説明

PGHS−2のトランスアクチベーター活性のインヒビター

プロスタグランジン−エンドペルオキシドHシンターゼ(PGHS−2)は、アラキドン酸をプロスタグランジンHに変換する。PGHS−2は、殆どの正常ヒト組織内では検出されないが、癌細胞内には豊富に存在する誘導可能な遺伝子産物である。本発明は、その確立した酵素的役割とは異なる、PGHS−2の未だに開示されていない転写機能を利用して、癌の処置に有用な潜在的治療薬を同定する。本方法は、試験化合物の存在下及び非存在下で、PGHS−2プロモーターのC/EBP、CRE及びNF−κB領域に結合するPGHS−2タンパク質を評価して、PGHS−2トランス活性化活性のインヒビターを同定する、DNA結合アッセイからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、PGHS−2のトランス活性化機能のインヒビターに関し、より詳細には、PGHS−2トランス活性化のインヒビターをスクリーニングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
プロスタグランジン−エンドペルオキシドHシンターゼ(PGHS)は、プロスタグランジンの産生における律速酵素である(Smith,et al.,1996)。PGHSは、アラキドン酸のプロスタグランジンG(PGG)への環状酸化と、PGGのプロスタグランジンH(PGH)への還元を触媒する。次に、PGHは、種々のシンターゼによって、プロスタグランジンPGD、PGE、PGF2α及びPGI、並びにトロンボキサン(TXA)をはじめとする種々の機能的プロスタノイドに代謝される(Smith and DeWitt,1996)。PGHS−1及びPGHS−2は、それぞれヒト第9染色体及び第1染色体にマッピングされている単一のコピー遺伝子である(Xu,et al.,1993;Funk,et al.,1991)。PGHS−1は、殆どの組織内で構成的に発現されている(Smith,et al.,2000)。対照的に、PGHS−2は、非悪性の細胞内で、サイトカイン及び炎症刺激により高度に誘導可能な即時型初期応答遺伝子である(Cao,et al.,2003;Cao and Smith,1999;Cao,et al.,1998)。PGHS−2は、DNA配列、そのmRNAの安定性、及び種々の刺激に対する応答の点で、PGHS−1とは区別される。
【0003】
しかしながら、多数の癌細胞株及び癌組織内で、PGHS−2は構成的に発現されている(Davies,et al.,2002)。腫瘍細胞生物学におけるPGHS−2の重要性は、腫瘍成長を支持するPGE及びPGIの、血管内皮増殖因子(VEGF)に依存した血管新生活性によるところもあった(Gately and Li,2004)。小胞体及び核エンベロープ内の通常のプロスタグランジン合成工場から隔離された、PGHS−2のカベオリン−1との共局在化及び相互作用は、腫瘍形成及び炎症に寄与する場合がある(Liou,et al.,2001)。PGEは、アポトーシス及び免疫監視を阻害することもでき(Hoshino,et al.,2003;Ishaque,et al.,2003)、又PGEは、その発現がヒト胃癌細胞増殖及び発癌に関連する場合がある特定のDNA修復タンパク質(Ku70及びKu80)を誘導する(Lim,et al.,2002)。
【0004】
PGHS−2の発現は、比較的低分化且つ高悪性度の乳癌に関連することから、有用な予後の組織指標であり、且つ薬物療法のための標的となる場合がある(Wulfing,et al.,2004)。PGHS−2の過剰発現は、40%を超えるヒト浸潤性乳癌及び60%を超える非浸潤性乳管癌内で生じることが報告されている(Wang and Dubois,2004)。PGHS−2を実験的に過剰発現させると多剤耐性遺伝子1の発現が増大することから、PGHS−2が腫瘍内の多剤耐性に寄与することが示唆されている(Patel,et al.,2002)。更に、Subbaramaiah,et al. (2002)には、PGHS−2の高発現が、Rasシグナルの増強を介した乳癌内におけるHER−2/neuの過剰発現に関連していることが示されている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の要旨
本発明者等は、腫瘍細胞の細胞核内にPGHS−2タンパク質は存在するものの、PGHS−1は存在しないことを報告し、PGHS−2は、それ自体の遺伝子のプロモーター領域に結合して、トランス活性化因子として機能し得ることを本明細書に示す。又、本発明者等は、この直接的な正のフィードバック機序が、癌細胞内におけるPGHS−2の構成的な発現に寄与することを提案する。従って、本発明は、PGHS−1のインヒビターに関連した有害な副作用を有さない、癌の処置において治療薬として使用し得る、PGHS−2のトランス活性化因子機能の選択的インヒビターをスクリーニングする方法を提供する。
【0006】
従って、一態様において、本発明は、そのトランス活性化活性の阻害による、構成的なPGHS−2発現のインヒビターを同定するための方法であって、PGHS−2又はMDM2プロモーターの少なくとも1つの領域に対応する核酸プローブと、PGHS−2タンパク質とを試験化合物の存在下又は非存在下で接触させる工程、PGHS−2タンパク質と該プロモーターの結合レベルを測定する工程を包含する方法に関する。前記試験化合物の非存在下で結合したタンパク質の量に比べて、前記試験化合物の存在下で結合したタンパク質の量の減少が、該化合物がPGHS−2トランス活性化活性の潜在的インヒビターであることを示す。
【0007】
一実施形態において、結合レベルは、DNA−タンパク質結合アッセイ、例えばクロマチン免疫沈降アッセイ又は電気泳動移動度シフト解析(EMSA)により測定される。
【0008】
一実施形態において、核酸プローブは、PGHS−2プロモーターの一領域:即ち、c/EBP部位、CRE部位、又はNF−κB部位に対応しており、このプローブは標識されている。
【0009】
一実施形態において、核酸プローブはビオチン化され、ストレプトアビジン被覆ビーズと共にインキュベートされることによって、該プローブに結合した核抽出物タンパク質を単離した後、ビーズから溶離することができる。
【0010】
関連する態様において、本発明は、PGHS−2インヒビターをスクリーニングする方法であって、PGHS−2を構成的に生成する細胞(該細胞は、PGHS−2プロモーターの一領域に対応する第一の核酸、及びレポーター分子をコードする第二の核酸でトランスフェクトされている)を得る工程;該細胞を試験化合物に曝露する工程;該細胞から核抽出物を単離する工程;前記抽出物中のレポーター分子のレベルを、曝露していない細胞に由来する前記抽出物中のレポーター分子のレベルと比較する工程を包含し、レポーター分子のレベルの低下が、PGHS−2のトランス活性化の阻害を示す、方法に関する。レポーター分子は、例えばルシフェラーゼ又は緑色蛍光タンパク質である場合がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
発明の詳細な説明
癌細胞株内におけるPGHS−1及びPGHS−2の細胞内位置
PGHSアイソフォームの細胞内局在化に関して行われた以前の試験では、PGHS−1及びPGHS−2が何れも線維芽細胞及びマクロファージの小胞体及び核エンベロープ内に見出され、これらの2つのアイソザイムの細胞内分布に実質的な違いがないことが示されている(Morita,et al.,1995;Smith,et al.,1981;Rollins,et al.,1980;Kujubu,et al.,1993)。目下の試験において、本発明者等は、ヒト前立腺(DUI45)及び頭頸部(UM−SCC−22B)癌細胞内におけるPGHS−1及びPGHS−2の分布を比較した。図1は、PGHS−1又はPGHS−2に特異的な一次抗体を使用して間接免疫蛍光にて染色した癌細胞の共焦点顕微鏡写真である。PGHS−1の免疫反応性は、細胞質の周辺部に均一に分布していた。PGHS−1は、多くの細胞の小胞体に存在することが知られてことから、本発明者等が認めたPGHS−1の蛍光染色は、小胞体内における酵素の局在化を大きく反映するものであると考えられる。
【0012】
PGHS−1とは対照的に、癌細胞内のPGHS−2は、核エンベロープに集中しており、細胞核内に豊富に存在していた(図1)。癌細胞株の結果を内皮細胞(ECY304)の結果と比べたところ、ECY304細胞の細胞質内には免疫反応性が僅かしか見られず、これらの細胞の核エンベロープにも核内にもPGHS−2染色は存在しなかった。図1Bに示す通り、PGHS−2の蛍光染色(緑色)は、核染色(赤色)と重なっている。一方、UM−SCC−22B細胞内におけるPGHS−1の染色は、核染色と重ならなかった。
【0013】
癌細胞株内における高レベルのPGHS−2タンパク質及びmRNAと、NF−κB、MAPK(ERK1I2)及びp38活性の上昇との関係
DU145及びUM−SCC−22B細胞の分画により得た核タンパク質のウェスタンブロットでは、これらの細胞の核画分中でPGHS−2タンパク質が回収されたが、それはDU145細胞よりもUM−SCC−22B細胞の方が顕著であることが示されている(図2A)。PGHS−2のmRNAのレベルも又、DU145及びUM−SCC−22B癌細胞内で容易に検出できることが見出されている(図2B)。未処理のECY304細胞内ではPGHS−2タンパク質及びmRNAのレベルを検出できなかった。これらの所見は、細胞内のPGHS−2レベルに影響を与え、酵素の核移行を起こす可能性があるサイトカイン又は増殖因子に露出されていない細胞内で見出されたものであることに留意する必要がある(Liou,et al.,2001)。PGHS−1タンパク質は、頭頸部癌細胞(UM−SCC−22B)、並びにDU145前立腺癌及びECY304内皮細胞内に豊富に存在した(図2A)。
【0014】
短時間の試験において、酢酸ミリスチン酸ホルボール(PMA)はタンパク質キナーゼC(PKC)を活性化し、PGHS−2遺伝子転写を迅速に誘導する(Pang,et al.,2002)。本明細書で考察する3つの細胞株では、細胞をPMAで処理することで、核内におけるPGHS−2 mRNA及びPGHS−2タンパク質の存在量が増大し(図2A及び図2B)、中でもUM−SCC−22B細胞内で最も顕著な変化が見られた。PMAの処理により、細胞質内のPGHS−2も上昇した(図2A)。予想通り、癌細胞株をPMA(100nM)で12時間インキュベートしても、PGHS−1の存在量に影響は見られなかった。
【0015】
他で明らかになった証拠により、正常な細胞内では、サイトカイン及び増殖因子に応答したPGHS−2の上方調節に、MAPK、p38及びNF−κBが重要な役割を果たすことが示されている(Goppelt−Struebe,et al.,2002;Wang and Tai,1998)。従って、本発明者等は、MAPK、p38及びNF−κBが、癌細胞内でPGHS−2の構成的な発現に関与するか否かを試験した。先ず、コンフルエントなUM−SCC−22B細胞を、MAPKキナーゼ(MEK)のMAPKカスケードインヒビターであるPD98059(10μM)により12時間かけて処理すると、PGHS−2タンパク質が極めて低いレベルに低下した。p38キナーゼ経路インヒビターであるSB23058、及びNF−κBのインヒビターであるピロリジンジチオカルバメート(PDTC)は、UM−SCC−22B細胞内におけるPGHS−2の発現を僅かに阻害した(図3A)。PKCは、本明細書で考察する腫瘍細胞株内におけるPGHS−2の構成的な発現に不可欠であり、PMAがPGHS−2のレベルを上昇させることがこの図で示されているが、これらの結果は、UM SCC−22B細胞内におけるPGHS−2の構成的な発現に関与する細胞内シグナリング経路が幾つか存在することを示している。
【0016】
本発明者等は、ドミナントネガティブなERK1及び/又はERK2発現プラスミドでUM−SCC−22B細胞をトランスフェクトした。個別では、dnERK1もdnERK2も、PGHS−2の発現に殆ど影響を与えなかった(図3B)。予想通り、dnERK1及びdnERK2は一緒になると、両アイソフォームのキナーゼ活性を阻害して、PGHS−2の発現を低下させたものの、突然変異ERKのリン酸化が認められた(図3B)。この後者の応答は、既にRobbins,et al. (1992)に記載されている。これらの結果は、前立腺癌細胞内におけるPGHS−2の構成的な発現が、MAPK及びNF−κBシグナル伝達経路に一部依存することを示唆している。
【0017】
癌細胞及びECV304細胞によるPGEの生成
前立腺及び頭頸部癌細胞は、非癌性の内皮細胞(ECV304、10.1±1.2ng/mL)と同様のPGEレベル(それぞれ、12.7±1.3ng/mL及び14.3±1.5ng/mL[平均±SD])を生成した(図4)。PMA(100nM)は、幾つかの細胞株内におけるPGEの産生を向上させることが他の文献に示されている(Habib,et al.,1995;Molina−Holgado,et al.,2000)。しかしながら、目下の試験において、PMAは、DU145又はUM−SCC−22B細胞内におけるPGEの産生を有意に上昇させることはなかった(図4)。PD98059は、癌細胞内におけるPGEの産生を基底レベルにまで低下させ、PGHS−1及びPGHS−2の非特異的インヒビターであるインドメタシンと、PGHS−2の選択的インヒビターであるNS398も同様であった。PMAにより誘導されたPGHS−2の発現の上昇により、DU145及びUM−SCC−22B細胞内におけるPGEの産生レベルが有意に上昇することはなかったが、PGEの産生は、PGHS−2酵素活性の従来のインヒビターにより下方調節を受けた。
【0018】
癌細胞株内における核PGHS−2と他の転写活性化因子との関連性
PGHS−2が転写活性を有する核タンパク質と関連することを調べるために、静止状態のUM−SCC−22B細胞で抗体二重染色実験を行い、c−Fos及びPGHS−2が細胞核内で共局在化していることを実証した(図5)。又、共免疫沈降アッセイでは、核PGHS−2がMDM2及び核共活性化因子タンパク質p300と関連することも示された。MDM2は、p53の代謝回転の決定因子であり、p53に結合すると、癌遺伝子抑制因子タンパク質の核輸送を促進する(Momand,et al.,1992)。UM−SCC−22B細胞をPMA(100nM)で処理すると、核内におけるPGHS−2とc−Fosとの関連性が顕著に増大したが(図5)、MDM2又はp300との関連性は殆ど増大しなかった。
【0019】
PGHS−2プロモーターに結合する、並びに細胞分割を調節する他の遺伝子に結合するPGHS−2
UM−SCC−22B細胞内におけるPGHS−2プロモーターの活性を評価するため、ヒトPGHS−2プロモーターの遠位(−831/+123)塩基対をルシフェラーゼレポーター(pGHS−2LUC)に融合した(Cao,et al.,1999)。このPGHS−2レポーター又はSV40 LUC(pGL2プロモーター)を、ほぼコンフルエントなUM−SCC−22B腫瘍細胞内にトランスフェクトした。図6に示す通り、PGHS−2プロモーターの活性は、静止状態のUM−SCC−22B細胞内で容易に検出され、SV40プロモーター及びルシフェラーゼレポーターのトランスフェクトにより得られた結果と類似していた。この結果は、UM−SCC−22B細胞内におけるPGHS−2の構成的な発現と一致する。PMA(100nM)はPGHS−2プロモーターの活性をごく僅かしか増大させなかったのに対し、PD98059、PDTC又はSB203580で細胞を処理した場合には、PGHS−2プロモーターの活性が阻害された。これらの結果は、MAPKシグナル伝達経路及びNF−κBがPGHS−2の構成的な発現に関与することを示唆している。
【0020】
モノクローナル抗PGHS−2を使用した前立腺癌細胞のChIP実験では、本発明者等は、各試料について、免疫沈降可能なPGHS−2プロモーター配列の量をインプットDNAの量と比較した。PGHS−2 ORFプライマーは、陰性対照の役割を果たした。本発明者等は、PGHS−2がPGHS−2プロモーターに構成的に結合し、細胞をPMAで処理することで、PGHS−2とプロモーターとの結合が僅かしか上昇しないことを見出した(図7A)。PGHS−2は又、MDM2のプロモーター領域にも結合する。PGHS−2と両プロモーターとの結合は、PDTC及びPD98059によって阻害されており、NF−κB及びMAPK活性化に対するこれらの作用の依存性が示唆されている。
【0021】
次に、本発明者等は、PGHS−2プロモーターのどのドメインが、PGHS−2タンパク質と結合可能であるかを明確にした。本発明者等は、DNA−タンパク質結合アッセイを行い、ビオチン化された短いPGHS−2プロモーターオリゴヌクレオチドプローブを、予め核抽出物タンパク質と相互作用させたストレプトアビジン被覆ビーズと共にインキュベートした。図7Bに示す通り、PGHS−2は、PGHS−2プロモーター上のc/EBP部位、CRE部位、及び2つのNF−ΚB部位に結合した。PGHS−2プロモーター領域内における2つのNF−κB部位間では、DNA配列に対する弱い結合しか見られなかった。
【0022】
本発明者等は又、PGHS−2とそれ自体のプロモーターとの結合が、プロモーターの転写活性に対して影響を与えるかどうかも判定した。PGHS−2プロモーター駆動ルシフェラーゼプラスミドを、PGHS−2発現プラスミドと共に、293T細胞へ共トランスフェクトさせた。これらの細胞は、PGHS−2の内因性含有量が少ないことから使用したが、というのも該遺伝子が構成的に発現される細胞株内ではPGHS−2の転写活性の変化が評価できないためである。PGHS−2発現プラスミドのトランスフェクトから24時間後に、293T細胞内でPGHS−2タンパク質の量が増大すると、ルシフェラーゼ活性も増大した(図8)。従って、PGHS−2とそのプロモーターとの結合は、PGHS−2遺伝子の転写に正の影響を与えたのに対し、空の発現ベクターのトランスフェクトは、PGHS−2プロモーターの活性に影響を与えなかった。
【0023】
考察
最近、癌細胞内のPGHS酵素に多くの注目が集まっている(Zimmermann,et al.,1999;Yoshimura,et al.,2000;Yu,et al.,2002;Xiong,et al.,2003)。これらの酵素は、細胞質、特に核周囲領域及び小胞体内に位置し、幾つかの機序によって腫瘍成長を支持し得るプロスタノイドの産生に関与している(Gately,2000;Hendrickx,et al.,2003;Pai,et al.,2002)。構成的に発現されるPGHS−1は、この点において特に関連性があると仮定されているが、というのもPGHS−2が、非癌細胞の関与する炎症応答に重要な役割を有する誘導酵素であると考えられるためである(Cao,et al.,2003;Cao and Smith,1999;Han,et al.,2002)。しかしながら、幾つかの研究室で得られた証拠では、PGHS−2が構成的に発現される場合があることが示されている(Howe,et al.,2001;Hanahan and Weinberg,2000)。事実、PGHS−2は、ヒト前立腺及び頭頸部癌細胞株内で構成的に発現されるが、非癌性の不死化内皮細胞株(ECV304)内では発現されないことが目下の試験で見出されている。このような発見において見込まれる意義は、PGHS−1及びPGHS−2の両方の酵素活性を阻害する非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)が、幾つかの腫瘍の発症に対する保護機能の役割を果たし得るという所見によって示唆される(Arber and DuBois,1999;Moran EM,2002;Oshima,et al.,1996;Davies GL,2003;Piazuelo,et al.,2003;Parfenova,et al.,2001)。
【0024】
本試験で使用した共焦点顕微鏡法により、PGHS−2タンパク質は、核周囲位置に存在するだけでなく、これらの癌細胞株の核内にも豊富に存在することが明らかになった。PGHS−2タンパク質は、非癌細胞の核内に存在することが報告されているが、このPGHS−2の転位は、サイトカインの処理又はその他の操作によるものであり、構成的なものではない(Parfenova,et al.,2001;Marvin,et al.,2000)。本発明者等による核PGHS−2の発見は、2つの手法(共焦点顕微鏡法、細胞分画法)により確認されており、その結果、本発明者等は、詳述した酵素的役割とは異なる転写機能をPGHS−2が有する可能性について調査した。
【0025】
クロマチン免疫沈降アッセイでは、PGHS−2がヒト前立腺及び頭頸部癌細胞株内においてPGHS−2のプロモーター領域に結合することが明らかになった。本発明者等は、DNAとPGHS−2タンパク質の相互作用が生じるPGHS−2プロモーター領域の特異的なドメインを幾つか同定した。又、関連するコンストラクトをトランスフェクトさせた293T細胞による転写試験では、PGHS−2タンパク質がそれ自体の遺伝子の転写を直接調節できることを、本発明者等は示した。本発明者等は、これらの結果を癌細胞に当てはめ、癌細胞内におけるPGHS−2遺伝子の「構成的な」発現機序は、それ自体の遺伝子産物のトランス活性化因子の機能となる場合があることを提案する。
【0026】
一連の証拠により、NF−κB、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ、C/EBP及びCREが、PGHS−2タンパク質の上方調節に関与することが示唆されている(Zhu,et al.,2002)。本発明者等は、タンパク質−DNA結合アッセイを行い、実際にPGHS−2が、2つのNF−κB部位、並びにPGHS−2プロモーター領域のC/EBP及びCRE部位に強力に結合することを見出した。しかし、PGHS−2プロモーターの2つのNF−κB部位間では、PGHS−2は対照配列に弱く結合しただけであった。又、本発明者等は、PGHS−2がそれ自体のプロモーターに直接結合するか、或いはその他の活性化因子と関連して結合するかについては判定していない。
【0027】
更なる発見としては、PGHS−2タンパク質がMDM2プロモーターに結合することも見出された。PGHS−2がMDM2のトランス活性化因子として機能する場合、これは、PGHS−2を構成的に発現する癌細胞が癌遺伝子抑制因子タンパク質p53の細胞内レベルを調節する機序となる。MDM2は、核内のp53の転写活性化ドメインに結合し、タンパク質を細胞質へ移動させ、この細胞質でp53が急速に分解される(Momand,et al.,1992)。
【0028】
目下の試験では又、PGHS−2が幾つかの核タンパク質と複合したことも明らかになった。これらのタンパク質には、c−Junに結合するとトランス活性化因子(AP−1)となるc−Fosが含まれる(Jang,et al.,1996)。AP−1は、PGHS−2遺伝子の誘導に関与するものの(Subbaramaiah,et al.,2002;Guo,et al.,2001)、AP−1とPGHS−2との直接的な相互作用は、以前に記載されていない。この相互作用により、PGHS−2がc−Fosとのヘテロ二量体としての転写活性を有する可能性が提起されているが、このことは未だ研究されていない。共活性化因子タンパク質p300も又、PGHS−2と複合することが見出されている。このことは、p300がPGHS−2遺伝子の転写に関与することが証明されている固有のアセチル基転移酵素活性を有することからすれば、驚くべきことではない(Deng,et al.,2003)。最後に、核PGHS−2は、MDM2タンパク質だけでなく、MDM2プロモーターにも結合した。この発見の意義は今のところ明らかではないが、p53と同様にPGHS−2が、MDM2により誘導される核輸送及び代謝回転に供されるという可能性が見られる。
【実施例】
【0029】
細胞株
ヒト頭頸部癌細胞株UM−SCC−22Bを、10%のウシ胎児血清(FBS)を補充したDMEM中に維持した。DU145ヒト前立腺癌細胞を、10%のFBSを補充したEagleの最小必須培地中で培養した。ECV304内皮細胞を、10%のFBSを含有するM199培地中で増殖させた。293T細胞を、5%のFBSを含むDMEM中で、60%コンフルエンスまで増殖させた。細胞培地は全て、37℃の5%CO/95%Oインキュベーター中に維持した。細胞処理に使用したシグナル伝達試薬には、Calbiochem(米国カリフォルニア州ラホイヤ)から入手したPD98059及びSB203580、並びにSigma−Aldrich(米国ミズーリ州セントルイス)から入手したPDTC及びPMAが含まれていた。
【0030】
細胞分画
微量遠心管内における細胞の分画、及び核タンパク質の調製は、既に報告されている方法により行った(Lin,et al.,2002)。核抽出物は、1時間振とうさせながら粗核画分を高塩緩衝液(420mN NaCl、20%グリセロール)中で4℃にて再縣濁させることにより調製した。次に、4℃、13,000rpmにて10分間遠心分離させた後、上清を収集した。
【0031】
免疫沈降及び免疫ブロッティング
これらの技法は、本発明者等の研究室で以前に記載した技法ものを使用した(Lin,et al.,1999)。即ち、核タンパク質を不連続SDS−PAGE(9%ゲル)上で分離させた後、電気ブロッティングによりイモビロン膜(Millipore[米国マサチューセッツ州ベッドフォード])に転写した。0.1%のTweenを含有するトリス緩衝生理食塩水中において5%のミルクでブロッキングした後、膜を種々の抗体と共に一晩インキュベートした。二次抗体は、一次抗体の起源に応じて、ヤギ抗ウサギIgG(1:1000)又はウサギ抗マウスIgG(1:1000)(Dako[米国カリフォルニア州カーペンテリア])とした。免疫反応性タンパク質は化学発光により検出した。
【0032】
プラスミドトランスフェクト及びルシフェラーゼ試験
293T細胞は、Lipofectamine Plus(Invitrogen)を供給業者の説明書に従って使用して、ドミナントネガティブなプラスミド、又はベクター単独でトランスフェクトさせた。次に、各処理群の細胞のアリコートを実験的な変量に曝露した後、核タンパク質の調製のために回収した。全ての実験において、内部対照プラスミドであるp−ガラクトシダーゼを共トランスフェクトして、結果を正規化した。
【0033】
共焦点顕微鏡法
ECV304、UM−SCC−22B及びDU145細胞をスライドチャンバー内で培養し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄して、PBS中の2%のホルムアルデヒド中で10分間インキュベートして固定した後、PBSで2回洗浄した。PGHS−1、PGHS−2(Cayman[米国ミシガン州アンアーバー])又はc−Fos(Santa Cruz[米国カリフォルニア州サンタクルス])に対するモノクローナル抗体をPBS中で1:200に希釈した後、チャンバーに加えて、試料を45分間インキュベートした。これらの試料を、PBS中で洗浄した後、PBS中のFITC結合ウサギ抗マウスIgGの1:100希釈物と共に30分間インキュベートした。顕微鏡法には、励起源としてアルゴンイオンレーザーを備えたZeiss走査共焦点顕微鏡(510LS)を使用した。PGHS−1及びPGHS−2の細胞内局在化には、25倍及び60倍の対物レンズ及び50%のレーザー電源を使用した。
【0034】
MAPK(ERK1/2)及びp38キナーゼのドミナントネガティブなプラスミドのトランスフェクション
ユタ大学(米国ユタ州ソルトレークシティ)のDr. S. M. Prescott(Meade,et al.,1999)の好意により、ヒトPGHS−2プロモーターの断片を含むプラスミドの提供を受けた。プラスミド1800pGL2は−1840/+123を含み、プラスミド+800pGL2は配列−831/+123を含んでいた。トランスフェクト効率の対照には、pSV−f3−ガラクトシダーゼを使用した。MAPK(ERK1/2)のドミナントネガティブなプラスミドは、Dr. Melanie Cobb (テキサス大学サウスウェスタンメディカルセンター[米国テキサス州ダラス])から贈与された。リポフェクタミンプラスを使用して、10cmプレート内の60%コンフルエントなUM−SCC−22B細胞を、ドミナントネガティブなERKI及びERK2のプラスミド約6μgでトランスフェクトさせた。培養物を37℃で5時間インキュベートした。培地を、10%のウシ胎児血清を含有する培地に24時間かけて置き換えた後、血清フリー培地に24時間かけて置き換えた。トランスフェクトさせた細胞を100nMホルボール12−ミリスチン酸13−酢酸塩(PMA、Sigma[米国ミズーリ州セントルイス])と共に12時間インキュベートした後、PGHS−2タンパク質レベルのウェスタンブロット分析を行うために回収した。
【0035】
クロマチン免疫沈降法(ChIP)
クロマチン免疫沈降は、Luo,et al. (1998)及びBraunstein,et al. (1996)に記載の通り実施した。単層の細胞(6×10)のアリコートを、1%のホルムアルデヒドにより室温にて15分間かけて処理して、架橋させた。次に、単層をPBSで2回洗浄した。抽出物は、プロテアーゼインヒビターロイペプチン(10μg/mL)及びペプスタチンA(10μg/mL)、ホスファターゼインヒビター(50mM NaF及び0.2mMオルトバナジン酸ナトリウム)、並びに脱アセチル化インヒビターであるトリコスタチンA、5μM(Calbiochem[米国カリフォルニア州サンディエゴ])を含有する緩衝液(150mM NaCl、1% NP−40、0.5% DOC、0.1% SDS、50mMトリス[pH8.0]、5mM EDTA)1mLに細胞を擦り入れることにより調製した。細胞溶解物を超音波処理し、アガロースゲル電気泳動の評価で約600bpのクロマチン断片を得た。抗p53(Santa Cruz[米国カリフォルニア州サンタクルス])、免疫沈降は、抗リン酸Ser392−p53(Cell Signaling[米国マサチューセッツ州ビバリー])、又は抗アセチル化p53(Upstate Biotechnology[米国ニューヨーク州レイクプラシッド])を使用して行った。PGHS−2プロモーターの試験には、抗PGHS−2(Cayman)を使用した。PCRで使用したプライマーは、MDM2のプロモーターのものであった[5’−GGA TTGGGCCGGTTCAGTGG−3’(順方向)及び5’−GGTCT ACCCTCCAA− TCGCCAC−3’(逆方向)];PGHS−2[5’−CTGTTGAAAGCAACTTAGCT−3’(順方向)及び3’−AGACTGAAA ACCAAGCCCAT−3’(逆方向)]。PCRの結果を1%アガロースゲル電気泳動で分離させ、ゲルを臭化インジウムで染色した。DNAの相対レベルは、QuantifyOneソフトウェア(Bio−Rad Laboratories,Inc.[米国カリフォルニア州ハーキュリーズ])を使用して測定した。
【0036】
DNA結合アッセイ
ビオチン化されたPGHS−2に特異的なNF−κB、C/EBP、又はCRE配列(Invitrogen)6μg及び4%のストレプトアビジン被覆ビーズ60μlを含有する核抽出物タンパク質のアリコート(200μg)を、1時間振とうさせながらインキュベートした。ビオチン化プローブに結合した核抽出物タンパク質と関連したストレプトアビジン被覆ビーズをペレット化し、冷PBSで3回洗浄した。ビーズに結合したタンパク質を沸騰させて溶離し、SDS−PAGE上で分離させた。そして、上述の通り、抗ヒトPGHS−2抗体を使用してウェスタンブロット分析を行った。
【0037】
参考文献
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
【表3】

【0041】
【表4】

【0042】
【表5】

【0043】
【表6】

【0044】
【表7】

【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】DU145及びUM−SCC−22B(22B)癌細胞株並びにECV304内皮細胞内におけるPGHS−1及びPGHS−2の局在化。(図1A)ECV304、前立腺(DU145)及び頭頸部(UM−SCC−22B)細胞株内におけるPGHS−1及びPGHS−2の免疫蛍光染色。ECV304、DU145及びUM−SCC−22B細胞を、ヒトPGHS−1及びPGHS−2に対するモノクローナル抗体の後にAlexa−488標識ヤギ抗マウス抗体を使用して、間接免疫蛍光染色に供する。上部3枚の画像:PGHS−1に対する抗体;下部3枚の画像:PGHS−2に対する抗体。(図1B)UM−SCC−22B細胞内におけるPGHS−1及びPGHS−2の免疫蛍光染色の細胞内局在化。PGHS−1及びPGHS−2の両方を構成的に発現するこれらの細胞を、間接免疫蛍光染色(緑色)、及びTO−PRO−3ヨージドによる核染色(赤色)に供した。核のPGHS−2は、核染色にPGHS−2染色を重ね合わせて黄橙色を形成することにより示されるが、PGHS−1は示されていない。
【図2】ECV304、DU145及びUM−SCC−22B(22B)細胞内におけるPGHS−2の発現。(図2A)ECV304、DU145及びUM−SCC−22B細胞内におけるPGHS−2タンパク質の構成的な発現。細胞を10cmの皿内でコンフルエンスまで増殖させた。PMA(100nM)を使用して、又は使用せずに単層を12時間かけて処理した後、核タンパク質を回収し、抗ヒトPGHS−2(上部画像)又はPGHS−1(下部画像)使用して免疫ブロッティングに供した。棒グラフは、3つの実験結果を基に、各処理による核又は細胞質のバンド強度(平均:1:SD)における対照からの変化を示す。(図2B)ECV304、DU145及びUM−SCC−22B細胞内におけるPGHS−2のmRNAレベル。コンフルエントな細胞を、PMA(100nM)を使用して、又は使用せずに8時間かけて処理した。全てのRNA試料を回収し、PGHS−2又はGAPDHプライマーを使用してRT−PCRに供した(それぞれ上部及び下部画像)。棒グラフは、対照試料と比較したPGHS−2のmRNAレベルの増大を示しており(平均±SD)、これは、同一試料内におけるGAPDHの変化に合わせて補正され、3つの実験結果から纏められている。
【図3】UM−SCC−22B(22B)細胞内におけるPGHS−2発現は、MAPK、p38又はNF−κBの阻害剤により減衰される。(図3A)PKC活性化又はシグナリング経路阻害剤のPGHS−2発現に対する効果。UM−SCC22B細胞を10cmの培養皿内でコンフルエンスまで増殖させた後、対照培地(1列目画像)、又はPMA(2列目画像、100nM)、PD98059(PD、3列目画像、10μM)、SB203580(SB、4列目画像、10μM)若しくはPDTC(5列目画像、100μM)を含有する培地に16時間曝露した。細胞単層を回収し、核タンパク質40μgを、抗ヒトPGHS−2(上部画像)又は抗pMAPK(pERK1/2、下部画像)を使用して免疫ブロッティングに供した。下の棒グラフは、対照試料及び上記の薬剤で処理した細胞のバンド強度を示す。グラフの結果は、3つの類似する実験からの平均±SDである。(図3B)UM−SCC−22B細胞内における、ドミナントネガティブなERK1/2トランスフェクトのPGHS−2発現に対する効果。ドミナントネガティブな突然変異ERK1(dnERK1)、ERK2(dnERK2)、又は両突然変異、又は空ベクター(pCEP40)で、細胞をトランスフェクトした。PGHS−2及びpMAPK(リン酸化ERK1及びERK2)の核標本をウェスタンブロッティングにより分析した。
【図4】ECV304、UM−SCC−22B(22B)及びDU145細胞内におけるPGEの産生。細胞を48ウェル培養皿内に入れ、PMA(100nM)、NS398(10μM)、インドメタシン(10μM)又はPD98059(10μM)を使用して、又はこれらを使用せずに、12時間かけて処理した。最後の30分間は、細胞を200μlのPBSに移した。次に、試料を回収し、ELISAによるPGEの定量的分析に供した。結果は、3つの代表的試験の結果の平均±SDとして示す。
【図5】PGHS−2はc−Fos、MDM2及びp300と関連する。コンフルエントなUM−SCC−22B(22B)細胞を、PMA、100nM、又は溶媒単独で12時間かけて処理した。細胞核を調製し(Lin, et al., 1999)、PGHS−2に対する抗体を使用して免疫沈降させた。免疫沈降タンパク質をゲル電気泳動により分離させ、c−Fos、MDM2又はp300に対する抗体を使用して免疫ブロットした。3つの類似する実験の代表的な免疫ブロットを示す。UM−SCC−22B細胞の核内には、PGHS−2を伴うc−Fosの共局在化が見られる。
【図6】培養物中の静止UM−SCC−22B(22B)細胞は、実質的なPGHS−2プロモーター活性を示す。UM−SCC−22B細胞を、ルシフェラーゼレポーターに融合した−831/+123PGHS−2プロモーターコンストラクト、又はSV40プロモーター(pGL2プロモーター)を伴うルシフェラーゼレポーターでトランスフェクトした。細胞のアリコートを、PMA(100nM)、PD98059(10μM)、PDTC(100μM)、又はSB203580(10μM)で12時間かけて処理した。培養物をβ−ガラクトシダーゼレポータープラスミドで共トランスフェクトし、ルシフェラーゼ活性をβ−ガラクトシダーゼ活性に合わせて補正して、測定し、3つの実験の3つの培養物測定値の平均±SDとして表した。
【図7】PGHS−2プロモーターに結合したPGHS−2のクロマチン免疫沈降(ChIP)分析。(図7A)PGHS−2を構成的に発現するUM−SCC−22B(22B)細胞を使用して、PMA(100nM)、PDTC(100μM)又はPD98059(PD、10μM)の存在下又は非存在下(Con)で、PGHS−2抗体によりChIPを12時間実施した。インプット及び免疫沈降(IP)DNAを、MDM2、PGHS−2プロモーター及びPGHS−2 ORFのプライマーを使用して増幅させた後、これらの増幅させたDNAを電気泳動により分離させ、VersaDOCTM Imaging Systemで走査した。(図7B)PGHS−2と、PGHS−2に特異的なNF−κB(−213/−222;−438/−447)、C/EBP(−132/−124)及びCRE(−59/53)配列との結合。コンフルエントなUM−SCC−22B(22B)細胞を、PMA(100nM)を使用して、又は使用せずに6時間かけて処理し、核抽出物を調製した。ビオチン化PGHS−2プロモーターDNAプローブを、ストレプトアビジン被覆ビーズと共に1時間インキュベートし;ペレット化したビーズを収集して洗浄し、タンパク質を溶離して、抗PGHS−2抗体を使用したウェスタンブロット分析に供した。
【図8】PGHS−2タンパク質は、293T細胞内におけるPGHS−2プロモーター活性を増大させる。80パーセントコンフルエントな293T細胞を、濃度を増大させたPCMV内のPGHS−2発現ベクター、又は対照ベクター、及びルシフェラーゼレポーターに融合したPGHS−2プロモーター(−831/+123)で過渡的にトランスフェクトした。トランスフェクト効率の対照として、PCMV β−Galをトランスフェクトした。ルシフェラーゼ活性をDual−lightシステムにより測定した。グラフは、3つの実験のデータから得られた、対照値1に対するルシフェラーゼ活性の変化を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PGHS−2トランス活性化活性のインヒビターを同定するための方法であって、該方法は、以下の工程
a)PGHS−2又はMDM2プロモーターの少なくとも1つの領域に対応する核酸プローブと、PGHS−2タンパク質とを試験化合物の存在又は非存在下で接触させる工程;
b)PGHS−2タンパク質とプローブとの結合レベルを測定する工程
を包含し、
前記試験化合物の非存在下で結合したタンパク質の量に比べて、前記試験化合物の存在下で結合したタンパク質量の減少が、該化合物がPGHS−2トランス活性化活性のインヒビターであることを示す、方法。
【請求項2】
該結合レベルが、DNA−タンパク質結合アッセイにより測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記DNA−タンパク質結合アッセイがクロマチン免疫沈降アッセイである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記DNA結合アッセイが電気泳動移動度シフト解析である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
該PGHS−2プロモーターの少なくとも1つの領域が、c/EBP部位、CRE部位及びNF−κB部位からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記プローブが標識されている、請求項6に記載の方法。
【請求項7】
前記プローブがビオチン化されている、請求項7に記載の方法。
【請求項8】
PGHS−2トランス活性化のインヒビターを同定するために試験化合物をスクリーニングする方法であって、該方法は、以下の工程:
a)PGHS−2を構成的に生成する細胞を提供する工程であって、前記細胞は、該PGHS−2プロモーターの領域に対応する第一の核酸、及びレポーター分子をコードする第二の核酸でトランスフェクトされている、工程;
b)前記細胞を前記試験化合物に曝露する工程;
c)前記細胞から核抽出物を単離する工程;
d)前記抽出物中のレポーター分子のレベルを、曝露していない細胞に由来する核抽出物中のレポーター分子のレベルと比較する工程を包含し、
該レポーター分子のレベルの低下が、PGHS−2のトランス活性化の阻害を示す、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−506754(P2009−506754A)
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−513636(P2008−513636)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【国際出願番号】PCT/US2006/019965
【国際公開番号】WO2006/127731
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(507386999)オードウェイ リサーチ インスティテュート, インコーポレイテッド (1)
【出願人】(507386955)
【出願人】(507387000)
【出願人】(507386966)
【出願人】(507386977)
【Fターム(参考)】