PEG修飾されたアルギニン/リシンオキシドレダクターゼ
本発明は、ポリエチレングリコールで修飾されたアルギニン/リシンオキシドレダクターゼ、その製造方法及び、アミノ酸レベル、活性酸素種又は/及びアンモニウムの調節に対して応答性である疾病の治療方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
発明の背景
本発明は、ポリエチレングリコールで修飾されたアルギニン/リシンオキシドレダクターゼに関する。
【0002】
発明の背景
数十年間、医薬的に活性のある物質を、天然の生物から回収するため、そして、これらの効果を様々な疾病領域で試験するために多くの努力がなされてきた。
【0003】
アメフラシ(Aplysia punctata)は、捕食から自身を保護するための紫色のインクを産生する。このインクは、抗腫瘍活性を有することが示されている(Butzke et al., 2004)。その後、研究が、この因子を粗製インクから単離すべく実施され、APIT、Aplysia Punctataインク毒素(Aplysia Punctata Ink Toxin)の発見を生じた。最近では、この因子がクローニングされ、L−リシンとL−アルギニンの酸化による脱アミノ化を触媒作用し、これにより過酸化水素(H2O2)、アンモニウム(NH4+)及び相応するα−ケト酸を産生する(Butzke et al., 2005)、弱グリコシル化されたFAD結合L−アミノ酸オキシダーゼ()であると特性決定した。
【0004】
L−アミノ酸オキシダーゼ(LAAOs, EC 1.4.3.2)は、分泌物及び毒物中に見出されることができる。フラビン酵素のこのファミリーのメンバーは、L−アミノ酸の立体特異的な酸化的脱アミノ反応を触媒作用し、かつこれにより、H2O2、アンモニウム及び相応するα−ケト酸を産生する(Du et al., 2002)。この個々のLAAOsは、その基質特異性において異なる。蛇毒L−アミノ酸オキシダーゼ(sv−LAAOs)は、これは、粗製毒素30(質量)%までを構成し(Ponnudurai et al., 1994)、疎水性アミノ酸に対する明確な選択性を有する。AIP(アポトーシス誘導性タンパク質)と呼称される魚カプセル(fish capsule)LAAOは、マサバの幼生の線虫の感染により誘導され、これは、L−リシンに対して高度に特異的である(Jung et al., 2000)。アクアチン(Achacin)(アフリカヘビ、アフリカマイマイからの粘液LAAO)は、極めて広い範囲の基質を代謝し、これは、疎水性アミノ酸、L−リシン、L−アルギニン、L−システイン、L−アスパルギン及びL−チロシンを含む(Ehara et al., 2002)。
【0005】
L−アミノ酸オキシダーゼは、任意の経路での哺乳類に対する投与後のその半減期について検査されていない。薬物開発に関して、しかしながらこれは重要な問題であり、かつ、薬理作用を効率的に発揮するためには必要条件である。この観点におけるデータは、基質としてD−プロリンを使用するD−アミノ酸オキシダーゼに関してのみ入手可能である(Fang et al., 2002)。しかしながら、静脈内注射後に天然のD−アミノ酸オキシダーゼは、循環から迅速に清掃された。ペグ化された誘導体は、顕著に増加した循環半減期を示さず、1時間を優に下回った。このような短い半減期を有する製品は、治療、例えば癌治療のために実質的な治療的利益を有するとは期待されることができない。従って、この先行技術の教示によれば、ペグ化されたアミノ酸オキシダーゼが、治療的効力に欠けることが予期されるものである。
【0006】
本発明の課題は、改善された特性を有する治療製品を提供すべく、L−アミノ酸オキシドレダクターゼの治療的効力を増加させることであった。
【0007】
発明の要約
本発明は、初めて、少なくとも1つのポリエチレングリコール残基で修飾されたアルギニン/リシンオキシドレダクターゼ及びこの修飾されたアルギニン/リシンオキシドレダクターゼを含有する医薬組成物、この製造方法及び、血漿アミノ酸レベルの調節に対して応答性の、又は/及び活性酸素種又は/及びアンモニウムに対して応答性の疾病、例えば増殖性疾病、ウィルス感染又は/及び微生物感染を治療するための方法について言及する。
【0008】
有利な一実施態様において、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼ(Aplysia punctataインク毒素(APIT)と呼ばれる)は、重量平均分子量約1000〜約10000を有する少なくとも1つのポリエチレングリコールで修飾される。
【0009】
本発明の更なる実施態様は、ペグ化されたアルギニン/リシンオキシドレダクターゼの製造方法に関する。
【0010】
更なる実施態様は、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼのペグ化を含む、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼの酵素活性及び循環時間を促進する方法に関する。
【0011】
更なる実施態様は、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼのペグ化を含む、体液による不活性化に対してアルギニン/リシンオキシドレダクターゼを保護する方法に関する。
【0012】
更なる一観点において、本発明は、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼをこの液体に添加することを含む、液体中でのアミノ酸リシン又は/及びアルギニンを欠失させるための方法に関する。
【0013】
また更なる実施態様は、本発明のアルギニン/リシンオキシドレダクターゼを含有するキットに関する。
【0014】
発明の詳細な説明
本発明の課題は、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼ、特にL−アルギニン/リシンオキシダーゼをポリエチレングリコール(PEG)で共有的に修飾することにより達成される。本発明は、ポリエチレングリコールで修飾されたアルギニン/リシンオキシドレダクターゼが、マウスの血漿中で48時間より長く循環し、かつ、その酵素活性を維持するとの意外な発見に基づく。対照的に、修飾されないアルギニン/リシンオキシドレダクターゼが、約3時間のみ等価な活性に基づく用量で循環中で活性がある。
【0015】
更に、PEG修飾されたアルギニン/リシンオキシドレダクターゼの用量が、修飾されていないアルギニン/リシンオキシドレダクターゼに比較して顕著に減少されることができることが意外にも見出された。
【0016】
更に、PEG修飾されたアルギニン/リシンオキシドレダクターゼが、修飾されていないアルギニン/リシンオキシドレダクターゼに比較して肺癌細胞の抑制のためにより少ないIC50値を有することが意外にも見出された。
【0017】
更に、ポリエチレングリコールで修飾されたアルギニン/リシンオキシドレダクターゼは、アミノ酸レベル、リシン及びアルギニンを低下させ、これにより活性酸素種及びアンモニウムを産生することにおいて、特定の手段を提供する。これらの効果の全て又はこれらの効果の一部は、疾病の特定の種類を治療するために十分である。天然のアルギニン/リシンオキシドレダクターゼに比較すると、ペグ化されたアルギニン/リシンオキシドレダクターゼは、大抵の酵素活性を維持し、リシン及びアルギニンを哺乳類中で48時間以上枯渇させることができ、かつ、アミノ酸レベル及び/又は活性酸素種又はアンモニウムの変更に対して応答性の疾病の治療においてより効果がある。更に、このペグ化されたアルギニン/リシンオキシドレダクターゼは、修飾されていないアルギニン/リシンオキシドレダクターゼに指向した特異的な抗体の存在下ですら活性がある。
【0018】
第1の観点において、本発明は、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼ及び少なくとも1つのポリエチレングリコール残基を含有するコンジュゲートを提供する。
【0019】
ここで使用される「コンジュゲート」は、ポリペプチド部分を含有する化合物を指し、有利にはこれは、補酵素、例えばFADを含み、これに対して少なくとも1つのポリエチレングリコール残基が、共有結合により連結されている。
【0020】
本発明のコンジュゲートは、任意の公知のアルギニン/リシンオキシドレダクターゼ、特にL−アルギニン/リシンオキシドレダクターゼを含んでよく、これは、L−アルギニン又は/及びL−リシンのそれぞれのアルファイミノ酸への変換を触媒作用する。この工程において、酵素はH2O2を、化学量論量で産生する。第2の工程において、アルファイミノ酸は、α−ケト酸に、アンモニウムの放出下で変換される。第2の工程は、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼ活性に依存性でない。アルギニン/リシンオキシドレダクターゼにより触媒されるこの反応の詳細は、WO 2004/065415中に説明され、これは、参照することにより本願に組み込まれる。
【0021】
本発明の別の有利な実施態様において、コンジュゲートは、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼを含有し、これはL−アルギニン/L−リシンオキシドレダクターゼである。
【0022】
更なる有利な一実施態様において、このコンジュゲートは、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼを含有し、これは、アルギニン又は/及びリシンに対して特異的である。特に、リシン又は/及びアルギニン、特にL−リシン又は/及びL−アルギニンを処理するための酵素活性は、他のアミノ酸、特に生物中に天然に存在するアルファL−アミノ酸の処理のための酵素活性よりも少なくとも約3倍又は約4倍、より大きい。
【0023】
有利なアルギニン/リシンオキシドレダクターゼは、アメフラシ種から得られてよく、特にAplysia punctataから得られる。例えば、Aplysia Punctataインク毒素(APIT)は、これは本発明のアルギニン/リシンオキシドレダクターゼであるが、アメフラシAplysia Punctataのインク中に見出されることができる。この酵素及びその製造は、WO 2004/065415中に説明され、これは参照により本願に含められる。
【0024】
更に、適したL−リシンα−オキシダーゼは、Lukasheva EV, Berezov TT中に説明されている。L-Lysine alpha-oxidase: physiochemical and biological properties. Biochemistry (Mosc.) 2002 Oct;67(10):1152-8。
【0025】
アルギニン/リシンオキシダーゼは、天然源から単離された天然の分子又は組み換え体、例えば天然に生じない供給源から得られる組み換え分子であってよい。有利な一実施態様において、このコンジュゲートは、組み換えアルギニン/リシンオキシドレダクターゼを含有してもよい。
【0026】
特に有利な一実施態様において、本発明のコンジュゲートは、
(a)配列番号2、4、6又は/及び8の配列
(b)少なくとも70%配列(a)と同一である配列、又は/及び
(c)(a)又は/及び(b)の断片
を含有するアルギニン/リシンオキシドレダクターゼを含有する。
【0027】
配列番号2、4、6及び8は、幾つかのアミノ酸位置において異なる。配列番号8は、Aplysia punctataから単離された有利なアルギニン/リシンオキシドレダクターゼを説明する(本発明の実施例参照のこと)。配列番号2、4及び6は、Aplysia punctataから単離された更なるアルギニン/リシンオキシドレダクターゼを説明する。配列番号2、4及び6は、WO 2004/065415中に説明され、これは、参照により本願中に含まれる。
【0028】
(a)の有利な配列は、配列番号8である。
【0029】
(b)の配列は、少なくとも70%、有利には少なくとも80%、より有利には少なくとも90%、更により有利には少なくとも95%、最も有利には少なくとも99%、(a)の配列に対して同一である配列である。この同一性は、最大のオーバーラップの領域中で決定される。当業者は、最大のオーバーラップの領域を、一般的に知られているアルゴリズム、例えばFASTA、BLAST又は/及びアミノ酸配列に関するその誘導体により決定することができる。
【0030】
(c)の断片は、(a)又は(b)のアルギニン/リシンオキシドレダクターゼの任意の酵素活性のある断片であり、かつ、少なくとも約30アミノ酸残基、有利には少なくとも約50アミノ酸残基、より有利には少なくとも約100アミノ酸残基、最も有利には少なくとも約200アミノ酸残基の長さを有してよい。
【0031】
(c)の断片は、配列番号2、4、6又は/及び8の完全長よりも短い長さを有してよく、有利には最大で約500アミノ酸残基、より有利には最大で約400アミノ酸残基、最も有利には最大で約300アミノ酸残基である。
【0032】
(c)の断片は、配列番号2、4、6又は/及び8に由来する配列から、N−末端のアミノ酸を除去することにより選択されてよい。このN末端は、オキシドレダクターゼ機能に必要とされないシグナル配列を示して良い。有利には、約5までの、約10までの、約20までの、又は約50までのN−末端アミノ酸が除去される。より有利には、配列番号2において、18個のN−末端アミノ酸が除去され、又は/及び配列番号4において、17個のN−末端アミノ酸が除去される。
【0033】
本発明のコンジュゲートは有利には、少なくとも6時間の間循環中で活性があり、即ち、このコンジュゲートは有利には少なくとも6時間の循環時間を有する。本発明の文脈において、「循環時間」とは、本発明のコンジュゲートが、その活性、特に酵素活性を、被験体中の循環の間に維持する時間を指す。本発明において、「循環時間」との用語は、比較目的のための他の化合物にも適用される。例えば、「循環時間」は、修飾されていないAPITに適用される。循環時間は、循環半減期により表されても良い。
【0034】
本発明のコンジュゲートは、より有利には、少なくとも12時間、更に有利には少なくとも24時間、最も有利には少なくとも48時間循環中で活性がある。
【0035】
本発明のコンジュゲートの用量が、相応する修飾されていないアルギニン/リシンオキシドレダクターゼと比較して顕著に減少されることができることが意外にも見出された。例えば、0.6ユニット/kg PEG−5000−APITの量は、リシン及びアルギニンレベルをマウス中で血漿中6時間の間欠失させることができる。修飾されていないAPITは、同じ作用を達成するために1000ユニット/kg必要である。従って、PEG−5000−APTIの用量は、ペグ化されていないAPITと比較して約1667倍減少されることができる。言い換えると、PEG−5000−APITの活性は、修飾されていないAPITの活性よりも約1667倍より大きい。
【0036】
従って、有利な実施態様において、本発明のコンジュゲートの活性は、ポリエチレングリコール残基を有しないアルギニン/リシンオキシドレダクターゼの活性と比較して、少なくとも30、より有利には少なくとも100、更に有利には少なくとも300、いっそう有利には少なくとも1000、最も有利には1500倍より大きい。この活性は特に酵素活性である。より有利には活性は、被験体、例えば哺乳類、例えば齧歯類又はヒトへの投与後の血漿中の酵素活性である。酵素活性は、予め決められた期間、液体、例えば体液、血漿中でアルギニン又は/及びリシンを欠失させるために必要とさせる用量の決定により決定されてよい。この期間は、約3〜約48時間、約6〜約24時間、又は約12〜約18時間、又は有利には約3時間、約6時間、約12時間、約24時間、又は約48時間の範囲内から選択されてよい。アルギニン又は/及びリシンは、予め決められたレベル、例えば0μMに枯渇されてよい。この予め決められたレベルは、0μM〜約10μM、0μM〜20μM、又は0μM〜約100μMの範囲内から選択されてよい。
【0037】
この活性の改善の倍数は、例えば、ペグ化されていないアルギニン/リシンオキシドレダクターゼの用量を、本発明のコンジュゲートの用量で割ることにより計算されることができ、この用量は、予め決められた期間のアルギン/リシンの枯渇のために必要である。
【0038】
更なる有利な一実施態様において、本発明のコンジュゲートは、重量平均分子量約1000ダルトン〜約10000ダルトン、有利には約3000ダルトン〜約8000ダルトン、より有利には約4000ダルトン〜約6000ダルトン、更に有利には約4500〜約5500ダルトン、最も有利には約5000ダルトンを有する少なくとも1つのポリエチレングリコール残基を含有する。
【0039】
本発明で使用されるポリエチレングリコール残基は、ポリペプチドを連結させるために適した、修飾されていない、及び、修飾されたポリエチレングリコール残基を含む。修飾されたポリエチレングリコール残基は有利には、末端で修飾されたポリエチレングリコール残基を含み、その際この末端のOH基は修飾されていて、例えばアルキル化、アシル化及び/又は酸化により修飾されている。より有利には、ポリエチレングリコール残基は、末端のOH基、又はO−C1〜3アルキル基及びアシル基又はその組み合わせから選択される修飾された末端基を有する。
【0040】
更なる有利な一実施態様において、このコンジュゲートは、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼに連結基を介して共有結合している少なくとも1つのポリエチレングリコール残基を含有する。この連結基は、スクシンイミド基、有利にはスクシンイミジルスクシナート基であってよい。
【0041】
別の有利な一実施態様において、本発明のコンジュゲートは、1〜約30ポリエチレングリコール残基、有利には1〜約20ポリエチレングリコール残基、より有利には1〜約10ポリエチレングリコール残基を含有する。
【0042】
本発明のコンジュゲート中では、少なくとも1つのポリエチレングリコール基は、反応性官能基、例えばカルボキシラート基、アミノ基、チオール基及び/又はヒドロキシ基を有する側鎖を有する任意のアミノ酸に、連結されていてよく、例えばアミノ酸は、アスパルギン酸、グルタミン酸又は/及びリシンから選択される。 有利な一実施態様は、少なくとも1つのポリエチレングリコール残基が、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼにリシン残基を介して共有結合しているコンジュゲートに関する。配列番号8は、23個のリシン残基を含有するので、配列番号8のポリペププチドを含有する本発明のコンジュゲートは、リシン残基を介して連結した、23個までのポリエチレングリコール残基、有利には約10個までのポリエチレングリコール残基を含有してよい。
【0043】
本発明のコンジュゲートにおいては、少なくとも1つのポリエチレン基が、リンカー基、例えばスクシンイミドリンカー基又はアミン基への連結のための他の任意の適したリンカー基を介してリシンに連結していることがより有利である。本発明のコンジュゲートにおいては、少なくとも1つのポリエチレン基が、約4500〜約5500ダルトンの重量平均分子量を有し、かつ、リンカー基、例えばスクシンイミドリンカー基を介してリシンに連結していることがより有利である。
【0044】
最も有利には、配列番号8を有するL−アルギニン/L−リシンオキシドレダクターゼ及び重量平均分子量約4500〜5500ダルトンを有する少なくとも1つのポリエチレングリコール基を含有するコンジュゲートである。
【0045】
更なる別の観点は、
(a)アルギニン/リシンオキシドレダクターゼを組み換えにより発現する、又は/及び、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼを天然源から単離する工程、
(b)少なくとも1つのポリエチレングリコール残基を、(a)のアルギニン/リシンオキシドレダクターゼに連結する工程を含む、本発明のコンジュゲートを製造する方法である。
【0046】
工程(a)で使用されてよいアルギニン/リシンオキシドレダクターゼの有利な天然供給源は、上に説明されるとおりである。
【0047】
工程(a)は有利には、
(i)配列番号1、3、5又は/及び7の配列、
(ii)配列(i)に相補的な配列、
(iii)配列(i)又は(ii)の遺伝暗号の縮重の範囲内の配列、
(iv)配列(i)、(ii)又は/及び(iii)に対して少なくとも70%同一である配列、
(v)配列(i)、(ii)、(iii)又は/及び(iv)の任意の配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列、又は/及び
(vi)配列(i)、(ii)、(iii)、(iv)又は/及び(v)の任意の配列の断片
を含む核酸の組み換え発現を含む。
【0048】
配列番号1、3、5及び7は、それぞれ、アミノ酸配列 配列番号2、4、6及び8を含有するポリペプチドをコードする核酸配列である。配列番号1、3、5及び7は、幾つかのヌクレオチド位置において異なる。配列番号7は、Aplysia punctataから単離されたアルギニン/リシンオキシドレダクターゼをコードするヌクレオチド配列を説明する(本発明の実施例参照のこと)。配列番号1、3及び5は、Aplysia punctataから単離された更なるアルギニン/リシンオキシドレダクターゼをコードするヌクレオチド配列を説明する。配列番号1、3及び5は、WO 2004/065415中に説明され、これは、参照により本願中に含まれる。
【0049】
(i)の有利な配列は、配列番号7である。
【0050】
(iv)のヌクレオチド配列は、少なくとも70%、有利には少なくとも80%、より有利には少なくとも90%、更により有利には少なくとも95%、最も有利には少なくとも99%、(i)、(ii)又は/及び(iii)の配列に対して同一である配列である。ヌクレオチド配列の同一性は、最大のオーバーラップの領域内で決定される。当業者は、一般的に知られているアルゴリズム、例えばFASTA又はBLASTにより最大のオーバーラップの領域を容易に決定することができる。
【0051】
当業者は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件を知っている(参照、例えば、Sambrook J. et al., 1989, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Plainview, N.Y)。工程(v)におけるストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションは有利には、1時間の1×SSC及び0.1%SDSを用いた55℃、有利には62℃、より有利には68℃での洗浄後、特に1時間の0.2×SSC及び0.1%SDSを用いた55℃、有利には62℃、より有利には68℃での洗浄後にハイブリダイゼーションシグナルが検出されることを意味する。
【0052】
(vi)の断片は、少なくとも約90ヌクレオチド残基、有利には少なくとも約150ヌクレオチド残基、より有利には少なくとも約300ヌクレオチド残基、最も有利には少なくとも約600ヌクレオチド残基の長さを有してよい。
【0053】
(vi)の断片は、配列番号1、3、5又は/及び7の完全長よりもより短い長さを有してよく、有利には最大で約1500ヌクレオチド残基、より有利には最大で約1200ヌクレオチド残基、最も有利には最大で約900ヌクレオチド残基である。
【0054】
(vi)の断片は、N−末端のアミノ酸をコードする5′ヌクレオチドを除去することにより配列番号1、3、5及び7に由来する配列から選択されてよく、このアミノ酸は、オキシドレダクターゼ機能のためには必要でないシグナル配列を提示してよい。有利には、約15までの、約30までの、約60までの、又は約150までの5′ヌクレオチドが除去される。より有利には、配列番号1において、54の5′ヌクレオチドが除去され、又は/及び配列番号3、5において1の5′ヌクレオチドが除去される。
【0055】
当業者は、タンパク質の組み換え発現、単離、リフォールディング及び補欠分子族、例えばFADの導入のための方法を知っている。本発明の実施例において、配列番号7の組み換え発現は、配列番号8を含有するポリペプチドを得るために説明されている。組み換え発現のための有利な宿主細胞は、真核性の又は原核性の宿主細胞であり、例えば酵母細胞又は細菌細胞、特にグラム陰性細菌細胞、例えばE.コリである。
【0056】
本発明のコンジュゲートの調製のための方法は、更に、補酵素、例えばFADを、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼ中に導入することを含んでよい。
【0057】
本発明のコンジュゲートの調製のための方法の工程(b)は、少なくとも1つのポリエチレングリコール残基を、工程(a)で得られるアルギニン/リシンオキシドレダクターゼにカップリングすることを指す。工程(b)でのペグ化は、当業者に公知の標準的な手法により実施されてよい。
【0058】
工程(b)において、重量平均分子量が約1000ダルトン〜約10000ダルトン、有利には約3000ダルトン〜約8000ダルトン、より有利には約4000ダルトン〜約6000ダルトン、更により有利には約4500ダルトン〜約5500ダルトン、最も有利には約5000ダルトンを有するポリエチレングリコールが使用されてよい。
【0059】
このポリエチレングリコール残基は、連結基(スクシンアミド基、有利にはスクシンイミジルスクシナートであってよい)を介して共有結合されてよい。他の連結基も使用されてよい。当業者は、適した連結基を知っている。
【0060】
少なくとも1つのポリエチレングリコール残基が、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼにリシン残基を介して共有結合していることが有利である。リシンへのカップリングは、スクシンイミド連結基を適用することにより実施されることができる。カップリングは、官能基、例えばカルボキシラーゼ基、アミノ基、チオール基又は/及びヒドロキシ基を有する他のアミノ酸側鎖、例えばアスパルギン酸又はグルタミン酸に対して実施されてもよい。
【0061】
1〜約30ポリエチレングリコール残基、有利には1〜約20ポリエチレングリコール残基、より有利には1〜約10ポリエチレングリコール残基を含有する本発明のコンジュゲートを供給するためには、工程(b)において過剰量のポリエチレングリコールを使用してよい。ポリエチレングリコールは、カップリングに使用できる遊離の残基の数、例えば遊離のリシン残基に関して約10〜約500当量、有利には約10〜約50当量の量で、提供されてよい。特に、約10、約20、約30、約40、約50、約200、又は約500当量のポリエチレングリコールが使用されてよい。50当量を超えると、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼ分子につき約10PEG分子のカップリングを生じてよい。
【0062】
また更なる本発明の観点は、本発明のコンジュゲートを、場合により、医薬的に許容可能な担体、助剤、希釈剤又は/及び添加剤と一緒に含有する医薬組成物である。
【0063】
本発明の医薬組成物は、活性酸素種又は/及びアンモニウムに対して応答性の、又は/及び血漿アミノ酸レベル、特に血漿リシン又は/及びアルギニンレベルの調節に対して応答性の疾病の予防、緩和又は/及び治療のために適して良い。本発明の医薬組成物は、また、微生物感染、ウィルス感染、例えばHIV、B型又は/及びC型肝炎ウィルス感染、及び増殖性疾病、例えば癌から選択される疾病の予防、緩和、又は/及び治療に適していても良い。
【0064】
本発明の医薬組成物は、一般的な充実性腫瘍及び白血病、例えばアポトーシス抵抗性及び多剤抵抗性の癌の形態の治療のために適する。
【0065】
本発明の医薬組成物で治療すべき増殖性疾病は、肺癌、MDR肺癌、頭部及び頸部癌、乳癌、前立腺癌、大腸癌、子宮頸部癌、子宮癌、喉頭癌、胃癌、肝臓癌、ユーイング肉腫、急性リンパ性白血病、急性及び慢性の骨髄性白血病、アポトーシス抵抗性白血病、膵癌、腎臓癌、膠腫、メラノーマ、慢性リンパ球白血病、又は/及びリンパ腫であってよい。
【0066】
本発明のまた更なる観点は、本発明のコンジュゲート又は/及び本発明の医薬組成物の有効量をこれを必要とする被験体に投与することを含む、活性酸素種、アンモニウムに応答性の、又は/及び体液中のアミノ酸レベル、特に血漿リシン又は/及びアルギニンレベルの調節に応答性の疾病の、予防、緩和又は/及び治療のための方法である。この方法により治療されるべき疾病は、特に、微生物感染、ウィルス感染又は/及び増殖性疾病、例えば上記で定義した疾病である。
【0067】
本発明のまた更なる観点は、本発明のコンジュゲート又は/及び本発明の医薬組成物を含有するキットである。
【0068】
本発明のまた更なる観点は、少なくとも1つのポリエチレングリコール残基をアルギニン/リシンオキシドレダクターゼに連結させることを含む、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼの酵素活性又は/及び循環時間を促進させるための方法を指す。この方法において、このアルギニン/リシンオキシドレダクターゼは、特に、上記で定義したとおりのアルギニン/リシンオキシドレダクターゼであってよい。このポリエチレングリコール残基は、上記で定義したとおりであってよい。
【0069】
また更なる本発明の観点は、少なくとも1つのポリエチレングリコール残基を、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼに連結することを含む、体液、例えば血液血漿中で不活性化からアルギニン/リシンオキシドレダクターゼを保護するための方法である。この方法において、このアルギニン/リシンオキシドレダクターゼは、特に、上記で定義したとおりのアルギニン/リシンオキシドレダクターゼであってよい。このポリエチレングリコール残基は、上記で定義したとおりであってよい。特に、体液中の不活性化は、抗体による不活性化であってよい。
【0070】
PEG基、特に本願明細書で定義したとおりのPEG基は、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼ、特に本願明細書で定義されるとおりのアルギニン/リシンオキシドレダクターゼの酵素活性又は/及び循環時間を促進するために使用されてよい。
【0071】
PEG基、特に本願明細書で定義されるとおりのPEG基は、体液、例えば血液血漿中での不活性化に対して、特に抗体による不活性化に対して、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼ、特に本願明細書で定義されるとおりのアルギニン/リシンオキシドレダクターゼの保護のために使用されてよい。
【0072】
本願明細書で定義されるとおりの本発明のコンジュゲート又は/及び本願明細書で定義されるとおりの本発明の医薬組成物は、液体中でのリシン又は/及びアルギニンの枯渇のために又は/及び過酸化水素、アンモニウム又は/及びリシン又は/及びアルギニンの代謝産物の液体中での産生のために使用されてよい。この液体はとくに哺乳類の体液であってよい。
【0073】
本発明は、更に、以下の実施例及び図において実証され、これらは説明の目的のためのものであり、かつ、本発明の範囲を限定する意図はない。
図の説明
図1:アルギニン/リシンオキシドレダクターゼ、APITの1次アミノ酸配列(配列番号8)及びそれをコードするヌクレオチド配列(配列番号7)
図2:アルギニン/リシンオキシドレダクターゼ、APITのPEG−5000でのペグ化
図3:抗APITポリクローナル抗体の存在下でのPEG−5000−APITの活性
図4:マウス中での血漿リシンレベルに対するAPIT(250U/kg)及びAPIT(1000U/kg)の単一経静脈投与の効果
図5:マウス中での血漿アルギニンレベルに対するAPIT(250U/kg)及びAPIT(1000U/kg)の単一経静脈投与の効果
図6:マウス中での血漿リシンレベルに対するAPIT(250U/kg)及びPEG−5000−APITの等価の用量250U/kgの単一経静脈投与の比較
図7:マウス中での血漿アルギニンレベルに対するAPIT(250U/kg)及びPEG−5000−APITの等価の用量250U/kgの単一経静脈投与の比較
図8:マウスに対するPEG−5000−APITの単一経静脈投与後の血漿リシンレベルの用量依存性の枯渇
図9:マウスに対するPEG−5000−APITの単一経静脈投与後の血漿アルギニンレベルの用量依存性の枯渇
図10:PEG−5000−APITの抗腫瘍効力
図11:Aplysia punctataのインクから単離されるアルギニン/リシンオキシドレダクターゼをコードするcDNAのヌクレオチド配列(配列番号1、3及び5)及び得られるアミノ酸配列(配列番号2、4及び6)。このジヌクレオチド結合フォールド(28アミノ酸残基)及びGCモチーフ(8アミノ酸残基)が四角により示される。
【0074】
実施例
実施例1
E.コリ中での組み換えアルギニン/リシンオキシドレダクターゼ、APITの大量製造方法
5000ml培地を有するB-Braun Biostat B10発酵槽を、適したプロモーター(例えばT7)の制御下の配列番号7を含有するAPITcDNAを含有するワーキングセルスターター培養液(working cell starter culture)で接種する。細胞を、光学密度6〜8(600nmで)にまで、37±0.5℃で成長させる。引き続き、この細胞を、IPTGの添加により誘導し、更に、更なる3時間37±0.5℃で発酵させる。この後で、細胞を、遠心分離を介して収穫し、かつ、≦−60℃で貯蔵する。この再懸濁された細胞を、フレンチプレスを用いて破砕し、かつ、この封入体を遠心分離により上清から分離する。この封入体を、≦−60℃で更なる処理のために貯蔵する。APITを、E.コリバイオマスの封入体から尿素で単離する。この可溶化されたタンパク質を再フォールディングさせ、濃縮し、TFF(Tangential Crossflow Filtration)により脱塩する。引き続き、APITを、アニオン交換クロマトグラフィ及びサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)により精製する。
【0075】
封入体からのAPITの単離:
このペレットを、2回連続して洗浄バッファー中で再懸濁し、ついでNaCl洗浄緩衝液及び尿素洗浄緩衝液中で再懸濁する。この懸濁液を、引き続きそれぞれの再懸濁工程後に遠心分離し、その一方でこの残りの上清を廃棄する。この後で、このペレットを、最後の遠心分離工程の後に再懸濁緩衝液中で再懸濁する。この上清を、0.2μmを介して濾過し、かつ、この(APIT含有)溶液を、<−15℃で凍結貯蔵する。
【0076】
リフォールディング:
この方法工程を、室温(22〜25℃)で実施する。E.コリから単離されたAPIT200ml(再懸濁緩衝液中)を、200mlのグアニジン−HClと混合する。この混合物を次いで、ポンプを用いて、L−アルギニン及びFADを含有する20Lのリフォールディング緩衝液中に注入する。この混合/希釈工程は、(最大の活性のある)マグネットスターターを用いて支持される。この希釈を、4つの注入部位を介して実現する。
【0077】
TFFによる精製:
RF混合物を、TFF(0.2μm)を用いて濾過し、フォールディングされていないタンパク質を分離する。この後で、この系を、1.6Lのトリス緩衝液で洗浄する。APITを、10kDaの膜を用いて濃縮する。この後で、RF緩衝液を、トリス緩衝液に対して透析する。この工程の間に、RF混合物及びトリス緩衝された混合物の伝導性を測定する。この10kDa膜を、緩衝液を変更するため、そして、この濃縮工程を継続するために維持する。濃縮されたAPIT溶液中での導電性の減少のレベルは、この手法の継続時間を示す。
【0078】
アニオン交換クロマトグラフィ:
APIT含有試料を更に、アニオン交換クロマトグラフィにより更に精製する(SOURCE 30Qカラム)。この生成物のカラムからの溶出を、塩勾配(0〜500mM NaCl)を用いて、pH8.0で実施する。この溶出物を分画で回収する。
【0079】
サイズ排除クロマトグラフィ:
APIT含有試料を、サイズ排除クロマトグラフィ(Sephadex G25)を用いて脱塩する。この精製はD−PBSを用いて生じる。この溶出された生成物を分画で回収する。
【0080】
充填及び貯蔵:
大量生産物の充填は滅菌したPE容器中で、容積1000μlであり、2−8℃で貯蔵する。組み換えAPITの1次アミノ酸配列は図1中に示される。
【0081】
実施例2
アルギニン/リシンオキシドレダクターゼ、APITの、PEG−5000でのペグ化
精製したアルギニン/リシンオキシドレダクターゼ、実施例1からのAPITを、HiPrep Desalting 26/10カラムで脱塩し、かつ、50mMの重炭酸ナトリウムを含有する、pH9.5のペグ化反応緩衝液中に導入する。このペグ化反応を、線状の多分散性ポリエチレングリコールスクシンイミジルエステル、MW5000Da(PEG-5000-SS)を、10〜50当量(eq)のPEG5000−SS対アルギニン/リシンオキシドレダクターゼ(APIT中の遊離のリシン残基に基づき)の異なる比で添加し、1時間800rpmで25℃で撹拌することにより実施する。このPEGコンジュゲートしたアルギニン/リシンオキシドレダクターゼ変形、PEG−5000−APIT(10eq)、PEG−5000−APIT(20eq)、PEG−5000−APIT(40eq)、PEG−5000−APIT(50eq)を個々に、ゲル濾過により、反応生成物及びコンジュゲートしていないPEG剤から精製し、かつ、この緩衝液は、リン酸ナトリウム緩衝化した食塩水(pH7)に対して交換された。最終産物を、SDSページ上で、酵素活性について分析した(図2)。50eqPEGの過剰量は、約10分子のPEGを1つの分子のAPITへのカップリングを生じた。
【0082】
図2は、PEG−5000−APITが、60kda〜>212kDaの範囲内の明らかな分子量を有したことを示す。全てのPEG−5000−APIT変形は、コンジュゲートしていないAPITに比較して酵素活性があった。PEG−5000−APIT(10eq)、PEG−5000−APIT(30eq)、PEG−5000−APIT(40eq)、PEG−5000−APIT(50eq)の相対的な酵素活性は、58%〜72%であった。
【0083】
実施例3
抗APITポリクローナル抗体の存在下での活性
APITに対する高力価(>1:200000)ポリクローナル抗体血清をウサギ中で製造した。PEG−5000−APITが、APITに対する抗体により不活性化されるかどうかを検査するために、免疫前のウサギ血清及び抗APITウサギ免疫血清を、1時間37℃でPEG−5000−APITでインキュべーションし、その後にリシン及びアルギニンに関してアミノ酸レベルを分析する。図3は、リシン及びアルギニンレベルが、ウサギの免疫前のウサギ血清及び抗APITウサギ免疫血清中で通常であったことを示す(リシン:238μM及び265μM、それぞれ;アルギニン207μM及び179μM、それぞれ)。PEG−5000−APITでのインキュベーションは、リシン及びアルギニンのレベル0μMを両者で生じ、免疫前のウサギ血清及び抗APITウサギ免疫血清は、PEG−5000−APITが、抗APITポリクローナル抗体の存在下で酵素活性があり、かつ、リシン及びアルギニンの液体中での完全な枯渇を可能にすることを実証する。
【0084】
実施例4
マウスに対する適用
マウスは、コンジュゲートしていないAPIT(250U/kg又は1000U/kg)又はPEG−5000−APIT(250U/kg、79U/kg、11U/kg、2U/kg、0.6U/kg)又はD−PBS(ビヒクル対照)それぞれの単一の静脈投与を受けた(尾の静脈)。連続的な血液試料を、眼窩静脈叢(orbital sinus)を介してエーテル麻酔下での、−1時間の予備投与、及び、示した時間点で後投与でのそれぞれの動物から回収し、かつ、抗凝集物(ヘパリン)を含有する管中に移した。それぞれの血液試料を、4℃で遠心分離して、血漿アミノ酸レベルの分析のために血漿を準備する。
【0085】
アミノ酸分析のためには、25μlのヘパリン血漿試料を、スルホサリチル酸を含有する4μlの沈殿緩衝液と混合した。次いで、内部標準ノルロイシン(Nle、c:1nmol/μl)を含有する6μlの試料希釈緩衝液を添加し、この試料を終容積60μlに、試料希釈緩衝液で充填した。この後に、試料を混合し(Vortex)かつ遠心分離した。この上清を、遠心分離により遠心分離フィルターを通過させた。この遠心分離物を試料バイアル中に移し、アミノ酸分析機A200を用いて、生理的プログラムを用いて分析した。
【0086】
図4及び図5は、単一静脈用量250U/kg及び1000U/kgでのAPITの、それぞれの、血漿アルギニン又は血漿リシンレベルに対する、マウスに対する作用を示す。APIT用量の250U/kgから1000U/kgへの4倍の増加は、3時間から6時間の投与後のリシン又はアルギニンの枯渇の延長化を生じる。
【0087】
図6及び7は、コンジュゲートしていないAPIT及びPEG−5000−APITの、250U/kgの単一静脈用量での作用の直接的な比較を示す。コンジュゲートしていないAPITが、リシン(図6)及びアルギニン(図7)の枯渇を、投与後3時間だけ媒介する一方で、PEG−5000−APITは、投与後少なくとも48時間両方のアミノ酸を枯渇させた。
【0088】
異なる用量のPEG−5000−APITのマウスに対する単一の静脈投与後のリシン及びアルギニン血漿レベルは、図8及び9中にそれぞれ示されている。
【0089】
図8は、11ユニット/kg又は25U/kg又は79U/kgのPEG−5000−APITの単一の静脈用量が、完全にマウス中での血漿リシンレベルを枯渇させることを示す。0.6U/kg又は2U/kgの用量はまだなお、6時間のマウス中でのリシンの完全な枯渇を媒介し、これは、1000U/kgのコンジュゲートしていないAPITの効果である。図9は、単一の静脈用量79ユニット/kgのPEG−5000−APITが完全にマウス中で血漿アルギンレベルを枯渇させることを示す。25U/kg又は11U/kgの用量は、24時間のマウス中でのアルギニンの完全な枯渇を媒介する。0.6U/kg又は2U/kgの用量はまだなお、6時間のマウス中でのアルギニンの完全な枯渇を媒介し、これは、コンジュゲートしていないAPITの1000U/kgの効果である。
【0090】
これらを一緒に考慮すると、図8及び図9中に示されるこの予期せぬ発見は、コンジュゲートしていないAPIT用量に比較して0.1%未満のPEG−5000−APITが、哺乳類中でのリシン及びアルギニンレベルに対する等価の効果を媒介することを示す。
【0091】
図5:PEG−5000−APITの抗腫瘍効力
PEG−5000−APITの抗腫瘍効力を、コンジュゲートしていないAPITに比較して、MTTアッセイによりA549肺癌細胞に対して評価した。このMTTアッセイは、代謝活性のある細胞による、黄色のテトラゾリウム塩のMTT(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド)の、紫色のホルマゾン結晶への分解を基礎とする。腫瘍細胞を96ウェル培養プレート上に播種し、APIT又はPEG−5000−APTIを更なる96時間添加する前に、この培養中で24時間維持した。処置後に、20μlのMTTラベル化剤を、それぞれのウェル及びプレートに添加し、プレートを37℃で4時間インキュベーシした。MTTインキュベーション後に、この培養をDMSOでもってインキュベーションし、かつ、この試料の吸光分析による吸光を、マイクロタイタープレートリーダーを用いて550nmの波長で検出した。この結果を、試験物質濃度に対してプロットし、用量応答曲線を得る。代謝活性の50%阻害を生じるこの試験物質濃度(IC50)を、グラフにより決定し、かつ、図10中で、コンジュゲートしていないAPIT又はPEG−5000−APITに対して示す。意外にも、PEG−5000−APITのIC50は、A549細胞に対してコンジュゲートしていないAPIT(717μU/mL)でのIC50よりも低く(633μU/mL)、コンジュゲートしていないAPITに比較してPEG−5000−APITのより高い抗腫瘍作用を示す。
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】図1は、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼ、APITの1次アミノ酸配列(配列番号8)及びそれをコードするヌクレオチド配列(配列番号7)を示す図である。
【図2】図2は、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼ、APITのPEG−5000でのペグ化を示す図である。
【図3】図3は、抗APITポリクローナル抗体の存在下でのPEG−5000−APITの活性を示す図である。
【図4】図4は、マウス中での血漿リシンレベルに対するAPIT(250U/kg)及びAPIT(1000U/kg)の単一経静脈投与の効果を示す図である。
【図5】図5は、マウス中での血漿アルギニンレベルに対するAPIT(250U/kg)及びAPIT(1000U/kg)の単一経静脈投与の効果を示す図である。
【図6】図6は、マウス中での血漿リシンレベルに対するAPIT(250U/kg)及びPEG−5000−APITの等価の用量250U/kgの単一経静脈投与の比較を示す図である。
【図7】図7は、マウス中での血漿アルギニンレベルに対するAPIT(250U/kg)及びPEG−5000−APITの等価の用量250U/kgの単一経静脈投与の比較を示す図である。
【図8】図8は、マウスに対するPEG−5000−APITの単一経静脈投与後の血漿リシンレベルの用量依存性の枯渇を示す図である。
【図9】図9は、マウスに対するPEG−5000−APITの単一経静脈投与後の血漿アルギニンレベルの用量依存性の枯渇を示す図である。
【図10】図10は、PEG−5000−APITの抗腫瘍効力を示す図である。
【図11A】図11Aは、Aplysia punctataのインクから単離されるアルギニン/リシンオキシドレダクターゼをコードするcDNAのヌクレオチド配列(配列番号1、3及び5)及び得られるアミノ酸配列(配列番号2、4及び6)を示す図である。
【図11B】図11Bは、Aplysia punctataのインクから単離されるアルギニン/リシンオキシドレダクターゼをコードするcDNAのヌクレオチド配列(配列番号1、3及び5)及び得られるアミノ酸配列(配列番号2、4及び6)を示す図である。
【図11C】図11Cは、Aplysia punctataのインクから単離されるアルギニン/リシンオキシドレダクターゼをコードするcDNAのヌクレオチド配列(配列番号1、3及び5)及び得られるアミノ酸配列(配列番号2、4及び6)を示す図である。
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
発明の背景
本発明は、ポリエチレングリコールで修飾されたアルギニン/リシンオキシドレダクターゼに関する。
【0002】
発明の背景
数十年間、医薬的に活性のある物質を、天然の生物から回収するため、そして、これらの効果を様々な疾病領域で試験するために多くの努力がなされてきた。
【0003】
アメフラシ(Aplysia punctata)は、捕食から自身を保護するための紫色のインクを産生する。このインクは、抗腫瘍活性を有することが示されている(Butzke et al., 2004)。その後、研究が、この因子を粗製インクから単離すべく実施され、APIT、Aplysia Punctataインク毒素(Aplysia Punctata Ink Toxin)の発見を生じた。最近では、この因子がクローニングされ、L−リシンとL−アルギニンの酸化による脱アミノ化を触媒作用し、これにより過酸化水素(H2O2)、アンモニウム(NH4+)及び相応するα−ケト酸を産生する(Butzke et al., 2005)、弱グリコシル化されたFAD結合L−アミノ酸オキシダーゼ()であると特性決定した。
【0004】
L−アミノ酸オキシダーゼ(LAAOs, EC 1.4.3.2)は、分泌物及び毒物中に見出されることができる。フラビン酵素のこのファミリーのメンバーは、L−アミノ酸の立体特異的な酸化的脱アミノ反応を触媒作用し、かつこれにより、H2O2、アンモニウム及び相応するα−ケト酸を産生する(Du et al., 2002)。この個々のLAAOsは、その基質特異性において異なる。蛇毒L−アミノ酸オキシダーゼ(sv−LAAOs)は、これは、粗製毒素30(質量)%までを構成し(Ponnudurai et al., 1994)、疎水性アミノ酸に対する明確な選択性を有する。AIP(アポトーシス誘導性タンパク質)と呼称される魚カプセル(fish capsule)LAAOは、マサバの幼生の線虫の感染により誘導され、これは、L−リシンに対して高度に特異的である(Jung et al., 2000)。アクアチン(Achacin)(アフリカヘビ、アフリカマイマイからの粘液LAAO)は、極めて広い範囲の基質を代謝し、これは、疎水性アミノ酸、L−リシン、L−アルギニン、L−システイン、L−アスパルギン及びL−チロシンを含む(Ehara et al., 2002)。
【0005】
L−アミノ酸オキシダーゼは、任意の経路での哺乳類に対する投与後のその半減期について検査されていない。薬物開発に関して、しかしながらこれは重要な問題であり、かつ、薬理作用を効率的に発揮するためには必要条件である。この観点におけるデータは、基質としてD−プロリンを使用するD−アミノ酸オキシダーゼに関してのみ入手可能である(Fang et al., 2002)。しかしながら、静脈内注射後に天然のD−アミノ酸オキシダーゼは、循環から迅速に清掃された。ペグ化された誘導体は、顕著に増加した循環半減期を示さず、1時間を優に下回った。このような短い半減期を有する製品は、治療、例えば癌治療のために実質的な治療的利益を有するとは期待されることができない。従って、この先行技術の教示によれば、ペグ化されたアミノ酸オキシダーゼが、治療的効力に欠けることが予期されるものである。
【0006】
本発明の課題は、改善された特性を有する治療製品を提供すべく、L−アミノ酸オキシドレダクターゼの治療的効力を増加させることであった。
【0007】
発明の要約
本発明は、初めて、少なくとも1つのポリエチレングリコール残基で修飾されたアルギニン/リシンオキシドレダクターゼ及びこの修飾されたアルギニン/リシンオキシドレダクターゼを含有する医薬組成物、この製造方法及び、血漿アミノ酸レベルの調節に対して応答性の、又は/及び活性酸素種又は/及びアンモニウムに対して応答性の疾病、例えば増殖性疾病、ウィルス感染又は/及び微生物感染を治療するための方法について言及する。
【0008】
有利な一実施態様において、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼ(Aplysia punctataインク毒素(APIT)と呼ばれる)は、重量平均分子量約1000〜約10000を有する少なくとも1つのポリエチレングリコールで修飾される。
【0009】
本発明の更なる実施態様は、ペグ化されたアルギニン/リシンオキシドレダクターゼの製造方法に関する。
【0010】
更なる実施態様は、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼのペグ化を含む、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼの酵素活性及び循環時間を促進する方法に関する。
【0011】
更なる実施態様は、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼのペグ化を含む、体液による不活性化に対してアルギニン/リシンオキシドレダクターゼを保護する方法に関する。
【0012】
更なる一観点において、本発明は、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼをこの液体に添加することを含む、液体中でのアミノ酸リシン又は/及びアルギニンを欠失させるための方法に関する。
【0013】
また更なる実施態様は、本発明のアルギニン/リシンオキシドレダクターゼを含有するキットに関する。
【0014】
発明の詳細な説明
本発明の課題は、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼ、特にL−アルギニン/リシンオキシダーゼをポリエチレングリコール(PEG)で共有的に修飾することにより達成される。本発明は、ポリエチレングリコールで修飾されたアルギニン/リシンオキシドレダクターゼが、マウスの血漿中で48時間より長く循環し、かつ、その酵素活性を維持するとの意外な発見に基づく。対照的に、修飾されないアルギニン/リシンオキシドレダクターゼが、約3時間のみ等価な活性に基づく用量で循環中で活性がある。
【0015】
更に、PEG修飾されたアルギニン/リシンオキシドレダクターゼの用量が、修飾されていないアルギニン/リシンオキシドレダクターゼに比較して顕著に減少されることができることが意外にも見出された。
【0016】
更に、PEG修飾されたアルギニン/リシンオキシドレダクターゼが、修飾されていないアルギニン/リシンオキシドレダクターゼに比較して肺癌細胞の抑制のためにより少ないIC50値を有することが意外にも見出された。
【0017】
更に、ポリエチレングリコールで修飾されたアルギニン/リシンオキシドレダクターゼは、アミノ酸レベル、リシン及びアルギニンを低下させ、これにより活性酸素種及びアンモニウムを産生することにおいて、特定の手段を提供する。これらの効果の全て又はこれらの効果の一部は、疾病の特定の種類を治療するために十分である。天然のアルギニン/リシンオキシドレダクターゼに比較すると、ペグ化されたアルギニン/リシンオキシドレダクターゼは、大抵の酵素活性を維持し、リシン及びアルギニンを哺乳類中で48時間以上枯渇させることができ、かつ、アミノ酸レベル及び/又は活性酸素種又はアンモニウムの変更に対して応答性の疾病の治療においてより効果がある。更に、このペグ化されたアルギニン/リシンオキシドレダクターゼは、修飾されていないアルギニン/リシンオキシドレダクターゼに指向した特異的な抗体の存在下ですら活性がある。
【0018】
第1の観点において、本発明は、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼ及び少なくとも1つのポリエチレングリコール残基を含有するコンジュゲートを提供する。
【0019】
ここで使用される「コンジュゲート」は、ポリペプチド部分を含有する化合物を指し、有利にはこれは、補酵素、例えばFADを含み、これに対して少なくとも1つのポリエチレングリコール残基が、共有結合により連結されている。
【0020】
本発明のコンジュゲートは、任意の公知のアルギニン/リシンオキシドレダクターゼ、特にL−アルギニン/リシンオキシドレダクターゼを含んでよく、これは、L−アルギニン又は/及びL−リシンのそれぞれのアルファイミノ酸への変換を触媒作用する。この工程において、酵素はH2O2を、化学量論量で産生する。第2の工程において、アルファイミノ酸は、α−ケト酸に、アンモニウムの放出下で変換される。第2の工程は、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼ活性に依存性でない。アルギニン/リシンオキシドレダクターゼにより触媒されるこの反応の詳細は、WO 2004/065415中に説明され、これは、参照することにより本願に組み込まれる。
【0021】
本発明の別の有利な実施態様において、コンジュゲートは、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼを含有し、これはL−アルギニン/L−リシンオキシドレダクターゼである。
【0022】
更なる有利な一実施態様において、このコンジュゲートは、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼを含有し、これは、アルギニン又は/及びリシンに対して特異的である。特に、リシン又は/及びアルギニン、特にL−リシン又は/及びL−アルギニンを処理するための酵素活性は、他のアミノ酸、特に生物中に天然に存在するアルファL−アミノ酸の処理のための酵素活性よりも少なくとも約3倍又は約4倍、より大きい。
【0023】
有利なアルギニン/リシンオキシドレダクターゼは、アメフラシ種から得られてよく、特にAplysia punctataから得られる。例えば、Aplysia Punctataインク毒素(APIT)は、これは本発明のアルギニン/リシンオキシドレダクターゼであるが、アメフラシAplysia Punctataのインク中に見出されることができる。この酵素及びその製造は、WO 2004/065415中に説明され、これは参照により本願に含められる。
【0024】
更に、適したL−リシンα−オキシダーゼは、Lukasheva EV, Berezov TT中に説明されている。L-Lysine alpha-oxidase: physiochemical and biological properties. Biochemistry (Mosc.) 2002 Oct;67(10):1152-8。
【0025】
アルギニン/リシンオキシダーゼは、天然源から単離された天然の分子又は組み換え体、例えば天然に生じない供給源から得られる組み換え分子であってよい。有利な一実施態様において、このコンジュゲートは、組み換えアルギニン/リシンオキシドレダクターゼを含有してもよい。
【0026】
特に有利な一実施態様において、本発明のコンジュゲートは、
(a)配列番号2、4、6又は/及び8の配列
(b)少なくとも70%配列(a)と同一である配列、又は/及び
(c)(a)又は/及び(b)の断片
を含有するアルギニン/リシンオキシドレダクターゼを含有する。
【0027】
配列番号2、4、6及び8は、幾つかのアミノ酸位置において異なる。配列番号8は、Aplysia punctataから単離された有利なアルギニン/リシンオキシドレダクターゼを説明する(本発明の実施例参照のこと)。配列番号2、4及び6は、Aplysia punctataから単離された更なるアルギニン/リシンオキシドレダクターゼを説明する。配列番号2、4及び6は、WO 2004/065415中に説明され、これは、参照により本願中に含まれる。
【0028】
(a)の有利な配列は、配列番号8である。
【0029】
(b)の配列は、少なくとも70%、有利には少なくとも80%、より有利には少なくとも90%、更により有利には少なくとも95%、最も有利には少なくとも99%、(a)の配列に対して同一である配列である。この同一性は、最大のオーバーラップの領域中で決定される。当業者は、最大のオーバーラップの領域を、一般的に知られているアルゴリズム、例えばFASTA、BLAST又は/及びアミノ酸配列に関するその誘導体により決定することができる。
【0030】
(c)の断片は、(a)又は(b)のアルギニン/リシンオキシドレダクターゼの任意の酵素活性のある断片であり、かつ、少なくとも約30アミノ酸残基、有利には少なくとも約50アミノ酸残基、より有利には少なくとも約100アミノ酸残基、最も有利には少なくとも約200アミノ酸残基の長さを有してよい。
【0031】
(c)の断片は、配列番号2、4、6又は/及び8の完全長よりも短い長さを有してよく、有利には最大で約500アミノ酸残基、より有利には最大で約400アミノ酸残基、最も有利には最大で約300アミノ酸残基である。
【0032】
(c)の断片は、配列番号2、4、6又は/及び8に由来する配列から、N−末端のアミノ酸を除去することにより選択されてよい。このN末端は、オキシドレダクターゼ機能に必要とされないシグナル配列を示して良い。有利には、約5までの、約10までの、約20までの、又は約50までのN−末端アミノ酸が除去される。より有利には、配列番号2において、18個のN−末端アミノ酸が除去され、又は/及び配列番号4において、17個のN−末端アミノ酸が除去される。
【0033】
本発明のコンジュゲートは有利には、少なくとも6時間の間循環中で活性があり、即ち、このコンジュゲートは有利には少なくとも6時間の循環時間を有する。本発明の文脈において、「循環時間」とは、本発明のコンジュゲートが、その活性、特に酵素活性を、被験体中の循環の間に維持する時間を指す。本発明において、「循環時間」との用語は、比較目的のための他の化合物にも適用される。例えば、「循環時間」は、修飾されていないAPITに適用される。循環時間は、循環半減期により表されても良い。
【0034】
本発明のコンジュゲートは、より有利には、少なくとも12時間、更に有利には少なくとも24時間、最も有利には少なくとも48時間循環中で活性がある。
【0035】
本発明のコンジュゲートの用量が、相応する修飾されていないアルギニン/リシンオキシドレダクターゼと比較して顕著に減少されることができることが意外にも見出された。例えば、0.6ユニット/kg PEG−5000−APITの量は、リシン及びアルギニンレベルをマウス中で血漿中6時間の間欠失させることができる。修飾されていないAPITは、同じ作用を達成するために1000ユニット/kg必要である。従って、PEG−5000−APTIの用量は、ペグ化されていないAPITと比較して約1667倍減少されることができる。言い換えると、PEG−5000−APITの活性は、修飾されていないAPITの活性よりも約1667倍より大きい。
【0036】
従って、有利な実施態様において、本発明のコンジュゲートの活性は、ポリエチレングリコール残基を有しないアルギニン/リシンオキシドレダクターゼの活性と比較して、少なくとも30、より有利には少なくとも100、更に有利には少なくとも300、いっそう有利には少なくとも1000、最も有利には1500倍より大きい。この活性は特に酵素活性である。より有利には活性は、被験体、例えば哺乳類、例えば齧歯類又はヒトへの投与後の血漿中の酵素活性である。酵素活性は、予め決められた期間、液体、例えば体液、血漿中でアルギニン又は/及びリシンを欠失させるために必要とさせる用量の決定により決定されてよい。この期間は、約3〜約48時間、約6〜約24時間、又は約12〜約18時間、又は有利には約3時間、約6時間、約12時間、約24時間、又は約48時間の範囲内から選択されてよい。アルギニン又は/及びリシンは、予め決められたレベル、例えば0μMに枯渇されてよい。この予め決められたレベルは、0μM〜約10μM、0μM〜20μM、又は0μM〜約100μMの範囲内から選択されてよい。
【0037】
この活性の改善の倍数は、例えば、ペグ化されていないアルギニン/リシンオキシドレダクターゼの用量を、本発明のコンジュゲートの用量で割ることにより計算されることができ、この用量は、予め決められた期間のアルギン/リシンの枯渇のために必要である。
【0038】
更なる有利な一実施態様において、本発明のコンジュゲートは、重量平均分子量約1000ダルトン〜約10000ダルトン、有利には約3000ダルトン〜約8000ダルトン、より有利には約4000ダルトン〜約6000ダルトン、更に有利には約4500〜約5500ダルトン、最も有利には約5000ダルトンを有する少なくとも1つのポリエチレングリコール残基を含有する。
【0039】
本発明で使用されるポリエチレングリコール残基は、ポリペプチドを連結させるために適した、修飾されていない、及び、修飾されたポリエチレングリコール残基を含む。修飾されたポリエチレングリコール残基は有利には、末端で修飾されたポリエチレングリコール残基を含み、その際この末端のOH基は修飾されていて、例えばアルキル化、アシル化及び/又は酸化により修飾されている。より有利には、ポリエチレングリコール残基は、末端のOH基、又はO−C1〜3アルキル基及びアシル基又はその組み合わせから選択される修飾された末端基を有する。
【0040】
更なる有利な一実施態様において、このコンジュゲートは、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼに連結基を介して共有結合している少なくとも1つのポリエチレングリコール残基を含有する。この連結基は、スクシンイミド基、有利にはスクシンイミジルスクシナート基であってよい。
【0041】
別の有利な一実施態様において、本発明のコンジュゲートは、1〜約30ポリエチレングリコール残基、有利には1〜約20ポリエチレングリコール残基、より有利には1〜約10ポリエチレングリコール残基を含有する。
【0042】
本発明のコンジュゲート中では、少なくとも1つのポリエチレングリコール基は、反応性官能基、例えばカルボキシラート基、アミノ基、チオール基及び/又はヒドロキシ基を有する側鎖を有する任意のアミノ酸に、連結されていてよく、例えばアミノ酸は、アスパルギン酸、グルタミン酸又は/及びリシンから選択される。 有利な一実施態様は、少なくとも1つのポリエチレングリコール残基が、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼにリシン残基を介して共有結合しているコンジュゲートに関する。配列番号8は、23個のリシン残基を含有するので、配列番号8のポリペププチドを含有する本発明のコンジュゲートは、リシン残基を介して連結した、23個までのポリエチレングリコール残基、有利には約10個までのポリエチレングリコール残基を含有してよい。
【0043】
本発明のコンジュゲートにおいては、少なくとも1つのポリエチレン基が、リンカー基、例えばスクシンイミドリンカー基又はアミン基への連結のための他の任意の適したリンカー基を介してリシンに連結していることがより有利である。本発明のコンジュゲートにおいては、少なくとも1つのポリエチレン基が、約4500〜約5500ダルトンの重量平均分子量を有し、かつ、リンカー基、例えばスクシンイミドリンカー基を介してリシンに連結していることがより有利である。
【0044】
最も有利には、配列番号8を有するL−アルギニン/L−リシンオキシドレダクターゼ及び重量平均分子量約4500〜5500ダルトンを有する少なくとも1つのポリエチレングリコール基を含有するコンジュゲートである。
【0045】
更なる別の観点は、
(a)アルギニン/リシンオキシドレダクターゼを組み換えにより発現する、又は/及び、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼを天然源から単離する工程、
(b)少なくとも1つのポリエチレングリコール残基を、(a)のアルギニン/リシンオキシドレダクターゼに連結する工程を含む、本発明のコンジュゲートを製造する方法である。
【0046】
工程(a)で使用されてよいアルギニン/リシンオキシドレダクターゼの有利な天然供給源は、上に説明されるとおりである。
【0047】
工程(a)は有利には、
(i)配列番号1、3、5又は/及び7の配列、
(ii)配列(i)に相補的な配列、
(iii)配列(i)又は(ii)の遺伝暗号の縮重の範囲内の配列、
(iv)配列(i)、(ii)又は/及び(iii)に対して少なくとも70%同一である配列、
(v)配列(i)、(ii)、(iii)又は/及び(iv)の任意の配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列、又は/及び
(vi)配列(i)、(ii)、(iii)、(iv)又は/及び(v)の任意の配列の断片
を含む核酸の組み換え発現を含む。
【0048】
配列番号1、3、5及び7は、それぞれ、アミノ酸配列 配列番号2、4、6及び8を含有するポリペプチドをコードする核酸配列である。配列番号1、3、5及び7は、幾つかのヌクレオチド位置において異なる。配列番号7は、Aplysia punctataから単離されたアルギニン/リシンオキシドレダクターゼをコードするヌクレオチド配列を説明する(本発明の実施例参照のこと)。配列番号1、3及び5は、Aplysia punctataから単離された更なるアルギニン/リシンオキシドレダクターゼをコードするヌクレオチド配列を説明する。配列番号1、3及び5は、WO 2004/065415中に説明され、これは、参照により本願中に含まれる。
【0049】
(i)の有利な配列は、配列番号7である。
【0050】
(iv)のヌクレオチド配列は、少なくとも70%、有利には少なくとも80%、より有利には少なくとも90%、更により有利には少なくとも95%、最も有利には少なくとも99%、(i)、(ii)又は/及び(iii)の配列に対して同一である配列である。ヌクレオチド配列の同一性は、最大のオーバーラップの領域内で決定される。当業者は、一般的に知られているアルゴリズム、例えばFASTA又はBLASTにより最大のオーバーラップの領域を容易に決定することができる。
【0051】
当業者は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件を知っている(参照、例えば、Sambrook J. et al., 1989, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Plainview, N.Y)。工程(v)におけるストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションは有利には、1時間の1×SSC及び0.1%SDSを用いた55℃、有利には62℃、より有利には68℃での洗浄後、特に1時間の0.2×SSC及び0.1%SDSを用いた55℃、有利には62℃、より有利には68℃での洗浄後にハイブリダイゼーションシグナルが検出されることを意味する。
【0052】
(vi)の断片は、少なくとも約90ヌクレオチド残基、有利には少なくとも約150ヌクレオチド残基、より有利には少なくとも約300ヌクレオチド残基、最も有利には少なくとも約600ヌクレオチド残基の長さを有してよい。
【0053】
(vi)の断片は、配列番号1、3、5又は/及び7の完全長よりもより短い長さを有してよく、有利には最大で約1500ヌクレオチド残基、より有利には最大で約1200ヌクレオチド残基、最も有利には最大で約900ヌクレオチド残基である。
【0054】
(vi)の断片は、N−末端のアミノ酸をコードする5′ヌクレオチドを除去することにより配列番号1、3、5及び7に由来する配列から選択されてよく、このアミノ酸は、オキシドレダクターゼ機能のためには必要でないシグナル配列を提示してよい。有利には、約15までの、約30までの、約60までの、又は約150までの5′ヌクレオチドが除去される。より有利には、配列番号1において、54の5′ヌクレオチドが除去され、又は/及び配列番号3、5において1の5′ヌクレオチドが除去される。
【0055】
当業者は、タンパク質の組み換え発現、単離、リフォールディング及び補欠分子族、例えばFADの導入のための方法を知っている。本発明の実施例において、配列番号7の組み換え発現は、配列番号8を含有するポリペプチドを得るために説明されている。組み換え発現のための有利な宿主細胞は、真核性の又は原核性の宿主細胞であり、例えば酵母細胞又は細菌細胞、特にグラム陰性細菌細胞、例えばE.コリである。
【0056】
本発明のコンジュゲートの調製のための方法は、更に、補酵素、例えばFADを、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼ中に導入することを含んでよい。
【0057】
本発明のコンジュゲートの調製のための方法の工程(b)は、少なくとも1つのポリエチレングリコール残基を、工程(a)で得られるアルギニン/リシンオキシドレダクターゼにカップリングすることを指す。工程(b)でのペグ化は、当業者に公知の標準的な手法により実施されてよい。
【0058】
工程(b)において、重量平均分子量が約1000ダルトン〜約10000ダルトン、有利には約3000ダルトン〜約8000ダルトン、より有利には約4000ダルトン〜約6000ダルトン、更により有利には約4500ダルトン〜約5500ダルトン、最も有利には約5000ダルトンを有するポリエチレングリコールが使用されてよい。
【0059】
このポリエチレングリコール残基は、連結基(スクシンアミド基、有利にはスクシンイミジルスクシナートであってよい)を介して共有結合されてよい。他の連結基も使用されてよい。当業者は、適した連結基を知っている。
【0060】
少なくとも1つのポリエチレングリコール残基が、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼにリシン残基を介して共有結合していることが有利である。リシンへのカップリングは、スクシンイミド連結基を適用することにより実施されることができる。カップリングは、官能基、例えばカルボキシラーゼ基、アミノ基、チオール基又は/及びヒドロキシ基を有する他のアミノ酸側鎖、例えばアスパルギン酸又はグルタミン酸に対して実施されてもよい。
【0061】
1〜約30ポリエチレングリコール残基、有利には1〜約20ポリエチレングリコール残基、より有利には1〜約10ポリエチレングリコール残基を含有する本発明のコンジュゲートを供給するためには、工程(b)において過剰量のポリエチレングリコールを使用してよい。ポリエチレングリコールは、カップリングに使用できる遊離の残基の数、例えば遊離のリシン残基に関して約10〜約500当量、有利には約10〜約50当量の量で、提供されてよい。特に、約10、約20、約30、約40、約50、約200、又は約500当量のポリエチレングリコールが使用されてよい。50当量を超えると、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼ分子につき約10PEG分子のカップリングを生じてよい。
【0062】
また更なる本発明の観点は、本発明のコンジュゲートを、場合により、医薬的に許容可能な担体、助剤、希釈剤又は/及び添加剤と一緒に含有する医薬組成物である。
【0063】
本発明の医薬組成物は、活性酸素種又は/及びアンモニウムに対して応答性の、又は/及び血漿アミノ酸レベル、特に血漿リシン又は/及びアルギニンレベルの調節に対して応答性の疾病の予防、緩和又は/及び治療のために適して良い。本発明の医薬組成物は、また、微生物感染、ウィルス感染、例えばHIV、B型又は/及びC型肝炎ウィルス感染、及び増殖性疾病、例えば癌から選択される疾病の予防、緩和、又は/及び治療に適していても良い。
【0064】
本発明の医薬組成物は、一般的な充実性腫瘍及び白血病、例えばアポトーシス抵抗性及び多剤抵抗性の癌の形態の治療のために適する。
【0065】
本発明の医薬組成物で治療すべき増殖性疾病は、肺癌、MDR肺癌、頭部及び頸部癌、乳癌、前立腺癌、大腸癌、子宮頸部癌、子宮癌、喉頭癌、胃癌、肝臓癌、ユーイング肉腫、急性リンパ性白血病、急性及び慢性の骨髄性白血病、アポトーシス抵抗性白血病、膵癌、腎臓癌、膠腫、メラノーマ、慢性リンパ球白血病、又は/及びリンパ腫であってよい。
【0066】
本発明のまた更なる観点は、本発明のコンジュゲート又は/及び本発明の医薬組成物の有効量をこれを必要とする被験体に投与することを含む、活性酸素種、アンモニウムに応答性の、又は/及び体液中のアミノ酸レベル、特に血漿リシン又は/及びアルギニンレベルの調節に応答性の疾病の、予防、緩和又は/及び治療のための方法である。この方法により治療されるべき疾病は、特に、微生物感染、ウィルス感染又は/及び増殖性疾病、例えば上記で定義した疾病である。
【0067】
本発明のまた更なる観点は、本発明のコンジュゲート又は/及び本発明の医薬組成物を含有するキットである。
【0068】
本発明のまた更なる観点は、少なくとも1つのポリエチレングリコール残基をアルギニン/リシンオキシドレダクターゼに連結させることを含む、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼの酵素活性又は/及び循環時間を促進させるための方法を指す。この方法において、このアルギニン/リシンオキシドレダクターゼは、特に、上記で定義したとおりのアルギニン/リシンオキシドレダクターゼであってよい。このポリエチレングリコール残基は、上記で定義したとおりであってよい。
【0069】
また更なる本発明の観点は、少なくとも1つのポリエチレングリコール残基を、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼに連結することを含む、体液、例えば血液血漿中で不活性化からアルギニン/リシンオキシドレダクターゼを保護するための方法である。この方法において、このアルギニン/リシンオキシドレダクターゼは、特に、上記で定義したとおりのアルギニン/リシンオキシドレダクターゼであってよい。このポリエチレングリコール残基は、上記で定義したとおりであってよい。特に、体液中の不活性化は、抗体による不活性化であってよい。
【0070】
PEG基、特に本願明細書で定義したとおりのPEG基は、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼ、特に本願明細書で定義されるとおりのアルギニン/リシンオキシドレダクターゼの酵素活性又は/及び循環時間を促進するために使用されてよい。
【0071】
PEG基、特に本願明細書で定義されるとおりのPEG基は、体液、例えば血液血漿中での不活性化に対して、特に抗体による不活性化に対して、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼ、特に本願明細書で定義されるとおりのアルギニン/リシンオキシドレダクターゼの保護のために使用されてよい。
【0072】
本願明細書で定義されるとおりの本発明のコンジュゲート又は/及び本願明細書で定義されるとおりの本発明の医薬組成物は、液体中でのリシン又は/及びアルギニンの枯渇のために又は/及び過酸化水素、アンモニウム又は/及びリシン又は/及びアルギニンの代謝産物の液体中での産生のために使用されてよい。この液体はとくに哺乳類の体液であってよい。
【0073】
本発明は、更に、以下の実施例及び図において実証され、これらは説明の目的のためのものであり、かつ、本発明の範囲を限定する意図はない。
図の説明
図1:アルギニン/リシンオキシドレダクターゼ、APITの1次アミノ酸配列(配列番号8)及びそれをコードするヌクレオチド配列(配列番号7)
図2:アルギニン/リシンオキシドレダクターゼ、APITのPEG−5000でのペグ化
図3:抗APITポリクローナル抗体の存在下でのPEG−5000−APITの活性
図4:マウス中での血漿リシンレベルに対するAPIT(250U/kg)及びAPIT(1000U/kg)の単一経静脈投与の効果
図5:マウス中での血漿アルギニンレベルに対するAPIT(250U/kg)及びAPIT(1000U/kg)の単一経静脈投与の効果
図6:マウス中での血漿リシンレベルに対するAPIT(250U/kg)及びPEG−5000−APITの等価の用量250U/kgの単一経静脈投与の比較
図7:マウス中での血漿アルギニンレベルに対するAPIT(250U/kg)及びPEG−5000−APITの等価の用量250U/kgの単一経静脈投与の比較
図8:マウスに対するPEG−5000−APITの単一経静脈投与後の血漿リシンレベルの用量依存性の枯渇
図9:マウスに対するPEG−5000−APITの単一経静脈投与後の血漿アルギニンレベルの用量依存性の枯渇
図10:PEG−5000−APITの抗腫瘍効力
図11:Aplysia punctataのインクから単離されるアルギニン/リシンオキシドレダクターゼをコードするcDNAのヌクレオチド配列(配列番号1、3及び5)及び得られるアミノ酸配列(配列番号2、4及び6)。このジヌクレオチド結合フォールド(28アミノ酸残基)及びGCモチーフ(8アミノ酸残基)が四角により示される。
【0074】
実施例
実施例1
E.コリ中での組み換えアルギニン/リシンオキシドレダクターゼ、APITの大量製造方法
5000ml培地を有するB-Braun Biostat B10発酵槽を、適したプロモーター(例えばT7)の制御下の配列番号7を含有するAPITcDNAを含有するワーキングセルスターター培養液(working cell starter culture)で接種する。細胞を、光学密度6〜8(600nmで)にまで、37±0.5℃で成長させる。引き続き、この細胞を、IPTGの添加により誘導し、更に、更なる3時間37±0.5℃で発酵させる。この後で、細胞を、遠心分離を介して収穫し、かつ、≦−60℃で貯蔵する。この再懸濁された細胞を、フレンチプレスを用いて破砕し、かつ、この封入体を遠心分離により上清から分離する。この封入体を、≦−60℃で更なる処理のために貯蔵する。APITを、E.コリバイオマスの封入体から尿素で単離する。この可溶化されたタンパク質を再フォールディングさせ、濃縮し、TFF(Tangential Crossflow Filtration)により脱塩する。引き続き、APITを、アニオン交換クロマトグラフィ及びサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)により精製する。
【0075】
封入体からのAPITの単離:
このペレットを、2回連続して洗浄バッファー中で再懸濁し、ついでNaCl洗浄緩衝液及び尿素洗浄緩衝液中で再懸濁する。この懸濁液を、引き続きそれぞれの再懸濁工程後に遠心分離し、その一方でこの残りの上清を廃棄する。この後で、このペレットを、最後の遠心分離工程の後に再懸濁緩衝液中で再懸濁する。この上清を、0.2μmを介して濾過し、かつ、この(APIT含有)溶液を、<−15℃で凍結貯蔵する。
【0076】
リフォールディング:
この方法工程を、室温(22〜25℃)で実施する。E.コリから単離されたAPIT200ml(再懸濁緩衝液中)を、200mlのグアニジン−HClと混合する。この混合物を次いで、ポンプを用いて、L−アルギニン及びFADを含有する20Lのリフォールディング緩衝液中に注入する。この混合/希釈工程は、(最大の活性のある)マグネットスターターを用いて支持される。この希釈を、4つの注入部位を介して実現する。
【0077】
TFFによる精製:
RF混合物を、TFF(0.2μm)を用いて濾過し、フォールディングされていないタンパク質を分離する。この後で、この系を、1.6Lのトリス緩衝液で洗浄する。APITを、10kDaの膜を用いて濃縮する。この後で、RF緩衝液を、トリス緩衝液に対して透析する。この工程の間に、RF混合物及びトリス緩衝された混合物の伝導性を測定する。この10kDa膜を、緩衝液を変更するため、そして、この濃縮工程を継続するために維持する。濃縮されたAPIT溶液中での導電性の減少のレベルは、この手法の継続時間を示す。
【0078】
アニオン交換クロマトグラフィ:
APIT含有試料を更に、アニオン交換クロマトグラフィにより更に精製する(SOURCE 30Qカラム)。この生成物のカラムからの溶出を、塩勾配(0〜500mM NaCl)を用いて、pH8.0で実施する。この溶出物を分画で回収する。
【0079】
サイズ排除クロマトグラフィ:
APIT含有試料を、サイズ排除クロマトグラフィ(Sephadex G25)を用いて脱塩する。この精製はD−PBSを用いて生じる。この溶出された生成物を分画で回収する。
【0080】
充填及び貯蔵:
大量生産物の充填は滅菌したPE容器中で、容積1000μlであり、2−8℃で貯蔵する。組み換えAPITの1次アミノ酸配列は図1中に示される。
【0081】
実施例2
アルギニン/リシンオキシドレダクターゼ、APITの、PEG−5000でのペグ化
精製したアルギニン/リシンオキシドレダクターゼ、実施例1からのAPITを、HiPrep Desalting 26/10カラムで脱塩し、かつ、50mMの重炭酸ナトリウムを含有する、pH9.5のペグ化反応緩衝液中に導入する。このペグ化反応を、線状の多分散性ポリエチレングリコールスクシンイミジルエステル、MW5000Da(PEG-5000-SS)を、10〜50当量(eq)のPEG5000−SS対アルギニン/リシンオキシドレダクターゼ(APIT中の遊離のリシン残基に基づき)の異なる比で添加し、1時間800rpmで25℃で撹拌することにより実施する。このPEGコンジュゲートしたアルギニン/リシンオキシドレダクターゼ変形、PEG−5000−APIT(10eq)、PEG−5000−APIT(20eq)、PEG−5000−APIT(40eq)、PEG−5000−APIT(50eq)を個々に、ゲル濾過により、反応生成物及びコンジュゲートしていないPEG剤から精製し、かつ、この緩衝液は、リン酸ナトリウム緩衝化した食塩水(pH7)に対して交換された。最終産物を、SDSページ上で、酵素活性について分析した(図2)。50eqPEGの過剰量は、約10分子のPEGを1つの分子のAPITへのカップリングを生じた。
【0082】
図2は、PEG−5000−APITが、60kda〜>212kDaの範囲内の明らかな分子量を有したことを示す。全てのPEG−5000−APIT変形は、コンジュゲートしていないAPITに比較して酵素活性があった。PEG−5000−APIT(10eq)、PEG−5000−APIT(30eq)、PEG−5000−APIT(40eq)、PEG−5000−APIT(50eq)の相対的な酵素活性は、58%〜72%であった。
【0083】
実施例3
抗APITポリクローナル抗体の存在下での活性
APITに対する高力価(>1:200000)ポリクローナル抗体血清をウサギ中で製造した。PEG−5000−APITが、APITに対する抗体により不活性化されるかどうかを検査するために、免疫前のウサギ血清及び抗APITウサギ免疫血清を、1時間37℃でPEG−5000−APITでインキュべーションし、その後にリシン及びアルギニンに関してアミノ酸レベルを分析する。図3は、リシン及びアルギニンレベルが、ウサギの免疫前のウサギ血清及び抗APITウサギ免疫血清中で通常であったことを示す(リシン:238μM及び265μM、それぞれ;アルギニン207μM及び179μM、それぞれ)。PEG−5000−APITでのインキュベーションは、リシン及びアルギニンのレベル0μMを両者で生じ、免疫前のウサギ血清及び抗APITウサギ免疫血清は、PEG−5000−APITが、抗APITポリクローナル抗体の存在下で酵素活性があり、かつ、リシン及びアルギニンの液体中での完全な枯渇を可能にすることを実証する。
【0084】
実施例4
マウスに対する適用
マウスは、コンジュゲートしていないAPIT(250U/kg又は1000U/kg)又はPEG−5000−APIT(250U/kg、79U/kg、11U/kg、2U/kg、0.6U/kg)又はD−PBS(ビヒクル対照)それぞれの単一の静脈投与を受けた(尾の静脈)。連続的な血液試料を、眼窩静脈叢(orbital sinus)を介してエーテル麻酔下での、−1時間の予備投与、及び、示した時間点で後投与でのそれぞれの動物から回収し、かつ、抗凝集物(ヘパリン)を含有する管中に移した。それぞれの血液試料を、4℃で遠心分離して、血漿アミノ酸レベルの分析のために血漿を準備する。
【0085】
アミノ酸分析のためには、25μlのヘパリン血漿試料を、スルホサリチル酸を含有する4μlの沈殿緩衝液と混合した。次いで、内部標準ノルロイシン(Nle、c:1nmol/μl)を含有する6μlの試料希釈緩衝液を添加し、この試料を終容積60μlに、試料希釈緩衝液で充填した。この後に、試料を混合し(Vortex)かつ遠心分離した。この上清を、遠心分離により遠心分離フィルターを通過させた。この遠心分離物を試料バイアル中に移し、アミノ酸分析機A200を用いて、生理的プログラムを用いて分析した。
【0086】
図4及び図5は、単一静脈用量250U/kg及び1000U/kgでのAPITの、それぞれの、血漿アルギニン又は血漿リシンレベルに対する、マウスに対する作用を示す。APIT用量の250U/kgから1000U/kgへの4倍の増加は、3時間から6時間の投与後のリシン又はアルギニンの枯渇の延長化を生じる。
【0087】
図6及び7は、コンジュゲートしていないAPIT及びPEG−5000−APITの、250U/kgの単一静脈用量での作用の直接的な比較を示す。コンジュゲートしていないAPITが、リシン(図6)及びアルギニン(図7)の枯渇を、投与後3時間だけ媒介する一方で、PEG−5000−APITは、投与後少なくとも48時間両方のアミノ酸を枯渇させた。
【0088】
異なる用量のPEG−5000−APITのマウスに対する単一の静脈投与後のリシン及びアルギニン血漿レベルは、図8及び9中にそれぞれ示されている。
【0089】
図8は、11ユニット/kg又は25U/kg又は79U/kgのPEG−5000−APITの単一の静脈用量が、完全にマウス中での血漿リシンレベルを枯渇させることを示す。0.6U/kg又は2U/kgの用量はまだなお、6時間のマウス中でのリシンの完全な枯渇を媒介し、これは、1000U/kgのコンジュゲートしていないAPITの効果である。図9は、単一の静脈用量79ユニット/kgのPEG−5000−APITが完全にマウス中で血漿アルギンレベルを枯渇させることを示す。25U/kg又は11U/kgの用量は、24時間のマウス中でのアルギニンの完全な枯渇を媒介する。0.6U/kg又は2U/kgの用量はまだなお、6時間のマウス中でのアルギニンの完全な枯渇を媒介し、これは、コンジュゲートしていないAPITの1000U/kgの効果である。
【0090】
これらを一緒に考慮すると、図8及び図9中に示されるこの予期せぬ発見は、コンジュゲートしていないAPIT用量に比較して0.1%未満のPEG−5000−APITが、哺乳類中でのリシン及びアルギニンレベルに対する等価の効果を媒介することを示す。
【0091】
図5:PEG−5000−APITの抗腫瘍効力
PEG−5000−APITの抗腫瘍効力を、コンジュゲートしていないAPITに比較して、MTTアッセイによりA549肺癌細胞に対して評価した。このMTTアッセイは、代謝活性のある細胞による、黄色のテトラゾリウム塩のMTT(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド)の、紫色のホルマゾン結晶への分解を基礎とする。腫瘍細胞を96ウェル培養プレート上に播種し、APIT又はPEG−5000−APTIを更なる96時間添加する前に、この培養中で24時間維持した。処置後に、20μlのMTTラベル化剤を、それぞれのウェル及びプレートに添加し、プレートを37℃で4時間インキュベーシした。MTTインキュベーション後に、この培養をDMSOでもってインキュベーションし、かつ、この試料の吸光分析による吸光を、マイクロタイタープレートリーダーを用いて550nmの波長で検出した。この結果を、試験物質濃度に対してプロットし、用量応答曲線を得る。代謝活性の50%阻害を生じるこの試験物質濃度(IC50)を、グラフにより決定し、かつ、図10中で、コンジュゲートしていないAPIT又はPEG−5000−APITに対して示す。意外にも、PEG−5000−APITのIC50は、A549細胞に対してコンジュゲートしていないAPIT(717μU/mL)でのIC50よりも低く(633μU/mL)、コンジュゲートしていないAPITに比較してPEG−5000−APITのより高い抗腫瘍作用を示す。
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】図1は、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼ、APITの1次アミノ酸配列(配列番号8)及びそれをコードするヌクレオチド配列(配列番号7)を示す図である。
【図2】図2は、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼ、APITのPEG−5000でのペグ化を示す図である。
【図3】図3は、抗APITポリクローナル抗体の存在下でのPEG−5000−APITの活性を示す図である。
【図4】図4は、マウス中での血漿リシンレベルに対するAPIT(250U/kg)及びAPIT(1000U/kg)の単一経静脈投与の効果を示す図である。
【図5】図5は、マウス中での血漿アルギニンレベルに対するAPIT(250U/kg)及びAPIT(1000U/kg)の単一経静脈投与の効果を示す図である。
【図6】図6は、マウス中での血漿リシンレベルに対するAPIT(250U/kg)及びPEG−5000−APITの等価の用量250U/kgの単一経静脈投与の比較を示す図である。
【図7】図7は、マウス中での血漿アルギニンレベルに対するAPIT(250U/kg)及びPEG−5000−APITの等価の用量250U/kgの単一経静脈投与の比較を示す図である。
【図8】図8は、マウスに対するPEG−5000−APITの単一経静脈投与後の血漿リシンレベルの用量依存性の枯渇を示す図である。
【図9】図9は、マウスに対するPEG−5000−APITの単一経静脈投与後の血漿アルギニンレベルの用量依存性の枯渇を示す図である。
【図10】図10は、PEG−5000−APITの抗腫瘍効力を示す図である。
【図11A】図11Aは、Aplysia punctataのインクから単離されるアルギニン/リシンオキシドレダクターゼをコードするcDNAのヌクレオチド配列(配列番号1、3及び5)及び得られるアミノ酸配列(配列番号2、4及び6)を示す図である。
【図11B】図11Bは、Aplysia punctataのインクから単離されるアルギニン/リシンオキシドレダクターゼをコードするcDNAのヌクレオチド配列(配列番号1、3及び5)及び得られるアミノ酸配列(配列番号2、4及び6)を示す図である。
【図11C】図11Cは、Aplysia punctataのインクから単離されるアルギニン/リシンオキシドレダクターゼをコードするcDNAのヌクレオチド配列(配列番号1、3及び5)及び得られるアミノ酸配列(配列番号2、4及び6)を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルギニン/リシンオキシドレダクターゼ及び少なくとも1つのポリエチレングリコール残基を含有するコンジュゲート。
【請求項2】
少なくとも1つのポリエチレングリコール残基が、約1000ダルトン〜約10000ダルトンの重量平均分子量を有する請求項1記載のコンジュゲート。
【請求項3】
少なくとも1つのポリエチレングリコール残基が、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼに連結基を介して共有結合している、請求項1又は2記載のコンジュゲート。
【請求項4】
連結基がスクシンイミド基である、請求項3記載のコンジュゲート。
【請求項5】
少なくとも1つのポリエチレングリコール残基が、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼにリシン残基を介して連結している、請求項1から4までのいずれか1項記載のコンジュゲート。
【請求項6】
1〜約30、有利には1〜約10つのポリエチレングリコール残基を含有する、請求項1から5までのいずれか1項記載のコンジュゲート。
【請求項7】
アルギニン/リシンオキシドレダクターゼがL−アルギニン/L−リシンオキシドレダクターゼである、請求項1から6までのいずれか1項記載のコンジュゲート。
【請求項8】
アルギニン/リシンオキシドレダクターゼが天然源から単離されている、請求項1から7までのいずれか1項記載のコンジュゲート。
【請求項9】
アルギニン/リシンオキシドレダクターゼが、組み換えアルギニン/リシンオキシドレダクターゼである、請求項1から8までのいずれか1項記載のコンジュゲート。
【請求項10】
アルギニン/リシンオキシドレダクターゼが、
(a)配列番号2、4、6又は/及び8の配列、
(b)少なくとも70%配列(a)と同一である配列、又は/及び
(c)(a)又は/及び(b)の断片
を含有する、請求項1から9までのいずれか1項記載のコンジュゲート。
【請求項11】
断片が、少なくとも約30アミノ酸残基の長さを有する、請求項10記載のコンジュゲート。
【請求項12】
少なくとも6時間の間循環中で活性がある、請求項1から11までのいずれか1項記載のコンジュゲート。
【請求項13】
ポリエチレングリコール残基を有しないアルギニン/リシンオキシドレダクターゼの活性よりも少なくとも30倍より高い活性を有する、請求項1から12までのいずれか1項記載のコンジュゲート。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項記載のコンジュゲートを、場合により、医薬的に許容可能な担体、助剤、希釈剤又は/及び添加剤と一緒に含有する、医薬組成物。
【請求項15】
活性酸素種又は/及びアンモニウムに応答性の、又は/及び血漿アミノ酸レベル、特に血漿リシン又は/及びアルギニンレベルの調節に応答性の疾病の予防、緩和又は/及び治療のための、請求項14記載の医薬組成物。
【請求項16】
微生物感染、ウィルス感染及び増殖性疾病、例えば癌から選択される疾病の予防、緩和又は/及び治療のための、請求項14又は15記載の医薬組成物。
【請求項17】
請求項1から13までのいずれか1項記載のコンジュゲート又は/及び請求項14から16までのいずれか1項記載の医薬組成物の有効量をこれを必要とする被験体に投与することを含む、活性酸素種、アンモニウムに対して応答性の、又は/及び体液中のアミノ酸レベル、特に血漿リシン又は/及びアルギニンレベルの調節に応答性の疾病の、予防、緩和又は/及び治療のための方法。
【請求項18】
(a)アルギニン/リシンオキシドレダクターゼを組み換えにより発現する、又は/及び、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼを天然源から単離する工程、
(b)少なくとも1つのポリエチレングリコール残基を、(a)のアルギニン/リシンオキシドレダクターゼに連結する工程を含む、請求項1から13までのいずれか1項記載のコンジュゲートを製造する方法。
【請求項19】
工程(a)が、
(i)配列番号1、3、5又は/及び7の配列、
(ii)配列(i)に相補的な配列、
(iii)配列(i)又は(ii)の遺伝暗号の縮重の範囲内の配列、
(iv)配列(i)、(ii)又は/及び(iii)に対して少なくとも70%同一である配列、
(v)配列(i)、(ii)、(iii)又は/及び(iv)のいずれかの配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列、又は/及び
(vi)配列(i)、(ii)、(iii)、(iv)又は/及び(v)のいずれかの配列の断片
を含む核酸の組み換え発現を含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
断片が、少なくとも約90ヌクレオチド残基の長さを有する、請求項19記載の方法。
【請求項21】
請求項1から13までのいずれか1項記載のコンジュゲート又は/及び請求項14から16までのいずれか1項記載の医薬組成物を含有する、キット。
【請求項22】
少なくとも1つのポリエチレングリコール残基をアルギニン/リシンオキシドレダクターゼに連結させることを含む、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼの酵素活性又は/及び循環時間を促進させるための方法。
【請求項23】
少なくとも1つのポリエチレングリコール残基をアルギニン/リシンオキシドレダクターゼに連結させることを含む、体液中での不活性化に対してアルギニン/リシンオキシドレダクターゼを保護するための方法。
【請求項24】
ポリエチレングリコール残基が、請求項3から7までのいずれか1項記載のとおりである、請求項22又は23記載の方法。
【請求項25】
請求項1から13までのいずれか1項記載のコンジュゲート又は/及び請求項14から16までのいずれか1項記載の医薬組成物の、リシン又は/及びアルギニンの液体中での枯渇のための又は/及び過酸化水素、アンモニウム又は/及びリシン又は/及びアルギニンの代謝産物の液体中での産生のための使用。
【請求項26】
液体が哺乳類の体液である、請求項25記載の使用。
【請求項27】
アルギニン/リシンオキシドレダクターゼの活性又は/及び循環時間の増加のための、少なくとも1つのポリエチレングリコール基の使用。
【請求項28】
体液中での不活性化に対して、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼを保護するための、少なくとも1つのポリエチレングリコール基の使用。
【請求項1】
アルギニン/リシンオキシドレダクターゼ及び少なくとも1つのポリエチレングリコール残基を含有するコンジュゲート。
【請求項2】
少なくとも1つのポリエチレングリコール残基が、約1000ダルトン〜約10000ダルトンの重量平均分子量を有する請求項1記載のコンジュゲート。
【請求項3】
少なくとも1つのポリエチレングリコール残基が、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼに連結基を介して共有結合している、請求項1又は2記載のコンジュゲート。
【請求項4】
連結基がスクシンイミド基である、請求項3記載のコンジュゲート。
【請求項5】
少なくとも1つのポリエチレングリコール残基が、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼにリシン残基を介して連結している、請求項1から4までのいずれか1項記載のコンジュゲート。
【請求項6】
1〜約30、有利には1〜約10つのポリエチレングリコール残基を含有する、請求項1から5までのいずれか1項記載のコンジュゲート。
【請求項7】
アルギニン/リシンオキシドレダクターゼがL−アルギニン/L−リシンオキシドレダクターゼである、請求項1から6までのいずれか1項記載のコンジュゲート。
【請求項8】
アルギニン/リシンオキシドレダクターゼが天然源から単離されている、請求項1から7までのいずれか1項記載のコンジュゲート。
【請求項9】
アルギニン/リシンオキシドレダクターゼが、組み換えアルギニン/リシンオキシドレダクターゼである、請求項1から8までのいずれか1項記載のコンジュゲート。
【請求項10】
アルギニン/リシンオキシドレダクターゼが、
(a)配列番号2、4、6又は/及び8の配列、
(b)少なくとも70%配列(a)と同一である配列、又は/及び
(c)(a)又は/及び(b)の断片
を含有する、請求項1から9までのいずれか1項記載のコンジュゲート。
【請求項11】
断片が、少なくとも約30アミノ酸残基の長さを有する、請求項10記載のコンジュゲート。
【請求項12】
少なくとも6時間の間循環中で活性がある、請求項1から11までのいずれか1項記載のコンジュゲート。
【請求項13】
ポリエチレングリコール残基を有しないアルギニン/リシンオキシドレダクターゼの活性よりも少なくとも30倍より高い活性を有する、請求項1から12までのいずれか1項記載のコンジュゲート。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項記載のコンジュゲートを、場合により、医薬的に許容可能な担体、助剤、希釈剤又は/及び添加剤と一緒に含有する、医薬組成物。
【請求項15】
活性酸素種又は/及びアンモニウムに応答性の、又は/及び血漿アミノ酸レベル、特に血漿リシン又は/及びアルギニンレベルの調節に応答性の疾病の予防、緩和又は/及び治療のための、請求項14記載の医薬組成物。
【請求項16】
微生物感染、ウィルス感染及び増殖性疾病、例えば癌から選択される疾病の予防、緩和又は/及び治療のための、請求項14又は15記載の医薬組成物。
【請求項17】
請求項1から13までのいずれか1項記載のコンジュゲート又は/及び請求項14から16までのいずれか1項記載の医薬組成物の有効量をこれを必要とする被験体に投与することを含む、活性酸素種、アンモニウムに対して応答性の、又は/及び体液中のアミノ酸レベル、特に血漿リシン又は/及びアルギニンレベルの調節に応答性の疾病の、予防、緩和又は/及び治療のための方法。
【請求項18】
(a)アルギニン/リシンオキシドレダクターゼを組み換えにより発現する、又は/及び、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼを天然源から単離する工程、
(b)少なくとも1つのポリエチレングリコール残基を、(a)のアルギニン/リシンオキシドレダクターゼに連結する工程を含む、請求項1から13までのいずれか1項記載のコンジュゲートを製造する方法。
【請求項19】
工程(a)が、
(i)配列番号1、3、5又は/及び7の配列、
(ii)配列(i)に相補的な配列、
(iii)配列(i)又は(ii)の遺伝暗号の縮重の範囲内の配列、
(iv)配列(i)、(ii)又は/及び(iii)に対して少なくとも70%同一である配列、
(v)配列(i)、(ii)、(iii)又は/及び(iv)のいずれかの配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列、又は/及び
(vi)配列(i)、(ii)、(iii)、(iv)又は/及び(v)のいずれかの配列の断片
を含む核酸の組み換え発現を含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
断片が、少なくとも約90ヌクレオチド残基の長さを有する、請求項19記載の方法。
【請求項21】
請求項1から13までのいずれか1項記載のコンジュゲート又は/及び請求項14から16までのいずれか1項記載の医薬組成物を含有する、キット。
【請求項22】
少なくとも1つのポリエチレングリコール残基をアルギニン/リシンオキシドレダクターゼに連結させることを含む、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼの酵素活性又は/及び循環時間を促進させるための方法。
【請求項23】
少なくとも1つのポリエチレングリコール残基をアルギニン/リシンオキシドレダクターゼに連結させることを含む、体液中での不活性化に対してアルギニン/リシンオキシドレダクターゼを保護するための方法。
【請求項24】
ポリエチレングリコール残基が、請求項3から7までのいずれか1項記載のとおりである、請求項22又は23記載の方法。
【請求項25】
請求項1から13までのいずれか1項記載のコンジュゲート又は/及び請求項14から16までのいずれか1項記載の医薬組成物の、リシン又は/及びアルギニンの液体中での枯渇のための又は/及び過酸化水素、アンモニウム又は/及びリシン又は/及びアルギニンの代謝産物の液体中での産生のための使用。
【請求項26】
液体が哺乳類の体液である、請求項25記載の使用。
【請求項27】
アルギニン/リシンオキシドレダクターゼの活性又は/及び循環時間の増加のための、少なくとも1つのポリエチレングリコール基の使用。
【請求項28】
体液中での不活性化に対して、アルギニン/リシンオキシドレダクターゼを保護するための、少なくとも1つのポリエチレングリコール基の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【公表番号】特表2009−538150(P2009−538150A)
【公表日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512464(P2009−512464)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【国際出願番号】PCT/EP2007/004587
【国際公開番号】WO2007/137755
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(508349388)アーペーイーテー ラボラトリーズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1)
【氏名又は名称原語表記】APIT Laboratories GmbH
【住所又は居所原語表記】Hermannswerder 16, D−14473 Potsdam, Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【国際出願番号】PCT/EP2007/004587
【国際公開番号】WO2007/137755
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(508349388)アーペーイーテー ラボラトリーズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1)
【氏名又は名称原語表記】APIT Laboratories GmbH
【住所又は居所原語表記】Hermannswerder 16, D−14473 Potsdam, Germany
【Fターム(参考)】
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