PPAR受容体及びEGF受容体に特異的な化合物及びそれらの塩並びに医療分野におけるそれらの使用
本発明は、一般式(I)を有する化合物に関するものであり、式中、R1及びR2は、同一でも異なってもよく、−H又は1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝アルキル基を含む群から選択されるか、一緒になって5個又は6個の原子の芳香族又は脂肪族環を形成しており;Y及びZは、同一でも異なってもよく、−H、−OH、−COOH、−OR3、−CH(OR3)COOHを含む群から選択され、ここでR3は、H、フェニル、ベンジル、−CF3又は−CF2CF3、ビニル、アリル及び1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝アルキル基から選択される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PPAR受容体及びEGF受容体に特異的な化合物及びそれらの塩並びに医療分野におけるそれらの使用に関する。
【0002】
発明の対象
とりわけ、本発明による化合物及びそれらの塩は、PPARγ受容体(ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体)及びEGF受容体(上皮成長因子受容体)を発現する腫瘍、例えば、食道、胃、膵臓、結腸、前立腺、乳房、子宮及び付属器、腎臓並びに肺の腫瘍などの予防及び治療に対して有利に使用することができる。更に、本発明による化合物及びそれらの塩は、慢性の炎症性疾患、とりわけ、クローン病及び潰瘍性結腸大腸炎などの慢性の腸疾患の治療のために使用することができる。
【背景技術】
【0003】
PPARγ受容体は、脂質代謝の制御、インスリンの合成並びに発癌及び炎症の過程に対して重要な多くの遺伝子の発現を調節する核内受容体(約50個の転写因子の群)である。(Bull AW、Arch Pathol Lab Med 2003年;127:1121〜1123頁)(Koeffler HP、Clin Cancer Res 2003年;9:1〜9頁)(Youssef Jら、J Biomed Biotec 2004年;3:156〜166頁)。
【0004】
PPARγ受容体に結合してそれらの立体構造を変化させ、活性化を引き起こす様々な天然及び合成アゴニストが存在する。天然及び合成リガンドは、The Lancet 2002年;360:1410〜1418頁に記載されている。
【0005】
最近の研究によれば、PPARγ受容体のリガンドによる腫瘍細胞の処理は、かかる化合物の発癌現象を阻止するための薬剤としての応用の可能性を示唆する細胞増殖、細胞分化及びアポトーシスの減少を引き起こすことを示している(Osawa Eら、Gastroenterology 2003年;124:361〜367頁)。
【0006】
他の研究によれば、PPARγ受容体のリガンド(例えばトログリタゾン)は、抗炎症作用を有しており、IBDの動物モデルにおける粘膜炎症反応を阻止することが示されている(Tanaka Tら、Cancer Res 2001年;61:2424〜2428頁)。
【0007】
更に、IBD治療の標準である5−ASAの腸抗炎症活性は、PPARγ受容体の結合、及びその結果として生じる活性化に依存するという証拠がごく最近公開された(Rousseaux Cら、J Exp Med 2005年;201:1205〜1215頁)。
【0008】
チロシンキナーゼEGF活性を有する膜貫通受容体は、様々なタイプの新生物において活性な形で非常に高度に発現する(Mendelsohn J、Endocr Relat Cancer 2001年;8:3〜9頁)(Harari PM、Endocr Relat Cancer 2004年;11:689〜708頁)。
【0009】
受容体の過剰発現は、また、癌性細胞が転移する潜在能力とも関係する。これに関連してEGFは、細胞外基質との相互作用のレベルの病変と関係する様々な種類の細胞の遊走及び侵襲性を促進することが実証されている(Bruntonら、Oncogene 1997年;14:283〜293頁)。
【0010】
実験動物について及びヒトにおいての両方で実施された多数の研究により、EGF受容体阻害薬の腫瘍の増殖及び伝播を制御する有効性が確立された(Mendelsohn J、Endocr Relat Cancer 2001年;8:3〜9)(Harari PM、Endocr Relat Cancer 2004年;11:689〜708頁)。
【0011】
EGF受容体の活性化が引き金となる細胞内シグナルが新生細胞の成長と生存を促進して病態の発達に寄与すること、及びかかるシグナルが腫瘍細胞の、離れた臓器に伝播し、定着する能力を決定する本質的要素であることは疑いの余地がない(Mendelsohn J、Endocr Relat Cancer 2001年;8:3〜9)(Kari Cら、Cancer Res 2003年;63:1〜5)。
【0012】
前述のことと更に生物学的観点から慢性の炎症過程が発癌の一翼を担うことを念頭に置くこととにより、化学物質であって、PPARγ受容体及びEGF受容体の両方に対するそれらの補足的な作用によって、化学的予防に役立ち、抗増殖性であり、抗転移性のタイプの抗炎症性及び制癌作用を発揮することができる新たな化学物質への画期的研究に対する誰もが認める必要性が存在することが明らかとなっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、PPARγ受容体及びEGF受容体等の特定の受容体の調節による癌及び慢性の炎症の予防及び治療に適する新規な種類の化合物を提供する。
【0014】
本発明は、新規で且つ独創的な一連の化合物の医学的及び治療上の使用に関する。これらの化合物が未知である限りにおいて、本発明は、これらの化合物にも関する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、一般式(I)
【化1】
を有する化合物に関するものであり、
式中、
R1及びR2は、同一でも異なってもよく、−H又は1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝アルキル基を含む群から選択されるか、一緒になって5個又は6個の原子の芳香族又は脂肪族環を形成しており;
Y及びZは、同一でも異なってもよく、−H、−OH、−COOH、−OR3、−CH(OR3)COOHを含む群から選択され、ここでR3は、H、フェニル、ベンジル、−CF3又は−CF2CF3、ビニル、アリル及び1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝アルキル基から選択される。
【0016】
本発明は、また、一般式(Ia)
【化2】
のサブグループの化合物に関するものであり、
式中、
R1及びR2は、同一でも異なってもよく、−H又は1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝アルキル基を含む群から選択され;
Y及びZは、同一でも異なってもよく、−H、−OH、−COOH、−OR3、−CH(OR3)COOHを含む群から選択され、ここでR3は、−H及び1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝アルキル基から選択される。
【0017】
本発明の実施形態によっては、ZとYとは異なる。本発明の実施形態によっては、Y又はZの少なくとも1つは、末端が−COOHである。従って、本発明のいくつかの実施形態において、Y又はZ(及び実施形態によってはY又はZの少なくとも1つ、及び実施形態によってはY又はZの1つだけ)は、−COOHである。本発明のいくつかの実施形態において、Y又はZ(及び実施形態によってはY又はZの少なくとも1つ、及び実施形態によってはY又はZの1つだけ)は、−CH(OR3)COOHである。
【0018】
本発明は、また、Y及びZが、同一でも異なってもよく、−H、−COOH、−OR3、−CH(OR3)COOHを含む群から選択されること以外は式(I)及び(Ia)の両方に合致する化合物に関する。従って、本発明のいくつかの実施形態において、Z又はYは、−OHでなくてよい。本発明のかかる実施形態においては、化合物10及び11は除外される。
【0019】
本発明の実施形態によっては、Yが−Hであり、Zが−CH(OH)COOHであるとき、基NR1R2は、3’位に結合している。かくして、本発明の実施形態によっては、化合物21は除外される。
【0020】
本発明の他の実施形態において、Zが−OCH3であり、Yが−COOHであるとき、基NR1R2は、4’位に結合している。かくして、本発明の実施形態によっては、化合物22は除外される。
【0021】
本発明の実施形態によっては、Yが−Hであり、Zが−CH(OCH3)COOHであるとき、基NR1R2は、4’位に結合している。かくして、本発明の実施形態によっては、化合物35は除外される。
【0022】
特に前述の1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝アルキル基は、−CH3、−CH2CH3、−CH(CH3)2、−CH2CH2CH3、−CnH2n−1から選択することができる。
【0023】
式(I)及び(Ia)の化合物は、
3−(3’−アミノフェニル)2−ヒドロキシプロパン酸(化合物20)
2−(4−アミノフェニル)2−メトキシ酢酸(化合物23)
2−(3−アミノフェニル)2−エトキシ酢酸(化合物32)
2−(4−アミノフェニル)2−エトキシ酢酸(化合物33)
3−(4’−アミノフェニル)2−メトキシプロピオン酸(化合物34)
3−(4’−アミノフェニル)2−エトキシプロピオン酸(化合物39)
3−(3’−アミノフェニル)2−エトキシプロピオン酸(化合物40)
を含む群から選択することができる。
【0024】
上記化合物の名前は、また、以下のような標準的な化学命名法(本文を通してこの命名法を使用する)で記すこともできる:
(±)−2−ヒドロキシ−3−(3’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物20)
(±)−2−メトキシ−2−(4’−アミノフェニル)酢酸(化合物23)
(±)−2−エトキシ−2−(3’−アミノフェニル)酢酸(化合物32)
(±)−2−エトキシ−2−(4’−アミノフェニル)酢酸(化合物33)
(±)−2−メトキシ−3−(4’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物34)
(±)−2−エトキシ−3−(4’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物39)
(±)−2−エトキシ−3−(3’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物40)
【0025】
本発明による化合物は、医療分野で有利に使用することができる。従って、本発明は、有効成分として上で定義した1つ又は複数の化合物を1つ又は複数の薬学的に許容できる賦形剤又は補助剤と組合せて含む薬剤組成物に関する。
【0026】
本発明は、更に、PPARγ受容体及びEGF受容体を発現する腫瘍、例えば、食道、胃、膵臓、結腸、前立腺、乳房の腫瘍、子宮及びその付属器の腫瘍、腎臓の腫瘍並びに肺の腫瘍の予防及び治療のための医薬品を調製するための上で定義した化合物の使用に関する。
【0027】
更に、本発明は、慢性炎症性疾患、例えばクローン病及び潰瘍性結腸大腸炎などの治療用の医薬品を調製するための本発明による化合物の使用に関する。
【0028】
特に、上記の用途で使用することができる本発明による化合物としては、既に記載したもの以外に以下のものがあり得る:
(R,S)−2−ヒドロキシ−2−(3−アミノフェニル)酢酸(化合物10)
(R,S)−2−ヒドロキシ−2−(4−アミノフェニル)酢酸(化合物11)
(R,S)−2−ヒドロキシ−3−(4’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物21)
(R,S)−2−メトキシ−3−(3’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物35)
(R,S)−2−メトキシ−3−(3−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物34)。
【0029】
上記の化合物名は、また、以下の標準的化学命名法(本文を通してこの命名法を使用する)で記すこともできる:
(±)−2−ヒドロキシ−2−(3’−アミノフェニル)酢酸(化合物10)
(±)−2−ヒドロキシ−2−(4’−アミノフェニル)酢酸(化合物11)
(±)−2−ヒドロキシ−3−(4’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物21)
(±)−2−メトキシ−3−(3’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物35)
(±)−2−メトキシ−3−(4’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物34)。
【0030】
一実施形態によれば、式(I)の化合物のR3は、次式(II)
【化3】
と一致してHであることができ、
一方R1、R2、X及びYは、上で定義されている。
【0031】
別の実施形態によれば、式(I)の化合物のR3は、次式(III)
【化4】
と一致して−CH3であることができ、
一方R1、R2、X及びYは、上で定義されている。
【0032】
別の実施形態によれば、式(I)の化合物のR3は、次式(IV)
【化5】
と一致して−CH2CH3であることができ、
一方R1、R2、X及びYは、上で定義されている。
【0033】
別の実施形態によれば、式(I)の化合物のR3は、次式(V)
【化6】
と一致して−CH2CH3であることができ、
一方R1、R2、X及びYは、上で定義されている。
【0034】
別の実施形態によれば、式(I)の化合物のR3は、次式(VI)
【化7】
と一致して−CH3であることができ、
一方R1、R2、X及びYは、上で定義されている。
【0035】
別の実施形態によれば、式(I)の化合物のR3は、次式(VI)
【化8】
と一致して−CH3であることができ、
一方R1、R2、X及びYは、上で定義されている。
【0036】
別の実施形態によれば、式(I)の化合物のR3は、次式(VII)
【化9】
と一致して−CH2CH3であることができ、
一方R1、R2、X及びYは、上で定義されている。
【0037】
別の実施形態によれば、式(I)の化合物のR3は、次式(VIII)
【化10】
と一致して−CH2CH3であることができ、
一方R1、R2、X及びYは、上で定義されている。
【0038】
別の実施形態によれば、式(I)の化合物のR3は、次式(IX)
【化11】
と一致して−CH3であることができ、
一方R1、R2、X及びYは、上で定義されている。
【0039】
好ましくは、式(I)の化合物は、
(±)−2−ヒドロキシ−3−(3’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物20)
(±)−2−メトキシ−2−(4’−アミノフェニル)酢酸(化合物23)
(±)−2−エトキシ−2−(3’−アミノフェニル)酢酸(化合物32)
(±)−2−エトキシ−2−(4’−アミノフェニル)酢酸(化合物33)
(±)−2−メトキシ−3−(4’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物34)
(±)−2−エトキシ−3−(4’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物39)
(±)−2−エトキシ−3−(3’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物40)
を含む群から選択することができる。
【0040】
本発明による化合物は、医療分野で有利に使用することができる。従って、本発明は、有効成分として上で定義した1つ又は複数の化合物を1つ又は複数の薬学的に許容できる賦形剤又は補助剤と組合せて含む薬剤組成物に関する。
【0041】
本発明は、更に、PPARγ受容体及びEGF受容体を発現する腫瘍、例えば、食道、胃、膵臓、結腸、前立腺、乳房の腫瘍、子宮及びその付属器の腫瘍、腎臓の腫瘍並びに肺の腫瘍等の予防及び治療のための医薬品を調製するための上で定義した化合物の使用に関する。
【0042】
更に、本発明は、慢性炎症性疾患、例えばクローン病及び潰瘍性結腸大腸炎等の治療のための医薬品を調製するための本発明による化合物の使用に関する。本発明は、また、ヒト及び/又は哺乳動物(げっ歯類、家畜、家庭内ペット、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ヒツジ、乳牛、ウマを含む)の治療の方法にも関する。
【0043】
特に、前述の用途で使用することができる本発明による化合物は、既に記載したものは別として、次のものであり得る:
(±)−2−ヒドロキシ−2−(3−アミノフェニル)酢酸(化合物10)
(±)−2−ヒドロキシ−2−(4−アミノフェニル)酢酸(化合物11)
(±)−2−ヒドロキシ−3−(4’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物21)
(±)−2−メトキシ−3−(3’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物35)
(±)−2−メトキシ−3−(4’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物34)
【0044】
記載した化合物の使用は、それらのラセミ体での使用に限定されない。本発明は、鏡像異性的に純粋なR型又はS型の任意の記載した化合物、或いは1つの鏡像異性体が任意の割合で他を超えている任意の混合物の使用にまで及ぶ。
【0045】
実のところ、実行されたドッキング調査によれば、純粋なR型鏡像異性体は活性を示すとはいえ、S型鏡像異性体はR型鏡像異性体より更に活性であることを示している。
【0046】
本発明の分子は、メサラジンを根拠として使用する分子モデリング作業から誘導し、すべての化学的に実現可能な異形を最善の成績(受容体の親和性及び活性化)を得るためにコンピューターをドッキングした実験で評価した。その結果、メサラジンに相当する機能及び/又は活性を示す本発明の化合物は、類似した生物学的経路を経ることによるものと考えられる。本発明の分子に内在するメサラジンと類似した特徴が、EGF経路に関する類似の活性をこれらの分子に与えているものと考えられる。
【0047】
本明細書で提供する実施例は、既に論じた化合物類の様々な医療分野における使用の予測用として役立つモデルである。これらのモデルは、従って、それらの作用の機序には関わりなく、有益且つ重要な結果を提供する。
【0048】
上記の化合物に加えて、本発明は次の化合物の使用を提供する:
【化12】
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
本発明を、ここで、それを限定するのではなく説明することを目的として、その好ましい実施形態に従い、添付の図面中のダイアグラムを特に参照して記述する。
【実施例】
【0050】
(実施例1)
(±)−2−ヒドロキシ−3−(3’−アミノフェニル)−プロパン酸(化合物20)を調製する方法
【化13】
ステップ1
3−ニトロベンズアルデヒド(45.3g、0.3モル)、N−アセチルグリシン(42.1g、0.36モル)及び酢酸ナトリウム(32g、0.39モル)を無水酢酸(142ml、1.5モル)と混合し、得られた混合物を撹拌しながら120℃に6時間加熱し、暗黒の溶液を生じさせた。その混合物を次に室温まで冷却して一晩置き、その結果沈殿した固体が形成された。その反応混合物を氷水(130g)中に注ぎ、得られた懸濁固体を濾過して集めた。その固体の粗生成物(72g)をアセトン(80ml)で洗浄し、次いで熱いアセトン(320ml)から再結晶させて結晶性固体を生成させ、それを50%水性エタノールにより洗浄し、次いで40℃/40mmHgで乾燥して、2−メチル−4−(3−ニトロベンジリデン)オキサゾール−5(4H)−オン(49.0g、78%)の黄白色針状結晶を生じさせた。
【化14】
【0051】
ステップ2
2−メチル−4−(3−ニトロベンジリデン)オキサゾール−5(4H)−オン(52.0g、0.224モル)を、3Mの塩酸(1.3L)と混合し、この懸濁液を100℃で6時間撹拌した。得られた懸濁液を室温で一晩撹拌し、次いでその懸濁固体を濾過によって集め、水で洗浄し(2×40ml)、次いで真空中で乾燥して2−ヒドロキシ−3−(3−ニトロフェニル)アクリル酸(29.3g)を生じさせた。濾液と洗浄液を組合せたものを酢酸エチルにより抽出し(4×0.5L)、次いで合体した有機抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥し、乾燥するまで濃縮して2−ヒドロキシ−3−(3−ニトロフェニル)アクリル酸の更なる収穫(12.0g)を生じさせた。2−ヒドロキシ−3−(3−ニトロフェニル)アクリル酸の全体収量は41.3g(88%)であった。
【化15】
【0052】
ステップ3
ナトリウムエトキシド(1.8g、26.4ミリモル)を、メタノール(131ml)中の2−ヒドロキシ−3−(3−ニトロフェニル)アクリル酸(5.25g、25.0ミリモル)の撹拌された溶液に0℃で滴下して加え、透明な黄白色の溶液を形成した。水酸化ナトリウム(1g、26.4ミリモル)を2回に分けて注意深く加え、その混合物を5〜10℃で30分間撹拌した。少量の水を次に加え、反応を停止し、過剰のNaBH4を無効化した。メタノールを真空で除去し、固体の残留物を生じさせ、それを酢酸エチルとヘプタンの5:2の混合物(21ml)と共にすりつぶし、次いで3%水性メタノールと共に更にすりつぶした。得られた固体を濾過して集め、真空中で乾燥して2−ヒドロキシ−3−(3−ニトロフェニル)プロピオン酸を生じさせた(3.0g、57%)。
【化16】
【0053】
ステップ4
2−ヒドロキシ−3−(3−ニトロフェニル)プロピオン酸(3.0g、14.2ミリモル)、メタノール(129ml)及び5%パラジウム活性炭(600mg、2モル%)の混合物を10psiのH2雰囲気中で1時間水素化した。この混合物を、次にセライトにより濾過し、そのフィルターケーキをメタノールで洗浄し、その濾液を高真空下の40℃で濃縮して泡立った固体としての生成物を生じさせた。これを水に溶解し、その溶液を凍結乾燥して(±)−2−ヒドロキシ−3−(3’−アミノフェニル)−プロパン酸(2.6g、100%)を白色固体として生じさせた。
【化17】
【0054】
(実施例2)
(±)−2−メトキシ−2−(4’−アミノフェニル)−酢酸(化合物23)を調製する方法
【化18】
ステップ1
水酸化カリウム(6.72g、0.12モル)のメタノール(25ml)中の溶液を、4−アセトアミドベンズアルデヒド(24.5g、0.15モル)及びクロロホルム(4.01g、0.33モル)のDMF(100ml)中の冷却した(−7℃)溶液に、温度を−5℃より下に保つ速度で加えた。その混合物を5.5時間にわたってそのまま2℃まで温め、次いでそれを1MのHCl水溶液(200ml)及びトルエン(200ml)の混合物に加え、一晩撹拌した。得られた2−(4−アセトアミドフェニル)−トリクロロカルビノールを濾過して集め(29g)、吸引乾燥した。
【0055】
ステップ2
2−(4−アセトアミドフェニル)−トリクロロカルビノール(14.0g、49.5ミリモル)のメタノール(330ml)中の溶液及び水酸化カリウム(13.8g、250ミリモル)のメタノール(150ml)中の溶液を混合し、その混合物を70〜80℃に3時間加熱した。冷却後、KClの副生成物を濾過して除去し、次いでその濾液を真空中で濃縮することにより、2−(4−アセトアミドフェニル)−2−メトキシ酢酸(14g)の白色固体を生じさせた。
【0056】
ステップ3
2−(4−アセトアミドフェニル)−2−メトキシ酢酸(7.1g、31.8ミリモル)を、ヒドラジン一水和物(40ml)と共に16時間加熱し、冷却し、真空中で濃縮した。得られた残留油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し(溶離液CH2Cl2中20〜40%メタノール)、2.6g(45%)の(±)−2−メトキシ−2−(4’−アミノフェニル)−酢酸を生じさせた。
【化19】
【0057】
(実施例3)
(±)−2−エトキシ−2−(3’−アミノフェニル)−酢酸(化合物32)を調製する方法
【化20】
ステップ1
3−ニトロベンズアルデヒド(25g、165ミリモル)及びクロロホルム(30ml、375ミリモル)を、DMF(100ml)に溶解し、その溶液を−5℃と−10℃の間に冷却した。水酸化カリウム(7.5g、134ミリモル)のメタノール(22.5ml)中の新たな溶液を内温<−5度を維持するようにゆっくりと加えた。その反応は、2時間<−5℃で維持し、次にトルエン(225ml)中の塩酸水溶液(225ml)の冷却した混合物により停止した。その溶液を氷浴中に入れ、一晩そのままゆっくり室温まで温めた。この時間の後、トルエン層を分離し、水層をトルエンで更に抽出した。合体した有機層を、水(2×225ml)、5%重炭酸ナトリウム溶液(225ml)及び水(225ml)で洗浄した。その溶液を乾燥(MgSO4)し、濾過し、真空中で濃縮して、2−(3−ニトロフェニル)−トリクロロカルビノールをオレンジ色の固体として生じさせた(42g、155ミリモル、94%)。
【化21】
【0058】
ステップ2
2−(3−ニトロフェニル)−トリクロロカルビノール(20g、74ミリモル)を、無水エタノール(74ml)に溶解し、水酸化カリウム(20.7g、369ミリモル)の無水エタノール(150ml)中の溶液をゆっくり加えた。その溶液を加熱して4時間還流させ、そのまま冷却し、次いで真空中で濃縮した。その残留物を希塩酸で酸性とし、生成物を酢酸エチルで抽出した(3回)。合体した有機層を乾燥(MgSO4)し、濾過し、真空中で濃縮して2−エトキシ−2−(3−ニトロフェニル)酢酸を褐色の固体として生じさせた(6.4g、28.4ミリモル、38%)。
【化22】
【0059】
ステップ3
2−エトキシ−2−(3−ニトロフェニル)酢酸(6.4g、28.4ミリモル)を、無水エタノール(500ml)に溶解し、5%パラジウムカーボン(湿体)(1.5g)を加え、その混合物を60psiで一晩水素化した。その懸濁液をセライトにより濾過し、濾液を濃縮して、(±)−2−エトキシ−2−(3’−アミノフェニル)−酢酸(3.0g、15.3ミリモル、54%)を褐色固体として生じさせた。
【化23】
【0060】
(実施例4)
(±)−2−エトキシ−2−(4’−アミノフェニル)−酢酸(化合物33)を調製する方法
【化24】
ステップ1
「化合物23ステップ1」参照。
【0061】
ステップ2
2−(4−アセトアミドフェニル)−トリクロロカルビノール(14.0g、49.5ミリモル)のエタノール(400ml)中の溶液及び水酸化カリウム(13.8g、250ミリモル)のエタノール(150ml)中の溶液を混合し、その混合物を70〜80℃に2.5時間加熱した。その混合物を冷却し、濾過してKClの副生成物を除去し、真空中で濃縮して、2−(4−アセトアミドフェニル)−2−エトキシ酢酸(14g)の黄色の固体を生じさせた。
【0062】
ステップ3
2−(4−アセトアミドフェニル)−2−エトキシ酢酸(7.54g、31.8ミリモル)を、ヒドラジン一水和物(40ml)と共に16時間加熱し、その混合物を冷却し、次いで真空中で濃縮した。残留油状物をシリカカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2中20〜40%メタノール溶離液)によって精製し、(±)−2−エトキシ−2−(4’−アミノフェニル)−酢酸(2.3g、37%)を白色発泡体として生じさせた。
【化25】
【0063】
(実施例5)
(±)−2−メトキシ−3−(4’−アミノフェニル)−プロピオン酸(化合物34)を調製する方法
【化26】
ステップ1
4−ニトロベンズアルデヒド(53.7g、0.356モル)、N−アセチルグリシン(49.9g、0.427モル)及び酢酸ナトリウム(37.9g、0.463モル)を無水酢酸(168g、1.78モル)と混合し、得られた混合物を撹拌しながら120℃に6時間加熱し、暗黒の懸濁液を生じさせた。その混合物を次に室温まで冷却して一晩置き、その結果沈殿した固体が形成された。その反応混合物を氷水(150g)中に注ぎ、得られた懸濁固体を濾過して集めた。その固体の粗生成物をアセトン(100ml)で洗浄し、次いで熱いアセトン(650ml)から再結晶させて結晶性固体を生成させ、それを50%水性エタノールにより洗浄し、次いで真空中で乾燥して、2−メチル−4−(4−ニトロベンジリデン)オキサゾール−5(4H)−オン(55.0g、66%)の黄白色針状結晶を生じさせた。結晶化母液及び洗浄液を合体し、蒸発させて固体残留物を生じさせ、それをアセトンから再結晶させて、2−メチル−4−(4−ニトロベンジリデン)オキサゾール−5(4H)−オンの第2の収穫(8g、10%)を得た。2−メチル−4−(4−ニトロベンジリデン)オキサゾール−5(4H)−オンの合わせた収量は、63g(76%)であった。
【化27】
【0064】
ステップ2
2−メチル−4−(4−ニトロベンジリデン)オキサゾール−5(4H)−オン(63.0g、0.272モル)を、3Mの塩酸(1.2L)と混合し、この懸濁液を100℃で6時間撹拌した。得られた懸濁液を室温で一晩撹拌し、次いでその懸濁固体を濾過によって集め、水で洗浄し(2×50ml)、次いで真空中で乾燥して2−ヒドロキシ−3−(4−ニトロフェニル)アクリル酸(46.6g、81%)を生じさせた。濾液と洗浄液を組合せたものを酢酸エチルにより抽出し(4×0.5L)、次いで合体した有機抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥し、乾燥するまで濃縮して2−ヒドロキシ−3−(4−ニトロフェニル)アクリル酸の更なる収穫(0.8g、1%)を得た。2−ヒドロキシ−3−(4−ニトロフェニル)アクリル酸の全体収量は47.4g(82%)であった。
【化28】
【0065】
ステップ3
2−ヒドロキシ−3−(4−ニトロフェニル)アクリル酸(15g、71.7ミリモル)、炭酸セシウム(56g、172.1ミリモル)及び硫酸ジメチル(14.2ml、150.6ミリモル)のDMF(270ml)中の混合物を、室温で18時間撹拌した。水(220ml)及び酢酸エチル(150ml)を加え、層分離させた。その水層を酢酸エチルで更に抽出し(4×100ml)、次いで合体した有機物を水(6×100ml)、ブライン(2×120ml)で洗浄し、半分の容積まで濃縮した。ヘプタン(70ml)を加え、その混合物を200mlの容積まで濃縮した。その結果沈殿した固体を濾過によって集め、ヘプタンで洗浄し(2×100ml)、フィルター上で吸引乾燥してヘプタンの痕跡を含む2−メトキシ−3−(4−ニトロフェニル)アクリル酸メチルを黄褐色固体として提供した(9.2g、54%収量)。
【化29】
【0066】
ステップ4
2−メトキシ−3−(4−ニトロフェニル)アクリル酸メチル(7.8g、32.8ミリモル)を、IMS(156ml)中に溶解した。NaOH(1.44g、36.1ミリモル)の水(78ml)中の溶液を加え、その混合物を周囲温度(18℃)で18時間撹拌した。その反応混合物を1MのHCl(120ml)により酸性とし、その結果沈殿した固体を濾過して集め、水で洗浄し(2×100ml)、フィルター上で30分間部分的に吸引乾燥し、続いて18℃で18時間真空オーブン乾燥をした。かくして2−メトキシ−3−(4−ニトロフェニル)アクリル酸が若干の結晶水を含む黄褐色固体として提供された(6.7g、91%)。
【化30】
【0067】
ステップ5
2−メトキシ−3−(4−ニトロフェニル)アクリル酸(6.7g、30ミリモル)を、メタノール(700ml)及びTHF(300ml)中に溶解し、10%パラジウム炭素(湿量基準)(0.67g)を加えた。その混合物を45psiで43分間と、その後毎時45〜48psiへの補充を3時間繰り返し、最後に48psiで18時間の水素化をした。得られた懸濁液を、GF/F濾紙により濾過し、フィルターの残留物をMeOH(200ml)で洗浄した。濾液をオフホワイトの固体になるまで濃縮した。その固体をIMS(75ml)中に20℃で1.5時間スラリー化し、濾過し、IMS/ヘプタン(1:2)(20ml)で洗浄し、フィルター上で1時間乾燥して(±)−2−メトキシ−3−(4’−アミノフェニル)−プロピオン酸をオフホワイトの固体として提供した(5.1g、88%収量)。
【化31】
【0068】
(実施例6)
(±)−2−メトキシ−3−(3’−アミノフェニル)−プロピオン酸(化合物35)を調製する方法
【化32】
ステップ1及び2
化合物20のとおり。
【0069】
ステップ3
硫酸ジメチル(13.23g、105ミリモル)を、2−ヒドロキシ−3−(3−ニトロフェニル)アクリル酸(10.5g、50.0ミリモル)及び炭酸セシウム(39.1g、120ミリモル)のDMF(105ml)中の撹拌された混合物に加えて透明な黄白色混合物を形成し、それを室温で一晩撹拌した。得られた暗赤色の懸濁液を真空中で濃縮し、残留物を水(100ml)及びジクロロメタン(150ml)の間で分配した。有機層を分離し、水で更に洗浄し(2×100ml)、硫酸ナトリウムにより乾燥し、シリカゲルを通して濾過した。得られた黄色の溶液を真空中で乾燥するまで蒸発させ、2−メトキシ−3−(3−ニトロフェニル)アクリル酸メチルを黄色固体として生じさせた(8.1g、67%)。
【化33】
【0070】
ステップ4
水酸化カリウム(2.0g、35.9モル)の水(25ml)中の溶液を、2−メトキシ−3−(3−ニトロフェニル)アクリル酸メチル(8.1g、34.2ミリモル)のメタノール(150ml)中の撹拌された溶液に加え、得られた混合物を室温で一晩撹拌した。更なる量の水(10ml)中のKOH(0.5g、8.9ミリモル)を加え、その混合物を80℃に1時間加熱した。次にメタノールを真空中で蒸発させ、残留物を水(200ml)で希釈した。その溶液をジクロロメタンで洗浄し(2×100ml)、セライトのパッドを通して濾過し、次いで3MのHClを加えてpH3の酸性にした。その混合物を18時間冷蔵保存し、次いで沈殿した固体を濾過して集め、水で洗浄し(3×30ml)、真空中40℃で乾燥し、2−メトキシ−3−(3−ニトロフェニル)アクリル酸を黄色固体として生じさせた(6.4g、84%)。
【化34】
【0071】
ステップ5
2−メトキシ−3−(3−ニトロフェニル)アクリル酸(3.4g、15.25ミリモル)、メタノール(340ml)及び5%パラジウム活性炭(1.36g、4モル%)の混合物を12〜36psiのH2雰囲気中で1.5時間水素化した。この混合物を、次にセライトにより濾過し、そのフィルターケーキをメタノールで洗浄し、その濾液を真空下の40℃で濃縮して泡立った固体としての生成物を生じさせた。これを水(100ml)に溶解し、その溶液を凍結乾燥して(±)−2−メトキシ−3−(3’−アミノフェニル)−プロピオン酸(2.6g、100%)をオフホワイトの固体として生じさせた。
【化35】
【0072】
(実施例7)
(±)−2−エトキシ3−(4’−アミノフェニル)−プロピオン酸(化合物39)を調製する方法。鏡像異性分割(図12)
【化36】
ステップ1及び2
化合物34のステップ1及び2のとおり。
【0073】
ステップ3
2−ヒドロキシ−3−(4−ニトロフェニル)アクリル酸(20g、95.6ミリモル)を、DMF(200ml)中に懸濁させた。Cs2CO3(74.9g、229.9ミリモル)及び硫酸ジエチル(26.3ml、201ミリモル)を加え、溶解を観察した。18℃で18時間撹拌した後、水(350ml)及び酢酸エチル(250ml)を加え、層分離した。その水層を更に酢酸エチルで抽出し(5×200ml)、次いで合体した有機物を水(2×200ml)、ブライン(2×200ml)で洗浄し、硫酸マグネシウムにより乾燥した。その有機物を乾燥するまで濃縮して、2−エトキシ−3−(4−ニトロフェニル)−アクリル酸エチルを3.6質量%のDMFを含有するオレンジ色の固体として得た(27.6g湿体、収率<100%)。
【化37】
【0074】
ステップ4
3.6重量%のDMFを含有する2−エトキシ−3−(4−ニトロフェニル)−アクリル酸エチル(補正した26.07g、98.3ミリモル)を、IMS(500ml)に溶解し、NaOH(1.44g、36.1ミリモル)の水(260ml)中の溶液を加えた。得られた混合物を周囲温度で18時間撹拌し、次いで1MのHCl(120ml)で酸性にし、得られた固体を濾過して集め、水で洗浄し(2×100ml)、フィルター上で30分吸引乾燥し、続いて18℃で18時間真空オーブン乾燥をした。こうして、2−エトキシ−3−(4−ニトロフェニル)アクリル酸が結晶水を含有するオレンジ色の固体として得られた(18.4g、79%)。
【化38】
【0075】
ステップ5
2−エトキシ−3−(4−ニトロフェニル)アクリル酸(18.4g湿体、約77.5ミリモル)を、MeOH(1.1L)中に溶解し、10%パラジウム炭素(湿量基準)(1.84g)を加えた。その混合物を12psiで10分間と、その後10〜20分毎に20〜28psiへの補充を5時間繰り返し、次いで46psiで18時間の水素化をした。その混合物を、GF/F紙により濾過し、残留物をIMS(100ml)中にスラリー化し、濾過してヘプタン(100ml)で洗浄し、フィルター上で吸引乾燥した。かくして(±)−2−エトキシ−3−(4’−アミノフェニル)−プロピオン酸が、オフホワイトの固体として得られた(11.2g、69%)。
【化39】
【0076】
(実施例8)
(±)−2−エトキシ−3−(3’−アミノフェニル)−プロパン酸(化合物40)を調製する方法
【化40】
ステップ1及び2
化合物20ステップ1及び2のとおり。
【0077】
ステップ3
硫酸ジエチル(12g、78.2ミリモル)を、2−ヒドロキシ−3−(3−ニトロフェニル)アクリル酸(6.1g、30.0ミリモル)及び炭酸セシウム(29.3g、90ミリモル)のDMF(61ml)中の撹拌された混合物に加えて透明な黄白色混合物を形成し、それを室温で一晩撹拌した。得られた暗赤色の懸濁液を50℃に4時間加熱し、真空中で濃縮し、残留物を水(100ml)及びジクロロメタン(150ml)の間で分配した。有機層を分離し、水で更に洗浄し(2×100ml)、硫酸ナトリウムにより乾燥し、シリカゲルパッドを通して濾過した。得られた黄色の溶液を真空中で乾燥するまで蒸発させ、2−エトキシ−3−(3−ニトロフェニル)アクリル酸エチルを黄色固体として生じさせた(5.6g、72%)。
【0078】
ステップ4
水酸化カリウム(1.3g、22.2モル)の水(20ml)中の溶液を、2−エトキシ−3−(3−ニトロフェニル)アクリル酸エチル(5.6g、21.1ミリモル)のメタノール(100ml)中の撹拌された溶液に加え、得られた混合物を一晩加熱して還流させた。次にメタノールを真空中で蒸発させ、その残留物を水(150ml)で希釈した。その溶液をジクロロメタンで洗浄し(2×80ml)、セライトのパッドを通して濾過し、次いで3MのHClを加えてpH3の酸性にした。その混合物を18時間冷蔵保存し、次いで沈殿した固体を濾過して集め、水で洗浄し(3×30ml)、真空中40℃で乾燥した。得られた固体を酢酸エチルとヘプタンとから再結晶させて、2−エトキシ−3−(3−ニトロフェニル)アクリル酸を黄色固体として生じさせた(3.06g、61%)。
【化41】
【0079】
ステップ5
2−エトキシ−3−(3−ニトロフェニル)アクリル酸(3.06g、12.9ミリモル)、メタノール(150ml)及び5%パラジウム活性炭(0.60g、2モル%)の混合物を12〜30psiのH2雰囲気中で2時間水素化した。この混合物を、次にセライトにより濾過し、そのフィルターケーキをメタノールで洗浄し、その濾液を真空下の40℃で濃縮して泡立った固体としての生成物を生じさせた。これを水(100ml)に溶解し、その溶液を凍結乾燥して(±)−2−エトキシ−3−(3’−アミノフェニル)−プロピオン酸(2.7g、100%)をオフホワイトの固体として生じさせた。
【化42】
【0080】
(実施例9)
分子モデリング
分子モデリングの検討を、シリコン・グラフィックス(Silicon Graphics)社のワークステーションで動くSYBYLソフトウェアのバージョン6.9.1(Tripos Associates Inc、ミズーリ州セントルイス)を用いて行った。5−ASAの両性イオン型の三次元モデルを標準フラグメントライブラリーから構築し、その幾何学的配置を、その後Tripos力場(3)を用いて最適化した。化合物のpKaが未だ知られていないため、生理的pH(7.4)において起こる種を決定するためにはスパーク(SPARC)オンライン計算機を使用した(http://ibmlc2.chem.uga.edu/sparc/index.cfm)。イオン化化合物の三次元モデルは、標準フラグメントライブラリーから構築し、それらの幾何学的配置は、その後Gasteiger及びHuckelの原子電荷から計算した静電項を含むTripos力場(3)を用いて最適化した。Maximin2手順において利用できるPowellの方法を、勾配値が0.001kcal/mol.Åより小さくなるまでエネルギー最小化のために使用した。
【0081】
ヒトPPARγリガンド結合領域の構造は、RCSBタンパク質データバンク(1l7l)において入手できるテサグリタザル(tesaglitazar)(AZ242)によるその複合X線結晶構造から得た(4、5)。受容体活性部位中への化合物のフレキシブルドッキングは、GOLDソフトウェアを用いて行った(6)。最も安定なドッキングモデルは、GoldScore(6)及び機能を採点するX−Score(7)により予測したベストスコアの立体構造に従って選択した。複合体は、Tripos力場及び勾配値が0.01kcal/mol.Åに到達するまでの4.0の誘電率によるMaximin2手順において利用できるPowell法を用いてエネルギーを最小化した。アニール機能を用いてリガンドの周囲の関心部分(10Å)及び興味深い部分(15Å)を限定した。
【0082】
結果
分子モデリング受容体ドッキングの検討により、R型鏡像異性体もまた活性を示しはするが、一般に、S型鏡像異性体はR型鏡像異性体より更に活性であることが予測された。1つの鏡像異性体がより生物学的に活性であるこの現象はよく知られている。
【0083】
結果として、本発明は、化合物を複数の鏡像異性体に分離する方法を提供する。化合物32に対するその分離方法を図11で図式により示す。
【0084】
理論に拘束されることを望むものではないが、化合物のS型鏡像異性体は、より高い活性を与えるものと考えられる。ドッキング検討の結果を図5〜10に示す。
【0085】
(実施例7)
(±)−2−エトキシ3−(4’−アミノフェニル)−プロピオン酸(化合物39)を調製する方法。鏡像異性分割(図12)
【化43】
ステップ1及び2
化合物34のステップ1及び2のとおり。
【0086】
ステップ3
2−ヒドロキシ−3−(4−ニトロフェニル)アクリル酸(20g、95.6ミリモル)を、DMF(200ml)中に懸濁させた。Cs2CO3(74.9g、229.9ミリモル)及び硫酸ジエチル(26.3ml、201ミリモル)を加え、溶解を観察した。18℃で18時間撹拌した後、水(350ml)及び酢酸エチル(250ml)を加え、層分離した。その水層を更に酢酸エチルで抽出し(5×200ml)、次いで合体した有機物を水(2×200ml)、ブライン(2×200ml)で洗浄し、硫酸マグネシウムにより乾燥した。その有機物を乾燥するまで濃縮して、2−エトキシ−3−(4−ニトロフェニル)−アクリル酸エチルを3.6質量%のDMFを含有するオレンジ色の固体として得た(27.6g湿体、収率<100%)。
【化44】
【0087】
ステップ4
3.6重量%のDMFを含有する2−エトキシ−3−(4−ニトロフェニル)−アクリル酸エチル(補正した26.07g、98.3ミリモル)を、IMS(500ml)に溶解し、NaOH(1.44g、36.1ミリモル)の水(260ml)中の溶液を加えた。得られた混合物を周囲温度で18時間撹拌し、次いで1MのHCl(120ml)で酸性にし、得られた固体を濾過して集め、水で洗浄し(2×100ml)、フィルター上で30分吸引乾燥し、続いて
【0088】
結果
PPARγの活性化は、ペルオキシソーム増殖因子応答エレメント(PPRE)と称される特定のDNA配列因子への結合につながる次々と起こる反応をもたらす(7〜9)。
【0089】
本発明者らは、PPARγ転写活性を、ウミシイタケルシフェラーゼ及びPPREプラスミドによる上皮細胞の一過性形質移入によって調査した。新規分子がPPARγの活性化を刺激するのに5−ASAより更に効果を有するかどうかを評価するために、本発明者らは、これらの分子を1mMの濃度で試験した。1mMの濃度における新規分子の効果を、陽性対照としてそれぞれ最適濃度の30mM及び10−5Mで使用した5−ASA及びロシグリタゾンと比較した。細胞は、異なる分子により24時間刺激した。
【0090】
形質移入したHT−29細胞中のPPARγ活性の分析により、新規分子34、39、35及び40は、1mMにおいて、それぞれレポーター遺伝子活性を、4.8±0.71倍、2.73±0.31倍、2.64±0.46倍、3.4±0.97倍増すことが示され、それによって5−ASAの30mM(2.8±0.7)及びロシグリタゾンの10−5M(3.17±0.29)と同等以上の活性を示した。
【0091】
図2は、3通り行った2回又は3回の実験で評価した各分子について得られたすべての結果を表している。異なる実験の間の再現性は良好であり、文献に記載されているデータと類似している。
【0092】
この検討により、本発明者らは、5−ASAがPPARγを活性化するより30倍から50倍の効果を有する4個の新規分子を確認した。
【0093】
(実施例11)
結腸癌細胞増殖
次の物質(即ち、20、34、35、39及び40)を、結腸癌細胞増殖を調節するそれらの能力について試験した。この目的のため、3つのヒト結腸癌細胞系(即ち、HT−29、HT−115及びDLD−1)を用いた。これらの細胞種類は、シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)発現に基づいて選択した。実際に、HT−115細胞は、生物学的に活性なCOX−2を発現し、HT−29細胞は、機能しないCOX−2イソ型を発現し、DLD−1は、COX−2が欠ける細胞である。これらの分子は、また、COX−を発現しない細胞に対しても活性であり、従って、本発明の分子は、腫瘍の治療及び本明細書に記載されているその他の用途のためにCOX−2を発現しない細胞において使用することができるものと考えられる。
【0094】
HT−29細胞及びDLD−1細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(P/S)及び50mg/mlのゲンタマイシンを補充したMcCoy及びRPMI1640媒体中でそれぞれ培養した。HT−115は、15%FBS及び1%P/Sを補充したDMEM媒体中で培養した。細胞は、5%CO2存在下の加湿した37℃のインキュベーター中に保存した。
【0095】
細胞増殖アッセイのために、単個細胞浮遊液を、0.5%のFBSを含有する媒体中の96ウェルの培養皿に、2×103個の細胞/ウェル(HT115については4×103個の細胞/ウェル)で蒔き、そのまま接着させた。接着しない細胞を次に除去し、0.5%のFBSを含有する新鮮な媒体を各ウェルに追加した。細胞は、特定物質の存在下又は非存在下で培養した。各物質は、0.5%のFBSを含有する培地中に25mMの原液として溶解し、各原液のpHを7.4に、必要ならNaOHによって調整した。物質は、0.5から10mMに及ぶ最終濃度で使用した。
【0096】
細胞増殖は、市販されている細胞増殖キット(Roche Diagnostics、イタリア、モンツァ)を用いて5−ブロモ−2’−デオキシウリジン(BrdU)のDNA中への組み込みを計量することにより測定した。BrdUを培養の最後の6時間の間細胞培養に加え、48時間の培養の後、BrdU陽性細胞の濃度を酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)により測定した。光学濃度(OD)を、ELISA読取機を用いて450nmで測定した。実験は3通り行い、その結果は、平均±標準偏差(SD)として記録する。
【0097】
結果
化合物は、結腸癌細胞増殖を阻害するそれらの能力が異なった。結果を特定の化合物によるDLD−1細胞増殖阻害の百分率を示す表1に集約する。物質20は、用量依存的な様式で際立った抗増殖効果を、試験した3つの細胞系のそれぞれにおいて示す(図3及び4)。90%を超える細胞増殖阻害が、最終濃度の10mMを使用したときに見られた。化合物20の細胞増殖を著しく阻害する能力が、最終濃度の5又は10mMで使用したときに見られた。
【0098】
化合物34及び39は、高用量(10mM)で使用したとき、わずかに細胞増殖を減少した(図4)が、基の間の違いは統計的に有意ではなかった。同様に、物質35及び40を加えた培養においては細胞増殖の阻害は見られなかった(表1参照)。
【0099】
結論
本発明のこの最初の組の例(実施例10)は、4つの最適化した分子34、39、35及び40が1mMの濃度において、移入したHT−29細胞中のPPARγの活性を増して30mMの5−ASA及び10−5Mのロシグリタゾンと同等以上の活性を見せる能力を示している。
【0100】
本発明の第2の組の例(実施例11)は、化合物類が結腸癌細胞系、HT−29、HT−115及びDLD−1の増殖の阻害に程度を異にして影響を及ぼすことを示している。当該化合物類は、結腸癌細胞増殖を阻害するそれらの能力が異なった。物質20は、試験した細胞系に対して際立った抗増殖効果を示した。
【0101】
本発明のこれらの分子は、また、COX−2を発現しない細胞に対しても活性であり、従って、本発明の分子は、腫瘍の治療及び本明細書に記載されているその他の用途のためにCOX−2を発現しない細胞において使用することができる。
【0102】
総体的結論
モデリング調査により示唆され、合成された最高位の化合物は、すべてメサラジンのそれと同等以上の活性を示す。
【0103】
(参考文献)
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1−1】(表1)段階的用量(0.5〜10mM)の特定の化合物によるDLD−1細胞阻害の百分率の表である。細胞は、化合物の存在下又は非存在下で培養し、細胞増殖を次に48時間培養の後比色(BrdU)分析によって評価した。
【図1−2】化合物20、23、32、33、34、35、39及び40の構造を示す図である。
【図2】化合物で処置したことによるPPARγの活性を示す図である。
【図3】特定の物質のヒト結腸癌細胞系(即ち、HT29、HT115及びDLD−1)の増殖に対する効果を示す図である。細胞は、増加する濃度の物質(0.5〜10mM)で48時間処置し、増殖はBrdUの取り込みを計量するための比色分析を用いて測定した。光学濃度(OD)は、ELISA読取機を用いて450nmで測定した。データは、3つの別々の実験の平均±SDを示す。
【図4】特定の物質のヒト結腸癌細胞系(即ち、HT29、HT115及びDLD−1)の増殖に対する効果を示す図である。細胞は、増加する濃度の物質(0.5〜10mM)で48時間処置し、増殖はBrdUの取り込みを計量するための比色分析を用いて測定した。光学濃度(OD)は、ELISA読取機を用いて450nmで測定した。データは、3つの別々の実験の平均±SDを示す。
【図5】(R型)化合物34のPPAPy受容体へのドッキングを示す図である(アミノ酸残基ラベリング及び水素結合が示されている)。
【図6】(S型)化合物34のPPAPy受容体へのドッキングを示す図である(アミノ酸残基ラベリング及び水素結合が示されている)。
【図7】(R型)化合物35のPPAPy受容体へのドッキングを示す図である(アミノ酸残基ラベリング及び水素結合が示されている)。
【図8】(S型)化合物35のPPAPy受容体へのドッキングを示す図である(アミノ酸残基ラベリング及び水素結合が示されている)。
【図9】(R型)化合物39のPPAPy受容体へのドッキングを示す図である(アミノ酸残基ラベリング及び水素結合が示されている)。
【図10】(S型)化合物39のPPAPy受容体へのドッキングを示す図である(アミノ酸残基ラベリング及び水素結合が示されている)。
【図11】メサラミンのPPAPy受容体へのドッキングを示す図である(アミノ酸残基ラベリング及び水素結合が示されている)。
【図12】化合物39の合成及びその後の分割の概略を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、PPAR受容体及びEGF受容体に特異的な化合物及びそれらの塩並びに医療分野におけるそれらの使用に関する。
【0002】
発明の対象
とりわけ、本発明による化合物及びそれらの塩は、PPARγ受容体(ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体)及びEGF受容体(上皮成長因子受容体)を発現する腫瘍、例えば、食道、胃、膵臓、結腸、前立腺、乳房、子宮及び付属器、腎臓並びに肺の腫瘍などの予防及び治療に対して有利に使用することができる。更に、本発明による化合物及びそれらの塩は、慢性の炎症性疾患、とりわけ、クローン病及び潰瘍性結腸大腸炎などの慢性の腸疾患の治療のために使用することができる。
【背景技術】
【0003】
PPARγ受容体は、脂質代謝の制御、インスリンの合成並びに発癌及び炎症の過程に対して重要な多くの遺伝子の発現を調節する核内受容体(約50個の転写因子の群)である。(Bull AW、Arch Pathol Lab Med 2003年;127:1121〜1123頁)(Koeffler HP、Clin Cancer Res 2003年;9:1〜9頁)(Youssef Jら、J Biomed Biotec 2004年;3:156〜166頁)。
【0004】
PPARγ受容体に結合してそれらの立体構造を変化させ、活性化を引き起こす様々な天然及び合成アゴニストが存在する。天然及び合成リガンドは、The Lancet 2002年;360:1410〜1418頁に記載されている。
【0005】
最近の研究によれば、PPARγ受容体のリガンドによる腫瘍細胞の処理は、かかる化合物の発癌現象を阻止するための薬剤としての応用の可能性を示唆する細胞増殖、細胞分化及びアポトーシスの減少を引き起こすことを示している(Osawa Eら、Gastroenterology 2003年;124:361〜367頁)。
【0006】
他の研究によれば、PPARγ受容体のリガンド(例えばトログリタゾン)は、抗炎症作用を有しており、IBDの動物モデルにおける粘膜炎症反応を阻止することが示されている(Tanaka Tら、Cancer Res 2001年;61:2424〜2428頁)。
【0007】
更に、IBD治療の標準である5−ASAの腸抗炎症活性は、PPARγ受容体の結合、及びその結果として生じる活性化に依存するという証拠がごく最近公開された(Rousseaux Cら、J Exp Med 2005年;201:1205〜1215頁)。
【0008】
チロシンキナーゼEGF活性を有する膜貫通受容体は、様々なタイプの新生物において活性な形で非常に高度に発現する(Mendelsohn J、Endocr Relat Cancer 2001年;8:3〜9頁)(Harari PM、Endocr Relat Cancer 2004年;11:689〜708頁)。
【0009】
受容体の過剰発現は、また、癌性細胞が転移する潜在能力とも関係する。これに関連してEGFは、細胞外基質との相互作用のレベルの病変と関係する様々な種類の細胞の遊走及び侵襲性を促進することが実証されている(Bruntonら、Oncogene 1997年;14:283〜293頁)。
【0010】
実験動物について及びヒトにおいての両方で実施された多数の研究により、EGF受容体阻害薬の腫瘍の増殖及び伝播を制御する有効性が確立された(Mendelsohn J、Endocr Relat Cancer 2001年;8:3〜9)(Harari PM、Endocr Relat Cancer 2004年;11:689〜708頁)。
【0011】
EGF受容体の活性化が引き金となる細胞内シグナルが新生細胞の成長と生存を促進して病態の発達に寄与すること、及びかかるシグナルが腫瘍細胞の、離れた臓器に伝播し、定着する能力を決定する本質的要素であることは疑いの余地がない(Mendelsohn J、Endocr Relat Cancer 2001年;8:3〜9)(Kari Cら、Cancer Res 2003年;63:1〜5)。
【0012】
前述のことと更に生物学的観点から慢性の炎症過程が発癌の一翼を担うことを念頭に置くこととにより、化学物質であって、PPARγ受容体及びEGF受容体の両方に対するそれらの補足的な作用によって、化学的予防に役立ち、抗増殖性であり、抗転移性のタイプの抗炎症性及び制癌作用を発揮することができる新たな化学物質への画期的研究に対する誰もが認める必要性が存在することが明らかとなっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、PPARγ受容体及びEGF受容体等の特定の受容体の調節による癌及び慢性の炎症の予防及び治療に適する新規な種類の化合物を提供する。
【0014】
本発明は、新規で且つ独創的な一連の化合物の医学的及び治療上の使用に関する。これらの化合物が未知である限りにおいて、本発明は、これらの化合物にも関する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、一般式(I)
【化1】
を有する化合物に関するものであり、
式中、
R1及びR2は、同一でも異なってもよく、−H又は1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝アルキル基を含む群から選択されるか、一緒になって5個又は6個の原子の芳香族又は脂肪族環を形成しており;
Y及びZは、同一でも異なってもよく、−H、−OH、−COOH、−OR3、−CH(OR3)COOHを含む群から選択され、ここでR3は、H、フェニル、ベンジル、−CF3又は−CF2CF3、ビニル、アリル及び1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝アルキル基から選択される。
【0016】
本発明は、また、一般式(Ia)
【化2】
のサブグループの化合物に関するものであり、
式中、
R1及びR2は、同一でも異なってもよく、−H又は1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝アルキル基を含む群から選択され;
Y及びZは、同一でも異なってもよく、−H、−OH、−COOH、−OR3、−CH(OR3)COOHを含む群から選択され、ここでR3は、−H及び1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝アルキル基から選択される。
【0017】
本発明の実施形態によっては、ZとYとは異なる。本発明の実施形態によっては、Y又はZの少なくとも1つは、末端が−COOHである。従って、本発明のいくつかの実施形態において、Y又はZ(及び実施形態によってはY又はZの少なくとも1つ、及び実施形態によってはY又はZの1つだけ)は、−COOHである。本発明のいくつかの実施形態において、Y又はZ(及び実施形態によってはY又はZの少なくとも1つ、及び実施形態によってはY又はZの1つだけ)は、−CH(OR3)COOHである。
【0018】
本発明は、また、Y及びZが、同一でも異なってもよく、−H、−COOH、−OR3、−CH(OR3)COOHを含む群から選択されること以外は式(I)及び(Ia)の両方に合致する化合物に関する。従って、本発明のいくつかの実施形態において、Z又はYは、−OHでなくてよい。本発明のかかる実施形態においては、化合物10及び11は除外される。
【0019】
本発明の実施形態によっては、Yが−Hであり、Zが−CH(OH)COOHであるとき、基NR1R2は、3’位に結合している。かくして、本発明の実施形態によっては、化合物21は除外される。
【0020】
本発明の他の実施形態において、Zが−OCH3であり、Yが−COOHであるとき、基NR1R2は、4’位に結合している。かくして、本発明の実施形態によっては、化合物22は除外される。
【0021】
本発明の実施形態によっては、Yが−Hであり、Zが−CH(OCH3)COOHであるとき、基NR1R2は、4’位に結合している。かくして、本発明の実施形態によっては、化合物35は除外される。
【0022】
特に前述の1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝アルキル基は、−CH3、−CH2CH3、−CH(CH3)2、−CH2CH2CH3、−CnH2n−1から選択することができる。
【0023】
式(I)及び(Ia)の化合物は、
3−(3’−アミノフェニル)2−ヒドロキシプロパン酸(化合物20)
2−(4−アミノフェニル)2−メトキシ酢酸(化合物23)
2−(3−アミノフェニル)2−エトキシ酢酸(化合物32)
2−(4−アミノフェニル)2−エトキシ酢酸(化合物33)
3−(4’−アミノフェニル)2−メトキシプロピオン酸(化合物34)
3−(4’−アミノフェニル)2−エトキシプロピオン酸(化合物39)
3−(3’−アミノフェニル)2−エトキシプロピオン酸(化合物40)
を含む群から選択することができる。
【0024】
上記化合物の名前は、また、以下のような標準的な化学命名法(本文を通してこの命名法を使用する)で記すこともできる:
(±)−2−ヒドロキシ−3−(3’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物20)
(±)−2−メトキシ−2−(4’−アミノフェニル)酢酸(化合物23)
(±)−2−エトキシ−2−(3’−アミノフェニル)酢酸(化合物32)
(±)−2−エトキシ−2−(4’−アミノフェニル)酢酸(化合物33)
(±)−2−メトキシ−3−(4’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物34)
(±)−2−エトキシ−3−(4’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物39)
(±)−2−エトキシ−3−(3’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物40)
【0025】
本発明による化合物は、医療分野で有利に使用することができる。従って、本発明は、有効成分として上で定義した1つ又は複数の化合物を1つ又は複数の薬学的に許容できる賦形剤又は補助剤と組合せて含む薬剤組成物に関する。
【0026】
本発明は、更に、PPARγ受容体及びEGF受容体を発現する腫瘍、例えば、食道、胃、膵臓、結腸、前立腺、乳房の腫瘍、子宮及びその付属器の腫瘍、腎臓の腫瘍並びに肺の腫瘍の予防及び治療のための医薬品を調製するための上で定義した化合物の使用に関する。
【0027】
更に、本発明は、慢性炎症性疾患、例えばクローン病及び潰瘍性結腸大腸炎などの治療用の医薬品を調製するための本発明による化合物の使用に関する。
【0028】
特に、上記の用途で使用することができる本発明による化合物としては、既に記載したもの以外に以下のものがあり得る:
(R,S)−2−ヒドロキシ−2−(3−アミノフェニル)酢酸(化合物10)
(R,S)−2−ヒドロキシ−2−(4−アミノフェニル)酢酸(化合物11)
(R,S)−2−ヒドロキシ−3−(4’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物21)
(R,S)−2−メトキシ−3−(3’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物35)
(R,S)−2−メトキシ−3−(3−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物34)。
【0029】
上記の化合物名は、また、以下の標準的化学命名法(本文を通してこの命名法を使用する)で記すこともできる:
(±)−2−ヒドロキシ−2−(3’−アミノフェニル)酢酸(化合物10)
(±)−2−ヒドロキシ−2−(4’−アミノフェニル)酢酸(化合物11)
(±)−2−ヒドロキシ−3−(4’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物21)
(±)−2−メトキシ−3−(3’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物35)
(±)−2−メトキシ−3−(4’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物34)。
【0030】
一実施形態によれば、式(I)の化合物のR3は、次式(II)
【化3】
と一致してHであることができ、
一方R1、R2、X及びYは、上で定義されている。
【0031】
別の実施形態によれば、式(I)の化合物のR3は、次式(III)
【化4】
と一致して−CH3であることができ、
一方R1、R2、X及びYは、上で定義されている。
【0032】
別の実施形態によれば、式(I)の化合物のR3は、次式(IV)
【化5】
と一致して−CH2CH3であることができ、
一方R1、R2、X及びYは、上で定義されている。
【0033】
別の実施形態によれば、式(I)の化合物のR3は、次式(V)
【化6】
と一致して−CH2CH3であることができ、
一方R1、R2、X及びYは、上で定義されている。
【0034】
別の実施形態によれば、式(I)の化合物のR3は、次式(VI)
【化7】
と一致して−CH3であることができ、
一方R1、R2、X及びYは、上で定義されている。
【0035】
別の実施形態によれば、式(I)の化合物のR3は、次式(VI)
【化8】
と一致して−CH3であることができ、
一方R1、R2、X及びYは、上で定義されている。
【0036】
別の実施形態によれば、式(I)の化合物のR3は、次式(VII)
【化9】
と一致して−CH2CH3であることができ、
一方R1、R2、X及びYは、上で定義されている。
【0037】
別の実施形態によれば、式(I)の化合物のR3は、次式(VIII)
【化10】
と一致して−CH2CH3であることができ、
一方R1、R2、X及びYは、上で定義されている。
【0038】
別の実施形態によれば、式(I)の化合物のR3は、次式(IX)
【化11】
と一致して−CH3であることができ、
一方R1、R2、X及びYは、上で定義されている。
【0039】
好ましくは、式(I)の化合物は、
(±)−2−ヒドロキシ−3−(3’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物20)
(±)−2−メトキシ−2−(4’−アミノフェニル)酢酸(化合物23)
(±)−2−エトキシ−2−(3’−アミノフェニル)酢酸(化合物32)
(±)−2−エトキシ−2−(4’−アミノフェニル)酢酸(化合物33)
(±)−2−メトキシ−3−(4’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物34)
(±)−2−エトキシ−3−(4’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物39)
(±)−2−エトキシ−3−(3’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物40)
を含む群から選択することができる。
【0040】
本発明による化合物は、医療分野で有利に使用することができる。従って、本発明は、有効成分として上で定義した1つ又は複数の化合物を1つ又は複数の薬学的に許容できる賦形剤又は補助剤と組合せて含む薬剤組成物に関する。
【0041】
本発明は、更に、PPARγ受容体及びEGF受容体を発現する腫瘍、例えば、食道、胃、膵臓、結腸、前立腺、乳房の腫瘍、子宮及びその付属器の腫瘍、腎臓の腫瘍並びに肺の腫瘍等の予防及び治療のための医薬品を調製するための上で定義した化合物の使用に関する。
【0042】
更に、本発明は、慢性炎症性疾患、例えばクローン病及び潰瘍性結腸大腸炎等の治療のための医薬品を調製するための本発明による化合物の使用に関する。本発明は、また、ヒト及び/又は哺乳動物(げっ歯類、家畜、家庭内ペット、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ヒツジ、乳牛、ウマを含む)の治療の方法にも関する。
【0043】
特に、前述の用途で使用することができる本発明による化合物は、既に記載したものは別として、次のものであり得る:
(±)−2−ヒドロキシ−2−(3−アミノフェニル)酢酸(化合物10)
(±)−2−ヒドロキシ−2−(4−アミノフェニル)酢酸(化合物11)
(±)−2−ヒドロキシ−3−(4’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物21)
(±)−2−メトキシ−3−(3’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物35)
(±)−2−メトキシ−3−(4’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物34)
【0044】
記載した化合物の使用は、それらのラセミ体での使用に限定されない。本発明は、鏡像異性的に純粋なR型又はS型の任意の記載した化合物、或いは1つの鏡像異性体が任意の割合で他を超えている任意の混合物の使用にまで及ぶ。
【0045】
実のところ、実行されたドッキング調査によれば、純粋なR型鏡像異性体は活性を示すとはいえ、S型鏡像異性体はR型鏡像異性体より更に活性であることを示している。
【0046】
本発明の分子は、メサラジンを根拠として使用する分子モデリング作業から誘導し、すべての化学的に実現可能な異形を最善の成績(受容体の親和性及び活性化)を得るためにコンピューターをドッキングした実験で評価した。その結果、メサラジンに相当する機能及び/又は活性を示す本発明の化合物は、類似した生物学的経路を経ることによるものと考えられる。本発明の分子に内在するメサラジンと類似した特徴が、EGF経路に関する類似の活性をこれらの分子に与えているものと考えられる。
【0047】
本明細書で提供する実施例は、既に論じた化合物類の様々な医療分野における使用の予測用として役立つモデルである。これらのモデルは、従って、それらの作用の機序には関わりなく、有益且つ重要な結果を提供する。
【0048】
上記の化合物に加えて、本発明は次の化合物の使用を提供する:
【化12】
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
本発明を、ここで、それを限定するのではなく説明することを目的として、その好ましい実施形態に従い、添付の図面中のダイアグラムを特に参照して記述する。
【実施例】
【0050】
(実施例1)
(±)−2−ヒドロキシ−3−(3’−アミノフェニル)−プロパン酸(化合物20)を調製する方法
【化13】
ステップ1
3−ニトロベンズアルデヒド(45.3g、0.3モル)、N−アセチルグリシン(42.1g、0.36モル)及び酢酸ナトリウム(32g、0.39モル)を無水酢酸(142ml、1.5モル)と混合し、得られた混合物を撹拌しながら120℃に6時間加熱し、暗黒の溶液を生じさせた。その混合物を次に室温まで冷却して一晩置き、その結果沈殿した固体が形成された。その反応混合物を氷水(130g)中に注ぎ、得られた懸濁固体を濾過して集めた。その固体の粗生成物(72g)をアセトン(80ml)で洗浄し、次いで熱いアセトン(320ml)から再結晶させて結晶性固体を生成させ、それを50%水性エタノールにより洗浄し、次いで40℃/40mmHgで乾燥して、2−メチル−4−(3−ニトロベンジリデン)オキサゾール−5(4H)−オン(49.0g、78%)の黄白色針状結晶を生じさせた。
【化14】
【0051】
ステップ2
2−メチル−4−(3−ニトロベンジリデン)オキサゾール−5(4H)−オン(52.0g、0.224モル)を、3Mの塩酸(1.3L)と混合し、この懸濁液を100℃で6時間撹拌した。得られた懸濁液を室温で一晩撹拌し、次いでその懸濁固体を濾過によって集め、水で洗浄し(2×40ml)、次いで真空中で乾燥して2−ヒドロキシ−3−(3−ニトロフェニル)アクリル酸(29.3g)を生じさせた。濾液と洗浄液を組合せたものを酢酸エチルにより抽出し(4×0.5L)、次いで合体した有機抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥し、乾燥するまで濃縮して2−ヒドロキシ−3−(3−ニトロフェニル)アクリル酸の更なる収穫(12.0g)を生じさせた。2−ヒドロキシ−3−(3−ニトロフェニル)アクリル酸の全体収量は41.3g(88%)であった。
【化15】
【0052】
ステップ3
ナトリウムエトキシド(1.8g、26.4ミリモル)を、メタノール(131ml)中の2−ヒドロキシ−3−(3−ニトロフェニル)アクリル酸(5.25g、25.0ミリモル)の撹拌された溶液に0℃で滴下して加え、透明な黄白色の溶液を形成した。水酸化ナトリウム(1g、26.4ミリモル)を2回に分けて注意深く加え、その混合物を5〜10℃で30分間撹拌した。少量の水を次に加え、反応を停止し、過剰のNaBH4を無効化した。メタノールを真空で除去し、固体の残留物を生じさせ、それを酢酸エチルとヘプタンの5:2の混合物(21ml)と共にすりつぶし、次いで3%水性メタノールと共に更にすりつぶした。得られた固体を濾過して集め、真空中で乾燥して2−ヒドロキシ−3−(3−ニトロフェニル)プロピオン酸を生じさせた(3.0g、57%)。
【化16】
【0053】
ステップ4
2−ヒドロキシ−3−(3−ニトロフェニル)プロピオン酸(3.0g、14.2ミリモル)、メタノール(129ml)及び5%パラジウム活性炭(600mg、2モル%)の混合物を10psiのH2雰囲気中で1時間水素化した。この混合物を、次にセライトにより濾過し、そのフィルターケーキをメタノールで洗浄し、その濾液を高真空下の40℃で濃縮して泡立った固体としての生成物を生じさせた。これを水に溶解し、その溶液を凍結乾燥して(±)−2−ヒドロキシ−3−(3’−アミノフェニル)−プロパン酸(2.6g、100%)を白色固体として生じさせた。
【化17】
【0054】
(実施例2)
(±)−2−メトキシ−2−(4’−アミノフェニル)−酢酸(化合物23)を調製する方法
【化18】
ステップ1
水酸化カリウム(6.72g、0.12モル)のメタノール(25ml)中の溶液を、4−アセトアミドベンズアルデヒド(24.5g、0.15モル)及びクロロホルム(4.01g、0.33モル)のDMF(100ml)中の冷却した(−7℃)溶液に、温度を−5℃より下に保つ速度で加えた。その混合物を5.5時間にわたってそのまま2℃まで温め、次いでそれを1MのHCl水溶液(200ml)及びトルエン(200ml)の混合物に加え、一晩撹拌した。得られた2−(4−アセトアミドフェニル)−トリクロロカルビノールを濾過して集め(29g)、吸引乾燥した。
【0055】
ステップ2
2−(4−アセトアミドフェニル)−トリクロロカルビノール(14.0g、49.5ミリモル)のメタノール(330ml)中の溶液及び水酸化カリウム(13.8g、250ミリモル)のメタノール(150ml)中の溶液を混合し、その混合物を70〜80℃に3時間加熱した。冷却後、KClの副生成物を濾過して除去し、次いでその濾液を真空中で濃縮することにより、2−(4−アセトアミドフェニル)−2−メトキシ酢酸(14g)の白色固体を生じさせた。
【0056】
ステップ3
2−(4−アセトアミドフェニル)−2−メトキシ酢酸(7.1g、31.8ミリモル)を、ヒドラジン一水和物(40ml)と共に16時間加熱し、冷却し、真空中で濃縮した。得られた残留油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し(溶離液CH2Cl2中20〜40%メタノール)、2.6g(45%)の(±)−2−メトキシ−2−(4’−アミノフェニル)−酢酸を生じさせた。
【化19】
【0057】
(実施例3)
(±)−2−エトキシ−2−(3’−アミノフェニル)−酢酸(化合物32)を調製する方法
【化20】
ステップ1
3−ニトロベンズアルデヒド(25g、165ミリモル)及びクロロホルム(30ml、375ミリモル)を、DMF(100ml)に溶解し、その溶液を−5℃と−10℃の間に冷却した。水酸化カリウム(7.5g、134ミリモル)のメタノール(22.5ml)中の新たな溶液を内温<−5度を維持するようにゆっくりと加えた。その反応は、2時間<−5℃で維持し、次にトルエン(225ml)中の塩酸水溶液(225ml)の冷却した混合物により停止した。その溶液を氷浴中に入れ、一晩そのままゆっくり室温まで温めた。この時間の後、トルエン層を分離し、水層をトルエンで更に抽出した。合体した有機層を、水(2×225ml)、5%重炭酸ナトリウム溶液(225ml)及び水(225ml)で洗浄した。その溶液を乾燥(MgSO4)し、濾過し、真空中で濃縮して、2−(3−ニトロフェニル)−トリクロロカルビノールをオレンジ色の固体として生じさせた(42g、155ミリモル、94%)。
【化21】
【0058】
ステップ2
2−(3−ニトロフェニル)−トリクロロカルビノール(20g、74ミリモル)を、無水エタノール(74ml)に溶解し、水酸化カリウム(20.7g、369ミリモル)の無水エタノール(150ml)中の溶液をゆっくり加えた。その溶液を加熱して4時間還流させ、そのまま冷却し、次いで真空中で濃縮した。その残留物を希塩酸で酸性とし、生成物を酢酸エチルで抽出した(3回)。合体した有機層を乾燥(MgSO4)し、濾過し、真空中で濃縮して2−エトキシ−2−(3−ニトロフェニル)酢酸を褐色の固体として生じさせた(6.4g、28.4ミリモル、38%)。
【化22】
【0059】
ステップ3
2−エトキシ−2−(3−ニトロフェニル)酢酸(6.4g、28.4ミリモル)を、無水エタノール(500ml)に溶解し、5%パラジウムカーボン(湿体)(1.5g)を加え、その混合物を60psiで一晩水素化した。その懸濁液をセライトにより濾過し、濾液を濃縮して、(±)−2−エトキシ−2−(3’−アミノフェニル)−酢酸(3.0g、15.3ミリモル、54%)を褐色固体として生じさせた。
【化23】
【0060】
(実施例4)
(±)−2−エトキシ−2−(4’−アミノフェニル)−酢酸(化合物33)を調製する方法
【化24】
ステップ1
「化合物23ステップ1」参照。
【0061】
ステップ2
2−(4−アセトアミドフェニル)−トリクロロカルビノール(14.0g、49.5ミリモル)のエタノール(400ml)中の溶液及び水酸化カリウム(13.8g、250ミリモル)のエタノール(150ml)中の溶液を混合し、その混合物を70〜80℃に2.5時間加熱した。その混合物を冷却し、濾過してKClの副生成物を除去し、真空中で濃縮して、2−(4−アセトアミドフェニル)−2−エトキシ酢酸(14g)の黄色の固体を生じさせた。
【0062】
ステップ3
2−(4−アセトアミドフェニル)−2−エトキシ酢酸(7.54g、31.8ミリモル)を、ヒドラジン一水和物(40ml)と共に16時間加熱し、その混合物を冷却し、次いで真空中で濃縮した。残留油状物をシリカカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2中20〜40%メタノール溶離液)によって精製し、(±)−2−エトキシ−2−(4’−アミノフェニル)−酢酸(2.3g、37%)を白色発泡体として生じさせた。
【化25】
【0063】
(実施例5)
(±)−2−メトキシ−3−(4’−アミノフェニル)−プロピオン酸(化合物34)を調製する方法
【化26】
ステップ1
4−ニトロベンズアルデヒド(53.7g、0.356モル)、N−アセチルグリシン(49.9g、0.427モル)及び酢酸ナトリウム(37.9g、0.463モル)を無水酢酸(168g、1.78モル)と混合し、得られた混合物を撹拌しながら120℃に6時間加熱し、暗黒の懸濁液を生じさせた。その混合物を次に室温まで冷却して一晩置き、その結果沈殿した固体が形成された。その反応混合物を氷水(150g)中に注ぎ、得られた懸濁固体を濾過して集めた。その固体の粗生成物をアセトン(100ml)で洗浄し、次いで熱いアセトン(650ml)から再結晶させて結晶性固体を生成させ、それを50%水性エタノールにより洗浄し、次いで真空中で乾燥して、2−メチル−4−(4−ニトロベンジリデン)オキサゾール−5(4H)−オン(55.0g、66%)の黄白色針状結晶を生じさせた。結晶化母液及び洗浄液を合体し、蒸発させて固体残留物を生じさせ、それをアセトンから再結晶させて、2−メチル−4−(4−ニトロベンジリデン)オキサゾール−5(4H)−オンの第2の収穫(8g、10%)を得た。2−メチル−4−(4−ニトロベンジリデン)オキサゾール−5(4H)−オンの合わせた収量は、63g(76%)であった。
【化27】
【0064】
ステップ2
2−メチル−4−(4−ニトロベンジリデン)オキサゾール−5(4H)−オン(63.0g、0.272モル)を、3Mの塩酸(1.2L)と混合し、この懸濁液を100℃で6時間撹拌した。得られた懸濁液を室温で一晩撹拌し、次いでその懸濁固体を濾過によって集め、水で洗浄し(2×50ml)、次いで真空中で乾燥して2−ヒドロキシ−3−(4−ニトロフェニル)アクリル酸(46.6g、81%)を生じさせた。濾液と洗浄液を組合せたものを酢酸エチルにより抽出し(4×0.5L)、次いで合体した有機抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥し、乾燥するまで濃縮して2−ヒドロキシ−3−(4−ニトロフェニル)アクリル酸の更なる収穫(0.8g、1%)を得た。2−ヒドロキシ−3−(4−ニトロフェニル)アクリル酸の全体収量は47.4g(82%)であった。
【化28】
【0065】
ステップ3
2−ヒドロキシ−3−(4−ニトロフェニル)アクリル酸(15g、71.7ミリモル)、炭酸セシウム(56g、172.1ミリモル)及び硫酸ジメチル(14.2ml、150.6ミリモル)のDMF(270ml)中の混合物を、室温で18時間撹拌した。水(220ml)及び酢酸エチル(150ml)を加え、層分離させた。その水層を酢酸エチルで更に抽出し(4×100ml)、次いで合体した有機物を水(6×100ml)、ブライン(2×120ml)で洗浄し、半分の容積まで濃縮した。ヘプタン(70ml)を加え、その混合物を200mlの容積まで濃縮した。その結果沈殿した固体を濾過によって集め、ヘプタンで洗浄し(2×100ml)、フィルター上で吸引乾燥してヘプタンの痕跡を含む2−メトキシ−3−(4−ニトロフェニル)アクリル酸メチルを黄褐色固体として提供した(9.2g、54%収量)。
【化29】
【0066】
ステップ4
2−メトキシ−3−(4−ニトロフェニル)アクリル酸メチル(7.8g、32.8ミリモル)を、IMS(156ml)中に溶解した。NaOH(1.44g、36.1ミリモル)の水(78ml)中の溶液を加え、その混合物を周囲温度(18℃)で18時間撹拌した。その反応混合物を1MのHCl(120ml)により酸性とし、その結果沈殿した固体を濾過して集め、水で洗浄し(2×100ml)、フィルター上で30分間部分的に吸引乾燥し、続いて18℃で18時間真空オーブン乾燥をした。かくして2−メトキシ−3−(4−ニトロフェニル)アクリル酸が若干の結晶水を含む黄褐色固体として提供された(6.7g、91%)。
【化30】
【0067】
ステップ5
2−メトキシ−3−(4−ニトロフェニル)アクリル酸(6.7g、30ミリモル)を、メタノール(700ml)及びTHF(300ml)中に溶解し、10%パラジウム炭素(湿量基準)(0.67g)を加えた。その混合物を45psiで43分間と、その後毎時45〜48psiへの補充を3時間繰り返し、最後に48psiで18時間の水素化をした。得られた懸濁液を、GF/F濾紙により濾過し、フィルターの残留物をMeOH(200ml)で洗浄した。濾液をオフホワイトの固体になるまで濃縮した。その固体をIMS(75ml)中に20℃で1.5時間スラリー化し、濾過し、IMS/ヘプタン(1:2)(20ml)で洗浄し、フィルター上で1時間乾燥して(±)−2−メトキシ−3−(4’−アミノフェニル)−プロピオン酸をオフホワイトの固体として提供した(5.1g、88%収量)。
【化31】
【0068】
(実施例6)
(±)−2−メトキシ−3−(3’−アミノフェニル)−プロピオン酸(化合物35)を調製する方法
【化32】
ステップ1及び2
化合物20のとおり。
【0069】
ステップ3
硫酸ジメチル(13.23g、105ミリモル)を、2−ヒドロキシ−3−(3−ニトロフェニル)アクリル酸(10.5g、50.0ミリモル)及び炭酸セシウム(39.1g、120ミリモル)のDMF(105ml)中の撹拌された混合物に加えて透明な黄白色混合物を形成し、それを室温で一晩撹拌した。得られた暗赤色の懸濁液を真空中で濃縮し、残留物を水(100ml)及びジクロロメタン(150ml)の間で分配した。有機層を分離し、水で更に洗浄し(2×100ml)、硫酸ナトリウムにより乾燥し、シリカゲルを通して濾過した。得られた黄色の溶液を真空中で乾燥するまで蒸発させ、2−メトキシ−3−(3−ニトロフェニル)アクリル酸メチルを黄色固体として生じさせた(8.1g、67%)。
【化33】
【0070】
ステップ4
水酸化カリウム(2.0g、35.9モル)の水(25ml)中の溶液を、2−メトキシ−3−(3−ニトロフェニル)アクリル酸メチル(8.1g、34.2ミリモル)のメタノール(150ml)中の撹拌された溶液に加え、得られた混合物を室温で一晩撹拌した。更なる量の水(10ml)中のKOH(0.5g、8.9ミリモル)を加え、その混合物を80℃に1時間加熱した。次にメタノールを真空中で蒸発させ、残留物を水(200ml)で希釈した。その溶液をジクロロメタンで洗浄し(2×100ml)、セライトのパッドを通して濾過し、次いで3MのHClを加えてpH3の酸性にした。その混合物を18時間冷蔵保存し、次いで沈殿した固体を濾過して集め、水で洗浄し(3×30ml)、真空中40℃で乾燥し、2−メトキシ−3−(3−ニトロフェニル)アクリル酸を黄色固体として生じさせた(6.4g、84%)。
【化34】
【0071】
ステップ5
2−メトキシ−3−(3−ニトロフェニル)アクリル酸(3.4g、15.25ミリモル)、メタノール(340ml)及び5%パラジウム活性炭(1.36g、4モル%)の混合物を12〜36psiのH2雰囲気中で1.5時間水素化した。この混合物を、次にセライトにより濾過し、そのフィルターケーキをメタノールで洗浄し、その濾液を真空下の40℃で濃縮して泡立った固体としての生成物を生じさせた。これを水(100ml)に溶解し、その溶液を凍結乾燥して(±)−2−メトキシ−3−(3’−アミノフェニル)−プロピオン酸(2.6g、100%)をオフホワイトの固体として生じさせた。
【化35】
【0072】
(実施例7)
(±)−2−エトキシ3−(4’−アミノフェニル)−プロピオン酸(化合物39)を調製する方法。鏡像異性分割(図12)
【化36】
ステップ1及び2
化合物34のステップ1及び2のとおり。
【0073】
ステップ3
2−ヒドロキシ−3−(4−ニトロフェニル)アクリル酸(20g、95.6ミリモル)を、DMF(200ml)中に懸濁させた。Cs2CO3(74.9g、229.9ミリモル)及び硫酸ジエチル(26.3ml、201ミリモル)を加え、溶解を観察した。18℃で18時間撹拌した後、水(350ml)及び酢酸エチル(250ml)を加え、層分離した。その水層を更に酢酸エチルで抽出し(5×200ml)、次いで合体した有機物を水(2×200ml)、ブライン(2×200ml)で洗浄し、硫酸マグネシウムにより乾燥した。その有機物を乾燥するまで濃縮して、2−エトキシ−3−(4−ニトロフェニル)−アクリル酸エチルを3.6質量%のDMFを含有するオレンジ色の固体として得た(27.6g湿体、収率<100%)。
【化37】
【0074】
ステップ4
3.6重量%のDMFを含有する2−エトキシ−3−(4−ニトロフェニル)−アクリル酸エチル(補正した26.07g、98.3ミリモル)を、IMS(500ml)に溶解し、NaOH(1.44g、36.1ミリモル)の水(260ml)中の溶液を加えた。得られた混合物を周囲温度で18時間撹拌し、次いで1MのHCl(120ml)で酸性にし、得られた固体を濾過して集め、水で洗浄し(2×100ml)、フィルター上で30分吸引乾燥し、続いて18℃で18時間真空オーブン乾燥をした。こうして、2−エトキシ−3−(4−ニトロフェニル)アクリル酸が結晶水を含有するオレンジ色の固体として得られた(18.4g、79%)。
【化38】
【0075】
ステップ5
2−エトキシ−3−(4−ニトロフェニル)アクリル酸(18.4g湿体、約77.5ミリモル)を、MeOH(1.1L)中に溶解し、10%パラジウム炭素(湿量基準)(1.84g)を加えた。その混合物を12psiで10分間と、その後10〜20分毎に20〜28psiへの補充を5時間繰り返し、次いで46psiで18時間の水素化をした。その混合物を、GF/F紙により濾過し、残留物をIMS(100ml)中にスラリー化し、濾過してヘプタン(100ml)で洗浄し、フィルター上で吸引乾燥した。かくして(±)−2−エトキシ−3−(4’−アミノフェニル)−プロピオン酸が、オフホワイトの固体として得られた(11.2g、69%)。
【化39】
【0076】
(実施例8)
(±)−2−エトキシ−3−(3’−アミノフェニル)−プロパン酸(化合物40)を調製する方法
【化40】
ステップ1及び2
化合物20ステップ1及び2のとおり。
【0077】
ステップ3
硫酸ジエチル(12g、78.2ミリモル)を、2−ヒドロキシ−3−(3−ニトロフェニル)アクリル酸(6.1g、30.0ミリモル)及び炭酸セシウム(29.3g、90ミリモル)のDMF(61ml)中の撹拌された混合物に加えて透明な黄白色混合物を形成し、それを室温で一晩撹拌した。得られた暗赤色の懸濁液を50℃に4時間加熱し、真空中で濃縮し、残留物を水(100ml)及びジクロロメタン(150ml)の間で分配した。有機層を分離し、水で更に洗浄し(2×100ml)、硫酸ナトリウムにより乾燥し、シリカゲルパッドを通して濾過した。得られた黄色の溶液を真空中で乾燥するまで蒸発させ、2−エトキシ−3−(3−ニトロフェニル)アクリル酸エチルを黄色固体として生じさせた(5.6g、72%)。
【0078】
ステップ4
水酸化カリウム(1.3g、22.2モル)の水(20ml)中の溶液を、2−エトキシ−3−(3−ニトロフェニル)アクリル酸エチル(5.6g、21.1ミリモル)のメタノール(100ml)中の撹拌された溶液に加え、得られた混合物を一晩加熱して還流させた。次にメタノールを真空中で蒸発させ、その残留物を水(150ml)で希釈した。その溶液をジクロロメタンで洗浄し(2×80ml)、セライトのパッドを通して濾過し、次いで3MのHClを加えてpH3の酸性にした。その混合物を18時間冷蔵保存し、次いで沈殿した固体を濾過して集め、水で洗浄し(3×30ml)、真空中40℃で乾燥した。得られた固体を酢酸エチルとヘプタンとから再結晶させて、2−エトキシ−3−(3−ニトロフェニル)アクリル酸を黄色固体として生じさせた(3.06g、61%)。
【化41】
【0079】
ステップ5
2−エトキシ−3−(3−ニトロフェニル)アクリル酸(3.06g、12.9ミリモル)、メタノール(150ml)及び5%パラジウム活性炭(0.60g、2モル%)の混合物を12〜30psiのH2雰囲気中で2時間水素化した。この混合物を、次にセライトにより濾過し、そのフィルターケーキをメタノールで洗浄し、その濾液を真空下の40℃で濃縮して泡立った固体としての生成物を生じさせた。これを水(100ml)に溶解し、その溶液を凍結乾燥して(±)−2−エトキシ−3−(3’−アミノフェニル)−プロピオン酸(2.7g、100%)をオフホワイトの固体として生じさせた。
【化42】
【0080】
(実施例9)
分子モデリング
分子モデリングの検討を、シリコン・グラフィックス(Silicon Graphics)社のワークステーションで動くSYBYLソフトウェアのバージョン6.9.1(Tripos Associates Inc、ミズーリ州セントルイス)を用いて行った。5−ASAの両性イオン型の三次元モデルを標準フラグメントライブラリーから構築し、その幾何学的配置を、その後Tripos力場(3)を用いて最適化した。化合物のpKaが未だ知られていないため、生理的pH(7.4)において起こる種を決定するためにはスパーク(SPARC)オンライン計算機を使用した(http://ibmlc2.chem.uga.edu/sparc/index.cfm)。イオン化化合物の三次元モデルは、標準フラグメントライブラリーから構築し、それらの幾何学的配置は、その後Gasteiger及びHuckelの原子電荷から計算した静電項を含むTripos力場(3)を用いて最適化した。Maximin2手順において利用できるPowellの方法を、勾配値が0.001kcal/mol.Åより小さくなるまでエネルギー最小化のために使用した。
【0081】
ヒトPPARγリガンド結合領域の構造は、RCSBタンパク質データバンク(1l7l)において入手できるテサグリタザル(tesaglitazar)(AZ242)によるその複合X線結晶構造から得た(4、5)。受容体活性部位中への化合物のフレキシブルドッキングは、GOLDソフトウェアを用いて行った(6)。最も安定なドッキングモデルは、GoldScore(6)及び機能を採点するX−Score(7)により予測したベストスコアの立体構造に従って選択した。複合体は、Tripos力場及び勾配値が0.01kcal/mol.Åに到達するまでの4.0の誘電率によるMaximin2手順において利用できるPowell法を用いてエネルギーを最小化した。アニール機能を用いてリガンドの周囲の関心部分(10Å)及び興味深い部分(15Å)を限定した。
【0082】
結果
分子モデリング受容体ドッキングの検討により、R型鏡像異性体もまた活性を示しはするが、一般に、S型鏡像異性体はR型鏡像異性体より更に活性であることが予測された。1つの鏡像異性体がより生物学的に活性であるこの現象はよく知られている。
【0083】
結果として、本発明は、化合物を複数の鏡像異性体に分離する方法を提供する。化合物32に対するその分離方法を図11で図式により示す。
【0084】
理論に拘束されることを望むものではないが、化合物のS型鏡像異性体は、より高い活性を与えるものと考えられる。ドッキング検討の結果を図5〜10に示す。
【0085】
(実施例7)
(±)−2−エトキシ3−(4’−アミノフェニル)−プロピオン酸(化合物39)を調製する方法。鏡像異性分割(図12)
【化43】
ステップ1及び2
化合物34のステップ1及び2のとおり。
【0086】
ステップ3
2−ヒドロキシ−3−(4−ニトロフェニル)アクリル酸(20g、95.6ミリモル)を、DMF(200ml)中に懸濁させた。Cs2CO3(74.9g、229.9ミリモル)及び硫酸ジエチル(26.3ml、201ミリモル)を加え、溶解を観察した。18℃で18時間撹拌した後、水(350ml)及び酢酸エチル(250ml)を加え、層分離した。その水層を更に酢酸エチルで抽出し(5×200ml)、次いで合体した有機物を水(2×200ml)、ブライン(2×200ml)で洗浄し、硫酸マグネシウムにより乾燥した。その有機物を乾燥するまで濃縮して、2−エトキシ−3−(4−ニトロフェニル)−アクリル酸エチルを3.6質量%のDMFを含有するオレンジ色の固体として得た(27.6g湿体、収率<100%)。
【化44】
【0087】
ステップ4
3.6重量%のDMFを含有する2−エトキシ−3−(4−ニトロフェニル)−アクリル酸エチル(補正した26.07g、98.3ミリモル)を、IMS(500ml)に溶解し、NaOH(1.44g、36.1ミリモル)の水(260ml)中の溶液を加えた。得られた混合物を周囲温度で18時間撹拌し、次いで1MのHCl(120ml)で酸性にし、得られた固体を濾過して集め、水で洗浄し(2×100ml)、フィルター上で30分吸引乾燥し、続いて
【0088】
結果
PPARγの活性化は、ペルオキシソーム増殖因子応答エレメント(PPRE)と称される特定のDNA配列因子への結合につながる次々と起こる反応をもたらす(7〜9)。
【0089】
本発明者らは、PPARγ転写活性を、ウミシイタケルシフェラーゼ及びPPREプラスミドによる上皮細胞の一過性形質移入によって調査した。新規分子がPPARγの活性化を刺激するのに5−ASAより更に効果を有するかどうかを評価するために、本発明者らは、これらの分子を1mMの濃度で試験した。1mMの濃度における新規分子の効果を、陽性対照としてそれぞれ最適濃度の30mM及び10−5Mで使用した5−ASA及びロシグリタゾンと比較した。細胞は、異なる分子により24時間刺激した。
【0090】
形質移入したHT−29細胞中のPPARγ活性の分析により、新規分子34、39、35及び40は、1mMにおいて、それぞれレポーター遺伝子活性を、4.8±0.71倍、2.73±0.31倍、2.64±0.46倍、3.4±0.97倍増すことが示され、それによって5−ASAの30mM(2.8±0.7)及びロシグリタゾンの10−5M(3.17±0.29)と同等以上の活性を示した。
【0091】
図2は、3通り行った2回又は3回の実験で評価した各分子について得られたすべての結果を表している。異なる実験の間の再現性は良好であり、文献に記載されているデータと類似している。
【0092】
この検討により、本発明者らは、5−ASAがPPARγを活性化するより30倍から50倍の効果を有する4個の新規分子を確認した。
【0093】
(実施例11)
結腸癌細胞増殖
次の物質(即ち、20、34、35、39及び40)を、結腸癌細胞増殖を調節するそれらの能力について試験した。この目的のため、3つのヒト結腸癌細胞系(即ち、HT−29、HT−115及びDLD−1)を用いた。これらの細胞種類は、シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)発現に基づいて選択した。実際に、HT−115細胞は、生物学的に活性なCOX−2を発現し、HT−29細胞は、機能しないCOX−2イソ型を発現し、DLD−1は、COX−2が欠ける細胞である。これらの分子は、また、COX−を発現しない細胞に対しても活性であり、従って、本発明の分子は、腫瘍の治療及び本明細書に記載されているその他の用途のためにCOX−2を発現しない細胞において使用することができるものと考えられる。
【0094】
HT−29細胞及びDLD−1細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(P/S)及び50mg/mlのゲンタマイシンを補充したMcCoy及びRPMI1640媒体中でそれぞれ培養した。HT−115は、15%FBS及び1%P/Sを補充したDMEM媒体中で培養した。細胞は、5%CO2存在下の加湿した37℃のインキュベーター中に保存した。
【0095】
細胞増殖アッセイのために、単個細胞浮遊液を、0.5%のFBSを含有する媒体中の96ウェルの培養皿に、2×103個の細胞/ウェル(HT115については4×103個の細胞/ウェル)で蒔き、そのまま接着させた。接着しない細胞を次に除去し、0.5%のFBSを含有する新鮮な媒体を各ウェルに追加した。細胞は、特定物質の存在下又は非存在下で培養した。各物質は、0.5%のFBSを含有する培地中に25mMの原液として溶解し、各原液のpHを7.4に、必要ならNaOHによって調整した。物質は、0.5から10mMに及ぶ最終濃度で使用した。
【0096】
細胞増殖は、市販されている細胞増殖キット(Roche Diagnostics、イタリア、モンツァ)を用いて5−ブロモ−2’−デオキシウリジン(BrdU)のDNA中への組み込みを計量することにより測定した。BrdUを培養の最後の6時間の間細胞培養に加え、48時間の培養の後、BrdU陽性細胞の濃度を酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)により測定した。光学濃度(OD)を、ELISA読取機を用いて450nmで測定した。実験は3通り行い、その結果は、平均±標準偏差(SD)として記録する。
【0097】
結果
化合物は、結腸癌細胞増殖を阻害するそれらの能力が異なった。結果を特定の化合物によるDLD−1細胞増殖阻害の百分率を示す表1に集約する。物質20は、用量依存的な様式で際立った抗増殖効果を、試験した3つの細胞系のそれぞれにおいて示す(図3及び4)。90%を超える細胞増殖阻害が、最終濃度の10mMを使用したときに見られた。化合物20の細胞増殖を著しく阻害する能力が、最終濃度の5又は10mMで使用したときに見られた。
【0098】
化合物34及び39は、高用量(10mM)で使用したとき、わずかに細胞増殖を減少した(図4)が、基の間の違いは統計的に有意ではなかった。同様に、物質35及び40を加えた培養においては細胞増殖の阻害は見られなかった(表1参照)。
【0099】
結論
本発明のこの最初の組の例(実施例10)は、4つの最適化した分子34、39、35及び40が1mMの濃度において、移入したHT−29細胞中のPPARγの活性を増して30mMの5−ASA及び10−5Mのロシグリタゾンと同等以上の活性を見せる能力を示している。
【0100】
本発明の第2の組の例(実施例11)は、化合物類が結腸癌細胞系、HT−29、HT−115及びDLD−1の増殖の阻害に程度を異にして影響を及ぼすことを示している。当該化合物類は、結腸癌細胞増殖を阻害するそれらの能力が異なった。物質20は、試験した細胞系に対して際立った抗増殖効果を示した。
【0101】
本発明のこれらの分子は、また、COX−2を発現しない細胞に対しても活性であり、従って、本発明の分子は、腫瘍の治療及び本明細書に記載されているその他の用途のためにCOX−2を発現しない細胞において使用することができる。
【0102】
総体的結論
モデリング調査により示唆され、合成された最高位の化合物は、すべてメサラジンのそれと同等以上の活性を示す。
【0103】
(参考文献)
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1−1】(表1)段階的用量(0.5〜10mM)の特定の化合物によるDLD−1細胞阻害の百分率の表である。細胞は、化合物の存在下又は非存在下で培養し、細胞増殖を次に48時間培養の後比色(BrdU)分析によって評価した。
【図1−2】化合物20、23、32、33、34、35、39及び40の構造を示す図である。
【図2】化合物で処置したことによるPPARγの活性を示す図である。
【図3】特定の物質のヒト結腸癌細胞系(即ち、HT29、HT115及びDLD−1)の増殖に対する効果を示す図である。細胞は、増加する濃度の物質(0.5〜10mM)で48時間処置し、増殖はBrdUの取り込みを計量するための比色分析を用いて測定した。光学濃度(OD)は、ELISA読取機を用いて450nmで測定した。データは、3つの別々の実験の平均±SDを示す。
【図4】特定の物質のヒト結腸癌細胞系(即ち、HT29、HT115及びDLD−1)の増殖に対する効果を示す図である。細胞は、増加する濃度の物質(0.5〜10mM)で48時間処置し、増殖はBrdUの取り込みを計量するための比色分析を用いて測定した。光学濃度(OD)は、ELISA読取機を用いて450nmで測定した。データは、3つの別々の実験の平均±SDを示す。
【図5】(R型)化合物34のPPAPy受容体へのドッキングを示す図である(アミノ酸残基ラベリング及び水素結合が示されている)。
【図6】(S型)化合物34のPPAPy受容体へのドッキングを示す図である(アミノ酸残基ラベリング及び水素結合が示されている)。
【図7】(R型)化合物35のPPAPy受容体へのドッキングを示す図である(アミノ酸残基ラベリング及び水素結合が示されている)。
【図8】(S型)化合物35のPPAPy受容体へのドッキングを示す図である(アミノ酸残基ラベリング及び水素結合が示されている)。
【図9】(R型)化合物39のPPAPy受容体へのドッキングを示す図である(アミノ酸残基ラベリング及び水素結合が示されている)。
【図10】(S型)化合物39のPPAPy受容体へのドッキングを示す図である(アミノ酸残基ラベリング及び水素結合が示されている)。
【図11】メサラミンのPPAPy受容体へのドッキングを示す図である(アミノ酸残基ラベリング及び水素結合が示されている)。
【図12】化合物39の合成及びその後の分割の概略を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)の化合物
【化1】
[式中、
R1及びR2は、同一でも異なってもよく、−H又は1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝アルキル基を含む群から選択されるか、一緒になって5個又は6個の原子の芳香族又は脂肪族環を形成しており;
Y及びZは、同一でも異なってもよく、−H、−OH、−COOH、−OR3、−CH(OR3)COOHを含む群から選択され、ここでR3は、H、フェニル、ベンジル、−CF3又は−CF2CF3、ビニル、アリル及び1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝アルキル基から選択される]。
【請求項2】
一般式(Ia)の化合物
【化2】
[式中、
R1及びR2は、同一でも異なってもよく、−H又は1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝アルキル基を含む群から選択され;
Y及びZは、同一でも異なってもよく、−H、−OH、−COOH、−OR3、−CH(OR3)COOHを含む群から選択され、ここでR3は、−H及び1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝アルキル基から選択される]。
【請求項3】
1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝アルキル基が、−CH3、−CH2CH3、−CH(CH3)2、−CH2CH2CH3、−CnH2n−1から選択される、請求項1又は請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
YがHである、請求項1から3までのいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
Zが−CH3(OR3)COOHである、請求項1から4までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
R3が−CH3である、請求項1から5までのいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
次式(VI)による、請求項1から6までのいずれかに記載の化合物。
【化3】
【請求項8】
次式(VI)による、請求項1から6までのいずれか一項に記載の化合物。
【化4】
【請求項9】
R3が−Hである、請求項1から8までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
次式(II)による、請求項1から5までのいずれか一項に記載の化合物。
【化5】
【請求項11】
R3が−CH2CH3である、請求項1から5までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
次式(VII)による、請求項1から5まで及び請求項11のいずれか一項に記載の化合物。
【化6】
【請求項13】
次式(VIII)による、請求項1から5まで及び請求項11のいずれか一項に記載の化合物。
【化7】
【請求項14】
Yが−COOHである、請求項1から3までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
R3が−CH3である、請求項1から3まで及び請求項14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
次式(III)
【化8】
による、請求項1から3まで及び請求項14又は15のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
R3が−CH2CH3である、請求項1から3まで及び請求項14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項18】
次式(IV)
【化9】
による、請求項1から3まで及び請求項14及び17のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項19】
次式(V)
【化10】
による、請求項1から3まで及び請求項14及び17のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項20】
(±)−2−ヒドロキシ−3−(3’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物20)
(±)−2−メトキシ−2−(4’−アミノフェニル)酢酸(化合物23)
(±)−2−エトキシ−2−(3’−アミノフェニル)酢酸(化合物32)
(±)−2−エトキシ−2−(4’−アミノフェニル)酢酸(化合物33)
(±)−2−メトキシ−3−(4’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物34)
(±)−2−エトキシ−3−(4’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物39)
(±)−2−エトキシ−3−(3’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物40)
を含む群から選択される、請求項1から19までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項21】
鏡像異性的に純粋なR型又はS型をしている、請求項1から20までのいずれかに記載の化合物。
【請求項22】
有効成分として請求項1から22までのいずれか一項に記載の1つ又は複数の化合物を1つ又は複数の薬学的に許容できる賦形剤又は補助剤と組合せて含む薬剤組成物。
【請求項23】
医療分野において使用するための請求項1から21までのいずれか一項に記載の化合物又は請求項22に記載の薬剤組成物の使用。
【請求項24】
PPARγ受容体及びEGF受容体を発現する腫瘍の予防及び治療のための医薬品を調製するための請求項1から21までのいずれか一項に記載の化合物又は請求項22に記載の薬剤組成物の使用。
【請求項25】
腫瘍が、食道の腫瘍、胃の腫瘍、膵臓の腫瘍、結腸の腫瘍、前立腺の腫瘍、乳房の腫瘍、子宮及び付属器の腫瘍、腎臓の腫瘍並びに肺の腫瘍を含む群から選択されることを特徴とする、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
慢性炎症性疾患治療用の医薬品を調製するための請求項1から21までのいずれか一項に記載の化合物又は請求項22に記載の薬剤組成物の使用。
【請求項27】
慢性炎症性疾患が、クローン病及び潰瘍性結腸大腸炎を含む群から選択されることを特徴とする、請求項24に記載の使用。
【請求項28】
慢性炎症性疾患治療用の医薬品を調製するための請求項1から21までのいずれか一項に記載の化合物又は請求項22に記載の薬剤組成物の使用。
【請求項29】
化合物が、
(±)−2−ヒドロキシ−2−(3’−アミノフェニル)酢酸
(±)−2−ヒドロキシ−2−(4’−アミノフェニル)酢酸
(±)−2−ヒドロキシ−3−(4’−アミノフェニル)プロピオン酸
(±)−2−メトキシ−3−(3’−アミノフェニル)プロピオン酸
(±)−2−メトキシ−3−(4’−アミノフェニル)プロピオン酸
を含む群から選択されることを特徴とする、請求項1から21までのいずれか一項に記載の化合物又は請求項22に記載の薬剤組成物の使用。
【請求項30】
化合物が、化合物10、化合物11、化合物20、化合物21、化合物22、化合物23、化合物32、化合物33、化合物34、化合物35、化合物39及び化合物40を含む群から選択されることを特徴とする、請求項23から29までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項31】
化合物の使用が、1つの鏡像異性体が任意の割合で他を超えている混合物中にある、請求項23から30までのいずれかに記載の使用。
【請求項32】
請求項1から21までのいずれか一項に記載の1つ又は複数の化合物、請求項22に記載の薬剤組成物又は請求項23から31までのいずれか一項に記載の使用によってヒト又は動物を治療することを含むヒト又は動物の治療の方法。
【請求項33】
添付の図及び表を参照して本明細書で実質的に記載されている化合物。
【請求項34】
添付の図及び表を参照して本明細書で実質的に記載されている使用。
【請求項35】
添付の図及び表を参照して本明細書で実質上記載されている薬剤組成物。
【請求項1】
一般式(I)の化合物
【化1】
[式中、
R1及びR2は、同一でも異なってもよく、−H又は1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝アルキル基を含む群から選択されるか、一緒になって5個又は6個の原子の芳香族又は脂肪族環を形成しており;
Y及びZは、同一でも異なってもよく、−H、−OH、−COOH、−OR3、−CH(OR3)COOHを含む群から選択され、ここでR3は、H、フェニル、ベンジル、−CF3又は−CF2CF3、ビニル、アリル及び1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝アルキル基から選択される]。
【請求項2】
一般式(Ia)の化合物
【化2】
[式中、
R1及びR2は、同一でも異なってもよく、−H又は1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝アルキル基を含む群から選択され;
Y及びZは、同一でも異なってもよく、−H、−OH、−COOH、−OR3、−CH(OR3)COOHを含む群から選択され、ここでR3は、−H及び1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝アルキル基から選択される]。
【請求項3】
1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝アルキル基が、−CH3、−CH2CH3、−CH(CH3)2、−CH2CH2CH3、−CnH2n−1から選択される、請求項1又は請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
YがHである、請求項1から3までのいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
Zが−CH3(OR3)COOHである、請求項1から4までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
R3が−CH3である、請求項1から5までのいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
次式(VI)による、請求項1から6までのいずれかに記載の化合物。
【化3】
【請求項8】
次式(VI)による、請求項1から6までのいずれか一項に記載の化合物。
【化4】
【請求項9】
R3が−Hである、請求項1から8までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
次式(II)による、請求項1から5までのいずれか一項に記載の化合物。
【化5】
【請求項11】
R3が−CH2CH3である、請求項1から5までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
次式(VII)による、請求項1から5まで及び請求項11のいずれか一項に記載の化合物。
【化6】
【請求項13】
次式(VIII)による、請求項1から5まで及び請求項11のいずれか一項に記載の化合物。
【化7】
【請求項14】
Yが−COOHである、請求項1から3までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
R3が−CH3である、請求項1から3まで及び請求項14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
次式(III)
【化8】
による、請求項1から3まで及び請求項14又は15のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
R3が−CH2CH3である、請求項1から3まで及び請求項14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項18】
次式(IV)
【化9】
による、請求項1から3まで及び請求項14及び17のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項19】
次式(V)
【化10】
による、請求項1から3まで及び請求項14及び17のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項20】
(±)−2−ヒドロキシ−3−(3’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物20)
(±)−2−メトキシ−2−(4’−アミノフェニル)酢酸(化合物23)
(±)−2−エトキシ−2−(3’−アミノフェニル)酢酸(化合物32)
(±)−2−エトキシ−2−(4’−アミノフェニル)酢酸(化合物33)
(±)−2−メトキシ−3−(4’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物34)
(±)−2−エトキシ−3−(4’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物39)
(±)−2−エトキシ−3−(3’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物40)
を含む群から選択される、請求項1から19までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項21】
鏡像異性的に純粋なR型又はS型をしている、請求項1から20までのいずれかに記載の化合物。
【請求項22】
有効成分として請求項1から22までのいずれか一項に記載の1つ又は複数の化合物を1つ又は複数の薬学的に許容できる賦形剤又は補助剤と組合せて含む薬剤組成物。
【請求項23】
医療分野において使用するための請求項1から21までのいずれか一項に記載の化合物又は請求項22に記載の薬剤組成物の使用。
【請求項24】
PPARγ受容体及びEGF受容体を発現する腫瘍の予防及び治療のための医薬品を調製するための請求項1から21までのいずれか一項に記載の化合物又は請求項22に記載の薬剤組成物の使用。
【請求項25】
腫瘍が、食道の腫瘍、胃の腫瘍、膵臓の腫瘍、結腸の腫瘍、前立腺の腫瘍、乳房の腫瘍、子宮及び付属器の腫瘍、腎臓の腫瘍並びに肺の腫瘍を含む群から選択されることを特徴とする、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
慢性炎症性疾患治療用の医薬品を調製するための請求項1から21までのいずれか一項に記載の化合物又は請求項22に記載の薬剤組成物の使用。
【請求項27】
慢性炎症性疾患が、クローン病及び潰瘍性結腸大腸炎を含む群から選択されることを特徴とする、請求項24に記載の使用。
【請求項28】
慢性炎症性疾患治療用の医薬品を調製するための請求項1から21までのいずれか一項に記載の化合物又は請求項22に記載の薬剤組成物の使用。
【請求項29】
化合物が、
(±)−2−ヒドロキシ−2−(3’−アミノフェニル)酢酸
(±)−2−ヒドロキシ−2−(4’−アミノフェニル)酢酸
(±)−2−ヒドロキシ−3−(4’−アミノフェニル)プロピオン酸
(±)−2−メトキシ−3−(3’−アミノフェニル)プロピオン酸
(±)−2−メトキシ−3−(4’−アミノフェニル)プロピオン酸
を含む群から選択されることを特徴とする、請求項1から21までのいずれか一項に記載の化合物又は請求項22に記載の薬剤組成物の使用。
【請求項30】
化合物が、化合物10、化合物11、化合物20、化合物21、化合物22、化合物23、化合物32、化合物33、化合物34、化合物35、化合物39及び化合物40を含む群から選択されることを特徴とする、請求項23から29までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項31】
化合物の使用が、1つの鏡像異性体が任意の割合で他を超えている混合物中にある、請求項23から30までのいずれかに記載の使用。
【請求項32】
請求項1から21までのいずれか一項に記載の1つ又は複数の化合物、請求項22に記載の薬剤組成物又は請求項23から31までのいずれか一項に記載の使用によってヒト又は動物を治療することを含むヒト又は動物の治療の方法。
【請求項33】
添付の図及び表を参照して本明細書で実質的に記載されている化合物。
【請求項34】
添付の図及び表を参照して本明細書で実質的に記載されている使用。
【請求項35】
添付の図及び表を参照して本明細書で実質上記載されている薬剤組成物。
【図1−1】
【図1−2】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1−2】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2009−502777(P2009−502777A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−522170(P2008−522170)
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【国際出願番号】PCT/IE2006/000078
【国際公開番号】WO2007/010516
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(505367017)ジュリアーニ インターナショナル リミテッド (9)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【国際出願番号】PCT/IE2006/000078
【国際公開番号】WO2007/010516
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(505367017)ジュリアーニ インターナショナル リミテッド (9)
【Fターム(参考)】
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