説明

PEF−TU発現ユニット

本発明は、遺伝子転写および発現を調節する核酸配列、新規なプロモーターおよび発現ユニット、遺伝子転写速度および/または発現速度を変化もしくは生起させる方法、前記発現ユニットを含んでなる発現カセット、変化もしくは生起させた転写速度および/または発現速度を有する遺伝的に改変された微生物、ならびに前記遺伝的に改変された微生物を培養することにより生合成産物を生成する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子の転写および発現を調節するための核酸配列の使用、新規なプロモーターおよび発現ユニット自体、遺伝子の転写速度および/または発現速度を変化させるかまたは生起する方法、前記発現ユニットを含んでなる発現カセット、変化したかまたは生起された転写速度および/または発現速度を伴う遺伝的に改変された微生物、ならびに前記遺伝的に改変された微生物を培養することにより生合成産物を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多様な生合成産物、例えば精製化学製品(fine chemical)、中でも、アミノ酸、ビタミン類、またさらにはタンパク質などが細胞中で天然の代謝過程によって産生され、化粧品、飼料、食品および製薬産業をはじめとする多くの産業分野で使用されている。これらの物質は精製化学製品/タンパク質と総称されるが、中でも有機酸、タンパク質生成(proteinogenic)およびタンパク質非生成(non-proteinogenic)アミノ酸の両者、ヌクレオチドおよびヌクレオシド、脂質および脂肪酸、ジオール、炭水化物、芳香族化合物、ビタミン類および補因子、ならびにタンパク質および酵素を含む。これらの生産は最も便宜的には、特定の所望の物質を大量に産生および分泌するように開発された細菌を培養することによって、工業規模で実施される。この目的に特に好適な生物はコリネ型細菌、グラム陽性非病原性細菌である。
【0003】
アミノ酸はコリネ型細菌、特にコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)の株の発酵によって調製されることが知られている。多大な重要性のため、その生産方法の改良について継続した研究がなされている。方法の改良は例えば以下のような発酵技術面についてである:発酵中の撹拌および酸素供給、または栄養培地の組成(例えば糖濃度)、あるいはイオン交換クロマトグラフィーまたはスプレー乾燥によるなどの、産物を取得するための作業、あるいは微生物自体の固有の性能。
【0004】
組換えDNA技術の方法もここ数年、精製化学製品/タンパク質を産生するコリネバクテリウム株についての菌株の改良に利用されてきており、これは、個々の遺伝子を増幅し、精製化学製品/タンパク質の産生への影響を調べることによる。
【0005】
精製化学製品、アミノ酸もしくはタンパク質の生産方法の開発、または精製化学製品、アミノ酸もしくはタンパク質の既存の生産方法の生産性の増大もしくは改善のための他の手段は、1以上の遺伝子の発現を増大もしくは変化させ、かつ/または好適なポリヌクレオチド配列によってmRNAの翻訳に影響を与えることである。これに関しては、影響を与えることとしては、増大させること、低下させること、あるいは時系列発現パターンなどの遺伝子の発現の他のパラメーターが挙げられる。
【0006】
細菌の調節配列の種々の構成要素は当業者に公知である。調節因子のための結合サイト(オペレーターとも称される)、RNAポリメラーゼホロ酵素のための結合サイト(−35および−10領域とも称される)、ならびにリボソーム16S RNAのための結合サイト(リボソーム結合サイトもしくはシャイン・ダルガノ配列とも称される)が区別されている。
【0007】
シャイン・ダルガノ配列とも称されるリボソーム結合サイトの配列とは、本発明の目的にとっては、翻訳開始コドンの上流の20塩基までに位置するポリヌクレオチド配列を意味する。
【0008】
文献(E. coli and S. typhimurium、Neidhardt F.C. 1995 ASM Press)に、シャイン・ダルガノ配列のポリヌクレオチド配列の構成、塩基の配列文字列ばかりでなく、シャイン・ダルガノ配列中に存在するポリヌクレオチド配列の距離が翻訳開始率にかなり影響することが報告されている。
【0009】
プロモーター活性を有する核酸配列は多様な様相でmRNAの形成に影響し得る。その活性が生物の生理学的増殖期と無関係なプロモーターは構成性と称される。それに対して、他のプロモーターは、外部からの化学的および物理的刺激、例えば酸素、代謝物、熱、pH等に反応する。その他のものはその活性が増殖期の違いに強く依存する。例えば、微生物の対数増殖期中に特に顕著な活性を示すプロモーター、あるいは微生物の増殖の静止期には倹約的なプロモーターが文献に記載されている。プロモーターの両方の特性が代謝経路に応じて精製化学製品およびタンパク質の産生についての生産性に有益な影響を有すると見られる。
【0010】
例えば、増殖中に遺伝子の発現のスイッチを切るが、最適増殖後にはスイッチを入れるプロモーターを使用して、代謝物の産生を制御する遺伝子を調節することができる。それにより、改変された菌株は出発菌株と同様の増殖パラメーターを示すが、細胞あたりではより多くの産物を産生する。このタイプの改変では力価(産物g/リットル)およびC収率(産物g/C源g)の両方を増大させることができる。
【0011】
コリネバクテリウムの菌種について、遺伝子発現を増大または減少させるのに使用することができるヌクレオチド配列を単離することが、すでに可能になっている。これらの調節されたプロモーターは、細胞の内的および/または外的条件に応じて、ある遺伝子を転写する速度を増大または低下させることができる。いくつかの場合、インデューサーとして知られる特定の因子の存在が、プロモーターの転写速度を刺激することができる。インデューサーはプロモーターからの転写に直接または間接的に影響することがある。サプレッサーとして知られる別のクラスの因子は、プロモーターからの転写を低下させるか抑制することができる。インデューサーと同様に、サプレッサーも直接または間接的に作用することができる。しかし、温度で調節されるプロモーターも知られている。この場合、こうしたプロモーターの転写のレベルは、例えば成長温度をその細胞の通常の増殖温度よりも上昇させることによって、増大または低下させることができる。
【0012】
C.グルタミカム由来の少数のプロモーターが現在までに知られている。C.グルタミカム由来のリンゴ酸シンターゼ遺伝子のプロモーターがDE 4440118に記載されている。このプロモーターを、あるタンパク質をコードする構造遺伝子の上流に挿入した。かかる構築物のコリネ型細菌への形質転換後、そのプロモーターの下流の構造遺伝子の発現が調節される。構造遺伝子の発現は適切なインデューサーを培地に添加するとすぐに誘導される。
【0013】
Reinscheidら、Microbiology 145:503 (1999)には、C.グルタミカム由来のpta−ackプロモーターとレポーター遺伝子(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ)との転写融合体が記載されている。このような転写融合体を含んでなるC.グルタミカムの細胞は、酢酸塩含有培地上での増殖時にレポーター遺伝子の発現の増大を示した。これと比較すると、グルコース上で増殖させた形質転換された細胞はこのレポーター遺伝子の発現の増大を示さなかった。
【0014】
Pa'tekら、Microbiology 142:1297 (1996)には、C.グルタミカムの細胞中のレポーター遺伝子の発現を増強することができる、C.グルタミカム由来のいくつかのDNA配列が記載されている。C.グルタミカムプロモーターのコンセンサス配列を明らかにするため、これらの配列同士を比較した。
【0015】
遺伝子発現を調節するのに使用することができるC.グルタミカム由来の別のDNA配列が、WO 02/40679に記載されている。これらの単離されたポリヌクレオチドは、遺伝子発現を増大させるかまたは低下させるのに使用することができる、コリネバクテリウム・グルタミカム由来の発現ユニットである。この特許出願にはさらに、このコリネバクテリウム・グルタミカム由来の発現ユニットを異種起源の遺伝子と連結させた組換えプラスミドが記載されている。そこに記載された、コリネバクテリウム・グルタミカム由来のプロモーターを異種起源の遺伝子と融合させる方法は、とりわけアミノ酸生合成の遺伝子を調節するために利用することができる。
【特許文献1】DE 4440118
【特許文献2】WO 02/40679
【非特許文献1】E. coli and S. typhimurium、Neidhardt F.C. 1995 ASM Press
【非特許文献2】Reinscheidら、Microbiology 145:503 (1999)
【非特許文献3】Pa'tekら、Microbiology 142:1297 (1996)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
有益な特性を有するさらなるプロモーターおよび/または発現ユニットを提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
我々はこの目的が、
A) 配列番号1の核酸配列、または
B) ヌクレオチドの置換、挿入もしくは欠失により該配列から誘導され、かつ配列番号1の配列と核酸レベルで少なくとも90%の同一性を有する配列、または
C) ストリンジェントな条件下で配列番号1の核酸配列とハイブリダイズする核酸配列、または
D) A)、B)もしくはC)の配列と機能的に等価なフラグメント
を含んでなる、プロモーター活性を有する核酸の、遺伝子の転写のための使用によって達成されることを見出した。
【0018】
「転写」とは、本発明において、DNA鋳型から出発して相補的RNA分子を作り出す過程を意味する。RNAポリメラーゼ、いわゆるシグマ因子および転写調節タンパク質などのタンパク質がこの過程に関与する。次に合成されたRNAを翻訳過程で鋳型として使用し、これがその後生合成において活性があるタンパク質をもたらす。
【0019】
生合成において活性なタンパク質が産生される形成速度とは転写および翻訳の速度の結果である。本発明によれば、両方の速度に影響を与え、それによって微生物での産物の形成速度に影響を与えることができる。
【0020】
「プロモーター」または「プロモーター活性を有する核酸」とは、本発明において、転写対象の核酸と機能的に連結し、この核酸の転写を調節する核酸を意味する。
【0021】
これに関して、「機能的連結」とは、例えばプロモーター活性を有する本発明の核酸の1つと、転写対象の核酸配列、および適当ならば、さらなる調節エレメント(例えば核酸の転写を保証する核酸配列)、ならびに例えばターミネーターなどについての、それぞれの調節エレメントが核酸配列の転写において機能を発揮することができるような様式での連続的配置を意味する。そのためには化学的な意味での直接的連結は絶対に必要なものではない。遺伝的制御配列、例えばエンハンサー配列などは、もっと離れた位置から、または別のDNA分子からでさえも、標的配列に対してその機能を発揮することができる。転写対象の核酸配列が本発明のプロモーター配列の後ろ(すなわち3’末端)に位置し、2つの配列同士が共有結合していることが好ましい。これに関して、プロモーター配列とトランスジェニックでの発現対象の核酸配列の間の距離は、好ましくは200塩基対より小さく、特に好ましくは100塩基対未満、非常に好ましくは50塩基対未満である。
【0022】
「プロモーター活性」とは本発明において、一定時間内にそのプロモーターによって形成されるRNAの量、すなわち転写速度を意味する。
【0023】
本発明における「プロモーター比活性」とは、各プロモーターについての、一定時間内にそのプロモーターによって形成されるRNAの量を意味する。
【0024】
本発明における用語「野生型」とは、適切な出発微生物を意味する。
【0025】
文脈に応じて、用語「微生物」は出発微生物(野生型)または本発明の遺伝的に改変された微生物、あるいはその両方を意味する。
【0026】
好ましくは、また特には微生物もしくはその野生型を明白に指定できない場合には、「野生型」は、プロモーター活性もしくは転写速度を変化させるかまたは生起することについて、発現活性もしくは発現速度を変化させるかまたは生起することについて、および生合成産物量の増大についての各場合での参照生物を意味する。
【0027】
好ましい実施形態では、この参照生物はコリネバクテリウム・グルタミカムATCC 13032である。
【0028】
好ましい実施形態では、使用する出発微生物はすでにその所望の精製化学製品を産生することができるものである。これに関して、特に好ましい微生物はコリネバクテリウム属の細菌、そして特に好ましい精製化学製品はL−リジン、L−メチオニンおよびL−トレオニンであって、特に好ましいのは、すでにL−リジン、L−メチオニンおよび/またはL−トレオニンを産生することができるそれらの出発微生物である。これらのものとして、例えば、アスパルトキナーゼをコードする遺伝子(ask遺伝子)が脱調節されているか、あるいはフィードバック阻害が失われたかまたは低下しているコリネバクテリア属細菌が特に好ましい。こうした細菌は、例えば、フィードバック阻害の低下もしくは消失をもたらす突然変異、例えば、ask遺伝子の突然変異T311Iを有する。
【0029】
野生型と比較してある遺伝子に関して「生起されたプロモーター活性」または生起された転写速度といった場合には、したがって、野生型と比較して、野生型ではそのようには存在しなかったRNAの形成が引き起こされている。
【0030】
ある遺伝子に関して野生型と比較して変化したプロモーター活性または転写速度といった場合には、したがって、野生型と比較して、一定時間内に産生されるRNAの量が変化している。
【0031】
これに関して「変化した」とは、好ましくは増大したことまたは低下したことを意味する。
【0032】
これは例えば本発明の内在性プロモーターについて、そのプロモーターを突然変異させるか、あるいはそのプロモーターを刺激または阻害して、プロモーター比活性を増大または低下させることによって遂行することができる。
【0033】
別の可能性は、例えばプロモーター活性を有する本発明の核酸によるか、または増大したプロモーター比活性を伴う核酸により、微生物での遺伝子の転写を調節することによって、プロモーター活性または転写速度の増大を達成することであり、ここで該遺伝子はプロモーター活性を有する該核酸との関係では異種起源である。
【0034】
プロモーター活性を有する本発明の核酸によるか、または増大したプロモーター比活性を伴う核酸による微生物での遺伝子の転写の調節は、好ましくは、
変化したプロモーター比活性を適宜伴う、プロモーター活性を有する本発明の1以上の核酸を該微生物のゲノムに導入することにより、変化したプロモーター比活性を適宜伴う、プロモーター活性を有する本発明の核酸の制御下に、1以上の内在性遺伝子の転写が行われるようになるステップ、または
該微生物のゲノムに1以上の遺伝子を導入することにより、変化したプロモーター比活性を適宜伴う、プロモーター活性を有する本発明の内在性核酸の制御下に、1以上の導入された該遺伝子の転写が行われるようになるステップ、または
変化したプロモーター比活性を適宜伴う、プロモーター活性を有する本発明の核酸と、機能的に連結された1以上の転写対象の核酸とを含んでなる1以上の核酸構築物を該微生物に導入するステップ、
によって達成される。
【0035】
プロモーター活性を有する本発明の核酸としては、
A) 配列番号1の核酸配列、または
B) ヌクレオチドの置換、挿入もしくは欠失により該配列から誘導され、かつ配列番号1の配列と核酸レベルで少なくとも90%の同一性を有する配列、または
C) ストリンジェントな条件下で配列番号1の核酸配列とハイブリダイズする核酸配列、または
D) A)、B)もしくはC)の配列と機能的に等価なフラグメント、
が含まれる。
【0036】
配列番号1の核酸配列は、コリネバクテリウム・グルタミカム由来のタンパク質翻訳伸長因子TU(P EF−TU)のプロモーター配列である。配列番号1は野生型のプロモーター配列に相当する。
【0037】
本発明はさらに、この配列からヌクレオチドの置換、挿入または欠失によって誘導された配列を含んでなり、かつ配列番号1の配列と核酸レベルで少なくとも90%の同一性を有する、プロモーター活性を有する核酸に関する。
【0038】
本発明のプロモーターについての本発明の別の天然の例は、例えばそのゲノム配列が知られている種々の生物から、データベースからの核酸配列と配列番号1の配列との同一性の比較によって、容易に見出すことができる。
【0039】
本発明の人工的プロモーター配列は、配列番号1の配列から出発し、例えばヌクレオチドの置換、挿入または欠失による人工的変異および突然変異によって、容易に見出すことができる。
【0040】
本説明中の用語「置換」は、1個または数個のヌクレオチドの1個または数個のヌクレオチドによる交換を意味する。「欠失」は、ヌクレオチドと直接結合との交換である。挿入は、直接結合と1個または数個のヌクレオチドとの形式上の交換による核酸配列中へのヌクレオチドの挿入である。
【0041】
2つの核酸間の同一性とは、各場合の核酸の完全長にわたるヌクレオチドの同一性を意味し、特にClustal法(Higgins DG, Sharp PM. Fast and sensitive multiple sequence alignments on a microcomputer. Comput Appl. Biosci. 1989 Apr;5(2):151-1)を使用し、以下のパラメーターを設定して、Informax社(USA)製のVector NTI Suite 7.1 softwareでの比較によって算出した同一性である:
多重アライメントパラメーター:
ギャップ開放ペナルティ 10
ギャップ伸長ペナルティ 10
ギャップ分離ペナルティ範囲 8
ギャップ分離ペナルティ off
アラインメントディレイについての%同一性 40
残基特異的ギャップ off
親水性残基ギャップ off
トランジション重み付け 0
ペアワイズアラインメントパラメーター:
FASTアルゴリズム on
K−tupleサイズ 1
ギャップペナルティ 3
ウインドウサイズ 5
ベストダイアゴナルの数 5
【0042】
したがって配列番号1の配列と少なくとも90%の同一性を有する核酸配列とは、特に上記のパラメーターセットを用いた上記のプログラミングアルゴリズムに従い、配列番号1の配列とその配列を比較したとき、少なくとも90%の同一性を示す核酸配列を意味する。
【0043】
特に好ましいプロモーターは配列番号1の核酸配列と91%、さらに好ましくは92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、特に好ましくは99%の同一性を示す。
【0044】
プロモーターの別の天然の例はさらに、上記の核酸配列から出発して、特に配列番号1の配列から出発して、それ自体公知の手法でのハイブリダイゼーション技術によって、そのゲノム配列が未知の種々の生物からも容易に見出すことができる。
【0045】
したがって、本発明の別の態様は、配列番号1の核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列を含んでなる、プロモーター活性を有する核酸に関する。この核酸配列は少なくとも10、さらに好ましくは12、15、30、50より多く、または特に好ましくは150より多くのヌクレオチドを含む。
【0046】
ハイブリダイゼーションは本発明ではストリンジェントな条件下で行う。そのようなハイブリダイゼーション条件は例えば以下に記載されている:Sambrook, J., Fritsch, E.F., Maniatis, T., in: Molecular Cloning (A Laboratory Manual), 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989, 9.31-9.57ページ または Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y. (1989), 6.3.1-6.3.6。
【0047】
ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件とは特に以下を意味する:
50%ホルムアミド、5×SSC(750mM NaCl、75mM クエン酸三ナトリウム)、50mM リン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト溶液、10%硫酸デキストランおよび20g/ml変性細断サケ精子DNAからなる溶液中、42℃で一晩のインキュベーション;その後65℃、0.1×SSCでのフィルターの洗浄。
【0048】
「機能的に等価なフラグメント」とは、出発配列と実質的に同一またはそれ以上のプロモーター比活性を有する、プロモーター活性を有する核酸配列のフラグメントを意味する。
「実質的に同一」とは、出発配列のプロモーター比活性の少なくとも50%、好ましくは60%、さらに好ましくは70%、さらに好ましくは80%、さらに好ましくは90%、特に好ましくは95%の同一性を示すプロモーター比活性を意味する。
【0049】
「フラグメント」とは、実施形態A)、B)またはC)に記載されたプロモーター活性を有する核酸の部分配列を意味する。これらのフラグメントは配列番号1の核酸配列の好ましくは10より多く、しかしより好ましくは12、15、30、50より多く、または特に好ましくは150より多くの連続したヌクレオチドを有する。
【0050】
プロモーターとしての、すなわち遺伝子の転写のための、配列番号1の核酸配列の使用が特に好ましい。
【0051】
配列番号1は機能についての注釈を伴わないでGenbank登録番号AP005283に記載されている。したがって、本発明はさらに、プロモーター活性を有する本発明の新規な核酸配列に関する。
【0052】
本発明は特に、
A) 配列番号1の核酸配列、または
B) ヌクレオチドの置換、挿入もしくは欠失により該配列から誘導され、かつ配列番号1の配列と核酸レベルで少なくとも90%の同一性を有する配列、または
C) ストリンジェントな条件下で配列番号1の核酸配列とハイブリダイズする核酸配列、または
D) A)、B)もしくはC)の配列と機能的に等価なフラグメント
を含んでなり、但し配列番号1の配列からなる核酸は除く、プロモーター活性を有する核酸に関する。
【0053】
上述したプロモーター活性を有する核酸はすべて、ヌクレオチド部品から化学合成によって、例えば、二重らせんの個々の重複する相補的核酸部品の断片縮合によって、それ自体公知の手法で調製することができる。オリゴヌクレオチドの化学合成は例えばホスホルアミダイト法による公知の手法で行うことができる(Voet, Voet, 第2版, Wiley Press New York, pp. 896-897)。合成オリゴヌクレオチドの添加ならびにDNAポリメラーゼのKlenowフラグメントを使用するギャップの補完およびライゲーション反応、ならびに一般的クローニング方法は以下に記載されている: Sambrookら(1989), Molecular Cloning: A laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press。
【0054】
本発明はさらに、プロモーター活性を有する本発明の核酸のうち1つと、機能的に連結されたリボ核酸の翻訳を保証する核酸配列をさらに含んでなる発現ユニットの、遺伝子の発現のための使用に関する。
【0055】
本発明において、発現ユニットとは、発現活性を有する核酸、すなわち発現対象の核酸または遺伝子と機能的に連結されて、該核酸または該遺伝子の発現、すなわち転写および翻訳を調節する核酸を意味する。
【0056】
これに関して、「機能的連結」とは、例えば本発明の発現ユニットのうち1つと、トランスジェニック発現の対象の核酸配列、および適当ならば別の調節エレメント、例えばターミネーターについての、それぞれの調節エレメントが核酸配列のトランスジェニック発現において機能を発揮することができるような連続的配置を意味する。そのためには化学的な意味での直接的連結は絶対に必要なものではない。遺伝的制御配列、例えばエンハンサー配列などは、より離れた位置から、または別のDNA分子からでさえも、標的配列に対してその機能を発揮することができる。トランスジェニック発現の対象の核酸配列が本発明の発現ユニット配列の後ろ(すなわち3’末端)に位置し、2つの配列同士が共有結合している配置が好ましい。この場合、発現ユニット配列とトランスジェニック発現の対象の核酸配列との間の距離は好ましくは200塩基対より少なく、特に好ましくは100塩基対未満、非常に好ましくは50塩基対未満である。
【0057】
「発現活性」とは本発明において、一定時間内に発現ユニットから産生されるタンパク質の量、すなわち発現速度を意味する。
【0058】
本発明において「発現比活性」とは、各発現ユニットについて一定時間内にその発現ユニットから産生されるタンパク質の量を意味する。
【0059】
遺伝子に関して、野生型と比較して「生起された発現活性」または生起された発現速度といった場合には、したがって、野生型と比較して、野生型ではそのようには存在しなかったタンパク質の産生が引き起こされている。
【0060】
ある遺伝子に関して、野生型と比較して「変化した発現活性」または変化した発現速度といった場合には、したがって、野生型と比較して、一定時間内に産生されるタンパク質の量が変化している。
【0061】
これに関して「変化した」とは、好ましくは増大していることまたは減少していることを意味する。
【0062】
これは内在性発現ユニットについて、例えばその発現ユニットを突然変異させるか、あるいはその発現ユニットを刺激または阻害して、その比活性を増大または低下させることによって遂行することができる。
【0063】
発現活性または発現速度の増大はさらに、例えば本発明の発現ユニットによるか、または増大した発現比活性を伴う発現ユニットによって、微生物での遺伝子の発現を調節することによって達成することができ、ここで、該遺伝子は該発現ユニットとの関係では異種起源である。
【0064】
本発明の発現ユニットによる、または増大した発現比活性を伴う本発明の発現ユニットによる、微生物での遺伝子の発現の調節は、好ましくは、
変化した発現比活性を適宜伴う本発明の1以上の発現ユニットを該微生物のゲノムに導入することにより、変化した発現比活性を適宜伴う導入された本発明の発現ユニットの制御下に、1以上の内在性遺伝子の発現が行われるようになるステップ、または
1以上の遺伝子を該微生物のゲノムに導入することにより、変化した比活性を適宜伴う本発明の内在性発現ユニットの制御下に、1以上の導入した該遺伝子の発現が行われるようになるステップ、または
変化した発現比活性を適宜伴う本発明の発現ユニットと、機能的に連結された1以上の発現対象の核酸とを含んでなる1以上の核酸構築物を微生物に導入するステップ、
により達成される。
【0065】
本発明の発現ユニットは、プロモーター活性を有する上記の本発明の核酸と、さらに機能的に連結された、リボ核酸の翻訳を保証する核酸配列を含んでなる。
【0066】
リボ核酸の翻訳を保証する核酸配列は好ましくは、リボソーム結合サイトとして配列番号42の核酸配列を含む。
【0067】
好ましい実施形態では、本発明の発現ユニットは、
E) 配列番号2の核酸配列、または
F) ヌクレオチドの置換、挿入もしくは欠失により該配列から誘導され、かつ配列番号2の配列と核酸レベルで少なくとも90%の同一性を有する配列、または
G) ストリンジェントな条件下で配列番号2の核酸配列とハイブリダイズする核酸配列、または
H) E)、F)もしくはG)の配列と機能的に等価なフラグメント
を含んでなる。
【0068】
配列番号2の核酸配列はコリネバクテリウム・グルタミカム由来のタンパク質翻訳伸長因子TU(P EF−TU)の発現ユニットの核酸配列である。配列番号2は野生型の発現ユニットの配列に相当する。
【0069】
本発明はさらに、ヌクレオチドの置換、挿入または欠失により該配列から誘導され、かつ配列番号2の配列と核酸レベルで少なくとも90%の同一性を有する配列を含んでなる発現ユニットに関する。
【0070】
本発明の発現ユニットについての本発明の別の天然の例は、例えばそのゲノム配列が知られている種々の生物から、データベースからの核酸配列と配列番号2の配列との同一性の比較によって、容易に見出すことができる。
【0071】
本発明の発現ユニットの人工的配列は、配列番号2の配列から出発し、例えばヌクレオチドの置換、挿入または欠失による人工的変異および突然変異誘発によって、容易に見出すことができる。
【0072】
したがって配列番号2の配列と少なくとも90%の同一性を有する核酸配列とは、特に上記のパラメーターセットを用いて、上記のプログラミングアルゴリズムに従い配列番号2の配列とその配列を比較したときに、少なくとも90%の同一性を示す核酸配列を意味する。
【0073】
特に好ましい発現ユニットは、配列番号2の核酸配列と91%、さらに好ましくは92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、特に好ましくは99%の同一性を示す。
【0074】
発現ユニットの別の天然の例はさらに、上記の核酸配列から出発して、特に配列番号2の配列から出発して、それ自体公知の手法でのハイブリダイゼーション技術によって、そのゲノム配列が未知の種々の生物からも容易に見出すことができる。
【0075】
したがって本発明の別の態様は、ストリンジェントな条件下で配列番号2の核酸配列とハイブリダイズする核酸配列を含んでなる発現ユニットに関する。この核酸配列は少なくとも10、さらに好ましくは12、15、30、50より多く、または特に好ましくは150より多くのヌクレオチドを含む。
【0076】
「ハイブリダイゼーション」とは、ストリンジェントな条件下で実質的に相補的な配列と結合するが、相補的でない相手との非特異的結合はこれらの条件下では発生しない、ポリヌクレオチドもしくはオリゴヌクレオチドの能力を意味する。このためには、その配列は好ましくは90〜100%の相補性を有するべきである。互いに特異的に結合することができる相補的配列の特性を、例えばノーザンもしくはサザンブロット技術またはPCRもしくはRT−PCRでのプライマーの結合に使用する。
【0077】
ハイブリダイゼーションは本発明ではストリンジェントな条件下で行う。このようなハイブリダイゼーション条件は例えば以下に記載されている: Sambrook, J., Fritsch, E.F., Maniatis, T., in: Molecular Cloning (A Laboratory Manual), 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989, 9.31-9.57ページまたはCurrent Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y. (1989), 6.3.1-6.3.6。
【0078】
ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件とは特に以下を意味する:
50%ホルムアミド、5×SSC(750mM NaCl、75mM クエン酸三ナトリウム)、50mM リン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト溶液、10%硫酸デキストランおよび20g/ml 変性細断サケ精子DNAよりなる溶液中、42℃で一晩のインキュベーション;その後、65℃、0.1×SSCでのフィルターの洗浄。
【0079】
本発明のヌクレオチド配列はさらに、他の細胞タイプおよび微生物において相同配列を同定および/またはクローン化するために用いることができるプローブおよびプライマーの作製を可能にする。このようなプローブおよびプライマーは通常、本発明の核酸配列のセンス鎖または対応するアンチセンス鎖の少なくとも約12、好ましくは少なくとも約25、例えば約40、50もしくは75の連続したヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列領域を含んでいる。
【0080】
また、いわゆるサイレント突然変異を含むか、または具体的に言及した配列と比較して、特定の起源生物もしくは宿主生物中のコドン使用頻度に従い改変された核酸配列、同様に天然に存在する変異体、例えば、そのスプライスバリアントまたはアリール変異体も本発明に含まれる。
【0081】
「機能的に等価なフラグメント」とは、出発配列と実質的に同一またはそれ以上の発現比活性を有する発現ユニットフラグメントを意味する。
「実質的に同一」とは、出発配列の発現比活性の少なくとも50%、好ましくは60%、さらに好ましくは70%、さらに好ましくは80%、さらに好ましくは90%、特に好ましくは95%を示す発現比活性を意味する。
【0082】
「フラグメント」とは、実施形態E)、F)またはG)に記載された発現ユニットの部分配列を意味する。これらのフラグメントは配列番号1の核酸配列の好ましくは10より多く、しかしより好ましくは12、15、30、50より多く、または特に好ましくは150より多くの連続したヌクレオチドを有する。
【0083】
発現ユニットとして、すなわち遺伝子の発現のために配列番号2の核酸配列を使用するのが特に好ましい。
【0084】
配列番号2は機能についての注釈を伴わないでGenbank登録番号AP005283に記載されている。したがって、本発明はさらに、本発明の新規な発現ユニットに関する。
【0085】
本発明は特に、プロモーター活性を有する本発明の核酸と、さらに機能的に連結された、リボ核酸の翻訳を保証する核酸配列とを含んでなる発現ユニットに関する。
【0086】
本発明は特に好ましくは、
E) 配列番号2の核酸配列、または
F) ヌクレオチドの置換、挿入もしくは欠失により該配列から誘導され、かつ配列番号2の配列と核酸レベルで少なくとも90%の同一性を有する配列、または
G) ストリンジェントな条件下で配列番号2の核酸配列とハイブリダイズする核酸配列、または
H) E)、F)もしくはG)の配列と機能的に等価なフラグメント
を含んでなり、但し配列番号2の配列からなる核酸は除く、発現ユニットに関する。
【0087】
本発明の発現ユニットは以下の遺伝的エレメントのうち1種以上を含む:マイナス10(「−10」)配列;マイナス35(「−35」)配列;転写配列開始点、エンハンサー領域;およびオペレーター領域。
【0088】
これらの遺伝的エレメントは好ましくはコリネバクテリウムの種、特にコリネバクテリウム・グルタミカムに特異的なものである。
【0089】
上述の発現ユニットはすべて、ヌクレオチド部品からの化学合成によって、例えば、二重らせんの個別の重複する相補的核酸部品の断片縮合によって、それ自体公知の手法で調製することができる。オリゴヌクレオチドの化学合成は例えばホスホルアミダイト法による公知の手法で実行することができる(Voet, Voet, 第2版, Wiley Press New York, pp. 896-897)。合成オリゴヌクレオチドの添加ならびにDNAポリメラーゼのKlenowフラグメントを用いたギャップの補完およびライゲーション反応、ならびに一般的クローニング方法は以下に記載されている:Sambrookら(1989), Molecular cloning: A laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press。
【0090】
本出願中で本発明のために使用する方法および技術は微生物および組換えDNA技術について訓練を受けた当業者には公知である。細菌細胞の増殖、単離したDNA分子の宿主細胞中への導入および単離した核酸分子の単離、クローン化および配列決定などがそのような技術および方法の例である。これらの方法は以下の多くの標準的な文献に記載されている:Davisら、Basic Methods In Molecular Biology (1986);J. H. Miller, Experiments in Molecular Genetics, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York (1972);J.H. Miller, A Short Course in Bacteria Genetics, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York (1992);M. Singer and P. Berg, Genes & Genomes, University Science Books, Mill Valley, California (1991);J. Sambrook, E.F. Fritsch and T. Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York (1989);P.B. Kaufmannら, Handbook of Molecular and Cellular Methods in Biology and Medicine, CRC Press, Boca Raton, Florida (1995);Methods in Plant Molecular Biology and Biotechnology, B.R. Glick and J.E. Thompson(編), CRC Press, Boca Raton, Florida (1993);およびP.F. Smith-Keary, Molecular Genetic
s of Escherichia coli, The Guilford Press, New York, NY (1989)。
【0091】
本発明の核酸分子はすべて、単離した核酸分子の形態であるのが好ましい。「単離した」核酸分子はその核酸の天然の供給源中に存在するその他の核酸分子から分離されたもので、さらに、組換え技術で調製した場合にはその他の細胞物質もしくは培養培地を実質的に含まず、あるいは化学合成した場合には、化学的前駆体もしくはその他の化学物質を実質的に含まないものである。
【0092】
本発明にはその上、具体的に記載したヌクレオチド配列に相補的な核酸分子、またはその一部分が含まれる。
【0093】
本発明のプロモーターおよび/または発現ユニットは例えば、以下に記載するように、発酵による生合成産物の調製のための改良された方法に使用するのが特に有益である。
【0094】
本発明のプロモーターおよび/または発現ユニットは、これらが強力な構成性プロモーターおよび発現ユニットである点において、特に有益である。
【0095】
プロモーター活性を有する本発明の核酸を使用して、野生型と比較して、微生物での遺伝子の転写速度を変化させる、すなわち増大もしくは低下させるか、またはそれを生起することができる。
【0096】
本発明の発現ユニットを使用して、野生型と比較して、微生物での遺伝子の発現速度を変化させる、すなわち増大もしくは低下させるか、またはそれを生起することができる。
【0097】
プロモーター活性を有する本発明の核酸および本発明の発現ユニットは、各種の生合成産物、例えば精製化学製品、タンパク質、特にアミノ酸などについて、微生物、特にコリネバクテリウム属の種での産生を調節および強化するためにも役立てることができる。
【0098】
したがって本発明は、微生物での遺伝子の転写速度を、野生型と比較して変化させるかまたは生起する方法であって、
a) プロモーター活性を有する本発明の内在性核酸であって、内在性遺伝子の転写を調節する核酸の、該微生物でのプロモーター比活性を野生型と比較して変化させるステップ、または
b) プロモーター活性を有する本発明の核酸により、または実施形態a)に従い変化したプロモーター比活性を有する核酸により、該微生物での遺伝子の転写を調節するステップ、ここで該遺伝子はプロモーター活性を有する該核酸との関係では異種起源である、
による方法に関する。
【0099】
実施形態a)では、微生物でのプロモーター比活性を変化させる、すなわち増大もしくは低下させることにより、微生物での遺伝子の転写速度を野生型と比較して変化させるかまたは生起することができる。これは例えばプロモーター活性を有する本発明の核酸配列の部位特異的突然変異、すなわちヌクレオチドの部位特異的置換、欠失または挿入によって行うことができる。プロモーター活性の増大または低下は、RNAポリメラーゼホロ酵素結合サイト(当業者には−10領域および−35領域としても知られている)のヌクレオチドを交換することによって達成することができる。さらに、ヌクレオチドを欠失させるかヌクレオチドを挿入することによって、上記RNAポリメラーゼホロ酵素結合サイトの互いの距離を減少または増加させることによっても達成することができる。さらに、RNAポリメラーゼホロ酵素の結合サイトの配置上の近傍に調節タンパク質(当業者にはリプレッサーもしくはアクチベーターとして知られている)のための結合サイト(当業者にはオペレーターとしても知られている)を設けることによって、プロモーター配列と結合した後、これらの調節因子がRNAポリメラーゼホロ酵素の結合および転写活性を低下させるか強化することができるようにするか、あるいはこれを新たな調節的作用の下に置くようにする。
【0100】
配列番号42の核酸配列は好ましくは本発明の発現ユニットのリボソーム結合サイトであり、配列番号39、40または41の配列は本発明の発現ユニットの−10領域である。これらの領域の核酸配列の変更は、発現比活性の変化をもたらす。
【0101】
したがって、本発明はコリネバクテリウム属またはブレビバクテリウム属の細菌中で遺伝子の発現を可能にする発現ユニット中でのリボソーム結合サイトとしての、配列番号42の核酸配列の使用に関する。
【0102】
本発明はさらに、コリネバクテリウム属またはブレビバクテリウム属の細菌中で遺伝子の発現を可能にする発現ユニット中の−10領域としての配列番号39、40または41の核酸配列の使用に関する。
【0103】
本発明は特に、配列番号42の核酸配列を含んでなる、コリネバクテリウム属またはブレビバクテリウム属の細菌中で遺伝子の発現を可能にする発現ユニットに関する。この場合、配列番号42の核酸配列を好ましくはリボソーム結合サイトとして使用する。
【0104】
本発明はさらに、配列番号39、40または41の核酸配列を含んでなる、コリネバクテリウム属またはブレビバクテリウム属の細菌中で遺伝子の発現を可能にする発現ユニットに関する。この場合、配列番号39、40または41の核酸配列を好ましくは−10領域として使用する。
【0105】
「プロモーター比活性」に関して、野生型と比較した増大または低下とは、野生型のプロモーター活性を有する本発明の核酸と比較した、すなわち例えば配列番号1と比較した、比活性の増大または低下を意味する。
【0106】
実施形態b)では、プロモーター活性を有する本発明の核酸によるか、または実施形態a)に従い変化したプロモーター比活性を伴う核酸により、微生物での遺伝子の転写を調節することによって、該微生物での該遺伝子の転写速度を野生型と比較して変化させるかまたは生起することができ、この場合、該遺伝子はプロモーター活性を有する該核酸との関係では異種起源である。
【0107】
これは好ましくは、
b1) 変化したプロモーター比活性を適宜伴う、プロモーター活性を有する本発明の1以上の核酸を該微生物のゲノムに導入することにより、変化したプロモーター比活性を適宜伴う、プロモーター活性を有する導入された該核酸の制御下に、1以上の内在性遺伝子の転写が行われるようになるステップ、または
b2) 該微生物のゲノムに1以上の遺伝子を導入することにより、変化したプロモーター比活性を適宜伴う、プロモーター活性を有する本発明の内在性核酸の制御下に、1以上の導入された該遺伝子の転写が行われるようになるステップ、または
b3) 変化したプロモーター比活性を適宜伴う、プロモーター活性を有する本発明の核酸と、機能的に連結された1以上の転写対象の核酸とを含んでなる1以上の核酸構築物を該微生物に導入するステップ
により達成される。
【0108】
例えば、
実施形態b1)に従い、変化したプロモーター比活性を適宜伴う、プロモーター活性を有する本発明の1以上の核酸を該微生物のゲノムに導入することにより、変化したプロモーター比活性を適宜伴う、プロモーター活性を有する導入された該核酸の制御下に、1以上の内在性遺伝子の転写が行われるようになるステップ、または
実施形態b2)に従い、該微生物のゲノムに1以上の内在性遺伝子を導入することにより、変化したプロモーター比活性を適宜伴う、プロモーター活性を有する本発明の内在性核酸の制御下に、1以上の導入された該内在性遺伝子の転写が行われるようになるステップ、または
実施形態b3)に従い、変化したプロモーター比活性を適宜伴う、プロモーター活性を有する本発明の核酸と、機能的に連結された1以上の転写対象の内在性核酸とを含んでなる1以上の核酸構築物を該微生物に導入するステップ、
により、野生型の内在性遺伝子の転写速度を変化させる、すなわち増大または低下させることが可能である。
【0109】
例えば、さらに、
実施形態b2)に従い、該微生物のゲノムに1以上の内在性遺伝子を導入することにより、変化したプロモーター比活性を適宜伴う、プロモーター活性を有する本発明の内在性核酸の制御下に、1以上の導入された外来性遺伝子の転写が行われるようになるステップ、または
実施形態b3)に従い、変化したプロモーター比活性を適宜伴う、プロモーター活性を有する本発明の核酸と、機能的に連結された1以上の転写対象の外来性核酸とを含んでなる1以上の核酸構築物を該微生物に導入するステップ、
により、野生型と比較して外来性の遺伝子の転写速度を生起することが可能である。
【0110】
実施形態b2)に従う遺伝子の挿入はさらに、遺伝子をコード領域または非コード領域に組み込むことによって、行うことができる。挿入は好ましくは非コード領域に行う。
【0111】
実施形態b3)に従う核酸構築物の挿入はさらに、染色体内または染色体外に行われる。好ましいのは核酸構築物の染色体内挿入である。「染色体内」組み込みは、宿主細胞の染色体内への外来性DNAフラグメントの挿入である。この用語は外来性DNAフラグメントと宿主細胞の染色体上の適切な領域との相同組換えについても使用される。
【0112】
実施形態b)では、実施形態a)に従い変化したプロモーター比活性を伴う本発明の核酸の使用も好ましい。実施形態b)では、実施形態a)で記載したのと同様に、これらが該微生物中に存在するかそこで調製されるか、あるいはこれらを単離した形態で該微生物に導入してもよい。
【0113】
「内在性」とは、野生型ゲノムにすでに存在する遺伝情報、例えば遺伝子などを意味する。
【0114】
「外来性」とは、野生型ゲノムに存在しない遺伝情報、例えば遺伝子などを意味する。
【0115】
プロモーター活性を有する本発明の核酸による転写の調節に関して、用語「遺伝子」は好ましくは、転写対象の領域、すなわち例えば翻訳を調節する領域、およびコード領域、ならびに適切ならばさらなる調節エレメント、例えばターミネーターなどを含んでなる核酸を意味する。
【0116】
本明細書で以後記載する、本発明の発現ユニットによる発現の調節に関して、用語「遺伝子」は好ましくは、コード領域、および適切ならば、さらなる調節エレメント、例えばターミネーターなどを含んでなる核酸を意味する。
「コード領域」とは、タンパク質をコードする核酸配列を意味する。
【0117】
プロモーター活性を有する核酸と遺伝子に関して、「異種起源」とは、使用する遺伝子は野生型ではプロモーター活性を有する本発明の核酸の調節下に転写されないが、野生型には存在しない新たな機能的連結が形成されること、および、プロモーター活性を有する本発明の核酸と特定の遺伝子との機能的組み合わせが野生型には存在しないことを意味する。
【0118】
発現ユニットと遺伝子に関して、「異種起源」とは、使用する遺伝子は野生型ではプロモーター活性を有する本発明の発現ユニットの調節下に発現されず、野生型には存在しない新たな機能的連結が形成されていること、および、本発明の発現ユニットと特定の遺伝子との機能的組み合わせが野生型には存在しないことを意味する。
【0119】
本発明はさらに、好ましい実施形態では、微生物での遺伝子の転写速度を、野生型と比較して増大させるかまたは生起するための方法であって、
ah) プロモーター活性を有する本発明の内在性核酸であって、内在性遺伝子の転写を調節する核酸の、該微生物でのプロモーター比活性を、野生型と比較して増大させるステップ、または
bh) プロモーター活性を有する本発明の核酸により、または実施形態a)に従い増大したプロモーター比活性を有する核酸により、該微生物での遺伝子の転写を調節するステップ、ここで該遺伝子はプロモーター活性を有する該核酸との関係では異種起源である、
による方法に関する。
【0120】
プロモーター活性を有する本発明の核酸によるか、または実施形態ah)に従い増大させたプロモーター比活性を伴う本発明の核酸による、該微生物での遺伝子の転写の調節は好ましくは、
bh1) 増大したプロモーター比活性を適宜伴う、プロモーター活性を有する本発明の1以上の核酸を該微生物のゲノムに導入することにより、増大したプロモーター比活性を適宜伴う、プロモーター活性を有する導入された本発明の核酸の制御下に、1以上の内在性遺伝子の転写が行われるようになるステップ、または
bh2) 1以上の遺伝子を該微生物のゲノムに導入することにより、増大したプロモーター比活性を適宜伴う、プロモーター活性を有する本発明の内在性核酸の制御下に、1以上の導入された該遺伝子の転写が行われるようになるステップ、または
bh3) 増大したプロモーター比活性を適宜伴う、プロモーター活性を有する本発明の核酸と、機能的に連結された1以上の転写対象の核酸とを含んでなる1以上の核酸構築物を該微生物に導入するステップ、
によって達成される。
【0121】
本発明はさらに、好ましい実施形態では、微生物での遺伝子の転写速度を野生型と比較して低下させるための方法であって、
ar) プロモーター活性を有する本発明の内在性核酸であって、内在性遺伝子の転写を調節する核酸の、該微生物でのプロモーター比活性を、野生型と比較して低下させるステップ、または
br) 実施形態a)に従い低下したプロモーター比活性を有する核酸を該微生物のゲノムに導入することにより、低下したプロモーター活性を有する導入された該核酸の制御下に、内在性遺伝子の転写が行われるようになるステップ、
による方法に関する。
【0122】
本発明はさらに、微生物中の遺伝子の発現速度を野生型と比較して変化させるかまたは生起するための方法であって、
c) 本発明の内在性発現ユニットであって、内在性遺伝子の発現を調節する発現ユニットの、該微生物での発現比活性を野生型と比較して変化させるステップ、または
d) 本発明の発現ユニットにより、または実施形態c)に従い変化した発現比活性を伴う本発明の発現ユニットにより、該微生物での遺伝子の発現を調節するステップ、ここで該遺伝子は、該発現ユニットとの関係では異種起源である、
による、上記方法に関する。
【0123】
実施形態c)では、野生型と比較した微生物中の遺伝子の発現速度の変化または生起は、該微生物での発現比活性を変化させる、すなわち増大または低下させることによって行うことができる。これは例えばプロモーター活性を有する本発明の核酸配列の部位特異的突然変異、すなわちヌクレオチドの部位特異的置換、欠失または挿入によって行うことができる。例えば、シャイン・ダルガノ配列と翻訳開始コドンとの間の距離の延長は通常発現比活性の変化、低下または強化をもたらす。発現比活性の変化は、シャイン・ダルガノ領域(リボソーム結合サイト)の配列の翻訳開始コドンからの距離を、ヌクレオチドの欠失もしくは挿入によって短縮または延長することによっても達成することができる。しかし、シャイン・ダルガノ 領域の配列を、相補的な3'側の16SrRNAとの相同性を強化または低下させるように変化させることによっても、達成することができる。
【0124】
「発現比活性」に関して、野生型と比較した増大または低下とは、野生型の本発明の発現ユニットと比較した、すなわち例えば配列番号2と比較した、比活性の増大または低下を意味する。
【0125】
実施形態d)では、微生物中の遺伝子の発現速度の変化または生起を、本発明の発現ユニットによるか、または実施形態c)に従い変化した発現比活性を伴う本発明の発現ユニットにより、該微生物での遺伝子の転写を調節することによって行い、ここで該遺伝子は該発現ユニットとの関係では異種起源である。
【0126】
これは好ましくは、
d1) 変化した発現比活性を適宜伴う本発明の1以上の発現ユニットを該微生物のゲノムに導入することにより、導入された該発現ユニットの制御下に、1以上の内在性遺伝子の発現が行われるようになるステップ、または
d2) 1以上の遺伝子を該微生物のゲノムに導入することにより、変化した発現比活性を適宜伴う本発明の内在性発現ユニットの制御下に、1以上の導入された該遺伝子の発現が行われるようになるステップ、または
d3) 変化した発現比活性を適宜伴う本発明の発現ユニットと、機能的に連結された1以上の発現対象の核酸とを含んでなる1以上の核酸構築物を、微生物に導入するステップ
によって達成される。
【0127】
例えば、
実施形態d1)に従い、変化した発現比活性を適宜伴う本発明の1以上の発現ユニットを該微生物のゲノムに導入することにより、導入された該発現ユニットの制御下に、1以上の内在性遺伝子の発現が行われるようにするステップ、または
実施形態d2)に従い、1以上の遺伝子を該微生物のゲノムに導入することにより、変化した発現比活性を適宜伴う本発明の内在性発現ユニットの制御下に、1以上の導入された該遺伝子の発現が行われるようにするステップ、または
実施形態d3)に従い、変化した発現比活性を適宜伴う本発明の発現ユニットと、機能的に連結された1以上の発現対象の核酸とを含んでなる1以上の核酸構築物を、該微生物に導入するステップ
によって、野生型の内在性遺伝子の発現速度を変化、すなわち増大または低下させることが可能である。
【0128】
例えばさらに、
実施形態d2)に従い、1以上の外来性遺伝子を該微生物のゲノムに導入することにより、変化した発現比活性を適宜伴う本発明の内在性発現ユニットの制御下に、1以上の導入した該遺伝子の発現が行われるようにするステップ、または
実施形態d3)に従い、変化した発現比活性を適宜伴う本発明の発現ユニットと、機能的に連結された1以上の発現対象の外来性核酸とを含んでなる1以上の核酸構築物を、該微生物に導入するステップ
によって、野生型と比較して内在性遺伝子の発現速度を生起することが可能である。
【0129】
実施形態d2)に従う遺伝子の挿入はさらに、遺伝子をコード領域または非コード領域に組み込むことによって行うことができる。挿入は好ましくは非コード領域に行う。
【0130】
実施形態d3)に従う核酸構築物の挿入はさらに、染色体内または染色体外に行われる。好ましいのは核酸構築物の染色体内挿入である。
【0131】
核酸構築物は以下、発現カセットとも称される。
【0132】
実施形態d)では、実施形態c)により変化した発現比活性を有する本発明の発現ユニットの使用も好ましい。実施形態d)では、実施形態c)で記載したのと同様に、これらが微生物に存在するかそこで調製されるか、あるいはこれらを単離した形態で微生物に導入してもよい。
【0133】
本発明はさらに、好ましい実施形態では、微生物での遺伝子の発現速度を野生型と比較して増大させるかまたは生起するための方法であって、
ch) 本発明の内在性発現ユニットであって、内在性遺伝子の発現を調節する発現ユニットの該微生物での発現比活性を、野生型と比較して増大させるステップ、または
dh) 本発明の発現ユニットにより、または実施形態a)に従い増大した発現比活性を伴う発現ユニットにより、該微生物での遺伝子の発現を調節するステップ、ここで該遺伝子は、該発現ユニットとの関係では異種起源である、
による方法に関する。
【0134】
本発明の発現ユニットによるか、または実施形態c)に従い増大した発現比活性を伴う発現ユニットによる、該微生物での遺伝子の発現の調節は、好ましくは、
dh1) 増大した発現比活性を適宜伴う1以上の本発明の発現ユニットを該微生物のゲノムに導入することにより、増大した発現比活性を適宜伴う導入された該発現ユニットの制御下に、1以上の内在性遺伝子の発現が行われるようにするステップ、または
dh2) 1以上の遺伝子を該微生物のゲノムに導入することにより、増大した発現比活性を適宜伴う本発明の内在性発現ユニットの制御下に、導入された1以上の該遺伝子の発現が行われるようにするステップ、または
dh3) 増大した発現比活性を適宜伴う本発明の発現ユニットと、機能的に連結された1以上の発現対象の核酸とを含んでなる1以上の核酸構築物を、該微生物に導入するステップ
により達成される。
【0135】
本発明はさらに、微生物での遺伝子の発現速度を野生型と比較して低下させるための方法であって、
cr) 本発明の内在性発現ユニットであって、内在性遺伝子の発現を調節する発現ユニットの該微生物での発現比活性を、野生型と比較して低下させるステップ、または
dr) 実施形態cr)に従い低下した発現比活性を有する発現ユニットを該微生物のゲノムに導入することにより、低下した発現活性を伴う導入した該発現ユニットの制御下に、内在性遺伝子の発現が行われるようにするステップ、
による方法に関する。
【0136】
微生物での遺伝子の転写速度および/または発現速度を変化させるかまたは生起するための、上記の本発明の方法の好ましい実施形態では、遺伝子は精製化学製品の生合成経路中のタンパク質をコードする核酸の群から選択され、その場合この遺伝子は場合によってはさらなる調節エレメントを含んでいてもよい。
【0137】
微生物での遺伝子の転写速度および/または発現速度を変化させるかまたは生起するための、上記の本発明の方法の特に好ましい実施形態では、遺伝子は以下のものからなる群より選択される:タンパク質生成およびタンパク質非生成アミノ酸の生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、ヌクレオチドおよびヌクレオシドの生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、有機酸の生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、脂質および脂肪酸の生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、ジオールの生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、炭水化物の生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、芳香族化合物の生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、ビタミン類の生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、補因子の生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、ならびに酵素の生合成経路中のタンパク質をコードする核酸。この場合、該遺伝子は場合によってはさらなる調節エレメントを含んでいてもよい。
【0138】
特に好ましい実施形態では、アミノ酸の生合成経路中のタンパク質は以下のものからなる群より選択される:アスパラギン酸キナーゼ、アスパラギン酸−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、ジアミノピメリン酸デヒドロゲナーゼ、ジアミノピメリン酸デカルボキシラーゼ、ジヒドロジピコリン酸合成酵素、ジヒドロジピコリン酸レダクターゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、転写調節因子LuxR、転写調節因子LysR1、転写調節因子LysR2、リンゴ酸−キノンオキシドレダクターゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、6−ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ、トランスケトラーゼ、トランスアルドラーゼ、ホモセリンO−アセチルトランスフェラーゼ、シスタチオニンγ−シンターゼ、シスタチオニンβ−リアーゼ、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ、O−アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼ、メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ、ホスホセリンアミノトランスフェラーゼ、ホスホセリンホスファターゼ、セリンアセチルトランスフェラーゼ、ホモセリンデヒドロゲナーゼ、ホモセリンキナーゼ、トレオニンシンターゼ、トレオニンエクスポーター・キャリア、トレオニンデヒドラターゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、リジンエクスポーター、ビオチンリガーゼ、システインシンターゼI、システインシンターゼII、補酵素B12依存性メチオニンシンターゼ、補酵素B12非依存性メチオニンシンターゼ活性、硫酸アデニリルトランスフェラーゼサブユニット1および2、ホスホアデノシン−ホスホ硫酸レダクターゼ、フェレドキシン−亜硫酸レダクターゼ、フェレドキシンNADPレダクターゼ、3−ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ、RXA00655調節因子、RXN2910調節因子、アルギニル−tRNA合成酵素、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、トレオニン排出タンパク質、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ、フルクトース−1,6−ビスホスファターゼ、硫酸還元タンパク質RXA077、硫酸還元タンパク質RXA248、硫酸還元タンパク質RXA247、タンパク質OpcA、1−ホスホフルクトキナーゼおよび6−ホスホフルクトキナーゼ。
【0139】
アミノ酸の生合成経路中の上記のタンパク質について、好ましいタンパク質およびこれらのタンパク質をコードする核酸はそれぞれ微生物由来のタンパク質配列および核酸配列であり、好ましくはコリネバクテリウム属またはブレビバクテリウム属の細菌、好ましくはコリネ型細菌、特に好ましくはコリネバクテリウム・グルタミカム由来のものである。
【0140】
アミノ酸の生合成経路中の特に好ましいタンパク質配列およびこれらのタンパク質をコードする対応する核酸配列の例、それらを引用する文献、ならびに参照文献中のそれらの表示を表1に挙げる:
【表1】

【0141】

【0142】

【0143】

【0144】
アミノ酸の生合成経路中の特に好ましいタンパク質配列およびこのタンパク質をコードする対応する核酸配列の別の例は、fbr2とも称されるフルクトース−1,6−ビスホスファターゼ2の配列(配列番号38)およびフルクトース−1,6−ビスホスファターゼ2をコードする対応する核酸配列(配列番号37)である。
【0145】
アミノ酸の生合成経路中の特に好ましいタンパク質配列およびこのタンパク質をコードする対応する核酸配列の別の例は、RXA077とも称される硫酸還元についてのタンパク質の配列(配列番号4)および硫酸還元についてのタンパク質をコードする対応する核酸配列(配列番号3)である。
【0146】
アミノ酸の生合成経路中の別の特に好ましいタンパク質配列は、それぞれの場合、このタンパク質について表1に示したアミノ酸配列を有するが、ここで対応するタンパク質はそのアミノ酸配列について表2/第2欄に示す少なくとも1ヵ所のアミノ酸位置に、同行中の表2/第3欄に示す対応するアミノ酸とは異なるタンパク質生成アミノ酸を有する。別の好ましい実施形態では、そのタンパク質は、そのアミノ酸配列について表2/第2欄に示す少なくとも1ヵ所のアミノ酸位置に、同行中の表2/第4欄に示すアミノ酸を有する。表2に示すタンパク質はアミノ酸の生合成経路の突然変異したタンパク質であって、これは特に有益な特性を有し、したがって本発明のプロモーターによって対応する核酸を発現させるため、およびアミノ酸を産生するために特に好適である。例えば、突然変異T311Iはaskのフィードバック阻害を抑制する。
【0147】
表2からの上記の突然変異したタンパク質をコードする対応する核酸は、通常の方法によって調製することができる。
【0148】
突然変異したタンパク質をコードする核酸配列を調製するために好適な出発点は、例えば、American Type Culture Collectionから表示ATCC13032として入手可能な、コリネバクテリウム・グルタミカム株のゲノム、または表1で引用されている核酸配列である。突然変異したタンパク質のアミノ酸配列の、これらのタンパク質をコードする核酸配列への逆翻訳のためには、該核酸配列を導入するか、該核酸配列が存在する生物のコドン使用頻度を用いるのが有利である。例えば、コリネバクテリウム・グルタミカムについては、コリネバクテリウム・グルタミカムのコドン使用頻度を用いるのが有利である。特定の生物のコドン使用頻度はそれ自体公知の手法でデータベースから、または所望の生物由来の少なくとも1種のタンパク質およびこのタンパク質をコードする遺伝子が記載されている特許出願から明らかにすることができる。
【0149】
表2の情報は以下のように理解されるべきものである:
第1欄「識別記号」では、表1との関係で各配列について明らかな表示を示す。
第2欄「AA位置」では、各番号は表1からの対応するポリペプチド配列のアミノ酸位置に相当する。「AA位置」欄中、「26」はしたがって、対応して示されているポリペプチド配列のアミノ酸位置26を意味する。この位置の番号付けはN末端で+1から開始する。
第3欄「AA野生型」では、各文字は表1からの配列の対応する野生型株中の第2欄に示す位置のアミノ酸(1文字コードで表記)を示す。
第4欄「AA突然変異体」では、各文字は対応する変異体株中の第2欄に示す位置のアミノ酸(1文字コードで表記)を示す。
第5欄「機能」では、対応するポリペプチド配列の生理学的機能を示す。
【0150】
特定の機能(第5欄)および特定の当初アミノ酸配列(表1)を有する突然変異したタンパク質について、第2、3および4欄には少なくとも1ヵ所の突然変異を、またいくつかの配列については複数の突然変異を記載する。この複数の突然変異では常に上記の各場合(表1)において最も近い当初アミノ酸配列を引用している。特定のアミノ酸配列について、用語「アミノ酸位置の少なくとも1ヵ所」とは、好ましくはこのアミノ酸配列について第2、3および4欄に記載した突然変異の少なくとも1つを意味する。
【0151】
タンパク質生成アミノ酸の1文字コード:
A アラニン
C システイン
D アスパラギン酸
E グルタミン酸
F フェニルアラニン
G グリシン
H ヒスチジン
I イソロイシン
K リジン
L ロイシン
M メチオニン
N アスパラギン
P プロリン
Q グルタミン
R アルギニン
S セリン
T トレオニン
V バリン
W トリプトファン
Y チロシン
【0152】
【表2】

【0153】

【0154】

【0155】
微生物での遺伝子の転写速度および/または発現速度を変化させるかまたは生起するための上記の本発明の方法、ならびに遺伝的に改変された微生物を作製するための以下に記載する方法、以下に記載する遺伝的に改変された微生物、および生合成産物を製造するための以下に記載する方法の中では、プロモーター活性を有する本発明の核酸、本発明の発現ユニット、上記の遺伝子、および上記の核酸構築物または発現カセットの、その微生物、特にコリネ型細菌中への導入は、好ましくはSacB法により行う。
【0156】
SacB法は当業者に公知であり、例えば以下に記載されている:Schafer A., Tauch A., Jager W., Kalinowski J., Thierbach G., Puhler A.; Small Mobilizable multi-purpose cloning vectors derived from the Escherichia coli plasmids pK18 and pK19: selection of defined deletions in the chromosome of Corynebacterium glutamicum, Gene. 1994 Jul 22;145(1):69-73 およびBlomfield IC., Vaughn V., Rest RF., Eisenstein BI.; Alleric exchange in Escherichia coli using the Bacillus subtulis sacB gene and a temperature-sensitive pSC101 replicon; Mol Microbiol. 1991 Jun;5(6):1447-57。
【0157】
上記の本発明の方法の好ましい実施形態では、微生物での遺伝子の転写速度および/または発現速度の変化もしくは生起は、プロモーター活性を有する本発明の核酸または本発明の発現ユニットを該微生物に導入することによって行われる。
【0158】
上記の本発明の方法のさらに好ましい実施形態では、微生物での遺伝子の転写速度および/または発現速度の変化もしくは生起は、上記の核酸構築物または発現カセットを該微生物に導入することによって行われる。
【0159】
したがって、本発明は、
少なくとも1つの本発明の発現ユニット、
少なくとも1つの発現対象のさらなる核酸配列、すなわち発現対象の遺伝子、および、
適宜、さらなる遺伝子制御エレメント、例えば、ターミネーターなど、
を含んでなる発現カセットに関し、ここで、少なくとも1つの発現ユニットと発現対象のさらなる核酸配列とは互いに機能的に連結され、また発現対象のさらなる核酸配列は、該発現ユニットとの関係では異種起源である。
【0160】
発現対象の核酸配列は好ましくは精製化学製品の生合成経路中のタンパク質をコードする少なくとも1つの核酸である。
【0161】
発現対象の核酸配列は特に好ましくは以下のものからなる群より選択される:タンパク質生成およびタンパク質非生成アミノ酸の生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、ヌクレオチドおよびヌクレオシドの生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、有機酸の生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、脂質および脂肪酸の生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、ジオールの生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、炭水化物の生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、芳香族化合物の生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、ビタミン類の生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、補因子の生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、ならびに酵素の生合成経路中のタンパク質をコードする核酸。
【0162】
アミノ酸の生合成経路中の好ましいタンパク質を上に記載したが、その例は表1および2に記載されている。
【0163】
本発明の発現カセット中での、発現対象の遺伝子に対する発現ユニットの物理的位置関係は、発現ユニットが発現対象の遺伝子の転写および好ましくは翻訳をも調節して、1種以上のタンパク質の産生を可能にするように選定される。これに関して、「産生を可能にすること」には、産生の構成的増大、特定の条件下での産生の減少もしくは阻止および/または特定の条件下での産生の増大が含まれる。これに関して、「条件」には以下が含まれる:
(1)ある成分の培養培地への添加、(2)ある成分の培養培地からの除去、(3)培養培地中のある成分と別の成分との交換、(4)培養培地の温度の上昇、(5)培養培地の温度の低下、および(6)培養培地を維持する雰囲気条件、例えば、酸素もしくは窒素濃度の調節。
【0164】
本発明はさらに、上記の本発明の発現カセットを含んでなる発現ベクターに関する。
【0165】
ベクターは当業者に周知であり、”Cloning Vectors”(Pouwels P.H.ら編, Elsevier, Amsterdam-New York-Oxford, 1985)に見出すことができる。プラスミドの他には、ベクターとは当業者に公知の他のすべてのベクターを意味し、例えば、ファージ、トランスポゾン、ISエレメント、ファスミド、コスミド、および直線状もしくは環状DNAなどである。これらのベクターは宿主生物中で自律的に複製されるか、または染色体複製される。
【0166】
好適で特に好ましいプラスミドは、コリネ型細菌中で複製するものである。多数の公知のプラスミドベクター、例えばpZ1(Menkelら、Applied and Environmental Microbiology(1989) 64: 549-554)、pEKEx1(Eikmannsら, Gene 102: 93-98 (1991))またはpHS2−1(Sonnenら, Gene 107: 69-74 (1991))は潜在性プラスミドpHM1519、pBL1またはpGA1に基づいている。その他のプラスミドベクター、例えば、pCLiK5MCS、またはpCG4(US−A 4,489,160)もしくはpNG2(Serwold-Davisら, FEMS Microbiology Letters 66, 119-124 (1990))もしくはpAG1(US−A 5,158,891)に基づくものも、同様の方法で使用することができる。
【0167】
例えば、hom−thrBオペロンの複製および増幅について、Reinscheidら(Applied and Environmental Microbiology 60,126-132 (1994))に記載されているような、染色体への組み込みによる遺伝子増幅法に使用することができるプラスミドベクターも好適である。この方法では、完全遺伝子を、宿主(典型的には大腸菌)中では複製することができるが、C.グルタミカムでは複製されないプラスミドベクター中にクローン化する。好適なベクターの例は以下のものである:pSUP301(Sirnonら, Bio/Technology 1,784-791 (1983))、pK18mobもしくはpK19mob(Schaferら, Gene 145,69-73 (1994)、Bernardら, Journal of Molecular Biology, 234: 534-541 (1993))、pEM1(Schrumpfら, 1991. Journal of Bacteriology 173: 4510-4516)またはpBGS8(Sprattら, 1986, Gene 41: 337-342)。増幅対象の遺伝子を含むプラスミドベクターは次に形質転換によって所望のC.グルタミカム株中に導入する。形質転換のための方法は例えば以下に記載されている:Thierbachら(Applied Microbiology and Biotechnology 29. 356-362 (1988))、Dunican and Shivnan(Biotechnology 7, 1067-1070 (1989))およびTauchら(FEMS Microbiological Letters 123,343-347(1994))。
【0168】
本発明はさらに、遺伝的に改変された微生物に関し、この場合遺伝的改変は少なくとも1種の遺伝子の転写速度が野生型と比較して変化しまたは生起されることにつながり、かつ、
a) 請求項1に記載のプロモーター活性を有する少なくとも1つの内在性核酸であって、少なくとも1種の内在性遺伝子の転写を調節する核酸の、該微生物でのプロモーター比活性を変化させるステップ、または
b) 請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸により、または実施形態a)に従い変化したプロモーター比活性を伴う請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸により、該微生物での遺伝子の転写を調節するステップ、ここで該遺伝子はプロモーター活性を有する該核酸との関係では異種起源である
による。
【0169】
方法について上述したように、請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸によるか、または実施形態a)に従い変化したプロモーター比活性を伴う請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸による、該微生物での遺伝子の転写の調節は、
b1) 変化したプロモーター比活性を適宜伴う、請求項1に記載のプロモーター活性を有する1以上の核酸を該微生物のゲノムに導入することにより、変化したプロモーター比活性を適宜伴う請求項1に記載のプロモーター活性を有する導入された該核酸の制御下に、1以上の内在性遺伝子の転写が行われるようになるステップ、または
b2) 1以上の遺伝子を該微生物のゲノムに導入することにより、変化したプロモーター比活性を適宜伴う請求項1に記載のプロモーター活性を有する内在性核酸の制御下に、1以上の導入された該遺伝子の転写が行われるようになるステップ、または
b3) 変化したプロモーター比活性を適宜伴う請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸と、機能的に連結された1以上の転写対象の核酸とを含んでなる1以上の核酸構築物を、該微生物に導入するステップ、
によって達成される。
【0170】
本発明はさらに、少なくとも1種の遺伝子について野生型と比較して増大したか生起された転写速度を有する、遺伝的に改変された微生物であって、
ah) 請求項1に記載のプロモーター活性を有する内在性核酸であって、内在性遺伝子の転写を調節する核酸の、該微生物でのプロモーター比活性が、野生型と比較して増大している、または
bh) 請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸により、または実施形態ah)に従い増大したプロモーター比活性を伴う核酸により、該微生物での遺伝子の転写が調節されており、ここで該遺伝子はプロモーター活性を有する該核酸との関係では異種起源である、
上記微生物に関する。
【0171】
方法について上述したように、請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸による、または実施形態a)に従い増大したプロモーター比活性を伴う請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸による、前記微生物での遺伝子の転写の調節は、
bh1) 増大したプロモーター比活性を適宜伴う、請求項1に記載のプロモーター活性を有する1以上の核酸を該微生物のゲノムに導入することにより、増大したプロモーター比活性を適宜伴う、プロモーター活性を有する導入された該核酸の制御下に、1以上の内在性遺伝子の転写が行われるようになるステップ、または
bh2) 1以上の遺伝子を該微生物のゲノムに導入することにより、増大したプロモーター比活性を適宜伴う、請求項1に記載のプロモーター活性を有する内在性核酸の制御下に、1以上の導入された該遺伝子の転写が行われるようになるステップ、または
bh3) 増大したプロモーター比活性を適宜伴う、請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸と、機能的に連結された1以上の転写対象の核酸とを含んでなる1以上の核酸構築物を該微生物に導入するステップ、
によって達成される。
【0172】
本発明はさらに、少なくとも1種の遺伝子について野生型と比較して低下した転写速度を有する遺伝的に改変された微生物であって、
ar) 請求項1に記載のプロモーター活性を有する少なくとも1つの内在性核酸であって、少なくとも1種の内在性遺伝子の転写を調節する核酸の、該微生物でのプロモーター比活性が、野生型と比較して低下している、または
br) 実施形態a)に従い低下したプロモーター比活性を有する1以上の核酸を該微生物のゲノムに導入することにより、低下したプロモーター活性を有する導入された該核酸の制御下に、少なくとも1種の内在性遺伝子の転写が行われるようになっている、
上記微生物に関する。
【0173】
本発明はさらに、遺伝的に改変された微生物であって、該遺伝的改変が、少なくとも1種の遺伝子の発現速度が野生型と比較して変化しまたは生起されることにつながり、かつ
c) 請求項2もしくは3に記載の少なくとも1つの内在性発現ユニットであって、少なくとも1種の内在性遺伝子の発現を調節する発現ユニットの、該微生物での発現比活性を野生型と比較して変化させるステップ、または
d) 請求項2もしくは3に記載の発現ユニットにより、または実施形態a)に従い変化した発現比活性を伴う請求項2または3に記載の発現ユニットにより、該微生物での遺伝子の発現を調節するステップ、ここで該遺伝子は該発現ユニットとの関係では異種起源である、
によるものである、上記微生物に関する。
【0174】
方法について上述したように、請求項2もしくは3に記載の発現ユニットによる、または実施形態a)に従い変化した発現比活性を伴う請求項2もしくは3に記載の発現ユニットによる、前記微生物での遺伝子の発現の調節は、
d1) 変化した発現比活性を適宜伴う、請求項2もしくは3に記載の1以上の発現ユニットを該微生物のゲノムに導入することにより、変化した発現比活性を適宜伴う請求項2もしくは3に記載の導入した発現ユニットの制御下に、1以上の内在性遺伝子の発現が行われるようになるステップ、または
d2) 1以上の遺伝子を該微生物のゲノムに導入することにより、変化した発現比活性を適宜伴う請求項2もしくは3に記載の内在性発現ユニットの制御下に、1以上の導入された該遺伝子の発現が行われるようになるステップ、または
d3) 変化した発現比活性を適宜伴う請求項2もしくは3に記載の発現ユニットと、機能的に連結された1以上の発現対象の核酸とを含んでなる1以上の核酸構築物を、該微生物に導入するステップ、
によって達成される。
【0175】
本発明はさらに、少なくとも1種の遺伝子について野生型と比較して増大したか生起された発現速度を有する遺伝的に改変された微生物であって、
ch) 請求項2もしくは3に記載の少なくとも1つの内在性発現ユニットであって、内在性遺伝子の発現を調節する発現ユニットの、該微生物での発現比活性が、野生型と比較して増大している、または
dh) 請求項2もしくは3に記載の発現ユニットにより、または実施形態a)に従い増大した発現比活性を伴う請求項2もしくは3に記載の発現ユニットにより、該微生物での遺伝子の発現が調節されており、ここで該遺伝子は該発現ユニットとの関係では異種起源である、
上記微生物に関する。
【0176】
方法について上述したように、請求項2もしくは3に記載の発現ユニットによるか、または実施形態a)に従い増大した発現比活性を有する請求項2もしくは3に記載の発現ユニットによる、前記微生物での遺伝子の発現の調節は、
dh1) 増大した発現比活性を適宜伴う請求項2もしくは3に記載の1以上の発現ユニットを該微生物のゲノムに導入することにより、増大した発現比活性を適宜伴う請求項2または3に記載の導入された該発現ユニットの制御下に、1以上の内在性遺伝子の発現が行われるようになるステップ、または
dh2) 1以上の遺伝子を該微生物のゲノムに導入することにより、増大した発現比活性を適宜伴う請求項2もしくは3に記載の内在性発現ユニットの制御下に、1以上の導入した該遺伝子の発現が行われるようになるステップ、または
dh3) 増大した発現比活性を適宜伴う請求項2もしくは3に記載の発現ユニットと、機能的に連結された発現対象の1以上の核酸とを含んでなる1以上の核酸構築物を、該微生物に導入するステップ、
によって達成される。
本発明はさらに、少なくとも1種の遺伝子について野生型と比較して低下した発現速度を有する遺伝的に改変された微生物であって、
cr) 請求項2もしくは3に記載の少なくとも1つの内在性発現ユニットであって、少なくとも1種の内在性遺伝子の発現を調節する発現ユニットの、該微生物での発現比活性が野生型と比較して低下している、または
dr) 低下した発現活性を伴う請求項2もしくは3に記載の1以上の発現ユニットを該微生物のゲノムに導入することにより、低下した発現活性を伴う請求項2もしくは3に記載の導入された該発現ユニットの制御下に、少なくとも1種の内在性遺伝子の発現が行われるようになっている、
上記微生物に関する。
【0177】
本発明はさらに、請求項2または3に記載の発現ユニットと、機能的に連結された発現対象の遺伝子とを含んでなる遺伝的に改変された微生物であって、該遺伝子が該発現ユニットとの関係では異種起源である、上記微生物に関する。
【0178】
この遺伝的に改変された微生物は、特に好ましくは本発明の発現カセットを含む。
【0179】
本発明は特に好ましくは、遺伝的に改変された微生物、特にコリネ型細菌であって、本発明で定義した少なくとも1つの組換え核酸構築物を保有しているベクター、特にシャトルベクターまたはプラスミドベクターを含む、上記微生物に関する。
【0180】
遺伝的に改変された微生物の好ましい実施形態では、上記の遺伝子は精製化学製品の生合成経路中のタンパク質をコードする少なくとも1つの核酸である。
【0181】
遺伝的に改変された微生物の特に好ましい実施形態では、上記の遺伝子は以下のものからなる群より選択される:タンパク質生成およびタンパク質非生成アミノ酸の生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、ヌクレオチドおよびヌクレオシドの生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、有機酸の生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、脂質および脂肪酸の生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、ジオールの生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、炭水化物の生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、芳香族化合物の生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、ビタミン類の生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、補因子の生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、ならびに酵素の生合成経路中のタンパク質をコードする核酸。この場合、該遺伝子は場合によってはさらに調節エレメントを含んでいてもよい。
【0182】
アミノ酸の生合成経路中の好ましいタンパク質は以下のものからなる群より選択される:アスパラギン酸キナーゼ、アスパラギン酸−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、ジアミノピメリン酸デヒドロゲナーゼ、ジアミノピメリン酸デカルボキシラーゼ、ジヒドロジピコリン酸合成酵素、ジヒドロジピコリン酸レダクターゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、転写調節因子LuxR、転写調節因子LysR1、転写調節因子LysR2、リンゴ酸−キノンオキシドレダクターゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、6−ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ、トランスケトラーゼ、トランスアルドラーゼ、ホモセリンO−アセチルトランスフェラーゼ、シスタチオニンγ−シンターゼ、シスタチオニンβ−リアーゼ、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ、O−アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼ、メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ、ホスホセリンアミノトランスフェラーゼ、ホスホセリンホスファターゼ、セリンアセチルトランスフェラーゼ、ホモセリンデヒドロゲナーゼ、ホモセリンキナーゼ、トレオニンシンターゼ、トレオニンエクスポーター・キャリア、トレオニンデヒドラターゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、リジンエクスポーター、ビオチンリガーゼ、システインシンターゼI、システインシンターゼII、補酵素B12依存性メチオニンシンターゼ、補酵素B12非依存性メチオニンシンターゼ活性、硫酸アデニリルトランスフェラーゼサブユニット1および2、ホスホアデノシン−ホスホ硫酸レダクターゼ、フェレドキシン−亜硫酸レダクターゼ、フェレドキシンNADPレダクターゼ、3−ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ、RXA00655調節因子、RXN2910調節因子、アルギニル−tRNA合成酵素、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、トレオニン排出タンパク質、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ、フルクトース−1,6−ビスホスファターゼ、硫酸還元タンパク質RXA077、硫酸還元タンパク質RXA248、硫酸還元タンパク質RXA247、タンパク質OpcA、1−ホスホフルクトキナーゼおよび6−ホスホフルクトキナーゼ。
【0183】
アミノ酸の生合成経路中のタンパク質および遺伝子の特に好ましい例は上の表1および表2に記載されている。
【0184】
好ましい微生物または遺伝的に改変された微生物は、細菌、藻類、真菌または酵母である。
【0185】
特に好ましい微生物は、特にコリネ型細菌である。
【0186】
好ましいコリネ型細菌は以下のものである:コリネバクテリウム属の細菌、特にコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、コリネバクテリウム・アセトグルタミカム(Corynebacterium acetoglutamicum)、コリネバクテリウム・アセトアシドフィラム(Corynebacterium acetoacidophilum)、コリネバクテリウム・テルモアミノゲネス(Corynebacterium thermoaminogenes)、コリネバクテリウム・メラッセコラ(Corynebacterium melassecola)およびコリネバクテリウム・エフィシエンス(Corynebacterium efficiens)種のもの、またはブレビバクテリウム属の細菌、特にブレビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)、ブレビバクテリウム・ラクトフェルメンタム(Brevibacterium lactofermentum)およびブレビバクテリウム・ディバリカタム(Brevibacterium divaricatum)種のもの。
【0187】
特に好ましいコリネバクテリウム属およびブレビバクテリウム属の細菌は以下の群から選択される:コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032、コリネバクテリウム・アセトグルタミカムATCC15806、コリネバクテリウム・アセトアシドフィラムATCC13870、コリネバクテリウム・テルモアミノゲネスFERM BP−1539、コリネバクテリウム・メラッセコラATCC 17965、コリネバクテリウム・エフィシエンスDSM 44547、コリネバクテリウム・エフィシエンスDSM 44548、コリネバクテリウム・エフィシエンスDSM 44549、ブレビバクテリウム・フラバムATCC 14067、ブレビバクテリウム・ラクトフェルメンタムATCC 13869、ブレビバクテリウム・ディバリカタムATCC 14020、コリネバクテリウム・グルタミカムKFCC10065およびコリネバクテリウム・グルタミカムATCC21608。
【0188】
略語KFCCはKorean Federation of Culture Collection、略語ATCCはAmerican type strain culture collection、そして略語DSMはDeutsche Sammlung von Mikroorganismenを意味している。
【0189】
別の特に好ましいコリネバクテリウム属およびブレビバクテリウム属の細菌を表3に挙げる。
【表3】

【0190】

【0191】

【0192】

【0193】

【0194】
略語は以下の意味を有する:
ATCC:American Type Culture Collection, Rockville, MD, USA
FERM:Fermentation Research Institute, Chiba, Japan
NRRL:ARS Culture Collection, Northern Regional Research Laboratory, Peoria, IL, USA
CECT:Coleccion Espanola de Cultivos Tipo, Valencia, Spain
NCIMB:National Collection of Industrial and Marine Bacteria Ltd., Aberdeen, UK
CBS:Centraalbureau voor Schimmelcultures, Baarn, NL
NCTC:National Collection of Type Cultures, London, UK
DSMZ:Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen, Braunschweig, Germany
【0195】
プロモーター活性を有する本発明の核酸および本発明の発現ユニットにより、上記の本発明の方法を使用して、上記の本発明の遺伝的に改変された微生物での所定の生合成産物に向かう代謝経路を調節することが可能である。
【0196】
この目的のため、例えば、所定の生合成産物をもたらす代謝経路を、その生合成経路の遺伝子の転写速度または発現速度を生起するかまたは増大させることによって強化するが、この際、タンパク質の量の増大が所望の生合成経路のこれらのタンパク質の総合活性の増大をもたらし、それによって所望の生合成産物に向かう代謝の流れを強化する。
【0197】
その上、所定の生合成産物から分岐する代謝経路を、この分岐した生合成経路の遺伝子の転写速度または発現速度を低下させることによって弱めることができるが、この際、タンパク質の量の減少が望ましくない生合成経路のこれらのタンパク質の総合活性の低下をもたらし、それによってさらに所望の生合成産物に向かう代謝の流れを強化する。
【0198】
本発明の遺伝的に改変された微生物は、例えばグルコース、スクロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、糖蜜、でんぷん、セルロースに由来するか、またはグリセロールおよびエタノールに由来する生合成産物を産生することができる。
【0199】
本発明はしたがって、本発明の遺伝的に改変された微生物を培養することにより、生合成産物を生産するための方法に関する。
【0200】
所望の生合成産物に応じて、種々の遺伝子の転写速度もしくは発現速度を増大または低下させなければならない。通常は、複数の遺伝子の転写速度または発現速度を変化させる、すなわち遺伝子の組み合わせの転写速度または発現速度を増大させ、かつ/あるいは遺伝子の組み合わせの転写速度または発現速度を低下させるのが有利である。
【0201】
本発明の遺伝的に改変された微生物では、遺伝子の転写速度または発現速度の変化、すなわち増大もしくは低下のうち少なくとも1つが、プロモーター活性を有する本発明の核酸または本発明の発現ユニットに起因するものである。
【0202】
その上、遺伝的に改変された微生物での別の遺伝子の転写速度または発現速度の付加的な変化、すなわち付加的な増大もしくは低下は、プロモーター活性を有する本発明の核酸または本発明の発現ユニットから誘導されるものでもよいが、そうである必要はない。
【0203】
したがって、本発明はさらに、本発明の遺伝的に改変された微生物を培養することによる、生合成産物を生産するための方法に関する。
【0204】
好ましい生合成産物は精製化学製品である。
【0205】
用語「精製化学製品」(fine chemical)は当該技術分野で公知であり、生物によって産生され、多様な産業分野、例えば限定するわけではないが製薬産業、農業、化粧品、食品および飼料産業、で使用される化合物が含まれる。これらの化合物としては以下のものが挙げられる:有機酸(例えば、酒石酸、イタコン酸およびピメリン酸)ならびにタンパク質生成およびタンパク質非生成アミノ酸、プリン塩基およびピリミジン塩基、ヌクレオシドおよびヌクレオチド(例えば、Kuninaka, A. (1996) Nucleotides and related Compounds, pp. 561-612, in Biotechnology vol. 6, Rehmら編, VCH: Weinheim、およびこの中に示されている引用文献に記載のもの)、脂質、飽和および不飽和脂肪酸(例えばアラキドン酸)、ジオール(例えばプロパンジオールおよびブタンジオール)、炭水化物(例えばヒアルロン酸およびトレハロース)、芳香族化合物(例えば芳香族アミン、バニリンおよびインジゴ)、ビタミン類および補因子(以下に記載されたものなど:Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, vol. A27, "Vitamins", pp. 443-613 (1996) VCH: Weinheim、およびその中に示されている引用文献;ならびにA.S., Niki, E. and Packer, L. (1995) "Nutrition, Lipids, Health and Disease" Proceedings of the UNESCO/Confederation of Scientific and Technological Associations in Malaysia and the Society for Free Radical Research - Asia, 1994年9月1−3日開催, in Penang, Malaysia, AOCS Press (1995))、酵素ならびに以下に記載されているその他のすべての化学物質:Gutcho (1983) in Chemicals by Fermentation, Noyes Data Corporation, ISBN: 0818805086、およびその中に示されている引用文献。いくつかの精製化学製品の代謝およびその利用をさらに以下で説明する。
【0206】
I. アミノ酸の代謝および利用
アミノ酸とは、すべてのタンパク質の基本構造単位を包含し、したがって正常な細胞機能のために必須である。用語「アミノ酸」は当該技術分野で公知である。タンパク質生成アミノ酸は20タイプあるが、タンパク質の構造単位として働き、その中ではこれらは互いにペプチド結合で連結されている。一方、タンパク質非生成アミノ酸(数百種が知られている)は通常タンパク質中には存在しない(Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, vol, A2, pp. 57-97 VCH: Weinheim (1985)を参照のこと)。アミノ酸はDまたはL立体配置を採り得る。但し、天然に存在するタンパク質中では通常L−アミノ酸のみが見られる。20種のタンパク質生成アミノ酸のそれぞれの生合成および分解経路は原核および真核細胞の両方で十分明らかにされている(例えば、Stryer, L. Biochemistry, 第3版, pp. 578-590 (1988)を参照のこと)。「必須」アミノ酸(ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファンおよびバリン)は、その生合成の複雑性のために食物により摂取しなければならないので、このように称されるが、単純な生合成経路によってその他の11種の「非必須」アミノ酸(アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、プロリン、セリンおよびチロシン)に変換される。高等動物はこれらのアミノ酸のいくつかを合成する能力を有するが、必須アミノ酸は、正常なタンパク質合成を行うためには、食品とともに摂取しなければならない。
【0207】
タンパク質生合成でのその機能とは別に、これらのアミノ酸はそれ自体が興味深い化学物質であり、その多くが食品、飼料、化学物質、化粧品、農業および製薬産業における種々の適用での用途を有することが明らかになっている。リジンはヒトの栄養ばかりでなく、単胃種動物、例えば家禽類およびブタなどにとっても重要なアミノ酸である。グルタミン酸は香味添加剤(グルタミン酸一ナトリウム、MSG)として最も頻繁に用いられ、かつ食品産業において広範に使用されているが、アスパラギン酸、フェニルアラニン、グリシンおよびシステインも同様である。グリシン、L−メチオニンおよびトリプトファンはいずれも製薬産業で使用される。グルタミン、バリン、ロイシン、イソロイシン、ヒスチジン、アルギニン、プロリン、セリンおよびアラニンは製薬産業および化粧品産業で使用される。トレオニン、トリプトファンおよびD/L−メチオニンは広範に使用される飼料添加剤である(Leuchtenberger, W. (1996) Amino acids - technical production and use, pp.466-502, Rehmら編 Biotechnology vol. 6, 第14a章, VCH: Weinheim)。これらのアミノ酸はその上、以下のような合成アミノ酸およびタンパク質の合成のための好適な前駆体であることがわかっている:N−アセチルシステイン、S−カルボキシメチル−L−システイン、(S)−5−ヒドロキシトリプトファンおよび以下に記載されているその他の物質:Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, vol. A2, pp.57-97, VCH, Weinheim, 1985。
【0208】
これらを産生することができる生物、例えば細菌中でのこれらの天然アミノ酸の生合成は十分明らかにされている(細菌によるアミノ酸生合成およびその調節についての総説として、Umbarger, H.E. (1978) Ann. Rev. Biochem. 47: 533-606を参照のこと)。グルタミン酸はクエン酸回路中の中間体であるαケトグルタル酸の還元的アミノ化によって合成される。グルタミン、プロリンおよびアルギニンはそれぞれグルタミン酸から連続的に生成される。セリンの生合成は3ステップ法で行われ、3−ホスホグリセリン酸(解糖の中間体)から出発し、酸化、アミノ基転移および加水分解ステップ後、このアミノ酸が得られる。システインおよびグリシンはそれぞれセリンから生産されるが、前者はホモシステインとセリンの縮合、後者はセリントランスヒドロキシメチラーゼにより触媒される反応での側鎖β炭素のテトラヒドロ葉酸への転移による。フェニルアラニンおよびチロシンは、解糖およびペントースリン酸経路の前駆体であるエリトロース4−リン酸およびホスホエノールピルビン酸から9ステップの生合成経路で合成されるが、プレフェン酸の合成後の最後の2ステップのみが異なっている。トリプトファンもこれらの2つの出発分子から生産されるが、その合成は11ステップの経路で行われる。チロシンもフェニルアラニンからフェニルアラニンヒドロキシラーゼにより触媒される反応で生産することができる。アラニン、バリンおよびロイシンはそれぞれ、解糖の最終生成物であるピルビン酸の生合成産物である。アスパラギン酸はクエン酸回路の中間体であるオキサロ酢酸から形成される。アスパラギン、メチオニン、トレオニンおよびリジンはそれぞれアスパラギン酸の変換によって生産される。イソロイシンはトレオニンから形成される。ヒスチジンは活性化糖である5−ホスホリボシル1−ピロリン酸から複雑な9ステップ経路で形成される。
【0209】
細胞のタンパク質生合成の必要量よりも過剰な量のアミノ酸は貯蔵することができないので、分解されて、中間体がその細胞の主要な代謝経路に供給されるようになる(総説として、Stryer, L., Biochemistry, 第3版, 第21章 "Amino Acid Degradation and the Urea Cycle"; pp. 495-516 (1988)を参照のこと)。細胞は不要なアミノ酸を有用な代謝中間体に転換することはできるが、アミノ酸産生は、その合成に必要なエネルギー、前駆体分子および酵素の面で負担のかかるものである。したがって、アミノ酸生合成がフィードバック阻害によって調節され、この場合、特定のアミノ酸の存在がその産生の速度を低下させるか、または完全に停止させることは驚くべきことではない(アミノ酸生合成経路のフィードバックメカニズムの総説としては、以下を参照のこと:Stryer, L., Biochemistry, 第3版, 第24章, "Biosynthesis of Amino Acids and Heme", pp. 575-600 (1988))。したがって、特定のアミノ酸のアウトプットは細胞内のそのアミノ酸の量によって制限される。
【0210】
II. ビタミン類、補因子および栄養補助物質の代謝および利用
ビタミン類、補因子および栄養補助物質はまた別の分子群である。高等動物はこれらの合成能力を失っているので、これらを摂取する必要がある。但し、これらは細菌などの他の生物では容易に合成される。これらの分子はそれ自体が電子運搬体として作用する生物学的に活性な分子であるか、もしくは生物学的に活性な物質の前駆体であるか、または多数の代謝経路中の中間体である。これらの化合物はその栄養的価値とは別に、着色剤、抗酸化剤、および触媒またはその他の加工助剤としても、顕著な産業上の価値を有する(これらの化合物の構造、活性および産業上の適用についての総説としては、以下を参照のこと:Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, "Vitamins", vol. A27, pp. 443-613, VCH: Weinheim, 1996)。用語「ビタミン」は当該技術分野で公知であり、正常な機能発揮のために生物により必要とされるが、その生物自身はそれを合成することができない栄養物質が挙げられる。ビタミン類の群には補因子および栄養補助化合物も含まれる。用語「補因子」には、正常な酵素活性の発揮にとって必要な非タンパク質化合物が含まれる。これらの化合物は有機性または無機性の場合がある。本発明の補因子分子は好ましくは有機性である。用語「栄養補助物質」には植物および動物、特にヒトの健康を促進する食品添加物が含まれる。こうした分子の例は、ビタミン類、抗酸化剤、同様にある種の脂質(例えば多価不飽和脂肪酸)である。
【0211】
これらの分子を産生することができる細菌などの生物中でのこれらの生合成は、詳細に明らかにされている(Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, "Vitamins", vol. A27, pp. 443-613, VCH: Weinheim, 1996;Michal, G. (1999) Biochemical Pathways: An Atlas of Biochemistry and Molecular Biology, John Wiley & Sons;Ong, A.S., Niki, E. and Packer, L. (1995) "Nutrition, Lipids, Health and Disease" Proceedings of the UNESCO/Confederation of Scientific and Technological Associations in Malaysia and the Society for free Radical Research - Asia, 1994年9月1−3日開催, in Penang, Malaysia, AOCS Press, Champaign, IL X, 374 S)。
【0212】
チアミン(ビタミンB1)はピリミジンおよびチアゾール単位の化学的カップリングによって形成される。リボフラビン(ビタミンB2)はグアノシン5’−三リン酸(GTP)およびリボース5’−リン酸から合成される。リボフラビンは次に、フラビンモノヌクレオチド(FMN)およびフラビン−アデニンジヌクレオチド(FAD)の合成に使用される。「ビタミンB」と総称されるファミリーの化合物(例えばピリドキシン、ピリドキサミン、ピリドキサル5’−リン酸および商業的に使用されている塩酸ピリドキシン)はすべて、共通の構造ユニットである5−ヒドロキシ−6−メチルピリジンの誘導体である。パントテネート(パントテン酸、R−(+)−N−(2,4−ジヒドロキシ−3,3−ジメチル−1−オキソブチル)−βアラニン)は化学合成または発酵のいずれかによって生産することができる。パントテン酸生合成の最終ステップは、ATPによって駆動されるβアラニンとパントイン酸との縮合で構成される。パントイン酸、βアラニンへの変換およびパントテン酸への縮合のための生合成ステップを担う酵素は公知である。パントテネートの代謝的に活性な形態は補酵素Aであり、その生合成は5つの酵素ステップによって進行する。パントテネート、ピリドキサル5−リン酸、システインおよびATPが補酵素Aの前駆体である。これらの酵素はパントテネートの形成だけでなく、(R)−パントイン酸、(R)−パントラクトン、(R)−パンテノール(プロビタミンB)、パンテテイン(およびその誘導体)ならびに補酵素Aの生成をも触媒する。
【0213】
前駆体分子であるピメロイル−CoAからの微生物でのビオチンの生合成は詳細に研究され、関与するいくつかの遺伝子が同定されている。対応するタンパク質の多くがFeクラスター合成に関与し、nifSタンパク質のクラスに属する点が明らかになっている。リポ酸はオクタン酸から誘導され、エネルギー代謝において補酵素として作用する。この場合、これはピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体およびαケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ複合体の構成成分となる。葉酸塩はすべて葉酸から誘導される物質の1グループであり、葉酸はL−グルタミン酸、p−アミノ安息香酸および6−メチルプテリンから誘導される。代謝中間体であるグアノシン5’−三リン酸(GTP)、L−グルタミン酸およびp−アミノ安息香酸から出発する、葉酸およびその誘導体の生合成は、いくつかの微生物において詳細に研究されている。
コリノイド(コバラミンなど、特にビタミンB12)およびポルフィリンはテトラピロール環系により特徴付けられる化学物質のグループに属している。ビタミンB12の生合成は非常に複雑なので、いまだに完全には明らかにされていないが、関与する酵素および基質の大部分が現在公知となっている。ニコチン酸(ニコチネート)およびニコチンアミドはピリジン誘導体であり、「ナイアシン」とも称される。ナイアシンは重要な補酵素であるNAD(ニコチンアミド-アデニンジヌクレオチド)およびNADP(ニコチンアミド-アデニンジヌクレオチドリン酸)ならびにこれらの還元型の前駆体である。
【0214】
これらの化合物の工業的規模での生産は大部分が無細胞系の化学合成を基礎としているが、これらの化学物質のいくつかは、微生物の大規模培養によっても生産されており、そのようなものとしてはリボフラビン、ビタミンB6、パントテネートおよびビオチンなどがある。ビタミンB12だけは、その合成が複雑であるので、発酵によってのみ生産されている。in vitro法は、材料および時間のかなりの消費を要し、高コストであることが多い。
【0215】
III. プリン、ピリミジン、ヌクレオシドおよびヌクレオチドの代謝および利用
プリンならびにピリミジンの代謝に関する遺伝子およびそれに対応するタンパク質は新生物疾患およびウイルス感染症の治療のための重要な標的である。用語「プリン」または「ピリミジン」には、核酸、補酵素およびヌクレオチドの構成成分である含窒素塩基が含まれる。用語「ヌクレオチド」には核酸分子の基本構造単位が包含され、これは含窒素塩基、ペントース糖(RNA中の糖はリボース、そしてDNA中の糖はD−デオキシリボースである)およびリン酸を含有する。用語「ヌクレオシド」はヌクレオチドの前駆体として働く分子を包含するが、これはヌクレオチドとは異なって、リン酸単位を有しない。これらの分子の生合成または核酸分子の形成のためのこれらの分子の動態化を阻害することによって、RNAおよびDNA合成を阻害することが可能である。癌原性細胞中でのこの活性の特異的阻害によって、腫瘍細胞の分裂および複製能力を抑制することができる。
【0216】
核酸分子を形成しないが、エネルギー貯蔵体(すなわちAMP)として、または補酵素(すなわちFADおよびNAD)として働くヌクレオチドもある。
【0217】
プリンおよび/またはピリミジンの代謝が影響を受けるこうした医学的症候のためのこれらの化学物質の使用については、いくつかの刊行物に記載されている(例えば、Christopherson, R.I. and Lyons, S.D. (1990)"Potent inhibitors of de novo pyrimidine and purine biosynthesis as chemotherapeutic agents", Med. Res. Reviews 10: 505-548)。プリンおよびピリミジン代謝に関与する酵素についての研究は、例えば免疫抑制剤または抗増殖剤として使用することができる新規な医薬の開発に集中している(Smith, J.L. "Enzymes in Nucleotide Synthesis" Curr. Opin. Struct. Biol. 5 (1995) 752-757; Biochem. Soc. Transact. 23 (1995) 877-902)。しかし、プリンおよびピリミジン塩基、ヌクレオシドならびにヌクレオチドには、以下のような考えられる他の用途もある:各種の精製化学製品の生合成における中間体として(例えばチアミン、S−アデノシルメチオニン、葉酸塩またはリボフラビン)、細胞のためのエネルギーキャリアとして(例えばATPまたはGTP)、またそれ自体化学薬品として(香味増強剤として一般的に使用されている(例えばIMPまたはGMP))、または多くの医療用途のため(例えば、Kuninaka, A., (1996)"Nucleotides and Related Compounds" Biotechnology, vol, 6, Rehmら編, VCH: Weinheim, pp. 561-612を参照のこと。プリン、ピリジン、ヌクレオシドまたはヌクレオチド代謝に関与する酵素はまた、作物の保護のための化学薬品(例えば殺菌剤、除草剤および殺虫剤)の開発のための標的としての役割も果たすようになってきている。
【0218】
細菌中でのこれらの化合物の代謝について明らかにされている(総説として、例えば以下を参照のこと:Zalkin, H. and Dixon, J.E. (1992)"De novo purin nucleotide biosynthesis, Progress in Nucleic Acids Research and Molecular biology, vol. 42, Academic Press, pp. 259-287; およびMichal, G. (1999)"Nucleotides and Nucleosides; 第8章 in: Biochemical Pathways: An Atlas of Biochemistry and Molecular Biology, Wiley, New York)。集中的な研究の対象であるプリン代謝は、細胞の正常な機能発揮のために必須である。高等動物でのプリン代謝の障害は重篤な疾患、例えば痛風の原因となり得る。プリンヌクレオチドはリボース5−リン酸から中間体化合物であるイノシン5’−リン酸(IMP)を経て多数のステップを介して合成され、これからグアノシン5’−一リン酸(GMP)またはアデノシン5’−一リン酸(AMP)の産生につながり、これらからは、ヌクレオチドとして使用される三リン酸形態を容易に調製することができる。これらの化合物はエネルギー貯蔵体としても用いられ、その分解が細胞内での様々な生化学プロセスのためのエネルギーを供給する。ピリミジン生合成は、リボース5−リン酸からウリジン5’−一リン酸(UMP)の形成を経て行われる。次に、UMPがシチジン5’−三リン酸(CTP)に転換される。すべてのヌクレオチドのデオキシ型はヌクレオチドの二リン酸リボース型から1ステップの還元反応によって調製され、ヌクレオチドの二リン酸デオキシリボース型が得られる。リン酸化の後、これらの分子はDNA合成に用いることができるようになる。
【0219】
IV. トレハロースの代謝および利用
トレハロースは互いにα,α−1,1結合で連結されている2個のグルコース分子からなっている。これは食品産業で甘味剤として、乾燥食品もしくは冷凍食品への添加剤として、また飲料中に一般的に使用される。しかし、製薬産業、化粧品およびバイオテクノロジー産業でも使用されている(例えば以下を参照のこと:Nishimotoら、(1998)米国特許第5 759 610号;Singer, M.A. and Lindquist, S. Trends Biotech. 16 (1998) 460-467;Paiva, C.L.A. and Panek, A.D. Biotech Ann. Rev. 2 (1996) 293-314;およびShiosaka, M. FFIJ. Japan 172 (1997) 97-102)。トレハロースは多くの微生物の酵素によって産生され、周囲の培地に自然に放出され、そこから当該技術分野で公知の方法によって単離することができる。
【0220】
特に好ましい生合成産物は以下の群から選択される:有機酸、タンパク質、ヌクレオチドおよびヌクレオシド、タンパク質生成性およびタンパク質非生成性のアミノ酸、脂質および脂肪酸、ジオール、炭水化物、芳香族化合物、ビタミン類および補因子、酵素ならびにタンパク質。
【0221】
好ましい有機酸は酒石酸、イタコン酸およびジアミノピメリン酸である。
【0222】
好ましいヌクレオシドおよびヌクレオチドは例えばKuninaka, A. (1996)"Nucleotides and Related Compounds", pp. 561-612, in Biotechnology, vol. 6, Rehmら編, VCH: Weinheim、およびその中に示された引用文献に記載されている。
【0223】
好ましい生合成産物はさらに以下のものである:脂質、飽和および不飽和脂肪酸(例えばアラキドン酸)、ジオール(例えばプロパンジオールおよびブタンジオール)、炭水化物(例えばヒアルロン酸およびトレハロース)、芳香族化合物(例えば、芳香族アミン、バニリンおよびインジゴ)、ビタミン類および補因子(例えば以下に記載されているもの:Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, vol. A27, "Vitamins", pp. 443-613 (1996) VCH: Weinheimおよびその中の引用文献;ならびにOng, A.S., Niki, E. and Packer, L. (1995) "Nutrition, Lipids, Health and Disease" Proceedings of the UNESCO/Confederation of Scientific and Technological Associations in Malaysia and the Society for Free Radical Research - Asia, 1994年9月開催, in Penang, Malaysia, AOCS Press (1995))、酵素、ポリケチド(Caneら (1998) Science 282: 63-68)ならびに以下に記載されているその他のすべての化学物質:Gutcho (1983) in Chemicals by Fermentation, Noyes Data Corporation, ISBN: 0818805086 およびその中に示された引用文献。
【0224】
特に好ましい生合成産物はアミノ酸、特に好ましくは必須アミノ酸、特に以下のものである:L−グリシン、L−アラニン、L−ロイシン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−トリプトファン、L−リジン、L−グルタミン、L−グルタミン酸、L−セリン、L−プロリン、L−バリン、L−イソロイシン、L−システイン、L−チロシン、L−ヒスチジン、L−アルギニン、L−アスパラギン、L−アスパラギン酸およびL−トレオニン、L−ホモセリン、特にL−リジン、L−メチオニンおよびL−トレオニン。アミノ酸、例えばリジン、メチオニンおよびトレオニンなどは以下、LおよびD型のアミノ酸の両方、好ましくはL型、すなわち例えばL−リジン、L−メチオニンおよびL−トレオニンを意味する。
【0225】
本発明は特に、少なくとも1種の遺伝子について野生型と比較して増大したか生起された発現速度を有する、遺伝的に改変された微生物を培養することによる、リジンの生産方法であって、
ch) 少なくとも1つの本発明の内在性発現ユニットであって、内在性遺伝子の発現を調節する発現ユニットの、該微生物での発現比活性が、野生型と比較して増大している、または
dh) 本発明の発現ユニットにより、または実施形態a)に従い増大した発現比活性を伴う発現ユニットにより、該微生物での遺伝子の発現が調節されており、ここで該遺伝子は該発現ユニットとの関係では異種起源である、
上記方法に関する。
【0226】
そして前記の場合、遺伝子は以下の群から選択される:アスパラギン酸キナーゼをコードする核酸、アスパラギン酸−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする核酸、ジアミノピメリン酸デヒドロゲナーゼをコードする核酸、ジアミノピメリン酸デカルボキシラーゼをコードする核酸、ジヒドロジピコリン酸合成酵素をコードする核酸、ジヒドロジピコリン酸レダクターゼをコードする核酸、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼをコードする核酸、3−ホスホグリセリン酸キナーゼをコードする核酸、ピルビン酸カルボキシラーゼをコードする核酸、トリオースリン酸イソメラーゼをコードする核酸、転写調節因子LuxRをコードする核酸、転写調節因子LysR1をコードする核酸、転写調節因子LysR2をコードする核酸、リンゴ酸−キノンオキシドレダクターゼをコードする核酸、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼをコードする核酸、6−ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼをコードする核酸、トランスケトラーゼをコードする核酸、トランスアルドラーゼをコードする核酸、リジンエクスポーターをコードする核酸、ビオチンリガーゼをコードする核酸、アルギニル−tRNA合成酵素をコードする核酸、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼをコードする核酸、フルクトース−1,6−ビスホスファターゼをコードする核酸、タンパク質OpcAをコードする核酸、1−ホスホフルクトキナーゼをコードする核酸および6−ホスホフルクトキナーゼをコードする核酸。
【0227】
方法について上述したように、本発明の発現ユニットによる、または実施形態ch)に従い増大した発現比活性を伴う本発明の発現ユニットによる、前記微生物でのこれらの遺伝子の発現の調節は、
dh1) 増大した発現比活性を適宜伴う本発明の1以上の発現ユニットを該微生物のゲノムに導入することにより、増大した発現比活性を適宜伴う導入された本発明の該発現ユニットの制御下に、1以上の内在性遺伝子の発現が行われるようになるステップ、または
dh2) 1以上の遺伝子を該微生物のゲノムに導入することにより、増大したプロモーター比活性を適宜伴う本発明の内在性発現ユニットの制御下に、導入された1以上の該遺伝子の発現が行われるようになるステップ、または
dh3) 増大した発現比活性を適宜伴う本発明の発現ユニットと、機能的に連結された1以上の発現対象の核酸とを含んでなる1以上の核酸構築物を、該微生物に導入するステップ、
によって達成される。
【0228】
リジンを調製するための上記の方法の特に好ましい別の実施形態は、以下の群から選択される活性のうち少なくとも1つについて、野生型と比較して増大した活性をさらに有する、遺伝的に改変された微生物を含む:アスパラギン酸キナーゼ活性、アスパラギン酸−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性、ジアミノピメリン酸デヒドロゲナーゼ活性、ジアミノピメリン酸デカルボキシラーゼ活性、ジヒドロジピコリン酸合成酵素活性、ジヒドロジピコリン酸レダクターゼ活性、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ活性、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ活性、ピルビン酸カルボキシラーゼ活性、トリオースリン酸イソメラーゼ活性、転写調節因子LuxR活性、転写調節因子LysR1活性、転写調節因子LysR2活性、リンゴ酸−キノンオキシドレダクターゼ活性、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ活性、6−ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ活性、トランスケトラーゼ活性、トランスアルドラーゼ活性、リジンエクスポーター活性、アルギニル−tRNA合成酵素活性、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ活性、フルクトース−1,6−ビスホスファターゼ活性、タンパク質OpcA活性、1−ホスホフルクトキナーゼ活性、6−ホスホフルクトキナーゼ活性およびビオチンリガーゼ活性。
【0229】
リジンを調製するための上記の方法のさらに好ましい実施形態は、以下の群から選択される活性のうち少なくとも1つについて、野生型と比較して低下した活性をさらに有する、遺伝的に改変された微生物を含む:トレオニンデヒドラターゼ活性、ホモセリンO−アセチルトランスフェラーゼ活性、O−アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼ活性、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ活性、ピルビン酸オキシダーゼ活性、ホモセリンキナーゼ活性、ホモセリンデヒドロゲナーゼ活性、トレオニンエクスポーター活性、トレオニン排出タンパク質活性、アスパラギナーゼ活性、アスパラギン酸デカルボキシラーゼ活性およびトレオニンシンターゼ活性。
【0230】
上記の活性のうち少なくとも1つについて、増大するかまたは低下したさらなる活性は、プロモーター活性を有する本発明の核酸および/または本発明の発現ユニットより生起されたものでもよいが、そうである必要はない。
【0231】
本発明はさらに、少なくとも1種の遺伝子について野生型と比較して増大したか生起された発現速度を有する、遺伝的に改変された微生物を培養することによる、メチオニンの生産方法であって、
ch) 本発明の少なくとも1つの内在性発現ユニットであって、内在性遺伝子の発現を調節する発現ユニットの、該微生物での発現比活性が、野生型と比較して増大している、または
dh) 本発明の発現ユニットにより、または実施形態a)に従い増大した発現比活性を伴う本発明の発現ユニットにより、該微生物での遺伝子の発現が調節されており、ここで該遺伝子は該発現ユニットとの関係では異種起源である、
上記方法に関する。
【0232】
そして前記の場合、遺伝子は以下の群から選択される:アスパラギン酸キナーゼをコードする核酸、アスパラギン酸−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする核酸、ホモセリンデヒドロゲナーゼをコードする核酸、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼをコードする核酸、3−ホスホグリセリン酸キナーゼをコードする核酸、ピルビン酸カルボキシラーゼをコードする核酸、トリオースリン酸イソメラーゼをコードする核酸、ホモセリンO−アセチルトランスフェラーゼをコードする核酸、シスタチオニンγ−シンターゼをコードする核酸、シスタチオニンβ−リアーゼをコードする核酸、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼをコードする核酸、O−アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼをコードする核酸、メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼをコードする核酸、ホスホセリンアミノトランスフェラーゼをコードする核酸、ホスホセリンホスファターゼをコードする核酸、セリンアセチルトランスフェラーゼをコードする核酸、システインシンターゼIをコードする核酸、システインシンターゼII活性をコードする核酸、補酵素B12依存性メチオニンシンターゼ活性をコードする核酸、補酵素B12非依存性メチオニンシンターゼ活性をコードする核酸、硫酸アデニリルトランスフェラーゼ活性をコードする核酸、ホスホアデノシン−ホスホ硫酸レダクターゼ活性をコードする核酸、フェレドキシン−亜硫酸レダクターゼ活性をコードする核酸、フェレドキシンNADPHレダクターゼ活性をコードする核酸、フェレドキシン活性をコードする核酸、硫酸還元タンパク質RXA077をコードする核酸、硫酸還元タンパク質RXA248をコードする核酸、硫酸還元タンパク質RXA247をコードする核酸、RXA0655調節因子をコードする核酸およびRXN2910調節因子をコードする核酸。
【0233】
方法について上述したように、本発明の発現ユニットによる、または実施形態ch)に従い増大した発現比活性を伴う本発明の発現ユニットによる、前記微生物でのこれらの遺伝子の発現の調節は、
dh1) 増大した発現比活性を適宜伴う本発明の1以上の発現ユニットを該微生物のゲノムに導入することにより、増大した発現比活性を適宜伴う導入された本発明の該発現ユニットの制御下に、1以上のこれらの内在性遺伝子の発現が行われるようになるステップ、または
dh2) 1以上の遺伝子を該微生物のゲノムに導入することにより、増大したプロモーター比活性を適宜伴う本発明の内在性発現ユニットの制御下に、導入された1以上の該遺伝子の発現が行われるようになるステップ、または
dh3) 増大した発現比活性を適宜伴う本発明の発現ユニットと、機能的に連結された1以上の発現対象の核酸とを含んでなる1以上の核酸構築物を、該微生物に導入するステップ、
によって達成される。
【0234】
メチオニンを調製するための上記の方法の特に好ましい別の実施形態は、以下の群から選択される活性のうち少なくとも1つについて、野生型と比較して増大した活性をさらに有する、遺伝的に改変された微生物を含む:アスパラギン酸キナーゼ活性、アスパラギン酸−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性、ホモセリンデヒドロゲナーゼ活性、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ活性、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ活性、ピルビン酸カルボキシラーゼ活性、トリオースリン酸イソメラーゼ活性、ホモセリンO−アセチルトランスフェラーゼ活性、シスタチオニンγ−シンターゼ活性、シスタチオニンβ−リアーゼ活性、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ活性、O−アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼ活性、メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ活性、ホスホセリンアミノトランスフェラーゼ活性、ホスホセリンホスファターゼ活性、セリンアセチルトランスフェラーゼ活性、システインシンターゼI活性、システインシンターゼII活性、補酵素B12依存性メチオニンシンターゼ活性、補酵素B12非依存性メチオニンシンターゼ活性、硫酸アデニリルトランスフェラーゼ活性、ホスホアデノシン−ホスホ硫酸レダクターゼ活性、フェレドキシン−亜硫酸レダクターゼ活性、フェレドキシンNADPHレダクターゼ活性、フェレドキシン活性、硫酸還元タンパク質RXA077活性、硫酸還元タンパク質RXA248活性、硫酸還元タンパク質RXA247活性、RXA655調節因子活性およびRXN2910調節因子活性。
【0235】
メチオニンを調製するための上記の方法の特に好ましい別の実施形態は、以下の群から選択される活性のうち少なくとも1つについて、野生型と比較して低下した活性をさらに有する、遺伝的に改変された微生物を含む:ホモセリンキナーゼ活性、トレオニンデヒドラターゼ活性、トレオニンシンターゼ活性、メソ−ジアミノピメリン酸D−デヒドロゲナーゼ活性、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ活性、ピルビン酸オキシダーゼ活性、ジヒドロジピコリン酸シンターゼ活性、ジヒドロジピコリン酸レダクターゼ活性およびジアミノピコリン酸デカルボキシラーゼ活性。
【0236】
上記の活性のうち少なくとも1つについて、増大したかまたは低下したこれらのさらなる活性は、プロモーター活性を有する本発明の核酸および/または本発明の発現ユニットにより生起されたものでもよいが、そうである必要はない。
本発明はさらに、少なくとも1種の遺伝子について野生型と比較して増大したか生起された発現速度を有する、遺伝的に改変された微生物を培養することによる、トレオニンの生産方法であって、
ch) 少なくとも1つの本発明の内在性発現ユニットであって、内在性遺伝子の発現を調節する発現ユニットの、該微生物での発現比活性が、野生型と比較して増大している、または
dh) 本発明の発現ユニットにより、または実施形態a)に従い増大した発現比活性を伴う本発明の発現ユニットにより該微生物での遺伝子の発現が調節されており、ここで該遺伝子は、該発現ユニットとの関係では異種起源である、
上記方法に関する。
【0237】
そして前記の場合、遺伝子は以下の群から選択される:アスパラギン酸キナーゼをコードする核酸、アスパラギン酸−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする核酸、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼをコードする核酸、3−ホスホグリセリン酸キナーゼをコードする核酸、ピルビン酸カルボキシラーゼをコードする核酸、トリオースリン酸イソメラーゼをコードする核酸、ホモセリンキナーゼをコードする核酸、トレオニンシンターゼをコードする核酸、トレオニンエクスポーター・キャリアをコードする核酸、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼをコードする核酸、トランスアルドラーゼをコードする核酸、トランスケトラーゼをコードする核酸、リンゴ酸−キノンオキシドレダクターゼをコードする核酸、6−ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼをコードする核酸、リジンエクスポーターをコードする核酸、ビオチンリガーゼをコードする核酸、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼをコードする核酸、トレオニン排出タンパク質をコードする核酸、フルクトース−1,6−ビスホスファターゼをコードする核酸、OpcAタンパク質をコードする核酸、1−ホスホフルクトキナーゼをコードする核酸、6−ホスホフルクトキナーゼをコードする核酸およびホモセリンデヒドロゲナーゼをコードする核酸。
【0238】
方法について上述したように、本発明の発現ユニットによる、または実施形態ch)に従い増大した発現比活性を伴う本発明の発現ユニットによる、前記微生物でのこれらの遺伝子の発現の調節は、
dh1) 増大した発現比活性を適宜伴う本発明の1以上の発現ユニットを該微生物のゲノムに導入することにより、増大した発現比活性を適宜伴う導入された本発明の該発現ユニットの制御下に、1以上のこれらの内在性遺伝子の発現が行われるようになるステップ、または
dh2) 1以上のこれらの遺伝子を該微生物のゲノムに導入することにより、増大したプロモーター比活性を適宜伴う本発明の内在性発現ユニットの制御下に、1以上の導入された該遺伝子の発現が行われるようになるステップ、または
dh3) 増大した発現比活性を適宜伴う本発明の発現ユニットと、機能的に連結された1以上の発現対象の核酸とを含んでなる1以上の核酸構築物を、該微生物に導入するステップ、
によって達成される。
【0239】
トレオニンを調製するための上記の方法の特に好ましい別の実施形態は、以下の群から選択される活性のうち少なくとも1つについて、野生型と比較して増大した活性をさらに有する、遺伝的に改変された微生物を含む:アスパラギン酸キナーゼ活性、アスパラギン酸−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ活性、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ活性、ピルビン酸カルボキシラーゼ活性、トリオースリン酸イソメラーゼ活性、トレオニンシンターゼ活性、トレオニンエクスポーター・キャリア活性、トランスアルドラーゼ活性、トランスケトラーゼ活性、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ活性、リンゴ酸−キノンオキシドレダクターゼ活性、ホモセリンキナーゼ活性、ビオチンリガーゼ活性、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ活性、トレオニン排出タンパク質活性、タンパク質OpcA活性、1−ホスホフルクトキナーゼ活性、6−ホスホフルクトキナーゼ活性、フルクトース−1,6−ビスホスファターゼ活性、6−ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ活性およびホモセリンデヒドロゲナーゼ活性。
【0240】
トレオニンを調製するための上記の方法の特に好ましい別の実施形態は、以下の群から選択される活性のうち少なくとも1つについて、野生型と比較して低下した活性をさらに有する、遺伝的に改変された微生物を含む:トレオニンデヒドラターゼ活性、ホモセリンO−アセチルトランスフェラーゼ活性、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ活性、O−アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼ活性、メソ−ジアミノピメリン酸D−デヒドロゲナーゼ活性、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ活性、ピルビン酸オキシダーゼ活性、ジヒドロジピコリン酸合成酵素活性、ジヒドロジピコリン酸レダクターゼ活性、アスパラギナーゼ活性、アスパラギン酸デカルボキシラーゼ活性、リジンエクスポーター活性、アセト乳酸シンターゼ活性、ケトール酸レダクトイソメラーゼ活性、分岐鎖アミノトランスフェラーゼ活性、補酵素B12依存性メチオニンシンターゼ活性、補酵素B12非依存性メチオニンシンターゼ活性、ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ活性およびジアミノピコリン酸デカルボキシラーゼ活性。
【0241】
上記の活性の少なくとも1つについて、増大するかまたは低下したさらなる活性は、プロモーター活性を有する本発明の核酸および/または本発明の発現ユニットにより生起されたものでもよいが、そうである必要はない。
【0242】
タンパク質の「活性」との用語は、酵素の場合は、対応するタンパク質の酵素活性を意味し、また、他のタンパク質、例えば構造タンパク質もしくは輸送タンパク質の場合は、そのタンパク質の生理学的活性を意味する。
【0243】
酵素は通常、基質を生成物に変換するか、またはその変換ステップを触媒することができるものである。
【0244】
したがって、酵素の「活性」は、その酵素によって一定時間内に変換される基質の量、または形成される生成物の量を意味する。
【0245】
例えば、ある活性が野生型と比較して増大している場合、一定時間内に変換される基質の量、または形成される生成物の量が野生型と比較して増大する。
【0246】
「活性」のこの増大は、上記および下記のすべての活性について好ましくは、「野生型の活性」の少なくとも5%、さらに好ましくは少なくとも20%、さらに好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも100%、より好ましくは少なくとも300%、さらにより好ましくは少なくとも500%、特には少なくとも600%の量である。
【0247】
例えば、ある活性が野生型と比較して低下している場合、一定時間内に変換される基質の量、または形成される生成物の量が野生型と比較して減少する。
【0248】
低下した活性とは、好ましくは各種の細胞生物学的メカニズムに基づく、微生物中のこの酵素についての、部分的または実質的に完全な機能性の抑制または阻止を意味する。
活性の低下は、酵素の量的減少、最大でその酵素の実質的に完全な不在(すなわち対応する活性の検出不能、またはその酵素の免疫学的検出不能)を含む。微生物中の活性は好ましくは、野生型と比較して、少なくとも5%、さらに好ましくは少なくとも20%、さらに好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは100%低下する。「低下」は特に対応する活性の完全な不在をも意味する。
【0249】
遺伝的に改変された微生物および野生型での特定の酵素の活性、例えば酵素活性の増大または低下は、例えば酵素アッセイなどの公知の方法によって測定することができる。
【0250】
例えば、ピルビン酸カルボキシラーゼは、ピルビン酸塩をオキサロ酢酸塩に変換する酵素活性を示すタンパク質を意味する。
【0251】
したがって、ピルビン酸カルボキシラーゼ活性は、一定時間内にピルビン酸カルボキシラーゼタンパク質によって変換されるピルビン酸塩の量、または形成されるオキサロ酢酸塩の量を意味する。
【0252】
例えば、ピルビン酸カルボキシラーゼ活性が野生型と比較して増大している場合、一定時間内にピルビン酸カルボキシラーゼタンパク質によって変換されるピルビン酸塩の量、または形成されるオキサロ酢酸塩の量が野生型と比較して増大している。
【0253】
ピルビン酸カルボキシラーゼ活性のこの増大は、好ましくは、野生型のピルビン酸カルボキシラーゼ活性の少なくとも5%、さらに好ましくは少なくとも20%、さらに好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも100%、より好ましくは少なくとも300%、さらにより好ましくは少なくとも500%、特には少なくとも600%である。
【0254】
また、例えばホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ活性とは、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼの酵素活性を意味する。
【0255】
ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼとは、オキサロ酢酸塩をホスホエノールピルビン酸塩に変換する酵素活性を示すタンパク質を意味する。
【0256】
したがって、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ活性とは、一定時間内にホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼタンパク質によって変換されるオキサロ酢酸塩の量、または形成されるホスホエノールピルビン酸塩の量を意味する。
【0257】
ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ活性が野生型と比較して低下している場合、したがって、一定時間内にホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼタンパク質によって変換されるオキサロ酢酸塩の量、または形成されるホスホエノールピルビン酸塩の量が野生型と比較して低下している。
【0258】
ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ活性の低下は、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼの量的減少、最大でホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼの実質的に完全な不在(すなわちホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ活性の検出不能、またはホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼの免疫学的検出不能)を含む。ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ活性は好ましくは、野生型と比較して少なくとも5%、さらに好ましくは少なくとも20%、さらに好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは100%低下する。特に、「低下」とは対応するホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ活性の完全な不在をも意味する。
【0259】
付加的な活性の増大は様々な手法で実現することができるが、例えば発現およびタンパク質レベルで抑制的調節メカニズムを抑制することによるか、または上記のタンパク質をコードする核酸の遺伝子発現を野生型と比較して増大させることによる。
【0260】
上記のタンパク質をコードする核酸の遺伝子発現についての野生型と比較した増大は、同様に様々な手法で実現することができる。例えば、その遺伝子をアクチベーターによって誘導するか、あるいは上述のように、プロモーター活性を増大させるか発現活性を増大させることによるか、または1以上の遺伝子コピーをその微生物に導入することによる。
タンパク質をコードする核酸の遺伝子発現の増大とは、本発明においては、その微生物に固有の内在性タンパク質の発現の操作をも意味する。
【0261】
これは例えば、上述のように、その遺伝子のプロモーターおよび/または発現ユニット配列を変更することによって、達成することができる。遺伝子の発現速度の増大をもたらすこのような変更は、例えばDNA配列の欠失または挿入によって実現することができる。
【0262】
上述のように、外来性刺激の付加によって内在性タンパク質の発現を変更することが可能である。これは特定の生理学的条件により、すなわち外来性物質の付加により、実現することができる。
【0263】
当業者であれば、遺伝子発現の増大を達成するために、さらに別の操作法を、単独で、または組み合わせて用いることができる。これについては、例えば、特定の遺伝子のコピー数を増大させるか、あるいは、プロモーターおよび調節領域またはその構造遺伝子の上流に位置するリボソーム結合サイトを突然変異させることができる。さらに、誘導性プロモーターを介して、発酵産生中の発現を増大させることが可能である。mRNAの寿命を延長させる操作も同様に発現を改善する。酵素活性は同様に、酵素タンパク質の分解を抑制することによって増強される。遺伝子または遺伝子構築物は、そのコピー数を変更してプラスミド中に存在させるか、または染色体中に組み込んで増幅させる。あるいはまた、培地の組成の変更および培養の管理によって、対応する遺伝子の過剰発現を実現することも可能である。
【0264】
当業者はこれについての手引きを、とりわけ以下から得ることができる:Martinら(Biotechnology 5, 137-146 (1987))、Guerreroら(Gene 138, 35-41 (1994))、Tsuchiya and Morinaga(Bio/Technology 6, 428-430 (1988))、Eikmannsら(Gene 102, 93-98 (1991))、欧州特許第0472869号、米国特許第4,601,893号、Schwarzer and Puhler(Biotechnology 9, 84-87(1991))、Reinscheidら(Applied and Environmental Microbiology 60, 126-132 (1994))、LaBarreら(Journal of Bacteriology 175, 10011007 (1993))、特許出願WO 96/15246、Malumbresら(Gene 134, 15-24 (1993))、日本国公開公報JP−A−10−229891、Jensen and Hammer(Biotechnology and Bioengineering 58, 191-195 (1998))、Makrides(Microbiological Reviews 60: 512-538 (1996))、ならびに遺伝学および分子生物学の周知の教科書。
【0265】
さらに、生合成産物、特にL−リジン、L−メチオニンおよびL−トレオニンの生産のためには、遺伝子の発現または強化の他に、不要な副反応を排除することが有利である(Nakayama: "Breeding of Amino Acid Producing Microorganisms"、in: Overproduction of Microbial Products, Krumphanzl, Sikyta, Vanek (編), Academic Press, London, UK, 1982)。
【0266】
好ましい実施形態では、上記のタンパク質の1つをコードする核酸の遺伝子発現を、対応するタンパク質をコードする少なくとも1つの核酸を微生物に導入することによって、増大させる。核酸の導入は染色体内もしくは染色体外で、すなわち染色体上のコピー数を増大させること、および/または宿主微生物中で複製するプラスミド上の遺伝子のコピーによって、行うことができる。
【0267】
例えば、核酸を含む発現カセットの形態での核酸の導入は、好ましくは染色体内に、特には上記のSacB法によって行う。
【0268】
原理上、上記のタンパク質の1つをコードするいずれの遺伝子でも、この目的のために使用することが可能である。
【0269】
イントロンを含んでいる真核生物起源のゲノム核酸配列の場合、宿主微生物が対応するタンパク質を発現する能力がないか、それを可能にすることができないならば、すでにプロセシングを受けた核酸配列(例えば対応するcDNA)を使用するのが好ましい。
【0270】
対応する遺伝子の例は表1および2に掲載している。
【0271】
微生物中の上記の活性は好ましくは、以下の方法の少なくとも1つにより低下させる:
・ 共抑制を誘発するための少なくとも1つのセンスリボ核酸配列、またはその発現を保証する発現カセットの導入
・ 対応する遺伝子、RNAもしくはタンパク質に対する少なくとも1つのDNAもしくはタンパク質結合因子、またはその発現を保証する発現カセットの導入
・ RNAの分解を引き起こす少なくとも1つのウイルス核酸配列、またはその発現を保証する発現カセットの導入
・ 機能の喪失(例えば遺伝子中での挿入、欠失、転化もしくは突然変異の生起による、例えば遺伝子の終止コドンの創出またはリーディングフレームのシフトなど)をもたらす少なくとも1つの構築物の導入。所望の標的遺伝子中への、相同組換えまたはその標的遺伝子に対して配列特異的なヌクレアーゼの導入による部位特異的挿入によって、ノックアウト突然変異体を作製するのが可能であり、好ましい。
・ 低下したプロモーター活性を有するプロモーターまたは低下した発現活性を持つ発現ユニットの導入
【0272】
当業者であれば、その活性または機能を低下させるために、別の方法もまた本発明の範囲内で利用することができることに気づく。例えば、あるタンパク質のドミナントネガティブ変異体またはその発現を保証する発現カセットの導入もまた有利である。
さらに、これらの方法のそれぞれが、タンパク質の量、mRNAの量および/またはタンパク質の活性の低下をもたらすことが可能である。組み合わせた使用もあり得る。別の方法も当業者に公知であり、以下が含まれる:タンパク質のプロセシング、またはタンパク質もしくはそのmRNAの輸送の妨害もしくは抑制、リボソーム結合の阻害、RNAスプライシングの阻害、RNA分解酵素の誘導および/あるいは翻訳伸長もしくは終結の阻害。
【0273】
生合成産物を生産するための本発明の方法では、遺伝的に改変された微生物の培養のステップに、好ましくはその微生物または発酵液からの生合成産物の単離が続く。これらのステップは培養ステップと同時に、および/または好ましくはその後に行うことができる。
【0274】
生合成産物、特にL−リジン、L−メチオニンおよびL−トレオニンを生産するために、本発明の遺伝的に改変された微生物を、バッチ法(バッチ培養)、または流加法もしくは反復流加法で、連続的もしくは不連続的に培養することができる。公知の培養方法の概要は以下に見出すことができる:Chmielの教科書(Bioprozesstechnik 1. Einfuhrung in die Bioverfahrenstechnik (Gustav Fischer Verlag, Stuttgart, 1991))またはStorhasの教科書(Bioreaktoren und periphere Einrichtungen (Vieweg Verlag, Braunschweig/Wiesbaden, 1994))。
【0275】
使用する培養培地は、各菌株の要求を好適な様式で満足するものでなければならない。種々の微生物のための培養培地については、以下の参考書に記載されている:"Manual of Methods for General Bacteriology" of the American Society for Bacteriology (Washington D.C., USA, 1981)。
【0276】
本発明に従い使用することができるこれらの培地は、通常、1種以上の炭素源、窒素源、無機塩、ビタミン類および/または微量元素を含む。
【0277】
好ましい炭素源は単糖類、二糖類または多糖類などの糖類である。極めて優良な炭素源の例は以下のものである:グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、リボース、ソルボース、リブロース、ラクトース、マルトース、スクロース、ラフィノース、でんぷんまたはセルロース。糖類は、糖蜜などの複合化合物またはその他の糖精製の副産物として培地に加えることもできる。種々の炭素源の混合物を添加することも有利である。その他の考えられる炭素源は以下のものである:油および脂質(例えば大豆油、ヒマワリ油、ピーナッツ油およびココナッツ脂など)、脂肪酸(例えばパルミチン酸、ステアリン酸またはリノール酸など)、アルコール(例えばグリセロール、メタノールまたはエタノールなど)、ならびに有機酸(例えば酢酸または乳酸など)。
【0278】
窒素源は通常は有機もしくは無機窒素化合物またはこれらの化合物を含有する物質である。窒素源の例としては以下が挙げられる:アンモニアガスまたはアンモニウム塩(例えば硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウムもしくは硝酸アンモニウムなど)、硝酸塩、尿素、アミノ酸または複合窒素源(例えばコーンスティープリカー、大豆粉、大豆タンパク質、酵母抽出物、食肉抽出物)など。窒素源は単独で、または混合物として使用することができる。
【0279】
培地中に存在させることができる無機塩化合物は、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、コバルト、モリブデン、カリウム、マンガン、亜鉛、銅および鉄の塩化物、リン酸塩または硫酸塩である。
【0280】
精製化学製品、特にメチオニンを生産するため、硫黄源として例えば硫酸塩、亜硫酸塩、次亜硫酸塩、テトラチオネート、チオ硫酸塩、硫化物などの無機化合物を用いることが可能であるが、メルカプタンおよびチオールなどの有機硫黄化合物もまた用いることができる。
【0281】
リン源としてリン酸、リン酸二水素カリウムもしくはリン酸水素二カリウムまたは対応するナトリウム含有塩を使用することが可能である。
【0282】
溶液中に金属イオンを維持するために、キレート剤を培地に添加することができる。特に好適なキレート剤には、カテコールもしくはプロトカテク酸塩などのジヒドロキシフェノール、またはクエン酸などの有機酸が含まれる。
【0283】
本発明に従い使用される発酵培地は、通常、ビタミン類または増殖促進剤などの他の成長因子を含んでなる。これらとしては例えば、ビオチン、リボフラビン、チアミン、葉酸、ニコチン酸、パントテン酸塩およびピリドキシンが挙げられる。成長因子および塩類は、酵母抽出物、糖蜜、コーンスティープリカーなどの、培地の複合成分に由来することが多い。好適な前駆体を培養培地に添加することもできる。培地中の化合物の正確な組成は、行う特定の実験によって決まり、各特定の場合ごとに個別に決定される。培地の最適化についての情報は以下の教科書から取得することができる:"Applied Microbiol. Physiology, A Practical Approach" (P.M. Rhodes, P.F. Stanbury編, IRL Press (1997) pp. 53-73, ISBN 0 19 9635773)。増殖培地は市販業者から購入することもでき、例えばStandard1(Merck)またはBHI(Brain heart infusion、DIFCO)などがある。
【0284】
培地の成分のすべてを加熱(1.5バールおよび121℃で20分)または滅菌濾過のいずれかによって滅菌する。成分は一緒に、または必要ならば別々に滅菌することができる。培地のすべての成分を培養の開始時に存在させるか、または場合によっては連続的もしくはバッチ毎に添加してもよい。
【0285】
培養の温度は通常15℃〜45℃、好ましくは25℃〜40℃であり、一定に維持するか、実験の間に変化させることができる。培地のpHは5〜8.5の範囲、好ましくは約7.0とすべきである。培養のためのpHは、塩基性化合物(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアもしくは水性アンモニアなど)、または酸性化合物(例えばリン酸もしくは硫酸など)を添加することによって培養中制御することができる。泡の形成は、例えば脂肪酸ポリグリコールエステルなどの消泡剤の利用によって制御することができる。プラスミドの安定性は、例えば抗生物質などの選択作用を有する好適な物質の培地への添加によって、維持することができる。好気条件は、培養物中に酸素または例えば外気などの酸素含有ガスを導入することによって維持する。培養の温度は通常20℃〜45℃である。培養は所望の生成物の最大形成まで継続する。この目標には通常10時間〜160時間で到達する。
【0286】
このようにして得られる発酵液中の乾燥物質含量は通常、7.5〜25重量%である。
【0287】
少なくとも発酵時間の最後、特に少なくともその30%を過ぎた時点では、糖を制限して発酵を行うことも有利である。これは、この時間に、発酵培地中の利用可能な糖の濃度を0〜3 g/lに維持するか、または低下させることを意味する。
【0288】
必要な生合成産物および生合成副産物の物理的/化学的特性に従い、それ自体公知の手法で、生合成産物を発酵液および/または微生物から単離する。
【0289】
発酵液は例えば以下のようにさらに処理することができる。必要に応じて、例えば遠心分離、濾過、デカンテーションもしくはこれらの方法の組み合わせなどの分離方法によって、バイオマスを発酵液から完全にまたは部分的に除去するか、あるいは完全にその中に残しておくことができる。
【0290】
発酵液を次に、例えばロータリーエバポレーター、薄膜エバポレーター、流下膜エバポレーターを使用するか、逆浸透圧またはナノ濾過などの公知の方法によって、濃縮することができる。この濃縮発酵液を次に凍結乾燥、噴霧乾燥、噴霧顆粒化またはその他の方法によって処理することができる。
しかし、生合成産物、特にL−リジン、L−メチオニンおよびL−トレオニンをさらに精製することも可能である。この目的のため、生成物を含有する培養液を、バイオマスの除去後に、適当な樹脂を使用するクロマトグラフィーにかけて、所望の産物または不純物が完全にまたは部分的にクロマトグラフィー樹脂上に残留するようにする。必要ならば、同一または別のクロマトグラフィー樹脂を使用して、これらのクロマトグラフィーステップを反復することができる。当業者は好適なクロマトグラフィー樹脂の選択およびその最も効果的な使用に習熟している。精製した産物を濾過または限外濾過によって濃縮してその産物の安定性が最大となる温度で貯蔵することができる。
【0291】
生合成産物は最終的に種々の形態、例えばその塩またはエステルの形態とすることができる。
【0292】
単離した化合物(群)の特性および純度は、従来技術によって判定することができる。これらには高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、分光分析法、染色法、薄層クロマトグラフィー、NIRS、酵素アッセイまたは微生物学的アッセイが含まれる。これらの分析方法は以下に総括されている:Patekら (1994) Appl. Environ. Microbiol. 60:133-140;Malakhovaら (1996) Biotekhnologiya 11 27-32;およびSchmidtら (1998) Bioprocess Engineer. 19:67-70、Ulmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry (1996) vol. A27, VCH: Weinheim, pp.89-90, pp. 521-540, pp. 540-547, pp. 559-566, 575-581およびpp. 581-587;Michal, G (1999) Biochemical Pathways: An Atlas of Biochemistry and Molecular Biology, John Wiley and Sons;Fallon, A.ら (1987) Applications of HPLC in Biochemistry in: Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology, vol. 17。
【発明を実施するための最良の形態】
【0293】
ここで、本発明を以下の非限定的な実施例によりさらに詳細に記述する。
【実施例1】
【0294】
ベクターpCLiK5MCSの調製
まず、ベクターpBR322のアンピシリン耐性および複製起点を、配列番号5と配列番号6のオリゴヌクレオチドプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅した。
配列番号5:
5’−CCCGGGATCCGCTAGCGGCGCGCCGGCCGGCCCGGTGTGAAATACCGCACAG−3’
配列番号6:
5’−TCTAGACTCGAGCGGCCGCGGCCGGCCTTTAAATTGAAGACGAAAGGGCCTCG−3’
【0295】
配列番号5のオリゴヌクレオチドプライマーは、pBR322の配列と相補的な配列の他に、5’−3’方向に、制限エンドヌクレアーゼSmaI、BamHI、NheIおよびAscIの切断サイトを包含し、また配列番号6のオリゴヌクレオチドプライマーは、5’−3’方向に、制限エンドヌクレアーゼXbaI、XhoI、NotIおよびDraIの切断サイトを包含する。PCR反応は、PfuTurboポリメラーゼ(Stratagene, La Jolla, USA)を用いて、Innisら(PCR Protocols. A Guide to Methods and Applications, Academic Press (1990))と同様の標準的な方法により行った。約2.1kbのサイズを有する得られたDNA断片を、GFXTMPCR、DNAおよびゲルバンド精製キット(Amersham Pharmacia, Freiburg)を製造元の説明書に従って用いて精製した。DNA断片の平滑末端を、迅速DNAライゲーションキット(Roche Diagnostics, Mannheim)を製造元の説明書に従って用いてライゲーションし、Sambrookら(Molecular Cloning. A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor (1989))が記載のような標準的な方法により、ライゲーション混合物でコンピテント大腸菌XL−1Blue(Stratagene, La Jolla, USA)を形質転換した。プラスミド保有細胞を、アンピシリン(50μg/ml)含有LB寒天(Lennox, 1955, Virology, 1:190)上で平板培養することで選別した。
【0296】
個々のクローンのプラスミドDNAを、Qiaprep spinミニプレップキット(Qiagen, Hilden)を製造元の説明書に従って用いて単離し、制限消化によりチェックした。このようにして得られたプラスミドをpCLiK1と呼ぶ。
【0297】
プラスミドpWLT1(Lieblら, 1992)をPCR反応の鋳型として出発して、配列番号7と配列番号8のオリゴヌクレオチドプライマーを用いてカナマイシン耐性カセットを増幅した。
配列番号7:
5’−GAGATCTAGACCCGGGGATCCGCTAGCGGGCTGCTAAAGGAAGCGGA−3’
配列番号8:
5’−GAGAGGCGCGCCGCTAGCGTGGGCGAAGAACTCCAGCA−3’
【0298】
配列番号7のオリゴヌクレオチドプライマーは、pWLT1と相補的な配列の他に、5’−3’方向に、制限エンドヌクレアーゼXbaI、SmaI、BamHI、NheIの切断サイトを有し、また配列番号8のオリゴヌクレオチドプライマーは、5’−3’方向に、制限エンドヌクレアーゼAscIおよびNheIの切断サイトを有する。PCR反応は、PfuTurboポリメラーゼ(Stratagene, La Jolla, USA)を用いて、Innisら(PCR Protocols. A Guide to Methods and Applications, Academic Press (1990))と同様の標準的な方法により行った。約1.3kbのサイズを有する得られたDNA断片を、GFXTMPCR、DNAおよびゲルバンド精製キット(Amersham Pharmacia, Freiburg)を製造元の説明書に従って用いて精製した。DNA断片を制限エンドヌクレアーゼXbaIおよびAscI(New England Biolabs, Beverly, USA)を用いて切断し、続いてGFXTMPCR、DNAおよびゲルバンド精製キット(Amersham Pharmacia, Freiburg)を製造元の説明書に従って用いて、再度精製した。ベクターpCLiK1を同様に制限エンドヌクレアーゼXbaIおよびAscIを用いて切断し、アルカリホスファターゼ(I(Roche Diagnostics, Mannheim))を製造元の説明書に従って用いて脱リン酸化した。0.8%アガロースゲルでの電気泳動後、直線化したベクター(約2.1kb)を、GFXTMPCR、DNAおよびゲルバンド精製キット(Amersham Pharmacia, Freiburg)を製造元の説明書に従って用いて単離した。このベクター断片を迅速DNAライゲーションキット(Roche Diagnostics, Mannheim)を製造元の説明書に従って用い、切断したPCR断片とライゲーションして、Sambrookら(Molecular Cloning. A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor (1989))が記載のような標準的な方法により、ライゲーション混合物でコンピテント大腸菌XL−1Blue(Stratagene, La Jolla, USA)を形質転換した。プラスミド保有細胞を、アンピシリン(50μg/ml)およびカナマイシン(20μg/ml)含有LB寒天(Lennox, 1955, Virology, 1:190)上で平板培養することで選別した。
【0299】
個々のクローンのプラスミドDNAを、Qiaprep spinミニプレップキット(Qiagen, Hilden)を製造元の説明書に従って用いて単離し、制限消化によりチェックした。このようにして得られたプラスミドをpCLiK2と呼ぶ。
【0300】
ベクターpCLiK2を制限エンドヌクレアーゼDraI(New England Biolabs, Beverly, USA)を用いて切断した。0.8%アガロースゲルでの電気泳動後、約2.3kbのサイズのベクター断片を、GFXTMPCR、DNAおよびゲルバンド精製キット(Amersham Pharmacia, Freiburg)を製造元の説明書に従って用いて単離した。このベクター断片を迅速DNAライゲーションキット(Roche Diagnostics, Mannheim)を製造元の説明書に従って用いて再ライゲーションし、Sambrookら(Molecular Cloning. A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor (1989))が記載のような標準的な方法により、ライゲーション混合物でコンピテント大腸菌XL−1Blue(Stratagene, La Jolla, USA)を形質転換した。プラスミド保有細胞を、カナマイシン(20μg/ml)含有LB寒天(Lennox, 1955, Virology, 1:190)上で平板培養することで選別した。
【0301】
個々のクローンのプラスミドDNAを、Qiaprep spinミニプレップキット(Qiagen, Hilden)を製造元の説明書に従って用いて単離し、制限消化によりチェックした。このようにして得られたプラスミドをpCLiK3と呼ぶ。
【0302】
プラスミドpWLQ2(Liebl ら, 1992)をPCR反応の鋳型として出発して、複製起点pHM1519を、配列番号9と配列番号10のオリゴヌクレオチドプライマーを用いて増幅した。
配列番号9:
5’−GAGAGGGCGGCCGCGCAAAGTCCCGCTTCGTGAA−3’
配列番号10:
5’−GAGAGGGCGGCCGCTCAAGTCGGTCAAGCCACGC−3’
【0303】
配列番号9および配列番号10のオリゴヌクレオチドプライマーは、pWLQ2と相補的な配列の他に、制限エンドヌクレアーゼNotIの切断サイトを有する。PCR反応は、PfuTurboポリメラーゼ(Stratagene, La Jolla, USA)を用いて、Innisら(PCR Protocols. A Guide to Methods and Applications, Academic Press (1990))と同様の標準的な方法により行った。約2.7kbのサイズを有する得られたDNA断片を、GFXTMPCR、DNAおよびゲルバンド精製キット(Amersham Pharmacia, Freiburg)を製造元の説明書に従って用いて精製した。DNA断片を制限エンドヌクレアーゼNotI(New England Biolabs, Beverly, USA)を用いて切断し、続いてGFXTMPCR、DNAおよびゲルバンド精製キット(Amersham Pharmacia, Freiburg)を製造元の説明書に従って用いて、再度精製した。ベクターpCLiK3を、同様に制限エンドヌクレアーゼNotIを用いて切断し、アルカリホスファターゼ(I(Roche Diagnostics, Mannheim))を製造元の説明書に従って用いて脱リン酸化した。0.8%アガロースゲルでの電気泳動後、直線化したベクター(約2.3kb)を、GFXTMPCR、DNAおよびゲルバンド精製キット(Amersham Pharmacia, Freiburg)を製造元の説明書に従って用いて単離した。このベクター断片を、迅速DNAライゲーションキット(Roche Diagnostics, Mannheim)を製造元の説明書に従って用い、切断したPCR断片とライゲーションして、Sambrookら(Molecular Cloning. A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor (1989))が記載のような標準的な方法により、ライゲーション混合物でコンピテント大腸菌XL−1Blue(Stratagene, La Jolla, USA)を形質転換した。プラスミド保有細胞を、カナマイシン(20μg/ml)含有LB寒天(Lennox, 1955, Virology, 1:190)上で平板培養することで選別した。
【0304】
個々のクローンのプラスミドDNAを、Qiaprep spinミニプレップキット(Qiagen, Hilden)を製造元の説明書に従って用いて単離し、制限消化によりチェックした。このようにして得られたプラスミドをpCLiK5と呼ぶ。
【0305】
マルチクローニングサイト(MCS)によりpCLiK5を伸長するために、配列番号11と配列番号12のほとんど相補的な2種類の合成オリゴヌクレオチド(制限エンドヌクレアーゼSwaI、XhoI、AatI、ApaI、Asp718、MluI、NdeI、SpeI、EcoRV、SalI、ClaI、BamHI、XbaIおよびSmaIの切断サイトを有する)を、一緒にして95℃に加熱し、緩やかに冷却することにより組み合わせて、二本鎖DNA断片を得た。
配列番号11:
5’−TCGAATTTAAATCTCGAGAGGCCTGACGTCGGGCCCGGTACCACGCGTCATATGACTAGTTCGGACCTAGGGATATCGTCGACATCGATGCTCTTCTGCGTTAATTAACAATTGGGATCCTCTAGACCCGGGATTTAAAT−3’
配列番号12:
5’−GATCATTTAAATCCCGGGTCTAGAGGATCCCAATTGTTAATTAACGCAGAAGAGCATCGATGTCGACGATATCCCTAGGTCCGAACTAGTCATATGACGCGTGGTACCGGGCCCGACGTCAGGCCTCTCGAGATTTAAAT−3’
【0306】
ベクターpCLiK5を制限エンドヌクレアーゼXhoIおよびBamHI(New England Biolabs, Beverly, USA)を用いて切断し、アルカリホスファターゼ(I(Roche Diagnostics, Mannheim))を製造元の説明書に従って用いて脱リン酸化した。0.8%アガロースゲルでの電気泳動後、直線化したベクター(約5.0kb)を、GFXTMPCR、DNAおよびゲルバンド精製キット(Amersham Pharmacia, Freiburg)を製造元の説明書に従って用いて単離した。このベクター断片を、迅速DNAライゲーションキット(Roche Diagnostics, Mannheim)を製造元の説明書に従って用い、合成二本鎖DNA断片とライゲーションして、Sambrookら(Molecular Cloning. A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor (1989))が記載のような標準的な方法により、ライゲーション混合物でコンピテント大腸菌XL−1Blue(Stratagene, La Jolla, USA)を形質転換した。プラスミド保有細胞を、カナマイシン(20μg/ml)含有LB寒天(Lennox, 1955, Virology, 1:190)上で平板培養することで選別した。
【0307】
個々のクローンのプラスミドDNAを、Qiaprep spinミニプレップキット(Qiagen, Hilden)を製造元の説明書に従って用いて単離し、制限消化によりチェックした。このようにして得られたプラスミドをpCLiK5MCSと呼ぶ。
【0308】
シーケンス反応を、Sanger ら (1977) Proceedings of the National Academy of Sciences USA 74: 5463-5467により記載のように行った。シーケンス反応物を、ABI prism 377(PE Applied Biosystems, Weiterstadt)を用いて分離し、評価した。
【0309】
得られたプラスミドpCLiK5MCSは配列番号13として記載する。
【実施例2】
【0310】
プラスミドPmetA metAの調製
Tauch ら (1995) Plasmid 33:168-179またはEikmanns ら (1994) Microbiology 140:1817-1828に記載のようにして、C.グルタミカムATCC13032から染色体DNAを調製した。非コード5’領域を含むmetA遺伝子は、配列番号14と配列番号15のオリゴヌクレオチドプライマー、鋳型として染色体DNA、ならびにPfuTurboポリメラーゼ(Stratageneより)を用いて、Innis ら (1990) PCR Protocols. A Guide to Methods and Applications, Academic Pressに記載のような標準的な方法によるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅した。
配列番号14:
5’−GCGCGGTACCTAGACTCACCCCAGTGCT−3’
配列番号15:
5’−CTCTACTAGTTTAGATGTAGAACTCGATGT−3’
【0311】
約1.3kbのサイズを有する得られたDNA断片を、GFXTMPCR、DNAおよびゲルバンド精製キット(Amersham Pharmacia, Freiburg)を製造元の説明書に従って用いて精製した。次にこれを制限酵素Asp718およびSpeI(Roche Diagnostics, Mannheim)を用いて切断し、DNA断片を、GFXTMPCR、DNAおよびゲルバンド精製キットを用いて精製した。
【0312】
配列番号13のベクターpCLiK5MCSを制限酵素Asp718およびSpeIを用いて切断し、電気泳動による分離後、5kbのサイズの断片を、GFXTMPCR、DNAおよびゲルバンド精製キットを用いて単離した。
【0313】
該ベクター断片を、迅速DNAライゲーションキット(Roche Diagnostics, Mannheim)を製造元の説明書に従って用い、該PCR断片とライゲーションして、Sambrookら(Molecular Cloning. A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor (1989))が記載のような標準的な方法により、ライゲーション混合物でコンピテント大腸菌XL−1Blue(Stratagene, La Jolla, USA)を形質転換した。プラスミド保有細胞を、カナマイシン(20μg/ml)含有LB寒天(Lennox, 1955, Virology, 1:190)上で平板培養することで選別した。
【0314】
プラスミドDNAを、Qiagenから提供された方法により、また材料を用いて調製した。シーケンス反応は、Sanger ら (1977) Proceedings of the National Academy of Sciences USA 74:5463-5467により記載のように行った。シーケンス反応物を、ABI prism 377(PE Applied Biosystems, Weiterstadt)を用いて分離し、評価した。
【0315】
得られたプラスミドpCLiK5MCS PmetA metAは配列番号16として記載する。
【実施例3】
【0316】
プラスミドpCLiK5MCS P EF−TU metAの調製
Tauch ら (1995) Plasmid 33:168-179またはEikmanns ら (1994) Microbiology 140:1817-1828に記載のようにして、C.グルタミカムATCC13032から染色体DNAを調製した。スーパーオキシドジスムターゼ(Psod)の非コード5’領域(プロモーター領域)に由来する約200塩基対のDNA断片は、配列番号17と配列番号18のオリゴヌクレオチドプライマー、鋳型として染色体DNA、ならびにPfuTurboポリメラーゼ(Stratageneより)を用いて、Innis ら (1990) PCR Protocols. A Guide to Methods and Applications, Academic Pressと同様の標準的な方法によるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅した。
配列番号17:
5’−GAGACTCGAGGGCCGTTACCCTGCGAATG−3’
配列番号18:
5’−CCTGAAGGCGCGAGGGTGGGCATTGTATGTCCTCCTGGAC−3’
【0317】
得られたDNA断片を、GFXTMPCR、DNAおよびゲルバンド精製キット(Amersham Pharmacia, Freiburg)を製造元の説明書に従って用いて精製した。
【0318】
配列番号16のプラスミドPmetA metAをPCR反応の鋳型として出発して、配列番号19と配列番号20のオリゴヌクレオチドプライマーを用いてmetAの一部分を増幅した。
配列番号19:
5’−CCCACCCTCGCGCCTTCAG−3’
配列番号20:
5’−CTGGGTACATTGCGGCCC−3’
【0319】
約470塩基対の得られたDNA断片を、GFXTMPCR、DNAおよびゲルバンド精製キットを製造元の説明書に従って用いて精製した。
【0320】
さらなるPCR反応では、上記で得られた2種類の断片を、鋳型として共に用いた。配列番号18のオリゴヌクレオチドプライマーを用いて導入したmetAと相同な配列により、PCR反応の間、2種類の断片を互いに接着させ、用いたポリメラーゼによって伸長して連続的なDNA鎖を得た。配列番号17と配列番号20の用いるオリゴヌクレオチドプライマーを、2回目のサイクルの開始時に初めて反応混合物に添加することで、標準的な方法を改変した。
【0321】
約675塩基対の増幅されたDNA断片を、GFXTMPCR、DNAおよびゲルバンド精製キットを製造元の説明書に従って用いて精製した。続いてこれを制限酵素XhoIおよびNcoI(Roche Diagnostics, Mannheim)を用いて切断し、ゲル電気泳動により分離した。次に、約620塩基対のサイズのDNA断片を、GFXTMPCR、DNAおよびゲルバンド精製キット(Amersham Pharmacia, Freiburg)を用いてアガロースから精製した。配列番号16のプラスミドPmetA metAを制限酵素NcoIおよびSpeI(Roche Diagnostics, Mannheim)で切断した。ゲル電気泳動による分離後、約0.7kbのサイズのmetA断片を、GFXTMPCR、DNAおよびゲルバンド精製キットを用いてアガロースから精製した。
【0322】
配列番号13のベクターpCLiK5MCSを制限酵素XhoIおよびSpeI(Roche Diagnostics, Mannheim)で切断し、電気泳動による分離後、5kbのサイズの断片を、GFXTMPCR、DNAおよびゲルバンド精製キットを用いて単離した。
【0323】
ベクター断片を、迅速DNAライゲーションキット(Roche Diagnostics, Mannheim)を製造元の説明書に従って用いて、該PCR断片および該metA断片とライゲーションし、Sambrookら(Molecular Cloning. A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor (1989))が記載のような標準的な方法により、ライゲーション混合物でコンピテント大腸菌XL−1Blue(Stratagene, La Jolla, USA)を形質転換した。プラスミド保有細胞を、カナマイシン(20μg/ml)含有LB寒天(Lennox, 1955, Virology, 1:190)上で平板培養することで選別した。
【0324】
プラスミドDNAを、Qiagenから提供された方法により、また材料を用いて調製した。シーケンス反応は、Sanger ら (1977) Proceedings of the National Academy of Sciences USA 74:5463-5467により記載のように行った。シーケンス反応物を、ABI prism 377(PE Applied Biosystems, Weiterstadt)を用いて分離し、評価した。
【0325】
得られたプラスミドpCLiK5MCS P_EFTUmetAは配列番号21として記載する。
【実施例4】
【0326】
MetA活性
コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032株を、プラスミドpCLiK5MCS、pCLiK5MCS PmetA metA、pCLiK5MCS P EF−TUmetAのそれぞれを用いて記載された方法(Lieblら (1989) FEMS Microbiology Letters 53:299-303)により形質転換した。形質転換混合物を、プラスミド保有細胞を選別するためにカナマイシン20mg/lをさらに含有するCM平板培地上にて平板培養した。得られたカナマイシン耐性クローンを回収して単離した。
【0327】
これらのプラスミド構築物のうち1種類を有するC.グルタミカム株を、MMA培地(40g/l スクロース、20g/l (NHSO、1g/l KHPO、1g/l KHPO、0.25g/l MgSO×7HO、54g Aces、CaCl(10g/l) 1ml、プロトカテク酸(300mg/10ml) 1ml、微量元素溶液(10g/l FeSO×7HO、10g/l MnSO×HO、2g/l ZnSO×7HO、0.2g/l CuSO、0.02g/l NiCl×6HO) 1ml、100μg/l ビタミンB12、0.3mg/l チアミン、1mM ロイシン、1mg/l ピリドキサルHCl、ビオチン(100mg/l) 1ml、pH7.0)中で、30℃にて一晩培養した。細胞を4℃にて遠沈し、続いて冷却Tris−HClバッファー(0.1%、pH8.0)で2回洗浄した。再度の遠心後、細胞を冷却Tris−HClバッファー(0.1%、pH8.0)中に回収してOD600を160に調整した。細胞を破壊するために、この細胞懸濁液の1mlをHybaid社製の2ml Ribolyser試験管に移して、Hybaid社製Ribolyser中で回転設定6.0として各回30秒間にて3回溶解した。溶解液をエッペンドルフ遠心機中で15,000rpm、4℃にて30分間遠心することにより透明化し、上清を新しいエッペンドルフ容器に移した。タンパク質含有量をBradford, M.M. (1976) Anal. Biochem. 72:248-254により記載の通りに測定した。
【0328】
metAの酵素活性測定は以下のように行った。1mlの反応混合液は、100mM リン酸カリウムバッファー(pH7.5)、5mM MgCl、100μM アセチルCoA、5mM L−ホモセリン、500μM DTNB(エルマン試薬)および細胞抽出液を含むものとした。各タンパク質溶解液を添加することによりアッセイを開始し、室温にてインキュベートした。続いて反応動態を412nmにて10分間記録した。
【0329】
結果を表1aに示す。
【表4】

【0330】
外来性発現ユニットを用いることにより、MetA活性を顕著に増大させることが可能であった。
【実施例5】
【0331】
プラスミドpCIS lysCの構築
株構築の第1ステップでは、C.グルタミカムATCC13032中のlysC野生型遺伝子の対立遺伝子交換を行った。この場合には、lysC遺伝子内でヌクレオチド交換を行い、得られるタンパク質では311位のアミノ酸ThrがIleで置き換えられるようにした。PCR反応の鋳型としてATCC13032由来の染色体DNAから出発して、PfuTurbo PCRシステム(Stratagene USA)を製造元の説明書に従って用いて、配列番号22と配列番号23のオリゴヌクレオチドプライマーでlysCを増幅した。染色体DNAは、Tauch ら (1995) Plasmid 33:168-179またはEikmanns ら (1994) Microbiology 140:1817-1828により記載の通りにして、C.グルタミカムATCC13032から調製した。増幅された断片には、5’末端にSalI制限サイトが、3’末端にMluI制限サイトがつながっている。クローニングの前に、該増幅断片をこれら2種類の制限酵素を用いて消化し、GFXTMPCR、DNAおよびゲルバンド精製キット(Amersham Pharmacia, Freiburg)を用いて精製した。
配列番号22:
5’−GAGAGAGAGACGCGTCCCAGTGGCTGAGACGCATC−3’
配列番号23:
5’−CTCTCTCTGTCGACGAATTCAATCTTACGGCCTG−3’
【0332】
得られたポリヌクレオチドは、SalIおよびMluI制限サイトを介してSacB組み込みpCLiK5 MCS(以下、pCISと呼ぶ(配列番号24))にクローニングし、大腸菌XL−1blueを形質転換した。プラスミド保有細胞の選別は、カナマイシン(20μg/ml)含有LB寒天(Lennox, 1955, Virology, 1:190)上での平板培養により行った。プラスミドを単離し、期待されるヌクレオチド配列をシーケンスにより確認した。プラスミドDNAの調製はQiagenから提供された方法により、また材料を用いて行った。シーケンス反応は、Sanger ら (1977) Proceedings of the National Academy of Sciences USA 74:5463-5467により記載のように行った。シーケンス反応物を、ABI prism 377(PE Applied Biosystems, Weiterstadt)を用いて分離し、評価した。得られたプラスミドpCIS lysCは配列番号25として記載する。
【実施例6】
【0333】
C.グルタミカム由来のlysC遺伝子の突然変異誘発
C.グルタミカム由来のlysC遺伝子の部位特異的突然変異誘発は、Quickchangeキット(Stratagene/USAより)を製造元の説明書に従って用いて行った。配列番号25のプラスミドpCIS lysCについて突然変異誘発を行った。Quickchange法(Stratagene)によるthr311から311ileへの交換のために、以下のオリゴヌクレオチドプライマーを合成した:
配列番号26:
5’−CGGCACCACCGACATCATCTTCACCTGCCCTCGTTCCG−3’
配列番号27:
5’−CGGAACGAGGGCAGGTGAAGATGATGTCGGTGGTGCCG−3’
【0334】
Quickchange反応中でこれらのオリゴヌクレオチドプライマーを用いることにより、配列番号28のlysC遺伝子内の932位でのヌクレオチドの交換が生じる(CからTへ)。lysC遺伝子内にもたらされたアミノ酸交換Thr311Ileは、大腸菌XL1−blueの形質転換およびプラスミド調製の後に、シーケンス反応により確認した。該プラスミドはpCIS lysC thr311ileと名付け、配列番号29として記載する。
【0335】
Liebl ら (1989) FEMS Microbiology Letters 53:299-303により記載の通りにして、エレクトロポレーションによりプラスミドpCIS lysC thr311ileでC.グルタミカムATCC13032を形質転換した。プロトコールの改変はDE 10046870に記載されている。個々の形質変換体のlysC遺伝子座の染色体内配置を、Sambrook ら (1989), Molecular Cloning. A Laboratory Manual, Cold Spring Harborに記載のような標準的な方法を用いて、サザンブロッティングおよびハイブリダイゼーションによりチェックした。これにより、形質転換体が形質転換したプラスミドを相同組換えによりlysC遺伝子座に組み込んでいることを確かめた。そのようなコロニーを、抗生物質を含まない培地中で一晩増殖させた後、細胞をスクロースCM寒天培地(10g/l ペプトン、5g/l 牛肉抽出物、5g/l 酵母抽出物、2.5g/l NaCl、2g/l 尿素、1%グルコース、10%スクロース、pH6.8)上に播種し、30℃にて24時間インキュベートした。ベクターpCIS lysC thr311ile中に存在するsacB遺伝子はスクロースを毒性産物に変換するため、増殖することができるコロニーは、野生型lysC遺伝子と突然変異型lysC thr311ile遺伝子との間の2回目の相同組換えにより、sacB遺伝子を欠失しているもののみである。相同組換えの際、sacB遺伝子と共に野生型遺伝子または突然変異型遺伝子のいずれかの欠失が見られる。野生型遺伝子と共にSacB遺伝子が欠失すると、突然変異型形質転換体が得られる。
【0336】
増殖したコロニーを回収し、カナマイシン感受性表現型について調べた。SacB遺伝子を欠失したクローンは、同時にカナマイシン感受性増殖性を示すはずである。そのようなカナマイシン感受性クローンを、振盪中のフラスコでそのリジン産生能について調べた(実施例6を参照のこと)。未処理のC.グルタミカムATCC13032を比較のために培養した。対照と比較してリジン産生が増大しているクローンを選択し、染色体DNAを単離して、lysC遺伝子に相当する領域をPCR反応により増幅し、シーケンスした。増大したリジン合成特性および示されたlysC中の932位での突然変異を有するクローンを、ATCC13032lysCfbrと名付けた。
【実施例7】
【0337】
外来性発現ユニットPeftu(配列番号2)を用いたlysC遺伝子の過剰発現のための組み込み用プラスミドの調製
伸長因子Tuをコードする遺伝子のプロモーターの増幅のために、以下のオリゴヌクレオチドを決定した。
配列番号30:
CK352: 5’−CGCCAATTGTGGCCGTTACCCTGCGAATG−3’
配列番号31:
CK353: 5’−TTCTGTACGACCAGGGCCACTGTATGTCCTCCTGGACTTC−3’
【0338】
該プライマーを、C.グルタミカムATCC13032由来の染色体DNAを用いたPCR反応で用いた。このアプローチを用いて、約200bpの期待したサイズに相当するDNA断片を増幅することができた。
【0339】
アスパルトキナーゼ(aspartokinase)をコードする遺伝子の増幅のために、以下のオリゴヌクレオチドを決定した。
配列番号32:
CK354: 5’−GAAGTCCAGGAGGACATACAGTGGCCCTGGTCGTACAGAA−3’
配列番号33:
CK355: 5’−CATGCCCGGGACAGCAGCAAGTTCCAGCAT−3’
【0340】
該プライマーを、C.グルタミカムATCC13032 lysCfbr由来の染色体DNAを用いたPCR反応で用いた。このアプローチを用いて、約620bpの期待したサイズに相当するDNA断片を増幅することができた。
【0341】
プライマーCK354とCK353とは重複する配列を含み、その5’末端で互いに相同である。
【0342】
上記のようにして得られたPCR産物を、プライマーCK352とCK355を用いる次のPCRのための鋳型として用いた。
【0343】
このアプローチを用いて、約820bpの期待したサイズに相当するDNA断片を増幅することができた。このPeftu/lysCfbr融合体を、制限酵素MunIおよびSmaIを用いて切断した。
【0344】
lysC遺伝子の5’領域の増幅のために、以下のオリゴヌクレオチドを決定した。
配列番号34:
CK356: 5’−CGCGACGTCCGTCCCAAAACGATCATGAT−3’
配列番号35:
CK357: 5’−CGCCAATTGCTTTGTGCACCTTTCGATCT−3’
【0345】
該プライマーを、C.グルタミカム由来の染色体DNAを用いたPCR反応で用いた。このアプローチを用いて、約600bpの期待したサイズに相当するDNA断片を増幅することができた。このDNA断片を、制限酵素AatIIおよびMunIを用いて消化した。次に、この断片および消化済みPeftu/lysCfbr融合体をベクターpCIS中にクローニングし、ここで該ベクターは、制限酵素AatIIおよびSmaIを用いて予め消化しておいた。得られたプラスミドをpCIS Peftu lysCfbr(配列番号36)と名付けた。このステップまで、すべてのクローニングは大腸菌XL−1Blue(Stratagene, Amsterdam, Netherlandsより)中で行った。
【0346】
続いて形質転換プラスミドpCIS Peftu lysCfbrで、Liebl ら (1989) FEMS Microbiology Letters 53:299-303により記載の通りにして、プラスミドpTc15AcglMと一緒に、大腸菌Mn522(Stratagene, Amsterdam, Netherlandsより)を形質転換した。プラスミドpTc15AcglMは、コリネバクテリウム・グルタミカムのメチル化パターンに従いDNAをメチル化することを可能にする(DE 10046870)。このステップにより、コリネバクテリウム・グルタミカムを次に組み込み用プラスミドpCIS Peftu lysCfbrを用いてエレクトロポレーションすることが可能になる。このエレクトロポレーションおよびカナマイシン(25μg/ml)を有するCM平板培地上での引き続く選別により、複数のトランス接合体(transconjugant)を得た。2回目の組換えイベントについての選別(lysCプロモーターおよびlysC遺伝子を共に有するベクターの排除をもたらすはずである)のために、これらのトランス接合体を、カナマイシンを含まないCM培地中で培養し、つぎに選別のために10%スクロースを有するCM平板上に播種した。ベクターpCIS上に存在するsacB遺伝子はレバンスクラーゼをコードし、スクロースを用いた増殖の際にレバンの合成をもたらす。レバンはC.グルタミカムにとっては有毒なので、スクロース含有培地上で増殖することができるC.グルタミカム細胞は、2回目の組換えステップを通じて組み込み用プラスミドを失ったもののみである(Jager ら, Journal of Bacteriology 174 (1992) 5462-5466)。150のスクロース耐性クローンについて、そのカナマイシン感受性を調べた。試験したクローンのうち56について、スクロース耐性だけでなくカナマイシン感受性も示すことができた。Peftuプロモーターによる天然プロモーターの所望の置換も行われたかどうかチェックするために、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いた。この解析のために当初の株および20種類のクローンから染色体DNAを単離した。この目的で、各クローンを爪楊枝で寒天平板上から取り出し、100μlのHO中に懸濁し、95℃にて10分間加熱した。得られた溶液の一部である10μlをPCRでの鋳型として用いた。用いたプライマーは、PeftuプロモーターおよびlysC遺伝子と相同なオリゴヌクレオチドであった。PCR条件は、以下のように選択した:前変性:95℃にて5分間;変性:95℃にて30秒間;ハイブリダイゼーション:55℃にて30秒間;増幅:72℃にて2分間;30サイクル;最終伸長:72℃にて5分間。当初の株のDNAを有する混合物では、オリゴヌクレオチドの選択により、PCR産物を得ることはできなかった。2回目の組換えがPeftuによる天然のプロモーター(PlysC)の置換をもたらしたクローンでのみ、期待した552bpのサイズのバンド得られた。全体では、試験した20クローンのうち3種類が陽性であった。
【実施例8】
【0347】
アスパルトキナーゼ(lysC)アッセイ
天然のプロモーターを有するlysCfbr遺伝子の染色体コピーまたはPeftu lysCfbr構築物の染色体コピーのいずれかを保持するC.グルタミカム株をCM培地(10g/l ペプトン、5g/l 牛肉抽出物、5g/l 酵母抽出物、2.5g/l NaCl、2g/l 尿素、1%グルコース、pH6.8)中で30℃にて、OD600が8になるまで培養した。細胞を4℃にて遠沈し、続いて冷却Tris−HClバッファー(0.1%、pH8.0)で2回洗浄した。再度の遠心後、細胞を冷却Tris−HClバッファー(0.1%、pH8.0)中に回収してOD600を160に調整した。細胞を破壊するために、この細胞懸濁液1mlをHybaid社製の2ml Ribolyser試験管に移して、Hybaid社製Ribolyser中で回転設定6.0として各回30秒間にて3回溶解した。溶解液をエッペンドルフ遠心機中で15,000rpm、4℃にて30分間遠心することにより透明化し、上清を新しいエッペンドルフ容器に移した。タンパク質含有量をBradford, M.M. (1976) Anal. Biochem. 72:248-254により記載の通りに測定した。
【0348】
アスパルトキナーゼの酵素活性は以下のように測定した。100mM Tris−HCl(pH8.0)、10mM MgCl、600mM ヒドロキシルアミンHCl(10N KOHにてpH7.0とした)、4mM ATP、200mM アスパラギン酸(ナトリウム塩)および1mlまでのHOを含む1mlの反応混合液を、30℃にて10分間インキュベートした。各タンパク質溶解液を添加することによりアッセイを開始し、30℃にて30分間インキュベートした。1mlの停止溶液(10%塩化鉄、3.3%トリクロロ酢酸、0.7N NaCl)を反応混合液に添加することにより反応を停止した。遠心ステップの後、上清のOD540を測定した。この場合の1単位は、タンパク質mg当たり、1分間に形成されたアスパラギン酸ヒドロキサメート1nmolに相当する。
【0349】
結果を表2aに示す。
【表5】

【0350】
Peftu lysCfbr構築物の染色体への組み込みにより、アスパルトキナーゼ活性を2.5倍増大させることができた。
【実施例9】
【0351】
リジン産生
リジン産生に対するPeftu lysCfbr構築物の影響を調べるために、ATCC13032株、ATCC13032 lysCfbr株またはATCC13032 Peftu lysCfbr株をCM平板培地(10.0g/l D−グルコース、2.5g/l NaCl、2.0g/l 尿素、10.0g/l Bacto Peptone(Difco)、5.0g/l 酵母抽出物(Difco)、5.0g/l 牛肉抽出物(Difco)、22.0g/l 寒天(Difco)、オートクレーブ(20分、121℃))上で30℃にて2日間培養した。次に細胞を平板培地からかき取り、生理食塩液中に再懸濁した。主培養のため、100mlアーレンマイヤーフラスコ中の培地I 10mlおよびオートクレーブ済みCaCO(Riedel de Haen)0.5gに、細胞懸濁液を接種してOD600を1.5とし、Infors AJ118型の振盪器(Infors, Bottmingen, Switzerlandより)上で220rpmにて39時間インキュベートした。続いて培地中に分泌されたリジン濃度を測定した。
【0352】
培地I:
40g/l スクロース
60g/l 糖蜜(糖含有率100%として換算)
10g/l (NHSO
0.4g/l MgSO7H
0.6g/l KHPO
0.3mg/l チアミンHCl
1mg/l ビオチン(1mg/ml ストック溶液(フィルター滅菌およびNHOHでpH8.0に調整済み)より)
2mg/l FeSO
2mg/l MnSO
NHOHでpH7.8に調整、オートクレーブ(121℃、20分)
さらに、ビタミンB12(ヒドロキシコバラミン、Sigma Chemicals)(ストック溶液(200μg/ml、フィルター滅菌)から)を終濃度100μg/lになるまで加える。
【0353】
アミノ酸濃度は、Agilent1100シリーズLCシステムHPLCでのAgilent高圧液体クロマトグラフィーにより測定した。オルトフタルアルデヒドでのプレカラム誘導体化により形成されたアミノ酸の定量を可能とし、そしてアミノ酸混合物をHypersil AAカラム(Agilent)にて分離する。
【0354】
調査の結果を表3aに示す。
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロモーター活性を有する核酸の使用であって、該核酸が、
A) 配列番号1の核酸配列、または
B) ヌクレオチドの置換、挿入もしくは欠失により該配列から誘導され、かつ配列番号1の配列と核酸レベルで少なくとも90%の同一性を有する配列、または
C) ストリンジェントな条件下で配列番号1の核酸配列とハイブリダイズする核酸配列、または
D) A)、B)もしくはC)の配列と機能的に等価なフラグメント
を含んでなる、遺伝子の転写のための、上記使用。
【請求項2】
請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸と、さらに機能的に連結された、リボ核酸の翻訳を保証する核酸配列を含んでなる発現ユニットの、遺伝子の発現のための使用。
【請求項3】
前記発現ユニットが、
E) 配列番号2の核酸配列、または
F) ヌクレオチドの置換、挿入もしくは欠失により該配列から誘導され、かつ配列番号2の配列と核酸レベルで少なくとも90%の同一性を有する配列、または
G) ストリンジェントな条件下で配列番号2の核酸配列とハイブリダイズする核酸配列、または
H) E)、F)もしくはG)の配列と機能的に等価なフラグメント
を含んでなる、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記発現ユニットが配列番号2の配列の核酸からなる、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
プロモーター活性を有する核酸であって、
A) 配列番号1の核酸配列、または
B) ヌクレオチドの置換、挿入もしくは欠失により該配列から誘導され、かつ配列番号1の配列と核酸レベルで少なくとも90%の同一性を有する配列、または
C) ストリンジェントな条件下で配列番号1の核酸配列とハイブリダイズする核酸配列、または
D) A)、B)もしくはC)の配列と機能的に等価なフラグメント
を含んでなり、但し配列番号1の配列からなる核酸は除く、上記核酸。
【請求項6】
請求項5に記載のプロモーター活性を有する核酸と、さらに機能的に連結された、リボ核酸の翻訳を保証する核酸配列を含んでなる、発現ユニット。
【請求項7】
請求項6に記載の発現ユニットであって、
E) 配列番号2の核酸配列、または
F) ヌクレオチドの置換、挿入もしくは欠失により該配列から誘導され、かつ配列番号2の配列と核酸レベルで少なくとも90%の同一性を有する配列、または
G) ストリンジェントな条件下で配列番号2の核酸配列とハイブリダイズする核酸配列、または
H) E)、F)もしくはG)の配列と機能的に等価なフラグメント
を含んでなり、但し配列番号2の配列からなる核酸は除く、上記発現ユニット。
【請求項8】
微生物での遺伝子の転写速度を、野生型と比較して変化させるかまたは生起する方法であって、
a) 請求項1に記載のプロモーター活性を有する内在性核酸であって、内在性遺伝子の転写を調節する核酸の、該微生物でのプロモーター比活性を野生型と比較して変化させるステップ、または
b) 請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸により、または実施形態a)に従い変化したプロモーター比活性を伴う請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸により、該微生物での遺伝子の転写を調節するステップ、ここで該遺伝子はプロモーター活性を有する該核酸との関係では異種起源である
による、上記方法。
【請求項9】
請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸による、または実施形態a)に従い変化したプロモーター比活性を伴う請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸による、前記微生物での遺伝子の転写の調節が、
b1) 変化したプロモーター比活性を適宜伴う、請求項1に記載のプロモーター活性を有する1以上の核酸を該微生物のゲノムに導入することにより、変化したプロモーター比活性を適宜伴う、請求項1に記載のプロモーター活性を有する導入された該核酸の制御下に、1以上の内在性遺伝子の転写が行われるようになるステップ、または
b2) 微生物のゲノムに1以上の遺伝子を導入することにより、変化したプロモーター比活性を適宜伴う、請求項1に記載のプロモーター活性を有する内在性核酸の制御下に、1以上の導入された該遺伝子の転写が行われるようになるステップ、または
b3) 変化したプロモーター比活性を適宜伴う、請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸と、機能的に連結された1以上の転写対象の核酸とを含んでなる1以上の核酸構築物を該微生物に導入するステップ
により達成される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
微生物での遺伝子の転写速度を、野生型と比較して増大させるかまたは生起するために、
ah) 請求項1に記載のプロモーター活性を有する内在性核酸、または内在性遺伝子の転写を調節する内在性核酸の、該微生物でのプロモーター比活性が、野生型と比較して増大している、または
bh) 該微生物での遺伝子の転写が、請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸により、または実施形態a)に従い増大したプロモーター比活性を有する核酸により調節されており、ここで該遺伝子はプロモーター活性を有する該核酸との関係では異種起源である、
請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸による、または実施形態a)に従い増大したプロモーター比活性を伴う請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸による、前記微生物での遺伝子の転写の調節が、
bh1) 増大したプロモーター比活性を適宜伴う、請求項1に記載のプロモーター活性を有する1以上の核酸を該微生物のゲノムに導入することにより、増大したプロモーター比活性を適宜伴う、請求項1に記載のプロモーター活性を有する導入された該核酸の制御下に、1以上の内在性遺伝子の転写が行われるようになるステップ、または
bh2) 1以上の遺伝子を該微生物のゲノムに導入することにより、増大したプロモーター比活性を適宜伴う、請求項1に記載のプロモーター活性を有する内在性核酸の制御下に、1以上の導入された該遺伝子の転写が行われるようになるステップ、または
bh3) 増大したプロモーター比活性を適宜伴う、請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸と、機能的に連結された1以上の転写対象の核酸とを含んでなる1以上の核酸構築物を、該微生物に導入するステップ
により達成される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
微生物での遺伝子の転写速度を、野生型と比較して低下させるために、
ar) 請求項1に記載のプロモーター活性を有する内在性核酸であって、内在性遺伝子の転写を調節する核酸の、該微生物でのプロモーター非活性が、野生型と比較して低下している、または
br) 実施形態a)に従い低下したプロモーター比活性を有する核酸を該微生物のゲノムに導入することにより、低下したプロモーター活性を有する導入された該核酸の制御下に、内在性遺伝子の転写が行われるようになっている、
請求項8または9に記載の方法。
【請求項13】
微生物での遺伝子の発現速度を、野生型と比較して変化させるかまたは生起する方法であって、
c) 請求項2もしくは3に記載の内在性発現ユニットであって、内在性遺伝子の発現を調節する発現ユニットの、該微生物での発現比活性を野生型と比較して変化させるステップ、または
d) 該微生物での遺伝子の発現を、請求項2もしくは3に記載の発現ユニットにより、または実施形態c)に従い変化した発現比活性を伴う請求項2もしくは3に記載の発現ユニットにより調節するステップ、ここで該遺伝子は、該発現ユニットとの関係では異種起源である
による、上記方法。
【請求項14】
請求項2もしくは3に記載の発現ユニットによる、または実施形態a)に従い変化した発現比活性を伴う請求項2もしくは3に記載の発現ユニットによる、該微生物での遺伝子の発現の調節が、
d1) 変化した発現比活性を適宜伴う、請求項2もしくは3に記載の1以上の発現ユニットを該微生物のゲノムに導入することにより、導入された該発現ユニットの制御下に、1以上の内在性遺伝子の発現が行われるようになるステップ、または
d2) 1以上の遺伝子を該微生物のゲノムに導入することにより、変化した発現比活性を適宜伴う請求項2もしくは3に記載の内在性発現ユニットの制御下に、1以上の導入された該遺伝子の発現が行われるようになるステップ、または
d3) 変化した発現比活性を適宜伴う、請求項2もしくは3に記載の発現ユニットと、機能的に連結された1以上の発現対象の核酸とを含んでなる1以上の核酸構築物を該微生物に導入するステップ
により達成される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
微生物での遺伝子の発現速度を、野生型と比較して増大させるかまたは生起するために、
ch) 請求項2もしくは3に記載の内在性発現ユニットであって、内在性遺伝子の発現を調節する発現ユニットの該微生物での発現比活性が、野生型と比較して増大している、または
dh) 請求項2もしくは3に記載の発現ユニットにより、または実施形態a)に従い増大した発現比活性を伴う請求項2もしくは3に記載の発現ユニットにより、該微生物での遺伝子の発現が調節されており、ここで、該遺伝子は該発現ユニットとの関係では異種起源である、
請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
請求項2もしくは3に記載の発現ユニットによる、または実施形態a)に従い増大した発現比活性を伴う請求項2もしくは3に記載の発現ユニットによる該微生物での遺伝子の発現の調節が、
dh1) 増大した発現比活性を適宜伴う、請求項2もしくは3に記載の1以上の発現ユニットを該微生物のゲノムに導入することにより、増大した発現活性を適宜伴う導入された該発現ユニットの制御下に、1以上の内在性遺伝子の転写が行われるようになるステップ、または
dh2) 1以上の遺伝子を該微生物のゲノムに導入することにより、増大した発現活性を適宜伴う請求項2もしくは3に記載の内在性発現ユニットの制御下に、1以上の導入された該遺伝子の発現が行われるようになるステップ、または
dh3) 増大した発現活性を適宜伴う、請求項2もしくは3に記載の発現ユニットと、機能的に連結された1以上の発現対象の核酸とを含んでなる1以上の核酸構築物を、該微生物に導入するステップ
により達成される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
微生物での遺伝子の発現速度を、野生型と比較して低下させるために、
cr) 請求項2もしくは3に記載の内在性発現ユニットであって、内在性遺伝子の発現を調節する発現ユニットの該微生物での発現比活性が、野生型と比較して低下している、または
dr) 実施形態cr)に従い低下した発現比活性を伴う発現ユニットを該微生物のゲノムに導入することにより、低下した発現活性を伴う導入された該発現ユニットの制御下に、内在性遺伝子の発現が行われるようになっている、
請求項13または14に記載の方法。
【請求項18】
前記遺伝子が、タンパク質生成およびタンパク質非生成アミノ酸の生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、ヌクレオチドおよびヌクレオシドの生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、有機酸の生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、脂質および脂肪酸の生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、ジオールの生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、炭水化物の生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、芳香族化合物の生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、ビタミン類の生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、補因子の生合成経路中のタンパク質をコードする核酸および酵素の生合成経路中のタンパク質をコードする核酸からなる群より選択され、ここで該遺伝子はさらなる調節エレメントを含んでいてもよい、請求項8〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
アミノ酸の生合成経路中のタンパク質が、アスパラギン酸キナーゼ、アスパラギン酸−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、ジアミノピメリン酸デヒドロゲナーゼ、ジアミノピメリン酸デカルボキシラーゼ、ジヒドロジピコリン酸合成酵素、ジヒドロジピコリン酸レダクターゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、転写調節因子LuxR、転写調節因子LysR1、転写調節因子LysR2、リンゴ酸−キノンオキシドレダクターゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、6−ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ、トランスケトラーゼ、トランスアルドラーゼ、ホモセリンO−アセチルトランスフェラーゼ、シスタチオニンγ−シンターゼ、シスタチオニンβ−リアーゼ、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ、O−アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼ、メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ、ホスホセリンアミノトランスフェラーゼ、ホスホセリンホスファターゼ、セリンアセチルトランスフェラーゼ、ホモセリンデヒドロゲナーゼ、ホモセリンキナーゼ、トレオニンシンターゼ、トレオニンエクスポーター・キャリア、トレオニンデヒドラターゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、リジンエクスポーター、ビオチンリガーゼ、システインシンターゼI、システインシンターゼII、補酵素B12依存性メチオニンシンターゼ、補酵素B12非依存性メチオニンシンターゼ、硫酸アデニリルトランスフェラーゼサブユニット1および2、ホスホアデノシン−ホスホ硫酸レダクターゼ、フェレドキシン−亜硫酸レダクターゼ、フェレドキシンNADPレダクターゼ、3−ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ、RXA00655調節因子、RXN2910調節因子、アルギニル−tRNA合成酵素、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、トレオニン排出タンパク質、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ、フルクトース−1,6−ビスホスファターゼ、硫酸還元タンパク質RXA077、硫酸還元タンパク質RXA248、硫酸還元タンパク質RXA247、タンパク質OpcA、1−ホスホフルクトキナーゼおよび6−ホスホフルクトキナーゼからなる群より選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
a) 請求項2または3に記載の少なくとも1つの発現ユニットおよび
b) 少なくとも1つの発現対象のさらなる核酸、および
c) 適宜、さらなる遺伝的制御エレメント
を含んでなる発現カセットであって、少なくとも1つの発現ユニットと発現対象のさらなる核酸配列とは互いに機能的に連結され、また発現対象のさらなる核酸配列は、該発現ユニットとの関係では異種起源である、上記発現カセット。
【請求項21】
前記発現対象のさらなる核酸が、タンパク質生成およびタンパク質非生成アミノ酸の生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、ヌクレオチドおよびヌクレオシドの生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、有機酸の生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、脂質および脂肪酸の生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、ジオールの生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、炭水化物の生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、芳香族化合物の生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、ビタミン類の生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、補因子の生合成経路中のタンパク質をコードする核酸および酵素の生合成経路中のタンパク質をコードする核酸からなる群より選択される、請求項20に記載の発現カセット。
【請求項22】
アミノ酸の生合成経路中のタンパク質が、アスパラギン酸キナーゼ、アスパラギン酸−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、ジアミノピメリン酸デヒドロゲナーゼ、ジアミノピメリン酸デカルボキシラーゼ、ジヒドロジピコリン酸合成酵素、ジヒドロジピコリン酸レダクターゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、転写調節因子LuxR、転写調節因子LysR1、転写調節因子LysR2、リンゴ酸−キノンオキシドレダクターゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、6−ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ、トランスケトラーゼ、トランスアルドラーゼ、ホモセリンO−アセチルトランスフェラーゼ、シスタチオニンγ−シンターゼ、シスタチオニンβ−リアーゼ、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ、O−アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼ、メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ、ホスホセリンアミノトランスフェラーゼ、ホスホセリンホスファターゼ、セリンアセチルトランスフェラーゼ、ホモセリンデヒドロゲナーゼ、ホモセリンキナーゼ、トレオニンシンターゼ、トレオニンエクスポーター・キャリア、トレオニンデヒドラターゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、リジンエクスポーター、ビオチンリガーゼ、システインシンターゼI、システインシンターゼII、補酵素B12依存性メチオニンシンターゼ、補酵素B12非依存性メチオニンシンターゼ活性、硫酸アデニリルトランスフェラーゼサブユニット1および2、ホスホアデノシン−ホスホ硫酸レダクターゼ、フェレドキシン−亜硫酸レダクターゼ、フェレドキシンNADPレダクターゼ、3−ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ、RXA00655調節因子、RXN2910調節因子、アルギニル−tRNA合成酵素、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、トレオニン排出タンパク質、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ、フルクトース−1,6−ビスホスファターゼ、硫酸還元タンパク質RXA077、硫酸還元タンパク質RXA248、硫酸還元タンパク質RXA247、タンパク質OpcA、1−ホスホフルクトキナーゼおよび6−ホスホフルクトキナーゼからなる群より選択される、請求項21に記載の発現カセット。
【請求項23】
請求項20〜22のいずれか1項に記載の発現カセットを含んでなる、発現ベクター。
【請求項24】
遺伝的に改変された微生物であって、遺伝的改変が、少なくとも1種の遺伝子の発現速度が野生型と比較して変化しまたは生じることにつながり、かつ
a) 請求項1に記載のプロモーター活性を有する少なくとも1つの内在性核酸であって、すくなくとも1種の内在性遺伝子の転写を調節する核酸の、該微生物でのプロモーター比活性を変化させるステップ、または
b) 請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸により、または実施形態a)に従い変化したプロモーター比活性を伴う請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸により、該微生物での遺伝子の転写を調節するステップ、ここで、該遺伝子はプロモーター活性を有する該核酸との関係では異種起源である
によるものである、上記微生物。
【請求項25】
請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸による、または実施形態a)に従い変化したプロモーター比活性を伴う請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸による、前記微生物での遺伝子の転写の調節が、
b1) 変化したプロモーター比活性を適宜伴う、請求項1に記載のプロモーター活性を有する1以上の核酸を該微生物のゲノムに導入することにより、変化したプロモーター比活性を適宜伴う請求項1に記載のプロモーター活性を有する導入された該核酸の制御下に、1以上の内在性遺伝子の転写が行われるようになるステップ、または
b2) 1以上の遺伝子を該微生物のゲノムに導入することにより、変化したプロモーター比活性を適宜伴う請求項1に記載のプロモーター活性を有する内在性核酸の制御下に、1以上の導入された該遺伝子の転写が行われるようになるステップ、または
b3) 変化したプロモーター比活性を適宜伴う請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸と、機能的に連結された1以上の転写対象の核酸とを含んでなる1以上の核酸構築物を、該微生物に導入するステップ
により達成される、請求項24に記載の遺伝的に改変された微生物。
【請求項26】
少なくとも1種の遺伝子について野生型と比較して増大したか生起された転写速度を有する、請求項24もしくは25に記載の遺伝的に改変された微生物であって、
ah) 請求項1に記載のプロモーター活性を有する内在性核酸であって、内在性遺伝子の転写を調節する核酸の、該微生物でのプロモーター比活性が、野生型と比較して増大している、または
bh) 請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸により、または実施形態ah)に従い増大したプロモーター比活性を有する核酸により、該微生物での遺伝子の転写が調節されており、ここで該遺伝子はプロモーター活性を有する該核酸との関係では異種起源である、
上記微生物。
【請求項27】
請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸による、または実施形態a)に従い増大したプロモーター比活性を伴う請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸による、該微生物での遺伝子の転写の調節が、
bh1) 増大したプロモーター比活性を適宜伴う、請求項1に記載のプロモーター活性を有する1以上の核酸を該微生物のゲノムに導入することにより、増大したプロモーター比活性を適宜伴う、プロモーター活性を有する導入された該核酸の制御下に、1以上の内在性遺伝子の転写が行われるようになるステップ、または
bh2) 1以上の遺伝子を該微生物のゲノムに導入することにより、増大したプロモーター比活性を適宜伴う、請求項1に記載のプロモーター活性を有する内在性核酸の制御下に、1以上の導入された該遺伝子の転写が行われるようになるステップ、または
bh3) 増大したプロモーター比活性を適宜伴う、請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸と、機能的に連結された1以上の転写対象の核酸とを含んでなる1以上の核酸構築物を、該微生物に導入するステップ
により達成される、請求項26に記載の遺伝的に改変された微生物。
【請求項28】
少なくとも1種の遺伝子について野生型と比較して低下した転写速度を有する、請求項24もしくは25に記載の遺伝的に改変された微生物であって、
ar) 請求項1に記載のプロモーター活性を有する少なくとも1つの内在性核酸であって、少なくとも1種の内在性遺伝子の転写を調節する核酸の、該微生物でのプロモーター比活性が、野生型と比較して低下している、または
br) 実施形態a)に従い低下したプロモーター比活性を有する1以上の核酸を該微生物のゲノムに導入することにより、低下したプロモーター活性を有する導入された該核酸の制御下に、少なくとも1種の内在性遺伝子の転写が行われるようになっている、
上記微生物。
【請求項29】
遺伝的に改変された微生物であって、遺伝的改変が、少なくとも1種の遺伝子の発現速度が野生型と比較して変化しまたは生起されることにつながり、かつ
c) 請求項2もしくは3に記載の少なくとも1つの内在性発現ユニットであって、少なくとも1種の内在性遺伝子の発現を調節する発現ユニットの、該微生物での発現比活性を、野生型と比較して変化させるステップ、または
d) 請求項2もしくは3に記載の発現ユニットにより、または実施形態a)に従い変化した発現比活性を伴う請求項2もしくは3に記載の発現ユニットにより、該微生物での遺伝子の発現を調節するステップ、ここで、該遺伝子は該発現ユニットとの関係では異種起源である
によるものである、上記微生物。
【請求項30】
請求項2もしくは3に記載の発現ユニットによる、または実施形態a)に従い変化した発現比活性を伴う請求項2もしくは3に記載の発現ユニットによる、該微生物での遺伝子の発現の調節が、
d1) 変化した発現比活性を適宜伴う、請求項2もしくは3に記載の1以上の発現ユニットを該微生物のゲノムに導入することにより、変化した発現比活性を適宜伴う請求項2もしくは3に記載の導入された該発現ユニットの制御下に、1以上の内在性遺伝子の発現が行われるようになるステップ、または
d2) 1以上の遺伝子を該微生物のゲノムに導入することにより、変化した発現比活性を適宜伴う、請求項2もしくは3に記載の内在性発現ユニットの制御下に、1以上の導入された該遺伝子の発現が行われるようになるステップ、または
d3) 変化した発現比活性を適宜伴う請求項2もしくは3に記載の発現ユニットと、機能的に連結された1以上の発現対象の核酸とを含んでなる1以上の核酸構築物を、該微生物に導入するステップ
により達成される、請求項29に記載の遺伝的に改変された微生物。
【請求項31】
少なくとも1種の遺伝子について野生型と比較して増大したか生起された転写速度を有する、請求項29もしくは30に記載の遺伝的に改変された微生物であって、
ch) 請求項2もしくは3に記載の少なくとも1つの内在性発現ユニットであって、内在性遺伝子の発現を調節する発現ユニットの、該微生物での発現比活性が、野生型と比較して増大している、または
dh) 請求項2もしくは3に記載の発現ユニットにより、または実施形態a)に従い増大した発現比活性を伴う請求項2もしくは3に記載の発現ユニットにより、該微生物での遺伝子の発現が調節されており、ここで該遺伝子は該発現ユニットとの関係では異種起源である、
上記微生物。
【請求項32】
請求項2もしくは3に記載の発現ユニットによる、または実施形態a)に従い増大した発現比活性を伴う請求項2もしくは3に記載の発現ユニットによる、該微生物での遺伝子の発現の調節が、
dh1) 増大した発現比活性を適宜伴う、請求項2もしくは3に記載の1以上の発現ユニットを該微生物のゲノムに導入することにより、増大した発現比活性を適宜伴う、請求項2もしくは3に記載の導入された該発現ユニットの制御下に、1以上の内在性遺伝子の発現が行われるようになるステップ、または
dh2) 1以上の遺伝子を該微生物のゲノムに導入することにより、増大した発現比活性を適宜伴う、請求項2もしくは3に記載の内在性発現ユニットの制御下に、1以上の導入された該遺伝子の発現が行われるようになるステップ、または
dh3) 増大した発現比活性を適宜伴う、請求項2もしくは3に記載の発現ユニットと、機能的に連結された1以上の発現対象の核酸とを含んでなる1以上の核酸構築物を、該微生物に導入するステップ
により達成される、請求項31に記載の遺伝的に改変された微生物。
【請求項33】
少なくとも1種の遺伝子について野生型と比較して低下した発現速度を有する、請求項29もしくは30に記載の遺伝的に改変された微生物であって、
cr) 請求項2もしくは3に記載の少なくとも1つの内在性発現ユニットであって、少なくとも1種の内在性遺伝子の発現を調節する発現ユニットの、該微生物での発現比活性が、野生型と比較して低下している、または
dr) 低下した発現活性を伴う請求項2もしくは3に記載の1以上の発現ユニットを該微生物のゲノムに導入することにより、低下した発現活性を伴う請求項2もしくは3に記載の導入された該発現ユニットの制御下に、少なくとも1種の遺伝子の発現が行われるようになっている、
上記微生物。
【請求項34】
請求項2または3に記載の発現ユニットと、機能的に連結された発現対象の遺伝子とを含んでなる遺伝的に改変された微生物であって、該遺伝子は該発現ユニットとの関係では異種起源である、上記微生物。
【請求項35】
請求項20〜22のいずれか1項に記載の発現カセットを含んでなる、請求項34に記載の遺伝的に改変された微生物。
【請求項36】
前記遺伝子が、タンパク質生成およびタンパク質非生成アミノ酸の生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、ヌクレオチドおよびヌクレオシドの生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、有機酸の生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、脂質および脂肪酸の生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、ジオールの生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、炭水化物の生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、芳香族化合物の生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、ビタミン類の生合成経路中のタンパク質をコードする核酸、補因子の生合成経路中のタンパク質をコードする核酸および酵素の生合成経路中のタンパク質をコードする核酸からなる群より選択され、該遺伝子はさらなる制御エレメントを含んでいてもよい、請求項24〜35のいずれか1項に記載の遺伝的に改変された微生物。
【請求項37】
アミノ酸の生合成経路中のタンパク質が、アスパラギン酸キナーゼ、アスパラギン酸−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、ジアミノピメリン酸デヒドロゲナーゼ、ジアミノピメリン酸デカルボキシラーゼ、ジヒドロジピコリン酸合成酵素、ジヒドロジピコリン酸レダクターゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、転写調節因子LuxR、転写調節因子LysR1、転写調節因子LysR2、リンゴ酸−キノンオキシドレダクターゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、6−ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ、トランスケトラーゼ、トランスアルドラーゼ、ホモセリンO−アセチルトランスフェラーゼ、シスタチオニンγ−シンターゼ、シスタチオニンβ−リアーゼ、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ、O−アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼ、メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ、ホスホセリンアミノトランスフェラーゼ、ホスホセリンホスファターゼ、セリンアセチルトランスフェラーゼ、ホモセリンデヒドロゲナーゼ、ホモセリンキナーゼ、トレオニンシンターゼ、トレオニンエクスポーター・キャリア、トレオニンデヒドラターゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、リジンエクスポーター、ビオチンリガーゼ、システインシンターゼI、システインシンターゼII、補酵素B12依存性メチオニンシンターゼ、補酵素B12非依存性メチオニンシンターゼ、硫酸アデニリルトランスフェラーゼサブユニット1および2、ホスホアデノシン−ホスホ硫酸レダクターゼ、フェレドキシン−亜硫酸レダクターゼ、フェレドキシンNADPレダクターゼ、3−ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ、RXA00655調節因子、RXN2910調節因子、アルギニル−tRNA合成酵素、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、トレオニン排出タンパク質、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ、フルクトース−1,6−ビスホスファターゼ、硫酸還元タンパク質RXA077、硫酸還元タンパク質RXA248、硫酸還元タンパク質RXA247、タンパク質OpcA、1−ホスホフルクトキナーゼおよび6−ホスホフルクトキナーゼからなる群より選択される、請求項36に記載の遺伝的に改変された微生物。
【請求項38】
請求項24〜37のいずれか1項に記載の遺伝的に改変された微生物を培養することにより、生合成産物を調製する方法。
【請求項39】
請求項24、25、31または32のいずれか1項に記載の遺伝的に改変された微生物を培養することによりリジンを調製する方法であって、前記遺伝子が、アスパラギン酸キナーゼをコードする核酸、アスパラギン酸−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする核酸、ジアミノピメリン酸デヒドロゲナーゼをコードする核酸、ジアミノピメリン酸デカルボキシラーゼをコードする核酸、ジヒドロジピコリン酸合成酵素をコードする核酸、ジヒドロジピコリン酸レダクターゼをコードする核酸、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼをコードする核酸、3−ホスホグリセリン酸キナーゼをコードする核酸、ピルビン酸カルボキシラーゼをコードする核酸、トリオースリン酸イソメラーゼをコードする核酸、転写調節因子LuxRをコードする核酸、転写調節因子LysR1をコードする核酸、転写調節因子LysR2をコードする核酸、リンゴ酸−キノンオキシドレダクターゼをコードする核酸、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼをコードする核酸、6−ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼをコードする核酸、トランスケトラーゼをコードする核酸、トランスアルドラーゼをコードする核酸、リジンエクスポーターをコードする核酸、ビオチンリガーゼをコードする核酸、アルギニル−tRNA合成酵素をコードする核酸、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼをコードする核酸、フルクトース−1,6−ビスホスファターゼをコードする核酸、タンパク質OpcAをコードする核酸、1−ホスホフルクトキナーゼをコードする核酸および6−ホスホフルクトキナーゼをコードする核酸からなる群より選択される、上記方法。
【請求項40】
前記遺伝的に改変された微生物が、アスパラギン酸キナーゼ活性、アスパラギン酸−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性、ジアミノピメリン酸デヒドロゲナーゼ活性、ジアミノピメリン酸デカルボキシラーゼ活性、ジヒドロジピコリン酸合成酵素活性、ジヒドロジピコリン酸レダクターゼ活性、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ活性、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ活性、ピルビン酸カルボキシラーゼ活性、トリオースリン酸イソメラーゼ活性、転写調節因子LuxR活性、転写調節因子LysR1活性、転写調節因子LysR2活性、リンゴ酸−キノンオキシドレダクターゼ活性、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ活性、6−ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ活性、トランスケトラーゼ活性、トランスアルドラーゼ活性、リジンエクスポーター活性、アルギニル−tRNA合成酵素活性、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ活性、フルクトース−1,6−ビスホスファターゼ活性、タンパク質OpcA活性、1−ホスホフルクトキナーゼ活性、6−ホスホフルクトキナーゼ活性およびビオチンリガーゼ活性からなる群より選択される活性のうち少なくとも1つについて、野生型と比較して増大した活性をさらに有する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記遺伝的に改変された微生物が、トレオニンデヒドラターゼ活性、ホモセリンO−アセチルトランスフェラーゼ活性、O−アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼ活性、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ活性、ピルビン酸オキシダーゼ活性、ホモセリンキナーゼ活性、ホモセリンデヒドロゲナーゼ活性、トレオニンエクスポーター活性、トレオニン排出タンパク質活性、アスパラギナーゼ活性、アスパラギン酸デカルボキシラーゼ活性およびトレオニンシンターゼ活性からなる群より選択される活性のうち少なくとも1つについて、野生型と比較して低下した活性をさらに有する、請求項39または40に記載の方法。
【請求項42】
請求項24、25、31または32のいずれか1項に記載の遺伝的に改変された微生物を培養することによりメチオニンを調製する方法であって、前記遺伝子が、アスパラギン酸キナーゼをコードする核酸、アスパラギン酸−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする核酸、ホモセリンデヒドロゲナーゼをコードする核酸、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼをコードする核酸、3−ホスホグリセリン酸キナーゼをコードする核酸、ピルビン酸カルボキシラーゼをコードする核酸、トリオースリン酸イソメラーゼをコードする核酸、ホモセリンO−アセチルトランスフェラーゼをコードする核酸、シスタチオニンγ−シンターゼをコードする核酸、シスタチオニンβ−リアーゼをコードする核酸、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼをコードする核酸、O−アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼをコードする核酸、メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼをコードする核酸、ホスホセリンアミノトランスフェラーゼをコードする核酸、ホスホセリンホスファターゼをコードする核酸、セリンアセチルトランスフェラーゼをコードする核酸、システインシンターゼIをコードする核酸、システインシンターゼIIをコードする核酸、補酵素B12依存性メチオニンシンターゼをコードする核酸、補酵素B12非依存性メチオニンシンターゼをコードする核酸、硫酸アデニリルトランスフェラーゼをコードする核酸、ホスホアデノシン−ホスホ硫酸レダクターゼをコードする核酸、フェレドキシン−亜硫酸レダクターゼをコードする核酸、フェレドキシンNADPHレダクターゼをコードする核酸、フェレドキシン活性をコードする核酸、硫酸還元タンパク質RXA077をコードする核酸、硫酸還元タンパク質RXA248をコードする核酸、硫酸還元タンパク質RXA247をコードする核酸、RXA0655調節因子をコードする核酸およびRXN2910調節因子をコードする核酸からなる群より選択される、上記方法。
【請求項43】
前記遺伝的に改変された微生物が、アスパラギン酸キナーゼ活性、アスパラギン酸−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性、ホモセリンデヒドロゲナーゼ活性、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ活性、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ活性、ピルビン酸カルボキシラーゼ活性、トリオースリン酸イソメラーゼ活性、ホモセリンO−アセチルトランスフェラーゼ活性、シスタチオニンγ−シンターゼ活性、シスタチオニンβ−リアーゼ活性、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ活性、O−アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼ活性、メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ活性、ホスホセリンアミノトランスフェラーゼ活性、ホスホセリンホスファターゼ活性、セリンアセチルトランスフェラーゼ活性、システインシンターゼI活性、システインシンターゼII活性、補酵素B12依存性メチオニンシンターゼ活性、補酵素B12非依存性メチオニンシンターゼ活性、硫酸アデニリルトランスフェラーゼ活性、ホスホアデノシン−ホスホ硫酸レダクターゼ活性、フェレドキシン−亜硫酸レダクターゼ活性、フェレドキシンNADPHレダクターゼ活性、フェレドキシン活性、硫酸還元タンパク質RXA077活性、硫酸還元タンパク質RXA248活性、硫酸還元タンパク質RXA247活性、RXA655調節因子活性およびRXN2910調節因子活性からなる群より選択される活性のうち少なくとも1つについて、野生型と比較して増大した活性をさらに有する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記遺伝的に改変された微生物が、ホモセリンキナーゼ活性、トレオニンデヒドラターゼ活性、トレオニンシンターゼ活性、メソ−ジアミノピメリン酸D−デヒドロゲナーゼ活性、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ活性、ピルビン酸オキシダーゼ活性、ジヒドロジピコリン酸シンターゼ活性、ジヒドロジピコリン酸レダクターゼ活性およびジアミノピコリン酸デカルボキシラーゼ活性からなる群より選択される活性のうち少なくとも1つについて、野生型と比較して低下した活性をさらに有する、請求項42または43に記載の方法。
【請求項45】
請求項24、25、31または32のいずれか1項に記載の遺伝的に改変された微生物を培養することによりトレオニンを調製する方法であって、前記遺伝子が、アスパラギン酸キナーゼをコードする核酸、アスパラギン酸−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする核酸、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼをコードする核酸、3−ホスホグリセリン酸キナーゼをコードする核酸、ピルビン酸カルボキシラーゼをコードする核酸、トリオースリン酸イソメラーゼをコードする核酸、ホモセリンキナーゼをコードする核酸、トレオニンシンターゼをコードする核酸、トレオニンエクスポーター・キャリアをコードする核酸、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼをコードする核酸、トランスアルドラーゼをコードする核酸、トランスケトラーゼをコードする核酸、リンゴ酸−キノンオキシドレダクターゼをコードする核酸、6−ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼをコードする核酸、リジンエクスポーターをコードする核酸、ビオチンリガーゼをコードする核酸、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼをコードする核酸、トレオニン排出タンパク質をコードする核酸、フルクトース−1,6−ビスホスファターゼをコードする核酸、タンパク質OpcAをコードする核酸、1−ホスホフルクトキナーゼをコードする核酸、6−ホスホフルクトキナーゼをコードする核酸およびホモセリンデヒドロゲナーゼをコードする核酸からなる群より選択される、上記方法。
【請求項46】
前記遺伝的に改変された微生物が、アスパラギン酸キナーゼ活性、アスパラギン酸−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ活性、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ活性、ピルビン酸カルボキシラーゼ活性、トリオースリン酸イソメラーゼ活性、トレオニンシンターゼ活性、トレオニンエクスポート・キャリア活性、トランスアルドラーゼ活性、トランスケトラーゼ活性、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ活性、リンゴ酸−キノンオキシドレダクターゼ活性、ホモセリンキナーゼ活性、ビオチンリガーゼ活性、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ活性、トレオニン排出タンパク質活性、タンパク質OpcA活性、1−ホスホフルクトキナーゼ活性、6−ホスホフルクトキナーゼ活性、フルクトース−1−6−ビスホスファターゼ活性、6−ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ活性およびホモセリンデヒドロゲナーゼ活性からなる群より選択される活性のうち少なくとも1つについて、野生型と比較して増大した活性をさらに有する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記遺伝的に改変された微生物が、トレオニンデヒドラターゼ活性、ホモセリンO−アセチルトランスフェラーゼ活性、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ活性、O−アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼ活性、メソ−ジアミノピメリン酸D−デヒドロゲナーゼ活性、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ活性、ピルビン酸オキシダーゼ活性、ジヒドロジピコリン酸合成酵素活性、ジヒドロジピコリン酸レダクターゼ活性、アスパラギナーゼ活性、アスパラギン酸デカルボキシラーゼ活性、リジンエクスポーター活性、アセト乳酸シンターゼ活性、ケトール酸レダクトイソメラーゼ活性、分岐鎖アミノトランスフェラーゼ活性、補酵素B12依存性メチオニンシンターゼ活性、補酵素B12非依存性メチオニンシンターゼ活性、ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ活性およびジアミノピコリン酸デカルボキシラーゼ活性からなる群より選択される活性のうち少なくとも1つについて、野生型と比較して低下した活性をさらに有する、請求項45または46に記載の方法。
【請求項48】
培養ステップの後および/またはその間に、培養培地から生合成産物を単離し、かつ適宜精製する、請求項38〜47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
コリネバクテリウム属またはブレビバクテリウム属の細菌で遺伝子を発現可能にする発現ユニット中のリボソーム結合サイトとしての、配列番号42の核酸配列の使用。
【請求項50】
コリネバクテリウム属またはブレビバクテリウム属の細菌で遺伝子を発現可能にする発現ユニット中の−10領域としての、配列番号39、40または41の核酸配列の使用。
【請求項51】
配列番号42の核酸配列を含んでなる、コリネバクテリウム属またはブレビバクテリウム属の細菌で遺伝子を発現可能にする発現ユニット。
【請求項52】
配列番号42の核酸配列をリボソーム結合サイトとして用いる、請求項51に記載の発現ユニット。
【請求項53】
配列番号39、40または41の核酸配列のうち少なくとも1つを含んでなる、コリネバクテリウム属またはブレビバクテリウム属の細菌で遺伝子を発現可能にする発現ユニット。
【請求項54】
配列番号39、40または41の核酸配列のうちの1つを−10領域として用いる、請求項53に記載の発現ユニット。

【公表番号】特表2007−514425(P2007−514425A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544325(P2006−544325)
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【国際出願番号】PCT/EP2004/014266
【国際公開番号】WO2005/059093
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】