説明

PTPシート用包装体

【課題】薬剤の情報や使用上の注意、服薬履歴、症状のメモ等の各種情報を患者、医師、薬剤師、その他消費者等に正確かつ確実に伝達することができ、またその製造工程も安全且つ簡単なPTPシート用包装体の提供。
【解決手段】 薬剤等の内容物を封入した突出部21を有するPTPシート2の該突出部21を嵌入させる孔部111を備えた台紙11と、前記孔部111に対応する位置に前記突出部21から薬剤等を脱離せしめるための開口部121を設けた粘着性シート12とからなり、前記台紙11の裏側より前記孔部111にPTPシートの突出部21を嵌入し、該PTPシート2の裏側より粘着性シート12を、その開口部121を前記孔部111の位置に合わせて貼付することにより該PTPシートを封止するとともに、前記台紙11および/または前記粘着性シート12には内容物に関する情報が記載されていることを特徴とするPTPシート用包装体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤のPTPシートを収容するPTPシート用包装体に関し、更に詳細には、該包装体に情報を記載したものの構成およびその簡便な製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、薬剤の包装技術の一つとして、PTP(Press Through Package)包装が知られている。このPTPシートには、薬剤が投与された者に、薬剤の種類や服用上の注意等の必要な情報を与えるために、文字などの情報が記載できるよう工夫されている。例えば、特許文献1には、文字等が記入可能な着色部を備えたPTPシートが開示さている。
【0003】
また、PTPシートに収容されている薬剤の数そのものを、服用する数に合わせるために、長手方向の7個が幅方向に一日の服用回数列並んだ個数の薬剤収容空間部を備えて一単位を構成する薬剤包装技術が開示されている(特許文献2)。このPTPシートには、さらに、曜日が印刷されている。
【0004】
また、特許文献3には、服用される薬剤が曜日毎に順番に配列されており、且つ包装シートに曜日が記載された薬剤包装技術が開示されている。
【0005】
また、帯状のPTPシートの錠剤を一定単位で送り出すことができ、しかも服用する日や服用回数が分かるようにしたPTPシートのハードケースが存在する(特許文献4)。また、特許文献2に記載のPTPシートを収容するようにした、同様なハードケースが存在する(特許文献5)
【0006】
また、特許文献6には、一対の厚紙を用いたカード型包装体、及びその製造方法が開示されている。
【0007】
さらに、特許文献7には薬物を安全かつ適正に服用及び管理ができるよう、取り出しを規制するようなPTPシート用包装体が開示されている。
【0008】
【特許文献1】実開昭61−113259
【特許文献2】実開平2−17137
【特許文献3】実開平2−129074
【特許文献4】実開平6−25171
【特許文献5】実開平6−42749
【特許文献6】特許3172679号
【特許文献7】特開2004−299728
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の従来例のほとんどは、PTPシートに直接文字等の情報が記載されたものである。しかしながら、既知の症例に対する投薬の段階では、薬剤を服用する形態がある程度決まっているために、このような直接印刷であっても特に不都合はないが、服用量や服薬日数が複雑な薬剤もあり、服用する患者の誤飲なども多数報告されている。また、臨床試験段階の薬剤では、投薬の形態が確定していないために、かつ、多種多様な注意事項を患者に伝える必要があるために、既述のような直接印刷は、妥当ではない。しかもPTPシートへの直接記載には、文字数に限界があり、細かな注意事項等を記載することは困難であった。
【0010】
本発明と同様にPTPシートを覆う包装体も報告されているが、製造工程数も多く、パッケージをする際に感熱糊を使用するため、熱に不安定な薬剤を包装するのには好ましくない。また、その複雑な製造工程により、異なる数種のPTPシートの断片を含むPTPシート包装体及びその製造方法は報告されていない。
【0011】
そこで、本発明は、PTPシートを情報が記載されたPTPシート用包装材にてパッキングして、多種多様な薬剤の情報、使用上の注意、服薬履歴、症状のメモ等の各種情報を患者、医師、薬剤師、その他消費者等に正確かつ確実に伝達し、とりわけ、PTPシート用包装体の製造工程の簡略化と、熱に不安定な薬剤のPTPシートもパッキングできる安全なPTPシート用包装体を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するものであり、薬剤等の内容物を封入した突出部を有するPTPシートの該突出部を嵌入させる孔部を備えた台紙と、前記孔部に対応する位置に前記突出部から薬剤等を脱離せしめるための開口部を設けた粘着性シートとからなり、前記台紙の裏側より前記孔部にPTPシートの突出部を嵌入し、該PTPシートの裏側より粘着性シートを、その開口部を前記孔部の位置に合わせて貼付することにより該PTPシートを封止するとともに、前記台紙および/または前記粘着性シートには内容物に関する情報が記載されていることを特徴とするPTPシート用包装体である。
【発明の効果】
【0013】
すなわち、本願発明のPTPシート用包装体は、服用上の留意事項をその都度記載できる台紙および粘着性シートによってPTPシートが封止されているために、多種多様な使用上の注意、服薬履歴、症状のメモ等の各種情報を正確かつ確実に患者、医師、薬剤師、その他消費者等に伝達することができる。とりわけ、裏型は粘着性のあるシートを用いることにより製造工程を容易にし、かつ、熱を使わないため、包装する薬剤の変性等を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下では、本発明のPTPシート包装体の実施態様を、図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明はこれら実施態様に何ら制約されるものではない。
【0015】
図1は本発明に係るPTPシート包装体の正面図、図2は本発明に係るPTPシート包装体の背面図、図3は本発明に係るPTPシート包装体の分解斜視図、図4は本発明に係るPTPシート包装体の台紙の背面からその孔部にPTPシートの突出部が嵌入されている状態を示す模式図、図5は図4のA−A断面図、図6および図7は本発明に係るPTPシート包装体の孔部の別の態様をそれぞれ示す。図中、1はPTPシート包装体、2はPTPシート、11は台紙(表型)、12は粘着性シート(裏型)、21は突出部、21aは突出部外縁、22はアルミ箔、111は孔部、111aは孔縁部、111bは突出部外縁と孔部の接点、111cは突出部外縁と孔部111との間のクリアランス、121は開口部をそれぞれ示す。
【0016】
このPTPシート包装体1は、図1ないし図3に示すように、厚紙からなる台紙11と片面のみに粘着剤が塗布された粘着性シート12との間に薬剤のPTPシート2を挟み込んで封止した構造からなっている
【0017】
このPTPシート2は、プラスチック材(例:塩化ビニル樹脂)を素材とし、図3に示すように、薬剤を封入する断面カプセル形状の突出部21が1列に一体成形で設けられている。その個々の突出部21内には、一つの錠剤又はカプセル剤等が封入されており、本実施態様のものは、ちょうど一週間分(7個)のカプセル剤が封入されている。
【0018】
このPTPシート2の裏面には、アルミ箔22が突出部21周囲の平面部に接着されており、突出部21を表側よりその裏面に向けて押圧することによって、突出部21内の錠剤又はカプセル剤がアルミ箔22を破ってPTPシート2外に露出する。
【0019】
図1,図3に示されているように、PTPシート包装体1の台紙11には、PTPシート2の個々の突出部21を嵌入できる複数の孔部111が一列状に形成されている。そして、裏側に貼付する粘着性シート12には、孔部111に対応する位置に、この孔部111の内径よりやや大きい内径の開口部121が同様に一列状に形成されている。
【0020】
この表型の台紙11と裏型の粘着シート12の余白部分には、例えば、インフォームド・コンセントの際又は治験段階に必要な、比較的詳細に及ぶ投薬上の留意事項等が記載されている(図示せず)。この投薬を受ける患者等は、この比較的詳細に渡る留意事項を参照して、薬剤を服用する。
【0021】
このPTPシート包装体1を組み立てる(製造する)場合は、図3に記載されているように、先ず表型の台紙11の背面から、PTPシート2の各突出部21を孔部111にそれぞれ嵌入させ、次いで、裏型の粘着性シート12を、その開口部121を前記孔部111の位置に合わせて、接着面の空気を抜きながら貼付するだけでよい。これらの工程は、全て機械的に行えるのみならず、手作業によっても可能である。
【0022】
図4は、表型の台紙11の背面からその孔部111にPTPシート2の突出部21が嵌入されている状態を示す、部分拡大図である。この図に示すように、この孔部111は、その内径が、突出部21の外径に比べ、縦幅においてほぼ等しく、横幅においてやや大きく形成されており、形状としては、角丸長方形状に形成されている。
【0023】
PTPシート包装体1の孔部111をこのような形状に形成した理由は、PTPシート突出部21からの薬剤等の脱離に対する、PTPシート包装体の干渉を最小限にするためである。
【0024】
すなわち、PTPシート包装体1からPTPシート内の錠剤又はカプセル剤等を取り出す際には、PTPシート包装体1の表側から、PTPシートの突出部21を背面側に押してこれを変形させ、裏紙の開口孔121に露出するアルミ箔22を破って錠剤をPTPシート包装体1の外部に取り出さなければならない。
【0025】
仮に、PTPシート包装体1の孔部111の内径が、PTPシートの突出部21の外径とほぼ同じ形状・寸法に形成されていた場合、表型の台紙11の孔縁部111aがPTPシート突出部外縁21aに接しているか、或いはこれに極めて接近していることから、応力によって潰れようとする突出部21の変形が干渉される虞がある。この変形が干渉されると、突出部21が潰れる程度が抑制され、潰れた突出部がその背面から錠剤を押し出そうとすることが妨げられることになる。したがって、円滑、且つ容易に突出部21から錠剤を取り出すことができなくなる。
【0026】
そこで、本実施形態では、図4および図5に示すように、この孔部111の内径が、突出部21の外径に比べ、縦幅においてほぼ等しく、横幅においてやや大きく形成されている。これにより、突出部21の左右の外縁と孔部111の縁部との間には、既述の突出部21が潰れることによる変形量を吸収できるクリアランス111cが存在するため、突出部21を潰すのに必要以上の力を要することなく、突出部21から錠剤を取り出すことが可能となる。さらに、突出部21の上下の外縁と孔部111とが接する二点111bにおいて、PTPシート包装体の台紙11が突出部21を支持するため、PTPシート2の各突出部21を孔部111に嵌入させるときの位置決めが容易になる。
【0027】
このような孔部111は、突出部が潰れることによる変形の量を吸収できるクリアランスを備えたものであれば、角丸長方形状のものに限定されず、例えば、円型(図6)や菱型(図7)の形状であっても良い。また、孔部111はその孔の中で、突出部21を安定的に支持するために、孔部の内縁が、前記突出部の外縁との複数の接点を有しているものが好ましく、とくに、二点もしくは四点で接しているものが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本願発明は、薬剤のPTPシート包装体としてのみならず、薬剤以外の菓子、食品等の内容物(被包装物)一般に適用することができる。このとき、注意事項や、留意事項に代えて、宣伝公告情報をPTPシート包装体に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係るPTPシート包装体の正面図。
【図2】本発明に係るPTPシート包装体の背面図。
【図3】本発明に係るPTPシート包装体の分解斜視図。
【図4】本発明に係るPTPシート包装体の表型の背面からその嵌入孔にPTPシートの凸状部が嵌入されている状態を示す模式図。
【図5】図4のA−A断面図
【図6】本発明に係るPTPシート包装体の嵌入孔の別の態様。
【図7】本発明に係るPTPシート包装体の嵌入孔の別の態様。
【符号の説明】
【0030】
1 … … PTPシート包装体
2 … … PTPシート
11 … … 台紙(表型)
12 … … 粘着性シート(裏型)
21 … … 突出部
21a… … 突出部外縁
22 … … アルミ箔
111 … … 孔部
111a… … 孔縁部
111b… … 突出部外縁と孔部の接点
111c… … 突出部外縁と孔部との間のクリアランス
121 … … 開口部
以 上

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤等の内容物を封入した突出部を有するPTPシートの該突出部を嵌入させる孔部を備えた台紙と、前記孔部に対応する位置に前記突出部から薬剤等を脱離せしめるための開口部を設けた粘着性シートとからなり、前記台紙の裏側より前記孔部にPTPシートの突出部を嵌入し、該PTPシートの裏側より粘着性シートを、その開口部を前記孔部の位置に合わせて貼付することにより該PTPシートを封止するとともに、前記台紙および/または前記粘着性シートには内容物に関する情報が記載されていることを特徴とするPTPシート用包装体。
【請求項2】
前記PTPシートが数種の異なる薬剤のPTPシートからなることを特徴とする請求項1に記載のPTPシート用包装体。
【請求項3】
前記孔部の内縁が、前記突出部の外縁との複数の接点をもち、さらに、該接点以外では該突出部の外縁との間隙をつくるように設けられていることを特徴とする請求項1もしくは請求項2のいずれかに記載のPTPシート用包装体。
【請求項4】
前記孔部が、円状、菱型状、角丸長方形状のいずれかに形成されている請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のPTPシート用包装体。
【請求項5】
PTPシート用包装体の台紙部分に設けられている孔部に、PTPシートの突出部を嵌入させ、裏側に粘着性のあるシートを空気を抜きながら貼付する請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のPTPシート用包装体の製造方法。














【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−330401(P2007−330401A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−163944(P2006−163944)
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【出願人】(390028509)シオノケミカル株式会社 (6)
【Fターム(参考)】