説明

PTCヒータの制御方法及び空気調和機

【課題】始動時の過電流を確実に防止できるPTCヒータの制御方法及び空気調和機を提供する。
【解決手段】PTCヒータ55をDUTY制御するヒータ制御部54と、PTCヒータ55の電流値を検知する電流検知部53とを備え、所定のDUTY比でPTCヒータ55の駆動を開始し、電流検知部53により検知した電流値が極大値Pとなった際にPTCヒータ55のDUTY比を所定量だけ増加させるDUTY増加処理をDUTY比が100%になるまで繰り返すようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PTCヒータの制御方法及びPTCヒータを備えた空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の空気調和機は特許文献1に開示されている。この空気調和機は室内に配される室内部が前部に配され、室外に配される室外部が後部に配された一体型に構成される。室外部には冷凍サイクルを運転する圧縮機と、圧縮機に接続される室外熱交換器とが配される。室内部は吸込口及び吹出口が開口し、内部には冷媒管を介して圧縮機に接続される室内熱交換器と、PTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータを有する加熱部とが配される。
【0003】
冷房運転を開始すると圧縮機の駆動によって冷凍サイクルが運転され、室内熱交換器が冷凍サイクルの低温側の蒸発器となり、室外熱交換器が冷凍サイクルの高温側の凝縮器となる。室内の空気は吸込口から室内部に流入し、室内熱交換器と熱交換して降温された空気が吹出口から室内に送出される。これにより、室内の冷房が行われる。
【0004】
暖房運転を開始すると圧縮機の駆動によって冷凍サイクルが運転され、室内熱交換器が冷凍サイクルの高温側の凝縮器となり、室外熱交換器が冷凍サイクルの低温側の蒸発器となる。室内の空気は吸込口から室内部に流入し、室内熱交換器と熱交換して昇温される。また、加熱部の駆動によって室内部に流入した空気が更に昇温される。昇温された空気は吹出口から室内に送出され、室内の暖房が行われる。
【0005】
加熱部のPTCヒータはPTC特性を有する発熱素子を電極で挟んで形成され、電極間に電圧を印加して駆動される。発熱素子はキュリー点を超えると抵抗値が急激に増加して電流値及び発熱量が減少する。これにより、加熱部の発熱量が安定して所定の温度の温風を容易に発生させることができるとともに、過加熱を防止することができる。
【0006】
この時、PTCヒータは始動時に低温であるため発熱素子の抵抗値が低く、過電流が流れて電源容量を超える危険がある。発熱素子にNTC(Negative Temperature Coefficient)特性を有する成分を含有すると、始動時の過電流を抑制することができることが知られている。しかし、PTC特性を有する成分とNTC特性を有する成分との熱膨張係数の差によってPTCヒータの特性劣化が早くなる。
【0007】
このため、特許文献2には始動時にPTCヒータに流れる電流を監視して電源容量を超えないようにPTCヒータの駆動を制御する制御方法が開示されている。即ち、PTCヒータはトライアック制御され、トライアックのゲート信号のパルス幅を可変するDUTY制御が行われる。
【0008】
PTCヒータはゲート信号のパルス幅を0にして駆動開始され、その後パルス幅が1ビットずつ増加される。そして、PTCヒータの電流値が所定の許容範囲内に入るとパルス幅の増加を停止し、許容範囲を超えるとゲート信号のパルス幅を減少させる。また、許容範囲よりも電流値が下がるとパルス幅を増加する。これにより、PTCヒータを流れる電流が該許容範囲内で推移し、始動時の過電流を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−152179号公報(第3頁−第5頁、第2図)
【特許文献2】特開2003−59623号公報(第3頁−第6頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献2に開示されたPTCヒータの駆動制御によると、周囲温度や風量によってPTCヒータの初期温度が非常に低温となる場合がある。この時、トライアックのゲート信号のパルス幅を増加させるタイミングが速いとPTCヒータに過電流が流れ、電源容量を超えてブレーカが遮断される問題があった。
【0011】
本発明は、始動時の過電流を確実に防止できるPTCヒータの制御方法を提供することを目的とする。また本発明は、始動時の過電流を確実に防止できるPTCヒータを備えた空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明は、PTCヒータと、前記PTCヒータをDUTY制御するヒータ制御部と、前記PTCヒータの電流値を検知する電流検知部とを備え、前記PTCヒータにより昇温された空気を室内に送出して暖房運転を行う空気調和機において、所定のDUTY比で前記PTCヒータの駆動を開始し、前記電流検知部により検知した電流値が極大値となった際に前記PTCヒータのDUTY比を所定量だけ増加させるDUTY増加処理をDUTY比が100%になるまで繰り返すことを特徴としている。
【0013】
この構成によると、暖房運転が開始されるとヒータ制御部によって例えばDUTY比が50%の駆動電圧がPTCヒータに印加される。電流検知部はPTCヒータの電流値を監視し、ヒータ制御部はPTCヒータの電流値が極大値になるとDUTY比を例えば10%分増加する。この処理を繰り返してDUTY比が徐々に増加し、DUTY比が100%でPTCヒータが駆動される。そして、PTCヒータにより昇温された空気が室内に送出される。
【0014】
また本発明は、上記構成の空気調和機において、前記電流検知部により検知した電流値が所定値よりも小さいときに前記DUTY増加処理を行うとともに、前記電流検知部により検知した電流値が所定値よりも大きいときに前記PTCヒータのDUTY比を所定量だけ減少させるDUTY減少処理を行うことが好ましい。
【0015】
この構成によると、電流検知部により検知した電流値が所定の閾値よりも小さい場合は、DUTY増加処理によって電流値が極大値となるとPTCヒータのDUTY比が例えば10%分増加する。電流検知部により検知した電流値が所定の閾値よりも大きくなると、DUTY減少処理によってPTCヒータのDUTY比が例えば10%分減少する。これにより、PTCヒータの過電流が防止される。DUTY増加処理に切り替える閾値がDUTY減少処理に切り替える閾値よりも低くてもよく、一致してもよい。また、DUTY増加処理によるDUTY比の増加量とDUTY減少処理によるDUTY比の減少量とは異なってもよい。
【0016】
また本発明は、上記構成の空気調和機において、前記PTCヒータに向かう気流を発生する送風機を備え、前記PTCヒータの駆動開始時に前記送風機を第1の回転数で駆動するとともに、前記PTCヒータのDUTY比が100%になった際に前記送風機を第1の回転数よりも大きな第2の回転数で駆動することが好ましい。
【0017】
この構成によると、PTCヒータの駆動が開始されると送風機が低速の第1の回転数で回転し、PTCヒータの昇温が促進される。PTCヒータのDUTY比が100%になると送風機が高速の第2の回転数で回転し、PTCヒータと空気との熱交換が促進される。
【0018】
また本発明は、上記構成の空気調和機において、前記PTCヒータのDUTY比が100%になるまでの間に、前記送風機の回転数を第1の回転数から徐々に低下させることが好ましい。この構成によると、PTCヒータの駆動が開始されると送風機が第1の回転数で回転し、徐々に回転数が低下して低速で回転する。これにより、PTCヒータの熱交換を促進する度合を弱め、発熱素子の熱衝撃が抑制される。そして、PTCヒータのDUTY比が100%になると送風機が高速の第2の回転数で回転する。
【0019】
また本発明は、上記構成の空気調和機において、前記電流検知部により検知される電流値を所定周期で取得し、前回の電流値に対して同じまたは低下した際に極大値と判断することが好ましい。
【0020】
また本発明は、上記構成の空気調和機において、前記ヒータ制御部は前記PTCヒータをトライアック制御することが好ましい。
【0021】
また本発明のPTCヒータの制御方法は、PTCヒータをDUTY制御するヒータ制御部と、前記PTCヒータの電流値を検知する電流検知部とを備え、所定のDUTY比で前記PTCヒータの駆動を開始し、前記電流検知部により検知した電流値が極大値となった際に前記PTCヒータのDUTY比を所定量だけ増加させるDUTY増加処理をDUTY比が100%になるまで繰り返すことを特徴としている。
【0022】
また本発明は、上記構成のPTCヒータの制御方法において、前記PTCヒータに向かう気流を発生する送風機を備え、前記PTCヒータの駆動開始時に前記送風機を第1の回転数で駆動するとともに、前記PTCヒータのDUTY比が100%になった際に前記送風機を第1の回転数よりも大きな第2の回転数で駆動することが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、所定のDUTY比でPTCヒータの駆動を開始し、PTCヒータの電流値が極大値となった際にDUTY比を所定量だけ増加させるDUTY増加処理をDUTY比が100%になるまで繰り返すので、駆動開始時にPTCヒータが低温であってもDUTY比を増加させるタイミングが速くならず、PTCヒータの始動時の過電流を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態の空気調和機を示す斜視図
【図2】本発明の第1実施形態の空気調和機を示す側面断面図
【図3】本発明の第1実施形態の空気調和機の構成を示すブロック図
【図4】本発明の第1実施形態の空気調和機のPTCヒータの駆動動作を示すフローチャート
【図5】本発明の第1実施形態の空気調和機のPTCヒータの駆動動作を示すタイムチャート
【図6】本発明の第2実施形態の空気調和機のPTCヒータの駆動動作を示すフローチャート
【図7】本発明の第3実施形態の空気調和機のPTCヒータの駆動動作を示すフローチャート
【図8】本発明の第4実施形態の空気調和機のPTCヒータの駆動動作を示すフローチャート
【図9】本発明の第4実施形態の空気調和機のPTCヒータの駆動動作を示すタイムチャート
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1、図2は第1実施形態の空気調和機の斜視図及び側面断面図を示している。尚、図1は外装カバー30(図2参照)を取り外した状態を示している。空気調和機1は室内に配される室内部2と、室内部2に隣接して室外に配される室外部4とを有した一体型に構成される。
【0026】
室内部2の正面には吸込口21が設けられ、室外部4の正面には室外熱交換器42が設けられる。以下の説明において、吸込口21側を前側、室外熱交換器42側を後側(背面側)と称する。また、吸込口21に正面対峙した際の右側及び左側を空気調和機1の右側、左側と称する。
【0027】
室内部2と室外部4とは底板3上に設置され、仕切壁5で前後に分離される。室内部2は底板3、仕切壁5及び外装カバー30によって外側を囲まれた筐体20を形成する。室外部4も同様に底板3、仕切壁5及び外装カバー(不図示)によって外側を囲まれた筐体40を形成する。
【0028】
室外部4には冷凍サイクルを運転する圧縮機41が右側の端部に配される。室外部4の背面には冷媒管47を介して圧縮機41に接続される室外熱交換器42が配される。プロペラファンから成る室外ファン43は室外熱交換器42に対峙して左右方向の中央部に配され、室外熱交換器42を冷却する。室外ファン43及び室外熱交換器42はハウジング44内に配され、ハウジング44によって室外ファン43から気流を室外熱交換器42に導くダクトが形成される。ハウジング44はブラケット45を介して仕切壁5に支持される。
【0029】
室内部2を覆う外装カバー30の前面には吸込口21が開口し、吸込口21の上方には吹出口22が開口する。室内部2内には吸込口21と吹出口22とを連結する送風ダクト24によって送風通路23が形成される。送風ダクト24は外装カバー30を取り外した際に着脱自在のダクト部材29を上部に有し、送風通路23の吹出口22近傍の下壁はダクト部材29により形成されている。
【0030】
送風通路23内にはクロスフローファンから成る室内ファン25(送風機)が設けられる。送風通路23内の吹出口22の近傍には風向を可変するルーバ26が設けられる。室内ファン25と吸込口21との間には冷媒管47を介して圧縮機41に接続される室内熱交換器27が配される。
【0031】
室内ファン25と室内熱交換器27との間には複数のPTCヒータ55(図3参照)を有する加熱部28が配される。室内ファン25によって吸込口21から加熱部28に向かって流通する気流が送風通路23内に形成される。室内熱交換器27及び加熱部28の上方はダクト部材29により覆われる。ダクト部材29を取り外して加熱部28を着脱自在になっている。
【0032】
図3は空気調和機1の構成を示すブロック図である。空気調和機1は各部を制御する制御部50を有している。制御部50には圧縮機41、室内ファン25、室外ファン43、操作部51、記憶部52 電流検知部53及びヒータ制御部54が接続される。ヒータ制御部54には加熱部28のPTCヒータ55が接続される。
【0033】
操作部51は筐体20の表面に設けられた操作ボタンやリモートコントローラから成り、空気調和機1の運転指示や設定入力を行う。記憶部52はROM及びRAMから成り、空気調和機1の動作プログラムや設定条件等を記憶するとともに、制御部50の演算の一時記憶を行う。尚、記憶部52を制御部50の外部に接続しているが、制御部50の内部に記憶部52を設けてもよい。
【0034】
電流検知部53はPTCヒータ55に流れる電流値を検知する。ヒータ制御部54はPTCヒータ55の駆動を制御する。ヒータ制御部54はトライアック回路やリレー回路から成り、PTCヒータ55をDUTY制御する。ヒータ制御部54をトライアック回路により形成するとリレー回路よりもスイッチングの入切音を低減することができるのでより望ましい。PTCヒータ55はPTC特性を有する発熱素子を電極で挟んで形成され、ヒータ制御部54により電極間に駆動電圧が印加されて発熱する。
【0035】
図4、図5(a)、(b)はヒータ制御部54によるPTCヒータ55の駆動制御の動作を示すフローチャート及びタイムチャートである。図5(a)はPTCヒータ55の駆動電圧のDUTY比(単位:%)を示している。図5(b)は電流検知部53により検知される電流値(図中、Iで示す)及びPTCヒータ55の温度(図中、Tで示す)を示している。
【0036】
図4のステップ#11では室内ファン25が所定の回転数(例えば、1140rpm)で駆動される。ステップ#12ではDUTY比が50%でPTCヒータ55が駆動開始される(時間t0)。これにより、PTCヒータ55の温度が上昇するとともに、発熱素子がキュリー点に到達するまでPTCヒータ55に流れる電流が増加する。
【0037】
尚、駆動開始時のDUTY比はPTCヒータ55の発熱素子がキュリー点を僅かに超えて抵抗値が増加し始める温度まで昇温されるように設定される。このため、PTCヒータ55の特性や風量に応じて異なるDUTY比が設定される。
【0038】
ヒータ制御部54は所定時間の周期で電流検知部53の検知結果を取得し、ステップ#13では該所定時間が経過するまで待機する。所定時間が経過するとステップ#21で電流検知部53で検知された電流値が取得される。ステップ#25では電流検知部53から取得した電流値が前回取得された電流値に対して低下したか否かが判断される。電流検知部53から取得した電流値が前回取得された電流値に対して低下していない場合はステップ#13に戻り、ステップ#13〜#25が繰り返し行われる。
【0039】
PTCヒータ55の温度が上昇して発熱素子がキュリー点を超えると発熱素子の抵抗値が増加し、PTCヒータ55の電流値が極大値P(図5(b)参照)をとる。このため、電流検知部53から取得した電流値が前回取得された電流値に対して低下すると、極大値Pが発生したと判断してステップ#26に移行する。
【0040】
ステップ#26ではPTCヒータ55のDUTY比を10%分(100%に対する10%を表わしている)だけ増加させるDUTY増加処理が行われる。これにより、DUTY比が60%でPTCヒータ55が駆動される。DUTY比の増加によってPTCヒータ55の電流値が再度上昇する。尚、DUTY比の増加量は10%以外でもよい。
【0041】
ステップ#27ではPTCヒータ55のDUTY比が100%に到達したか否かが判断される。PTCヒータ55のDUTY比が100%に到達していない場合はステップ#13に戻り、ステップ#13〜#27が繰り返し行われる。そして、上記と同様に、PTCヒータ55の温度が上昇すると発熱素子の抵抗値が増加してPTCヒータ55の電流値が極大値Pを取る。これにより、PTCヒータ55のDUTY比がステップ#26のDUTY増加処理によって10%分ずつ増加し、電流値が徐々に増加する。
【0042】
PTCヒータ55のDUTY比が100%に到達するとステップ#31に移行し、操作部51による停止の指示があるまでPTCヒータ55の駆動が継続される。停止の指示があるとステップ#32でPTCヒータ55が停止され、ステップ#33で室内ファン25が停止されて終了する。
【0043】
上記構成の空気調和機1において、冷房運転を開始すると圧縮機41の駆動によって冷凍サイクルが運転される。これにより、室内熱交換器27が冷凍サイクルの低温側の蒸発器となり、室外熱交換器42が冷凍サイクルの高温側の凝縮器となる。室外熱交換器42は室外ファン43により冷却されて放熱する。室内ファン25の駆動によって室内の空気が吸込口21から送風通路23内に流入し、室内熱交換器27と熱交換して降温された空気が吹出口22から室内に送出される。これにより、室内の冷房が行われる。
【0044】
暖房運転を開始すると圧縮機41の駆動によって冷凍サイクルが運転される。これにより、室内熱交換器27が冷凍サイクルの高温側の凝縮器となり、室外熱交換器42が冷凍サイクルの低温側の蒸発器となる。室外熱交換器42は室外ファン43により昇温される。室内ファン25の駆動によって室内の空気が吸込口21から送風通路23内に流入し、室内熱交換器27と熱交換して昇温される。
【0045】
また、加熱部28が駆動されるとPTCヒータ55が前述の制御方法によって駆動制御され、送風通路23内の空気がPTCヒータ55により更に昇温される。室内熱交換器27及び加熱部28により昇温された空気は吹出口22から室内に送出され、室内の暖房が行われる。暖房運転時に圧縮機41を停止して加熱部28のみによって空気を昇温してもよい。
【0046】
本実施形態によると、所定のDUTY比でPTCヒータ55の駆動を開始し、PTCヒータ55の電流値が極大値Pとなった際にDUTY比を所定量だけ増加させるDUTY増加処理(ステップ#26)をDUTY比が100%になるまで繰り返すので、駆動開始時にPTCヒータ55が低温であってもDUTY比を増加させるタイミングが速くならず、PTCヒータ55の始動時の過電流を確実に防止することができる。
【0047】
また、電流検知部53によりPTCヒータ55の電流値を所定周期で取得し、前回の電流値に対して低下した際に極大値Pと判断するので、電流値の極大値Pを容易に検知することができる。尚、電流検知部53から取得した電流値が前回の電流値と同じ時に極大値Pが発生したと判断してもよい。
【0048】
次に、図6は第2実施形態の空気調和機1のヒータ制御部54によるPTCヒータ55の駆動制御の動作を示すフローチャートである。本実施形態は前述の図4に示す第1実施形態の動作に対してステップ#22〜#24の処理が追加されている。その他の部分は第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0049】
ステップ#21で電流検知部53により検知されたPTCヒータ55の電流値が取得されると、ステップ#22に移行する。ステップ#22では電流検知部53から取得した電流値が所定の電流値I1よりも大きいか否かが判断される。電流値I1は電源容量に基づいて設定され、電流値I1を超えるとPTCヒータ55に流れる電流が大きく、電源容量を超える可能性がある過電流状態となる。
【0050】
このため、電流検知部53から取得した電流値が電流値I1よりも大きい場合はステップ#23でPTCヒータ55のDUTY比を10%分だけ下げるDUTY減少処理が行われる。これにより、過電流状態から脱することができ、ステップ#13に戻る。
【0051】
電流検知部53から取得した電流値が電流値I1よりも大きくない場合はステップ#24で所定の電流値I2よりも小さいか否かが判断される。電流値I2は電流値I1よりも低く設定される。電流検知部53から取得した電流値が電流値I2よりも小さい場合はステップ#25に移行し、極大値Pが検出されるとステップ#26のDUTY増加処理が行われる。
【0052】
電流検知部53から取得した電流値が電流値I2よりも小さくない場合はステップ#13に戻る。即ち、極大値Pの発生に拘わらず、PTCヒータ55のDUTY比が維持される。これにより、電流値I1と電流値I2との間ではDUTY比の増減が行われず、過電流状態になることを未然に防ぐことができる。
【0053】
本実施形態によると、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。加えて、電流検知部53から取得した電流値が電流値I1よりも大きい場合にステップ#23のDUTY減少処理を行うので、PTCヒータ55の過電流状態を脱して電流値が電源容量を超えることをより確実に防止することができる。
【0054】
また、電流検知部53から取得した電流値が電流値I1と電流値I2との間の場合にステップ#26のDUTY増加処理を行わないので、PTCヒータ55が過電流状態になることを未然に防ぐことができる。
【0055】
尚、電流値I1と電流値I2とを一致させ、ステップ#24を省いてもよい。また、ステップ#26のDUTY増加処理によるDUTY比の増加量とステップ#23のDUTY減少処理によるDUTY比の減少量とは異なってもよい。
【0056】
次に、図7は第3実施形態の空気調和機1のヒータ制御部54によるPTCヒータ55の駆動制御の動作を示すフローチャートである。本実施形態は前述の図6に示す第2実施形態の動作に対してステップ#11の動作が異なり、ステップ#28の処理が追加されている。その他の部分は第2実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0057】
ステップ#11では室内ファン25が第1の回転数(例えば、600RPM)で駆動され、ステップ#12でPTCヒータ55がDUTY比50%で駆動される。そして、PTCヒータ55のDUTY比が100%になると、ステップ#28で室内ファン25が第1の回転数よりも大きな第2の回転数(例えば、1140RPM)で駆動される。
【0058】
従って、第2実施形態と同様の効果を得ることができるとともに、始動時の室内ファン25の風量を減らすことによってPTCヒータ55と空気との熱交換が促進される。従って、PTCヒータ55の昇温を速くすることができる。
【0059】
また、空気調和機1は設置する際にDUTY比が100%の時の電流値が電源容量よりも低くなるように複数のPTCヒータ55の接続数量が決められる。PTCヒータ55の発熱素子はDUTY比が100%の時よりも70〜80%の時に電流値が最大となる特性を有する場合がある。このため、DUTY比が70〜80%の時に電源容量を超える危険がある。しかし、DUTY比が100%の時に対して室内ファン25の風量を減らすことによってPTCヒータ55の温度を急速に上昇させ、電流値を下げることができる。
【0060】
次に、図8、図9(a)〜(c)は第4実施形態の空気調和機1のヒータ制御部54によるPTCヒータ55の駆動制御の動作を示すフローチャート及びタイムチャートである。本実施形態は前述の図7に示す第3実施形態の動作に対してステップ#11の動作が異なり、ステップ#14の処理が追加されている。その他の部分は第3実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0061】
図9(a)はPTCヒータ55の駆動電圧のDUTY比(単位:%)を示している。図9(b)は電流検知部53により検知される電流値(図中、Iで示す)及びPTCヒータ55の温度(図中、Tで示す)を示している。図9(c)は室内ファン25の回転数(単位:RPM)を示している。
【0062】
ステップ#11では室内ファン25が第1の回転数(例えば、900RPM)で駆動され、ステップ#12でPTCヒータ55がDUTY比50%で駆動される。ステップ#13で電流検知部53から電流値を取得する周期が経過すると、ステップ#14で室内ファン25の回転数を所定量だけ低下させる。これにより、室内ファン25の回転数は徐々に低下する。本実施形態では時間t1(例えば、10分)が経過した時に室内ファン25の回転数が900RPMから550RPMになる低下率で低下させている。
【0063】
そして、PTCヒータ55のDUTY比が100%になると、ステップ#28で室内ファン25が第1の回転数よりも大きな第2の回転数(例えば、1140RPM)で駆動される。この時、PTCヒータ55の冷却量が増加してPTCヒータ55の温度Tが若干低下する(前述の第3実施形態も同様である)。
【0064】
本実施形態によると、第1〜第3実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第3実施形態に比してPTCヒータ55の熱交換を促進する度合が弱められる。これにより、発熱素子の熱衝撃が抑制され、クラック等の発生を抑制することができる。従って、PTCヒータ55の短寿命化を抑制しつつ、PTCヒータ55の昇温を速くすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明によると、PTCヒータを有する空気調和機や暖房機等に利用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 空気調和機
2 室内部
3 底板
4 室外部
5 仕切壁
20 筐体
21 吸込口
22 吹出口
23 送風通路
24 送風ダクト
25 室内ファン
26 ルーバー
27 室内熱交換器
28 加熱部
30 外装カバー
41 圧縮機
42 室外熱交換器
43 室外ファン
47 冷媒管
50 制御部
51 操作部
52 記憶部
53 電流検知部
54 ヒータ制御部
55 PTCヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PTCヒータと、前記PTCヒータをDUTY制御するヒータ制御部と、前記PTCヒータの電流値を検知する電流検知部とを備え、前記PTCヒータにより昇温された空気を室内に送出して暖房運転を行う空気調和機において、所定のDUTY比で前記PTCヒータの駆動を開始し、前記電流検知部により検知した電流値が極大値となった際に前記PTCヒータのDUTY比を所定量だけ増加させるDUTY増加処理をDUTY比が100%になるまで繰り返すことを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
前記電流検知部により検知した電流値が所定値よりも小さいときに前記DUTY増加処理を行うとともに、前記電流検知部により検知した電流値が所定値よりも大きいときに前記PTCヒータのDUTY比を所定量だけ減少させるDUTY減少処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記PTCヒータに向かう気流を発生する送風機を備え、前記PTCヒータの駆動開始時に前記送風機を第1の回転数で駆動するとともに、前記PTCヒータのDUTY比が100%になった際に前記送風機を第1の回転数よりも大きな第2の回転数で駆動することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記PTCヒータのDUTY比が100%になるまでの間に、前記送風機の回転数を第1の回転数から徐々に低下させることを特徴とする請求項3に記載の空気調和機。
【請求項5】
前記電流検知部により検知される前記PTCヒータの電流値を所定周期で取得し、前回の電流値に対して同じまたは低下した際に極大値と判断することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の空気調和機。
【請求項6】
前記ヒータ制御部は前記PTCヒータをトライアック制御することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の空気調和機。
【請求項7】
PTCヒータをDUTY制御するヒータ制御部と、前記PTCヒータの電流値を検知する電流検知部とを備え、所定のDUTY比で前記PTCヒータの駆動を開始し、前記電流検知部により検知した電流値が極大値となった際に前記PTCヒータのDUTY比を所定量だけ増加させるDUTY増加処理をDUTY比が100%になるまで繰り返すことを特徴とするPTCヒータの制御方法。
【請求項8】
前記PTCヒータに向かう気流を発生する送風機を備え、前記PTCヒータの駆動開始時に前記送風機を第1の回転数で駆動するとともに、前記PTCヒータのDUTY比が100%になった際に前記送風機を第1の回転数よりも大きな第2の回転数で駆動することを特徴とする請求項7に記載のPTCヒータの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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