説明

PMTC用研磨材

【課題】歯牙表面に過度の凹凸を与えることなく、歯牙表面や歯間部のバイオフィルムやステインを除去することができるPMTC用研磨材を提供する。
【解決手段】平均粒子径が1〜5μm、吸油量が30〜70mL/100gである無水ケイ酸(A)と平均粒子径が6〜12μm、吸油量が100〜130mL/100gである無水ケイ酸(B)を配合し、無水ケイ酸(A)と(B)の配合比が1:3〜2:1であり、無水ケイ酸(A)を10重量%以上、無水ケイ酸(B)を10重量%以上配合し、無水ケイ酸(A)と(B)の配合量の合計が、35〜80重量%であるPMTC用研磨材。これにより、歯牙表面の損傷を与えないPMTC研磨材提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科医師または歯科衛生士ら歯科医療専門家が歯牙表面や歯間部のステインや歯垢などの付着物を物理的に除去するために用いるPMTC用研磨材に関する。
【背景技術】
【0002】
日常の口腔内清掃はセルフケアによって行なわれるのが基本であり、歯垢の原因である生成して間もないバイオフィルムやステインの原因物質などの付着物をコントロールするのに欠かすことのできない行為である。しかしながら、歯並び等の口腔内構造、唾液の質及び分泌量、口腔細菌叢、免疫系の状態、食習慣、ブラッシング等の口腔清掃技術に著しく個人差があるため、完全な口腔内清掃を継続的に行なうことは困難である。そこで、わが国においては21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)の中で、「定期的に歯石除去や歯面清掃を受けている者の割合を30%以上にする」という目標を設定していることからも明らかなように、歯科医療専門家によるプロフェッショナルケアによって、付着してから時間が経過し、病原性が増加したバイオフィルムや頑強に付着したステインを除去することで、セルフケアを補完し、良好な口腔衛生状態を保ち続けようとする機運が高まってきている。PMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)はそういったプロフェッショナルケアの施術方法の一つであり、歯科医療専門家によって行なわれる機械力を活用した歯牙の清掃のことをいう。PMTCの具体的な施術方法は、例えば、電動で高速回転するハンドピースに、清掃する部位に応じてポリッシングブラシやラバーカップ、プラスティックチップ等を接続し、研磨粒子を配合したPMTC用研磨材を使用しつつ、歯面及び歯間部を研磨、清掃することにより行われる。PMTCはバイオフィルムの除去によるう蝕、歯周病などの疾患の予防あるいは治療中のメンテナンス、またステインの除去、歯面滑沢化などの口腔審美、さらには口腔爽快感を認識させ予防に対する意識を強化するための啓蒙行為といった様々な目的のために行なわれるため、その目的を達成させるために、目的に応じて性質の異なったPMTC用研磨材を使い分けたり、高い研磨力、清掃力を有するPMTC用研磨材と高い滑沢化力を有するPMTC用研磨材を併用することも行われている。
【0003】
PMTCが普及した今日、歯科医療の専門誌等において、PMTCによるオーバートリートメントに対する問題が注目されるようになった。ここでいうオーバートリートメントとは歯牙表面(エナメル質)の微細構造に損傷を与えるという悪影響を及ぼす可能性があることを指す。例えば、ステインを完全に除去する目的の際に使用される硬く粗い研磨粒子を多く配合したPMTC用研磨材を使用する場合、物理的作用の強いPMTC専用の電動回転式歯面清掃具と併用することにより、歯牙表面に大きな凹凸が生じることがある。すなわち、PMTCにより歯牙表面が損傷を受ける場合があることがわかってきた。特に、ステイン除去効果が高く研磨力の強い研磨粒子として知られているパミスや焼成酸化アルミニウムなど、歯牙エナメル質よりも硬い素材を用いた場合には、歯牙表面の損傷の程度も大きくなることから問題となっている。そのため、PMTCを行っても歯牙表面に凹凸を生じさせない技術の開発が望まれている。例えば、研磨力の強いPMTC用研磨材を用い、ステインを除去した後に、ステイン除去効果に乏しい程度の研磨力を持つPMTC用研磨材を用いるPMTCを行うことで、解決を図ろうとしているが、この方法では、最初の処理で生じた凹凸の凸部頂点部分が丸くなる程度であり、本質的には、歯牙表面の凹凸の程度は変化しないため、解決に至っていない。また、特表2004−51397などで新規の研磨粒子を用いた解決策が提案されているが、その効果は未だ十分ではない。
【0004】
また、PMTC用研磨材は高速回転する清掃具(ポリッシングブラシ等)とともに使用される。したがって、施術中に清掃部の回転力によって使用するPMTC用研磨材が飛散しやすい。この飛散により、着衣や部屋などの周囲が汚れるだけでなく、歯牙の清掃部位におけるPMTC用研磨材が不足するためにステイン除去や歯垢の除去などの目的が十分に達成できなくなる。したがって、PMTC施術中に、口腔外へ飛散したPMTC用研磨材を拭き取る作業や清掃具へのPMTC用研磨材を付け加える作業が必要となり、PMTCの作業効率を著しく低下させていた。加えて、PMTC用研磨材を過剰に使用した場合は、必要以上に歯牙表面を研磨してしまい、激しい損傷を与える恐れもあった。
【0005】
【非特許文献1】クイント・ブックレットシリーズ「目的別PMTCとオーラルケア−バイオフィルム制御とオーラルケアの到達点」、クインテッセンス出版株式会社、2006年
【0006】
【特許文献2】特表2004−513973号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような従来の課題点に鑑み、歯牙表面に過度の凹凸を与えることなく、歯牙表面や歯間部のバイオフィルムやステインを除去することができるPMTC用研磨材を提供せんとするものであり、さらには、PMTC時に周囲へ飛散しにくい等、使い勝手及び操作性に優れたPMTC用研磨材を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記のPMTC用研磨材を提供するものである。
項1 平均粒子径が1〜5μm、吸油量が30〜70mL/100gである無水ケイ酸(A)と平均粒子径が6〜12μm、吸油量が100〜130mL/100gである無水ケイ酸(B)を配合し、無水ケイ酸(A)と(B)の配合比が1:3〜2:1であることを特徴とするPMTC用研磨材。項2 無水ケイ酸(A)を10重量%以上、無水ケイ酸(B)を10%重量以上配合し、無水ケイ酸(A)と(B)の配合量の合計が、35〜80重量%であることを特徴とする請求項1に記載のPMTC用研磨材。項3 PMTC用研磨材100g中に、無水ケイ酸(A)をC(g)配合し、無水ケイ酸(B)をD(g)配合し、かつ無水ケイ酸(A)の吸油量がE(mL/g)、無水ケイ酸(B)の吸油量がF(mL/g)である場合、CとEの積とDとFの積の和が25〜40mLであることを特徴とする請求項1または2に記載のPMTC用研磨材。
【0009】
本発明は、性質の異なる特定の無水ケイ酸を特定比率で2種類混合してPMTC用研磨材を構成させることにより、歯牙表面に過度の損傷を与えることなく、バイオフィルムやステインを除去できることを見出した。即ち、平均粒子径が1〜5μm、吸油量が30−70mL/100gである無水ケイ酸(A)と平均粒子径が6〜12μm、吸油量が100―130mL/100gである無水ケイ酸(B)を配合し、無水ケイ酸(A)と(B)の配合比が1:3〜2:1であることを特徴とするPMTC用研磨材を用いると、歯牙表面に過度の損傷を与えることなく、バイオフィルムやステインを除去し、かつ滑沢効果も得られることを見出した。本発明において使用できる無水ケイ酸は合成によって得られ、粒径、硬さなど種々の規格を有する原料が市販されているので、PMTC受ける者の歯質に適合させたり、用途に応じて最適なPMTC研磨材を選択することが可能である。
【0010】
本発明において使用できる2種類の無水ケイ酸は、以下の特徴を有していれば他の条件に限定されることはない。
【0011】
本発明において使用できる無水ケイ酸(A)は、平均粒径が1〜5μm、吸油量が30〜70mL/100gの特性を有するものであり、平均粒径はフラウンホーファー回折の原理を利用したマルバーン・マスターサイザーによって測定、吸油量はJISK5101-13-1の方法によって測定することができる。無水ケイ酸(A)はいずれの方法で合成されたものでもよいが、吸湿による吸油量への影響が少なく、また安価であるということから、沈降シリカであることが好ましい。無水ケイ酸(A)のRDAは特に限定されるものではないが、150〜200が好ましい。無水ケイ酸(B)と組合わせたとき、150未満だとステイン除去効果が発揮されにくく、200を超えると歯牙表面(エナメル質)を損傷してしまう恐れがあるからである。なお、RDAはHefferrenらの方法(J.Dent.Res.、Vol55、563、1976年)により求めることができる。
【0012】
本発明において使用できる無水ケイ酸(B)は、平均粒径が6〜12μm、吸油量が100〜130mL/100gの特性を有するものである。無水ケイ酸(B)もいずれの方法で合成されたものでもよいが、無水ケイ酸(A)と同じ理由で沈降シリカであることが好ましい。また、無水ケイ酸(B)のRDAは特に限定されるものではないが、20〜120が好ましい。無水ケイ酸(B)と組合わせたとき、20未満だとステイン除去効果が発揮されにくく、120を超えると、歯牙表面における滑面化効果が得られない。
【0013】
本発明のPMTC用研磨材は、粉末状、湿潤粉体状、ペースト状、懸濁液状などの形態で使用することができ、本発明のPMTC用研磨材を充填する容器はガラス製、金属製、プラスチック製またはラミネートタイプのボトル容器、カップ容器またはパウチ容器、金属製、プラスチック製またはラミネートタイプのチューブ容器など、本発明の形態に適した材質及び形状の容器を使用すればよい。
【0014】
粉末状のPMTC用研磨材を用いる際は、施術直前に水などの液体成分や口中の唾液と混合し湿潤性を与えてから使用することにより、本発明の目的を達することが可能となる。無水ケイ酸以外の成分を添加した湿潤粉体状のPMTC用研磨材、またはペースト状のPMTC用研磨材は、そのまま使用しても優れた使い勝手または操作性を有する。
【0015】
湿潤粉体状やペースト状のPMTC用研磨材は、無水ケイ酸(A)を10重量%以上、無水ケイ酸(B)を10%重量以上配合し、無水ケイ酸(A)と(B)の配合量の合計が35〜80重量%とし、さらに水などの必要な他成分を適量添加することにより得られる。このPMTC用研磨材は、バイオフィルムやステインが除去でき、かつ歯牙表面に損傷を与えず、PMTC施術中のPMTC研磨材の飛散が抑えられ、ポリッシングブラシ等の清掃具へのつけやすくなるなどの使い勝手または操作性を向上できるという効果が得られることを見出した。特に、無水ケイ酸(A)と(B)の配合量の合計値を35〜50重量%としたペースト状のPMTC研磨材が好ましい。無水ケイ酸(A)及び無水ケイ酸(B)の配合量が10重量%未満のとき、または無水ケイ酸(A)と(B)の配合量の合計が35重量%未満では組合わせた際に効果が発揮されず、付着物の除去または滑沢効果が得られない場合がある。
【0016】
本発明で用いる無水ケイ酸(A)および(B)の配合量を35〜80重量%配合すると、無水ケイ酸の吸油または吸水総量が大きくなりすぎるため、均質で使用性の良いPMTC用研磨材を得られない場合がある。したがって、この場合、さらなる工夫が必要になる。また、PMTC施術中にPMTC用研磨材が乾燥し、湿潤性が不足すると、PMTC用研磨材と清掃具および歯牙表面との付着親和性が低くなり、PMTC用研磨材が飛散する場合がある。これらの問題に対して、PMTC用研磨材100g中の無水ケイ酸(A)の配合量をC(g)、無水ケイ酸(B)の配合量とD(g)とし、かつ無水ケイ酸(A)の吸油量がE(mL/g)、無水ケイ酸(B)の吸油量がF(mL/g)としたとき、CとEの積とDとFの積の和が25〜40mLとするか、または糖アルコールから選ばれる1種または2種以上を10〜50重量%配合し、かつ糖アルコールと他の多価アルコールの配合量の合計値が30〜50重量%とすることにより、問題を解決できることを見出した。
【0017】
本発明において使用できる糖アルコールとしては、特に限定されないが、エリスリトール、キシリトール、パラチニット、アラビトール、リビトール、ソルビトール、マンニトール、ガラクチトール、マルチトール、ラクチトール、イノシトール、クエルシトールなどが挙げられる。このうち、キシリトール、ソルビトール、パラチニット、マンニトール、マルチトール、ラクチトールが好ましく、さらには、キシリトール、ソルビトールが好ましい。
【0018】
本発明において使用できる糖アルコール以外の多価アルコールとしては、水酸基を分子中に2個以上有し、25℃において液状の化合物をいう。具体的には、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、イソプレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。本発明の糖アルコール及び多価アルコールについてはソルビトールとグリセリンを併用する場合がもっとも好ましい。
【0019】
また、カルボキシメチルセルロース塩、ヒドロキシエチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、キサンタンガム、ポリアクリル酸塩、寒天から選ばれる1種もしくは2種以上を0.1〜5重量%配合することにより、本発明のPMTC用研磨材の経時安定性、チューブ容器などの容器からのPMTC用研磨材の取り出しやすさなどが飛躍的に向上することを見出した。これらのうち、PMTC用研磨材中の水、糖アルコール、多価アルコールなどの液体成分の保持力が高いにも関わらずPMTC用研磨材全体の粘性が高くならないものを選択するのが良い。例えば、2%水溶液の粘度が1000〜3000mPa・sのものが好ましく、2%水溶液の粘度が1000〜3000mPa・sのカルボキシメチルセルロース塩が好ましい。さらには、2%水溶液の粘度が1000〜3000mPa・sでエーテル化度が1.2〜1.4のカルボキシメチルセルロース塩がもっとも好ましい。配合量としては、0.1〜5重量%が好ましく、0.5〜1.0重量%がもっとも好ましい。配合量が0.1重量%未満の場合、十分な経時安定性の効果が得られず、逆に、5重量%を超える場合、液体成分の保持力が大きすぎてPMTC用研磨材の粘度が高くなりすぎ、容器から取り出しにくいなどの使用性が悪くなる恐れがあり好ましくない。
【0020】
本発明のPMTC用研磨材は、歯科医師または歯科衛生士ら歯科医療従事者が、歯牙表面を機械的な施術を行う場合に使用される。すなわち、本発明のPMTC用研磨材の適量を、コントラアングルハンドピースなどの回転装置に接続したポリッシングブラシ、ラバーカップなどに付着させ、歯牙歯面や歯間部などを施術する。施術者の判断によって使用条件は適宜設定すればよいが、本発明の歯磨研磨材は歯牙表面(エナメル質)を損傷しないので、ラバーカップを使用せずともポリッシングブラシのみで施術が可能である。また、ポリッシングブラシの回転数は、PMTC用研磨材の飛散を考慮すると10000rpm以下での使用が好ましいが、低回転すぎると十分な研磨力が得られないことから、500rpm以上の回転数で使用されることが好ましい。PMTC用研磨材の飛散と研磨性をあわせて考慮すると1000〜5000rpmの回転数で使用することが特に好ましい。
【0021】
本発明のPMTC用研磨材では、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜、他の成分を配合することができる。例えば上記以外の研磨粒子、粘結性成分、界面活性成分、甘味成分、香料成分、防腐成分、有効成分、着色成分、pH調整成分を配合することができる。
【0022】
研磨粒子としては、上記の無水ケイ酸以外の研磨粒子が挙げられる。具体的には、第2リン酸カルシウム・2水和物および無水和物、リン酸カルシウム、第3リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、アルミノシリケート、含水ケイ酸、シリカゲル、ケイ酸アルミニウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、第3リン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、ポリメタクリル酸メチル、ベントナイト、ケイ酸ジルコニウム、ハイドロキシアパタイト、合成樹脂などが挙げられる。これらの研磨粒子は無水ケイ酸(A)及び無水ケイ酸(B)と共に単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0023】
粘結成分としては、上記の粘結成分以外でも、メチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体、アルギン酸ナトリウムなどのアルカリ金属アルギネート、アルギン酸プロピレングリコールエステル、トラガントガム、カラヤガム、アラビアガム、カラギーナンなどのガム類、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドンなどの合成粘結剤、シリカゲル、アルミニウムシリカゲル、ビーガム、ラポナイト等の無機粘結剤などを単独で用いても、または2種以上を併用してもよい。
【0024】
界面活性成分としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム等のアルキル基の炭素数が8〜18である高級アルキル硫酸エステルの水溶性塩、水素化ヤシ油脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸ナトリウム等の水溶性の高級脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸塩、高級アルキルスルホン酸塩、1,2−ジヒドロキシプロパンスルホン酸塩の高級脂肪酸エステル、N−ラウロイル、N−ミリストイルまたはN−パルミトイルザルコシンのナトリウム、カリウムまたはエタノールアミン塩等の低級脂肪族アミノカルボン酸化合物の実質的に飽和の高級脂肪酸アシルアミドなどのアニオン活性成分、ショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル、マルトトリイトール脂肪酸エステル、マルトテトライトール脂肪酸エステル、マルトペンタイトール脂肪酸エステル、マルトヘキサイトール脂肪酸エステル、マルトヘプタイトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステル、ラクチノース脂肪酸エステルなどの糖脂肪酸エステル、ステアリン酸モノグリセライド、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(10,20,40,60,80,100モル)硬化ヒマシ油、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの重合物およびポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノラウリルエステル等のポリエチレンオキサイドと脂肪酸、脂肪アルコール、多価アルコールおよびポリプロピレンオキサイドとの縮合生成物等のノニオン界面活性成分、ベタイン型、アミノ酸型等の界面活性成分が挙げられる。
【0025】
甘味成分としては、サッカリンナトリウム、アセスルファームK、ステビオサイド、グリチルリチン、ペリラルチン、タウマチン、アスパルチルフェニルアラニンメチルエステル、スクラロース、パラチノース、パラチニットなどが挙げられる。これらの甘味成分は、単独で用いても2種以上を併用してもよく、その配合量は、単独または2種以上の合計量として、本発明のPMTC用研磨材の全量に対して0.01〜5重量%である。
【0026】
香料成分としては、l−メントール、dl−メントール、カルボン、アネトール、オイゲノール、サリチル酸メチル、リモネン、オシメン、n−デシルアルコール、シトロネロール、α−テルピネオール、メチルアセテート、シトロネリルアセテート、メチルオイゲノール、シネオール、リナロール、エチルリナロール、ワニリン、チモール、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、桂皮油、ピメント油、珪藻油、シソ油、冬緑油、丁子油、ユーカリ油などが挙げられる。これらの香味成分は単独で用いても2種以上を併用してもよく、その配合量は、単独または2種以上の合計量として、本発明のPMTC用研磨材の全体に対して0.05〜10重量%、好ましくは0.1重量%ないし5重量%である。
【0027】
防腐成分としては、p−ヒドロキシメチル安息香酸、p−ヒドロキシエチル安息香酸、p−ヒドロキシプロピル安息香酸、p−ヒドロキシブチル安息香酸、安息香酸ナトリウム、低級脂肪酸モノグリセライド等が挙げられる。これらの防腐成分は単独で用いても2種以上を併用してもよく、その配合量は、単独または2種以上の合計量として、本発明のPMTC用研磨材の全体に対して0.001〜0.5重量%である。
【0028】
有効成分としては、アミノ安息香酸誘導体、塩化セチルピリジニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、ヘキセチジン、トリクロサンなどの殺菌剤、デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム、溶菌酵素(リテックエンザイム)などの酵素、モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸カリウムなどのアルカリ金属モノフルオロホスフェート、フッ化ナトリウム、フッ化第一スズなどのフッ化物、ビタミン誘導体、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、アルミニウムクロルヒドロキシルアラントイン、サンギナリン、アラントイン、ジヒドロコレステロール、グリチルリチン塩類、グリチルレチン酸、グリセロホスフェート、クロロフィル、塩化ナトリウム、カロペプタイド、水溶性無機リン酸化合物などが挙げられる。これらの有効成分は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0029】
着色成分としては、赤色2号、赤色3号、赤色225号、赤色226号、黄色4号、黄色5号、黄色205号、青色1号、青色2号、青色201号、青色204号、緑色3号、二酸化チタン、雲母チタン、酸化チタン等挙げられる。これらの着色成分は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0030】
pH調整成分としては、塩酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、酢酸、リン酸、ピロリン酸、グリセロリン酸やこれらの各種塩、ならびに水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどを挙げることができる。本発明のPMTC用研磨材のpHは2%水溶液において5〜9、好ましくは6〜8の範囲になるように調整される。
【実施例】
【0031】
以下に試験例および実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、特に断らない限り、[%]は[重量%]を示す。
【0032】
実施例1(ペースト状PMTC用研磨材)
無水ケイ酸A(シリカ:平均粒径4μm、吸油量50mL/100g) 20%
無水ケイ酸B(シリカ:平均粒径9μm、吸油量110mL/100g) 20%
ソルビット液 25%
グリセリン 20%
ポリエチレングリコール 3.0%
ラウリル硫酸ナトリウム 0.5%
ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸二ナトリウム 0.2%
酸化チタン 0.5%
カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.5%
メチルパラベン 0.1%
香料 0.5%
青色1号 0.001%
水 残部
【0033】
比較例1(ステイン除去用市販PMTC用研磨材)
パミス(軽石) 25%(分析値)
グリセリン
カルボキシメチルセルロースナトリウム
パラベン
モノフルオロリン酸ナトリウム
その他
【0034】
評価1:ステイン除去力
2×2mmに切削加工した牛歯エナメル質表面を鏡面研磨し、0.2mol%塩酸に60秒間浸漬し、イオン交換水で洗浄後、飽和炭酸ナトリウム水溶液に30秒間浸漬し、イオン交換水で洗浄後1%フィチン酸溶液に60秒間浸漬しイオン交換水で洗浄した。この試験片に擬似ステイン液(市販のインスタント紅茶ティーバッグ2袋を10分間沸騰させた1Lの蒸留水に市販のインスタントコーヒー3.4gと豚胃ムチン2.5gを加えた溶液)に3日間浸漬して擬似ステインを付着させ、乾燥後、色彩色差計CR241(ミノルタ株式会社製)にて測色した。その後、実施例1、比較例1のPMTC用研磨材0.25gとイオン交換水30μLを試験片上に乗せ、3000rpm、30秒間、荷重150gの条件で、ポリッシングブラシを用いて試験片の表面を研磨した後、研磨前と同じ部位を色彩色差計にて測色し、研磨前後の歯面の色の変化(ΔL)を求めた。研磨前後の歯面の色の変化、すなわちΔL値が大きいほど、付着させたステインが除去されていることを示す。実験の結果を図1に示した。
【0035】
図1に示したとおり、実施例1はパミスを使用した比較例1と同等以上のステイン除去力を有することが判った。
【0036】
評価2 PMTC後の歯牙表面(エナメル質)の粗さ
2×2mmに切削加工した牛歯エナメル質表面を鏡面研磨し、実施例1、比較例1のPMTC用研磨材0.25gとイオン交換水30μLを試験片上に乗せ、3000rpm、30秒間、荷重150gの条件で、ポリッシングブラシを用いて試験片の表面を研磨した。研磨部位の表面微細形状を、表面粗さ計サーフコム1400(株式会社東京精密製)を用いて測定した。実験の結果を図2および3に示した。グラフの波形は研磨後の牛歯エナメル質表面の微細構造を示している。
【0037】
グラフに示されたとおり、実施例1を用いたPMTCを行った牛歯エナメル質の表面は凹凸が殆どないことから、エナメル質表面は損傷を受けていないことを示している。一方比較例1を用いたPMTCを行った牛歯エナメル質の表面は大きな凹凸が無数に存在していることから、エナメル質表面は大きな損傷を受けていることは明らかである。
【0038】
評価1と評価2の結果から、実施例1を用いたPMTCは歯面を研磨すると歯面を損傷することなくステインを除去できていた。これに対し、比較例1を用いて歯面を研磨するとステインを除去できるものの、歯面を損傷してしまっていることが確認された。
【0039】
実施例2(粉体状)
無水ケイ酸A(平均粒径4μm、吸油量60mL/100g) 60%
無水ケイ酸B(平均粒径11μm、吸油量100mL/100g)40%
【0040】
実施例3(湿潤粉体状)
無水ケイ酸A(平均粒径2μm、吸油量40mL/100g) 20%
無水ケイ酸B(平均粒径12μm、吸油量130mL/100g)60%
グリセリン 5.0%
プロピレングリコール 3.0%
カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.2%
香料 0.1%
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40 0.1%
雲母チタン 0.1%
水 残部
【0041】
実施例4(ペースト状)
無水ケイ酸A(平均粒径5μm、吸油量30mL/100g) 10%
無水ケイ酸B(平均粒径12μm、吸油量100mL/100g)30%
グリセリン 15%
キシリトール 20%
プロピレングリコール 5.0%
ラウリル硫酸ナトリウム 2.0%
キサンタンガム 1.0%
サッカリンナトリウム 0.1%
香料 0.6%
フッ化ナトリウム 0.2%
水 残部
(無水ケイ酸の吸油量と配合量の積の和:33)
【0042】
実施例5(ペースト状)
無水ケイ酸A(平均粒径1μm、吸油量70mL/100g) 24%
無水ケイ酸B(平均粒径6μm、吸油量130mL/100g) 12%
グリセリン 30%
パラチニット 10%
エリスリトール 5.0%
ラウロイルサルコシンナトリウム 0.5%
ポリアクリル酸ナトリウム 1.0%
ステビオサイド 0.1%
香料 0.6%
塩酸クロルヘキシジン 0.1%
水 残部
(無水ケイ酸の吸油量と配合量の積の和:32.4(mL))
【0043】
実施例6(ペースト状)
無水ケイ酸A(平均粒径3μm、吸油量40mL/100g) 25%
無水ケイ酸B(平均粒径8μm、吸油量120mL/100g) 25%
グリセリン 10%
マルチトール 30%
エチレングリコール 5.0%
コカミドプロピルベタイン 1.5%
ヒドロキシエチルセルロース 1.0%
サッカリンナトリウム 0.1%
香料 0.6%
酢酸トコフェロール 0.2%
水 残部
(無水ケイ酸の吸油量と配合量の積の和:40(mL))
【0044】
実施例7(ペースト状)
無水ケイ酸A(平均粒径3μm、吸油量70mL/100g) 12%
無水ケイ酸B(平均粒径9μm、吸油量120mL/100g) 15%
リン酸水素カルシウム無水和物 10%
グリセリン 20%
ラクチトール 15%
パラチニット 10%
ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート 1.0%
ピロリン酸ナトリウム 0.5%
アルギン酸ナトリウム 0.5%
香料 0.5%
安息香酸ナトリウム 0.2%
塩化セチルピリジニウム 0.1%
クエン酸 0.15%
クエン酸三ナトリウム 0.1%
黄色205号 0.0002%
緑色3号 0.0001%
水 残部
(無水ケイ酸の吸油量と配合量の積の和:26.4(mL))
【0045】
実施例8(懸濁状)
無水ケイ酸A(平均粒径4μm、吸油量60mL/100g) 18%
無水ケイ酸B(平均粒径10μm、吸油量120mL/100g) 20%
グリセリン 15%
エリスリトール 10%
ポロキサマー407 2.0%
香料 0.5%
安息香酸ナトリウム 0.2%
カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.1%
トリクロサン 0.3%
リン酸水素二ナトリウム 0.1%
リン酸二水素ナトリウム 0.05%
青色1号 0.00005%
水 残部
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】ステイン除去試験の結果を示した説明図である。
【図2】処理後の牛歯エナメル質表面の微細構造を示した説明図である。(比較例1)
【図3】処理後の牛歯エナメル質表面の微細構造を示した説明図である。(実施例1)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が1〜5μm、吸油量が30〜70mL/100gである無水ケイ酸(A)と平均粒子径が6〜12μm、吸油量が100〜130mL/100gである無水ケイ酸(B)を配合し、無水ケイ酸(A)と(B)の配合比が1:3〜2:1であることを特徴とするPMTC用研磨材。
【請求項2】
無水ケイ酸(A)を10重量%以上、無水ケイ酸(B)を10重量%以上配合し、無水ケイ酸(A)と(B)の配合量の合計が、35〜80重量%であることを特徴とする請求項1に記載のPMTC用研磨材。
【請求項3】
PMTC用研磨材100g中に、無水ケイ酸(A)をC(g)配合し、無水ケイ酸(B)をD(g)配合し、かつ無水ケイ酸(A)の吸油量がE(mL/g)、無水ケイ酸(B)の吸油量がF(mL/g)である場合、CとEの積とDとFの積の和が25〜40mLであることを特徴とする請求項1または2に記載のPMTC用研磨材。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−169165(P2008−169165A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−5237(P2007−5237)
【出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【出願人】(000106324)サンスター株式会社 (200)
【Fターム(参考)】