説明

PSA糖鎖付加パターンを用いる前立腺癌の検出

本発明は、対象が前立腺癌を有しているか否かを確認するための新規な方法を特徴としている。本発明は、セイヨウニワトコレクチン(SNA)による総血清PSAのα2,6−結合シアル化を、そして総及び遊離血清PSAのα2,3−結合シアル化を分析する、レクチン免疫吸着アッセイの開発に基づいている。次いでこれらの新規なアッセイは、PSAの癌特異性を改善するための糖タンパク質分析の潜在的な役割についての臨床研究を実施するために用いた。本発明は、1つ又はそれ以上のレクチン及びPSA特異抗体、並びに使用説明書を含有してなる、対象が前立腺癌を有しているか否かを確認するためのキットも特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2008年7月25日に出願された、米国仮特許出願第61/083,642号の優先権を主張し、その全内容は参照することにより本明細書に組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
米国において、前立腺癌は、男性に最もよく見られる悪性腫瘍であって、癌による死亡原因の第2位である。米国だけで毎年300,000人を越える男性が前立腺癌と診断されている。過去10年間にわたり前立腺癌の罹患率及びその死亡率の両方が増大している。最近、乳癌の女性もPSAを示すことが指摘されている。乳房の腫瘍におけるPSA産生はエストロゲン及び/又はプロゲステロンの存在に関連している。一般に、女性血清中のPSA濃度は検出不可能である。
【0003】
現在、前立腺特異抗原(PSA)が、前立腺癌の早期発見に使用可能な最良の腫瘍マーカーである。しかしながら、PSAは、男性癌患者において上昇し得るとともに良性の前立腺疾患の男性においても存在するので、特異性がない。通常用いられているPSAのアッセイのカットオフ値は4.0ng/mLであるが、PSAの全範囲に渡って前立腺癌の危険性があると認識されているので、2.0ng/mL、2.5ng/mL及び2.8ng/mLのより低いカットオフ値が示唆されている。総PSA4〜10ng/mLの男性が総PSAの診断的グレーゾーンにあり、この内生検では4人中3人が癌の兆候を示さず、これは多数の不必要な生検をもたらしてしまう。
【0004】
糖鎖付加は、最も普遍的なタンパク質の翻訳後修飾の1つであって、タンパク質相互作用、細胞間の認識、接着、及び移動に関与している。最近、細胞表面の糖鎖付加が癌のような疾患状態で変化することを示唆する証拠が増えていて、これは糖鎖付加が病気の発症に関連していることを示している。従って、糖タンパク質の糖鎖付加パターンが、病気診断の特異性を改善すると期待できる。例えば、PSAは、食品医薬品局(FDA)で承認されている前立腺癌スクリーニング及びモニタリング用の血清マーカーである。しかしながら、PSA単独では、全症例に対して、特に血清中4〜10ng/mLのPSA濃度である「診断的グレーゾーン」において、初期段階の癌を識別するために十分に特異的ではない。
PSAは、Asn−45に結合しているN−オリゴ糖鎖を有している糖タンパク質として報告されている。PSAのタンパク質濃度に加え、PSA糖鎖構造の変化を、正常由来と癌由来のPSAを区別するために使用できるだろう。従って、PSAタンパク質濃度が正常と癌の群を区別できない場合に、PSAの糖鎖付加パターンは、癌検出のための新規な生体分子マーカーとして用いられる可能性を有する。
【0005】
血清中では、総PSAの大部分が抗タンパク分解酵素と複合体を形成しているのに対して、5〜45%が遊離の、非複合体形態にある。その診断的グレーゾーンにおけるPSAの癌特異性を向上させるための検討において、前立腺癌の男性が、前立腺癌ではない男性と比較すると、総PSAに対してより低い比率の遊離体を有していることが見出された。それ故に、総PSA濃度が4〜10ng/mLである場合の前立腺癌のリスク評価のために、遊離PSAの割合(遊離PSA%)が推奨されている。遊離PSA%が>25%であることは癌の危険性が低いことを(例えば、確率=8%)を示唆し、一方遊離PSA%が<10%であることは癌の危険性が高いこと(例えば、確率=56%)を示している。しかしながら、遊離PSA%について試験した患者の大部分は、癌の危険性が約25%である中等度(例えば、10〜20%)、従って、別の診断的グレーゾーンに該当した。遊離PSAが、癌特異的(例えば、[−2]proPSA)及び良性特異的(例えば、BPSA)形態の両方からなっているという知見が遊離PSA%の限界を説明している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、当該技術分野において、前立腺癌検出の改善された方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に記載するように、本発明は、対象が前立腺癌であるか否かを確認するための新規な方法を特徴としている。本発明は、セイヨウニワトコレクチン(sambucus nigra lectin;SNA)による、総血清PSAのα2,6−結合シアル化、そして総及び遊離血清PSAのα2,3−結合シアル化を分析する、レクチン免疫吸着アッセイ(総SNA、総MALI、遊離MALI、総MALII、及び遊離MALII)の開発に基づいている。これらの新規なアッセイは、次いで、PSAの癌特異性を改善するための糖タンパク質分析の潜在的な役割についての臨床研究を実施するために用いられた。
【0008】
従って、第1の態様では、本発明は、対象が、健常対象由来PSAの糖鎖付加パターンと比較して、変化している前立腺特異抗原(PSA)糖鎖付加パターンを有しているかを確認すること(ここで変化した糖鎖付加パターンは対象が前立腺癌を有していることを示す)を含有してなる、対象が前立腺癌を有しているか否かを確認する方法を特徴としている。
【0009】
一実施態様では、糖鎖付加パターンは、PSAのα2,3−結合シアル化又はα2,6−結合シアル化である。
【0010】
上記態様の何れか1つの別の実施態様では、PSA糖鎖付加パターンは、1つ又はそれ以上のレクチン免疫吸着アッセイによって確認される。
更なる実施態様では、1つ又はそれ以上のレクチン免疫吸着アッセイは、血清PSAをPSA抗体と1つ又はそれ以上のレクチンの間に挟み込む。
【0011】
更に別の実施態様では、1つ又はそれ以上のアッセイは、SNAによる総PSA、MALIによる総PSA、MALIIによる総PSA、MALIによる遊離PSA及びMALIIによる遊離PSAよりなる群から選ばれる。
【0012】
更なる実施態様では、方法は少なくとも2つのレクチン免疫吸着アッセイを含んでいる。
更に別の実施態様では、方法は少なくとも3つのレクチン免疫吸着アッセイを含んでいる。 更なる別の実施態様では、方法は少なくとも4つのレクチン免疫吸着アッセイを含んでいる。 その他の関連する実施態様では、方法は少なくとも5つのレクチン免疫吸着アッセイを含んでいる。
【0013】
一実施態様では、上記態様の何れか1つの方法は、PSA特異抗体を用いて生体試料からPSAを単離することを更に含んでいる。
別の実施態様では、PSA特異抗体は、遊離PSAに対して特異的である。
別の実施態様では、PSA特異抗体は、総PSAに対して特異的である。
【0014】
ある特定の実施態様では、使用前に、抗体を処理して、抗体の1つ又はそれ以上のグリカンがレクチンに結合することを取り除く。
更に関連する実施態様では、処理が酸化である。
上記態様の何れか1つの更なる実施態様では、使用前に抗体を酸化する。
【0015】
別の実施態様では、抗体を過ヨウ素酸ナトリウムで酸化することが好ましい。
上記態様の何れか1つの別の実施態様では、対象は遊離PSA濃度に基づいて前もって選択されている。
上記態様の何れか1つの別に関連している実施態様では、対象は総PSA濃度に基づいて前もって選択されている。
【0016】
更なる実施態様では、遊離PSAの濃度は、約10%〜約25%である。
別の更なる実施態様では、総PSAの濃度は、約2〜10ng/mLである。
【0017】
上記態様の何れか1つの別の実施態様では、変化したPSA糖鎖付加パターンは、癌を有する対象では、より不均一なパターンである。
【0018】
別の態様では、本発明は、対象が、健常対象由来PSAのα2,6−シアル化パターンと比較して、変化したPSAα2,6−シアル化パターンを有しているかを確認すること(ここで、変化したPSAα2,6−シアル化パターンは前立腺癌を示している)を含有している、対象が前立腺癌を有しているか否かを確認する方法を特徴としている。
【0019】
一実施態様では、PSAα2,6−シアル化パターンはレクチン免疫吸着アッセイで確認する。
別の実施態様では、レクチン免疫吸着アッセイはSNAによる総PSAのアッセイである。
【0020】
更に別の実施態様では、方法は更に、総PSA特異抗体を用いて、生体試料から総PSAを単離することを含有している。
別の実施態様では、対象は遊離PSA濃度に基づいて前もって選択されている。
更なる実施態様では、遊離PSAの濃度は、約10%〜約25%である。
別の実施態様では、対象は総PSA濃度に基づいて前もって選択されている。
更なる実施態様では、総PSAの濃度は、約2〜10ng/mLである。
【0021】
別の特定の実施態様では、使用前に、抗体を処理して、抗体の1つ又はそれ以上のグリカンがレクチンに結合することを取り除く。
関連する実施態様では、処理が酸化である。
別の実施態様では、抗体を使用前に酸化する。
関連する実施態様では、抗体を過ヨウ素酸ナトリウムで酸化する。
【0022】
別の態様では、本発明は、対象が、健常対象由来PSAのα2,3−シアル化パターンと比較して、変化したPSAα2,3−シアル化パターンを有しているかを確認すること(ここで、変化したPSAα2,3−シアル化パターンは前立腺癌を示している)を含有している、対象が前立腺癌を有しているか否かを確認する方法を特徴としている。
【0023】
一実施態様では、PSAα2,3−シアル化パターンはレクチン免疫吸着アッセイで確認する。
別の実施態様では、レクチン免疫吸着アッセイはSNAによる総PSAのアッセイである。別の実施態様では、方法は更に、総PSA特異抗体を用いて、生体試料から総PSAを単離することを含有している。
【0024】
更なる実施態様では、対象は遊離PSA濃度に基づいて前もって選択されている。
関連する実施態様では、遊離PSAの濃度は、約10%〜約25%である。
別の実施態様では、対象は総PSA濃度に基づいて前もって選択されている。
更なる実施態様では、総PSAの濃度は、約2〜10ng/mLである。
【0025】
別の特定の実施態様では、使用前に、抗体を処理して、抗体の1つ又はそれ以上のグリカンがレクチンに結合することを取り除く。
関連する実施態様では、処理が酸化である。
【0026】
別の実施態様では、抗体を使用前に酸化する。
関連する実施態様では、抗体を過ヨウ素酸ナトリウムで酸化する。
【0027】
別の態様では、本発明は、対象が、健常対象由来PSAのα2,6−シアル化パターンと比較して、変化したPSAα2,6−シアル化パターンを有しているかを確認すること(ここで、変化したPSAα2,6−シアル化パターンは前立腺癌を示し、そして変化していないPSAのα2,6−シアル化パターンは良性前立腺肥大を示す)を含有している、対象が前立腺癌又は良性前立腺肥大(BPH)を有しているか否かを判定する方法を特徴としている。
【0028】
一実施態様では、対象は癌又はBPHの何れかを有していることが前もって確認されている。
別の実施態様では、PSAα2,6−シアル化パターンはレクチン免疫吸着アッセイで確認する。
更なる実施態様では、レクチン免疫吸着アッセイはSNAによる総PSAのアッセイである。
【0029】
関連する実施態様では、方法は更に、総PSA特異抗体を用いて、生体試料から総PSAを単離することを含有している。
別の特定の実施態様では、使用前に、抗体を処理して、抗体の1つ又はそれ以上のグリカンがレクチンに結合することを取り除く。
関連する実施態様では、処理が酸化である。
別の実施態様では、抗体を使用前に酸化する。
関連する実施態様では、抗体を過ヨウ素酸ナトリウムで酸化する。
【0030】
別の態様では、本発明は、対象由来PSAの試料が、シアル酸、O−結合ガラクトース又はFucal−6群を有するMan/GlcNAcによる糖鎖付加が健常対象由来PSAと比較して増加レベルを有しているか否かを確認すること(ここで、健常対象由来PSAと比較して、シアル酸、O−結合ガラクトース又はFucal−6群を有するMan/GlcNAcによる糖鎖付加の増加レベルを伴うPSAは前立腺癌を示す)を含有している、対象が前立腺癌を有しているか否かを確認する方法を特徴としている。
【0031】
一実施態様では、PSA糖鎖付加パターンは1つ又はそれ以上のレクチン免疫吸着アッセイによって確認される。
【0032】
別の実施態様では、上記の何れか一つの方法は更に、PSA特異抗体を用いて生体試料からPSAを単離することを含有している。
一実施態様では、PSA特異抗体は、遊離PSAに対して特異的である。
別の実施態様では、PSA特異抗体は、総PSAに対して特異的である。
【0033】
別の特定の実施態様では、使用前に、抗体を処理して、抗体の1つ又はそれ以上のグリカンがレクチンに結合することを取り除く。
関連する実施態様では、処理が酸化である。
【0034】
上記の何れか一つの方法の別の実施態様では、抗体を使用前に酸化する。
関連する実施態様では、抗体を過ヨウ素酸ナトリウムで酸化する。
【0035】
上記の何れか一つの方法の更に別の実施態様では、対象は癌の家族歴に基づいて前もって選択されている。
【0036】
関連する実施態様では、シアル酸による糖鎖付加はレクチンSNA−1を用いて確認される。
【0037】
別の関連する実施態様では、O−結合ガラクトースによる糖鎖付加はレクチンジャカリン(Jacalin)を用いて確認される。
更なる実施態様では、Fucal−6群を有するMan/GlcNAcによる糖鎖付加は、レクチンLcHを用いて確認される。
【0038】
別の態様では、本発明は、1つ又はそれ以上のレクチン及びPSA特異抗体、並びに使用説明書を含有している、対象が前立腺癌を有しているか否かを確認するためのキットを特徴としている。
【0039】
一実施態様では、レクチンが、SNA,MALI及びMALIIよりなる群から選ばれる。
関連する実施態様では、レクチンが更に、ジャカリン及びLcHから選ばれる。
【0040】
更なる実施態様では、PSA特異抗体は遊離PSAに対して特異的である。
別の更なる実施態様では、PSA特異抗体は総PSAに対して特異的である。
関連する実施態様では、抗体は酸化されている。
別の更なる実施態様では、抗体は過ヨウ素酸ナトリウムで酸化されている。
【0041】
別の態様では、本発明は、総PSAに特異的な抗体及びα2,6-シリル化に特異的なレクチン、並びに使用説明書を含有している、対象が前立腺癌を有しているか否かを確認するためのキットを特徴としている。
【0042】
一実施態様では、抗体は酸化されている。
更なる関連する実施態様では、抗体は過ヨウ素酸ナトリウムで酸化されている。
【0043】
更に別の態様では、本発明は、レクチンSNA−1、ジャカリン、及びLcH、PSA特異抗体、並びに使用説明書を含有している、対象が前立腺癌を有しているか否かを確認するためのキットを特徴としている。
【0044】
一実施態様では、抗体は酸化されている。
更なる関連する実施態様では、抗体は過ヨウ素酸ナトリウムで酸化されている。
【0045】
本発明のその他の特徴及び利点は、詳細な説明から、そして特許請求の範囲から明らかになるだろう。
【0046】
例として挙げられているが、記載されている特定の実施態様に本発明を限定することを意図していない、以下の詳細な説明は、参照することにより本明細書に取り込まれている、添付の図面を併用することによって理解できるだろう。本発明の多くの好ましい特徴及び実施態様は、限定されない実施例を通して及び添付図面を参照して、記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、総又は遊離PSAについての5つのレクチン免疫吸着アッセイの結合曲線を示すグラフである。
【図2】図2(A−E)は、総SNA(A)、総MALI(B)、遊離MALI(C)、総MALII(D)及び遊離MALII(E)のアッセイによる、3つの前立腺癌血清プールと3つの非癌血清プールの間の、総及び遊離PSAのシアル化を比較して示すグラフ群である。癌群及び非癌群におけるプール1は21回測定したが、プール2と3は3回測定した。これら6つのプールは、調和した総PSA及び遊離PSAのレベルを有している:癌及び非癌群のプール1、2、3の総PSA濃度はそれぞれ5.26、5.04、5.92、5.20、5.03及び4.94ng/mLであり、遊離PSA濃度はそれぞれ0.98、0.84、1.15、1.13、1.61及び0.80ng/mLである。
【図3】図3(A−C)は、(A)遊離PSAが4.7〜31.8%範囲の全52対象、(B)遊離PSAが10〜20%範囲の21の対象のサブセット、及び(C)遊離PSAが10〜20%の16の対象の別の検討における、癌及び非癌群のROC分析を示す3つのグラフである。
【図4】図4(A及びB)は、高密度レクチンマイクロアレイを用いた、ヒト精液PSAの糖鎖付加パターンの検出を示す。
【図5】図5は、開発した免疫アッセイについての2つのレクチン候補の結合曲線を示す2つのグラフである。
【図6】図6は、前立腺組織試料において開発したECLによる免疫アッセイを用いた、標的グリカン−レクチン結合の検証を示す、2つのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
I.定義
別段の定義がない限り、本明細書で用いられている技術及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解されている意味を有している。
【0049】
以下の参考文献は、本発明で用いられている多くの用語の一般的な定義を当業者に提供する。 Singleton et al., Dictionary of Microbiology and Molecular Biology (2nd ed. 1994); The Cambridge Dictionary of Science and Technology (Walker ed., 1988); The Glossary of Genetics, 5th Ed., R. Rieger et al. (eds.), Springer Verlag (1991); and Hale & Marham, The Harper Collins Dictionary of Biology (1991)。本明細書で用いられている、以下の用語は、別に特定しない限り、それらに帰している意味を有している。
【0050】
別に特定しない限り、「a」又は「an」は「1つ又はそれ以上の」を意味する。
【0051】
明確に言明していないか或いは内容から明瞭でない限り、本明細書で用いられる用語「又は」は、包括的であると理解される。
【0052】
用語「抗体」は、エピトープ(例えば、抗原)を特異的に結合して認識する、1つの免疫グロブリン遺伝子又は複数の免疫グロブリン遺伝子によって実質的にコードされるポリペプチドリガンド、又はその断片を示すように意図されている。認識されている免疫グロブリン遺伝子は、カッパ及びラムダ軽鎖定常領域遺伝子、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロン及びミュー重鎖定常領域遺伝子、及び多数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を包含している。抗体は、例えば、無傷の免疫グロブリンとして、又は多種のペプチダーゼで消化されて産生した、よく特徴付けられた多数の断片として存在する。これは、例えば、Fab’及びF(ab)’断片を包含する。本明細書で用いられる用語「抗体」は、抗体全体の修飾によって産生されたか、或いは組み換えDNA方法論を用いてデノボ合成されたかの何れかの抗体断片も包含する。ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、又は単鎖抗体も包含する。抗体の「Fc」部分は、1つ又はそれ以上の重鎖定常領域ドメイン、CH1、CH2及びCH3を含有しているが、重鎖可変領域を包含していない、免疫グロブリン重鎖の部分を示す。
【0053】
本明細書で用いられる用語「糖鎖付加パターン」は、PSAのプール中に存在するグリカン構造(オリゴ糖)の提示を示すように意図されている。グリコプロファイル(glycoprofile)を、例えば、PSAのプール中に存在する1つ又はそれ以上のグリカン構造にそれぞれ対応する複数のピークとして表示できる。
【0054】
用語「レクチン免疫吸着アッセイ」は、レクチンと抗体又は抗原に関する免疫化学試験を示すように意図されている。好ましい実施態様では、免疫吸着アッセイは、血清PSAを抗体と1つ又はそれ以上のレクチンの間に挟み込むための免疫吸着アッセイを示すように意図されている。特定の好ましい実施態様では、レクチンは、PSA Abに捕捉されたPSAの糖鎖付加の変化を検出するために用いられるか、或いはPSAを結合した後にPSA Abで検出するために用いられる。
【0055】
用語「前立腺特異抗原(PSA)」は、ヒトのカリクレイン遺伝子ファミリーのメンバーである33kDaキモトリプシン様タンパク質を示すように意図されている。好ましい実施態様では、PSAは前立腺の細胞で産生されるタンパク質である。
【0056】
用語「試料」は、これに限定されないが、尿、血液、血清、精液、唾液、糞便、又は組織を含有している、対象由来の体液又は体組織の何れかを示すように意図されている。本明細書で用いられるような試料は、濃縮しなくてもよく、又は標準的な方法を用いて濃縮してもよい。
【0057】
用語「シアル化された」又は「シアル化」は、1つ又はそれ以上のシアル酸部分による共有結合修飾を示す。ある特定の実施態様では、シアル化はPSAのシアル化である。ある特定の実施態様では、シアル化はPSAの2,6−結合シアル化でよい。別の実施態様では、シアル化はPSAの2,3−結合シアル化でよい。
【0058】
用語「対象」は、動物、より好ましくは哺乳動物、そして最も好ましくはヒトを示すように意図されている。
【0059】
本明細書で引用されている、それぞれの特許、特許出願、又は参考文献は、それぞれが独立して参照することにより取り込まれているように、参照することにより本明細書に取り込まれている。
【0060】
前立腺特異抗原
ヒトカリクレインIII(hk3)、セミニン(seminin)、セメノゲラーゼ(semenogelase)、γ−セミノタンパク質、及びP−30としても知られている、前立腺特異抗原(PSA)は、ヒトカリクレイン遺伝子ファミリーのメンバーで、正常な、肥厚性の、そして悪性の前立腺上皮によって排他的に合成される33kDaキモトリプシン様タンパク質である。PSAの組織特異的な関係が、PSAを、良性前立腺肥大症(BPH)及び前立腺腫瘍(CaP)又は転移性癌を確認するための魅力的なバイオマーカーとしている。
PSAの正常な血清及び血液濃度は一般に5ng/mL未満で、上昇した濃度はBPH又はCaPの指標となる。例えば、転移性CaPの末期で200ng/mLの血清濃度が測定されている。通常用いられているPSAのアッセイのカットオフ値は4.0ng/mLであるが、PSAの全範囲に渡って前立腺癌の危険性があると認識されているので、2.0ng/mL、2.5ng/mL及び2.8ng/mLのより低いカットオフ値が示唆されている。
【0061】
前立腺特異抗原(PSA)は前立腺の上皮細胞で産生されるタンパク質として最もよく知られている。正常男性の血清中には少量のPSAが存在して、前立腺癌又はその他の前立腺疾患の存在で多くの場合に上昇する。現在、前立腺癌の早期発見の方法としてPSA濃度を測定するために血液検査が用いられている。PSAが正常値より高いことは、限局性及び転移性前立腺癌の両方と関連している。
【0062】
精液に加えて、唾液腺、膵臓、胸腺(正常な胸腺組織及び乳癌、乳腺嚢胞症)、多種の乳腺分泌液(乳頭吸引液、授乳中女性の母乳)、尿道周囲腺、子宮内膜組織、羊水、気管支肺胞洗浄液、腹水、胸水、及び脳脊髄液中にPSAの存在が明らかにされている。女性の血清中には非常に低いPSA濃度が検出される。卵巣腫瘍、甲状腺腫瘍、胆管腫瘍、肺腫瘍、膀胱腫瘍、汗腺腫瘍、副尿道管腺腫瘍、唾液腺腫瘍、膵臓腫瘍、腎臓、結腸及び肝臓腫瘍を包含する多種の腫瘍内でもPSAは検出されている。
【0063】
PSAは通常、非常に低い濃度で血液中に存在している;PSAの正常値は0〜4ng/mlと定義される。PSAの上昇した濃度は、男性の前立腺癌又は女性の乳癌若しくはその他の癌の存在を示唆するものであり得る。血液中の大部分のPSAは血清タンパク質と結合している。少量のPSAは血清タンパク質と結合していない。この形態のPSAは遊離PSAと呼ばれている。
【0064】
方法
本発明は診断の又は予後の検査を提供する。好ましい態様では、本発明は、対象が前立腺癌を有しているか否かを確認する方法を提供し、方法は、健常対象由来PSAの糖鎖付加パターンと比較して変化したPSA糖鎖付加パターンを、対象が有しているか否かを確認することを含有していて、ここで、変化した糖鎖付加パターンは、対象が前立腺癌を有していることを示す。
特定の実施態様では、本明細書に記載されている方法は、現状方法を用いて診断上の「グレーゾーン」に入っている対象が前立腺癌を有しているか否かを確認するために特に有用である。
【0065】
本明細書で用いられる用語「グレーゾーン」は、癌の又は癌ではないとの明確な診断を行える特定の検査の値を意味する。
【0066】
実験的な及びヒトの癌の実質的に全てのタイプで、異常な糖鎖付加が報告されている。特に、1,6GlcNAc分岐構造における、及びN−結合グリカンの順序における変化、O−結合TN抗原のシアル化の変化、及びシアル化及び非シアル化ルイス因子の発現レベルの変化、全てが腫瘍の進展と関連している。
【0067】
一般に、N−結合糖タンパク質の何れの糖質部分も、このトリマンノシルコアに付加したモノサッカリドの構造及び部位に基づく3つの主要なカテゴリー:高マンノース、混成物又は複合体:の内の1つに入れることができる。これらの構造の全てについては、タンパク質への結合はアミノ酸、アスパラギンを介している(N−結合)。N−結合糖類では、還元末端コアは正確に保存されて(Man3GlyNAc2)、グリコシルアミン結合は常にGlyNAc残基を介している。N−結合オリゴ糖類の広大な多様性は、コアモチーフを超えるオリゴ糖鎖の変化に起因している。第1に、コアの二分岐腕の微分的拡張(differential extension)があげられる。第2に、変化が三分岐及び四分岐構造をもたらす増大した分岐に起因することである。この場合では、幾つかのアセチルグルコサミニルトランスフェラーゼが二分岐構造に作用して、より高次に分岐したオリゴ糖類を形成できる。
【0068】
O−結合グリカンは、ペプチド鎖のセリン又はスレオニンへのO−グリコシド結合によってタンパク質に結合する。N−結合糖とは違って、O−結合糖は、多数の異なったコアに基づいていて、高度な構造多様性をもたらす。O−結合グリカンは一般に、N−結合型よりも小さくて、タンパク質上にO−結合型糖鎖付加の位置を決めるコンセンサスモチーフが存在しない。
【0069】
糖鎖付加パターンの変化は、タンパク質の特異性及び/又は構造、及び結果としてのそれらの機能を変化させると知られていて、長い間糖鎖付加の変化が腫瘍進行のマーカーであると考えられてきた。
【0070】
糖鎖付加パターンは、PSAのプール中に存在するグリカン構造(オリゴ糖)の提示に言及するよう意図されている。グリコプロファイルを、例えば、PSAのプール中に存在する1つ又はそれ以上のグリカン構造にそれぞれが対応する複数のピークとして表示させることができる。
【0071】
本発明方法の好ましい実施態様では、対象由来PSAの糖鎖付加パターンを、健常対象由来PSAの糖鎖付加パターンと比較する。例えば、対象を、疾患を有していないコントロールの対象と比較して疾患を有している対象であるとすることができる。2つの試料の間で異なっているPSA糖鎖付加のパターンを、疾患のバイオマーカとして、例えば、診断目的のために、そして薬剤標的の候補であるとして用いることができる。このようなバイオマーカーを、対象の治療、例えば薬剤治療に対する応答をモニターするためにも用いることができる。
【0072】
本発明の方法は、多数の適用、例えば、PSA糖鎖付加のパターンの経時的変化を検出すること;PSA糖鎖付加の活性化又は不活性化の個体間パターンを検出すること;診断法の開発;薬剤の発見及び開発のためのバイオマーカーの同定;治療用糖タンパク質の開発(例えば、プロセス改変、プロセス適格性/妥当性をモニター、試験);又は糖タンパク質治療薬の精製において;を有している。バイオマーカーは、単一のマーカー、又は糖タンパク質プロファイル若しくは糖タンパク質パターン変化であってもよい。
【0073】
PSA糖鎖付加パターンは、免疫吸着アッセイによって確認できる。好ましくは、PSA糖鎖付加パターンを、1つ又はそれ以上のレクチン免疫吸着アッセイによって確認する。当該技術分野で少なくとも160のレクチンが知られている。例は、これに限定されないが、イヌエンジュマメ(Maackia amurensis)レクチンI(MALI)、イヌエンジュマメレクチンII(MALII)、セイヨウニワトコレクチン(SNA,EBL)コンカナバリンA(Con A)、小麦胚芽レクチン(wheat germ agglutinin; WGA)、ジャカリンレクチン(Jacalin)、ヒイロチャワンタケのレクチン(Aleuria aurantia lectin;AAL)、アマリリスレクチン(Hippeastrum hybrid lectin;HHL、AL)、ハリエニシダレクチンI(Ulex europeaus Agglutinin I;UEA I)、ロータスマメレクチン(Lotus tetragonolobus lectin;LTL)、及びスノウドロップレクチン(galanthus nivalis lectin;GNL)を包含する。レクチンの商業的供給源は、Vector Laboratories, Inc. (Burlingame, Calif. )、GALAB Technologies (Geesthacht, Germany)、及びSigma (St. Louis, Mo.)を包含する。また、レクチンを天然資源から単離するか又は合成することができる。
【0074】
特定の好ましい実施態様では、1つ又はそれ以上のレクチン免疫吸着アッセイは、SNAによる総PSA、MALIによる総PSA,MALIIによる総PSA、MALIによる遊離PSA、MALIIによる遊離PSA、LcHによるPSA、SNA−1によるPSA、及びジャカリンによるPSAから選ばれる。
【0075】
特定の実施態様では、例えば、PSA抗体、好ましくはPSAモノクローナル抗体を選択された表面、好ましくは、ポリスチレンマイクロタイタープレートのウェルのようなタンパク質親和性を示す表面上に固定化して、1晩培養することができる。洗浄して完全に吸着されなかった物質を除去した後、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、又は粉乳の溶液のような、試験抗血清に関して抗原的に中性であることが知られている非特異的タンパク質で、アッセイプレートのウェルを結合するかコートするのが好ましい。これは固定された表面上の非特異的吸着部位をブロックできるようにして、それによって抗原の表面への非特異的結合に起因するバックグラウンドを減少する。
【0076】
抗体をウェルへ結合し、非反応性物質を用いてコーティングしてバックグラウンド減少し、そして洗浄して非結合物質を除去した後、免疫複合体(抗原/抗体)形成をもたらす方法で、固定した表面を試験する試料と接触させる。
ある特定の例示的実施態様では、レクチンがPSA抗体上の糖質決定基と結合するのを防ぐために、プレート上にコーティングされている抗体を過ヨウ素酸ナトリウム緩衝剤で処理することが好ましい。
【0077】
試験する試料と結合している抗体の間の特異的な免疫複合体の形成、及びそれに続く洗浄の後、免疫複合体形成の発生及び量さえも、これを標的に対する特異性を有しているレクチンに曝すことによって確認することができる。
【0078】
検出方法として、レクチンが、適切な発色物質と培養すると着色を生じるであろう関連酵素を有しているか、又は例えば、ストレプトアビジン基質を用いて検出可能なビオチン標識を有していることが好ましいであろう。従って、例えば、ビオチンが結合しているレクチンを、ストレプトアビジンと共に、複合体形成の進行を助ける条件下で、ある期間(例えば、室温で1時間)、接触させて及び培養することが望ましいだろう。
【0079】
電気化学発光(electrochemiluminescence)は、ビオチン標識化PSAの量を検出するために使用することができる。
【0080】
変化したPSA糖鎖付加、例えば、α2,6−シアル化又はα2,3−シアル化の確認は、免疫ブロット又はウェスタンブロット分析でも実施できる。例えば、PSA抗体を、ニトロセルロース、ナイロン、又はこれらの組み合わせのような、固体の支持マトリック上に固定化されているタンパク質を同定するための高親和性第1試薬として、免疫沈降とそれに続くゲル電気泳動と共に用いることができる。これらは、不都合なバックグラウンドをもたらす抗原の検出に用いられる第2試薬に対する抗原の検出に用いるための単一工程の試薬として用いることができる。ウェスタンブロッティングと共に用いられる免疫学に基づく検出法は、本明細書に記載されているような、特定のレクチンに対する酵素的に、放射標識の、又は蛍光的に標識された第二抗体を包含している。
【0081】
ある特定の好ましい実施態様では、方法は少なくとも2つのレクチン免疫吸着アッセイを含んでいる。別の好ましい実施態様では、方法は少なくとも3つのレクチン免疫吸着アッセイを含んでいる。更なる好ましい実施態様では、方法は少なくとも4つのレクチン免疫吸着アッセイを含んでいる。更なる好ましい実施態様では、方法は少なくとも5つのレクチン免疫吸着アッセイを含んでいる。好ましくは、対象が前立腺癌を有しているか否かを確認するのに必要な数のレクチン免疫吸着アッセイを含んでいる。
【0082】
シアル酸は、3つの基本的形態を示す、炭素が9個のカルボキシル化された糖である。「シアル化された」とは、1つ又はそれ以上のシアル酸部分による共有結合修飾を示す。最も一般的なものは、N−アセチル−ノイラミン酸(2−ケト−5−アセトアミド−3,5−ジデオキシ−D−グリセロ−D−ガラクトノヌロピラノース−1−オン酸;しばしば、NeuSAc、NeuAc、又はNANAと略称される)である。次に一般的な形態は、N−グリコリル−ノイラミン酸(Neu5Gc又はNeuGc)で、NeuAcのN−アセチル基がヒドロキシル化されている。第3の基本的シアル酸は、2−ケト−3−デオキシ−ノニュロソン酸(KDN)である。
細胞表面又は血清タンパク質に結合しているグリカンの還元末端に一般に見られる、シアル酸は、正常組織に比べて、腫瘍細胞で一般に過剰に発現されている。これらの末端シアル酸は、細胞接着に関与していて、細胞表面受容体の成分である。過剰なシアル化は、特異的な細胞認識部位を覆う可能性があり、これが癌細胞に対する生理的な応答の重要な要素である。
シアル酸を含有しているタンパク質である、ルイスX及びルイスA血液型抗原も、一般に腫瘍において過剰に発現される。腫瘍細胞表面におけるシアル酸の更なる質的及び量的変化は、悪性腫瘍への進行と関連している。腫瘍細胞は、それらの細胞膜上で発現される、それらの侵攻能力に影響を及ぼす、シアロ−グリコ−複合体を変えることができる。
生体試料におけるタンパク質シアル化の定量的及び定性的評価は、タンパク質の過剰シアル化に関連する疾患の診断、予後診断及びモニタリングに重要な貢献をすると次第に認識されてきている。このような疾患は、糖尿病及び骨髄腫、上皮癌、乳癌、卵巣癌、口腔癌、消化管癌、前立腺癌、子宮内膜癌、肺癌、大腸癌、膵臓癌、及び甲状腺癌を包含する。
【0083】
本発明の好ましい実施態様では、糖鎖付加パターンは、PSAのα2,3−結合シアル化又はα2,6−結合シアル化である。
【0084】
従って、本発明は、健常対象由来PSAのα2,3−シアル化パターンと比較して、対象が、変化したPSAα2,3−シアル化パターンを有しているか否かを確認することを含有していて、変化したPSAα2,3−シアル化パターンが前立腺癌を示している、対象が前立腺癌を有しているか否かを確認する方法を特徴としている。
【0085】
本発明は、健常対象由来PSAのα2,6−シアル化パターンと比較して、対象が、変化したPSAα2,6−シアル化パターンを有しているか否かを確認することを含有していて、変化したPSAα2,6−シアル化パターンが前立腺癌を示している、対象が前立腺癌を有しているか否かを確認する方法も特徴としている。
【0086】
この方法は、例えば、本明細書に記載されている免疫吸着アッセイを用いて実施することができる。
【0087】
好ましい実施態様では、シアル化パターン、特にPSAα2,3−シアル化又はPSAα2,6−シアル化のパターンは、レクチン免疫吸着アッセイによって確認する。好ましくは、レクチン免疫吸着アッセイは、SNAを用いる総PSAのアッセイである。総PSAは総PSA特異抗体を用いて生体試料から単離することができる。
【0088】
ある実施態様では、本明細書に記載されているように測定された、PSAは、単独で、又はその他のマーカー又は臨床兆候と組み合わせて、腫瘍がもはや寛解期にないか否かを確認するために用いる。ある実施態様では、本明細書に記載されているように測定されたPSAは、単独で、又はその他のマーカー又は臨床兆候と組み合わせて、腫瘍の程度を確認するために用いる。後者の場合、遊離PSAの割合を総PSAと比較できる(遊離PSAの割合が低ければ低いほど、前立腺癌の存在の可能性が高くなる)。
【0089】
本発明の方法は、癌性組織から良性組織を確認するためにも用いることができる。
【0090】
例えば、本発明の別の態様では、方法は、健常対象由来PSAのα2,6−シアル化パターンと比較して変化したPSAα2,6−シアル化パターンを対象が有しているか否かを確認することを含有していて、変化したPSAα2,6−シアル化パターンが前立腺癌を示し、変化していないPSAα2,6−シアル化パターンが良性前立腺肥大を示している、対象が癌又は良性前立腺肥大(BPH)を有しているか確認することを包含している。
【0091】
ある特定の場合では、対象は癌又はBPHの何れかを有していると前もって確認されている。
【0092】
PSAα2,6−シアル化パターンは、本明細書に記載されている抗体及び方法、例えば、1つ又はそれ以上のレクチン免疫吸着アッセイを用いて確認することができる。ある特定の実施態様では、レクチン免疫吸着アッセイはSNAによる総PSAのアッセイである。例示的な実施態様では、総PSAは、総PSA特異抗体を用いて生体試料から単離することができる。
【0093】
別の態様では、本発明は、対象由来のPSAの試料が、健常対象由来のPSAと比較して、シアル酸、O−結合ガラクトース、又はFucal−6群を有するMan/GlcNAcによる糖鎖付加の増大したレベルを有しているかどうかを確認することを含有していて、健常対象由来のPSAと比較して、シアル酸、O−結合ガラクトース、又はFucal−6群を有するMan/GlcNAcによる糖鎖付加の増大したレベルを有するPSAが前立腺癌を示している、対象が前立腺癌を有しているか否かを確認する方法を特徴としている。
【0094】
好ましくは、これらの方法を用いて、PSA糖鎖付加パターンは、1つ又はそれ以上のレクチン免疫吸着アッセイによって確認される。
【0095】
更なる例示的実施態様では、方法は更に、PSA特異抗体を用いて生体試料からPSAを単離することも含有している。PSA特異抗体は遊離PSAに特異的であってよく、或いはPSA特異抗体は総PSAに特異的であってもよい。
【0096】
本発明の方法で有用な抗体は、本明細書に記載されている。
【0097】
ある特定の実施態様では、対象は癌の家族歴に基づいて前もって選択されている。
【0098】
特定の実施態様では、シアル酸による糖鎖付加は、レクチンSNA−1を用いて確認される。別の特定の実施態様では、O−結合ガラクトースによる糖鎖付加はレクチンジャカリンを用いて確認される。別の特定の実施態様では、Fucal−6群を有するMan/GlcNAcによる糖鎖付加はレクチンLcHを用いて確認される。
【0099】
糖タンパク質の糖鎖付加パターンの変化は、疾患の存在又は進行をモニターするために、疾患を有する対象を健常対象と比較して;疾患、例えば前立腺癌発症の可能性をモニターするために、健常者を異なった時点で;疾患に対する治療の影響を評価するために、治療を受けている疾患を有する対象において;対象に対する治療の影響を評価するために;そして疾患の再発の何れの可能性もモニターするために治療後に、アッセイすることができる。
【0100】
糖鎖付加パターンの変化は、患者が前立腺癌を有していること、或いは患者はもはや寛解期ではないということの表示である。
【0101】
ある特定の実施態様では、変化したPSA糖鎖付加パターンは癌を有する対象ではより不均一なパターンである。
【0102】
対象及び試料
本明細書に記載されているような方法で用いられる試料は何れの適切な試料であってよい。試料が生体試料であることが好ましい。例えば、幾つかの実施態様では、試料は、血液、血清、又は血漿であろう。幾つかの実施態様では、試料又は一連の試料は血清試料である。個体は動物、例えば、哺乳動物、例えばヒトであってよい。
【0103】
試料は単一の試料であっても、或いは一連の試料であってもよい。一連の試料を採取する場合は、これらを適切な間隔、例えば、数分、数時間、数日、数週、数月、又は数年の間隔で採取することができる。個体を長期間追跡する場合は、試料の間隔を数月、又は数年とすることができる。診断、予後診断、及び治療の方法は、単一試料から、又は1つ又はそれ以上の一連の試料から、或いはその一連の試料の変化から確認することができる、例えば、ある特定の速度での濃度の増大は重篤な疾患を示すのに対して、遅い速度での増大又は増大しないことは比較的良性であるかそれほど重篤ではない疾患を示す。変化の速度は、数時間、数日、数週、数月又は数年にわたって測定することができる。所定の個体の変化の速度は、幾つか場合には、絶対値より高い関連性を有する。別の状況では、個体における、数日、数週間、数ケ月或いは数年に渡る値の上昇は疾患の侵攻及び悪化、或いは癌の再発を示す可能性がある。
【0104】
幾つかの実施態様では、少なくとも1つの試料は、PSA濃度が上昇する疾患、例えば癌を示す1つ又はそれ以上の症状を有する個人が、医療従事者の元を訪れた時点に、あるいその近い時点に、採取される。更に、前立腺癌及び乳癌は血液中で検出可能なその他の分子マーカーを有している。PSAに加えて、これらのマーカーの検出は、癌性疾患のより確実な)診断をもたらすことができる。前立腺癌に対するその他の分子マーカーは当該技術分野で公知であって、これに限定されないが、前立腺特異膜抗原(PSMA)、KIAA 18、KIAA 96、前立腺癌腫瘍抗原−1(prostate carcinoma tumor antigen-1;PCTA−1)、前立腺分泌タンパク質(RSP)、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、ヒト腺性カリクレイン2(HK−2)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)PTI−1、CLAR1(米国特許第6,361,948号)、PG1、BPC−1、前立腺特異トランスグルタミナーゼ、サイトケラチン15、セメノゲリンII(semenogelin II)、NAALADase、PD−41、p53、TCSF(米国特許第5,856,112号)、p300、アクチン(actin)、EGFR、及びHER−2/ノイプロテインを包含し、更に当業者にとって明らかであろうその他のマーカーも包含する。
【0105】
一態様では、本明細書に記載されている方法は、上に示したマーカーの1つについての1つの試験が最終的診断を可能にしなかった後に、実施される。
【0106】
本発明の好ましい実施態様では、対象は遊離PSAのレベルに基づいて予め選択される。ある特定の好ましい実施態様では、遊離PSAのレベルは約10%〜約25%である。
【0107】
別の例では、対象は癌の家族歴に基づいて予め選択される。
【0108】
抗体
本発明のある特定の実施態様では、PSAは、PSA特異抗体を用いて生体試料から単離される。抗体は、天然の抗体でよく、更には、非天然の抗体、例えば単鎖抗体、キメラ、二元機能性及びヒト化の抗体を包含するもの、更にこれらの抗原結合断片でもよい。幾つかの実施態様では、抗体は遊離PSAに対して特異的である。幾つかの実施態様では、抗体は総PCAに対して特異的である。幾つかの実施態様では、抗体はPSA複合体に対して特異的である。幾つかの実施態様では、PSAの1つ又はそれ以上の特定の形態に対して特異的な抗体を、例えば、複合PSA、遊離PSA、総PSA等の結合パートナーに用いることができる。抗体の混合物、例えば、PSAの様々な形態(遊離、複合等)に対する抗体の混合物、又は混合物の混合物、も本発明に包含される。ある特定の実施態様では、使用前に抗体を酸化する。特に、抗体を過ヨウ素酸ナトリウムで酸化することが好ましい。
【0109】
当然のことながら、抗体が産生するPSAの選択エピトープ又は領域により、例えば遊離PSAに対する、複合PSAに対する等のその特異性が確認されるであろうことは理解されるだろう。幾つかの実施態様では、抗体はPSAの特定のアミノ酸領域に対して特異的である。
【0110】
幾つかの実施態様では、抗体はポリクローナル抗体である。ポリクローナル抗体は結合パートナーとして有用である。
【0111】
抗体を産生する方法は確立されている。当業者は、多くの方法、例えば、Antibodies, A Laboratory Mannual, Ed Harlow and David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory(1988), Cold spring Harbor, N.Y. に記載されているような方法が、抗体産生に使用可能であることに気付くだろう。結合断片又は疑似抗体であるFab断片も、多くの手法(Antibody Engineering: A Practical Approach (Borrebaeck, C., ed.), 1955, Oxford University Press, Oxford; J. Immuonol. 149, 3914-3920 (1922))によって、遺伝子情報から調製できるということを当業者は理解できるだろう。本発明方法で用いられる抗体は、公知の技術に従って得ることができ、モノクローナル又はポリクローナルであってもよく、そして(例えば)マウス、ラット、ウサギ、ウマ、又はヒトを包含する起源の何れの種のものであってもよく、或いはキメラ抗体であってもよい。例えば、M. Walker et al., Molec. Immunol. 26:403 (1989) を参照されたい。抗体は、米国特許第4,474,893号又は同第4,816,567号、及び国際特許出願公開第WO/1998/022509号(これらは参照によりその全てを本明細書に取り込まれている)に開示されている方法に従って産生される組み換えモノクローナル抗体であってもよい。抗体は、米国特許第4,676,980号及び同第5,501,983号(これらは参照によりその全てを本明細書に取り込まれている)に開示されている方法に従って作成される特異的抗体によって化学的に構築されていてもよい。遊離及び複合PSAに対するモノクローナル及びポリクローナル抗体は、市場でも入手できる(Daco, Carpenteria, Calif., Scantibodies, Inc. Santee, Calif., BiosPacific, Emeryville, Calif.)。
【0112】
幾つかの実施態様では、抗体は、哺乳動物の、例えば、ヤギポリクローナル抗−PSAの、抗体である。抗体はPSAの特異的領域に特異的でよい。捕捉結合パートナー及び検出結合パートナー対、例えば、捕捉及び検出の抗体対を、本発明の実施態様で用いることができる。従って、幾つかの実施態様では、一般に、2つの結合パートナー、例えば2つの抗体が用いられる、異種のアッセイプロトコルが用いられる。一方の結合パートナーは、通常固体の支持体上に固定されている捕捉パートナーであり、他方の結合パートナーは、通常付着した検出可能な標識を伴う検出結合パートナーである。幾つかの実施態様では、1対の捕捉結合パートナーのメンバーは、PSAの全ての或いは実質的に全ての形態に特異的である抗体である。例としては、抗体、例えば、遊離PSA、及び複合PSAに特異的なモノクローナル抗体である。従って、抗体は総PSAに結合すると考えられる。
【0113】
幾つかの実施態様では、多様な種と交差反応する抗体を使用することが有用である。このような実施態様は、例えば、癌のマーカーとしてPSAの血中への放出を測定することによる薬物毒性の測定を包含している。交差反応する抗体は、1つの種、例えば、非−ヒト種で行われる毒性の検討を可能にし、そしてその結果をアッセイの試薬中に同じ抗体又は抗体対を用いて、別の種、例えば、ヒトの研究又は臨床的観察に直接移行することを可能にするので、アッセイ間のばらつきを減少できる。
【0114】
キット
本発明は更にキットを提供する。
【0115】
本発明のある特定の好ましいキットは、1つ又はそれ以上のレクチン及びPSA特異抗体、並びに使用説明書を含有している、対象が前立腺癌を有しているか否かを確認するためのキットを包含している。別の好ましいキットは、総PSAに対して特異的な抗体、及びα2,6−シアル化に対して特異的なレクチン、並びに使用説明書を含有している、対象が前立腺癌を有しているか否かを確認するためのキットを包含している。本発明の別のキットは、レクチンSNA−1、ジャカリン、及びLcH、PSA特異抗体、並びに使用説明書を含有している、対象が前立腺癌を有しているか否かを確認するためのキットを包含している。
【0116】
キットの成分としての結合パートナー、例えば、抗体、固体の支持体、及び蛍光標識は、本明細書に記載されているような適切な何れの成分であってもよい。
【0117】
キットは、本発明の方法において有用な試薬、例えば、結合反応において用いられる緩衝液及びその他の試薬、洗浄液、アッセイが行われる装置を前処理するための緩衝液又はその他の試薬、及び試料を装置に通すための溶出緩衝液又はその他の試薬、を更に包含してもよい。
【0118】
キットは、1つ又はそれ以上の標準品、例えば、高度に精製したPSA、又はこれらの多種断片、複合体等の標準品のような、本発明のアッセイで用いるための標準品を包含していてもよい。キットは更に説明書を包含していてもよい。
【0119】
レクチンが、SNA、MALI、及びMALIIよりなる群から選ばれることが好ましい。PSA特異抗体が、遊離PSAに対して特異的であってもよく、或いは総PSAに対して特異的であってもよい。ある特定の実施態様では、抗体が、例えば、過ヨウ素酸ナトリウムで酸化されている。
【0120】
以下の実施例は、説明する目的で提示されていて、その他の開示を限定する目的で提示されるものではない。
【実施例】
【0121】
実施例1:前立腺癌検出のためのグリコプロテオミクス:PSA糖鎖付加パターンの変化
現在、血清の前立腺癌特異抗原(PSA)が、4〜10ng/mLの範囲でのその低い特異性にもかかわらず、前立腺癌の早期発見のために用いられている。異常な糖鎖付加が腫瘍発症の基本特性であるので、本検討の1つの目的は、PSA糖鎖付加の変化がPSAの癌特異性を改善するために用いることができるか否かを検討することである。
【0122】
本検討は、5つのレクチン免疫吸着アッセイ(総SNA、総MALI、遊離MALI、総MALII、及び遊離MALII)の開発を記述している。これは、セイヨウニワトコレクチン(sambucus nigra lectin:SNA)による総血清PSAのα2,6−結合シアル化、及びイヌエンジュマメ(maackia amurensis)レクチンI及びII(MALI及びII)の両方による総及び遊離血清PSAのα2,3−結合シアル化を分析する。次いで、これらのアッセイは、PSAの癌特異性の改善における糖タンパク質分析の潜在的役割の臨床研究を実施するために用いた。
【0123】
レクチン免疫吸着アッセイ
以下に示す、表1はレクチン免疫吸着アッセイで用いた捕捉抗体及びレクチン、更にそれらが認識する糖質部分をまとめている。表1は血清中のPSAシアル化を直接分析するための5つのレクチン免疫吸着アッセイを示す。
【0124】
【表1】

【0125】
セイヨウニワトコの樹皮から単離された、SNAはガラクトースにα2,6−結合しているシアル酸の二糖構造に結合する(Knibbs et al., 1991)。MALI(MAL、MAA、又はMAMとしても知られている)及びMALII(MAHとしても知られている)の両方はイヌエンジュマメの種から単離される。MALIはガラクトースにα2,3−結合し、次いでN−アセチルグルコサミンにβ1,4‐結合するシアル酸の三糖構造に結合する(Knibbs et al., 1991)のに対して、MALIIは、その特異性は明確に定義されていないが、2,3−結合シアル酸を含む特定の糖質構造だけに結合すると見られる(Kawaguchi et al., 1974)。
【0126】
分析成績
ヒト精液PSAを混ぜたプールした女性の血清を用いて確立した、これら5つのアッセイの結合曲線が、図1に示されている。実験は、プールした血清を用いるか、或いは個体の血清試料由来の血清において(すなわち、プールしていないもの)実施できることに留意されたい。ヒト精液PSAは、その糖質部分にα2,3−結合及びα2,6−結合のシアル酸の両方を有している(Tabares et al., 2006; Peracula et al., 2003; Tajiri et al., 2008)ので、標準物質として用いた。これらのアッセイ全てにおいて、レクチンの、PSA抗体に捕捉されたPSA分子上の糖質との結合の結果として、総PSAと遊離PSAの濃度増加と共に、電気化学発光シグナルが増大する。これら5つのアッセイのLODはそれぞれ、1.35、0.14、0.32、0.07、及び0.04ng/mLのPSAであると計算された(表1)。これらは通常用いられているPSA評価のアッセイカットオフ値(4.0ng/mL)をはるかに下回っていたので、その診断グレーゾーン(4〜10ng/mL)に用いることができる。このアッセイの同時再現性を評価するために、以下の表2に示すように、2つの男性血清プールを、2つの異なった内因性総PSA及び遊離PSA濃度で、1実行当たり27回測定した。表2は、電気化学発光強度を用いて測定した5つのレクチン免疫吸着アッセイの同時再現性(N=27)を示す。
【0127】
【表2】

【0128】
遊離MALIIアッセイの1つについての10%未満のCVを除いて、5つのアッセイ全てにおいて、5%未満のCVを示して、優れた再現性を明らかにした。PSA標準品に存在している非PSAタンパク質の重要ではない量(2%未満)は、i)PSA抗体は血清からPSA分子を捕捉するために用いられ、そしてii)結合曲線は、Beckman ACCESS Hybritech PSA and Free PSA assays によって測定された総PSA及び遊離PSA濃度を用いて確定されたので、PSAの糖質部分を確認するためのアッセイ又はそれらの性能に影響を与えない。
【0129】
血清中のPSA分子の糖鎖付加パターン
5つのレクチン免疫吸着アッセイを用いて、前立腺癌と非癌の間の遊離及び総PSA分子のシアル化パターンをプール血清で比較した(図2)。上記のように、当然ながら、実験は、プール血清を用いても、個体由来の血清試料(すなわち、非プール血清)を用いても、同様に効果的に実施できる。それらの群内及び群間の類似性及び相違性を明らかにするために、各群に対して3つの血清プールを調製した。96ウェルのプレート上に流せる試料の数に限りがあることを考慮して、各群のプール1は21回測定したのに対して、プール2及び3は3回測定した。この比較から観察された有意なPSAシアル化パターンでは、前立腺癌血清が相対的に大きな群内変動を示したのに対して、非癌血清は3つのプールにわたってより一貫したPSAのシアル化を示し、このことは非癌由来よりも癌由来PSAのより不均一なシアル化パターンを示す。
【0130】
臨床成績
生検で前立腺癌(n=26)又は非癌(n=26)であることを確認された52の対象においてこれらのアッセイの臨床成績を評価した。PSA濃度、遊離PSAの%、測定したPSA糖鎖付加についての癌及び非癌群の間の比較が、以下に示す、表3に示されている。表3は、PSA濃度、PSAの算定%、及び測定したPSA糖鎖付加について、癌(n=26)と非癌(n=26)の間の比較を示す。
【0131】
【表3】

【0132】
全般に、表3は、2つの試験群が、総PSA濃度に関しては統計的に差がなかった(p=0.25)が、遊離PSA濃度及び遊離PSA%には統計的な差があった(それぞれ、p=0.0025及びp<0.001)ことを示した。癌群において総PSA濃度は高かった(癌:9.08±5.16ng/mL及び非癌:7.65±3.52ng/mL、平均値±SD)という事実にもかかわらず、総SNA、総MAlI及びMALIIは癌群におけるより非癌群において高かった。このことは、差は統計的に有意ではなかった(それぞれ、p=0.47、0.67、及び0.58)が、癌群におけるよりも非癌群においての総PSAのより高いシアル化を示唆しているだろう。
【0133】
全52の対象(遊離PSA%が4.7〜31.8の範囲)及び遊離PSA%が10〜20%範囲の21の対象の癌及び非癌群のROC分析が、それぞれ図3A及び3Bに示されている。全52の対象において遊離PSA%(AUC0.85)が5つのアッセイ全て(AUC0.53〜0.63)に対して優れていた(p<0.05、図3A)。しかしながら、遊離PSA%が10〜20%範囲の21の対象のサブセットでは、この差は統計的に有意ではないが(p=0.27)、AUC(0.71vs.0.54、図3Bに示した)が示しているように、総SNAアッセイが遊離PSA%より優れた臨床成績を有していると見なされた。これらの21の対象において、遊離PSA%は、非癌群(14.98±3.28%、平均値±SD、n=11)と癌群(14.93±3.19%、n=10)の間で同等であったのに対して、総SNAアッセイでは、後者における平均(170049±49060)より前者における平均(204713±40965)がより高い傾向を示した(p=0.09)。しかしながら、その他の4つのレクチンアッセイは、10〜20%範囲の遊離PSA%に渡る改善を示さなかった(図3Bに示されている)。
【0134】
10〜20%範囲の遊離PSA%にわたる総SNAアッセイ成績の改善された傾向が16の対象の別の集合(前立腺癌8、非癌8)にアッセイを適用して確認された。癌群(5.81±2.33ng/mL及び14.53±3.20%)及び非癌群(4.98±1.47ng/mL及び15.14±2.66%)における、総PSA及び遊離PSA%は、統計的な差がなかった(それぞれ、p=0.40及び0.68)。これらの16の対象におけるROC分析により、遊離PSA%と比べた総SNAの改善された成績傾向が確認された(AUC0.80vs0.53、図3C)。
【0135】
PSAは前立腺癌に対して利用可能な最も優れた腫瘍マーカーであるが、癌特異性が欠如しているために完全ではない。25%を越えるカットオフ値及び10%未満のカットオフ値をそれぞれ用いて、低い程度から高い程度の癌の危険性を評価することによって、遊離PSA%はPSAの癌特異性を改善した。しかしながら、中程度の遊離PSA%(10〜20%)は未だ難題をもたらしている(Soroll et al., 2008)。実際には、患者の大部分がこの中程度の遊離PSA%を有している。PSAが、その分子量の8.3%の糖質を有する237アミノ酸の一本鎖の糖タンパク質である(Belanger et al., 1995)ことを考慮して、改善するための取り組みは、アミノ酸及び糖質の両方の部分で、PSAの癌特異的形態を探索することに集中している。前者の1つの例は、プロリーダー配列中に2つの追加のアミノ酸を有しているPSAの切断型前駆体形態である、[−2]proPSAである(Mikolajczyk et al. 2004)。最近、[−2]proPSAの自動免疫アッセイが開発されて多施設研究で用いられ、これは、[−2]proPSAが、特に2〜10ng/mLの総PSA範囲において、遊離PSA%より優れた前立腺癌の予知因子であったことを示した(Sokoll et al. 2008)。
【0136】
癌特異性を担持していると思われるPSAの糖鎖付加形態の探索は約20年前に開始された(Barak et al. 1989; Chan et al. 1991)が、進展は遅い。それにもかかわらず、グリカン分析の最近の科学技術の進歩によって、特に精液及び非癌血清由来のPSAと比較したときに前立腺癌由来PSAの異なったグリカン構造を説明した最近の発表(Tabares et al., 2006; Peracula et al., 2003; Tajiri et al., 2008)後に、新たな関心が寄せられている。このことは血清におけるPSA糖鎖付加を検出するための臨床的に有用で直接的なアッセイの開発が将来有望であることを示唆した。
【0137】
本発明は、血清におけるPSAシアル化を直接分析するための5つのレクチン免疫吸着アッセイの開発について記載している。レクチン免疫吸着アッセイは、レクチンをグリカン構造を検出するためのプローブとして用いることを除けば、酵素免疫吸着測定法(ELISA)と似ている(Lotan et al. 1979)。純粋な形態で容易に入手可能な、レクチンは、1)これらは相補的糖結合部位を介して単糖類又はオリゴ糖類に対する特異性を有していて、2)これらは通常タンパク質骨格と相互作用しないので、グリカン構造のプローブとして広く用いられている。しかしながら、レクチン免疫吸着アッセイは、3つの理由により、少数の研究室でのみ用いられている。第1に、これらのアッセイで用いられる抗体は脱グリコシル化する必要があるか、別には、レクチンが、抗体が捕捉したタンパク質上のグリカンと結合するだけでなく抗体上のグリカンにも結合してしまい、高いバックグラウンドを生じる(McCoy et al. 1983; Mehta et al. 2008; Gornik et al. 2007)。第2に、レクチンの結合親和性(10〜5×10−1の範囲)が抗体のそれ(〜10〜1012−1)より100〜10,000倍低く(Lotan et al., 1979; Davies et al. 1994)、そして目的の検体が通常血清中で非常に低い濃度(〜ng/mL)を有するので、これらのアッセイの検出の限界が〜ng/mL範囲と十分ではない。第3に、グリカンはグリカンのみに特異性を有していてタンパク質には有していないので、これらは、レクチン免疫吸着アッセイにおける目的の糖タンパク質以外のバックグラウンド糖タンパク質上のグリカン構造にも結合して(Gornik et al. 2007)、感受性を悪化させるバックグランドを増大する。これは、血清タンパク質の大部分が糖鎖付加されているために、特に血清材料を用いるときに問題となり得る。
【0138】
本発明は、高いバックグラウンドを減少して、結合特異性を増大して、そして感度の高い検出方法を用いる、相応の分析的に高い感度であって血清中のPSAシアル化の直接分析に特異的である、5つのレクチン免疫吸着アッセイの開発について記載している。本明細書に記載されているアッセイにおいて、血清試料からPSAを捕捉するために用いられる総及び遊離PSA抗体は、その場(in situ)で20mMの過ヨウ素酸ナトリウムを用いて酸化する。これは抗体上の糖質構造を選択的に破壊して、レクチンのそのグリカンへの結合を阻害し、抗体の結合能力を保全する(Gornik et al. 2007)。更に、レクチンのバックグラウンド糖タンパク質のグリカンとの結合由来の高いバックグラウンド信号を、1%のBSAを検出緩衝液中に添加することによって減少する。結合特異性を増大するために、ビオチン化レクチン及びストレプタビジンSULFO−TAGは、レクチンの結合がその低い結合親和性によって減少してしまう長期に渡る洗浄を阻止するために別々の工程でそれらを用いるよりむしろ、検出緩衝液中で一緒に混合する。最後に、MSDプラットフォームで電気化学発光を用いて、検出法の感度を増大させた。
【0139】
これらのアッセイの分析的な利点は多種多様である。第1に、96ウェルのプレートを用いると、これらのアッセイはハイスループットとなり、1日の内に数百の試料の分析が可能になる。第2に、 Taberes らが質量分析によるオリゴ糖のプロファイルを用いて実施したのと同様に (Taberes et al. 2006)、前立腺癌血清中のPSAシアル化を精液中のそれと比較するよりむしろ、これらのアッセイは、10ng/mL未満のPSAを有する非癌血清中のPSAシアル化を分析して、それらを対応する前立腺癌血清と比較するのに十分な検出限界(0.04〜1.35ng/mL)を有している。最後に、これらは血清中のPSAシアル化を、これを間接的に測定するレクチン親和性クロマトグラフィー(Ohyama et al. 2004)とは対照的に、直接検出する。これらの特徴の結果として、これら5つのレクチン免疫吸着アッセイは、PSAの癌特異性の改善における、糖タンパク質分析の潜在的役割の臨床研究のための優れた手段である。
【0140】
プール血清の検討から得た結果は、PSAのα2,3−結合及びα2,6−結合シアル化が、非癌におけるよりも、癌においてより不均一であることを示した。上記のように、プール血清を用いても、個体由来の試料(すなわち、プールしていないもの)を用いても、実験を同様に効果的に実施できるということに留意されたい。この観察は、前立腺癌由来のPSAが、二分岐のオリゴ糖のみを有している正常PSAとは異なり、二分岐、三分岐、及び恐らく四分岐のオリゴ糖の混合物であるという、グリカン構造分析からの知見と一致していて、これは前立腺上皮の発癌性形質転換がPSAのN−結合糖化処理に特異的に影響するという仮説(Prakash et al. 2000)を支持する。更に、MALI及びMALIIによって評価されたα2,3−結合シアル化パターンは非常に類似していて、MALI及びIIが、PSA上のより類似の糖質構造と結合する可能性があることを示した。
【0141】
これら5つのレクチン免疫吸着アッセイの臨床成績の評価は、総PSAのα2,6−結合シアル化が、10〜20%範囲の遊離PSAより優れた前立腺癌の予知因子であろうということを明らかにした。
【0142】
Ohyama et al による以前の報告は、総PSAのDNA結合画分が前立腺癌をBPHと区別できないことを示したが、我々の検討はこれが有望であることを示した。この差は、材料の種類、用いる方法、更には診断的グレーゾーンに入る遊離PSA%を有している臨床的に意義のある患者に注目したことにも起因している。われわれの検討が癌症例群と非癌対照群において同じ総PSAの濃度を有する試料を用いたのに対して、Ohyama et al の文献は、癌の群に非癌群よりも非常に高い総PSA濃度を有する試料を用いた(平均総PSA濃度:89ng/mL vs 8.8ng/mL)(Ohyama et al)。高いレベルのPSAが、一般に大量且つ高い悪性度の癌と関連があって、この癌は、低いレベルのPSAに関連している少量且つ低い悪性度の癌とは異なった糖鎖付加PSAを産生しうるために、この際立った相違が、癌群において糖鎖付加PSAの異なった形態の存在をもたらす可能性がある。更に、Ohyama et alらの文献 では、レクチン親和性クロマトグラフィー、次いでPSAの免疫検出を用いた。糖鎖付加PSAのクロマトグラフ分離は、レクチン免疫吸着アッセイによって検出されたものと異なった形態の糖鎖付加PSAを検出するかもしれない。それらの結果は逆を説明している一方で、これらの違いが、何故われわれのMALIIアッセイは、非癌から前立腺癌を識別できないかを説明しているのかもしれない。
【0143】
本明細書に提示されている結果は、21の対象での最初の検討及び16の対象での別の検討の両方において、総PSAのα2,6−結合シアル化についてのアッセイが、その診断的グレーゾーンにおける遊離PSA%(遊離PSA%=10〜20%)と比較して、前立腺癌の検出を改善するということも示唆している。別の糖質部分(例えば、フコース)を認識するレクチンを用いる免疫吸着アッセイも想定される。これらのアッセイは、癌遺伝子における無秩序な糖鎖付加及び進行を理解するのにも役立ち、非癌患者からの前立腺癌の識別を改善するために臨床的に用いることができる。
【0144】
実施例2:臨床材料由来の候補糖タンパク質の糖鎖付加パターン分析
この検討において、糖鎖付加パターンプロファイリング用の感度が良くハイスループットな分析を確立するためにモデルタンパク質としてPSAを選択した。健常者と癌患者由来のPSAの区別される糖鎖付加パターンを調査するために、PSAタンパク質を最初に正常及び癌の組織試料から抽出した。PSAタンパク質を同量に調節し、そして高密度レクチンマイクロアレイでプロファイルしてPSA糖質パターンを広範囲に検出した。正常群と癌群の間で異なったシグナルを示すレクチンを標的候補マーカーとして選択した。グリカン−レクチン相互作用を定量的に分析するために、ECLをベースとする超高感度レクチン−抗体免疫アッセイを開発して、臨床試料中の標的PSAグリカン−レクチン結合をng/mLレベルで分析した。開発したレクチン−抗体免疫アッセイを用いるレクチンマイクロアレイ検討の分析結果を立証するために、プールした正常組織及び癌組織の試料の追加セットを用いた。ここでも、プール血清を用いても、個体由来の血清試料(すなわち、プールしていないもの)を用いても、実験を同様に効果的に実施できるということに留意されたい。
【0145】
高密度レクチンマイクロアレイを用いる標的糖タンパク質の糖鎖付加パターの検出
高密度レクチンマイクロアレイの感度を確認するために、高密度レクチンマイクロアレイを用いて異なった量のPSAをプロファイルした。94のレクチンをNHSエステル化学を用いてガラススライド上に固定した。以下の表4に示すように、それぞれのレクチンを4濃度勾配に連続希釈してそれぞれの濃度で2回出力した。表4は、レクチンマイクロアレイを用いる前立腺組織及び血清由来のPSAと結合する検出可能なレクチンのリストを示している(数字はシグナル対ノイズ比を表し、シグナルは特定のレクチンのPSAに対する結合であり、ノイズは同一レクチンのPSA無しの時のものである)。
【0146】
【表4】

【0147】
グリカン−レクチン結合は抗原−抗体結合と同様には特異的ではないので、糖鎖付加分析では検出感度が重要な問題である。検出特異性を増大するために、第1及び第2抗体の追加の酸化処理を用いて、糖のシス−ジオール基を破壊して固定化レクチンと抗体の間の相互作用を回避することが好ましい。図4Aは、レクチンマイクロアレイの陰性(TBST緩衝液)及び陽性(200ngのPSAタンパク質)試験を示す。陰性スライドの低いシグナルは、レクチンマイクロアレイが低いバックグラウンドノイズを有していることを明らかにした。レクチンのシグナルはPSAタンパク質の添加後のみに観察され、このことはPSAのグリカンがレクチンスポットと特異的に結合したことを示している。検出可能シグナルの基準を(1)レクチンスポットのS/N比>1.5;(2)試料(精液PSAのS/N比)の特定のレクチンのブランク(陰性試験のS/N比)に対する比>1.2:と設定した。検出可能なレクチンスポット全てについて、シグナルは、PSAの量と関連していて、PSAレベルが高くなると増加した。幾つかのグリカン−レクチン結合の検出限界(LOD)は:SNA−1についてはグリカン−レクチン結合のPSA0.2ng;CALSEPA及びLcH AについてはPSA2ng;LcHについてはPSA20ng;そしてスクシニルConA及びMNA−MについてはPSA200ngであると明らかになった。2つのレクチン:SNA−1及びCALSEPAのグリカン−レクチン結合曲線を例として図4Bに示した。
【0148】
高密度レクチンマイクロアレイを用いる臨床試料から抽出したPSAタンパク質の糖鎖付加プロファイリング
PSA免疫沈降法を用いて、プールした臨床試料:正常前立腺組織(N−T_1、N−T_2)及び前立腺癌組織(C−T_1、C−T_2):から最初にPSAタンパク質を抽出した。検出シグナルを増強するために、それぞれの試料から抽出した40ngのPSAをレクチンマイクロアレイでプローブした。PSAがないブランク試料を陰性対照として用いた。上記と同じ基準を用いて、検出可能なシグナルを区別した。両方のアレイ上に検出可能なシグナルを有しているレクチンを表1に挙げた。次いで、正常及び癌の組織由来のレクチンシグナルを比較した。3つのレクチン、SNA−1、ジャカリン、及びLcHは、以下の表5に示されているように、レクチンマイクロアレイにおいてC−T_1及びC−T_2の両方の癌群で上方制御されることが示されている。
【0149】
【表5】

【0150】
このデータは、総PSAタンパク質が、癌組織中のレクチンSNA−1、ジャカリン、及びLcHに対応する、シアル酸、O−結合ガラクトース、及びFuca 1−6群を有するMan/GlcNAcをより多く有していることを示した。更に、プールした前立腺癌血清(C−S_1、C−S_2)から抽出したPSA40ngを、処理手続きに従ってレクチンマイクロアレイでプローブした。良性前立腺肥大(BPH)血清及び正常血清中のPSAが超低量のため、対照群として、十分な量のPSAがBPH又は正常血清から採取できなかった。従って、癌血清と良性/正常血清の間でレクチンマイクロアレイを用いて糖質パターンの直接比較は不可能であった。しかしながら、癌血清中の検出可能なレクチンシグナルが有用な情報をもたらした。血清中の検出可能なレクチンシグナルは、癌検出のための新規な血清マーカーとして選択される可能性を有しているので、血清の検出可能なグリカン−レクチン結合が血清マーカーを発見するための候補群をもたらしている。全体的に見て、3つのレクチンを更なる検証研究に対する標的候補として選択した。これらは全ては、癌と正常組織の間で異なった発現パターンを示しており、血清試料中に検出可能であった。これらの糖質は、前立腺癌を正常組織と区別するための候補グリカンマーカーになる可能性を有していて、その検証研究において超高感度免疫アッセイに用いて検証されるだろう。
【0151】
標的グリカン−レクチン分析のための超高感度電気化学発光による免疫アッセイの開発
グリカン−レクチン結合比を定量的に測定するために、電気化学発光(ECL)による免疫アッセイを、粗製の臨床材料中のPSA糖鎖付加パターンを検出するために超高感度分析の開発に適用した。癌血清から抽出したPSAを、プールした健常な女性血清に異なった量で混入した。最終PSA濃度は、臨床PSAアッセイを用いて測定して、469.3、129.7、36.1、8.8、2.56、0.69〜0.19ng/mLであった。最初にPSAタンパク質を複雑な臨床混合物からPSAモノクローナル抗体で捕捉し、次いで、ビオチンラベルで予め標識してあるレクチンと結合させた。ECL検出試薬に抱合されているストレプタビジンがビオチンラベルを認識した。リーディングバッファーを添加した後に、ECLプレートに検出電圧をかけると、電気化学発光シグナルが観察された。SNA及びジャカリンのアッセイの両方で、混入したPSAタンパク質の量の増大とともに、電気化学発光シグナルが増大した。ビオチン化LcHを市販供給源から入手できなかったので、LcHアッセイを開発することができなかった。グリカン−レクチン結合曲線を、特殊な結合様式を用いてヒル傾斜(Hill-slope)と一致させて統計的パラメータを算出した。SNA及びジャカリン結合のLODs及びCVsを図5に示す。図5は、これらの開発された免疫アッセイがPSAの診断的グレーゾーン(4〜10ng/mL)での糖鎖付加パターンの分析に、優れた再現性を有して適合していることを示している。
【0152】
前立腺癌組織試料における開発されたECLによる免疫アッセイを用いる標的レクチン−グリカン結合の検証
開発されたECLによる免疫アッセイを用いて標的グリカン−レクチン相互作用を検証するために、異なった患者材料からプールする正常及び癌の組織試料の追加のセットを調製した。両方のプール試料を1倍のTBST緩衝液を用いて希釈して、正常群と癌群で同レベルのPSA濃度にした。SNA及びジャカリン免疫アッセイの両方で、プールした前立腺癌組織試料が正常組織よりも高いシグナルを有していることを示した。これらの結果は、図6に示されているように、レクチンマイクロアレイ検討の分析結果と一致した。
【0153】
タンパク質の糖鎖付加は、膜タンパク質、細胞表面タンパク質、及び分泌タンパク質を含む細胞外環境に発現されるタンパク質の最も一般的なタンパク質修飾の1つである。これらのタンパク質は、治療或いは診断目的で最も利用しやすいタンパク質の1つである。また、FDA(食品医薬品局)承認の癌タンパク質マーカーは全て糖タンパク質である。前立腺癌の診断のためのPSAのような、糖タンパク質マーカーの検出力を増強するために、マーカータンパク質の糖質発現についての本検討は、癌検出を改善する方法として提供された。FDA承認のマーカーの大部分は臨床試料中の少量タンパク質を対象にしている。更に、糖分析用に従来のクロマトグラフィー或いは電気泳動法を用いて臨床材料から少量存在するタンパク質を十分に採取するのが困難であることもある。例えば、公表論文の大部分は、精液由来のPSAと前立腺癌細胞株から採取したPSAを用いるように、非臨床試料由来PSAタンパク質のグリカンパターンを比較しなければならなかった。PSAの糖質が異なった細胞培養環境で発現されるので、報告されている結果がPSAのグリカンパターンの臨床的状態を示していないということは驚くべきことではない。従って、糖鎖付加発現の検討は臨床適用のためには臨床材料との直接関連付けられるのが好ましい。
【0154】
臨床試料中の少量のマーカータンパク質を考慮すれば、糖質プロファイリングについては検出感度が最も重要視すべきことである。LODをng或いはng/mLレベルにまで減少させるために、本明細書に記載されている実験手法を両方の分析に対して最適化した。レクチンマクロアレイ検出については、レクチンと他のタンパク質由来のグリカンとの相互作用を避けるために、PSAタンパク質を最初に臨床試料から抽出した。次いで、PSA抗体を加えてサンドイッチELISAを完結させて検出特異性を増大させた。PSA抗体及び蛍光標識を酸化して、糖のシス−ジオール基を破壊し、それによってレクチンとこれらのタンパク質由来グリカンとの相互作用を減少した。全ての処置を組合せることによって、レクチンマイクロアレイの幾つかのレクチンのLODsをPSAの0.2ng及び2ngに減少した。ECLによるレクチン−抗体免疫アッセイについては、MSAプレート上にコーティングしたPSA抗体を過酸で処理して糖の基を破壊した。
【0155】
電気化学発光(ECL)検出は、従来のELISAと比較して、超高感度な分析法である。ECL検出において、リーディング電圧がプレートに加わると、ECL−標識検出試薬からの発光を機器が測定する。励起光源は検出に対する更なるバックグラウンドノイズを引き起こさなかった。また、電極の表面近く(プレートの下部)に存在した抗体に捕捉されたPSA−レクチン複合体のみを検出できた。ウェルの壁に付着した非特異結合タンパク質は、電気エネルギーを得ることができずに、このシステムにノイズを生じる。レクチンマイクロアレイとECL検出の両方が、本検討において適切に優れた再現性をもって、PSAのng或いはng/mL以下でのPSA糖鎖付加パターンの分析を可能にした。
【0156】
検出処理能力は臨床的検出の別の検討事項である。レクチンマイクロアレイは、1つの単一試験で数百のレクチンをプロフィルできる。しかしながら、臨床試料の更なる処理が必要である。レクチンと別の組織又は血清タンパク質由来のグリカンとの相互作用を避けるために、標的タンパク質を臨床試料から単離しなければならなかった。これはプレプロファイリングに対しては最適な手段であったが、大量の臨床試料のセットに対して糖鎖付加発現をプロファイルするには適していないだろう。ECLによる免疫アッセイは、従来のELISAと同様なフォーマットを有した。PSAタンパク質は、MSDプレートにコーティングしてあるPSA抗体によって複雑な臨床試料から捕捉することができた。更なる試料処理は必要なかった。臨床材料をこの検出プラットフォームではプレートに直接添加することができる。従って、大量の臨床試料を分析するためのハイスループットな検出が可能である。
【0157】
好ましくも、正常臨床試料と癌臨床試料の間の糖鎖付加パターンを比較するために、定量分析を好ましく確立した。レクチンマイクロアレイは、レクチンスポットがレクチン分子のある特定の量しか保持しないので、絶対定量分析を適切にもたらすことができない。PSAタンパク質の量が、特に低レクチン濃度スポットで、固定化レクチンの量を超えると、スポットが飽和して実際のPSAレベルを示すことができない。従って、標的グリカン−レクチン結合についての超高感度ECLによる免疫アッセイを適切に開発して、レクチンマイクロアレイの結果を追加の臨床試料セットを用いて検証した。
【0158】
本明細書に記載されているデータ及び結果は、臨床材料中の糖鎖付加パターンを検討するために、高密度レクチンマイクロアレイ及びECLによるレクチン−抗体免疫アッセイを組み合わせた二相の分析プラットフォームを表している。大量のレクチンを、標的グリカン−レクチン結合を予備スクリーニングするために、癌患者由来の標的タンパク質で適切にプロフィルした。ECLによる免疫アッセイを選択されたレクチン標的に対して好ましく開発して、レクチンマイクロアレイの結果を追加のプールされた試料セットを用いて検証した。この方法は、前立腺の正常な及び癌の組織試料由来のPSAタンパク質の糖鎖付加の変化をプロファイルするために用いられている。レクチンSNA及びジャカリンは、癌試料において上方制御されたシグナルを示し、ECLによる免疫アッセイを用いて検証されている。詳細なグリカン構造が無くても、この二相の分析プラットフォームは、臨床材料中の糖鎖付加パターンをプロフィルするための、的確な、超高感度の、再現可能な、そしてハイスループットの方法で、癌関連情報を提供できる。
【0159】
方法
本発明は、これに限定されないが、以下の方法で実施された。
ヒト血漿試料
生検の前に、前立腺癌を生検で確認されている患者26人及び非癌を生検で確認されている患者26人から個々の血清試料を得た。非癌群及び癌群の総PSA濃度を、大多数(87%)が4〜10ng/mLの総PSA濃度を有するように、整合した。更に、前立腺を有する患者及び有していない患者から、それぞれ、3つの前立腺癌血清プール及び3つの非癌血清プールを調製した。これら6つのプールの総及び遊離PSA濃度の両方を整合して、総PSA濃度が5〜6ng/mLの範囲に、そして遊離PSA濃度が0.8〜1.6ng/mLになるようにした。総SNAアッセイの臨床成績を検証するための別個の検討に用いた16の対象(癌8及び非癌8)は、3.1〜10.4ng/mLの範囲の総PSA濃度及び9.2〜20.3%の範囲の遊離PSA%を有していた。
【0160】
試薬
メソスケールディスカバリー(MSD)96ウェル標準プレート、MSD SULFO−TAG、及びMSDプレートリード緩衝液T(4X)は、 Meso Scale Discovery (Gaithersburg, MD)から入手した。総及び遊離PSAモノクローナル抗体(Clone BP001及びAP003S)は、 Scripps Laboratory から入手した。ヒトPSA(ヒト精液由来の100%遊離PSA)は Lee Biosolutions, Inc (St.Louis, MO)から入手した。ビオチン化セイヨウニワトコレクチン(SNA)、ビオチン化イヌエンジュマメレクチンI(MALI)、ビオチン化イヌエンジュマメレクチンII(MALII)は 、Vector Laboratories (Burlingame, CA)から入手した。ウシ血清アルブミン(BSA)及びツイン20は Sigma-Aldrich (St,Louis, MO)から入手した。10Xトリス緩衝食塩水(TBS)は Bio-Rad (Hercules, CA)から入手した。
【0161】
レクチン免疫吸着アッセイ
MSDプレートを30μLのPSAモノクローナル抗体で7.5ug/mLの濃度でコーティングして、4℃で1晩培養した。結合しない抗体溶液を破棄して、5%BSAを含むTBS緩衝液150μLを用い、室温(RT)で1時間振盪してブロックした。次に、TBS+0.1%(v/v)ツイン20を用いて、プレートを3回洗浄した。レクチンがPSA抗体上の糖質決定基と結合するのを防ぐために、プレートにコーティングしてある抗体を、4℃で1時間、150mMのNaCl及び100mMの酢酸ナトリウム(pH5.5)中で調製した150μLの過ヨウ素酸ナトリウム緩衝液で処理した。14、15 処理に続いて、プレートを前記のように洗浄し、50μLの血清試料をそれぞれのウェルに添加して、室温で2時間、振盪培養した。TBS+0.1%ツイン20緩衝液でプレートを10回洗浄して、80μMのビオチン化レクチン(例えば、SNA、MALI又はMALII)及び5μMのMSDストレプタビジンSULFO−TAGを含有している25μLの検出緩衝液をそれぞれのウェルに添加して、RTで1時間培養した。最後に、150μLの1X MSDプレートリード緩衝液をそれぞれのウェルに添加し、MSD SECTOR Imager 2400を用いて電気化学発光(ECL)検出を行った。
【0162】
分析成績の評価
多種濃度のヒト精液PSAと混合したプール女性血清(最終濃度:0.01、0.76、2.34、7.05、23.03、及び46.86ng/mL)をアッセイを開発するために用いた。バックグラウンドのシグナル(0ng/mL濃度)にバックグラウンドの標準偏差(SD)の3倍を足すことによって、検出限界(LOD)を算出した。これらのプール中の総及び遊離PSA濃度は同じであった。内因性総PSA(4.12ng/mL及び11.22ng/mL)及び内因性遊離PSA(0.91ng/mL及び0.99ng/mL)の2つのレベルでプール男性血清を用いて、同時再現性(n=27)を評価した。これらの試料中の総及び遊離PSA濃度を、それぞれBeckman ACCESS Hybritech PSA 及び Free PSA assay、を用いて測定した。
【0163】
データ分析
これら5つのレクチン免疫吸着アッセイから得られたPSA糖鎖付加の結果を、電気化学発光強度で表した。検討群間の差を比較するために、マンホイットニーU検定を用いた。ROC曲線を構築して、それらの領域及び信頼区間(CIs)を計算するために統計ソフトウェア MedCalc を用いた。
【0164】
材料
Nexterion H Slide は、SCHOTT North America Inc. (Lousville, KY)から購入した。94のレクチンは、Dr. Heng Zhu から提供され、そして4つの市販の供給源から集めた(表4に示されている)。精液由来のヒトPSAは、Lee BioSolutions, Inc. (St.Louis, MO)から入手した。マウス抗−ヒトPSA抗体は、Scripps Laboratories (San Diego, CA)から入手した。ウサギ抗−マウスIgG−Alexa Fluor 647複合体は、Invitrogen (Eugene, OR)から入手した。非タンパク質ブロッカーは、Thermo Fisher Scientific Inc. (Rockford, IL)から入手した。レクチンマイクロアレイ用の培養チャンバー及びホルダーは、Whatman Schleicher & Schuell (Keene, NH)から入手した。抗−ヒトPSA(総)抗体をコーティングした電磁ビーズは、Beckman Coulter Inc. (Fullerton, CA)から入手した。MESO SCALE DISCOVERY(MSD) 384ウェル標準プレート、ブロッカーキット、MSD SMLFO-TAG、MSDプレートリード緩衝液T(4X)を含有している、電気化学発光アッセイは、Meso Scale Discovery (Gaithersburg, MD)から購入した。ウサギ抗−ヒトPSA抗体は、Affinity Bioreagents (Golden, CO)から入手した。過ヨウ素酸ナトリウムは、Bio-Rad Laboratories (Hercules, CA)から入手した。ビオチン化ジャカリン及びビオチン化セイヨウニワトコレクチン(SNA)は、Vector Laboratories (Burlingame, CA)から入手した。その他の全ての化学品及び試薬は、Sigma-Aldrich(St.Louis, MO)から購入した。
【0165】
プール前立腺癌組織
N−T_1、N−T_2、N−T_3、プール健常前立腺組織C−T_1、C−T_2、C−T_3、及びプール前立腺癌血清C−S_1、C−S_2は、Johns Hopkins University の Clinical Chemistry Laboratory で調製された。PSA濃度は、Beckman ACCESS Hybritech PSAアッセイを用いて測定した。
【0166】
レクチンマイクロアレイの製作及び品質管理
レクチンタンパク質を0.02%のツイン20及び25%のグリセロールを含むリン酸緩衝食塩水(PBS)緩衝液中に、最終濃度が1μg/μLになるように再懸濁した。スポット形態を改善するために、ウシ血清アルブミン(BSA、0.05μg/μL)も緩衝液に添加した。Chip Writer Pro (Bio-Rad, Hercules, CA)マイクロアレイヤーを用いて Nexterion H Slides 上にレクチンをプリントした。4つの濃度のレクチンを各ブロックに2回プリントして、スライド当たり6組のレクチンブロックをプリントした。プリントした後、スライドをアルミホイルで覆って、後で使うために4℃で保管した。レクチンスポッティングの品質をモニターするために、マイクアレイを、100倍に希釈した549 NHS エステル(DyLight)を用いて室温で1時間染色した。染色したスライドをTBST(1×TBS+0.1%ツイン20)で2回洗浄し、続いて水で1回洗浄した。乾燥したスライドを、GenePix 4100B (Axon, Sunnyvale, CA)スキャナーを用い分解能10μmでスキャンした。スキャニングの条件は、Cy3チャンネルで600mVのレーザー出力及び33%のPMT値であった。
【0167】
精液PSAを用いる高密度レクチンマイクロアレイの感度試験
レクチンマイクロアレイを培養チャンバー及びアレイホルダーに組み入れて、以下の手順を用いてPSA試料をプローブした。最初に、レクチンマイクロアレイを表面ブロッキングするために、ホウ酸塩緩衝液(pH8.0)中のエタノールアミン50mMに1時間浸した。ブロックされたスライドをTBST緩衝液を用いて1回、続いて水で洗浄した。スライドを500gで5分間回転させて乾燥した。第2に、精液から単離した0ng、0.02ng、0.2ng、2ng、20ng、及び200ngのPSAタンパク質を、1×TBST緩衝液を用いて200μLに希釈した。試料をレクチンブロックのそれぞれのセットに添加して、室温(RT)で2時間ゆっくり振盪して培養した。次いでマイクロアレイを、200μLの1×TBST緩衝液で3回濯いで、結合していないタンパク質を除去した。第3に、第1抗体(マウス抗−ヒトPSA抗体)及び第2抗体(ウサギ抗−マウスIgG−Alexa Fluor 647複合体)を20mMの過ヨウ素酸ナトリウムと4℃で1時間暗所で混合して、糖基のシス−ジオール結合を酸化した。2μg/mL酸化マウス抗−ヒトPSA抗体の200μLをマイクロアレイと1時間ゆっくり振盪してハイブリダイズした。遊離の抗体を除去するために追加の洗浄を行った。第4に、2μg/mL酸化ウサギ抗−マウスIgG−Alexa Fluor 647複合体の200μLを第2抗体として添加して、マイクロアレイと1時間ゆっくり振盪してハイブリダイズした。TBST緩衝液で洗浄した後、マイクロアレイを培養チャンバーから取り出して水で2回洗浄した。アレイを500gで5分間回転して乾燥し、次いで直ちに、GenePix 4000B スキャナーにより波長647nm及びPMT設定800でスキャンした。スライドの画像を GenePix 3.0ソフトウェアを用いて分析して、自作の「GAL」ファイルを用いて数値形式(GPR)に変換した。スポットのフォアグランド強度の中央値、スポットのバックグランド強度の中央値、及びレクチンタンパク質の同定をこの分析で用いた。各レクチンスポットのSN比(スポットのバックグランド強度の中央値に対するスポットのフォアグランド強度の中央値)を各レクチンの検出限界(LOD)を分析するために用いた。
【0168】
高密度レクチンマイクロアレイを用いる臨床試料から抽出したPSAのグリカンプロファイリング
各プール臨床試料(N−T_1、N−T_2、C−T_1、C−T_2、C−S_1、C−S_2)の50μLを抗−ヒトPSA(総)抗体をコーティングした電磁ビーズ100μLと4℃で12時間培養した。ビーズを1×TBST緩衝液で6回洗浄した。100mMグリシン(pH2.3)を100μL用いて電磁ビーズからPSAタンパク質を3回溶出した。溶出液を集めて、30μLの10×TBST緩衝液及び5μL〜10μLの30%NaOHを用いてpH7.5に調整した。Beckman ACCESS Hybritech PSAアッセイを用いて最終PSA濃度を測定した。各プール臨床試料のPSAタンパク質40ngを1×TBST緩衝液200μLに希釈した。上記の操作手順を用いてPSA試料をレクチンマイクロアレイと培養した。PSAタンパク質を含有していない200μLの1×TBST緩衝液をこの試験の陰性対照として用いた。対応するレクチンスポットのブランクアレイのSN比で割った臨床PSAタンパク質のSN比をデータ分析に用いた。
【0169】
PSAタンパク質の標的グリカン−レクチン相互作用についての電気化学発光による超高感度免疫アッセイ
グリカン−レクチン相互作用を定量的に検出するために、ECLによる分析を用いて、標的レクチンに対する超高感度免疫アッセイを確立した。384−MSDプレートを最初に10μg/mLマウス抗−ヒトPSA抗体10μLで1晩4℃でコーティングした。次いで、MSDプレートを50μLの非タンパク質ブロッカーを用いて室温で1時間ゆるやかに振盪してブロックした。1×TBST緩衝液を用いてプレートを洗浄した。レクチン−PSA抗体結合由来のバックグランドを減少するために、コーティングされているPSAモノクローナル抗体を、4℃の暗所で1時間20mM過ヨウ素酸ナトリウムを50μL用いて酸化して、糖のシス−ジオール基を破壊した。1×TBST緩衝液を用いて、過剰の過ヨウ素酸ナトリウムを3回洗い流した。プール前立腺癌血清から抽出したPSAタンパク質を、プール健常女性血清を用いて希釈して、4倍希釈によって1000ng/mL〜0.244ng/mLの濃度勾配を作成した。Beckman ACCESS Hybritech PSAアッセイを用いて最終PSA濃度を測定した。10μLの試料をMSDのウェル内で緩やかに振盪して室温で2時間、3通りに培養した。TBST緩衝液を用いて結合しなかったタンパク質を3回洗い流した。次いで、20μg/mLのビオチン化レクチン及び5μg/mLのストレプタビジンSMLFO−TAGの10μLをそれぞれのウェルに添加して、室温で1時間緩やかに振盪して培養した。1×TBST緩衝液を用いて、過剰のレクチン及びSMLFO−TAGを3回洗い流した。最後に50μLの1X MSDリード緩衝液を各ウェルに添加して、MSD SECTOR Imager 2400を用いて直ちに読み込んだ。それぞれのグリカン−レクチン結合に対する検出感度を分析するために Prism ソフトウェアを用いてデータを分析した。
【0170】
前立腺癌組織にあるPSAタンパク質の標的グリカン−レクチン相互作用についての、開発された電気化学発光による免疫アッセイを用いる検証検討
最初に、プール前立腺の癌組織(C−T_2)及び正常組織(N−T_2)の試料を1×TBST緩衝液で希釈して、総PSAタンパク質を同じレベルに調節した。Beckman ACCESS Hybritech PSAアッセイを用いて、総PSA濃度を測定して、最終濃度は;N−T_2試料で162.20ng/mL、そしてC−T_2試料で163.36ng/mLであった。1×TBST緩衝液を陰性対照として用いた。ECLによる抗体−レクチン免疫アッセイの手順は上記の通りである。手短には、プレートをブロックして酸化した後に、10μLの各試料を3通りに384−MSDプレートに添加した。次いで、10μLの20μg/mLビオチン化ジャカリン又はSNAを5μg/mLのストレプタビジンSMLFO−TAGと混合して、PSAタンパク質で個々にプローブした。MSD Sector Imager 2400を用いる電気化学発光検出のために、50μLの1×MSDプレートリード緩衝液を各ウエルに添加した。正常群と癌群の間のグリカン−レクチン結合比の差を分析するために、Prism ソフトウェアを用いてデータを分析した。
【0171】
参考文献
Catalona, W. J.; Smith, D. S.; Ratliff, T. L.; Dodds, K. M.; Coplen, D. E.; Yuan, J. J.; Petros, J. A.; Andriole, G. L., Measurement of prostate-specific antigen in serum as a screening test for prostate cancer. N Engl J Med 1991, 324 (7), 1156-61.

Thompson, I. M.; Pauler, D. K.; Goodman, P. J.; Tangen, C. M.; Lucia, M. S.; Parnes, H. L.; Minasian, L. M.; Ford, L. G.; Lippman, S. M.; Crawford, E. D.; Crowley, J. J.; Coltman, C. A., Jr., Prevalence of prostate cancer among men with a prostate-specific antigen level < or =4.0 ng per milliliter. N Engl J Med 2004, 350, (22), 2239-46.

Chan, D. W.; Bruzek, D. J.; Oesterling, J. E.; Rock, R. C.; Walsh, P. C., Prostate-specific antigen as a marker for prostatic cancer: a monoclonal and a polyclonal immunoassay compared. Clin Chem 1987, 33, (10), 1916-20.

Catalona, W. J.; Richie, J. P.; Ahmann, F. R.; Hudson, M. A.; Scardino, P. T.; Flanigan, R. C.; deKernion, J. B.; Ratliff, T. L.; Kavoussi, L. R.; Dalkin, B. L.; et al., Comparison of digital rectal examination and serum prostate specific antigen in the early detection of prostate cancer: results of a multicenter clinical trial of 6,630 men. J Urol 1994, 151, (5), 1283-90.

Lilja, H.; Christensson, A.; Dahlen, U.; Matikainen, M. T.; Nilsson, O.; Pettersson, K.; Lovgren, T., Prostate-specific antigen in serum occurs predominantly in complex with alpha 1-antichymotrypsin. Clin Chem 1991, 37, (9), 1618-25.

Brawer, M. K., Prostate-specific antigen: current status. CA Cancer J Clin 1999, 49, (5), 264-81.

Mikolajczyk, S. D.; Marks, L. S.; Partin, A. W.; Rittenhouse, H. G., Free prostate-specific antigen in serum is becoming more complex. Urology 2002, 59, (6), 797-802.

Belanger, A.; van Halbeek, H.; Graves, H. C.; Grandbois, K.; Stamey, T. A.; Huang, L.; Poppe, I.; Labrie, F., Molecular mass and carbohydrate structure of prostate specific antigen: studies for establishment of an international PSA standard. Prostate 1995, 27, (4), 187-97.

Hakomori, S., Aberrant glycosylation in tumors and tumor-associated carbohydrate antigens. Adv Cancer Res 1989, 52, 257-331.

Narayanan, S., Sialic acid as a tumor marker. Ann Clin Lab Sci 1994, 24, (4), 376-84.

Durand, G.; Seta, N., Protein glycosylation and diseases: blood and urinary oligosaccharides as markers for diagnosis and therapeutic monitoring. Clin Chem 2000, 46, (6 Pt 1), 795-805.

Tabares, G.; Radcliffe, C. M.; Barrabes, S.; Ramirez, M.; Aleixandre, R. N.; Hoesel, W.; Dwek, R. A.; Rudd, P. M.; Peracaula, R.; de Llorens, R., Different glycan structures in prostate-specific antigen from prostate cancer sera in relation to seminal plasma PSA. Glycobiology 2006, 16, (2), 132-45.

Ohyama, C.; Hosono, M.; Nitta, K.; Oh-eda, M.; Yoshikawa, K.; Habuchi, T.; Arai, Y.; Fukuda, M., Carbohydrate structure and differential binding of prostate specific antigen to Maackia amurensis lectin between prostate cancer and benign prostate hypertrophy. Glycobiology 2004, 14, (8), 671-9.

Zhang, H.; Li, X. J.; Martin, D. B.; Aebersold, R., Identification and quantification of N-linked glycoproteins using hydrazide chemistry, stable isotope labeling and mass spectrometry. Nat Biotechnol 2003, 21, (6), 660-6.

Gornik, O.; Lauc, G., Enzyme linked lectin assay (ELLA) for direct analysis of transferrin sialylation in serum samples. Clin Biochem 2007, 40, (9-10), 718-23.

Knibbs, R. N.; Goldstein, I. J.; Ratcliffe, R. M.; Shibuya, N., Characterization of the carbohydrate binding specificity of the leukoagglutinating lectin from Maackia amurensis. Comparison with other sialic acid-specific lectins. J Biol Chem 1991, 266, (1), 83-8.

Kawaguchi, T.; Matsumoto, I.; Osawa, T., Studies on hemagglutinins from Maackia amurensis seeds. J Biol Chem 1974, 249, (9), 2786-92.

Peracaula, R.; Tabares, G.; Royle, L.; Harvey, D. J.; Dwek, R. A.; Rudd, P. M.; de Llorens, R., Altered glycosylation pattern allows the distinction between prostate-specific antigen (PSA) from normal and tumor origins. Glycobiology 2003, 13, (6), 457-70.

Tajiri, M.; Ohyama, C.; Wada, Y., Oligosaccharide profiles of the prostate specific antigen in free and complexed forms from the prostate cancer patient serum and in seminal plasma: a glycopeptide approach. Glycobiology 2008, 18, (1), 2-8.

Sokoll, L. J.; Wang, Y.; Feng, Z.; Kagan, J.; Partin, A. W.; Sanda, M. G.; Thompson, I. M.; Chan, D. W., [-2]proenzyme prostate specific antigen for prostate cancer detection: a national cancer institute early detection research network validation study. J Urol 2008, 180, (2), 539-43; discussion 543.

Mikolajczyk, S. D.; Catalona, W. J.; Evans, C. L.; Linton, H. J.; Millar, L. S.; Marker, K. M.; Katir, D.; Amirkhan, A.; Rittenhouse, H. G., Proenzyme forms of prostate-specific antigen in serum improve the detection of prostate cancer. Clin Chem 2004, 50, (6), 1017-25.

Barak, M.; Mecz, Y.; Lurie, A.; Gruener, N., Binding of serum prostate antigen to concanavalin A in patients with cancer or hyperplasia of the prostate. Oncology 1989, 46, (6), 375-7.

Chan, D. W.; Gao, Y. M., Variants of prostate-specific antigen separated by concanavalin A. Clin Chem 1991, 37, (6), 1133-4.

Lotan, R.; Nicolson, G. L., Purification of cell membrane glycoproteins by lectin affinity chromatography. Biochim Biophys Acta 1979, 559, (4), 329-76.

McCoy, J. P., Jr.; Varani, J.; Goldstein, I. J., Enzyme-linked lectin assay (ELLA): use of alkaline phosphatase-conjugated Griffonia simplicifolia B4 isolectin for the detection of alpha-D-galactopyranosyl end groups. Anal Biochem 1983, 130, (2), 437-44.

Mehta, A. S.; Long, R. E.; Comunale, M. A.; Wang, M.; Rodemich, L.; Krakover, J.; Philip, R.;

Marrero, J. A.; Dwek, R. A.; Block, T. M., Increased levels of galactose-deficient anti-Gal immunoglobulin G in the sera of hepatitis C virus-infected individuals with fibrosis and cirrhosis. J Virol 2008, 82, (3), 1259-70.

Davies, C., Principles. In The Immunoassay Handbook, Wild, D., Ed. Stockton Press: New York City, NY, 1994.

Prakash, S.; Robbins, P. W., Glycotyping of prostate specific antigen. Glycobiology 2000, 10, (2), 173-6.

Arnold, J.N., et al., The impact of glycosylation on the biological function and structure of human immunoglobulins. Annu Rev Immunol, 2007. 25: p. 21-50.

Roth, J., Protein N-glycosylation along the secretory pathway: relationship to organelle topography and function, protein quality control, and cell interactions. Chem Rev, 2002. 102(2): p. 285-303.

Lowe, J.B., Glycosylation in the control of selectin counter-receptor structure and function. Immunol Rev, 2002. 186: p. 19-36.

Hounsell, E.F., M.J. Davies, and D.V. Renouf, O-linked protein glycosylation structure and function. Glycoconj J, 1996. 13(1): p. 19-26.

Gorelik, E., U. Galili, and A. Raz, On the role of cell surface carbohydrates and their binding proteins (lectins) in tumor metastasis. Cancer Metastasis Rev, 2001. 20(3-4): p. 245-77.

Kannagi, R., et al., Carbohydrate-mediated cell adhesion in cancer metastasis and angiogenesis. Cancer Sci, 2004. 95(5): p. 377-84.

Orntoft, T.F. and E.M. Vestergaard, Clinical aspects of altered glycosylation of glycoproteins in cancer. Electrophoresis, 1999. 20(2): p. 362-71.

Dennis, J.W., M. Granovsky, and C.E. Warren, Glycoprotein glycosylation and cancer progression. Biochim Biophys Acta, 1999. 1473(1): p. 21-34.

Stephan, C., et al., PSA and other tissue kallikreins for prostate cancer detection. Eur J Cancer, 2007. 43(13): p. 1918-26.

Khan, M.A., et al., Evaluation of proprostate specific antigen for early detection of prostate cancer in men with a total prostate specific antigen range of 4.0 to 10.0 ng/ml. J Urol, 2003. 170(3): p. 723-6.

Sumi, S., et al., Serial lectin affinity chromatography demonstrates altered asparagine-linked sugar-chain structures of prostate-specific antigen in human prostate carcinoma. J Chromatogr B Biomed Sci Appl, 1999. 727(1-2): p. 9-14.

Donohue, M.J., et al., Capillary electrophoresis for the investigation of prostate-specific antigen heterogeneity. Anal Biochem, 2005. 339(2): p. 318-27.

Tao, S.C., et al., Lectin microarrays identify cell-specific and functionally significant cell surface glycan markers. Glycobiology, 2008. 18(10): p. 761-9.

Kuno, A., et al., Focused differential glycan analysis with the platform antibody-assisted lectin profiling for glycan-related biomarker verification. Mol Cell Proteomics, 2009. 8(1): p. 99-108.

Meany, D.L., et al., Glycoproteomics for prostate cancer detection: changes in serum PSA glycosylation patterns. J Proteome Res, 2009. 8(2): p. 613-9.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象が、健常対象由来PSAの糖鎖付加パターンと比較して、変化しているPSA糖鎖付加パターンを有しているかを確認すること(ここで変化した糖鎖付加パターンは対象が前立腺癌を有していることを示す)を含有してなる、対象が前立腺癌を有しているか否かを確認する方法。
【請求項2】
糖鎖付加パターンが、PSAのα2,3−結合シアル化又はα2,6−結合シアル化である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
PSA糖鎖付加パターンを、1つ又はそれ以上のレクチン免疫吸着アッセイで確認する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
1つ又はそれ以上のレクチン免疫吸着アッセイが、PSA抗体と1つ又はそれ以上のレクチンの間に血清PSAを挟み込む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
1つ又はそれ以上の免疫吸着アッセイが、SNAによる総PSA、MALIによる総PSA、MALIIによる総PSA、MALIによる遊離PSA及びMALIIによる遊離PSAよりなる群から選ばれる、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
方法が、少なくとも2つのレクチン免疫吸着アッセイを含有している、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
方法が、少なくとも3つのレクチン免疫吸着アッセイを含有している、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
方法が、少なくとも4つのレクチン免疫吸着アッセイを含有している、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
方法が、5つのレクチン免疫吸着アッセイを含有している、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
PSA特異抗体を用いて生体試料からPSAを単離することを更に含有してなる、請求項1〜9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
PSA特異抗体が遊離PSAに対して特異的である、請求項4又は請求項10に記載の方法。
【請求項12】
PSA特異抗体が総PSAに対して特異的である、請求項4又は請求項10に記載の方法。
【請求項13】
使用前に、抗体由来の1つ又はそれ以上のグリカンのレクチンへの結合を除去するために抗体を処理する、請求項10、11又は12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
抗体を酸化によって処理する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
抗体を使用前に酸化する、請求項10、11又は12の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
抗体を過ヨウ素酸ナトリウムで酸化する、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
対象を、遊離PSAの濃度に基づいて前もって選択する、請求項1〜16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
対象を、総PSAの濃度に基づいて前もって選択する、請求項1〜16の何れか一項に記載の方法。
【請求項19】
遊離PSAの濃度が約10%〜約25%である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
総PSAの濃度が約2〜10ng/mlである、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
変化しているPSA糖鎖付加パターンが、癌を有する対象において、より不均一なパターンである、請求項1〜19の何れか一項に記載の方法。
【請求項22】
対象が、健常対象由来PSAのα2,6−シアル化パターンと比較して、変化しているPSAα2,6−シアル化パターンを有しているかを確認すること(ここで変化したPSAα2,6−シアル化パターンは前立腺癌を示す)を含有してなる、対象が前立腺癌を有しているか否かを確認する方法。
【請求項23】
PSAα2,6−シアル化パターンをレクチン免疫吸着アッセイで確認する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
レクチン免疫吸着アッセイが、SNAによる総PSAのレクチン免疫吸着アッセイである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
総PSA特異抗体を用いて生体試料から総PSAを単離することを更に含有してなる、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
対象を、遊離PSAの濃度に基づいて前もって選択する、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
遊離PSAの濃度が約10%〜約25%である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
対象を、総PSAの濃度に基づいて前もって選択する、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
総PSAの濃度が約2〜10ng/mlである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
使用前に、抗体由来の1つ又はそれ以上のグリカンのレクチンへの結合を除去するために抗体を処理する、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
処理が酸化である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
抗体を使用前に酸化する、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
抗体を過ヨウ素酸ナトリウムで酸化する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
対象が、健常対象由来PSAのα2,3−シアル化パターンと比較して、変化しているPSAα2,3−シアル化パターンを有しているかを確認すること(ここで変化したPSAα2,3−シアル化パターンは前立腺癌を示す)を含有してなる、対象が前立腺癌を有しているか否かを確認する方法。
【請求項35】
PSAα2,3−シアル化パターンをレクチン免疫吸着アッセイで確認する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
レクチン免疫吸着アッセイが、SNAによる総PSAのアッセイである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
総PSA特異抗体を用いて生体試料から総PSAを単離することを更に含有してなる、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
対象を、遊離PSAの濃度に基づいて前もって選択する、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
遊離PSAの濃度が約10%〜約25%である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
対象を、総PSAの濃度に基づいて前もって選択する、請求項34に記載の方法。
【請求項41】
総PSAの濃度が約2〜10ng/mlである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
使用前に、抗体由来の1つ又はそれ以上のグリカンのレクチンへの結合を除去するために抗体を処理する、請求項37に記載の方法。
【請求項43】
処理が酸化である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
抗体を使用前に酸化する、請求項37に記載の方法。
【請求項45】
抗体を過ヨウ素酸ナトリウムで酸化する、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
対象が、健常対象由来PSAのα2,6−シアル化パターンと比較して、変化しているPSAα2,6−シアル化パターンを有しているかを確認すること(ここで変化したPSAα2,6−シアル化パターンは前立腺癌を示し、そしてPSAの変化していないα2,6−シアル化パターンは良性前立腺肥大症を示す)を含有してなる、対象が癌又は良性前立腺肥大症(BPH)を有しているか否かを確認する方法。
【請求項47】
対象が、癌又はBPHの何れかを有していると前もって確認されている、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
PSAα2,6−シアル化パターンをレクチン免疫吸着アッセイで確認する、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
レクチン免疫吸着アッセイが、SNAによる総PSAのアッセイである、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
総PSA特異抗体を用いて生体試料から総PSAを単離することを更に含有してなる、請求項46に記載の方法。
【請求項51】
使用前に、抗体由来の1つ又はそれ以上のグリカンのレクチンへの結合を除去するために抗体を処理する、請求項46に記載の方法。
【請求項52】
抗体を使用前に酸化する、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
抗体を過ヨウ素酸ナトリウムで酸化する、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
対象由来PSAの試料が、健常対象由来PSAと比較して、シアル酸、O−結合ガラクトース又はFucal−6群を有するMan/GlcNacによる糖鎖付加の増大したレベルを有しているかを確認すること(ここで、健常対象由来PSAと比較して、シアル酸、O−結合ガラクトース又はFucal−6群を有するMan/GlcNacによる糖鎖付加の増大したレベルを有しているPSAは、前立腺癌を示す)を含有してなる、対象が前立腺癌を有しているか否かを確認する方法。
【請求項55】
PSA糖鎖付加パターンを1つ又はそれ以上のレクチン免疫吸着アッセイで確認する、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
PSA特異抗体を用いて生体試料からPSAを単離することを更に含有してなる、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
PSA特異抗体が、遊離PSAに対して特異的である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
PSA特異抗体が、総PSAに対して特異的である、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
使用前に、抗体由来の1つ又はそれ以上のグリカンのレクチンへの結合を除去するために抗体を処理する、請求項56に記載の方法。
【請求項60】
使用前に抗体を酸化する、請求項56〜58の何れか一項に記載の方法。
【請求項61】
抗体を過ヨウ素酸ナトリウムで酸化する、請求項60に記載の方法
【請求項62】
対象が、癌の家族歴に基づいて前もって選択されている、請求項54〜61の何れか一項に記載の方法。
【請求項63】
シアル酸による糖鎖付加をレクチンSNA−1を用いて確認する、請求項54に記載の方法。
【請求項64】
O−結合ガラクトースによる糖鎖付加をレクチンジャカリンを用いて確認する、請求項54に記載の方法。
【請求項65】
Fuca−1-6群を有するMan/GlcNAcによる糖鎖付加をレクチンLcHを用いて確認する、請求項54に記載の方法。
【請求項66】
1つ又はそれ以上のレクチン及びPSA特異抗体、並びに使用説明書を含有してなる、対象が前立腺癌を有しているか否かを確認するためのキット。
【請求項67】
レクチンが、SNA、MALI、及びMALIIよりなる群から選ばれる、請求項66に記載のキット。
【請求項68】
レクチンが、ジャカリン及びLcHより更に選ばれる、請求項66に記載のキット。
【請求項69】
PSA特異抗体が遊離PSAに対して特異的である、請求項66に記載のキット。
【請求項70】
PSA特異抗体が総PSAに対して特異的である、請求項66に記載のキット。
【請求項71】
使用前に、抗体由来の1つ又はそれ以上のグリカンのレクチンへの結合を除去するために抗体を処理する、請求項66に記載のキット。
【請求項72】
抗体が酸化されている、請求項66に記載のキット。
【請求項73】
抗体が過ヨウ素酸ナトリウムで酸化されている、請求項72に記載のキット。
【請求項74】
総PSAに対して特異的な抗体、及びα2,6−シアル化に対して特異的なレクチン、並びに使用説明書を含有してなる、対象が前立腺癌を有しているか否かを確認するためのキット。
【請求項75】
抗体が酸化されている、請求項74に記載のキット。
【請求項76】
抗体が過ヨウ素酸ナトリウムで酸化されている、請求項75に記載のキット。
【請求項77】
レクチン:SNA−1、ジャカリン、及びLcH;PSA特異抗体;並びに使用説明書を含有してなる、対象が前立腺癌を有しているか否かを確認するためのキット。
【請求項78】
抗体が酸化されている、請求項77に記載のキット。
【請求項79】
抗体が過ヨウ素酸ナトリウムで酸化されている、請求項78に記載のキット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図3C】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2011−529184(P2011−529184A)
【公表日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520050(P2011−520050)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【国際出願番号】PCT/US2009/004365
【国際公開番号】WO2010/011357
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(505045908)ザ・ジョンズ・ホプキンス・ユニバーシティ (21)
【Fターム(参考)】