説明

PTC素子

【課題】 素体からリード端子が剥離することを抑制可能なPTC素子を提供すること。
【解決手段】 このPTC素子1は、結晶性高分子に導電性フィラーを分散させてなる素体10と、当該素体10を挟んで熱圧着される一対の端子電極12,14とを備えるPTC素子であって、一対の端子電極12,14はそれぞれ、素体10と重なる重複領域121,141と、素体10と重ならない非重複領域122,142とを有し、一対の端子電極12,14それぞれの非重複領域122,142は、端子電極12,14が素体10から延びる方向に対する幅が広い幅広部122aと、当該幅広部122aの幅よりも狭い幅の幅狭部122bとが連続して形成されている

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PTC(Positive Temperaature Coefficient)素子に関する。
【背景技術】
【0002】
過電流から回路素子を保護するための素子として、PTC素子が知られている。PTC素子は、ある特定の温度領域に達すると抵抗値の正温度係数が急激に増大する素子である。そのようなPTC素子の一つとして、下記特許文献1に記載されたものが知られている。
【特許文献1】特開2005−123473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に記載のPTC素子は、結晶性ポリマーに導電性粒子を分散した有機質正温度特性組成物からなるシートを素体として準備し、その素体の表裏両面にニッケル等の金属からなる金属片を熱圧着して固定している。リード端子である金属片は素体から互い違いに突出しており、それぞれ突出した部分がリードを形成している。
【0004】
ところで、このようなPTC素子を製造してから実装するまでの間において、素体からリード端子が剥離する場合がある。
【0005】
そこで本発明では、素体からリード端子が剥離することを抑制可能なPTC素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るPTC素子は、結晶性高分子に導電性フィラーを分散させてなる素体と、当該素体を挟んで熱圧着される一対のリード端子とを備えるPTC素子であって、一対のリード端子はそれぞれ、素体と重なる重複領域と、素体と重ならない非重複領域とを有し、一対のリード端子それぞれの非重複領域は、当該リード端子が素体から延びる方向に対する幅が広い幅広部と、当該幅広部の幅よりも狭い幅の幅狭部とが連続して形成されている、ことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、幅広部と幅狭部とが連続して非重複領域に形成されているので、幅広部又は幅狭部に外力が加えられた場合に、相対的に撓みやすい幅狭部が主に変形する。従って、重複領域の変形が緩和されるので、重複領域が素体から剥離することを抑制できる。
【0008】
また本発明に係るPTC素子では、重複領域の上記方向に対する幅と、幅広部の幅とが同一であることも好ましい。重複領域の幅と幅広部の幅とが同一になるように形成するので、リード端子の製造が容易であり、強度も確保できる。
【0009】
また本発明に係るPTC素子では、幅広部は素体に隣接して、幅狭部は幅広部を挟んで素体とは反対側に、それぞれ形成されており、幅狭部を挟んで幅広部と反対側に、第2幅広部が形成されていることも好ましい。幅狭部を幅広部と第2幅広部とで挟み込むようにリード端子が形成されているので、外側にある第2幅広部に外力が加えられた場合に、相対的に撓みやすい幅狭部が主に変形する。従って、より力の加わりやすい外側に第2幅広部を配置することで、より効果的に内側の幅広部及び重複領域の変形を緩和できる。
【0010】
また本発明に係るPTC素子では、幅広部は素体に隣接して、幅狭部は幅広部を挟んで素体とは反対側に、それぞれ形成されており、幅狭部は一対のリード端子それぞれの端に至るまで形成されていることも好ましい。幅狭部が素体に対して外側に形成されているので、例えば実装作業の際にリード端子が他の部品に接触する可能性を低くすることができる。また、接触した場合であっても、幅狭部が主に変形することによって、重複領域が素体から剥離することを抑制できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、相対的に撓みやすい幅狭部が主に変形し、重複領域の変形が緩和される。従って、重複領域が素体から剥離すること、すなわち素体からリード端子が剥離することを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の知見は、例示のみのために示された添付図面を参照して以下の詳細な記述を考慮することによって容易に理解することができる。引き続いて、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0013】
本発明の実施形態であるPTC素子について図1を参照しながら説明する。図1は、PTC素子1の斜視図である。PTC素子1は、ポリマーPTC素子であり、一対の端子電極12,14(リード端子)と、素体10とを備えている。
【0014】
一対の端子電極12,14は、厚みが0.1mm程度のNi又はNi合金である。一対の端子電極12,14は、それぞれの一部が対向するように配置されている。その対向している部分の間には素体10が配置されている。従って、一対の端子電極12,14にはそれぞれ、素体10と重なる重複領域121,141と、素体10と重ならない非重複領域122,142とが形成されている。
【0015】
素体10は、結晶性高分子樹脂に導電性フィラーを分散させて形成されている。導電性フィラーとしてはNi粉が、結晶性高分子樹脂としては熱可塑性樹脂であるポリエチレン樹脂がそれぞれ好適に用いられる。素体10は一対の端子電極12,14に加圧・加熱して圧着されている。
【0016】
端子電極12,14について、端子電極12を例にとって詳細に説明する。図2は、端子電極12の平面図である。
【0017】
端子電極12は、素体10と重なる重複領域121と、素体10と重ならない非重複領域122とからなる。非重複領域122は素体10から外側に延びるように形成されている。
【0018】
非重複領域122は、幅広部122aと、幅狭部122bと、幅広部122c(第2幅広部)とからなる。幅広部122a、幅狭部122b、幅広部122cは、非重複領域122が素体から延びる方向において順に配置されている。従って、幅広部122aは素体10に隣接して設けられ、幅広部122cは素体10からは最も離れた先端側に設けられている。幅狭部122bは、幅広部122aと幅広部122cとの間に設けられている。このように幅広部122aと幅広部122cとを設けることで、端子電極12の外側に幅の広い部分を設けることとなるので、端子電極12の強度を確保できる。
【0019】
本実施形態の端子電極12は、重複領域121と非重複領域122とを合わせた長さが6.8mm、幅W2が3.0mmである。また、幅広部122aの、非重複領域122が素体から延びる方向の長さは0.5mmであり、同方向の幅狭部122bの長さは0.3mm、幅広部122cの長さは2.0mmである。幅狭部122bの幅W1は1.0〜2.4mmである。幅狭部122bの幅W1は、幅広部122aの幅W2の3分の1以上であることが好ましい。
【0020】
続いて、本実施形態の変形例について図3を参照しながら説明する。図3は、PTC素子3の斜視図である。PTC素子3は、ポリマーPTC素子であり、一対の端子電極32,34(リード端子)と、素体30とを備えている。
【0021】
一対の端子電極32,34は、厚みが0.1mm程度のNi又はNi合金である。一対の端子電極32,34は、それぞれの一部が対向するように配置されている。その対向している部分の間には素体30が配置されている。従って、一対の端子電極32,34にはそれぞれ、素体30と重なる重複領域321,341と、素体30と重ならない非重複領域322,342とが形成されている。
【0022】
素体30は、素体10と同様に結晶性高分子樹脂に導電性フィラーを分散させて形成されている。導電性フィラーとしてはNi粉が、結晶性高分子樹脂としては熱可塑性樹脂であるポリエチレン樹脂がそれぞれ好適に用いられる。素体30は一対の端子電極32,34に加圧・加熱して圧着されている。
【0023】
端子電極32,34について、端子電極32を例にとって詳細に説明する。図4は、端子電極32の平面図である。
【0024】
端子電極32は、素体30と重なる重複領域321と、素体30と重ならない非重複領域322とからなる。非重複領域322は素体30から外側に延びるように形成されている。
【0025】
非重複領域322は、幅広部322aと幅狭部322bとからなる。幅広部322a、幅狭部322bは、非重複領域322が素体30から延びる方向において順に配置されている。従って、幅広部322aは素体30に隣接して設けられ、幅狭部122bは端子電極32の先端側に設けられている。
【0026】
本実施形態の変形例である端子電極32は、重複領域321と非重複領域322とを合わせた長さが6.8mm、幅W4が3.0mmである。また、幅狭部322bの、非重複領域322が素体から延びる方向の長さは2.3mmである。幅狭部322bの幅W3は2.3mmである。
【0027】
引き続いて、上述したPTC素子1の製造方法について説明する。PTC素子3は、PTC素子1と端子電極の形状が異なるのみであるから、その製造方法の説明を省略する。PTC素子1の製造方法は、素体作製工程と、配置工程と、端子接続工程とを備えている。
【0028】
素体作製工程は、素体10となる素体素材を作製する工程である。まず、導電性フィラーとなるNi粉と、母材樹脂となるポリエチレンとを混練してブロックを形成する。このブロックを円盤状にプレスし、カットして素体素材を得る。
【0029】
続いて、配置工程では、一対の端子電極12,14及び素体素材を準備する。端子電極12,14の幅狭部122bは、エッチングによって形成しても、打ち抜きによって形成してもよい。
【0030】
その後、端子電極12の重複領域121と端子電極14の重複領域141とがそれぞれ対向すると共に、端子電極12の非重複領域122と端子電極14の非重複領域142とがそれぞれ反対側に延びるように配置する。この際、重複領域121と重複領域141との間に素体素材を配置する。
【0031】
続いて、端子接続工程では、一対の端子電極12,14を素体素材に向けて加圧し、加熱して一対の端子電極12,14を素体素材に接続する。素体素材が圧縮されることで重複領域121及び重複領域141から延出した場合には、延出した部分の素体素材を除去する。尚、加熱しながら加圧してもよく、加熱後に加圧してもよい。
【0032】
本実施形態のPTC素子1(3)は、幅広部122a,122c(322a)と幅狭部122b(322b)とが連続して非重複領域122(322)に形成されているので、幅広部122a,122c(322a)又は幅狭部122b(322b)に外力が加えられた場合に、相対的に撓みやすい幅狭部122b(322b)が主に変形する。従って、重複領域121(321)の変形が緩和されるので、重複領域121(321)が素体10(30)から剥離することを抑制できる。
【0033】
更に、本実施形態の効果を確認するために、図1に示したPTC素子1と、図3に示したPTC素子3と、幅狭部を設けない従来のPTC素子(図示しない)とを比較した。比較の方法は、各PTC素子の両端を把持して捻り、抵抗値が変形前から20%上昇するまでの角度を測定することで行った。これは、捻りに応じたPTC素子の変形が大きくなり、加工硬化が生じると抵抗値が上昇することから、この抵抗値によって変形状態を比較するためである。
【0034】
この比較結果によれば、抵抗値が変形前から20%上昇するまでの捻り角度は、PTC素子1では、図1のW1寸法が1.5mmの場合には約60度、図1のW1寸法が2.00mmの場合には約47度であった。また、PTC素子3では約42度であった。また、従来のPTC素子(図示しない)では約31度であった。従って、上述したように、素体から端子電極が剥がれにくいのみならず、本実施形態のPTC素子1,3では加工硬化による影響も低減できることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施形態におけるPTC素子を示す斜視図である。
【図2】図1の端子電極の平面図である。
【図3】本実施形態の変形例におけるPTC素子を示す斜視図である。
【図4】図3の端子電極の平面図である。
【符号の説明】
【0036】
1…PTC素子、12,14…端子電極、10…素体、121,141…重複領域、122,142…非重複領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性高分子に導電性フィラーを分散させてなる素体と、当該素体を挟んで熱圧着される一対のリード端子とを備えるPTC素子であって、
前記一対のリード端子はそれぞれ、前記素体と重なる重複領域と、前記素体と重ならない非重複領域とを有し、
前記一対のリード端子それぞれの前記非重複領域は、当該リード端子が前記素体から延びる方向に対する幅が広い幅広部と、当該幅広部の幅よりも狭い幅の幅狭部とが連続して形成されていることを特徴とするPTC素子。
【請求項2】
前記重複領域の前記方向に対する幅と、前記幅広部の幅とが同一であることを特徴とする請求項1に記載のPTC素子。
【請求項3】
前記幅広部は前記素体に隣接して、前記幅狭部は前記幅広部を挟んで前記素体とは反対側に、それぞれ形成されており、
前記幅狭部を挟んで前記幅広部と反対側に、第2幅広部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のPTC素子。
【請求項4】
前記幅広部は前記素体に隣接して、前記幅狭部は前記幅広部を挟んで前記素体とは反対側に、それぞれ形成されており、
前記幅狭部は前記一対のリード端子それぞれの端に至るまで形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のPTC素子。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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