説明

PONシステムの局側端局装置における光接続装置

【解決手段】下り光信号を生成するためのレーザダイオード42と、光路を複数本に分岐する光スプリッタ45と、上り/下り光信号を分離する複数のWDM46と、PONシステムの光ファイバに接続される光コネクタポート47と、上り光信号を受光する複数光のフォトダイオード51と、複数のフォトダイオード51から出力される各上り電気信号を混合する混合回路53とを備える。
【効果】子局ONUから伝送される上り光信号は、WDM46で分離され、WDM46の上り信号の出口から直接、フォトダイオード51にそれぞれ入り、電気信号に変換されて混合される。すなわち、光スプリッタ45を通らないので、上り光信号が光カプラで挿入損失等を受けて、光接続装置40に届くときには、光強度が減衰して受信感度に余裕がなくなっていても、光接続装置40の光コネクタポート47に入ってからフォトダイオード51に到達するまで、それ以上の減衰は免れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親局と複数の子局との間で光ファイバを介して光通信を行うPON(Passive Optical Network)システムの親局の局側端局装置に装備され、電気信号と光信号とを変換する光接続装置に関し、特に子局を多く収容することができる光接続装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
局側端局装置OLT(Optical Line Terminal:光加入者線局側端局装置)と、複数の子局ONU(Optical Network Unit:光加入者側端末)との間を、光データ通信ネットワークを使って双方向通信する光通信システムがある。
この光通信システムのうち、局側端局装置OLTから接続される1本の光ファイバを、複数の子局ONUで共有するPON(Passive Optical Network)システム(PDS(Passive Double Star)ともいう。)が実用化されている。
【0003】
PONシステムは、局側端局装置OLTと、特に外部からの電源供給を必要とせず入力された信号を受動的(Passive)に分岐する受動型光分岐器(以下、単に光カプラという。)とが、伝搬モードが単一であるシングルモードファイバ(Single Mode Fiber:以下、単に光ファイバという。)で接続されている。
子局ONUは通常、複数あり、局側端局装置OLTと複数の子局ONUとは、光ファイバおよび光カプラを介して接続された1対Nの伝送を基本としている。これにより、1つの局側端局装置OLTに対して、N個の子局ONUを割り当てることができ、全体的な設備コストを抑えることができる。
【0004】
なお、PONシステムでは、局側端局装置OLTから子局ONUに送信される下り光信号は、全子局ONUに同時に配信されるが、論理リンクの識別子が付加されており、当該論理リンクを構成する子局ONUのみが光信号を取り込むことができる。そして、子局ONUから送信される上り光信号は、他の子局ONUと衝突しないように、各子局ONUの送信時間が割り当てされている(時分割多重)。
【0005】
このPONシステムでの光伝送路損失は、光ファイバの距離(約0.4dB/km)、光カプラでの分岐数(2分岐あたり3dB)などの合計値に基づいて算出される。光カプラでの分岐による光伝送路損失は2分岐あたり3dBであることを考えると、光伝送路20km以上、パワーバジェット(送信器の最低出力と受信器の最低感度の差)29dBという条件では、最大32分岐までしか分岐をすることができない。すなわち従来技術の範囲内でのPONシステムでは、1局の局側端局装置OLTに対する子局ONUの数は、実質(特に短い距離でない限り)32局に制限されていたといえる。このような32分岐のPONシステムは、例えば図6に示すように、局側端局装置OLT側の局舎内で4分岐、子局ONU側は架空クロージャ内などで8分岐といった構成となっている。
【0006】
図6は、PONシステムでの従来の局側端局装置OLTの内部構成を示すブロック図である。
局側端局装置OLTは、インターネットなど上位ネットワークとの接続インターフェイスであるSNI(System Network Interface)回路20と、SNI回路20に接続され上位レイヤー(MAC層)のユーザデータを扱うMAC(Media Access Controller)回路30と、MAC回路30と光ネットワークとの接続インターフェイスである光接続装置60とを備えている。
【0007】
MAC回路30は、複数の子局ONUとの通信を確立するため、通信する子局ONUの指定や送受信のタイミングなどを制御する。光接続装置60は、電気コネクタポート49を介してMAC回路30に接続され、子局ONUへの下り信号を扱う下り系統と子局ONUからの上り信号を扱う上り系統とに分かれている。
下り系統は、MAC回路30から電気信号を受信し、レーザダイオード62を駆動するための電気信号を生成するドライバ回路61、ドライバ回路61で生成された電気信号を光信号に変換するレーザダイオード62、光波長多重素子(WDM)63及び光コネクタポートCN64を備えている。
【0008】
光波長多重素子(WDM)63は、1又は複数の光入口から入る下り光信号を混合して光コネクタポート64に送り出し、光コネクタポート64からの上り信号の波長を、1又は複数の光出口に分離する。光コネクタポート64は、局側端局装置OLTと外部の幹線光ファイバ70との光結合をさせる受動素子である。
上り系統は、光コネクタポート64、光波長多重素子(WDM)63、フォトダイオード(PD)65及び電気信号増幅器(プリアンプ)66を備えている。幹線光ファイバ70を伝送してきた上り信号は、光コネクタポート64と光波長多重素子63とを通過し、フォトダイオード65によって電気信号に変換される。フォトダイオード65で変換された電気信号は、電気信号増幅器66で増幅され、MAC回路30、SNI回路20を通って、上位ネットワークに供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006-352350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
PONシステムのような上り時分割多重を前提としたシステムにおいて、分岐数をさらに増加させて、1台の局側端局装置OLTに、より多数の子局ONUを接続することで、安価で効率的なシステムを構築することが望まれている。
PONシステムにぶら下がる子局ONUを増やすためには、光カプラの分岐数を増やさなければいけない。しかし、光カプラの分岐数を増やすには、光カプラと複数の子局ONUとの間に、さらに他の光カプラを挿入しなければならなくなり、光カプラの挿入段数に応じて挿入損失が増加する。このため、子局ONUから発光される上り光信号は、光カプラで大きな挿入損失を受けて、局側端局装置OLTに届くときには、光強度が減衰して弱い光になってしまい、S/Nが劣化し十分な伝送速度が確保できなくなる。
【0011】
なお、局側端局装置OLTの電気信号部分で上り下り信号をN(N:複数)グループに分岐し、N個の1対1光電変換装置に接続する提案(特許文献1)がある。この場合、局側端局装置OLTの電気基板と光電変換装置とは電気コネクタを介して接続される。従って電気基板側ではあらかじめ分岐数を決定して配線を準備しておく必要がある。また、接続する光電変換装置の数に応じて、使用しない場合の終端抵抗などが必要となる。さらに、同じ電気信号に対する受発光素子基板をN個実装することになり効率的でない面もある。
【0012】
本発明はこのような状況でなされたもので、子局ONUに対する分岐数を増やすことが容易にできる、PONシステムの局側端局装置に設置される光接続装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の光接続装置は、PONシステムの親局の端局装置に装備され、電気信号と光信号とを変換する光接続装置であって、下り電気信号を入力するための電気入出力部と、電気入出力部から入力された電気信号に基づいて、下り光信号を生成する発光素子と、発光素子により生成された光信号の光路を複数本に分岐する光分岐素子と、光分岐素子の各光出口にそれぞれ接続され、上り/下り光信号を分離する複数の多重分離手段と、複数の多重分離手段の下り光信号の光出口にそれぞれ接続され、PONシステムの光ファイバに接続される光コネクタポートと、複数の多重分離手段の上り信号の光出口にそれぞれ接続され、子局の端局装置から伝送される上り光信号を受光する、光コネクタポートと同数の光受光素子と、複数の光受光素子から出力される各上り電気信号を混合する混合回路とを備えるものである。
【0014】
この構成によれば、送信側の下り信号は発光素子によって光信号に変換され、光分岐素子で分岐され、それぞれ多重分離手段、光コネクタポートを通して光ファイバに接続される。子局ONUから伝送される上り光信号は、多重分離手段で分離され、多重分離手段の上り信号の出口から直接、光受光素子にそれぞれ入り、電気信号に変換されて混合される。すなわち、光分岐素子を通らない。よって、上り光信号が光カプラで挿入損失等を受けて、光接続装置に届くときには、光強度が減衰して受信感度に余裕がなくなってしまっても、光接続装置光コネクタポートに入ってから光受光素子に到達するまで、それ以上の減衰は免れる。したがって、光受光素子において上り電気信号に変換された段階で、「S/Nが劣化し十分な伝送速度が確保できなくなる」という欠点がない。
【0015】
なお下り送信側は光分岐素子を通って分岐されるが、発光素子の発光電力を予め大きなものに設定する等の措置により、光分岐素子を通過することによる損失を回避することができる。
本発明の光接続装置は、光コネクタポートの数にかかわらず、同一の基板構成であり、電気入出力部及び光コネクタポートは基板間で互換性を持ち、基板の差し替えが可能であることが好ましい(請求項2)。子局ONU数など光ネットワークの規模に応じて、光接続装置に要求される光コネクタポート数がまちまちであるが、この構成によれば、光コネクタポート数の違う基板間で差し替えができる。よって、いかなる規模の光ネットワークに対しても簡単に対応できる。
【0016】
本発明の光接続装置は、発光素子により生成された光信号を増幅する光増幅素子をさらに有し、光分岐素子は、光増幅素子によって増幅された光を複数本に分岐するものであってもよい(請求項3)。この光増幅素子を利用して光強度を増幅することにより、光分岐素子を通過することによる損失を回避することができる。
発光素子は、発光波長の違う複数の発光素子を含み、各発光素子と光分岐素子との間に、発光素子から出力され波長の違う光信号を合波する合波器が介在する構成であっても良い(請求項4)。複数の発光素子を用いることにより、光信号の波長数を増やすことができ、伝送する情報量を増やすことができる。
【0017】
発光素子は、発光波長の違う複数の発光素子を含み、光分岐素子は複数の光分岐素子を含み、各発光素子に、複数の光分岐素子が、それぞれ接続されている構成であっても良い(請求項5)。この構成においても、複数の発光素子を用いることにより、光信号の波長数を増やすことができ、伝送する情報量を増やすことができる。また、この構成では、光分岐素子は複数必要になるが、合波器は不要となる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように本発明によれば、上り信号については光分岐素子による挿入損失を増加させることなく、1局の局側端局装置が収容できる子局の局数を増やすことできる。また、基板の差し替えが可能であれば、光接続装置の上位につながる装置には、従来からある装置を使用することができる。これにより、既存の施設や装置を活用することでコストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】局側端局装置OLTと複数の子局ONUとの間を、幹線光ファイバ70、光カプラ80、光ファイバ71を介して接続したPONシステムのネットワーク構成例を示す概略図である。
【図2】局側端局装置OLTに設置された本発明の実施形態に係る光接続装置のブロック構成図である。
【図3】他の実施形態に係る、局側端局装置OLTに設置された光接続装置のブロック構成図である。
【図4】さらに他の実施形態に係る、局側端局装置OLTに設置された光接続装置のブロック構成図である。
【図5】一つの局側端局装置OLTにおいて、1ポートの光接続装置基板とNポートの光接続装置基板とを、PONシステムのネックワーク形態に応じて差し替えることが可能なことを示す模式図である。
【図6】PONシステムでの従来の局側端局装置OLTの内部構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、局側端局装置OLTと複数の子局ONUとの間を、幹線光ファイバ70、光カプラ80、光ファイバ71を介して接続したPONシステムの構成例を示す概略図である。
PONシステムは、PON(Passive Optical Network)技術に、ギガビットイーサネット(Gigabit Ethernet)(イーサネット(Ethernet)は、登録商標である。)技術を取り込み、高速のベースバンド速度で光ファイバのアクセス区間通信を実現するGE−PON(Gigabit Ethernet-Passive Optical Network)方式を採用している。
【0021】
PONシステムは、局舎に備えられる局側端局装置OLTと複数の加入者宅に備えられる子局ONUとが、局側端局装置OLTに直接つながっている幹線光ファイバ70と光分岐器としての光カプラ80と子局ONUに直接つながっている光ファイバ71とを介して接続されている。
局側端局装置OLTから直接分岐される幹線光ファイバ70の本数は複数Nであり、この例ではN=4本となっている。それぞれの幹線光ファイバ70には、局側端局装置OLTから、同一内容の光信号が伝送される。
【0022】
子局ONUは、加入者宅内に設置されるパーソナルコンピュータ、ネットワークプレーヤなど、光ネットワークサービスを享受する端末を接続するためのネットワークインタフェースを備えている。
光カプラ80は、特に外部からの電源供給を必要とせず入力された信号から受動的に信号を分岐・多重するスターカプラで構成されている。
【0023】
光ファイバ70,71は、好ましくは1本の光ファイバからなるシングルモードファイバ(Single Mode Fiber)が用いられる。
図2は、局側端局装置OLTに設置された光接続装置40を示すブロック構成図である。
局側端局装置OLTは、インターネットなど上位ネットワークとの接続インターフェイスであるSNI(System Network Interface)回路と、SNI回路20に接続され上位レイヤー(MAC層)のユーザデータを扱うMAC(Media Access Controller)回路と、MAC回路30と光ネットワークとの接続インターフェイスである光接続装置40とを備えている。MAC回路30は、複数の子局ONUとの通信を確立するため、通信する子局ONUの指定や送受信のタイミングなどを制御する。
【0024】
SNI回路20とMAC回路30、MAC回路30と光接続装置40はそれぞれ電気信号で接続されている。特にMAC回路30と光接続装置40との間の接続ポートを「電気コネクタポート49」という。電気コネクタポート49における電気信号の接続条件(端子本数、信号の種類、レベルなど)は、図6を用いて説明した従来の電気信号の接続条件と同一である。
【0025】
光接続装置40の内部は、子局ONUへの下り信号を扱う下り系統と子局ONUからの上り信号を扱う上り系統とに分かれている。
下り系統は、MAC回路30から電気信号を受信し、レーザダイオード42を駆動するための電気信号を生成するドライバ回路41、ドライバ回路41で生成された電気信号を光信号に変換するレーザダイオード42、光増幅素子43、光フィルタ44、光スプリッタ45、光波長多重素子(WDM)46、光コネクタポート47を備えている。
【0026】
光増幅素子43は、光スプリッタ45での分岐の損失を補うためにレーザダイオード42から発光された光の強度を増幅する素子である。光増幅素子43の設置に代えて、レーザダイオード42の駆動電流を増加させてもよい。分布帰還型半導体レーザ(Distributed FeedBack Laser Diode)など高電力の素子を使用することで、発光パワーを上げることもできる。光フィルタ44は、レーザダイオード42や光増幅素子43で発生する雑音光(ASE)が伝送性能に影響を与えないように、下り信号を通過させ雑音光を減衰させるための波長帯域通過フィルタである。
【0027】
光スプリッタ45は1つの光導波路から入射する光信号を複数Nの光導波路に分割して送り出す素子である。特に外部からの電源供給を必要とせず入力された信号から受動的に信号を分岐するスターカプラで構成されている。前述した光カプラ80と同じ部品であるが、光の伝搬方向が単一であるために「光スプリッタ」という語を用いた。この例では、1つの光信号を4つの光信号に分割する。
【0028】
光波長多重素子46は、各光信号に対応してN個備えられ(この例では4つ)、1又は複数の光入口から入る下り光信号を混合して光コネクタポート47に送り出し、光コネクタポート47からの上り信号の波長を1又は複数の光出口に分離する。
光コネクタポート47はN個備えられ、それぞれ、局側端局装置OLTと外部の幹線光ファイバ70との光結合をさせる受動素子である。
【0029】
上り系統は、N本の幹線光ファイバ70に対応した数だけあり(この例では4つ)、前記光コネクタポート47、前記光波長多重素子46、フォトダイオード(PD)51、電気信号増幅器(プリアンプ)52、混合回路53を備えている。
各幹線光ファイバ70を伝送してきた上り信号は、光コネクタポート47と光波長多重素子46とを通過し、フォトダイオード51で電気信号に変換される。幹線光ファイバ70を伝送してきた上り信号は、光ネットワークの損失のため微弱になっており、変換される電気信号も微弱なものになる。このため、フォトダイオード51には、微弱な光信号の受信特性に優れるアバランシェ・フォトダイオード(APD)を使用することが好ましい。フォトダイオード51で変換された電気信号は、電気信号増幅器52で増幅される。
【0030】
混合回路53は、電気信号増幅器52で増幅されたN個の電気信号を混合する回路である。各子局ONUから送られてくる光信号は時分割多重方式であるため、混合回路53は論理的な“OR”をとる回路であればよい。なお、結線により論理和が実現できるバイアス条件が満たされているときは、単に結線するだけでもよい(Wired OR回路)。また、加算回路・OR回路・選択回路のいずれか若しくはすべてを含んで構成され、必要に応じていずれかの電気信号を参照するような回路であってもよい。
【0031】
混合回路53で1つにされた電気信号は、電気コネクタポート49を通って、MAC回路30、SNI回路20、上位ネットワークに供給される。
以上のように本実施の形態の光接続装置40によれば、下り系統において、レーザダイオード42で生成された光信号を、光スプリッタ45で複数Nの光導波路に分割して送り出す。この光スプリッタ45のN分岐に基づいて発生する損失は、レーザダイオード42若しくは光増幅素子43で補償できる。したがって、幹線光ファイバ70を伝送する光信号であって、多数の光カプラを通過し、光ネットワークの損失のため微弱になって子局ONUに届くであろう光信号を生成する際に、子局ONUの光受信器に過度の高感度化を要求することなく、この損失を見越した高い強度の光信号を送信することができる。
【0032】
上り系統においては、光ネットワークのN本の幹線光ファイバからそれぞれ入ってくる光を、N個のフォトダイオード51を使ってそれぞれ電気信号に変換する。したがって、フォトダイオード51の感度を、図6に示した従来の「1本の幹線光ファイバから光信号が入ってくる構成」におけるフォトダイオード65よりも高いものに設定する必要はなく、従来と同様の値に設定できる。このため、子局ONUの光送信器に過度の大電力化を強いることもない。
【0033】
また、MAC回路30から見れば、電気コネクタポート49につながれた図1の光接続装置40と、図6の光接続装置60とは、同一に見えるため、電気信号の種類、レベル等を変更する必要はない。なお、子局ONUの数が例えば32から128のように増加するのであれば、MAC回路30においてそれなりの数の子局ID(識別符号)を設定する必要がある。ただし子局IDの数は、MAC回路30が管理できる論理リンクの最大個数(例えば256個)以下の数とする。
【0034】
図3は、他の実施形態に係る、局側端局装置OLTに設置された光接続装置40のブロック構成図である。この図において上り系統は、図2に示したものと同じであるので図示を省略している。
光接続装置40の下り系統には、図2に示したものと違って、2個のレーザダイオード42a,42bが搭載され、2波長の下り光信号が伝送される。ただし、2波長に限定されるものではなく、もっと多数の波長の下り光信号が伝送されるようにしてもよい。
【0035】
下り系統は、MAC回路30から電気信号を受信しレーザダイオード42a,42bを駆動するための電気信号を生成するドライバ回路41a,41b、ドライバ回路41a,41bで生成された電気信号をそれぞれ光信号に変換するレーザダイオード42a,42b、光増幅素子43a,43b、光フィルタ44a,44b、第一の光波長多重素子48、光スプリッタ45、第二の光波長多重素子48、光コネクタポート47を備えている。
【0036】
第一の光波長多重素子48は、レーザダイオード42a,42bから発光された各光信号を合波するものである。この合波によって、光スプリッタ45の数は1つで済む。光スプリッタ45は、第一の光波長多重素子48から出射された光信号をN、例えば4つの光信号に分割するものである。第二の光波長多重素子46は、4個備えられ、光スプリッタ45につながる光出口から入る下り光信号を混合して光コネクタポート47に送り出す。
【0037】
以上のように図3の光接続装置40によれば、下り系統において、各レーザダイオード42で生成された光信号を第一の光波長多重素子48で合波した後、光スプリッタ45でNの光導波路に分割して送り出す。各分割された光は、2つの波長の光が共存しているので、各波長の光ごとに情報を載せることができる。
また、PONシステムの子局ONUの規模や情報量に応じて、すべてのレーザダイオード42a,42bを運用する形態と、一部のレーザダイオード42aのみを運用する形態とを使い分けることもできる。すなわち、PONシステムの運用当初は子局ONU規模や伝送する情報量が少ないので、一部のレーザダイオード42aのみを運用し、規模や情報量が増えてくれば、光接続装置40の基板はそのままで運用するレーザダイオード42a,42bの数を増やしていく。
【0038】
この光スプリッタ45の分岐に基づいて発生する損失は、レーザダイオード42a,42b若しくは光増幅素子43a,43bで補償できることは、図2を用いて説明したとおりである。したがって、局側端局装置OLTは大きな強度の光信号を送信することができ、子局ONUの光受信器に過度の高感度化を要求することがないので、子局ONUを安価に製造できる。
【0039】
図4は、さらに他の実施形態に係る、局側端局装置OLTに設置された光接続装置40のブロック構成図である。この図においても上り系統は、図2に示したものと同じであるので図示を省略している。
光接続装置40の下り系統は、図2に示したものと違って、2個のレーザダイオード42a,42bが搭載され、2波長の下り光信号が伝送される。ただし、2波長に限定されるものではなく、もっと多数の波長の下り光信号が伝送されるようにしてもよい。
【0040】
下り系統は、MAC回路30から電気信号を受信しレーザダイオード42a,42bを駆動するための電気信号を生成するドライバ回路41a,41b、ドライバ回路41a,41bで生成された電気信号をそれぞれ光信号に変換するレーザダイオード42a,42b、光増幅素子43a,43b、光フィルタ44a,44b、複数の光スプリッタ45a,45b、光波長多重素子46、光コネクタポート47を備えている。
【0041】
それぞれの光スプリッタ45a,45bは、レーザダイオード42a,42bから発光された各光信号をN、例えば4つの光信号に分割するものである。光波長多重素子46は、4個備えられ、光スプリッタ45aにつながる光入口、光スプリッタ45bにつながる光入口から入るそれぞれの下り光信号を混合して光コネクタポート47に送り出す。
図4の光接続装置40によれば、図3の光接続装置40と違って、光スプリッタ45の数は1つでなく2つ必要となるが、第一の光波長多重素子48を省略できるので、第一の光波長多重素子48の挿入に基づく損失を回避できる。
【0042】
今までの実施形態では、光コネクタポート47からネットワークに出射される光の本数Nは“4”であった。しかし、“4”という数は固定された数ではなく、N=2の光接続装置40を搭載した基板も、N=1の光接続装置40を搭載した基板も製作することができる。
光接続装置40の製作元がN=1,N=2,N=4の光接続基板をそれぞれ製作し、局側端局装置OLTにつながるべき幹線光ファイバ70の数に応じて光コネクタポート数N=1,N=2又はN=4の光接続基板を選択してマウントするようにしてもよい。また、光ネットワークの最初の構築時点ではN=1の光接続基板をマウントし、子局ONUの個数が増えるに従って、光コネクタポート数Nの多い光接続基板に差し替えてもよい。このような差し替えができる理由は、図2を用いて説明したように、MAC回路30と光接続装置40との電気信号の接続条件(本数、レベルなど)が統一されているからである。
【0043】
図5は、一つの局側端局装置OLTにおいて、光コネクタポート数が1ポートの光接続部基板とNポートの光接続部基板とを、PONシステムのネックワーク形態に応じて差し替えることが可能な光通信システムを示している。光接続装置40の光コネクタポート数を“N”として、N=2,4を想定している。
例えば、図5(a)において、PONシステムは、局側端局装置OLTからつながる1ポートの幹線光ファイバが使用されているので1ポートの光接続部基板を使用している。図5(b)において、局側端局装置OLTからつながる2ポートの幹線光ファイバが接続されることとなれば2ポートの光接続部基板に差し替えることができる。図5(c)において、将来4ポートに増設されたときに、4ポートの光接続部基板に差し替えることができる。
【0044】
この差し替えの手順を、図5(a)の1ポートの光接続部基板から、図5(c)の4ポートの光接続部基板への交換を例にとって説明する。
光接続部基板の装着端子の特定の2つのピンは短絡されている。光接続部基板を受け入れる側の端子のうち、前記特定の2つのピンに対応する端子のうち1つは接地されているので、他の1つの端子の電位を調べることにより、光接続部基板の装着を認識することができる。そこで、1ポートの光接続部基板が取り外されて、4ポートの光接続部基板が装着されると、「他の1つの端子」の電位が接地電位になり、これをきっかけにして、新しく装着された光接続部基板のポート数、レーザダイオードの情報等(光接続部基板のメモリに記載されている)を読み込み、これらの情報をMAC回路に知らせる。
【0045】
つぎに、図2〜図4の光接続装置40の構成において、フォトダイオード51を子局ONUからの上り光信号の有無に応じて、電源オフにする手順について説明する。まずMAC回路からの定期的な指令により、(1)光接続装置40は応答する子局ONUの有無に係わらず、すべてのフォトダイオード51のバイアス電源をオンにする。(2)ディスカバリ・フレームを含む光信号をネットワークに送信する。(3)この送信を受けて、通信要求のある子局ONUのみが応答してくる。(4)応答してきた子局ONUとの間でIDなどを決定しコネクションを成立させる。(5)コネクションが成立した子局ONUを含む光コネクタポートにつながるフォトダイオード51のみ、バイアス電源を引き続きオンにし、それ以外のフォトダイオード51のバイアス電源をオフにする。以上の手順を実行することにより、使用しないフォトダイオード51をオフにできるので、子局ONUにおける電力の節約ができる。
【0046】
以上で、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の実施は、の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0047】
40 光接続装置
42 レーザダイオード(発光素子)
43 光増幅素子
45 光スプリッタ(光分岐素子)
46 光波長多重素子(多重分離手段)
47 光コネクタポート
48 光波長多重素子(合波器)
49 電気コネクタポート
51 フォトダイオード(光受光素子)
53 混合回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親局と複数の子局との間で光ファイバを介して光通信を行うPON(Passive Optical Network)システムの親局の端局装置に装備され、電気信号と光信号とを変換する光接続装置であって、
電気信号を入出力するための電気入出力部と、
前記電気入出力部から入力された電気信号に基づいて、下り光信号を生成する発光素子と、
前記発光素子により生成された光信号の光路を複数本に分岐する光分岐素子と、
前記光分岐素子の各光出口にそれぞれ接続され、上り/下り光信号を分離する複数の多重分離手段と、
前記複数の多重分離手段の下り光信号の光出口にそれぞれ接続され、PONシステムの光ファイバに接続される光コネクタポートと、
前記複数の多重分離手段の上り信号の光出口にそれぞれ接続され、子局の端局装置から伝送される上り光信号を受光する、前記光コネクタポートと同数の光受光素子と、
前記複数の光受光素子から出力される各上り電気信号を混合する混合回路とを備える、光接続装置。
【請求項2】
前記光コネクタポートの数にかかわらず同一の基板構成であり、前記電気入出力部及び前記光コネクタポートは基板間で互換性を持ち、基板の差し替えが可能である、請求項1に記載の光接続装置。
【請求項3】
前記発光素子により生成された光信号を増幅する光増幅素子をさらに有し、
前記光分岐素子は、前記光増幅素子によって増幅された光を複数本に分岐するものである、請求項1又は請求項2に記載の光接続装置。
【請求項4】
前記発光素子は、発光波長の違う複数の発光素子を含み、
前記各発光素子と前記光分岐素子との間に、発光素子から出力され波長の違う光信号を合波する合波器が介在する請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の光接続装置。
【請求項5】
前記発光素子は、発光波長の違う複数の発光素子を含み、
前記光分岐素子は複数の光分岐素子を含み、
前記各発光素子に、複数の前記光分岐素子が、それぞれ接続されている請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の光接続装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−26791(P2013−26791A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159191(P2011−159191)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】