺激ポリペプチドの発現に好適である。エレクトロポレーション、リポフェクション、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈殿、DEAEデキストランまたは他の好適なトランスフェクション方法による発現ベクターの導入の後、安定な細胞系統を選択することができる(例えば、G418、カナマイシンまたはハイグロマイシンに対する抗生物質耐性による)。トランスフェクト細胞は、目的のポリペプチドが発現されるように培養することができ、このポリペプチドを例えば、細胞培養上清または溶解細胞から回収することができる。あるいは、PD−1アンタゴニストポリペプチドは、(a)増幅された配列をpcDNA3(Invitrogen Life Technologies)などの哺乳類発現ベクターに連結し、(b)インビトロにおいてコムギ胚芽抽出液またはウサギ網状赤血球溶解液を用いて転写および翻訳することによって生産することもできる。
【0204】
PD−1アンタゴニストポリペプチドは、例えば、DEAEイオン交換、ゲル濾過およびヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー法を用いて単離することができる。例えば、細胞培養上清または細胞質抽出液中の共刺激ポリペプチドは、Gタンパク質カラムを用いて単離することができる。いくつかの実施形態においては、変異体共刺激ポリペプチドは、ポリペプチドを親和性マトリックスに捕捉させるアミノ酸配列を含むように「操作」することができる。ポリペプチドの精製を助けるために、例えば、c−myc、血球凝集素、ポリヒスチジン、またはFlag(商標)(Kodak)などのタグを使用することができる。このようなタグは、カルボキシル末端またはアミノ末端を含むポリペプチド内のいずれの位置にも挿入することができる。有用であり得る他の融合物としては、アルカリ性ホスファターゼなど、ポリペプチドの検出を助ける酵素を含むことができる。共刺激ポリペプチドを精製するのに、イムノアフィニティークロマトグラフィーを使用することもできる。
【0205】
変異体ポリペプチドを作出するためにランダム突然変異を導入する方法は当該技術分野で知られている。PD−1受容体またはリガンドと相互作用するペプチドをスクリーニングするためにランダムペプチドディスプレーライブラリーを使用することができる。このようなランダムペプチドディスプレーライブラリーを作出およびスクリーニングするための技術は当該技術分野で知られており(Ladnerら、米国特許第5,223,409号号公報、Ladnerら、米国特許第4,946,778号、Ladnerら、米国特許第5,403,484号およびLadnerら、米国特許第5,571,698号)、ランダムペプチドディスプレーライブラリーおよびこのようなライブラリーをスクリーニングするためのキットが市販されている。
【0206】
B.PD−1アンタゴニストポリペプチドをコードする単離された核酸分子の生産方法
PD−1アンタゴニストポリペプチドをコードする単離された核酸分子は、限定されるものではないが、一般的分子クローニングおよび化学的核酸合成技術を含む標準的技術によって生産することができる。例えば、変異体共刺激ポリペプチドをコードする単離された核酸を得るために、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を使用することができる。PCRは、標的核酸が酵素的に増幅される技術である。一般に、着目する領域の末端から、またはそれを超える配列情報を用いれば、増幅される鋳型の反対側の鎖と配列が同一であるオリゴヌクレオチドプライマーを設計することができる。PCRを用いて、全ゲノムDNAまたは全細胞RNA由来の配列を含め、DNAならびにRNAから特定の配列を増幅させることができる。プライマーは一般に14〜40ヌクレオチドの長さであるが、10ヌクレオチド〜数百ヌクレオチドの範囲の長さであってもよい。一般的なPCR技術は、例えば、PCR Primaer: A Laboratory Manual, Dieffenbach and Dveksler編, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1995に記載されている。鋳型の供給源としてRNAを用いる場合には、逆転写酵素を用いて相補的DNA(cDNA)鎖を合成することができる。単離された核酸を得るために、リガーゼ連鎖反応、鎖置換増幅、自己持続配列複製または核酸配列に基づく増幅を使用することもできる。例えば、Lewis (1992) Genetic Engineering News 12:1、 Guatelli et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:1874-1878、およびWeiss (1991) Science 254:1292-1293参照。
【0207】
単離された核酸は、単一の核酸分子としてか、またはオリゴヌクレオチド系列としてのいずれかで化学的に合成することができる(例えば、3’から5’方向への自動DNA合成のためのホスホルアミダイト技術を使用)。例えば、所望の配列を含み、各対が短い相補的セグメント(例えば約15ヌクレオチド)を含み、その結果、オリゴヌクレオチド対がアニーリングされる際に二重らせんが形成される、長いオリゴヌクレオチド(例えば>100ヌクレオチド)の1以上の対を合成することができる。DNAポリメラーゼオリゴヌクレオチドを延長するのにも使用することができ、その結果、オリゴヌクレオチド対につき一つの一本鎖、二本鎖核酸分子が得られ、次にこれをベクターに連結することができる。また、単離された核酸は突然変異誘発により得ることもできる。PD−1アンタゴニストをコードする核酸は、PCRを介したオリゴヌクレオチド指定突然変異誘発および/または部位特異的突然変異誘発を含む標準的技術を用いて変異させることができる。Short Protocols in Molecular Biology. Chapter 8, Green Publishing Associates and John Wiley & Sons, edited by Ausubel et al, 1992参照。修飾可能なアミノ酸位置の例としては、本明細書に記載されているものが含まれる。
【0208】
IV.処方物
A.PD−1アンタゴニスト処方物
A.PD−1アンタゴニスト処方物
PD−1アンタゴニストを含有する医薬組成物が提供される。ペプチドまたはポリペプチドを含有する医薬組成物は、非経口(筋肉内、腹腔内、静脈内(IV)、または皮下注射)、経皮(受動的またはイオン泳動もしくはエレクトロポレーションを使用)または経粘膜(鼻腔、膣、直腸、または舌下)投与経路による投与用であり得る。また、組成物は生浸食性インサートを用いて投与してもよいし、適当なリンパ系組織(例えば、脾臓、リンパ節もしくは粘膜に関連するリンパ系組織)に直接送達、または器官もしくは腫瘍に直接送達してもよい。これらの組成物は各投与経路に適当な剤形で処方することができる。ペプチドまたはポリペプチドでないPD−1受容体のアンタゴニストを含有する組成物はさらに腸内投与用に処方することもできる。
【0209】
本明細書において「有効量」または「治療上有効な量」とは、処置される障害の1以上の症状を処置、阻害または緩和するのに、またはそうでなければされる所望の薬理学的および/または生理学的作用を提供するのに十分な用量を意味する。厳密な用量は、被験体に依存する変数(例えば、年齢、免疫系の健全性など)、疾患および行われる処置などの種々の要因によって異なる。PD−1アンタゴニストの治療上有効な量は、免疫応答を活性化、増強、増大または持続させ、かつ/またはT細胞の消耗および/またはT細胞の無応答を克服または緩和し、かつ/または単球、マクロファージ、樹状細胞および他の抗原提示細胞(APC)を活性化する。
【0210】
好ましい実施形態においては、PD−1アンタゴニストは、腫瘍モデリングおよびバイオアベイラビリティからの外挿に基づき、0.1〜20mg/kgの範囲で投与される。最も好ましい範囲は5〜20mgPD−1アンタゴニスト/kgである。一般に、静脈注射または注入では、別の経路によって投与する場合よりも用量は低くなり得る。
【0211】
1.非経口投与用処方物
好ましい実施形態においては、ペプチドおよびポリペプチドを含有するものを含む開示されている組成物は、非経口注射により水溶液として投与される。処方物はまた懸濁液またはエマルションの形態であってもよい。一般に、有効量のペプチドまたはポリペプチドを含み、場合により薬学上許容される希釈剤、保存剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバント、および/または担体を含む医薬組成物が提供される。このような組成物は無菌水、緩衝生理食塩水(例えば、Tris−HCl、酢酸、リン酸)、pH、およびイオン強度、ならびに場合により、洗剤および可溶化剤(例えば、TWEEN(商標)20、TWEEN80、ポリソルベート80)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、および保存剤(例えば、Thimersol、ベンジルアルコール)および増量剤(例えば、ラクトース、マンニトール)などの添加剤を含む。非水性溶媒またはビヒクルの例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油およびコーン油などの植物油、ゼラチン、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルがある。処方物は凍結乾燥させ、使用直前に再溶解/再懸濁させてもよい。処方物は例えば、細菌保持フィルターによる濾過、除菌剤の組成物への配合、組成物の照射または組成物の加熱によって除菌してもよい。
【0212】
2.制御送達ポリマーマトリックス
1以上のPD−1アンタゴニストまたはPD−1アンタゴニストをコードする核酸を含有する組成物は徐放性処方物として投与することができる。徐放性ポリマーデバイスはポリマーデバイス(ロッド、シリンダー、フィルム、ディスク)の移植または注射(微粒子)後に長時間全身への放出を行うことができる。マトリックスは、ペプチドが固体ポリマーマトリックス内に分散されているマイクロスフェア、またはコアがポリマー剤皮とは異なる材料のものであり、そのコア(本質的に液体であっても固体であってもよい)内にペプチドが分散もしくは懸濁されているマイクロカプセルなどの微粒子の形態であってもよい。本明細書で特に定義されない限り、微粒子、マイクロスフェアおよびマイクロカプセルは互換的に用いられる。あるいは、ポリマーは数ナノメートルから4センチメートルの範囲の薄スラブもしくはフィルムとしての鋳物、摩砕、もしくは他の標準的な技術によって製造された粉末、またはさらにはヒドロゲルなどのゲルであってもよい。マトリックスはまた、免疫応答を調節するため、免疫不全患者(カテーテルが挿入されている高齢者または未熟児など)における感染予防のため、またはただれ、床ずれ潰瘍などの治癒を促進するために用いられるマトリックスの場合と同様に治癒における補助とするために医療機器の内外に組み込むことができる。
【0213】
非生分解性マトリックスでも生分解性マトリックスでもPD−1アンタゴニストまたはそれらをコードする核酸の送達に使用することができるが、生分解性マトリックスが好ましい。これらは天然ポリマーであっても合成ポリマーであってもよいが、分解および放出特性の特徴付けがより良いため、合成ポリマーが好ましい。ポリマーは、放出が望まれる期間に基づいて選択される。直線的放出が最も有用である場合もあるが、パルス放出または「バルク放出」がより有効な結果をもたらす場合もある。ポリマーはヒドロゲル(一般に最大約90重量%の水を吸収する)の形態であってもよく、場合により多価イオンまたはポリマーで架橋されていてもよい。
【0214】
マトリックスは溶媒蒸発、噴霧乾燥、溶媒抽出および当業者に知られている他の方法によって形成させることができる。生浸食性マイクロスフェアは、例えば、Mathiowitz and Langer, J. Controlled Release, 5:13-22 (1987)、 Mathiowitz, et al., Reactive Polymers, 6:275-283 (1987)、およびMathiowitz, et al., J. Appl. Polymer Sci., 35:755-774 (1988)に記載されているような、薬物送達用のマイクロスフェアを作製するために開発されたいずれかの方法を用いて製造することができる。
【0215】
徐放性経口処方物が望ましい場合がある。PD−1阻害的シグナル伝達のアンタゴニストは、拡散または溶脱機構のいずれかによる放出を可能とする不活性マトリックス、例えば、フィルムまたはガム中に配合することができる。また、緩徐崩壊マトリックスを処方物に配合してもよい。別の徐放性形態としては、水を入り込ませて浸透圧作用により単一の小開口部から薬剤を押し出す半透膜に薬剤が封入されるものがある。経口処方物では、放出の場所は胃、小腸(十二指腸、空腸もしくは回腸)、または大腸であり得る。好ましくは、この放出は有効剤(もしくは誘導体)の保護によるか、または腸などの胃環境を超えた有効剤の放出によるかのいずれかで、胃環境の有害な影響を回避する完全な胃耐性を確保するためには、腸溶コーティング(すなわち、少なくともpH5.0までは不透性)が不可欠である。これらのコーティングは混合フィルム、またはBanner Pharmacapsから市販されているものなどのカプセル剤として使用可能である。
これらのデバイスは移植または注射領域を処置するために局所放出用に処方することができ、一般に、全身処置用の用量よりもはるかに低い用量を送達する。これらのデバイスはまた、全身送達用に処方することもできる。これらは埋植または皮下注射することができる。
【0216】
3.腸内投与用処方物
PD−1のアンタゴニストはまた、経口送達用にも処方することができる。経口固体剤形は当業者に知られている。固体剤形としては、錠剤、カプセル剤、丸剤、トローチ剤またはロゼンジ剤、カシェ剤、ペレット、粉末もしくは顆粒、またはポリ乳酸、ポリグリコール酸などのポリマー化合物の特定の調製物、もしくはリポソームへの材料の組み込みが挙げられる。このような組成物は本発明のタンパク質および誘導体の物理的状態、安定性、インビボ放出速度、およびインビボクリアランス速度に影響を及ぼし得る。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 21st Ed. (2005, Lippincott, Williams & Wilins, Baltimore, Md. 21201) pages 889-964参照。組成物は液体形態で調製してもよいし、あるいは乾燥粉末(例えば、凍結乾燥)形態であってもよい。リポソームまたはポリマーカプセル封入を組成物の処方に用いてよい。Marshall, K. In: Modern Pharmaceutics, G. S. Banker and C. T. Rhodes編 Chapter 10, 1979も参照。一般に、処方物は有効剤と、胃環境でPD−1アンタゴニストを保護し、腸で生活性材料を放出する不活性成分を含む。
【0217】
薬学上許容されるエマルション、溶液、懸濁液、およびシロップを含む経口投与用の液体剤形は、不活性希釈剤、湿潤剤、乳化剤、および沈殿防止剤などのアジュバント、ならびに甘味剤、香味剤、および芳香剤を含む他の成分を含み得る。
【0218】
B.PD−1受容体アンタゴニストを含むワクチン
ワクチンは癌細胞を排除するために強いT細胞応答を必要とする。本明細書に記載されているPD−1アンタゴニストは、T細胞に対する阻害シグナルを妨げるためにワクチンの成分として投与することができる。本明細書に開示されるワクチンは抗原、PD−1アンタゴニストポリペプチドの供給源、ならびに場合によりアジュバントおよび標的化分子を含む。PD−1アンタゴニストポリペプチドの供給源は、開示されているB7−DC、PD−L1、PD−1、またはB7.1ポリペプチドのいずれか、その融合タンパク質、その変異体、これらのポリペプチドおよび融合タンパク質もしくはその変異体をコードする核酸、またはPD−1アンタゴニストポリペプチドを発現するベクターを含む宿主細胞を含む。
【0219】
1.抗原
抗原は、ペプチド、タンパク質、多糖類、糖類、脂質、核酸、またはその組合せであり得る。抗原は癌または白血病細胞などの形質転換細胞に由来するものであり得、全細胞またはその免疫原成分であり得る。好適な抗原は当該技術分野で知られており、商業的官業および科学ソースから入手可能である。抗原は腫瘍由来の精製または部分精製ポリペプチドであってもよいし、あるいは異種発現系においてポリペプチド抗原をコードするDNAを発現させることにより生成される組換えポリペプチドであってもよい。抗原は抗原タンパク質の全部または一部をコードするDNAであってもよい。DNAはプラスミドDNAなどのベクターDNAの形態であってもよい。
【0220】
抗原は単一の抗原として提供されてもよいし、あるいは組合せで提供されてもよい。抗原はまた、ポリペプチドまたは核酸の複合体混合物として提供されてもよい。
【0221】
抗原は、限定されるものではないが、α−アクチニン−4、Bcr−Abl融合タンパク質、Casp−8、β−カテニン、cdc27、cdk4、cdkn2a、coa−1、dek−can融合タンパク質、EF2、ETV6−AML1融合タンパク質、LDLR−フコシルトランスフェラーゼAS融合タンパク質、HLA−A2、HLA−A11、hsp70−2、KIAAO205、Mart2、Mum−1、2、および3、ネオ−PAP、ミオシンクラスI、OS−9、pml−RARα融合タンパク質、PTPRK、K−ras、N−ras、トリオースリン酸イソメラーゼ、Bage−1、Gage3、4、5、6、7、GnTV、Herv−K−mel、Lage−1、Mage−A1、2、3、4、6、10、12、Mage−C2、NA−88、NY−Eso−1/Lage−2、SP17、SSX−2、およびTRP2−Int2、MelanA(MART−I)、gp100(Pmel17)、チロシナーゼ、TRP−1、TRP−2、MAGE−1、MAGE−3、BAGE、GAGE−1、GAGE−2、p15(58)、CEA、RAGE、NY−ESO(LAGE)、SCP−1、Hom/Mel−40、PRAME、p53、H−Ras、HER−2/neu、BCR−ABL、E2A−PRL、H4−RET、IGH−IGK、MYL−RAR、エプスタイン・バーウイルス抗原、EBNA、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)抗原E6およびE7、TSP−180、MAGE−4、MAGE−5、MAGE−6、p185erbB2、p180erbB−3、c−met、nm−23H1、PSA、TAG−72−4、CA19−9、CA72−4、CAM17.1、NuMa、K−ras、β−カテニン、CDK4、Mum−1、p16、TAGE、PSMA、PSCA、CT7、テロメラーゼ、43−9F、5T4、791Tgp72、α−フェトタンパク質、13HCG、BCA225、BTAA、CA125、CA15−3(CA 27.29\BCAA)、CA195、CA242、CA−50、CAM43、CD68\KP1、CO−029、FGF−5、G250、Ga733(EpCAM)、HTgp−175、M344、MA−50、MG7−Ag、MOV18、NB\70K、NY−CO−1、RCAS1、SDCCAG16、TA−90(Mac−2結合タンパク質\シクロフィリンC関連タンパク質)、TAAL6、TAG72、TLP、およびTPSなどの腫瘍関連高原または腫瘍特異的抗原を含む腫瘍抗原であり得る。
【0222】
2.アジュバント
場合により、本明細書に記載されるワクチンはアジュバントを含み得る。アジュバントは、限定されるものではないが、以下の1以上であり得る:オイルエマルション(例えば、フロイントのアジュバント)、サポニン処方物、ウィロソーム(virosomes)およびウイルス様粒子、細菌および細菌誘導体、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、ADP−リボシル化毒素および解毒誘導体、ミョウバン、BCG、無機物含有組成物(例えば、アルミニウム塩およびカルシウム塩などの無機塩)、水酸化物、リン酸塩、硫酸塩など)、生体接着剤および/または粘膜接着剤、微粒子、リポソーム、ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンエステル処方物、ポリホスファゼン、ムラミルペプチド、イミダゾキノロン化合物、および界面活性物質(例えば、リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、オイルエマルション、キーホールリンペットヘモシアニン、およびジニトロフェノール)。
【0223】
アジュバントはまたサイトカイン、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−12など)、インターフェロン(例えば、インターフェロンγ)、マクロファージコロニー刺激因子、および腫瘍壊死因子などの免疫調節剤を含み得る。PD−1アンタゴニストの他、B7ファミリーの他のポリペプチドを含む他の共刺激分子を投与してもよい。このようなタンパク質性アジュバントは全長ポリペプチドもしくはその活性断片として、またはプラスミドDNAなどのDNAの形態で提供されてよい。
【0224】
IV.使用方法
A.T細胞の活性化
PD−1アンタゴニストポリペプチドおよび小分子、その変異体、その融合タンパク質、PD−1アンタゴニストポリペプチドおよび融合タンパク質をコードする核酸、またはPD−1アンタゴニストポリペプチドおよび融合タンパク質を発現する細胞は、T細胞の不活性化を回避するため、および/またはT細胞の活性化を延長するため(すなわち、T細胞の抗原特異的増殖を増強するため、T細胞によるサイトカイン生産を増強するため、T細胞の分化およびエフェクター機能を刺激するため、および/またはT細胞の生存を促進するため)、またはT細胞の消耗および/または無応答を克服するために使用することができる。
【0225】
好ましいPD−1アンタゴニストとしては、PD−1またはB7−1ポリペプチドなど、内因性PD−L1またはPD−L2と結合し、PD−L1およびPD−L2のPD−1受容体との相互作用を低減または阻害するポリペプチドが含まれる。これらのリガンドのPD−1との相互作用を低減することにより、PD−1により伝達される負のシグナルが回避または低減される。最適に満たないTCRシグナルの存在下では、外因性PD−L2またはPD−L1ポリペプチドはインビトロにおいてサイトカインの増殖および産生の増大を刺激することができる。よって、PD−L2およびPD−L1はPD−1以外のT細胞受容体とも結合することが明らかである。PD−1を介して負のシグナルを伝達することなくPD−1受容体と結合してそれを遮断するPD−1アンタゴニストもまた好ましい。これらのアンタゴニストの例としては、PD−1と結合するがシグナル伝達を誘発しないPD−L2およびPD−L1などのPD−1の組換えリガンドが挙げられる。
【0226】
PD−1アンタゴニストポリペプチドを用いる方法は、T細胞とPD−1アンタゴニストポリペプチドをT細胞においてPD−1シグナル伝達を阻害または低減するのに有効な量で接触させることを含む。接触はインビトロ、エクスビボまたはインビボ(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ウシ、ブタ、非ヒト霊長類、またはヒトなどの哺乳類で)行うことができる。
【0227】
接触はT細胞の活性化の前、活性化の間、または活性化の後に行うことができる。一般に、T細胞と、PD−1アンタゴニストポリペプチドとの接触は活性化と実質的に同時であり得る。活性化は、例えば、T細胞を、T細胞受容体(TCR)またはTCRと物理的に会合しているCD3複合体のポリペプチドの一つと結合する抗体に曝すことによるものであり得る。あるいは、T細胞は例えば、APC[例えば、鉗合(interdigitating)樹状細胞(本明細書では樹状細胞とも呼ばれる)、マクロファージ、単球またはB細胞]上の同種異系抗原(例えば、MHC同種異系抗原)または上記のAPCのいずれかによるタンパク質抗原のプロセシングにより生成され、APCの表面上のMHC分子によりT細胞に提示される抗原ペプチドのいずれかに曝すこともできる。T細胞はCD4+T細胞またはCD8+T細胞であり得る。
【0228】
いくつかの実施形態においては、PD−1アンタゴニストポリペプチドはT細胞に直接投与することができる。あるいは、マクロファージ、単球、鉗合樹状細胞(本明細書では樹状細胞とも呼ばれる)またはB細胞などのAPCを、PD−1アンタゴニストポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸で形質転換、形質導入またはトランスフェクトすることができ、T細胞を形質転換、形質導入、またはトランスフェクトされたAPCと接触させることができる。この形質転換、形質導入またはトランスフェクト細胞は、形質転換、形質導入、またはトランスフェクトされる前は、それが投与される被験体、または別の被験体(例えば、同種の別の被験体)から得ることができる細胞または細胞の後代であり得る。
【0229】
PD−1アンタゴニストポリペプチドは、開示されているアミノ酸変更、ポリペプチド断片、融合タンパク質およびその組合せのいずれかを含む、本明細書に記載されているいずれかのPD−1アンタゴニストポリペプチドであり得る。
【0230】
活性化がインビトロであれば、PD−1アンタゴニストポリペプチドは適切な培養容器またはビーズまたは他の固相支持体の底面、例えば、プラスチックマイクロタイタープレートのウェルに結合させることができる。
【0231】
PD−1アンタゴニストポリペプチドのインビトロ適用は、例えば、免疫機構の基礎的科学研究において、またはT細胞機能の研究もしくは例えば受動免疫療法に用いる活性化T細胞の生産のために有用であり得る。さらに、PD−1アンタゴニストポリペプチドは、T細胞が得られた被験体において着目する抗原に対する免疫性を試験すべく設計されたインビトロアッセイ(例えば、T細胞増殖アッセイ)に加えることができる。このようなアッセイへのPD−1アンタゴニストポリペプチドの付加は、より強力な、従ってより検出の容易なインビトロ応答をもたらすと考えられる。さらに、PD−1アンタゴニストポリペプチド、またはこのようなポリペプチドをコードする核酸で形質転換、トランスフェクトもしくは形質導入されたAPCは、(a)T細胞が他の分子によって活性を増強するか否かを調べるアッセイにおける陽性対照として、または(b)T共刺激を阻害するのに有用な化合物(例えば、自己免疫疾患または器官移植片拒絶の処置に有用な可能性のある化合物)のスクリーニングアッセイにおいて使用することができる。
【0232】
B.PD−1アンタゴニストの治療的使用
1.癌処置
本明細書で提供されるPD−1アンタゴニストは一般にインビボおよびエクスビボにおいて免疫応答刺激治療薬として有用である。一般に、開示されているアンタゴニスト組成物は、被験体の免疫系が免疫応答を惹起する疾患または障害を有する、またはそれに対して疾病素因を有する被験体の処置に有用である。PD−1アンタゴニストの、D−1シグナル相互作用を阻害または低減する能力はより強力な免疫応答を可能とする。開示されている組成物は、T細胞を伴う免疫応答を刺激または増強するのに有用である。
【0233】
開示されているPD−1アンタゴニストは、被験体においてT細胞を共刺激するのに有効な量のPD−1アンタゴニストを被験体に投与することにより癌を処置するために、宿主の免疫応答を刺激または増強するのに有用である。提供される組成物および方法で処置可能な癌の種類としては、限定されるものではないが、以下のもの:膀胱癌、脳癌、乳癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、食道癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、鼻咽頭癌、膵臓癌、前立腺癌、皮膚癌、胃癌、子宮癌、卵巣癌、精巣癌、および血液性癌が挙げられる。
【0234】
本明細書では処置可能な悪性腫瘍は腫瘍が由来する組織の胚起源に応じて分類される。癌腫は、皮膚または内部器官および腺の上皮下層などの内肺葉または外胚葉組織に起源する腫瘍である。発生頻度は低い肉腫は、骨、脂肪、および軟骨などの中胚葉結合組織に由来する。白血病およびリンパ腫は、骨髄の造血細胞の悪性腫瘍である。白血病は単細胞として増殖するが、リンパ腫は腫瘍塊として増殖する傾向がある。悪性腫瘍は身体の多くの器官または組織で増殖し、癌を形成し得る。
【0235】
2.ワクチンにおけるPD−1アンタゴニストの使用
開示されているPD−1アンタゴニストまたはそれをコードする核酸は単独で投与してもよいし、あるいは他の好適な処置と組み合わせて投与してもよい。一つの実施形態においては、PD−1アンタゴニストはワクチン組成物とともに、またはワクチン阻害剤の一成分として投与することができる。ワクチン組成物の好適な成分は上記されている。開示されているPD−1アンタゴニストはワクチン投与の前、ワクチン投与と同時、またはワクチン投与の後に投与することができる。一つの実施形態においては、PD−1アンタゴニスト組成物はワクチン投与と同時に投与される。
【0236】
開示されているPD−1アンタゴニスト組成物は、被験体の免疫応答を誘発する、または癌を有する被験体における腫瘍抗原などの既存の抗原に対する免疫応答を増強するために使用することができる予防ワクチンまたは治療ワクチンとともに投与してもよい。
【0237】
予防的、治療的または脱感作免疫応答の所望の結果は、当該技術分野でよく知られている原理に従い、疾患によって異なり得る。同様に、癌、アレルゲン、または病原体に対する免疫応答は疾患を完全に治療する場合、症状を緩和する場合、または疾患に対する全体的な治療的介入の一つの態様である場合がある。例えば、癌に対する免疫応答の刺激は、処置に影響を与えるための外科術、化学療法薬、放射線、ホルモン、および他の免疫学的アプローチと組み合わせることができる。
【0238】
3.補助療法
開示されているPD−1アンタゴニストまたはそれをコードする核酸は、抗原に対する耐性を克服し、それにより癌を治療するために使用することができる。共シグナル伝達経路を適切に標的化することにより、T細胞の活性化および腫瘍抗原に対する耐性の克服をもたらすことができる。一つの実施形態は、抗原耐性を克服するために有効量のPD−1アンタゴニストまたはそれをコードする核酸を投与することを提供する。PD−1の負のシグナル伝達を阻害または低減すれば、第一の治療薬を投与した後のT細胞応答および全体的な免疫性または腫瘍関連抗原などの免疫原性の不十分な抗原に対する応答を増幅することもできる。一つの実施形態は、一次治療、ワクチン接種または腫瘍の死滅化の(抗体により媒介されるもの化学療法または放射線によるものまたはそのいずれかの組合せ)後にD−1アンタゴニストまたはそれをコードする核酸の受動投与を提供する。PD−1アンタゴニストは、腫瘍に対して強力かつ長期の防御応答をもたらす一次応答を増強/追加刺激すると考えられている。
【0239】
腫瘍を根絶するために第一治療薬に加えて投じられる処置はアジュバント療法と呼ばれる。補助治療は外科術または放射線などの一次治療を強化するため、癌が再発する機会を低減するために行われる。この付加的な処置は、より強力かつ/または長期の応答を根拠として一次応答の増幅をもたらし得る。
【0240】
補助療法には5つの主要な種類がある(これらのうちのいくつかは一次/単独療法としても使用されることを注記しておく):1)増殖を妨げるか、細胞を自己破壊させることにより癌細胞を死滅させる薬剤を用いる化学療法、2)ホルモン生産を低減し、癌を増殖させないためのホルモン療法、3)癌細胞を死滅させるために強力な線を用いる放射線療法、4)残っている癌細胞を攻撃し、根絶するために身体固有の免疫系に影響を与えることを試みる免疫療法(免疫療法は身体固有の防御を刺激する(癌ワクチン)か、またはそれらを補充する(抗体または免疫細胞の受動的投与)ことができる)、または5)正常、健康細胞だけを残し、癌細胞内に存在する特定の分子を標的化する標的化療法。例えば、乳癌の多くの症例はHER2と呼ばれるタンパク質の生産が過剰な腫瘍によって引き起こされる。トラスツズマブ(ヘルセプチン)は、HER2陽性腫瘍を標的とする補助療法として用いられる。
【0241】
一般に、補助治療は、複数の機構を誘導し、腫瘍の根絶の機会を増やすため、一次治療と同時に投与するか、または一緒に与える。免疫療法、特にワクチンは、繊細な特異性および既存の免疫寛容を回避する能力を有する持続的抗腫瘍作用を誘導するという独自の利点を与える。「補助療法」を遅延させると、応答を最大化させ、腫瘍を根絶する機会を増大させることが見出された。
【0242】
好ましい実施形態においては、本明細書に記載されているように、PD−1アンタゴニストまたはそれをコードする核酸は、癌治療薬などの第一の治療薬の投与後に投与される。アジュバントの投与のタイミングは一次治療後0〜14日の範囲であり得、単一または複数の処置を含み得る。ある特定の実施形態においては、PD−1アンタゴニストは一次治療の投与後1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14日に投与される。アジュバントは好ましくは、患者に全身投与される(IV、IM、またはSQ)。
【0243】
免疫応答を増強するために用いられるPD−1アンタゴニストの選択は、元の一次治療の様式によって異なる。例えば、化学療法とともに用いられる同じPD−1アンタゴニストは放射線治療とは十分働かない場合がある。よって、治療薬とPD−1アンタゴニスト分子の特定の組合せは最適な有効性に必要であり得る。PD−1アンタゴニストは、癌の種類に関して、例えば親和性成熟を用いて例えば固体腫瘍と液体腫瘍に関して最適化することができる。
【0244】
PD−1アンタゴニストおよびそれをコードする核酸は、腫瘍に対する免疫応答の誘導または増強に有用であり得る。例えば、細胞を、本明細書に記載されているPD−1アンタゴニストをコードする核酸を担持するように操作し、その後、被験体における腫瘍特異的耐性を妨害するために被験体に投与することができる。特に、B7陰性ネズミ腫瘍細胞におけるB7−1の異所発現は、マウスにおいて腫瘍の排除と、腫瘍付加に対する長期保護とを伴う、T細胞により媒介される特異的免疫性を誘導することが示されている。B7関連因子を用いた細胞遺伝子療法処置は、遺伝子導入療法にB7−1またはB7−2を用いる動物実験(K. Dunussi-Joannopoulos et al., J. Pediatr. Hematol. Oncol. 19:356-340 (1997)、 K. Hiroishi et al., Gene Ther. 6:1988-1994 (1999)、 B. K. Martin et al., J. Immunol. 162:6663-6670 (1999)、 M. Kuiper et al., Adv. Exp. Med. Biol. 465:381-390(2000)参照)またはヒト第I相臨床試験(H. L. Kaufman et al. Hum. Gene Ther. 11:1065-1082 (2000)) でモデル化することができる。
【0245】
投与は既存の腫瘍または感染性疾患の処置に限定されず、個体においてこのような疾患の発症を予防するまたはそのリスクを軽減するため、すなわち、予防的使用のために使用することもできる。予防用ワクチンの可能性のある候補としては、癌を発症する高いリスクを有する、すなわち、ある種の癌の個人病歴または家族病歴を有する個体が含まれる。
【0246】
別の実施形態は、被験体のT細胞の活性化を増強するために、被験体に有効量のPD−1アンタゴニストまたはそれをコードする核酸を投与することにより、腫瘍浸潤白血球集団を増加させる方法を提供する。
【0247】
C.組合せ療法
開示されているPD−1アンタゴニスト組成物は、それを必要とする被験体に単独で、または1以上の付加的治療薬または挙げられているPD−1アンタゴニストの組合せと組み合わせて投与することができる。付加的治療薬は処置される症状、障害、または疾患に基づいて選択される。例えば、PD−1アンタゴニストは免疫応答を増強または促進する働きをする1以上の付加的薬剤と同時に投与することができる。
【0248】
1.化学療法薬
PD−1アンタゴニストは1以上の付加的治療薬と組み合わせることもできる。代表的な治療薬としては、限定されるものではないが、化学療法薬およびアポトーシス誘導薬が挙げられる。代表的な化学療法薬としては、限定されるものではないが、アムサクリン、ブレオマイシン、ブスルファン、カペシタビン、カルボプラチン,カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クロファラビン、クリサンパスターゼ、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシカルバミド、イダルビシン、イフォスファミド、イリノテカン、ロイコボリン、リポソームドキソルビシン、リポソームダウノルビシン、ロムスチン、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、マイトマイシン、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、ペントスタチン、プロカルバジン、ラルチトレキセド、サトラプラチン、ストレプトゾシン、テガフール−ウラシル、テモゾロマイド、テニポシド、チオテパ、チオグアニン、トポテカン、トレオスルファン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビンまたはその組合せが挙げられる。代表的なアポトーシス誘導薬としては、限定されるものではないが、フルダラビンタウロスポリン、シクロヘキシミド、アクチノマイシンD、ラクトシルセラミド、15d−PGJ(2)、およびその組合せが挙げられる。
【0249】
ある特定の実施形態においては、被験体において免疫応答を増大または増強するために二種以上のPD−1アンタゴニストを併用することができる。
【0250】
2.免疫応答を増強する融合タンパク質
他の実施形態においては、PD−1アンタゴニストは、免疫応答を増強する他のB7ファミリー共刺激分子を含有する組成物と同時投与することができる。他のB7共刺激ポリペプチドはいずれの起源種のものであってもよい。一実施形態においては、共刺激ポリペプチドは哺乳類種に由来する。好ましい実施形態においては、共刺激ポリペプチドはネズミまたはヒト起源である。一つの実施形態においては、ポリペプチドはB7.1である。有用なさらなるヒトB7ポリペプチドは、GenBank受託番号U04343を有する核酸によりコードされているB7−2ポリペプチドまたはGenBank受託番号NP_071436を有する核酸によりコードされているB7−H5ポリペプチドと少なくとも約80、85、90、95、または100%の配列同一性を有する。B7−H5はまた、PCT公開番号WO2006/012232号公報にも開示されている。
【0251】
好ましい実施形態においては、さらなるB7ファミリー分子が、本明細書に記載されているように、可溶性融合タンパク質として提供される。二量体または多量体を形成するB7分子の可溶性融合タンパク質は、それらのコグネイト受容体を架橋する能力を有し、それにより受容体アゴニストとして働く。
【0252】
一つの実施形態においては、第一の融合相手は、限定されるものではないが、B7−1、B7−2、またはB7−H5を含む、B7ファミリー分子の断片である。本明細書において、B7分子の断片は、全長タンパク質のより短いポリペプチドであるポリペプチドの任意のサブセットを意味する。有用な断片はそれらの天然リガンドと結合する能力を保持するものである。全長B7分子の断片であるB7ポリペプチドは一般に、その天然リガンドに結合する能力が全長B7分子の少なくとも20パーセント、30パーセント、40パーセント、50パーセント、60パーセント、70パーセント、80パーセント、90パーセント、95パーセント、98パーセント、99パーセント、100パーセントであるか、またはさらには100パーセントを超える。
【0253】
B7ポリペプチドの断片は、可溶性断片を含む。可溶性B7ポリペプチド断片は、産生細胞から放出、分泌またはそうでなければ抽出され得るB7ポリペプチドの断片である。B7ポリペプチドの可溶性断片は受容体ポリペプチドの細胞外ドメインの一部または全部を含み、細胞内ドメインおよび/または膜貫通ドメインの一部または全部を欠く。一実施形態においては、B7ポリペプチド断片はB7ポリペプチドの全細胞外ドメインを含む。他の実施形態においては、B7ポリペプチドの可溶性断片はB7生物活性を保持する細胞外ドメインの断片を含む。細胞外ドメインは膜貫通ドメイン由来の1、2、3、4または5個のアミノ酸を含み得ると考えられる。あるいは、細胞外ドメインはC末端、N末端またはその双方から1、2、3、4、または5個のアミノ酸が除去されていてもよい。
【0254】
一般に、B7ポリペプチドまたはその断片は、シグナル配列をコードする配列を含む核酸から発現される。一般に、未熟なポリペプチドからシグナル配列が切断されて、シグナル配列を欠く成熟ポリペプチドが生じる。B7ポリペプチドのシグナル配列は、ポリペプチドの発現レベル、分泌、溶解度または他の特性に影響を与えるために、標準的な分子生物学的技術を用いて別のポリペプチドのシグナル配列で置換することができる。シグナル配列を置換するために用いられるシグナル配列は当該技術分野で知られているいずれのものであってもよい。
【0255】
B7分子融合ポリペプチドは、野生型ポリペプチド配列に対して1以上のアミノ酸の欠失、置換、挿入または再配列を含むように変異誘発された変異型ポリペプチドを含む。有用な変異型B7融合タンパク質は、受容体ポリペプチドと結合する能力を保持するものである。変異型B7融合ポリペプチドは一般に、B7受容体ポリペプチドと結合する能力が全長B7分子の少なくとも20パーセント、30パーセント、40パーセント、50パーセント、60パーセント、70パーセント、80パーセント、90パーセント、95パーセント、98パーセント、99パーセント、100パーセントであるか、またはさらには100パーセントを超える。
【0256】
変異型B7−H5融合ポリペプチドは、アミノ酸の置換、欠失、または挿入のいずれかの組合せを有し得る。変異型ポリペプチドは、第一の融合相手、第二のポリペプチド、および/または任意のリンカーペプチド配列のいずれかまたは全ての中での1以上のアミノ酸の欠失、置換、挿入、または再配列を含み得る。
【0257】
D.組合せ療法
PD−1アンタゴニスト組成物はそれを必要とする被験体に単独で、または1以上の付加的治療薬と組み合わせて投与することができる。付加的治療薬は処置される症状、障害または疾患に基づいて選択される。例えば、PD−1アンタゴニストは免疫応答を増強または促進する働きをする1以上の付加的薬剤と同時に投与することができる。
【0258】
E.養子免疫伝達(adoptive transfer)
養子免疫T細胞療法は、確立された腫瘍を有する患者の処置にために有望な戦略であり、多くの場合、エクスビボ培養のT細胞の供給源である腫瘍浸潤リンパ球が得られる特定の癌に限定される。一つの実施形態は、腫瘍細胞においてPD−1受容体により媒介されるシグナル伝達を阻害または低減するのに有効な量のPD−1のアンタゴニストを、抗原特異的T細胞の養子免疫T細胞療法と組み合わせて投与することにより癌を処置する方法を提供する。養子免疫T細胞伝達は、PD−1のアンタゴニストを投与する前、または投与した後に投与することができるか、またはエクス・ビボで細胞に加えることができる。
【0259】
抗原特異的T細胞系統は、インビトロにおける抗原刺激と、その後のCD3/CD28ビーズの非特異的拡大により生成することができる。抗原特異的T細胞を拡大する能力は、IFN−γおよびグランザイムB酵素結合免疫吸着スポットを用いてアッセイすることができる。結果として得られるT細胞系統の表現型は、FOXP3発現CD4(+)T細胞の存在を含め、フローサイトメトリーにより評価することができる。末梢血単核細胞(PBMC)からの抗原特異的T細胞集団の増幅は通常、IL−2の存在下で最適な長さの抗原ペプチドでインビトロ刺激を繰り返すことで行われる。特定のT細胞の拡大をモニタリングするために一般に用いられるクロミウム放出アッセイで明らかにしたところ、リンホカイン活性化キラー細胞の活性化/拡大を回避するには通常、低用量のIL−2(10〜50U/mlの間)が用いられてきた。抗原ペプチドの濃度は0.1〜10μMであり得る。
【0260】
1.腫瘍特異的および腫瘍関連抗原
T細胞の拡大に有用な抗原は処置される被験体からの腫瘍の生検により得ることができる。抗原は腫瘍生検から生化学的に精製することができる。あるいは、抗原は組換えポリペプチドであってもよい。腫瘍により発現される抗原は腫瘍に特異的であり得るか、または非腫瘍細胞に比べて腫瘍細胞で高いレベルで発現され得る。癌細胞により独自に発現されるか、または適当な被験体に比べて悪性症状を有する被験体で著しく高い(例えば、統計学的に有意に上昇した)レベルで存在する、腫瘍関連抗原として知られる血清学的に定義されたマーカーなどの抗原マーカーがある特定の実施形態での使用に意図される。
【0261】
腫瘍関連抗原としては、例えば、細胞癌遺伝子によりコードされている産物または発現の異常な原癌遺伝子によりコードされている産物(例えば、neu、ras、trkおよびkit遺伝子によりコードされている産物)または突然変異型の増殖因子受容体または受容体様細胞表面分子(例えば、c−erb B遺伝子によりコードされている表面受容体)が挙げられる。他の腫瘍関連抗原としては、形質転換事象に直接関与すると思われる分子または発癌性形質転換事象に直接関与するとは思われないが腫瘍細胞により発現される分子(例えば、癌胎児性抗原、CA−125、黒色腫(melonoma)関連抗原など)が含まれる(例えば、米国特許第6,699,475号公報、Jager, et al., Int. J. Cancer, 106:817-20 (2003)、 Kennedy, et al., Int. Rev. Immunol., 22:141-72 (2003)、 Scanlan, et al. Cancer Immun., 4:1 (2004)参照)。
【0262】
細胞腫瘍関連抗原をコードする遺伝子としては、細胞癌遺伝子および発現の異常な原癌遺伝子が含まれる。一般に、細胞癌遺伝子は細胞の形質転換に直接関連のある産物をコードし、このためにこれらの抗原は免疫療法に特に好ましい標的である。一つの例として、発癌性形質転換に関与する細胞表面子をコードする腫瘍形成neu遺伝子がある。他の例としては、ras、kit、およびtrk遺伝子が挙げられる。これらの原癌遺伝子(癌遺伝子を形するように突然変異された正常な遺伝子)の産物は、異常な発現(例えば、過剰発現)を示すことがあり、この異常な発現は細胞の形質転換に関連している可能性がある。よって、原癌遺伝子によりコードされている産物を標的化することができる。いくつかの癌遺伝子は腫瘍細胞表面で発現される増殖因子受容体分子または増殖因子受容体様分子をコードする。一例として、c−erbB遺伝子によりコードされている細胞表面受容体がある。他の腫瘍関連抗原は悪性形質転換に直接関与する場合またはしない場合がある。しかしながら、これらの抗原はある特定の腫瘍細胞により発現されるので、有効な標的となる。いくつかの例として、癌胎児性抗原(CEA)、CA125(卵巣癌と関連)および黒色腫特異的抗原がある。
【0263】
卵巣癌およびその他の癌腫では、例えば、腫瘍関連抗原は、血清または粘膜分泌物などの容易に得られる体液のサンプル中で検出可能である。このようなマーカーの一つが、血流中にも放出され、血清中で検出可能な癌腫関連抗原であるCA125である(例えば、Bast, et al., N. Eng. J. Med., 309:883 (1983)、 Lloyd, et al., Int. J. Canc., 71:842 (1997)。卵巣癌および他の癌腫の診断および/または予後プロフィールを得る努力において、血清および他の体液中のCA125レベルが、他のマーカー、例えば、癌胎児性抗原(CEA)、扁平上皮癌抗原(SCC)、組織ポリペプチド特異的抗原(TPS)、シアリルTNムチン(STN)、および胎盤アルカリ性ホスファターゼ(PLAP)のレベルとともに測定されている(例えば、Sarandakou, et al., Acta Oncol., 36:755 (1997)、 Sarandakou, et al., Eur. J. Gynaecol. Oncol., 19:73 (1998)、 Meier, et al., Anticancer Res., 17(4B):2945 (1997)、 Kudoh, et al., Gynecol. Obstet. Invest., 47:52 (1999))。また神経芽腫にも高い血清CA125が伴っている場合があり(例えば、Hirokawa, et al., Surg. Today, 28:349 (1998))、中でも高いCEAおよびSCCが直腸直腸癌に伴っている場合がある(Gebauer, et al., Anticancer Res., 17(4B):2939 (1997))。
【0264】
モノクローナル抗体K−1との反応性によって定義される腫瘍関連抗原メソテリンは、上皮卵巣腫瘍、子宮頸腫瘍、および食道腫瘍を含む扁平上皮癌の大多数ならびに中皮腫に存在する(Chang, et al., Cancer Res., 52:181 (1992)、 Chang, et al., Int. J. Cancer, 50:373 (1992)、 Chang, et al., Int. J. Cancer, 51:548 (1992)、 Chang, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93:136 (1996)、 Chowdhury, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95:669 (1998))。MAb K−1を用いた場合、メソテリンは細胞関連腫瘍マーカーとして唯一検出可能であり、卵巣癌患者由来の血清またはOVCAR−3細胞により馴化された培地中には可溶性形態で見られたことはない(Chang, et al., Int. J. Cancer, 50:373 (1992))。しかしながら、構造的に関連のあるヒトメソテリンポリペプチドにはまた、悪性腫瘍を有する患者由来の体液で天然可溶性抗原として検出可能な明瞭に異なるメソテリン関連抗原(MRA)ポリペプチドなどの腫瘍関連抗原ポリペプチドも含む。
【0265】
腫瘍抗原は細胞表面分子を含み得る。構造が既知で、既知または記載されている機能(上記参照)を有する腫瘍抗原。
【0266】
2.腫瘍新生血管系に関連する抗原
タンパク質治療薬は腫瘍浸透において有効でないので、腫瘍の処置に有効でない可能性がある。腫瘍関連新生血管系は、タンパク質治療薬が腫瘍へ接近し得る容易に接近可能な経路を提供する。別の実施形態においては、融合タンパク質は、腫瘍に関連する新生血管系により発現される抗原と特異的に結合するドメインを含む。
【0267】
該抗原は腫瘍の新生血管系に特異性があり得るか、または正常な血管系に比べて腫瘍の新生血管系で高いレベルで発現され得る。正常な血管に比べて腫瘍関連新生血管系により過剰発現される抗原の例としては、限定されるものではないが、VEGF/KDR、Tie2、血管細胞接着分子(VCAM)、エンドグリンおよびα5β3インテグリン/ビトロネクチンが挙げられる。正常な血管系に比べて腫瘍関連新生血管系により過剰発現される他の抗原は当業者に知られており、開示されている融合タンパク質による標的化に好適である。
【実施例】
【0268】
本発明は、以下の実施例に限定されるものではないが、以下の実施例を参照すれば本発明をさらに理解できる。
【0269】
実施例1:B7−DCのPD−1への結合
ヒトB7−DC−IgのPD−1結合活性を、ELISAにより評価した。96ウェルELISAプレートを、BupH Carbonate/Bicarbonate pH9.4バッファー(Pierce)で希釈した0.75μg/mLの組換えヒトPD−1/Fc(R&D Systems)100μLで2時間コーティングした後、BSA溶液(Jackson ImmunoResearch)を用いて90〜120分間ブロックした。連続誘導体希釈したヒトB7−DC−IgならびにヒトIgG1イソ型対照を90分間結合させた。結合したB7−DC−Igは、100μLの0.5μg/mLビオチン結合抗ヒトB7−DCクローンMIH18(eBioscience)、次いで1:1000希釈HRP−ストレプトアビジン(BD Bioscience)およびTMB基質(BioFX)を用いて検出した。プレートリーダー(Molecular Devices)を用いて450nmの吸光度を読み取り、データを、SoftMaxで4パラメーターロジスティック適合を用いて解析した。
【0270】
ネズミB7−DC−IgのPD−1結合活性を、ELISAにより評価した。96ウェルのELISAプレートを、BupH Carbonate/Bicarbonate pH9.4バッファー(Pierce)で希釈した0.75μg/mLの組換えマウスPD−1/Fc(R&D Systems) 100μLを用いて2時間コーティングし、次いでBSA溶液(Candor-Bioscience)を用いて90分間ブロックした。連続希釈したネズミB7−DC−Ig(野生型、ならびにPD−1への低減された結合のために選択されたD111SおよびK113S変異株)、ならびにネズミIgG2aイソ型対照を90分間結合させた。結合したB7−DC−Igは、100μLの0.25μg/mLビオチン結合抗マウスB7−DCクローン112(eBioscience)、次いで1:2000希釈HRP−ストレプトアビジン(BD Bioscience)およびTMB基質(BioFX)を用いて検出した。プレートリーダー(Molecular Devices)を用いて450nmの吸光度を読み取り、データを、SoftMaxで4−パラメーターロジスティック適合を用いて解析した。
【0271】
図1Aおよび1Bは、PD−1結合ELISAにおける、OD450対B7−DC−Ig(μg/ml)の量の線グラフを示す。図4A 1Aは、4つの異なるロットのヒトB7−DC−Igの結合を示す。図4B 1Bは、野生型ネズミB7−DC−Ig(円)、DS変異株(D111Sを置換したB7−DC−Ig、三角)、およびKS変異株(K113Sを置換したB7−DC−Ig、四角)、およびネズミIgG2aイソ型対照(ひし形)の結合を示す。
【0272】
実施例2:B7−DCのPD−1発現CHO細胞への結合
B7−DC−Igを、最初にアロフィコシアニン(APC)と結合させ、次いでPD−1を構成的に発現するCHO細胞系統またはPD−1を発現しない親CHO細胞とともに種々な濃度でインキュベートした。結合は、フローサイトメトリーにより分析した。図2は、プローブ濃度(x軸)の関数としての、B7−DC−Ig−APCの蛍光強度の中央値(MFI)(y軸)を示す。B7−DC−Ig−APCはCHO.PD−1細胞(黒円)に結合するが、トランスフェクトされていないCHO細胞には結合しない(灰色三角)。
【0273】
実施例3:PD−1への結合に関するB7−DC−IgのB7−H1との競合
B7−H1−Igを、最初にアロフィコシアニン(APC)と結合させた。B7−H1−Ig−APCを、プローブおよび細胞混合物に添加する前に、種々の濃度の非標識B7−DC−Igを、最初に、PD−1を構成的に発現するCHO細胞系統とインキュベートした。図3は、加えた非標識B7−DC−Igコンペティターの濃度(x軸)の関数としての、B7−H1−Ig−APCの蛍光強度の中央値(MFI)(y軸)を示す。非標識B7−DC−Ig濃度が増加するにつれて、CHO細胞に結合するB7−H1−Ig−APC量は減少し、このことは、PD−1への結合に関してB7−DC−IgがB7−H1と競合することを実証している。
【0274】
実施例4:P815肥満細胞腫モデル
ネズミB7−DC−Igのインビボ活性を、P815肥満細胞腫腫瘍モデルにおいて試験した。P815肥満細胞腫細胞は、メチルコラントレン(MCA)処置後のDBA/2マウス由来である。5×10細胞の皮下注射は、腫瘍接種後およそ35日に死亡を引き起こす可能性がある。
【0275】
DBA/2マウス(6〜10週齢、メス)に、最初に5×10個の生きているP815細胞を側腹部に皮下注射して誘発した。6日後、前記マウスを、ネズミB7−DC−Igの腹腔内注射により処置した。図4に示した投与計画は、ネズミB7−DC−Ig100μg/注射(およそ5mg/kg)、2回/週、最大6用量までであった。対照群は、ビヒクルのみ、またはネズミIgGにより処置した。腫瘍サイズは、デジタルキャリパーを用いて2〜3日毎に測定した。マウスの腫瘍サイズが1000mmに達するか、または超えた場合には、米国赤十字社(ARC、Amplimmune社の動物飼育施設)の所内動物実験委員会(IACUC)により承認されたプロトコールに従ってマウスを安楽死させ、死亡と定義した。生存している腫瘍のないマウスは、52日目にP815腫瘍細胞を再負荷した。
【0276】
表1および図4に示されるように、ビヒクルまたは対照マウスIgGを用いて処置されたすべてのマウスは、38日目までにそれらの腫瘍容量がIACUCの許容限界に達したため、安楽死させる必要があった。ネズミB7−DC−Ig処置マウスの5匹中4匹が、処置に反応した:2匹のマウスにおいて腫瘍は根絶され、さらに2匹のマウスはネズミB7−DC−Ig処置期間中における腫瘍増殖の遅延を示した。
【0277】
【表1】

【0278】
図5A−Cは、ネズミB7−DC−Igを用いるマウスにおける腫瘍根絶を示す。腫瘍のないマウスは、次に、52日目に最初の接種部位の反対側の側腹部に5×10個のP815細胞を再負荷した。最初の接種後74日を経過しても依然としてマウスは腫瘍のないままであったが、P815細胞で誘発を行ったナイーブマウスはすべて、腫瘍を発現した。このことは、P815細胞を接種され、ネズミB7−DC−Igで処置されたマウスは、P815肥満細胞腫に対して長期にわたり免疫性を発現することを示唆している。
【0279】
CTX+B7−DC−Ig投与計画の合理性
ネズミB7−DC−Ig単独は、比較的免疫原性が高いと考えられているP815モデルにおいて効果的であったが、より急速に進行し、免疫原性のより低い腫瘍タイプに対しては最小限の活性を示す。ヒト癌患者において効果的な抗腫瘍免疫応答を促進することもまた、困難であると発明者らによれば予想される。
【0280】
B7−DC−Igおよびそのネズミ類似体の活性を促進するために、低用量のCTXが安全かつ効果的に癌免疫療法の活性を高め得ることが実証された試験に基づき、CTXが処置投与計画に組み入れられた。一般に、ヒトでは100〜300mg/m2、マウスでは20〜200mg/kgの用量が用いられる。これらの用量は治療量以下であり、直接的な抗腫瘍活性は持たない。
【0281】
癌患者およびネズミにおける癌の同系および遺伝的モデルでは、低用量のCTXはTregの選択的枯渇を引き起こす。Tregは腫瘍微小環境に比較的豊富に存在し、抗腫瘍免疫応答の抑制において主要な役割を果たしている。抗原刺激、ワクチン、またはサイトカインによる処置に先立つCTX投与は、より機能的な抗腫瘍免疫応答を促進し、腫瘍根絶の強化をもたらす。単独薬剤として、または癌ワクチンもしくはサイトカインと組み合わせて低用量CTXを投与する多くの臨床試験では、耐容性が非常に良好であり、免疫増強および臨床的有効性の証拠が示された。
【0282】
低用量CTX使用の多数の経験および安全性、その免疫増強物質としての特性評価、ならびにAmplimmune社で作成されたデータに基づき、B7−DC−IgはCTX投与に続いてB7−DC−Ig投与を行う標準的な投与計画により投与されるべきである。100mg/kgの用量が動物試験において用いられた。CTXは、B7−DC−IgまたはネズミB7−DC−Ig処置が開始される24時間前に投与される。別の投薬計画、例えばCTXのメトロノーム療法(metronomic)も用いることができる。
【0283】
実施例6:CT26腫瘍モデル
マウス結腸直腸腫瘍細胞系統、CT26をATCCから入手した。ATCCのガイドラインに従って、4代継代でマスターセルバンクを作製した。細胞を試験し、マイコプラズマおよび他の病原体が混入していないことを確認した。腫瘍細胞の一つのバイアルが低温保存株から解凍されており、接種前に2代継代増殖していた。
【0284】
CT26細胞は、30mLの完全培地(RPMI+10%FBS、2mM L−Glu、および1×P/S)を用いて1:5希釈して分割し2日間培養、または30mLの完全培地を用いて1:10希釈し3日間培養した。
【0285】
培地を吸引してCT26細胞を採取し、フラスコを5mLのPBSですすぎ、5mLのトリプシンを加えて37℃にて2分間インキュベートし、次いで10mLの完全培地で中和した。600×g(〜1000rpm)で5分間遠心分離した後、培地を吸引して(sspirated)細胞ペレット10mlのプレーンRPMIを用いてピペット操作により再懸濁させた。この洗浄ステップを3回繰り返した。
【0286】
接種された細胞の細胞数および生存力は、適切な希釈溶液(例えば、1:5希釈、10μL細胞+40μLトリパンプルー)を用いるトリパンプルー色素染色により分析し、最終洗浄工程の時にNOVA細胞計数により確認した。
【0287】
細胞生存力は、一般に接種に対し95%より大きかった。
【0288】
CT26細胞は、最初の接種のためにプレーンRPMIを用いて6.7×105細胞/mLに希釈し、氷上で保存した。通常、各マウスには、150□L(1×105細胞)を接種した。
【0289】
9日目に、すべての担癌マウスを最初にラット用ケージにまとめ、それらのマウスを実験群に無作為に分けた。CTX溶液を1×PBSにより再構成して4mg/mLとした。マウス腹腔内に(IP)0.5mLのCTX溶液を注射し、結果として20グラムのマウスに対して2mg、すなわち100mg/kgとなった。
【0290】
10日目に、マウスに0.5mLのB7−DC−Ig(0.2mg/mL)を腹腔内注射し、結果として20グラムのマウスに対して0.1mg、すなわち5mg/kgとなった。同じ用量を1週間に2回、4週間にわたり合計8用量を投与した。腫瘍増殖は、B7−DC−Igを投与した日から開始し腫瘍を週に2回、デジタルキャリパーを用いて計測することによりモニターした。腫瘍容量は、以下に示すように計算した:
腫瘍容量=π(Dshort)2×(Dlong)/6=〜0.52×(Dshort)2×(Dlong)
【0291】
腫瘍容量が2000mmであるか、または腫瘍接種部位に皮膚潰瘍および感染がある場合には、マウスを安楽死させ、試験から除外した。
【0292】
実施例5:シクロホスファミドおよびB7−DC−Igの組合せが定着腫瘍を根絶し得る
9〜11週齢のBalb/Cマウスの皮下に、上記のように1.0×105のCT26結腸直腸腫瘍細胞を移植した。腫瘍移植後10日目に、マウスに100mg/kgのシクロホスファミドを投与した。B7−DC−Ig処置は1日後である11日目に開始した。マウスを、100μgのB7−DC−Igを用いて、1週間に2用量、4週間にわたり合計8用量で処置した。CTX+B7−DC−Ig処置投与計画を受けたマウスの75%において44日までに定着腫瘍が根絶され、一方、対照CTX単独群のマウスは全例が、腫瘍増殖の結果死亡したか、または腫瘍がIACUCにより承認されたサイズを超えたため安楽死させた(結果は図6に示す)。これらの結果は、定着腫瘍に対する処置投与計画が単なる予防ではなく有効であることを実証している。
【0293】
実施例6:シクロホスファミドおよびB7−DC−Igの組合せが定着腫瘍を根絶し、腫瘍再負荷から保護し得る
上記実験でCT26結腸直腸定着腫瘍を根絶したマウスに、44日目および70日目に1×105個のCT26細胞を再負荷した。再負荷により腫瘍が増殖しなかったことは、シクロホスファミドおよびB7−DC−Igの組合せ処置が、長期にわたる抗腫瘍免疫を発展させたことを示唆している。ビヒクル対照群のマウスは全例が腫瘍を発現した(結果は図7に示す)。これらの結果は、処置投与計画の定着腫瘍に対する有効性、ならびにシクロホスファミドおよびB7−DCIgの組合せ処置が腫瘍抗原に対する記憶応答をもたらしたことを示している。
【0294】
実施例7:シクロホスファミドおよびB7−DC−Igの組合せが腫瘍特異的、記憶細胞傷害性Tリンパ球を生じさせ得る
上記実験でCT26結腸直腸定着腫瘍を根絶したマウスに、44日目に2.5×105個のCT26細胞を再負荷した。7日後、マウスの脾臓を単離した。マウス脾細胞を、Golgi遮断薬(BD BioScience)の存在下、5または50μg/mLのオボアルブミン(OVA)またはAH1ペプチドとともに6時間パルス処理し、CD8+/IFNγ+T細胞を評価することにより記憶Tエフェクター細胞を分析した。図8の結果は、CT26腫瘍根絶マウスにおいて多量のCT26特異的Tエフェクター細胞が存在することを示している。
【0295】
特に定義しない限り、本明細書において用いられたすべての技術的および科学的用語は、開示された発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0296】
当業者ならば、通常の実験を用いて、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識あるいは確認することができる。このような等価物も以下の特許請求の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫応答を調節する方法であって、腫瘍に対する免疫応答を誘導する、増大させる、または増強するために有効な量のPD−1アンタゴニストを投与することを含んでなり、その分子の用量、その分子の投与時期、および/またはその分子の親和性によりリガンドのPD−1受容体への間欠的接近を可能にする、方法。
【請求項2】
PD−1アンタゴニストが、内因性PD−L1と、PD−1との結合を阻害または低減する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
PD−1アンタゴニストが、内因性PD−L2と、PD−1との結合を阻害または低減する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
PD−1アンタゴニストがPD−1と結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
PD−1アンタゴニストがPD−1、PD−L1、PD−L2、B7.1、およびそれらの断片からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
インビボ投与後に、前記分子がPD−1またはそのリガンドと、3か月以内の期間結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
二種以上のPD−1アンタゴニストが投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
腫瘍が、膀胱癌、脳癌、乳癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、食道癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、鼻咽頭癌、膵臓癌、前立腺癌、皮膚癌、胃癌、子宮癌、卵巣癌、精巣癌および血液性癌からなる群から選択される癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
腫瘍に対する免疫応答を増強するために、PD−1アンタゴニストと組み合わせて腫瘍抗原を投与することさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
PD−1アンタゴニストがPD−1リガンドの融合タンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
融合タンパク質が、PD−1と結合し得るPD−L2の細胞外ドメインまたはその断片を含んでなる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
融合タンパク質が配列番号57のアミノ酸配列を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
PD−1アンタゴニストとともに、免疫調節剤、Tregの機能を枯渇させる、または阻害する薬剤、および共刺激分子からなる群から選択される付加的な有効薬剤を投与することをさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
付加的な有効薬剤がCD4+CD25+Tregの機能を枯渇させる、または阻害する薬剤である、請求項17に記載の方法。
【請求項15】
CD4+CD25+Tregの機能を枯渇させる、または阻害する薬剤がシクロホスファミドである、請求項17に記載の方法。
【請求項16】
抗原提示細胞機能を増強させるための請求項1に記載の方法であり、APCにおけるPD−1のシグナル伝達を阻害、低減もしくは遮断する、または疾病の除去を増強するための有効な量のPD−1アンタゴニストをAPCと接触させることを含んでなる、方法。
【請求項17】
インビボにおいてPD−1受容体のリガンドと結合し、PD−1受容体シグナル伝達を低減または阻害するのに有効な量のPD−1受容体アンタゴニストを含んでなる、組成物。
【請求項18】
PD−1アンタゴニストが、B7−H1ポリペプチドと結合し、B7−H1ポリペプチドと、PD−1受容体との結合を阻害または低減するB7−DCポリペプチドまたはその断片を含んでなる、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記断片が、B7−H1と結合するB7−DCの細胞外ドメインもしくはその断片、またはB7−DCと結合するB7−H1の細胞外ドメインもしくはその断片を含んでなる、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
PD−1アンタゴニストが融合タンパク質を含んでなる、請求項17に記載の組成物。
【請求項21】
前記融合タンパク質が、PD−1受容体を介したシグナル伝達を誘発せずにPD−1受容体と結合する、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
PD−1受容体アンタゴニストが、B7−DCポリペプチドと結合し、B7−DCポリペプチドと、PD−1受容体との結合を阻害または低減するB7−H1ポリペプチドを含んでなる、請求項17に記載の組成物。
【請求項23】
PD−1受容体アンタゴニストが融合タンパク質を含んでなる、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
PD−1を介したシグナル伝達を誘発することなく、インビボにおいてPD−1と結合するのに有効な量のポリペプチドを含んでなる、組成物。
【請求項25】
前記ポリペプチドが、シグナル伝達を誘発することなくPD−1と結合するように改変されたB7−DCまたはB7−H1ポリペプチドを含んでなる、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記ポリペプチドが、そのポリペプチドがPD−1を介したシグナル伝達を誘発することなくPD−1と結合するように改変されたB7−DCまたはB7−H1の変異体細胞外ドメインを含んでなる、請求項24に記載の組成物。
【請求項27】
a)第一の融合相手と、
b)第二の融合相手と
を含んでなり、
第一の融合相手が、PD−1を介したシグナル伝達を誘発することなくPD−1と結合するように改変されたPD−1のリガンドの変異体細胞外ドメインまたはその断片を含んでなり、かつ該第一の融合相手が第二の融合相手と直接融合されているか、または場合により、第二の融合相手と融合されているリンカー配列と融合されている、融合ポリペプチド。
【請求項28】
第二の融合相手がIg重鎖定常領域の1以上のドメインを含んでなる、請求項27に記載の融合ポリペプチド。
【請求項29】
第二のポリペプチドがヒト免疫グロブリンCγ1鎖のヒンジ、C2、およびC3領域に相当するアミノ酸配列を含んでなる、請求項28に記載の融合ポリペプチド。
【請求項30】
第一のポリペプチドが、PD−1を介したシグナル伝達を誘発することなくPD−1と結合するように改変されたB7−DCまたはB7−H1の細胞外ドメインを含んでなる、請求項27に記載の融合ポリペプチド。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2012−510429(P2012−510429A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525159(P2011−525159)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【国際出願番号】PCT/US2009/054971
【国際公開番号】WO2010/027828
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(511049439)アンプリミューン、インコーポレーテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】AMPLIMMUNE, INC.
【Fターム(参考)】