説明

PLAで汚染された通常のポリマー流の精製

本発明は、最大で50%のPLAが混入した通常のポリマー流(PE、PP、PET、PVCなど)を精製する方法であって、このポリマーをPLA部分を可溶化させることにより懸濁させる工程と、精製したポリマーを分離後に回収する工程とを含む方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
発明の分野
本発明は、PLAが混入した通常のポリマー流を、通常のリサイクルプロセスでのその状態のままでのその使用を可能にするように精製する方法に関する。
【0002】
従来技術
廃プラスチックの取り扱いは市場でのプラスチックの存立可能性において非常に重要な点である(たとえば、PVCは、有効なリサイクルシステムがないプラスチックボトル市場から撤退させられた)。再生可能でない供給源(石油化学)からのプラスチックの場合のように、そのより多くの廃品処理にもかかわらず、バイオポリマーはこの廃品の取り扱いに関する技術的課題に直面する。特に、日用品市場で生じる非常に大きな体積が関連する。この理由のため、この問題に対処することが重要である。
【0003】
日用品ポリマー(PET、PPなど)をリサイクルする方法、たとえばPETの機械的リサイクルは既に行われている。PETボトルはリサイクル装置によりチップ、混ざりもののない粒体または直接半製品に変換される。2007年に、Fost Plus(ベルギーにおいて、家庭用包装材の選択収集、仕分けおよびリサイクルの促進、調整を行い、それに資金供給をしている)によって市場に出された全てのPETは十分にさらなる処理が加えられる。またベルギーでは、機械的なPETボトルリサイクルの後の残渣率は比較的低く、すなわち15%である。いくつかの国では、この率は8%に達しうる。
【0004】
さらに、バイオポリマー(再生可能な原材料から得られる)、およびより詳細にはPLA、ポリ(乳酸)またはポリラクチドが開発されており、その用途範囲を広げている。現在まで、PLAは、多くの利点たとえば透明性または不透明性、柔軟性または剛性(ポリエステルのそれに類似している)などだけでなく、ポリスチレンのそれに匹敵する光沢も示してきた。これらの全ての利点は包装の分野におけるこのポリマーの成功を必然的にもたらす。さらに、PLAはその味および匂いのバリア性と脂質の浸透に対するその高い耐性とのおかげで食品包装用として特に認められている。たとえば堅い生鮮食品トレー、レタス包装ラッピング、使い捨てボトルおよび家庭用品(皿、コップ、カトラリーなど)などのますます多くの用途が市場で栄えている。
【0005】
これらの新たな材料の日常使用へのますますの着荷は、より「通常」のポリマーの廃品の取り扱いに関するいくつかの問題を必然的にもたらす。実際、市場に出現し始めているPLAによるPETボトル流の汚染を認めることができる。これは、一般的に行われている仕分け技術が石油化学ベースのポリマーとバイオポリマーとの間の容易で完全な区別をするものではないためである。当然に、光学的性質(両ポリマーの密度は非常に似ているので物理的性質ではない)に基づいた分離技術が存在しているが、それらは100%有効なわけではなく、現在、非常にまれにリサイクルセンターに設置されているにすぎない。
【0006】
しかしながら、PETをリサイクルする方法は非常に有効であるが、それらは比較的複雑であり注意を要するものである。実際、PLAの存在は、約1パーセントの低い濃度であっても、この方法を完全に妨害することが証明されている。実際、残渣率が高く(それにより収率があまり良くなく)、得られる最終的なPETの質が損なわれる。
【0007】
本発明の目的は、ポリマー流をそのPLA含有量を最小濃度まで除去することを目的として前処理することによって、この問題の解決策を提供することにある。
【0008】
本発明の簡単な説明
本発明は、50重量%以下のPLAで汚染された通常のポリマー(PE、PP、PET、PVCなど)流を精製する方法に関する。
【0009】
本発明による方法は、汚染された混合物を乳酸エステル中に懸濁させることと、PLA部分を乳酸エステル中に可溶化させることとを含む。次に、乳酸エステル、PLAおよび他の溶解した不純物を続いての分離処理のために回収する。溶解していないポリマーを回収して、通常のリサイクルプロセスによって処理する。
【0010】
発明の詳細な説明
本発明による方法は以下の工程を連続的に含む。まず、50重量%以下のPLAを含む通常のポリマー流(PE、PP、PET、PVCなど)を裁断する。乳酸エステルを使用してPLAおよび他の可溶な汚染物質を溶解させ、それによりこれらを除去して、通常のリサイクル装置の要件を満たすポリマーを得る。それゆえに、この方法の必須な工程である一方で可溶化と同時の懸濁および他方で分離を含む複数の工程の区別が行われる。
【0011】
1.PLAを含有する廃品の裁断
本発明の範囲内において、PLAで汚染された通常のポリマー流(PE、PP、PET、PVCなど)を、種々の技術、たとえば剪断による、衝撃による、乾燥状態でのまたは湿った状態での裁断を使用して裁断する。本発明の範囲内では、1回または複数回の裁断工程を考えることができるが、その回数は最初の製品ならびにさらにはこれらの作業のコストおよび所望の最終造粒に依存する。
【0012】
また、PLAを含有するポリマーのこの混合物を特に水または他の溶液で洗浄することによって前処理または後処理することもできる。
【0013】
処理する流れの材料が溶解/懸濁を始めるのに好適な比表面積を有している場合、さらなる実施形態によると、本発明に係る方法の範囲から外れることなしに、この裁断工程を省くことができる。
【0014】
この裁断工程に続いて、これが完了したら、自動化およびプロセス加工性を助けるために、材料を圧縮させる緻密化工程が考えられうるが、これは次の工程の速度を落とす場合がある。これは本発明のさらなる実施形態である。
【0015】
2.PLAおよび他の可溶物質の乳酸エステルへの溶解
次に、PLAで汚染されたポリマー流であって、任意に裁断したおよび任意に圧縮させたポリマー流を、乳酸エステルに接触させる。この乳酸エステルは、アルキル基が1〜12個の炭素原子を含む乳酸アルキルでありうる。乳酸アルキルは乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチルまたは乳酸ヘキシルから優先的に選択される。
【0016】
この工程は優先的に攪拌しながら行われる。
【0017】
ポリマー流の乳酸アルキルに対する重量比は優先的に0.1〜1であり、処理する流れの密度および汚染物質濃度に依存する。この比は好ましくは0.5〜1であることが望ましい。
【0018】
温度条件は50℃と精製するポリマーの融点との間にある。
【0019】
圧力は作業温度に密接に依存し、0.05〜20bar、好ましくは1〜10bar、より好ましくは1〜5barにありうる。
【0020】
圧力および温度の条件ならびにポリマー流の乳酸エステルに対する重量比は、この方法が経済的に実行可能であるようにおよび回収するポリマーを変性させないように選択される。
【0021】
たとえば大気圧での処理が好ましいであろうし、前記圧力は、使用する乳酸エステルの沸点未満またはそれよりも僅かに低い温度:たとえば50℃と使用する乳酸アルキルの沸点との間で達する。
【0022】
これらの条件下でのPLAの溶解は温度に依存するので、接触時間は数分から数時間まで及ぶであろう。高温で行う場合、処理するポリマーのあらゆる分解を防ぐために短い接触時間が好ましいであろう。
【0023】
3.分離による精製ポリマーの分離による回収
さて、処理したポリマー流は懸濁液の形態にある。乳酸、PLAおよび溶解したあらゆる不純物は分離によって除去されている。この分離はろ過または固/液分離を可能にする任意の他の手段によって達成される。
【0024】
さらなる実施形態によると、通常のリサイクル工程において、回収したポリマーは、そのまま使用できるし、または水もしくは他の物質で洗浄して残留する乳酸を除去してもよいし、または水もしくは他の物質で洗浄した後に乾燥させてもよい。
【0025】
4.PLAを含有するエステルの続いての処理
工程3からのろ液をたとえばアルコール分解PLA化学的リサイクル方法にしたがって処理して、PLAから乳酸エステルを製造することができる。このエステル交換解重合方法のために使用するアルコールは、優先的に、ポリマー流を精製するのに使用する乳酸エステルに対応するそれであろう。
【0026】
以下の非限定な例として示す本発明のさらなる詳細および特殊性は、そのいくつかの考えられる実施形態としての説明から明らかになる。
【0027】
例1:乳酸エステルへの可溶化試験
この例の範囲内では、裁断したPLAカップを種々の乳酸エステル、乳酸メチル、乳酸エチルおよび乳酸n−ブチルに、130℃のオーブン内で大気圧で攪拌なしに溶解させた。これらの溶解の結果は表1に含まれている。
【表1】

【0028】
また、種々の通常のポリマーを130℃の乳酸エチルに大気圧で4時間にわたって攪拌なしに溶解させる試みを行った。その結果は表2に含まれている。
【表2】

【0029】
この例は、回収するポリマーを変えることなく、PLAのみの可溶化の可能性を証明するのに役立つ。HDPE、PPおよびPET懸濁液をその後ろ過し、乾燥させ、秤量した。減量は観察されなかった。
【0030】
例2:PET(90%)+PLA(10%)混合物の処理
この例の範囲内では、裁断したPETボトルを、裁断したPLAボトルで10%の割合で故意に汚染した。この混合物は、通常の仕分けプロセスからのPETボトル流において観察されやすい高い汚染を模倣している。
【0031】
500gのこのポリマー混合物を2リットルのフラスコに入れ、1kgの乳酸エチルで大気圧、130℃の温度で攪拌しながら1時間処理した。
【0032】
この処理を行ったら、懸濁液をろ過してPETを回収した。保持物を水で洗浄して残留した乳酸エステルを除去し、その後乾燥させた。残ったポリマーは処理後450gの質量を有していて、これは最初の混合物中のPETの量に対応していた。
【0033】
ろ液に95℃および100mbarでの蒸発乾燥を施し、乳酸エチルを除去した。蒸発乾燥が終わったら、ポリマーを回収し、これを大量の水で洗浄しその後乾燥させた。回収した質量は52.5gであった。次に、このポリマーをビーカーに入れ、185℃の油浴に浸した。15分後、ポリマーの全てが溶融状態であった。これは、回収された約50数グラムが最初の混合物を汚染していたPLAからなることを証明する。実際、PETは260℃の融点を有し、これは処理中にかけられた185℃よりも明らかに高い。
【0034】
この最後の例は、汚染PLAを処理する混合物から完全に除去できる可能性を証明するのに役立つ。その後PETは機械的リサイクルプロセスにおいて問題なしに再使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
50重量%以下の割合のポリ乳酸PLAを含有するポリマー混合物を精製する方法であって:
a)前記ポリマー混合物を、PLA部分を溶解させるのに好適な乳酸エステル中に懸濁させることと;
b)一方で前記乳酸エステル、PLAおよび他の溶解した不純物と、他方で精製したポリマー混合物とに分離することと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
裁断が前記懸濁/可溶化に先行することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
0.1〜1のポリマー:乳酸エステルの重量比で、前記ポリマー混合物を乳酸エステル中に懸濁させることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリマー:乳酸エステルの重量比は0.5〜1であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
50℃と前記ポリマー混合物の融点との間の温度で、前記ポリマー混合物を乳酸エステル中に懸濁させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
50℃と前記乳酸エステルの沸点との間の温度で、前記ポリマー混合物を乳酸エステル中に懸濁させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
0.05〜20barの作業圧力で、前記ポリマー混合物を乳酸エステル中に懸濁させることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記作業圧力は1〜10barであることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記作業圧力は1〜5barであることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記乳酸エステルはアルキル基が1〜12個の炭素原子を含む乳酸アルキルから選択されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記乳酸アルキルは乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチルまたは乳酸ヘキシルから優先的に選択されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記分離に続いて、前記精製したポリマー混合物を洗浄することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記分離に続いて、前記精製したポリマー混合物を乾燥させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリマー混合物は石油化学由来であることを特徴とする請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2013−501111(P2013−501111A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523265(P2012−523265)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【国際出願番号】PCT/EP2010/060142
【国際公開番号】WO2011/015433
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(511241192)ガラクティック・エス.エー. (4)
【氏名又は名称原語表記】GALACTIC S.A.
【住所又は居所原語表記】Place d’Escanaffles, 23, BE−7760 Escanaffles, BELGIUM
【Fターム(参考)】